発作を起こした浮竹と限界までの甘味
「きょうら・・・・く・・・・・」
目の前で、浮竹は血を吐いた。
ごほごほと咳込む浮竹。
真紅の色だけが鮮明で、京楽は動けないでいた。
それから、はっとなって、浮竹の名前を呼ぶ。
「浮竹、大丈夫かい、浮竹!」
「きょうら・・・・ごふっ」
ヒューヒューと喉が鳴る。様子がおかしい。
「血がのどにつまったのか!」
京楽は、浮竹から血をすいあげて、なんとか呼吸ができるように気道を確保すると、抱き上げた。
「今すぐ、4番隊のところに連れていくからね!」
瞬歩で、4番隊までつくと、すぐに卯ノ花が呼ばれた。
「急に、咳込んで血を吐いたんだよ」
ここ数か月、血を吐いていなかったので、浮竹が肺の病を持っていると忘れていたのだ。
久しぶりの発作は酷く、回道で手当てしても血を吐き続けた。
「まずいですね。集中治療室まで、移動させます」
卯ノ花の決断に、京楽も従う。
浮竹を抱き上げて、集中治療室まで行った。
あとは、浮竹の体力次第だった。
集中治療室の大きな窓の向こう側から、浮竹を見る。点滴を受けて、人工呼吸器をつけられた浮竹を見るのは、半年ぶりくらいだった。
「浮竹・・・」
どうか、回復しますように。
今は、ただ祈るしかなかった。
数日が経った。相変わらず、浮竹の意識は戻らないままで、一度心肺停止状態に陥り、なんとか回復したが、呼吸は浅く、脈も弱いままだった。
「浮竹、大好きだよ」
集中治療室の硝子越しに、浮竹を見る。
「・・・・・・・・きょうら・・・・・く・・・・」
「浮竹!?」
意識を取り戻した浮竹は、立ち上がって、人工呼吸器を外し点滴の管も外して、硝子越しにいる京楽とキスをした。
硝子を一枚隔てたキス。手が、硝子一枚を隔てて、重なり合う。
集中治療室に入り、浮竹をベッドに横たわらせると、ナースコールを押した。
すぐに、卯ノ花がやってきてくれた。
「気づかれたのですね。肺に痛みはありますか?」
「大丈夫だ、卯ノ花隊長。意識もしっかりしている」
「そうですか。では、普通の病室に移動しましょう。念のため、そこで3日ほど過ごして問題がないよなら、退院ですね」
体重の軽くなった浮竹を抱き上げて、普通の病室まで移動すると、あいていたベッドに横たえた。
「京楽隊長も、ちゃんと休んでくださいね」
浮竹の意識が戻らぬせいで、眠るに眠れぬ日々を過ごしていた京楽は、卯ノ花に礼を言うと、仮眠室で横になった。
久しぶりに、深く眠った。
「浮竹、起きてるかい?」
「ん、ああ」
「ここ数日、湯あみできなくて気持ち悪いでしょう。体ふいてあげるよ」
「ああ、頼む」
すっかり肉の削げ落ちた、細くなった体を濡れた蒸しタオルでふいていく。つま先まで綺麗に吹き終えて、大分すっきりしたのか、浮竹は嬉し気だった。
「あと、2日我慢したら、退院できるそうだ」
すでに、食事は普通のものを食べていた。
「退院したら、甘味屋に行こうか」
「お、いいな。満腹になるまで食ってやる」
「君が満腹になるまでって、何人分たべるんだか」
今からでもそんな光景が見えて、嬉しくなった。
やはり、元気な浮竹が一番いい。
病気で儚げない浮竹が嫌いというわけではないが、想い人が元気であることに越したことはない。
それから、2日が経った。
浮竹はそれから発作も起こさず、検査でも異常が見つからなかったため、退院となった。
一度心肺停止状態にまで陥ったことが、嘘のようだ。
瞬歩は体力を使うので、歩いて移動する。浮竹を抱き上げて瞬歩で雨乾堂まで戻ることもできたが、落ちてしまった体力を戻すためのリハビリも兼ねて、徒歩で移動した。
2時間ほどかけて、雨乾堂についた。
「はぁ、我が家だ」
浮竹は、病院で湯あみもしたが、やはり雨乾堂の湯殿が好きなのか、さっそくお風呂に入ってさっぱりしてから、敷かれた布団に横になった。
京楽も、同じ布団で横になった。そのまま、午睡した。
数日がそれから経った。元気を取り戻した浮竹は、よく食べて運動し、落ちていた筋力も戻りつつあった。
「よし、甘味屋にいくぞ!」
もう、瞬歩を使っても平気なまでに回復した。
「壬生の甘味屋までいくぞ、京楽!」
「はいはい」
「どっちが先につくか競争だ!」
お互い、瞬歩で移動した。京楽が勝った。
「くそ、まだ本調子じゃないか」
「あれだけ瞬歩で飛ばせるなら、十分だよ」
京楽が恐れていた通り、浮竹は甘味物を食った。食いまくった。5人前を食べて、やっと満足した
浮竹。勘定は凄いことになっていたが、京楽には痛い額ではなかった。
「うーん。ちょっと食べすぎた」
「そりゃ、あんなに食べたらね・・・・」
「今日は流石に、夕餉は食べれそうにないな」
「あれだけ食べて、夕餉が入るならそれこそ末恐ろしい・・・・」
限界まで食べたので、運動を兼ねて徒歩で帰った。
「ああ、幸せだな」
甘味物を好きなだけ食べたのは、これが初めてかもしれない。いつも、どこかでセーブしていた。限界まで食べたのは、生まれて初めてだ。
糖分のとりすぎとか、問題は普通いろいろありそうなのだが、浮竹は甘味物を食べても太らない。
今日は泊まることにしているので、京楽の分だけ夕餉がでてきた。
デザートは、メロンだった。
じーっとそれを見つめるものだから、浮竹にあげた。
浮竹は、あれほど食べたが、消化が進んだのか、ぺろりと平らげてしまった。
「今日はありがとうな、京楽。甘味屋に連れて行ってくれて」
「入院してた時に約束したからね」
浮竹は、自分から触れるだけのキスをした。
考えれば、浮竹が倒れてからずっとしていないのだ。
「今日は・・・無理かな。明日の夜、いいかい?」
「ん・・・・ああ」
京楽からのキスを受けながら、浮竹は頷いた。
その日は、1つの寝具でお互い何度も口づけあい、抱擁して眠った。
何も異常のない、平和な1日。
それがとても幸せなことなのだと、噛みしめるのだった。
目の前で、浮竹は血を吐いた。
ごほごほと咳込む浮竹。
真紅の色だけが鮮明で、京楽は動けないでいた。
それから、はっとなって、浮竹の名前を呼ぶ。
「浮竹、大丈夫かい、浮竹!」
「きょうら・・・・ごふっ」
ヒューヒューと喉が鳴る。様子がおかしい。
「血がのどにつまったのか!」
京楽は、浮竹から血をすいあげて、なんとか呼吸ができるように気道を確保すると、抱き上げた。
「今すぐ、4番隊のところに連れていくからね!」
瞬歩で、4番隊までつくと、すぐに卯ノ花が呼ばれた。
「急に、咳込んで血を吐いたんだよ」
ここ数か月、血を吐いていなかったので、浮竹が肺の病を持っていると忘れていたのだ。
久しぶりの発作は酷く、回道で手当てしても血を吐き続けた。
「まずいですね。集中治療室まで、移動させます」
卯ノ花の決断に、京楽も従う。
浮竹を抱き上げて、集中治療室まで行った。
あとは、浮竹の体力次第だった。
集中治療室の大きな窓の向こう側から、浮竹を見る。点滴を受けて、人工呼吸器をつけられた浮竹を見るのは、半年ぶりくらいだった。
「浮竹・・・」
どうか、回復しますように。
今は、ただ祈るしかなかった。
数日が経った。相変わらず、浮竹の意識は戻らないままで、一度心肺停止状態に陥り、なんとか回復したが、呼吸は浅く、脈も弱いままだった。
「浮竹、大好きだよ」
集中治療室の硝子越しに、浮竹を見る。
「・・・・・・・・きょうら・・・・・く・・・・」
「浮竹!?」
意識を取り戻した浮竹は、立ち上がって、人工呼吸器を外し点滴の管も外して、硝子越しにいる京楽とキスをした。
硝子を一枚隔てたキス。手が、硝子一枚を隔てて、重なり合う。
集中治療室に入り、浮竹をベッドに横たわらせると、ナースコールを押した。
すぐに、卯ノ花がやってきてくれた。
「気づかれたのですね。肺に痛みはありますか?」
「大丈夫だ、卯ノ花隊長。意識もしっかりしている」
「そうですか。では、普通の病室に移動しましょう。念のため、そこで3日ほど過ごして問題がないよなら、退院ですね」
体重の軽くなった浮竹を抱き上げて、普通の病室まで移動すると、あいていたベッドに横たえた。
「京楽隊長も、ちゃんと休んでくださいね」
浮竹の意識が戻らぬせいで、眠るに眠れぬ日々を過ごしていた京楽は、卯ノ花に礼を言うと、仮眠室で横になった。
久しぶりに、深く眠った。
「浮竹、起きてるかい?」
「ん、ああ」
「ここ数日、湯あみできなくて気持ち悪いでしょう。体ふいてあげるよ」
「ああ、頼む」
すっかり肉の削げ落ちた、細くなった体を濡れた蒸しタオルでふいていく。つま先まで綺麗に吹き終えて、大分すっきりしたのか、浮竹は嬉し気だった。
「あと、2日我慢したら、退院できるそうだ」
すでに、食事は普通のものを食べていた。
「退院したら、甘味屋に行こうか」
「お、いいな。満腹になるまで食ってやる」
「君が満腹になるまでって、何人分たべるんだか」
今からでもそんな光景が見えて、嬉しくなった。
やはり、元気な浮竹が一番いい。
病気で儚げない浮竹が嫌いというわけではないが、想い人が元気であることに越したことはない。
それから、2日が経った。
浮竹はそれから発作も起こさず、検査でも異常が見つからなかったため、退院となった。
一度心肺停止状態にまで陥ったことが、嘘のようだ。
瞬歩は体力を使うので、歩いて移動する。浮竹を抱き上げて瞬歩で雨乾堂まで戻ることもできたが、落ちてしまった体力を戻すためのリハビリも兼ねて、徒歩で移動した。
2時間ほどかけて、雨乾堂についた。
「はぁ、我が家だ」
浮竹は、病院で湯あみもしたが、やはり雨乾堂の湯殿が好きなのか、さっそくお風呂に入ってさっぱりしてから、敷かれた布団に横になった。
京楽も、同じ布団で横になった。そのまま、午睡した。
数日がそれから経った。元気を取り戻した浮竹は、よく食べて運動し、落ちていた筋力も戻りつつあった。
「よし、甘味屋にいくぞ!」
もう、瞬歩を使っても平気なまでに回復した。
「壬生の甘味屋までいくぞ、京楽!」
「はいはい」
「どっちが先につくか競争だ!」
お互い、瞬歩で移動した。京楽が勝った。
「くそ、まだ本調子じゃないか」
「あれだけ瞬歩で飛ばせるなら、十分だよ」
京楽が恐れていた通り、浮竹は甘味物を食った。食いまくった。5人前を食べて、やっと満足した
浮竹。勘定は凄いことになっていたが、京楽には痛い額ではなかった。
「うーん。ちょっと食べすぎた」
「そりゃ、あんなに食べたらね・・・・」
「今日は流石に、夕餉は食べれそうにないな」
「あれだけ食べて、夕餉が入るならそれこそ末恐ろしい・・・・」
限界まで食べたので、運動を兼ねて徒歩で帰った。
「ああ、幸せだな」
甘味物を好きなだけ食べたのは、これが初めてかもしれない。いつも、どこかでセーブしていた。限界まで食べたのは、生まれて初めてだ。
糖分のとりすぎとか、問題は普通いろいろありそうなのだが、浮竹は甘味物を食べても太らない。
今日は泊まることにしているので、京楽の分だけ夕餉がでてきた。
デザートは、メロンだった。
じーっとそれを見つめるものだから、浮竹にあげた。
浮竹は、あれほど食べたが、消化が進んだのか、ぺろりと平らげてしまった。
「今日はありがとうな、京楽。甘味屋に連れて行ってくれて」
「入院してた時に約束したからね」
浮竹は、自分から触れるだけのキスをした。
考えれば、浮竹が倒れてからずっとしていないのだ。
「今日は・・・無理かな。明日の夜、いいかい?」
「ん・・・・ああ」
京楽からのキスを受けながら、浮竹は頷いた。
その日は、1つの寝具でお互い何度も口づけあい、抱擁して眠った。
何も異常のない、平和な1日。
それがとても幸せなことなのだと、噛みしめるのだった。
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