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院生時代の部屋22

破壊したはずの、浮竹印の抱き枕が元に戻っていた。否、新品になっていた。そして数も3個と増えていた。

ふと、薬をのむためにマグカップに水を入れた。

それにも、浮竹の写真がプリントアウトされていた。

「・・・・・・・」

部屋を見回す。

浮竹の笑顔の眩しいカレンダー。照れた浮竹のポスター。

泣いている浮竹のストラップ。

浮竹のベッドには、京楽印の抱き枕。

枕も布団も、京楽の顔があった。反対に、京楽のベッドには浮竹の顔が。

一番浮竹を怒らせたのは、YESorNOのピンク色の枕が置かれていたことだろうか。

「世話になったな、京楽。俺は別の部屋にいく」

「ええっ、なんで!」

「この部屋を見回して、何も思わないのか?」

「え、素敵でしょ?僕と京楽の、スィートルーム」:

「そうか。世話になったな」

浮竹は、自分の荷物をまとめ出した。

「ちょ、ちょっと待ってよ!本気で出ていくつもりなの!?」

「そうだが?」

浮竹は、本気でこの部屋を去ろうとしていた。

京楽が慌てて、隠していた普通の寝具やらを出して、浮竹印と京楽印のものを封印した。

「最初から、そうしていればいいのに」

浮竹は、荷物をまとめるのを止めた。

「だって、最近、浮竹は僕をかまってくれないじゃないか」

「いつも通りだろう?」

「そんなことない。僕のこと、避けてない?」

確かに、浮竹は京楽を意図的に避けていた。

こんな変態京楽であるが、その変態を取り除いたときの京楽を、浮竹は好きになりかけていた。

京楽が、本気で浮竹を落としにかかったら、多分、YESと答えてしまうだろう。

浮竹の中で、京楽の存在は大きなものとなり、京楽になら抱かれていいかもしれないという気持ちがあった。

それを全て無駄にするのが、京楽クオリティ。

「はぁ・・・・・最近の俺は、どうかしている」

ベッドに横になると、妹が売られかけたこととか、京楽に多額の借金を背負ったこととかが次々に襲ってきて、その日の深夜には高熱を出した。

「大丈夫?」

額につめたい氷水で冷やしたタオルが置かれていた。

「俺は・・・?」

「熱をだしたんだよ。今日は休日だし、僕がついているからもう少し眠りなよ」

「すまない・・・・・」

額の冷たいタオルが気持ちよかった。

なんとか解熱剤だけを飲んで、横になると、鎮静剤の効果で眠ってしまった。

「浮竹が僕を好き、浮竹が僕を嫌い、浮竹が僕を好き、浮竹が僕を嫌い・・・・ああああ、また嫌いで終わってしまった」

起きると、日付がかわっていた。深夜だった。

浮竹が寝ている間に、京楽も仮眠をとったのだ。

浮竹が起き出したときに相手ができるように。その心使いはありがたいのだが、京楽はどこから買ってきたのか、花束を手に、その花びらをむしっていた。・

「浮竹が僕を好き、浮竹が僕を嫌い、浮竹が僕を好き、浮竹が僕を嫌い・・・・ああああ、また嫌いで終わってしまった」

すでに、京楽のベッドは花びらまみれだ。床にまで広がっていて、浮竹は額に手をあてた。

「京楽・・・・ばかなことしてないで、片付けて寝ろ」

「浮竹、起きたの?やっぱり、僕のことは好きだよね?」

浮竹は、少し黙った後言った。

「好きだ」

「やっぱり!さぁ、共に快楽の世界へ!」

押し倒してくる京楽を蹴って、浮竹は起き出した。

「課題を、する・・・・・・」

起き上がった時、眩暈を覚えてふらついた。

「しっかりして!」

京楽が支えてくれた。

「・・・・まだ熱があるのか」

病弱な、自分の体がうとましかった。

仕方なく、また横になる。でも、眠りすぎて眠気は一向に訪れなかった。

「京楽?」

「どうしたの?」

「なんでもない・・・その花束、どうしたんだ?」

「ああ、下級生の女の子からもらったんだ。告白された」

ちりっと、胸の奥が痛んだ。

「答えはだしたのか?」

「勿論。浮竹が好きだっていったら、男同士で(*´Д`)ハァハァするから、もっとくっついてくださいって言われた」

「それ、告白なのか・・・・・・・?」

「さぉ?でも、今の君と僕の関係、けっこう女子に人気あってさ・・・その、小説とかでいかがわしいこと書かれてるんだけど」

「妄想の世界までは、止められないな」

「その本を、こっそり読むのが最近の楽しみなんだよねぇ」

だめだこりゃ。

優しくていいやつだな、やっぱり好きだなと傾きかけていた浮竹の心が、平常に戻る。

「もう一度、寝る」

熱もまだあるので、解熱剤を飲んだ。

鎮静効果のせいで、また眠気が緩くではあるがやってきた。

「夕飯は?」

「食欲がないからいい」

「朝には、お粥用意しとくね」

浮竹は思う。

この心をどうしよかと。変態の京楽を見るたびにげんなりするが、真面目で優しい京楽と接していると、胸が苦しくなるのだ。

それが、恋心であるということに、浮竹はまだ気づいていなかった。



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