始祖なる者、ヴァンパイアマスター20
浮竹は、悪夢を見ていた。
京楽が病気にかかり、治療のかいなく、死んでしまう夢だった。
「京楽!」
「どうしたの、浮竹」
がばりと起き上がると、いつもの京楽が、そこにいた。
「凄い汗。悪夢でも見たの?」
「ああ・・・・・」
「シャワーでも浴びておいで。その間に戦闘人形と一緒に、朝食作っておくから」
「ああ、すまない」
冷たい冷水で、シャワーを浴びて悪夢の残滓を洗い流した後、熱いシャワーを浴びて、体と髪を洗った。
昨日睦みあったので、キスマークがいたるところにあった。
「京楽の奴、誰も来ないからって、こんな服を着ても見えるとろにまで、キスマーク残しやがって・・・・・・」
浮竹はぷりぷりと怒りながら、食堂に移動した。
「ああだめだよ浮竹、ちゃんと髪乾かさないと」
まだ完全に乾いていない髪の水分を、京楽がタオルでふいてやる。
「俺には民間魔法がある。この前覚えたあったかい空気を出す魔法だ」
ごおおおと、その魔法を自分の髪にかけた。
「ああもう、ぼさぼさじゃない!ちゃんとくしを通さないと!」
「お前は俺の母親か」
まるで、おかんのような京楽に、浮竹はけれどされるがままになっていた。
「ほら、今日は寒いからこの上着を羽織って。髪は結んでしまおう」
普通の結びのならわかるが、京楽は両サイドを三つ編みにして、後ろも三つ編みにした。
「ほら、かわいい」
「おい、俺の髪で遊ぶな」
「別にいいじゃない」
ふと、首にぶら下げていた東洋の浮竹と京楽からもらった水晶のペンダントが輝きだし、白く濁った。
「なんだ、誰かいるのか!」
「俺はウルキオラ。藍染様の配下、十刃の一人」
ゆらりと建物の影から現れた、白い肌に黒い髪、緑の瞳をした美しい青年は、魔族であった。
「魔族が俺たちになんの用だ!」
「気をつけて、浮竹。その子、強いよ」
浮竹は血の刃で攻撃する。すると、ウルキオラは浮竹を無視して、京楽の近くにきて、至近距離で小瓶を割った。
「うわ、なんだい!?」
「ウィルスだ。ヴァンパイアにしか感染しない。ヴァンパイアマスターには感染しない。せいぜい、愛する男が病気で死んでいくのを、見て苦しむがいい」
そう言って、ウルキオラは影の中に溶けていった。
「大丈夫か、京楽!」
「え、全然なんでも・・・・・ぐ、ごほっごほっ」
京楽は、咳き込んだかと思うといきなり血を吐いた。
ヴァンパイアの血では、傷は再生できるが病気はどうしようもない。
「今、ルキア君を呼ぶ!」
京楽は意識を失い、浮竹にベッドまで運ばれた。
浮竹は急いで式を飛ばした。帰ってきた式の言葉はNO。
今、血の帝国全土で謎の奇病が流行っているというのだ。感染源は不明。もって1週間で死に至る、肺を蝕むウィルスらしい。
ルキアはその治療にかりだされていて、こちらから出向いても対応が遅れるだろう。
「聖女は・・・シスター・ノヴァは封印したし、そうだ、井上織姫!」
人間の国の聖神殿にいる、井上織姫に会って、なんとしても京楽を治してもらおう。
浮竹は、初めて直面する血族の死の匂いに、震えながら、最近やっと契約した、冬獅郎も契約している氷の精霊、魔狼フェンリルの背に京楽を乗せ、大地を走るのであった。
-------------------------------------------------
井上織姫に面会を頼みたい。
急病の患者がいるのだ。
そう訴えても、ヴァンパイアであるせいで、拒絶された。
すでに、京楽が謎の奇病にかかって3日が過ぎていた。京楽は水しか受けつけず、高熱をだしては血を吐いた。
「もういい、人間どもよ。どけ」
真紅の瞳を輝かせて、ヴァンパイアの証であり真紅の翼を広げて、浮竹は京楽をフェンリルの背に預けながら、聖神殿の中に足を踏み入れた。
「賊だ!賊が侵入したぞ!」
切りかかってくる兵士たちを、本当は殺したいが、聖女井上織姫が殺戮を繰り返したヴァンパイアの連れを治すとも考えにくく、浮竹は蔦の魔法でとらえて身動きを封じる。
「シズアイビー」
しゅるるると、蔦の魔法は聖神殿全体を覆ってしまった。
「どうたんですが、皆さん」
「聖女よ!出てきてはなりません、凶悪なヴァンパイアが、聖女を狙っています」
「誤解だ!聖女井上織姫、どうか俺の血族を助けてくれ!」
浮竹は、聖女井上織姫の前にくると、傅いた。
「顔をあげてください。浮竹さん!」
織姫は、優しい眼差しで浮竹を見つめた。
そして、京楽の病気のことを知ると、京楽を自分の部屋に運ぶように周りの者に指示して、去らせた。
「これは・・・ヴァンパイアだけがかかる病気ですね。ウィルス性急性エパトリンという病です。これは、ヴァンパイアの灰がないと、治りません」
血の帝国では、ルキアがヴァンパイアの墓を暴いて灰を集めてくるように命じて、患者たちを癒していた。
浮竹は、自分の右手を切り落とし燃やし、灰を作りだした。
「この灰で、なんとかならないか」
「やってみます!」
ぱぁあと、光が満ちた。けれど、京楽の病気は癒えず、少し改善しただけだった。
「氷の魔法で仮死状態にしても無理か!?」
「無理です。この病気の怖いところは、仮死状態でも病気が進行するところなんです」
「僕は・・・死なないよ。大丈夫だよ、浮竹・・・僕を、信じて?ゴホッ、ゴホッ」
顔に少し赤みが戻っていたが、治癒できたわけではなく、血を吐いた。
浮竹は泣いた。
「お前のいない世界なんていらないんだ。京楽、愛している」
浮竹は、炎の精霊王を呼び出した。
フェニックスで一度屠り、命を与えても、この病気は治らない。
そうと知った浮竹は、炎の精霊王に命令した。
「俺を焼き殺せ」
「我が友よ。汝は、神の愛で守られている。死しても死なぬ」
「だから、一度死ぬんだ。炎の精霊王、俺を灰にしろ。これは盟約にのっとった命令だ。拒否は許さない」
「地獄の業火で自ら焼かれるというのか」
「そうだ」
「仕方ない、分かった」
「え、ちょと、浮竹さん!?」
織姫の静止をふりきって、浮竹は炎の精霊王の滅びの炎の焼かれて、灰となった。
その灰を、織姫は泣きながら京楽に与えて、癒しの魔法を唱えた。
「僕は・・・浮竹は!?」
「浮竹さんは、死んでしまいました」
「冗談でしょ?」
「冗談ではない。我が灰にした」
京楽は、浮竹の血族だ。
今その場に、浮竹の気配なかった。ただ、浮竹が残した灰だけがあった。
「我は精霊界に戻る。我が友は不死。信じるといい」
「君のいない世界なんて、僕はいらないんだ!」
京楽は、浮竹の灰を掴んで泣いた。
滴り落ちた雫から、芽がでた。
それはみるみるうちに巨大な花を咲かせて、実をつけた。
実の中には、裸の浮竹がいた。
「あ、何か着るもの持ってきます!」
織姫は赤くなって、部屋を飛び出していた。
「浮竹?」
「誰だ、お前は」
実から生まれ出で、再生した浮竹は真紅の瞳で京楽を見た。
「冗談はやめてよ。僕は君の血族で、君は僕の主」
「俺は、創造神ルシエードの子、始祖ヴァンパイア浮竹十四郎。我が父、ルシエードはどこだ?」
真紅の瞳で、京楽を睨みにつけてくる。
京楽は構わず、裸の浮竹にシーツを巻きつけて、腕の中に抱きしめていた。
「僕を思い出て」
「お前など、知らぬ。うう、頭が・・・・・」
浮竹は、その場に蹲った。
京楽は、浮竹を抱き上げて、口づけしていた。
真紅だった瞳は、元の翡翠色に戻っていた。そして、混濁していた記憶が、はっきりしてくる。
今、浮竹を抱きしめてる存在に、安堵を覚えた。
「お前は俺の血族。血族の、京楽春水」
浮竹が、おずおずと、京楽の背に手を伸ばす
「そうだよ、浮竹。僕は君の血族の京楽春水にして、君だけを愛する君だけのもの」
「京楽・・・病気は、もういいのか」
「うん。浮竹と織姫ちゃんのお陰で治ったよ」
開いたままの扉の入り口で、織姫が顔を真っ赤にして服を手に立っていた。
「すみません、その、のぞいていたとかそうではなく・・・・・」
「気にしないでくれ、織姫君。君の助けがいる。今、血の帝国中に、そのウィルス性急性エパトリンと病気が広がっているんだ。普通の方法では治せない。聖女の力が必要だ。俺たちと一緒に血の帝国にきてくれ!」
「はい、分かりました!」
織姫は、ささっと旅の準備をしてしまった。
「手慣れているな」
「聖地巡礼とかしていますし、聖神殿にやってこれない患者さんのところに行くこともあるので」
「浮竹、本当にもう大丈夫なのかい?」
「京楽こそ、大丈夫なのか?」
「僕はぴんぴんしてるよ。でも、いくら不死とはいっても、君が死ぬ姿なんてもう見たくない」
「すまない。多分、あれが最初で最後だ」
浮竹と京楽は、織姫を連れて古城に戻ると、血の帝国に向かって出発した。
------------------------------------------------
「ルキア、無茶だ!もう3日も寝てないんだぞ!少し眠れ!」
「しかし、私の聖女の魔法がないと、病気が癒えぬ!このままでは、死者は増すばかりだ!」
すでに、数千人が死んでいた。
「俺の氷の魔法で仮死状態にしても、病気は進行する。厄介だな」
一度、冬獅郎が患者を氷漬けにして、病気の進行をどうにかしようとしたが、無駄に終わった。
「感染源は特定できたのか?」
ルキアの言葉に、一護も冬獅郎も首を横に振った。
「今、3か所の街で発病が確認されている。空気感染でもないし、飛沫感染でもなさそうで、感染源の特定に至っていない」
ルキアは皇族であるため、ウィルス性急性エパトリン病にはかからかった。
ヴァンピールである一護と冬獅郎もだ。
「ルキア君、一護君、冬獅郎君!援軍を連れてきたぞ!」
浮竹は、治った京楽と共に、聖女井上織姫を連れてきていた。
「井上織姫っていいます!よろしくお願いします!」
「織姫殿!聖女であられるのだな!すまぬ、私は限界だ。少し休ませてもらう。患者を頼んだ」
「はい!」
他にも、聖帝国からも聖女がかけつけてきてくれて、病魔の勢いは静まりつつあった。
「あのウルキオラという青年が、ウィルスをもっていたんだろう。多分、いろんな場所で感染させていたんだろうが、幸いなことにウィルスそのものは空気感染も飛沫感染もしない。なんとかなりそうだが、ウルキオラを見つけるまでは、油断できないぞ」
「うん、分かってる」
-----------------------------------------------------
浮竹と京楽は、手を握りあって、新しい患者が出たという町にきていた。
「魔族の・・・あの、ウルキオラって奴の魔力を感じる。この町にいるみたいだね」
「ああ。影に潜んでいるかもしれない。注意しよう」
町をしらみつぶしに探し、やっとウルキオラを追いつめた。
「ちっ、死ななかったのか京楽」
「浮竹の愛のお陰で、僕はぴんぴんしているよ」
「ちっ、もっと毒性のあるウィルスにすれば良かった」
「十分に、毒性は強いと思うけどね?君のせいで、死者は5千人をこした」
「たった5千人か。500万人を殺したかったが・・・・・」
ウルキオラは、悔しそうであった。
「何の罪もない5千人の命を奪ったこと、その命で償わせてやる!」
「できるものなら、やってみろ!俺は藍染様から特別に愛され、力を分け与えていただいた魔族だ!」
「その藍染そのものが、一度俺に封印されたことを忘れるなよ?」
浮竹は、炎の精霊王を呼び出していた。
「呼んだか、我が友」
「この男を燃やし尽くせ。周囲にある、病のウィスルごと」
「分かった」
炎の精霊王は、地獄の業火を呼び出し、ウルキオラに向けた。
それを、ウルキオラは、肉体を焦げさせながらも吸収した。
「ほう、我がを吸収するか。しかし、我の炎は無限。くらえ、ファイアオブファイア!」
ウルキオラは、氷の魔法でシールドを張った。
しかし、相手は精霊王。
「くううう、藍染様ーーーーーー!!」
炎の侵食され、ウルキオラは敵の手にかかるのではなく、自害を選んだ。
「愛しております、藍染様」
ぱぁんと、爆発音がして、ウルキオラの体は粉々に吹っ飛んだ。
「気をつけろ、血肉にも何かのウィルスをもっている!」
「我に任せよ」
炎の精霊王は、満ちた瘴気ごと、ウルキオラの血も肉も蒸発させた。
「これで、その病気はこれ以上広がることはあるまい」
そう言って、炎の精霊王は精霊界に戻っていった。
「終わったね」
「ああ」
「思ったより死者が出ちゃったっけど、全面戦争になるのかな?」
「分からない。証拠は自害してしまったしな。ブラッディ・ネイに任せる。血の帝国は、基本戦争は行わない。多分、報復行動はすると思うが・・・・・」
その言葉通り、このウィルスばら撒き事件が収まった頃、ブラッディ・ネイは分身体を飛ばし魔国アルカンシェルの中にある川に、飲めば死ぬ毒を投げ入れ、それによる魔族の死者は4万人をこえるのであった。
京楽が病気にかかり、治療のかいなく、死んでしまう夢だった。
「京楽!」
「どうしたの、浮竹」
がばりと起き上がると、いつもの京楽が、そこにいた。
「凄い汗。悪夢でも見たの?」
「ああ・・・・・」
「シャワーでも浴びておいで。その間に戦闘人形と一緒に、朝食作っておくから」
「ああ、すまない」
冷たい冷水で、シャワーを浴びて悪夢の残滓を洗い流した後、熱いシャワーを浴びて、体と髪を洗った。
昨日睦みあったので、キスマークがいたるところにあった。
「京楽の奴、誰も来ないからって、こんな服を着ても見えるとろにまで、キスマーク残しやがって・・・・・・」
浮竹はぷりぷりと怒りながら、食堂に移動した。
「ああだめだよ浮竹、ちゃんと髪乾かさないと」
まだ完全に乾いていない髪の水分を、京楽がタオルでふいてやる。
「俺には民間魔法がある。この前覚えたあったかい空気を出す魔法だ」
ごおおおと、その魔法を自分の髪にかけた。
「ああもう、ぼさぼさじゃない!ちゃんとくしを通さないと!」
「お前は俺の母親か」
まるで、おかんのような京楽に、浮竹はけれどされるがままになっていた。
「ほら、今日は寒いからこの上着を羽織って。髪は結んでしまおう」
普通の結びのならわかるが、京楽は両サイドを三つ編みにして、後ろも三つ編みにした。
「ほら、かわいい」
「おい、俺の髪で遊ぶな」
「別にいいじゃない」
ふと、首にぶら下げていた東洋の浮竹と京楽からもらった水晶のペンダントが輝きだし、白く濁った。
「なんだ、誰かいるのか!」
「俺はウルキオラ。藍染様の配下、十刃の一人」
ゆらりと建物の影から現れた、白い肌に黒い髪、緑の瞳をした美しい青年は、魔族であった。
「魔族が俺たちになんの用だ!」
「気をつけて、浮竹。その子、強いよ」
浮竹は血の刃で攻撃する。すると、ウルキオラは浮竹を無視して、京楽の近くにきて、至近距離で小瓶を割った。
「うわ、なんだい!?」
「ウィルスだ。ヴァンパイアにしか感染しない。ヴァンパイアマスターには感染しない。せいぜい、愛する男が病気で死んでいくのを、見て苦しむがいい」
そう言って、ウルキオラは影の中に溶けていった。
「大丈夫か、京楽!」
「え、全然なんでも・・・・・ぐ、ごほっごほっ」
京楽は、咳き込んだかと思うといきなり血を吐いた。
ヴァンパイアの血では、傷は再生できるが病気はどうしようもない。
「今、ルキア君を呼ぶ!」
京楽は意識を失い、浮竹にベッドまで運ばれた。
浮竹は急いで式を飛ばした。帰ってきた式の言葉はNO。
今、血の帝国全土で謎の奇病が流行っているというのだ。感染源は不明。もって1週間で死に至る、肺を蝕むウィルスらしい。
ルキアはその治療にかりだされていて、こちらから出向いても対応が遅れるだろう。
「聖女は・・・シスター・ノヴァは封印したし、そうだ、井上織姫!」
人間の国の聖神殿にいる、井上織姫に会って、なんとしても京楽を治してもらおう。
浮竹は、初めて直面する血族の死の匂いに、震えながら、最近やっと契約した、冬獅郎も契約している氷の精霊、魔狼フェンリルの背に京楽を乗せ、大地を走るのであった。
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井上織姫に面会を頼みたい。
急病の患者がいるのだ。
そう訴えても、ヴァンパイアであるせいで、拒絶された。
すでに、京楽が謎の奇病にかかって3日が過ぎていた。京楽は水しか受けつけず、高熱をだしては血を吐いた。
「もういい、人間どもよ。どけ」
真紅の瞳を輝かせて、ヴァンパイアの証であり真紅の翼を広げて、浮竹は京楽をフェンリルの背に預けながら、聖神殿の中に足を踏み入れた。
「賊だ!賊が侵入したぞ!」
切りかかってくる兵士たちを、本当は殺したいが、聖女井上織姫が殺戮を繰り返したヴァンパイアの連れを治すとも考えにくく、浮竹は蔦の魔法でとらえて身動きを封じる。
「シズアイビー」
しゅるるると、蔦の魔法は聖神殿全体を覆ってしまった。
「どうたんですが、皆さん」
「聖女よ!出てきてはなりません、凶悪なヴァンパイアが、聖女を狙っています」
「誤解だ!聖女井上織姫、どうか俺の血族を助けてくれ!」
浮竹は、聖女井上織姫の前にくると、傅いた。
「顔をあげてください。浮竹さん!」
織姫は、優しい眼差しで浮竹を見つめた。
そして、京楽の病気のことを知ると、京楽を自分の部屋に運ぶように周りの者に指示して、去らせた。
「これは・・・ヴァンパイアだけがかかる病気ですね。ウィルス性急性エパトリンという病です。これは、ヴァンパイアの灰がないと、治りません」
血の帝国では、ルキアがヴァンパイアの墓を暴いて灰を集めてくるように命じて、患者たちを癒していた。
浮竹は、自分の右手を切り落とし燃やし、灰を作りだした。
「この灰で、なんとかならないか」
「やってみます!」
ぱぁあと、光が満ちた。けれど、京楽の病気は癒えず、少し改善しただけだった。
「氷の魔法で仮死状態にしても無理か!?」
「無理です。この病気の怖いところは、仮死状態でも病気が進行するところなんです」
「僕は・・・死なないよ。大丈夫だよ、浮竹・・・僕を、信じて?ゴホッ、ゴホッ」
顔に少し赤みが戻っていたが、治癒できたわけではなく、血を吐いた。
浮竹は泣いた。
「お前のいない世界なんていらないんだ。京楽、愛している」
浮竹は、炎の精霊王を呼び出した。
フェニックスで一度屠り、命を与えても、この病気は治らない。
そうと知った浮竹は、炎の精霊王に命令した。
「俺を焼き殺せ」
「我が友よ。汝は、神の愛で守られている。死しても死なぬ」
「だから、一度死ぬんだ。炎の精霊王、俺を灰にしろ。これは盟約にのっとった命令だ。拒否は許さない」
「地獄の業火で自ら焼かれるというのか」
「そうだ」
「仕方ない、分かった」
「え、ちょと、浮竹さん!?」
織姫の静止をふりきって、浮竹は炎の精霊王の滅びの炎の焼かれて、灰となった。
その灰を、織姫は泣きながら京楽に与えて、癒しの魔法を唱えた。
「僕は・・・浮竹は!?」
「浮竹さんは、死んでしまいました」
「冗談でしょ?」
「冗談ではない。我が灰にした」
京楽は、浮竹の血族だ。
今その場に、浮竹の気配なかった。ただ、浮竹が残した灰だけがあった。
「我は精霊界に戻る。我が友は不死。信じるといい」
「君のいない世界なんて、僕はいらないんだ!」
京楽は、浮竹の灰を掴んで泣いた。
滴り落ちた雫から、芽がでた。
それはみるみるうちに巨大な花を咲かせて、実をつけた。
実の中には、裸の浮竹がいた。
「あ、何か着るもの持ってきます!」
織姫は赤くなって、部屋を飛び出していた。
「浮竹?」
「誰だ、お前は」
実から生まれ出で、再生した浮竹は真紅の瞳で京楽を見た。
「冗談はやめてよ。僕は君の血族で、君は僕の主」
「俺は、創造神ルシエードの子、始祖ヴァンパイア浮竹十四郎。我が父、ルシエードはどこだ?」
真紅の瞳で、京楽を睨みにつけてくる。
京楽は構わず、裸の浮竹にシーツを巻きつけて、腕の中に抱きしめていた。
「僕を思い出て」
「お前など、知らぬ。うう、頭が・・・・・」
浮竹は、その場に蹲った。
京楽は、浮竹を抱き上げて、口づけしていた。
真紅だった瞳は、元の翡翠色に戻っていた。そして、混濁していた記憶が、はっきりしてくる。
今、浮竹を抱きしめてる存在に、安堵を覚えた。
「お前は俺の血族。血族の、京楽春水」
浮竹が、おずおずと、京楽の背に手を伸ばす
「そうだよ、浮竹。僕は君の血族の京楽春水にして、君だけを愛する君だけのもの」
「京楽・・・病気は、もういいのか」
「うん。浮竹と織姫ちゃんのお陰で治ったよ」
開いたままの扉の入り口で、織姫が顔を真っ赤にして服を手に立っていた。
「すみません、その、のぞいていたとかそうではなく・・・・・」
「気にしないでくれ、織姫君。君の助けがいる。今、血の帝国中に、そのウィルス性急性エパトリンと病気が広がっているんだ。普通の方法では治せない。聖女の力が必要だ。俺たちと一緒に血の帝国にきてくれ!」
「はい、分かりました!」
織姫は、ささっと旅の準備をしてしまった。
「手慣れているな」
「聖地巡礼とかしていますし、聖神殿にやってこれない患者さんのところに行くこともあるので」
「浮竹、本当にもう大丈夫なのかい?」
「京楽こそ、大丈夫なのか?」
「僕はぴんぴんしてるよ。でも、いくら不死とはいっても、君が死ぬ姿なんてもう見たくない」
「すまない。多分、あれが最初で最後だ」
浮竹と京楽は、織姫を連れて古城に戻ると、血の帝国に向かって出発した。
------------------------------------------------
「ルキア、無茶だ!もう3日も寝てないんだぞ!少し眠れ!」
「しかし、私の聖女の魔法がないと、病気が癒えぬ!このままでは、死者は増すばかりだ!」
すでに、数千人が死んでいた。
「俺の氷の魔法で仮死状態にしても、病気は進行する。厄介だな」
一度、冬獅郎が患者を氷漬けにして、病気の進行をどうにかしようとしたが、無駄に終わった。
「感染源は特定できたのか?」
ルキアの言葉に、一護も冬獅郎も首を横に振った。
「今、3か所の街で発病が確認されている。空気感染でもないし、飛沫感染でもなさそうで、感染源の特定に至っていない」
ルキアは皇族であるため、ウィルス性急性エパトリン病にはかからかった。
ヴァンピールである一護と冬獅郎もだ。
「ルキア君、一護君、冬獅郎君!援軍を連れてきたぞ!」
浮竹は、治った京楽と共に、聖女井上織姫を連れてきていた。
「井上織姫っていいます!よろしくお願いします!」
「織姫殿!聖女であられるのだな!すまぬ、私は限界だ。少し休ませてもらう。患者を頼んだ」
「はい!」
他にも、聖帝国からも聖女がかけつけてきてくれて、病魔の勢いは静まりつつあった。
「あのウルキオラという青年が、ウィルスをもっていたんだろう。多分、いろんな場所で感染させていたんだろうが、幸いなことにウィルスそのものは空気感染も飛沫感染もしない。なんとかなりそうだが、ウルキオラを見つけるまでは、油断できないぞ」
「うん、分かってる」
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浮竹と京楽は、手を握りあって、新しい患者が出たという町にきていた。
「魔族の・・・あの、ウルキオラって奴の魔力を感じる。この町にいるみたいだね」
「ああ。影に潜んでいるかもしれない。注意しよう」
町をしらみつぶしに探し、やっとウルキオラを追いつめた。
「ちっ、死ななかったのか京楽」
「浮竹の愛のお陰で、僕はぴんぴんしているよ」
「ちっ、もっと毒性のあるウィルスにすれば良かった」
「十分に、毒性は強いと思うけどね?君のせいで、死者は5千人をこした」
「たった5千人か。500万人を殺したかったが・・・・・」
ウルキオラは、悔しそうであった。
「何の罪もない5千人の命を奪ったこと、その命で償わせてやる!」
「できるものなら、やってみろ!俺は藍染様から特別に愛され、力を分け与えていただいた魔族だ!」
「その藍染そのものが、一度俺に封印されたことを忘れるなよ?」
浮竹は、炎の精霊王を呼び出していた。
「呼んだか、我が友」
「この男を燃やし尽くせ。周囲にある、病のウィスルごと」
「分かった」
炎の精霊王は、地獄の業火を呼び出し、ウルキオラに向けた。
それを、ウルキオラは、肉体を焦げさせながらも吸収した。
「ほう、我がを吸収するか。しかし、我の炎は無限。くらえ、ファイアオブファイア!」
ウルキオラは、氷の魔法でシールドを張った。
しかし、相手は精霊王。
「くううう、藍染様ーーーーーー!!」
炎の侵食され、ウルキオラは敵の手にかかるのではなく、自害を選んだ。
「愛しております、藍染様」
ぱぁんと、爆発音がして、ウルキオラの体は粉々に吹っ飛んだ。
「気をつけろ、血肉にも何かのウィルスをもっている!」
「我に任せよ」
炎の精霊王は、満ちた瘴気ごと、ウルキオラの血も肉も蒸発させた。
「これで、その病気はこれ以上広がることはあるまい」
そう言って、炎の精霊王は精霊界に戻っていった。
「終わったね」
「ああ」
「思ったより死者が出ちゃったっけど、全面戦争になるのかな?」
「分からない。証拠は自害してしまったしな。ブラッディ・ネイに任せる。血の帝国は、基本戦争は行わない。多分、報復行動はすると思うが・・・・・」
その言葉通り、このウィルスばら撒き事件が収まった頃、ブラッディ・ネイは分身体を飛ばし魔国アルカンシェルの中にある川に、飲めば死ぬ毒を投げ入れ、それによる魔族の死者は4万人をこえるのであった。
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