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雲の上の浮竹

「あー・・・・・頭痛い」

「そりゃあんだけ寝てたらねぇ」

京楽がいた。

昨日、睦みあったのだ。

「今何時だ?」

「昼過ぎの3時」

「15時間は寝たか・・・・まぁまぁ寝たなぁ」

「海燕君がいなくてよかったね」

今、海燕は妻の都の家のほうに、里帰りしていた。

「海燕がいたら、こんな時間まで寝れないからなぁ・・・・・」

「起こすのもなんだから放置してたけど、ほんとに寝すぎだよ。体、大丈夫?」

「眠り過ぎの方が、体は楽なんだ」

「それならいいけど・・・・」

浮竹は京楽の方を見る。

「俺が寝てる間、何してたんだ?」

「暇すぎて、8番隊から仕事もってきて片付けてた」

「たまには、仕事もするんだな」

「これでも、溜めこむ前になるべく片付けてるんだよ!」

京楽は、いつも仕事をせずにふらついているか、寝ているか、酒を飲んでいるかのイメージしかなかった。

「お前がわざわざ仕事もってくるなんて・・・・明日は雨かな」

「僕を一人にする君が悪い」

抱き寄せられて、キスをされた。

ぐーー。

お腹が盛大になった。

「流石に朝、昼と抜くと腹が減るな」

「食堂に行こう。少し遅いけど、昼飯にしよう。君が起きるだろうと思って、僕も食べてなかったんだ・・・・お腹が、すいた」

いつもなら、海燕が食事の用意をしてくれるのだが、今はいないので、13場隊の隊舎の食堂までわざわざやってくると、平隊士たちに感激された。

「隊長だ・・・・本物だ・・・・」

「きゃあ、京楽隊長と一緒よ!」

女性は、黄色い声をあげていた。

「これだから、食事は雨乾堂でとりたいんだ・・・」

平隊士が並んで、握手を求めてきた。

時折食事の箸を止めて、それに応えてやる。

「君は人気者だね・・・僕は食堂にいっても、誰も何も言ってこないよ。七緒ちゃんが、さっさと飯食って、仕事の続きをしろってうるさく言われるくらいかな」

「まぁ、慕ってくれる隊士は多いな」

京楽と浮竹の性格の差だろうか。もしくは姿を見る頻度の差か。

京楽はよく隊舎を歩いている。

一方の浮竹は、雨乾堂に閉じこもって出てこない。たまに出てきて隊舎にきたと思ったら、すぐに雨乾堂に引っ込んでしまう。

「君、もっと日頃から隊舎にいないと、しまいには崇められるんじゃない?」

伝令神機で写真をとる隊士たちを見ながら、浮竹は首を傾げた。

「うーん。俺って、そんなに珍しいか?そこの君」

「え、俺ですか?」

「そうそう、君。俺って、そんなに珍しいか?」

「珍しいも何も、雲の上の存在みたいなかんじですよ!ほんとに隊長っていたんだなって思いました」

「君の隊・・・重症だね」

京楽の隊でもたまに珍しがられることもあるが、ここほど酷くない。

「もうちょっと、隊士たちと触れ合う時間を作ったほがいいんじゃない?」

「考慮しておく」


海燕が帰ってきた。

海燕に事情を話すと、水曜と土曜の日の昼飯と夕食は、しばらくの間雨乾堂ではなく、食堂でとって交流をはかるべきだと言われた。

あと、道場で剣の稽古を見てやればいいと言われた。

それから、3か月ほどが経った。

「隊長、お疲れさまです」

「ああ、お疲れさま」

浮竹の存在は、隊にすっかり馴染んでいた。

「俺の言った通りにして、正解でしょう」

「ああ、そうだな。しばらくまた、雨乾堂で食事をとることにする。剣の稽古については、引き続き指導を行っていく」

海燕は、間違ったことを言わない。

だから、安心して副官を任せれるのだ。

「それにしても、海燕は何も言われないんだな」

「言われますよ。前までは、隊長って本当に存在するのかとかも、言われてましたけどね」

「うわぁ、なんかすまない。もっと早くに、交流をはかるべきだった」

「いえ、言わなかった俺も悪いですから」

それから、今後はどうしよう、ああしようと言葉を交えた、

「う~き~た~け~」

幽霊のように、ずるずると這いずってやってくる京楽に、浮竹が驚く。

「なんだ、庭の落とし穴にでもはまったのか?」

「そうだよ!誰だい、あんな場所に落とし穴設置したのは!」

京楽は憤慨していた。

「俺です。最近、隊舎から雨乾堂に盗撮にくる輩がでてきたから・・・・・」

「え、そんな奴いるのか?」

「はい。隊長の・・・特に京楽隊長とのツーショットとかは高く売れるとかで・・・」

「けしからーーーーん!」

京楽が、叫ぶ。

「いや、けしからのはあんたの存在のせいでもありますから。あんたと隊長ができているせいで、女性の間で写真が高値で売買されてるんですよ」

「女性か・・・・・男のように力で捻じ曲げるわけにもいかないな」

「あ、中には購入していく男性もけっこういますよ」

「余計にけしからーーん!」

巨楽が叫ぶ。

「京楽は泥まみれだな。風呂に入ってこい。着換えを用意しておくから」

「え、ああうん。しかし、一度取り締まるしかないね。女性相手でも、強気にでるべきだ」

そう言って、京楽は浴室に消えていった。

海燕は、お触れを出した。

盗撮に関与した場合、拘束の上に減給3か月。

海燕のお陰で、盗撮していた女性死神が捕縛され、芋づる式に摘発されて、浮竹と京楽の写真を盗撮する者はいなくなった。

「これで、いちゃつける」

「いや、あんたの場合、人が見ていてもいちゃつくでしょうが!」

海燕の指摘に、京楽は舌を出した。

「俺を挑発してるんですか」

「君の大事な上官は、僕のものだよ」

「いつからあんたのものになった!隊長は、みんなのものか!」

「あのなー」

浮竹が飽きれた声を出す。

「俺は俺だ。誰のものでもない」

二人とも、顔を見合わせて、それもそうかと思うのだった。

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