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一護の家出と白哉

「にゃあ」

「おい、琥珀」

「にゃあ」

「そこ、俺の席なんだが・・・・」

「にゃあ」

食堂で、夕餉をとろうとして、一護、ルキア、白哉の3人と、子猫の琥珀が揃っていた。

ルキアと白哉の前には、豪華なメニューが並んでいる。一護の席には、琥珀が座っていて、その前にはちょうど猫1匹分くらいのささみ、おさしみにチュールがおいてあった。

琥珀が座る席に、「一護」とかかれた食器がおいてあり、白ご飯に味噌汁をぶっかけて、かつおぶしをかけて醤油をかけた、いわゆる猫まんまが置かれていた。

「おい、白哉義兄様」

白哉が、とても嫌そうな顔をして、こっちを見てくる。

「この扱いはなんなんだよ。俺は琥珀じゃねーぞ」

「兄は、そこがお似合いだ」

ピキ。

一護の額に血管マークが浮かんだ。

「おい、白哉義兄様・・・・」

「兄にそのように呼ばれたくない。汚らわしい」

ピキピキ。

一護の血管マークが増える。

「にゃあ」

琥珀はすでにささみとさしみを食べ終えてしまって、まだもの欲しそうにチュールをいじっていた。チュールの中身が食べたいのだ。

「ああ、兄も欲しいのか。ささみ味とまぐろ味、どっちにする?」

一護に、白哉はチュールを渡そうとする。

「俺は琥珀じゃねぇ・・・・・」

そう言いながらも、まぐろ味のチュールを受け取った。

「けっ、ばーかばーかばーかばーか!家出してやる!」

琥珀を片手に、一護と書かれた猫まんまの入った食器ももって、一護は食堂を後にした。

「兄様、琥珀が・・・・・」

「心配はいらぬ。あれは、弱者をいたぶるような者ではない。琥珀は大丈夫だ」

「兄様、なぜ一護にあんな試練を?」

ルキアは、本気で白哉のなんの意味ももたない嫌がらせを、一護への試練だと思っていた。

「そうだな・・・緋真と過ごせた時間は僅かだった。兄らは、そうならぬようにしてほしい・・・・ただ、それだけだ」

それなら、いっそう一護をいじめるのは間違っているはずなのだが、ルキアは感動した。

「そこまで深いお考えがあったのですね!」

豪華な夕食を食べながら、ルキアが白哉の、男としては色白で細い手をとった。

「このルキア、感服いたしました。一護にも、きっとその思いも伝わるでしょう」

一護がその場にいたら、噴火しそうなことをいうルキア。

ルキアは、一護の姿を探すこともなく、夕食を続ける。

それを、食堂が見える位置から聞いていた一護は、猫まんまを食した後、琥珀を連れて本当に家出した。

「探さないでください。琥珀と一緒に、流浪の旅にでます・・・・・・兄様、どうすれば!」

「むう、琥珀が!」

白哉の心配は、琥珀だけだった。

一護は、適当に白哉の財布を盗んで、金を手に入れていた。一人で家出は寂しいので、琥珀を旅の連れにした。

「恋次、泊まらせてくれ」

「あーん?何言ってやがんだてめぇ」

「朽木家を家出してきた」

事情を聞いて、恋次は笑いながらも、泊めてくれた。

猫まんまではない、暖かい食事もごちそうになった。

そのまま、恋次の屋敷にとまって、琥珀にはまぐろ味のチュールをあげて、次の日は13番隊の執務室へといった。

「にゃあ」

「琥珀!無事だったか!」

琥珀も一緒に連れていくと、ルキアにすり寄り、甘えだした。

「旦那の俺には、何もなしかよ」

「いたのか一護」

「ひでぇ!」

「一護、バカなことをしていないで戻ってこい。貴様のいるべき場所は朽木家なのだぞ」

ルキアなりの心配なのか、その言葉は暖かった。

「白哉のバカが嫌がらせを止めてくれたらな」

「あれは嫌がらせではない。兄様からの試練なのだ」

「絶対、あれは嫁いびりの姑がするみたいなやつだ!」

「一護・・・・・」

ルキアは、一護の手をとった。

「何処に寝泊まりしたのだ。まさか、この寒い中、外でではあるまいな?」

「恋次のところに泊めてもらった」

「そうか、恋次か・・・・・」

「ルキア、好きだ、愛してる・・・・一緒に、朽木家を出て、新しい家で住まないか」

「それは無理だ一護!私は、兄様のいる今の朽木家が好きなのだ。そこに、貴様もいる。もう大好きすぎて、鼻血が・・・・・・」

言葉通り、鼻血を出すルキア。

「おい、大丈夫かよ!」

長椅子に寝そべらせて、鼻血が止まるまで待った。

「にゃあん」

「琥珀・・・心配をかけたな。すまぬ、一護」

「もういい。ちゃんと、毎日13番隊の執務室にはくるから、もう少し家出させといてくれ」

恋次の世話になるのも悪いと思ったが、他に行き場所がない。

恋次に、居候している間の賃金として、ぱくってきた白哉の財布を渡すと、その金額の多さに驚かれて、屋敷でも建てるつもりかと言われた。

「にゃあ」

「ああ、琥珀腹減ったのか。今、キャットフードとチュールやるからな」

恋次の家は、けっこう広かった。

席官クラス以上の者が屋敷をもてる区域に館はあった。

「ルキアとは、うまくいってるのか?」

「ルキアとはな。白哉とうまくいかねーんだよ。だから、家出中なんだ」

「隊長は・・・・一度嫌いだすと、とことんだからなぁ。まぁ、見る限り本気で一護のことを嫌ってはいねーよ」

「でも、俺の飯だけ猫まんまだぜ?俺が風呂に入ろうとした時にはお湯がねぇし!他にも・・・・・」

話を聞いているうちに、恋次も一護を哀れに思って、苺味のキャンディをくれた。

「ま、元気だせ」

「甘い・・・・・」

キャンディをなめながら、一護は2週間ほど恋次の世話になった。

「いい加減、帰ってきたらどうだ、一護。琥珀までもっていきおってからに」

「琥珀は俺の心の友だー」

その日は、酒を飲んでいた。

6時に死神の通所業務が終了して、恋次と一角と弓親で飲み歩いた帰り道であった。

「ぬおーーー、ルキア、好きだーーーーーーー」

「こら、こんな往来で!」

ルキアを抱き締めて、キスをする。

「白哉がなんだーいじめがなんだー」

「そう思うなら、帰ってきてくれぬか。貴様のいない寝室は寂しい」

ルキアの悲しそうな顔に、一護も揺れる。

「わーったよ。家出はもうやめる。琥珀と朽木家に帰るよ」

せっかくの酔いも冷めた。

一護が朽木家にいくと、外に犬小屋があった。看板に、一護とかかれてあった。

「もっかい家出していいか?」

「だめだ、たわけ!帰るぞ」

朽木邸に入り、久しぶりに白哉と会った。

「琥珀は無事か?」

「ああ、この通り元気だよ」

「にゃああん」

琥珀は、白哉にすりよった。その小さな体を抱いて、自分の寝室に戻る白哉は一護にだけ聞こえる声でこういった。

「ルキアを幸せにしろ」

「んなこと、言われなくても分かってる」

次の日は、猫まんまではなく、普通の食事だった。

一護も安心する。

しかし、寝室の布団が処理されていて、寝室の中に犬小屋が建てられ、そこに一護と書かれてあった。

「猫まんまの猫の次は、犬か?」

一護も、図太くなる。こんないじめ程度で屈してなるものかと、犬小屋を移動して、白哉の寝室にもってくると、看板をペンキで書き直して、白哉とかいた。

「ぬう・・・・やるな」

それを見た白哉は、そう言った。

寝具を処理されてしまったので、いつもルキアと同じ布団で寝た。けっこういいかも、と思った。

「白哉義兄様に、負けてなるものか!」

一護は、食事にドッグフードが混ぜられても、気にせず食事した。

「く・・・何かいい嫌がらせの方法は・・・・・・」

白哉がそう口にする。

ある日、白哉が読んでいる本が落ちてあった。中身を見ると、「嫁をいびる姑の100の行動」と書いてあった。

「あの白哉義兄様が・・・・・・・」

気づけば、結婚式を挙げて1か月が経っていた。

「ルキア、今日いいか?」

「あっ、一護・・・・・・・」

白哉の前で、いちゃつくと、白哉の嫌がらせもきつくなった。

「負けるか!」

一護も、白哉が湯あみしようという時刻に、湯を抜いてやったりした。

お互い、嫌がらせのし合いだった。

「にゃあん」

琥珀が、ある日手紙を一護の元に持ってきた。

読むと、「阿呆」

とだけ、書かれてあった。

なので、一護も「死ねバーカ」と書いた手紙を琥珀に銜えさて、白哉の寝室に放った。

「ぬう・・・・・」

「ふふふ・・・・」

一護はやられたり、やり返したりしながら、朽木家でルキアと一緒に過ごす。

琥珀も、もう子猫ではなくなったいた。


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