色のない世界番外編 花の神と夢魔
「京楽?」
浮竹は、闇の中にいた。
ああ、これは夢だ。
京楽が、血を流して倒れていた。心臓に、斬魄刀を突き刺して、自害していた。傍らには、吐血して絶命した自分の姿。
ああ、嫌な夢だ。
早く覚めてくれればいいのに。
(今、夢だと思ったな?違う、これはいつか来たるべきそう遠くない未来の世界。そのヒトコマ)
声がして、はっとなった。
「夢見せの虚か!」
最近話題というか、現実になる夢を見せるとして有名な「夢見せの虚」に夢を見せられたのだと分かって、意識を覚醒させる。
「こんなもの、ただの夢だ!」
通常、夢見せの虚に夢を見せられた者は、そのまま廃人となって虚に食われるか、逃れてもその夢の通りになって死ぬという。
「こんな夢!」
双魚の理を始解して、夢見せの虚を切り裂いた。
「ぎゃああああああああ!ゆ、夢の通りになる・・・・いつか、お前はあの夢の通りに死に、愛する男を・・・・あああああ・・・・・・」
霊子の塵となっていく虚を無視して、剣を収めた。
「大丈夫ですか、隊長!」
かけつけてきたルキアが、声をかけてくれた。
「隊長は、お前のほうだろう」
浮竹は、苦笑した。
13番隊の席官の一人が、夢見せの虚にやられ、夢を見せられてそのまま夢の通りに死んだ。
他の隊でも、夢見せの虚にやられる死神が後を絶たず、13番隊隊長のルキアと、元13番隊隊長であった浮竹が、共に討伐に乗り出したのだ。
花の神の力でもう一度、この世に生を受けた浮竹は、肺の病を完治させている。
それから考えても、あんな夢の通りにはならないはずだ。
でも、夢見せの虚は、現実になる夢を見せるという。
それは、強い暗示でもあった。
「ぐ・・・・ごほっごほっ」
肺がずきりと痛み、気づくと吐血していた。
「隊長!そんな、病は治ったはずじゃ!」
「こんな・・・・ばかな・・・・」
吐血しながら、浮竹は意識を失った。
次に気づいた時は、一番隊の寝室だった。
「大丈夫、浮竹?」
京楽が、心配そうにこちらを見ていた。
「ああ、大丈夫だ。肺も痛まないし、一時期的なものだろう」
「一応、虎鉄隊長に見てもらったけど、肺の病ではないって」
「そうか、よかった」
花の神に、病まで癒してもらたのだ。
肺の病が再発する可能性はゼロではないが、違うと分かって安堵した。
「あんな夢・・・・」
「夢見せの虚に、夢を見せられたんだろう?どんな夢なの」
見た夢をそのまま語ると、暗い表情で京楽が浮竹を抱き締めた。
「大丈夫。君の肺の病は癒えている。僕は、確かに君を失えば後を追うかもしれないけれど、大丈夫」
大丈夫と強く言い聞かせてくる京楽は、かたかたと震えていた。
「京楽、お前の方こそ大丈夫か?」
「僕は・・・君が吐血したと聞いて、真っ暗になった。また君を失うんじゃないかと・・・・」
京楽を抱き締めると、かたかたと震えていた京楽の震えも治まった。
「この命は、お互い花の神にもらったもの。そんな簡単に、死んだりしない・・・ぐっ、ごほっごほっ」
ぼたりぼたりと、血を吐いた。大量に吐血した。
「何故・・・・・」
そのまま、浮竹はガクリと、息絶えた。
「浮竹!うきたけーーーーーーーー!そんな!」
京楽はたくさんの涙を零して、浮竹を抱き締めていた。でも、その瞳は見開かれたままで、瞬きをすることは永遠になかった。
「君のいないこの世界なんて・・・・・・!」
京楽は、斬魄刀を引き抜くと、自分の心臓に突き刺していた。
たくさんの血が流れて、京楽も絶命する。
これで、二人の未来は終わり。花の神にもう一度もらった、その命も終わり。
「生きろ、俺!目覚めろ、俺!これは全てまやかし。夢だ!生きて、意識を取り戻して剣をとれ!」
真っ暗になった世界に響く声。
そして、彼は目覚めた。
ぶわり。
甘い花の香させて。
「よくも・・・・・俺だけでなく、京楽にまでこんな夢を・・・・・」
ぶわりと、花の香が広がる。
それは、虚に限りなく近い、精神存在。人にとりついて、命をすする、夢魔。
とりつかれている相手と一緒に殺すか、その精神存在を殺すしかない。
夢見せの虚と呼ばれる虚に寄生していた、精神存在を、浮竹は同じく精神存在となって、剣をとり引き裂いた。
(ばかな・・・・精神体である私を、死神ごときが切れるはずが・・・・・)
ふわりと。
空間に、もう一人、甘い花の香をさせる男がやってきた。
「よくもまぁ、あんな夢を・・・・確かに、浮竹が死んだら僕も死ぬけど、勝手に殺さないでほしいね」
「京楽、剣は握れるか」
「勿論」
二人は、始解すると、夢魔を粉々に切り裂いた。
「さて、どうすれば現実に戻れる?そもそも、現実はどうなっているのかな?」
「花の神が・・・・道標をくれるようだ」
神の領域に、精神体(アストラル)として入ってしまった二人は、地面に散らばる花びらの後を辿って辿って、現実世界に戻った。
目を開ける。
「あっ、目覚められました!」
1番隊の寝室だった。
浮竹は、自分の体に何処も異常がないのを確認して、半身を起こす。
「嫌な夢だったねぇ」
隣では、京楽がこれまた異常なく半身を起こした。
「俺たちは、どうなっていたんだ?」
その問いに、ルキアが答える。
「浮竹隊長が、夢見せの夢魔を葬った後、意識をなくして、そのまま同じ糸がついていた京楽総隊長も意識を失われて・・・・・夢魔に、とりつかれていました」
「ふうむ」
「うーん」
「夢魔に一度とりつかれると、精神世界で己を取り戻して夢魔を殺すか、一緒に殺すしかないので・・・・どうにか、方法がないかと、皆で探っていた途中でした」
ぶわりと、花の甘い香が広がった。
存在をなくしていたはずの、花の神が降臨する。
「愛児たちに手を出すからだ。粉々にできる力を愛児たちに与えた。粉々にしたのだろう?」
「勿論」
「当たり前だ」
時が、止まっていた。
ルキアたちには、花の神の存在は見えない。見えてはならない。
「愛児たちの紡ぐ未来に、水をさすからこうなる夢魔のナイトメア」
じわりと、空間に闇が広がった。
「花の神か・・・・・どうりで、甘い匂いがする獲物なわけだ。夢魔である私を粉々にするとは・・・まぁいい、次の獲物を探しにでもいく」
夢魔ことナイトメアは神に近い。
それだけを言い残すと、闇の残滓となって消えてしまった。
「私が命を与えたのだ。そうやすやすと、命を刈り取られるなよ、愛児たちよ」
「分かっている」
「ああ」
花の神は、紅色の髪と瞳の青年の姿をしていた。花を思わせる豪奢な作りの衣服を着ていた。
「私は、また世界を渡る。それでは、また会う時まで」
花の神は、桜の花びらをたくさん降らせて、いってしまった。
時が動きだす。
「ええっ、花びら?どうなってういるのですか、浮竹隊長、京楽総隊長!」
説明すると長くなるので、命の恩人が来たとだけ伝えた。
「それにしても、夢魔に見せられた夢はいやなものだったね」
「ああ。俺たちが、花の神に命をもらわないと、実際にああなっていたかもしれない未来を思いおこさせる」
浮竹と京楽は、他の者たちに下がってもらっていた。
二人きりでいたいと。
「やっぱり、花の神が降臨したせいかな・・・・・甘い花の香が部屋中に広がってる」
京楽は、浮竹を抱き締めた。
浮竹も、京楽を抱き締める。
「お互い、引退するまで、一緒にいようね」
「いつ引退するんだ」
「さぁ。500年くらい、先じゃないかな」
「随分と、遠い未来だな」
くすくすと、二人で笑みを零す。
花の甘い香を、しばらくの間二人は濃くしていたのだった。
花の神は、世界を渡り歩く。
やがて、1つの世界へとたどり着く。
「禁忌という名の」https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18422255に続く。
浮竹は、闇の中にいた。
ああ、これは夢だ。
京楽が、血を流して倒れていた。心臓に、斬魄刀を突き刺して、自害していた。傍らには、吐血して絶命した自分の姿。
ああ、嫌な夢だ。
早く覚めてくれればいいのに。
(今、夢だと思ったな?違う、これはいつか来たるべきそう遠くない未来の世界。そのヒトコマ)
声がして、はっとなった。
「夢見せの虚か!」
最近話題というか、現実になる夢を見せるとして有名な「夢見せの虚」に夢を見せられたのだと分かって、意識を覚醒させる。
「こんなもの、ただの夢だ!」
通常、夢見せの虚に夢を見せられた者は、そのまま廃人となって虚に食われるか、逃れてもその夢の通りになって死ぬという。
「こんな夢!」
双魚の理を始解して、夢見せの虚を切り裂いた。
「ぎゃああああああああ!ゆ、夢の通りになる・・・・いつか、お前はあの夢の通りに死に、愛する男を・・・・あああああ・・・・・・」
霊子の塵となっていく虚を無視して、剣を収めた。
「大丈夫ですか、隊長!」
かけつけてきたルキアが、声をかけてくれた。
「隊長は、お前のほうだろう」
浮竹は、苦笑した。
13番隊の席官の一人が、夢見せの虚にやられ、夢を見せられてそのまま夢の通りに死んだ。
他の隊でも、夢見せの虚にやられる死神が後を絶たず、13番隊隊長のルキアと、元13番隊隊長であった浮竹が、共に討伐に乗り出したのだ。
花の神の力でもう一度、この世に生を受けた浮竹は、肺の病を完治させている。
それから考えても、あんな夢の通りにはならないはずだ。
でも、夢見せの虚は、現実になる夢を見せるという。
それは、強い暗示でもあった。
「ぐ・・・・ごほっごほっ」
肺がずきりと痛み、気づくと吐血していた。
「隊長!そんな、病は治ったはずじゃ!」
「こんな・・・・ばかな・・・・」
吐血しながら、浮竹は意識を失った。
次に気づいた時は、一番隊の寝室だった。
「大丈夫、浮竹?」
京楽が、心配そうにこちらを見ていた。
「ああ、大丈夫だ。肺も痛まないし、一時期的なものだろう」
「一応、虎鉄隊長に見てもらったけど、肺の病ではないって」
「そうか、よかった」
花の神に、病まで癒してもらたのだ。
肺の病が再発する可能性はゼロではないが、違うと分かって安堵した。
「あんな夢・・・・」
「夢見せの虚に、夢を見せられたんだろう?どんな夢なの」
見た夢をそのまま語ると、暗い表情で京楽が浮竹を抱き締めた。
「大丈夫。君の肺の病は癒えている。僕は、確かに君を失えば後を追うかもしれないけれど、大丈夫」
大丈夫と強く言い聞かせてくる京楽は、かたかたと震えていた。
「京楽、お前の方こそ大丈夫か?」
「僕は・・・君が吐血したと聞いて、真っ暗になった。また君を失うんじゃないかと・・・・」
京楽を抱き締めると、かたかたと震えていた京楽の震えも治まった。
「この命は、お互い花の神にもらったもの。そんな簡単に、死んだりしない・・・ぐっ、ごほっごほっ」
ぼたりぼたりと、血を吐いた。大量に吐血した。
「何故・・・・・」
そのまま、浮竹はガクリと、息絶えた。
「浮竹!うきたけーーーーーーーー!そんな!」
京楽はたくさんの涙を零して、浮竹を抱き締めていた。でも、その瞳は見開かれたままで、瞬きをすることは永遠になかった。
「君のいないこの世界なんて・・・・・・!」
京楽は、斬魄刀を引き抜くと、自分の心臓に突き刺していた。
たくさんの血が流れて、京楽も絶命する。
これで、二人の未来は終わり。花の神にもう一度もらった、その命も終わり。
「生きろ、俺!目覚めろ、俺!これは全てまやかし。夢だ!生きて、意識を取り戻して剣をとれ!」
真っ暗になった世界に響く声。
そして、彼は目覚めた。
ぶわり。
甘い花の香させて。
「よくも・・・・・俺だけでなく、京楽にまでこんな夢を・・・・・」
ぶわりと、花の香が広がる。
それは、虚に限りなく近い、精神存在。人にとりついて、命をすする、夢魔。
とりつかれている相手と一緒に殺すか、その精神存在を殺すしかない。
夢見せの虚と呼ばれる虚に寄生していた、精神存在を、浮竹は同じく精神存在となって、剣をとり引き裂いた。
(ばかな・・・・精神体である私を、死神ごときが切れるはずが・・・・・)
ふわりと。
空間に、もう一人、甘い花の香をさせる男がやってきた。
「よくもまぁ、あんな夢を・・・・確かに、浮竹が死んだら僕も死ぬけど、勝手に殺さないでほしいね」
「京楽、剣は握れるか」
「勿論」
二人は、始解すると、夢魔を粉々に切り裂いた。
「さて、どうすれば現実に戻れる?そもそも、現実はどうなっているのかな?」
「花の神が・・・・道標をくれるようだ」
神の領域に、精神体(アストラル)として入ってしまった二人は、地面に散らばる花びらの後を辿って辿って、現実世界に戻った。
目を開ける。
「あっ、目覚められました!」
1番隊の寝室だった。
浮竹は、自分の体に何処も異常がないのを確認して、半身を起こす。
「嫌な夢だったねぇ」
隣では、京楽がこれまた異常なく半身を起こした。
「俺たちは、どうなっていたんだ?」
その問いに、ルキアが答える。
「浮竹隊長が、夢見せの夢魔を葬った後、意識をなくして、そのまま同じ糸がついていた京楽総隊長も意識を失われて・・・・・夢魔に、とりつかれていました」
「ふうむ」
「うーん」
「夢魔に一度とりつかれると、精神世界で己を取り戻して夢魔を殺すか、一緒に殺すしかないので・・・・どうにか、方法がないかと、皆で探っていた途中でした」
ぶわりと、花の甘い香が広がった。
存在をなくしていたはずの、花の神が降臨する。
「愛児たちに手を出すからだ。粉々にできる力を愛児たちに与えた。粉々にしたのだろう?」
「勿論」
「当たり前だ」
時が、止まっていた。
ルキアたちには、花の神の存在は見えない。見えてはならない。
「愛児たちの紡ぐ未来に、水をさすからこうなる夢魔のナイトメア」
じわりと、空間に闇が広がった。
「花の神か・・・・・どうりで、甘い匂いがする獲物なわけだ。夢魔である私を粉々にするとは・・・まぁいい、次の獲物を探しにでもいく」
夢魔ことナイトメアは神に近い。
それだけを言い残すと、闇の残滓となって消えてしまった。
「私が命を与えたのだ。そうやすやすと、命を刈り取られるなよ、愛児たちよ」
「分かっている」
「ああ」
花の神は、紅色の髪と瞳の青年の姿をしていた。花を思わせる豪奢な作りの衣服を着ていた。
「私は、また世界を渡る。それでは、また会う時まで」
花の神は、桜の花びらをたくさん降らせて、いってしまった。
時が動きだす。
「ええっ、花びら?どうなってういるのですか、浮竹隊長、京楽総隊長!」
説明すると長くなるので、命の恩人が来たとだけ伝えた。
「それにしても、夢魔に見せられた夢はいやなものだったね」
「ああ。俺たちが、花の神に命をもらわないと、実際にああなっていたかもしれない未来を思いおこさせる」
浮竹と京楽は、他の者たちに下がってもらっていた。
二人きりでいたいと。
「やっぱり、花の神が降臨したせいかな・・・・・甘い花の香が部屋中に広がってる」
京楽は、浮竹を抱き締めた。
浮竹も、京楽を抱き締める。
「お互い、引退するまで、一緒にいようね」
「いつ引退するんだ」
「さぁ。500年くらい、先じゃないかな」
「随分と、遠い未来だな」
くすくすと、二人で笑みを零す。
花の甘い香を、しばらくの間二人は濃くしていたのだった。
花の神は、世界を渡り歩く。
やがて、1つの世界へとたどり着く。
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