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院生時代の部屋20

「これもこれも没収!」

浮竹が友人の部屋に寝泊まりしている間に、浮竹グッズを揃えていた京楽は、破壊されながら没収されていく浮竹グッズに涙していた。

「ああ、そのポスターだけは!」

びりびりと破いてやった。

「そのマグカップは」

ガッシャーン。割ってやった。

「ああ、その丸秘写真集は!」

「なんだこれ!半裸ばっかじゃないか!」

どこからとったのか、公共浴用で風呂に入っている写真やら、着換え中のやら、とにかく盗撮ばかりでまともな写真がなかった。

浮竹は、それを鬼道で燃やした。

「ああああああああ!!!僕のおかずが」

燃やしてよかった。

そう思った。

「これまたでかいな・・・・・」

浮竹の抱き枕。浮竹の普通の笑顔がプリントアウトされていて、一見するとまともなのだが、問題は京楽が使っているということだろうか。

「これも没収!」

「だめ!これだけはだめ!」

京楽は、抱き枕だけは没収されまいと必死だった。

「これは僕のオアシスなんだ・・・・浮竹と一緒に寝れない時はこれを浮竹と思って抱いて寝てるから」

ふーむと、浮竹は悩んだ。

つまり、これを没収すると、また京楽が勝手にベッドに忍び込んできて、一緒に寝る羽目になるのが防げるのだ。

「仕方ない。これだけは没収なしにする」

「ありがとう、浮竹」

抱き枕を抱き締めて、心底ほっとている京楽の姿に、まるで自分が悪いことをしているように思えてくる。

ぶんぶんと首を振って、再び没収作業を続けた。

3時間くらいかけて、一通りそろっていた浮竹グッズを、抱き枕以外破壊しながら没収した。

上流貴族の京楽は、金が有り余っている。浮竹グッズを作るのにも相当な金を費やしたと見える。だが、アイドルを思ってグッズを集めるなら分かるが、本人の目の前でグッズなど集められても、使うのは京楽ただ一人。
それを見て平静ならいいが、浮竹は不快にしかならない。

「ゴミを燃えるゴミと燃えないゴミに選別しないと・・・・」

月曜と木曜がゴミの日だ。今日は土曜日。あさってに回収にくるから、それまでに仕分けしておこう。あらかた仕分けして捨てたので、仕分けはしなくていいかもしれない。

月曜になって、ゴミを捨てた。

月曜は祝日だった。京楽は、浮竹抱き枕を抱きしめて、まだ夢の中だ。

「浮竹~そんな大胆な。うわああ、そんなことまで・・・・・・・」

いかがわしい夢を見ているらしい京楽に、エルボーでもくらわしてやろうかと思ったが、あまりに気持ちよさそうに寝ているものだから、仕方なく聞かなかったことにしてやった。

「はぁ・・・・・京楽のやつ、だんだん変態に拍車がかかってないか?」

ついこの間まで、ただの親友だったのに。

といっても、告白されて半年は経っているが。

諦めて今までのように女生徒の尻を追っかけれていればいいだろうに、今では浮竹の尻を追っかける始末だ。

同性なのに、それでも浮竹がいいという。

理解できない。

浮竹の恋愛感情は、女性に向けられている。確かにまだ好きな子はいないが、いつか結婚して自分の家庭を持つ夢だってちゃんとある。

このまま、京楽に押し切られると、その夢さえ叶えれそうにない。

まぁ、それはそれで仕方ないかとも思う。京楽の想いに、答えないでいるのは、少しでも親友でいたいから。

一度恋人になってしまえば、あとはどうなるか分からない。怖いのだ。

何か大切なものを失ってしまいそうで。

もっとも、浮竹と京楽の周囲の友人たちは、はやく二人ともくっついてしまえとうるさかったが。

「おはよう、浮竹・・・・・すごかった」

「夢の中の俺がだろう?」

「ぞうなんだ。浮竹のあそこはすごくて・・・」

顔面に蹴りを入れると、鼻血を吹き出して京楽は倒れた。

そのまま、いびきをかき出した。

「うふふふ、浮竹・・・・・・・・むにゃむにゃ」

「この変態が・・・・・・」

ひとかけらの優しさで、白目をむいたまま眠る京楽に、毛布をかけてやる。

「はぁ・・・・・」

祝日の朝からこれだ。

浮竹の苦労は尽きないのであった。







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