院生時代の部屋4
友達の輪に囲まれて、談笑していた。
その輪の中には京楽もいて、他愛のないことで笑いあっていた。
昼休みが終わるころ、浮竹は京楽の肩の上にひょいっと乗せられた。
「え?」
驚いたのは、浮竹だった。
「浮竹君?京楽君?」
何事だろうかと心配する、女子の友人の輪をかきわけて、京楽は進む。
「やっぱできてるんだよ」
「いや、できてないだろ」
「京楽の変態っぷりは最近目にあまるからなぁ」
「浮竹も、嫌なら嫌って言えばいいのに」
そんな男子の友達からの声に、京楽は顔色一つ変えない。背の高い京楽は、190センチ以上はあって、入口を出入りする時よく頭をぶつけていた。
今回はそんなこともなく、入口を屈んで肩に乗せた浮竹がぶつからないように配慮してくれた。
「はっ・・・・・・・」
今頃になって、苦しくなりだした。
熱を出していたのだ。でも、顔色一つ変えない浮竹が熱があるなんて、友達は誰も気づかない。
何かいって、抜け出そうか迷っていたところを、京楽に見破られて肩の上だ。
横抱きにされることもあるが、今日は肩の上だった。
女生徒が数人いたせいだ。
男子生徒だけなら、横抱きにしている。
そんな細かな配慮が、浮竹の心を揺さぶる。
「寮の部屋に戻るよ」
「待ってくれ、まだ授業が・・・・・」
「こんなに熱だして、授業の内容が頭に入るとでも思っているの?」
「それは・・・・でも、昼に解熱剤は飲んだから」
「安静にしてなきゃ、効果も薄いでしょ」
どんどん教室を遠ざかっていく。
「荷物が・・・・・」
「僕が後で届けるから」
「宿題が・・・・・」
「僕がやっといてあげるから」
「医務室は?」
「今日はベッドがいっぱいなの。だから、寮の自室」
最近風邪が流行っていて、他に発熱や悪寒を訴える生徒で、医務室のベッドは埋まっていた。
寮の自室にくると、どさりと少し乱暴気味に落とされた。
「あのね、君さ」
「分かっている。なぜ我慢するんだ、だろ?」
「浮竹・・・・・・」
京楽が、浮竹の頭を撫でた。
「俺は、あまり病弱だと思われなくないんだ。ただの強がりかもしれないが、みんなの輪に普通に混じっていたい。ただそれだけなんだ・・・・・・」
「肺の病で、吐血してもかい?」
「その時は、流石に大人しくするが・・・・少しくらいの発熱なら、慣れてるから」
「でも悪化させてしまうでしょ?」
京楽の言う通りだった。
熱があるのに無理をして授業をうけた次の日は、高熱をだして数日寝込む。
それを知っているから、浮竹を攫うように教室から連れ出したのだ。
「君は、頑張り過ぎなの。体が疲れたってサインを出したら、素直に休みなさい」
すでに、浮竹のはったテープの内側にいる。
「じゃあ、僕は戻るから・・・・・」
その手を、浮竹が掴んだ。
「傍にいてくれないか」
京楽は目を見開く。黒曜石の瞳いっぱいに、翡翠の瞳が映っていた。
京楽は、浮竹を抱き締めた。いつもは嫌がる浮竹が大人しい。その頭を撫でて、ベッドに横たえてから、唇に振れるだけのキスをした。
そして、水でしぼったタオルを浮竹の額に乗せて、浮竹が眠るまでずっと傍にいた。
「起きたかい?」
「今何時だ?」
「夜の8時」
「食堂しまってるじゃないか!夕飯食べ損ねた・・・・」
おなかがぐーっとなった。
それに苦笑して、京楽は買ってきたお弁当を見せた。
「熱ちゃんと下がってるみたいだね。お弁当食べれそうかい?」
唐揚げ弁当だった。
「食べる。その前に・・・・・」
「どうしたの?」
「ありがとう。傍にいてくれて」
その言葉に、どういたしましてと答えれば好印象になるのだが、京楽はだらしない顔をして浮竹の頭を撫でた。
「かわいい浮竹がいっぱい見れたから、僕は満足だよ。珍しく、酒なしで甘えてくれたし」
でれでれしていた。
「はぁ・・・・・・」
こんな京楽だから、付き合うというふんぎりがつかないだろうなと、浮竹は思うのだった。
友達以上、恋人未満。
その関係は、当分の間続きそうだった。
その輪の中には京楽もいて、他愛のないことで笑いあっていた。
昼休みが終わるころ、浮竹は京楽の肩の上にひょいっと乗せられた。
「え?」
驚いたのは、浮竹だった。
「浮竹君?京楽君?」
何事だろうかと心配する、女子の友人の輪をかきわけて、京楽は進む。
「やっぱできてるんだよ」
「いや、できてないだろ」
「京楽の変態っぷりは最近目にあまるからなぁ」
「浮竹も、嫌なら嫌って言えばいいのに」
そんな男子の友達からの声に、京楽は顔色一つ変えない。背の高い京楽は、190センチ以上はあって、入口を出入りする時よく頭をぶつけていた。
今回はそんなこともなく、入口を屈んで肩に乗せた浮竹がぶつからないように配慮してくれた。
「はっ・・・・・・・」
今頃になって、苦しくなりだした。
熱を出していたのだ。でも、顔色一つ変えない浮竹が熱があるなんて、友達は誰も気づかない。
何かいって、抜け出そうか迷っていたところを、京楽に見破られて肩の上だ。
横抱きにされることもあるが、今日は肩の上だった。
女生徒が数人いたせいだ。
男子生徒だけなら、横抱きにしている。
そんな細かな配慮が、浮竹の心を揺さぶる。
「寮の部屋に戻るよ」
「待ってくれ、まだ授業が・・・・・」
「こんなに熱だして、授業の内容が頭に入るとでも思っているの?」
「それは・・・・でも、昼に解熱剤は飲んだから」
「安静にしてなきゃ、効果も薄いでしょ」
どんどん教室を遠ざかっていく。
「荷物が・・・・・」
「僕が後で届けるから」
「宿題が・・・・・」
「僕がやっといてあげるから」
「医務室は?」
「今日はベッドがいっぱいなの。だから、寮の自室」
最近風邪が流行っていて、他に発熱や悪寒を訴える生徒で、医務室のベッドは埋まっていた。
寮の自室にくると、どさりと少し乱暴気味に落とされた。
「あのね、君さ」
「分かっている。なぜ我慢するんだ、だろ?」
「浮竹・・・・・・」
京楽が、浮竹の頭を撫でた。
「俺は、あまり病弱だと思われなくないんだ。ただの強がりかもしれないが、みんなの輪に普通に混じっていたい。ただそれだけなんだ・・・・・・」
「肺の病で、吐血してもかい?」
「その時は、流石に大人しくするが・・・・少しくらいの発熱なら、慣れてるから」
「でも悪化させてしまうでしょ?」
京楽の言う通りだった。
熱があるのに無理をして授業をうけた次の日は、高熱をだして数日寝込む。
それを知っているから、浮竹を攫うように教室から連れ出したのだ。
「君は、頑張り過ぎなの。体が疲れたってサインを出したら、素直に休みなさい」
すでに、浮竹のはったテープの内側にいる。
「じゃあ、僕は戻るから・・・・・」
その手を、浮竹が掴んだ。
「傍にいてくれないか」
京楽は目を見開く。黒曜石の瞳いっぱいに、翡翠の瞳が映っていた。
京楽は、浮竹を抱き締めた。いつもは嫌がる浮竹が大人しい。その頭を撫でて、ベッドに横たえてから、唇に振れるだけのキスをした。
そして、水でしぼったタオルを浮竹の額に乗せて、浮竹が眠るまでずっと傍にいた。
「起きたかい?」
「今何時だ?」
「夜の8時」
「食堂しまってるじゃないか!夕飯食べ損ねた・・・・」
おなかがぐーっとなった。
それに苦笑して、京楽は買ってきたお弁当を見せた。
「熱ちゃんと下がってるみたいだね。お弁当食べれそうかい?」
唐揚げ弁当だった。
「食べる。その前に・・・・・」
「どうしたの?」
「ありがとう。傍にいてくれて」
その言葉に、どういたしましてと答えれば好印象になるのだが、京楽はだらしない顔をして浮竹の頭を撫でた。
「かわいい浮竹がいっぱい見れたから、僕は満足だよ。珍しく、酒なしで甘えてくれたし」
でれでれしていた。
「はぁ・・・・・・」
こんな京楽だから、付き合うというふんぎりがつかないだろうなと、浮竹は思うのだった。
友達以上、恋人未満。
その関係は、当分の間続きそうだった。
PR
- トラックバックURLはこちら