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院生時代の部屋29

雪が降って、休校になった。

午前中は吹雪に見舞われて、外出も困難だったが、午後になって晴れてきた。

浮竹は、雪自体を見るのは初めてではなかったが、積もったのを見るのは初めてだった。

冷たいと思いながらも、雪を丸めて京楽の顔に当てると、京楽も雪玉をつくって投げてきた。

それがおもしろくて、何度も雪玉の投げ合いをしていると、他の友人も加わって、京楽チームVS浮竹チームになっていた。

雪の投げ合い大会になった。勝ったのは浮竹チーム。敗因は、京楽が浮竹に雪玉を投げることを戸惑ったから。その隙に他の友人たちが京楽に雪玉をぶつけて、京楽は参ったと降参した。

それから、移動して浮竹と京楽は、二人で雪だるまを作った。枯れ枝で手をつくり、ばけつをかぶせて、目と口を植物の木の実や枝でつくった。

浮竹は、雪だるまの隣に、かわいい雪うさぎを2匹作った。

「これは、俺と京楽だ」

寄り添いあうように、2匹の雪うさぎは、雪だるまのそばにいた。

ふと、京楽が浮竹の手をとる。手袋をしていなかった手は、大分冷たくなっていた。

「部屋に戻ろうか。お湯か何かで、手を温めなきゃ」

「まだかまくらを作っていない・・・・・・」

「そんなに、一日でできないよ。雪は多分明日も残るだろうから、明日にすればいいじゃない」

「明日は学校がある。授業が終わる頃には、雪はかまくらなんてできるくらいには残っていない」

浮竹の我儘に、京楽もつきあってあげることにした。

友人数人を呼んで、みんなでかまくらを作った。

「中は、暖かいんだな」

「はい、浮竹。今更だけど、手袋。防水対策されてあるの、探すのに手間取ったよ」

いつの間にか京楽が消えていたことは知っていたが、わざわざ自分のために手袋をもってきてくれたことが、素直に嬉しかった。

「もう少し、遊んでもいいか?」

「こうなったら、とことん付き合うから」

雪で遊んで、夕方になった。

食堂があいて、夕飯を食べに出かける。

「浮竹・・・・大丈夫かい?」

今日のメニューは、おでんだった。

はんぺんを食べていた京楽は、少し顔を朱くしている浮竹の額に手を当てる。

「あちゃあ、やっぱ熱でたね。雪であんなに遊べば、無理もないかな」

「すまない・・・ああっ、卵!最後に食べようと残しておいたのに」

「えっ、食べ残しじゃなかったの」

「京楽のあほー」

「ごめんごめん」

浮竹の頭を撫でる。そんな二人のやりとりを友人たちは、暖かく見守っていた。

「よければ、俺の分の卵食えよ」

「本当か。ありがとう」

京楽の次に仲のいい友人に、卵をもらって浮竹の気分は直った。

だが、熱はどんどん高くなっていく。

「はぁはぁ・・・・・・・」

「一人で歩くの辛いでしょ。よっと」

人がいるので、横抱きではなく肩の上に担ぎあげた。

「京楽・・・・・」

「部屋に戻るよ。じゃあみんな、また明日」

「またねー」

「浮竹、無理するなよ。明日もだめそうなら休め。ノートはとっておくから」

「すまない、みんな・・・・・・」

もう慣れてしまったので、京楽に担ぎあげられたまま、お礼を言った。

浮竹と京楽の周囲の友人は、理解もあるし何より優しく温かい。太陽のような浮竹を中心とした集まりだが、そこの京楽が加わって、その太陽を独占しようとしても、文句を言う者はいない。独占といっても、友人たちから取り上げるわけはない。

「さて、戻りますか」

「一人で歩ける」

「本当に?」

「ああ」

熱には慣れているので、少しふらつきながらも京楽の手を借りて、寮の自室まで戻ってくる。

「今日は楽しかった・・・・・雪遊びに付き合ってくれて、ありがとう。雪であんな風に遊んだの初めてだ」

「そうかい。一緒に遊んだかいがあったってもんだよ」

「俺の故郷はどちらかというと気温が高くてな。雪なんて、この瀞霊廷に入るまで、見たこともなかった」

「へぇ。浮竹は南のほうの出身なのか」

「ああ・・・・・・・」

しばらく話こんでいると、浮竹はまた熱があがったのか、瞳が潤んできた。

「京楽・・・・・・・」

「そんな目で見られると、食べてしまいたくなるよ」

「んっ・・・・・」

ディープキスをした。

「はぁ・・・・・・」

酸素を求めてあえぐ浮竹を抱き締める。

「今日は、もう寝ようか」

「京楽・・・・・」

「うん?」

「もっとキス・・・・」

浮竹は、熱のせいで意識が朦朧としだしていた。

こうやって甘えられると、いつもの数倍可愛く見えて、京楽もそれに付き合ってしまう。

「何度でも、キスしてあげるよ」

啄むようなキスを繰り返してから、解熱剤を含んだ肺の病の薬を飲ませようとすると、また甘えてきた。

「飲ませて・・・・・・・」

「仕方のない子だね」

京楽は薬を口にすると、水分と一緒に浮竹に口移しで飲ませた。

「甘い・・・・」

最近、苦くて嫌だという薬を、京楽は金をかけて甘い味のものに変えた。

尸魂界では高級な蜂蜜を使っており、値は高くついたが、浮竹が少しでも飲みやすくなるならと、金は惜しまなかった。

「京楽、一緒に寝てもいいか?」

ああもう。

本当に、この生き物はどうしてこうもかわいいのだろう。

いつもは突っぱねる癖に、酒で寄ったり、熱にうなされるとこうして甘えてくる。

「いいよ、おいで」

京楽は、自分のベッドにスペースをつくり、そこをぽんぽんとたたいた。

浮竹が、そこに寝転ぶと、すり寄るように京楽に身を寄せた。

「京楽があったかい・・・・・・」

「もう眠いでしょ。薬のせいで」

「もう少し、こうしていたい・・・・・・・」

「仕方のない子だねぇ」:

頭を撫でて、ハグをしてキスをする。でもそこまで。それ以上はしない約束だ。

「少し眠くなってきた・・・・・もう、寝る」

「おやすみ。僕も寝るよ」

次の日、起きるとベッドから蹴落とされた。

「なんで京楽のベッドで俺が眠っているんだ!さては、俺のベッドから体を移動させたな!」

「いや、君が甘えてきて・・・・・」

うろ覚えではあるが、記憶が残っていたので、浮竹は真っ赤になった。

「昨日のことは忘れろ!」

「無理いわないでよ。あんなかわいい君の姿、忘れられるわけないじゃないか」

「いいから、忘れろ!」

尻を撫でてきた京楽の鳩尾に蹴りを入れて、そして最近見つけた、京楽の浮竹写真集を手に取る。

「ああっ、それは僕の宝物・・・・・・」

ただの写真であれば、何も文句はいわない。

肌色がやけに多めの、盗撮した写真集だった。

鬼道で焼き尽くす。

「あああああああああ( ゚Д゚)」

京楽が、ショックで涙する。

「これで今年5冊目だな・・・・・・」

「6冊目だよ」

「お前には、学習能力というものがないのか」

「あるよ。いかに浮竹に気づかれずに盗撮するかのテクニックを学習して身に着けた」

「そんなもの身に着けるな!」

京楽の脛を蹴ると、京楽は足を抑えて蹲った。

「ネガがあるもんね・・・・・」

ゆらり。

霊圧の高まりを感じて、背後を振り返る。

「ネガ、全部よこせ」

「いやだよ!」

「ハグとキス禁止にするぞ」

「そういって、この前禁止期間中にハグとキスしてきたの、浮竹のほうじゃない。酔ってたけど」

「う・・・・・」

もう、京楽は少々の脅しでは屈しない。

どうしようと思う浮竹であった。









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