難しい
夕鈴と名付けたもう一羽の雀がお亡くなりになりました。
口の中に血がたまっていたので、えさをつまらせたか何かだとおもうのですか。
もともと弱かったらしいんですけど、残されたもう一羽もいつ死ぬのだろうとそればかり考えてえさも少量を時間かけてあげて、飲み込むのを確認して水を与えてと時間かけまくりです。
夕鈴のかわりになればと、桜文鳥を買ってきたのですが、これがおやじの逆鱗にふれて怒られた。。。。
今ペットだらけなもんで。
文鳥かうよーとはいっておいたんですけど、許可した覚えないといわれてパシーン(^ω^⊂彡☆)) ω )・;'.、 = ◔ ◔
結局はまぁ、もうペットショップに戻すこともできないので育てる許可もらいました。
ペットの数へらさないといけないといわれました。
薬のせいで眠すぎて夕鈴のお墓を一緒に作りにいく約束だったのに寝てしまって、おやじが墓をつくりにいってしまったので、それも無責任だと怒られました。
庭が土ならよかったのに。
遠くまでいかないとお墓つくれる場所がないんですよね。
5日だけとはいえ育てたからにはお亡くなりになったら、お墓つくらないと。
願わくばもう一羽の朝鈴さんが無事大人に成長してくれるといいです。
夕鈴と再び名付けた桜文鳥は、おなかすくと自分で口を大きくあけてせがんでくるので、こっちは大丈夫そう。二羽でよりそいあってあったかそうです。
は~~~
絵ラフを5月のはじめにかいてCGにしようとか思いながら、スキャナすらいれてない、、、
OOの更新もとまってるし。12年だしなぁ。作品がかなり古くなってきたしなぁ。
まぁ気が向いたときにまた更新します。
まったりまったり。
サチさん
アルトネリコやりたいけどまだ、かったワイルドアームズクリアしてない。。。
小説も途中で止まっている。
最近はアイオンばっかりしてるんですけど。
おととしはコウモリでしたけど、今度は雀のひなをおやじが拾ってきまして。
むろん巣から落ちたやつです。
飛べない幼鳥ですね。
放置しておくと餓死か猫にやられるかんじしかなさそうな。おやじも優しいのお。そういう小動物みると保護してしまうのだよね。
むろん世話は全部俺がすることになるんですけど。
電話で雀のヒナ拾ったけどどうするって聞かれて、即答で「育てる」って答えました。
昨日の8時に我が家にやってきて、すりえとタンパク質のためにミールワームパウダーというのと、ごますりのやつで細かくした小鳥のえさを混ぜて、水でねったものを、とがらせた割り箸で口の中に強制的につっこんで、昨日と今日の朝まで食わせてました。
どんだけが適量かわかんなかったんですけど。与えたのは大目だと思ったら、少なかったみたい。
今日の昼以降自分からがっついてくれるようになってくれて、欲しいだけ食べてくれるのでその分は助かる。満腹度がわかんないからなぁ。
しっかし、腹へるとチュンチュンなくんですけど。その頻度がすごい。
15分に1回はチュンチュンいってる。ネットで調べた限りでは1~2時間に1回でいいってかいてたんですけどね。
あまりにチュンチュンいいだすとエサあげに没頭。
全ての作業放棄。
雀は野鳥なので、30日以下までの保護飼育に許可はいらないのですけど、それ以上になると許可がいるのでとろうかと思います。
おやじはもう放鳥については、無理だと分かってるので、放鳥はできればしてあげたいけどできないかんじかなぁ。
このまま無事育ってくれればの話ですが。
餌付けされたヒナが放鳥されても生き残ることはできないのですよね。
名前は来る前からきめてた。呼ぶことはないけどー。
鋼鉄の華っ柱っていうサンデーのコミックが好きで、そのヒロインの朝涼(あさすず)って名前いいなぁと思って、文字をかえて、朝鈴(あさすず)と夕鈴(ゆうすず)
オスかメスかも分からないよ!
しばらく飼育日記だよ!
久しぶりがこんな記事ですかパシーン(^ω^⊂彡☆)) ω )・;'.、 = ◔ ◔
いっぱい泣いた。
その前の日に様子が急におかしくなって、目が片方閉じていて、よろよろしていた。
動物病院に連れて行こうか迷ったけれど、様子から寿命のようだったのでそっとしておいた。
水だけとりあえず飲んではくれた。
よろめきながらえさ食べて生き延びようとしていた。
でももう老衰の年齢なんだろう。よろめきながら立ち上がるたびに「もういいよ、動かなくていいよ」って語りかけた。
まるくなって弱く動きながら、俺はそっとしておいた。
たまになでた。
最後を看取るのも飼い主のつとめだと思う。
死にそうになった時一番ハムスターの中でかわいがって、なついていてくれたせいもあってた、いっぱい泣いた。
次の日、命の灯火は消えて冷たくなっていた。
やっぱり泣いた。
おやじと一緒に、少し遠い公園の奥の木の下に墓をつくりにいった。
庭にさいていた蘭をつんで、冷たい亡骸をもって、スコップで墓のための穴をほっているとまた涙が止まらなかった。
母を亡くした時もよく泣いた。
きっと俺は、いつか父にも先立たれる。
それは分かっている。でも、今は一緒にいてくれて嬉しい。
俺は寂しさを紛らわすように母が亡くなってからペットを家族としてウサギとかモルモットとかまで家族の一員にした。
世話が大変といえばそうだけど。
でももう家族なんだし。
おやじがいった。埋めたあとで、「母ちゃんと向こうで出会ってな」と。
俺はあの世も天国も信じていないけど、そうなればいいなと思った。
周囲のたんぽぽをつんで、墓の前においた。
そしてさよならを告げた。
ここなら、土に還っていくだろう。
そして緑へとなっていくんだ。
節操がないといえばウソになるが。亡くなって2代目を買おうと決めて、父が許してくれたので本当は同じ白い子を買おうと思っていたのだけど、キンクマハムスターにほれていて、キンクマハムスターのオスをかった。
また家族が増えた。大きな子なので、毎日野菜を刻んで小さなケースにいれてあげている。たくさんたべる元気な子だ。
家にやってきたとき、かみつかれた。
どんくらいって、じゅうたんに血のしみができるくらい血がいっぱいでて、痛覚はあるけれどハムにはかまれなれているのであまり痛くはなかった。
亡くなったジルフェのケースで飼育をはじめた。
名前はキンクマ+初代のじるふぇを合体させてキンフェwww
ジルクマもかわいいがキンフェでいい。いやジルクマもいいな。まだ迷ってるw
キンクマはなきごえをあげない上に、おっとりした性格っぽい(かみつくけどww)で、動きものろのろしてるなんともマイペースな子だ。
今はもうかみつかない。
長生きしてくれればいいと思う。
亡くなったジルフェは1年9か月半生きた。ジャンガリアンの寿命は1年半~2年少しくらいなので往生したほうだと思う。3年生きる子もいるらしいけど。残ったもふもふ(すでに2万の手術を受けさせた後。現在生後1年9か月)も大部腰が曲がってきて一日中寝てる。少しでも長く生きてくれたらうれしい。
ペットはいつか死に別れる。でも、いないと不安になるんだ。
母がいなくなって俺はペットを飼うことで母を忘れようとしているのかもしれない。
どの子もかわいい家族だ。おやじもうだうだいいながら、スポンサーだし(エサ代出してくれる)ちょっとした世話もしてくれる。野菜を気がむいたときあげたり。おれが定期的にあげてるけど。
キンクマさんはなんか野菜を毎日切り刻んであげてる特別っぽいが、野菜ケースは他の子の中にもいれたりしてみんな食ってくれってかんじ。
あー。うだうだするのはやめよう。創作もしないといけないし。
パシーン(^ω^⊂彡☆)) ω )・;'.、 = ◔ ◔
パシーン(^ω^⊂彡☆)) ω )・;'.、 = ◔ ◔
花帰葬を2日かけてプレイして全エンディングコンプリート。
泣ける泣けるとどこでもみたんですけど全然泣けなかった。
ストーリーはよかったと思う。
世界設定とかいい。
音楽の志方あきこさんが最近大好きでアルトネリコもするつもり。
花帰葬の影響受けまくった新しい小説を書き出しているのだけど、プロローグ終わって止まった。
どう続けようと。
プロットねぇから悩むなぁ。
とりあえずプロローグみたいなのが普通の1章だったので、展開があまりに急すぎるかなと、20Pだった分を40~50Pまで加筆する作業いってきます!
(╬゚皿゚)ギリィ
更新してません。
あいさつにもいってません。
アイオン(MMO)ばっかりしてます。
更新続きしないとねぇ。
とりあえず生きてますよ~。
サチさんお返事全くなくてすみません(><)
いきてます~~~。
出会いは突然に⑦
気を失ったティエリアは、保健室で目を覚ました。
額にひんやりと水で冷えたタオルが置かれていた。
「僕は・・・・」
そうか、あの後眠るように意識を手放したのかと、反芻するようにゆっくりと起き上がる。涙が、ぽたぽたと、保健室のベッドのシーツに零れた。
「ごめん、なさい・・・・」
「どうした?」
ティエリアが起きたのに気づいたのか、横で椅子に座ってうたた寝をしていたニールの瞼が開いた。飛び込んでくる鮮やかなエメラルドグリーンの双眸。
「ごめん、なさい。好きになって、ごめんなさい」
「なんで謝るんだよ?」
「だって―――」
ティエリアは涙を零してシーツを掴むと、そのままうなだれた。
「だって・・・・・・僕には、人を愛する権利なんて、ないから・・・」
くしゃりと、頭を撫でられて、目を瞑る。零れる涙は止まらない。
「泣くなって」
「ごめんなさい・・・」
「謝るなよ。俺がお前を最初に好きになったんだから。それに、人を愛する権利がないとか、そんなことないさ」
「でも、僕はリジェネを殺した」
また、頭を撫でられた。
「・・・・・・・・」
しばらくの沈黙。その先を促そうかとニールは逡巡したが、やめておいた。
語りたいのなら、自分から話してくれるはずだ。無理にはやめておいたほうがいいと。
優しくティエリアの頭を撫でた後、頬に手をあてて、ニールはティエリアに触れるだけのキスをした。
「らしくないぜ。元気だせよ。もう放課後だ、一緒に帰ろうぜ?」
「うん・・・・」
すでにニールはティエリアの荷物も、刹那がまとめて持ってきてくれたのを受け取っていたし、自分の荷物も担当授業が全て終わって、午後には1時間しか授業がなかったのに、帰ることなく荷物だけまとめて保健室で、ティエリアが目覚めるのを待っていた。
同じように、刹那も待っていたのだけれど、先に帰宅してしまった。
彼なりに気を遣ったつもりらしい。
そのまま、しばらく二人は沈黙したまま動かないでいた。
優しいニール。まるで春の太陽のように。眩しくて、暖かくて。
心がふわりと浮かんでいるような心地にとらわれてしまう。
「一緒に帰ろうか。今日は、電車なんだ。もう落ち着いただろ?無理ならタクシー呼ぶぜ」
「あ・・・・大丈夫です。自分の足で歩けます」
ニールとティエリアは、一緒に保健室を出ると、そのまま学校の校庭に出て、歩き出す。空を見上げると、綺麗な茜色に染まっていた。同じ色に染まるニールの横顔を見て、それからまた空を見上げる。
学校の門をくぐり、建物の影を落とす道路をてくてくと静かに歩いていく。
ティエリアは、鞄をニールの頭に向かって放り投げた。
「ぶべ!」
それは目標を誤って、ニールの顔に直撃した。べしっといい音がして、落ちた鞄をニールが拾い上げる。
「ちょ、お前なんなんだよ!」
「付き合って下さい。僕と、真剣に。あなたが好きです」
夕焼け色に染まるティエリア。サラサラと風に流れる髪をかき上げて、ティエリアはニールを見つめていた。夕日と同じ色の瞳で。スカートが翻る。白い太ももに視線をやると、お日様模様のパンティがちょっとだけ見えた。
あ、ラッキー。
頭の端でそんなことを考えながらも、気づかれないように、真剣な表情を崩さないニール。
「マジ?本気?俺のプロポーズ受けてくれんの?」
車が排気ガスを撒き散らしてクラクションを鳴らす音が、耳障りだった。
「婚約しよう」
「ぶっ」
ティエリアは、右手を口にあてて吹き出した。
てっきり「いいぜ」とかそんなありきたりの台詞が返ってくるのだと思っていた。ニールはすでにティエリアにプロポーズしているし、好きだとも言っている。
ティエリアとはデートしたり、一緒に刹那もまじってだが、昼食をとったりするし、家に遊びにくることまであるニール。
家庭教師としてとか口先だけで、あれだけ固いアレルヤが許すのも、元々ニールはアレルヤの先輩にあたる、同じ大学の出身で友人でもあるからだ。
だから、アレルヤは安心してアレルヤとティエリアが住む家に、遊びにくるニールを心から歓迎して迎え入れる。大抵、アレルヤも刹那も一緒の部屋で雑談したり、DVDを見たり、ゲームしたり、ほんとに家庭教師のように勉強を教わったりと、ニールが下心からティエリアの家にくることはない。
アレルヤも、安心して、デート相手が7つも年上のニールだと知っても、止めない。彼なら、ティエリアを幸せにしてくれると信じているのだ。
ニールは一見、見かけのせいでチャラついたように見えるが、女性との交際は真剣なもので、今まで何度か好きになった女性に交際を申し込んだが、断られたり、ふられたりしてきた。
まさか、未成年を本気で好きになるとは、彼自身も想像もしていなかった。交際する限りは、遊びでなく真剣に。高校を卒業するまでは、肉体関係は持たないつもりだった。
「じゃ、婚約成立でいい?」
「どうして、そこまで話が飛んでいくんですか!」
ティエリアは頭に手を当てている。
「結婚しようぜ」
「話が飛びすぎです・・・・いいですよ。結婚しましょう。ただし、僕が高校を卒業してから。それから、僕は大学にも進みますので」
「OKOK。卒業と一緒に結婚式な!」
冗談で、言っているのだと思った。付き合うのはOKだろうが、まさか結婚とか。先のことすぎて、ティエリアも考えていなかった。
「あなたは、口が軽いですね」
「本気だぜ?」
沈んでいく太陽が逆行になって、ニールの表情は見えなかったけど、抱き寄せられて、そのまま唇を重ねられた。
「ん・・・・」
大人のキス。まだされたことのないその感触に、背筋が泡立った。
それから、額にキスをされて、手を繋ぎあって歩きだす。
帰ったら、アレルヤと刹那になんて言おう?ニールと婚約したなんて、いえるだろうか。ニールは本気なのかな?
ちらりとニールの横顔を見ると、彼はニカリと笑って、ティエリアの指に指を絡めてきた。それがなぜか酷く恥ずかしくて、ティエリアは頬を赤らめる。
茜色に染まっているから、どうか彼に気づかれていませんように。
二人は、そのまま電車に乗り、それぞれの駅で別れて帰宅した。
出会いは突然に⑥
「よ、ティエリア、おはよう。昨日のデート楽しかったぜ。今日もかわいいな」
ぽんと肩を叩かれて、ティエリアは赤面した後、微笑み返す。聞こえてきた声の持ち主、ニールに向かって。
「おはようございます。かわいいとか、そんなこと、ありませんから・・・」
「あれ、髪のリボン曲がってるぞ?」
「え?」
「かしてみろ。俺が直してやる」
ニールはティエリアの頭を撫でてから、曲がっていた髪のリボンを直してやった。
「あ、ありがとう・・・」
「ほい、できた。うん。今日もまた後でな!」
いつもは万死としか返さないティエリアが、笑顔であいさつを返してくれた。これもデートとかお昼を一緒に食べたり、放課後話をしたりしている成果だろうか。
隣にいた刹那は、驚いて言葉も出ない様子だった。
かの堅物ティエリアが、あろうことか男性、しかも年上の教師に、いきなり肩を叩かれて挨拶されて微笑を浮かべて挨拶を返している。
2時間目が終わったあとの、10分間だけの小休憩の時間だった、今は。ティエリアと刹那は、二人で視聴覚室に向かって移動していたのだが、ニールがすれ違ってこちらに気づいてやってきたのだ。
ティエリアは気づいていなかったようで、肩を叩かれた時少し吃驚した様子であったが、頬を染めて少し俯いてから、長い睫を伏せていたのをやめて、笑顔で挨拶を返した。
「大王だ。アンゴルモアの大王が降ってくる・・・世界の破滅だ!!!俺がガンダムだ!!」
刹那は頭を抱えて蹲った。最後はいつもの台詞になっていたが。
「ちょ、なんだそれは!!」
「ティエリアが、異性に、異性に笑顔で挨拶を返した・・・・しかも、口説いていたあのニールに・・・ああ、アレルヤが知ったら、きっと卒倒する」
「何だそれは」
そこまでおかしいものか?
周囲を見ると、みんな固まっていた。
あの、堅物の美少女ティエリアが、ニールに笑顔で答えた。事務的なものでなく。しかも頬を染めて、潤んだ瞳でまるで恋をしているように。
「うおおおお、恋だ!!」
「恋ね!!」
「恋だわ!!」
みんな叫びだす。なんなんだ、このみんなのテンションは。そんなに可笑しかっただろうか。ただ、挨拶を返しただけなのに。
刹那は変わらず不明な言葉を叫んでいる。
とりあえず、刹那を引き摺って、その場から逃げるようにティエリアは視聴覚室に入る。
昼になって、屋上で昼食をとっていると、いつものようにニールが混ざってきた。
ドクドクと、早鐘の如くティエリアの心臓は脈打っている。
なんだろう、この感情は。気恥ずかしくて、ニールのほうをまともに見れない。
「お、エビフライげーっと」
ティエリアのお弁当箱から勝手にエビフライを拝借していったニールに、ティエリアは文句も言わない。
「あなたのせいだ!!」
急に立ち上がると、弁当箱を床において、びしっと指をつきつけるティエリア。
「へ?」
「あなたのせいで僕は病気になった!どうしてくれる!!」
「病気って・・・どんな?」
「あなたの声を聞くと、ドキドキする。顔を見ると頬が、体中が火照るように熱くなる。笑顔を見ると胸が苦しい!これは・・・・うう、病院に行かないと」
ニールはにんまりと笑って、ティエリアの手を握る。
「バーカ。それは恋だよ」
「鯉か!?錦鯉か!?」
「違うって。恋したことないのか。じゃあ初恋か?お前さんは、俺に恋しちまったんだよ」
「錦鯉してしまったのか!!」
「ま、まぁなんか違うけど似たようなものだ」
「責任をとれ!!」
びしい!
指をつきつけたティエリア。刹那は腹を抱えて声もなく笑っている。
「いいぜ。付き合おう。本気で、な」
「え?」
ふわりと、ティエリアの体が宙に浮いた。ニールはティエリアを横抱きにすると、あろうことか屋上でティエリアにキスをした。
「万死・・・・」
いつもなら、威勢のいい声とビンタが飛んでくるはずだった。でも、ティエリアは顔を手で覆って動かなくなった。
「あれ?」
「死ぬほど恥ずかしい」
ぽつりと漏れたティエリアの声に、ニールは苦笑するのだった。
脳裏に、幼い頃のリジェネの顔が過ぎる。リジェネがずっと好きだった。でも、一緒にいてドキドキとか体が熱くなったりとか、そんなことを経験したことはない。
リジェネを愛している。今でも。
でも、こんな激しい感情は今まで抱いたことがない。
幼馴染のように育ったリジェネに抱いた感情は、そう、例えるなら半身が側にいるような。
「リジェネ・・・」
「何か言ったか?」
「ううん、なんでもない」
交通事故にあいそうになった瞬間、彼だけでも助かってほしいと、リジェネを、ティエリアは助けようと突き飛ばした。こちらにきた車は、ティエリアの目の前ギリギリのところで止まった。あの時、ティエリアがリジェネを突き飛ばさなければ、リジェネはトラックにはねられることなどなかっただろう。同じかすり傷くらいですんだはずだ。
リジェネは重症を負いながらも、ティエリアに最後まで気にするなといって庇ってくれた。今でも、彼の最期の言葉を思い出す。
「君だけでも、幸せに――」
病院のベッドで、包帯にまみれたリジェネの、掠れた最期の言葉。
思い出すだけで目頭が熱くなる。彼を殺したのは、僕だ。
僕だけ幸せになる権利なんてない。リジェネの人生を奪っておきながら。でも、葛藤する。誰も愛する権利などないと思っていた自分の心に切り込んでくるように、浸入してくる柔らかな暖かさをもった、ニールに全てを委ねたいと。
「僕は誰かを愛しても、いいですか?僕は、あなたを愛しても、いいですか?」
ティエリアは、涙を流しながらニールの翠の目をのぞきこんで、そのまま気を失った。
出会いは突然に⑤
約束の時計台の前で二人は落ち合う。ちょうど12時を知らせる鐘が鳴った。
「べ、別に」
ふんとあらぬ方向を向くティエリア。だがいつになくかわいいワンピース系の服装に、髪を結い上げてリボンで綺麗にアクセントをつけている。
すれ違う人が、ティエリアの姿を見ては振り返る。どこぞのアイドルか?などという言葉まで聞こえたきた。
「は、早くいきましょう。さっきからじろじろ人が見てきて、不快だ」
それは、ティエリアがもつ容姿ゆえのものなのだろうが。
適当な格好をしていても一目を引くのに、少女らしいティーンズファッションでまとめあげて、少しお洒落をすればアイドルのように見えなくもなく。
服装一つで、こうまで人の雰囲気は変わるものなのかと、ニールは楽しそうに心の中で感嘆した。
「似合ってるよ。その服」
「あ、ありがとう・・・」
もじもじした様子で、小さな声が返ってくる。
ニールはティエリアの手をとって歩きだした。
「ちょ!」
「映画見に行こうぜ。チケットとってあるんだ。もうすぐ始まる」
「な、いきなりか!」
ティエリアの言葉も聞かないで、ニールが誘導していく。
ニールの手をはたいてから、ティエリアはとことことニールの横に並び映画館に向かって歩いていった。そして2時間ばかりのラブストーリーを見終わってカフェに入った。
「うう、グス・・・・」
「なんであなたが泣くんですか」
「だって、パトラッシュが!!」
一体どんな映画を見たんだお前ら。そうつっこみたくなる。
「ううう。パトラッシュ、いい子だったのに!!」
涙をハンカチでふくアイリッシュ系の男性に、店内の視線が集まる。あまりの恥ずかしさに、ティエリアは耳まで真っ赤になっていた。
初めて異性とデートしたのはいいが、なぜ連れの男がデートで、映画を鑑賞してそのストーリーで泣くのだ。普通立場が逆じゃないのか?
「も、もう泣き止んでください。チョコレートパフェおごってあげるから」
「おう・・・チョコレートパフェ2つくださーい」
泣き止んだニールは、アルバイトであろうメイドの人にチョコレートパフェを2つ頼んだ。
「何故2つ・・・」
「無論、ティエリアの分。お金は全部俺が出すって。無理すんなよ」
「う。まぁそういうことなら」
バイトはしていないので、小遣いはあるが無駄遣いできるほどはもっていないティエリア。
それからカフェでチョコレートパフェを食べて、適当に会話しながら公園を散歩して、ティエリアが新作のゲームが見たいとゲーム店に入って出る頃には、もう日が傾きかけていた。
「今日は楽しかった。思ったより」
「それは何よりだ。またデートしようぜ」
「ふん」
あらぬ方角をむいたティエリアの顎に、ニールの長い指が絡まった。
「ん?」
触れるだけの優しいキス。
「な、ななななな!!!」
「ごちそーさん。また明日学校でな。それから俺と付き合うの、真剣に考えといて。俺本気だから」
「な、なななな!ば、万死ーーー!!!」
はははと走り去っていくニールの後を睨みつけて、ティエリアは顔を真っ赤にして震えていた。
ニールに振り回されている自分が、嫌でないのに違和感を覚えつつも、彼と付き合うのもありかと頭のどこかで冷静に考える。
教師と生徒というタブーはあるが、2ヶ月もすればニールは教師ではなくなる。そのあたりはあまり問題はないと思う。
「万死・・・なんだから」
キスされた唇を指でなぞって、夕焼けの紫に染まりゆく空を見上げた。
出会いは本当に突然に。そしてデートまでしてしまった。学校でも毎日のように会話して、一緒にお昼までとっているし、休日には家にまで遊びにくるニール。
「人を好きになれるのかな?」
夕焼け雲を見ながら、ティエリアは寂しそうに呟く。かつて、ティエリアには好きな人がいた。従兄弟で、自分とよく似た容姿をしていた少年だった。幼い頃は将来結婚するんだとまで約束しあった。
「ねぇ、リジェネ。どう思う?」
リジェネという名の、まるで双子の片割れのような少年だった。彼を殺してしまったのはティエリア。交通事故だった。
今から5年前のことだ。それほど昔のことではない。
もう、誰も愛する資格などないのだとずっと決め込んでいた。
刹那やアレルヤのことは好きだけど、友人として家族としてだ。
異性としての恋愛など、もうすることもないだろうと思っていた。
「リジェネ、君は笑うかい。あんな人に、心惹かれていく僕を」
リジェネが優しく微笑み返している気が、した。
出会いは突然に④
今日もまた、何気ない一日がはじまる。
学校につくと、職員室の前でニールとすれ違った。ニールは手を振って名前を呼んできたけど、即効で無視してやった。
昼休みになると、なぜかニールが教室にやってきて弁当箱をティエリアの席の隣で広げ出す。
「何しに来たんですか」
「いや、昼飯くいに」
「職員室で食べたらどうですか?」
「いやー、ティエリアと一緒がいいから」
あけられた弁当箱の中身を、さっと刹那がはしで玉子焼きをかっさらっていく。
「あー、こら!!」
「ふ。俺はガンダムだ」
そういう刹那の弁当箱はOOガンダムがプリントされていた。
「うりゃあ」
刹那の弁当からウィンナーをさらっていくニール。
これで一応講師、まぁ臨時の教師なのだから信じられないとティエリアは思った。
「隙あり!!」
ティエリアの弁当箱から、エビフライをかっさらっていったニール。
ティエリアは無視して弁当を食べ終えると、電子辞書を開いて勉強を始めた。
「もうちょっと昼くらい休憩すればいいんじゃないのか?」
ニールの言葉に、ティエリアは耳をかさない。
電子辞書で出される問題を解いていく。
少し難易度をあげてみると、ちょっと回答までに時間がかかった。
「ふっ」
「ぎゃあああああああ」
ニールが、ティエリアの耳に息をふきかけたのだ。
「あなたという人はあああ!!」
ニールのネクタイを掴みあげる。
「万死に値します!」
頭をべしっとはたいてやった。でも、ニールは嬉しそうだ。
「もっかい、もっかい!!」
「マゾですか、あなたは!?」
「いや、ティエリアだから嬉しいの」
この果てしなくチャラついたようにしか見えない教師は、何を言っているのかティエリアには全く理解不可能だった。
「このチャラ男がああ!!」
「はい、チャラ男ですけど今はティエリア一筋です」
「は?」
「俺と付き合わない?」
手をとられて、キスをされた。
全身にさぶいぼが立った。
「ちゃらいわ!」
べしっとまた頭を叩いてやった。
「うーん。俺真面目なのに」
ニールはちょっと悲しそうだ。
あ、かわいいかも。ティエリアはそう思った。
しょげた大型犬のようだ。
でも、所詮はニール。すぐに方向を変えてくる。
「じゃあ、また今度デートしよ!」
「はぁ?なぜあなたと?」
「だって好きになったんだから仕方ない」
「あなた、教師でしょう?」
「うーんでも講師だし、2ヶ月だけだし」
「ちゃらいわー!万死に値する」
はたから見ていると、ただの漫才にしか見えなかった。でも、刹那はガンダム雑誌を読むのに必死だし。
教室に他に人はいたけど、みんなニールとティエリアのやりとりを聞いて笑っていた。
ニールの言葉が本当だとしても、ティエリアなら誰も嫉妬しない。
それだけティエリアは美しく、勉強もできて完璧に近かった。
クラスの男子の中でダントツで、好きな子NO1。でも性格はかなり男。おまけにいつも刹那がいる。
刹那とティエリアは付き合っているようで付き合っていない。ただの友人だ。
そこにニールという、これまた複雑なのが入り込んできた。
「とりあえず、今週の日曜の12時に、時計台で会おうぜ!」
「誰があなたなんかと!!」
とかいいながら、日曜になるとちょっとだけお洒落をして、11時前には家を出て時計台前にいくティエリアの姿があった。
アレルヤは恋したのかなぁとか思いつつ、ティエリアを見送る。
ちなみに、刹那は今日もティエリアの家に勝手にあがって、ゲームをしていた。
出会いは突然に③
先先と前を歩くティエリアをニールは追いかける。
「待てよ~」
ティエリアは少しだけ振り返って、そして無視して今度は走り出した。全速力で。
「ええ!?」
いきなりそうくるとは思っていなかったが、ここは意地になってニールも走って追いかけてみた。
「はぁはぁ」
「ぜぇぜぇ」
二人は公園のところまでくると、ベンチに座って荒い呼吸を繰り返す。
こんな全速力で走ったのは久しぶりかもしれない。
すぐ隣にあった自動販売機からニールはコーラを2つ買うと、1つをティエリアに渡した。
「ありがとう」
照れながら、ふたをあけて中身を口にする。
朝からなんの水分もとっていなかったので、喉はかわいている。
ほぼ一気に飲み干した。
できればウーロン茶系がよかったのだが、文句はいえない。もらったものなんだから。
「お前さん、俺のこと嫌いか?」
「別に・・・・」
じっと地面を俯いて、それから空を見上げた。
「ならデートでもするか?」
「いいが別に。買いたい服があるんです。ついてきますか?」
おお、誘いに乗った。
あんだけ嫌そうにしてたのに。
こうしてティエリアはニールを伴って買い物に出かけた。
「なぁ。これってデートっていうより」
「正解。ただの荷物もち」
あっちの店に入って新作の服だの、挙句にはゲーム店にはいって新しいゲーム機の購入、本屋に入って文庫本に漫画の新刊、ハードカバーの本とか。
いろいろかったティエリアはすっきりとした気分だった。
いろいろもたされたニールはちょっとどんよりとした気分だった。
「家まできてください。飲み物くらいだしますから」
「あ、うん」
ティエリアの後ろをたくさんの荷物を抱えながら歩く。
それから30分くらいして、ティエリアの家についた。
一戸建ての家だ。くる途中で話したが、親は海外赴任中で大学生の従兄弟と一緒に住んでるらしい。
「おかえり、ティエリア」
「おかえ・・・り?」
「ただいま」
なぜかニールがそう言っていた。
刹那は途中で首を傾げている。
「ティエリアが・・・・男拾って帰ってきた」
「拾ったとかゆうな!これ臨時の英語の講師。町でこえかけられて・・・荷物もちにさせた」
「やっぱりデートじゃなかった」
がっくりとするニールに、アレルヤが中に入るように促してくれた。
中に入って、リビングルームでティエリアが入れたアッサムの紅茶を飲みながら、アレルヤが冷蔵庫を物色している。
「刹那、ケーキ食べた?」
「食べた」
「もう、勝手に食べないでよ。お客様に出そうと思ったらなかった!」
「ケーキに名前を書いておかないほうが悪い」
刹那の思考はいつもずれている。
簡単なクッキーを出されて、ニールもそれを口にする。
なんだろうかこの沈黙は。
「賑やかな家だな」
「別に」
ティエリアは一瞥をくれてやると、また沈黙する。
紅茶を飲む静かな音だけが聞こえる。
「臨時講師、おい、格ゲーはできるか?」
服の袖をひっぱられる。真っ赤な目をしたうさぎみたいだった。刹那は大きな目でニールを見上げると、ティエリアも誘って部屋で格闘ゲームをしはじめた。
「うっしゃ、勝った」
「くそ、負けた!」
街角で出会ったティエリアにデートの誘いをした最終結果が、隣家に住んでる刹那の部屋とされている客室で一緒に格闘ゲーム。
夕暮れになり、そろそろニールは帰る時間になった。
「また遊びにくるよ」
「もうこなくていい」
「遊びにくるならガンダムのガンプラ買ってきてくれ」
「ろくなもてましもできなくてすみません」
ペコリとアレルヤがお辞儀して家の中に戻っていく。刹那は自分の家に戻った。
「その・・・この前は、線路に落ちた時は、たすけて、くれてありがとう」
ニールは少し瞳を和ませるとティエリアの頭をわしゃわしゃ撫でた。
「な、何をする!」
「いやなぁ。かわいいと思って」
「かわいい?」
ボンと、ティエリアの顔が紅くなる。
「また遊ぼうぜ」
「もうごめんだ!」
まるで台風のような男性だった。
なのに、なんでこんなに胸がかき回されるのか、ティエリアには分からなかった。
出会いは突然に②
「彼女、かわいいね。暇?」
いつものように男に声をかけられる。
無論ティエリアは無視して歩き続ける。
お洒落をしなさいとアレルヤが煩いので、ロングスカートとちょっと歩きにくい服装で出てきたのがダメだった。歩くのに疲れる、この服装は。いつものようにズボンかジーンズにするべきだった。
アレルヤはかわいい服をみると絶対ティエリアに似合うからと、長身のティエリアに似合いそうな服を買ってきてはティエリアにプレゼントしてくれる。
全部、元はアレルヤのバイト代から出ているので拒否するのも悪いし。
こんなことなら、アレルヤか刹那でも連れて一緒にくるんだった。
でもアレルヤは課題があるからと部屋にこもっていたし、いつものように家に遊びにきていた刹那は買ったばかりのプレステ3のソフトに夢中になってプレイしていたし。
元はといえばあのゲームはティエリアのものなんだが、刹那はお構いなしでプレイする。
刹那はもう一人の家族だ。
よく家に泊まるし、ティエリアを異性としてみていない。
ティエリアも性格が男なので、刹那を異性としてみていない。アレルヤのことは少し気になるといえば気になるけど、その程度の問題。
恋とかそんなのどうでもいい。
道ばたに転がった石程度のものとティエリアは思っている。
ああ、早く帰って、刹那と新しくかった格闘ゲームで刹那をこてんぱんに叩きのめしてやろう。それとも二人でプレイのできるアクションRPGでボスでも倒そうか。
刹那がプレイしているRPGのシナシオの続きを、刹那がプレイするとを見ながら漫画を読むのもいいな。
女の子、という意識にかけたティエリア。
遊ぶ友達は男の子ばかり。大抵刹那の友達。女の子の友達もいるけど、会話の内容についていけない。昨日のドラマの俳優がかっこよかったとか、新しいアーティーストの新曲が良かったとか、ファッション雑誌のあの服が良かったとか。
新しく発売されたあの化粧品はいい、携帯で見れるあのイケメンのアイドルのプログ更新されてたよとか。
とにかく、内容についていけないし、面白くない。
一緒に行動してもなんだかかわいい店に連れて行かれるだけで、それを選んでキャアキャアいう彼女たちの心情が理解できないし、理解しようとも思わなかった。
「彼女、かわいいね」
「万死」
一言だけ与えて、ティエリアは道を進んでいく。
喉が乾いた。
どこかカフェかファミリーレストランで休憩しようかな。
「はーい、彼女かわいいね」
「万死」
「彼女一人?」
「万死」
「君、暇?」
「万死」
「あ、俺実はこういう者で」
「万死」
芸能プロダクションからのスカウトだった。
それさえも無視して、ティエリアは信号が赤に変わったので、そこで立ち止まった。
ティエリアの足を止めることができるのは信号くらい。
刹那がよくそういっていたのを思い出した。
「よ、一人?」
「万死」
「そんなつれないこというなよ」
「死ね」
「きっつー」
「なら声をかけるな」
男の顔など見てもいない。
「ティエリアちゃん」
「な」
なぜ名前を知っていると叫ぼうとして、ティエリアは振り返る。
そこにいたのは英語の臨時講師ニール・ディランディだった。
「あなたは街で少女をナンパするのか」
「いや」
「このロリコンめ!」
確か、ニールは24歳だった。
十代の少女をナンパするなら、ロリコンといってもいいかもしれない。
「いや、違うって。買い物の帰りにたまたまティエリアの姿見つけたから」
「そうか。僕はあなたに用はない。さようなら」
「ちょ、まじかよ」
信号が青に変わった。
先さき進んでいくティエリアの後を、ニールが追う。
「ちょっと待てってば!」
「嫌だ」
本当にティエリアは先へと進んでいく。そこで誰かとぶつかってよろけた。
「危ない」
倒れそうになるのを、ニールに腕を掴まれて、なんとか姿勢を直す。
「この手はなんだ」
ニールは急に立ち上がったティエリアの胸に手をあてていた。
「い、いやまじこれは事故!」
手が動く。モミモミ。
「あ、けっこう胸ある」
ピキ。
ティエリアの額に血管が浮く。
「万死に値する!死ね!」
バッチーン!ビターン!
往復ビンタを決めて、ティエリアは去っていった。
「なんつー気の強い・・・往復ビンタされたの初めて、ま、されても仕方ないけど」
ニールはぽかんとしてから、それから去っていくティエリアの後を追うために走り出した。
出会いは突然に①
「列車が参ります、白い線の内側までお下がり下さい」
ティエリアは、英語の勉強をするために、英語の電子辞書ノートに英語で出題された問題をタブペンで答えを書いていく。
ぼーっとしていた。
うかつだったといえばうかつだった。
今日も電車は満員だろう。
トン。
「え?」
誰かの手がぶつかって、ティエリアは気づくと線路の上に落ちていた。この駅に止まるはずの列車がだんだん近づいてくる。全身が恐怖で震えて動かなかった。
「大変だ、女の子が落ちたぞ!」
「大変だ!」
「誰か救出を!」
その声だけが大きく響いた。
「きゃあああああああ!」
誰かの耳を劈かんばかりの悲鳴。
ティエリアは目を見開いた。
あ、こんなところで死ぬのか。人生意外とあっけなかったなぁ。学力テストのために、駅で勉強なんてしなければ良かった。
そんな考えが脳裏に過ぎり、頭に両親のことや友人のこと、今までのことが思い浮かんでは消えていく。
ああ、これが走馬灯というやつか。
そんなことを冷静に考えていた。
ガタンガタン。
列車は急ブレーキをかけて止まった。
「何やってんだ!死ぬ気か!」
気づくとティエリアは、スーツ姿の男性に駅のプラットホームの、ちょうど電車とコンクリの間の空間。僅かばかりの空間に押し込まれていた。
「あ」
今になってがたがたと全身が恐怖で震え、涙が零れた。
「ひっく、ひっく、ああ・・・」
「参ったな」
男性にしがみついて、ティエリアは泣き続けた。こんな恐怖を感じたのは生まれて初めてだ。
こうしてティエリアは救助された。翌日の新聞にも載った事件。
ティエリアを助けてくれた男性は、何も言わずに駅の、ティエリアを心配して集まった人ごみに紛れていなくなってしまった。
ティエリアは念のためにと救急車で運ばれ、一日だけ精神が不安定になりすぎているために安静をとるように入院措置がとられ、次の日には無事に帰った。
「ただいま・・・」
「おかえり。心配したよ」
居候の従兄弟のアレルヤと、隣に住む刹那が家に来ていた。
「大丈夫か、ティエリア?」
「あ、うん・・・・」
刹那に抱き締められて、ティエリアは安堵のため息をもらす。
「勉強のしすぎじゃないのか」
「そんなことないよ」
刹那とは幼馴染で、男女の垣根さえこえた親友だ。
「今夕ご飯つくるから。刹那も食べてく?」
「ああ」
ティエリアの両親は海外赴任している。
ティエリアは現在高校2年生の17歳。隣の刹那も同じ高校に通う2年生だ。刹那はまだ16歳。
アレルヤは20歳で、大学生。
両親は一人暮らしになるティエリアが心配のあまり、従兄弟に頼んで面倒をみてもらうようになって、アレルヤとの生活が始まった。
そこに、いつものように隣家の刹那が混じって、3人はまるで本当の兄弟のように仲が良かった。
「名前、聞き忘れた」
「助けてくれた人?」
「そう。お礼したいのに」
「スーツ姿だった。多分アレルヤより年上」
「ふーん。でも同じ駅を利用してるなら、また会えるかもよ?」
「そうだね」
次の日、大学が休みのアレルヤに見送られて、刹那とティエリアは一緒に登校した。
駅で助けてくれた男性を探すが、それらしい人はいなかった。
やがて学校につくと、みんな心配して近寄ってきてくれた。普段は口を聞かないようなクラスメイトまでも。
「ありがとう、みんな」
「ホームルームを始めます。それから、交通事故で入院してしまったイオリア臨時講師のかわりに、新しい臨時講師の先生がきています」
みんなざわつく。
イオリア先生といえば、もう老年なのに、でもまだまだ元気いっぱいのおじいさんだった。みんなにも好かれていた。
ガラリと入ってきた臨時教師に、ティエリアは立ち上がって叫んだ。
「昨日の人!!」
「あー!昨日の自殺少女!」
二人に視線が注目する。
「なになに、知り合いなの?やだ、講師の先生かっこいい!」
アイリッシュ系の白人の男性だった。
「誰が自殺少女だ!たまたま誰かの手にあたって線路に落ちただけだ!」
ティエリアはまくしたてる。
「はいはい、ティエリアさん、講師の先生とお話がしたいなら後でね」
ティエリアは担任に注意されて真っ赤になって席に座る。
「えーと、俺はニール・ディランディ。交通事故で足をぽっきりいってしまったイオリア先生のかわりに1ヶ月だけこの学園で英語を教えることになった臨時講師だ。よろしくな!自殺少女もよろしくな!」
明るく挨拶する。
今思えば、出会いの仕方としては、最悪な部類だったかもしれない。
誰が自殺少女だ。
ティエリアの美貌は高校内でも有名だが、告白してくる男子はあまりいない。いつも側に刹那がいるせいだ。
アレルヤから、ティエリアに変な虫はつかないようにと刹那は言われていたので、高校でも親友としていつもティエリアの側にいたし、教室移動も一緒だ。クラスメイトは二人が付き合っていると思っているらしい。
だけど、刹那には隣クラスのフェルトという学級委員長のことが好きだし、刹那ははっきりいって、男女な性格のティエリアのことなど女としてみていないだろう。
二人はティエリアの家で、高校2年なのに同じ部屋で泊まることがあるくらい仲よしだった。二人は男友達のような関係だ。
そもそもティエリアは、自分が少女であるという意識も薄い。両親は男の子を望み、生まれてきたのはティエリアただ一人。小学校まで男の子として育てられた。
紫の髪にガーネットの瞳の美少女は、外見とは裏腹にツンデレで、性格もきつめだった。
英語の授業が終わると、ニール講師をとりまく女生徒たちからニールを奪いとり、その手をむんずと掴むと屋上までつれてくる。
「なんだ、愛の告白か?」
「助けてくれたことには礼をいいます。ありがとうございます。お陰で助かりました」
清楚な少女がそこにはいた。
「いやいや。気をつけろよ?こんなに美人でかわいいんだから」
頬に触れてくる手を、うるさそうにティエリアははたき下ろした。
「あれ?」
ニールは、いつも女生徒に囲まれキャーキャー騒がれるのが当たり前と思っていた。女子高生とつきあったことも何度かある。
ティエリアは息を吸い込んで。
「誰が自殺少女だ!万死に値する。死んでこい」
それだけいうと、教室に戻っていった。
「え?万死?俺をこんなにこきおろすとは・・・面白い子だなぁ」
最悪な印象を刻んでやろうと思ったのに、ティエリアの思いとは裏腹に、ニールはティエリアに興味を抱いてしまったのであった。
寝ぼけてます
ロックオンは、備え付けのバスルームの浴槽に湯をはって、そこに草津の湯の元をいれて、頭にタオルを乗せて上機嫌で歌っていた。
ティエリアと、同じ室内で生活しだして数か月。
もう、ちょっとやそっとのことでは動じなくなったロックオン。
それでもお風呂はたいてい別々だし、こうして一人でのんびり湯に浸かるのは気持ちよくてほろ酔い気分に似た心情になる。
小さい湯船にあひるなど浮かべて、他のマイスターが見たら「お前本当に24歳か?」とか甚だ疑問を浮かべそうな光景ではあったが、もともとこのあひるはティエリアのために買ったものだ。ティエリアはお気にめさなかったらしく。
「子供ではありません!」
と、ジャボテンダーでロックオンをしばいて、怒ってたそうな。
「ああ~~富士山の雪化粧~~~」
どこのかも分からない演歌をのりのりで歌っていたけれど、次の瞬間ロックオンは湯船の中に沈んでいた。がらっと浴槽の戸が開かれたかと思うと、まっぱのティエリアが入ってきて、いつものジャボテンダーをロックオンに向けて投げたのだ。
水分を吸って重くなったジャボテンダーの重量に、ロックオンは湯を飲む羽目になった。
あまりにも唐突すぎて、目が真ん丸になったロックオン。
「ティエリア?」
ティエリアは無言でシャワーを浴びだす。ロックオンなんてほんとに眼中にないってかんじで。
「おい、ティエリア?」
湯気で蒸気した真っ白な肌はほんのりピンク色に染まっていて、幼いティエリアの裸体を何度も見てきたというのに、どくんと心臓が高鳴った。
とうのティエリアは、シャンプーで頭を洗っている。
それを流して、体も洗い終わってから、堂々とロックオンの前に立って首をひねった。ちなみに、すっぱだかです、はい。
「なんですか?僕がシャワーを浴びるのに何か問題でも?」
「いや、恋人同士とはいえ、一応別々に風呂入るのが普通だし、なんていうかさ、せめてバスタオル巻いてくんねぇ?」
「どうして?風呂場では裸が普通なのでしょう?裸のどこがいけないのですか」
「いや、目の毒っていうかなんていうか、目のやり場に困るから」
ロックオンは視線を泳がせている。この幼い肢体を、時には彼が泣いて懇願するまで愛撫したことも数えきれない。平らな胸に、何もない下肢。それなのに腰はくびれ、細い手足に目がいってしまう。細い肢体をしているが、決して貧弱なものではない。中性がもつ独特のラインを描いていて、似ているとすれば思春期を迎える前の少女のようなかんじだろうか。
未熟すぎる体であるのは、ロックオンとて知っている。そして、彼の体が決して成熟しないことも。男でも女でも、ましてインターセクシャルでもないのだ。
「ティエリア、あのさ・・・・」
ロックオンの言葉は、途中で途切れた。紅をぬったようにあかいティエリアの唇に塞がれて、それに応えようとすると、ティエリアはシャワーの湯をロックオンの顔にかける。
「さからないでくださいね」
「お前から煽ったんだろうが」
もう一度、キスをするようなしぐさを見せて、微笑する。
「おあずけ」
くすっという笑みの小さな音が、まるで小悪魔のようで。彼は、ロックオンの頭のタオルを手にとってから、水分をしぼって、それで髪をまとめてから浴室から出て行ってしまった。
ちなみに、ジャボテンダーさんは風呂に残されたままだ。
「あーくそ。あとで絶対なかしてやる」
一人残されたロックオンは、湯の中にまた沈んでぶくぶくと泡をたてる。
そんなことがあって、ロックオンが風呂からあがり、夜になってからの話なのだが。
「はぁ?僕が煽った?あなたの入ってた風呂に入ってシャワーを目の前で浴びて、淫靡にキスして微笑んだ?ばかですかあなたは。脳みそ沸騰しましたか?」
ティエリアにさんざんこきおろされて、ロックオンはジャボテンダーが揺れる室内(ジャボテンダーを室内で干している)で、あんぐりと口があいたまま閉じることができないでいた。
「バカなこと言わないでください。僕はそんなことしていません。シャワーは浴びましたけど、何もしてません。ふーんだ」
子供のようにすねて、そのままベッドを占領されて先に寝られてしまった。
「・・・・・・・はい、寝ぼけてたわけね」
がっくりと、肩を落とす。
ティエリアは昨日完徹で、今日の朝から夕方にかけて惰眠をむさぼり続けていた。彼は低血圧で、なかなか起きてくれない。
一度おきても、歯を磨いたまま寝たりする。そんなティエリアは、寝ぼけた覚醒しきらない状態のまま、ただシャワーを浴びにきたのだろう。自分がおこした行動なんて覚えているわけがない。
歯を磨いたまま寝ていた時だって、注意して完全に覚醒した後に、歯を磨いたまま寝ていたと教えると、「そんなことするはずがない」と一蹴する始末だ。
まぁ、そこもティエリアのかわいいところなのだけれど。
この人ではない、イノベイドの恋人は本当に変わっている。ロックオンは苦笑しつつ、ティエリアが風邪をひかないように毛布と布団をきちんとかぶせて、空いている空間に自分も横になって、眠るのであった。
「愛してるよ。おやすみ」
深い眠りに入ってしまったティエリアの額にキスをして、その紫紺の肩まである髪を手ですいてから、消灯を消すと、室内は静寂に包まれて、そのままトレミーは今日も宇宙を静かに漂うのだった。
もきゅ!
ティエリアは紫紺の髪をサラサラと空気に流して、愛しのジャボテンダーさんを思い切り振り上げて、ロックオンに振り落ろしたかと思うと、今度はジャボテンダーでまるでバットのように空気を切った。
ガスっと最初に鈍い音が響いたかと思うと、次はすごい悲鳴が室内にこだます。
「ぎゃああああああ(>'A`)>ア゙ー!!」
床に倒れて、身悶えているロックオンは床を手でたたいて、もう片方の手で急所をおさえていた。
普通のぬいぐるみやら抱き枕のジャボテンダーならいいが、このジャボテンダー、中身に鉛が入っていた。そんな重い物をよくティエリアが振り上げることができるものだと普通は感心するのだが、頭の部分にだけ鉛が入って強化されているので、頭部以外はさして重くはない。
ティエリアにだって振り回して遊ぶことができる。
いつもの愛しいジャボテンダーとはまた違う、運動用の(どんなだ)ジャボテンダーである。
地上が嫌いな上に、訓練は受けれども他のマイスター、特にアレルヤのように身体を動かすことをあまり好まないティエリアのために、ロックオンが運動不足解消にとお手製で作った、いわば遊び道具なのであるが。
ぶんぶん振り回していれば、それで筋肉が動いて運動不足の解消となる。
それが、めりこんだ。
どこにって、ロックオンの急所、股間に。
そりゃ男だから痛いったらありゃしない。
その痛みを言葉に表すならまさしく(>'A`)>ア゙ー!!ってかんじだろう。
「ロックオン?ピクピクしてますね。大丈夫ですか?」
つんつんと、ティエリアが指でロックオンをつつくが、ロックオンは痛みのあまりに意識が遠のきかけていた。ジャボテンダーで股間を殴られて、気絶とかまじでありえないぜと胸中で悲鳴をあげる。
この痛みがティエリアにわかるのならと思うけれど、男でも女でもない中性のティエリアが分かるはずもなくて。
「踏んでいいですか?」
問いかける前に、すでに倒れたロックオンを踏んでいたティエリア。むぎゅむぎゅとその引き締まったロックオンの筋肉を踏む感触が心地よいらしい。ちなみに裸足である。
垣間見えるだけなら、ティエリアがロックオンの体を足でもみほぐしているようにも見えるけど、ただの興味本位で踏んでるだけときた。
「ぎぶ・・・・」
「ギブ&テイクですね?もう一発ほしいってことですね?」
これのどこがギブ&テイクだと、そこに刹那がいれば必ずつっこんだことだろう。アレルヤでもつっこみそうだ。
ティエリアは爽やかに、運動解消用のジャボテンダーでなんとか立ち上がりかけていたロックオンの股間をもう一回強打した。
「もきゅ!」
変な声が口からとびでる。そして、ロックオンはまさに音にするならバターン!と爽快な音を立てて床に沈んだ。白目をむいている。いつもの甘いマスクもこれでは台無しであるが、愛という名のスクリーンがかかっているティエリアには、いつものかっこいいロックオンが眠っているようにしか見えなかった。
ほんと、愛って恐ろしい。
翌日、ロックオンの部屋には「運動用のジャボテンダーで急所強打禁止」と二人以外が見たら、爆笑しそうな張り紙がされていましたとさ。
明けの明星
時間など、もはや無意味であるように思えた。
あれから何日経ったのかも、もう感覚さえ麻痺して分からなくなってきた。
ただ続くのは暗い宇宙と瞬く星の光。何百万光年と離れた星の光さえ、今はただの情報の数値だ。
仲間によって流された、自分の棺を見下ろす。
真っ白に塗装されて、信じてもいない宗教の十字架が中央に刻まれ、棺の背中の部分には、ティエリア自身が肩甲骨に持っていたGN粒子の輝きをもつ翼の刻印のようなものが刻まれていた。
意識を広げると、宇宙と混ざり合って、彼は背中に翼をはやした。翼の数は12枚。かつて天にこの人ありと謳われたあの有名な堕天使のようだと、真っ白な顔に自嘲的な笑みを刻む。身体は半分透けている。
ヴェーダとの融合を強制解除して、半身をヴェーダに残して、そして勝手に抜け出した。
そして、棺の中の、もう動くことはない器と一緒に宇宙を遊泳する。
ただ、ティエリアが最も愛した彼に出会いたくて――。
何か月探し続けただろうか。
もう自分の棺はどこかに流れていってしまった。あの器にはもう興味もないし、使うこともできないから、宇宙に流してくれた仲間に感謝をしつつも、彼は探し続けた。
また時間が経っていく。
飽きることもないような、宇宙の同じ景色が視界に飛び込んでくる。暗くて、そして星はまぶしい。ただ光と闇がある、静寂の世界。
地球と月の間はもう何往復もしたというのに、その先のまだ見たこともない暗闇の果てで、やっと見つけた。
「こんなところに・・・・寒かったでしょう」
暗闇の果ての、その狭間にある深淵で、彼は翼をはためかせてそっと、愛しい人の残骸を包み込んだ。
乾いた血が凍ったまま、額にこびりついていた。ヘルメットの中の顔は、今でも生きているように見えた。凍りついた肉体を包むパイロットスーツは、いつも見慣れた彼が着ているものだった。
閉じられた、エメラルドの瞳は隻眼で、ティエリアを庇って失った右目には黒い眼帯が痛々しそうに装着されたままだ。そのもう開かぬ手が、右手は何かを求めるように伸ばされているのを見て、涙があふれてきた。
きっと、この右手で地球に向かって手を伸ばしたのだろう。
生きたいと、彼は願ったのだろうか。
でも、そうであってほしいとティエリアは思った。
「ロックオン・・・・・」
愛しい人が生きていた、その器。魂を失った今となっては、ただの肉の塊であるけれど、それでもよかった。
ヘルメットの上から、ロックオンの凍った唇にキスをした。
涙がとまらなくて、それは光の泡となって宇宙の深淵に飲まれていく。
「やっと・・・・・見つけた。ロックオン。もう、放さない。このまま、永遠にここで眠ろう?」
ヴェーダには、必要な分の「ティエリア」という情報もイノベイドとしての意識体も残してきた。ここにいるティエリアは、ティエリアの欠片。
人として生きてきた、そのすべてできているのかもしれない。
「眠ろう・・・・・一緒に・・・・・」
ロックオンの遺体を暖かく抱擁しながら、そっとティエリアも目を閉じる。たくさんの思い出があふれてくる。人として生きた期間は短かったけれど、それでも後悔だけはしていない。
ロックオンを愛せて、愛されて本当によかったと思う。それが醜い感情でも、ロックオンにここまで固執するなんて、それが妄執でもなんでもいい。
ただ、会いたかった。もう一度だけ。
だから、眠ろう。
あなたと一緒に。
この明けの明星が見えるこの場所で。
ぎゅっと、ロックオンに抱き着いて力をこめると、その頭を撫でられるような感触を覚えた。
「ああ。やっぱり、あなたは・・・・・だから、大好きなんです」
にこりと、ティエリアは微笑んで、涙をこぼして、そしてロックオンの遺体と一緒に、まるで人魚姫のように光の泡となり、光の渦となってこの世界から消えてしまった。
眠ろうか。
一緒に。
いつか、またこの世界を生きるのもいいね。
柔らかなウェーブを描く髪に首筋をくすぐられて、光の泡沫となっていくティエリアは涙を流すのをやめた。
眠ろうか。
一緒に。
いつか、またこの世界をいきるのもいいな。
隻眼のエメラルドが、柘榴色の紅い瞳をのぞきこんでくる。愛している。そう唇が、音にならない音を刻む。ティエリアは、彼と深く唇を重ねて、そして人として存在していたそのティエリアは完全に愛しい人の魂と一緒に消えてなくなった。
「・・・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・・・・・。よかったね、ティエリア。人としての・・・・・」
ヴェーダの中で眠るティエリアはふと目覚めた。切り離した人としてのティエリアが、ロックオンの魂を見つけて一緒に逝ってしまったことに、安堵した。柘榴色を通りこして、刹那のような鮮血の真紅になった瞳を瞬かせて、残された悲しみをかみしめるわけでもなく、ヴェーダの中をたゆたうように、その情報を処理しつつ、移動する。
「僕も、愛しているから、ロックオン。イノベイドの僕もね」
刹那に向けけて、暗号で示した文章をおくった。先日刹那がヴェーダにアクセスし、ティエリアとコンタクトをとったのだ。
刹那も何か気づいているらしかった。
応答するティエリアが、あまりにイノベイドらしく、皆で仲良くやっていた頃の彼とは少し違うことに。
イノベイドとしてのティエリアは、またヴェーダの中で眠りについた。寂しくはない。
ロックオンとの思い出があるし、大丈夫。
一人ではないから。
そう、刹那もいる。
皆がいる。
ロックオンの心も、ともにいてくれる。
だから、安心して眠ろう。僕も。
おやすみなさい ロックオン
イノベイドでもある僕さえも、愛した人よ。