イルミネーションと山じい
「こりゃ春水!十四郎まで!」
山じいが怒っていた。
隊首会をあろうことかさぼり、現世にいっていた二人を怒ってこってりしぼろうとしていたのだが、京楽は隙を見て逃げ出したのだ。
京楽の後に続くかのように、浮竹も逃げ出した。
「全く小童どもが。いつになっても、悪戯心をもちおってからに」
山じいは嘆息した。
「おい、いいのか京楽。先生の言葉を聞かず逃げだしたりして」
「山じいのお説教は長いからね。逃げるに限るよ」
元はといえば、自分たちが悪いのだ。
といっても、隊首会のことはすっかり忘れていて、わざとではないのだが、さぼったことには変わりない。
現世で、イルミネーションを見ていた。
今回の隊首会は夜に行われたのだ。いつも朝なので、すっかり忘れていた。
現世にいた時間はわずか3時間ほど。
瞬くイルミネーションを空の上から見下ろしていた。行きかう人々が、クリスマスの気分に浮かれているのを見ていた。
サンタの恰好をしたケーキ屋の売り子が、ケーキを売っていた。
ついそれを見ていたら、京楽は苦笑してケーキを買ってくれた。
死神の姿のまま現世にいくには、霊圧が高すぎるので、隊長でもあるし、霊圧を封印する義骸に入っていた。
「ありがとうございます」
ケーキを1つでは足りないだろうからと、3人分買った。
京楽の優しさに、浮竹は微笑みを返す。
「ありがとう、京楽」
「いいんだよ」
街を歩いていく。
「ここのイルミネーションは有名なんだよ」
まるで水槽を泳ぐネオンテトラ。瞬くイルミネーションたちを見ながら、二人でケーキを手に意味もなく街を歩いた。
イルミネーションは、その通りをずっとずっと奥まで飾られてある。
ちかちかと人工の光を灯すそれを見ながら、京楽が言った。
「ね、現世のイルミネーションは綺麗でしょ」
「ああ・・・凄く綺麗だ」
クリスマスの飾り付けがされたレストランに入って、クリスマスメニューを注文して二人で食べた。
クリスマスケーキは尸魂界に帰ってから食べるつもりであった。
「あ!」
浮竹が、急に声をあげるものだから、何かが起こったのかと京楽が周囲を見るが、何もない。
「しまった。今日の夜は、クリスマスの交流会も兼ねた、隊首会が夜にあったんだ・・・今から出てももう間に合わないな」
「ああ、そういえば・・・・」
山じいが、参加しろとうるさかったのを思い出す。
「すっかり忘れていたよ。尸魂界に戻ったら、一緒に怒られようか」
「先生は一度火がつくと大変だからな」
「じゃあ、山じいのお説教、逃げ出そうか」
「大丈夫なのか?」
「山じいも慣れてるでしょ、僕らの行動には。院生時代から好き勝手やって怒られてきたんだし」
山じいが本気で噴火すると、流刃若火で尻に火をつけられる。
さすがに、今回はそこまで怒りはしないだろう。
「戻ろうか。尸魂界に」
「ああ」
レストランを出て、最後の15分ほどイルミネーションを見回って、穿界門をあけて尸魂界に帰還する。
穿界門をくぐると、山じいが待っていた。
「今頃戻ってきおってからに。隊長格二人が現世に遊びにいったあげく、大切な隊首会を欠席とはどういうつもりじゃ」
「いや、ちょっと現世のイルミネーションを見にね」
「こりゃ、春水!現世のイルミネーションなど見ても何にもならぬだろう!」
「言うけどねぇ、すごいんだよ!現世のイルミネーションは尸魂界の星より綺麗なんだから!」
「イルミネーションなら、12番隊のつくった瀞霊廷にあるクリスマスツリーでも見れるじゃろうが!」
「あんなの、イルミネーションじゃないよ。ただ光が点滅してるだけじゃない!全然綺麗じゃない!浮竹に、綺麗なイルミネーションを見せてあげたかったんだよ!」
「こりゃ十四郎!お主まで春水と一緒になって遊びほうけるとは、どうしたことじゃ!」
「先生、遊びほうけてたわけじゃありません。ちゃんと楽しんできました。ってことは遊びほうけているのか・・・・・?うーん」
悩みだした浮竹に、山じいは矛先を京楽に向ける。
「こりゃ春水、十四郎を無理に連れ出したな!十四郎は、一人ではこのような行動はとらぬ!」
「浮竹にだけなんか甘くない!?僕は浮竹と一緒に現世にいったんだよ!」
「イルミネーションを見て、見ての通りクリスマスケーキを3人分かって・・・・先生、先生のために現世でクリスマスケーキを買いました」
浮竹が嘘をつく。
京楽は、うまいこと切り出したなと浮竹を見守る。
「何、わしのためじゃと?」
「はい、これです。俺と京楽と先生の分を買いました」
ほんとは、全部浮竹一人が食べるつもりだったのだが。
「ふむ・・・・現世のクリスマスケーキか。悪くないのお」
京楽が、心の中で浮竹って悪だなと思った。
「仕方ない、怒るのはまた明日じゃ。クリスマスケーキはもらっておくぞ。明日、また1番隊の執務室に来るように」
「はい」
「山じい、まだ怒ってるの?」
「当たり前じゃ」
そして次の日。
「こりゃ春水!十四郎まで!」
山じいのお説教を受けにやってきたのだが、すでにこそこそと逃げ出そうとしていた。
山じいはクリスマスケーキを食べて、機嫌はそこまで悪くなかった。
実の息子のように思っている浮竹と京楽が買ってきてくれたものだと、信じ込んでいた。
実は苦し紛れの言い訳だったのだが。
京楽は、お説教を受けるためにと顔だしておきながら、逃げ出した。
京楽の後に続くかのように、浮竹も逃げ出した。
「全く小童どもが。いつになっても、悪戯心をもちおってからに」
山じいは嘆息した。
「おい、いいのか京楽。先生の言葉を聞かず逃げだしたりして」
「山じいのお説教は長いからね。逃げるに限るよ」
山じいが一度お説教を始めると、2時間はかかる。
くどくどと過去のことも持ち出し、隊長とはどうあるべきであるかという理想論をつきつけられて、あげくに最悪の場合性根を鍛え直してやると手合わせだ。
そうなったとき、無事ではすまない。
山じいは、京楽より浮竹に甘い。浮竹が病弱で肺の病を患っていることもあって、京楽よりも浮竹に優しく接した。
浮竹も浮竹で、山じいのことを元柳斎先生と呼んで慕っている。
京楽も山じいと慕ってはいるが、山じいの京楽と浮竹の扱いの差に、少し不満をかんじるが、何度もかわいい息子のような浮竹が目の前で血を吐き、意識不明になる様を見ていたら、甘くなってしまうのも分かる気がした。
「山じいも、きっとそんなに怒ってないよ。それより、昨日のクリスマスケーキまだたべてないんでしょ?せっかくだから、一緒に食べよう」
「ああ、まだ残してあるぞ」
クリスマス期間中なのだ、今は。
昨日の交流会は、京楽と浮竹を欠いて行われたらしい。
藍染が倒されて、新しくというか、100年以上前にいた隊長が、復帰した形になるのだが、平子たちと交流させようという山じいの思惑を拾わう形で、京楽は山じいも呼んで、護廷13隊の隊長副隊長全員を招いて、クリスマスパーティーを開こうと企画していた。
協力は、浦原と夜一だ。
「うーん、さすが本場だけあって現世のケーキは美味しいね」
雨乾堂で、浮竹と一緒にクリスマスケーキを食べた。
ホールケーキで、でかかったが、浮竹はあっという間に食べてしまった。
「全く君は。いいよ、僕の分も半分あげる」
「いいのか?」
甘い物に目がない浮竹は嬉しそうだった。
山じいも、この味を堪能してくれたのだろう。
そう思えば、山じいから逃げ出した罪悪感も薄れる。
山じいには世話になっている。今度、たまには親孝行のようなことをしようと、京楽は浮竹と相談し、山じいを近場の温泉に連れ出すのであった。それはまた、別のお話。
山じいが怒っていた。
隊首会をあろうことかさぼり、現世にいっていた二人を怒ってこってりしぼろうとしていたのだが、京楽は隙を見て逃げ出したのだ。
京楽の後に続くかのように、浮竹も逃げ出した。
「全く小童どもが。いつになっても、悪戯心をもちおってからに」
山じいは嘆息した。
「おい、いいのか京楽。先生の言葉を聞かず逃げだしたりして」
「山じいのお説教は長いからね。逃げるに限るよ」
元はといえば、自分たちが悪いのだ。
といっても、隊首会のことはすっかり忘れていて、わざとではないのだが、さぼったことには変わりない。
現世で、イルミネーションを見ていた。
今回の隊首会は夜に行われたのだ。いつも朝なので、すっかり忘れていた。
現世にいた時間はわずか3時間ほど。
瞬くイルミネーションを空の上から見下ろしていた。行きかう人々が、クリスマスの気分に浮かれているのを見ていた。
サンタの恰好をしたケーキ屋の売り子が、ケーキを売っていた。
ついそれを見ていたら、京楽は苦笑してケーキを買ってくれた。
死神の姿のまま現世にいくには、霊圧が高すぎるので、隊長でもあるし、霊圧を封印する義骸に入っていた。
「ありがとうございます」
ケーキを1つでは足りないだろうからと、3人分買った。
京楽の優しさに、浮竹は微笑みを返す。
「ありがとう、京楽」
「いいんだよ」
街を歩いていく。
「ここのイルミネーションは有名なんだよ」
まるで水槽を泳ぐネオンテトラ。瞬くイルミネーションたちを見ながら、二人でケーキを手に意味もなく街を歩いた。
イルミネーションは、その通りをずっとずっと奥まで飾られてある。
ちかちかと人工の光を灯すそれを見ながら、京楽が言った。
「ね、現世のイルミネーションは綺麗でしょ」
「ああ・・・凄く綺麗だ」
クリスマスの飾り付けがされたレストランに入って、クリスマスメニューを注文して二人で食べた。
クリスマスケーキは尸魂界に帰ってから食べるつもりであった。
「あ!」
浮竹が、急に声をあげるものだから、何かが起こったのかと京楽が周囲を見るが、何もない。
「しまった。今日の夜は、クリスマスの交流会も兼ねた、隊首会が夜にあったんだ・・・今から出てももう間に合わないな」
「ああ、そういえば・・・・」
山じいが、参加しろとうるさかったのを思い出す。
「すっかり忘れていたよ。尸魂界に戻ったら、一緒に怒られようか」
「先生は一度火がつくと大変だからな」
「じゃあ、山じいのお説教、逃げ出そうか」
「大丈夫なのか?」
「山じいも慣れてるでしょ、僕らの行動には。院生時代から好き勝手やって怒られてきたんだし」
山じいが本気で噴火すると、流刃若火で尻に火をつけられる。
さすがに、今回はそこまで怒りはしないだろう。
「戻ろうか。尸魂界に」
「ああ」
レストランを出て、最後の15分ほどイルミネーションを見回って、穿界門をあけて尸魂界に帰還する。
穿界門をくぐると、山じいが待っていた。
「今頃戻ってきおってからに。隊長格二人が現世に遊びにいったあげく、大切な隊首会を欠席とはどういうつもりじゃ」
「いや、ちょっと現世のイルミネーションを見にね」
「こりゃ、春水!現世のイルミネーションなど見ても何にもならぬだろう!」
「言うけどねぇ、すごいんだよ!現世のイルミネーションは尸魂界の星より綺麗なんだから!」
「イルミネーションなら、12番隊のつくった瀞霊廷にあるクリスマスツリーでも見れるじゃろうが!」
「あんなの、イルミネーションじゃないよ。ただ光が点滅してるだけじゃない!全然綺麗じゃない!浮竹に、綺麗なイルミネーションを見せてあげたかったんだよ!」
「こりゃ十四郎!お主まで春水と一緒になって遊びほうけるとは、どうしたことじゃ!」
「先生、遊びほうけてたわけじゃありません。ちゃんと楽しんできました。ってことは遊びほうけているのか・・・・・?うーん」
悩みだした浮竹に、山じいは矛先を京楽に向ける。
「こりゃ春水、十四郎を無理に連れ出したな!十四郎は、一人ではこのような行動はとらぬ!」
「浮竹にだけなんか甘くない!?僕は浮竹と一緒に現世にいったんだよ!」
「イルミネーションを見て、見ての通りクリスマスケーキを3人分かって・・・・先生、先生のために現世でクリスマスケーキを買いました」
浮竹が嘘をつく。
京楽は、うまいこと切り出したなと浮竹を見守る。
「何、わしのためじゃと?」
「はい、これです。俺と京楽と先生の分を買いました」
ほんとは、全部浮竹一人が食べるつもりだったのだが。
「ふむ・・・・現世のクリスマスケーキか。悪くないのお」
京楽が、心の中で浮竹って悪だなと思った。
「仕方ない、怒るのはまた明日じゃ。クリスマスケーキはもらっておくぞ。明日、また1番隊の執務室に来るように」
「はい」
「山じい、まだ怒ってるの?」
「当たり前じゃ」
そして次の日。
「こりゃ春水!十四郎まで!」
山じいのお説教を受けにやってきたのだが、すでにこそこそと逃げ出そうとしていた。
山じいはクリスマスケーキを食べて、機嫌はそこまで悪くなかった。
実の息子のように思っている浮竹と京楽が買ってきてくれたものだと、信じ込んでいた。
実は苦し紛れの言い訳だったのだが。
京楽は、お説教を受けるためにと顔だしておきながら、逃げ出した。
京楽の後に続くかのように、浮竹も逃げ出した。
「全く小童どもが。いつになっても、悪戯心をもちおってからに」
山じいは嘆息した。
「おい、いいのか京楽。先生の言葉を聞かず逃げだしたりして」
「山じいのお説教は長いからね。逃げるに限るよ」
山じいが一度お説教を始めると、2時間はかかる。
くどくどと過去のことも持ち出し、隊長とはどうあるべきであるかという理想論をつきつけられて、あげくに最悪の場合性根を鍛え直してやると手合わせだ。
そうなったとき、無事ではすまない。
山じいは、京楽より浮竹に甘い。浮竹が病弱で肺の病を患っていることもあって、京楽よりも浮竹に優しく接した。
浮竹も浮竹で、山じいのことを元柳斎先生と呼んで慕っている。
京楽も山じいと慕ってはいるが、山じいの京楽と浮竹の扱いの差に、少し不満をかんじるが、何度もかわいい息子のような浮竹が目の前で血を吐き、意識不明になる様を見ていたら、甘くなってしまうのも分かる気がした。
「山じいも、きっとそんなに怒ってないよ。それより、昨日のクリスマスケーキまだたべてないんでしょ?せっかくだから、一緒に食べよう」
「ああ、まだ残してあるぞ」
クリスマス期間中なのだ、今は。
昨日の交流会は、京楽と浮竹を欠いて行われたらしい。
藍染が倒されて、新しくというか、100年以上前にいた隊長が、復帰した形になるのだが、平子たちと交流させようという山じいの思惑を拾わう形で、京楽は山じいも呼んで、護廷13隊の隊長副隊長全員を招いて、クリスマスパーティーを開こうと企画していた。
協力は、浦原と夜一だ。
「うーん、さすが本場だけあって現世のケーキは美味しいね」
雨乾堂で、浮竹と一緒にクリスマスケーキを食べた。
ホールケーキで、でかかったが、浮竹はあっという間に食べてしまった。
「全く君は。いいよ、僕の分も半分あげる」
「いいのか?」
甘い物に目がない浮竹は嬉しそうだった。
山じいも、この味を堪能してくれたのだろう。
そう思えば、山じいから逃げ出した罪悪感も薄れる。
山じいには世話になっている。今度、たまには親孝行のようなことをしようと、京楽は浮竹と相談し、山じいを近場の温泉に連れ出すのであった。それはまた、別のお話。
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