デート
その日は、土曜日だった。
2日ばかりの休暇をとり、現世にやってきたルキア。
その日は、2日目のルキアが現世にいれる最後の日。その日が終われば、またしばらく会えなくなる。
だから、ルキアの我儘をできるだけ聞いてやろうと思った。
まず、ルキアの希望は動物園に行きたい、だった。
朝から、お弁当を二人分つくった一護は、まだかまだかと待つルキアの頭を撫でて、準備完了だと告げた。
「おし、いくか」
「虎がみてみたい!かっこいいいんだろうな。ライオンもみたい。迫力があるだろうな。ゾウはきっと大きいんだろうな」
本でしか読んだことのない、知識。あとは現世の動物番組を見たくらいの知識で、ようは小学生並みの知識しかなかった。
否、小学生よりも劣るかもしれない。
ルキアと手を繋いで、デートだと一護が嬉しそうだった。
今日のために、入っていたバイトも休んだ。
電車に20分ほどゆられた後、バスで10分ほどゆられ、徒歩5分のところにその動物園はあった。
土曜は一般的に休日なので、子供連れの家族が目立った。
ルキアは、現世の金をもっていた。多分、白哉が渡したものだろう。切符を買うのに、一万円札を握りしめてうなっているルキアに、代わりに切符を買ったのは一護だった。
一護の部屋にきた時、荷物の中から、100万円の札束をどんと出された時、この子どうしようと一護は思った。
一般常識の金銭感覚を分からせるのに、一護は相当な時間を費やした。高校の頃の記憶であるが。
金をつめば、何とかなると思っている部分があって、その思考を修理するために多大な努力を払った。今でも、昨日のことのように思い出す。転校生というだけで、女の不良グループに呼び出され、カツアゲされて「お金が欲しいのか」といって、10万をさしだしていた姿など、思い出したくもないのだが記憶にあった。
記憶置換を使って、その不良グループの記憶を消しておいたのは正解だった。金づるにされなくてよかったと思う。
ルキアのことだから、脅されても全然屈しないが、父親が病気だから金が必要だとか言っていた詐欺に、危うく引っかかりそうになったこともあった。
「今日は嬉しいことだらけだな。一護とデートなど、久しぶりだ」
早速、虎の飼育されている檻を見つけて、近寄る。
「あまり、元気がないな。もっと獰猛かと思っていたのだが。だが、気高くて美しい生き物だな・・・・・・まるで、兄様のようだ!」
ルキアは、今でも白哉専用携帯を持っている。
いらないだろうと何度も捨てろと言ったのだが、兄様と繋がっているのはこれだけなのだど、頑なだった。
仕方ないので、そのまま持たせておくことにした。
白哉には、妹さんをくださいと頭を下げたことがある。正確には、婚約を認めてもらったのだ。
白哉に反対されても、ルキアとの婚約は破棄しようとは思わなかったが。交際を通りこして、婚約だなどと、笑われておかしくないことだったのだが、一護の熱意は本気だった。
「次は象・・・・あれか。いいなぁ、背中にのってみたい。本当に鼻が長いのだな。巨大なわりには草食性で大人しいのか・・・・」
展示されているのは、珍しいアジアゾウだった。アフリカゾウより数が希少で、絶滅危惧種だ。
「アフリカには、あれよりもう一回り大きな象がいるんだぜ」
「ほう。アフリカとやらに、一度行ってみたいな」
「だめだ。治安が悪い。ルキアみたいな箱庭育ちのお嬢様のいく場所じゃない」
「むっ。私は、これでも強いのだぞ。それは一緒に戦ってきた貴様がよく知っておろう」
「確かにルキアは強いが、それは虚に対してだろう。一般市民を刀の錆にできるのか?」
「それは無理だな」
「そうだろう。次のコーナーにいこうぜ。確か見たいのはライオンだったな」
ライオンの檻は広く、百獣の王といわれるだけあって、雄ライオンには威厳を感じれた。
「何々・・・・・プライドというハーレムをもち、雌が仕留めた獲物を真っ先に食べる。新しくプライド雄になったライオンは、前にいたライオンの子供殺す・・・・けしからん生き物だ!」
ルキアは、雄ライオンを見てぷりぷり怒っていた。その姿が可愛かったので、スマホで写真をとってみた。
「こら、何をかってに撮っておる!」
「いや、ルキアがあんまりにもかわいいものだから」
顔を朱くして、ルキアは一護の腕をとり、どんどんと進みだす。
次にみたのは、パンダ。
「癒される・・・・かわいいな」
「でも、野生のパンダは人を襲って怪我をさせることがあるそうだぜ」
「なに、あんなにかわいい生き物がか」
「野生は何でも怖いって思っとかなきゃな」
「ふーむ」
次に見たのは、日本猿だった。
「なんだ、ただの猿か。こんなもの、尸魂界にもはいて捨てるほどおるわ」
「え、尸魂界に日本猿っているんだ」
初耳だった。・
「いろいろおるぞ。熊もいるし猪もいるし、鹿もいる。野兎、リス、野鳥・・・・いろいろ、現世と変わりなく野生で暮らしておる」
「そうなのか。俺は尸魂界にいたの短かったしな。猪はみたな・・・・ガンジュのやつが、乗ってたな」
「懐かしいな」
「ああ。あいつ、今でも猪に乗ってるのかな」
「そうではないのか?」
懐かしそうに、ルキアの紫紺の瞳が瞬いた。
「他に見たい動物は?」
「特にない。後は流れに従って、適当に見て行こう」
ルキアが夢中になった動物は、レッサーパンダーにコアラ、カワウソといったところか。可愛いものが好きなルキアらしかった。
「お、触れ合い体験コーナーがある。行こうぜ」
「あ、待て一護」
一護自身、動物との触れ合いコーナーが好きだった。兎、モルモット、ロバ、馬、羊、ヤギ、アルパカ、カンガルー、鹿・・・・・・・。
触れる動物は、とにかくもふりまくった。
ルキアも、一護を真似てもふりまくった。
羊のえさやりをしてみると、羊は器用に舌を使って餌を食べていった。
「むう、奥にいる子が食えていないではないか。こっちにこい、そのちっこいの」
他の羊には、一護が餌をあげた。奥にいた子羊がこちらにやってくる。ルキアは、餌やりに成功して嬉しそうだった。
「羊は、牛のように臭くはないのだな。家畜だからもっと臭いものかと思っていた」
一度、ルキアは尸魂界の酪農家にいったことがあり、家畜の牛のあまりの臭さに、辟易としたことがあるらしい。
「昼飯にするか」
「おお、一護特製のお弁当か!」
ルキアがキラキラ目を輝かせた。
一人暮らしをするようになってから、今まで以上に料理の腕はあがっていた。
ベンチに腰掛けて、荷物からお弁当を取り出すと、割りばしとペットボトルのお茶と一緒にわたした。
「んー美味しい」
ルキアにそう褒められて、作ってよかったと思った。
ルキアは、キャラ弁だったので、ごはんの部分を食べるのがもったいないと言っていた。一護が食べて崩してしまうと、怒りながら美味しいといって食べていた。
「午後はどうする?」
「買い物にいきたい。現世のファッションをもっと漫喫したい」
そういうルキアについていって、カジュアルなファッションと安さで知られるしまむらやにいってみた。
着衣室で、ルキアはいろいろな服を着ては、一護に見せていた。
やはりワンピースが好きなのか、買ったのは紺色、黒、白、フリルのかわいピンクのワンピースだった。
個人的には、フリルのついたワンピースが好みだった。
しまむらやの安さには、ルキアもかなり驚いていた。
いつも買うワンピースは1着で1万円もするような店で買っていたのだ。1着が980円の安さに、ルキアも中毒になりそうだった。
「あとは~あとはいい。今度来た時の楽しみにとっておく」
荷物持ち係にされたが、ルキアが喜んでくれるならそれでも構わなかった。
一護のアパートに帰り、買った服はクローゼットに直した。今度現世にきた時に着るのだ。
「一護、ありがとう、大好きだ」
抱きついてこられて、一護もルキアを抱き締めた。
「俺も大好きだ、ルキア」
唇を重ねる。
そろそろ、日が暮れる。
ルキアは、夕飯の鉄板焼きを楽しんで食べながら、尸魂界でここ1か月におきた出来事を話してくれた。
特にかわった情報はなかったが、恋次が最近からんでくるというところがひっかかった。
恋次も、ルキアのことが好きなのは知っている。気づいていないのは、本人のルキアくらいだろうか。
白哉でさえ知っているのだ。何より、ルキアにとって恋次は家族のようなもので、親友以上恋人未満の関係に、聞いているこっちが不機嫌になりそうだ。
「ルキア」
「なんだ、一護」
「恋次と、あまり親しくするなとは言わないが、ハグするのはやめろ。恋次も勘違いする」
「何をだ?」
「あのなぁ。はぁ、俺がいうしかないのか。恋次は、お前のことが好きなんだよ。幼い頃から、ずっとルキアだけを見てきて、今俺と付き合っているルキアのことも好きなんだ。だから、キスしたりハグしたりするなよ!」
「ええっ、キスもハグもだめなのか?」
「当たり前だろう!」
「今まで、普通にしてたからな・・・・・・・・・」
「ああもう、これだからルキアは・・・・・」
二人して、溜息を零す。
「恋人じゃないのにキスやハグするのは、フリーだったから問題なかったんだ。俺と婚約した今のルキアとしたら、浮気になる」
「そうか・・・・明日から、恋次に対する態度を改める」
「そうしてくれ」
「ところで、今日は抱かないのか?」
「昨日したばっかだろ」
「でも、下手したら半年以上会えないかもしれないのだぞ。貴様はそれでも平気なのか」
「平気なわけねーだろ。でも仕方ねーじゃねぇか。俺は人間で、お前は死神。住む場所が違うんだから。だからといって、がっつくような真似はしねぇよ。お前を大事にしたいから」
「そうか・・・・・・・一護は、優しいのだな」
「お前にだけな。特別だ」
その日は、一緒に風呂に入って背中の流しあいをした。お互い裸だが、もう見慣れてきたので隠すとかはなかった。
風呂からあがると、ルキアは牛乳を腰に手をあてて一気飲みした。
「何してんんだ?」
「身長を伸ばしたいのだ」
「なんでだよ?」
「貴様とキスするとき、背伸びしても届かないから」
かわいい理由に、頭をぐしゃぐしゃにしてやった。
「何をする!」
「可愛いやつだなって思って」
その日の夜は、付き合っていなかった頃のように、同じベッドで二人で寝た。腕の中にルキアを抱いて。
そして朝がきた。
ルキアが現世を去る時がきた。
「また、できれば近いうちに、現世に戻ってくるから、それまで浮気するなよ!」
「そういうルキアこそ、恋次に気をつけて、浮気するなよ!」
「分かっておる!」
「じゃあ、またな!」
「ああ!」
穿界門が開く。去っていくルキアの姿が見えなくなるまで、一護はずっと動かなかった。
ほどなくして、スマホが鳴った。
(兄様に、虎の話をしたら見たいという話しになって、今度は兄様も現世にいくことになった)
「勘弁してくれよ・・・・・・・」
(このブラコンが!)
(ブラコンで悪いか!私は、一護と同じくらい、恋次も兄様も好きなのだ)
「ああ本当に・・・・・・ルキアは。恋次のやつ、手ださないよな・・・・・信じてるぞ、恋次」
(白哉を連れてくる時は事前に言えよ。ちゃんといろいろ用意するものがあるから)
(貴様の小汚いアパートにはいきたくないそうだ。5つ星のホテルのスウィートをとるらしい)
(あの金持ちめ・・・・・・・)
(一護も、一度は5つ星のホテルに泊まってみたいであろう?私も泊まるのを楽しみにしておるのだ)
(分かったよ。そん時は世話になるから、よろしく言っておいてくれ)
(ああ、兄様に呼ばれた。また連絡する)
「ああああああああああ。白哉が現世にくる・・・・・・ああああああああ」
一護は、その日一日中悩んでいた。
ルキアのことだ、抱いたことも包み隠さず白哉に話していることだろう。無理はことはしてないよなと、己の行動を振り返りながら、一護はいつまでも悩むのであった。
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2日ばかりの休暇をとり、現世にやってきたルキア。
その日は、2日目のルキアが現世にいれる最後の日。その日が終われば、またしばらく会えなくなる。
だから、ルキアの我儘をできるだけ聞いてやろうと思った。
まず、ルキアの希望は動物園に行きたい、だった。
朝から、お弁当を二人分つくった一護は、まだかまだかと待つルキアの頭を撫でて、準備完了だと告げた。
「おし、いくか」
「虎がみてみたい!かっこいいいんだろうな。ライオンもみたい。迫力があるだろうな。ゾウはきっと大きいんだろうな」
本でしか読んだことのない、知識。あとは現世の動物番組を見たくらいの知識で、ようは小学生並みの知識しかなかった。
否、小学生よりも劣るかもしれない。
ルキアと手を繋いで、デートだと一護が嬉しそうだった。
今日のために、入っていたバイトも休んだ。
電車に20分ほどゆられた後、バスで10分ほどゆられ、徒歩5分のところにその動物園はあった。
土曜は一般的に休日なので、子供連れの家族が目立った。
ルキアは、現世の金をもっていた。多分、白哉が渡したものだろう。切符を買うのに、一万円札を握りしめてうなっているルキアに、代わりに切符を買ったのは一護だった。
一護の部屋にきた時、荷物の中から、100万円の札束をどんと出された時、この子どうしようと一護は思った。
一般常識の金銭感覚を分からせるのに、一護は相当な時間を費やした。高校の頃の記憶であるが。
金をつめば、何とかなると思っている部分があって、その思考を修理するために多大な努力を払った。今でも、昨日のことのように思い出す。転校生というだけで、女の不良グループに呼び出され、カツアゲされて「お金が欲しいのか」といって、10万をさしだしていた姿など、思い出したくもないのだが記憶にあった。
記憶置換を使って、その不良グループの記憶を消しておいたのは正解だった。金づるにされなくてよかったと思う。
ルキアのことだから、脅されても全然屈しないが、父親が病気だから金が必要だとか言っていた詐欺に、危うく引っかかりそうになったこともあった。
「今日は嬉しいことだらけだな。一護とデートなど、久しぶりだ」
早速、虎の飼育されている檻を見つけて、近寄る。
「あまり、元気がないな。もっと獰猛かと思っていたのだが。だが、気高くて美しい生き物だな・・・・・・まるで、兄様のようだ!」
ルキアは、今でも白哉専用携帯を持っている。
いらないだろうと何度も捨てろと言ったのだが、兄様と繋がっているのはこれだけなのだど、頑なだった。
仕方ないので、そのまま持たせておくことにした。
白哉には、妹さんをくださいと頭を下げたことがある。正確には、婚約を認めてもらったのだ。
白哉に反対されても、ルキアとの婚約は破棄しようとは思わなかったが。交際を通りこして、婚約だなどと、笑われておかしくないことだったのだが、一護の熱意は本気だった。
「次は象・・・・あれか。いいなぁ、背中にのってみたい。本当に鼻が長いのだな。巨大なわりには草食性で大人しいのか・・・・」
展示されているのは、珍しいアジアゾウだった。アフリカゾウより数が希少で、絶滅危惧種だ。
「アフリカには、あれよりもう一回り大きな象がいるんだぜ」
「ほう。アフリカとやらに、一度行ってみたいな」
「だめだ。治安が悪い。ルキアみたいな箱庭育ちのお嬢様のいく場所じゃない」
「むっ。私は、これでも強いのだぞ。それは一緒に戦ってきた貴様がよく知っておろう」
「確かにルキアは強いが、それは虚に対してだろう。一般市民を刀の錆にできるのか?」
「それは無理だな」
「そうだろう。次のコーナーにいこうぜ。確か見たいのはライオンだったな」
ライオンの檻は広く、百獣の王といわれるだけあって、雄ライオンには威厳を感じれた。
「何々・・・・・プライドというハーレムをもち、雌が仕留めた獲物を真っ先に食べる。新しくプライド雄になったライオンは、前にいたライオンの子供殺す・・・・けしからん生き物だ!」
ルキアは、雄ライオンを見てぷりぷり怒っていた。その姿が可愛かったので、スマホで写真をとってみた。
「こら、何をかってに撮っておる!」
「いや、ルキアがあんまりにもかわいいものだから」
顔を朱くして、ルキアは一護の腕をとり、どんどんと進みだす。
次にみたのは、パンダ。
「癒される・・・・かわいいな」
「でも、野生のパンダは人を襲って怪我をさせることがあるそうだぜ」
「なに、あんなにかわいい生き物がか」
「野生は何でも怖いって思っとかなきゃな」
「ふーむ」
次に見たのは、日本猿だった。
「なんだ、ただの猿か。こんなもの、尸魂界にもはいて捨てるほどおるわ」
「え、尸魂界に日本猿っているんだ」
初耳だった。・
「いろいろおるぞ。熊もいるし猪もいるし、鹿もいる。野兎、リス、野鳥・・・・いろいろ、現世と変わりなく野生で暮らしておる」
「そうなのか。俺は尸魂界にいたの短かったしな。猪はみたな・・・・ガンジュのやつが、乗ってたな」
「懐かしいな」
「ああ。あいつ、今でも猪に乗ってるのかな」
「そうではないのか?」
懐かしそうに、ルキアの紫紺の瞳が瞬いた。
「他に見たい動物は?」
「特にない。後は流れに従って、適当に見て行こう」
ルキアが夢中になった動物は、レッサーパンダーにコアラ、カワウソといったところか。可愛いものが好きなルキアらしかった。
「お、触れ合い体験コーナーがある。行こうぜ」
「あ、待て一護」
一護自身、動物との触れ合いコーナーが好きだった。兎、モルモット、ロバ、馬、羊、ヤギ、アルパカ、カンガルー、鹿・・・・・・・。
触れる動物は、とにかくもふりまくった。
ルキアも、一護を真似てもふりまくった。
羊のえさやりをしてみると、羊は器用に舌を使って餌を食べていった。
「むう、奥にいる子が食えていないではないか。こっちにこい、そのちっこいの」
他の羊には、一護が餌をあげた。奥にいた子羊がこちらにやってくる。ルキアは、餌やりに成功して嬉しそうだった。
「羊は、牛のように臭くはないのだな。家畜だからもっと臭いものかと思っていた」
一度、ルキアは尸魂界の酪農家にいったことがあり、家畜の牛のあまりの臭さに、辟易としたことがあるらしい。
「昼飯にするか」
「おお、一護特製のお弁当か!」
ルキアがキラキラ目を輝かせた。
一人暮らしをするようになってから、今まで以上に料理の腕はあがっていた。
ベンチに腰掛けて、荷物からお弁当を取り出すと、割りばしとペットボトルのお茶と一緒にわたした。
「んー美味しい」
ルキアにそう褒められて、作ってよかったと思った。
ルキアは、キャラ弁だったので、ごはんの部分を食べるのがもったいないと言っていた。一護が食べて崩してしまうと、怒りながら美味しいといって食べていた。
「午後はどうする?」
「買い物にいきたい。現世のファッションをもっと漫喫したい」
そういうルキアについていって、カジュアルなファッションと安さで知られるしまむらやにいってみた。
着衣室で、ルキアはいろいろな服を着ては、一護に見せていた。
やはりワンピースが好きなのか、買ったのは紺色、黒、白、フリルのかわいピンクのワンピースだった。
個人的には、フリルのついたワンピースが好みだった。
しまむらやの安さには、ルキアもかなり驚いていた。
いつも買うワンピースは1着で1万円もするような店で買っていたのだ。1着が980円の安さに、ルキアも中毒になりそうだった。
「あとは~あとはいい。今度来た時の楽しみにとっておく」
荷物持ち係にされたが、ルキアが喜んでくれるならそれでも構わなかった。
一護のアパートに帰り、買った服はクローゼットに直した。今度現世にきた時に着るのだ。
「一護、ありがとう、大好きだ」
抱きついてこられて、一護もルキアを抱き締めた。
「俺も大好きだ、ルキア」
唇を重ねる。
そろそろ、日が暮れる。
ルキアは、夕飯の鉄板焼きを楽しんで食べながら、尸魂界でここ1か月におきた出来事を話してくれた。
特にかわった情報はなかったが、恋次が最近からんでくるというところがひっかかった。
恋次も、ルキアのことが好きなのは知っている。気づいていないのは、本人のルキアくらいだろうか。
白哉でさえ知っているのだ。何より、ルキアにとって恋次は家族のようなもので、親友以上恋人未満の関係に、聞いているこっちが不機嫌になりそうだ。
「ルキア」
「なんだ、一護」
「恋次と、あまり親しくするなとは言わないが、ハグするのはやめろ。恋次も勘違いする」
「何をだ?」
「あのなぁ。はぁ、俺がいうしかないのか。恋次は、お前のことが好きなんだよ。幼い頃から、ずっとルキアだけを見てきて、今俺と付き合っているルキアのことも好きなんだ。だから、キスしたりハグしたりするなよ!」
「ええっ、キスもハグもだめなのか?」
「当たり前だろう!」
「今まで、普通にしてたからな・・・・・・・・・」
「ああもう、これだからルキアは・・・・・」
二人して、溜息を零す。
「恋人じゃないのにキスやハグするのは、フリーだったから問題なかったんだ。俺と婚約した今のルキアとしたら、浮気になる」
「そうか・・・・明日から、恋次に対する態度を改める」
「そうしてくれ」
「ところで、今日は抱かないのか?」
「昨日したばっかだろ」
「でも、下手したら半年以上会えないかもしれないのだぞ。貴様はそれでも平気なのか」
「平気なわけねーだろ。でも仕方ねーじゃねぇか。俺は人間で、お前は死神。住む場所が違うんだから。だからといって、がっつくような真似はしねぇよ。お前を大事にしたいから」
「そうか・・・・・・・一護は、優しいのだな」
「お前にだけな。特別だ」
その日は、一緒に風呂に入って背中の流しあいをした。お互い裸だが、もう見慣れてきたので隠すとかはなかった。
風呂からあがると、ルキアは牛乳を腰に手をあてて一気飲みした。
「何してんんだ?」
「身長を伸ばしたいのだ」
「なんでだよ?」
「貴様とキスするとき、背伸びしても届かないから」
かわいい理由に、頭をぐしゃぐしゃにしてやった。
「何をする!」
「可愛いやつだなって思って」
その日の夜は、付き合っていなかった頃のように、同じベッドで二人で寝た。腕の中にルキアを抱いて。
そして朝がきた。
ルキアが現世を去る時がきた。
「また、できれば近いうちに、現世に戻ってくるから、それまで浮気するなよ!」
「そういうルキアこそ、恋次に気をつけて、浮気するなよ!」
「分かっておる!」
「じゃあ、またな!」
「ああ!」
穿界門が開く。去っていくルキアの姿が見えなくなるまで、一護はずっと動かなかった。
ほどなくして、スマホが鳴った。
(兄様に、虎の話をしたら見たいという話しになって、今度は兄様も現世にいくことになった)
「勘弁してくれよ・・・・・・・」
(このブラコンが!)
(ブラコンで悪いか!私は、一護と同じくらい、恋次も兄様も好きなのだ)
「ああ本当に・・・・・・ルキアは。恋次のやつ、手ださないよな・・・・・信じてるぞ、恋次」
(白哉を連れてくる時は事前に言えよ。ちゃんといろいろ用意するものがあるから)
(貴様の小汚いアパートにはいきたくないそうだ。5つ星のホテルのスウィートをとるらしい)
(あの金持ちめ・・・・・・・)
(一護も、一度は5つ星のホテルに泊まってみたいであろう?私も泊まるのを楽しみにしておるのだ)
(分かったよ。そん時は世話になるから、よろしく言っておいてくれ)
(ああ、兄様に呼ばれた。また連絡する)
「ああああああああああ。白哉が現世にくる・・・・・・ああああああああ」
一護は、その日一日中悩んでいた。
ルキアのことだ、抱いたことも包み隠さず白哉に話していることだろう。無理はことはしてないよなと、己の行動を振り返りながら、一護はいつまでも悩むのであった。
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