海
一護は、女性死神協会の面子と一緒に、その年も海にやってきた。
男性死神は日番谷、白哉、京楽、浮竹、恋次、檜佐木、吉良。浮竹には清音と仙太郎も念のためにとついてきていた。現世からは一護。
ギラギラと照り付ける太陽が、まぶしい。
各自、水着姿になって海で泳いだり、肌を日で焼いたり、砂細工をつくったり、行動はばらばらだった。
白哉は、去年の時のようにわかめ大使をつくっていた。となりで、ルキアもわかめ大使をつくっていた。
本当に、この義兄妹は、仲がいい。ついでに、美的センスが似ている。
白哉は甘いところを微塵も見せぬようにしているつもりなのだろうが、義妹に夢中なのがばればれであった。
「ルキアまで、わかめ大使つくってんのかよ・・・・・・」
一護は、日番谷が出してくれた氷をかき氷にして、それを食べていた
日番谷は暑いのが苦手で、パラソルの下で周りを氷壁に囲ませて、一人涼んでいた。
「たわけ!このわかめ大使のよさが、貴様には分からぬのか!」
「よいルキア。しょせん、凡人には我らの美的感覚はわからぬのだ」
「わかんねーよそんなの。ま、好きにすればいいんじゃねーの」
白哉までくるとは思わなかったが、ルキアが喜んでいるので、呼んで正解だったのだろう。
今回の企画をたてたのは、一護だった。
「西瓜割の時間ですよー」
卯ノ花が、今年もお化け西瓜を用意していた。念のためみんな斬魄刀をもってきていたので、西瓜のお化けはあっけなく撃退されて、ただの西瓜になった。
みんな、西瓜を食べる。よく冷えていて、甘かった。
「ルキア、ほっぺたに西瓜の種ついてるぞ」
一護がルキアの頬に手をのばし、種をとってやると、白哉の霊圧が変わった。
「兄は・・・・・」
「誤解だ誤解!種とっただけだろ!」
一護は、ルキアの手をとって逃げ出す。
「貴様、何故私まで逃げねばならんのだ!」
「お前がいれば、白哉は攻撃してこねぇ!」
「たわけ、そんな理由で!」
「仲いいねぇ、一護君にルキアちゃん。朽木隊長も、はしゃいじゃって」
ビーチパラソルの下で、京楽はかき氷を食べながら、隣で同じようにかき氷を食べている浮竹をみた。
海パンにパーカーを羽織った格好をしているが、その肌の白さには驚かされる。
暑い日差しの下で数分いるだけで、倒れてしまった。
清音と仙太郎が、自家発電期をもってきて、それで風を送ったりして、なんとか意識を取り戻したのだ。
去年みたいに、砂細工で遊んでいたのなら、清音と仙太郎の手によって、花に埋もれ線香をあげられて、まるで死者を弔うような砂細工を作っていただろう。
「現世の夏はきついなぁ」
去年も倒れた。
浮竹は色素がないせいか、直射日光に弱かった。
「すまない京楽、日番谷隊長のところにいってかき氷のお代わりをもらってきてくれないか」
「はいはい」
京楽も海パンにパーカー姿だったが、浮竹との肌の色の濃さの違いに、まるで人種そのものが違うのかと思うほどだった。
「日番谷隊長、かき氷二人分追加お願いできるかな」
「蒼天に座せ、氷輪丸!」
斬魄刀をそんな使い方してもいいんだろうかと誰もが思ったが、山本総隊長なら怒るだろうが、総隊長はきていない。
出された氷をくだいてもっていく。かき氷には、松本がしてくれた。
その、あまりにも大胆な水着姿に、男性死神のみならず、一護もくらりときたくらいだ。
「かき氷、二人前~」
「ありがとう、乱菊ちゃん」
「どういたしまして」
悩殺の姿に平気なのは、日番谷に白哉くらいだろうか。浮竹と京楽でさえ、目のやり場に困る始末だった。
「うふふふ、今年の夏はみんなあたしにめろめろね」
檜佐木と吉良は、松本のセクシーさにやられて、鼻血を出して倒れていた。それを、やちるが砂に埋めていく。
「うっきー、大丈夫?」
やちるが、浮竹の元にやってきた。
来て早々倒れた浮竹を心配してきてくれたのだ。
「ああ、草鹿副隊長」
「ここ、涼しいね?扇風機っていうんだっけそれ」
自家発電機があるので、電力のいる扇風機だってまわせる。
「かき氷、食べるかい?」
「うん!」
浮竹は、自分が食べていたかき氷を一口スプーンにとると、それをやちるにあげた。
「甘くて冷たくておいしいー!」
「もっと食べたいなら、日番谷隊長か松本副隊長に言えばいい」
「うん、うっきー、また後でね!」
去っていく小さな姿に手をふっていると、じーっと、見つめてくる視線があった。
「な、なんだ京楽!?」
「あーんって、いいなぁ。僕にもしてくれない?」
「子供かお前は!」
「いいじゃない」
「誰が見ているのかわからんのだぞ」
「僕たち、人前でキスとかよくしてるよね?それに比べたら、全然恥ずかしくないことじゃない?」
「それもそうか・・・・・・」
浮竹は、かき氷をスプーンですくうと、京楽の口元にもってきた。
「ほら・・・・・」
京楽はそれを口にする。
「うん、美味しいね」
手が伸ばされる。頭をなでられ、キスされた。
「メロンの味がする」
「ばかっ、人が見てたらどうする」
幸いなことに、みんなそれぞれの遊びや涼み方に夢中で、二人の仲をみているものはいなかった。
まぁ、見られたとしても二人はその関係を隠していないので、平気なのだが。
「それにしても暑いね。浮竹、君って泳げる?」
「多分、泳げない」
「浮輪用意してあげるから、海にはいろう。日陰で涼んでるのもいいけど、せっかく海に来たんだし、泳がなくちゃ」
京楽が、浮竹の手をとって海の方に向かう。あひる模様の浮輪を手に、二人で海に入る。
「・・・・・・海に入るのははじめだが、気持ちいいな」
「そうでしょ?」
波の間を漂う。
「うっきーもじゃもじゃと楽しそう!」
やちるが、泳いでやってきた。
「もじゃもじゃって・・・・・・俺のことかい、やちるちゃん」
「そうだよーもじゃもじゃ」
「もうちょっとましな名前にならないかい?」
「じゃあもじゃりん」
浮竹は、それを聞いて笑っていた。
「浮竹、笑わないでよ」
海の水をかけると、浮竹も水をかけた。
「楽しそう!あたしも混ざる―」
3人で、水のかけあいっこをした。
「そろそろ、あがろうか」
「そうだね」
砂浜を二人で歩いた。風邪をひいてはいけないということで、髪はすぐにかわかされ、普通の死覇装に着替えていた。
もう、大部日が落ちた。暑さもましになってきた。
「いつかまた、海にこれたらいいね。今度は、二人きりで」
「ああ・・・・貝殻を、拾って帰ろう」
「ああ、お土産か」
海に連れてこれなかった隊士たちに、せめてものお土産だと貝を拾った。
尸魂界には海がない。
海にこれる死神なんて、限られている。
夕日で、浮竹は紅色に染まっていた。髪が、沈みかけの太陽に照らされて、朱にそまる。
「ああ、この色は綺麗だね」
「何がだ?」
「紅色に染まってる君が、綺麗だから。真っ赤な色は嫌いだけど、優しい紅色はいいね」
鮮血の真紅は嫌いだと、京楽は思う。
「お前も、紅色に染まっていてかっこいいと思うぞ」
背後から抱き着かれた。
「京楽?」
「本当に、またいつか海にこよう」
「ああ・・・・・」
夜になる前に、みんな尸魂界に帰っていった。一護は、バスで帰宅した。
「どうしたのですが、草鹿会長」
七緒が問うと、やちるは首をひねった。
「うーん。何か忘れてる気がするんだけどお」
「おーい、誰かいないのかー」
「誰か―」
海辺に・・・・というか、砂浜に首から下を埋められて、叫んでいる死神が二人いた。
檜佐木に吉良だった。
松本の神々の谷間にノックダウンされて、やちるに埋められたのだ。
結局、二人は翌日にやちるが思い出すまで、そのまま放置されていたそうな。
男性死神は日番谷、白哉、京楽、浮竹、恋次、檜佐木、吉良。浮竹には清音と仙太郎も念のためにとついてきていた。現世からは一護。
ギラギラと照り付ける太陽が、まぶしい。
各自、水着姿になって海で泳いだり、肌を日で焼いたり、砂細工をつくったり、行動はばらばらだった。
白哉は、去年の時のようにわかめ大使をつくっていた。となりで、ルキアもわかめ大使をつくっていた。
本当に、この義兄妹は、仲がいい。ついでに、美的センスが似ている。
白哉は甘いところを微塵も見せぬようにしているつもりなのだろうが、義妹に夢中なのがばればれであった。
「ルキアまで、わかめ大使つくってんのかよ・・・・・・」
一護は、日番谷が出してくれた氷をかき氷にして、それを食べていた
日番谷は暑いのが苦手で、パラソルの下で周りを氷壁に囲ませて、一人涼んでいた。
「たわけ!このわかめ大使のよさが、貴様には分からぬのか!」
「よいルキア。しょせん、凡人には我らの美的感覚はわからぬのだ」
「わかんねーよそんなの。ま、好きにすればいいんじゃねーの」
白哉までくるとは思わなかったが、ルキアが喜んでいるので、呼んで正解だったのだろう。
今回の企画をたてたのは、一護だった。
「西瓜割の時間ですよー」
卯ノ花が、今年もお化け西瓜を用意していた。念のためみんな斬魄刀をもってきていたので、西瓜のお化けはあっけなく撃退されて、ただの西瓜になった。
みんな、西瓜を食べる。よく冷えていて、甘かった。
「ルキア、ほっぺたに西瓜の種ついてるぞ」
一護がルキアの頬に手をのばし、種をとってやると、白哉の霊圧が変わった。
「兄は・・・・・」
「誤解だ誤解!種とっただけだろ!」
一護は、ルキアの手をとって逃げ出す。
「貴様、何故私まで逃げねばならんのだ!」
「お前がいれば、白哉は攻撃してこねぇ!」
「たわけ、そんな理由で!」
「仲いいねぇ、一護君にルキアちゃん。朽木隊長も、はしゃいじゃって」
ビーチパラソルの下で、京楽はかき氷を食べながら、隣で同じようにかき氷を食べている浮竹をみた。
海パンにパーカーを羽織った格好をしているが、その肌の白さには驚かされる。
暑い日差しの下で数分いるだけで、倒れてしまった。
清音と仙太郎が、自家発電期をもってきて、それで風を送ったりして、なんとか意識を取り戻したのだ。
去年みたいに、砂細工で遊んでいたのなら、清音と仙太郎の手によって、花に埋もれ線香をあげられて、まるで死者を弔うような砂細工を作っていただろう。
「現世の夏はきついなぁ」
去年も倒れた。
浮竹は色素がないせいか、直射日光に弱かった。
「すまない京楽、日番谷隊長のところにいってかき氷のお代わりをもらってきてくれないか」
「はいはい」
京楽も海パンにパーカー姿だったが、浮竹との肌の色の濃さの違いに、まるで人種そのものが違うのかと思うほどだった。
「日番谷隊長、かき氷二人分追加お願いできるかな」
「蒼天に座せ、氷輪丸!」
斬魄刀をそんな使い方してもいいんだろうかと誰もが思ったが、山本総隊長なら怒るだろうが、総隊長はきていない。
出された氷をくだいてもっていく。かき氷には、松本がしてくれた。
その、あまりにも大胆な水着姿に、男性死神のみならず、一護もくらりときたくらいだ。
「かき氷、二人前~」
「ありがとう、乱菊ちゃん」
「どういたしまして」
悩殺の姿に平気なのは、日番谷に白哉くらいだろうか。浮竹と京楽でさえ、目のやり場に困る始末だった。
「うふふふ、今年の夏はみんなあたしにめろめろね」
檜佐木と吉良は、松本のセクシーさにやられて、鼻血を出して倒れていた。それを、やちるが砂に埋めていく。
「うっきー、大丈夫?」
やちるが、浮竹の元にやってきた。
来て早々倒れた浮竹を心配してきてくれたのだ。
「ああ、草鹿副隊長」
「ここ、涼しいね?扇風機っていうんだっけそれ」
自家発電機があるので、電力のいる扇風機だってまわせる。
「かき氷、食べるかい?」
「うん!」
浮竹は、自分が食べていたかき氷を一口スプーンにとると、それをやちるにあげた。
「甘くて冷たくておいしいー!」
「もっと食べたいなら、日番谷隊長か松本副隊長に言えばいい」
「うん、うっきー、また後でね!」
去っていく小さな姿に手をふっていると、じーっと、見つめてくる視線があった。
「な、なんだ京楽!?」
「あーんって、いいなぁ。僕にもしてくれない?」
「子供かお前は!」
「いいじゃない」
「誰が見ているのかわからんのだぞ」
「僕たち、人前でキスとかよくしてるよね?それに比べたら、全然恥ずかしくないことじゃない?」
「それもそうか・・・・・・」
浮竹は、かき氷をスプーンですくうと、京楽の口元にもってきた。
「ほら・・・・・」
京楽はそれを口にする。
「うん、美味しいね」
手が伸ばされる。頭をなでられ、キスされた。
「メロンの味がする」
「ばかっ、人が見てたらどうする」
幸いなことに、みんなそれぞれの遊びや涼み方に夢中で、二人の仲をみているものはいなかった。
まぁ、見られたとしても二人はその関係を隠していないので、平気なのだが。
「それにしても暑いね。浮竹、君って泳げる?」
「多分、泳げない」
「浮輪用意してあげるから、海にはいろう。日陰で涼んでるのもいいけど、せっかく海に来たんだし、泳がなくちゃ」
京楽が、浮竹の手をとって海の方に向かう。あひる模様の浮輪を手に、二人で海に入る。
「・・・・・・海に入るのははじめだが、気持ちいいな」
「そうでしょ?」
波の間を漂う。
「うっきーもじゃもじゃと楽しそう!」
やちるが、泳いでやってきた。
「もじゃもじゃって・・・・・・俺のことかい、やちるちゃん」
「そうだよーもじゃもじゃ」
「もうちょっとましな名前にならないかい?」
「じゃあもじゃりん」
浮竹は、それを聞いて笑っていた。
「浮竹、笑わないでよ」
海の水をかけると、浮竹も水をかけた。
「楽しそう!あたしも混ざる―」
3人で、水のかけあいっこをした。
「そろそろ、あがろうか」
「そうだね」
砂浜を二人で歩いた。風邪をひいてはいけないということで、髪はすぐにかわかされ、普通の死覇装に着替えていた。
もう、大部日が落ちた。暑さもましになってきた。
「いつかまた、海にこれたらいいね。今度は、二人きりで」
「ああ・・・・貝殻を、拾って帰ろう」
「ああ、お土産か」
海に連れてこれなかった隊士たちに、せめてものお土産だと貝を拾った。
尸魂界には海がない。
海にこれる死神なんて、限られている。
夕日で、浮竹は紅色に染まっていた。髪が、沈みかけの太陽に照らされて、朱にそまる。
「ああ、この色は綺麗だね」
「何がだ?」
「紅色に染まってる君が、綺麗だから。真っ赤な色は嫌いだけど、優しい紅色はいいね」
鮮血の真紅は嫌いだと、京楽は思う。
「お前も、紅色に染まっていてかっこいいと思うぞ」
背後から抱き着かれた。
「京楽?」
「本当に、またいつか海にこよう」
「ああ・・・・・」
夜になる前に、みんな尸魂界に帰っていった。一護は、バスで帰宅した。
「どうしたのですが、草鹿会長」
七緒が問うと、やちるは首をひねった。
「うーん。何か忘れてる気がするんだけどお」
「おーい、誰かいないのかー」
「誰か―」
海辺に・・・・というか、砂浜に首から下を埋められて、叫んでいる死神が二人いた。
檜佐木に吉良だった。
松本の神々の谷間にノックダウンされて、やちるに埋められたのだ。
結局、二人は翌日にやちるが思い出すまで、そのまま放置されていたそうな。
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海(イチルキ)
「わーいい天気!」
井上が、ギラギラと照る太陽を見上げる。
「朽木さん、黒崎君、茶虎君、石田君、早く早く!」
急かされて、少し走った。
真夏の猛暑のうだる暑さの中、海水浴にきていた。
織姫はというと、もう海に入ってしまった。
「井上さん、ちゃんと準備体操してから海に入らないと!」
石田は、茶虎がビーチパラソルを立てるのを手伝っていた。
「きもちいい!」
水しぶきをあげる井上。その豊満すぎる胸に、男子どもの視線がいってしまう。
ルキアは、それを見ても何も感じないのか、海の家にいってかき氷を自分の分だけ頼むと、ビーチパラソルの下でしゃりしゃりと食べていた。
「ルキア、お前は泳がねーのかよ」
「あいにくだが、私は金づちなのだ。泳げない」
「俺が、泳ぎ方教えてやるよ。せっかく海にきたのに、泳がないなんて勿体ないぜ」
「だから!たわけ、この手を離さぬか!」
水着の上からパーカーを羽織り、首元までチャックをあげていた。
「暑いだろ、こんな日差しの中。ぬいじまえ」
パーカーを奪われた。
「その・・・・・・・あまり、見るな」
細いルキアの体は、井上の健康的ではちきれんばかりの胸と対照的に、控えめな膨らみがあるだけで、それが恥ずかしくて隠していたのだ。
ビキニタイプの水着で、こんな水着着てくるんじゃなかったと、ルキアは後悔した。
「すっげー似合ってる」
「え?」
海の方をみると、石田と茶虎はもう泳ぎにいってしまった。
浜辺にいるのは、ルキアと一護だけだ。
「ルキア、けっこう大胆な水着きるんだな」
ビキニタイプだが、露出度が普通より少しあった。
「な、これは別に井上に負けじと着たわけではないのだぞ!」
「俺は、井上の水着姿よりお前の水着姿のほうがいい」
「えっ・・・・・・・・」
急に、体温が熱くなるのをかんじた。
一護の視線が気になって、ルキアは水着を隠そうとする。
「隠すなよ」
「こんな貧弱な体・・・・・・・井上の、巨乳を見てればいいだろう」
「確かに井上の胸がすげーが、何も感じない。お前の水着姿のほうが何倍も魅力的だ」
また、体温があがるのを感じた。
一護は、何を言っているのだろうが。井上の豊満な胸を包む水着より、細い体の貧弱な私の水着のほうがいいといいう。
「泳ごうぜ」
「あ、待たぬか!」
手をとられて、ルキアは走り出す一護のあとをついていく。
ざばぁっと、波がルキアを飲み込んだ。
泳げないというのは嘘だ。一護に水着姿を見られたくなくて、嘘をついていたのだ。
「ルキア大丈夫か?泳げねーんじゃないのか?」
浜辺なので、海の水は腰当たりまでしかなかった。
「たわけ。泳げるわ」
「でもさっき泳げないって・・・・・・」
「貴様に水着姿を見られるのがいやで、嘘をついていたのだ」
「だから、すげー似合ってるって。井上もそう思うだろう?」
「うん!朽木さんの水着姿、すごくいいよ。儚いかんじがして、守ってあげたくなる」
「ななななな。たわけ!」
ルキアは、逃げるように海の中へ入り、潜ってしまった。
「まてよ、ルキア!」
そのあとを一護がおって、一護も海の中に消えてしまう。
「あーあ。黒崎君を、悩殺しようと思ってたのにな・・・・・・」
織姫はため息をついた。この日のために、勝負下着ならぬ勝負水着できたのだが。
肝心の一護は、ルキアばかりを見ていた。
少し悔しいけど、朽木さんと黒崎君の仲を裂くなんてできないと、井上が海からあがった。
ルキアは、海の底にへともぐっていく。それを、一護がおう。
手をとられて、ルキアは紫紺の瞳を見開いた。
海の中で口づけされる。
たわけ!と叫びたがったが、海の中だ。呼吸が苦しくなってきて、海面に顔をだすと、一護も海面から顔をだした。
「このたわけ」
「海の中のルキアって、人魚姫みたいだな」
また、体温が上昇するのを感じた。
「知るか!」
また海に潜った。一護と、水面下で戯れあう。
ひとしきり泳いで、海からあがった。
石田と茶虎と井上は、海の家から大量の食糧を買い込んできて、それをルキアと一護に渡していく。
「たまには海もいいな」
一護の感想に、ルキアも頷く。
その後、ビーチバレーをしたり西瓜割りをしたり。
ひとしきり海を楽しんで、その年の夏は終わった。
井上が、ギラギラと照る太陽を見上げる。
「朽木さん、黒崎君、茶虎君、石田君、早く早く!」
急かされて、少し走った。
真夏の猛暑のうだる暑さの中、海水浴にきていた。
織姫はというと、もう海に入ってしまった。
「井上さん、ちゃんと準備体操してから海に入らないと!」
石田は、茶虎がビーチパラソルを立てるのを手伝っていた。
「きもちいい!」
水しぶきをあげる井上。その豊満すぎる胸に、男子どもの視線がいってしまう。
ルキアは、それを見ても何も感じないのか、海の家にいってかき氷を自分の分だけ頼むと、ビーチパラソルの下でしゃりしゃりと食べていた。
「ルキア、お前は泳がねーのかよ」
「あいにくだが、私は金づちなのだ。泳げない」
「俺が、泳ぎ方教えてやるよ。せっかく海にきたのに、泳がないなんて勿体ないぜ」
「だから!たわけ、この手を離さぬか!」
水着の上からパーカーを羽織り、首元までチャックをあげていた。
「暑いだろ、こんな日差しの中。ぬいじまえ」
パーカーを奪われた。
「その・・・・・・・あまり、見るな」
細いルキアの体は、井上の健康的ではちきれんばかりの胸と対照的に、控えめな膨らみがあるだけで、それが恥ずかしくて隠していたのだ。
ビキニタイプの水着で、こんな水着着てくるんじゃなかったと、ルキアは後悔した。
「すっげー似合ってる」
「え?」
海の方をみると、石田と茶虎はもう泳ぎにいってしまった。
浜辺にいるのは、ルキアと一護だけだ。
「ルキア、けっこう大胆な水着きるんだな」
ビキニタイプだが、露出度が普通より少しあった。
「な、これは別に井上に負けじと着たわけではないのだぞ!」
「俺は、井上の水着姿よりお前の水着姿のほうがいい」
「えっ・・・・・・・・」
急に、体温が熱くなるのをかんじた。
一護の視線が気になって、ルキアは水着を隠そうとする。
「隠すなよ」
「こんな貧弱な体・・・・・・・井上の、巨乳を見てればいいだろう」
「確かに井上の胸がすげーが、何も感じない。お前の水着姿のほうが何倍も魅力的だ」
また、体温があがるのを感じた。
一護は、何を言っているのだろうが。井上の豊満な胸を包む水着より、細い体の貧弱な私の水着のほうがいいといいう。
「泳ごうぜ」
「あ、待たぬか!」
手をとられて、ルキアは走り出す一護のあとをついていく。
ざばぁっと、波がルキアを飲み込んだ。
泳げないというのは嘘だ。一護に水着姿を見られたくなくて、嘘をついていたのだ。
「ルキア大丈夫か?泳げねーんじゃないのか?」
浜辺なので、海の水は腰当たりまでしかなかった。
「たわけ。泳げるわ」
「でもさっき泳げないって・・・・・・」
「貴様に水着姿を見られるのがいやで、嘘をついていたのだ」
「だから、すげー似合ってるって。井上もそう思うだろう?」
「うん!朽木さんの水着姿、すごくいいよ。儚いかんじがして、守ってあげたくなる」
「ななななな。たわけ!」
ルキアは、逃げるように海の中へ入り、潜ってしまった。
「まてよ、ルキア!」
そのあとを一護がおって、一護も海の中に消えてしまう。
「あーあ。黒崎君を、悩殺しようと思ってたのにな・・・・・・」
織姫はため息をついた。この日のために、勝負下着ならぬ勝負水着できたのだが。
肝心の一護は、ルキアばかりを見ていた。
少し悔しいけど、朽木さんと黒崎君の仲を裂くなんてできないと、井上が海からあがった。
ルキアは、海の底にへともぐっていく。それを、一護がおう。
手をとられて、ルキアは紫紺の瞳を見開いた。
海の中で口づけされる。
たわけ!と叫びたがったが、海の中だ。呼吸が苦しくなってきて、海面に顔をだすと、一護も海面から顔をだした。
「このたわけ」
「海の中のルキアって、人魚姫みたいだな」
また、体温が上昇するのを感じた。
「知るか!」
また海に潜った。一護と、水面下で戯れあう。
ひとしきり泳いで、海からあがった。
石田と茶虎と井上は、海の家から大量の食糧を買い込んできて、それをルキアと一護に渡していく。
「たまには海もいいな」
一護の感想に、ルキアも頷く。
その後、ビーチバレーをしたり西瓜割りをしたり。
ひとしきり海を楽しんで、その年の夏は終わった。
無題
「浮竹?」
名を呼ぶと、視線があった。すぐに、ふいっと翡翠の瞳は違うところへ注がれる。
最近仲良くなった・・・・確か、清原とかいう名の院生の友達と、楽しそうに会話していた。
なんでも、同じ下級貴族で、兄弟がたくさんいるという共通点から、急激に親しくのなったらしい。
チクリと、京楽の胸が痛んだ。
名を呼ぶと、視線があった。すぐに、ふいっと翡翠の瞳は違うところへ注がれる。
最近仲良くなった・・・・確か、清原とかいう名の院生の友達と、楽しそうに会話していた。
なんでも、同じ下級貴族で、兄弟がたくさんいるという共通点から、急激に親しくのなったらしい。
チクリと、京楽の胸が痛んだ。
翡翠
「京楽隊長!ずっと好きでした!」
瀞霊廷の桜散る場所で、京楽は女性死神に呼び出されていた。
いきなり抱き着いてきて、キスをしてきたので京楽は驚いた。
「・・・・・・京楽?」
その姿を、あろうことがとてもとても大切な想い人に見られた。
「あっ、浮竹!」
浮竹は瞬歩で走り去ってしまった。
追いかけても間に合わない。いつもはそんなに早くないのに、こんな時に限って浮竹の瞬歩は京楽の瞬歩を上回る。
「あちゃー」
腕の中で、ぐすぐすと泣いている女性死神は、目の色が緑だった。
ただ、それだけのことだ。
告白されて、ああ、浮竹と同じ緑の瞳をしているな・・・・・でも、浮竹の瞳のほうが翡翠みたいで綺麗で、光を反射していて・・・・・・・いろいろ考えていたら、抱き着かれてキスされていた。
「どうしよう・・・・・・」
愛しの想い人は、今頃怒っているはずだ。
どうやって機嫌をとろうか。
「気持ちはうれしいけど、僕には浮竹がいるからね」
緑の瞳の女性死神は、きっと睨んできた。
「浮竹隊長はずるいです!病弱を理由に京楽隊長を独り占めして!」
「それ以上は言わないで。怒るよ?」
相手がいくら女性とはいえ、愛する浮竹の悪口は許さない。
「それにね、独り占めしてるのは僕なの。浮竹を慕う人は多いからね・・・・なのに、僕が独占してるんだよ」
女子死神は
「嘘です!」
そういって、走り去ってしまった。
「今日は厄日だねぇ」
京楽は、空を仰ぐ。
ちらちらと散る桜の花びらは綺麗だし、天気もよくて晴れていた。でも、京楽の心の中はどしゃぶり雨だった。
その頃、浮竹は。
昼間っから、酒を飲んでいた。
飲まないと、やってられない。珍しく仕事を放棄して、やけ酒をする浮竹に、清音と仙太郎が心配していた。
「隊長、飲み過ぎですよ。それ、京楽隊長のお酒でしょう?」
「鼻くそ女の言う通りです隊長!そんなきついお酒、大量に飲んだらお体に障ります!」
「うるさい、ほっとけー」
すでに、浮竹はべろんべろんに酔っていた。酔い足りないのだと、また酒を飲む。
「いい加減にしなさいな」
雨乾堂に、霊圧も感じさせず、音もなくやってきた京楽は、浮竹から酒瓶を奪った。
「何をする!」
「さっきのは誤解だよ」
「五回も六回もない、この浮気者!」
べろんべろんに酔っぱらった浮竹は、京楽の頭をどつきまわした。
「いたたたたたた・・・・・変な酔っぱらい方しちゃって」
浮竹は、酔う前に普通は潰れて寝てしまう。
浮竹がべろんべろんに酔う姿なんてあまり見れないので、京楽は浮竹の機嫌を直すにはどうすればいいか思案しながら、頭をどつかれていた。
しまいには、ひげをひぱってきた。
「痛い、痛いから浮竹!ひげはひっぱらないで!」
「浮気者ー」
「仕方ないなぁ、浮竹は」
抱き上げて、京楽は浮竹を抱き締めた。
「こんなことで、許すとでも思っているのかー」
「許してくれるなら、何をしてもいいよ」
京楽がそう言ってくるので、浮竹は鋏をもちだした。
「な、なにする気だい?」
「ひげを切る」
「か、勘弁してほしいなぁ」
浮竹から離れて、距離をとる。じりじりと詰め寄ってくる浮竹の手から鋏をとりあげると、浮竹は京楽の脛を蹴った。
「あいた!足癖の悪い子だねぇ」
浮竹が、蹴りを主体とする格闘術を習得しているのは知っている。何度もその足でけられてきた。
「どうしたら、機嫌をなおしてくれるんだい?」
「鼻でうどんを食べたら」
「ちょっと、無理かなぁ。もうちょっと、簡単な方法はないかい?」
「女装して、瀞霊廷を百周してきたら」
「それも無理だなぁ」
「じゃあ、どうればいいっていうんだ」
「だからそれを、君に聞いているんだろう?」
「じゃあ・・・・・・・・・・・」
どさりと、浮竹が倒れた。
「隊長!」
「浮竹隊長!」
清音と仙太郎が駆け寄ろうとするのを手で制して、その細い体を抱き上げた。
「大丈夫、酔いつぶれて寝てるだけだから」
すーすーと、規則正しい寝息を聞いて、清音も仙太郎も安心する。
「布団、しいてくれないかな。酒で眠りだすと、数時間は起きないから」
雨乾堂の畳の上に布団をしかれた。浮竹を寝かすと、京楽は畳で寝転がって、その横顔をずっと見ていた。
「・・・・・・?」
目覚めると、京楽が本を読んでいた。
「京楽?俺は・・・・・・?」
「やけ酒して、酔いつぶれて寝ちゃったの。覚えてる?」
「・・・・・・あの女性は・・・・」
「誤解だから」
「ああ・・・・・・・」
浮竹は、京楽に噛みつくようなキスをした。
「隙があるから、つけこまれるんだ」
「ごめんってば」
桜の降る瀞霊廷で、浮竹は女性死神に呼び出された。名前も知らない子だ。女死神が多いが、けっこうな確率で男死神にも呼び出されることもある。
「君は・・・・・」
現れたのは、京楽に抱き着いて、キスをしていた女性死神だった。
油断していた。
女性だから、と。
「あなたのせいで、京楽隊長は私を見てくれない!あなたなんて、いなくなればいいのよ!」
抜かれた斬魄刀で、浮竹は切られていた。
ひゅっと、喉がなる。咄嗟に急所は避けたつもりだったが、肺をやられた。
「その綺麗な顔、ぐちゃぐちゃにしてあげる。私の目の方が綺麗だわ。あんたの目玉、えぐりぬいてあげる」
近づいてくる斬魄刀と、悲鳴と、京楽の声が。
混じり合って。
浮竹は、意識を失った。
「・・・・・・・・・・・?」
気が付くと、四番隊の..綜合救護詰所にいた。
ベッドに寝かされていた。
起き上がろうとすると、肺に痛みが走った。
「だめだよ、まだ起きちゃ!」
京楽が、ベッドの脇の椅子に座って、心配そうに浮竹を見ていた。
「卯ノ花隊長の回道で傷は大体塞がったけど、まだ無理は禁物だって」
「俺の目は・・・・?ちゃんと、あるのか?」
右目が見えなかった。
「大丈夫。一時的視力を失っているだけだって。眼球そのものは無事だから、すぐに見えるようになるよ」
じっと天井を見上げていると、ぼんやりだが暗闇しか映さない右目の視力が、戻ってきた。
「あの女性は・・・・?」
「隊長殺害未遂で、流刑だよ」
浮竹も、京楽も、その刑罰が深すぎるとも浅すぎるとも思わなかった。
「もう、ああいう手合いはいないと思うけど、もっと身辺に注意したほうがいいね、お互い」
「そうだな・・・・・・・・」
つっと、ぼんやりとしか見えない右目から、涙が零れた。
「痛いのかい!?」
「分からない。痛くも悲しくもない。ただ右目が疼く・・・・・」
「あの女、殺してやる」
本気の殺意に、浮竹が京楽を宥める、
「流刑だろう。十分だ」
「でも、君の綺麗な顔に傷を・・・体は肺まで切られてたし・・・・・・」
「傷跡はもうないんだろう?」
「うん。残ってたら、あの女の命はとっくになかったよ」
命拾いしたのだと。
隊長格が、一般隊士を切るのは確かにご法度ではあるが、正当な理由があれば許される。
例えば、裏切ったとか、殺そうとしてきたとか。
京楽があの女性を切り殺したとしても、多分罪に問われることはない。おまけに、京楽は上級貴族だ。殺されないで済んで、ましというものだろう。
「怖かったよ。死ぬほどの傷じゃないっていうのは、分かってたけど・・・・君の綺麗な顔に傷が残ったらどうしようって・・・・・・・」
「俺は女じゃない。顔に傷跡が残ったとしても、平気だ」
「僕が平気じゃいられない!」
疼く右目に、キスをされる。
「あの女、緑色の瞳が自慢なんだって。君の翡翠の瞳とは天と地ほどの差があるのに、「私の瞳は浮竹隊長の汚い緑より綺麗なのよ」っていうから、酸で焼いてやろうとしたけど、周囲に止められた」
それは、確かに浮竹でも止める。
京楽は、優しいくせに、浮竹のことになると酷く残酷になる。
「しばらく、浮竹には身辺警護の警邏隊がついて窮屈になると思うけど、我慢してね」
退院して、数日の間は我慢を強いられたが、京楽が自分のために派遣してくれたのだと思うと、窮屈さも平気になった。
「もう、すっかり大丈夫みたいだね」
「ああ」
警邏隊もいなくなった。いつものように、日常が戻ってくる。
「今後は、名の知らぬ者に呼び出されても、無視するか一人ではなく誰かと行動するようにする」
「本当に、そうしてほしいよ・・・・・・・」
名も知らぬ女は、流刑地で気がふれて、まもなくして自殺したという。
どうでもいいことだったのだが、京楽が嬉しそうだったので、よほど京楽の怒りを買ったのだなぁと思った。
「君を傷つけるやつは、許さない」
褥で、何度も右目にキスされ、傷跡がないことを確かめられた。
京楽は優しい。
でも、同時に怖いのだと、知った。
「翡翠の瞳が綺麗だね」
そう言われて、翡翠そのものをプレゼントされた。
京楽は、浮竹の緑の瞳がよほど気に入っているのだろう。売れば屋敷を数件たてられるその翡翠は、浮竹のお守り石として、大切にされた。
瀞霊廷の桜散る場所で、京楽は女性死神に呼び出されていた。
いきなり抱き着いてきて、キスをしてきたので京楽は驚いた。
「・・・・・・京楽?」
その姿を、あろうことがとてもとても大切な想い人に見られた。
「あっ、浮竹!」
浮竹は瞬歩で走り去ってしまった。
追いかけても間に合わない。いつもはそんなに早くないのに、こんな時に限って浮竹の瞬歩は京楽の瞬歩を上回る。
「あちゃー」
腕の中で、ぐすぐすと泣いている女性死神は、目の色が緑だった。
ただ、それだけのことだ。
告白されて、ああ、浮竹と同じ緑の瞳をしているな・・・・・でも、浮竹の瞳のほうが翡翠みたいで綺麗で、光を反射していて・・・・・・・いろいろ考えていたら、抱き着かれてキスされていた。
「どうしよう・・・・・・」
愛しの想い人は、今頃怒っているはずだ。
どうやって機嫌をとろうか。
「気持ちはうれしいけど、僕には浮竹がいるからね」
緑の瞳の女性死神は、きっと睨んできた。
「浮竹隊長はずるいです!病弱を理由に京楽隊長を独り占めして!」
「それ以上は言わないで。怒るよ?」
相手がいくら女性とはいえ、愛する浮竹の悪口は許さない。
「それにね、独り占めしてるのは僕なの。浮竹を慕う人は多いからね・・・・なのに、僕が独占してるんだよ」
女子死神は
「嘘です!」
そういって、走り去ってしまった。
「今日は厄日だねぇ」
京楽は、空を仰ぐ。
ちらちらと散る桜の花びらは綺麗だし、天気もよくて晴れていた。でも、京楽の心の中はどしゃぶり雨だった。
その頃、浮竹は。
昼間っから、酒を飲んでいた。
飲まないと、やってられない。珍しく仕事を放棄して、やけ酒をする浮竹に、清音と仙太郎が心配していた。
「隊長、飲み過ぎですよ。それ、京楽隊長のお酒でしょう?」
「鼻くそ女の言う通りです隊長!そんなきついお酒、大量に飲んだらお体に障ります!」
「うるさい、ほっとけー」
すでに、浮竹はべろんべろんに酔っていた。酔い足りないのだと、また酒を飲む。
「いい加減にしなさいな」
雨乾堂に、霊圧も感じさせず、音もなくやってきた京楽は、浮竹から酒瓶を奪った。
「何をする!」
「さっきのは誤解だよ」
「五回も六回もない、この浮気者!」
べろんべろんに酔っぱらった浮竹は、京楽の頭をどつきまわした。
「いたたたたたた・・・・・変な酔っぱらい方しちゃって」
浮竹は、酔う前に普通は潰れて寝てしまう。
浮竹がべろんべろんに酔う姿なんてあまり見れないので、京楽は浮竹の機嫌を直すにはどうすればいいか思案しながら、頭をどつかれていた。
しまいには、ひげをひぱってきた。
「痛い、痛いから浮竹!ひげはひっぱらないで!」
「浮気者ー」
「仕方ないなぁ、浮竹は」
抱き上げて、京楽は浮竹を抱き締めた。
「こんなことで、許すとでも思っているのかー」
「許してくれるなら、何をしてもいいよ」
京楽がそう言ってくるので、浮竹は鋏をもちだした。
「な、なにする気だい?」
「ひげを切る」
「か、勘弁してほしいなぁ」
浮竹から離れて、距離をとる。じりじりと詰め寄ってくる浮竹の手から鋏をとりあげると、浮竹は京楽の脛を蹴った。
「あいた!足癖の悪い子だねぇ」
浮竹が、蹴りを主体とする格闘術を習得しているのは知っている。何度もその足でけられてきた。
「どうしたら、機嫌をなおしてくれるんだい?」
「鼻でうどんを食べたら」
「ちょっと、無理かなぁ。もうちょっと、簡単な方法はないかい?」
「女装して、瀞霊廷を百周してきたら」
「それも無理だなぁ」
「じゃあ、どうればいいっていうんだ」
「だからそれを、君に聞いているんだろう?」
「じゃあ・・・・・・・・・・・」
どさりと、浮竹が倒れた。
「隊長!」
「浮竹隊長!」
清音と仙太郎が駆け寄ろうとするのを手で制して、その細い体を抱き上げた。
「大丈夫、酔いつぶれて寝てるだけだから」
すーすーと、規則正しい寝息を聞いて、清音も仙太郎も安心する。
「布団、しいてくれないかな。酒で眠りだすと、数時間は起きないから」
雨乾堂の畳の上に布団をしかれた。浮竹を寝かすと、京楽は畳で寝転がって、その横顔をずっと見ていた。
「・・・・・・?」
目覚めると、京楽が本を読んでいた。
「京楽?俺は・・・・・・?」
「やけ酒して、酔いつぶれて寝ちゃったの。覚えてる?」
「・・・・・・あの女性は・・・・」
「誤解だから」
「ああ・・・・・・・」
浮竹は、京楽に噛みつくようなキスをした。
「隙があるから、つけこまれるんだ」
「ごめんってば」
桜の降る瀞霊廷で、浮竹は女性死神に呼び出された。名前も知らない子だ。女死神が多いが、けっこうな確率で男死神にも呼び出されることもある。
「君は・・・・・」
現れたのは、京楽に抱き着いて、キスをしていた女性死神だった。
油断していた。
女性だから、と。
「あなたのせいで、京楽隊長は私を見てくれない!あなたなんて、いなくなればいいのよ!」
抜かれた斬魄刀で、浮竹は切られていた。
ひゅっと、喉がなる。咄嗟に急所は避けたつもりだったが、肺をやられた。
「その綺麗な顔、ぐちゃぐちゃにしてあげる。私の目の方が綺麗だわ。あんたの目玉、えぐりぬいてあげる」
近づいてくる斬魄刀と、悲鳴と、京楽の声が。
混じり合って。
浮竹は、意識を失った。
「・・・・・・・・・・・?」
気が付くと、四番隊の..綜合救護詰所にいた。
ベッドに寝かされていた。
起き上がろうとすると、肺に痛みが走った。
「だめだよ、まだ起きちゃ!」
京楽が、ベッドの脇の椅子に座って、心配そうに浮竹を見ていた。
「卯ノ花隊長の回道で傷は大体塞がったけど、まだ無理は禁物だって」
「俺の目は・・・・?ちゃんと、あるのか?」
右目が見えなかった。
「大丈夫。一時的視力を失っているだけだって。眼球そのものは無事だから、すぐに見えるようになるよ」
じっと天井を見上げていると、ぼんやりだが暗闇しか映さない右目の視力が、戻ってきた。
「あの女性は・・・・?」
「隊長殺害未遂で、流刑だよ」
浮竹も、京楽も、その刑罰が深すぎるとも浅すぎるとも思わなかった。
「もう、ああいう手合いはいないと思うけど、もっと身辺に注意したほうがいいね、お互い」
「そうだな・・・・・・・・」
つっと、ぼんやりとしか見えない右目から、涙が零れた。
「痛いのかい!?」
「分からない。痛くも悲しくもない。ただ右目が疼く・・・・・」
「あの女、殺してやる」
本気の殺意に、浮竹が京楽を宥める、
「流刑だろう。十分だ」
「でも、君の綺麗な顔に傷を・・・体は肺まで切られてたし・・・・・・」
「傷跡はもうないんだろう?」
「うん。残ってたら、あの女の命はとっくになかったよ」
命拾いしたのだと。
隊長格が、一般隊士を切るのは確かにご法度ではあるが、正当な理由があれば許される。
例えば、裏切ったとか、殺そうとしてきたとか。
京楽があの女性を切り殺したとしても、多分罪に問われることはない。おまけに、京楽は上級貴族だ。殺されないで済んで、ましというものだろう。
「怖かったよ。死ぬほどの傷じゃないっていうのは、分かってたけど・・・・君の綺麗な顔に傷が残ったらどうしようって・・・・・・・」
「俺は女じゃない。顔に傷跡が残ったとしても、平気だ」
「僕が平気じゃいられない!」
疼く右目に、キスをされる。
「あの女、緑色の瞳が自慢なんだって。君の翡翠の瞳とは天と地ほどの差があるのに、「私の瞳は浮竹隊長の汚い緑より綺麗なのよ」っていうから、酸で焼いてやろうとしたけど、周囲に止められた」
それは、確かに浮竹でも止める。
京楽は、優しいくせに、浮竹のことになると酷く残酷になる。
「しばらく、浮竹には身辺警護の警邏隊がついて窮屈になると思うけど、我慢してね」
退院して、数日の間は我慢を強いられたが、京楽が自分のために派遣してくれたのだと思うと、窮屈さも平気になった。
「もう、すっかり大丈夫みたいだね」
「ああ」
警邏隊もいなくなった。いつものように、日常が戻ってくる。
「今後は、名の知らぬ者に呼び出されても、無視するか一人ではなく誰かと行動するようにする」
「本当に、そうしてほしいよ・・・・・・・」
名も知らぬ女は、流刑地で気がふれて、まもなくして自殺したという。
どうでもいいことだったのだが、京楽が嬉しそうだったので、よほど京楽の怒りを買ったのだなぁと思った。
「君を傷つけるやつは、許さない」
褥で、何度も右目にキスされ、傷跡がないことを確かめられた。
京楽は優しい。
でも、同時に怖いのだと、知った。
「翡翠の瞳が綺麗だね」
そう言われて、翡翠そのものをプレゼントされた。
京楽は、浮竹の緑の瞳がよほど気に入っているのだろう。売れば屋敷を数件たてられるその翡翠は、浮竹のお守り石として、大切にされた。
桃太郎
昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんはコンといい、おばあさんは恋次といいました。
「ちょっと待てえええ!なんでばあさんの役なんだ!」
恋次が叫びますが、物語の配役は一度決まってしまったら覆りません。
「おれもじいさんなんてやだよー」
コンは、もきゅっと音たてて泣き出します。
「うわあああん姉さん!」
とにかく、コンは山へ芝刈りに、恋次は川へ洗濯へ行きました。
するとどういうことでしょう。川上から、大きな桃がどんぶらこどんぶらこと流れてくるではありませんか。
「なんだ、桃?うまそうだな」
恋次は、桃を自宅に持ち帰りました。
「おい恋次!この桃はなんだ!」
「川で拾ってきたんだよ!」
「そんなあやしいものを食うつもりか・・・・」
「よだれたらすんじゃねぇよ!きたねぇだろうが!」
恋次は、桃を斬魄刀で一刀両断します。
「吠えろ、蛇尾丸!」
ボタボタボタ!
大量の血液と、肉片が飛び出しました。
中にいた桃太郎を、斬魄刀で切り殺してしまったのです。
「どどどどどど、どうしよう」
「そそそそそんなこと俺にいわれても」
「全くいきなりバラバラにするなんて、ひどいじじいとばばあがいたものだネ」
肉塊と血は渦巻き、一人の死神になりました。
「涅マユリ!」
恋次が叫びます。
桃から生まれてきたのは、ルキアでも一護でもなく、なんと涅マユリでした。
「普通、一護かルキアだろ!なんでお前が桃太郎なんだ!」
恋次の突っ込みを、マユリは聞いていません。
「さて・・・・・・きびだんごはここにあるし、刀は斬魄刀がある。よし、鬼ヶ島へ出発するとするかネ」
マユリは、コンと恋次を残して旅に出ます。
旅の途中、猿の一護と、雉のルキア、犬の白哉をきびだんごで仲間にしました。
「今回は猿かよ・・・・けっこうひでぇな」
「私も雉なぞいやだぞ。食べられてしまうではないか!」
「私は犬か。そして兄が主人か・・・・・・・・卍解」
「兄様、ここで卍解してはいけません!物語がむちゃくちゃになります!」
ルキアは白哉をとめますが、一護は我関せずというかんじで、白哉をとめません。
「たわけ!貴様も兄様を止めぬか!」
「ここで卍解したって、どうせ最後は鬼を倒してめでたしめでたしになるんだろ?涅マユリも不死身っぽい生き物だし、好きにさせたらどうだよ」
「ほう。兄はよく分かっているな。そんな兄にはこれを進呈しよう」
「わかめ大使・・・・・・こんなのいるかっ!」
わかめ大使のストラップを渡されて、一護はそれを投げ捨てました。
「ああっ、兄様!」
白哉の霊圧が高まります。
「散れ・・・・・千本桜」
「うわっ!いててててて」
たくさんの桜の花になった刃が、一護を襲います。
「白哉、俺が悪かった!」
「分かればよい」
「兄様、一護・・・うむ、何事も仲良しが一番大切だ」
「茶番はそこまででいいかネ。もう鬼ヶ島についたのだがネ」
マユリは、3人が争いあっているうちに、船をすすめ鬼ヶ島へとたどり着いてしまっていました。
「ふむ・・・・・鬼退治か。水の呼吸、壱ノ型 水面斬り!」
「うわあああ、ルキア、それ漫画違うから!鬼滅の刃になってるから!」
ルキアをとめている間に、マユリはいなくりました。
「鬼とはなんと希少な!実験体を確保しなくては!ここは、研究心が沸いてくる!まるで、楽園だネ!」
マユリの機嫌は最高潮でした。
一方残されたお供の一護とルキアと白哉は、真面目に鬼退治をしていました。
猿と雉と犬ですが、強すぎました。
向かってくる鬼たちを斬魄刀で切り倒し、ボスの鬼も殺して、マユリを置いて金銀財宝を手に入れ、桃太郎の家のコンと恋次の元に帰還しました。
旅の途中で、一護はルキアに惚れ、ルキアも一護に惚れ、二人は交際を開始しました。
「こんな金銀財宝などはした金。兄らにくれてやる」
白哉は四大貴族の朽木家の当主です。
義妹のルキアに、白哉は尋ねます。
「本当に、あのような貧相な男でよいのだな、ルキア」
「兄様!一護は貧相ではありません!確かに頭が悪そうなオレンジの髪ですが、高潔な猿です!」
「頭が悪そうで悪かったな。俺のこの髪の色は生まれつきだ。高潔な・・・まではいいけど、猿かよ!そこで物語通りにするな!」
なにはともあれ、ルキアは一護が好きで、一護もルキアが好きでした。
「結婚式を、執り行うことにする」
「兄様!?では、一護との仲を認めていただけるのですね!?」
ルキアの細い体を抱き上げて、一護は白哉に礼をいいます。
「ありがとな、白哉。いろいろあったけど、俺たちは二人でなんとかしていくから。貴族とかそういうしがらみ嫌いなんだよ。すまねぇ」
「ああ、一護!兄様、さよなら~~~~~」
一護は、朽木家からルキアを攫いました。
白哉は、追ってきませんでした。
「それが兄の決断ならな、兄に敬意をひょうして、自由にすることを認めよう」
白哉は、大切な義妹を攫っていった一護を、怨みはしませんでした。
鬼が島に一人残ったマユリは、毎日鬼を実験体にして楽しく過ごしています。
おじいさんのコンも、おばあさんの恋次と適当に仲良く暮らしています。
「隊長、なんで屋敷にもどらねーんすか」
「兄には、関係のないことだ」
コンと恋次の家には、白哉も住み着いてしまいました。
「ははははは、鬼というのは最高な種族だね!もっともっともっと!もっと研究しつくしたいヨ!」
鬼が島での、マユリは、止める者が誰もいないので暴走していました。
一護とルキアは、都にでました。
もう、猿と雉ではありませんでした。
一護は死神代行として毎日働き、ルキアもまた死神として働きました。
二人は、いつも一緒でした。
心は、そこに在るから。心を重ね合わせて。
二人は、いつまでも仲睦まじく過ごしたそうです。
「んあ?変な夢、みちまったなぁ」
夜中に起き出した一護は、同じベッドで眠るルキアを起こさないように階下におりると、冷蔵庫をあけてペットボトルを取り出し、水を飲んだ。
部屋に戻ってくると、ルキアがベッドから落ちていた。
「ほんとに、寝相わりぃんだから」
ルキアをベッドの上に戻すと、一護もまたベッドに横になる。
ぴーぴーぴー
アラームが鳴った。
「なんだ、虚か!?それとも、破面か!?」
ルキアの伝令神機がなり、ルキアが飛び起きた。
「この霊圧・・・・・ただの虚か・・・・よかった・・・・」
ルキアが、ほっとする。
「俺がいってくるから、ルキアは寝とけ」
頭をぐしゃぐしゃと撫でられて、けれどルキアはチャッピーの義魂丸をのんで、死神化する。一護も、代行証を取り出して死神化すると、夜だしまぁいいかと、コンを体にいれなかった。
「行くぞ、一護」
「おう」
虚は、影に隠れてしまう能力のある、ちょっと厄介な虚だった。
だが、夜の闇の中で影はそうそうに生まれない。
なんとか二人連携をとって倒すと、一護はルキアの頬に手をあてて、血があふれる傷口を押えた。
「止血、しねぇと」
「大丈夫だ。この程度の傷なら、私の回道でも治せる」
頬にあてられた手に、手を重ねると、しばらく無言になった。
「・・・・・・・べ、別に貴様の手の暖かさが心地よかったとか、そんなんじゃないからな!」
「・・・・・・・・・俺だって、瞳の色がアメジストみたいで綺麗だとか、そんなので見惚れてたわけじゃねぇ!」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
しばらく、沈黙する。
「はははははは」
「ははははは」
そして、声を出し合って笑った。
ひとしきり笑いあうと、すっきりした。
いろいろ、最近精神がピリピリしていた。
破面が侵攻してきた。
守るために、この世界を軋ませないために、動かなければならない。
街を、人を、世界を。
守るために。
一護の部屋に戻ると、一護の体に勝手にコンが入っていた。
チャッピーの義魂丸が入ったルキアの義骸に、プロレス技をかけられていた。
「痛い、痛い!骨折れる!」
「コン!? 何、勝手に人の体に入ってんだ!」
「ぼきりとしてぴょんとなく~」
ルキアが、チャッピーの義魂丸を回収して、義骸に戻る。
そして、一護の口に手をつっこんで、コンを出した。
「たわけ。夜とはいえ、体を無防備なままにするな。何が起こるのか、分からないのだぞ」
自分の体に戻った一護は、ルキアの頭をぐしゃぐしゃに撫でて、欠伸をした。
「こんな夜中に、誰も襲ってきたりしねぇよ」
その細い体のどこに、こんな力があるんだろうという勢いで、ベッドに押し倒された。
「私が、貴様を襲うことだって、あるかもしれないのだぞ?」
「冗談だろ・・・・・・・・」
「ふふっ。確かに冗談だ」
上からどいていくルキアの動きを制して、抱き寄せる。
「一護?」
「男を押し倒すなんて真似、俺以外にはするなよ?」
「いや、恋次にもするが?」
「だめだ!今度から、絶対俺以外にするな」
「変な奴だな」
「襲い受しそうな状況つくっといて、そうくるか!」
無防備なルキアに、一護が深い溜息をつく。誘っているとしか思えない行動を、ルキアはたまにとる。
一護の心配は尽きない。
水面が揺れる
ゆっくりと、静かに
時を刻んで
時はまた、動き出す
ゆっくりとゆっくりと
軋む世界の扉は開かれた
紅葉狩り
ひらひらと。
秋の風に吹かれ、一枚また一枚と葉を落としていく。
紅葉狩りにきていた。
京楽は総隊長であり、なかなか休暇をとれない。
仕事を徹夜で片付けて、やっと2日ばかりの休暇がとれた。
「綺麗だねぇ」
「そうだな」
山はもう黄色や赤に染められて、川のせせらぎにはトンボが飛び交う。
シートを広げて、ちょっとしたピクニック気分だ。
七緒がもたせてくれたお弁当と水筒を敷布の上に広げて、ひらひらと墜ちていく紅葉と、紅葉(こうよう)する山に風雅を感じる。
七緒が作ってくれたお弁当は、京楽のものには浮竹の顔ができており、浮竹のお弁当には京楽の顔がのりやら山菜やらでできいていた。
いわゆる、キャラ弁とかいうやつだ。
きっと、頑張って作ってくれたのだろう。
食べるのがもったいなくて、しばらく箸を手に、弁当を眺める。
「七緒ちゃん、けっこうやるねぇ」
「伊勢副隊長に、今度お礼をしなければな」
お腹が減ってきたので、もったいないがそのキャラ弁を食べていく。けっこうおいしかった。
「そうだ。焼き菓子があるんだが・・・・・あまり美味くないかもしれないが・・・・その、俺が作ったんだ。食べるか?」
京楽は、隻眼の瞳を瞬かせた。
「そんなの、食べるに決まってるじゃない」
奪われるように、白い包みをもっていかれる。
「見た目はなかなかいいねぇ、味はっと・・・・・・」
さくさくと、軽い音をたてて食べていく京楽の顔を見ていられなくて、浮竹は水筒の中のお茶を飲んだ。
「凄い美味しいよ。浮竹も食べてごらん?」
味見はしたのだが、いまいち自信がもてなかったのだ。京楽の手で、焼き菓子が浮竹の口元にもってこられる。
指まで口にふくんでしまい、まぁいいかと浮竹は菓子を食べた。
さくさくとした触感と、ほんのりとしたしつこくない甘みがあった。
自分で味見したときは、もっとそっけない味の気がしたのだが。愛しい人と食べるのは、こうも違うものなのかと驚く。
「そうだ。紅葉をおみやげにしよう。栞にして渡すのはどうだろうか?」
「いいねぇ」
昔、子供の頃に紅葉をたたいて葉脈だけにしたものを、乾燥させて和紙で固めて、形にして、色を染めて本の栞にした。病弱で、外に遊びにいけない兄を気遣って、妹や弟たちが、たくさんの本をプレゼントしてくれた。その本を読む時に使っていた栞を、まだ残している。
はじめて自分の手で、プレゼントできるようなものができて嬉しかったのを覚えている。
お金では買えない、手作りならではのものは、けっこう嬉しいものである。
「七緒ちゃんにルキアちゃん・・・・日番谷君に乱菊ちゃんに、朽木君に、後はだれがいるだろう?」
一通り名をあげられる。確かに護廷13隊の隊長副隊長全員の分は作れない。
「そうだな・・・・あとは一護君と、阿散井副隊長あたりじゃないか?」
大分大人になってしまった一護と、一度だけ会った。随分と驚かれ、同時に安堵された。
「苺花ちゃんの分も、わすれちゃだめだね」
ルキアの娘、苺花はみんなのアイドルだった。髪の色は父親の恋次似だが、愛らしく気品のある顔立ちはルキア似だ。
「じゃあ、帰りに紅葉集めて帰ろうか」
それまでしばらく散策しようと言われて、秋深まる山道を歩いた。
肺の病が亡くなったおかげで、大部体力がついた。病弱なのは相変わらずだが、もう慣れてしまっているので、気にもしない。
しばらく歩いて、綺麗な紅葉の木を見つけた。
落ちていた葉っぱを集めて、敷布で包んだ。
帰路についた二人は、流魂街の中にある、京楽の別邸にやってきた。必要な材料を揃えて、二人で栞を作った。
始めは不格好なものしかできなかったが、何度か試しているうちに綺麗に藍色に染まった栞ができた。
数日後、栞を全員に配ると、思っていた以上に喜ばれた。手作りものは、特に喜ばれるのだと知った。
「京楽と浮竹の手作りにしては、ましじゃねぇか」
日番谷は、そう言って栞を大事そうに懐にしまってくれた。
「えー、あたしの分もあるんですか!?わぁ、ありがとうございます!かわいい!」
松本も、嬉しそうに受け取ってくれた。
「こ、こんなことされても、ほだされませんからね!」
七緒はこんなかんじで。
「たたたたたたたた」
「?」
「隊長自らの手作りですか!?大切にします!むしろ家宝にします!」
「いや、大げさすぎるだろ、朽木」
浮竹は、阿散井ルキアとなった今でも、ルキアのことを朽木と呼ぶ。ルキアは、隊長でなくなった浮竹を隊長と呼ぶ。
その仲は、京楽が嫉妬するほどにいい。
「恋次の分と苺花の分までありがとうございます。兄様には、私が責任をもってわたしておきますね」
ルキアには、一護の分も託しておいた。
最近は、浦原がいろいろ技術開発に力を入れているので、顔まで見れる伝令神機までできる始末で。ルキアは一護に連絡をとると、数日後に現世にいく許可をもらい、苺花と一勇を遊ばせるついでに、栞を渡してくれた。
「浮竹さん?」
「ああ、一護君か」
最新の伝令神機で、尸魂界と現世を繋ぐ会話も、楽になった。
「栞、ありがとな。京楽さんにも礼を言っておいてくれ」
「京楽なら、隣にいるぞ。かわろうか?」
「いやいいよ。浮竹さん、体にきをつけて・・・・また、そのうち織姫と一勇を連れて、尸魂界に遊びにいくから、その時はよろしくな!」
「ああ、いつでも待っている」
隣をみると、京楽がむすっとした顔をしていた。
「一護君は、ただの友人だぞ。なぜ、そこまで嫉妬するんだ」
「君には、分からないよ」
どんなに時を経ても、変わらない気持ちがある。浮竹を愛する京楽は、一護が苦手だった。
「何はともあれ、大体の人には渡ったようだし・・・・・・」
本当は、清音と仙太郎の分も用意したかったのだが、紅葉の数が足りなくて作れなかった。
「京楽」
「なんだい」
「紅葉狩り、とても楽しかった。また、来年もいこうな」
「うん」
一度は、来年もという言葉さえ守れなかった。
浮竹の死。
それに覆いつぶされて、京楽は片翼を失った。
でも、片翼は蘇った。
それが、どんな理由だっていい。
もう二度と、手放すものかと、京楽は浮竹を抱き締めるのだった。
花の神は目覚めた。
愛児を----------浮竹という花をこの手に戻したら、孤独な王--------京楽はどうなるだろう?
花の神は、水に自分の姿を映す。
そこには、院生時代の京楽の姿があった。
愛児の記憶に触れ、その愛しい相手の姿を一時的にかりたのだ。これが愛児の想い人--------------花の神は、
水に映った自分の姿をぱしゃんと波紋をなびかせて、消してしまった。
秋の風に吹かれ、一枚また一枚と葉を落としていく。
紅葉狩りにきていた。
京楽は総隊長であり、なかなか休暇をとれない。
仕事を徹夜で片付けて、やっと2日ばかりの休暇がとれた。
「綺麗だねぇ」
「そうだな」
山はもう黄色や赤に染められて、川のせせらぎにはトンボが飛び交う。
シートを広げて、ちょっとしたピクニック気分だ。
七緒がもたせてくれたお弁当と水筒を敷布の上に広げて、ひらひらと墜ちていく紅葉と、紅葉(こうよう)する山に風雅を感じる。
七緒が作ってくれたお弁当は、京楽のものには浮竹の顔ができており、浮竹のお弁当には京楽の顔がのりやら山菜やらでできいていた。
いわゆる、キャラ弁とかいうやつだ。
きっと、頑張って作ってくれたのだろう。
食べるのがもったいなくて、しばらく箸を手に、弁当を眺める。
「七緒ちゃん、けっこうやるねぇ」
「伊勢副隊長に、今度お礼をしなければな」
お腹が減ってきたので、もったいないがそのキャラ弁を食べていく。けっこうおいしかった。
「そうだ。焼き菓子があるんだが・・・・・あまり美味くないかもしれないが・・・・その、俺が作ったんだ。食べるか?」
京楽は、隻眼の瞳を瞬かせた。
「そんなの、食べるに決まってるじゃない」
奪われるように、白い包みをもっていかれる。
「見た目はなかなかいいねぇ、味はっと・・・・・・」
さくさくと、軽い音をたてて食べていく京楽の顔を見ていられなくて、浮竹は水筒の中のお茶を飲んだ。
「凄い美味しいよ。浮竹も食べてごらん?」
味見はしたのだが、いまいち自信がもてなかったのだ。京楽の手で、焼き菓子が浮竹の口元にもってこられる。
指まで口にふくんでしまい、まぁいいかと浮竹は菓子を食べた。
さくさくとした触感と、ほんのりとしたしつこくない甘みがあった。
自分で味見したときは、もっとそっけない味の気がしたのだが。愛しい人と食べるのは、こうも違うものなのかと驚く。
「そうだ。紅葉をおみやげにしよう。栞にして渡すのはどうだろうか?」
「いいねぇ」
昔、子供の頃に紅葉をたたいて葉脈だけにしたものを、乾燥させて和紙で固めて、形にして、色を染めて本の栞にした。病弱で、外に遊びにいけない兄を気遣って、妹や弟たちが、たくさんの本をプレゼントしてくれた。その本を読む時に使っていた栞を、まだ残している。
はじめて自分の手で、プレゼントできるようなものができて嬉しかったのを覚えている。
お金では買えない、手作りならではのものは、けっこう嬉しいものである。
「七緒ちゃんにルキアちゃん・・・・日番谷君に乱菊ちゃんに、朽木君に、後はだれがいるだろう?」
一通り名をあげられる。確かに護廷13隊の隊長副隊長全員の分は作れない。
「そうだな・・・・あとは一護君と、阿散井副隊長あたりじゃないか?」
大分大人になってしまった一護と、一度だけ会った。随分と驚かれ、同時に安堵された。
「苺花ちゃんの分も、わすれちゃだめだね」
ルキアの娘、苺花はみんなのアイドルだった。髪の色は父親の恋次似だが、愛らしく気品のある顔立ちはルキア似だ。
「じゃあ、帰りに紅葉集めて帰ろうか」
それまでしばらく散策しようと言われて、秋深まる山道を歩いた。
肺の病が亡くなったおかげで、大部体力がついた。病弱なのは相変わらずだが、もう慣れてしまっているので、気にもしない。
しばらく歩いて、綺麗な紅葉の木を見つけた。
落ちていた葉っぱを集めて、敷布で包んだ。
帰路についた二人は、流魂街の中にある、京楽の別邸にやってきた。必要な材料を揃えて、二人で栞を作った。
始めは不格好なものしかできなかったが、何度か試しているうちに綺麗に藍色に染まった栞ができた。
数日後、栞を全員に配ると、思っていた以上に喜ばれた。手作りものは、特に喜ばれるのだと知った。
「京楽と浮竹の手作りにしては、ましじゃねぇか」
日番谷は、そう言って栞を大事そうに懐にしまってくれた。
「えー、あたしの分もあるんですか!?わぁ、ありがとうございます!かわいい!」
松本も、嬉しそうに受け取ってくれた。
「こ、こんなことされても、ほだされませんからね!」
七緒はこんなかんじで。
「たたたたたたたた」
「?」
「隊長自らの手作りですか!?大切にします!むしろ家宝にします!」
「いや、大げさすぎるだろ、朽木」
浮竹は、阿散井ルキアとなった今でも、ルキアのことを朽木と呼ぶ。ルキアは、隊長でなくなった浮竹を隊長と呼ぶ。
その仲は、京楽が嫉妬するほどにいい。
「恋次の分と苺花の分までありがとうございます。兄様には、私が責任をもってわたしておきますね」
ルキアには、一護の分も託しておいた。
最近は、浦原がいろいろ技術開発に力を入れているので、顔まで見れる伝令神機までできる始末で。ルキアは一護に連絡をとると、数日後に現世にいく許可をもらい、苺花と一勇を遊ばせるついでに、栞を渡してくれた。
「浮竹さん?」
「ああ、一護君か」
最新の伝令神機で、尸魂界と現世を繋ぐ会話も、楽になった。
「栞、ありがとな。京楽さんにも礼を言っておいてくれ」
「京楽なら、隣にいるぞ。かわろうか?」
「いやいいよ。浮竹さん、体にきをつけて・・・・また、そのうち織姫と一勇を連れて、尸魂界に遊びにいくから、その時はよろしくな!」
「ああ、いつでも待っている」
隣をみると、京楽がむすっとした顔をしていた。
「一護君は、ただの友人だぞ。なぜ、そこまで嫉妬するんだ」
「君には、分からないよ」
どんなに時を経ても、変わらない気持ちがある。浮竹を愛する京楽は、一護が苦手だった。
「何はともあれ、大体の人には渡ったようだし・・・・・・」
本当は、清音と仙太郎の分も用意したかったのだが、紅葉の数が足りなくて作れなかった。
「京楽」
「なんだい」
「紅葉狩り、とても楽しかった。また、来年もいこうな」
「うん」
一度は、来年もという言葉さえ守れなかった。
浮竹の死。
それに覆いつぶされて、京楽は片翼を失った。
でも、片翼は蘇った。
それが、どんな理由だっていい。
もう二度と、手放すものかと、京楽は浮竹を抱き締めるのだった。
花の神は目覚めた。
愛児を----------浮竹という花をこの手に戻したら、孤独な王--------京楽はどうなるだろう?
花の神は、水に自分の姿を映す。
そこには、院生時代の京楽の姿があった。
愛児の記憶に触れ、その愛しい相手の姿を一時的にかりたのだ。これが愛児の想い人--------------花の神は、
水に映った自分の姿をぱしゃんと波紋をなびかせて、消してしまった。
盆栽
「はっくしょん」
「なんじゃ、まだ猫アレルギーなのか、お主は?」
猫姿の夜一が、浮竹の肩にいた。
趣味の盆栽いじりをしていたら「じじい趣味じゃな」とからかわれた。
「はっくしょん!分かってるなら、早く猫から人間の姿になってくれないかい・・はっくしょん」
京楽は実は猫アレルギーだった。くしゃみとせきが出るくらいだが、これがけっこうつらくて、京楽は愛しい浮竹に近寄ることもできない。
「はっくしょん」
夜一は、浮竹の肩から降りると、人の姿をとった。
「服!服を用意してから変身しろ夜一!」
浮竹が、慌てて自分の隊長羽織をすっぽんぽんの夜一に着せる。
「うるさいのう。服はほれ、そこの雨乾堂の影に用意しておるわ」
「だったらそこで変身しろ!」
「うるさいのう」
「下から服を着ろ!」
「夜一、わざわざセクシーな姿を見せてくれるのはいいけど、君を想う一途な子がこっちに殺気むけてるんだけど・・・・・・・」
「砕蜂、やめぬか」
「はっ、すみません夜一様!」
雨乾堂の影で控えていた砕蜂は、夜一様LOVEすぎて、夜一が接触する相手に嫉妬をする。
「砕蜂、お主も変わらぬのう」
「何がですか、夜一様」
「わざわざわしの跡をついてくる癖じゃ」
「それは夜一様をお守りするのが私の役目・・・・・・!」
「そこがかたいのじゃ。もっと自由にせんか」
「しかし夜一様・・・・・・・・・・・・・」
浮竹と京楽は、二人の姿を見ながら縁側で、清音のいれてくれたお茶をすすっていた。
「どう思う、京楽。この盆栽を」
「・・・・・うーん、枝の切りすぎじゃないかい?ほとんど何もないじゃないの」
「じゃあ、こっちの盆栽は?」
「伸ばす過ぎじゃない?もうちょっと、枝に鋏いれたほうがいいよ」
誰も分かってくれない、浮竹の盆栽を育てるという趣味。京楽は、愛しい浮竹のために、適当ではあるが意見を交わす。
「盆栽はいい。心が癒される」
京楽には、理解できなかった。
京楽にとって、酒がそうであるように、浮竹にとってはそれが盆栽なのだろう。
京楽が、一度高い盆栽を浮竹に買い与えたことがあったのだが、すぐに枯らしてしまった。
浮竹の盆栽いじりはあくまで趣味の範囲の素人だ。盆栽を買うのではなく、自分で育てるのが面白いらしく、京楽も浮竹の盆栽いじりにはあまり口を出さない。
「今度の盆栽祭りには、この盆栽を出品しようと思っているんだ」
盆栽祭りってなに・・・・・京楽は思ったけれど、口にしない。
卯ノ花が華道に、山じいが書道に、それぞれ趣を感じているようなものなのだろうか。
「いいんじゃないの」
浮竹がきらきらしていた。
それを見ているだけで、京楽は満足だった。
「今度の盆栽祭りには、京楽も一緒にこい」
「うん、いいよ」
盆栽なんて全然興味ないし、分からないのだけれど、浮竹と一緒に時間を過ごせるならなんでもよかった。
「この盆栽は、仙太郎と名付けよう!」
はっくしょん。
13番隊隊舎で、仙太郎はくしゃみをした。
風邪かな?とか思いつつ。
まさか、自分の敬愛する浮竹隊長が、貧相な盆栽に自分の名をつけているとは露知らず。
「なんじゃ、まだ猫アレルギーなのか、お主は?」
猫姿の夜一が、浮竹の肩にいた。
趣味の盆栽いじりをしていたら「じじい趣味じゃな」とからかわれた。
「はっくしょん!分かってるなら、早く猫から人間の姿になってくれないかい・・はっくしょん」
京楽は実は猫アレルギーだった。くしゃみとせきが出るくらいだが、これがけっこうつらくて、京楽は愛しい浮竹に近寄ることもできない。
「はっくしょん」
夜一は、浮竹の肩から降りると、人の姿をとった。
「服!服を用意してから変身しろ夜一!」
浮竹が、慌てて自分の隊長羽織をすっぽんぽんの夜一に着せる。
「うるさいのう。服はほれ、そこの雨乾堂の影に用意しておるわ」
「だったらそこで変身しろ!」
「うるさいのう」
「下から服を着ろ!」
「夜一、わざわざセクシーな姿を見せてくれるのはいいけど、君を想う一途な子がこっちに殺気むけてるんだけど・・・・・・・」
「砕蜂、やめぬか」
「はっ、すみません夜一様!」
雨乾堂の影で控えていた砕蜂は、夜一様LOVEすぎて、夜一が接触する相手に嫉妬をする。
「砕蜂、お主も変わらぬのう」
「何がですか、夜一様」
「わざわざわしの跡をついてくる癖じゃ」
「それは夜一様をお守りするのが私の役目・・・・・・!」
「そこがかたいのじゃ。もっと自由にせんか」
「しかし夜一様・・・・・・・・・・・・・」
浮竹と京楽は、二人の姿を見ながら縁側で、清音のいれてくれたお茶をすすっていた。
「どう思う、京楽。この盆栽を」
「・・・・・うーん、枝の切りすぎじゃないかい?ほとんど何もないじゃないの」
「じゃあ、こっちの盆栽は?」
「伸ばす過ぎじゃない?もうちょっと、枝に鋏いれたほうがいいよ」
誰も分かってくれない、浮竹の盆栽を育てるという趣味。京楽は、愛しい浮竹のために、適当ではあるが意見を交わす。
「盆栽はいい。心が癒される」
京楽には、理解できなかった。
京楽にとって、酒がそうであるように、浮竹にとってはそれが盆栽なのだろう。
京楽が、一度高い盆栽を浮竹に買い与えたことがあったのだが、すぐに枯らしてしまった。
浮竹の盆栽いじりはあくまで趣味の範囲の素人だ。盆栽を買うのではなく、自分で育てるのが面白いらしく、京楽も浮竹の盆栽いじりにはあまり口を出さない。
「今度の盆栽祭りには、この盆栽を出品しようと思っているんだ」
盆栽祭りってなに・・・・・京楽は思ったけれど、口にしない。
卯ノ花が華道に、山じいが書道に、それぞれ趣を感じているようなものなのだろうか。
「いいんじゃないの」
浮竹がきらきらしていた。
それを見ているだけで、京楽は満足だった。
「今度の盆栽祭りには、京楽も一緒にこい」
「うん、いいよ」
盆栽なんて全然興味ないし、分からないのだけれど、浮竹と一緒に時間を過ごせるならなんでもよかった。
「この盆栽は、仙太郎と名付けよう!」
はっくしょん。
13番隊隊舎で、仙太郎はくしゃみをした。
風邪かな?とか思いつつ。
まさか、自分の敬愛する浮竹隊長が、貧相な盆栽に自分の名をつけているとは露知らず。
隊首会
「ん・・・・・・・・」
まどろんでいた。
夢と目覚めをいききして、酷く心地よかった。
「・・・・・・・・!」
誰かが、何かを言っている気がする。
でも、また起きたくなくて。
「もう少し・・・・・寝かせてくれ・・・・・・・」
「浮竹!」
耳元で大きな声で名を呼ばれて、飛び起きる。
「どうした!?」
「やばいよ、今日は隊首会の日だよ!すっかり忘れてた!」
「隊首会!?」
確か、午前の10時からだったはず・・・。
時計を見ると、11時を回っていた。
「うわああああ、先生すみません」
謝りながら、脱ぎ散らかしていた死覇装やら、隊長羽織を身に着けていく。京楽も、同じように死覇装と隊長羽織を着こんだ。
「急ごう!」
「ああ!」
瞬歩で、一番隊の隊首室に入ると、みんな揃っていた。
遅れたことに、山本総隊長は少し表情を崩したが、すぐに元に戻って、会議が行われる。
終わって、ほっとして帰ろうとした二人を、山本総隊長が引き留めた。
「春水、十四郎・・・・・・」
ああ、きた。
お説教か。
それも致し方なし
「お主ら、着ている隊長羽織を間違えておるぞ」
「え!」
「本当ですか!?」
後ろを見ると、浮竹は8番隊の羽織を、京楽は13番隊の羽織を着ていた。
「いや、これはだね山じい・・・・・」
「お主ら二人の関係に口は挟まぬ。だが、今度そのような理由で隊首会に遅れたら、きつーーーーーーいお灸をすえてやるぞ」
何度もそのお灸と称すお叱りを受けて、根性をたたき直すとしごかれてきた二人は、顔色を蒼くした。
「山じい、今度から気をつけるから。お灸は勘弁してよ」
「先生、もう遅刻はしません」
京楽と浮竹にとって、山本総隊長は親のようであった。
そして山本総隊長にとって、京楽と浮竹は我が子同然であった。
お灸をすえられる前に、謝罪をして心を入れ替える。入れ替えたといっても、今までとあまり変わりないが。
山本元流斎重國は、かわいい愛弟子二人が、いつもと変わらず寄り添いあっているのを見て、
安堵をする。
100年以上も前におこった藍染の事件により、護廷13番隊は一度は危機的状況になっていた。多数の隊長副隊長クラスが、藍染による虚化の実験のせいで失われた。今の基礎を築いたのは、京楽と浮竹の二人と卯ノ花烈だ。
何百年時を経ても、山本元流斎重國を支えてくれる二人を前に、彼は伸ばしている自慢のひげをなでるのであった。
まどろんでいた。
夢と目覚めをいききして、酷く心地よかった。
「・・・・・・・・!」
誰かが、何かを言っている気がする。
でも、また起きたくなくて。
「もう少し・・・・・寝かせてくれ・・・・・・・」
「浮竹!」
耳元で大きな声で名を呼ばれて、飛び起きる。
「どうした!?」
「やばいよ、今日は隊首会の日だよ!すっかり忘れてた!」
「隊首会!?」
確か、午前の10時からだったはず・・・。
時計を見ると、11時を回っていた。
「うわああああ、先生すみません」
謝りながら、脱ぎ散らかしていた死覇装やら、隊長羽織を身に着けていく。京楽も、同じように死覇装と隊長羽織を着こんだ。
「急ごう!」
「ああ!」
瞬歩で、一番隊の隊首室に入ると、みんな揃っていた。
遅れたことに、山本総隊長は少し表情を崩したが、すぐに元に戻って、会議が行われる。
終わって、ほっとして帰ろうとした二人を、山本総隊長が引き留めた。
「春水、十四郎・・・・・・」
ああ、きた。
お説教か。
それも致し方なし
「お主ら、着ている隊長羽織を間違えておるぞ」
「え!」
「本当ですか!?」
後ろを見ると、浮竹は8番隊の羽織を、京楽は13番隊の羽織を着ていた。
「いや、これはだね山じい・・・・・」
「お主ら二人の関係に口は挟まぬ。だが、今度そのような理由で隊首会に遅れたら、きつーーーーーーいお灸をすえてやるぞ」
何度もそのお灸と称すお叱りを受けて、根性をたたき直すとしごかれてきた二人は、顔色を蒼くした。
「山じい、今度から気をつけるから。お灸は勘弁してよ」
「先生、もう遅刻はしません」
京楽と浮竹にとって、山本総隊長は親のようであった。
そして山本総隊長にとって、京楽と浮竹は我が子同然であった。
お灸をすえられる前に、謝罪をして心を入れ替える。入れ替えたといっても、今までとあまり変わりないが。
山本元流斎重國は、かわいい愛弟子二人が、いつもと変わらず寄り添いあっているのを見て、
安堵をする。
100年以上も前におこった藍染の事件により、護廷13番隊は一度は危機的状況になっていた。多数の隊長副隊長クラスが、藍染による虚化の実験のせいで失われた。今の基礎を築いたのは、京楽と浮竹の二人と卯ノ花烈だ。
何百年時を経ても、山本元流斎重國を支えてくれる二人を前に、彼は伸ばしている自慢のひげをなでるのであった。
日番谷の受難Ⅱ
「隊長、なんで執務室半壊してるんですか?」
現世から帰ってきた松本が驚いていた。
いつもなら、お気に入りの長椅子に寝そべって、仕事をさぼって昼間から酒を飲むのだが。それさえできそうもない、執務室の様子に松本は少しご立腹だった。
「ええ、京楽隊長と浮竹隊長が?その程度のことで、斬魄刀を始解させたんですか?」
「その程度じゃねぇ」
日番谷は怒っていたが、京楽が10番隊の執務室を豪華に建てなおすというので、かろうじで我慢していた。
しばらくは隊首室で仕事をする羽目になりそうだ。
日番谷は、自宅をもっているので、隊首室で寝起きすることがなかったが。
「あのおっさんども、覚えてろよ」
執務室は、すぐに直された。
いくらなんでも、京楽にはそこまでの人材はない。直したのは、朽木白哉だった。
「なんで朽木が・・・・」
「兄には関係のないことだ」
京楽が金を払うということで頼まれたのだ。京楽だけなら動かなかったが、最近わかめ大使を尸魂界に広めてくれている浮竹の頼みでもあったので、対処した。
浮竹は、京楽と日番谷の次に、白哉が好きだった。
日番谷は、白哉から渡された大量のわかめ大使をどうすればいいのかと考えていた。
「聞いてくれ、日番谷隊長・・・・・」
「くるな!」
また現れた、浮竹に日番谷はできることならバリアをはりたかった。
「入ってくるな近づくな何も言うな」
「?」
浮竹は、日番谷のそんな言葉を無視して、執務室に入ってくる。
「お茶どうぞ」
「ああ、ありがとう松本副隊長」
「京楽が、無理強いしてくるんだ。2回までならいいと言ったのに、3回目まで」
ぴくぴく。
ちょっと腐女子である松本の耳が反応する。
日番谷は、そんなの話を聞きたくなくて、耳を塞いでいた。
「日番谷隊長?」
小首を傾げて、のぞきこんでくる浮竹がかわいく見えて、日番谷は自分の目が腐ってしまったのだと思った。
「それ以上近づくな」
こんなおっさんに、少しばかりときめいて、日番谷は自分を呪った。
そして、どうして京楽がここまで浮竹を独り占めするのかが分かった。
天然なのだ。儚く身目麗しい容姿をしていることを分かっていない。おまけに無防備だ。
邪(よこしま)な想いを抱く死神には、毒というものだろう。
「日番谷隊長、浮竹がこなかったかい・・・・・って、やっぱりいた」
京楽がやってくる。
ああ、またか。
またこのパターンか。
「京楽!お前、少しは反省したんだろうな!」
「2回も3回も同じじゃない。そんなことで怒らないでよ」
「いいや、全然違う。お前はいいかもしれないが、受け身のこちらの都合にもなってみろ!」
「十四郎・・・・愛しているよ」
浮竹を腕に抱きこんで、キスをする。
日番谷と松本がいることなんて、お構いなしだ。
「まて、ここでは・・・・やぁっ」
「蒼天に座せ氷輪丸!」
日番谷は思った。
もう、どうでもいいい、と。
現世から帰ってきた松本が驚いていた。
いつもなら、お気に入りの長椅子に寝そべって、仕事をさぼって昼間から酒を飲むのだが。それさえできそうもない、執務室の様子に松本は少しご立腹だった。
「ええ、京楽隊長と浮竹隊長が?その程度のことで、斬魄刀を始解させたんですか?」
「その程度じゃねぇ」
日番谷は怒っていたが、京楽が10番隊の執務室を豪華に建てなおすというので、かろうじで我慢していた。
しばらくは隊首室で仕事をする羽目になりそうだ。
日番谷は、自宅をもっているので、隊首室で寝起きすることがなかったが。
「あのおっさんども、覚えてろよ」
執務室は、すぐに直された。
いくらなんでも、京楽にはそこまでの人材はない。直したのは、朽木白哉だった。
「なんで朽木が・・・・」
「兄には関係のないことだ」
京楽が金を払うということで頼まれたのだ。京楽だけなら動かなかったが、最近わかめ大使を尸魂界に広めてくれている浮竹の頼みでもあったので、対処した。
浮竹は、京楽と日番谷の次に、白哉が好きだった。
日番谷は、白哉から渡された大量のわかめ大使をどうすればいいのかと考えていた。
「聞いてくれ、日番谷隊長・・・・・」
「くるな!」
また現れた、浮竹に日番谷はできることならバリアをはりたかった。
「入ってくるな近づくな何も言うな」
「?」
浮竹は、日番谷のそんな言葉を無視して、執務室に入ってくる。
「お茶どうぞ」
「ああ、ありがとう松本副隊長」
「京楽が、無理強いしてくるんだ。2回までならいいと言ったのに、3回目まで」
ぴくぴく。
ちょっと腐女子である松本の耳が反応する。
日番谷は、そんなの話を聞きたくなくて、耳を塞いでいた。
「日番谷隊長?」
小首を傾げて、のぞきこんでくる浮竹がかわいく見えて、日番谷は自分の目が腐ってしまったのだと思った。
「それ以上近づくな」
こんなおっさんに、少しばかりときめいて、日番谷は自分を呪った。
そして、どうして京楽がここまで浮竹を独り占めするのかが分かった。
天然なのだ。儚く身目麗しい容姿をしていることを分かっていない。おまけに無防備だ。
邪(よこしま)な想いを抱く死神には、毒というものだろう。
「日番谷隊長、浮竹がこなかったかい・・・・・って、やっぱりいた」
京楽がやってくる。
ああ、またか。
またこのパターンか。
「京楽!お前、少しは反省したんだろうな!」
「2回も3回も同じじゃない。そんなことで怒らないでよ」
「いいや、全然違う。お前はいいかもしれないが、受け身のこちらの都合にもなってみろ!」
「十四郎・・・・愛しているよ」
浮竹を腕に抱きこんで、キスをする。
日番谷と松本がいることなんて、お構いなしだ。
「まて、ここでは・・・・やぁっ」
「蒼天に座せ氷輪丸!」
日番谷は思った。
もう、どうでもいいい、と。
日番谷の受難
「日番谷隊長聞いてくれよ。京楽のやつが・・・・・」
10番隊の執務室にやってきて浮竹の愚痴を、軽く流す。
面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだと、適当に相づちをうつ。
「そうか。大変だったな」
「そうなんだよ、日番谷隊長!」
話の内容なんて、頭に入っていない。のろけ話も含まれているから、耳から入って耳から出ていく。
「それで、浮竹はどうしたいんだ?」
「俺か?俺は、京楽に謝ってほしくて・・・・・」
はて。
なんで、京楽が浮竹に謝るのだろう。
話を全然聞いていなかったので、日番谷はちょっと焦った。
「そうだな、京楽が悪い」
適当に話を合わせると、浮竹は顔を輝かせて日番谷に抱き着いた。
「分かってくれて嬉しいよ!」
なでなでと、頭を撫でられる。
「子ども扱いすんじゃねぇ!」
もう慣れてしまったやりとり。
「お菓子あるんだけど、食べるかい?」
浮竹は、かなり日番谷のことを気に入っていた。隊長クラスでは、京楽の次に好きなんだろう。
同じ「シロちゃん」である日番谷に、親近感を抱いていた。
渡されたお菓子を、当たり前のように食べた。与えたはずの浮竹まで食べていた。
「今日は、松本副隊長はいないのかい?」
「松本は、現世に虚退治にいっていていない」
「そうか、寂しいな」
「うるさいのがいなくなってせいせいしてる」
「それは酷くないか?」
「浮竹だって、もしも京楽がうるさくしてたら、たまには一人になりたくなるだろうが」
「いや、俺は京楽の傍にいたいな」
ああ、もう。
この二人は、喧嘩したのじゃないのか。
断片的な話から、二人が喧嘩したのだと判断した日番谷は、浮竹の背中をたたいた。
「もう帰れ」
近づいてくる静かな霊圧を感じて、日番谷は少し焦った。
気のせいか、殺気を感じる。
「京楽の元へ行け!早く!」
「どうしたんだ、日番谷隊長?」
まだ気づいていない浮竹の無防備さに、頭が痛くなった。
「浮竹~ぇ」
ゆらりと、霊圧が揺れる。10番隊の執務室にやってきた京楽は、怒っていた。
「きょ、京楽!?言っとくが、お前が謝るまで許さないからな!」
「随分と、日番谷隊長と親しそうじゃないの?さっき言った僕の言葉、もう忘れたの?」
「それは・・・・・・」
「君は、無防備すぎるんだよ。誰彼構わず、色気をふりまいて。この前、名も知らぬ隊士に襲われたこと、もう忘れたの?」
「お前、それは本当なのか?」
日番谷が、浮竹を見る。
「ああ。京楽が、半殺しにしてしまった」
命知らずのやつもいたものだ。
浮竹に手をだして、半殺しですむだけまだましだ。殺される可能性だってあるのだ。
「俺は、お前のそういう・・・独占的なところが!大体、京楽がいなきゃ外に出てはだめなんてあんまりじゃないか!」
「襲われたこと、一度や二度じゃないでしょ。ちゃんと、僕の耳には入ってるんだよ?」
静かに怒る霊圧はそのせいかと、日番谷は思った。
相手を心配するあまり、度をこしたのだろう。
「おい、ここが10番隊の執務室ってこと忘れてないか?喧嘩するなら、よそでやれ」
「よっと」
浮竹を肩に担いで、京楽は日番谷を見た。
「巻き込んでごめんね、日番谷隊長。浮竹の言っていたことは気にしないでね」
喧嘩してたんじゃないのか?痴話げんかなのか?
「おろせ京楽!謝れ!」
「はいはい、ごめんよ」
「全然気持ちがこもっていない!」
「聞き分けのない子には、お仕置きが必要だね」
どさりと降ろしして、噛みつくよなキスをされる。
「だから、お前ら、ここは10番隊の執務室だと・・・・」
「んっやめっ・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・蒼天に座せ、氷輪丸!」
日番谷は、自分の執務室を半壊させた。
京楽は浮竹を抱えて瞬歩で去ってしまった。
「あのおっさんどもが!」
日番谷は、やり場のない怒りをどうしようかと思いつつ、壊してしまった執務室をどう説明すればいいのだろうかと、悩むのだった。
10番隊の執務室にやってきて浮竹の愚痴を、軽く流す。
面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだと、適当に相づちをうつ。
「そうか。大変だったな」
「そうなんだよ、日番谷隊長!」
話の内容なんて、頭に入っていない。のろけ話も含まれているから、耳から入って耳から出ていく。
「それで、浮竹はどうしたいんだ?」
「俺か?俺は、京楽に謝ってほしくて・・・・・」
はて。
なんで、京楽が浮竹に謝るのだろう。
話を全然聞いていなかったので、日番谷はちょっと焦った。
「そうだな、京楽が悪い」
適当に話を合わせると、浮竹は顔を輝かせて日番谷に抱き着いた。
「分かってくれて嬉しいよ!」
なでなでと、頭を撫でられる。
「子ども扱いすんじゃねぇ!」
もう慣れてしまったやりとり。
「お菓子あるんだけど、食べるかい?」
浮竹は、かなり日番谷のことを気に入っていた。隊長クラスでは、京楽の次に好きなんだろう。
同じ「シロちゃん」である日番谷に、親近感を抱いていた。
渡されたお菓子を、当たり前のように食べた。与えたはずの浮竹まで食べていた。
「今日は、松本副隊長はいないのかい?」
「松本は、現世に虚退治にいっていていない」
「そうか、寂しいな」
「うるさいのがいなくなってせいせいしてる」
「それは酷くないか?」
「浮竹だって、もしも京楽がうるさくしてたら、たまには一人になりたくなるだろうが」
「いや、俺は京楽の傍にいたいな」
ああ、もう。
この二人は、喧嘩したのじゃないのか。
断片的な話から、二人が喧嘩したのだと判断した日番谷は、浮竹の背中をたたいた。
「もう帰れ」
近づいてくる静かな霊圧を感じて、日番谷は少し焦った。
気のせいか、殺気を感じる。
「京楽の元へ行け!早く!」
「どうしたんだ、日番谷隊長?」
まだ気づいていない浮竹の無防備さに、頭が痛くなった。
「浮竹~ぇ」
ゆらりと、霊圧が揺れる。10番隊の執務室にやってきた京楽は、怒っていた。
「きょ、京楽!?言っとくが、お前が謝るまで許さないからな!」
「随分と、日番谷隊長と親しそうじゃないの?さっき言った僕の言葉、もう忘れたの?」
「それは・・・・・・」
「君は、無防備すぎるんだよ。誰彼構わず、色気をふりまいて。この前、名も知らぬ隊士に襲われたこと、もう忘れたの?」
「お前、それは本当なのか?」
日番谷が、浮竹を見る。
「ああ。京楽が、半殺しにしてしまった」
命知らずのやつもいたものだ。
浮竹に手をだして、半殺しですむだけまだましだ。殺される可能性だってあるのだ。
「俺は、お前のそういう・・・独占的なところが!大体、京楽がいなきゃ外に出てはだめなんてあんまりじゃないか!」
「襲われたこと、一度や二度じゃないでしょ。ちゃんと、僕の耳には入ってるんだよ?」
静かに怒る霊圧はそのせいかと、日番谷は思った。
相手を心配するあまり、度をこしたのだろう。
「おい、ここが10番隊の執務室ってこと忘れてないか?喧嘩するなら、よそでやれ」
「よっと」
浮竹を肩に担いで、京楽は日番谷を見た。
「巻き込んでごめんね、日番谷隊長。浮竹の言っていたことは気にしないでね」
喧嘩してたんじゃないのか?痴話げんかなのか?
「おろせ京楽!謝れ!」
「はいはい、ごめんよ」
「全然気持ちがこもっていない!」
「聞き分けのない子には、お仕置きが必要だね」
どさりと降ろしして、噛みつくよなキスをされる。
「だから、お前ら、ここは10番隊の執務室だと・・・・」
「んっやめっ・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・蒼天に座せ、氷輪丸!」
日番谷は、自分の執務室を半壊させた。
京楽は浮竹を抱えて瞬歩で去ってしまった。
「あのおっさんどもが!」
日番谷は、やり場のない怒りをどうしようかと思いつつ、壊してしまった執務室をどう説明すればいいのだろうかと、悩むのだった。
雪
「それ一護」
「ぶべっ!」
ルキアが投げた雪の塊が、一護の顔に当たった。
いつものような、学校の帰り道。
というか、今日は学校は休校だった。雪が積もったことで、都会の電車やバスなどの通行手段は麻痺して、教師や生徒が学校にこれないような状況になってしまったのだ。
歩いていける距離だったので、一護は学校にいったのだが、すぐに休校だと知らされて、むだ骨だったと、ルキアと一緒に帰宅
。
学校には数人の教師が校門のところにいて、やってきた生徒に休校だということを触れ回っていた。
中には喜ぶ生徒もいたが、交通機関が麻痺しているせいで、帰宅が昼になってしまう生徒もいた。
連絡網で回そうにも、すでに学校へくるために家を出た生徒ばかりで、連絡網で休校ということは回ってこないせいで、ちらちらと苦労しながら登校する生徒が見える。
こんなに雪が積もるなんて、久しぶりだ。
一護は、真っ白に覆われた道路を見続ける。
ルキアはマフラーをまいてコートまできて、すっかり防寒対策はばっちりのようで。元々氷系統の斬魄刀をもつルキアは寒さには強い。
ルキアはららら~と適当な歌を歌って、地面にしゃがみこんだ。
そして、雪を手袋をはめた手で固めて、それを一護に投げた。
「もう一度だ!」
「ぶべっ!」
一護は、寒さのせいで動きが鈍っていて、顔で見事に受け止める。
「お前は~~~!!」
一護が、しゃがみこんで雪をかき集めると、手袋をしていない指がかじかむのもかわまず、雪玉をつくるとそれをルキアに向けて投げた。
「くらえ!」
「あまい!」
もきゅ。
変な音がした。
ルキアがバックから出したコンを、盾にしたのだ。
「姉さん、酷いっす」
ポテリと雪の上に落ちるコン。コンはルキアのスカートの下に落ちた。
「ナイスアングル!」
「しね!しね!!!」
ルキアが靴でコンを踏みにじる。
「出る!綿出る!あああああ!!! (>'A`)>ア゙-ッッ!!」
「雪でもくってろ」
ルキアは、コンの口を無理矢理あけると、そこに雪玉をつっこんだ。
「つめたいいいいい」
そんなコンをかばんに詰め込みなおして、ルキアはまた雪玉をつくると、それを一護に投げる。
その雪玉を、一護は自分が投げた雪玉で相殺する。
「ふふふ、やるではないか一護」
「こんなことで褒められても嬉しくねぇ」
「それっ」
勢いをつけたルキアが、足元を滑らせる。
「あぶねぇ!」
とっさに一護がルキアの体と受け止めた。
「あいたた」
ルキアは一護の体から離れると、コートについた雪を払う。
その隙をついて、一護はニィと笑むと、右手にもったままの雪玉をルキアの背中に放り込んだ。
「わきゃああああああ!!冷たい!!!」
「仕返しだ」
「貴様、不意をつくなどとは卑怯な!」
「はいはい」
「はっくしょん」
ルキアが盛大にくしゃみをした。
「おい、風邪ひくなよ。帰るぞ」
ルキアが、背中にいれられた雪をなんとか自分で取り出す。マフラーが、はしゃぎまわったせいで雪まみれになって地面に落ちていた。
それを一護は拾うと、自分のマフラーを外した。
「ほらよ」
一護が、自分のマフラーを、ルキアの首に巻きつけていく。
そのほんのりとした温かさに、ルキアは一護の優しさを感じた。
ルキアは少し紅くなって地面を見た。白い雪に、足跡はいくつもついている。自分でつけた足跡だ。
「・・・・・すまぬ」
「かまわねーよ。いくぞ」
「う、うむ」
さしだされる一護の手。雪で冷えた冷たい指に、ルキアは暖かいはずの自分の指を絡めた。
冷たい一護の手が、少しでも暖かくなるように、ルキアは絡めあった指を外さない。
冷たい吐息にまじる、二人の息。
雪は冷たい。でも、嫌いではないと、二人は思う。
雪は溶けて消えてしまうけれど、二人の絆は溶けて消えたりはしない。
半歩遅れてルキアが歩きだす。一護の家に向かって、二人手をつないで。
「寒くないか?」
一護が、ルキアを見る。
「貴様こそ、寒くないか?」
ルキアが一護を見る。
二人は顔を見合わせてクスクスと笑った。
雪の積もった日も、悪くない。そう思う二人であった。
イルミネーション
「メリークリスマスだ、一護」
現世のイベントに疎いルキアであったが、クリスマスというイベントは好きだった。
恋人同士が甘い時間を過ごす、現世でも溢れたキリスト教という宗教の、イエス・キリストが生まれた日。
クリスマスは特別であった。人々は休暇をとり、恋人と時間を過ごすために自分の時間を割く。
黒崎家に飾られたクリスマスツリーは、お世辞にも立派なものとはいえなかった。
埃を被っていたクリスマスツリーを、ルキアがせがんだので、仕方なく一護がだして、飾り付けをし、イルミネーションをつけた。
町に出ると、クリスマス一色だった。
ケーキ屋の前にはサンタクロースの格好をした店員が、必死にケーキを売っている。
子供づれの夫婦が、そんな店員からクリスマスケーキを買う。
町の街路樹の木にもイルミネーションが施されており、ルキアは夜の町を一人でぶらついた。
きらきら煌くイルミネーションが、とても綺麗だった。
尸魂界にはない代物である。
ルキアは帰宅した。
そして、勉強をしている一護を攫うように、無理やり外に連れ出す。
「あーもう、一体なんなんだよ」
一護が、吐く息を白くしながら、冬用のコートに身を包んだルキアを見る。
ルキアは、氷雪系の斬魄刀を持っているせいか、寒さには強い。ルキアより数段厚着した一護を引っ張って、ルキアは歩いた。
「綺麗だと思わないか。尸魂界では見ることのできぬ景色だ」
瞬くイルミネーションを見上げながら、ルキアが一護を振り返った。
「そりゃ綺麗だけどさ。だからなんだってんだ」
「何もない。ただ、貴様とこうして、イルミネーションが続くこの通りを歩きたかっただけだ」
ルキアが、一護の手をとった。
そのまま、手を握り合い、歩いた。
「どこまで行くんだ?」
「さぁ、どこまで行こうか。あまり遠くへも行くわけにもいかないしな。なぁ一護」
「なんだよ」
「また、来年も、こうやって一緒に歩こうな?」
一護の頬が、紅くなった。
ルキアは、いつものクールな顔で、一護を振り返ると、にこりと微笑んだ。
「メリークリスマスだ、一護」
「あー。メリークリスマス、ルキア」
二人は、並んで町を歩いた。
そして、サンタクロースの格好をした店員が売っているケーキ屋の前にきた。
一護は、財布を取り出すと、クリスマスケーキを買って、ルキアに渡した。
「いいのか?私が全部一人で食べてしまうぞ?」
「いいんじゃねーのか」
一護は、クリスマスケーキにはあまり興味はないようだった。
ルキアは、身長差のある一護の、巻いていたマフラーを引っ張った。
「いてててて!何しやがる!」
チュ。
音をたてて、一護の唇に触れるだけのキスをしたルキアは、桜色の唇で歌を歌いだした。
どこで覚えたのかもわらない、現世の神を称える賛美歌だった。
その狂った音程に、一護が吹き出した。
お世辞にも、うまいとはいえない。むしろ下手だ。どこをどうすれば、ここまで下手に歌えるのか聞きたいくらいだった。
「ルキア」
「なんだ」
ルキアが、黒みがかった紫水晶の瞳で一護を見上げる。
「寒いだろうから・・・・」
ふわりと、暖かな体温に包まれて、ルキアは歌うことを止めた。
一護が、自分がしていたマフラーを外して、ルキアの首に巻きつけたのだ。
「貴様は寒くないのか?」
「平気だ」
「風邪など、ひかぬだろうな?」
「そんなにやわにはできてねぇ」
「本当に、本当だろうな?」
「しつけーな。マフラー返せ」
「だめだ、もう私のものだ」
紫水晶の瞳が、悪戯っぽく光った。
まだ、付き合ってもいない。それなのに、酷く甘い一日だと、一護は思うのだった。
現世のイベントに疎いルキアであったが、クリスマスというイベントは好きだった。
恋人同士が甘い時間を過ごす、現世でも溢れたキリスト教という宗教の、イエス・キリストが生まれた日。
クリスマスは特別であった。人々は休暇をとり、恋人と時間を過ごすために自分の時間を割く。
黒崎家に飾られたクリスマスツリーは、お世辞にも立派なものとはいえなかった。
埃を被っていたクリスマスツリーを、ルキアがせがんだので、仕方なく一護がだして、飾り付けをし、イルミネーションをつけた。
町に出ると、クリスマス一色だった。
ケーキ屋の前にはサンタクロースの格好をした店員が、必死にケーキを売っている。
子供づれの夫婦が、そんな店員からクリスマスケーキを買う。
町の街路樹の木にもイルミネーションが施されており、ルキアは夜の町を一人でぶらついた。
きらきら煌くイルミネーションが、とても綺麗だった。
尸魂界にはない代物である。
ルキアは帰宅した。
そして、勉強をしている一護を攫うように、無理やり外に連れ出す。
「あーもう、一体なんなんだよ」
一護が、吐く息を白くしながら、冬用のコートに身を包んだルキアを見る。
ルキアは、氷雪系の斬魄刀を持っているせいか、寒さには強い。ルキアより数段厚着した一護を引っ張って、ルキアは歩いた。
「綺麗だと思わないか。尸魂界では見ることのできぬ景色だ」
瞬くイルミネーションを見上げながら、ルキアが一護を振り返った。
「そりゃ綺麗だけどさ。だからなんだってんだ」
「何もない。ただ、貴様とこうして、イルミネーションが続くこの通りを歩きたかっただけだ」
ルキアが、一護の手をとった。
そのまま、手を握り合い、歩いた。
「どこまで行くんだ?」
「さぁ、どこまで行こうか。あまり遠くへも行くわけにもいかないしな。なぁ一護」
「なんだよ」
「また、来年も、こうやって一緒に歩こうな?」
一護の頬が、紅くなった。
ルキアは、いつものクールな顔で、一護を振り返ると、にこりと微笑んだ。
「メリークリスマスだ、一護」
「あー。メリークリスマス、ルキア」
二人は、並んで町を歩いた。
そして、サンタクロースの格好をした店員が売っているケーキ屋の前にきた。
一護は、財布を取り出すと、クリスマスケーキを買って、ルキアに渡した。
「いいのか?私が全部一人で食べてしまうぞ?」
「いいんじゃねーのか」
一護は、クリスマスケーキにはあまり興味はないようだった。
ルキアは、身長差のある一護の、巻いていたマフラーを引っ張った。
「いてててて!何しやがる!」
チュ。
音をたてて、一護の唇に触れるだけのキスをしたルキアは、桜色の唇で歌を歌いだした。
どこで覚えたのかもわらない、現世の神を称える賛美歌だった。
その狂った音程に、一護が吹き出した。
お世辞にも、うまいとはいえない。むしろ下手だ。どこをどうすれば、ここまで下手に歌えるのか聞きたいくらいだった。
「ルキア」
「なんだ」
ルキアが、黒みがかった紫水晶の瞳で一護を見上げる。
「寒いだろうから・・・・」
ふわりと、暖かな体温に包まれて、ルキアは歌うことを止めた。
一護が、自分がしていたマフラーを外して、ルキアの首に巻きつけたのだ。
「貴様は寒くないのか?」
「平気だ」
「風邪など、ひかぬだろうな?」
「そんなにやわにはできてねぇ」
「本当に、本当だろうな?」
「しつけーな。マフラー返せ」
「だめだ、もう私のものだ」
紫水晶の瞳が、悪戯っぽく光った。
まだ、付き合ってもいない。それなのに、酷く甘い一日だと、一護は思うのだった。
我慢
「一護、早く!」
その日は、ルキアの誕生日だった。
一護の贈り物は、「一日俺を自由にしていい券」
ルキアの誕生日をすっかり忘れていて、金を使い込んでしまい、ルキアの好きそうなものを買うことができなくて、いろいろ悩んだ結果の贈り物だった。
「待てよ、ルキア」
「次はあの乗り物に乗ってみたい!」
ルキアは紫色の瞳を輝かせていた。
すでに白哉からプレゼントをもらったのか、ルキアはチャッピーのリュックサックを背負っていた。
この遊園地にくる交通費と、遊園地に入る金は親父に頼み込んで借金して支払った。
ルキアは、「一日俺を自由にしていい券」を手にすると、顔を輝かせて本当に何をしてもいいのだな?と言ってくるので、何をしてくるのかと構えていたら、一護と遊園地に行きたいと言い出したのだ。
そのかわいい願いに、自然と頬が緩くなる。
「こんなことでいいのかよ・・・・・」
「そうだ。一度、貴様と遊園地に行きたかったのだ」
メリーゴーランドに乗って、ルキアははしゃいでいた。その姿がかわいかったので、ついスマホで写真をとった。
「次はこっちだ、一護!」
ジェットコースターだった。
「絶叫マシーンだぞ?大丈夫かよ」
「何、これくらい・・・・・・」
ジェットコースターが動き出す。どんどんスピードがでていく。
「わきゃあああああああああ!」
「ぬおおおおおおお!」
二人して、絶叫する。
「楽しいな、一護!」
ルキアは、衣服を風になびかせて、楽しげだった。
「はしゃぐのもいいが、そんな薄着だと風邪ひくぞ」
一護は、自分のしていたマフラーを、ルキアの首に巻き付けた。
「一護の匂いと温もりがする・・・・・・」
その言葉に、頬が朱くなる。
「次は、どれに乗るんだよ?」
「あれがいい。あれはなんというのだ?」
「あれは観覧車だ」
「行こう!」
手を引かれて、観覧車に乗る列に並ぶ。
ちらちらと雪が降りだした。
「雪か・・・・・貴様と雪を見るのも、初めてだな」
「ああ・・・・・・・・」
「はじめてのことだらけで、嬉しい」
本当に子どものように無邪気だ。
少女の姿のまま時を止めているルキアは、小柄で細かった。
観覧車に乗ると、ルキアは頂上で、一護に触れるだけのキスをした。
「なっ・・・・・・」
「今日の、お礼だ・・・・・・」
互いに、好きだと言いあった仲だ。だが、男女の関係には至っていなかった。
観覧車から降りると、手を繋ぎあって、歩く。
「貴様の手は暖かいな」
「ルキアの手は冷たいな」
そうだと、想い出す。苦し紛れに百均でかった手袋をとりだすと、一護はルキアの手にはめた。
「安っぽいけど・・・・・・ないよりは、いいだろ?」
「ありがとう、一護」
ルキアは、微笑んだ。
「ああもう!」
可愛い顔ばかりされて、一護はルキアを背後から抱きしめた。
「ルキア・・・・・・」:
耳元で囁く。
「たわけ!人が見ているではないかっ」
「見たいやつには、見させておけばいいんだよ」
「んっ・・・・・・」
深い口づけをすると、ルキアは甘い声をあげた。
一護はいろいろと我慢している。我慢しまくって、今までやってきたのだ。さらに我慢させられることなど、平気だ。
「家帰ったら、皆で祝おうか。ケーキ、買ってあるんだぜ」
黒崎家の住人とされているルキア。一護の父親に、行くところもないと涙で訴え、黒崎家に居候していた。
「もうこんな時間か・・・・・・・」
時計を見ると、夕方の6時をこえていた。
「夜景を見るのもいいけど、さみーしな。また今度な」
「また、貴様は誘ってくれるのか?」
「ルキアが望むなら。叶えられる願いは、叶えてやりてぇ」
「ありがとう、一護」
寄り添いあいながら、岐路につく。
ダイニングルームで皆でルキアの誕生日を祝って、ケーキを食べた。一護の妹たちから、ぬいぐるみをプレゼントされて、ルキアは嬉しそうだった。
一護の父親からのプレゼントは、セーターだった。
冬も大分深まった。
寒さに強いルキアは薄着でも平気そうだが、見ているこちらが寒くなるのだと、一護の部屋に戻ってきたルキアに、一護は自分の上着を羽織らせた。
親父のセーターに対する嫌がらせも兼ねていたが。
一護の父親は、ルキアを本当の娘のようにかわいがっていて、油断ならない。
ルキアを愛でるのは俺の特権なのだと、よく喧嘩しあった。
「誕生日、おめでとう、ルキア」
一護は、改めてルキアの誕生日を祝った。
「まだ、「一日俺を自由にしていい券」は有効か?」
「ああ、まだ0時になってないしな」
「では、抱き枕になれ」
「は?」
「いいから、ベッドに横になれ!」
ルキアの命令通りベッドに横になると、ルキアがすり寄ってきた。
何これ。どういう拷問だよ。
一護は、我慢しまくっていた。
「貴様は暖かいな・・・」
ルキアは、本当に無防備だ。一護が男であることを忘れているのではないかというほどに。
ルキアを腕に抱き寄せると、ルキアはくすぐったそうにしていた。
「これ、拷問かなにかか?」
「たわけ。だが、少しなら手を出していいぞ」
一護は、ルキアを抱き締める腕に力をこめる。それから、額に、頬にキスをする。
首筋を吸って痕を残すと、一護は止まった。
「虫よけ」
「なっ・・・・・・学校があるのだぞ!たわけ、貴様というやつは!」
朱くなって、怒り出すルキアをなだめる。
一緒のベッドに横になっていると、自然と眠ってしまった。
「ん・・・今、何時だ?」
「あー?夜の3時だ」
「もう、貴様を自由にできないのだな」
しょんぼりするルキアの頭を撫でた。
「俺でできることなら、叶えてやるよ。だから、そんなしょんぼりするなよ」
「どうして、貴様はそこまで私によくしてくれるのだ?」
「決まってるだろ。ルキアが、好きだからだ」
「私も、貴様が好きだ」
「一応、俺たち、付き合ってるんだよな?」
「そうではないのか?」
聞き返してくるルキアに、一護はルキアの黒髪に口づけた。
「いつまで、おあずけくらってればいいんだ?」
「たわけ。まだ付き合いはじめて1か月だろうが。まだまだ早い」
まだまだ我慢を強いられるのかと、一護は欠伸をかみ殺しながら思う。
生ぬるい、ぬるま湯のような関係だが、心地よくもある。
心を重ねているから。
絆は、消えないから。
「好きだぜ、ルキア」
一護は、ルキアを抱き締めたまま、またまどろむのだった。
その日は、ルキアの誕生日だった。
一護の贈り物は、「一日俺を自由にしていい券」
ルキアの誕生日をすっかり忘れていて、金を使い込んでしまい、ルキアの好きそうなものを買うことができなくて、いろいろ悩んだ結果の贈り物だった。
「待てよ、ルキア」
「次はあの乗り物に乗ってみたい!」
ルキアは紫色の瞳を輝かせていた。
すでに白哉からプレゼントをもらったのか、ルキアはチャッピーのリュックサックを背負っていた。
この遊園地にくる交通費と、遊園地に入る金は親父に頼み込んで借金して支払った。
ルキアは、「一日俺を自由にしていい券」を手にすると、顔を輝かせて本当に何をしてもいいのだな?と言ってくるので、何をしてくるのかと構えていたら、一護と遊園地に行きたいと言い出したのだ。
そのかわいい願いに、自然と頬が緩くなる。
「こんなことでいいのかよ・・・・・」
「そうだ。一度、貴様と遊園地に行きたかったのだ」
メリーゴーランドに乗って、ルキアははしゃいでいた。その姿がかわいかったので、ついスマホで写真をとった。
「次はこっちだ、一護!」
ジェットコースターだった。
「絶叫マシーンだぞ?大丈夫かよ」
「何、これくらい・・・・・・」
ジェットコースターが動き出す。どんどんスピードがでていく。
「わきゃあああああああああ!」
「ぬおおおおおおお!」
二人して、絶叫する。
「楽しいな、一護!」
ルキアは、衣服を風になびかせて、楽しげだった。
「はしゃぐのもいいが、そんな薄着だと風邪ひくぞ」
一護は、自分のしていたマフラーを、ルキアの首に巻き付けた。
「一護の匂いと温もりがする・・・・・・」
その言葉に、頬が朱くなる。
「次は、どれに乗るんだよ?」
「あれがいい。あれはなんというのだ?」
「あれは観覧車だ」
「行こう!」
手を引かれて、観覧車に乗る列に並ぶ。
ちらちらと雪が降りだした。
「雪か・・・・・貴様と雪を見るのも、初めてだな」
「ああ・・・・・・・・」
「はじめてのことだらけで、嬉しい」
本当に子どものように無邪気だ。
少女の姿のまま時を止めているルキアは、小柄で細かった。
観覧車に乗ると、ルキアは頂上で、一護に触れるだけのキスをした。
「なっ・・・・・・」
「今日の、お礼だ・・・・・・」
互いに、好きだと言いあった仲だ。だが、男女の関係には至っていなかった。
観覧車から降りると、手を繋ぎあって、歩く。
「貴様の手は暖かいな」
「ルキアの手は冷たいな」
そうだと、想い出す。苦し紛れに百均でかった手袋をとりだすと、一護はルキアの手にはめた。
「安っぽいけど・・・・・・ないよりは、いいだろ?」
「ありがとう、一護」
ルキアは、微笑んだ。
「ああもう!」
可愛い顔ばかりされて、一護はルキアを背後から抱きしめた。
「ルキア・・・・・・」:
耳元で囁く。
「たわけ!人が見ているではないかっ」
「見たいやつには、見させておけばいいんだよ」
「んっ・・・・・・」
深い口づけをすると、ルキアは甘い声をあげた。
一護はいろいろと我慢している。我慢しまくって、今までやってきたのだ。さらに我慢させられることなど、平気だ。
「家帰ったら、皆で祝おうか。ケーキ、買ってあるんだぜ」
黒崎家の住人とされているルキア。一護の父親に、行くところもないと涙で訴え、黒崎家に居候していた。
「もうこんな時間か・・・・・・・」
時計を見ると、夕方の6時をこえていた。
「夜景を見るのもいいけど、さみーしな。また今度な」
「また、貴様は誘ってくれるのか?」
「ルキアが望むなら。叶えられる願いは、叶えてやりてぇ」
「ありがとう、一護」
寄り添いあいながら、岐路につく。
ダイニングルームで皆でルキアの誕生日を祝って、ケーキを食べた。一護の妹たちから、ぬいぐるみをプレゼントされて、ルキアは嬉しそうだった。
一護の父親からのプレゼントは、セーターだった。
冬も大分深まった。
寒さに強いルキアは薄着でも平気そうだが、見ているこちらが寒くなるのだと、一護の部屋に戻ってきたルキアに、一護は自分の上着を羽織らせた。
親父のセーターに対する嫌がらせも兼ねていたが。
一護の父親は、ルキアを本当の娘のようにかわいがっていて、油断ならない。
ルキアを愛でるのは俺の特権なのだと、よく喧嘩しあった。
「誕生日、おめでとう、ルキア」
一護は、改めてルキアの誕生日を祝った。
「まだ、「一日俺を自由にしていい券」は有効か?」
「ああ、まだ0時になってないしな」
「では、抱き枕になれ」
「は?」
「いいから、ベッドに横になれ!」
ルキアの命令通りベッドに横になると、ルキアがすり寄ってきた。
何これ。どういう拷問だよ。
一護は、我慢しまくっていた。
「貴様は暖かいな・・・」
ルキアは、本当に無防備だ。一護が男であることを忘れているのではないかというほどに。
ルキアを腕に抱き寄せると、ルキアはくすぐったそうにしていた。
「これ、拷問かなにかか?」
「たわけ。だが、少しなら手を出していいぞ」
一護は、ルキアを抱き締める腕に力をこめる。それから、額に、頬にキスをする。
首筋を吸って痕を残すと、一護は止まった。
「虫よけ」
「なっ・・・・・・学校があるのだぞ!たわけ、貴様というやつは!」
朱くなって、怒り出すルキアをなだめる。
一緒のベッドに横になっていると、自然と眠ってしまった。
「ん・・・今、何時だ?」
「あー?夜の3時だ」
「もう、貴様を自由にできないのだな」
しょんぼりするルキアの頭を撫でた。
「俺でできることなら、叶えてやるよ。だから、そんなしょんぼりするなよ」
「どうして、貴様はそこまで私によくしてくれるのだ?」
「決まってるだろ。ルキアが、好きだからだ」
「私も、貴様が好きだ」
「一応、俺たち、付き合ってるんだよな?」
「そうではないのか?」
聞き返してくるルキアに、一護はルキアの黒髪に口づけた。
「いつまで、おあずけくらってればいいんだ?」
「たわけ。まだ付き合いはじめて1か月だろうが。まだまだ早い」
まだまだ我慢を強いられるのかと、一護は欠伸をかみ殺しながら思う。
生ぬるい、ぬるま湯のような関係だが、心地よくもある。
心を重ねているから。
絆は、消えないから。
「好きだぜ、ルキア」
一護は、ルキアを抱き締めたまま、またまどろむのだった。
涅マユリの悪戯
「だから、実験体にふさわしいといっているのだヨ」
「なっ、誰が実験体などになるか」
「一度死しておきながら新たに生を受ける・・・・まるで転生ではないかネ!非常に興味をそそる」
「だからって、はい実験体になりますというと思っているのか!」
浮竹は、涅マユリと言い争いをしていた。
12番隊隊舎からでたがらないマユリは、珍しく一番隊の執務室にきていた。なんでも、新しい受信機を開発したので、まずはその特許をと願いでてきたのだ。
そこで、京楽総隊長の傍にいた浮竹を改めてみて、興味をそそられたらしい。
「あー、ここは神聖なる総隊長執務室だよ。いい争いをしたいなら、外でやっておいで」
京楽は、総隊長として仕事に追われていた。
外でやれと言われているのに、マユリも浮竹も止まらない。
「浮竹隊長の墓には確かに遺骨がある。なのに、君は生きている。並行世界からやってきたのか、果たして神様とやらが奇跡をを起こしたのか・・・・・・」
「それは、俺にもよく分からない。気がづいたら、俺が死んでから・・・十数年が経過している世界で、目が覚めた。生き返ったのが、並行世界からやってきたのか、果ては神様の悪戯かそれは、俺にも分からない」
きっと、答えは誰にも分からない。
でも、浮竹は今を生きている。
総隊長となった京楽の傍で、ただ静かに。
「なら、髪の毛をくれるかね?クローンをつくるから、それで我慢してあげようじゃないか」
「いやだね!髪の毛一本でも渡すものか」
「そうだよ。涅隊長、浮竹は僕のものだ。手を出すことは僕が、いや護廷13隊が許さない」
「権力をそうやってふりかざすのは、どうしたものかとおもうがネ・・・・・・」
マユリは、興味が失せたとばかりに執務室を出て行った。
「浮竹、こっちの書類を任せられるかい?」
「ああ・・・・・」
仕事をする時も一緒な二人は、浮竹が京楽から簡単な仕事を任されることも多い。
副官である伊勢七緒も、ちゃんとできる仕事は自分の部屋にもっていってしてくれる。
昔からそうだ。
七緒は、二人の仲を裂こうとせず、8番隊の執務室を訪れる浮竹がいると、自然と姿を消していた。昔は、京楽が浮竹の執務室と隊首室を兼ねた雨乾堂に訪れていたのだが、その雨乾堂は、今は浮竹の墓地として取り壊されてしまっている。
正直な話、浮竹に居場所はなかった。
雨乾堂を失い、普通の隊士と同じ部屋で寝ようとする浮竹を、京楽が放っておくはずがない。
一番隊の隊首室は、いまや浮竹の部屋であるとも同じだった。
もっとも、京楽の財力で屋敷を与えられてはいるのだが、その場所を浮竹が使うことは稀だった。
京楽は、昼食を食べに出て行っしまった。浮竹は任された書類を片付けるのが楽しくて、夢中になっていたので一緒に昼食を食べることにはならなかった。
「そうだ。君にこれをあげるヨ」
ひょいっと、マユリが、仕事をしている浮竹の元にやってきて、何か薬を渡していった。
「な、帰ったんじゃなかったのか」
「何、ただの気まぐれさ。使うも使わないも、君次第だヨ」
浮竹は、目立つ格好のマユリの後ろ姿が見えなくなるのを確認してから、薬を見てみる。
(ムキムキになれる薬)
「・・・・・・・」
昔、散々な思いをしたその薬を捨てようとしてふと、薬のそこに入っている紙をみる。今度の副作用はなんだろう?
昔は、子供になることだった。
今度は・・・・・・15歳くらい、若返ると書いてあった。
「15歳くらいというと・・・・・院生時代か」
それもいいなと思い、どうせムキムキになるのは数秒のことだろうからと、服用してみる。
ムキムキになった。
筋肉むっきむきになったが、やはり1分として効果は続かなかった。
ポン。
音をたて姿が変わる。
全身の血が沸騰していくのがわかる。全てが収まると、隊長時代の浮竹はそこにいなかった。
「髪が短い!」
しかも、衣服まで院生時代のものになっていた。院生1年目ぐらいの時の、浮竹の姿があった。
院生の服では目立つだろうからと、いつもの死覇装に違う色の羽織を着て、浮竹は外に出かけた。
誰も、浮竹がその人であると気づかない。
それが嬉しくて、いろいろんな店に入ったりして、結局夕方まで遊び歩いてしまった。
「京楽、怒ってるかな?」
勝手に執務室を抜け出して、仕事を放り出して遊び歩いたりしたのだから、きっと怒っている。そう決めつけて、浮竹は一番隊の執務室まで戻った。
京楽の姿を見つける。
「京楽、すまない!」
「え、誰?」
「え?」
「え?・・・・・浮竹ェ?」
院生時代の姿とはいえ、かなり違うかんじの衣服になっていたので、京楽にも一瞬浮竹が誰なのか分からなかった。
「浮竹?本当に浮竹なのかい?」
「俺だが・・・・・・その、涅隊長の薬で若返ったんだが・・・・・変か?」
もはや、マユリの作る薬は若返りの薬と同等とみなされていた。
「かわいい」
「え?」
抱き上げられて、何かを言う前に隊首室まで連れていかれて、どさりとベッドに降ろされる。
「え?」
伸し掛かってくる体重に、浮竹は戸惑うばかり。
「君、わざとかい?僕が、最近あまり抱いてこないから、わざとそうやって誘っているのかい?そう思っていいんだね?」
ぽいぽいと衣服を脱いでいく京楽。
「やぁっ」
手首を帯で戒められて、浮竹は後悔する。薬を飲んだことを。
「やぁっ、そんなつもりじゃない、やだ、京楽、やだっ」
ちゅっと音をたててキスされて、浮竹は体を強張らせた。
あまりにも早急に、膝を膝で割られ、内部をえぐる指に、涙を零す。
「やぁっ」
中途半端に解され、京楽の雄が入ってきた。
「痛い!」
いつものように、潤滑油を使っていなかったので、浮竹のそこは切れてしまい、血をにじませていた。
力でねじ伏せられる。
「痛い、痛い、京楽、こんなのやだっ」
京楽を見る。
正気の目をしていなかった。
「京楽?」
ふわりと、地獄蝶が飛んでくる。
「君の愛する男にも、薬を飲ませてあげておいたから、好きなだけいちゃつくといいヨ」
「!」
涅マユリの仕業だった。
「正気に戻れ、京楽」
「かわいいね、浮竹は」
「あ、あ、あ、やだ、痛いっ」
身体が軋む。
ろくに解されもしなかった場所は、血を潤滑油がわりにして、挿入が繰り返される。
「やっ」
内部を侵す熱は熱い。
この前、京楽と交わったのは何週間前だろう?
院生時代のように体を重ねることが少なくなったのは、いつからだろう。
「痛い、やだっ、京楽っ!」
涙が流れる。
痛いだけで、気持ちよくない。
ただ、力任せに犯されている。
そんなのがいやで、浮竹は悲鳴をあげた。
「京楽、戻ってこい!!」
手首を戒められているが、足はなんとか動かせる。京楽の鳩尾を蹴ると、彼はうっとなって何かを吐き出した。
「京楽・・・・・?」
「あれ?浮竹・・・・?僕は・・・・・・僕は何を!」
ぼろぼろと涙を流す浮竹を解放して、京楽ははっとなる。
口から吐き出した何かは、煙となって消えてしまった。
「僕は・・・・涅マユリに何かを飲まされて・・・、そこから覚えていない・・・・」
「京楽っ」
京楽は、浮竹の姿に、ショックを受けた。
「これ全部・・・・僕がしたことなのかい?」
戒められて血の滲んだ手首。暴力的に犯されて、血を流す場所。力任せに引きちぎられてぼろぼろになった服。
泣き続ける浮竹にキスを何度もして、安心させる。
「ごめんね、浮竹」
浮竹は、翡翠色の瞳を開ける。
「元に戻ったのか、京楽?」
「ごめんね。せっかく若返ってくれたのに、こんな真似して・・・・・・・」
「正気に戻ったのなら、それでいい。あんな薬を飲んだ俺にも責任はある」
院生姿の浮竹は、いつもの優しい京楽をみて、安堵する。
「手、痛い・・・・・」
手首を戒める帯を外された。血の滲んだ箇所に、京楽はキスをする。
「その・・・・・・君を、ちゃんと抱いてもいいかい?」
零した涙を、京楽の舌がなめとっていく。
「ちゃんと気持ちよくしてくれるなら、抱いてもいい」
「ありがとう、浮竹」
京楽は、何度もキスの雨を降らせた。
前輪の輪郭をたどるように口づける。
潤滑油を使い、傷ついた内部を労わりながら、挿入していく。縮こまっていた浮竹の舌を誘いだして絡めあう。
わずかに反応していた花茎に手をかけて、いじりなが前立腺ばかりを突き上げていると、浮竹が啼いた。
「あっ・・・・・・・」
少しずつ、動きは大胆に、リズミカルになっていく。ぐちゃぐちゃと音をたてて、浮竹の腰を掴んで挿入し、前立腺ばかりを突き上げる。
「やああ、変になるっ・・・・・・・・」
いつもの交わりは、確かに浮竹を気持ちよくさせてくれるが、今回は浮竹の気持ちいいところだけを責め続けられる。
「ああっ」
白い性を放って、浮竹は力尽きた。
同時に、京楽も浮竹の中で果てた。
「・・・・・・痛くない?」
そっと中からでていくと、血の混じった体液がどろりと零れ落ちた。
「もう、痛くない・・・・・・・」
浮竹の姿は、いつの間にか元に戻っていた。
長い白髪をすいて、頬に口づける。
「大好きだよ、十四郎」
「俺も好きだ、春水・・・・・・・・」
涅マユリからもらった薬は、結局一粒使用しただけで、後は処分した。
京楽も、涅マユリには気をつけると言ってくれた。
「んー」
襦袢を着ただけの危うい姿で、浮竹はベッドの上でごろごろしていた。体をふいて、後始末もしたのだが、京楽は浮竹を力ずくで犯してしまったことがかなりショックなのか、浮竹をいつも以上に優しく、繊細に扱ってくる。
「もっと、べたべたしていいぞ。そのほうが安心する」
「でもね、君を傷つけた」
「お前のせいじゃないだろう」
「それでも僕は僕を許せない」
「じゃあ、俺が許す。だから、もっと・・・・・・キスして?」
甘えてくる恋人に、かなわないとばかりに、口づける。
長い白髪を乱して、互いの体温を共有しあう。
平和な時が十数年も続いて。
浮竹を失った京楽は、淡泊になった。
でも、また浮竹を取り戻して、8番隊隊長だった時代の性欲は取り戻した。でも、可愛い恋人は。もっともっととねだってくる。
本当に、浮竹にはかなわいな。
チチチチチ
睦みあう二人を祝福するかのように、シロと名付けられた小鳥が窓から入ってきた。
「シロ、久しぶりだね」
京楽が手をさしだすとちょこんとその手にのる。
チチチチ
小さく鳴いて、また自由な空へと飛び立ってしまった。
「君に似て、自由な子だね」
「確かに俺は自由だが・・・・・でもな、京楽。俺は、もう院生時代からずっとお前という鎖でに繋がれているんだ」
ふわりと微笑まれて、京楽は言葉をなくすのだった。
-
「なっ、誰が実験体などになるか」
「一度死しておきながら新たに生を受ける・・・・まるで転生ではないかネ!非常に興味をそそる」
「だからって、はい実験体になりますというと思っているのか!」
浮竹は、涅マユリと言い争いをしていた。
12番隊隊舎からでたがらないマユリは、珍しく一番隊の執務室にきていた。なんでも、新しい受信機を開発したので、まずはその特許をと願いでてきたのだ。
そこで、京楽総隊長の傍にいた浮竹を改めてみて、興味をそそられたらしい。
「あー、ここは神聖なる総隊長執務室だよ。いい争いをしたいなら、外でやっておいで」
京楽は、総隊長として仕事に追われていた。
外でやれと言われているのに、マユリも浮竹も止まらない。
「浮竹隊長の墓には確かに遺骨がある。なのに、君は生きている。並行世界からやってきたのか、果たして神様とやらが奇跡をを起こしたのか・・・・・・」
「それは、俺にもよく分からない。気がづいたら、俺が死んでから・・・十数年が経過している世界で、目が覚めた。生き返ったのが、並行世界からやってきたのか、果ては神様の悪戯かそれは、俺にも分からない」
きっと、答えは誰にも分からない。
でも、浮竹は今を生きている。
総隊長となった京楽の傍で、ただ静かに。
「なら、髪の毛をくれるかね?クローンをつくるから、それで我慢してあげようじゃないか」
「いやだね!髪の毛一本でも渡すものか」
「そうだよ。涅隊長、浮竹は僕のものだ。手を出すことは僕が、いや護廷13隊が許さない」
「権力をそうやってふりかざすのは、どうしたものかとおもうがネ・・・・・・」
マユリは、興味が失せたとばかりに執務室を出て行った。
「浮竹、こっちの書類を任せられるかい?」
「ああ・・・・・」
仕事をする時も一緒な二人は、浮竹が京楽から簡単な仕事を任されることも多い。
副官である伊勢七緒も、ちゃんとできる仕事は自分の部屋にもっていってしてくれる。
昔からそうだ。
七緒は、二人の仲を裂こうとせず、8番隊の執務室を訪れる浮竹がいると、自然と姿を消していた。昔は、京楽が浮竹の執務室と隊首室を兼ねた雨乾堂に訪れていたのだが、その雨乾堂は、今は浮竹の墓地として取り壊されてしまっている。
正直な話、浮竹に居場所はなかった。
雨乾堂を失い、普通の隊士と同じ部屋で寝ようとする浮竹を、京楽が放っておくはずがない。
一番隊の隊首室は、いまや浮竹の部屋であるとも同じだった。
もっとも、京楽の財力で屋敷を与えられてはいるのだが、その場所を浮竹が使うことは稀だった。
京楽は、昼食を食べに出て行っしまった。浮竹は任された書類を片付けるのが楽しくて、夢中になっていたので一緒に昼食を食べることにはならなかった。
「そうだ。君にこれをあげるヨ」
ひょいっと、マユリが、仕事をしている浮竹の元にやってきて、何か薬を渡していった。
「な、帰ったんじゃなかったのか」
「何、ただの気まぐれさ。使うも使わないも、君次第だヨ」
浮竹は、目立つ格好のマユリの後ろ姿が見えなくなるのを確認してから、薬を見てみる。
(ムキムキになれる薬)
「・・・・・・・」
昔、散々な思いをしたその薬を捨てようとしてふと、薬のそこに入っている紙をみる。今度の副作用はなんだろう?
昔は、子供になることだった。
今度は・・・・・・15歳くらい、若返ると書いてあった。
「15歳くらいというと・・・・・院生時代か」
それもいいなと思い、どうせムキムキになるのは数秒のことだろうからと、服用してみる。
ムキムキになった。
筋肉むっきむきになったが、やはり1分として効果は続かなかった。
ポン。
音をたて姿が変わる。
全身の血が沸騰していくのがわかる。全てが収まると、隊長時代の浮竹はそこにいなかった。
「髪が短い!」
しかも、衣服まで院生時代のものになっていた。院生1年目ぐらいの時の、浮竹の姿があった。
院生の服では目立つだろうからと、いつもの死覇装に違う色の羽織を着て、浮竹は外に出かけた。
誰も、浮竹がその人であると気づかない。
それが嬉しくて、いろいろんな店に入ったりして、結局夕方まで遊び歩いてしまった。
「京楽、怒ってるかな?」
勝手に執務室を抜け出して、仕事を放り出して遊び歩いたりしたのだから、きっと怒っている。そう決めつけて、浮竹は一番隊の執務室まで戻った。
京楽の姿を見つける。
「京楽、すまない!」
「え、誰?」
「え?」
「え?・・・・・浮竹ェ?」
院生時代の姿とはいえ、かなり違うかんじの衣服になっていたので、京楽にも一瞬浮竹が誰なのか分からなかった。
「浮竹?本当に浮竹なのかい?」
「俺だが・・・・・・その、涅隊長の薬で若返ったんだが・・・・・変か?」
もはや、マユリの作る薬は若返りの薬と同等とみなされていた。
「かわいい」
「え?」
抱き上げられて、何かを言う前に隊首室まで連れていかれて、どさりとベッドに降ろされる。
「え?」
伸し掛かってくる体重に、浮竹は戸惑うばかり。
「君、わざとかい?僕が、最近あまり抱いてこないから、わざとそうやって誘っているのかい?そう思っていいんだね?」
ぽいぽいと衣服を脱いでいく京楽。
「やぁっ」
手首を帯で戒められて、浮竹は後悔する。薬を飲んだことを。
「やぁっ、そんなつもりじゃない、やだ、京楽、やだっ」
ちゅっと音をたててキスされて、浮竹は体を強張らせた。
あまりにも早急に、膝を膝で割られ、内部をえぐる指に、涙を零す。
「やぁっ」
中途半端に解され、京楽の雄が入ってきた。
「痛い!」
いつものように、潤滑油を使っていなかったので、浮竹のそこは切れてしまい、血をにじませていた。
力でねじ伏せられる。
「痛い、痛い、京楽、こんなのやだっ」
京楽を見る。
正気の目をしていなかった。
「京楽?」
ふわりと、地獄蝶が飛んでくる。
「君の愛する男にも、薬を飲ませてあげておいたから、好きなだけいちゃつくといいヨ」
「!」
涅マユリの仕業だった。
「正気に戻れ、京楽」
「かわいいね、浮竹は」
「あ、あ、あ、やだ、痛いっ」
身体が軋む。
ろくに解されもしなかった場所は、血を潤滑油がわりにして、挿入が繰り返される。
「やっ」
内部を侵す熱は熱い。
この前、京楽と交わったのは何週間前だろう?
院生時代のように体を重ねることが少なくなったのは、いつからだろう。
「痛い、やだっ、京楽っ!」
涙が流れる。
痛いだけで、気持ちよくない。
ただ、力任せに犯されている。
そんなのがいやで、浮竹は悲鳴をあげた。
「京楽、戻ってこい!!」
手首を戒められているが、足はなんとか動かせる。京楽の鳩尾を蹴ると、彼はうっとなって何かを吐き出した。
「京楽・・・・・?」
「あれ?浮竹・・・・?僕は・・・・・・僕は何を!」
ぼろぼろと涙を流す浮竹を解放して、京楽ははっとなる。
口から吐き出した何かは、煙となって消えてしまった。
「僕は・・・・涅マユリに何かを飲まされて・・・、そこから覚えていない・・・・」
「京楽っ」
京楽は、浮竹の姿に、ショックを受けた。
「これ全部・・・・僕がしたことなのかい?」
戒められて血の滲んだ手首。暴力的に犯されて、血を流す場所。力任せに引きちぎられてぼろぼろになった服。
泣き続ける浮竹にキスを何度もして、安心させる。
「ごめんね、浮竹」
浮竹は、翡翠色の瞳を開ける。
「元に戻ったのか、京楽?」
「ごめんね。せっかく若返ってくれたのに、こんな真似して・・・・・・・」
「正気に戻ったのなら、それでいい。あんな薬を飲んだ俺にも責任はある」
院生姿の浮竹は、いつもの優しい京楽をみて、安堵する。
「手、痛い・・・・・」
手首を戒める帯を外された。血の滲んだ箇所に、京楽はキスをする。
「その・・・・・・君を、ちゃんと抱いてもいいかい?」
零した涙を、京楽の舌がなめとっていく。
「ちゃんと気持ちよくしてくれるなら、抱いてもいい」
「ありがとう、浮竹」
京楽は、何度もキスの雨を降らせた。
前輪の輪郭をたどるように口づける。
潤滑油を使い、傷ついた内部を労わりながら、挿入していく。縮こまっていた浮竹の舌を誘いだして絡めあう。
わずかに反応していた花茎に手をかけて、いじりなが前立腺ばかりを突き上げていると、浮竹が啼いた。
「あっ・・・・・・・」
少しずつ、動きは大胆に、リズミカルになっていく。ぐちゃぐちゃと音をたてて、浮竹の腰を掴んで挿入し、前立腺ばかりを突き上げる。
「やああ、変になるっ・・・・・・・・」
いつもの交わりは、確かに浮竹を気持ちよくさせてくれるが、今回は浮竹の気持ちいいところだけを責め続けられる。
「ああっ」
白い性を放って、浮竹は力尽きた。
同時に、京楽も浮竹の中で果てた。
「・・・・・・痛くない?」
そっと中からでていくと、血の混じった体液がどろりと零れ落ちた。
「もう、痛くない・・・・・・・」
浮竹の姿は、いつの間にか元に戻っていた。
長い白髪をすいて、頬に口づける。
「大好きだよ、十四郎」
「俺も好きだ、春水・・・・・・・・」
涅マユリからもらった薬は、結局一粒使用しただけで、後は処分した。
京楽も、涅マユリには気をつけると言ってくれた。
「んー」
襦袢を着ただけの危うい姿で、浮竹はベッドの上でごろごろしていた。体をふいて、後始末もしたのだが、京楽は浮竹を力ずくで犯してしまったことがかなりショックなのか、浮竹をいつも以上に優しく、繊細に扱ってくる。
「もっと、べたべたしていいぞ。そのほうが安心する」
「でもね、君を傷つけた」
「お前のせいじゃないだろう」
「それでも僕は僕を許せない」
「じゃあ、俺が許す。だから、もっと・・・・・・キスして?」
甘えてくる恋人に、かなわないとばかりに、口づける。
長い白髪を乱して、互いの体温を共有しあう。
平和な時が十数年も続いて。
浮竹を失った京楽は、淡泊になった。
でも、また浮竹を取り戻して、8番隊隊長だった時代の性欲は取り戻した。でも、可愛い恋人は。もっともっととねだってくる。
本当に、浮竹にはかなわいな。
チチチチチ
睦みあう二人を祝福するかのように、シロと名付けられた小鳥が窓から入ってきた。
「シロ、久しぶりだね」
京楽が手をさしだすとちょこんとその手にのる。
チチチチ
小さく鳴いて、また自由な空へと飛び立ってしまった。
「君に似て、自由な子だね」
「確かに俺は自由だが・・・・・でもな、京楽。俺は、もう院生時代からずっとお前という鎖でに繋がれているんだ」
ふわりと微笑まれて、京楽は言葉をなくすのだった。
-
脱毛
「うーん」
浮竹は、一番隊の執務室でうなっていた。
「どうしたんだい、浮竹」
仕事を何とか片付けて、一息しようとしていたところだった。
煙管の煙草に火をつけると、紫煙があがった。
ゆらりと、煙草の煙につつまれる浮竹。
甘い花の香のする浮竹に、煙草の匂いが染みついていく。
「いやな、朽木からもらったこの新発売のクリームをどうしようかと思って」
浮竹は、結婚で阿散井ルキアと名を変えたルキアを、阿散井とは呼ばずに昔のように朽木と呼んでいた。本人にも了承をとっているのだし、問題はない。
「クリーム?化粧品か何かかい。浮竹は肌がすべすべなんだから、別に手入れなんて無理にする必要ないんじゃないかい?」
何度も、浮竹の肌に触れたことのある京楽は、浮竹がみせてきたクリームとやらを見て、煙管を落としかけた。
「脱毛クリーム?」
「そうだ。だが、俺はほら・・・・見ての通り、すね毛がない。ひげも生えないし・・・・男性ホルモンが少ないのかな?」
塗る場所がないのだと、首を傾げる浮竹に、京楽はちょっと嫌な予感を覚えた。
「そうだ。もじゃもじゃの京楽のすね毛を脱毛クリームでつるつるにしてしまおう!」
「ええっ、冗談でしょ!」
「本気だ」
がしっと、見かけ以上の力で掴まれて、死覇装から足を出させて、脱毛クリームをひと塗りした。
面白いように、もじゃもじゃのすね毛が抜けていく。
「ああっ。こんな、一か所だけつるつるとかないよ」
「じゃあ、もういっそ全身をつるつるにしよう」
「ぎゃああああああああああ」
浮竹に襲われる、京楽の悲鳴が尸魂界にこだました。
「しくしく・・・・・」
結局、浮竹の手でひげ以外をつるんつるんにされてしまった京楽は、泣き真似をしていた。さっき、副官の七緒に今の姿を見られ、吹き出された。
京楽にとって、もじゃもじゃなのは男としての色香であり、けっこう気に入ってたのだ。毛深いことが嫌いなわけじゃない。
浮竹が毛深いのが嫌いなら剃っていただろうが、あいにく浮竹は京楽の濃い体毛の体に抱かれ慣れていて、むしろその姿が好きだといってくれる。
なのに、全身脱毛。
それにして、最近のエステ系のものの効果は凄いなと、京楽は思う。
女性が無駄毛処理をするのは当たり前な世の中なので、脱毛クリームとかその手のものはばかみたいに売れるだろう。
「このクリームすごいな。朽木に、感想を今度言いに行こう。いつまでしょげてるんだ京楽」
「穢されたよ!浮竹に弄ばれたっ!」
一番隊の執務室にきていた阿散井恋次は、その言葉を聞いて固まった。
「どうしたんだい阿散井副隊長」
すねてしまった京楽の代わりに、浮竹が要件を聞こうとする。
「浮竹隊長が、京楽隊長を襲った・・・・・・・・?」
恋次は、書類を提出すると、逃げ出した。
「あ、誤解だ!」
すでに、恋次の姿はない。
それから数日の間、京楽隊長と浮竹隊長はできているが、受けと攻めが逆転したとかいうデマ話が広がった。
噂は噂。すぐに消えてしまったが、京楽はしょげていた。
「毛が生えてこない・・・・」
ツルンツルンの足や手、胸を見て、溜息を零していたという。
あれだけ毛深かった京楽総隊長がツルツルになったのは、新発売の脱毛クリームのおかげだと広がって、件(くだん)の脱毛クリームは売り切れが続出した。
浮竹は、一番隊の執務室でうなっていた。
「どうしたんだい、浮竹」
仕事を何とか片付けて、一息しようとしていたところだった。
煙管の煙草に火をつけると、紫煙があがった。
ゆらりと、煙草の煙につつまれる浮竹。
甘い花の香のする浮竹に、煙草の匂いが染みついていく。
「いやな、朽木からもらったこの新発売のクリームをどうしようかと思って」
浮竹は、結婚で阿散井ルキアと名を変えたルキアを、阿散井とは呼ばずに昔のように朽木と呼んでいた。本人にも了承をとっているのだし、問題はない。
「クリーム?化粧品か何かかい。浮竹は肌がすべすべなんだから、別に手入れなんて無理にする必要ないんじゃないかい?」
何度も、浮竹の肌に触れたことのある京楽は、浮竹がみせてきたクリームとやらを見て、煙管を落としかけた。
「脱毛クリーム?」
「そうだ。だが、俺はほら・・・・見ての通り、すね毛がない。ひげも生えないし・・・・男性ホルモンが少ないのかな?」
塗る場所がないのだと、首を傾げる浮竹に、京楽はちょっと嫌な予感を覚えた。
「そうだ。もじゃもじゃの京楽のすね毛を脱毛クリームでつるつるにしてしまおう!」
「ええっ、冗談でしょ!」
「本気だ」
がしっと、見かけ以上の力で掴まれて、死覇装から足を出させて、脱毛クリームをひと塗りした。
面白いように、もじゃもじゃのすね毛が抜けていく。
「ああっ。こんな、一か所だけつるつるとかないよ」
「じゃあ、もういっそ全身をつるつるにしよう」
「ぎゃああああああああああ」
浮竹に襲われる、京楽の悲鳴が尸魂界にこだました。
「しくしく・・・・・」
結局、浮竹の手でひげ以外をつるんつるんにされてしまった京楽は、泣き真似をしていた。さっき、副官の七緒に今の姿を見られ、吹き出された。
京楽にとって、もじゃもじゃなのは男としての色香であり、けっこう気に入ってたのだ。毛深いことが嫌いなわけじゃない。
浮竹が毛深いのが嫌いなら剃っていただろうが、あいにく浮竹は京楽の濃い体毛の体に抱かれ慣れていて、むしろその姿が好きだといってくれる。
なのに、全身脱毛。
それにして、最近のエステ系のものの効果は凄いなと、京楽は思う。
女性が無駄毛処理をするのは当たり前な世の中なので、脱毛クリームとかその手のものはばかみたいに売れるだろう。
「このクリームすごいな。朽木に、感想を今度言いに行こう。いつまでしょげてるんだ京楽」
「穢されたよ!浮竹に弄ばれたっ!」
一番隊の執務室にきていた阿散井恋次は、その言葉を聞いて固まった。
「どうしたんだい阿散井副隊長」
すねてしまった京楽の代わりに、浮竹が要件を聞こうとする。
「浮竹隊長が、京楽隊長を襲った・・・・・・・・?」
恋次は、書類を提出すると、逃げ出した。
「あ、誤解だ!」
すでに、恋次の姿はない。
それから数日の間、京楽隊長と浮竹隊長はできているが、受けと攻めが逆転したとかいうデマ話が広がった。
噂は噂。すぐに消えてしまったが、京楽はしょげていた。
「毛が生えてこない・・・・」
ツルンツルンの足や手、胸を見て、溜息を零していたという。
あれだけ毛深かった京楽総隊長がツルツルになったのは、新発売の脱毛クリームのおかげだと広がって、件(くだん)の脱毛クリームは売り切れが続出した。