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12話補完小説「斬月」

真咲は、虚化が進んでいた。

「そのお嬢さん、真咲さんはもう二度と元には戻りません」

そう言われた時石田竜弦は、酷い眩暈を感じた。

「魂魄自殺は防ぐことができます。でも、彼女の命を救い、虚化させず、人間のまま留めるには、更に強い力が必要です。彼女が死ぬときまで、片時も傍を離れず彼女の虚化を抑え続ける、相反する存在が」

虚化を止め、命を救うには、浦原の作った特殊は義骸に入って、一心が常に傍にいる必要があった。

そんなこと、この男にとってなんの 得にならないと、石田竜弦は感じた。

いろいろ条件を言われたけれど、一心は一言。

「わかった、やる」

とだけ答えた。

「未練に足を引っ張られて、恩人を見殺しにした俺を、明日の俺は笑うだろうぜ」

そう言った。

一心は、傍にいることを望んだ。

「俺は、この子を守る」

そう言って、義骸に入ってしまい、死神と人間の中間の位置になった。

真咲が滅却師と虚の中間の位置にいる、反対側の存在へと。

真咲は太陽に似ていた。いや、太陽そのものに見えた。

真咲は明るかった。

真咲に振り回さるのが、嫌ではなかった。

「そして、お前が生まれた、一護」

真咲は、9年前、本来なら死ぬはずではなかった。

聖別(アウスヴェーレン)

ユーハバッハによって行われたその儀式のせいで、真咲は滅却師としての力を奪われて虚に負けて死んだ。

一護には、ユーハバッハの血が流れている。

ユーハバッハは、滅却師の王であり、滅却師の始祖。

その血が、真咲から一護へと伝わっていた。

思い出す。

ユーハバッハと会った時の言葉を。

「闇に生まれし我が息子よ」

そう、確かに言っていた。

自分ことを、息子だと。

「親父・・・・ありがとな」

一護は、全てを語ってくれた一心に、礼を言っていた。

そして、尸魂界へほぼ無理やり連れてこられた。

たくさんいる浅打の中から、一護は一体の浅打を選んだ。

それは、一護に眠る虚自身。

斬月は、見事に二つの刃となって蘇った。

斬月は語る。

「私は、斬魄刀のふりをしていた」

「おっさん・・・おっさんは、斬月なんだろ!?」

「違う。私は・・・・・」

その姿は千年前のユーハバッハ。

「今まで君の内側で、斬魄刀のふりをしていた男のことを!」

刀神の言葉に、はっとなる。

「尸魂界を蹂躙する敵として、現れたはずだ。死神の力じゃない。その男は、君の中の滅却師の力。その姿は千年前のユーハバッハだ!」

はじめてユーハバッハをみたときに、誰かを思いだしそうになったことに、一護は気づいていた。

斬月だ。

斬月を、思い出しかけていたのだ。

その姿はあまりにも斬月にそっくりで。

始めてあいつを見た時に「誰か」を思い出しそうになった。それに、気づかないふりをしていた。ずっと、考えないようにしていた。

「どういうことだ斬月」

「私は、斬月ではない」

「じゃあ、誰だっていうんだよ!」

「私は、お前の中の滅却師の力の根源。ユーハバッハであり、ユーハバッハでないもの」

「わかんねぇよ!敵なのか味方なのか!?どっちなんだよ!?」

「分かっているだろう?お前を救ってきたのが・・・私ではなく、虚だったことを」

「どうして・・・・・」

「私はお前を死神にさせたくなかった。そしていつか必ず、私自身の手でお前を殺さなければならぬだろう」

炎の中に、刃が見てた。

「持っていけ。それがお前の真の斬魄刀「斬月」だ」

―------------斬月。

俺はあんたが誰だってかまわねぇ。あんたは違うと言うだろうけど、あんたもあいつも、きっとどちらも「斬月」なんだ。

斬月として在れた、年月。

「これ以上の幸せがあるものか。身を引けることに、喜びさえかんじている」

斬月は散っていく。まるで桜が風を受けて舞い散っていくように。

「待ってくれ斬月!俺はまだ!」

斬月に向かって手を伸ばす。

でも、その手は、届かなかった。

「もっていけ、それがお前の真の斬魄刀だ。斬月だ」

炎の中から、鍛え上げられたばかりの2対の斬魄刀を手にする。

新しい斬月だった。

「斬月、おれはあんたが誰でも構わない」

斬月と今まで一緒に戦ってきたのだ。

でも、もうそれもしまいだ。

「斬月、俺は俺自身で戦う」

心の中にいる斬月と、決別した。もう散ってしまった斬月と。

「ありがとう、斬月。あんたは俺だ」

一護は、2対の斬魄刀を手にしていた。

その刃で風を切る。余波で、壁が切れた。空間が歪んだ。

「これが、新しい斬月・・・俺の、斬魄刀・・・・・・」

二対になった斬月を手にする。

1つはユーハバッハの姿をしていた斬月で、もう1つは一護に眠る虚の力そのものである錯覚を覚えた。

「よろしくな、斬月!」

一護は、自分の斬魄刀に挨拶をしていた。

これからは、自分の力のみが頼りなのだ。

今まで、散々斬月にの手をかりてきた。でも、それも終わりなのだ。

「斬月・・・心の中にもうお前はいないけど、お前斬月だ」

斬月を手に、歩き始める。

新しい斬月と、共に。

どこまでも、どこまでも。



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