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院生時代の部屋6

今日は祝日だ。

授業がなくて、他にすることもなくて浮竹はだらだらしていた。

課題は全て片付けた。予習と復習も済んだ。

することがなくて、ベッドでゴロゴロ転がっていた。文字通り、転がるのだ。ベッドから落ちそうな危ういラインまで転がると、反対方向に転がった。

浮竹が、意味もなくその行動をするのを、京楽が見ていた。

「かわいい・・・・・・・」

こんなかわいい生き物、僕は知らない。

「浮竹、暇なら僕と愛を築こう!」

そう言ってきた、京楽の顔を裸足で蹴った。

「おぶ・・・・」

もろに入って、京楽は鼻血を出して倒れた。、

「・・・・・・・実験でもするか」

京楽を実験台に、習ったばかりの回道を試してみる。京楽の鼻血がより一層出てきた。

「細胞を活性化させ、自己治癒能力を・・・・・・」

高めれば高めるだけ、京楽は鼻血をだした。

「京楽、どうなってるんだお前?」

回道で、意識のはざまを彷徨っていた京楽は、誘ってくる浮竹の夢を見て鼻血を出した。浮竹が回道を施すほどに、夢の中の浮竹は乱れて喘いで。

「やめた」

板張りの床が、鼻血の海になりそうだ。

浮竹は、京楽を放置して食堂に昼食を食べに出かけた。

今日は昼から焼肉定食だった。少し食べただけで胸やけを覚え、この残りどうしようと思っているところ、鼻血を出して倒れていたはずの京楽がやってきた。

「お前、なんで俺が食堂にいるってわかったんだ」

「浮竹の匂いがしたから」

アウトー。

浮竹は、京楽の足を蹴った。

「あいた!いや、嘘じゃないよ?君の甘い花の香をたどってきたんだ」

浮竹は、自分の匂いを嗅いでみる。確かに、甘い花の香がした。

それは、浮竹がまだ赤子の時に、両親が花の神に捧げたからだ。病弱な我が子が、少しでも長生きしますようにと。
愛され祝福を受けるようになってから、甘い花の香を肌や髪からにおわせるようになっていた。

「京楽、この残り食ってくれ」

「ええ。これだけしか食べてないの?」

「昼から焼肉定食とか、ちょっと拷問ぽい」

浮竹は、食が細い。元々細いのに、あまり食べないから筋肉もつかないのだ。脂肪など、あるのかさえ疑わしい。

京楽は、浮竹の残した焼肉定食を食べた。

上流貴族の京楽が、残飯係と知れたら、皆不思議な顔をするだろう。

廓で派手に女遊びをして、花魁を買うような京楽が、御馳走ではなく、浮竹の食べ残しを食べるのだ。それはもう、学院に入って友人になった頃からの関係であった。

浮竹は、食事を残すがそれがとても嫌なのだ。せっかく作ってくれた人に悪くて。食堂は安いっけどボリュームがって、そのボリュームの多さに浮竹は辟易となっていた。

でも、浮竹のような下級貴族の身分では、他に食事をできる場所がない。

飲み屋や料亭にいくこともあるが、全部京楽のおごりだった。

「ちょっと待ってて」

京楽は、浮竹の食べ残しを全部食べると、厨房で何かをもらってきた。

「ほら、桃をカットしたやつ。これなら、喉を通るでしょ?」

氷水でよく冷やされていた桃は、おいしかった。もっと食べたいという顔をしていると、また厨房のほうにいって、桃をもってきてくれた。

「僕がむいてあげるから・・・・・」

向かれている桃の、果汁が落ちるのがもったいなくて舐めとると、京楽がごくりと喉をならした。

「なんだ?」

「いや、エロいなと思って・・・あいた!」

机の下の足を蹴ると、京楽はカットした桃を浮竹の口元にもっていった。

パクリと食べると、京楽は嬉しそうだった。

「君のために買っておいてもらってよかったよ」

「まさか。お前の金で?」

「そうだよ」

あっけらかんとする京楽に、浮竹はこの上流貴族のぼんぼんめと思う。

金使いの粗さを、一度たしなめないといけないかもしれない。

でも、デザート類がほとんどでない食堂で、甘い果物を口にできるのは嬉しかった。

親友以上恋人未満。

その危うい関係が、今は心地よい。

求められるわけでも、求めるのでもなく。

ただ、傍にいるだけ。

京楽から桃を与えられた浮竹は、ぺろりと果樹にまみれた唇を舐めた。

「・・・・・・・・・」

「なんだ?」

「勃起した」

「死ね!」

浮竹は、京楽の鳩尾に蹴りを入れた。京楽はしばらく痛がっていたが、反応してしまったあれを抜きに、寮の部屋の風呂に入るのであった。




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