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オメガバース読み切り

「俺たちは、ずっと親友でいよう。なぁ、京楽」

「そうだね。君がそういうのなら、いつでも、君が死ぬまで親友でいるよ」

そんなやりとりをしたのは、数か月前。

また浮竹がオメガだと分かっていなかった時のこと。




「あ・・・・」

体がかっと熱くなった。

ヒートが始まったのだ。抑制剤は飲んでいたにも関わらず、よりによって統学院でヒートになるなど最悪だった。

ぐらりと、体が傾ぐ。

よろけた浮竹を、同じ特進クラスの京楽が受け止めた。

ぶわりとオメガ特有のフェロモンを受けて、京楽の顔が歪む。

同じように、浮竹のヒート期間特有のフェロモンにあてられたアルファたちが、じりじりと、浮竹を囲んだ。

「なぁ、まわしちまおうぜ」

「いいな、それ」

「どうせ下級貴族だ。問題ねーだろ」

京楽の腕から浮竹を奪い取ったクラスメイトが、浮竹を押し倒す。

「やめろ、いやだ、触るな!」

「おい、京楽、お前も混ざるよな」

びりっと音がして、浮竹の学院服の上が破られた。

浮竹の顔が蒼くなる。

「ひっ」

クラスメイトの男に首筋から鎖骨を触られて、その気色悪さに息がつまった。

ゆらり、と。

殺気が、教室を満たした。

あまりの霊圧の高さに、その場にいた浮竹を犯そうとしていた男たちは、恐怖で顔を強張らせた。

「じょ、冗談だ、な、浮竹、京楽」

「触るな!」

浮竹は、涙をためながら、押し倒している男を押しのけた。

「寮に帰る!」

大声をだして、涙を流しながら起き上がるが、視界は狭くなっていて、がたがたと体が震えた。

犯されそうになった恐怖と、傷つけられたプライド。

よりによって、京楽の前でヒートになるなんて。

京楽とはずっと親友でいようと誓ったのだ。

よろり。

熱でうなされる体は、うまくいうことをきいてくれない。

ガタタンと、机にぶつかった。

くらりと頭が揺れる。

だめだ、意識が・・・・・。

ふわりと、温かいいつもの匂いに満たされた。

「京楽・・・?」

「抑制剤飲んだ?」

「まだだ」

「とりあえず寮に戻ろう。それから抑制剤のもう。ね?」

浮竹と京楽は同じ寮の部屋であった。

山本総隊長が、病弱な浮竹を京楽に任せる形で、今まで暮らしてきた。

それはこれからも変わらないと、普通に思っていた。

自分がオメガであり、京楽がアルファであると分かったその日までは。

浮竹がオメガだと判明したのはつい先々週。

ヒートがいつきてもおかしくない年齢で、抑制剤を欠かさず飲んでいた。

今日はあいにく朝飲むのを、時間がなくてできなかったせいで、ヒートが始まった時に分泌されるフェロモンの量が半端ではなかった。

「浮竹、しっかり捕まって。瞬歩で帰るよ」

「あ、ああ・・・・・・」

抱き上げられて、避難の声を出す暇もなく、寮の自室に戻った。


抑制剤と、水の入ったコップを渡された。

ごくりとそれを嚥下しても、熱は収まらない。


「あ・・・・京楽、すまない、一人にしてくれ」

「無理だよ。こんな状態の君を一人になんてできない。教室の誰かがこっそり部屋に忍び込んできて、浮竹を襲うかもしれないし」

「オメガなんて・・・・・」

「僕は、浮竹がオメガでもよかったよ。僕はアルファだし・・・・・ねぇ、まだ親友でいたいと思ってる?」

「それは・・・・・・」

「ほんとは欲しいんでしょ?」

欲しい。

京楽が。

狂おしいまでに、京楽が好きだった。

オメガであると分かる前から好きだった。親友というポジションと、病弱なのをいいことに、京楽の隣に常にいた。

京楽が花街に行くのを、ただ悲しく寂しい気持ちで見ていた。

オメガであり、ヒートの今なら、京楽を独占できる。

でも、相手は上流貴族。まだ婚約はしていないとはいえ、いずれ上流貴族の姫と結婚するだろう。

それでも。

それでも、京楽が欲しい。

京楽に、自分を見ていて欲しい。

「京楽が欲しいといえば、俺を抱いてくれるか」

にこりと、京楽は微笑んだ。

「君のこと、ずっと滅茶苦茶にしてやりたかったんだ。君のあられもない姿を、何度妄想したことか」

「なっ」

かっと、浮竹が赤くなる。

京楽は、そんな浮竹をベッドに押し倒して、キスをしていた。

「んう」

「僕の下で乱れる君を・・・こうやって、想像していたのが現実になるなんて、夢みたいだ」

「俺はオメガだ。お前はアルファ。俺はヒート期間だし、これはあくまで・・・・・・・」

「番になろう」

「え・・・・・・・・」

「浮竹が、僕以外のものになるなんて許せない。僕だけのものにする」

京楽は、ゆっくりと浮竹の服を脱がして、自分も脱いでいった。

「あ・・・・・・・」

鎖骨を甘噛みされて、声が漏れる。

「君は甘いね。砂糖菓子みたい」

「やめっ・・・・・・んっ・・・・・・」

京楽に触られても、気持ち悪くはなかった。逆にきもちよかった。

ずくりと、胎が疼いた。

京楽の雄が欲しいと。

「濡れてるね・・・・・」

「やっ」

ちゅっちゅとキスマークを残されながら、下肢に京楽の手と唇がいく。

「あっ」

花茎を口に含まれて、思考が真っ白になった。

「やめ、あ、あ、あ!」

「浮竹、かわいい」

浮竹は、京楽の口の中で薄い精液をはじけさせた。

それをごくりと嚥下してから、ぬるりと、浮竹の唇を奪い、舌をいれた。

「んう」

指は、蕾をくるくるといじりながら、ゆっくりと指が一本二本と入ってくる。

「んん!」

はっと、浮竹の息が荒くなるが、それが京楽も同じことだった。

「京楽、今ならまだ間に合う。俺を置いて、どこかへ去れ」

「こんな状態の君を放っておけって?素直になりなよ、浮竹。僕のこと、好きなんでしょう?」

「え・・・・・なんで知って・・・・・・」

「君の日ごろの態度で丸わかり。でも、君は知らなかったでしょう?僕も君が大好きだったんだよ。オメガだと知って、番にしたいと思っていた。やっと叶う」

「あ・・・・・」

優しい口づけを受けて、ポロリと熱のせいではない涙がこぼれた。

「京楽・・・・好きだ。春水」

「僕も大好きだよ、十四郎」

「んん!」

指が、前立腺を刺激した。

「見つけた。君のいい場所」

「や、やめ、あ、あ!」

こりこりと指で刺激していくと、一度萎えた浮竹の花茎が反応する。

「いれていい?」

「もう、どうにでも好きなようにしてくれ。熱でぐずぐずに溶けてる。思考も、理性も」

「いれるよ」

「いっ!」

ズッと、浮竹の中に侵入すると、きつく締めつけてきた。

「ごめん、痛いね?」

濡れて解したとはいえ、そんなことのためにあるのではない器官に、京楽の大きな一物を突き入れられて、浮竹は痛みを感じたが、ヒートの熱ですぐに思考はぐずぐずに溶けていく。

「あ・・・・・春水で、満たして」

「いいよ」

ズッズッと音を立てながら、京楽のものが出入りする。

ぐちゅりと音をたてて、子宮口まで侵入された。

「ひああああ!」

刺激に、びくんと浮竹の体が反応する。

「ここもいいんだ」

「や、変になるから・・・やあああ」

前立腺をすりあげながら、何度も浮竹の体を揺さぶった。

「あ、あ、あ!」

浮竹は白い少し長くなった髪を乱して、京楽を締め付けた。

「出すよ・・・・・いいかい」

「あ、あ・・・・・奥に、胎の奥にだしてくれ」

「番にするよ」

どくどくと、浮竹の子宮の中に精液をぶちまけながら、京楽は浮竹の首を噛んだ。

「あ!」

ぴりっとした刺激があり、番になったことがわかる。

「春水と、番になれた・・・・・・・」

浮竹は、弱弱しくではあったが、笑った。

「十四郎。もう、僕だけのものだ。まだ学生だから、後でアフターピル飲んでね。卒業したら、子を作ろう」

「気が早いな」

「だって、好きだった子とやっと想いが通じたんだもん。オメガとアルファは関係なしに、いずれこうなっていたよ、きっと」

「春水、好きだ」

「十四郎・・・・・・・」

何度も口づけを交わした。



ヒート期間であり、まだ一度しか京楽の精を受けていない浮竹は、もっとと京楽にせがんだ。

「んあっ」

もう何度目になるかわからない精液を、胎の奥で受け止めて、浮竹は意識を飛ばした。アフターピルはもう飲んだ後なのだが、それでもまだ交わりたいと、浮竹がせがむので、最近体の調子がいいのをいいことに、何回も抱いた。

ヒート期間は一週間ほどあるが、ずっと交わるではなく、浮竹と京楽の場合は、まどろみを繰り返しながら、時折交じり合い、食事をして風呂に入り、また眠ったりと、眠る時間が多かった。

アルファ用の抑制剤を、京楽は飲んだ。

体の弱い浮竹をずっと抱いていると、きっと熱を出すだろうと、少しでも抑えようとした。

互いの抑制剤は、ヒート期間中のためのものを飲んだので、眠剤成分が入っていた。

幸せなまどろみだった。


ヒート期間が終わると同時に、浮竹は熱を出した。

「ごめんね、熱ださせちゃって」

「いや、いい。俺も望んだことだから」

京楽は、浮竹の前髪をかきあげて、額にキスをした。

「好きだよ、十四郎」

浮竹は赤くなって、でも小声で「俺も」と言って、布団を頭までかぶってしまった。

やがて、浮竹も京楽も統学院を卒業し、死神になり、席官となり、隊長となり・・・・・・・。

京楽と浮竹は3人の子をもうけて、結婚し、長く幸せな時を過ごすのだった。


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