忍者ブログ

プログ

小説掲載プログ
10 2024/11 14 2324 28 29 30 12

白哉の見合い

白哉が、見合いをすることになった。

その知らせは、6番隊に一気に広がった。

相手は、4大貴族とまではいかないが、それなりの上級貴族の姫君。年の頃は人間でいうと20前後で、その貴族の家系の女は男腹で、子を成したら必ず男児を産むとして、人気のある家柄であった。

朽木家に、世継ぎを。

そう、親戚連中に口酸っぱくいわれて、仕方なしにお見合いだけすることを、白哉は許可したのだ。

何より、見合い写真を見たが、亡き緋真によく似ていた。

はじめ、白哉は断ろうと思っていた。だが、あまりにも緋真に似ているために、声を交わしてみたいと思ったのだ。

「隊長・・・見合いするって、ほんとですか」

「本当だ」

「あんたには俺がいるじゃないっすか!」

「思い上がるな」

「隊長・・・・・」

「緋真に、似ておるのだ。言葉を交わすだけだ。婚姻はせぬ、安心せよ」

「いやだ。言葉交わすのも許しません」

「私は!お前のものではない!」

そう白哉は叫んで、その場を後にしてしまった。


そして、いよいよお見合いの日がやってきた。

「沢森シイナと申します・・・」

「朽木白哉という・・・・・」

お見合いの籍では、シイナの両親もいた。

白哉には、ルキアがついてきていた。

本当に、緋真に似ていて、ルキアにも似ていた。

「本当に、義妹であられるルキア様とわたくし、見た目が似ておりますね」

「死別した妻、緋真にも似ておられる」

「わたくし、男腹ですの。地位からして正妻を望みますが、緋真様のことが忘れられないのであれば妾でもかまいません」

「兄は・・・・・妾でいいと・・・・・」

「4大貴族の朽木家と縁ができるのであれば、妾でも構わないと両親も納得ておりますの」

美しい着物を着た、美しい女性だった。

シイナは、緋真によく似ていた。

でも、緋真ではない。

緋真は、妾になるくらいなら縁などいらぬというだろう。

「梅の花は、お好きか?」

「あら、あいにくわたくし梅の花が嫌いですの。椿が好きですわ」

緋真は、梅の花が好きだった。

やはり、違うのだ。

シイナを緋真の代わりとして娶るのは、あまりにもシイナに失礼だ。

「わたくし、かまいませんのよ?緋真様の代わりでも。そのつもりで、見合いを受けておりますの。ご希望であれば、立ち振る舞いも口調も緋真様のようにしましょう」

「兄は・・・・・・」

そんな偽物、妻にしても虚しいだけ。

白哉は、見合いを断ろうと口を開く。

「隊長!」

「恋次!?」

「おいあんた、シイナとかいったな、隊長は俺のもんだ。隊長はな、副官である男である俺できてるんだ!あんたじゃ、隊長を満足させることなどできねぇ!」

「なっ!」

シイナはかっとなって、恋次の頬をはたいた。

「本当なのですが、白哉様!このような下賤な男と、できているのですか!」

シイナの両親は、驚きで言葉も出ないようだった。

「恋次、貴様、場所をわきまえろ!ここは上流貴族同士の見合いの場なのだぞ!」

ルキアの言葉に、恋次は吠える。

「上流貴族だろうが、見合いの場だろうが、知ったことか。愛している隊長が結婚するなんて、我慢できねぇ!」

「この下賤な死神風情が!」

シイナは、顔を真っ赤にして恋次につかみかかった。

ああ、やはり緋真ではない。

緋真は、人を「下賤」などと決して呼んだりしない。

「隊長!」

「白哉様!」

「恋次に言っていることは、本当だ。私は、副官であり同じ男である恋次と肉体関係をもっている」

「衆道・・・・汚らわしい!このお話、なかったことにしていただきます!」

シイナも、シイナの両親も立腹して去ってしまった。

「貴様・・・・兄様に、噂が立ったらどうするのだ。朽木家に恥をかけというのか!」

「う・・・そこまで、考えてなかった」

「兄様、念のため口封じをしておきましょう!」

「ああ、分かっている」

殺すわけではない。鬼道の一種で、記憶を少し飛ばすのだ。

目の飛び出るほど高い品を媒介に使うので、4大貴族くらいしか使えない術だった。

朽木家を出ていく前のシイナとシイナの両親に、白哉はその術を施した。

これで、朽木家の面子は潰れずにすむ。

「恋次・・・貴様、少しは場所を弁えよ」

「すみません。でも、隊長が見合いなんて許せなくて」

「もうよい。どのみち、言葉を交わすだけの予定だった。こちらも幻滅したので、未練も何もない」

「じゃあ、結婚は・・・・・」

「破談だ」

「おっしゃあああ」

「たわけ!恋次、貴様は兄様に幸せになってほしくないのか!」

「俺以外の死神と、幸せになってほしくない」

白哉は、長い溜息を零した。

「ルキア、すまぬが席を外せ」

「はい、兄様。恋次、こうなったからには、兄様を幸せにしろよ!」

「勿論だ!」

「恋次」

「はい」

「愚か者。私を、少しは信用したらどうなのだ」

「だって、隊長が見合いするっていうから・・・・」

「最初から、見合いだけのつもりだったのだ。結婚などせぬ」

「隊長、好きです。愛してます。俺には、隊長だけだ」

はぁと、長い溜息をついて、白哉は恋次に自分からキスをした。

「隊長?」

「そうだな。私にも、今は貴様だけだ、恋次」

白哉の細い腰に手を回す。

「もう、二度と見合いなんてしないでください」

「分かった」

恋次は、もう一度白哉を抱き締めて、その桜色の唇に唇を重ねる。

「あんたには、俺がいる」

「恋次・・・・・」

その日の夜は、睦みあった。

長い長い夜に、なりそうだった。



拍手[0回]

PR
URL
FONT COLOR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS

TRACK BACK

トラックバックURLはこちら
新着記事
(11/27)
(11/26)
(11/25)
(11/25)
(11/22)
"ココはカウンター設置場所"