山本元柳斎重國の死
「酷いものだね・・・・・」
一番隊があった場所は焦土と化していた。
「元柳斎先生の死体は、見つからなかったらしい」
浮竹が、悲しそうに地面を見る。焦土と化した、1番隊の執務室があった場所にきていた。
燻っていた火は、泣きだした空で鎮火した。
激しい炎だった。まさに太陽。尸魂界の大気から水分を失なわせてしまうような、山本元柳斎重國の卍解であったが、ユーハバッハに奪われ、切られた。
その場面を見た者はいなかったが、切られたのだろうとなんとなくわかった。
その体は自らの炎に巻き込まれるかのように、泣きだした雨にも関わらず、灰となった。
遺体がないので、死んだかどうかさえ最初は疑わしかった。
だが、霊圧は完全に消えている。
死亡したのは、確かだ。
「山じいの代わりに総隊長だなんて・・・・嫌だといいたいのに、肝心の山じいがいないんじゃね・・・」
京楽は、深い溜息をはいた。
山本元柳斎重國の葬儀が、静かに行われた。
白い百合の花でみたされて、中央に流刃若火が置かれていた。
流刃若火は刃が折れていてガタガタで、もう使い物にならないと一目でわかった。
山本元柳斎重國の遺体がないまま、棺に火がつけられる。
パチパチと火が爆ぜて、その踊る火を間近で京楽も浮竹も見ていた。葬儀に参加した隊長副隊長は全員ではない。
白哉などは酷い傷で、動くこともできないという。
呆然とした様子で立っている一護に、京楽が声をかける。
「一護君、君も傷が深い。早く帰って4番隊で治してもらいなさいな」
4番隊で治療を受けていた一護であるが、山本元柳斎重國の葬儀と聞いてやってきたのだ。
「俺が・・・・もっと強ければ」
「一護君、今回のことは誰にも止められなかったんだよ。一護君が最初からきていても、きっと結果は同じだっただろう」
「でも!俺がもっと早くについていたら、死者の数だって!」
「己惚れるな!」
京楽が叫んだ。
「おい、京楽!」
浮竹が止めようとするが、京楽は止まらない。
「山じいを殺すような相手だよ?現に君だって太刀打ちできなかったじゃないの。いくら君が強いと言っても、君は一人だ。そして今後の尸魂界を守ってくれる要だ・・・・頼むから、自分を責めないでほしい」
京楽の言葉に、浮竹は何も言えなくなる。
尸魂界のために死なば本望。
それを、山本元柳斎重國は現実にしたのだ。
ああ。
次の侵略では誰が傷つき、誰が死ぬのだろうか。
現在、副隊長である吉良イヅルの死が確認されている。なんとかなるかもしれないと、涅マユリがその身柄を引き受けていったが、もう「生きる」ということは不可能だろう。
心停止していて、体の実に上半身の3分の1が吹き飛んでいた。
吉良イヅルも本来なら山本元柳斎重國と同じく棺に入れられて、焼かれる存在なのだが。
涅マユリは時に奇跡を起こす。
だから、誰も止めなかった。
そうせ死人だ。それ以上酷くなることはない。
どうかどうか。
もうこれ以上、尸魂界から死者が出ませんように。
浮竹は祈った。
京楽も片目を失い酷い怪我を負った。本来なら移植手術で時間をかければ、光を取り戻しそうだが、そんな時間の余裕もないのだ。
浮竹は、気づいていた。
尸魂界のために死なば本望。
きっと、自分もこの身を尸魂界のために捧げるだろう。
「なぁ、京楽。俺が尸魂界のために散ったならば、泣いてくれるか?」
「何不吉なこと言ってるの。そんなこと、起こるわけないよ」
死神として死のう。
浮竹の決意は固い。
それが死神としての矜持。
どうか、悲しまないでくれ。
でも、少しは俺を思って泣いてほしいな。
矛盾する思いを掲げながら、浮竹も京楽も一護も、煙となって天に還っていく山本元柳斎重國の棺を、飽きることなくいつまでもいつまで、完全な灰になるまで見ているのであった。
一番隊があった場所は焦土と化していた。
「元柳斎先生の死体は、見つからなかったらしい」
浮竹が、悲しそうに地面を見る。焦土と化した、1番隊の執務室があった場所にきていた。
燻っていた火は、泣きだした空で鎮火した。
激しい炎だった。まさに太陽。尸魂界の大気から水分を失なわせてしまうような、山本元柳斎重國の卍解であったが、ユーハバッハに奪われ、切られた。
その場面を見た者はいなかったが、切られたのだろうとなんとなくわかった。
その体は自らの炎に巻き込まれるかのように、泣きだした雨にも関わらず、灰となった。
遺体がないので、死んだかどうかさえ最初は疑わしかった。
だが、霊圧は完全に消えている。
死亡したのは、確かだ。
「山じいの代わりに総隊長だなんて・・・・嫌だといいたいのに、肝心の山じいがいないんじゃね・・・」
京楽は、深い溜息をはいた。
山本元柳斎重國の葬儀が、静かに行われた。
白い百合の花でみたされて、中央に流刃若火が置かれていた。
流刃若火は刃が折れていてガタガタで、もう使い物にならないと一目でわかった。
山本元柳斎重國の遺体がないまま、棺に火がつけられる。
パチパチと火が爆ぜて、その踊る火を間近で京楽も浮竹も見ていた。葬儀に参加した隊長副隊長は全員ではない。
白哉などは酷い傷で、動くこともできないという。
呆然とした様子で立っている一護に、京楽が声をかける。
「一護君、君も傷が深い。早く帰って4番隊で治してもらいなさいな」
4番隊で治療を受けていた一護であるが、山本元柳斎重國の葬儀と聞いてやってきたのだ。
「俺が・・・・もっと強ければ」
「一護君、今回のことは誰にも止められなかったんだよ。一護君が最初からきていても、きっと結果は同じだっただろう」
「でも!俺がもっと早くについていたら、死者の数だって!」
「己惚れるな!」
京楽が叫んだ。
「おい、京楽!」
浮竹が止めようとするが、京楽は止まらない。
「山じいを殺すような相手だよ?現に君だって太刀打ちできなかったじゃないの。いくら君が強いと言っても、君は一人だ。そして今後の尸魂界を守ってくれる要だ・・・・頼むから、自分を責めないでほしい」
京楽の言葉に、浮竹は何も言えなくなる。
尸魂界のために死なば本望。
それを、山本元柳斎重國は現実にしたのだ。
ああ。
次の侵略では誰が傷つき、誰が死ぬのだろうか。
現在、副隊長である吉良イヅルの死が確認されている。なんとかなるかもしれないと、涅マユリがその身柄を引き受けていったが、もう「生きる」ということは不可能だろう。
心停止していて、体の実に上半身の3分の1が吹き飛んでいた。
吉良イヅルも本来なら山本元柳斎重國と同じく棺に入れられて、焼かれる存在なのだが。
涅マユリは時に奇跡を起こす。
だから、誰も止めなかった。
そうせ死人だ。それ以上酷くなることはない。
どうかどうか。
もうこれ以上、尸魂界から死者が出ませんように。
浮竹は祈った。
京楽も片目を失い酷い怪我を負った。本来なら移植手術で時間をかければ、光を取り戻しそうだが、そんな時間の余裕もないのだ。
浮竹は、気づいていた。
尸魂界のために死なば本望。
きっと、自分もこの身を尸魂界のために捧げるだろう。
「なぁ、京楽。俺が尸魂界のために散ったならば、泣いてくれるか?」
「何不吉なこと言ってるの。そんなこと、起こるわけないよ」
死神として死のう。
浮竹の決意は固い。
それが死神としての矜持。
どうか、悲しまないでくれ。
でも、少しは俺を思って泣いてほしいな。
矛盾する思いを掲げながら、浮竹も京楽も一護も、煙となって天に還っていく山本元柳斎重國の棺を、飽きることなくいつまでもいつまで、完全な灰になるまで見ているのであった。
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