忍者ブログ

プログ

小説掲載プログ
06 2025/07 1 2 3 4 7 9 15 16 17 18 1920 21 22 23 24 25 2627 28 29 30 31 08

春うらら

「隊長・・・・・いい匂いがする」

「白桃の湯に浸かったのだ。その匂いであろう」

「あー抱き締めたい。抱きしめていいっすか?」

念のため、承諾の許可をとる。

「好きにしろ」

そう言われたので、白哉を腕の中に抱きしめた。

「最近、ずっとこんな甘い香させてますね。食べたくなっちゃいそう」

「食べられては困る」

美しく整った顔に、少しだけ笑みが浮かんだ。

沈着冷静、鉄面皮。

表情を出さないことが多いだけで、何も感情をまるっきり外にださないわけではないのだ。

微笑む時もあるし、怒る時もある。

「そろそろ離れろ。ここは執務室だ」

「あー残念。別邸の館なら、あんたを押し倒していたのに」

その言葉に、白皙の美貌に朱がさした。

気品があり、気高く、けれど儚く、けれど強く。

白哉を表現するには、一言では無理だ。

恋次は、そんな白哉が好きだった。自分の体の下に組み敷かれて、その細く白い体で乱れる様を見るのが好きだった。

白哉を―——隊長を乱れさせるのは、自分だけと分かっているから、優越感にも浸れる。

「好きです、隊長」

「私は・・・・・」

いつも、言葉を途中で止めてしまう。

でも、抱いている時は素直に好きだといってくれる。

「隊長、今夜いいですか」

「だめだ」

「どうしてですか」

「恋次、お前は盛りすぎだ。3日前も抱いたばかりであろう」

「俺としては、毎日抱きたいんすけどね」

「私の体がもたぬ」

「優しくしますから・・・・だめ?」

「だめなものはだめだ」

その会話は終わりだとばかりに、恋次の前にどさりと書類が置かれた。

「恋次も、仕事をしろ」

「はぁ、やっぱだめか」

残念がりつつも、仕事をこなしていく。

ぽかぽかと、春の日差しが窓から入ってくる。

気づくと、うとうとしていた。よく怒られなかったものだと、白哉の方を見ると、なんと珍しいことに白哉が、眠っていた。

起こしたほうがいいのか逡巡する。

別に、最近睡眠不足というわけでもなさそうだ。ただ、春のうららかな日差しにやられてしまっているようだった。

恋次は、済に置かれていた仮眠時用の毛布を、そっと白哉の肩にかけた。

「ん・・・・・・」

起こしてしまったかと思ったが、白哉の眠りは深いようで、起きなかった。

1時間ほどして、白哉は起きた。

副官が、毛布をかけてくれていたことに驚くが、その副官が書類の上に頭を乗せて寝ているのを見て、白哉は恋次の頭をはたいた。

「起きろ。仕事をしろ」

「はっ・・・俺、寝てました?」

「よだれのあとがある」

「うわ、最悪だ。すんません、隊長。隊長も寝ていたから、お相子ですよ」

「私は、今日の分の仕事はもう全て片した後に眠ってしまったのだ。恋次の仕事はまだあるぞ」

「うわ、これ急がないと終了時刻まで間に合いそうもない」

「言っておくが、手伝わぬからな」

そんな優しい白哉ではない。

恋次は、何故寝てしまったのかと自分を呪いながら、結局残業する羽目になるのであった。

拍手[0回]

PR
URL
FONT COLOR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS

TRACK BACK

トラックバックURLはこちら
新着記事
(07/14)
(07/13)
(07/13)
(07/12)
(07/12)
"ココはカウンター設置場所"