卯ノ花の手紙
勇音。
あなたが卍解をすでに習得しているのは、すでに知っています。
あなたは強い。あなたは賢い。あなたの回道は素晴らしい。
これは、私の我儘です。
私は、更木隊長を目覚めさせるために、更木隊長と斬り合うでしょう。
きっと、その果てに命を失うでしょう。
勇音。
あなたが、次の4番隊隊長です。副官には、13番隊の妹を選んでやってください。
13番隊の浮竹隊長も、きっと私に続くでしょう。
勇音。
悲しむ必要は、ないのです。
これは、すでに決められていたこと。
私が初代の剣八であったことは、昔話しましたね?
その剣八の名を、更木隊長が受け継ぐのです。
私の存在は、剣八の中に脈打っています。
何も、無駄に命を散らせるわけではありません。
勇音。
今頃、泣いているのでしょうね。でも、泣く必要はないのです。
これは私が撒いた種。更木隊長に、斬り合うのを楽しむように、力に枷を背負わせてしまったのです。
私との斬り合いで、更木隊長は、真なる剣八へと生まれ変わるでしょう。
だから、泣かないでくさい、勇音。
あなたが泣くと、私も悲しいのです。
どうか、死にゆく私を許してください。
勇音。愛しています。実の娘のように。
卯ノ花烈・卯ノ花八千流
今頃・・・・・勇音は、手紙を見てくれているでしょうか。
卯ノ花と更木は、互いに返り血と自分の血を浴びながら、斬り合いを続けていた。
「更木隊長・・・生まれ変わって、ください」
「何わけのわかないことほざいてやがるんだ!」
────更木剣八、あなたは死なない。あなたは死線を潜る度に強くなる。それこそがあなたが自分 に科した過ち、そして、私の罪。
更木は傷だらけだった。
卯ノ花もだ。だが、卯ノ花は剣戟の間に自分に回道をかけている。このままでは、更木が先に力尽きるのは見えていた。
────私は強い。あなた以外の誰よりも。だからあなたを殺しましょう。百度でも千度でも。だから、あなたを癒しましょう。何度も何度でも。あなたが真のあなたへと立ち戻りるまで。そして、私をこえて、遥かな高みと。
「────卍解『皆尽』」
その剣は、癒しの能力をもつ。
更木の血の色をまといながら、彼の傷を癒した。
「どういうことだ、てめぇ」
「あなたには、まだ力尽きてもらっては困ります。私を、超えてもらいます」
「何を言ってるのかさっぱりわかんねーよ!」
更木は、そのボロボロの斬魄刀で、卯ノ花の返り血を浴びた。
「甘い・・・・・」
肩を刺し貫いた。
卯ノ花は腹に更木の剣を受けていた。
互いに距離をとる。
その間に、卯ノ花は回道で腹の傷を癒してしまった。
────ああ、なんて楽しい。八千流と名乗っていたあの頃に戻れている。
だからこそ、あなたには目覚めてもらねば、困るのです。
更木の放った剣が、卯ノ花の胸に吸い込まれるように決まった。
────さよなら。世界で只一人、私を喜ばせ男(ひと)よ────
「見事です、更木剣八。これにてお仕舞」
「あんた・・・死ぬのかよ・・・このまま死ぬのかよ!死ぬな!
────何を今さら。
「あんたが、好きなんだ」
────ええ、気づいていましたよ。
「更木剣八。最強の、剣八は、今日からあなたです」
────役目を果たして死ねることの、なんたる幸福であることか。
卯ノ花は、目を閉じた。
もう、回道で癒せる傷ではないことは分かっていた。
頬に、涙の雫を受けてふと気づく。
「────泣いて、いるのですか」
「死ぬな。頼むから、死ぬな」
「────私は、あなたの中に生きている。あなたが振うこの刃の中に、いつでも私はいます」
「卯ノ花・・・・・・」
────山本元柳斎重國。今、あなたの元へ、いきます。
「おい、卯ノ花!」
もう呼びかけに応じなくなった卯ノ花を抱き締めて、だんだん体温をなくしていく体を抱き締めた。
唇重ねると、血の味がした。
────勇音。後は、頼みます。
二人の愛し合っていた男と女は、女の死によって、壮絶な戦いの幕を下ろした。
無闇の空間を出て、話しかけてきた斬魄刀と対話をしながら、先へ先へと進んでいく。
まだ、血が疼いていた。
斬り足りねぇ。
────さらばだ、卯ノ花。俺が唯一愛した女よ。
更木は、さらなる獲物を求めて歩き出す。
まだ、血に飢えていた。
────もっともっとだ。殺したりねぇ。
血の飢えた狼のようだった。
「ああ、卯ノ花隊長はいったか────」
瀞霊廷の安全な場所で待機していた京楽は、卯ノ花の霊圧がなくなったことを感知した。
「お前、こうなることを分かって?」
「そうだよ。卯ノ隊長から頼まれたんだ。更木隊長を目覚めさせるために、斬り合いをしたいと・・・」
「────卯ノ花隊長は、何故命をかけてまで・・・・・・」
「君も、薄々気づいていたでしょ?今のままの更木隊長じゃだめだって」
「だからといって!」
「やめよう。卯ノ花隊長は責務を果たしんだ。どうこういうのは、彼女の死の侮辱になる」
浮竹は、優しかった卯ノ花の笑顔を思い出した。
「それでも、俺は卯ノ花隊長に死んでもらいたくなかった」
涙が滲んだ。
────卯ノ花隊長。どうか安らかに。
────あなたの死を無駄にはしない。
────きっと俺も、あなたの後に続く。
浮竹と京楽は、卯ノ花の冥福を祈るであった。
あなたが卍解をすでに習得しているのは、すでに知っています。
あなたは強い。あなたは賢い。あなたの回道は素晴らしい。
これは、私の我儘です。
私は、更木隊長を目覚めさせるために、更木隊長と斬り合うでしょう。
きっと、その果てに命を失うでしょう。
勇音。
あなたが、次の4番隊隊長です。副官には、13番隊の妹を選んでやってください。
13番隊の浮竹隊長も、きっと私に続くでしょう。
勇音。
悲しむ必要は、ないのです。
これは、すでに決められていたこと。
私が初代の剣八であったことは、昔話しましたね?
その剣八の名を、更木隊長が受け継ぐのです。
私の存在は、剣八の中に脈打っています。
何も、無駄に命を散らせるわけではありません。
勇音。
今頃、泣いているのでしょうね。でも、泣く必要はないのです。
これは私が撒いた種。更木隊長に、斬り合うのを楽しむように、力に枷を背負わせてしまったのです。
私との斬り合いで、更木隊長は、真なる剣八へと生まれ変わるでしょう。
だから、泣かないでくさい、勇音。
あなたが泣くと、私も悲しいのです。
どうか、死にゆく私を許してください。
勇音。愛しています。実の娘のように。
卯ノ花烈・卯ノ花八千流
今頃・・・・・勇音は、手紙を見てくれているでしょうか。
卯ノ花と更木は、互いに返り血と自分の血を浴びながら、斬り合いを続けていた。
「更木隊長・・・生まれ変わって、ください」
「何わけのわかないことほざいてやがるんだ!」
────更木剣八、あなたは死なない。あなたは死線を潜る度に強くなる。それこそがあなたが自分 に科した過ち、そして、私の罪。
更木は傷だらけだった。
卯ノ花もだ。だが、卯ノ花は剣戟の間に自分に回道をかけている。このままでは、更木が先に力尽きるのは見えていた。
────私は強い。あなた以外の誰よりも。だからあなたを殺しましょう。百度でも千度でも。だから、あなたを癒しましょう。何度も何度でも。あなたが真のあなたへと立ち戻りるまで。そして、私をこえて、遥かな高みと。
「────卍解『皆尽』」
その剣は、癒しの能力をもつ。
更木の血の色をまといながら、彼の傷を癒した。
「どういうことだ、てめぇ」
「あなたには、まだ力尽きてもらっては困ります。私を、超えてもらいます」
「何を言ってるのかさっぱりわかんねーよ!」
更木は、そのボロボロの斬魄刀で、卯ノ花の返り血を浴びた。
「甘い・・・・・」
肩を刺し貫いた。
卯ノ花は腹に更木の剣を受けていた。
互いに距離をとる。
その間に、卯ノ花は回道で腹の傷を癒してしまった。
────ああ、なんて楽しい。八千流と名乗っていたあの頃に戻れている。
だからこそ、あなたには目覚めてもらねば、困るのです。
更木の放った剣が、卯ノ花の胸に吸い込まれるように決まった。
────さよなら。世界で只一人、私を喜ばせ男(ひと)よ────
「見事です、更木剣八。これにてお仕舞」
「あんた・・・死ぬのかよ・・・このまま死ぬのかよ!死ぬな!
────何を今さら。
「あんたが、好きなんだ」
────ええ、気づいていましたよ。
「更木剣八。最強の、剣八は、今日からあなたです」
────役目を果たして死ねることの、なんたる幸福であることか。
卯ノ花は、目を閉じた。
もう、回道で癒せる傷ではないことは分かっていた。
頬に、涙の雫を受けてふと気づく。
「────泣いて、いるのですか」
「死ぬな。頼むから、死ぬな」
「────私は、あなたの中に生きている。あなたが振うこの刃の中に、いつでも私はいます」
「卯ノ花・・・・・・」
────山本元柳斎重國。今、あなたの元へ、いきます。
「おい、卯ノ花!」
もう呼びかけに応じなくなった卯ノ花を抱き締めて、だんだん体温をなくしていく体を抱き締めた。
唇重ねると、血の味がした。
────勇音。後は、頼みます。
二人の愛し合っていた男と女は、女の死によって、壮絶な戦いの幕を下ろした。
無闇の空間を出て、話しかけてきた斬魄刀と対話をしながら、先へ先へと進んでいく。
まだ、血が疼いていた。
斬り足りねぇ。
────さらばだ、卯ノ花。俺が唯一愛した女よ。
更木は、さらなる獲物を求めて歩き出す。
まだ、血に飢えていた。
────もっともっとだ。殺したりねぇ。
血の飢えた狼のようだった。
「ああ、卯ノ花隊長はいったか────」
瀞霊廷の安全な場所で待機していた京楽は、卯ノ花の霊圧がなくなったことを感知した。
「お前、こうなることを分かって?」
「そうだよ。卯ノ隊長から頼まれたんだ。更木隊長を目覚めさせるために、斬り合いをしたいと・・・」
「────卯ノ花隊長は、何故命をかけてまで・・・・・・」
「君も、薄々気づいていたでしょ?今のままの更木隊長じゃだめだって」
「だからといって!」
「やめよう。卯ノ花隊長は責務を果たしんだ。どうこういうのは、彼女の死の侮辱になる」
浮竹は、優しかった卯ノ花の笑顔を思い出した。
「それでも、俺は卯ノ花隊長に死んでもらいたくなかった」
涙が滲んだ。
────卯ノ花隊長。どうか安らかに。
────あなたの死を無駄にはしない。
────きっと俺も、あなたの後に続く。
浮竹と京楽は、卯ノ花の冥福を祈るであった。
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