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黒薔薇姫

10月も半ばになり、衣変えの季節になった。

といっても、夏の頃の薄い死覇装が分厚いものになるだけで、隊長羽織は変わらずで、あまり死神たちには衣替えの意味はなかった。

「よっと、お邪魔するよ」

ドアを開けて、暖簾をくぐってやってきら京楽は、自分の登場にも気づいていない浮竹の背後に回った。

浮竹は、仕事に集中していた。

ハンコをおして、書類をしたため、可か否かをかいて、またはんこを押す。

髪に何かを飾られて、浮竹は吃驚した。

「京楽・・・・入ってくるなら、そうと言ってくれ」

「ちゃんと、お邪魔するよっていったよ」

「あれ、俺が聞き逃したのか」

「まぁ、気配は消してたからね」

「何故気配を消すんだ」

「君が、仕事に夢中になってるから、驚かせようと思って」

ふと、手に取った髪に飾られた何かを見る。

手折られた、黒薔薇であった。濃い紫の黒に限りなく近い薔薇。

京楽の手には、黒薔薇の99本の花束があった。

「最近、やっぱり薔薇に凝ってるな」

「ちょっとね。花言葉とかけっこう深いし。黒い薔薇は「永遠の愛」「決して滅びることのない愛」「貴方はあくまで私のもの」っていう意味があるよ。もっと深いのになると、縁起の悪い花言葉もあるけどね」

浮竹は、中断していた仕事を始める。

「すまない、あと30分ほど待ってくれ。仕事を終わらせたい」

「いつまでも待つさ」

京楽は、浮竹の手から渡された黒薔薇を、再び浮竹の白い髪に飾った。

「んー。蒼薔薇や赤薔薇ほどじゃあないけど、黒薔薇もいいねぇ」

「そうか?」

ハンコを押しながら、浮竹は応えを返す。

京楽が、2つの花瓶に水をいれて、約50本ずつにわけた黒薔薇をいれる。大きめの花瓶であったが、入りきらずに、空になった酒瓶に水をいれて飾ってみた。

「酒瓶も、酒を飲む以外にも役に立つんだなぁ」

自分で活けておきながら、自分で歓心していた。

やがて、仕事の終わった浮竹がやってくる。

「今度はなんだ。黒薔薇姫とでもいいだすのか?」

「その通り」

1本の黒薔薇を、浮竹の前へ。

「あなたは私のもの・・・・・・永遠に変わらぬ愛・・・・・」

「花言葉だろう?」

「君に贈るのに、今まで一番ふさわしい花言葉だと思う」

その黒薔薇を受け取る。

「永遠に変わらぬ愛を君に」

耳元で囁けば、くすぐったそうにする浮竹。

ふと、金木犀の香がした。

「ああ、あの金木犀の芳香剤使ってるんだ」

少し甘いが、いい匂いだと思う。

「悪くはないだろう?」

「そうだね」

元は何もなかった雨乾堂であるが、京楽が泊まるようになってからいろんなものが増えた。まずは一組しかなかった布団が、客人の分もいれて二組になった。

椅子も2つになったし、座布団も2つだ。

たんすの中には京楽の死覇装や隊長羽織がいれられてある。

京楽と浮竹用の酒も置いてあった。

それなりの広さだった雨乾堂も、二人で過ごすようになって大分手狭になった気がしないでもないが、雨乾堂ができる前から恋人同士だったので、それでもいいかと、思うのだった。

「僕の黒薔薇姫。一番気に入った薔薇はなんだい?」

「やっぱり、蒼薔薇かなぁ。珍しいし、綺麗だし、金もかかってるしな」

「じゃあ、今度はまた蒼薔薇をもってこようか?」

「だめだ、高いだろう!」

「じゃあ、鉢植えのを取り寄せそう」

「それならまぁ・・・・・」

鉢植えなら、来年も咲く。枯らしたりしない限り。

「僕だけの黒薔薇姫。愛してもいいかい?」

翡翠の瞳が臥せられる。長い睫毛が、頬に影を作り出す。

「俺が姫なら、お前は王子ってとこか?もじゃもじゃだが」

「もじゃもじゃは余計だよ」

クスクスと笑いあいながら、畳の上に寝転がる。

キスをされたので、キスをし返すと、布団がしかれた。

その上で、互いの衣服を脱ぎあっていく。

「んっ」

うなじから肩甲骨にかけて、舌がはう。次に背骨のラインをたどられた。

「あっ」

薄い胸の先端を摘みあげられて、声が漏れた。

「んんっ」

全体のラインをたどるようにキスと愛撫が繰り返される。

京楽は、反応しかかっていた浮竹の花茎を口に含んだ。そのまま手で上下に扱われて、あっけなく白濁した液体を京楽の口の中に放った。

「京楽・・・・・・・」

潤んだ瞳で見つめられて、京楽も限界だった。

浮竹が、京楽のものを口に含んだ。いつもはしない行為に、少しだけ京楽が戸惑うが、その気持ちよさにすぐに虜になった。

「ああいいよ・・・・・その調子で」

鈴口にちろりと舌を這わせると、京楽も浮竹の口の中に白濁した液体を放った。

「んっ」

潤滑油で濡らされた指が入ってきて、浮竹はその動きに翻弄される。

いつものように前立腺を刺激された。指が3本に増やされて、ばらばらに動かされる。指が抜かれた後は、大きな質量をもつものが宛がわれた。

「あああああ!!!」

一気に貫かれた。

「あ!あ!」

前立腺をすりあげる動きに、浮竹が濡れた声をあげる。

「ああっ」

最奥を貫かれながら、体位を変えられた。

「ひっ」

内部を抉る動きに、悲鳴が漏れる。

「ひあっ」

ぱんぱんと、腰と腰がぶつかる音する。じゅぷじゅぷと結合部は泡立ち、濡れた音を立てた。

「やっ・・・・・あああああ」

後ろから貫かれて、そのまま花茎に手でしごかれて、白い髪が宙を舞う。

二度目の精を放ち、敏感になった体を貫かれた。

「やああああ!」

京楽は、浮竹の甲高い悲鳴に似た喘ぎ声を聞きながら、最奥に欲望を迸らせた。

「うあっ」

まだ質量を保ったままの京楽に、浮竹が首を横に振る。

「もう少しだけ・・・・・」

「あと3分だ」

「十分」

「ああ!」

3分でラストスパートを京楽がかけてくる。その動きに翻弄される。

「んんっ」

キスをしながら、突き上げられる。

「んあっ・・・・もっとキス・・・・・」

ねだられて、いく前にキスをした。そして、最奥ではなく入口付近で精液をぶちまけた。

ぬきとると、こぽりと、白濁した液体が漏れた。

「春水・・・・・・・もっとキス・・・・」

「十四郎・・・・・好きだよ」

キスをしながら、愛を囁くと、浮竹もそれに応えた。

「すきだ、春水、愛してる」

「僕だって、愛してるよ」

いつの間にか、浮竹の白い髪を飾っていた黒薔薇が、布団の上に落ちていた。

それを髪に飾り直して、余韻にひたる。

やがて、湯あみの時まで髪飾りとして、黒薔薇は輝いていた。

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