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翡翠に溶ける 失われる霊力

藍染には、ヴァイザードたちも歯が立たなかった。

山本総隊長は、片腕を失っていた。

「これはまずいね・・・・・」

ワンダーワイスにやられた、浮竹の怪我は酷い。

他にも松本や雛森といった副隊長の怪我も酷かったが、まだ立てるような状況じゃないのに、松本は市丸を追って、尸魂界に行ってしまった。

「・・・ぐ。すまん、油断した」

「大丈夫かい?もうすぐ、卯ノ花隊長が診てくれる」

「肺をやられたようだ・・・・」

出血の量が酷かった。

輸血しないとまずいなと思いながら、血を流す浮竹を抱き締めていた。

「僕は回道はかっらきしだしねぇ」

「それは俺もだ」

ごほごほと、浮竹は咳込んだ。血を吐いた。

肺を傷つけられて、呼吸が苦しいのだろう。何度も血を吐いた。

「どいてください、京楽隊長!」

「卯ノ花隊長!後は、頼んだよ・・・・・・」

浮竹はすぐに回道が施されたが、出血量が酷いので尸魂界の救護院に、緊急入院が決まった。

「こんなことをしてる間にも、藍染は・・・・・」

「今は、一護君に全てを託すしかないよ」

「自分の力のなさが、歯がゆい」

「それは僕も同じさ」

藍染は、東仙と市丸さえも手をかけた。

一護自体が月牙天衝になり、藍染は破れ、それでもというところで、浦原がしかけていた封印が効力を出して、藍染は捕縛され無闇という何もない空間に、5感の全てを封印されて、実に2万年にも及ぶ刑期を課せられることとなった。

「藍染が、無闇に収監されたそうだよ。2万年だそうだ。今の藍染は殺すことができないから、封じるのが精いっぱいみたい」

「それでも、良かった・・・・・これでもう、尸魂界もやっと静かになるだろう」

「それより聞いたかい?一護君が霊圧をなくすそうだよ」

「そんな!」

浮竹は、一護の元へと走っていく。まだかろうじで残っている霊圧を頼りに。京楽も、その後に続いた。

一護が霊圧をなくした場合、それを取り戻す方法が模索されていると、移動中に京楽から聞いた。

「一護君・・・・」

一護を見る。

「霊圧を失うんだ。失う前に、皆に挨拶しなくていいのかい?」

「ああ、もう別れはすませてあるから」

一護は、寂しそう笑った。

背が少し伸びて、髪も伸びていた。

「戻る前に、髪を切ってあげよう」

「ああ、すまない浮竹さん」

「ということで頼むぞ、京楽!」

「やっぱり僕かい!」

京楽は、仕方ないと浮竹と一護と一緒に、雨乾堂に訪れていた。

浮竹の髪を切る要領ではあるが、少しだけ切っていく。

「この櫛・・・綺麗だな」

「ああ、京楽からもらったものだ」

螺鈿細工の櫛を、一護は見ていた。

「なぁ、浮竹さん、京楽さん。霊圧を失った俺は、もう尸魂界にはこれないのかな?」

「ああ、無理だろうな」

「そうか・・・・」

やっぱり寂しそうに、一護は笑った。

「恋次やルキアと、また会いたいんだけどなぁ・・・・」

霊圧を失う一護に、霊圧を取り戻させようとする動きはすでにあった。

だが、時間がかかりそうだった。

可能性を今話しても、焦らせるだけだろうと、浮竹も京楽も告げなかった。

あくまで、可能性の話だ。

霊圧を取り戻す方法は、全隊長副隊長たちの、霊圧をこめた刃を受け止めること。

まだ試作段階にもきていない。

京楽の手によって、元の髪の長さに戻った一護と、握手を交わした。

「じゃあ、二人ともお元気で」

「ああ、一護君もな。朽木が、君が霊圧を失っている間も、義骸に入って遊びにいくとかいってたので、まぁ楽しみにまっててあげてくれ」

「ルキアのやつ・・・・・」

一護は嬉しそうだった。

二人は、互いを好きあっていた。

だが、告白はまだだ。

「あのな、一護君、朽木は君のことを・・・・・もがーー!」

「これは二人の問題だよ。僕らは余計な首をつっこんないこと!」

京楽に言い聞かせられて、浮竹も頷いた。

「じゃあ、俺もう行かなきゃ。浮竹さん、京楽さん、いろいろありがとう!」

「ああ、一護君も元気で!

「達者にね」

いなくなった一護を見守って、二人は太陽が傾いていくのを見ていた。

「こんな美しい夕日は、尸魂界では珍しいな」

「太陽が悲しんでいるんだよ。尸魂界を救ってくれた太陽が力を失うから」

「一護君は、本当に太陽のような子だったな」

「ああ、そうだね」

「海燕とは全然違う」

「そうだね」

「朽木とうまくやっていけたらいいんだが」

「ま、なるようになるさ」

それから1年5か月。

尸魂界と一護は接触を絶っていた。

ルキアがたまに義骸に入り、一護の家に行く以外は、接触はない。

やがて、全隊長と副隊長の霊圧をこめれる刀ができあがった。

それに、浮竹も京楽も、ありったけ霊圧をこめた。

やがてそれは一護の霊圧復帰に向けて、動きだす。

ただ、最低でも霊力探知能力がないと、使っても無駄だ。

ただ、時を待つ。

一護の身に、変化が起きるのを-----------------。


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