忍者ブログ

プログ

小説掲載プログ
10 2024/11 14 2324 28 29 30 12

白哉との約束

現世にきたとき、白哉と約束をしていた。

もしも想いが実らず、振られたのならば、もう一生現世にいかぬようにと。たとえ、黒崎一護が寿命を迎え、その魂魄が尸魂界に来ても、決して会うことなどするなと。

ルキアは、遠くから一護の姿を見守っていた。

一護の隣には、井上がいた。

にこにこと笑んでいて、楽しそうだった。一護と一緒にいて、幸せそうだった。

本来なら、あの場所は私のもの。

そう思った。

なんて醜い。愛した人を裏切り、捨てて、一度尸魂界に戻り、理由も告げずに他の男と婚姻し子供までもうけた自分。

それなのに、あの位置に戻ることを欲していた。

二人のあとをつけて、水族館に入った。

ふわふわと揺れる海月が、まるで自分に見えた。

世界の片隅で、一護を求めてふわふわと漂う海月。一護をその、触手の先にある毒でからめとって、自分の傍まで落としていきたい。

海月はまるで私だ。

何処に行く当てがあるわけでもなく、ふわふわと世界を漂う。

触手で一護を絡めとって、毒で自分のものにしてしまう。

井上など、いなくなってしまえ。

一護は、私のものだ。

井上など、存在しなくなれ。斬魄刀で、井上を切り裂いた。そして、放心している一護に「貴様は私ものだ」と囁いた。

ああ、なんて醜いこの想い。



はっと起きると、一護の部屋だった。

「夢か・・・・なんて酷い夢だ」

井上をその手にかけるなど。寝汗をかいていたので、一護に頼んで朝のシャワーを浴びせてもらった。

昨日のうちに処理したのか、井上のものとおぼしきシャンプーはなくなっていた。

一護の使っているシャンプーで髪を洗い、ボディーソープで肌を洗った。

シャワーからあがると、いい匂いがしていた。

「おい、ルキア。スクランブルエッグでもいいよな?トースト焼いたから、服着たら皿だして冷蔵庫からバターだしてくれ」

「ああ、分かった」

ルキアは、昨日とは違うワンピースを着た。今は5月。

一護と別れて、ちょうど3年と少し。

服を着たルキアは、皿をだしてトーストを置くと、冷蔵庫からバターを取り出して、二人分のバターをトーストに塗った。

「なぁ、今度はいつまでこっちにいられるんだ?」

一護が、トーストをかじりながら、聞いてくる。

「兄様と、約束をしたのだ。想いが実らずに振られたら、もう一生現世にはいかぬと。その代わり、想いが実ったのなら、5年の期間を与えると」

「5年?そんなにいられるのか」

ルキアは教えてくれた。

4大貴族にしかならない奇病のせいで、13番隊副隊長を引退したこと。その後、病が癒えたとはいえ、心の傷になっていて、とても13番隊副隊長に復帰できないこと。

全ての決着次第で、現世には永久にいかぬこと。ただし、想いが実ったのであれば5年の期間を与え、その間に人間になるか、死神のままでいるかを選ぶこと。

「人間になる?ルキアが?」

「そうだ。兄様と話しをつけたのだ。5年後のありよう次第で、私は朽木ルキアという名を捨て、ただのルキアになる。尸魂界から、追放という形で」

「そっか・・・そこまで、白哉が・・・・」

一護は、しんみりとしていた。

そして、今までの3年間どうしていたかを今度は教えてくれた。

翻訳家を目指している。

始めは、医者を目指していた。だが、頭がそこまでよくないし、インターン生など、寝る間もあまりないという。ルキアのことを考えると、インターン生は無理だと思った。

石田とスマホで直接話したが、石田はすでにインターン生として忙しい毎日を送っているという。茶虎も、プロボクサーとしてもう名前は世界中に響き渡っている。

英語もそこそこ話せるが、英語は翻訳できる者が多いため、ドイツ語を選んだ。

3年生の時、3か月間留学した。

ドイツ語はもう日常会話も平気でできて、分厚い本でも読むことができる。

4年生になった今は、就職先の出版社を探している。

井上とは、ルキアが去った次の日には会い、慰めてもらい、誘われて誘われるまま、蛾が蛍光灯に群がるように抱いて、3年間付き合っていたこと。

将来、結婚も視野にいれていたこと。

そこにルキアがやってきて、全ての未来像が大きく歪んだこと。

「私は・・・・本当に、これでよかったのだろうか」

愛する者を、たとえ病のためとはいえ、産んだ子供を尸魂界に永久に残すかもしれないことに。

「俺は、お前の子なら、たとえ俺の血を引いていなくても育てるぞ」

「心配ない。四楓院家の姫君として育ててくれると、四楓院夕四郎咲宗殿がおっしゃってくれた」

「俺以外の男のことは考えるな。忘れちまえ」

「うむ・・・・」

「そうだ、今日は休みだし、昨日の水族館にもう1回行かねーか?なんか、昨日のままだと、酔い思い出にならないから」

「でも、井上が・・・・デートなど、してよいのだろうか」

「井上のことは、俺に任せてくれ」

きっちりと、別れ話をすると。

そう言ってくれた。

その日は、昨日きた水族館に来ていた。昨日は違う彼女と。今日は本命と。

たいした、クズ男だ。

自分でも嫌気がさす。

「海月・・・・好きなのだ。まるで私のようだ」

ふわふわと漂う海月を見ていた。

飽きもせず、10分くらい眺めていた。

「もういいだろ。次、行くぞ」

「ああ」

一護の隣に、またいれる。

恋次には止められたが、私はきっと、人間として生きる道を選ぶ。

朽木家を捨てて。

ただの、ルキアになる。

もともとがそうであったように。

恋次と、義兄の顔がちらついた。気づけば、涙を流していた。

「ルキア?どっか痛いのか?」

恋しい。

恋次が。白哉が。

人間になると、全てを捨てなければならない。

そのことを素直に一護に話すと、一護は別の方法はないかと言ってきた。

「別とは?」

「俺が、死神になる、方法だ。本物の死神になる方法」

「あ・・・・・・」

そんな可能性、一つも考えていなかった。

白哉に伝令神機で連絡をとると、死神化できるのなら、本当の死神になる方法もあると言われた。

「でも、一護、貴様が死神になれば、家族と・・・・・・」

「家族より、俺はルキアをとる」

「一護・・・・」

涙が溢れた。

「愛してる、ルキア」

「愛してる、一護」

その二人の姿を、呪うように見ている女がいることなど、二人は気づかなかった。

拍手[0回]

PR
URL
FONT COLOR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS

TRACK BACK

トラックバックURLはこちら
新着記事
(11/27)
(11/26)
(11/25)
(11/25)
(11/22)
"ココはカウンター設置場所"