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院生時代の部屋21

夏季休暇になった。

2か月ほどあるその休みに、現世に遊びに行く者もいるが、現世は今戦国時代でとても治安が悪い。野盗の類が発生するし、落ち武者狩りもある。

村に泊めてもらおうにも、金などの高価な品をちらつかせないと泊めてくれない。

だから、現世に旅行に行く者は少ないし、行くとしても人のいない地域にいく者がほとんどだった。

浮竹は、2週間ばかりを利用して、故郷に帰ってしまった。

京楽が、連れて行ってくれと涙を流し、本気で懇願してきたのだが、まさか家族に男に言い寄られてますなんて言えずに、京楽は寮の部屋に置いてきた。

その間、京楽がどれほど寂しい思いをしたのか、浮竹は知らなかった。

3年ぶりに故郷の地を踏んだ。両親の喜びようは半端ではなく、3回生の時点でもう、護廷13隊入りが確実と言われているので、それを頼みに借金までしている始末だ。
流石にこれ以上借金を重ねてほしくなかったが、まだ幼い妹や弟がいるし、肺の病の薬を買うための仕送りもしてくれているのだから、文句は言えなかった。

「十四郎、本当に大丈夫なのですね?京楽家の方と懇意になっているときいたのだけれど」

どこから漏れたのか、浮竹が京楽と仲がいいことを母は知っているようだった。

「今までもなんとかなってきたのだから、多分大丈夫とは思いますが、もしも何かあれば京楽家の方に頼るのですよ・・・金銭面では、もうこれ以上十四郎のために出せないのです」

「分かっています、母上」

事実、最近の薬は高騰していて、仕送りの金では買えなくて、京楽に援助してもらっていた。

これ以上仕送りを増やせとはとても言えなくて、浮竹は肩身の狭い思いをしながらも、弟や妹の世話をよくして、父と母の仕事の手伝いをした。

1週間が過ぎた頃、母が言いにくそうにこう言ってきた。

「京楽家の方に、お金をかりることはできますか?」

「どうしたんですか、母上」

「子供が・・・・一番上の娘を借金のかたに売れと、地主が・・・・」

そのまま、浮竹の母親は泣き崩れた。

妹は、花も咲かんばかりの美貌で、浮竹の美貌も、元をただせば母親譲りのものだ。妹は、今人間の年に換算すると、16くらいだ。とても美しく、利発で、将来は上級貴族の嫁になれると両親が期待していた。

「妹を売れだと!?」

さすがに承知できなくて、浮竹は激高した。

「本当は、十四郎、あなたを売れといってきたのです。肺の病の薬代をもってやるから、色子として売れと」

「!」

浮竹は身震いした。

「でも、学院にいっており、死神になることを知ってから、十四郎、あなたによく似たあの子が欲しいと言われて・・・ずっと拒んできたのですが、この前今までの借金を全部返さないと
あの子を妾としてもらっていくと・・・・・」

浮竹は、すぐに学院に戻ると、京楽に頼み込んで大金を貸してもらい、それを父と母に渡した。

「十四郎、ふがいない父と母を許してください」

「いいのです、父上母上。それより妹は!?」

「借金を返済したので、もう大丈夫です」

相変わらず、違うところに借金は残っているが、妹が売られる最悪の展開だけは回避できた。

あたふたとした2週間が過ぎて、浮竹は寮に返ってきた。

「妹さん、どうだったの?」

「ああ、お陰で売られる最悪の展開だけは回避できた。京楽・・・・・」

「どうしたんだい?」

「金はしばらく返せそうにない。それが我慢できないなら、俺を抱け」

「浮竹・・・・」

抱き締めると、浮竹は震えていた。

「いい子だね。無理やり抱いたりしないから、安心して?」

「京楽・・・・・」

ほっとした顔で、浮竹が顔をあげる。

本当は、怖くて怖くてたまらなかったのだ。

「すまない・・・・あんな大金をかりておきながら、何もできなくて」

「じゃあ、我儘を言っていいかい?」

「なんだ・・・・?」

嫌な予感がした。

「僕のベッドで、一緒に眠って?1週間だけでいいから。それから、キスの回数も増やしてくれると嬉しいな」

「それくらいなら・・・・・」

親友以上恋人未満。ハグやキスはする。その延長線上と思えばいい。

その日から、1週間浮竹は京楽のベッドで眠ることになった。

朝起きると京楽の顔があって、驚いた浮竹は京楽を蹴り落とした。

それから気づく。

「あ・・・・・・すまない、京楽、大丈夫か?」

「大丈夫・・・・おはようのキスをちょうだい」

京楽にキスをすると、抱き締められて舌をいれられた。

「んう・・・・はぁっ・・・」

浅く呼吸を繰り返していると、京楽の手が尻に回った。

その時点で、浮竹は京楽の脛を蹴った。

「痛い!浮竹の愛が痛い!」

「1週間は一緒のベッドで寝ることは了承した。キスも好きなだけしていいとした。でも、肉体関係をもつつもりはない」

きっぱりと言われて、儚い京楽の野望も潰えた。

「ちぇっ。これを機に、浮竹とアツアツになる予定が・・・・・」

「誰がなるか」

やがて、一緒に眠る1週間もすぎて、いざ自分のベッドで眠ろうとすると、ベッドが濡れていた。

水をかけられたようで、シーツどころマットまでぐっしょりと濡れていて、とてもじゃないが眠れる状態じゃなかった。

「京楽~~~~~~」

浮竹は笑顔だった。ただ、血管マークが数え切れないほど浮かんでいた。

「ね、これで僕のベッドで眠るしかなくなったでしょ!さぁ、僕の腕においでマイスウィートハニー!」

「浮竹印の抱き枕でも抱いて寝てろ!少しはいいやつだと思った俺がバカだった!」

浮竹は、怒って違う友人の・・・・・この前、相部屋の相手が退学し、ベッドが空いている部屋に行ってしまった。

数時間して、浮竹が京楽の様子を見に来た。

言いすぎたかと思ったのだ。大金をかりておきながら、酷いことばかりしている気がして。

ガチャリと扉をあけて入ろうとして、鍵がかかっていたので、合鍵であけて中を見た。

「マイスィートハニー(*´Д`)ハァハァ」

抱き枕相手に、シコシコしている姿を見てしまった浮竹は止まった。

「あ”・・・・・・う、浮竹、これは違うんだ!」

「破道の33、蒼火墜」

ちゅどーん。

抱き枕と一緒になって吹き飛んだ京楽を確認してから、扉を閉める。

「はぁ・・・・・・やっぱ変態だ、あいつ」

浮竹の心が、京楽に傾きかけていたのを、台無しにする京楽であった。


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