震える尸魂界
京楽春水は、山じいの部屋にこっそり侵入していた。
それが見つかって、怒られる。
「こりゃ春水!勝手に入って来よってからに」
「山じい、別にいいじゃない」
幼い京楽は、山じいのことをからかって遊んだりしていた。
山じいはすぐ怒るので、説教を食らったことなど数えきれない。幼い頃から、京楽を放置する両親の代わりに、山じいが面倒を見てくれた。
「春水、きっと未来で学院に通い、護廷13隊に入るぞ、お主は。死神になるのだ」
「いやだよ。死神なんてかったるい」
「こりゃ!死神は尸魂界を守る大切な存在じゃ!」
「えー、でも忙しそうだし、命の危険もあるんでしょ?やだよ、僕はのらりくらり、ただの貴族として生きたい」
「死神になれ。きっと、大切な存在とも巡りあえるじゃろう」
その時は、そんなはずあるわけがないと思ってた。
学院に入り、京楽は浮竹と出会った。
世界が一気に色づいた。
白い髪に翡翠の瞳の麗人は、にっこりと笑って京楽に手を差し出してくる。
「首席の、京楽春水だな。俺も同じ首席なんだ」
「首席・・・・」
「浮竹十四郎という」
握手を交わして、別れた。
「こりゃ、春水、十四郎」
山じいの部屋に侵入するのが、一人ではなくなった。真面目な浮竹まで、子供のように山じいの部屋に侵入しては悪戯をした。
もっとも、学院に入学したてだけあって、まだお互い少年だ。
やんちゃも、ほどほどに時を過ごしてく。
「春水、十四郎、学院には慣れたかの?」
「楽しいよ、山じい。浮竹がいるからね」
「先生、見るもの聞くもの全てが目新しくて、楽しいです」
「そうかそうか」
「それに、僕たちできちゃったからね」
その言葉に、山じいの目が見開かれる。
「い、いまなんと?」
「だから、僕たちできちゃったの。体の関係結んでるよ」
京楽の言葉に、山じいは失神していた。
「そんなに衝撃的だったかなぁ」
「先生にいうなんて、お前はどうかしてる!」
「でも、いつかばれるんだし」
「それはそうだが・・・・」
浮竹は、白い髪を風にさらさらとなびかせながら、山じいのことを思う。
かわいい教え子が二人、できてしまった。
失神するほどなのだから、その衝撃は計り知れないものだったのだろう。
「隠しておくだけ、僕は無駄だと思うんだよ」
浮竹を抱き締めてくる京楽に、口づけを与えながら浮竹は思う。
恩師である。死の底ばかりを見ていた浮竹に、学院に通うように勧めてくれて、首席で試験を合格した。
京楽のように、幼い頃から世話になっているわけではないが、入学前から山じいの手で浮竹は面倒を見られていた。
山じいがいなければ、死神になろうとすら思わなっただろう。
そんな山じいを失神させてしまった。
心苦しい思いをしながらも、京楽との関係を絶とうとは思わなかった。
「山じいも、いつか理解してくれるよ」
山じいに怒られながら、切磋琢磨して6年。
「春水、十四郎、よくぞここまできた。護廷13隊は、喜んでお主らを迎えいれるじゃろう」
「山じい、僕らのことは何も言わなくなったね」
「先生・・・・・」
「もうよい。春水が十四郎を、十四郎が春水をお互いに必要としているのはよう分かった。もう、何も言うまいて」
それぞれ8番隊と13番隊の席官になり、副隊長になり、隊長になり。
「勘弁してよ山じい。こんな終わり、あんまりだよ」
京楽は、血だらけになりながら、灰となった山じいと、残された流刃若火を掴みあげた。
それは、ボロボロと崩れていった。
「山じい・・・・うっ」
「京楽、無理をするな!」
京楽を支えて、浮竹は涙を流していた。
「先生・・・こんなこと・・・」
ユーハバッハによる、尸魂界の侵攻と蹂躙。
京楽は、右目を失っていた。
右耳も欠けていた。
全部、敵にやられたのだ。だが、まだ京楽のほうがましだ。搬送された白哉は、生きているのも疑わしいほどの重症だった。
「白哉・・・・」
白哉まで失ってしまったら、浮竹は己を保っていられなくなる。
京楽が死んでいたら、気がふれていたかもしれない。
「絶対に、勝とう。山じいの敵を討つんだ」
「ああ・・・・・」
黒崎一護さえ、ユーハバッハに適わなかった。
一護の中に流れる滅却師の血が、一護を救った。
一護の中に滅却師の血が流れているなど、誰が思っただろうか。
その滅却師の王が、千年前に山じいが屠ったはずのユーハバッハの復活。
また、誰か死ぬことになる。
きっと、俺も。
浮竹は、心の何処かで分かっていた。
尸魂界のためならば、この命。
たとえ、愛する京楽を置いていくことになるとしても。
それでも。
俺は、尸魂界を選ぶ。
「早く、卯ノ花隊長のところにいこう。傷の手当てをしてもらわないと」
「この右目は多分、元に戻らない。戻す時間の余裕もない」
次にまたいつ侵攻してくるかも分からない敵の前で、移植手術をして寝ている暇などないのだ。
「京楽、約束してくれ。お前は、先に逝かないと」
「浮竹・・・・・」
「じゃあ、君も・・・・・」
「俺は、きっと・・・・」
お互いに口づけあいながら、その運命の日がやってくるまで、ただ静かにずっと傍にいた。
落ちていく。
山本元柳斎重國、卯ノ花烈。
そして、浮竹十四郎。
落ちていく。
色のない世界へと。
俺は、きっとお前を置いていく。
でも、泣かないでくれ。
お前と過ごしたこの500年、悪くなった。
俺は先に逝く。
お前は、総隊長だ。
あと千年くらいしたら、こちら側にこい。
なぁ、京楽。
愛している。永遠に。
それが見つかって、怒られる。
「こりゃ春水!勝手に入って来よってからに」
「山じい、別にいいじゃない」
幼い京楽は、山じいのことをからかって遊んだりしていた。
山じいはすぐ怒るので、説教を食らったことなど数えきれない。幼い頃から、京楽を放置する両親の代わりに、山じいが面倒を見てくれた。
「春水、きっと未来で学院に通い、護廷13隊に入るぞ、お主は。死神になるのだ」
「いやだよ。死神なんてかったるい」
「こりゃ!死神は尸魂界を守る大切な存在じゃ!」
「えー、でも忙しそうだし、命の危険もあるんでしょ?やだよ、僕はのらりくらり、ただの貴族として生きたい」
「死神になれ。きっと、大切な存在とも巡りあえるじゃろう」
その時は、そんなはずあるわけがないと思ってた。
学院に入り、京楽は浮竹と出会った。
世界が一気に色づいた。
白い髪に翡翠の瞳の麗人は、にっこりと笑って京楽に手を差し出してくる。
「首席の、京楽春水だな。俺も同じ首席なんだ」
「首席・・・・」
「浮竹十四郎という」
握手を交わして、別れた。
「こりゃ、春水、十四郎」
山じいの部屋に侵入するのが、一人ではなくなった。真面目な浮竹まで、子供のように山じいの部屋に侵入しては悪戯をした。
もっとも、学院に入学したてだけあって、まだお互い少年だ。
やんちゃも、ほどほどに時を過ごしてく。
「春水、十四郎、学院には慣れたかの?」
「楽しいよ、山じい。浮竹がいるからね」
「先生、見るもの聞くもの全てが目新しくて、楽しいです」
「そうかそうか」
「それに、僕たちできちゃったからね」
その言葉に、山じいの目が見開かれる。
「い、いまなんと?」
「だから、僕たちできちゃったの。体の関係結んでるよ」
京楽の言葉に、山じいは失神していた。
「そんなに衝撃的だったかなぁ」
「先生にいうなんて、お前はどうかしてる!」
「でも、いつかばれるんだし」
「それはそうだが・・・・」
浮竹は、白い髪を風にさらさらとなびかせながら、山じいのことを思う。
かわいい教え子が二人、できてしまった。
失神するほどなのだから、その衝撃は計り知れないものだったのだろう。
「隠しておくだけ、僕は無駄だと思うんだよ」
浮竹を抱き締めてくる京楽に、口づけを与えながら浮竹は思う。
恩師である。死の底ばかりを見ていた浮竹に、学院に通うように勧めてくれて、首席で試験を合格した。
京楽のように、幼い頃から世話になっているわけではないが、入学前から山じいの手で浮竹は面倒を見られていた。
山じいがいなければ、死神になろうとすら思わなっただろう。
そんな山じいを失神させてしまった。
心苦しい思いをしながらも、京楽との関係を絶とうとは思わなかった。
「山じいも、いつか理解してくれるよ」
山じいに怒られながら、切磋琢磨して6年。
「春水、十四郎、よくぞここまできた。護廷13隊は、喜んでお主らを迎えいれるじゃろう」
「山じい、僕らのことは何も言わなくなったね」
「先生・・・・・」
「もうよい。春水が十四郎を、十四郎が春水をお互いに必要としているのはよう分かった。もう、何も言うまいて」
それぞれ8番隊と13番隊の席官になり、副隊長になり、隊長になり。
「勘弁してよ山じい。こんな終わり、あんまりだよ」
京楽は、血だらけになりながら、灰となった山じいと、残された流刃若火を掴みあげた。
それは、ボロボロと崩れていった。
「山じい・・・・うっ」
「京楽、無理をするな!」
京楽を支えて、浮竹は涙を流していた。
「先生・・・こんなこと・・・」
ユーハバッハによる、尸魂界の侵攻と蹂躙。
京楽は、右目を失っていた。
右耳も欠けていた。
全部、敵にやられたのだ。だが、まだ京楽のほうがましだ。搬送された白哉は、生きているのも疑わしいほどの重症だった。
「白哉・・・・」
白哉まで失ってしまったら、浮竹は己を保っていられなくなる。
京楽が死んでいたら、気がふれていたかもしれない。
「絶対に、勝とう。山じいの敵を討つんだ」
「ああ・・・・・」
黒崎一護さえ、ユーハバッハに適わなかった。
一護の中に流れる滅却師の血が、一護を救った。
一護の中に滅却師の血が流れているなど、誰が思っただろうか。
その滅却師の王が、千年前に山じいが屠ったはずのユーハバッハの復活。
また、誰か死ぬことになる。
きっと、俺も。
浮竹は、心の何処かで分かっていた。
尸魂界のためならば、この命。
たとえ、愛する京楽を置いていくことになるとしても。
それでも。
俺は、尸魂界を選ぶ。
「早く、卯ノ花隊長のところにいこう。傷の手当てをしてもらわないと」
「この右目は多分、元に戻らない。戻す時間の余裕もない」
次にまたいつ侵攻してくるかも分からない敵の前で、移植手術をして寝ている暇などないのだ。
「京楽、約束してくれ。お前は、先に逝かないと」
「浮竹・・・・・」
「じゃあ、君も・・・・・」
「俺は、きっと・・・・」
お互いに口づけあいながら、その運命の日がやってくるまで、ただ静かにずっと傍にいた。
落ちていく。
山本元柳斎重國、卯ノ花烈。
そして、浮竹十四郎。
落ちていく。
色のない世界へと。
俺は、きっとお前を置いていく。
でも、泣かないでくれ。
お前と過ごしたこの500年、悪くなった。
俺は先に逝く。
お前は、総隊長だ。
あと千年くらいしたら、こちら側にこい。
なぁ、京楽。
愛している。永遠に。
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