19話補完小説
一護は、浦原に連絡を入れていた。
「そんなワケだからそっちの着くの、もうちょい時間かかると思う」
帰りは徒歩、瞬歩で一週間かかれるといわれて、一護は焦った。もう、滅却師たちが攻めてきて3時間経っていると知って、焦りはやがて絶対に救って見せるという想いに変わった。
「なるほど、分かりました、お気をつけて」
「・・・・・なぁ、浦原さん」
「何スか?」
「生意気な言い方に聞こえるかもしれないけど・・・・そっちの戦い、もし危なくなっても、俺が行くまでもたせてくれ。俺が必ずなんとかする」
一護は、霊圧を高めて飛翔するスピードを高める。
「分かりました待ってますよ、黒崎サン」
浦原はそう言って、伝令神機を切った。
「浦原さん、むこうの状況何も言わなかった・・・・・急ぐか」
さらにスピードをあげる。
みんな、待っててくれ。
絶対に、救ってみせる。倒してみせる。
-------------------------------------
石田雨竜は、ユーハバッハの血を飲んだ。
敗者となったツァン・トゥたちの処刑が行われた。
「陛下は、全ての滅却師と繋がっておられる。お前は既に刻まれている。陛下の血杯を仰いだだろう。陛下の一部を身体に取り込むそれが刻印の儀式だ」
ハッシュヴァルトは、静かに答えた。
「陛下の魂を与えられた者は、全て死ねばその力を陛下に吸収される。還りゆくのだ」
「・・・・・・・・」
雨竜は、言葉もなく処刑されていった二人の、滅却師の亡骸を見た。
担架に乗せられて、処分場へと運ばれていく。
雨竜は、ユーハバッハの血を取り入れた。
すなわち、自分が死ねばその力はユーハバッハの元へ行くのだ。
(そんな仕組みになっていたとは・・・・・)
涼しい顔でいるが、内心は煮えたぎっていた。
すでに因子はばらまかれている。死神ですら、死ねばユーハバッハの力となるのだ。
(黒崎・・・・僕は・・・・・・)
「私もお前も、文字通り陛下の為に生き、陛下の為に死ぬのだ」
(------------そんなの、まっぴらごめんだ)
気づかれないように、ギリッと唇を噛んだ。
-----------------------------------
「僕は寂しい。僕の千本桜は何処?」
ぬっと現れた異形が、ルキアに影を作る。
「そうか・・・・貴様が兄様の卍解を奪った、エス・ノト」
ルキアは、袖白雪に手をかけた。
「君を知っている。朽木白哉の妹、朽木ルキア。朽木白哉はどこ?」
「貴様に答える義理はない」
ルキアは斬魄刀を抜き放った。
「君を殺せば、此処へくるかな?」
「そうかも知れぬな!」
何かが飛来してくる。それを避けて、氷で盾を作った。
「無駄だよ、恐怖は氷じゃ防げない」
ルキアの右手に、飛来してきた物体はあたった。
「あはっ、あはっ・・・・動けないね?仕方がない、それが恐怖。恐怖とはそういうものだよ」
じわりと、体に染み込むものがあった。
「これが恐怖・・・・」
「そうだ」
「ならば、貴様の恐怖とはなんだ?」
「何?」
「恐怖が通じぬことが、貴様にとって恐怖か?」
「恐怖が通じない?そんな訳は無い」
「見ろ。そして恐怖しろ。これが本当の袖白雪だ」
氷を、大気を凍てつかせる。
「恐怖が通じない訳など無いのだ。お前に命がある限り」
ルキアは、袖白雪を構える。
「ああ。だから、私に恐怖は通じぬのだ。わからぬか。今の私には、命がないと言っているのだ」
キィィィン。
大気が凍てついた音を立てる。
「どういうことだ?」
エス・ノトは無機質に尋ねた。
「袖白雪は、切っ先から凍気を発する刀ではなかった。所有者自身の肉体を氷点下以下にする斬魄刀だ。触れるもの皆凍りつく。刀身は、氷結範囲を拡げるための腕にすぎぬ」
「ふざけたことを言うな。生きていられるはずがない」
「そうだ。今の私は死んでいる。私は自らの霊子を制御することで、一時的に肉体を殺す術を手にしたのだ。この肉体の中では、全ての分子の運動は停止する。私の肉体に染み入った恐怖も、体表で動きを止める」
「そんな馬鹿なことが・・・・」
「マイナス18度。血液が凍結する。斬り口から、血は流れない」
ルキアは、エス・ノトの肩を斬り裂いた。でも、傷口は凍り付いて血は出ない。
「くっ」
「マイナス50度。私の足に触れる地面内部の水が氷結し、氷震を起こす」
ルキアは、たんと、地面を蹴った。
「マイナス213.5度。絶対零度。少し急がせてもらう。この温度での私の活動限界は4秒だ」
エス・ノトを氷結させる。
エス・ノトは氷像となった。
徐々に、体温をあげていく。
僅かに4秒をこえてしまったらしく、指に傷ができた。
(恐怖・・・・・こんなものが、恐怖か)
エス・ノトは、氷結していく自分の体を他人事のように感じていた。
(違う。僕の恐怖は、陛下に叱られる事だけ・・・)
「それに比べれば、戦いなんかに恐怖も苦痛も感じない!」
エス・ノトは姿を変えた。
「神の怯え(タタルフォラス)」
ルキアは、地面を蹴って、エス・ノトを斬ろうとした。
でも、できなかった。
「無駄だよ、届かない。足が竦んでいるから」
「なんだと?」
「僕を見ているだろう?神経は停止できない。神の怯えは、視神経を通って、君に恐怖を捩じり込む」
たくさんの目に囲まれて、ルキアは目を見開いた。
恐怖に、体が支配されていく。
エス・ノトが叫んでいる。
それさえも聞こえない。
ただ、恐怖に支配される。
それが終わったのは、唐突だった。
目でできた壁を、朽木白哉が斬っていた。
「朽木白哉!」
エス・ノトは、白哉の姿をみて、ニィと笑んだ。
「よくきた。まちかねたよ」
「だめです、兄様、こやつと目を合わせては!」
「もう、遅い」
エス・ノトは笑った。
目の壁を、白哉の花びらが刃となって貫いていく。
「遅いのは、どちらだ?」
「なるほど。千本桜景厳ですでにこの周囲を包囲していたのか。いいね、やっぱりその卍解、僕が欲しかったなぁ」
「卍解?よく見るがいい。兄も一度は、私の卍解を手にしたのなら、知っている筈だ。千本桜景厳は刀の全てを刃とする卍解だ。これは始解。只の千本桜だ」
「なんだと」
「兄に卍解を奪われたことで、私は千本桜の真髄を今一度見極めることができた。礼を言うぞ、エス・ノト」
みちみちみち。
エス・ノトの体は膨れ上がり、肉が弾け出す。
「殺さない殺さない。気を失う事も気を触れる事もできぬまま、苦痛と恐怖の海に沈めて、死ねれば幸せと思いながら、永久に生き永らえさせやる」
「ルキア。此処へ降りてくる途中、ずっとお前の霊圧を感じていた。強くなったな、ルキア」
(兄様が・・・・兄様が、私を強くなったと-----------)
「恐怖とは、無から生まれるものではない。心の中の僅かな不安を侵食されて、生まれるものだ。まだ恐怖はあるか、ルキア」
白哉は、ルキアを見た。ルキアは、強く否定した。
「いいえ!」
「終わりだ、朽木白哉」
醜く膨れ上がった巨体で、白哉を引き裂こうとするが、白哉は背を向けた。
「そうか、終わりか、だが済まぬ、兄を倒すのは、私ではない」
「何?」
「よく見ろ、ルキア。奴の姿に映るのは恐怖などではない。こちらの心に恐怖が無ければ、そこに映るの奴自身の怯えだけだ」
ルキアは、卍解していた。
「卍解。 白霞罸 」
エス・ノトの巨体を凍り付かせて、エス・ノトは氷の残骸となった。
白哉とルキアの勝利であった。
白哉は、ルキアに優しく声をかける。
「ゆっくり解け、ルキア。ゆっくりだ。素晴らしい卍解だった」
美しい。尸魂界一美しいと言われる、袖白雪に相応しい、白い世界の美しい卍解だった。
「だが、難しい卍解だ。半歩の過ちで命を落とす、危うい卍解だ。心して扱え。決して逸るな。命を捨てて、振るう刃で護れるものなどないと知れ」
白哉は、ルキアの体温が平常に戻り、卍解が解かれていくのを待ち、声をあげる。
「ゆくぞ、ルキア。尸魂界を護ろう」
「はい、兄様!」
ルキアは、瞬歩で走り出す白哉の後を追う。
(兄様が、強くなったと言ってくれた。私の卍解を褒めてくださった)
ルキアは、打ち震える感動を胸に秘めて、走り出す。
かつて、白哉と溝を作っていた頃のことが、嘘のようだ。
白哉は、背中をルキアに任せてくれた。
走る、走る、走る。
一護が到着するまで、私たちの手で尸魂界を護るのだ。
「そんなワケだからそっちの着くの、もうちょい時間かかると思う」
帰りは徒歩、瞬歩で一週間かかれるといわれて、一護は焦った。もう、滅却師たちが攻めてきて3時間経っていると知って、焦りはやがて絶対に救って見せるという想いに変わった。
「なるほど、分かりました、お気をつけて」
「・・・・・なぁ、浦原さん」
「何スか?」
「生意気な言い方に聞こえるかもしれないけど・・・・そっちの戦い、もし危なくなっても、俺が行くまでもたせてくれ。俺が必ずなんとかする」
一護は、霊圧を高めて飛翔するスピードを高める。
「分かりました待ってますよ、黒崎サン」
浦原はそう言って、伝令神機を切った。
「浦原さん、むこうの状況何も言わなかった・・・・・急ぐか」
さらにスピードをあげる。
みんな、待っててくれ。
絶対に、救ってみせる。倒してみせる。
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石田雨竜は、ユーハバッハの血を飲んだ。
敗者となったツァン・トゥたちの処刑が行われた。
「陛下は、全ての滅却師と繋がっておられる。お前は既に刻まれている。陛下の血杯を仰いだだろう。陛下の一部を身体に取り込むそれが刻印の儀式だ」
ハッシュヴァルトは、静かに答えた。
「陛下の魂を与えられた者は、全て死ねばその力を陛下に吸収される。還りゆくのだ」
「・・・・・・・・」
雨竜は、言葉もなく処刑されていった二人の、滅却師の亡骸を見た。
担架に乗せられて、処分場へと運ばれていく。
雨竜は、ユーハバッハの血を取り入れた。
すなわち、自分が死ねばその力はユーハバッハの元へ行くのだ。
(そんな仕組みになっていたとは・・・・・)
涼しい顔でいるが、内心は煮えたぎっていた。
すでに因子はばらまかれている。死神ですら、死ねばユーハバッハの力となるのだ。
(黒崎・・・・僕は・・・・・・)
「私もお前も、文字通り陛下の為に生き、陛下の為に死ぬのだ」
(------------そんなの、まっぴらごめんだ)
気づかれないように、ギリッと唇を噛んだ。
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「僕は寂しい。僕の千本桜は何処?」
ぬっと現れた異形が、ルキアに影を作る。
「そうか・・・・貴様が兄様の卍解を奪った、エス・ノト」
ルキアは、袖白雪に手をかけた。
「君を知っている。朽木白哉の妹、朽木ルキア。朽木白哉はどこ?」
「貴様に答える義理はない」
ルキアは斬魄刀を抜き放った。
「君を殺せば、此処へくるかな?」
「そうかも知れぬな!」
何かが飛来してくる。それを避けて、氷で盾を作った。
「無駄だよ、恐怖は氷じゃ防げない」
ルキアの右手に、飛来してきた物体はあたった。
「あはっ、あはっ・・・・動けないね?仕方がない、それが恐怖。恐怖とはそういうものだよ」
じわりと、体に染み込むものがあった。
「これが恐怖・・・・」
「そうだ」
「ならば、貴様の恐怖とはなんだ?」
「何?」
「恐怖が通じぬことが、貴様にとって恐怖か?」
「恐怖が通じない?そんな訳は無い」
「見ろ。そして恐怖しろ。これが本当の袖白雪だ」
氷を、大気を凍てつかせる。
「恐怖が通じない訳など無いのだ。お前に命がある限り」
ルキアは、袖白雪を構える。
「ああ。だから、私に恐怖は通じぬのだ。わからぬか。今の私には、命がないと言っているのだ」
キィィィン。
大気が凍てついた音を立てる。
「どういうことだ?」
エス・ノトは無機質に尋ねた。
「袖白雪は、切っ先から凍気を発する刀ではなかった。所有者自身の肉体を氷点下以下にする斬魄刀だ。触れるもの皆凍りつく。刀身は、氷結範囲を拡げるための腕にすぎぬ」
「ふざけたことを言うな。生きていられるはずがない」
「そうだ。今の私は死んでいる。私は自らの霊子を制御することで、一時的に肉体を殺す術を手にしたのだ。この肉体の中では、全ての分子の運動は停止する。私の肉体に染み入った恐怖も、体表で動きを止める」
「そんな馬鹿なことが・・・・」
「マイナス18度。血液が凍結する。斬り口から、血は流れない」
ルキアは、エス・ノトの肩を斬り裂いた。でも、傷口は凍り付いて血は出ない。
「くっ」
「マイナス50度。私の足に触れる地面内部の水が氷結し、氷震を起こす」
ルキアは、たんと、地面を蹴った。
「マイナス213.5度。絶対零度。少し急がせてもらう。この温度での私の活動限界は4秒だ」
エス・ノトを氷結させる。
エス・ノトは氷像となった。
徐々に、体温をあげていく。
僅かに4秒をこえてしまったらしく、指に傷ができた。
(恐怖・・・・・こんなものが、恐怖か)
エス・ノトは、氷結していく自分の体を他人事のように感じていた。
(違う。僕の恐怖は、陛下に叱られる事だけ・・・)
「それに比べれば、戦いなんかに恐怖も苦痛も感じない!」
エス・ノトは姿を変えた。
「神の怯え(タタルフォラス)」
ルキアは、地面を蹴って、エス・ノトを斬ろうとした。
でも、できなかった。
「無駄だよ、届かない。足が竦んでいるから」
「なんだと?」
「僕を見ているだろう?神経は停止できない。神の怯えは、視神経を通って、君に恐怖を捩じり込む」
たくさんの目に囲まれて、ルキアは目を見開いた。
恐怖に、体が支配されていく。
エス・ノトが叫んでいる。
それさえも聞こえない。
ただ、恐怖に支配される。
それが終わったのは、唐突だった。
目でできた壁を、朽木白哉が斬っていた。
「朽木白哉!」
エス・ノトは、白哉の姿をみて、ニィと笑んだ。
「よくきた。まちかねたよ」
「だめです、兄様、こやつと目を合わせては!」
「もう、遅い」
エス・ノトは笑った。
目の壁を、白哉の花びらが刃となって貫いていく。
「遅いのは、どちらだ?」
「なるほど。千本桜景厳ですでにこの周囲を包囲していたのか。いいね、やっぱりその卍解、僕が欲しかったなぁ」
「卍解?よく見るがいい。兄も一度は、私の卍解を手にしたのなら、知っている筈だ。千本桜景厳は刀の全てを刃とする卍解だ。これは始解。只の千本桜だ」
「なんだと」
「兄に卍解を奪われたことで、私は千本桜の真髄を今一度見極めることができた。礼を言うぞ、エス・ノト」
みちみちみち。
エス・ノトの体は膨れ上がり、肉が弾け出す。
「殺さない殺さない。気を失う事も気を触れる事もできぬまま、苦痛と恐怖の海に沈めて、死ねれば幸せと思いながら、永久に生き永らえさせやる」
「ルキア。此処へ降りてくる途中、ずっとお前の霊圧を感じていた。強くなったな、ルキア」
(兄様が・・・・兄様が、私を強くなったと-----------)
「恐怖とは、無から生まれるものではない。心の中の僅かな不安を侵食されて、生まれるものだ。まだ恐怖はあるか、ルキア」
白哉は、ルキアを見た。ルキアは、強く否定した。
「いいえ!」
「終わりだ、朽木白哉」
醜く膨れ上がった巨体で、白哉を引き裂こうとするが、白哉は背を向けた。
「そうか、終わりか、だが済まぬ、兄を倒すのは、私ではない」
「何?」
「よく見ろ、ルキア。奴の姿に映るのは恐怖などではない。こちらの心に恐怖が無ければ、そこに映るの奴自身の怯えだけだ」
ルキアは、卍解していた。
「卍解。 白霞罸 」
エス・ノトの巨体を凍り付かせて、エス・ノトは氷の残骸となった。
白哉とルキアの勝利であった。
白哉は、ルキアに優しく声をかける。
「ゆっくり解け、ルキア。ゆっくりだ。素晴らしい卍解だった」
美しい。尸魂界一美しいと言われる、袖白雪に相応しい、白い世界の美しい卍解だった。
「だが、難しい卍解だ。半歩の過ちで命を落とす、危うい卍解だ。心して扱え。決して逸るな。命を捨てて、振るう刃で護れるものなどないと知れ」
白哉は、ルキアの体温が平常に戻り、卍解が解かれていくのを待ち、声をあげる。
「ゆくぞ、ルキア。尸魂界を護ろう」
「はい、兄様!」
ルキアは、瞬歩で走り出す白哉の後を追う。
(兄様が、強くなったと言ってくれた。私の卍解を褒めてくださった)
ルキアは、打ち震える感動を胸に秘めて、走り出す。
かつて、白哉と溝を作っていた頃のことが、嘘のようだ。
白哉は、背中をルキアに任せてくれた。
走る、走る、走る。
一護が到着するまで、私たちの手で尸魂界を護るのだ。
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