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雪遊び

雪が積もった。

瀞霊廷で雪が積もるのは久しぶりで、恋次は6番隊隊舎の庭にでて雪だるまなど作り出した。

「恋次。休憩時間にしろ。今は業務時間だ」

「あ、すみません隊長。あんまりに珍しいので、ちょっと浮かれちゃって」

恋次は執務室に戻ると、体を震わせてまといついていた雪を落とした。

「犬かお前は。そのような行為、室内に入る前にしろ」

「あ、すんません」

口ではすみませんと言っているが、反省は全然していないようだった。

「恋次」

「どうしたんです、隊長?」

「瀞霊廷に雪が積もるは、実に20年以上ぶりだ」

「俺が真央霊術院にいた頃も、一度だけ積もったこしました。同期の吉良と雛森とで遊んだ記憶があります」

もう50年以上も前のことだ。

未だに鮮明に覚えてる。雪かきしなければいけないほどに積もって、グラウンドを使えないし、道場の入口も積もって中に入れないので、みんなで雪かきをした。

雪玉を投げ合ったり、雪だるまをつくったり、雪ウサギをつくったり、かまくらを作ったりして、遊んだものだ。

昼休憩時間になり、恋次は昼飯を早々に食べ終えて、雪だるまをまた作り出した。まださっきまでは途中だったので、見事に完成した雪だるまを、白哉に見せる。

「隊長、見てください!けっこう我ながら力作だと思います」

木の葉や枝で顔と腕を作った。

「甘い」

白哉は珍しく、雪で何かを作り出した。

10分後、雪でできた見事なわかめ大使があった。

「隊長すげぇ。こんな短時間で、こんなに完ぺきにわかめ大使を作るなんて・・・ぶべ」

恋次の顔に雪玉が投げつけられた。

それが白哉が投げたものだと理解するのに、数秒を要した。

まさか、隊長が子供のように雪遊びをするなんて、思わなかったからだ。

恋次はにやりと笑んで、雪玉を作るとそれを白哉に投げた。

白哉はひょいっと避けた。

でも、恋次がもっていた雪玉は1つだけではなかった。2個3個4個tなげていると、そのうちの1個が、白哉の顔面に当たった。

「よい度胸だ」

白哉も雪玉をたくさん作り、二人で投げ合って遊んだ。

「なんか複雑だな」

「何がだ」

「まさか、隊長が雪遊びするなんて思わなくて」

「私とて、たまには童心にかえりたい時もある。こんなに雪が積もっているのだ。20年以上ぶりだ。次にいつ積もるのかさえ、分からぬ」

そういって、白哉は雪ウサギを作り出した。

その隣に、恋次ももう一羽雪ウサギをつくった。

「これ、俺と隊長です。溶けるまで、仲良くここにあります」

「私とお前か。だが、私たちは溶けるようなものではない。ちゃんとここにいて、恋次の傍にいるであろう」

「隊長!」

恋次は白哉に抱き着いた。

そのあまりの勢いに、雪の中に倒れこむ。

「冷たい・・」

「あ、すんません」

「雪がついた。払うのを手伝え」

起き上がった白哉の髪についていた、雪を払ってやる。

「隊長、体が冷たい。早く執務室に戻って、ストーブにでもあたりましょう」

浦原から流通する家電製品の中の、こたつとストーブは、TV、洗濯機、掃除機とまでいかないものの、それなりの人気商品であった。

執務室に戻り、火鉢とは比べものにならない、その暖かさに恋次も白哉もほっとする。

「隊長、風邪引きそうなったりしてませんよね?」

「病弱ではないのだ。この程度で風邪をひかぬ」

今は亡き、浮竹を思い出す。彼なら、多分風邪を引いて熱を出すだろう。

「でもこの前インフルエンザにかかってたじゃないですか」

「それはお前もだろう」

「隊長のがうつっただけです」

「私も、席官がひいていたのがうつっただけだ」

白哉は、インフルエンザになどかかってしまった自分が、情けないと思っていた。

「人は誰しも何かの病にかかりますから」

まるで白哉の気持ちを分かっているような、言い種だった。

「お前はずるいな・・・・私の心をもっていく」

「え、隊長?」

抱き締められて、恋次は慌てた。でもすぐに冷静になり、白哉を抱き締め返した。

「俺には、隊長だけですから」

「私も、お前だけだ・・・・・」

触れるだけの口づけを交わす。

それがいつしか深いものに変わっていた。

「んん・・・・ふあ・・」

抜いていかれた舌が、つっと銀の糸を引く。

「隊長、もっと・・・」

「我慢しろ。この前睦み合って、3日も経っておらぬ」

恋次はそう言われて、我慢するしかなかった。

無理やり襲うこともできるが、そんなことをすれば白哉の怒りはかなりのものになる。

1か月接触禁止とかくらいそうだ。

白哉が恋次から離れていく前に、いつの日にか贈ったエンゲージリングのされた手に、キスを落とした。

「恋次・・・・」

白哉は、切なそうに恋次を見た。

恋次も、白哉を見つめる。

気づけば、またキスをしていた。

「今日はここまでだ。仕事に戻るぞ」

すでに、昼休憩の時間は過ぎていた。

庭に飾られたままの雪うさぎは、白夜所有の氷室にうつされて、溶けることなくその姿を保ち続けるのであった。

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