白哉との約束
現世にきたとき、白哉と約束をしていた。
もしも想いが実らず、振られたのならば、もう一生現世にいかぬようにと。たとえ、黒崎一護が寿命を迎え、その魂魄が尸魂界に来ても、決して会うことなどするなと。
ルキアは、遠くから一護の姿を見守っていた。
一護の隣には、井上がいた。
にこにこと笑んでいて、楽しそうだった。一護と一緒にいて、幸せそうだった。
本来なら、あの場所は私のもの。
そう思った。
なんて醜い。愛した人を裏切り、捨てて、一度尸魂界に戻り、理由も告げずに他の男と婚姻し子供までもうけた自分。
それなのに、あの位置に戻ることを欲していた。
二人のあとをつけて、水族館に入った。
ふわふわと揺れる海月が、まるで自分に見えた。
世界の片隅で、一護を求めてふわふわと漂う海月。一護をその、触手の先にある毒でからめとって、自分の傍まで落としていきたい。
海月はまるで私だ。
何処に行く当てがあるわけでもなく、ふわふわと世界を漂う。
触手で一護を絡めとって、毒で自分のものにしてしまう。
井上など、いなくなってしまえ。
一護は、私のものだ。
井上など、存在しなくなれ。斬魄刀で、井上を切り裂いた。そして、放心している一護に「貴様は私ものだ」と囁いた。
ああ、なんて醜いこの想い。
はっと起きると、一護の部屋だった。
「夢か・・・・なんて酷い夢だ」
井上をその手にかけるなど。寝汗をかいていたので、一護に頼んで朝のシャワーを浴びせてもらった。
昨日のうちに処理したのか、井上のものとおぼしきシャンプーはなくなっていた。
一護の使っているシャンプーで髪を洗い、ボディーソープで肌を洗った。
シャワーからあがると、いい匂いがしていた。
「おい、ルキア。スクランブルエッグでもいいよな?トースト焼いたから、服着たら皿だして冷蔵庫からバターだしてくれ」
「ああ、分かった」
ルキアは、昨日とは違うワンピースを着た。今は5月。
一護と別れて、ちょうど3年と少し。
服を着たルキアは、皿をだしてトーストを置くと、冷蔵庫からバターを取り出して、二人分のバターをトーストに塗った。
「なぁ、今度はいつまでこっちにいられるんだ?」
一護が、トーストをかじりながら、聞いてくる。
「兄様と、約束をしたのだ。想いが実らずに振られたら、もう一生現世にはいかぬと。その代わり、想いが実ったのなら、5年の期間を与えると」
「5年?そんなにいられるのか」
ルキアは教えてくれた。
4大貴族にしかならない奇病のせいで、13番隊副隊長を引退したこと。その後、病が癒えたとはいえ、心の傷になっていて、とても13番隊副隊長に復帰できないこと。
全ての決着次第で、現世には永久にいかぬこと。ただし、想いが実ったのであれば5年の期間を与え、その間に人間になるか、死神のままでいるかを選ぶこと。
「人間になる?ルキアが?」
「そうだ。兄様と話しをつけたのだ。5年後のありよう次第で、私は朽木ルキアという名を捨て、ただのルキアになる。尸魂界から、追放という形で」
「そっか・・・そこまで、白哉が・・・・」
一護は、しんみりとしていた。
そして、今までの3年間どうしていたかを今度は教えてくれた。
翻訳家を目指している。
始めは、医者を目指していた。だが、頭がそこまでよくないし、インターン生など、寝る間もあまりないという。ルキアのことを考えると、インターン生は無理だと思った。
石田とスマホで直接話したが、石田はすでにインターン生として忙しい毎日を送っているという。茶虎も、プロボクサーとしてもう名前は世界中に響き渡っている。
英語もそこそこ話せるが、英語は翻訳できる者が多いため、ドイツ語を選んだ。
3年生の時、3か月間留学した。
ドイツ語はもう日常会話も平気でできて、分厚い本でも読むことができる。
4年生になった今は、就職先の出版社を探している。
井上とは、ルキアが去った次の日には会い、慰めてもらい、誘われて誘われるまま、蛾が蛍光灯に群がるように抱いて、3年間付き合っていたこと。
将来、結婚も視野にいれていたこと。
そこにルキアがやってきて、全ての未来像が大きく歪んだこと。
「私は・・・・本当に、これでよかったのだろうか」
愛する者を、たとえ病のためとはいえ、産んだ子供を尸魂界に永久に残すかもしれないことに。
「俺は、お前の子なら、たとえ俺の血を引いていなくても育てるぞ」
「心配ない。四楓院家の姫君として育ててくれると、四楓院夕四郎咲宗殿がおっしゃってくれた」
「俺以外の男のことは考えるな。忘れちまえ」
「うむ・・・・」
「そうだ、今日は休みだし、昨日の水族館にもう1回行かねーか?なんか、昨日のままだと、酔い思い出にならないから」
「でも、井上が・・・・デートなど、してよいのだろうか」
「井上のことは、俺に任せてくれ」
きっちりと、別れ話をすると。
そう言ってくれた。
その日は、昨日きた水族館に来ていた。昨日は違う彼女と。今日は本命と。
たいした、クズ男だ。
自分でも嫌気がさす。
「海月・・・・好きなのだ。まるで私のようだ」
ふわふわと漂う海月を見ていた。
飽きもせず、10分くらい眺めていた。
「もういいだろ。次、行くぞ」
「ああ」
一護の隣に、またいれる。
恋次には止められたが、私はきっと、人間として生きる道を選ぶ。
朽木家を捨てて。
ただの、ルキアになる。
もともとがそうであったように。
恋次と、義兄の顔がちらついた。気づけば、涙を流していた。
「ルキア?どっか痛いのか?」
恋しい。
恋次が。白哉が。
人間になると、全てを捨てなければならない。
そのことを素直に一護に話すと、一護は別の方法はないかと言ってきた。
「別とは?」
「俺が、死神になる、方法だ。本物の死神になる方法」
「あ・・・・・・」
そんな可能性、一つも考えていなかった。
白哉に伝令神機で連絡をとると、死神化できるのなら、本当の死神になる方法もあると言われた。
「でも、一護、貴様が死神になれば、家族と・・・・・・」
「家族より、俺はルキアをとる」
「一護・・・・」
涙が溢れた。
「愛してる、ルキア」
「愛してる、一護」
その二人の姿を、呪うように見ている女がいることなど、二人は気づかなかった。
もしも想いが実らず、振られたのならば、もう一生現世にいかぬようにと。たとえ、黒崎一護が寿命を迎え、その魂魄が尸魂界に来ても、決して会うことなどするなと。
ルキアは、遠くから一護の姿を見守っていた。
一護の隣には、井上がいた。
にこにこと笑んでいて、楽しそうだった。一護と一緒にいて、幸せそうだった。
本来なら、あの場所は私のもの。
そう思った。
なんて醜い。愛した人を裏切り、捨てて、一度尸魂界に戻り、理由も告げずに他の男と婚姻し子供までもうけた自分。
それなのに、あの位置に戻ることを欲していた。
二人のあとをつけて、水族館に入った。
ふわふわと揺れる海月が、まるで自分に見えた。
世界の片隅で、一護を求めてふわふわと漂う海月。一護をその、触手の先にある毒でからめとって、自分の傍まで落としていきたい。
海月はまるで私だ。
何処に行く当てがあるわけでもなく、ふわふわと世界を漂う。
触手で一護を絡めとって、毒で自分のものにしてしまう。
井上など、いなくなってしまえ。
一護は、私のものだ。
井上など、存在しなくなれ。斬魄刀で、井上を切り裂いた。そして、放心している一護に「貴様は私ものだ」と囁いた。
ああ、なんて醜いこの想い。
はっと起きると、一護の部屋だった。
「夢か・・・・なんて酷い夢だ」
井上をその手にかけるなど。寝汗をかいていたので、一護に頼んで朝のシャワーを浴びせてもらった。
昨日のうちに処理したのか、井上のものとおぼしきシャンプーはなくなっていた。
一護の使っているシャンプーで髪を洗い、ボディーソープで肌を洗った。
シャワーからあがると、いい匂いがしていた。
「おい、ルキア。スクランブルエッグでもいいよな?トースト焼いたから、服着たら皿だして冷蔵庫からバターだしてくれ」
「ああ、分かった」
ルキアは、昨日とは違うワンピースを着た。今は5月。
一護と別れて、ちょうど3年と少し。
服を着たルキアは、皿をだしてトーストを置くと、冷蔵庫からバターを取り出して、二人分のバターをトーストに塗った。
「なぁ、今度はいつまでこっちにいられるんだ?」
一護が、トーストをかじりながら、聞いてくる。
「兄様と、約束をしたのだ。想いが実らずに振られたら、もう一生現世にはいかぬと。その代わり、想いが実ったのなら、5年の期間を与えると」
「5年?そんなにいられるのか」
ルキアは教えてくれた。
4大貴族にしかならない奇病のせいで、13番隊副隊長を引退したこと。その後、病が癒えたとはいえ、心の傷になっていて、とても13番隊副隊長に復帰できないこと。
全ての決着次第で、現世には永久にいかぬこと。ただし、想いが実ったのであれば5年の期間を与え、その間に人間になるか、死神のままでいるかを選ぶこと。
「人間になる?ルキアが?」
「そうだ。兄様と話しをつけたのだ。5年後のありよう次第で、私は朽木ルキアという名を捨て、ただのルキアになる。尸魂界から、追放という形で」
「そっか・・・そこまで、白哉が・・・・」
一護は、しんみりとしていた。
そして、今までの3年間どうしていたかを今度は教えてくれた。
翻訳家を目指している。
始めは、医者を目指していた。だが、頭がそこまでよくないし、インターン生など、寝る間もあまりないという。ルキアのことを考えると、インターン生は無理だと思った。
石田とスマホで直接話したが、石田はすでにインターン生として忙しい毎日を送っているという。茶虎も、プロボクサーとしてもう名前は世界中に響き渡っている。
英語もそこそこ話せるが、英語は翻訳できる者が多いため、ドイツ語を選んだ。
3年生の時、3か月間留学した。
ドイツ語はもう日常会話も平気でできて、分厚い本でも読むことができる。
4年生になった今は、就職先の出版社を探している。
井上とは、ルキアが去った次の日には会い、慰めてもらい、誘われて誘われるまま、蛾が蛍光灯に群がるように抱いて、3年間付き合っていたこと。
将来、結婚も視野にいれていたこと。
そこにルキアがやってきて、全ての未来像が大きく歪んだこと。
「私は・・・・本当に、これでよかったのだろうか」
愛する者を、たとえ病のためとはいえ、産んだ子供を尸魂界に永久に残すかもしれないことに。
「俺は、お前の子なら、たとえ俺の血を引いていなくても育てるぞ」
「心配ない。四楓院家の姫君として育ててくれると、四楓院夕四郎咲宗殿がおっしゃってくれた」
「俺以外の男のことは考えるな。忘れちまえ」
「うむ・・・・」
「そうだ、今日は休みだし、昨日の水族館にもう1回行かねーか?なんか、昨日のままだと、酔い思い出にならないから」
「でも、井上が・・・・デートなど、してよいのだろうか」
「井上のことは、俺に任せてくれ」
きっちりと、別れ話をすると。
そう言ってくれた。
その日は、昨日きた水族館に来ていた。昨日は違う彼女と。今日は本命と。
たいした、クズ男だ。
自分でも嫌気がさす。
「海月・・・・好きなのだ。まるで私のようだ」
ふわふわと漂う海月を見ていた。
飽きもせず、10分くらい眺めていた。
「もういいだろ。次、行くぞ」
「ああ」
一護の隣に、またいれる。
恋次には止められたが、私はきっと、人間として生きる道を選ぶ。
朽木家を捨てて。
ただの、ルキアになる。
もともとがそうであったように。
恋次と、義兄の顔がちらついた。気づけば、涙を流していた。
「ルキア?どっか痛いのか?」
恋しい。
恋次が。白哉が。
人間になると、全てを捨てなければならない。
そのことを素直に一護に話すと、一護は別の方法はないかと言ってきた。
「別とは?」
「俺が、死神になる、方法だ。本物の死神になる方法」
「あ・・・・・・」
そんな可能性、一つも考えていなかった。
白哉に伝令神機で連絡をとると、死神化できるのなら、本当の死神になる方法もあると言われた。
「でも、一護、貴様が死神になれば、家族と・・・・・・」
「家族より、俺はルキアをとる」
「一護・・・・」
涙が溢れた。
「愛してる、ルキア」
「愛してる、一護」
その二人の姿を、呪うように見ている女がいることなど、二人は気づかなかった。
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