白哉の見合い
白哉が、見合いをすることになった。
その知らせは、6番隊に一気に広がった。
相手は、4大貴族とまではいかないが、それなりの上級貴族の姫君。年の頃は人間でいうと20前後で、その貴族の家系の女は男腹で、子を成したら必ず男児を産むとして、人気のある家柄であった。
朽木家に、世継ぎを。
そう、親戚連中に口酸っぱくいわれて、仕方なしにお見合いだけすることを、白哉は許可したのだ。
何より、見合い写真を見たが、亡き緋真によく似ていた。
はじめ、白哉は断ろうと思っていた。だが、あまりにも緋真に似ているために、声を交わしてみたいと思ったのだ。
「隊長・・・見合いするって、ほんとですか」
「本当だ」
「あんたには俺がいるじゃないっすか!」
「思い上がるな」
「隊長・・・・・」
「緋真に、似ておるのだ。言葉を交わすだけだ。婚姻はせぬ、安心せよ」
「いやだ。言葉交わすのも許しません」
「私は!お前のものではない!」
そう白哉は叫んで、その場を後にしてしまった。
そして、いよいよお見合いの日がやってきた。
「沢森シイナと申します・・・」
「朽木白哉という・・・・・」
お見合いの籍では、シイナの両親もいた。
白哉には、ルキアがついてきていた。
本当に、緋真に似ていて、ルキアにも似ていた。
「本当に、義妹であられるルキア様とわたくし、見た目が似ておりますね」
「死別した妻、緋真にも似ておられる」
「わたくし、男腹ですの。地位からして正妻を望みますが、緋真様のことが忘れられないのであれば妾でもかまいません」
「兄は・・・・・妾でいいと・・・・・」
「4大貴族の朽木家と縁ができるのであれば、妾でも構わないと両親も納得ておりますの」
美しい着物を着た、美しい女性だった。
シイナは、緋真によく似ていた。
でも、緋真ではない。
緋真は、妾になるくらいなら縁などいらぬというだろう。
「梅の花は、お好きか?」
「あら、あいにくわたくし梅の花が嫌いですの。椿が好きですわ」
緋真は、梅の花が好きだった。
やはり、違うのだ。
シイナを緋真の代わりとして娶るのは、あまりにもシイナに失礼だ。
「わたくし、かまいませんのよ?緋真様の代わりでも。そのつもりで、見合いを受けておりますの。ご希望であれば、立ち振る舞いも口調も緋真様のようにしましょう」
「兄は・・・・・・」
そんな偽物、妻にしても虚しいだけ。
白哉は、見合いを断ろうと口を開く。
「隊長!」
「恋次!?」
「おいあんた、シイナとかいったな、隊長は俺のもんだ。隊長はな、副官である男である俺できてるんだ!あんたじゃ、隊長を満足させることなどできねぇ!」
「なっ!」
シイナはかっとなって、恋次の頬をはたいた。
「本当なのですが、白哉様!このような下賤な男と、できているのですか!」
シイナの両親は、驚きで言葉も出ないようだった。
「恋次、貴様、場所をわきまえろ!ここは上流貴族同士の見合いの場なのだぞ!」
ルキアの言葉に、恋次は吠える。
「上流貴族だろうが、見合いの場だろうが、知ったことか。愛している隊長が結婚するなんて、我慢できねぇ!」
「この下賤な死神風情が!」
シイナは、顔を真っ赤にして恋次につかみかかった。
ああ、やはり緋真ではない。
緋真は、人を「下賤」などと決して呼んだりしない。
「隊長!」
「白哉様!」
「恋次に言っていることは、本当だ。私は、副官であり同じ男である恋次と肉体関係をもっている」
「衆道・・・・汚らわしい!このお話、なかったことにしていただきます!」
シイナも、シイナの両親も立腹して去ってしまった。
「貴様・・・・兄様に、噂が立ったらどうするのだ。朽木家に恥をかけというのか!」
「う・・・そこまで、考えてなかった」
「兄様、念のため口封じをしておきましょう!」
「ああ、分かっている」
殺すわけではない。鬼道の一種で、記憶を少し飛ばすのだ。
目の飛び出るほど高い品を媒介に使うので、4大貴族くらいしか使えない術だった。
朽木家を出ていく前のシイナとシイナの両親に、白哉はその術を施した。
これで、朽木家の面子は潰れずにすむ。
「恋次・・・貴様、少しは場所を弁えよ」
「すみません。でも、隊長が見合いなんて許せなくて」
「もうよい。どのみち、言葉を交わすだけの予定だった。こちらも幻滅したので、未練も何もない」
「じゃあ、結婚は・・・・・」
「破談だ」
「おっしゃあああ」
「たわけ!恋次、貴様は兄様に幸せになってほしくないのか!」
「俺以外の死神と、幸せになってほしくない」
白哉は、長い溜息を零した。
「ルキア、すまぬが席を外せ」
「はい、兄様。恋次、こうなったからには、兄様を幸せにしろよ!」
「勿論だ!」
「恋次」
「はい」
「愚か者。私を、少しは信用したらどうなのだ」
「だって、隊長が見合いするっていうから・・・・」
「最初から、見合いだけのつもりだったのだ。結婚などせぬ」
「隊長、好きです。愛してます。俺には、隊長だけだ」
はぁと、長い溜息をついて、白哉は恋次に自分からキスをした。
「隊長?」
「そうだな。私にも、今は貴様だけだ、恋次」
白哉の細い腰に手を回す。
「もう、二度と見合いなんてしないでください」
「分かった」
恋次は、もう一度白哉を抱き締めて、その桜色の唇に唇を重ねる。
「あんたには、俺がいる」
「恋次・・・・・」
その日の夜は、睦みあった。
長い長い夜に、なりそうだった。
その知らせは、6番隊に一気に広がった。
相手は、4大貴族とまではいかないが、それなりの上級貴族の姫君。年の頃は人間でいうと20前後で、その貴族の家系の女は男腹で、子を成したら必ず男児を産むとして、人気のある家柄であった。
朽木家に、世継ぎを。
そう、親戚連中に口酸っぱくいわれて、仕方なしにお見合いだけすることを、白哉は許可したのだ。
何より、見合い写真を見たが、亡き緋真によく似ていた。
はじめ、白哉は断ろうと思っていた。だが、あまりにも緋真に似ているために、声を交わしてみたいと思ったのだ。
「隊長・・・見合いするって、ほんとですか」
「本当だ」
「あんたには俺がいるじゃないっすか!」
「思い上がるな」
「隊長・・・・・」
「緋真に、似ておるのだ。言葉を交わすだけだ。婚姻はせぬ、安心せよ」
「いやだ。言葉交わすのも許しません」
「私は!お前のものではない!」
そう白哉は叫んで、その場を後にしてしまった。
そして、いよいよお見合いの日がやってきた。
「沢森シイナと申します・・・」
「朽木白哉という・・・・・」
お見合いの籍では、シイナの両親もいた。
白哉には、ルキアがついてきていた。
本当に、緋真に似ていて、ルキアにも似ていた。
「本当に、義妹であられるルキア様とわたくし、見た目が似ておりますね」
「死別した妻、緋真にも似ておられる」
「わたくし、男腹ですの。地位からして正妻を望みますが、緋真様のことが忘れられないのであれば妾でもかまいません」
「兄は・・・・・妾でいいと・・・・・」
「4大貴族の朽木家と縁ができるのであれば、妾でも構わないと両親も納得ておりますの」
美しい着物を着た、美しい女性だった。
シイナは、緋真によく似ていた。
でも、緋真ではない。
緋真は、妾になるくらいなら縁などいらぬというだろう。
「梅の花は、お好きか?」
「あら、あいにくわたくし梅の花が嫌いですの。椿が好きですわ」
緋真は、梅の花が好きだった。
やはり、違うのだ。
シイナを緋真の代わりとして娶るのは、あまりにもシイナに失礼だ。
「わたくし、かまいませんのよ?緋真様の代わりでも。そのつもりで、見合いを受けておりますの。ご希望であれば、立ち振る舞いも口調も緋真様のようにしましょう」
「兄は・・・・・・」
そんな偽物、妻にしても虚しいだけ。
白哉は、見合いを断ろうと口を開く。
「隊長!」
「恋次!?」
「おいあんた、シイナとかいったな、隊長は俺のもんだ。隊長はな、副官である男である俺できてるんだ!あんたじゃ、隊長を満足させることなどできねぇ!」
「なっ!」
シイナはかっとなって、恋次の頬をはたいた。
「本当なのですが、白哉様!このような下賤な男と、できているのですか!」
シイナの両親は、驚きで言葉も出ないようだった。
「恋次、貴様、場所をわきまえろ!ここは上流貴族同士の見合いの場なのだぞ!」
ルキアの言葉に、恋次は吠える。
「上流貴族だろうが、見合いの場だろうが、知ったことか。愛している隊長が結婚するなんて、我慢できねぇ!」
「この下賤な死神風情が!」
シイナは、顔を真っ赤にして恋次につかみかかった。
ああ、やはり緋真ではない。
緋真は、人を「下賤」などと決して呼んだりしない。
「隊長!」
「白哉様!」
「恋次に言っていることは、本当だ。私は、副官であり同じ男である恋次と肉体関係をもっている」
「衆道・・・・汚らわしい!このお話、なかったことにしていただきます!」
シイナも、シイナの両親も立腹して去ってしまった。
「貴様・・・・兄様に、噂が立ったらどうするのだ。朽木家に恥をかけというのか!」
「う・・・そこまで、考えてなかった」
「兄様、念のため口封じをしておきましょう!」
「ああ、分かっている」
殺すわけではない。鬼道の一種で、記憶を少し飛ばすのだ。
目の飛び出るほど高い品を媒介に使うので、4大貴族くらいしか使えない術だった。
朽木家を出ていく前のシイナとシイナの両親に、白哉はその術を施した。
これで、朽木家の面子は潰れずにすむ。
「恋次・・・貴様、少しは場所を弁えよ」
「すみません。でも、隊長が見合いなんて許せなくて」
「もうよい。どのみち、言葉を交わすだけの予定だった。こちらも幻滅したので、未練も何もない」
「じゃあ、結婚は・・・・・」
「破談だ」
「おっしゃあああ」
「たわけ!恋次、貴様は兄様に幸せになってほしくないのか!」
「俺以外の死神と、幸せになってほしくない」
白哉は、長い溜息を零した。
「ルキア、すまぬが席を外せ」
「はい、兄様。恋次、こうなったからには、兄様を幸せにしろよ!」
「勿論だ!」
「恋次」
「はい」
「愚か者。私を、少しは信用したらどうなのだ」
「だって、隊長が見合いするっていうから・・・・」
「最初から、見合いだけのつもりだったのだ。結婚などせぬ」
「隊長、好きです。愛してます。俺には、隊長だけだ」
はぁと、長い溜息をついて、白哉は恋次に自分からキスをした。
「隊長?」
「そうだな。私にも、今は貴様だけだ、恋次」
白哉の細い腰に手を回す。
「もう、二度と見合いなんてしないでください」
「分かった」
恋次は、もう一度白哉を抱き締めて、その桜色の唇に唇を重ねる。
「あんたには、俺がいる」
「恋次・・・・・」
その日の夜は、睦みあった。
長い長い夜に、なりそうだった。
PR
- トラックバックURLはこちら