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青春白書5

「どうしたんだ、ルキア。最近機嫌がよさそうだな」

朝食のテーブルについた恋次とルキアと冬獅郎。

「そ、そんなことはない」

ルキアは必死で首を振る。

「なんか・・・かわいくなった」

恋次の一言で、ルキアはぱっと顔をあげた。周囲に花が咲いている。

隣にいる冬獅郎はこういうことに疎いが、流石のルキアの反応は率直すぎてすぐに気づいた。ルキアは恋次を友人や家族としてではなく、異性として慕っている、恋をしているのだと。

それを恋次に教えるような冬獅郎ではない。ルキアはそんなことは望まないだろう、この友は。

ルキアは、思考の半分も行動もどこか男性のものに似ているけど、明らかに少女だ。疎い冬獅郎の目から見ても分かるほどに、恋次に恋をしている。

でも、恋次は鈍感すぎてそれに気づきもしない。

「そうだ、今日は髪くくってやるよ」

「ほ、ほんとうか?

「ああ。かわいい髪飾りもあるぞ。つけていくか?」

「ああ、つけていく」

「ルキアもせっかく美人なんだ。もっとおしゃれに気を使った方せいいぜ」

「そうか?」

ルキアは、別に自分の容姿なんてどうでもいいと思っている。ただ、誰の目をもひく美しさを与えられた。それだけだ。おしゃれしようなんて、思ったことはない。

自分のことに疎い恋次であったが、一護とルキアの仲には気づいていた。

一護に尋ねてはいないが、泊まりにくると二人は何か秘密を共有しあっているように見えた。ルキアの口から一護の話題が増えた。

恋次が話す一護の過去を熱心に聴いている。ああ、こいつは一護に恋をしているんだなと思った。一護になら、ルキアのことは任せられると思った。きっと、大切にしてくれる。

一護の過去はしっている。同じような傷を持つ二人は、きっと惹かれあうのだろう。

携帯で話しているようだし、メールのやりとりもしているようだ。教師と生徒いう障害はあるが、二人ならそれさえも取り除けると恋次は思った。

恋次は、ルキアの髪を綺麗にポニーテールにすると、硝子細工でできたかわいい髪飾りを留める。

自分の彼女にあげようと思って買ったものだが、ルキアにあげよう。

かわいく女の子になっていくルキアfを見るのも、恋次は好きだった。
そのまま、上機嫌でルキアと恋次と冬獅郎は、学校に出かけてしまった。

朝の3時間目。いつもルキアがくる時間。

ちょっとした問題児であるルキアが、一護の保健室に通い、心のケアをしていると教師の間では広まっていた。一護は担任の教師にまでルキアをお願いしますといわれたほどに信頼されていた。

ルキアが倒れたり、発作のように暴れるのは、教師一同皆知っていた。それがルキアの過去の、精神的なものからくるものだということも。

恋次が教師側にあらかた話し、理解と納得を促したのだ。

最近のルキアはとても落ち着いていて、何より生きている耀きに溢れていた。

3時間目、いつもはルキアが来る時間なのに、今日はこなかった。
まぁそんな日もあるだろうと、一護は普通に過ごしていた。
一護が呼び出された。

呼び出された先は、生徒指導室。

ルキアから事情を聞いてほしいとのことだった。他の教師には何も話さないのだと。一護になら話すだろうと他の教師が一護を呼び出したのだ。

生徒指導室に入ると、ルキアは黙って俯いていた。

手に、粉々に砕け散った髪飾りを握り締めていた。

なんでも、隣クラスの優等生で名高い女生徒といさかいをおこしたらしい。ただのケンカかと教師らは思ったが、ルキアが女生徒を拳でなぐりつけ、女生徒は鼻血を出して泣き出した。

優等生の生徒とルキアの接点は、周囲から見ると友人という位置にあったらしい。何度か同じ場所にいたり、会話をしているところを目撃されているし、ルキアは女生徒の友人にノートを見せているのだという。

優等生同志で友情を築くことはよいことだと、教師たちは思っていた。ルキアに同性の友人はクラスにいないので、よい友人になってくれると期待さえされていた。

その友人をよりによって拳で殴りつけた。周囲が必死で止めるまで、ルキアは暴れて女生徒にものを投げつけたりしていたという。

女生徒は念のため病院にいっている。
鼻血が止まらなかったのだ。

「なぁ。なんで・・・・」

二人だけにされた生徒指導室で、キッと、ルキアは一護を睨みつけたかと思うと開口一番にこう言った。

「私は謝罪しないぞ。何があっても謝罪しないからな」

「どうしたんだ、暴力なんてお前らしくもない」

ルキアは、発作的に暴れることはあっても、他人に暴力を振るったことは今までなかった。

「あの女が悪いからだ」

「あの子にいじめられいたのか?」

ルキアは、無言で俯く。

「いじめられてるなら、なんで相談を・・・」

「あやつは恋次の親戚なのだ!私が恋次に恋しているの知ってる。いうこと聞かないなら、恋次にばらすと・・・・・!」

「脅されてたのか」

いじめではあちがちなパターンだ。

「どうってことなかった。ただ、ノート見せろとかそれくらいだったから。金を要求してきたこともあったけが、つっぱねた。私が発作的に暴れると困るんで、相手もそれ以上はいってことなかった。かわりにノートとったり、宿題をするくらいなんの苦痛でもなかった。実際に、嫌がらせしてくるのはあの女のグループじゃなかったし」

「他にいるのか・・・」

一護は、ルキアの手をとる。

「破片が指につきささってるぞ。捨てないと」

「嫌だ」

手からは血が滲んでいた。大切な髪飾り。大好きな恋次がくれたもの。

「これ、あの子が壊したのか?」

「そうだ」

「はじめて髪飾りをしていった。そしたらあの女に呼び出されて、取り上げられた。取り返そうと必死になったら、あの女、これ地面にたたきつけたのだ。だから殴った」

「理由はなんであれ、人に暴力を振るうのはよくねぇ」

「じゃあ!じゃあどうすればよかったというのだ!恋次から、恋次からもらった大事なものなのだ!恋次がかわいいっていってくれたのだ。似合うと。今までいろんなものもらってきたが、こういうの興味ないからいらないと断っていた。はじめてもらったのだ、髪飾りを。髪だって、長いほうがスキだって恋次が言ってたからずっと伸ばしてる!・・・恋次が笑顔でつけてくれて、似合ってるかわいいと言ってくれたのだ!!」

ルキアは破片を握り締めたまま、震えていた。

一護はルキア抱きしめた。

「守ってやれなくてごめんな」

「・・・・・・う、うわあああああ」

ルキアは、一護の背中にしがみついて泣き出した。

結局、この事件は二人のただのケンカとして処理された。女生徒の傷は大したものでもなく、ルキアをいじめているとばれることを怖がって、女生徒は自分が友人であるルキアとケンカしただけなのだと言い出したのだ。

ルキアを保健室に連れて行き、破片のささった手を治療する。

「恋次に謝らなければならぬ。怒るであろうか?」

「大丈夫、許してくれるさ」

「ああ・・・・・」

恋次が迎えにきた。
そのまま、授業時間も全て終わって、ルキアは恋次と一緒に下校した。

割れた硝子細工の髪飾りの破片を、ルキアは大切にハンカチで包んで持って返った。

「恋次の奴、愛されてるなぁ」

一護は、軽い嫉妬心を覚えるくらいだった。

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