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院生時代の部屋 浮竹ってちょろい

朝から、京楽は踊っていた。

ソーラン節だった。

服は着ていたので、欠伸をかみ殺しながら起きる。

「楽しいか?」

「君を満足させる体をつくるためにやってるから、楽しいよ!」

「俺は満足しないから」

「ええ、僕のテクの前ではメロメロでしょ!?」

そういう京楽を蹴り転がして、顔を踏みつける。

「誰が誰のテクでメロメロだと?」

「足をぺろりーーーー」

「ぎゃああああ」

裸足の足の裏を舐められて、浮竹は悲鳴と共に京楽を蹴り転がした。

「愛が痛い」

「京楽菌がうつった!」

足をタオルで何度もぬぐう。

「京楽菌は頑固だから、そんなんじゃとれないよー」

自分を菌扱いされているのに、京楽は楽し気だった。

「アホ言ってないで、学院に行くぞ」

寮の部屋を出て、学院に向かう。遅めにおきたので、朝食は抜きだが、いつものことなのであまり気にしない。

教室について、授業を受けた。

隣の席の京楽は、ノートに浮竹すきすきとかいて、それを投げてよこしてきた。

浮竹は、死ね死ねとかいて、投げてよこした。

そのやりとりに教師は気づいているが、二人とも成績優秀なので、特に何も言わない。特に浮竹は優等生だ。京楽はたまに授業をさぼるので、優等生とはいえないが、能力は座学、鬼道、剣どれをとってもTOPになるくらいの成績だった。

できていそうで、できていないカップルとして、二人は有名だった。

紙の投げ合いをしていると、流石に教師も怒って、注意する。

「浮竹、京楽、廊下に立っていなさい」

「ばか、お前のせいで怒られたじゃないか!」

「えー。君だって楽しそうにやりとりしてたじゃない」

こほんと、教師が咳払いをすると、二人はそそくさと廊下に立った。

でも、反省は全然しなかった。

「お前のせいで立たされた」

「え、僕のせいであそこがたったって?」

「死ね!」

破道の8、白雷を落とす。

京楽はぶすぶすと焦げたけど、にこにこしていた。

「浮竹の愛は激しいなぁ」

「全く、お前は・・・・」

加減したとはいえ、鬼道だ。痛いだろうに、京楽にはきいていなかった。

やがてチャイムがなり、その時間の授業の終了の合図が鳴る。

「浮竹、京楽、あまり遊ばないように」

廊下に立たされても、反省のそぶりを見せない二人に、教師は溜息をつきながらそう注意した。

「遊んでいません。抹殺しようとしているんです」

「いやあ、抹殺したいほどに僕に惚れているんだね」

二人の会話は噛みあわない。

それに教師は深い溜息をついた。

「お前たちは、成績優秀なのに、何故そうなんだ」

「京楽が邪魔をするからです」

「浮竹がいるからだよ」

こういう時だけ、息が合う。

「とにかく、授業中は騒がずに大人しくするように」

次の授業も座学だった。

紙でやりとりしていたが、すでに教師は諦めているのか、二人を注意することはなかった。

やがて昼休みになり、昼食をとりに出かける。

なんだかんだ言っても、二人は行動は常に一緒だった。

京楽を抹殺するとか言っておいて、すでに浮竹はそのことを忘れていた。

他の友人たちに囲まれた浮竹を攫い、昼飯を手に席につく。

「お前なぁ。友人たちと会話もできないのか、俺は」

「だって君は僕のものだもの」

「はぁ・・・・・」

浮竹は溜息をついて、今日の昼食・・・きつねうどんを食べだした。

二人きりになった京楽と浮竹に近づく、勇気ある友人はいない。浮竹が友人に声をかけて、それがきっかけで輪ができる。

京楽もその輪に交じる時もあれば、混じらない時は浮竹を拉致した。

「今日の放課後、甘味屋へ行こうか」

「本当か?」

機嫌の悪い浮竹を喜ばせる方法として、甘味物でつるのが一番手っ取り早かった。

「うん。いつものあの店にいこう」

贔屓にしている、甘味屋の店があった。老舗で、人気も高い。

浮竹は、午後は機嫌がよくなった。

放課後になり、二人で壬生の甘味屋まできた。

お代はもちろん京楽もちだ。

仕送りの少ない金でやりくりをしている浮竹には、甘味物を食べるお金の余裕などない。

「ぜんざいを5人前。おはぎを10個。白玉餡蜜を3人前」

浮竹は、始め京楽と知り合った頃は遠慮していたが、今では甘味物を別腹で食べることにも気にしていない。

浮竹は、甘味物になると、普通の人の3~5倍は食べた。

メニューがやってきて、テーブルがいっぱいになる。

どんどん平らげていく浮竹を見ながら、京楽は抹茶アイスを食べながらにこにこと笑んでいた。

食べたものから、下げられていく。

「今日はこのくらいにしておくか・・・・・」

「まだ食べる気だったの?」

「食べようと思えば食べれたけど、夕飯が食べれなくなる」

あれだけの甘味物を食べて、夕飯が入るのだから、この細い体のどこにあれだけの甘味物が入るのだろうと、京楽はいつも不思議に思っていた。

浮竹は、ご機嫌で寮に一度戻り、夕食を食べに食堂へ行った。

今日は天ぷらだった。

一人前を少なくしてもらったものを受け取り、食べる。

元々、浮竹は食が細い。なのに、甘味物になるとたくさん食べた。

京楽は思う。

不機嫌な浮竹は、甘味屋に連れていけば機嫌が直ってちょろいなと。

そんなことを本人に知られたら、きっと簀巻きにされてベランダ行きだろう。

夕食も食べ終わり、二人は寮の部屋に戻った。

風呂に入り、余った時間で復習と予習をして、就寝時間になる。

浮竹は、京楽を同じベッドに誘った。

「今日は一緒に寝てかまわない。おごってもらったからな」

「ひゃっほう!」

京楽は、浮竹に抱き着いた。暖かかった。

いつもは背中あわせに、別々の方向を向いて寝ていたが、最近は京楽の腕の中で浮竹は眠るようになっていた。

真に、慣れとは恐ろしい。

どんどん京楽色に染め上げられていく浮竹。

まぁ、まだまだ体の関係はないので、キスとハグはありの、親友以上恋人未満の関係を続けていくのだろう。

今は3回生の冬の終わり。

きっと、4回生になってもそれは変わらないのだろう。

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