魔王と勇者9
魔王浮竹は、中庭で野菜の世話をしていた。
「うん、いいかんじだ」
兵士でもあるダイコーンこと大根が、よく育っていた。
「ひまだよ浮竹ー」
農作業に没頭するあまり、勇者京楽を放置していた。
「ああすまない、もう終わりにする」
京楽も農作業をする時もあるが、基本的に浮竹が中心で行っていた。
大根と人参とキャベツを収穫して、牛の乳を搾り、鶏が産んだ卵をとる。
基本自給自足である。
裏で冒険者稼業をやって、それなりにもうけていたが、慈善団体に寄付したりしているので、城の改修工事と内装の工事が終わってからというもの、金はあまりかけないようにしている。
さすがにパンは買うので、ちょっとした食品や衣服などは金で買った。
「今日の朝食はエッグトーストと、フライドポテトだ」
すでに前に収穫していたジャガイモを細かく切って、油であげた。
街で買った食パンを焼いたものに、焼いた卵をのっけた。
昔なんて、米にたくあんひときれ、めざし1匹という食事だったが、朝食からもう普通のものになっていた。
たまにローストチキンを食べたりステーキを食べたり、贅沢をするときもある。
夕飯に限るが。
「ええと、今日は朝9時から会議か・・・・・」
出席するのは、浮竹、京楽、最近雇った死んだ宰相のサイッショの代わりに雇った、サイッショの弟のサイショーだ。ちなみに、魔族だ。
魔族は寿命がちょうど千年と決まっていて、サイショーは973歳。
あと27年は生きる。
浮竹は魔王になったため、肉体はほぼ不老である。同じく勇者になった京楽も魔王の加護で不老であった。
でも不死ではない。
なので、冒険者稼業をする時、特にドラゴンなどの強いモンスターを退治する時は気をつける。
といっても、二人ともLVが500に近いので、苦戦するようなことはないが。
この世界のモンスターも人間も、LV99までで、カンストだ。
魔王とその加護に肖った者だけが、レベル限界突破の500まであげることができる。
かなりチートな能力であった。
会議は滞りなく終わり、昼になった。
昼になるまで家畜の世話をしていた浮竹は、昼寝をしていた京楽をおこして、昼食を食べた。
そして城下町を視察して、3時になったのでお茶タイムにした。
「やっぱ紅茶はアッサムだな」
「えー、僕はダージリンのほうが好きだなぁ」
「俺はカモミールが好きだ」
いつの間にか、混ざっていた新勇者を、京楽が突き飛ばす。
「何普通に混ざってるの、君」
京楽に突き飛ばされて、新勇者はまくしたてた。
「昼の1時に「たのもう!」っておしかけたら留守だったから、待ってたんだ!」
他のパーティーメンバーも近くにいたが、みんな寝ていた。
暇だったのだろう。
「お、新勇者。お茶していくか?」
浮竹はのんきにそんなことを言っている。京楽はどうしようかと迷ったが、浮竹がいいならいいかと、新勇者はお茶会に加わった。
「んでそこでズドーンと一発、フレアをかまして俺はドラゴンのけつに火をつけて、パーティーメンバーに蓄えていた金銀財宝をもてるだけもたせて逃げ出したんだ」
「うわー、最悪」
「ドラゴンかわいそう」
「な!?ドラゴンだぞ!悪だ!」
新勇者は顔を真っ赤にしてまくしたてた。
「いや、ドラゴンは知恵も人間より高いし、どちらかというと中立の立場だし、時によっては味方にもなってくれる。魔に染まって狂暴化したドラゴン以外は、退治しないほうがいいとギルドの受付嬢も言っていた」
浮竹の言葉に、新勇者はショックを受けた。
「そんな・・・っていうか、魔王、そもそも諸悪の根源は貴様だ!」
人造聖剣エクスカリバーを抜いて、浮竹を斬ろうとするが、カキンと京楽が唱えたバリアの魔法で剣先は止まった。
「おのれ勇者京楽!どこまで邪魔をしくさってからに!」
「そりゃ愛する浮竹のためだもん。守るに決まってるでしょ」
「少年魔法使い、今だ!勇者京楽を燃やせ!」
「んー。むにゃむにゃ・・・・・・ファイアー」
「あちちちちちち」
少年魔法使いが使った炎の魔法は、縦ロールの金髪の新勇者のヅラを焼いた。
「俺のヅラ焼いてどうする!女僧侶、獣人盗賊、青年戦士、みんなちゃんと起きて戦え!」
「んー。むにゃー」
「ぐーぐーぐー」
「ZZZZZZZZZZZZ」
「どいつもこいつも使えねえええ!!!」
新勇者のパーティーは、少年魔法使いが寝ぼけてかろうじで起きている以外はみんな寝ていた。
「こんな敵地で寝るとかどうかしているぞ!」
「その敵地で魔王とお茶をする新勇者もどうかと思うがな」
浮竹は、楽しそうに笑っていた。
そして、天井から垂れ下がっていた白い紐をひっぱった。
ゴンゴン。
新勇者の頭の上に、タライが連続で落ちてきて、新勇者はたりらりら~になった。
「うふふふふ。お花が咲いてる」
らりってる新勇者を引きずって、寝ているパーティーメンバーも移動させて(ちなみに少年魔法使いもまた寝ていた)浮竹は、赤い紐をひっぱった。
ガコン。
床があいて、らりってる新勇者と寝ている新勇者パーティーが落ちていく。
「のわあああああああああ」
「ぎゃあああああああああ」
「ぎええええええええええ」
牛ふんのつまった落とし穴だった。
もう一度赤い紐を浮竹がひっぱると、ガコンゴゴゴゴゴと音がして水が流れ、トイレのように新勇者パーティーは吸い込まれて消えていき、城の外へぺっと吐き出された。
「おのれえええ!牛ふん風呂だと!」
「いやああ、あたしの一張羅があああ」
「くっさ。クリーン!」
少年魔法使いは、浄化の魔法を使って体中についていた牛ふんを綺麗にした。
「あ、あたしもお願い」
「金貨5枚」
「何、金とんの!?」
「嫌ならそのままでいればいいじゃない」
「ちっ、ほら金貨5枚!」
「クリーン」
「あ、俺も」
新勇者も金貨5枚を出そうとした。
「お前は頼まれても使ってあげなーい」
「ぐぬぬぬぬぬ。少年魔法使い、お前、俺は勇者だぞ!」
「王様と自分が名乗ってるだけじゃん」
「ぐぬぬぬぬ。あーーーーーーーー!!!!」
新勇者は奇声を発して、近くにあった川に飛び込んだ。
「いいもんいいもん。川で十分だもん」
泣きながら、新勇者は水浴びをした。
牛ふんの匂いは、洗ってもとれなくて、その日一日中、新勇者は泣いているのであった。
「うん、いいかんじだ」
兵士でもあるダイコーンこと大根が、よく育っていた。
「ひまだよ浮竹ー」
農作業に没頭するあまり、勇者京楽を放置していた。
「ああすまない、もう終わりにする」
京楽も農作業をする時もあるが、基本的に浮竹が中心で行っていた。
大根と人参とキャベツを収穫して、牛の乳を搾り、鶏が産んだ卵をとる。
基本自給自足である。
裏で冒険者稼業をやって、それなりにもうけていたが、慈善団体に寄付したりしているので、城の改修工事と内装の工事が終わってからというもの、金はあまりかけないようにしている。
さすがにパンは買うので、ちょっとした食品や衣服などは金で買った。
「今日の朝食はエッグトーストと、フライドポテトだ」
すでに前に収穫していたジャガイモを細かく切って、油であげた。
街で買った食パンを焼いたものに、焼いた卵をのっけた。
昔なんて、米にたくあんひときれ、めざし1匹という食事だったが、朝食からもう普通のものになっていた。
たまにローストチキンを食べたりステーキを食べたり、贅沢をするときもある。
夕飯に限るが。
「ええと、今日は朝9時から会議か・・・・・」
出席するのは、浮竹、京楽、最近雇った死んだ宰相のサイッショの代わりに雇った、サイッショの弟のサイショーだ。ちなみに、魔族だ。
魔族は寿命がちょうど千年と決まっていて、サイショーは973歳。
あと27年は生きる。
浮竹は魔王になったため、肉体はほぼ不老である。同じく勇者になった京楽も魔王の加護で不老であった。
でも不死ではない。
なので、冒険者稼業をする時、特にドラゴンなどの強いモンスターを退治する時は気をつける。
といっても、二人ともLVが500に近いので、苦戦するようなことはないが。
この世界のモンスターも人間も、LV99までで、カンストだ。
魔王とその加護に肖った者だけが、レベル限界突破の500まであげることができる。
かなりチートな能力であった。
会議は滞りなく終わり、昼になった。
昼になるまで家畜の世話をしていた浮竹は、昼寝をしていた京楽をおこして、昼食を食べた。
そして城下町を視察して、3時になったのでお茶タイムにした。
「やっぱ紅茶はアッサムだな」
「えー、僕はダージリンのほうが好きだなぁ」
「俺はカモミールが好きだ」
いつの間にか、混ざっていた新勇者を、京楽が突き飛ばす。
「何普通に混ざってるの、君」
京楽に突き飛ばされて、新勇者はまくしたてた。
「昼の1時に「たのもう!」っておしかけたら留守だったから、待ってたんだ!」
他のパーティーメンバーも近くにいたが、みんな寝ていた。
暇だったのだろう。
「お、新勇者。お茶していくか?」
浮竹はのんきにそんなことを言っている。京楽はどうしようかと迷ったが、浮竹がいいならいいかと、新勇者はお茶会に加わった。
「んでそこでズドーンと一発、フレアをかまして俺はドラゴンのけつに火をつけて、パーティーメンバーに蓄えていた金銀財宝をもてるだけもたせて逃げ出したんだ」
「うわー、最悪」
「ドラゴンかわいそう」
「な!?ドラゴンだぞ!悪だ!」
新勇者は顔を真っ赤にしてまくしたてた。
「いや、ドラゴンは知恵も人間より高いし、どちらかというと中立の立場だし、時によっては味方にもなってくれる。魔に染まって狂暴化したドラゴン以外は、退治しないほうがいいとギルドの受付嬢も言っていた」
浮竹の言葉に、新勇者はショックを受けた。
「そんな・・・っていうか、魔王、そもそも諸悪の根源は貴様だ!」
人造聖剣エクスカリバーを抜いて、浮竹を斬ろうとするが、カキンと京楽が唱えたバリアの魔法で剣先は止まった。
「おのれ勇者京楽!どこまで邪魔をしくさってからに!」
「そりゃ愛する浮竹のためだもん。守るに決まってるでしょ」
「少年魔法使い、今だ!勇者京楽を燃やせ!」
「んー。むにゃむにゃ・・・・・・ファイアー」
「あちちちちちち」
少年魔法使いが使った炎の魔法は、縦ロールの金髪の新勇者のヅラを焼いた。
「俺のヅラ焼いてどうする!女僧侶、獣人盗賊、青年戦士、みんなちゃんと起きて戦え!」
「んー。むにゃー」
「ぐーぐーぐー」
「ZZZZZZZZZZZZ」
「どいつもこいつも使えねえええ!!!」
新勇者のパーティーは、少年魔法使いが寝ぼけてかろうじで起きている以外はみんな寝ていた。
「こんな敵地で寝るとかどうかしているぞ!」
「その敵地で魔王とお茶をする新勇者もどうかと思うがな」
浮竹は、楽しそうに笑っていた。
そして、天井から垂れ下がっていた白い紐をひっぱった。
ゴンゴン。
新勇者の頭の上に、タライが連続で落ちてきて、新勇者はたりらりら~になった。
「うふふふふ。お花が咲いてる」
らりってる新勇者を引きずって、寝ているパーティーメンバーも移動させて(ちなみに少年魔法使いもまた寝ていた)浮竹は、赤い紐をひっぱった。
ガコン。
床があいて、らりってる新勇者と寝ている新勇者パーティーが落ちていく。
「のわあああああああああ」
「ぎゃあああああああああ」
「ぎええええええええええ」
牛ふんのつまった落とし穴だった。
もう一度赤い紐を浮竹がひっぱると、ガコンゴゴゴゴゴと音がして水が流れ、トイレのように新勇者パーティーは吸い込まれて消えていき、城の外へぺっと吐き出された。
「おのれえええ!牛ふん風呂だと!」
「いやああ、あたしの一張羅があああ」
「くっさ。クリーン!」
少年魔法使いは、浄化の魔法を使って体中についていた牛ふんを綺麗にした。
「あ、あたしもお願い」
「金貨5枚」
「何、金とんの!?」
「嫌ならそのままでいればいいじゃない」
「ちっ、ほら金貨5枚!」
「クリーン」
「あ、俺も」
新勇者も金貨5枚を出そうとした。
「お前は頼まれても使ってあげなーい」
「ぐぬぬぬぬぬ。少年魔法使い、お前、俺は勇者だぞ!」
「王様と自分が名乗ってるだけじゃん」
「ぐぬぬぬぬ。あーーーーーーーー!!!!」
新勇者は奇声を発して、近くにあった川に飛び込んだ。
「いいもんいいもん。川で十分だもん」
泣きながら、新勇者は水浴びをした。
牛ふんの匂いは、洗ってもとれなくて、その日一日中、新勇者は泣いているのであった。
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