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出会いは突然に⑥

「よ、ティエリア、おはよう。昨日のデート楽しかったぜ。今日もかわいいな」

ぽんと肩を叩かれて、ティエリアは赤面した後、微笑み返す。聞こえてきた声の持ち主、ニールに向かって。

「おはようございます。かわいいとか、そんなこと、ありませんから・・・」

「あれ、髪のリボン曲がってるぞ?」

「え?」

「かしてみろ。俺が直してやる」

ニールはティエリアの頭を撫でてから、曲がっていた髪のリボンを直してやった。

「あ、ありがとう・・・」

「ほい、できた。うん。今日もまた後でな!」

いつもは万死としか返さないティエリアが、笑顔であいさつを返してくれた。これもデートとかお昼を一緒に食べたり、放課後話をしたりしている成果だろうか。
隣にいた刹那は、驚いて言葉も出ない様子だった。

かの堅物ティエリアが、あろうことか男性、しかも年上の教師に、いきなり肩を叩かれて挨拶されて微笑を浮かべて挨拶を返している。

2時間目が終わったあとの、10分間だけの小休憩の時間だった、今は。ティエリアと刹那は、二人で視聴覚室に向かって移動していたのだが、ニールがすれ違ってこちらに気づいてやってきたのだ。
ティエリアは気づいていなかったようで、肩を叩かれた時少し吃驚した様子であったが、頬を染めて少し俯いてから、長い睫を伏せていたのをやめて、笑顔で挨拶を返した。

「大王だ。アンゴルモアの大王が降ってくる・・・世界の破滅だ!!!俺がガンダムだ!!」

刹那は頭を抱えて蹲った。最後はいつもの台詞になっていたが。

「ちょ、なんだそれは!!」

「ティエリアが、異性に、異性に笑顔で挨拶を返した・・・・しかも、口説いていたあのニールに・・・ああ、アレルヤが知ったら、きっと卒倒する」

「何だそれは」

そこまでおかしいものか?

周囲を見ると、みんな固まっていた。

あの、堅物の美少女ティエリアが、ニールに笑顔で答えた。事務的なものでなく。しかも頬を染めて、潤んだ瞳でまるで恋をしているように。

「うおおおお、恋だ!!」

「恋ね!!」

「恋だわ!!」

みんな叫びだす。なんなんだ、このみんなのテンションは。そんなに可笑しかっただろうか。ただ、挨拶を返しただけなのに。

「鯉は!そう鯉だ!パクパクエサをねだる鯉のように、ティエリアはニールに懐いてしまった。そう、これが恋!」

刹那は変わらず不明な言葉を叫んでいる。
とりあえず、刹那を引き摺って、その場から逃げるようにティエリアは視聴覚室に入る。

昼になって、屋上で昼食をとっていると、いつものようにニールが混ざってきた。
ドクドクと、早鐘の如くティエリアの心臓は脈打っている。

なんだろう、この感情は。気恥ずかしくて、ニールのほうをまともに見れない。

「お、エビフライげーっと」

ティエリアのお弁当箱から勝手にエビフライを拝借していったニールに、ティエリアは文句も言わない。

「あなたのせいだ!!」

急に立ち上がると、弁当箱を床において、びしっと指をつきつけるティエリア。

「へ?」

「あなたのせいで僕は病気になった!どうしてくれる!!」

「病気って・・・どんな?」

「あなたの声を聞くと、ドキドキする。顔を見ると頬が、体中が火照るように熱くなる。笑顔を見ると胸が苦しい!これは・・・・うう、病院に行かないと」

ニールはにんまりと笑って、ティエリアの手を握る。

「バーカ。それは恋だよ」

「鯉か!?錦鯉か!?」

「違うって。恋したことないのか。じゃあ初恋か?お前さんは、俺に恋しちまったんだよ」

「錦鯉してしまったのか!!」

「ま、まぁなんか違うけど似たようなものだ」

「責任をとれ!!」

びしい!
指をつきつけたティエリア。刹那は腹を抱えて声もなく笑っている。

「いいぜ。付き合おう。本気で、な」

「え?」

ふわりと、ティエリアの体が宙に浮いた。ニールはティエリアを横抱きにすると、あろうことか屋上でティエリアにキスをした。

「万死・・・・」

いつもなら、威勢のいい声とビンタが飛んでくるはずだった。でも、ティエリアは顔を手で覆って動かなくなった。

「あれ?」

「死ぬほど恥ずかしい」

ぽつりと漏れたティエリアの声に、ニールは苦笑するのだった。

脳裏に、幼い頃のリジェネの顔が過ぎる。リジェネがずっと好きだった。でも、一緒にいてドキドキとか体が熱くなったりとか、そんなことを経験したことはない。
リジェネを愛している。今でも。

でも、こんな激しい感情は今まで抱いたことがない。

幼馴染のように育ったリジェネに抱いた感情は、そう、例えるなら半身が側にいるような。

「リジェネ・・・」

「何か言ったか?」

「ううん、なんでもない」

交通事故にあいそうになったティエリアを庇って、ティエリアを突き飛ばしてそしてトラックにはねられて、他界してしまったリジェネの最期の言葉を思い出す。

「君だけでも、幸せに――」

僕だけ幸せになる権利なんてない。リジェネの人生を奪っておきながら。でも、葛藤する。誰も愛する権利などないと思っていた自分の心に切り込んでくるように、浸入してくる柔らかな暖かさをもった、ニール。

「僕は誰かを愛しても、いいですか?僕は、あなたを愛しても、いいですか?」

ティエリアは、涙を流しながらニールの翠の目をのぞきこんで、そのまま気を失った。

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出会いは突然に⑤

「よ、まった?」
約束の時計台の前で二人は落ち合う。ちょうど12時を知らせる鐘が鳴った。

「べ、別に」
ふんとあらぬ方向を向くティエリア。だがいつになくかわいいワンピース系の服装に、髪を結い上げてリボンで綺麗にアクセントをつけている。

すれ違う人が、ティエリアの姿を見ては振り返る。どこぞのアイドルか?などという言葉まで聞こえたきた。
「は、早くいきましょう。さっきからじろじろ人が見てきて、不快だ」
それは、ティエリアがもつ容姿ゆえのものなのだろうが。
適当な格好をしていても一目を引くのに、少女らしいティーンズファッションでまとめあげて、少しお洒落をすればアイドルのように見えなくもなく。
服装一つで、こうまで人の雰囲気は変わるものなのかと、ニールは楽しそうに心の中で感嘆した。

「似合ってるよ。その服」
「あ、ありがとう・・・」
もじもじした様子で、小さな声が返ってくる。
ニールはティエリアの手をとって歩きだした。
「ちょ!」
「映画見に行こうぜ。チケットとってあるんだ。もうすぐ始まる」
「な、いきなりか!」
ティエリアの言葉も聞かないで、ニールが誘導していく。

ニールの手をはたいてから、ティエリアはとことこと、ニールの横に並び映画館に向かって歩いていった。そして2時間ばかりのラブストーリーを見終わってカフェに入った。

「うう、グス・・・・」
「なんであなたが泣くんですか」
「だって、パトラッシュが!!」
一体どんな映画を見たんだお前ら。そうつっこみたくなる。
「ううう。パトラッシュ、いい子だったのに!!」
涙をハンカチでふくアイリッシュ系の男性に、店内の視線が集まる。あまりの恥ずかしさに、ティエリアは耳まで真っ赤になっていた。

初めて異性とデートしたのはいいが、なぜ連れの男がデートで、映画を鑑賞してそのストーリーで泣くのだ。普通立場が逆じゃないのか?

「も、もう泣き止んでください。チョコレートパフェおごってあげるから」
「おう・・・チョコレートパフェ2つくださーい」
泣き止んだニールは、アルバイトであろうメイドの人にチョコレートパフェを2つ頼んだ。
「何故2つ・・・」
「無論、ティエリアの分。お金は全部俺が出すって。無理すんなよ」
「う。まぁそういうことなら」

バイトはしていないので、小遣いはあるが無駄遣いできるほどはもっていないティエリア。洋服は別途でお金をもらっている。だから、小遣いは純粋に娯楽費用に費やしていた。チョコレートパフェって意外と高いな・・・・そんなことをティエリアは思う。

それからチョコレートパフェを食べて、適当に会話しながら公園を散歩して、ティエリアが新作のゲームが見たいとゲーム店に入って出る頃には、もう日が傾きかけていた。

「今日は楽しかった。思ったより」
ティエリアは、地面をじっと睨んでいた。
「それは何よりだ。またデートしようぜ」
「ふん」
あらぬ方角をむいたティエリアの顎に、ニールの長い指が絡まった。

「ん?」

触れるだけの優しいキス。

「な、ななななな!!!」
「ごちそーさん。また明日学校でな。それから俺と付き合うの、真剣に考えといて。俺本気だから」

「な、なななな!ば、万死ーーー!!!」

はははと走り去っていくニールの後を睨みつけて、ティエリアは顔を真っ赤にして震えていた。
ニールに振り回されている自分が、嫌でないのに違和感を覚えつつも、彼と付き合うのもありかと頭のどこかで冷静に考える。

教師と生徒というタブーはあるが、2ヶ月もすればニールは教師ではなくなる。そのあたりはあまり問題はないと思う。

「万死・・・なんだから」

キスされた唇を指でなぞって、夕焼けの紫に染まりゆく空を見上げた。

出会いは本当に突然に。そしてデートまでしてしまった。学校でも毎日のように会話して、一緒にお昼までとっているし、休日には家にまで遊びにくるニール。

「人を好きになれるのかな?」

夕焼け雲を見ながら、ティエリアは寂しそうに呟く。かつて、ティエリアには好きな人がいた。従兄弟で、自分とよく似た容姿をしていた少年だった。幼い頃は将来結婚するんだとまで約束しあった。

「ねぇ、リジェネ。どう思う?」

リジェネは、ティエリアを庇って死んでしまった。交通事故だった。好きになってしまったばかりに、彼を、愛した人を殺してしまった。
今から5年前のことだ。それほど昔のことではない。
もう、誰も愛する資格などないのだとずっと決め込んでいた。
刹那やアレルヤのことは好きだけど、友人として家族としてだ。
異性としての恋愛など、もうすることもないだろうと思っていた。

「リジェネ、君は笑うかい。あんな人に、心惹かれていく僕を」

リジェネが優しく微笑み返している気が、した。

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出会いは突然に④

今日もまた、何気ない一日がはじまる。
学校につくと、職員室の前でニールとすれ違った。ニールは手を振って名前を呼んできたけど、即効で無視してやった。

昼休みになると、なぜかニールが教室にやってきて弁当箱をティエリアの席の隣で広げ出す。

「何しに来たんですか」
「いや、昼飯くいに」
「職員室で食べたらどうですか?」
「いやー、ティエリアと一緒がいいから」

あけられた弁当箱の中身を、さっと刹那がはしで玉子焼きをかっさらっていく。

「あー、こら!!」
「ふ。俺はガンダムだ」
そういう刹那の弁当箱はOOガンダムがプリントされていた。
「うりゃあ」
刹那の弁当からウィンナーをさらっていくニール。
これで一応講師、まぁ臨時の教師なのだから信じられないとティエリアは思った。

「隙あり!!」
ティエリアの弁当箱から、エビフライをかっさらっていったニール。
ティエリアは無視して弁当を食べ終えると、電子辞書を開いて勉強を始めた。

「もうちょっと昼くらい休憩すればいいんじゃないのか?」
ニールの言葉に、ティエリアは耳をかさない。
電子辞書で出される問題を解いていく。
少し難易度をあげてみると、ちょっと回答までに時間がかかった。

「ふっ」
「ぎゃあああああああ」

ニールが、ティエリアの耳に息をふきかけたのだ。
「あなたという人はぁぁぁ!!」
ニールのネクタイを掴みあげる。

「万死に値します!」
頭をべしっとはたいてやった。でも、ニールは嬉しそうだ。
「もっかい、もっかい!!」
「マゾですか、あなたは!?」
「いや、ティエリアだから嬉しいの」

この果てしなくチャラついたようにしか見えない教師は、何を言っているのかティエリアには全く理解不可能だった。
「このチャラ男がああ!!」
「はい、チャラ男ですけど今はティエリア一筋です」
「は?」
「俺と付き合わない?」
手をとられて、キスをされた。

全身にさぶいぼが立った。
「ちゃらいわ!」
べしっとまた頭を叩いてやった。
「うーん。俺真面目なのに」
ニールはちょっと悲しそうだ。
あ、かわいいかも。ティエリアはそう思った。
しょげた大型犬のようだ。

でも、所詮はニール。すぐに方向を変えてくる。
「じゃあ、また今度デートしよ!」
「はぁ?なぜあなたと?」
「だって好きになったんだから仕方ない」
「あなた、教師でしょう?」
「うーんでも講師だし、2ヶ月だけだし」
「ちゃらいわー!万死に値する」

はたから見ていると、ただの漫才にしか見えなかった。刹那はガンダム雑誌を読むのに必死だし。

教室に他に人はいたけど、みんなニールとティエリアのやりとりを聞いて笑っていた。
ニールの言葉が本当だとしても、ティエリアなら誰も嫉妬しない。
それだけティエリアは美しく、勉強もできて完璧に近かった。
クラスの男子の中でダントツで、好きな子NO1。でも性格はかなり男。おまけにいつも刹那がいる。

刹那とティエリアは付き合っているようで付き合っていない。ただの友人だ。
そこにニールという、これまた複雑なのが入り込んできた。

「とりあえず、今週の日曜の12時に、時計台で会おうぜ!」
「誰があなたなんかと!!」

ティエリアは、ニールに向かって舌を出して、教室を出る。
「どこにいくの?」
「あなたのいないところに」
「そう言わずに一緒にいようぜ」
「いやです」
「そう言わず」
「いやです」
「そう言わずに」
「ああ、うっとうしい!言いたいことがあるならはっきりしろ!」
ティエリアは、しつこいニールに切れた。

「今週の日曜の12時に、時計台で会おう。デートしようぜ。約束だぞ?」
「万死ぃぃぃぃーーー!!」

とかいいながら、日曜になるとちょっとだけお洒落をして、11時前には家を出て時計台前にいくティエリアの姿があった。
アレルヤは恋したのかなぁとか思いつつ、ティエリアを見送る。
ちなみに、刹那は今日もティエリアの家に勝手にあがって、ゲームをしていた。

 

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出会いは突然に③


先々と前を歩くティエリアを、ニールは追いかける。
「待てよ~」
ティエリアは少しだけ振り返って、そして無視して今度は走り出した。全速力で。
「ええ!?」
いきなりそうくるとは思っていなかったが、ここは意地になってニールも走って追いかけてみた。

「はぁはぁ」
「ぜぇぜぇ」
二人は公園のところまでくると、ベンチに座って荒い呼吸を繰り返す。
こんな全速力で走ったのは久しぶりかもしれない。
すぐ隣にあった自動販売機からニールはコーラを2つ買うと、1つをティエリアに渡した。
「ありがとう」
照れながら、ふたをあけて中身を口にする。炭酸飲料独特の爽快感が全身を走り抜ける。
朝からなんの水分もとっていなかったので、喉はかわいていた。
ほぼ一気に飲み干した。
できればウーロン茶系がよかったのだが、文句はいえない。もらったものなんだから。

「お前さん、俺のこと嫌いか?」
「別に・・・・」
じっと地面を俯いて、それから空を見上げた。
「ならデートでもするか?」
「いいが別に。買いたい服があるんです。ついてきますか?」
おお、誘いに乗った。
あんだけ嫌そうにしてたのに。

こうしてティエリアはニールを伴って買い物に出かけた。
「なぁ。これってデートっていうより」
「正解。ただの荷物もち」
あっちの店に入って新作の服だの、挙句にはゲーム店にはいって新しいゲーム機の購入、本屋に入って文庫本に漫画の新刊、ハードカバーの本とか。
いろいろかったティエリアはすっきりとした気分だった。
いろいろもたされたニールはちょっとどんよりとした気分だった。

「家まできてください。飲み物くらいだしますから」
「あ、うん」
ティエリアの後ろをたくさんの荷物を抱えながら歩く。
それから30分くらいして、ティエリアの家についた。
一戸建ての家だ。くる途中で話したが、親は海外赴任中で大学生の従兄弟と一緒に住んでるらしい。

「おかえり、ティエリア」
「おかえ・・・り?」
「ただいま」
なぜかニールがそう言っていた。
刹那は途中で首を傾げている。
「ティエリアが・・・・男拾って帰ってきた」
「拾ったとかゆうな!これ臨時の英語の講師。町でこえかけられて・・・荷物もちにさせた」
「やっぱりデートじゃなかった」
がっくりとするニールに、アレルヤが中に入るように促してくれた。

中に入って、リビングルームでティエリアが入れたアッサムの紅茶を飲みながら、アレルヤが冷蔵庫を物色している。
「刹那、ケーキ食べた?」
「食べた」
「もう、勝手に食べないでよ。お客様に出そうと思ったらなかった!」
「ケーキに名前を書いておかないほうが悪い」
刹那の思考はいつもずれている。

簡単なクッキーを出されて、ニールはそれを口にする。
なんだろうかこの沈黙は。
「賑やかな家だな」
「別に」
ティエリアは一瞥をくれてやると、また沈黙する。
紅茶を飲む静かな音だけが聞こえる。

「臨時講師、おい、格ゲーはできるか?」
刹那に、服の袖をひっぱられる。真っ赤な目をしたうさぎみたいだった。刹那は大きな目でニールを見上げると、ティエリアも誘って部屋で格闘ゲームをしはじめた。
「うっしゃ、勝った」
「くそ、負けた!」

街角で出会ったティエリアにデートの誘いをした最終結果が、隣家に住んでる刹那の部屋とされている客室で一緒に格闘ゲーム。
夕暮れになり、そろそろニールは帰る時間になった。

「また遊びにくるよ」

「もうこなくていい」
「遊びにくるならガンダムのガンプラ買ってきてくれ」
「ろくなもてましもできなくてすみません」
ペコリとアレルヤがお辞儀して家の中に戻っていく。刹那は自分の家に戻った。
「その・・・この前は、線路に落ちた時は、たすけて、くれてありがとう」
ニールは少し瞳を和ませるとティエリアの頭をわしゃわしゃ撫でた。
「な、何をする!」
「いやなぁ。かわいいと思って」
「かわいい?」
ボンと、ティエリアの顔が紅くなる。

「また遊ぼうぜ」
「もうごめんだ!」

まるで台風のような男性だった。
なのに、なんでこんなに胸がかき回されるのか、ティエリアには分からなかった。
 

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出会いは突然に②

ティエリアは日曜になって、暇だったので町をぶらついていた。
「彼女、かわいいね。暇?」
いつものように男に声をかけられる。
無論ティエリアは無視して歩き続ける。

お洒落をしなさいとアレルヤが煩いので、ロングスカートというちょっと歩きにくい服装で出てきたのがダメだった。歩くのに疲れる、この服装は。いつものようにズボンかジーンズにするべきだった。
アレルヤはかわいい服をみると絶対ティエリアに似合うからと、長身のティエリアに似合いそうな服を買ってきてはティエリアにプレゼントしてくれる。
全部、元はアレルヤのバイト代から出ているので拒否するのも悪いし。

こんなことなら、アレルヤか刹那でも連れて一緒にくるんだった。
でもアレルヤは課題があるからと部屋にこもっていたし、いつものように家に遊びにきていた刹那は買ったばかりのプレステ3のソフトに夢中になってプレイしていたし。
元はといえばあのゲームはティエリアのものなんだが、刹那はお構いなしでプレイする。
刹那はもう一人の家族だ。
よく家に泊まるし、ティエリアを異性としてみていない。
ティエリアも性格が男なので、刹那を異性としてみていない。アレルヤのことは少し気になるといえば気になるけど、その程度の問題。
恋とかそんなのどうでもいい。
道ばたに転がった石程度のものと、ティエリアは思っている。

ああ、早く帰って、刹那と新しくかった格闘ゲームで刹那をこてんぱんに叩きのめしてやろう。それとも二人でプレイのできるアクションRPGでボスでも倒そうか。
刹那がプレイしているRPGのシナシオの続きを、刹那がプレイするとを見ながら漫画を読むのもいいな。

女の子、という意識にかけたティエリア。

遊ぶ友達は男の子ばかり。大抵刹那の友達。女の子の友達もいるけど、会話の内容についていけない。昨日のドラマの俳優がかっこよかったとか、新しいアーティーストの新曲が良かったとか、ファッション雑誌のあの服が良かったとか。
新しく発売されたあの化粧品はいい、携帯で見れるあのイケメンのアイドルのプログ更新されてたよとか。
とにかく、内容についていけないし、面白くない。
一緒に行動してもなんだかかわいい店に連れて行かれるだけで、それを選んでキャアキャアいう彼女たちの心情が理解できないし、理解しようとも思わなかった。

「彼女、かわいいね」
「万死」

一言だけ与えて、ティエリアは道を進んでいく。
喉が乾いた。
どこかカフェかファミリーレストランで休憩しようかな。

「はーい、彼女かわいいね」
「万死」

「彼女一人?」
「万死」

「君、暇?」
「万死」

「あ、俺実はこういう者で」
「万死」
芸能プロダクションからのスカウトだった。
それさえも無視して、ティエリアは信号が赤に変わったので、そこで立ち止まった。

ティエリアの足を止めることができるのは信号くらい。
刹那がよくそういっていたのを思い出した。

「よ、一人?」
「万死」
「そんなつれないこというなよ」
「死ね」
「きっつー」
「なら声をかけるな」
男の顔など見てもいない。
「ティエリアちゃん」
「な」
なぜ名前を知っていると叫ぼうとして、ティエリアは振り返る。

そこにいたのは英語の臨時講師ニール・ディランディだった。
「あなたは街で少女をナンパするのか」
「いや」
「このロリコンめ!」
確か、ニールは24歳だった。
十代の少女をナンパするなら、ロリコンといってもいいかもしれない。
「いや、違うって。買い物の帰りにたまたまティエリアの姿見つけたから」
「そうか。僕はあなたに用はない。さようなら」
「ちょ、まじかよ」
信号が青に変わった。
先さき進んでいくティエリアの後を、ニールが追う。
「ちょっと待てってば!」
「嫌だ」
本当にティエリアは先へと進んでいく。そこで誰かとぶつかってよろけた。
「危ない」
倒れそうになるのを、ニールに腕を掴まれて、なんとか姿勢を直す。
「この手はなんだ」
ニールは急に立ち上がったティエリアの胸に手をあてていた。
「い、いやまじこれは事故!」
手が動く。モミモミ。
「あ、けっこう胸ある」

ピキ。
ティエリアの額に血管が浮く。

「万死に値する!死ね!」

バッチーン!ビターン!

往復ビンタを決めて、ティエリアは去っていった。
「なんつー気の強い・・・往復ビンタされたの初めて、ま、されても仕方ないけど」
ニールはぽかんとしてから、それから去っていくティエリアの後を追うために走り出した。

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出会いは突然に①

「列車が参ります、白い線の内側までお下がり下さい」

ティエリアは、英語の勉強をするために、英語の電子辞書ノートに英語で出題された問題をペンで答えを書いていく。
ぼーっとしていた。
うかつだったといえばうかつだった。
今日も電車は満員だろう。

トン。

「え?」

誰からの手がぶつかって、ティエリアは気づくと線路の上に落ちていた。
この駅に止まるはずの列車がだんだん近づいてくる。全身が恐怖で震えて動かなかった。

「大変だ、女の子が落ちたぞ!」
「大変だ!」
「誰か救出を!」
その声だけが大きく響いた。

「きゃあああああああ!」

誰かの耳を劈かんばかりの悲鳴。
ティエリアは目を見開いた。
あ、こんなところで死ぬのか。人生意外とあっけなかったなぁ。学力テストのために、駅で勉強なんてしなければ良かった。

そんな考えが脳裏に過ぎり、頭に両親のことや友人のこと、今までのことが思い浮かんでは消えていく。
ああ、これが走馬灯というやつか。
そんなことを冷静に考えていた。

ガタンガタン。
列車は急ブレーキをかけて止まった。

「何やってんだ!死ぬ気か!」

気づくとティエリアは、スーツ姿の男性に駅のプラットホームの、ちょうど電車とコンクリの間の空間。僅かばかりの空間に押し込まれていた。

「あ」

今になってがたがたと全身が恐怖で震え、涙が零れた。

「ひっく、ひっく、ああ・・・」
「参ったな」

男性にしがみついて、ティエリアは泣き続けた。こんな恐怖を感じたのは生まれて初めてだ。
こうしてティエリアは救助された。翌日の新聞にも載った事件。
ティエリアを助けてくれた男性は、何も言わずに駅の、ティエリアを心配して集まった人ごみに紛れていなくなってしまった。

ティエリアは念のためにと救急車で運ばれ、一日だけ精神が不安定になりすぎているために安静をとるように入院措置がとられ、次の日には無事に帰った。

「ただいま・・・」
「おかえり。心配したよ」

居候の従兄弟のアレルヤと、隣に住む刹那が家に来ていた。

「大丈夫か、ティエリア?」
「あ、うん・・・・」

刹那に抱き締められて、ティエリアは安堵のため息をもらす。

「勉強のしすぎじゃないのか」
「そんなことないよ」

刹那とは幼馴染で、男女の垣根さえこえた親友だ。

「今夕ご飯つくるから。刹那も食べていくか?」
「ああ」

ティエリアの両親は海外赴任している。
ティエリアは現在高校2年生の17歳。隣の刹那も同じ高校に通う2年生だ。刹那はまだ16歳。
アレルヤは20歳で、大学生。
両親は一人暮らしになるティエリアが心配のあまり、従兄弟に頼んで面倒をみてもらうようになって、アレルヤとの生活が始まった。
そこに、いつものように隣家の刹那が混じって、3人はまるで本当の兄弟のように仲が良かった。

「名前、聞き忘れた」
「助けてくれた人?」
「そう。お礼したいのに」
「スーツ姿だった。多分アレルヤより年上」
「ふーん。でも同じ駅を利用してるなら、また会えるかもよ?」
「そうだな」

次の日、大学が休みのアレルヤに見送られて、刹那とティエリアは一緒に登校した。
駅で助けてくれた男性を探すが、それらしい人はいなかった。
やがて学校につくと、みんな心配して近寄ってきてくれた。普段は口を聞かないようなクラスメイトまでも。

「ありがとう、みんな」
「ホームルームを始めます。それから、交通事故で入院してしまったイオリア臨時講師のかわりに、新しい臨時講師の先生がきています」

みんなざわつく。
イオリア先生といえば、もう老年なのに、でもまだまだ元気いっぱいのおじいさんだった。みんなにも好かれていた。
ガラリと入ってきた臨時教師に、ティエリアは立ち上がって叫んだ。

「昨日の人!!」
「あー!昨日の自殺少女!」

二人に視線が注目する。

「なになに、知り合いなの?やだ、講師の先生かっこいい!」

アイリッシュ系の白人の男性だった。

「誰が自殺少女だ!たまたま誰かの手にあたって線路に落ちただけだ!」

ティエリアはまくしたてる。

「はいはい、ティエリアさん、講師の先生とお話がしたいなら後でね」

ティエリアは担任に注意されて真っ赤になって席に座る。

「えーと、俺はニール・ディランディ。交通事故で足をぽっきりいってしまったイオリア先生のかわりに1ヶ月だけこの学園で英語を教えることになった臨時講師だ。よろしくな!自殺少女もよろしくな!」
明るく挨拶する。

今思えば、出会いの仕方としては、最悪な部類だったかもしれない。
誰が自殺少女だ。

ティエリアの美貌は高校内でも有名だが、告白してくる男子はあまりいない。いつも側に刹那がいるせいだ。
アレルヤから、ティエリアに変な虫はつかないようにと刹那は言われていたので、高校でも親友としていつもティエリアの側にいたし、教室移動も一緒だ。クラスメイトは二人が付き合っていると思っているらしい。

だけど、刹那には隣クラスのフェルトという学級委員長のことが好きだし、刹那ははっきりいって、男女な性格のティエリアのことなど女としてみていないだろう。
二人はティエリアの家で、高校2年なのに同じ部屋で泊まることがあるくらい仲よしだった。二人は男友達のような関係だ。

そもそもティエリアは、自分が少女であるという意識も薄い。両親は男の子を望み、生まれてきたのはティエリアただ一人。小学校まで男の子として育てられた。
紫の髪にガーネットの瞳の美少女は、外見とは裏腹にツンデレで、性格もきつめだった。

英語の授業が終わると、ニール講師をとりまく女生徒たちからニールを奪いとり、その手をむんずと掴むと屋上までつれてくる。

「なんだ、愛の告白か?」
「助けてくれたことには礼をいいます。ありがとうございます。お陰で助かりました」
清楚な少女がそこにはいた。

「いやいや。気をつけろよ?こんなに美人でかわいいんだから」
頬に触れてくる手を、うるさそうにティエリアははたき下ろした。
「あれ?」
ニールは、いつも女生徒に囲まれキャーキャー騒がれるのが当たり前と思っていた。女子高生とつきあったことも何度かある。

ティエリアは息を吸い込んで。

「誰が自殺少女だ!万死に値する。死んでこい」
それだけいうと、教室に戻っていった。

「え?万死?俺をこんなにこきおろすとは・・・面白い子だなぁ」
最悪な印象を刻んでやろうと思ったのに、ティエリアの思いとは裏腹に、ニールはティエリアに興味を抱いてしまったのであった。

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無題





あーうん。なんだろう。もう30分もかかってないよねこれ。

天使の鎖っていう題名の長編のイメージイラストだったやつ

http://arialira.parallel.jp/00921.html

ああうん、見直しとかしてないからどうなんだろうwww

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無題


なんか赤いピアスのSSがついてたゆんたっちの刹那。

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無題



サボテンダーとティエリア。このサイトジャボテンダーとかサボテンダーがおおいので。

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たまには。




過去イラストですけど、現在OOコンテンツで見れないみたいなのでUPしてみる

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過去の

過去のOOログを小説にあげてみたのですが文字化けしとる、、

FTPソフト使ってないからタグがどこかでエラーおこしてる可能性が

しかしどこがだめなのかわかんないww

しばらく過去ログはプログで見てくださいな ごめんなしいい

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二人のティエリア「婚約指輪」

大破したデュナメスのコックピットから出て、アリーアル・サーシェスに銃の標準を合わせる。

そして、引き金を引く。

「はは・・・・今度は、俺がティエリアを置いていくのか。・・・でも、ティエリアの元にいける」

血を吐きながら、ロックオンは想う。

NO6のティエリア。ロックオンをひたすら慕い、微笑みを浮かべていたティエリア。ついに、恋人扱いはできなかったけれど、NO6のティエリアも心の何処かで愛していた。それは、失ってしまったNO8のティエリアへの愛とは違う、友情のような愛情。恋人に向ける愛情ではなかった。
それでも、NO6のティエリアは満足してくれていた。

「今・・・いくから」

そっと、地球に手を伸ばす。

掴もうとしても、掴めない青い星。

テロが憎くて、ソレスタルビーイングのガンダムマイスターになった。結局、していることはテロ行動と似ていた。だが、武力介入でテロが根絶する夢は持っていた。

無重力の中、体が闇に向かっておちていく。
ポッ、ポッ。

ロックオンの体を、緑の光が包み込んでいく。
発光して、宇宙に溶けていく。

「    」

「ああ・・・・そこに、居たのか」

「ロックオン。いきましょう。一緒に」

ロックオンが愛したNO8のティエリアは、そっと背中に翼を広げて、ロックオンの冷たくなっていく体を包み込んだ。

「暖かいな。そうだ、これ渡すよ。俺の指にはめてくれ」

NO8の透けた体のティエリアの指には、キラリと婚約指輪がはめてあった。

ロックオンが、血を吐きながらゆっくりと懐から取り出した、ロックオンの分の婚約指輪を受け取って、ティエリアは優しく微笑えんだあと、少し悲しそうにロックオンの指に婚約指輪をはめる。

「結婚・・・・式・・・・できなかっ・・・た・・・・許してく・・・れ」

「もういいんです。何もかも。さぁ、一緒にいきましょう。遠い場所へ」

バサリと、ティエリアの翼がエメラルド色に輝く。

そして、ポッポッと、光の泡となって、ロックオンの体と一緒に溶けていく。宇宙の深遠で。

宇宙に溶けていく。

二人が。

ロックオンとティエリアは緑の光となって、宇宙から消えようとしていた。



「ロックオン・・・・そうか、いってしまうのか。ティエリアと」



残されたNO6のティエリアは、涙を零しつつも、どこか幸せそうだった。

消えてゆく。

二人が。

この世界から、遠い場所に。

二人は、とても幸せそうだった。

この世の終わりがきても、もう離れることはない。二人のティエリアとロックオン。ロックオンがとったのは、NO8の最初のティエリア。後継者のNO6のティエリアとは愛を結ばなかった。
まるで、それがNO8のティエリアとの約束事のように。

二人は宇宙に溶けていく。

蛍の光のように、淡く。

透けたティエリアの体も、物質界にあるはずのロックオンの体も。

螺旋を描いて、光の滴となって消えていく。

そして、宇宙の深遠には静寂だけが残された。




「愛してる」

「僕も」



囁きは、深遠の奥深くで一度交わされたあと、アストラルの世界へと消えていったのだった。

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二人のティエリア「NO6」

ロックオンは、しばらく自室から出なくなった。
だが、静かなティエリアの葬儀には出席した。 白い花で埋め尽くされた棺桶。そこに、綺麗な顔で微笑んだままのティエリアが横たわっていた。

皆涙を流しながら、思い思いに、花を棺桶に添えていく。
ロックオンは、白い百合の花をティエリアの棺に添える。ロックオンの指には、婚約指輪が光ったままだった。 
 
もう、きっと誰も愛さないだろう。
ティエリア以外を愛することなどない。 断言できるほどに、ティエリアだけを愛していた。二人で描いた未来図は、描かれることのないまま終焉を迎えてしまった。

「お別れだ、ティエリア」

棺桶の棺が閉じられ、ティエリアは宇宙に流されていく。
その姿が見えなくなるまで、ロックオンはその場を動かなかった。 ロックオンは、しばらくの間暗かったが、1か月経つ頃には見かけはいつものロックオンに戻っていた。

ティエリアの遺品はそのままだ。ティエリアが大好きだったジャボテンダーの抱き枕は、棺桶には入れなかった。ティエリアの生きていた証が欲しかった。だから、置いたままだった。 緑のシャツも、ピンク色の明るいカーディガンも、まだロックオンの部屋のクローゼットにかけられたままだ。

戦闘は続いている。いつまでも、喪に服した気分のままでいられないのが現状。

そんなある日、スメラギ・李・ノリエガが新しいガンダムマイスターを紹介した。

「新しいヴァーチェのガンダムマイスター、ティエリア・アーデよ」

「ティエリア?」

「そう。ティエリアはデザイン・ベイビー。イノベイター。複数いるの。欠けて計画に支障がないように、人工の羊水の中で何人かが眠っている。以前死んだティエリアは、NO8。この子はNO6よ。名前はティエリア・アーデを継承させるわ」

「はじめましてというべきかな?久しぶりです、ロックオン」

以前と変わらぬ、けれど微笑みを浮かべた、ヴェーダに頼っていた頃とは違う、ロックオンと付き合っていた頃と変わらぬティエリアの笑顔がそこにあった。

「命を弄びやがって。だが、お前さんとは初対面だ」

「そんなことはありえない。僕は、NO8の記憶を継承している」

つまりは、新しいティエリアは、以前の亡くなってしまったティエリアの記憶があるティエリアということになる。

「ロックオン、部屋に遊びにいっても?」

「だめだ。お前さんは、どんなに同じ顔でも、記憶を継承していようが、俺が愛したティエリアじゃない。お前さんとは初対面だ。お前さんは俺の恋人じゃない」

「そうですか。では、そうふるまいます」

刹那とアレルヤは、以前のティエリアと同じように、新しいティエリアに馴染んでしまったが、ロックオンは頑なに拒否し続けた。

新しいティエリアがどんなに微笑んでも、微笑み返すことはなかった。 だが。 新しいティエリアのヴァーチェを庇って、ロックオンは利き目を負傷する。それをティエリアは気にかけて、ロックオンと過ごすようになった。

でも、ロックオンはNO6のティエリアを、以前のNO8のティエリアのようには扱わなかった。 遺品に触らせることは許したが、心を開くことはしなかった。

「お前さんは俺のティエリアじゃない。そのことは心に置いておいてくれ」

「了解です」

ティエリアは従順だった。
ロックオンの傷を気にかけて、部屋にやってくるが、ロックオンはNO6のティエリアと同じ部屋で寝ることはしなかった。
ロックオンが愛したティエリアは、NO8だけなのだから。 たとえ記憶を継承していようとも、同じティエリアでも、同じ顔、同じ体をしていても違うのだ。

存在が、違う。

「ティエリア・・・・・今頃、天国で俺を見てるか?俺は守る。お前だけを愛すると決めたんだ。例え同じティエリアがいても、それはお前さんじゃないから」

ロックオンは、NO6のティエリアに魅かれることはなかった。仲間は驚いていた。NO6のティエリアと恋人同士になるものだとばかり、皆考えていたのだ。

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肉(1期)

そこはティエリアが大嫌いな地上だった。

スメラギ・李・ノリエガが考えたミッションプランに必要な情報を仕入れるために、ロックオンとティリアの二人は中国とかつては呼ばれていた大地に足を踏み入れた。

市をぬけた場所で、ソレスタルビーイングの、ある情報を持った一人と落ち合うことになっていた。

しかし、その商店街が並ぶルートが、ロックオンには平気でも、ティエリアには恐怖そのものの場所になっていた。

首のない鶏。豚。牛。もしくは首がついたままの。

逆さになって、商店街の軒先にぶら下がっている。

魚だって、市の中に新鮮そうなものがずらりと並んでいる。

ギクシャクと、ティエリアは涙目で足を進める。

「大丈夫か、お前さん」

「へ、へへへへへへへ平気だ」

へという数が多すぎる気がする。よほど気が動転しているのであろう。

ティエリアとて、地上でも生活するようになって、原型を留めた魚料理や、海鮮類にはある程度なれた。だが流石に鶏や牛や豚まで慣れたわけではない。

そんなものが、市の軒先にさかさまになってぶら下がっている光景など、考えたこともなかった。
一生見る機会がないものと思っていた。

「ロ、ロックオン手をつないでも?」

「ああ、構わねぇけど。ほんとに大丈夫か?顔色悪いぜ」

「へ、平気です」

ガタガタ。
手から伝わる、震え。

「しゃーないな」

ロックオンは、ティエリアを横抱きにすると、いきなり駆け出した。

「ロックオン!?」

「しっかりしがみついてな!」

「はい」

ティエリアは目をぎゅっとつぶって、ロックオンの背中に手を回す。

そして、ロックオンは行きかう人を器用によけて、市の外まで駆けた。

けっこうな距離を走ったが、ティエリアの軽い体重を持ち上げて走るくらい、ロックオンには難なくできることであった。

「ああ、あそこにいるのがCBの情報屋だ」

ティエリアは、それでもぎゅっと目をつぶって、ロックオンにしがみついたままだ。

「お前さん。ほんと怖かったんだな」

「僕にこわいものなどありません!」

「はいはい」

そっと降ろされて、ティエリアはきょろきょろと辺りを見回し、もう市から完全にぬけたた居住区の地域に入ったことを確認すると、ため息を長くついた。

「もう、二度とこんな地域の市には足を踏み入れるものか」

はぁ~~。

まだ涙目だ。

その目をロックオンの手で払われて、ティエリアの体の震えがおさまった。

「さて、ミッションといこうぜ」

「はい」



こうして、ティエリアの人生で初めてみた、逆さのなった鶏、豚、牛はその日の悪夢にまで出てくるほどショックな出来事であった。

悪夢を見た。

そういうと、ロックオンはティエリアを優しく包み込んでくれた。

もう一生、あんな光景を目にすることはないだろう。

海鮮類でも、未だに原型の留めているものに固まることがあるのに、鶏とか豚とか・・・・逆さになってるなんてありえない。
そういう文化圏だと理解しても、許容できないものがある。
いっそ、武力介入して軒先に並ばないようにしたい。
そんな馬鹿なことを一人考える。



「ちゃんとついててやるから。いい夢見ろよ」

「はい。おやすみなさい」


ロックオンの部屋のロックオンのベッド。決して広くないその寝台。布団からはロックオンの匂いがした。
ティエリアは、ジャボテンダーをベッドから落として、ロックオンに包み込まれたまま、二人で丸くなって眠るのだった。

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射撃(3期)

ドン、ドン。
小さな音と火薬の匂い。

射撃訓練場で、ロックオンは腕がなまることがないように射撃の訓練をしていた。隣には、ティエリアが同じように銃を構え、発砲する。

姿勢は整っている。手もぶれていない。

小刻みに動く的の中央より右上を射抜く。ちょうど、心臓がある位置だ。

「ティエリア、ティエリア、命中、命中!」

ハロが、ティエリアのいる床の近くをコロコロと転がって行った。

「こーらハロ、それは俺の台詞だ!」

ティエリアは、まだ射撃を続けていた。

終了のブザーがなり、的が近くによってくる。

正確に射抜けたのは3つ。7回発砲して、残り4つは的の中心から離れた人間でいえば手足のあたりをかすっているかんじだろうか。

「やはりあなたには適いませんね」

ティエリアは、ただでさえも重い銃をコトリと台の上に置いた。

「ティエリア用にカスタムしてない銃だからな。俺用のだから。それでここまで撃てれば大したもんよ」

にっと笑って、ロックオンはティエリアの頭を撫でる。
ティエリアは、無言で目を閉じた。

次に開ける前に、唇が重なる。

ロックオンの片方の目は眼帯がされたままだ。ティエリアを庇ってできたその傷は、眼球そのものが致命的で、すでに手術で摘出してある。流石の医学でも、目の再生はまだできない。

「あなたの目がちゃんと見えれば、こんなことには」

ロックオンの的は7つ中2つ外れていた。彼の昔の腕を考えれば、信じられないことである。

ティエリアは、離れていく唇に手で触れて、それからロックオンと目をそらせる。

流石のロックオンも、片目だけでは昔のように全ての的を、正確に射抜けなくなっていた。それが自分のせいであると誰よりも分かっている。

愚かなロックオン。でも優しいロックオン。

「ロックオン……ニール」

「なんだ?」

「ごめんなさい」

「もういいって。遠い昔の話だろ?何年も前のことだ。もういいんだよ、ティエリア」

「それでも、僕はあなたに無傷でいてほしかった」

「生きてるだけじゃだめか?」

「いいえ!いいえ!あなたが生きていると知った時、どれほど僕は・・・」

「だから、さ。もういいんだよ、全部。ソレスタルビーイングである俺もライルもアレルヤも刹那も。みんなみんな、抱えるもんもってここにまた集ってるんだからさ」

「僕は、あなたの示唆した未来通りに時を動かせただろうか?」

一人、首をかしげる。

サラサラと紫紺の髪が、ロックオンの手から滑り落ちていく。

「ああ。刹那と一緒に歩んできてくれただろ。ここまで」

「はい」

手を握られる。

ロックオンの意志を継いだ刹那。そしてリーダーシップをとったティエリア。それについてきてくれたアレルヤ、そしてたくさんの仲間たち。

もう、この世界に戦争はほとんどない。

彼らガンダムマイスターの出番はない。それでも、ソレスタルビーイングは存在し続ける。世界をそっと見守りながら。

「重いことはもう考えなくていいんだ。それより腹減った。食堂行こうぜ」

ロックオンは銃を台にしまうと、ティエリアを置いて射撃訓練室を出た。

「待ってください!」

慌ててティエリアがあとを追う。

サラサラと、紫紺の髪が宙を舞う。

「そんなに気にしてるなら、今日はティエリアの驕りな」

「かまいませんが。でも、一緒に食べましょう」

やっと、ロックオンの背中に追いついた。ティエリアは、振り返ったロックオンに手を握られて、食堂へと足を向けるのであった。


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