忍者ブログ

プログ

小説掲載プログ
10 2024/11 14 2324 27 28 29 30 12

卯ノ花の手紙

勇音。

あなたが卍解をすでに習得しているのは、すでに知っています。

あなたは強い。あなたは賢い。あなたの回道は素晴らしい。

これは、私の我儘です。

私は、更木隊長を目覚めさせるために、更木隊長と斬り合うでしょう。

きっと、その果てに命を失うでしょう。

勇音。

あなたが、次の4番隊隊長です。副官には、13番隊の妹を選んでやってください。

13番隊の浮竹隊長も、きっと私に続くでしょう。

勇音。

悲しむ必要は、ないのです。

これは、すでに決められていたこと。

私が初代の剣八であったことは、昔話しましたね?

その剣八の名を、更木隊長が受け継ぐのです。

私の存在は、剣八の中に脈打っています。

何も、無駄に命を散らせるわけではありません。

勇音。

今頃、泣いているのでしょうね。でも、泣く必要はないのです。

これは私が撒いた種。更木隊長に、斬り合うのを楽しむように、力に枷を背負わせてしまったのです。

私との斬り合いで、更木隊長は、真なる剣八へと生まれ変わるでしょう。

だから、泣かないでくさい、勇音。

あなたが泣くと、私も悲しいのです。

どうか、死にゆく私を許してください。

勇音。愛しています。実の娘のように。


                        卯ノ花烈・卯ノ花八千流






今頃・・・・・勇音は、手紙を見てくれているでしょうか。

卯ノ花と更木は、互いに返り血と自分の血を浴びながら、斬り合いを続けていた。

「更木隊長・・・生まれ変わって、ください」

「何わけのわかないことほざいてやがるんだ!」

────更木剣八、あなたは死なない。あなたは死線を潜る度に強くなる。それこそがあなたが自分 に科した過ち、そして、私の罪。

更木は傷だらけだった。

卯ノ花もだ。だが、卯ノ花は剣戟の間に自分に回道をかけている。このままでは、更木が先に力尽きるのは見えていた。

────私は強い。あなた以外の誰よりも。だからあなたを殺しましょう。百度でも千度でも。だから、あなたを癒しましょう。何度も何度でも。あなたが真のあなたへと立ち戻りるまで。そして、私をこえて、遥かな高みと。

「────卍解『皆尽』」

その剣は、癒しの能力をもつ。

更木の血の色をまといながら、彼の傷を癒した。

「どういうことだ、てめぇ」

「あなたには、まだ力尽きてもらっては困ります。私を、超えてもらいます」

「何を言ってるのかさっぱりわかんねーよ!」

更木は、そのボロボロの斬魄刀で、卯ノ花の返り血を浴びた。

「甘い・・・・・」

肩を刺し貫いた。

卯ノ花は腹に更木の剣を受けていた。

互いに距離をとる。

その間に、卯ノ花は回道で腹の傷を癒してしまった。

────ああ、なんて楽しい。八千流と名乗っていたあの頃に戻れている。

だからこそ、あなたには目覚めてもらねば、困るのです。

更木の放った剣が、卯ノ花の胸に吸い込まれるように決まった。

────さよなら。世界で只一人、私を喜ばせ男(ひと)よ────

「見事です、更木剣八。これにてお仕舞」

「あんた・・・死ぬのかよ・・・このまま死ぬのかよ!死ぬな!

────何を今さら。

「あんたが、好きなんだ」

────ええ、気づいていましたよ。

「更木剣八。最強の、剣八は、今日からあなたです」

────役目を果たして死ねることの、なんたる幸福であることか。

卯ノ花は、目を閉じた。

もう、回道で癒せる傷ではないことは分かっていた。

頬に、涙の雫を受けてふと気づく。

「────泣いて、いるのですか」

「死ぬな。頼むから、死ぬな」

「────私は、あなたの中に生きている。あなたが振うこの刃の中に、いつでも私はいます」

「卯ノ花・・・・・・」

────山本元柳斎重國。今、あなたの元へ、いきます。

「おい、卯ノ花!」

もう呼びかけに応じなくなった卯ノ花を抱き締めて、だんだん体温をなくしていく体を抱き締めた。

唇重ねると、血の味がした。

────勇音。後は、頼みます。

二人の愛し合っていた男と女は、女の死によって、壮絶な戦いの幕を下ろした。

無闇の空間を出て、話しかけてきた斬魄刀と対話をしながら、先へ先へと進んでいく。

まだ、血が疼いていた。

斬り足りねぇ。

────さらばだ、卯ノ花。俺が唯一愛した女よ。

更木は、さらなる獲物を求めて歩き出す。

まだ、血に飢えていた。

────もっともっとだ。殺したりねぇ。

血の飢えた狼のようだった。



「ああ、卯ノ花隊長はいったか────」

瀞霊廷の安全な場所で待機していた京楽は、卯ノ花の霊圧がなくなったことを感知した。

「お前、こうなることを分かって?」

「そうだよ。卯ノ隊長から頼まれたんだ。更木隊長を目覚めさせるために、斬り合いをしたいと・・・」

「────卯ノ花隊長は、何故命をかけてまで・・・・・・」

「君も、薄々気づいていたでしょ?今のままの更木隊長じゃだめだって」

「だからといって!」

「やめよう。卯ノ花隊長は責務を果たしんだ。どうこういうのは、彼女の死の侮辱になる」

浮竹は、優しかった卯ノ花の笑顔を思い出した。

「それでも、俺は卯ノ花隊長に死んでもらいたくなかった」

涙が滲んだ。

────卯ノ花隊長。どうか安らかに。

────あなたの死を無駄にはしない。

────きっと俺も、あなたの後に続く。

浮竹と京楽は、卯ノ花の冥福を祈るであった。






拍手[0回]

PR
URL
FONT COLOR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS

TRACK BACK

トラックバックURLはこちら
新着記事
(11/26)
(11/25)
(11/25)
(11/22)
(11/21)
"ココはカウンター設置場所"