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ネオンテトラ

「いちごおお」

「うおっ、酒くせぇ!」

「うふふふふ」

甘てくるルキアは、浴びるように酒を飲んだらしく、酒臭かった。

「おい、しっかりしろよ」

「にゃふふ。世界が回っておるー」

ここは現世の一護の部屋だった。

ルキアの見た目は十代半ば。

現世で酒が飲めるはずがない。尸魂界で酒を飲み、わざわざべろんべろんに酔っぱらって一護に会いにきたのだ。

「好きだぞ、いちごおお」

「おい、そういう冗談はやめろ」

ルキアのことは、好きか嫌いかでいうと好きだった。

でも、こんな酒に酔った状態で好きと言われても、うれしくない。

「何故、信じぬのだ」

アメジストの瞳からボロボロと涙が零れている。

「何故って、お前冗談だろ?」

「たわけ!酔っていても、このような冗談は言わぬ!」

「ルキア・・・・・」

「付き合ってくれ、一護」

その細い体を、気づけば抱きしめていた。

「ああもう、酔っ払いのくせになんでこんなにかわいいんだよ!」

「いちご?」

「俺もお前が好きだ、ルキア。言われてはっきりした。この心の中でお前に対して抱いていた感情は恋なんだって」

「一護、私の手をとってくれるのか。私と生きてくれるのか」

「ああ。ルキアが好きだ。愛してる」

ルキアは涙をぼろぼろと零したまま、一護に抱き着いた。

浴びるような酒の匂いがしたが、気にならなかった。

「明日起きたら、全部忘れましたってパターンなしにしてくれよな」

「ふにゃあ・・」

緊張が解けたのか、ルキアは一護の腕の中で眠ってしまった。

その細い体を抱き上げて、ベッドに寝かせる。

ルキアをその腕の中で抱きしめるような形で、一護も眠った。

次の日は休日だった。

「ん・・・・」

少し遅めにルキアが瞼を開く。

「おはよう、ルキア」

すぐ近くに一護の顔があって、ルキアは吃驚した。

「昨日、べろんべろんに酔って俺の部屋にきて・・・・・俺に言った言葉、覚えてるか?」

かーっと、ルキアの頬が赤くなった。

「おぼえておるわ、たわけ!」

一護をぽかぽかと叩いてきた。

「貴様が悪いのだ!私の想いにも気づかず、私の方ばかりみているくせに何も言ってこない貴様のことを、恋次にぶつけて一緒に飲んでいたら、想いをぶつけてこいと現世に追い出されて・・・・・仕方なしに、貴様に想いを打ち明けた」

「それでも、すげぇ嬉しい」

起き上がったルキアを抱きしめる。

ルキアは、一護の腕の中で身動ぎしていたが、おとなしくなった。

「責任をとれ!貴様にここまで言わせた責任を!」

「ああ、いいぜ。付き合おう」

耳までルキアは赤くなった。

「分かった・・・・今日から、私は一護の彼女だ」

「俺は、今日からルキアの彼氏だ。恋人同士だからいいよな」

「何をだ」

最後まで言わせず、唇が重なった。

「んん・・・・」

舌が絡むディープキスだった。

ルキアはじめてで、立っていられなくなった。

一護はルキアをベッドに座らせて、その柔らかい黒髪を手ですいた。

「ルキアはかわいいな」

「そんなこと言うの、貴様くらいだ。恋次には色気のないガキと言われた」

「恋次もお前のこと好きなんだぜ」

「ええ!ではなぜ、私を現世に送り出した」

「そりゃ、好きな相手に幸せになってもらいたいからに決まっているだろ」

ルキアは、真っ赤になった。

「私は、二人の男に思われていたのか?」

「そうだ。恋次の態度とかばればれなんだよ。俺もだけど」

ルキアを腕の中に抱きしめて、とさりとベッドに横になる。

ルキアの心臓のドキドキが、こっちまで伝わってきた。

「すげぇドキドキいってる」

「そ、それは貴様も同じであろう!」

「ああ」

ルキアの目をふさいだ。

「ふあ・・・・」

口づけられた。

「一護・・・・今日はもう帰らねばならぬ」

「もうかよ」

「来週の土日!必ずくるから、浮気するなよ!」

「そりゃこっちの台詞だぜ。恋次といちゃいちゃするなよ!」

「たわけ、恋次は家族だ!そんなものではないわ!」

ルキアは、穿界門をあけて、尸魂界へ帰ってしまった。


次の週の土曜。

眠っていた一護めがけて、何かが突撃してきた。

「なんだ!?」

驚いておきた一護であるが、布団の上から一護の体の上に座っていたルキアを見て、はにかむような笑みを浮かべた。

「おはよう、ルキア」

「たわけ、私が呼びに来ねば、貴様寝過ごしていたであろう!」

「う・・・・・」

目覚ましなんてセットしていなかった。

ルキアがいつ来るかも分からずに、眠っていただろう。

「迎えにきてくれたのか?」

「そうだ。まずはデートをするぞ」

「ああ、いいぜ」

ルキアの言う通りに、水族館を訪れていた。

ネオンテトラばかりを見ていたルキアに、一護がいう。

「熱帯魚、好きなのか?」

「イルミネーションのようで美しい。なぜアマゾンという場所には、これほど美しい魚がいるのであろう。尸魂界にもこんな魚がいればいいのに」

4大貴族であるルキアが望めば、自家用発電機でヒーターを用意して、熱帯魚を飼うこともできるだろう。

だが、白哉を困らせたくないので、我儘を言わないルキア。

「そんなに好きなら、飼おうか、熱帯魚」

「え、いいのか!?そもそも、売っているものなのか!?」

「ペットショップに普通に売ってるぜ」

飼育も、そんなに難しくない。

水族館の帰り道、ペットショップに寄って水槽のセットと水草と、ネオンテトラを15匹ほどかった。あとグッピーと掃除屋としてシュリンプを。

黒崎家に戻り、一護の部屋に水槽をセットする。

水をいれてヒーターをいれ、じゃり石と色硝をひいて、水草をはやして、ネオンテトラを中心とした熱帯魚をはなった。

「綺麗だ・・・・」

泳ぐ優雅な姿に、ルキアは一護の方を見ようともせず、ずっと水槽を見ていた。

「おい、ルキア」

「なんだ」

「お前、俺の彼女だろ。彼氏を放置するな」

そう言われて、耳まで真っ赤になった。

「べ、別に一護と同じ部屋にいるのがドキドキして、一護の匂いがするとかそんなこと露ほども思っておらぬからな!」

ルキアの言葉に、一護がルキアを抱き寄せた。

「熱帯魚、またいつでも見に来いよ。俺にも会いにこい。彼女だろ?」

「一護・・・・・」

とさりと、同じベッドで丸くなりながら、体温を共有しあった。

「私は死神だ。いつか貴様は私を置いていってしまう」

「ああ」

「そしたら、私は必ず貴様の魂魄を見つけ出して、また付き合うのだ」

「それ、いいな」

寿命を全うし、ルキアと別れても、またルキアと会える。

そう考えるだけで、死神と人間だからという、大きな障害も気にならなくなった。

「俺がよぼよぼのじいさんになっても、愛してくれるか?」

「当たり前であろう!貴様はあと60年もすれば死んでしまう。魂魄は若い姿のまま現れる・・・ふふ、今から楽しみだ」

「勝手に殺すなよ。今は今の幸せを享受しろ」

ルキアの目を隠して、キスをすると、ルキアがもっととねだってきた。

深く浅く口づけを繰り返す。

そうして夕飯を食べた後、湯浴みもしていちゃついていたら、いつの間にか眠ってしまっていた。

「おはよう、ルキア」

「ふにゃああ」

「ルキア、朝に弱いのか?」

まだ寝ぼけ眼のルキアを起こす。

「今日は水槽を見ながら、怠惰に一日を過ごすぞ」

「おう。でも彼氏である俺も見てくれよな」

「一緒に水槽を見るのだ」

ルキアは、熱帯魚が大層気に入ったようで、餌やりもしていた。

日曜はルキアと一緒にだらだら過ごした。

ルキアの膝枕の頭をのっけて、イチャイチャラブラブしていた。

「明日の朝には、尸魂界に戻らねば」

「窓、何時でも開けておくから、いつでもこいよ」

「また、来週の土日んいくるからな!」

「ああ!」

付き合いはじめたと一護は、まるで水槽の中の水草のように漂う。

ネオンテトラのルキアが泳いでくれることで、生きる意味を見出した。

それから何度か会い、一護は一人暮らしを始めて、そこに熱帯魚も移動した。

ネオンテトラは、いつまでも美しい色で泳いでいた。

まるで、ルキアのように。

二人は人間と死神だ。

子はできなかったが、ルキアは毎週土日になると遊びにきた。

やがて、一護も老いた。寿命がくる。

一護が死んだ時、その体から滲み出た魂魄を、ルキアがさらっていった。

「もう、貴様は私だけのものだ」

少年時代の姿をした一護は、約束通りずっと傍にいてくれたルキアに感謝しつつも、尸魂界へとやってくる。

本物の死神になるために。

「朽木ルキア、只今戻りました。黒崎一護を連れてまいりました!」

大戦の英雄は、死神として尸魂界に迎え入れられるのだった。






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