魔王と勇者8
魔王浮竹と勇者京楽は、魔王城を出て三泊四日の温泉旅行にきていた。
枯渇したと思われていた温泉を、浮竹が魔王の力で地脈を活性化させて、再び温泉がでるようにしてくれた。
魔王領土の中の温泉街なので、浮竹の庇護下にある。
温泉が枯れたと泣きつかれて、浮竹もこのままでは街が寂れてしまうと、魔王の力を使った。普段は、魔王の力は使わない。強大すぎるからだ。
温泉が再びでるようになった温泉街は、以前の活気を取り戻していた。
浮竹はお礼にと、三泊四日のお泊り券をただでもらった。
京楽を誘って、温泉街で一番大きく、お値段の高い宿に泊まることになった。
しかもスィートルーム。
無駄に広く、洋風と和風の部屋が混在していた。
京楽は和風を好んだが、浮竹は洋風も好きだった。
豪華な夕飯を終えて、早速露天風呂に入ろうとする。
「この宿の温泉は、肩こりと腰痛に効果があるんだ。最近書類仕事で肩が凝ってるから、ちょうどいい」
「浮竹ってば、魔王はただいるだけでいいのに、書類仕事したり、領土内を視察したり真面目すぎるんだよ」
京楽はそういうが、たとえクジであれ魔王になったのだから、浮竹は魔王らしくあろうとした。
普通の魔王は人間を虐げ、戦争を起こし、血と肉と色を好む。
だが、魔王浮竹は畑を耕して、牛や豚、鶏といった家畜を飼育する平和主義者。
ちなみに、ペット同伴可能なので、兵士であるタロー&ジローも連れてきた。タロー&ジローは、犬専用の温泉で、浮竹に犬用シャンプーで体を洗ってもらったあと、湯船ではしゃぎまわっていた。
さて、浮竹と京楽が露天風呂に入っていると、見知った姿があった。
ハゲの年若い少年と、銀髪の少年、そして「ハラガヘッタ」とうるさい青年と、獣人。
「あれ、君ら新勇者パーティーじゃない。奇遇だねぇ」
「ななななな、なぜ魔王と勇者がこんな高価な温泉宿に!」
ツルピカな頭を光に煌めかせて、新勇者はザバっと、湯から立ち上がり、脱衣所においてあった人造聖剣エクスカリバーを持ち出してきた。
「ここであったが百年目、退治してくれる!」
「ウォーターボール」
浮竹が、水の魔法で温泉の湯を新勇者の顔にかぶせた。
「ゴボゴボゴボ・・・・ガボガボ!!!」
新勇者は苦しそうにしていた。
そして、湯を飲み干した。
「げほっげほっ!殺す気か!この魔王め!」
「宿とはいえ、公共の温泉で聖剣をふりまわしてはいけないぞ」
浮竹は、にっこりと笑った。
おぼれ死ぬ前に魔法を解こうと思っていたのに、新勇者は温泉の湯を飲んだ。
「ああ、そういえばこの温泉の湯は腹を下すから飲んではだめなんじゃ・・・・・」
京楽の言葉に、新勇者が叫ぶ。
「おのれ、魔王浮竹、わざと俺に温泉の湯を飲ませたな!?」
効き目は速攻なのか、ピーグルルルルと、新勇者の腹が鳴った。
「ぬおおおおおお、トイレえええええええ!!」
新勇者は、浴衣を適当に羽織って、トイレに閉じこもってしまった。
「くすっ・・・・・真水ぶっかけちゃえ」
新勇者の仲間の少年魔法使いが、トイレの上からウォーターボールの魔法を何度も弾けさせて、新勇者は水まみれになった。
「おのれ、魔王浮竹め!後で覚えていろ!」
浮竹も京楽も、その場にいなかった。
腹を下した新勇者を無視して、浮竹も京楽も、思う存分露天風呂に浸かって、日頃の疲れを癒していた。
やがて、温泉からあがって浴衣姿になると、びしょ濡れの新勇者が二人の通ろうとする道を塞いだ。
「わざと腹を下させたあげくに、トイレでウォーターボールの魔法で俺を水びたしにしやがって!」
「いや、湯を飲んだのはお前の勝手であって、あと新勇者がトイレにとじこもってた間、俺たちはずっと露天風呂にいたぞ。途中で、少年魔法使いが、顔をにやけさせながら出て行ったけど」
「なにい!少年魔法使い・・・・・あいつのせいだというのか!」
「さぁ?」
京楽はどうでもよさげに、聖剣エクスカリバーで、鞘ごと新勇者の頭を殴った。
ゴーンといい音をたてて、新勇者は伸びた。
「女風呂にでも捨ててこよう」
「京楽、女性に迷惑をかけてはいけないぞ」
「いや、まぁいろいろ面白そうじゃない。ちょっといってくる」
京楽は魔法で体を透けさせて、新勇者の首根っこを掴むと、ずるずると女湯の中に新勇者をぶちこんだ。
「がぼぼぼぼぼぼ・・・・・なんだ!?」
新勇者は、気を失っていたが、呼吸ができなくて起き上がった。
「きゃああああああああ!!」
女湯に浸かっていたのは一人だけだった。
新勇者パーティーの女僧侶だった。
「この新勇者の変態!すけべ、チカン!」
女僧侶は、僧侶にしては鍛え上げられた肉体で、新勇者をぼっこぼこにした。
「びでぶ、あべし!ご、誤解だ!きっと魔王浮竹の罠だ!」
「魔王がこの温泉にきているの!?」
「ああそうだ。ガボボッボボ。湯に沈めるな!」
女僧侶はバスタオルを体にまいて、湯から出た。新勇者も一緒になって湯を出る。
バスタオルで体をふいて、新しい浴衣に着替えると、女僧侶がバスタオル姿のままじとっとこっちを見ていた。
「なんだよ!」
「ここ女風呂なのよ!さっさとでていけ、チカン!」
「チカンじゃない!」
「じゃあなんで速攻でていかないのよ!」
「別に俺はお前の貧弱な裸なんか見ても・・・・」
「死ね」
女僧侶は、にっこりと笑って、新勇者を床にめりこませた。新勇者は気絶した。
「まったく、やんなっちゃう。魔王たちもこの宿にきてるのかー」
新勇者をけしかけてもいいが、やられるだけだろうな。
そう思いながらも、浴衣に着替えて、気絶した新勇者をずるずると引きずっていく。
女僧侶は、色仕掛けで攻めてみることにした。
浮竹と京楽が泊まっているスィートルームに侵入すると、浴衣を乱れさせて、浮竹にしなだれかかった。
「ねぇ、魔王様。私と、いいこと、し・な・い?」
「こら、服をちゃんと着なさい!」
浮竹は赤くなって、女僧侶を押しやる。
「ねぇ、勇者様、私と、いいこと、し・な・い?」
「乳臭い小娘に興味はないねぇ。僕は浮竹にしか反応しないから」
「乳臭いですって!キイイイイイ!」
持っていた暗器をとりあげられて、女僧侶はロープでぐるぐる巻きにされた。
ビタンバタンと、エビのようにはねる。
京楽は女僧侶を抱えて、新勇者パーティーの部屋にくると、彼女を布団の上において、簀巻きにした。
「ちょっと、何するのよ!」
「あーあ、女僧侶、何失敗してるんだよ。元暗殺者のくせに」
「うるさいわね、魔法使い!」
少年魔法使いと女僧侶は喧嘩をしだした。
青年戦士はひたすらせんべいをかじっていた。獣人盗賊の姿は見えない。
新勇者は、僅かに残っていたエリクサーを頭に塗って、成長促進の魔法を自分の頭部かけていた。
「君はさ、はげのほうがいいよ?」
わずかに生えてきた毛を、京楽がファイアーボールで毛根ごと死滅させた。
「うわあああああああああん!!!王様に訴えてやる!!!」
新勇者は、泣きながら露天風呂のほうに逃げていった。
「次に僕らの部屋にきたら、新勇者みたいに毛根が死滅すると思ってね?」
にっこりと微笑む京楽が怖くて、みんな手を出せないでいた。
「京楽、あまり怖がらせてやるな」
浮竹まで、ついてきていた。
「この温泉旅行は、前々から楽しみにしていたんだ。邪魔はしないでくれ。以上だ」
簡潔に話す浮竹と手を握りあいながら、京楽は去っていった。
「魔王と勇者って、やっぱできてるよな」
「できてるな」
「二人ともいい男なのに、もったいないわね・・・・・」
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さて、露店風呂で新勇者は、これまた隠しもっていたエリクサーの残りで、毛根を死滅から再生させようとしていた。
そこに、少年魔法使いがやってくる。
「ファイア」
短く唱えて、新勇者の頭を燃やす。
「少年魔法使い、てめぇ!」
「隠し持っていたエリクサーは全部売ったからな。それで最後だ。もう、お前の髪が生えてくることはない!」
「ううう・・・・・・うわあああああああああん!仲間にまで裏切られたああああああ!!」
新勇者は、泣きながら宿を一人後にして、王様に直談判した。
ツルッパゲになった新勇者に、王様は東洋の毛生え薬をくれた。
効き目は定かではないが、新勇者は髪が生えてくるのを楽しみにしていた。
他のパーティーとは、結局LVが高いのでパーティー解散は認められなかった。
一週間後、結局毛は生えてこなくて、ピンク色のアフロのかつらをかぶった新勇者とそのパーティーが、性懲りもなく、魔王城に魔王を倒しにやってくるのだった。
枯渇したと思われていた温泉を、浮竹が魔王の力で地脈を活性化させて、再び温泉がでるようにしてくれた。
魔王領土の中の温泉街なので、浮竹の庇護下にある。
温泉が枯れたと泣きつかれて、浮竹もこのままでは街が寂れてしまうと、魔王の力を使った。普段は、魔王の力は使わない。強大すぎるからだ。
温泉が再びでるようになった温泉街は、以前の活気を取り戻していた。
浮竹はお礼にと、三泊四日のお泊り券をただでもらった。
京楽を誘って、温泉街で一番大きく、お値段の高い宿に泊まることになった。
しかもスィートルーム。
無駄に広く、洋風と和風の部屋が混在していた。
京楽は和風を好んだが、浮竹は洋風も好きだった。
豪華な夕飯を終えて、早速露天風呂に入ろうとする。
「この宿の温泉は、肩こりと腰痛に効果があるんだ。最近書類仕事で肩が凝ってるから、ちょうどいい」
「浮竹ってば、魔王はただいるだけでいいのに、書類仕事したり、領土内を視察したり真面目すぎるんだよ」
京楽はそういうが、たとえクジであれ魔王になったのだから、浮竹は魔王らしくあろうとした。
普通の魔王は人間を虐げ、戦争を起こし、血と肉と色を好む。
だが、魔王浮竹は畑を耕して、牛や豚、鶏といった家畜を飼育する平和主義者。
ちなみに、ペット同伴可能なので、兵士であるタロー&ジローも連れてきた。タロー&ジローは、犬専用の温泉で、浮竹に犬用シャンプーで体を洗ってもらったあと、湯船ではしゃぎまわっていた。
さて、浮竹と京楽が露天風呂に入っていると、見知った姿があった。
ハゲの年若い少年と、銀髪の少年、そして「ハラガヘッタ」とうるさい青年と、獣人。
「あれ、君ら新勇者パーティーじゃない。奇遇だねぇ」
「ななななな、なぜ魔王と勇者がこんな高価な温泉宿に!」
ツルピカな頭を光に煌めかせて、新勇者はザバっと、湯から立ち上がり、脱衣所においてあった人造聖剣エクスカリバーを持ち出してきた。
「ここであったが百年目、退治してくれる!」
「ウォーターボール」
浮竹が、水の魔法で温泉の湯を新勇者の顔にかぶせた。
「ゴボゴボゴボ・・・・ガボガボ!!!」
新勇者は苦しそうにしていた。
そして、湯を飲み干した。
「げほっげほっ!殺す気か!この魔王め!」
「宿とはいえ、公共の温泉で聖剣をふりまわしてはいけないぞ」
浮竹は、にっこりと笑った。
おぼれ死ぬ前に魔法を解こうと思っていたのに、新勇者は温泉の湯を飲んだ。
「ああ、そういえばこの温泉の湯は腹を下すから飲んではだめなんじゃ・・・・・」
京楽の言葉に、新勇者が叫ぶ。
「おのれ、魔王浮竹、わざと俺に温泉の湯を飲ませたな!?」
効き目は速攻なのか、ピーグルルルルと、新勇者の腹が鳴った。
「ぬおおおおおお、トイレえええええええ!!」
新勇者は、浴衣を適当に羽織って、トイレに閉じこもってしまった。
「くすっ・・・・・真水ぶっかけちゃえ」
新勇者の仲間の少年魔法使いが、トイレの上からウォーターボールの魔法を何度も弾けさせて、新勇者は水まみれになった。
「おのれ、魔王浮竹め!後で覚えていろ!」
浮竹も京楽も、その場にいなかった。
腹を下した新勇者を無視して、浮竹も京楽も、思う存分露天風呂に浸かって、日頃の疲れを癒していた。
やがて、温泉からあがって浴衣姿になると、びしょ濡れの新勇者が二人の通ろうとする道を塞いだ。
「わざと腹を下させたあげくに、トイレでウォーターボールの魔法で俺を水びたしにしやがって!」
「いや、湯を飲んだのはお前の勝手であって、あと新勇者がトイレにとじこもってた間、俺たちはずっと露天風呂にいたぞ。途中で、少年魔法使いが、顔をにやけさせながら出て行ったけど」
「なにい!少年魔法使い・・・・・あいつのせいだというのか!」
「さぁ?」
京楽はどうでもよさげに、聖剣エクスカリバーで、鞘ごと新勇者の頭を殴った。
ゴーンといい音をたてて、新勇者は伸びた。
「女風呂にでも捨ててこよう」
「京楽、女性に迷惑をかけてはいけないぞ」
「いや、まぁいろいろ面白そうじゃない。ちょっといってくる」
京楽は魔法で体を透けさせて、新勇者の首根っこを掴むと、ずるずると女湯の中に新勇者をぶちこんだ。
「がぼぼぼぼぼぼ・・・・・なんだ!?」
新勇者は、気を失っていたが、呼吸ができなくて起き上がった。
「きゃああああああああ!!」
女湯に浸かっていたのは一人だけだった。
新勇者パーティーの女僧侶だった。
「この新勇者の変態!すけべ、チカン!」
女僧侶は、僧侶にしては鍛え上げられた肉体で、新勇者をぼっこぼこにした。
「びでぶ、あべし!ご、誤解だ!きっと魔王浮竹の罠だ!」
「魔王がこの温泉にきているの!?」
「ああそうだ。ガボボッボボ。湯に沈めるな!」
女僧侶はバスタオルを体にまいて、湯から出た。新勇者も一緒になって湯を出る。
バスタオルで体をふいて、新しい浴衣に着替えると、女僧侶がバスタオル姿のままじとっとこっちを見ていた。
「なんだよ!」
「ここ女風呂なのよ!さっさとでていけ、チカン!」
「チカンじゃない!」
「じゃあなんで速攻でていかないのよ!」
「別に俺はお前の貧弱な裸なんか見ても・・・・」
「死ね」
女僧侶は、にっこりと笑って、新勇者を床にめりこませた。新勇者は気絶した。
「まったく、やんなっちゃう。魔王たちもこの宿にきてるのかー」
新勇者をけしかけてもいいが、やられるだけだろうな。
そう思いながらも、浴衣に着替えて、気絶した新勇者をずるずると引きずっていく。
女僧侶は、色仕掛けで攻めてみることにした。
浮竹と京楽が泊まっているスィートルームに侵入すると、浴衣を乱れさせて、浮竹にしなだれかかった。
「ねぇ、魔王様。私と、いいこと、し・な・い?」
「こら、服をちゃんと着なさい!」
浮竹は赤くなって、女僧侶を押しやる。
「ねぇ、勇者様、私と、いいこと、し・な・い?」
「乳臭い小娘に興味はないねぇ。僕は浮竹にしか反応しないから」
「乳臭いですって!キイイイイイ!」
持っていた暗器をとりあげられて、女僧侶はロープでぐるぐる巻きにされた。
ビタンバタンと、エビのようにはねる。
京楽は女僧侶を抱えて、新勇者パーティーの部屋にくると、彼女を布団の上において、簀巻きにした。
「ちょっと、何するのよ!」
「あーあ、女僧侶、何失敗してるんだよ。元暗殺者のくせに」
「うるさいわね、魔法使い!」
少年魔法使いと女僧侶は喧嘩をしだした。
青年戦士はひたすらせんべいをかじっていた。獣人盗賊の姿は見えない。
新勇者は、僅かに残っていたエリクサーを頭に塗って、成長促進の魔法を自分の頭部かけていた。
「君はさ、はげのほうがいいよ?」
わずかに生えてきた毛を、京楽がファイアーボールで毛根ごと死滅させた。
「うわあああああああああん!!!王様に訴えてやる!!!」
新勇者は、泣きながら露天風呂のほうに逃げていった。
「次に僕らの部屋にきたら、新勇者みたいに毛根が死滅すると思ってね?」
にっこりと微笑む京楽が怖くて、みんな手を出せないでいた。
「京楽、あまり怖がらせてやるな」
浮竹まで、ついてきていた。
「この温泉旅行は、前々から楽しみにしていたんだ。邪魔はしないでくれ。以上だ」
簡潔に話す浮竹と手を握りあいながら、京楽は去っていった。
「魔王と勇者って、やっぱできてるよな」
「できてるな」
「二人ともいい男なのに、もったいないわね・・・・・」
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さて、露店風呂で新勇者は、これまた隠しもっていたエリクサーの残りで、毛根を死滅から再生させようとしていた。
そこに、少年魔法使いがやってくる。
「ファイア」
短く唱えて、新勇者の頭を燃やす。
「少年魔法使い、てめぇ!」
「隠し持っていたエリクサーは全部売ったからな。それで最後だ。もう、お前の髪が生えてくることはない!」
「ううう・・・・・・うわあああああああああん!仲間にまで裏切られたああああああ!!」
新勇者は、泣きながら宿を一人後にして、王様に直談判した。
ツルッパゲになった新勇者に、王様は東洋の毛生え薬をくれた。
効き目は定かではないが、新勇者は髪が生えてくるのを楽しみにしていた。
他のパーティーとは、結局LVが高いのでパーティー解散は認められなかった。
一週間後、結局毛は生えてこなくて、ピンク色のアフロのかつらをかぶった新勇者とそのパーティーが、性懲りもなく、魔王城に魔王を倒しにやってくるのだった。
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