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紫陽花

6月。

紫陽花が綺麗に咲いていた。

しとしとと雨の降る季節。梅雨の季節だった。

恋次は、傘もささずにただ空を見上げていた。

どうすれば、もっと強くなれる?

隊長をこすほどに。

「恋次」

傘をさした白哉が、外に出て少しも戻ろうとしない恋次を心配して、やってきた。

「何をしておる、こんな場所で」

「イメージトレーニングです」

心の中で、蛇尾丸に話しかける。

蛇尾丸は、黙していた。

「だめか・・・・・」

蛇尾丸と、もっと心を通わせ合うようになれれば、もっと強くなれるのだろうか。

隊長が、千本桜と心を通わせているように。

「イメージトレーンングなら、室内でもできる。風邪をひく。即刻やめよ」

「あんたは!」

恋次は、白哉を抱き寄せた。

「あんたは強い。俺も、もっともっと強くなります。いつか、あんたを追い越します」

「できるものなら」

薄く、白哉は微笑んでいた。

「くそっ」

隊長。

隊長、隊長、隊長。

強くなれば、あんたは心を完全に開いてくれるか?俺のものになってくれるか?

否、強くなればなるほど、あんたも強くなっている。

差は広まることも縮まることもなく。

雨の中、2人は傘もささずに佇んだ。

「恋次・・・・・・」

「隊長。どうしようもないくらいに、あんたが好きだ」

「恋次、私は・・・・・・・」

その唇を奪うように貪った。

「んあっ・・・・・」

白哉の漏らす声に、かっと体中が熱くなった。

この瞬間なのだ。高みが、おぼろげながら見える。

「あんたを抱きたい」

「許さぬ。このような日の高いうちからは、許さぬ」

「じゃあ、日が沈んだいいんすか」

「いつもの屋敷に来い」

それだけ言い残すと、白哉は執務室に消えてしまった。

かっとなったこの体の熱さをどうすればいいか分からず、恋次はただ雨の降る空を見上げていた。


夜になり、いつも睦みあう時に使う館に訪れる。

豪華な食事と酒が用意してあった。

先に食べていた白哉は、恋次が来ても何も言わず、食べて飲んでいた。

だが、あまりにも沈黙が重いので、口を開く。

「何をしている。腹をすかせているのであろう?」

確かに、昼飯を食っていなかったせいもあって、お腹はぐーっとないて、それに恥ずかしさを覚えた。

「遠慮することはない。貴様のために作らせた分だ。食せ」

「隊長・・・・・・」

食事を口にしていくと、その美味しさにはしが止まらなくなった。

高級酒を飲み交わしていると、先に飲みだしていた白哉の酒がきれた。

「もう、終わりか」

「まだありますよ」

杯に注ぐふりをして、口に含んで白哉に口移しで飲ませた。

「ふあっ・・・・・んっ・・・・・・」

こくりと、酒を飲みこむ喉の動きに、かっとまた体が熱くなった。

ああ。

俺は、隊長にはまだ勝てない。

「隊長、褥にいきましょう」

「酒がまだ残っている。飲まぬのか?」

「もう十分です」

褥に白哉を横たえると、鴉のように艶のある漆黒の瞳が、酒のせいか潤んでいた。

「隊長、好きです。あんたがどうしようもないくらい好きです。あんたの全部を手に入れたい」

「欲張りだな・・・・・・」

「そうです。俺は欲張りなんすよ」

白哉と舌が絡ますキスを何度も繰り返し、衣服を脱がせていく。

細い体にはしなやかな筋肉がついており、美しかった。

「あ、あ、あ・・・・・」

全身を愛撫して、刺激を与えていくと、白哉の桜色の唇から、甘い声が漏れる。

「恋次・・・・・好きだ」

「隊長っ!」

潤滑油を手にとり、早急に内部を解していく。

前立腺をコリコリと刺激するように触ると、白哉は射干玉のような瞳で、恋次を見ていた。

「早く、来い」

「でも、ちゃんと解しておかないと・・・・・・」

「よい。貴様が欲しいのだ」

また、体がかっと熱くなった。

普通、抱かれている相手が熱くなるはずなのに、抱いている恋次のほうが熱くなった。

ああ。

隊長に求められるなんて。

なんて、至福。


己を宛がい、一気に白哉を貫いた。

「あああああ!!!」

あまり解していなかったそこは、血を滲ませた。

「く、きつい・・・・・隊長、息すって吐いて・・・・力抜いて」

白哉は、言われた通りにした。

幾分中が緩んで、潤滑油の力を使い最後まで埋め込んだ。

「あ・・・・」

「隊長、わかりますか?今、俺たち一つになってる」

「恋次・・・・・・ああっ!」

前立腺をついてやると、白哉は体を痙攣させた。

ああ、いったのか。

そう思いながらも、白哉の中を楽しむように突き上げて犯した。

前立腺をねらって突き上げてやれば、白哉はまた甘い声をあげる。

「んああっ」

「隊長、好きだ、愛してます!」

「恋次・・・・私も、好きだ・・・・・」

けれど、愛しているとは言ってくれない。

分かっているからと、全てをぶつけるように白哉を犯した。

「ああああ!!!」

恋次が、限界にきて白哉の中に欲望を吐き出す。

白哉の花茎に手をかけて、爪で鈴口をいじっていると、先走りの蜜がぽたぽたと垂れてきた。

白哉から引き抜いて、白哉のものに口を這わせると、白哉は驚いて体をはねさせた。

「ああああ!!」

ちろりちろりと舐めてやれば、白濁した液体が出てくる。苦みのしない淡泊な味のそれを飲み込んだ。

「恋次・・・・・ふあっ」

もう一度、今度は全体をなめていると、むくりとまた白哉は反応した。

「隊長も若いっすね」

「あ、言うな・・・・・ああああ!」

じゅぴじゅぷと音を立てて口淫してやれば、白哉はまた欲望を恋次の口の中に放った。

「あんたの味、薄いな」

「貴様・・・・・・」

ぐったりと弛緩している体を開かせていく。

恋次は、まだ一度しかいってないのだ。若いだけあって体力もある。

ずっずっと音をたてて、白哉を犯した。

何度か中を穿ち、2回目、3回目と熱を中に放った。

最後の頃には、白哉の意識はすでになかった。

意識のない白夜を好き勝手に犯した。

「好きだ、隊長・・・・・・・朽木、白哉」

その名を呟かれたことを、白哉は知らぬまま数時間意識を飛ばしていた。


「ん・・・・・・」

5時間ほど眠って、白哉は意識を取り戻した。傍らにいるはずの恋次は、いなかった。

湯殿にいき、体を洗って清め、シーツをかえて褥に横になる。

「恋次・・・・・?」

恋次の姿を探して暗闇の中さまようと、外にいた。

昼の時のように、今度は月夜を見上げていた。

「あんたが好きだ、隊長。白哉」

「恋次・・・・」

「あんたの全部が欲しい。体は奪った。心もほとんど奪いかけてる。でも、100%奪えない」

「恋次、私は、いつか貴様に全てを与えるだろう」

思いがけない言葉を聞いて、恋次が目を見開く。

「本当に?愛していると、言ってくれるんですか」

「いつか・・・・まだ、今は分からぬ。貴様に抱いているこの感情がなんなのか、分からぬのだ」

射干玉の瞳が彷徨う。

恋次は、白哉をしっかりと抱き留めて、抱きしめた。

「愛しています、隊長」

「私は・・・・・・」

唇を奪う。

どうせ、その続きは沈黙だから。


夜は、更けていく。

二人は、眠くなるまで外で互いを抱き締めあい、呼吸するのだった。

白哉は思う。

この感情がなんなのか分かった時。

恋次に、心の全てを与えようと。

愛していると、告げようと。

紫陽花が、まるで二人を包み込むように、咲いていた。

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