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始祖なる者、ヴァンパイアマスター29-2

「くそ、この女が死んでも・・・・・・・」

ブラディカに似せた人形を見せつけてくる。

一瞬の隙をついて、浮竹は血を操りブラディカの人形を奪い取り、それを手で握った。

「ブラディカを傷つけた罪、京楽を傷つけた罪、その命で贖てもらおうか?」

ゆらりと、浮竹が動く。

窓の外の月は、赤くなっていた。

「ブラッディ・ムーン・・・・・」

京楽はぞくりとした。

赤い月は、ヴァンパイアの力を増す。

強ければ、強いほどに。

「浮竹、僕も加勢するよ!」

猛毒の血を燃やして、毒ガスをダニエルに吸わせた。

「く、一度に2匹も!厄介な!」

「フレイムロンド」

ぽっ、ぽっ、ぽっ。

ダニエルの周りに、火の玉が現れる。それは踊るように揺らめき、一気にダニエルに襲いかかった。

「ああああああ!!」

でも、ダニエルは薄い火傷を負っただけだった。

「また、呪術で何かにダメージを負わせているな」

「はは、誰にだろうね?」

浮竹の体が燃え上がった。

「あはははは!馬鹿だね、自分に呪術がかけられているのにも気づかなんて」

浮竹は、炎を纏わせながら、一歩一歩ダニエルに近づいた。

「なんでだ!なんで死なない!」

「俺は始祖ヴァンパイアマスター、浮竹十四郎。神の愛の呪いをもっているせいで、不老不死だ」

「始祖!ヴァンパイアマスター!!」

驚愕に、ダニエルは目を見開いた。

「あはははは、そんな存在に殺されるのもいいね!」

「狂ってるね」

「ああ」

浮竹はいたぶることはせず、ダニエルの首をはねた。

「あははは、最高だね。首をはねられるなんて」

「どうして、死なない!?」

「あの方の血を飲んだからね」

「藍染か」

「違う。魔人ユーハバッハ」

「何!?」

「なんだって!?」

かつてこの世界には、魔人と呼ばれる存在があった。

8種の精霊王を従え、アストラル体となって神界に攻め込み、神の怒りをかって、千年の眠りについている。

「あは、本気にしたの?冗談だよ。染藍さ」

「また藍染か・・・・・・」

浮竹は頭を抱えながらも、ダニエルにトドメをさした。

「死ね。ファイアオブファイア」

「ふふふふ、ひっかかったね!!」

炎に焼かれても、ダニエルは死ななかった。

「な、まさか本当に魔人ユーハバッハの血を!?」

「古代遺跡の研究施設に残されていた血を、盗んで舐めたのさ。飲むことなんでできない。ユーハバッハに支配されてしまう」

「そうそう、支配されるんだよ」

「支配されちゃいなよ」

ダニエルは、複数の自分の声を聞いて、苦しみだした。

「うるさい、うるさい」

「なんだ、様子が変だぞ」

「浮竹、今の間にトドメを」

「分かった。ライトニングフレイムスートム!」

始めは電撃が走り、次の炎の嵐に巻き込まれた。

「支配、されちゃいないよ・・・・・」

体を炭化させながら、ダニエルはまだ生きていた。

「支配する、僕が支配する。支配されるんじゃない、支配するんだ」

心臓を、浮竹の手が貫き、それを握りつぶした。

心臓にはコアがあって、それはかの魔人ユーハバッハの血をとりこんだせいであった。

「ぐはっ・・・・」

ダニエルは血を吐いた。

「まだ死なないのか!?」

「一人でいくのはいやだ。お前も道連れにしてやる・・・・」

血で真っ赤になりながら、ダニエルは浮竹に縋りついた。

「僕の浮竹に、手を触れないで」

心臓に猛毒の血液を注ぎこみ、数分するとダニエルは生命活動を停止させた。

「京楽、怪我はないか?」

「うん、大丈夫。浮竹は?」

「ああ、全部返り血だ。それよりブラディカが危険だ。急いで離宮にいこう」

ブラディカの美しい褐色の肌の生首を手に、二人は古城を抜け出して離宮には入った。

ブラディカは、封印されたまま棺をあけられて、首から上がなかった。体中にいくつも傷ができていた。特に心臓近くが酷かったが、幸いにもコアは無事だった。

浮竹が手首を自分の血の刃で斬ると、じゅわりと滲みだした血をブラディカに与えた。

「ブラディカ嬉しい・・・浮竹、愛してる・・」

ブラディカの首と頭は繋がり、心臓に受けた傷も回復していく。

「ブラディカ、またお眠り」

「ブラディカ・・・・また、眠る。この青い薔薇の棺の中で、浮竹を思いながら、浮竹と過ごす楽しい夢を見るの・・・・・」

ブラディカは、休眠状態に入りながら、まら封印された。


「魔人ユー八バッハ・・・まさか、そんな存在が出てくるなんて」

「こればかりは、どうしよもないね。封印は続いているはすだよ。まだ封印されているということは、こちらに手出しはできないよ。今のうちに魔人ユーハバッハを殺すかい?」

「いや、神と対等に戦った存在だ。封印が破れでもしたら、世界は混沌の渦に飲まれる」

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ドクン、ドクン、ドクン。

それは、鼓動を打っていた。

ドクン、ドクン、ドクン。

それは、脈打っていた。

魔人ユーハバッハは、神の怒りの封印を受けていた。

でも、生きていた。

「ああ。私は、世界だ」

そう言った。

水底であった。ただ、静かに揺らぐ波の中にいた。

「魔人ユーハバッハ。君の血を、もらうよ」

魔族の始祖藍染は、注射器を取り出すと、ユーハバッハの血を抜いていった。

ユーハバッハは、何も言わずされるがままだった。

神の怒りの封印は、動くことさえままならぬ。

「これで、あの始祖ヴァンパイアを・・・」

「始祖、ヴァンパイア?」

ユーハバッハが、興味をもったように聞いてきた。

「そう。始祖ヴァンパイアの浮竹十四郎」

「始祖ヴァンパイア・・・次の私の器には、よいかもしれぬ」

「魔人ユーハバッハ。残念ながら、その始祖が私に殺されるんだよ」

「そうなれば、それもまた運命」

ユーハバッハは目を閉じた。

波の音がする。

藍染が何か言っていたが、ユーハバッハはもう聞いていなかった。

魔人ユーハバッハを封印したのは、創造神ルシエード。

浮竹の父であった。




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