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春(ポップン)

季節は春。

桜の花見シーズン真っ盛りの時期。

ユーリとアッシュとスマイルは、久々のオフとあって、花見に出かけたのだが、どこも混んでいていた。特にユーリの苛立ちはすごく、ピクピク動く長い耳と、たまに羽ばたきをする真っ赤な深紅の翼で、機嫌の悪さが推察できた。

「帰ろうか」

ユーリは、桜を見上げてそう言った。

「でも、ここまできたのにもったいないっす」
「でもさ~。どこもいっぱいだよ~。こんなにこんでるとこで花見なんていやだよね~」

「違う場所を探そうっす!」
「もうめんどくさくなってきた。屋敷に小さな桜の木が一本あったな、そういえば。花を今頃綺麗に咲かせているだろう。それでも見ながら、酒を交わそうか」
「お、さんせ~!たまには真昼から酒もいいよねぇ~」
「それでほんとにいいんすか?」
「もうそれでいい」

綺麗に散っていく、ひらひらと花びらがユーリの髪にひっかかる。それをアッシュが器用につまみあげて、綺麗に爪の整えられたユーリの手の平に乗せた。

「もう少し、この景色を見ていたいっす。我儘だけどいいっすか?」
「もう少しだけなら、な」

ひらひらと、風が吹いてたは桜吹雪が舞い散る。
その下に佇むユーリは、まるで世界から隔絶されたように幻想的に見えた。

ひらひら。
ひらひら。

桜は散っていく。ユーリは黙したまま、桜の木を見上げる。

「帰るぞ」
「待ってくださいっす!」
「まってよ~~~」

ユーリは、翼を広げた。

「あ、ずるい!自分だけ飛んで帰るつもりだね~?」
「その通りだ」
「待ってくださいっすー!」

優雅に深紅の翼を広げるユーリは、メルヘン王国のヴァンパイア種の中でも上位の貴族であった。その優雅さが行動にも見て取れる。
どこまでも美しく、そして少し我儘。

宙を蹴ろうとするとろこを、アッシュに抱き留められた。

「ん」

触れるだけのキスをされて、翼を折りたたむ。

「一緒に帰るっすよ。みんなで」

「ふん」

ユーリは少し頬を染めてから、翼をもう一度広げ、また折りたたんだ。

「今回だけだからな」

照れているのを隠しているのはばればれだ。

「は~。ラブラブなのもいいけど、僕がいるのも忘れないでよ~~」

スマイルは、散っていく桜の花びらを手で受け止めて、ユーリとアッシュを見てから、もう屋敷に一人で帰りたい心境になるのであった。


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風邪をひいた(ポップン)

コホン。
小さな咳を一つする。
頭が痛くて、ユーリは背中の深紅の翼を一度だけ羽ばたかせた。
アーティストが風邪を引くなんて。

歌声が売りなのに、失態だった。
毎日帰宅すると手を洗い、うがいをしているし、住んでいる屋敷の空調管理は適切な温度に保たれていて、寒くも暑くもない。

同じ屋敷に住んでいるアッシュとスマイルは風邪を引いていない。
うつすわけにはいかないからと、ユーリは仕事をキャンセルして部屋で寝ていた。
風邪薬は飲んだし、抗生物質ものんだ。それからちゃんと病院にいって医師にも診てもらったし、薬も処方してもらった。
薬は嫌いだったけど、我慢して飲んだ。

「ユーリ。ちょっといいっすか。おかゆ、もってきましたっす」

「バカ、部屋に入るな」

あれほどきつく部屋に入るなと言っておいたのに、アッシュは勝手に扉をあけて入ってきた。
叱られて、シュンと独特の形をした耳が動いた。
つられて、尖っているユーリの耳も動く。

彼らは人間ではない。ユーリはもう絶滅の心配をされているメルヘン王国出身のヴァンパイアで、アッシュはワーウルフだ。もう一人のスマイルは透明人間。
Deuilという名のバンドを組んでいる。
アッシュがドラマーで、スマイスがギター担当、そしてメインボーカリストはユーリだった。
色白で、病的なまでに白い肌をもつユーリ。ヴァパイアらしく、背には赤い皮膜翼を一対もち、そして牙は尖っている。
普通の食事で生活を過ごしているが、ヴァンパイアだけに、時には人工血液製剤を飲むこともあった。

吸血などしたことがないわけではないが、相手を隷属させる可能性のある吸血行為は嫌いだった。

「アッシュ。こっちへこい」
「はいっす」

素直におかゆを置いたトレイを床に置くと、アッシュは浅黒い肌の手を差し出す。

それに、ユーリは牙をつきたてて、血を啜った。

「大丈夫っすか?」
「それはこちらの台詞だ。もういい。風邪もすぐ治るだろう。お前も、たまには拒否という言葉を覚えたらどうだ」
「ユーリの役にたてるなら、血を吸われることくらいどうってことないっす」

チクリと、ユーリの心が疼く。

ユーリは、アッシュに触れるだけのキスをした。

「ユーリ?」
「盛っているわけではないぞ。ただの、礼だ」
「それなら---」
「却下。病み上がりだ」

肌を重ね合わせるなど、却下だ。

ユーリはアッシュに抱かれるのが嫌いなわけではない。だが、今は風邪を先にこじらせないように治すことが先決である。

「もういい。おかゆは食べたあと廊下に出しておくからお前も部屋に戻れ」
「でも」
「しつこい!」
ばふっと、クッションを投げつけられて、アッシュは退散した。

「・・・・。こんな時に疼くなんて」

もっと吸血したい。SEXに似たその欲動は、抑えがたいものがある。
本気でユーリが吸血すると、アッシュなんて干からびて死んでしまうだろう。だから、首筋に牙をたてることはしない。

早く、風邪がなおるといいのだが。
ユーリはおかゆを食べて、からになった器をのせたトレイを廊下にだして、そしてベッドで薬を飲んでから、静かに微睡むのであった。


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更新。

更新のお知らせ。

携帯サイト、シャナの欠片Ⅱを5Pほど追加更新しました。
プロットもなく適当にうってるギャグ小説です。

2年ぶりの更新で、昔と小説の書き方が少し変わってるかもしれません。
昔はもう少し時間をかけてじっくり書いてたけど、今はもうさっくり読みやすい文しか書けません。

文才のある方がうらやましくも感じますけど、今のままでもいいかな~とも思います。
OOの同人誌3冊購入しますー。
小説サイト様のところで購入の予約してきました。

自分の理想ってかんじで少し読んだだけで購入決めちゃった。

3654円の出費。

360Pとかあるのが2冊あるので、お得かもしれない?
360P2冊と、40P1冊です。100円のもあったけれど、それは購入してません。

サイトで公開されているのが、お試しのサンプルになれるのでちょうど良かったです。OO熱がさめないうちに、燃やし切る。

そして小説を打とう。

きっと読んだら影響されてネタが被りそうな小説とかかきそう・・・・。でもまぁ、あくまで影響であって盗作ではないと私は思います。
ほんとの盗作ってのは、人様の小説を名前だけかえて打ったりとかだと思う。

このサイトのOOのティエリアだって、あるサイト様の影響受けまくりでした。もう閉鎖されてしまったみたいですけどね。

アホすぎる気もしますけどーw

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無題



ティエコスプレリジェネさん。

髪型かえたらティエリアになります。

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返信。

拍手コメントの返信レスです。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
サチさん見に来てくださってありがとう。
休止中ものぞいててくださったみたいで。とりあえずお絵かき環境を整えれば、久しぶりに絵を描こうかと思います。

更新はガンダムOOとオリジナル小説でいこうかと。
BLサイト何気に両性具有ネタで更新してます。

携帯サイトが更新できてませんね。

今から少し続きを打ってこようかなぁとか思ってたり。

サチさんのサイトなくなったのが残念。絵をもっといろいろ見たかったです。でも小説書きでもありますもんね。
私の絵はもう進化がない退化しかしてませんけどwww

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

シャナの欠片Ⅱでも続きうってきますかなぁ。
その前に読み直してどこまでうったのか確認しないと。

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長いこと

長いこと創作活動してますが、オフラインはやったことがないですねぇ。
印刷するにもお金がかかるし、お金出してまで見る価値はない気がしますここ。

ローゼンメイデンの下絵が2枚でてきました。
トレースされた下絵ようのもの。

スキャナなんとか動かすようになれないかなw

まぁ今日はスキャナのペンタブも置いておきましょう。

今月の小遣い1万3千400円~。フールーと契約してるので毎月マイナス千円。2万2千だからちょっとアマゾンで何かかったみたい。

来月は多分0。

っていうかマイナス?

よく噛むキンクマの3代目ですが、里子に出しました。エサ変えるだけで噛みつかれて毎日流血ものだったんですけど、4代目のキンクマさんは怖がりのようです。

さわるとギャーってないてひっこみます。
そっとしておこう。。。

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無題



ああうん、なんていうか兄貴。アイルランド出身だから雪に溶けてくかんじで・・・っていうとりただテクスチャでごまかしてるだけな気もする。

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久しぶりに。

久しぶりにかなり気に入った小説サイト様をみつけて、オフラインで同人誌を発売しているそうなので、3冊購入することにいたしました。

銀行振り込みだけどかわりに親父殿にふりこんでもらうか・・・(自分でふりこめよ)

サンプル見てこんな小説書いてみたいと思いました。でも文才の違いがはっきりしてるので私には無理ですねww

そもそも絵描きから小説書きに転身したんですけど。

ペインターのシリアルNOわかりました。
あとはスキャナとペンタブをどうにかすればお絵かきできる環境になりそうです。
古いフォトショップで加工するんですけど、まぁ2PCのPCが古いフォトショのインストール受け付けてくれているので。

年内に絵がかければいいなぁと思いつつ、安定剤のまないためのハッカ飴をもう何個もなめてる人。

ラグナロク、青箱ばかり買取りがやってきてあまり売れない。
値段さげるかなぁ。35K仕入で40K売りなんだけど。

紫がまた値あがってきた。

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反映されないw

BLサイトのTOPが反映されない。
ちゃんと更新うったのになぁ。

15日で更新とまってるんだけど、あれ2年前の15日のやつなんだよね。
30日日づけで更新したメニューページがあるんだけれど。

ちゃんとUPしてるのに、サイトにうまく反映されてない。

18禁がだめなので今のサイトにうつったんだけど、ここもなぁ・・・・。

前のサイトに戻るかなぁ・・・・

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ツイッター

ツイッターまたはじめました。
なんか呟いてます。
きっとでもこっちで呟いてるのが多い気もしないでもない。

スキャナ入らないし。
ペンタブないし。
ペインター11のシリアルNOなくしたし。

絵を描きたいけど描けない現状。
とりあえずタブレットだけでも回収してみます。

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過去ログ

出会いは突然にって青春白書とかぶるなぁ。
まぁいいかあ・・・・・

過去ログTEXTに収納しました。
出会いは突然にも収録したんですけど、このサイト反映が遅くてまだ更新できていません。
ついにでログが飛んでいたりもしますけど、そのうち反映されるのでさっくり読みたい方はブログで読むことをお勧めします。

絵のほうはプログにしかUPしておりません。

このサイトはプログ中心に動いております。ご了承ください。

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出会いは突然に⑩

それはそれは、もう十年以上も前のお話である。

「へ~、それでそれで?」
アレルヤはマリーという女性と結婚し、家を出て行った。その二人の間には子供ができて、その子供が遊びにきて、話を聞いていたのだ。
いつも遊びにくる刹那も、同級生のフェルトと結婚して自立していった。

久しぶりに、アレルヤと刹那、それにティエリアと、順調に回復して臨時ではなく、ちゃんとした教師になったニールの四人が、久しぶりに揃ったのだ。

「ママは、ティエリアちゃんみたいな恋はしなかったの?」

アレルヤとマリーの子供が、二人を交互に見て不思議そうにしている。

「いや、僕たちは大学のキャンパスで知り合ったから。そういうのはないなぁ。ごめんね」
「アレルヤとはもっと早くに知り合いたかったわ」

マリーが、太陽のような温かい笑みを零す。

「お父さんは?」

刹那とフェルトの子が、父である刹那に訪ねてみるが、期待していたような答えはなかった。

「でも凄いね。トラックにはねられて、一時は危篤状態に陥って、心肺停止状態にまでなったんでしょ?でもそれでも生きてるってすごいね!」

刹那とフェルトの子供が、きゃっきゃとはしゃいで走り回る。

「確かに、あの時は死ぬかと思った」

今では、思い出の一つ。

「あなたが生きていて本当によかった」

今月で臨月を迎えるティエリアは、大きくなったお腹をさすって、ニールに微笑みかけた。

ティエリアはちゃんと大学も出て、それから正式にニールと結婚し、すでに一児の母である。今そのお腹には、女の子と分かった赤ちゃんが宿っている。
順調にいけば、来月に出産となる。

「あ、蹴った」
「お、ほんとか!?」

ニールが、嬉しそうにティエリアのお腹を手で触った。

「ほんとだ、蹴った!これはきっとじゃじゃ馬姫が生まれるな!」
「そうかもしれませんね」

「ママーだっこしてー」

ニールとティエリアの第一子である男の子が、だっこをせがんできたが、父親であるニールに抱き上げられた。

「やだーママがいいの!」
「ママはお腹が大きくて大変だから、俺で我慢しなさい」
「パパ、僕大きくなったらママと結婚するんだから!」
「ティエリアは俺のだからな!」

ぺっと、子供を放り出して、ティエリアのほうに近づくと、触れるだけのキスをした。

「あーもう、子供に目の毒だから。そういうのはいない時にしてください」

フェルトが苦笑した。マリーも同じように苦笑する。刹那とアレルヤは、ティエリアとニールのラブラブぶりに、溜息をついている。

「ほら、いちゃつくのはいつでもできるでしょ。もっとお話ししましょう」

そこは、ティエリアの家だった。
マリーがアッサムの紅茶を入れてくれて、みんなに配ってくれる。
カップを傾けて、中身を飲むと体全体が温まってくれる。

今、季節は冬だ。

そう、雪が降っている。
そんな季節に、ニールは事故にあい片目を失った。リハビリにもたくさんの時間を費やした。長かった病院暮らしも終わって、今はティエリアの家にニールは住んでいた。
自分の家は処分して、子供たちの教育費に充てるつもりである。

「愛しています。出会いは突然ですね、僕たちは」
「そうだな。ティエリアが線路から落ちなかったら、きっと出会えてなかったかもしれない。出会いは突然に、ってやつだ」

ニールが、紅茶の入ったティーカップを手にもって、中身を飲み乾した。

「おかわりはいかが?」

マリーの言葉に、皆がそれぞれの想いを胸に頷く。

出会いは、突然に。

リジェネのことを忘れたわけではない。だが、こうしてニールと共にいることが、亡くなったリジェネへの贖罪に感じられる。

今、幸せの絶頂期だ。もうすぐ女の子が生まれる。二人目の子供だ。
ニールは子供はたくさん欲しいと言っていた。多分、四人くらい産むかもしれない。出産の痛みは、男では耐え切れない気がすると、ふとティエリアは思う。
死ぬほど痛い思いをして、輝ける命を手に入れるのだ。女とは、そうできている。

「ニール、まだこの子の名前決めていませんね。なんてつけましょうか」
「そうだなぁ・・・・・・」


それはそれは、少し昔のお話。
ニールとティエリアの、愛を育む小さなお話であった。

出会いは突然に。 

もしかしたら、あなたにも、こんな出会いが突然訪れるかもしれませんね。


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出会いは突然に⑨

次の日も、ニールの授業を受け、そして昼休みには一緒にお弁当を食べた。ティエリアのお弁当は、アレルヤの自信作だ。

「エビフライもらい!」

ニールは子供のように屈託なく笑って、ティエリアのお弁当からいつものように、エビフライをかっさらっていく。
そこに、刹那が横から加わって、ニールのお弁当箱から、アジのフライをかっさらっていった。

「ティエリア、仇はとったぞ」
「別にとらなくても・・・・」

その日も、何も問題のない一日で終わるかに思われた。ニールが講師としてやってきて、もうすぐ2か月が経とうとしている。
学校で会えるのは、あと僅か。
名残を惜しむように、ニールとティエリアは、一緒に帰路につく。

突然だった。

歩道に、ボールを追って、公園から3歳くらいの幼児が飛び出してきた。すぐ側に、トラック。

プップーというクラクションの音。

「危ない!」

ニールの叫び声。

幼児を突き飛ばすニール。止まらないトラック。

血しぶきが、ティエリアの頬を濡らす。



「いやああああああああああああああ!!」


絶叫は、空高く吸い込まれていった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ニールは救急車で、病院に運び込まれた。心肺停止状態で運び込まれて、ティエリアは半狂乱で泣き叫び、取り乱した。
なんとか息を吹きかえした後、数時間にも渡る大手術の緊急手術がされ、今は面会謝絶状態だった。一緒に救急車に乗り込んだティエリアは、涙を零してニールが助かることを祈った。
何日も何日も、ニールのいる部屋の近くの椅子に座り、やっと面会許可が降りて出会ったニールは、包帯が痛々しく全体に巻かれていて、右目は失明した。

「また、僕は・・・・失うのか?」

独白は恐怖を煽った。

彼は右目を失明してしまった。まだ危うい状況で、命を取り留めたとも言い難い。毎日毎日、ティエリアは看病のために病院に通った。

そして、やっとのことでニールの意識が戻った。

「ああ・・・・指輪、してくれてるんだ」

ニールから貰った、親の形見だという指輪をティエリアは右手にはめていた。

「死なないで、ニール。僕と結婚してくれるんでしょう?」

「ああ、死なないぜ、こんなところで。な、だからそんな顔しなさんな」

ニールが手を伸ばして、ティエリアの頬を撫でた。その手に手を重ねて、泣いた。ニールが穏やかな顔で眠りについたのを確認したが、まるで死んだように思えて心が冷えた。

「寒い・・・・もう、冬か」

ニールと出会ったのは秋だった。
外を見ると、木は葉を散らせて、そして白い雪が空から降っていた。帰路につく。吐く息が白かった。薄着だったせいで、風邪をひきそうだ。

次の日も、面会に来た。

「ニール。愛しています」
「奇遇だな。俺もだ」

眠っていたと思われたニールは、起き上がった。右目にされていた眼帯が痛々しかった。

「もう決めた。ティエリア、卒業したら結婚しよう。式は挙げなくてもいい。籍を入れて、落ち着いたら式を挙げよう」

優しく笑うニール。
ティエリアは、ただ涙を流して、その言葉に頷くだけだった。

「はい・・・ニール、愛しています」
「俺も愛してる」

お互いの体温を確認しあって、唇を重ねた。
何度目かのキスは、なんの味もしなかった。



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出会いは突然に⑧

次の週の日曜は、ティエリアがニールの家に遊びにきた。
一軒家で、男やもめの一人暮らしだが、家の中は綺麗に整頓されていて、人が住んでいる匂いのする暖かい部屋ばかりだった。

「これ・・・・もってきたけど。口に合わなかったら食べなくてもいいから」

持っていたカバンの中から、ラップにくるんだちょっと歪んだ形のくっきーを取り出して、溜息と一緒に、それをリビングルームの机に置いた。
アレルヤに手伝ってもらったけど、焦げまくったり、形がゆがみまくりで失敗した。でも、失敗作でもニールなら貰ってくれると思った。その推測はあたりだった。

ニールは嬉しそうに、ラップを開けるとクッキーを口いっぱいにほうばった。そして、一言。

「芸術的な味だ」
「どうせ美味しくないですよだ。ふん」
「愛情だよ、愛情。味とかそういうの、関係ない」
「キザったらしい」

でも、その心遣いが嬉しくもあった。

「僕には・・・昔、婚約者がいたんです。5年前に、僕を庇って、交通事故にあって死んでしまいました。それからずっと考えていたんです。僕に幸せになる権利なんてあるだろうかと」

ニールは、無言でティエリアの髪をすいた。

「あるよ。死んでしまった婚約者の子も、きっとティエリアの、幸福を天国で祈ってるはずだぜ?」
「そうでしょうか?」
「そうに決まってる」

断言して、それから頬にキスされる。それがむず痒くて、ティエリアはいつの間にか長く伸びてしまった髪を揺らした。

「本当に、僕とちゃんと付き合ってくれますか。僕は、あなたのことが・・・・。多分、この感情は嘘じゃない。あなたといると、まるで陽だまりにいるみたいだ。ニール、あなたがいないと、寂しいと感じる。僕は、あなたのことが・・・」

だんだん小さくなっていく声。

「好き、なんです」
「俺も好きだ。愛してる。だから、婚約しよう。ちょっと待ってな」

ニールは立ち上がると、2Fにあがってがさごそと何かを探しているようだった。そして、降りてきた時には、その手には小さな金色の指輪があった。

「おふくろの形見で悪いけど。講師なんて発給だしな。これ、対になるやつないけど、婚約指輪のかわりにやるよ」
「形見?そんな大事なもの!」
「いいから。これは俺の気持ちなんだって。もらってくれ」

強く押されて、ティエリアは首を縦に振った。

「はい・・・・」

それから、その日は借りてきたDVDを二人でずっと見ていた。恋愛もので、ラブシーンがたくさんあった。

「あなたは・・・・その、僕にこういうことしたいと思ってます?」
「今のところ思ってない。そういうのは、大切だから。ティエリアのこと、大事にしたいんだ」

安堵まじりに、けれど少し落胆した。
魅力がないのだろうかと、不安にかられたが、今までのニールの行動を見る限り、誠実そうなので軽くSEXなどをするタイプではないと思われた。

「キス、していい?」

効かれて、真っ赤になった。

「・・・・・・・・・・うん」

頷くまで、時間がかかった。
「ん・・・」

振れるように唇に指を這わされて、それからニールの唇と重なった。

「んあ・・・・」

濡れた声が、艶やかにお互いの鼓膜を刺激する。
大人のキス。初めてのキスは、飲んでいた紅茶のダージリンの味がした。

「もっかいしてもいい?」
「はい」

もう一度、唇を互いに重ね合わせる。自然と口を開けたティエリアの歯茎を刺激するように、ニールの舌が動き、舌同士を絡み合わせていく。
銀の糸を引いて、ニールの舌が引き抜かれる。

とても恥ずかしかった。

これ以上は、とてもできそうにない。

「僕は、今日はこれで」
「ああ、送ってくよ」

ニールの車に乗って、ティエリアは自宅まで無事に送り届けられた。ニールは車をもっていた。少し年代もので、古そうだったけれど丁寧に使い込まれているせいか、どこにも不調はなかった。

車。

そのキーワードに、胸が冷えた。

婚約者だったリジェネは、ティエリアが車にはねられそうになったのを庇って死んだ。

ティエリアは、天国にいるだろうリジェネに懺悔する。

君以外を好きになってしまった。多分、愛しているんだろう。これは愛という気持ちなんだろう。ごめん、リジェネ・・・・・・。

無事に家まで送り届けられて、アレルヤが夕飯に誘ったのだけれど、用があると言って、ニールは帰ってしまった。また明日になれば、学校でニールに出会える。学校に通うのが、楽しくなっていた。



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出会いは突然に⑦

気を失ったティエリアは、保健室で目を覚ました。
額にひんやりと水で冷えたタオルが置かれていた。

「僕は・・・・」

そうか、あの後眠るように意識を手放したのかと、反芻するようにゆっくりと起き上がる。涙が、ぽたぽたと、保健室のベッドのシーツに零れた。

「ごめん、なさい・・・・」

「どうした?」

ティエリアが起きたのに気づいたのか、横で椅子に座ってうたた寝をしていたニールの瞼が開いた。飛び込んでくる鮮やかなエメラルドグリーンの双眸。

「ごめん、なさい。好きになって、ごめんなさい」

「なんで謝るんだよ?」

「だって―――」

ティエリアは涙を零してシーツを掴むと、そのままうなだれた。

「だって・・・・・・僕には、人を愛する権利なんて、ないから・・・」

くしゃりと、頭を撫でられて、目を瞑る。零れる涙は止まらない。

「泣くなって」

「ごめんなさい・・・」

「謝るなよ。俺がお前を最初に好きになったんだから。それに、人を愛する権利がないとか、そんなことないさ」

「でも、僕はリジェネを殺した」

また、頭を撫でられた。

「・・・・・・・・」

しばらくの沈黙。その先を促そうかとニールは逡巡したが、やめておいた。
語りたいのなら、自分から話してくれるはずだ。無理にはやめておいたほうがいいと。

優しくティエリアの頭を撫でた後、頬に手をあてて、ニールはティエリアに触れるだけのキスをした。

「らしくないぜ。元気だせよ。もう放課後だ、一緒に帰ろうぜ?」

「うん・・・・」

すでにニールはティエリアの荷物も、刹那がまとめて持ってきてくれたのを受け取っていた。自分の荷物も担当授業が全て終わって、午後には1時間しか授業がなかったのに、帰ることなく荷物だけまとめて保健室で、ティエリアが目覚めるのを待っていたのだ。

同じように、刹那も待っていたのだけれど、先に帰宅してしまった。
彼なりに気を遣ったつもりらしい。
ニールには刹那に今度昼飯をおごるとかいって、ウィンクしたけど。

そのまま、しばらく二人は沈黙したまま動かないでいた。

優しいニール。まるで春の太陽のように。眩しくて、暖かくて。
心がふわりと浮かんでいるような心地にとらわれてしまう。

「一緒に帰ろうか。今日は、電車なんだ。もう落ち着いただろ?無理ならタクシー呼ぶぜ」

「あ・・・・大丈夫です。自分の足で歩けます」

ニールとティエリアは、一緒に保健室を出ると、そのまま学校の校庭に出て、歩き出す。空を見上げると、綺麗な茜色に染まっていた。同じ色に染まるニールの横顔を見て、それからまた空を見上げる。
学校の門をくぐり、建物の影を落とす道路をてくてくと静かに歩いていく。

ティエリアは、鞄をニールの頭に向かって放り投げた。

「ぶべ!」

それは目標を誤って、ニールの顔に直撃した。べしっといい音がして、落ちた鞄をニールが拾い上げる。

「ちょ、お前なんなんだよ!」

「付き合って下さい。僕と、真剣に。あなたが好きです」

夕焼け色に染まるティエリア。サラサラと風に流れる髪をかき上げて、ティエリアはニールを見つめていた。夕日と同じ色の瞳で。スカートが翻る。白い太ももに視線をやると、お日様模様のパンティがちょっとだけ見えた。

あ、ラッキー。

頭の端でそんなことを考えながらも、気づかれないように、真剣な表情を崩さないニール。

「マジ?本気?俺のプロポーズ受けてくれんの?」

車が排気ガスを撒き散らしてクラクションを鳴らす音が、耳障りだった。

「婚約しよう」

「ぶっ」

ティエリアは、右手を口にあてて吹き出した。

てっきり「いいぜ」とかそんなありきたりの台詞が返ってくるのだと思っていた。ニールはすでにティエリアにプロポーズしているし、好きだとも言っている。

ティエリアとはデートしたり、一緒に刹那もまじってだが、昼食をとったりするし、家に遊びにくることまであるニール。
家庭教師としてとか口先だけで、あれだけ固いアレルヤが許すのも、元々ニールはアレルヤの先輩にあたる、同じ大学の出身で友人でもあるからだ。

だから、アレルヤは安心してアレルヤとティエリアが住む家に、遊びにくるニールを心から歓迎して迎え入れる。大抵、アレルヤも刹那も一緒の部屋で雑談したり、DVDを見たり、ゲームしたり、ほんとに家庭教師のように勉強を教わったりと、ニールが下心からティエリアの家にくることはない。

アレルヤも、安心して、デート相手が7つも年上のニールだと知っても、止めない。彼なら、ティエリアを幸せにしてくれると信じているのだ。

5年前の、あの不幸なリジェネの死という事件をきっと拭い去ってくれるのではないかと、ティエリアの心からその傷を薄めてくれるのではないかとまで考えている。

ニールは一見、見かけのせいでチャラついたように見えるが、女性との交際は真剣なもので、今まで何度か好きになった女性に交際を申し込んだが、断られたり、ふられたりしてきた。
まさか、未成年を本気で好きになるとは、彼自身も想像もしていなかった。交際する限りは、遊びでなく真剣に。高校を卒業するまでは、肉体関係は持たないつもりだった。

「じゃ、婚約成立でいい?」

「どうして、そこまで話が飛んでいくんですか!」

ティエリアは頭に手を当てている。

「結婚しようぜ」

「話が飛びすぎです・・・・いいですよ。結婚しましょう。ただし、僕が高校を卒業してから。それから、僕は大学にも進みますので」

「OKOK。卒業と一緒に結婚式な!」

冗談で、言っているのだと思った。付き合うのはOKだろうが、まさか結婚とか。先のことすぎて、ティエリアも考えていなかった。

「あなたは、口が軽いですね」

「本気だぜ?」

沈んでいく太陽が逆行になって、ニールの表情は見えなかったけど、抱き寄せられて、そのまま唇を重ねられた。

「ん・・・・」

大人のキス。まだされたことのないその感触に、背筋が泡立った。
それから、額にキスをされて、手を繋ぎあって歩きだす。

帰ったら、アレルヤと刹那になんて言おう?ニールと婚約したなんて、いえるだろうか。ニールは本気なのかな?

ちらりとニールの横顔を見ると、彼はニカリと笑って、ティエリアの指に指を絡めてきた。それがなぜか酷く恥ずかしくて、ティエリアは頬を赤らめる。

茜色に染まっているから、どうか彼に気づかれていませんように。
二人は、そのまま電車に乗り、それぞれの駅で別れて帰宅した。

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