甘味魔
「わーい、甘味屋だ。何注文してもいいの、チカさん?」
「いいよ。だけど、一人で食べきれるのをね。僕は苺花ちゃんの食べ残しを食べる気はないからね」
浮竹と京楽は、甘味屋で珍しいカップルを見つけた。
否、カップルと呼ぶにはあまりにも年の差があるだろうか。片方は綺麗と表現できる綾瀬川弓親、もう一人はルキアと恋次の子、阿散井苺花だった。
苺花ははっきりいってとてもかわいい。美人なルキアに似ているが、髪の色は父親似で赤い赤銅色の髪をしている。
苺パフェを頼んで、美味しそうにほうばる姿を、弓親がとても優しい眼差しで見ていた。
「珍しい組み合わせだなぁ」
浮竹もつられて苺パフェを注文していた。ジャンボパフェを平らげたばかりなのに、その細い体のどこに入るのかと疑問を抱きたくなる。
京楽も、苺パフェを注文してみた。
「苺花ちゃんの師匠は班目副隊長だからね。いつも傍にいる綾瀬川3席と一緒に行動していても、おかしくはないね」
「あの年で、もう師匠がいるのか」
「なかなかの剣の腕だそうだよ」
この前、筋がいいと師匠に褒められて、とても嬉しそうにしていたんだと、ルキアが言っていた。
「朽木の子だから、将来ははっとするような美人になるなろうなぁ」
「そうだねぇ・・・」
席は離れていたけど、弓親が京楽と浮竹に気づいた。
「京楽総隊長、浮竹元隊長、こんにちわ」
「こんにちわ」
「ああ、こんにちわ」
「あー、シロさんだ」
苺花は、浮竹を気に入っている様子で、シロさんといって懐いていた。
「シロさんとチカさんてさぁ、男なのに美人さんだよね。どっちが美人なのかな?」
「そりゃ決まってるよ、僕でしょ」
弓親はナルシストだ。だが、確かに美しいし、着るものに気を配ったり、睫毛にや耳にアクセントをつけたりしてお洒落だった。
一方の浮竹といえば、長い白髪を結い上げていて、白いうなじが見えた。
「僕は浮竹のほうが美人だと思うけどねぇ」
恋人だから、余計に肩入れしてしまう。
「まぁ、どっちが美人かなんてどうでもいいよね」
弓親が、柔和な笑みを浮かべた。
「そうだよね。チカさんもシロさんも美人さん。それでいいよね」
苺花は、苺パフェを食べて終えて満足したのか、弓親と一緒に甘味屋から出て行ってしまった。
「男に美人というのも変なんだがなぉ」
「そうかい?僕はいつでも、浮竹が美人だと思っているよ」
恥ずかしい台詞をはかれて、浮竹は頬を赤らめた。甘味屋の他の客が、カップルである浮竹と京楽の言葉に耳を傾けている。
「今日はここまでにして、帰るか」
「もういいの?」
「苺花ちゃんと話せて満足したからな:」「
浮竹は、勘定を京楽の分までだした。
「おごるのに」
「たまには、俺にもおこらせろ」
そう言って、二人は甘味屋をでた、
「これからどうする?」
「暇だし、日番谷隊長のところにでもいくか」
浮竹は、日番谷を気に入ってる。なんだかんだといって二人の仲はけっこういい。
「浮竹は、ほんとに日番谷隊長が好きだね」
「同じシロちゃんだからな」
名を呼んだわけでもないのだが、シロと名付けた小鳥が空を飛んでいた。
チチチチ。
小さく鳴いて、浮竹の肩に止まる。
「ああ、お前もシロちゃんだったな」
小鳥は京楽の肩にもとまり、そしてまた大空を飛び立っていった。
「いいよ。だけど、一人で食べきれるのをね。僕は苺花ちゃんの食べ残しを食べる気はないからね」
浮竹と京楽は、甘味屋で珍しいカップルを見つけた。
否、カップルと呼ぶにはあまりにも年の差があるだろうか。片方は綺麗と表現できる綾瀬川弓親、もう一人はルキアと恋次の子、阿散井苺花だった。
苺花ははっきりいってとてもかわいい。美人なルキアに似ているが、髪の色は父親似で赤い赤銅色の髪をしている。
苺パフェを頼んで、美味しそうにほうばる姿を、弓親がとても優しい眼差しで見ていた。
「珍しい組み合わせだなぁ」
浮竹もつられて苺パフェを注文していた。ジャンボパフェを平らげたばかりなのに、その細い体のどこに入るのかと疑問を抱きたくなる。
京楽も、苺パフェを注文してみた。
「苺花ちゃんの師匠は班目副隊長だからね。いつも傍にいる綾瀬川3席と一緒に行動していても、おかしくはないね」
「あの年で、もう師匠がいるのか」
「なかなかの剣の腕だそうだよ」
この前、筋がいいと師匠に褒められて、とても嬉しそうにしていたんだと、ルキアが言っていた。
「朽木の子だから、将来ははっとするような美人になるなろうなぁ」
「そうだねぇ・・・」
席は離れていたけど、弓親が京楽と浮竹に気づいた。
「京楽総隊長、浮竹元隊長、こんにちわ」
「こんにちわ」
「ああ、こんにちわ」
「あー、シロさんだ」
苺花は、浮竹を気に入っている様子で、シロさんといって懐いていた。
「シロさんとチカさんてさぁ、男なのに美人さんだよね。どっちが美人なのかな?」
「そりゃ決まってるよ、僕でしょ」
弓親はナルシストだ。だが、確かに美しいし、着るものに気を配ったり、睫毛にや耳にアクセントをつけたりしてお洒落だった。
一方の浮竹といえば、長い白髪を結い上げていて、白いうなじが見えた。
「僕は浮竹のほうが美人だと思うけどねぇ」
恋人だから、余計に肩入れしてしまう。
「まぁ、どっちが美人かなんてどうでもいいよね」
弓親が、柔和な笑みを浮かべた。
「そうだよね。チカさんもシロさんも美人さん。それでいいよね」
苺花は、苺パフェを食べて終えて満足したのか、弓親と一緒に甘味屋から出て行ってしまった。
「男に美人というのも変なんだがなぉ」
「そうかい?僕はいつでも、浮竹が美人だと思っているよ」
恥ずかしい台詞をはかれて、浮竹は頬を赤らめた。甘味屋の他の客が、カップルである浮竹と京楽の言葉に耳を傾けている。
「今日はここまでにして、帰るか」
「もういいの?」
「苺花ちゃんと話せて満足したからな:」「
浮竹は、勘定を京楽の分までだした。
「おごるのに」
「たまには、俺にもおこらせろ」
そう言って、二人は甘味屋をでた、
「これからどうする?」
「暇だし、日番谷隊長のところにでもいくか」
浮竹は、日番谷を気に入ってる。なんだかんだといって二人の仲はけっこういい。
「浮竹は、ほんとに日番谷隊長が好きだね」
「同じシロちゃんだからな」
名を呼んだわけでもないのだが、シロと名付けた小鳥が空を飛んでいた。
チチチチ。
小さく鳴いて、浮竹の肩に止まる。
「ああ、お前もシロちゃんだったな」
小鳥は京楽の肩にもとまり、そしてまた大空を飛び立っていった。
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紅瑠璃(IF
チチチチチチ。
小鳥が鳴いていた。
「ん・・・もう、朝か」
窓から勝手に入ってきた小鳥は、浮竹の裸の肩に止まった。
「京楽、おい京楽」
揺さぶると、ぴくりと隣にいた同じく裸の男が目覚めた。
「今何時だい?」
「6時だな」
「あと2時間はねれる。おやすみ」
そういって、一人だけまた夢の中に旅立ってしまった。
「怠惰なやつだな」
もう、それにも慣れてしまった。いつもは浮竹も惰眠を貪るのだが、昨日は早めに寝たせいか眠くなかった。
睦みあったのは、夜の9時頃から。湯あみも終わらせて、面倒なので裸で眠ってしまったのが11時前。
睦みあったとはいえ、かなり軽くだったので、行為自体は1時間とかからなかった。
「服着なきゃ・・・・」
襦袢だけとりあえず身につけて、クローゼットを開ける。タンスもあったが、服がしわになるからとクローゼットをよく利用していた。
いつもと同じ色の、黒い死覇装に、何もない白の羽織を着る。
顔を洗って、歯を磨く。髪を櫛でといて、軽く結うと七緒が隊首室のほうから顔をのぞかせた。
「浮竹元隊長、京楽総隊長は起きていますか?」
隊首室にもベッドはあるのだが、寝室のほうがベッドが大きいので、いつも京楽と浮竹は、寝室のベッドで共に眠りについた。
「まだ寝ている。起こそうか?」
「いえ、まだ6時ですし。8時に起こしてください」
隊長や総隊長の朝は早い・・・・ようで、普通だった。大体7時頃におきて1時間ほど余裕をもってから、8時に朝食をとって8時半から仕事をしだす。
副隊長はもう少し遅くて、9時からの出勤だ。
中には7時頃から仕事をしだす元気な隊長副隊長もいるが、大体が8時以降から仕事に・・・主に、書類整理など雑務に精を出すのだ。
浮竹は、待っているシロに、餌をいれた皿をだす。窓から、クロも入ってきた。
窓はいつも開けっ放しにされている。小鳥たちのためだ。
「京楽、おい起きろ京楽」
「んーあと5分」
そう言って、腰に抱き着いてくる京楽の頭をはたいた。
「あいたっ。・・・・・おはよう」
「もう8時過ぎだぞ」
「え、まじで?やばい、七緒ちゃんと6番隊のことについて話し合う予定だったんだ」
いそいそと服を着て、適当に髪を髭を整える。昔のように笠をかぶって、京楽は執務室に向かった。
そこで、七緒とあれこれ会話をしだす。長引きそうだったし、邪魔をしては悪いと思い、一人で一番隊の隊舎を後にした。
「日番谷隊長、いるかい?」
そっと、10番隊の執務室に入ってみると、時間が経っても背が伸びる様子のない、小柄な体を文机に向かわせ、何かを書いていた。
「ああ、浮竹か。暇で遊びにきたのなら、松本とでも遊んでろ」
「隊長、それひっどーい。あたしだって、ちゃんと仕事してるんですからね」
みれば、松本も書類を整理していた。
「年のくれだしな。いろいろ処分しとかねぇといけない案件が多くて、嫌になるぜ」
2時間ほど、お茶菓子を食べたり、松本が入れてくれたお茶を飲んでいたり、最新の女性死神協会の会誌などを読んで時間をつぶしていると、日番谷がやってきた。
「今日の仕事は終わりだ。珍しいな、一人なのか?京楽のおっさんは?」
「仕事で、伊勢副隊長と話し込んでいた。暇なのでここに遊びにきたけど、ここも暇だな」
「まぁ、浮竹は仕事の邪魔をあまりしてこないからいいが・・・京楽と一緒にはくるなよ?」」
昔、二人のせいで執務室を何度も半壊させた。
「甘味屋にいかないか?」
日番谷を誘うと、日番谷はいいぞと答えてくれた。
それが嬉しくて、頭を撫でると
「子供扱いするんじゃねぇ」
と怒られてしまった。
「隊長!浮竹元隊長も!あたしも一緒に甘味屋にいきたい」
「お前はまだ整理する書類が残ってるだろ!仕事しろ、仕事を!」
「あーん、こんな仕事はやく片付けたいー」
浮竹は、日番谷と並んで歩きだす。
甘味屋につくと、すでに人だかりができていた。
「ああ、そういえば今日はアイスの新商品が発売で・・・違う甘味屋にいこうか」
「ああ、別にどこでもいいが・・・・」
全ての戦いが終わって、尸魂界も変わった。特に瀞霊廷は、現世の家電を取り入れたせいで、急激に変わりつつあった。
「ここ、何気に好きなんだ」
「こんなとこに甘味屋が?」
流魂街の外れにある、その甘味屋は、閑散としていたが、数人の客がいた。
「浮竹様!またきてくださってのでありんすか」
色街の、遊女の言葉遣いの女性がお冷とおしぼりをもってきてくれた。
「知り合いか?」
日番谷が、浮竹に聞くと浮竹は頷いた。
「昔、身請けした遊女で、カナという」
ブーーーーーーー!
日番谷がお冷を吹き出した。
「お、お前、京楽に知られたら!」
「大丈夫だ。京楽の金で身請けした、幼馴染なんだ。中流貴族と結婚したけど、姑との関係がうまくいかずに飛び出して、今に至る」
「浮竹様、こちらの方はどなたでありんすか」
「10番隊隊長の、日番谷冬獅郎だ」
日番谷が名乗った。
こそこそと耳打ちしてくる。
「本当に、ただの幼馴染なんだな?浮気相手だったら、俺があのおっさんに殺される」
「はははは日番谷隊長は心配性だなぁ。浮気相手なら、京楽が日番谷隊長を手にかけるまえに、京楽が彼女を惨たらしく殺している」
笑顔で怖い話をされて、日番谷は身震いした。
「お汁粉を二つ。後おはぎと羊羹も二つずつ。あと持ち帰りで甘納豆を一人前」
適当に注文していく浮竹を見る。
「お前のおごりだと思って、金をもってきていないが、持ち合わせはあるな?」
「いや、俺も忘れた」
「おい!」
「つけがきくし・・・まぁ問題はない」
そう言い切られて、注文された品を食べていく。
「ありがとうでありんす。お勘定ですが・・・・・」
「これで、足りるだろうか」
浮竹は、紅瑠璃を見せた。尸魂界でしかとれない、とても珍しい石で、小粒ではあったが注文した内容を30回頼んでもおつりが出る。
「こんな高価なもの!お代はいいでありんすよ」
「いいから、受け取ってくれ。暮らしの足しにしてほしい」
そう言われて、カナという元遊女は紅瑠璃をもらい、手をふった。
「またきてほしいでありんす~」
「ああ、またくる」
「あの紅瑠璃、どうしたんだ?」
「京楽にもらった金で買ったんだ。何か、細工物を作って浮竹にあげようかと思って。でも小粒だったし、もっといい石が手に入って完成したから」
「お前と京楽の金使いには、眩暈がする」
甘味屋をでると、そこには京楽がいた。
ぞくりと、背筋が凍る気がした。
「もう、なるべくあの子と関わらないって決めてたんじゃないの?」
周囲を威圧するような霊圧に、日番谷は言葉をなくした。
「甘味屋で働いていただけだ。やましいことは何もない」
「声、聞こえてたよ。紅瑠璃をあげたんだって?石の意味知ってて?」
「変わらぬ愛、だろう?ここにちゃんとある」
そう言って、大粒の紅瑠璃をはめこんだ首飾りを、浮竹は京楽に与えた。
「これは・・・・・・?」
「拙くてすまない。俺が作ったんだ。変わらない愛を、お前に」
「浮竹!」
京楽は、浮竹を抱き寄せて口づけを交わした。
「日番谷隊長は、昔のように斬魄刀を解放しないのか?」
「もう、お前らのいちゃつきで解放する斬魄刀なんてねーよ」
それだけ、日番谷も大人になったのだろう。何より、一度大切なものを失った京楽が哀れすぎて、総隊長でありながら、幽霊のような存在に、憐れみを覚えすぎていた。これ以上ないくらいの嬉しそうな笑みを刻む京楽の幸せを、つぶすような真似はするまいと、日番谷も彼なりに気を使っているのだ。
「いやぁ、嬉しいねぇ。普通のプレゼントも嬉しいけど、手作りとかもう本当に嬉しいよ。このまま、高級料亭にいこう。日番谷隊長もおいで」
「おい、俺はお前らがいくような、高級料亭にいける金なんてないぞ」
例え、給料が出ても、とても使うような額ではないので、首を振ると、京楽は嬉し気こういう。
「僕のおごりだよ」
「のった!」
京楽の選ぶ高級料亭に外れはない。甘味ものでお腹はあまり減っていないが、久しぶりに高級な美味しいものをただで食べれる機会なのだ。
無碍にすることもないだろう。
ちゃりん。
紅瑠璃で作られた首飾りはいつまでも京楽の首にかけられて、紅色の光を放ち、石の言葉通りの変わらぬ愛を奏でるのであった。
小鳥が鳴いていた。
「ん・・・もう、朝か」
窓から勝手に入ってきた小鳥は、浮竹の裸の肩に止まった。
「京楽、おい京楽」
揺さぶると、ぴくりと隣にいた同じく裸の男が目覚めた。
「今何時だい?」
「6時だな」
「あと2時間はねれる。おやすみ」
そういって、一人だけまた夢の中に旅立ってしまった。
「怠惰なやつだな」
もう、それにも慣れてしまった。いつもは浮竹も惰眠を貪るのだが、昨日は早めに寝たせいか眠くなかった。
睦みあったのは、夜の9時頃から。湯あみも終わらせて、面倒なので裸で眠ってしまったのが11時前。
睦みあったとはいえ、かなり軽くだったので、行為自体は1時間とかからなかった。
「服着なきゃ・・・・」
襦袢だけとりあえず身につけて、クローゼットを開ける。タンスもあったが、服がしわになるからとクローゼットをよく利用していた。
いつもと同じ色の、黒い死覇装に、何もない白の羽織を着る。
顔を洗って、歯を磨く。髪を櫛でといて、軽く結うと七緒が隊首室のほうから顔をのぞかせた。
「浮竹元隊長、京楽総隊長は起きていますか?」
隊首室にもベッドはあるのだが、寝室のほうがベッドが大きいので、いつも京楽と浮竹は、寝室のベッドで共に眠りについた。
「まだ寝ている。起こそうか?」
「いえ、まだ6時ですし。8時に起こしてください」
隊長や総隊長の朝は早い・・・・ようで、普通だった。大体7時頃におきて1時間ほど余裕をもってから、8時に朝食をとって8時半から仕事をしだす。
副隊長はもう少し遅くて、9時からの出勤だ。
中には7時頃から仕事をしだす元気な隊長副隊長もいるが、大体が8時以降から仕事に・・・主に、書類整理など雑務に精を出すのだ。
浮竹は、待っているシロに、餌をいれた皿をだす。窓から、クロも入ってきた。
窓はいつも開けっ放しにされている。小鳥たちのためだ。
「京楽、おい起きろ京楽」
「んーあと5分」
そう言って、腰に抱き着いてくる京楽の頭をはたいた。
「あいたっ。・・・・・おはよう」
「もう8時過ぎだぞ」
「え、まじで?やばい、七緒ちゃんと6番隊のことについて話し合う予定だったんだ」
いそいそと服を着て、適当に髪を髭を整える。昔のように笠をかぶって、京楽は執務室に向かった。
そこで、七緒とあれこれ会話をしだす。長引きそうだったし、邪魔をしては悪いと思い、一人で一番隊の隊舎を後にした。
「日番谷隊長、いるかい?」
そっと、10番隊の執務室に入ってみると、時間が経っても背が伸びる様子のない、小柄な体を文机に向かわせ、何かを書いていた。
「ああ、浮竹か。暇で遊びにきたのなら、松本とでも遊んでろ」
「隊長、それひっどーい。あたしだって、ちゃんと仕事してるんですからね」
みれば、松本も書類を整理していた。
「年のくれだしな。いろいろ処分しとかねぇといけない案件が多くて、嫌になるぜ」
2時間ほど、お茶菓子を食べたり、松本が入れてくれたお茶を飲んでいたり、最新の女性死神協会の会誌などを読んで時間をつぶしていると、日番谷がやってきた。
「今日の仕事は終わりだ。珍しいな、一人なのか?京楽のおっさんは?」
「仕事で、伊勢副隊長と話し込んでいた。暇なのでここに遊びにきたけど、ここも暇だな」
「まぁ、浮竹は仕事の邪魔をあまりしてこないからいいが・・・京楽と一緒にはくるなよ?」」
昔、二人のせいで執務室を何度も半壊させた。
「甘味屋にいかないか?」
日番谷を誘うと、日番谷はいいぞと答えてくれた。
それが嬉しくて、頭を撫でると
「子供扱いするんじゃねぇ」
と怒られてしまった。
「隊長!浮竹元隊長も!あたしも一緒に甘味屋にいきたい」
「お前はまだ整理する書類が残ってるだろ!仕事しろ、仕事を!」
「あーん、こんな仕事はやく片付けたいー」
浮竹は、日番谷と並んで歩きだす。
甘味屋につくと、すでに人だかりができていた。
「ああ、そういえば今日はアイスの新商品が発売で・・・違う甘味屋にいこうか」
「ああ、別にどこでもいいが・・・・」
全ての戦いが終わって、尸魂界も変わった。特に瀞霊廷は、現世の家電を取り入れたせいで、急激に変わりつつあった。
「ここ、何気に好きなんだ」
「こんなとこに甘味屋が?」
流魂街の外れにある、その甘味屋は、閑散としていたが、数人の客がいた。
「浮竹様!またきてくださってのでありんすか」
色街の、遊女の言葉遣いの女性がお冷とおしぼりをもってきてくれた。
「知り合いか?」
日番谷が、浮竹に聞くと浮竹は頷いた。
「昔、身請けした遊女で、カナという」
ブーーーーーーー!
日番谷がお冷を吹き出した。
「お、お前、京楽に知られたら!」
「大丈夫だ。京楽の金で身請けした、幼馴染なんだ。中流貴族と結婚したけど、姑との関係がうまくいかずに飛び出して、今に至る」
「浮竹様、こちらの方はどなたでありんすか」
「10番隊隊長の、日番谷冬獅郎だ」
日番谷が名乗った。
こそこそと耳打ちしてくる。
「本当に、ただの幼馴染なんだな?浮気相手だったら、俺があのおっさんに殺される」
「はははは日番谷隊長は心配性だなぁ。浮気相手なら、京楽が日番谷隊長を手にかけるまえに、京楽が彼女を惨たらしく殺している」
笑顔で怖い話をされて、日番谷は身震いした。
「お汁粉を二つ。後おはぎと羊羹も二つずつ。あと持ち帰りで甘納豆を一人前」
適当に注文していく浮竹を見る。
「お前のおごりだと思って、金をもってきていないが、持ち合わせはあるな?」
「いや、俺も忘れた」
「おい!」
「つけがきくし・・・まぁ問題はない」
そう言い切られて、注文された品を食べていく。
「ありがとうでありんす。お勘定ですが・・・・・」
「これで、足りるだろうか」
浮竹は、紅瑠璃を見せた。尸魂界でしかとれない、とても珍しい石で、小粒ではあったが注文した内容を30回頼んでもおつりが出る。
「こんな高価なもの!お代はいいでありんすよ」
「いいから、受け取ってくれ。暮らしの足しにしてほしい」
そう言われて、カナという元遊女は紅瑠璃をもらい、手をふった。
「またきてほしいでありんす~」
「ああ、またくる」
「あの紅瑠璃、どうしたんだ?」
「京楽にもらった金で買ったんだ。何か、細工物を作って浮竹にあげようかと思って。でも小粒だったし、もっといい石が手に入って完成したから」
「お前と京楽の金使いには、眩暈がする」
甘味屋をでると、そこには京楽がいた。
ぞくりと、背筋が凍る気がした。
「もう、なるべくあの子と関わらないって決めてたんじゃないの?」
周囲を威圧するような霊圧に、日番谷は言葉をなくした。
「甘味屋で働いていただけだ。やましいことは何もない」
「声、聞こえてたよ。紅瑠璃をあげたんだって?石の意味知ってて?」
「変わらぬ愛、だろう?ここにちゃんとある」
そう言って、大粒の紅瑠璃をはめこんだ首飾りを、浮竹は京楽に与えた。
「これは・・・・・・?」
「拙くてすまない。俺が作ったんだ。変わらない愛を、お前に」
「浮竹!」
京楽は、浮竹を抱き寄せて口づけを交わした。
「日番谷隊長は、昔のように斬魄刀を解放しないのか?」
「もう、お前らのいちゃつきで解放する斬魄刀なんてねーよ」
それだけ、日番谷も大人になったのだろう。何より、一度大切なものを失った京楽が哀れすぎて、総隊長でありながら、幽霊のような存在に、憐れみを覚えすぎていた。これ以上ないくらいの嬉しそうな笑みを刻む京楽の幸せを、つぶすような真似はするまいと、日番谷も彼なりに気を使っているのだ。
「いやぁ、嬉しいねぇ。普通のプレゼントも嬉しいけど、手作りとかもう本当に嬉しいよ。このまま、高級料亭にいこう。日番谷隊長もおいで」
「おい、俺はお前らがいくような、高級料亭にいける金なんてないぞ」
例え、給料が出ても、とても使うような額ではないので、首を振ると、京楽は嬉し気こういう。
「僕のおごりだよ」
「のった!」
京楽の選ぶ高級料亭に外れはない。甘味ものでお腹はあまり減っていないが、久しぶりに高級な美味しいものをただで食べれる機会なのだ。
無碍にすることもないだろう。
ちゃりん。
紅瑠璃で作られた首飾りはいつまでも京楽の首にかけられて、紅色の光を放ち、石の言葉通りの変わらぬ愛を奏でるのであった。
星(IF
その日は、晴天だった。
窮屈な義骸に入り、二人で護廷13隊に内緒で現世に出かけた。総隊長と元隊長がまるでかけおちのようにいなくなったことは、書き置きのせいもあり、すぐにばれてしまったけれど。
連れ戻される間の数時間を、ただ山の頂上から星を見上げていた。
大分北の地方で、都会の汚い空気もなく、綺麗な星が見えた。
「ごらんよ浮竹。あれが北斗七星だよ」
「へえ、あれがか」
何十万光年、何百万光年、何千万光年と離れている星の名前や星座を教えてやる。
「あれはカシオペア座。あれが乙女座。あっちはてんびん座だ」
「京楽は、物知りだな」
「今日のために、少し勉強したからね」
現世から見える星と、尸魂界から見える星は全然違う。
星座なんて覚えても、なんの得にもならないけれど、愛しい浮竹のためなら苦など何もない。
「学院を卒業したとき、卒業旅行で夜の間だけ海と空をみたでしょ。あの時みたいだね」
手を伸ばせば、届いてしまいそうで。
星の海を、二人で漂った。
「空が落ちてきそうだ」
「そうだね」
「綺麗だな、京楽」
「君とまた現世の星の空を見れて、嬉しいよ」
浮竹が逝ってしまい、戻ってくるまでの数年間ずっと一人だった。護廷13隊の総隊長という地位が重くのしかかり、浮竹を供養する暇もあんまりなくて。
ただ仕事にのめりこみ、酒をたまに一人で飲む。他の隊長との付き合いで飲むこともあるが、夜まで飲み明かすことはなかった。
「男性死神協会の会誌に飾りたい」
そう言って、浮竹は京楽からもらった携帯で星空の写真をとった。
「っくしょん」
「浮竹?やっぱり、寒い?」
「少し・・・・」
もってきていた毛布を、ふわりと浮竹にかけてやった。大きめにできているそれは、京楽を包んでもまだ余裕があった。
「こんな大きな毛布・・・なんのためかと思ったら、一緒に寝るときに使うのか」
「浮竹は、ミミハギ様を失ったと同時に肺の病もなくなったけれど、病弱なのは変わりないからね」
「心配をかけてすまない」
「いいんだよ。君を心配するのも、生きている楽しみの一つだから」
つまらないだろうと問うと、額にキスをされた。
「君のことに関して、飽きることなんて何もないよ。何度経験しても、したりない」
こうやって、二人で星を見るのも見飽きたりないのだと、ずっと星の海を見上げていた。
北国の山の頂上で、敷布を広げてそのうえで寝転がっていた。
京楽は、隊長羽織を着ているが、浮竹はただ白い羽織を着ているだけだった。背中に13番隊の文字はない。隊長羽織は、朽木から阿散井と名を変えたルキアが着ている。
「隊長をやめても、やはり現世には霊圧の高い者は気軽にいけないものなのだな」
ましては、総隊長となった京楽が現世にお忍びで遊びにいくなど、あってはならないことなのだが。
「今日は、君を始めて抱いた日だから・・・・・・・」
今でも忘れていないのだと告げると、浮竹は白い頬を恥ずかしさで上気させていた。
その姿が愛らしくて、口づけを落としていく。
「あっ、京楽・・・・・・」
「浮竹、君はどこもかしこも甘いね。君から香り立つ甘い花のようだ」
浮竹は甘い花の香りがする。赤子の頃、花の神にささげられ、愛された。病弱な赤子が丈夫になりますようにと、花の神にすがって。花の神は、丈夫さは与えてはくれなったが、甘い香を浮竹に与えた。
子供の頃、どうして自分からは花の匂いがするのかと両親を問い詰めると、花の神に、少しでも長生きできるように捧げたのだと言われた。
愛しい者をなくさないように、捧げるのだ。
もう廃れてしまった、花の神に、今でも感謝している。甘い花の香は嫌いではないから。
花の神の名は、椿の狂い咲きの王。
椿のように、冬に狂い咲く、花の王の神。
「流れ星だ」
「ああ、本当だね」
星が落ちる------------。
「何か願ったかい?」
「京楽といつまでも一緒にいれますようにって」
「奇遇だね。僕も、浮竹とずっと一緒に在れますようにって」
暖かい毛布の下で、手を握りあった。
唇を重ねると、吐息が零れた。
「ああ、そろそろ時間かな・・・・・・」
「?」
「現世にいってくるって、七緒ちゃんに書き置き残しておいたからね。気づかれて、そろそろ連れ戻される時間だ」
「京楽総隊長、浮竹元隊長!」
七緒と、数人の席官がやってくる。
浮竹は、元隊長と呼ばれていた。浮竹さんと呼ぶのはあまりにも変なので。
「いくら平和とはいえ、総隊長が尸魂界を出て現世に遊びにいくなど、言語同断です!」
「たまにはいいじゃない。目をつぶってよ」
「いいえ、いけません。浮竹元隊長も、止めてください・・・・・」
「すまない、俺も期待してついていってしまった・・・・・」
「とにかく、穿界門を開きます」
尸魂界に続く道が現れる。
京楽と浮竹は、七緒と数人の席官に見守られて、瀞霊廷に帰って行った。
「おはよう」
「ああ、おはよう」
二人して、寝過ごしてしまった。
昨日は、夜更けまで星を見ていた。星の海は、空が落ちてきそうな錯覚を覚えた。、
「七緒ちゃんには、悪いことしたなぁ」
始末書を書くのが、七緒になってしまったのだ。浮竹は元隊長で今は一般死神扱いだし、総隊長が始末書を読むのだが、その始末書を読むはずの総隊長が始末書を書く羽目になるのは、流石に世間体が悪いからと、七緒になった。
「お詫びに、伊勢副隊長の好物を買ったらどうだ?」
「ええと・・・確か、羊羹だったかな。それなら、いいのが置いてあるんだ」
高級菓子店から、近いうちに二人で食べようと、京楽が羊羹を買い求めてそれを執務室の戸棚の中に隠しいたのだ。
「これはうまそうだな」
「食べる?」
「でも、伊勢副隊長に・・・・・」
「もう一度買いにいけばいいだけだよ。食べちゃおう」
二人して、羊羹を食ってしまった。
京楽が、仕事を終えて、七緒のために羊羹を買いにでかける。その後を追って、浮竹が走り出す。
花の神の愛児は、隊長となり、一度死に、そして花の神の愛によって蘇った。いつも・・・・幼い頃から、髪や肌から甘い花の香をさせていた。
椿の狂い咲きの王は、愛した白い髪の子が蘇るために全てを捨てた。浮竹は蘇り、椿の狂い咲きの王は体も精神体も、その存在の意味も全てなくした。
傍らにいる男が、狂い咲くように愛を注いでいるから、存在意味をなくしても平気だった。
花天狂骨。
花に狂う。
花の神の名と同じ響きの斬魄刀を持つ男に、慈悲を与えた。
愛し子を愛する男は、花に狂っているから、慈悲を与えた。
椿の狂い咲きの王、花の神は、天から骨になって笑う。
「愛している-----------」
浮竹と京楽は、もう今はない花の神に愛されていた。
窮屈な義骸に入り、二人で護廷13隊に内緒で現世に出かけた。総隊長と元隊長がまるでかけおちのようにいなくなったことは、書き置きのせいもあり、すぐにばれてしまったけれど。
連れ戻される間の数時間を、ただ山の頂上から星を見上げていた。
大分北の地方で、都会の汚い空気もなく、綺麗な星が見えた。
「ごらんよ浮竹。あれが北斗七星だよ」
「へえ、あれがか」
何十万光年、何百万光年、何千万光年と離れている星の名前や星座を教えてやる。
「あれはカシオペア座。あれが乙女座。あっちはてんびん座だ」
「京楽は、物知りだな」
「今日のために、少し勉強したからね」
現世から見える星と、尸魂界から見える星は全然違う。
星座なんて覚えても、なんの得にもならないけれど、愛しい浮竹のためなら苦など何もない。
「学院を卒業したとき、卒業旅行で夜の間だけ海と空をみたでしょ。あの時みたいだね」
手を伸ばせば、届いてしまいそうで。
星の海を、二人で漂った。
「空が落ちてきそうだ」
「そうだね」
「綺麗だな、京楽」
「君とまた現世の星の空を見れて、嬉しいよ」
浮竹が逝ってしまい、戻ってくるまでの数年間ずっと一人だった。護廷13隊の総隊長という地位が重くのしかかり、浮竹を供養する暇もあんまりなくて。
ただ仕事にのめりこみ、酒をたまに一人で飲む。他の隊長との付き合いで飲むこともあるが、夜まで飲み明かすことはなかった。
「男性死神協会の会誌に飾りたい」
そう言って、浮竹は京楽からもらった携帯で星空の写真をとった。
「っくしょん」
「浮竹?やっぱり、寒い?」
「少し・・・・」
もってきていた毛布を、ふわりと浮竹にかけてやった。大きめにできているそれは、京楽を包んでもまだ余裕があった。
「こんな大きな毛布・・・なんのためかと思ったら、一緒に寝るときに使うのか」
「浮竹は、ミミハギ様を失ったと同時に肺の病もなくなったけれど、病弱なのは変わりないからね」
「心配をかけてすまない」
「いいんだよ。君を心配するのも、生きている楽しみの一つだから」
つまらないだろうと問うと、額にキスをされた。
「君のことに関して、飽きることなんて何もないよ。何度経験しても、したりない」
こうやって、二人で星を見るのも見飽きたりないのだと、ずっと星の海を見上げていた。
北国の山の頂上で、敷布を広げてそのうえで寝転がっていた。
京楽は、隊長羽織を着ているが、浮竹はただ白い羽織を着ているだけだった。背中に13番隊の文字はない。隊長羽織は、朽木から阿散井と名を変えたルキアが着ている。
「隊長をやめても、やはり現世には霊圧の高い者は気軽にいけないものなのだな」
ましては、総隊長となった京楽が現世にお忍びで遊びにいくなど、あってはならないことなのだが。
「今日は、君を始めて抱いた日だから・・・・・・・」
今でも忘れていないのだと告げると、浮竹は白い頬を恥ずかしさで上気させていた。
その姿が愛らしくて、口づけを落としていく。
「あっ、京楽・・・・・・」
「浮竹、君はどこもかしこも甘いね。君から香り立つ甘い花のようだ」
浮竹は甘い花の香りがする。赤子の頃、花の神にささげられ、愛された。病弱な赤子が丈夫になりますようにと、花の神にすがって。花の神は、丈夫さは与えてはくれなったが、甘い香を浮竹に与えた。
子供の頃、どうして自分からは花の匂いがするのかと両親を問い詰めると、花の神に、少しでも長生きできるように捧げたのだと言われた。
愛しい者をなくさないように、捧げるのだ。
もう廃れてしまった、花の神に、今でも感謝している。甘い花の香は嫌いではないから。
花の神の名は、椿の狂い咲きの王。
椿のように、冬に狂い咲く、花の王の神。
「流れ星だ」
「ああ、本当だね」
星が落ちる------------。
「何か願ったかい?」
「京楽といつまでも一緒にいれますようにって」
「奇遇だね。僕も、浮竹とずっと一緒に在れますようにって」
暖かい毛布の下で、手を握りあった。
唇を重ねると、吐息が零れた。
「ああ、そろそろ時間かな・・・・・・」
「?」
「現世にいってくるって、七緒ちゃんに書き置き残しておいたからね。気づかれて、そろそろ連れ戻される時間だ」
「京楽総隊長、浮竹元隊長!」
七緒と、数人の席官がやってくる。
浮竹は、元隊長と呼ばれていた。浮竹さんと呼ぶのはあまりにも変なので。
「いくら平和とはいえ、総隊長が尸魂界を出て現世に遊びにいくなど、言語同断です!」
「たまにはいいじゃない。目をつぶってよ」
「いいえ、いけません。浮竹元隊長も、止めてください・・・・・」
「すまない、俺も期待してついていってしまった・・・・・」
「とにかく、穿界門を開きます」
尸魂界に続く道が現れる。
京楽と浮竹は、七緒と数人の席官に見守られて、瀞霊廷に帰って行った。
「おはよう」
「ああ、おはよう」
二人して、寝過ごしてしまった。
昨日は、夜更けまで星を見ていた。星の海は、空が落ちてきそうな錯覚を覚えた。、
「七緒ちゃんには、悪いことしたなぁ」
始末書を書くのが、七緒になってしまったのだ。浮竹は元隊長で今は一般死神扱いだし、総隊長が始末書を読むのだが、その始末書を読むはずの総隊長が始末書を書く羽目になるのは、流石に世間体が悪いからと、七緒になった。
「お詫びに、伊勢副隊長の好物を買ったらどうだ?」
「ええと・・・確か、羊羹だったかな。それなら、いいのが置いてあるんだ」
高級菓子店から、近いうちに二人で食べようと、京楽が羊羹を買い求めてそれを執務室の戸棚の中に隠しいたのだ。
「これはうまそうだな」
「食べる?」
「でも、伊勢副隊長に・・・・・」
「もう一度買いにいけばいいだけだよ。食べちゃおう」
二人して、羊羹を食ってしまった。
京楽が、仕事を終えて、七緒のために羊羹を買いにでかける。その後を追って、浮竹が走り出す。
花の神の愛児は、隊長となり、一度死に、そして花の神の愛によって蘇った。いつも・・・・幼い頃から、髪や肌から甘い花の香をさせていた。
椿の狂い咲きの王は、愛した白い髪の子が蘇るために全てを捨てた。浮竹は蘇り、椿の狂い咲きの王は体も精神体も、その存在の意味も全てなくした。
傍らにいる男が、狂い咲くように愛を注いでいるから、存在意味をなくしても平気だった。
花天狂骨。
花に狂う。
花の神の名と同じ響きの斬魄刀を持つ男に、慈悲を与えた。
愛し子を愛する男は、花に狂っているから、慈悲を与えた。
椿の狂い咲きの王、花の神は、天から骨になって笑う。
「愛している-----------」
浮竹と京楽は、もう今はない花の神に愛されていた。
溝
長い白の髪を畳に乱れさせて、浮竹は動かなかった。
「浮竹!?」
雨乾堂にきた京楽は、ピクリとも動かない浮竹の様子に、発作でも起こしたのか、それとも高熱で倒れたのかと抱き起す。
すーすーすー。
よく眠っていた。
「寝てるだけかい・・・・でも、よかった」
浮竹の身に、何もなくて。
まだ、熱さの残る9月半ば。暑かったのか、布団を蹴飛ばしてしまっている。夜着も大分着くずしてしまっていて、肩まで見えていた。
薄いが、しなやかな筋肉のついた体のラインが見える。
そんなつもりは全然なかったのだが、無防備な浮竹の姿は扇情的すぎて、自分の中の熱が高まっていくのが分かった。
「ちょっとだけ・・・・・ね?」
浮竹の髪をなでて、その桜色の唇に口づける。露わになっていた肩にキスして、夜着を着直させていると、ガタンと音がたった。
「あんた・・・寝ている隊長になにしてるんですか!」
薬と白湯の乗ったお盆をひっくり返して、海燕が京楽にくってかかってきた。
「何をって・・・・キスしてただけだけど?」
「隊長は、発作をおこして寝てたんですよ!それをいいことに手を出すなんて、最低だ!」
「やっぱり発作おこしてたのかい・・・・・気づいてやれなくてごめんね、浮竹」
「今すぐ、出て行ってください。隊長にこれ以上手を出したら許しません」
「それは、僕と浮竹の話でしょ?部外者の君にとやかく言われる筋合いはないね」
京楽は、海燕が浮竹に恋慕しているのを知っていた。
だから、これは見せつける意味もあるのだと、眠っている浮竹にまた口づけた。
「この卑怯者!意識のない隊長になんて真似を!」
海燕は知らないのだ。
京楽と浮竹ができているのを。
いや、どこかで気づいているのかもしれないが、受け入れられないのだろう。
「・・・・・・く?」
翡翠色の目があいた。
「きょうら・・・く・・?」
まるで、甘えるような声で視線を彷徨わせる。
「僕はここにいるよ?」
「京楽・・・・・・海燕・・・・・・どうした、何かあったのか」
言い争っている二人に気づいて、浮竹が覚醒した。
「何かあったじゃありません隊長。京楽隊長が、隊長の意識がないのをいいことに手を出していたんですよ」
「ああ・・・・・京楽が悪い」
「そうでしょう!」
「そりゃないよ浮竹」
京楽が、悲しそうな目をする。
ざまーみろというかんじの海燕に、カチンときた。
「浮竹に、薬飲ませるんじゃなかったの」
「ああ、すみません隊長。薬はここにおいておきますから、白湯いれなおしてきます」
「あ、水があるから、白湯はいらないぞ、海燕」
「分かりました。ここに控えていますので、何かあったら言ってください」
「いや、もう下がってくれ」
「そうだよ、邪魔者はさっさと去ってくれないかな」
「京楽!」
浮竹に叱られても、京楽の態度は変わらなかった。
浮竹と自分の仲を邪魔する者は許さない、そんな独占的な瞳をしていた。
「浮竹、薬のんで横になって」
「いや・・・・もう、大丈夫だ。起きる」
薬と水をのんだが、体調はもう大丈夫なのだと、海燕の名を呼ぶ。
「海燕、布団を直してくれ。あと、着換えを頼む」
「はい、隊長!」
余裕を見せる海燕が悔しくて、出された死覇装を奪った。
「京楽?」
「僕が、着せてあげるよ」
「ああ、すまない・・・・・」
夜着を脱いで、死覇装をまとわせていく。それはいつもなら、海燕の役目だった。
「隊長羽織は?」
京楽が、次をよこせと海燕を見るが、海燕は隊長羽織を渡さずに、自分の手で浮竹に着せてしまった。
「隊長、今日はどうされますか。仕事は少しありますが、納期を伸ばしてもらうことも可能です」
「ああ・・・大分あったのに。海燕、お前が一人片付けたのか?」
「はい」
「すまない。ありがとう、海燕」
尻尾をぶんぶんふる犬に似ていて、京楽は口にしていた。
「まるで、飼い犬だね。みっともない」
「なんだと!」
「ああ、止めないか二人とも!」
浮竹が、溜息を零す。
「もっと仲良くできないのか」
「できません」
「できるわけないね」
京楽は、浮竹を抱き締めた。
「京楽!海燕が見ているんだぞ!」
「教えちゃえばいいじゃない。僕たちの仲を」
京楽の腕の中から逃れようとする浮竹を制して、京楽は浮竹に深く口づけした。
舌がからまる。
「んうっ・・・・・・・」
「京楽隊長、隊長に何を!」
「僕たちは、こういう仲なんだよ」
「隊長、しっかりしてください!」
二人の間に入り、京楽から浮竹を奪い返そうとする。
「海燕、もういい。下がってくれ」
「でも隊長!」
「きょうら・・・・・・あおるのはやめろ。ちゃんと、分かってるから」
浮竹は冷静だった。
「隊長」
「下がれ、海燕」
「でも!」
「ああ・・・・僕に嫉妬してるの?」
「そんなんじゃありません!」
抗う浮竹に手を出していく京楽。
「海燕がみてる・・・から・・・・ああっ」
海燕は、真っ赤になっていた。
「・・・・・君、さ」
京楽が、海燕の前にくる。
海燕の股間を、足でぐりぐりと蹴る。
「やっぱり。浮竹に欲情してるんだね・・・・・僕が羨ましいんでしょ」
「なっ」
すぐに飛び退る海燕は、真っ青になっていた。
「違うんです隊長!」
「海燕・・・・・。京楽も、いい加減にしろ!」
鳩尾に肘を入れられて、京楽が浮竹を貪ることをやめる。
乱れた死覇装を整えて、浮竹は上気した頬で二人を睨んだ。
「海燕はもういいから下がれ。京楽、お前は隊舎に帰れ」
「そりゃないよ、浮竹」
「言う通りにしないと、もう二度と抱かせてやらんぞ!」
「ちぇっ」
浮竹の言葉に、絶望した表情の海燕を見る。
京楽は、でもどこか満足げに去っていった。
「海燕」
ぎくりと、海燕は体を強張らせた。
「何もなかった、何も聞かなかった・・・・それでいいな」
「隊長、俺はあなたが・・・・・・!」
「海燕!」
名を呼ばれる。
「都はどうするつもりだ!」
「・・・・・!」
愛するはずの妻の名を呼ばれて、青くなっている海燕に優しい声をかける。
「お前らしくもない・・・・・いつもの海燕に戻れ」
「隊長・・・・・・」
浮竹は、文机に向かった。
「仕事をする。余った分の書類をもってきてくれ」
「分かりました」
全てをなかったことにする浮竹が、憎くてでも愛しくて、相反する矛盾する感情がごちゃまぜになって、海燕は混乱した。
でも、冷静になれと言い聞かせると、体は自然と動いた。
「書類、もってきます・・・・」
下がっていく海燕と、去ってしまった京楽の、深まっていく溝に、浮竹は頭を抱えた。
「どうして、俺なんだ・・・・・・」
京楽も海燕も。
本当に、どうかしている。
コップに残っていた水を飲みほして、浮竹は悩むのだった。
「浮竹!?」
雨乾堂にきた京楽は、ピクリとも動かない浮竹の様子に、発作でも起こしたのか、それとも高熱で倒れたのかと抱き起す。
すーすーすー。
よく眠っていた。
「寝てるだけかい・・・・でも、よかった」
浮竹の身に、何もなくて。
まだ、熱さの残る9月半ば。暑かったのか、布団を蹴飛ばしてしまっている。夜着も大分着くずしてしまっていて、肩まで見えていた。
薄いが、しなやかな筋肉のついた体のラインが見える。
そんなつもりは全然なかったのだが、無防備な浮竹の姿は扇情的すぎて、自分の中の熱が高まっていくのが分かった。
「ちょっとだけ・・・・・ね?」
浮竹の髪をなでて、その桜色の唇に口づける。露わになっていた肩にキスして、夜着を着直させていると、ガタンと音がたった。
「あんた・・・寝ている隊長になにしてるんですか!」
薬と白湯の乗ったお盆をひっくり返して、海燕が京楽にくってかかってきた。
「何をって・・・・キスしてただけだけど?」
「隊長は、発作をおこして寝てたんですよ!それをいいことに手を出すなんて、最低だ!」
「やっぱり発作おこしてたのかい・・・・・気づいてやれなくてごめんね、浮竹」
「今すぐ、出て行ってください。隊長にこれ以上手を出したら許しません」
「それは、僕と浮竹の話でしょ?部外者の君にとやかく言われる筋合いはないね」
京楽は、海燕が浮竹に恋慕しているのを知っていた。
だから、これは見せつける意味もあるのだと、眠っている浮竹にまた口づけた。
「この卑怯者!意識のない隊長になんて真似を!」
海燕は知らないのだ。
京楽と浮竹ができているのを。
いや、どこかで気づいているのかもしれないが、受け入れられないのだろう。
「・・・・・・く?」
翡翠色の目があいた。
「きょうら・・・く・・?」
まるで、甘えるような声で視線を彷徨わせる。
「僕はここにいるよ?」
「京楽・・・・・・海燕・・・・・・どうした、何かあったのか」
言い争っている二人に気づいて、浮竹が覚醒した。
「何かあったじゃありません隊長。京楽隊長が、隊長の意識がないのをいいことに手を出していたんですよ」
「ああ・・・・・京楽が悪い」
「そうでしょう!」
「そりゃないよ浮竹」
京楽が、悲しそうな目をする。
ざまーみろというかんじの海燕に、カチンときた。
「浮竹に、薬飲ませるんじゃなかったの」
「ああ、すみません隊長。薬はここにおいておきますから、白湯いれなおしてきます」
「あ、水があるから、白湯はいらないぞ、海燕」
「分かりました。ここに控えていますので、何かあったら言ってください」
「いや、もう下がってくれ」
「そうだよ、邪魔者はさっさと去ってくれないかな」
「京楽!」
浮竹に叱られても、京楽の態度は変わらなかった。
浮竹と自分の仲を邪魔する者は許さない、そんな独占的な瞳をしていた。
「浮竹、薬のんで横になって」
「いや・・・・もう、大丈夫だ。起きる」
薬と水をのんだが、体調はもう大丈夫なのだと、海燕の名を呼ぶ。
「海燕、布団を直してくれ。あと、着換えを頼む」
「はい、隊長!」
余裕を見せる海燕が悔しくて、出された死覇装を奪った。
「京楽?」
「僕が、着せてあげるよ」
「ああ、すまない・・・・・」
夜着を脱いで、死覇装をまとわせていく。それはいつもなら、海燕の役目だった。
「隊長羽織は?」
京楽が、次をよこせと海燕を見るが、海燕は隊長羽織を渡さずに、自分の手で浮竹に着せてしまった。
「隊長、今日はどうされますか。仕事は少しありますが、納期を伸ばしてもらうことも可能です」
「ああ・・・大分あったのに。海燕、お前が一人片付けたのか?」
「はい」
「すまない。ありがとう、海燕」
尻尾をぶんぶんふる犬に似ていて、京楽は口にしていた。
「まるで、飼い犬だね。みっともない」
「なんだと!」
「ああ、止めないか二人とも!」
浮竹が、溜息を零す。
「もっと仲良くできないのか」
「できません」
「できるわけないね」
京楽は、浮竹を抱き締めた。
「京楽!海燕が見ているんだぞ!」
「教えちゃえばいいじゃない。僕たちの仲を」
京楽の腕の中から逃れようとする浮竹を制して、京楽は浮竹に深く口づけした。
舌がからまる。
「んうっ・・・・・・・」
「京楽隊長、隊長に何を!」
「僕たちは、こういう仲なんだよ」
「隊長、しっかりしてください!」
二人の間に入り、京楽から浮竹を奪い返そうとする。
「海燕、もういい。下がってくれ」
「でも隊長!」
「きょうら・・・・・・あおるのはやめろ。ちゃんと、分かってるから」
浮竹は冷静だった。
「隊長」
「下がれ、海燕」
「でも!」
「ああ・・・・僕に嫉妬してるの?」
「そんなんじゃありません!」
抗う浮竹に手を出していく京楽。
「海燕がみてる・・・から・・・・ああっ」
海燕は、真っ赤になっていた。
「・・・・・君、さ」
京楽が、海燕の前にくる。
海燕の股間を、足でぐりぐりと蹴る。
「やっぱり。浮竹に欲情してるんだね・・・・・僕が羨ましいんでしょ」
「なっ」
すぐに飛び退る海燕は、真っ青になっていた。
「違うんです隊長!」
「海燕・・・・・。京楽も、いい加減にしろ!」
鳩尾に肘を入れられて、京楽が浮竹を貪ることをやめる。
乱れた死覇装を整えて、浮竹は上気した頬で二人を睨んだ。
「海燕はもういいから下がれ。京楽、お前は隊舎に帰れ」
「そりゃないよ、浮竹」
「言う通りにしないと、もう二度と抱かせてやらんぞ!」
「ちぇっ」
浮竹の言葉に、絶望した表情の海燕を見る。
京楽は、でもどこか満足げに去っていった。
「海燕」
ぎくりと、海燕は体を強張らせた。
「何もなかった、何も聞かなかった・・・・それでいいな」
「隊長、俺はあなたが・・・・・・!」
「海燕!」
名を呼ばれる。
「都はどうするつもりだ!」
「・・・・・!」
愛するはずの妻の名を呼ばれて、青くなっている海燕に優しい声をかける。
「お前らしくもない・・・・・いつもの海燕に戻れ」
「隊長・・・・・・」
浮竹は、文机に向かった。
「仕事をする。余った分の書類をもってきてくれ」
「分かりました」
全てをなかったことにする浮竹が、憎くてでも愛しくて、相反する矛盾する感情がごちゃまぜになって、海燕は混乱した。
でも、冷静になれと言い聞かせると、体は自然と動いた。
「書類、もってきます・・・・」
下がっていく海燕と、去ってしまった京楽の、深まっていく溝に、浮竹は頭を抱えた。
「どうして、俺なんだ・・・・・・」
京楽も海燕も。
本当に、どうかしている。
コップに残っていた水を飲みほして、浮竹は悩むのだった。
斬魄刀の開放
「お風呂にする、ご飯にする、それとも俺か?」
松本がそう言葉にすれば京楽は喜ぶからと言われて、10番隊の執務室に遊びにきていた浮竹は、浮竹の後を追って遊びにきた京楽にそう言葉をかけていた。
「もちろん君さ!」
京楽は、目を輝かせて浮竹を押し倒した。
「ぎゃあああああああ」
こだます悲鳴に、日番谷が斬魄刀に手をかける。
「蒼天に座せ氷輪丸!」
部屋中が氷漬けになった。
松本も含めて、京楽と浮竹も無事だった。
「ちっ」
「ちっ、じゃないよ!今本気で僕を殺そうとしたね?!」
浮竹と松本への攻撃は手加減がされていた。だが京楽は殺すつもりで開放した斬魄刀をふるっていた。
「気のせいだ」
「いいや、君は本気だった」
「俺が本気だしたところで、京楽お前ならしのぎきれるだろう?」
古参の隊長だ。腕は確かだ。
「それとこれは話は別だよ!日番谷隊長、最近僕に酷くないかい!?」
外で浮竹と京楽を見つけても、浮竹には挨拶するが、京楽は無視だ。
アウトオブ眼中。
日番谷をこの前ちょっと、浮竹と仲がいいのでいじめたのだが、その仕返しをされている気分だった。
「松本副隊長、京楽が押し倒してきたぞ!さっきの言葉は、労りの言葉ではなかったのか?」
「やだー浮竹隊長。労わりの言葉ですって」
「浮竹、さっきの台詞もう一度言って?」
「そんなに嬉しいのか?」
「そりゃもう嬉しいよ。労わりの言葉だから、もう一度言って?」
あまりにもしつこかったので、浮竹は氷が解けた執務室で、京楽の前で小首を傾げてさっきの台詞をいう。
「ご飯にしますかお風呂にしますか、それとも俺か?」
「もちろん浮竹だよ」
「ぎゃあああああああ」
また押し倒されて・・・おまけに死覇装の裾から手を入れられて、浮竹は叫んだ。
「騙したのかっ!」
「騙してなんかいないよ。俺?ってきくから、君をいただいているんだよ。いただきます」
「ぎゃあああああああ」
うなじをペロリと舐めると、浮竹は色気のない声をだした。
「蒼天に座せ、氷輪丸!」
透明な氷の龍が、京楽に向かっていく。
「なんで僕だけ!?」
「気のせいだ」
「花風紊れて花神啼き 天風紊れて天魔嗤う」
花天狂骨を解放させて、日番谷の氷の龍を真っ二つにしてしまった。
「おいおっさん。本気出すなんて、大人げないぞ」
「そういう君こそ、卍解しそうな勢いなんだけど!」
「気のせいだ!いけ、氷輪丸!」
「なんの、こんな氷の龍!」
龍を砕きながら、氷輪丸と花天狂骨はぶつかりかい、キンキンと刀をまじえる音が聞こえる。
「隊長素敵!京楽隊長も、二人そろって浮竹隊長の取り合いね!」
「松本、お前はその腐った目と腐った脳をなんとかしろ!」
「もうむりですー。腐りすぎて・・・・あ、浮竹隊長、大丈夫ですか?」
京楽に押し倒されたことで、長椅子に背をもたせかけていた浮竹が、起き上がった。
「二人とも、浮竹隊長をとりあってるんですよ」
「そんなあほな・・・・京楽、いい加減にしないか!日番谷隊長も、隊長同士でやりあうな!」
怒った浮竹に、二人とも息をついて斬魄刀をしまった。
そして、お説教がはじまる。
「京楽は、もっと大人としての対応をしろ!日番谷隊長も、斬魄刀を解放する時と場所を考えろ!」
がみがみと怒る浮竹に、二人してすまないと詫びをいれた。
バチバチバチ・・・・・京楽と日番谷は、目線で争っていた。
このケダモノが!日番谷の目は、そう語っていた。
このお邪魔虫め!京楽の目はそう語っていた。
「ほら、仲直りの握手」
手と手を握らされて、二人とも思いっきり力をこめた。
「日番谷隊長、けっこうな握力だね?」
「そういう京楽も、大人げないことこの上ないな」
額に血管マークを浮かべて、いつまでも手を握り合っていた。それに、腐った脳と腐った目の持ち主である松本が食らいつく。
「きゃああああ!まさかの京楽隊長×日番谷隊長!?」
「松本!お前は黙ってろ!」
「乱菊ちゃん、気色の悪い想像はよしてくれないかい!?」
浮竹が一人、自分で勝手に入れたお茶を、どこから取り出したのか、わかめ大使をお茶菓子にしてお茶をすすっていた。
「平和だな・・・・・」
「どこがだ!」
「どこがだい!?
「平和だ・・・・・・」
浮竹は、遠い目でお茶をすすっていた。
松本がそう言葉にすれば京楽は喜ぶからと言われて、10番隊の執務室に遊びにきていた浮竹は、浮竹の後を追って遊びにきた京楽にそう言葉をかけていた。
「もちろん君さ!」
京楽は、目を輝かせて浮竹を押し倒した。
「ぎゃあああああああ」
こだます悲鳴に、日番谷が斬魄刀に手をかける。
「蒼天に座せ氷輪丸!」
部屋中が氷漬けになった。
松本も含めて、京楽と浮竹も無事だった。
「ちっ」
「ちっ、じゃないよ!今本気で僕を殺そうとしたね?!」
浮竹と松本への攻撃は手加減がされていた。だが京楽は殺すつもりで開放した斬魄刀をふるっていた。
「気のせいだ」
「いいや、君は本気だった」
「俺が本気だしたところで、京楽お前ならしのぎきれるだろう?」
古参の隊長だ。腕は確かだ。
「それとこれは話は別だよ!日番谷隊長、最近僕に酷くないかい!?」
外で浮竹と京楽を見つけても、浮竹には挨拶するが、京楽は無視だ。
アウトオブ眼中。
日番谷をこの前ちょっと、浮竹と仲がいいのでいじめたのだが、その仕返しをされている気分だった。
「松本副隊長、京楽が押し倒してきたぞ!さっきの言葉は、労りの言葉ではなかったのか?」
「やだー浮竹隊長。労わりの言葉ですって」
「浮竹、さっきの台詞もう一度言って?」
「そんなに嬉しいのか?」
「そりゃもう嬉しいよ。労わりの言葉だから、もう一度言って?」
あまりにもしつこかったので、浮竹は氷が解けた執務室で、京楽の前で小首を傾げてさっきの台詞をいう。
「ご飯にしますかお風呂にしますか、それとも俺か?」
「もちろん浮竹だよ」
「ぎゃあああああああ」
また押し倒されて・・・おまけに死覇装の裾から手を入れられて、浮竹は叫んだ。
「騙したのかっ!」
「騙してなんかいないよ。俺?ってきくから、君をいただいているんだよ。いただきます」
「ぎゃあああああああ」
うなじをペロリと舐めると、浮竹は色気のない声をだした。
「蒼天に座せ、氷輪丸!」
透明な氷の龍が、京楽に向かっていく。
「なんで僕だけ!?」
「気のせいだ」
「花風紊れて花神啼き 天風紊れて天魔嗤う」
花天狂骨を解放させて、日番谷の氷の龍を真っ二つにしてしまった。
「おいおっさん。本気出すなんて、大人げないぞ」
「そういう君こそ、卍解しそうな勢いなんだけど!」
「気のせいだ!いけ、氷輪丸!」
「なんの、こんな氷の龍!」
龍を砕きながら、氷輪丸と花天狂骨はぶつかりかい、キンキンと刀をまじえる音が聞こえる。
「隊長素敵!京楽隊長も、二人そろって浮竹隊長の取り合いね!」
「松本、お前はその腐った目と腐った脳をなんとかしろ!」
「もうむりですー。腐りすぎて・・・・あ、浮竹隊長、大丈夫ですか?」
京楽に押し倒されたことで、長椅子に背をもたせかけていた浮竹が、起き上がった。
「二人とも、浮竹隊長をとりあってるんですよ」
「そんなあほな・・・・京楽、いい加減にしないか!日番谷隊長も、隊長同士でやりあうな!」
怒った浮竹に、二人とも息をついて斬魄刀をしまった。
そして、お説教がはじまる。
「京楽は、もっと大人としての対応をしろ!日番谷隊長も、斬魄刀を解放する時と場所を考えろ!」
がみがみと怒る浮竹に、二人してすまないと詫びをいれた。
バチバチバチ・・・・・京楽と日番谷は、目線で争っていた。
このケダモノが!日番谷の目は、そう語っていた。
このお邪魔虫め!京楽の目はそう語っていた。
「ほら、仲直りの握手」
手と手を握らされて、二人とも思いっきり力をこめた。
「日番谷隊長、けっこうな握力だね?」
「そういう京楽も、大人げないことこの上ないな」
額に血管マークを浮かべて、いつまでも手を握り合っていた。それに、腐った脳と腐った目の持ち主である松本が食らいつく。
「きゃああああ!まさかの京楽隊長×日番谷隊長!?」
「松本!お前は黙ってろ!」
「乱菊ちゃん、気色の悪い想像はよしてくれないかい!?」
浮竹が一人、自分で勝手に入れたお茶を、どこから取り出したのか、わかめ大使をお茶菓子にしてお茶をすすっていた。
「平和だな・・・・・」
「どこがだ!」
「どこがだい!?
「平和だ・・・・・・」
浮竹は、遠い目でお茶をすすっていた。
エイプリルフール
春になった。
桜の花がちらちらと、雨を降らす。雨乾堂の外の桜も満開で、縁側から桜を見ながら茶を飲んでいた。
そういえば、今日は4月1日だ。
エイプリルフールという言葉を知ったのは、つい最近だった。日本でも、エイプリルフールが浸透しだしたのは100年近く前からだ。
そうだ。せっかくのエイプリルフールだ。
京楽をからかってやろう。そう思って、浮竹は8番隊の執務室にやってきた。
「別れよう、京楽」
そう言うと、京楽はその黒い瞳からポロポロと大粒の涙を零した。
ぎょっとなった。
「本気なの?」
「ああ、本気だ。お前との関係に飽きた」
なんだが、罪悪感感じ出すが、きっと京楽もエイプリルフールと知って、泣いているのだ。
そう言い聞かせる。
「誰かほかに好きな人でもできたの?」
「ああ。清音が好きなんだ」
適当だった。女性の名を浮かべようにも、出てくるのは清音かルキアくらいだった。
「そう。清音ちゃん、可愛そうに。若いのに、もう死ぬなんて」
「まてまてまて。なんだそれは」
いきなり物騒な話になって、浮竹が焦りだす。
「え?だって、君は清音ちゃんが好きなんでしょう?なら、その好き清音ちゃんがこの世界からいなくなれば、浮竹も僕をまた好きになるかもしれないでしょ?」
「なんだその理論は。ありえない」
斬魄刀を始解して、今にも13番隊舎にいる清音の元に瞬歩でいってしまいそうで、浮竹はさらに焦った。
「ありえないのは、君の言葉だよ」
「俺はただ、別れたいといってるだけで、別にお前との友人としての仲まで壊そうといってるんじゃない」
恋人としての別れを告げたいだけなのだというと、京楽は首を振った。
「同じだよ。君との別れは、君を全て失うという意味だ。今からいって、清音ちゃんを殺してくるね」
瞬歩で去ろうする。
その背後から、京楽を羽交い絞めにした。
「邪魔しないで」
「待て!嘘だから!全部嘘だから!」
「止めないでよ。殺しにいかなきゃ僕の気がすまない」
「違うんだ!今日は4月1日、エイプリルフールの日だ。嘘をつく日なんだ。だから、別れようといったんだ!」
必死になって、京楽を止める。
ああ、こんなことなら、嘘なんかつくんじゃなかったと、大きく後悔する。
「本当に?エイプリルフールの、ただの嘘?」
何度も聞いてくる京楽に、浮竹は羽交い絞めした体を離しながら、京楽の黒い瞳をのぞきこむ。
「本当だ。だから、斬魄刀をしまってくれ」
「清音ちゃん、命拾いしたね」
カチンと硬質な音をたてて、斬魄刀が鞘におさまる。
「命が縮むかと思った」
「それはこっちの台詞だよ。清音ちゃんを殺しても心が変わらないなら、君を殺して僕も死のうと思った」
その危うい言葉に、浮竹が少し本気で怒った。
「俺の気持ちがかわったくらいで、相手を殺そうとするな。自分を殺そうとするな」
「だって・・・君が・・・・・・・」
ポロポロと、大粒の涙がまだ京楽の瞳から零れる。
「俺が悪かった」
思い切り抱きしめて、甘やかしてやった。いつもは自分からあまりしない口づけを降らせて、京楽の頭を撫でて、薄い胸板に抱き込むと、京楽は浮竹の鼓動の音と暖かさに安堵したのか、涙を零すことをやめた。
「すまない。泣かせるつもりはなかったんだ」
「気が狂いそうになった。もう二度と、別れるなんて言わないで」
京楽春水という男は飄々としていて雲のように掴みどころがないと言われる。でも、浮竹にかかわると性格が一変した。
独占的な言動。
浮竹の全ては自分のものなのだと、周囲に知らしめようとする。
「本当に、嘘でよかった・・・・・・」
「もう、お前に嘘はつかない」
「うん・・・・」
京楽は、浮竹の温度を感じながら目を閉じた。
「という話があってだな」
「だから何だっていうんだ!」
日番谷は、湯のみのをわなわなと持ちながら、額に血管マークを浮かべて怒っていた。
「お前は京楽とののろけ話をしにきたのか。総隊長からの命令で、書類を届けに来ただけじゃないのか!」
「ああ、まぁ書類を届けにきたんだけど」
「そうそう、あの時の浮竹は酷かったんだよ。いきなり別れようなんて言うから・・・」
背後から、浮竹をハグした京楽が、その体制のまま長椅子に腰かける。自然と、浮竹が京楽の太ももに座る恰好になる。
腐った脳と目の持ち主の松本は、二人にあった話をノートにまとめていた。
「松本ぉ!めもるな!」
「えー無理です隊長。こんないい話、女性死神協会の会誌に載せないなんてできません」
「載せるな!」
「今はもう・・・・嘘なんて、つかないものね?十四郎」
甘く低い声で名を呼ぶ京楽の動きに翻弄されて、浮竹が啼く。
「あっ、春水!」
「・・・・・・・・蒼天に座せ、氷輪丸!」
松本が、氷漬けになった。
興奮しすぎて、攻撃を避け損ねたらしい。
「ちっ。やっぱいねーか」
件の浮竹と京楽の姿がない。いろんなのろけ話を聞いてきたが、あの二人が別れを口にした話は初めて聞いた。
氷の龍は、松本を氷漬けにして満足して消えていった。
桜の花がちらちらと、雨を降らす。雨乾堂の外の桜も満開で、縁側から桜を見ながら茶を飲んでいた。
そういえば、今日は4月1日だ。
エイプリルフールという言葉を知ったのは、つい最近だった。日本でも、エイプリルフールが浸透しだしたのは100年近く前からだ。
そうだ。せっかくのエイプリルフールだ。
京楽をからかってやろう。そう思って、浮竹は8番隊の執務室にやってきた。
「別れよう、京楽」
そう言うと、京楽はその黒い瞳からポロポロと大粒の涙を零した。
ぎょっとなった。
「本気なの?」
「ああ、本気だ。お前との関係に飽きた」
なんだが、罪悪感感じ出すが、きっと京楽もエイプリルフールと知って、泣いているのだ。
そう言い聞かせる。
「誰かほかに好きな人でもできたの?」
「ああ。清音が好きなんだ」
適当だった。女性の名を浮かべようにも、出てくるのは清音かルキアくらいだった。
「そう。清音ちゃん、可愛そうに。若いのに、もう死ぬなんて」
「まてまてまて。なんだそれは」
いきなり物騒な話になって、浮竹が焦りだす。
「え?だって、君は清音ちゃんが好きなんでしょう?なら、その好き清音ちゃんがこの世界からいなくなれば、浮竹も僕をまた好きになるかもしれないでしょ?」
「なんだその理論は。ありえない」
斬魄刀を始解して、今にも13番隊舎にいる清音の元に瞬歩でいってしまいそうで、浮竹はさらに焦った。
「ありえないのは、君の言葉だよ」
「俺はただ、別れたいといってるだけで、別にお前との友人としての仲まで壊そうといってるんじゃない」
恋人としての別れを告げたいだけなのだというと、京楽は首を振った。
「同じだよ。君との別れは、君を全て失うという意味だ。今からいって、清音ちゃんを殺してくるね」
瞬歩で去ろうする。
その背後から、京楽を羽交い絞めにした。
「邪魔しないで」
「待て!嘘だから!全部嘘だから!」
「止めないでよ。殺しにいかなきゃ僕の気がすまない」
「違うんだ!今日は4月1日、エイプリルフールの日だ。嘘をつく日なんだ。だから、別れようといったんだ!」
必死になって、京楽を止める。
ああ、こんなことなら、嘘なんかつくんじゃなかったと、大きく後悔する。
「本当に?エイプリルフールの、ただの嘘?」
何度も聞いてくる京楽に、浮竹は羽交い絞めした体を離しながら、京楽の黒い瞳をのぞきこむ。
「本当だ。だから、斬魄刀をしまってくれ」
「清音ちゃん、命拾いしたね」
カチンと硬質な音をたてて、斬魄刀が鞘におさまる。
「命が縮むかと思った」
「それはこっちの台詞だよ。清音ちゃんを殺しても心が変わらないなら、君を殺して僕も死のうと思った」
その危うい言葉に、浮竹が少し本気で怒った。
「俺の気持ちがかわったくらいで、相手を殺そうとするな。自分を殺そうとするな」
「だって・・・君が・・・・・・・」
ポロポロと、大粒の涙がまだ京楽の瞳から零れる。
「俺が悪かった」
思い切り抱きしめて、甘やかしてやった。いつもは自分からあまりしない口づけを降らせて、京楽の頭を撫でて、薄い胸板に抱き込むと、京楽は浮竹の鼓動の音と暖かさに安堵したのか、涙を零すことをやめた。
「すまない。泣かせるつもりはなかったんだ」
「気が狂いそうになった。もう二度と、別れるなんて言わないで」
京楽春水という男は飄々としていて雲のように掴みどころがないと言われる。でも、浮竹にかかわると性格が一変した。
独占的な言動。
浮竹の全ては自分のものなのだと、周囲に知らしめようとする。
「本当に、嘘でよかった・・・・・・」
「もう、お前に嘘はつかない」
「うん・・・・」
京楽は、浮竹の温度を感じながら目を閉じた。
「という話があってだな」
「だから何だっていうんだ!」
日番谷は、湯のみのをわなわなと持ちながら、額に血管マークを浮かべて怒っていた。
「お前は京楽とののろけ話をしにきたのか。総隊長からの命令で、書類を届けに来ただけじゃないのか!」
「ああ、まぁ書類を届けにきたんだけど」
「そうそう、あの時の浮竹は酷かったんだよ。いきなり別れようなんて言うから・・・」
背後から、浮竹をハグした京楽が、その体制のまま長椅子に腰かける。自然と、浮竹が京楽の太ももに座る恰好になる。
腐った脳と目の持ち主の松本は、二人にあった話をノートにまとめていた。
「松本ぉ!めもるな!」
「えー無理です隊長。こんないい話、女性死神協会の会誌に載せないなんてできません」
「載せるな!」
「今はもう・・・・嘘なんて、つかないものね?十四郎」
甘く低い声で名を呼ぶ京楽の動きに翻弄されて、浮竹が啼く。
「あっ、春水!」
「・・・・・・・・蒼天に座せ、氷輪丸!」
松本が、氷漬けになった。
興奮しすぎて、攻撃を避け損ねたらしい。
「ちっ。やっぱいねーか」
件の浮竹と京楽の姿がない。いろんなのろけ話を聞いてきたが、あの二人が別れを口にした話は初めて聞いた。
氷の龍は、松本を氷漬けにして満足して消えていった。
君のためなら、星さえも
じっとりと、熱さの残る9月の半ば。
学院では、体育祭があった。
クラス対抗で、体力を競い合うのだ。
最近取り入れられたらしい行事で、それがとてもめんどくさいので、京楽はさぼっていた。
「京楽!京楽!」
さぼっていると、浮竹が探しにきた。
それを無視して、目をつぶる。
「やっぱりここにいた」
白い髪の麗人は、桜の大木の枝の上で居眠りを決め込んだ京楽を発見した。
「浮竹・・・君、なんで僕がいる場所がわかるの?」
この桜の木以外にも、校庭の納谷の上とか屋上、空き部屋・・・・京楽がさぼりに身を隠す場所はたくさんあるが、いずれも浮竹に見つかっている。
「なんとなく分かるんだ」
「霊圧は閉じているのに・・・」
「それでも、なんとなく分かる。お前がいきそうな場所は、天候や授業の教科によって、大体決まってるしな」
「霊圧を閉じるだけ無駄かい?」
「そういうことだな」
浮竹が、手を伸ばしてくる。その手をとろうとした。
ぐらりと、浮竹の体が傾ぐ。
「浮竹!」
なんとか、抱き寄せた。
「ごほっごほっ・・・・・っ、少し、すぐにおさまるから・・・」
苦しそうに身を屈ませる浮竹の背中を撫でる。
「ほんとに大丈夫?」
浮竹は、念のためにと携帯していた薬を飲む。
「水、とってくるよ」
「ああ、すまない・・・」
紙コップを手に入れて、水をもって桜の木の上にいくと、浮竹が平気な顔をしていた。
「一時的な発作だったらしい。薬を飲んだら、すぐに収まった」
水を受け取り、飲んでいく。
水を嚥下する喉の白さが眩しくて、もう完全に葉桜になってしまった桜の大木を見上げた。
「君、今日はもう休んだほうがいいよ。僕が説明しておくから、寮の部屋に戻りなさいな」
「いや、今日は体育祭だぞ。最後のリレーのアンカーは俺だ。でなくては」
拳を握りしめて力説する浮竹に、溜息を零す。
「そんな体で・・・・・」
「こんな体だからこそ、体験できるものは体験しておきたいんだ」
結局、京楽は発作の収まった浮竹に連れられて、体育祭に出る羽目になった。
特進クラスなので、浮竹と京楽のクラスにはハンデがもうけられていた。
「こういうのでハンデとか、ちょっとおかしくないか?」
鬼道や剣術の腕ではない。ただ、基礎体力を競うものだ。霊圧の高さも関係ない。
「まぁ、基礎体力の高い子がうちのクラスには多いからね」
「それはまぁ、そうなんだが。京楽とかな」
「僕の体力は普通だよ」
「体育の授業は5段階中5だっただろう」
「あんなの、子供の遊びだよ・・・・・」
何はともあれ、体育祭は開催された。
京楽にとって、もう何度も体育祭など経験したので、新鮮ではなかった。
騎馬競争になると、京楽が鬼のように他のクラスのハチマキを全部とってしまい、歓声と野次が飛び交う。
「どっかいけー特進クラス!」
「素敵―京楽くん!」
「つきあってー!」
無駄に金があり、見た目もそこそこなので、京楽は女によくもてた。
その黄色い声に、浮竹は何も思わない様子で、自分のクラスを応援していた。
少しでも焼いてくれたら、可愛げがあるのにと思う。付き合っているのだから、少しは焼いてくれればいいのにと
借り者競争だの、玉入れだの・・・・・本当に、死神になるにはどうでもいいことばかりだった。
すぐに飽きて、与えられていた席で半分眠っていた。
「きゃー浮竹さーん」
「浮竹君、いいぞその調子だ」
「いけー浮竹!」
浮竹と、自分の恋人を呼ぶ声に目をあけると、種目も最後のリレーになっていた。
アンカーの浮竹は、バトンを受け取ると風のように走っていく。二人抜いて、ゴールした。
「やったー!俺たちのクラスの優勝だ!」
その年は、設けられたハンデなどものともせず、特進クラスは優勝した。
優勝の旗が、クラスの委員長に渡される。
「最後すごかったなー浮竹」
「浮竹君のお陰だね」
「浮竹君かっこよかった」
浮竹に群れる人込みをかきわけて、京楽は浮竹を抱き上げた。
「え、どうしたの?」
「どうなってるんだ?」
京楽は、瞬歩でその場を去った。
「ごほっごほっ」
居場所が変わったとたん、苦し気に身を捩る。
「だから、部屋に戻っておくべきだっていったのに。我慢するなんて、無茶だよ」
「ごほっごほっ」
咳と一緒に、真紅の血が散った。
「ほらいわんこっちゃない!」
「すまな・・・・・ごほっごほっ」
「君、最後のリレー発作我慢して走ってたね。周りに人だかりができても、ずっと我慢してたでしょ」
「ごほっごほっ・・・・・・それは・・・」
「僕は怒ってるんだ。そんな君に。どうして我慢するの。リレーのアンカーなんて、どうでもいいでしょ」
「どうでも・・・よくない・・・・ごほっ」
「どうでもいいね。大切な君が辛い目をあうことが、僕にはとても辛いんだ」
「きょうら・・・く・・・・・・」
血を吐き出すその血を受け入れるように、唇を奪う。
そのまま、結局浮竹は大量の血を吐いて意識を失った。
「・・・・すまない、京楽」
見知った、寮の自室だった。
相部屋の相手である京楽は、看病し疲れたのか、浮竹の手を握ってベッドの上に肘をついて寝ていた。
「ん・・・気づいたのかい?」
「ああ・・・・・すまない、京楽」
「謝るのはいいから。もっと、自分を大切にして」
頭を撫でられた。
「でも、何もかもが新鮮で・・・・」
授業すらも。子供の頃病気のせいで。家の自室にいることをほぼ強制された浮竹にとって、外で感じるもの全てが新鮮なのだ。
「念のため、明日も休むんだよ。君、意識失って二日はねこんでたからね」
「二日!?京楽、まさかその間・・・・」
「さぼったよ。君のいない学院なんて、いても意味がない」
かっと頬に朱がさすのが分かった。
「一緒に死神になって、護廷13隊に入るんだろう?授業をさぼっていると、推薦枠から外れてしまうぞ」
「そんなことないよ。君と僕の実力なら・・・・もう、護廷13隊の席官クラスは用意しているって、この前山じいがいってた」
「元柳斎先生が・・・・・そうか」
「嬉しくないの?」
「嬉しい。でも、学院ともさよならになるのかと思うと、少し寂しい」
3月には、卒業だ。
卒業と同時に、浮竹は13番隊、京楽は8番隊の、席官クラスが用意されてある。
仕事に慣れるのが先決で、しばらくの間二人きりでいる時間などとれそうにない。
憧れの死神になり、護廷13隊に入れるのは嬉しかったけれど、京楽と共に寝起きするのももう終わりかと思うと、少しばかりの寂寥感を感じた。
「卒業、したくないな・・・」
それは、浮竹には珍しい言葉だった。
「どうしたの浮竹。あんなに、死神になりたがってたのに」
「お前と寝起きを共にし、鍛錬したり勉強したりするのが終わりかと思うと、寂しくて」
その言葉に、京楽が浮竹を抱き締めた。
「京楽?」
「今の君はとてもいいよ。素直だ。発作の時も、隠したり我慢したりしないでほしい」
「もう、そんなこともないだろう・・・これといった行事もないし」
「そうだ。二人で、卒業旅行にいこう」
「卒業旅行?」
「そう。現世もいいけど・・・今の現世は確か戦国時代で、物騒だからね。流魂街にでもいこう」
瀞霊廷の外に出るのは、虚退治以外にないので、その提案は魅力的だった。
流魂街には治安の悪い場所もあるが、瀞霊廷の近くなら治安もよいし、少し遠出すれば温泉街などが広がっている。色街もある。
その色街で、京楽はよく女を買っていた。浮竹を手に入れてからは、やめてしまったが。入学当初は女遊びがひどすぎて、停学を食らったこともある。
「温泉宿でもいいよね?もっと君が好きそうな・・・現世の海にいきたいけど、野盗の類がめんどうだからね」
何度か現世に虚退治の任務にいったが、時は戦国時代。下剋上が当たり前で、平和と思われた街や村も、戦争になると焼け落ちてしまう。どこで戦争がおきるのか分からなかったし、野盗が多いし、身目のいい浮竹など、人さらいにさらわれて売られかけたこともある。
「そうだね・・・温泉宿にいって、夜の間だけ現世の海にいこう。修学旅行で、夜の海と空を見たように・・・・・そうしよう」
「ああ、いいな・・・・現世は怖いが、夜の海と空は好きだ」
人に、危害を無意味に与えることは禁じられている。それが野盗でもだ。
夜の海は静かだ。
月明りしかない今の時代は、現世の星空は綺麗すぎて、感動できる。
あの夜の空を、もう一度みてみたい。
修学旅行の時、見た景色をもう一度。
世界の終わりがくるような、星の海を。
「もう夜だし、少し外に出てもいいか?」
「無茶はしてないね?」
「今は大丈夫だ・・・少し星を見てみたい」
「現世の空にはまけるけど、尸魂界の空も綺麗だからね」
二人して、寮をぬけだして学院の屋上に登った。
寝転がると、星の海が広がっていた。
「空が落ちてきそうだ」
「そうだね」
浮竹には念のためにと上着を羽織らせてあるし、薬も飲ませた。
京楽の手配した医者の薬だ。効き目がとてもあるが、高価すぎて浮竹には手が出せない代物だった。
「僕は、君のためなら星さえ落とす」
「花天狂骨でか?」
「そうだよ」
「じゃあ、俺は双魚理で月でも落とそうか」
こうやって、他愛ない時間をお互い大事に過ごせる学院の生活も、あと半年もない。
星を落とし、月を落としたらきっとこの儚い世界は終わる。
二人は、手を繋ぎあう。
長く伸びた浮竹の髪に口づけながら、京楽は星の海を見る。
手を伸ばせば、掴めそうで。
浮竹に口づけると、京楽は浮竹の瞳を見た。翡翠の瞳に、星の海が広がっている。それがとても綺麗で、言葉を失った。
「どうした?」
「・・・・星を映す浮竹の瞳の色があまりにも綺麗だから、見惚れてた」
「恥ずかしやつだな」
そんな言葉を平気で口にだす京楽に、浮竹の白い肌が上気した。
「君を食べてもかわまわないかい?」
「寮の、部屋でなら・・・・」
冗談でいったつもりだったのに、そう返されて、京楽は浮竹を抱き上げた。
「おい、京楽?」
「時間は有限だからね」
君のためなら、雪も星も。
空さえも落とそう。
学院では、体育祭があった。
クラス対抗で、体力を競い合うのだ。
最近取り入れられたらしい行事で、それがとてもめんどくさいので、京楽はさぼっていた。
「京楽!京楽!」
さぼっていると、浮竹が探しにきた。
それを無視して、目をつぶる。
「やっぱりここにいた」
白い髪の麗人は、桜の大木の枝の上で居眠りを決め込んだ京楽を発見した。
「浮竹・・・君、なんで僕がいる場所がわかるの?」
この桜の木以外にも、校庭の納谷の上とか屋上、空き部屋・・・・京楽がさぼりに身を隠す場所はたくさんあるが、いずれも浮竹に見つかっている。
「なんとなく分かるんだ」
「霊圧は閉じているのに・・・」
「それでも、なんとなく分かる。お前がいきそうな場所は、天候や授業の教科によって、大体決まってるしな」
「霊圧を閉じるだけ無駄かい?」
「そういうことだな」
浮竹が、手を伸ばしてくる。その手をとろうとした。
ぐらりと、浮竹の体が傾ぐ。
「浮竹!」
なんとか、抱き寄せた。
「ごほっごほっ・・・・・っ、少し、すぐにおさまるから・・・」
苦しそうに身を屈ませる浮竹の背中を撫でる。
「ほんとに大丈夫?」
浮竹は、念のためにと携帯していた薬を飲む。
「水、とってくるよ」
「ああ、すまない・・・」
紙コップを手に入れて、水をもって桜の木の上にいくと、浮竹が平気な顔をしていた。
「一時的な発作だったらしい。薬を飲んだら、すぐに収まった」
水を受け取り、飲んでいく。
水を嚥下する喉の白さが眩しくて、もう完全に葉桜になってしまった桜の大木を見上げた。
「君、今日はもう休んだほうがいいよ。僕が説明しておくから、寮の部屋に戻りなさいな」
「いや、今日は体育祭だぞ。最後のリレーのアンカーは俺だ。でなくては」
拳を握りしめて力説する浮竹に、溜息を零す。
「そんな体で・・・・・」
「こんな体だからこそ、体験できるものは体験しておきたいんだ」
結局、京楽は発作の収まった浮竹に連れられて、体育祭に出る羽目になった。
特進クラスなので、浮竹と京楽のクラスにはハンデがもうけられていた。
「こういうのでハンデとか、ちょっとおかしくないか?」
鬼道や剣術の腕ではない。ただ、基礎体力を競うものだ。霊圧の高さも関係ない。
「まぁ、基礎体力の高い子がうちのクラスには多いからね」
「それはまぁ、そうなんだが。京楽とかな」
「僕の体力は普通だよ」
「体育の授業は5段階中5だっただろう」
「あんなの、子供の遊びだよ・・・・・」
何はともあれ、体育祭は開催された。
京楽にとって、もう何度も体育祭など経験したので、新鮮ではなかった。
騎馬競争になると、京楽が鬼のように他のクラスのハチマキを全部とってしまい、歓声と野次が飛び交う。
「どっかいけー特進クラス!」
「素敵―京楽くん!」
「つきあってー!」
無駄に金があり、見た目もそこそこなので、京楽は女によくもてた。
その黄色い声に、浮竹は何も思わない様子で、自分のクラスを応援していた。
少しでも焼いてくれたら、可愛げがあるのにと思う。付き合っているのだから、少しは焼いてくれればいいのにと
借り者競争だの、玉入れだの・・・・・本当に、死神になるにはどうでもいいことばかりだった。
すぐに飽きて、与えられていた席で半分眠っていた。
「きゃー浮竹さーん」
「浮竹君、いいぞその調子だ」
「いけー浮竹!」
浮竹と、自分の恋人を呼ぶ声に目をあけると、種目も最後のリレーになっていた。
アンカーの浮竹は、バトンを受け取ると風のように走っていく。二人抜いて、ゴールした。
「やったー!俺たちのクラスの優勝だ!」
その年は、設けられたハンデなどものともせず、特進クラスは優勝した。
優勝の旗が、クラスの委員長に渡される。
「最後すごかったなー浮竹」
「浮竹君のお陰だね」
「浮竹君かっこよかった」
浮竹に群れる人込みをかきわけて、京楽は浮竹を抱き上げた。
「え、どうしたの?」
「どうなってるんだ?」
京楽は、瞬歩でその場を去った。
「ごほっごほっ」
居場所が変わったとたん、苦し気に身を捩る。
「だから、部屋に戻っておくべきだっていったのに。我慢するなんて、無茶だよ」
「ごほっごほっ」
咳と一緒に、真紅の血が散った。
「ほらいわんこっちゃない!」
「すまな・・・・・ごほっごほっ」
「君、最後のリレー発作我慢して走ってたね。周りに人だかりができても、ずっと我慢してたでしょ」
「ごほっごほっ・・・・・・それは・・・」
「僕は怒ってるんだ。そんな君に。どうして我慢するの。リレーのアンカーなんて、どうでもいいでしょ」
「どうでも・・・よくない・・・・ごほっ」
「どうでもいいね。大切な君が辛い目をあうことが、僕にはとても辛いんだ」
「きょうら・・・く・・・・・・」
血を吐き出すその血を受け入れるように、唇を奪う。
そのまま、結局浮竹は大量の血を吐いて意識を失った。
「・・・・すまない、京楽」
見知った、寮の自室だった。
相部屋の相手である京楽は、看病し疲れたのか、浮竹の手を握ってベッドの上に肘をついて寝ていた。
「ん・・・気づいたのかい?」
「ああ・・・・・すまない、京楽」
「謝るのはいいから。もっと、自分を大切にして」
頭を撫でられた。
「でも、何もかもが新鮮で・・・・」
授業すらも。子供の頃病気のせいで。家の自室にいることをほぼ強制された浮竹にとって、外で感じるもの全てが新鮮なのだ。
「念のため、明日も休むんだよ。君、意識失って二日はねこんでたからね」
「二日!?京楽、まさかその間・・・・」
「さぼったよ。君のいない学院なんて、いても意味がない」
かっと頬に朱がさすのが分かった。
「一緒に死神になって、護廷13隊に入るんだろう?授業をさぼっていると、推薦枠から外れてしまうぞ」
「そんなことないよ。君と僕の実力なら・・・・もう、護廷13隊の席官クラスは用意しているって、この前山じいがいってた」
「元柳斎先生が・・・・・そうか」
「嬉しくないの?」
「嬉しい。でも、学院ともさよならになるのかと思うと、少し寂しい」
3月には、卒業だ。
卒業と同時に、浮竹は13番隊、京楽は8番隊の、席官クラスが用意されてある。
仕事に慣れるのが先決で、しばらくの間二人きりでいる時間などとれそうにない。
憧れの死神になり、護廷13隊に入れるのは嬉しかったけれど、京楽と共に寝起きするのももう終わりかと思うと、少しばかりの寂寥感を感じた。
「卒業、したくないな・・・」
それは、浮竹には珍しい言葉だった。
「どうしたの浮竹。あんなに、死神になりたがってたのに」
「お前と寝起きを共にし、鍛錬したり勉強したりするのが終わりかと思うと、寂しくて」
その言葉に、京楽が浮竹を抱き締めた。
「京楽?」
「今の君はとてもいいよ。素直だ。発作の時も、隠したり我慢したりしないでほしい」
「もう、そんなこともないだろう・・・これといった行事もないし」
「そうだ。二人で、卒業旅行にいこう」
「卒業旅行?」
「そう。現世もいいけど・・・今の現世は確か戦国時代で、物騒だからね。流魂街にでもいこう」
瀞霊廷の外に出るのは、虚退治以外にないので、その提案は魅力的だった。
流魂街には治安の悪い場所もあるが、瀞霊廷の近くなら治安もよいし、少し遠出すれば温泉街などが広がっている。色街もある。
その色街で、京楽はよく女を買っていた。浮竹を手に入れてからは、やめてしまったが。入学当初は女遊びがひどすぎて、停学を食らったこともある。
「温泉宿でもいいよね?もっと君が好きそうな・・・現世の海にいきたいけど、野盗の類がめんどうだからね」
何度か現世に虚退治の任務にいったが、時は戦国時代。下剋上が当たり前で、平和と思われた街や村も、戦争になると焼け落ちてしまう。どこで戦争がおきるのか分からなかったし、野盗が多いし、身目のいい浮竹など、人さらいにさらわれて売られかけたこともある。
「そうだね・・・温泉宿にいって、夜の間だけ現世の海にいこう。修学旅行で、夜の海と空を見たように・・・・・そうしよう」
「ああ、いいな・・・・現世は怖いが、夜の海と空は好きだ」
人に、危害を無意味に与えることは禁じられている。それが野盗でもだ。
夜の海は静かだ。
月明りしかない今の時代は、現世の星空は綺麗すぎて、感動できる。
あの夜の空を、もう一度みてみたい。
修学旅行の時、見た景色をもう一度。
世界の終わりがくるような、星の海を。
「もう夜だし、少し外に出てもいいか?」
「無茶はしてないね?」
「今は大丈夫だ・・・少し星を見てみたい」
「現世の空にはまけるけど、尸魂界の空も綺麗だからね」
二人して、寮をぬけだして学院の屋上に登った。
寝転がると、星の海が広がっていた。
「空が落ちてきそうだ」
「そうだね」
浮竹には念のためにと上着を羽織らせてあるし、薬も飲ませた。
京楽の手配した医者の薬だ。効き目がとてもあるが、高価すぎて浮竹には手が出せない代物だった。
「僕は、君のためなら星さえ落とす」
「花天狂骨でか?」
「そうだよ」
「じゃあ、俺は双魚理で月でも落とそうか」
こうやって、他愛ない時間をお互い大事に過ごせる学院の生活も、あと半年もない。
星を落とし、月を落としたらきっとこの儚い世界は終わる。
二人は、手を繋ぎあう。
長く伸びた浮竹の髪に口づけながら、京楽は星の海を見る。
手を伸ばせば、掴めそうで。
浮竹に口づけると、京楽は浮竹の瞳を見た。翡翠の瞳に、星の海が広がっている。それがとても綺麗で、言葉を失った。
「どうした?」
「・・・・星を映す浮竹の瞳の色があまりにも綺麗だから、見惚れてた」
「恥ずかしやつだな」
そんな言葉を平気で口にだす京楽に、浮竹の白い肌が上気した。
「君を食べてもかわまわないかい?」
「寮の、部屋でなら・・・・」
冗談でいったつもりだったのに、そう返されて、京楽は浮竹を抱き上げた。
「おい、京楽?」
「時間は有限だからね」
君のためなら、雪も星も。
空さえも落とそう。
日番谷隊長の受難Ⅶ
今日もいい天気だった。8番隊の金持ちの京楽の手で、半壊していた執務室はすぐに元に戻っていた。
いっそ、隊舎も全て建て直してもらおうか。
最近、一部の隊舎で雨漏りが酷いといっていた。
京楽に頼んでみようか・・・・しかし、京楽が浮竹のからまないことに金を出すことはなさそうだなと、思案にふけりながら、松本が出したお茶を飲んでいた。
「どうしたんですかー隊長」
「いやな、上流貴族はいいなと思ってな」
「隊長!まさか京楽隊長に気があるんじゃ!」
ブーーー!
お茶を、松本の顔に吹き出してしまった。
「ひどい、隊長!」
「ばか、お前のせいだ!」
口元をハンカチでぬぐって、お茶を入れ直す。茶菓子を口にした。
今日は月曜日だ。仕事など、1週間分を今日の朝に片付けてしまった。することがない。
雛森でも誘って、甘味屋でもいこうか。
そう悩んでいるところに、浮竹がやってきた。
「日番谷隊長!春水の子供が生まれた!」
ブーーーー!
また、日番谷はお茶を吹き出していた。
「京楽の隠し子か?」
嬉し気な浮竹の様子に、隠し子ではないなと思った。
「いや、十四郎の子供だ。妊娠して、子供ができた」
「は?お前男だろ?」
浮竹のつま先からてっぺんを見る。白い髪と翡翠の瞳が綺麗だなと思った。身長はやや高めで細いが、麗人とっていい秀麗な容姿をしている。
でも、女には見えない。ちゃんとした男だ。女装しても、背丈のせいで男であるとばれるだろう。
「何を言ってるんだ、当たり前だろうが」
「涅マユリあたりから、性別転換の薬でも作らせたのか?」
あの涅マユリならやりそうだ。喜々として薬を作って、実験体にとしそうだ。
「そんなの作られてももう飲むものか!」
「過去にあったのかよ・・・・・」
浮竹の女の姿を想像する。
それなりの美女にはなるだろうなとは、思った。
「それより春水の子供が元気すぎて、大変なんだ」
「春水と十四郎の子がか?」
「そうなんだ」
ブーーー!
日番谷は、また茶を吹き出した。
「この話・・・オメガバースとかじゃないだろ?男が妊娠なんてできないはず・・・」
「男が妊娠するわけないだろ。何を言っているんだ、日番谷隊長?」
小首を傾げてくる浮竹がかわいい・・・・・ではなく、不思議そうにしていた。
「なんの子供なんだ。はっきりしやがれ」
「犬だ」
「犬ぅ?」
思いがけない言葉に、日番谷は間抜けな声をあげていた。
「俺の実家でかってる「春水」って名前の犬が、「十四郎」って名前のメス犬に子供を7匹もうませたんだ。このまえ帰郷したら、子供の犬がぶんぶん尻尾降って、抱き着いてきて、それは大変な目にあった」
「紛らわしい!犬に「春水」だとか「十四郎」だとか名づけるんじゃねぇ!」
「いや、名付けたのは俺の兄弟で・・・・・それより、里子先を探しているんだ。日番谷隊長、一匹いらないか?一応、血統書つきの柴犬だ」
かわいいだろうなとは思ったが、隊長としての執務を考えると、飼う気にはなれない。
「7番隊の狛村のところはどうだ。隊舎裏で犬を飼っているし、隊員もみんな犬好きだから、引き取り手があるんじゃねーのか」
「そうか、ありがとう!」
そのまま、長椅子に座る。
用は終わっただろうに去ろうとはせず、松本がいれたお茶をすすっていた。そして、じっとこちらを見てくる。
「なんなんだ?」
「いや、暇だから遊びにきたんだが・・・日番谷隊長も暇そうだな。花札でもしないか。ああ、これあげるの忘れてた」
お菓子のつまった袋を手渡され、頭を撫でられた。
「子供扱いするんじゃねぇ!」
「まぁまぁ。花札でも・・・・・京楽は、来ていないよな?」
京楽が来るのが嫌なのか、浮竹は霊圧を消していた。
「霊圧消しても無駄だよ~浮竹ぇ~。雨乾堂にも甘味屋にもいないし、探したよ」
ゆらりと現れた京楽は、浮竹センサーでもあるのか、浮竹の行く場所が大抵見当がつくようだった。
「わあああああ!日番谷隊長、助けてくれ!」
日番谷の背中に隠れる浮竹。
「何をしでかした、浮竹!」
「何もしてない!」
「だったら堂々としろ!もっと男らしく!」
「分かった・・・・・いいか、しないぞ!今日はしないからな!おとついしたばかりだろう!」
何か嫌な予感がする。
「そんなこと言わないで浮竹。週に2回ってきめたじゃない。今日でもいいでしょ?」
「いやだ、おとついしたばかりじゃないか!」
日番谷を押しのけて、浮竹の傍にきた京楽は、もっていた酒を口にふくんで、それを浮竹に飲ませた。
「んうっ」
喉を焼く酒が喉に流し込まれる。
「やっ、いやっ・・・・・・・」
松本は、腐った目を見開いて鼻息も荒く、顔を赤くしながらもその様子を見ている。
「・・・・・・蒼天に座せ、氷輪丸・・・・・・・」
もう半ばやけくそだ。
この二人は、10番隊の執務室を自分の部屋とでも思っているのだろうか。
氷の龍が天を駆けていく。
「はぁ・・・・・7回目か・・・・・・」
龍がいなくなった空を見上げる。
執務室半壊、7回目。
またそろそろ、山本総隊長あたりに、怒られそうだと思いながら、無事だった湯呑からお茶を飲むであった。
いっそ、隊舎も全て建て直してもらおうか。
最近、一部の隊舎で雨漏りが酷いといっていた。
京楽に頼んでみようか・・・・しかし、京楽が浮竹のからまないことに金を出すことはなさそうだなと、思案にふけりながら、松本が出したお茶を飲んでいた。
「どうしたんですかー隊長」
「いやな、上流貴族はいいなと思ってな」
「隊長!まさか京楽隊長に気があるんじゃ!」
ブーーー!
お茶を、松本の顔に吹き出してしまった。
「ひどい、隊長!」
「ばか、お前のせいだ!」
口元をハンカチでぬぐって、お茶を入れ直す。茶菓子を口にした。
今日は月曜日だ。仕事など、1週間分を今日の朝に片付けてしまった。することがない。
雛森でも誘って、甘味屋でもいこうか。
そう悩んでいるところに、浮竹がやってきた。
「日番谷隊長!春水の子供が生まれた!」
ブーーーー!
また、日番谷はお茶を吹き出していた。
「京楽の隠し子か?」
嬉し気な浮竹の様子に、隠し子ではないなと思った。
「いや、十四郎の子供だ。妊娠して、子供ができた」
「は?お前男だろ?」
浮竹のつま先からてっぺんを見る。白い髪と翡翠の瞳が綺麗だなと思った。身長はやや高めで細いが、麗人とっていい秀麗な容姿をしている。
でも、女には見えない。ちゃんとした男だ。女装しても、背丈のせいで男であるとばれるだろう。
「何を言ってるんだ、当たり前だろうが」
「涅マユリあたりから、性別転換の薬でも作らせたのか?」
あの涅マユリならやりそうだ。喜々として薬を作って、実験体にとしそうだ。
「そんなの作られてももう飲むものか!」
「過去にあったのかよ・・・・・」
浮竹の女の姿を想像する。
それなりの美女にはなるだろうなとは、思った。
「それより春水の子供が元気すぎて、大変なんだ」
「春水と十四郎の子がか?」
「そうなんだ」
ブーーー!
日番谷は、また茶を吹き出した。
「この話・・・オメガバースとかじゃないだろ?男が妊娠なんてできないはず・・・」
「男が妊娠するわけないだろ。何を言っているんだ、日番谷隊長?」
小首を傾げてくる浮竹がかわいい・・・・・ではなく、不思議そうにしていた。
「なんの子供なんだ。はっきりしやがれ」
「犬だ」
「犬ぅ?」
思いがけない言葉に、日番谷は間抜けな声をあげていた。
「俺の実家でかってる「春水」って名前の犬が、「十四郎」って名前のメス犬に子供を7匹もうませたんだ。このまえ帰郷したら、子供の犬がぶんぶん尻尾降って、抱き着いてきて、それは大変な目にあった」
「紛らわしい!犬に「春水」だとか「十四郎」だとか名づけるんじゃねぇ!」
「いや、名付けたのは俺の兄弟で・・・・・それより、里子先を探しているんだ。日番谷隊長、一匹いらないか?一応、血統書つきの柴犬だ」
かわいいだろうなとは思ったが、隊長としての執務を考えると、飼う気にはなれない。
「7番隊の狛村のところはどうだ。隊舎裏で犬を飼っているし、隊員もみんな犬好きだから、引き取り手があるんじゃねーのか」
「そうか、ありがとう!」
そのまま、長椅子に座る。
用は終わっただろうに去ろうとはせず、松本がいれたお茶をすすっていた。そして、じっとこちらを見てくる。
「なんなんだ?」
「いや、暇だから遊びにきたんだが・・・日番谷隊長も暇そうだな。花札でもしないか。ああ、これあげるの忘れてた」
お菓子のつまった袋を手渡され、頭を撫でられた。
「子供扱いするんじゃねぇ!」
「まぁまぁ。花札でも・・・・・京楽は、来ていないよな?」
京楽が来るのが嫌なのか、浮竹は霊圧を消していた。
「霊圧消しても無駄だよ~浮竹ぇ~。雨乾堂にも甘味屋にもいないし、探したよ」
ゆらりと現れた京楽は、浮竹センサーでもあるのか、浮竹の行く場所が大抵見当がつくようだった。
「わあああああ!日番谷隊長、助けてくれ!」
日番谷の背中に隠れる浮竹。
「何をしでかした、浮竹!」
「何もしてない!」
「だったら堂々としろ!もっと男らしく!」
「分かった・・・・・いいか、しないぞ!今日はしないからな!おとついしたばかりだろう!」
何か嫌な予感がする。
「そんなこと言わないで浮竹。週に2回ってきめたじゃない。今日でもいいでしょ?」
「いやだ、おとついしたばかりじゃないか!」
日番谷を押しのけて、浮竹の傍にきた京楽は、もっていた酒を口にふくんで、それを浮竹に飲ませた。
「んうっ」
喉を焼く酒が喉に流し込まれる。
「やっ、いやっ・・・・・・・」
松本は、腐った目を見開いて鼻息も荒く、顔を赤くしながらもその様子を見ている。
「・・・・・・蒼天に座せ、氷輪丸・・・・・・・」
もう半ばやけくそだ。
この二人は、10番隊の執務室を自分の部屋とでも思っているのだろうか。
氷の龍が天を駆けていく。
「はぁ・・・・・7回目か・・・・・・」
龍がいなくなった空を見上げる。
執務室半壊、7回目。
またそろそろ、山本総隊長あたりに、怒られそうだと思いながら、無事だった湯呑からお茶を飲むであった。
日番谷隊長の受難Ⅵ
浮竹がいるだけで、まるでそこは陽だまりのようで。
太陽のようだと思った。ぽかぽかしていて、優しい気分になれる。
でも、いい加減にしてくれと日番谷は思った。
浮竹がぱったり来なくなったことが寂しくて、いつでも遊びに来いとは確かに言った。でも、できれば浮竹単体がよかった。
浮竹の隣には、べったりと京楽が寄り添っていた。
「聞いてくれ、日番谷隊長」
嫌な予感がしながらも、日番谷は愛用している茶飲みから、茶をすする。
「京楽が1週間に3回しようとするんだ。俺は1回でも十分なのに」
ブーーーー!
日番谷は、お茶を吹き出していた。
「な、なんの話をしてやがる」
「いや、体を重ね合わせるのって結構体力がいるだろう?」
「知るか!」
氷輪丸に手をかける。でも、自制した。
「そういことは、京楽に言いやがれ」
「何度も言った。なのに、週に3回は譲れないって・・・・」
「浮竹ぇ、僕は週3回でも少ないと思っているんだよ」
「京楽隊長の言う通りですよ浮竹隊長!愛しあってるなら、週3くらい当たり前じゃないですか」
「松本副隊長まで・・・・・」
「乱菊ちゃんの言う通りだよ、浮竹。僕たちは恋人同士なんだし、週に3回くらいしてもいいじゃないの」
「でも、もうそんなに若くないんだぞ」
「僕らはまだまだ現役じゃない」
京楽が、被っていた笠をくいっとあげて、浮竹の長い白髪をつかんで口づける。
「俺の体がもたない」
「君が臥せった時や体調の悪い時は1か月だって手を出さない時があるじゃないか。その時の分までと思えばいいよ」
「だからって1週間に3回はないだろ!せめて週2にしろ!」
「週2ならいいんだ。その言葉しっかりと受け止めたからね」
「え?」
ああ、浮竹は墓穴を掘ったな。
日番谷は思った。
「じゃあさっそく今日の夜から。来週までに、今日の夜をあわせ2回ね」
「え、え、え?」
まだ混乱している浮竹を残して、京楽は指でOKサインを出していた。それに応えているのは松本だった。
はめられやがった・・・・。
日番谷は言葉にしない。浮竹が哀れで、その頭を撫でた。
「日番谷隊長!」
かすかに涙をためながら、浮竹が抱き着いてくる。
ふわりと甘い花の香がした。
「浮竹は、何か香水でもつけているのか?」
「いや?何もつけていないが」
シャンプーか石鹸の匂いかと思ったが、不思議なことにそうではないらしい。
それが浮竹の香なんだと思った時には、花天狂骨が、日番谷の首筋を撫でていた。
「日番谷隊長・・・・・浮竹に手を出すのは、許さないよ」
「手なんてだしねぇ」
「じゃあその手はなに?」
日番谷の右手はいつの間にか浮竹の頬にそえられており、浮竹はそれにすり寄っていた。
「おい、浮竹!」
「日番谷隊長、助けてくれ・・・・・・」
「いや、無理だ」
はっきりそう言って、抱き着いてくる浮竹を、とんと肩を押して京楽のほうにやる。
「きゃー浮竹隊長と隊長のからみ写真、とっちゃった!」
「今すぐ消せ、松本」
「ぶー。いくら隊長の頼みでも聞けません」
そういって、携帯をいじって女性死神協会のメルアドに転送してしまった。
「松本おおおおおお!」
「きゃあああああああ!逃げるに決まってるわよ、こんな時は!」
松本が瞬歩で逃げ出した。
「週2なんてあんまりだ、京楽」
「もう無駄だよ。あんまり我儘いうなら、週3にするよ?」
「週2でいい・・・・・・・」
がくりと、肩を落とす浮竹をみる。
嬉しそうな京楽の瞳と、目が合う。
「日番谷隊長が、証人だからね」
「俺を巻き込むな」
「浮竹、大好きだよ・・・・」
「きょうら・・・・・ああっ」
「蒼天に座せ、氷輪丸ーーーーーーー!!!」
氷の龍は天高くまで昇っていった。
太陽のようだと思った。ぽかぽかしていて、優しい気分になれる。
でも、いい加減にしてくれと日番谷は思った。
浮竹がぱったり来なくなったことが寂しくて、いつでも遊びに来いとは確かに言った。でも、できれば浮竹単体がよかった。
浮竹の隣には、べったりと京楽が寄り添っていた。
「聞いてくれ、日番谷隊長」
嫌な予感がしながらも、日番谷は愛用している茶飲みから、茶をすする。
「京楽が1週間に3回しようとするんだ。俺は1回でも十分なのに」
ブーーーー!
日番谷は、お茶を吹き出していた。
「な、なんの話をしてやがる」
「いや、体を重ね合わせるのって結構体力がいるだろう?」
「知るか!」
氷輪丸に手をかける。でも、自制した。
「そういことは、京楽に言いやがれ」
「何度も言った。なのに、週に3回は譲れないって・・・・」
「浮竹ぇ、僕は週3回でも少ないと思っているんだよ」
「京楽隊長の言う通りですよ浮竹隊長!愛しあってるなら、週3くらい当たり前じゃないですか」
「松本副隊長まで・・・・・」
「乱菊ちゃんの言う通りだよ、浮竹。僕たちは恋人同士なんだし、週に3回くらいしてもいいじゃないの」
「でも、もうそんなに若くないんだぞ」
「僕らはまだまだ現役じゃない」
京楽が、被っていた笠をくいっとあげて、浮竹の長い白髪をつかんで口づける。
「俺の体がもたない」
「君が臥せった時や体調の悪い時は1か月だって手を出さない時があるじゃないか。その時の分までと思えばいいよ」
「だからって1週間に3回はないだろ!せめて週2にしろ!」
「週2ならいいんだ。その言葉しっかりと受け止めたからね」
「え?」
ああ、浮竹は墓穴を掘ったな。
日番谷は思った。
「じゃあさっそく今日の夜から。来週までに、今日の夜をあわせ2回ね」
「え、え、え?」
まだ混乱している浮竹を残して、京楽は指でOKサインを出していた。それに応えているのは松本だった。
はめられやがった・・・・。
日番谷は言葉にしない。浮竹が哀れで、その頭を撫でた。
「日番谷隊長!」
かすかに涙をためながら、浮竹が抱き着いてくる。
ふわりと甘い花の香がした。
「浮竹は、何か香水でもつけているのか?」
「いや?何もつけていないが」
シャンプーか石鹸の匂いかと思ったが、不思議なことにそうではないらしい。
それが浮竹の香なんだと思った時には、花天狂骨が、日番谷の首筋を撫でていた。
「日番谷隊長・・・・・浮竹に手を出すのは、許さないよ」
「手なんてだしねぇ」
「じゃあその手はなに?」
日番谷の右手はいつの間にか浮竹の頬にそえられており、浮竹はそれにすり寄っていた。
「おい、浮竹!」
「日番谷隊長、助けてくれ・・・・・・」
「いや、無理だ」
はっきりそう言って、抱き着いてくる浮竹を、とんと肩を押して京楽のほうにやる。
「きゃー浮竹隊長と隊長のからみ写真、とっちゃった!」
「今すぐ消せ、松本」
「ぶー。いくら隊長の頼みでも聞けません」
そういって、携帯をいじって女性死神協会のメルアドに転送してしまった。
「松本おおおおおお!」
「きゃあああああああ!逃げるに決まってるわよ、こんな時は!」
松本が瞬歩で逃げ出した。
「週2なんてあんまりだ、京楽」
「もう無駄だよ。あんまり我儘いうなら、週3にするよ?」
「週2でいい・・・・・・・」
がくりと、肩を落とす浮竹をみる。
嬉しそうな京楽の瞳と、目が合う。
「日番谷隊長が、証人だからね」
「俺を巻き込むな」
「浮竹、大好きだよ・・・・」
「きょうら・・・・・ああっ」
「蒼天に座せ、氷輪丸ーーーーーーー!!!」
氷の龍は天高くまで昇っていった。
永遠の恋人
「シロおいで」
京楽が、飼っている小鳥が今日もやってきた。
仕事を片付けた後に、窓辺に止まっているのを見つけて、手をさしだすと小鳥は京楽の手に止まった。
京楽が、戯れにシロと名付けた野生の小鳥は、今日も番のクロと一緒にやってきて、餌を啄んでいた。
「クロも懐いたな」
浮竹が、餌の入った器を置くと、クロと名付けられた、多分メスの小鳥は、ちょんちょんと歩いてきて、浮竹の肩にとまった。
「まるで、僕と君みたいだねぇ」
「クロは多分メスだぞ」
「性別なんてどうでもいじゃない」
「まぁ、確かに」
執務室に、綿を置いておくと、二羽の小鳥は巣作りの真っ最中なのか、綿をくちばしでつまんでは、外に出て、また戻ってくると綿をつまんでいった。
「初夏には、卵がかえってヒナが生まれて・・・・それが、ずっと重なって、時は経っていくんだろうね」
4番隊の虎徹勇音の精密検査で、浮竹が肉体の時間を止めているのが発覚した。
浮竹は、涅マユリに頼んで、ゆっくりではあるが老化する薬を作ってもらい、それを服用していた。
「俺は、京楽と共に在ることを望んでいる」
「だからって何も、薬を飲まなくたって・・・・・・」
「すぐに老化が訪れるわけじゃない。今までと変わらないスピードで、ゆっくり時が過ぎていくだけだ。一人で残されるなんて、絶対に嫌だ」
そう言って、今月も薬を飲んでしまった。
月に一度、錠剤を2つ。それが涅マユリが作った薬の飲み方だ。
あのマユリのことだから、何か副作用でもあるのかと覚悟していたが、副作用は何もなかった。
チチチチと鳴いて、二羽の小鳥は去ってしまった。
その方角を、浮竹が少し寂しそうに見ていた。
「俺にも、翼があればいいのに」
「どうして?」
「お前の元に、いつでもいけるから」
「今こうしているじゃないか」
「ああ・・・・・」
浮竹が時を止めていると知った時、京楽は騒がなかった。ただ静かに、そうかいと呟いて、浮竹の白い長い・・・・今では、腰より長くなってしまった髪を、手で弄んでいた。
京楽は、自然のままを好む。
浮竹が時を刻まないなら、それも一つの生き方だと受け入れた。だが、浮竹にはそんな真実は受け入れられなかった。
マユリは、浮竹に実験体になれとは言わなかった。ただで、薬をくれた。
その薬が本当にきいているのか、まだ実感できない。
また共に過ごすようになってから、2年も経過していない。
「こら、またぬか苺花!」
ルキアが、執務室に入ってきた。恋次との間の一人娘の苺花は、浮竹と京楽にもよく懐いていた。
「きゃははははは。母上ここまでおいで」
苺花は、浮竹の白い髪をみる。
「シロさん、相変わらず美人だね!」
綾瀬川弓親に美人だと挨拶するような気軽さで、挨拶してきた。
「苺花ちゃんも美人だな」
「シロさんって、チカさんみたいなこというんだね。今日も京楽総隊長と一緒なんだ」
「ああ、恋人同士だからな」
「そういうの、腐ってるっていうんだよね」
「ちょっと苺花ちゃん、どこでそんな話手に入れてるの」
京楽が、おませな苺花に声をかける。
「チカさんと師匠だよ!二人とも、シロさんと総隊長は腐ってるけどできててあつあつなんだっていってた。あたしには、いまいちぴんとこないけど、大人な関係なんだね!」
「一角と弓親か・・・あいつら、今でもつるんでるのか」
浮竹は、会う機会がないので、一角と弓親をあまり詳しくは知らない。
なんでも、数十年も一緒にいるのに、できていないらしい。それでも、ずっと共にいる。そんな関係もいいなと、ふと浮竹は思う。
「すみません、京楽総隊長、浮竹隊長。またぬか、苺花!」
「朽木、あまり叱ったりせず、ほどほどにな」
「はい、浮竹隊長!」
ルキアは、隊長でなくなった浮竹を、隊長と未だに呼ぶ。そして浮竹もまた、阿散井となったルキアを阿散井ではなく朽木と呼んだ。
ルキアと浮竹は、部下と上司としての関係で時を止めている。
それをどうこういうつもりは京楽にはない。
「朽木の結婚式には出れなかったからなぁ。苺花ちゃんの結婚式には、必ず出るときめてあるんだ」
現世の一護の息子である一勇と、いい関係みたいな話を、この前ルキアにしてもらった。
「年はとるもんだなぁ。いや、生き返ったら朽木が結婚していて一人娘がいたり、俺のあとを朽木が継いでいたり・・・・本当に、びっくりすることばかりで」
「浮竹は、未だに慣れないんだね」
「そうだな。でも、お前の隣に在れるだけ、幸せだ」
共に寄り添いあいながら生きる。
寝ることも食べることも湯あみも仕事も、鍛錬も、散策などの息抜きさえ。共に在る。
周囲は、そんなに同じ時間を過ごして辛くないかというが、二人は平気だった。
普通に結婚した新婚さんでも、ここまで仲良くはいられないと、京楽の副官である七緒が言っていた。
二人は、永遠の恋人だ。
一度失った絆を取り戻した二人は、もう絆を絶たれないようにと、常に傍に在った。
一度添い遂げると、死ぬまで同じペアになる渡り鳥のように。
永遠の恋人は、今日も時を刻む。
京楽が、飼っている小鳥が今日もやってきた。
仕事を片付けた後に、窓辺に止まっているのを見つけて、手をさしだすと小鳥は京楽の手に止まった。
京楽が、戯れにシロと名付けた野生の小鳥は、今日も番のクロと一緒にやってきて、餌を啄んでいた。
「クロも懐いたな」
浮竹が、餌の入った器を置くと、クロと名付けられた、多分メスの小鳥は、ちょんちょんと歩いてきて、浮竹の肩にとまった。
「まるで、僕と君みたいだねぇ」
「クロは多分メスだぞ」
「性別なんてどうでもいじゃない」
「まぁ、確かに」
執務室に、綿を置いておくと、二羽の小鳥は巣作りの真っ最中なのか、綿をくちばしでつまんでは、外に出て、また戻ってくると綿をつまんでいった。
「初夏には、卵がかえってヒナが生まれて・・・・それが、ずっと重なって、時は経っていくんだろうね」
4番隊の虎徹勇音の精密検査で、浮竹が肉体の時間を止めているのが発覚した。
浮竹は、涅マユリに頼んで、ゆっくりではあるが老化する薬を作ってもらい、それを服用していた。
「俺は、京楽と共に在ることを望んでいる」
「だからって何も、薬を飲まなくたって・・・・・・」
「すぐに老化が訪れるわけじゃない。今までと変わらないスピードで、ゆっくり時が過ぎていくだけだ。一人で残されるなんて、絶対に嫌だ」
そう言って、今月も薬を飲んでしまった。
月に一度、錠剤を2つ。それが涅マユリが作った薬の飲み方だ。
あのマユリのことだから、何か副作用でもあるのかと覚悟していたが、副作用は何もなかった。
チチチチと鳴いて、二羽の小鳥は去ってしまった。
その方角を、浮竹が少し寂しそうに見ていた。
「俺にも、翼があればいいのに」
「どうして?」
「お前の元に、いつでもいけるから」
「今こうしているじゃないか」
「ああ・・・・・」
浮竹が時を止めていると知った時、京楽は騒がなかった。ただ静かに、そうかいと呟いて、浮竹の白い長い・・・・今では、腰より長くなってしまった髪を、手で弄んでいた。
京楽は、自然のままを好む。
浮竹が時を刻まないなら、それも一つの生き方だと受け入れた。だが、浮竹にはそんな真実は受け入れられなかった。
マユリは、浮竹に実験体になれとは言わなかった。ただで、薬をくれた。
その薬が本当にきいているのか、まだ実感できない。
また共に過ごすようになってから、2年も経過していない。
「こら、またぬか苺花!」
ルキアが、執務室に入ってきた。恋次との間の一人娘の苺花は、浮竹と京楽にもよく懐いていた。
「きゃははははは。母上ここまでおいで」
苺花は、浮竹の白い髪をみる。
「シロさん、相変わらず美人だね!」
綾瀬川弓親に美人だと挨拶するような気軽さで、挨拶してきた。
「苺花ちゃんも美人だな」
「シロさんって、チカさんみたいなこというんだね。今日も京楽総隊長と一緒なんだ」
「ああ、恋人同士だからな」
「そういうの、腐ってるっていうんだよね」
「ちょっと苺花ちゃん、どこでそんな話手に入れてるの」
京楽が、おませな苺花に声をかける。
「チカさんと師匠だよ!二人とも、シロさんと総隊長は腐ってるけどできててあつあつなんだっていってた。あたしには、いまいちぴんとこないけど、大人な関係なんだね!」
「一角と弓親か・・・あいつら、今でもつるんでるのか」
浮竹は、会う機会がないので、一角と弓親をあまり詳しくは知らない。
なんでも、数十年も一緒にいるのに、できていないらしい。それでも、ずっと共にいる。そんな関係もいいなと、ふと浮竹は思う。
「すみません、京楽総隊長、浮竹隊長。またぬか、苺花!」
「朽木、あまり叱ったりせず、ほどほどにな」
「はい、浮竹隊長!」
ルキアは、隊長でなくなった浮竹を、隊長と未だに呼ぶ。そして浮竹もまた、阿散井となったルキアを阿散井ではなく朽木と呼んだ。
ルキアと浮竹は、部下と上司としての関係で時を止めている。
それをどうこういうつもりは京楽にはない。
「朽木の結婚式には出れなかったからなぁ。苺花ちゃんの結婚式には、必ず出るときめてあるんだ」
現世の一護の息子である一勇と、いい関係みたいな話を、この前ルキアにしてもらった。
「年はとるもんだなぁ。いや、生き返ったら朽木が結婚していて一人娘がいたり、俺のあとを朽木が継いでいたり・・・・本当に、びっくりすることばかりで」
「浮竹は、未だに慣れないんだね」
「そうだな。でも、お前の隣に在れるだけ、幸せだ」
共に寄り添いあいながら生きる。
寝ることも食べることも湯あみも仕事も、鍛錬も、散策などの息抜きさえ。共に在る。
周囲は、そんなに同じ時間を過ごして辛くないかというが、二人は平気だった。
普通に結婚した新婚さんでも、ここまで仲良くはいられないと、京楽の副官である七緒が言っていた。
二人は、永遠の恋人だ。
一度失った絆を取り戻した二人は、もう絆を絶たれないようにと、常に傍に在った。
一度添い遂げると、死ぬまで同じペアになる渡り鳥のように。
永遠の恋人は、今日も時を刻む。
太陽が落ちる時
「浮竹という。よろしく」
院生の特進クラスで、はじめて友人になったのは、白い髪の麗人だった。
名を、浮竹十四郎。
下級貴族の、8人兄弟の長兄であると聞いた。
一方の京楽は、上級貴族の次男坊だった。金がありまっている京楽の両親は、金を与えれば後は放置しておけばいいというような人間で、厄介祓いだとばかりの学院にいれられた。別に、望んで死神になりたいわけではなかった。
反対に、浮竹は死神にならなければ食っていけないという状況で、学院の入学金とか授業代とか、全て推薦での金で賄っていた。
能力があれば身分は問わない-------------そういう学院であるからして、流魂街から通学しているような人間もいる。
上流貴族の、京楽の周りには人ができた。全部、ばらまく金につられてきた人間だ。
反対に、浮竹の周囲には、浮竹の優しさなどのその人格からできる、本当の意味の友人ができていた。
多分、羨ましかったんだと思う。
「京楽?」
のぞきこんでくる瞳が、翡翠みたいで見惚れていると、浮竹に不思議そうな顔をされた。
「あ、なんだい?」
「この書類なんだが、先生が配るを忘れたらしくて------------」
その後の言葉は、耳に入っていかなかった。
気づくと、その翡翠の瞳に口づけていた。
「京楽・・・・・・?」
「あ、いや・・・宝石みたいだなと思って。すまない。翡翠が好きなんだ。親が宝石商の仕事もしていてね。君の瞳が、極上の翡翠みたいだったから、つい」
なんとか誤魔化そうと必死になる京楽を、浮竹は見ていた。
「そうか。俺の瞳でいいなら、いつでも見ていいぞ」
そう、にこりと笑われた。
なんとか誤魔化せた・・・・。
京楽は、欲していた。
太陽を。
幼心の思い出は乳母とのものだ。乳母は暖かった。気苦労のせいで白髪になってしまったんだと笑っていた。目に少し緑が入っていて、綺麗だったのを覚えている。太陽のようだとかんじた。
年の差はあったが、本気で好きだった。
その乳母を亡くしたのは3年前だ。
まだ、彼女に恋慕していた。
代わりでいいから。太陽がほしかった。
できれば、緑色をもっている太陽がいい。
短い白い髪に、極上の翡翠の瞳をもつ、少年とも青年ともつかない年の浮竹は、求めいた太陽そのものに見えた。
浮竹の傍で過ごすことが多くなった。
浮竹は、本当に太陽のようだった。彼の周りにはいつも友人があふれていた。
最初は遠くから眺めるだけだった。
気づけば、その輪の中に入っていた。
欲しいと思った。
この太陽を振り返らせることができれば、どんなにいいかと思った。
「京楽、また授業を抜け出して・・・・・・」
さぼっていた京楽を、浮竹が叱って授業に連れ戻すことが多くなった。
それなりの友人としての関係は築けたのだと思う。
でも、まだどこかで太陽を欲していた。
ああ、この極上の翡翠は、研げばきっと、傾国になる・・・・・。
「浮竹」
「なんだ?」
「これ、あげるよ」
この前、親の金庫からくすねてきた磨いて綺麗にカットされた翡翠の石を、浮竹にあげた。
「こんな高価なもの、もらえない」
そう言って断ってくる浮竹に、嘘をつく。
「それ、イミテーションなんだ。偽物だから」
「そうなのか?なら、もらっておく。でも、こんな石、女の子の方が喜ぶだろう?何故、俺なんだ?」
そう聞かれると、普通に答えていた。
「君の瞳が、極上の翡翠だから。もしくはエメラルド。宝石みたいで綺麗だから、同じ色の石をあげたくて」
照れくさくもなくまくしたてると、浮竹は不思議そうにしていた。
「昨日の女の子に、あげればいいのに」
ぎくりとなる。
隣クラスの女子に告白されて、肉体関係に陥って、でもたった1週間で別れた。
京楽は女遊びが酷い。
そう噂される通りに、主に金目当てで近づいて告白してくる女を抱いて、捨てた。付き合う相手がいない時は、廓にいって女を買いあさった。
色街で買う女のほとんどが、目に緑に近い色の入った女だった。青とか灰色の時もあったが、どこが浮竹の瞳ににたかんじの女を選んでいた。美人とか不細工とか。そういうことにはこだわらなかった。
ある日、買ったのは花魁だった。飛ぶように金がかかった。濁ってはいるが、緑色の目をしていて、翡翠という名だった。
この女なら太陽になってくれるかと、告白すると、これは遊びなんだと言われた。色街で、普通女が男に本気になることはない。花魁とはいえ遊女だ。たくさんの男とそういう関係にある。
「浮竹・・・・・・」
行為の最中にそう呼んでしまい、翡翠という花魁は不機嫌になった。
「わっちを抱きながら、他の女の名を呼ぶなんて、酷いでありんす」
「あ、違うんだよ翡翠。浮竹はただの学友でね」
「もっと性質が悪いでありんす。その学友に惚れてるんでありんすか?」
「違う。違うんだよ」
一生懸命言い訳をして、翡翠を抱いた。金はかかったが、翡翠ならきっと偽りでいいから太陽になってくれると思った。
半月ほど関係は続いたが、翡翠は上級貴族の男に身請けされて、妾になるために花魁をやめてしまった。
また、なくした。
京楽は、酒に溺れた。
それを見かねた浮竹が、寮の部屋の相部屋の相手と部屋を交換して、京楽から酒をとりあげた。
「浮竹?なんでこの部屋に」
「頼んで、相部屋だった相手と部屋を交換してもらった。京楽、どうしたんだ。女の次は酒に溺れて・・・・何か、あったのか?」
さらさらと零れる短い白い髪に手を伸ばす。
「太陽が、欲しいんだ」
「太陽?」
浮竹の、翡翠の瞳に口づける。
「翡翠の瞳の、太陽が欲しい」
「?意味が分からない。飲み過ぎだぞ、京楽!」
京楽は、酒くさかった。どれだけ飲んだのか、酔っているのは明らかだった。
目に口づけらるのは二度目だったが、京楽だから許した。
一部の他の男のように邪(よこしま)な目で見てこない。
浮竹は、その可憐な容姿のせいで、同級生でなく、上級生からも同性から告白された。時には、無理強いさせられそうになった。
鬼道でなんとかしてきたが、いい加減うんざりする。
「浮竹・・・・・・・」
「なんだ、京楽?」
「僕の太陽にならないかい?翡翠の色をした太陽に」
「意味が、わからない・・・・もう、寝ろ」
手をとっていた。
抱き寄せる。体温は暖かかった。
「京楽?」
目の前に、極上の翡翠があった。
気づくと、京楽は浮竹の桜色の唇に、自分のそれを重ねていた。
「!」
浮竹が離れる。
「お前、酔いすぎだぞ。女と間違えるな!」
怒って、ベッドのほうに行ってしまった。
いきなり、同じ部屋になるなど、滑稽だ。京楽が求めていたのは、太陽だ。翡翠の色をした。
浮竹を、いつの間にか求めていた。
そんな相手と同室なのだ。
翡翠と別れてから、また京楽は女遊びが酷くなった。今度は緑の瞳ではなく、浮竹のような温かい女を探しては抱いて、行為の最中に「浮竹」と囁いた。
浮竹と同室なのは、精神上あまり好ましいものではなかった。
京楽の想いを知らずに、浮竹は京楽と、友人として接してくれる。
時間が少し経った。
京楽は、いつの間にか浮竹の親友になっていた。
院生の特進クラスで、はじめて友人になったのは、白い髪の麗人だった。
名を、浮竹十四郎。
下級貴族の、8人兄弟の長兄であると聞いた。
一方の京楽は、上級貴族の次男坊だった。金がありまっている京楽の両親は、金を与えれば後は放置しておけばいいというような人間で、厄介祓いだとばかりの学院にいれられた。別に、望んで死神になりたいわけではなかった。
反対に、浮竹は死神にならなければ食っていけないという状況で、学院の入学金とか授業代とか、全て推薦での金で賄っていた。
能力があれば身分は問わない-------------そういう学院であるからして、流魂街から通学しているような人間もいる。
上流貴族の、京楽の周りには人ができた。全部、ばらまく金につられてきた人間だ。
反対に、浮竹の周囲には、浮竹の優しさなどのその人格からできる、本当の意味の友人ができていた。
多分、羨ましかったんだと思う。
「京楽?」
のぞきこんでくる瞳が、翡翠みたいで見惚れていると、浮竹に不思議そうな顔をされた。
「あ、なんだい?」
「この書類なんだが、先生が配るを忘れたらしくて------------」
その後の言葉は、耳に入っていかなかった。
気づくと、その翡翠の瞳に口づけていた。
「京楽・・・・・・?」
「あ、いや・・・宝石みたいだなと思って。すまない。翡翠が好きなんだ。親が宝石商の仕事もしていてね。君の瞳が、極上の翡翠みたいだったから、つい」
なんとか誤魔化そうと必死になる京楽を、浮竹は見ていた。
「そうか。俺の瞳でいいなら、いつでも見ていいぞ」
そう、にこりと笑われた。
なんとか誤魔化せた・・・・。
京楽は、欲していた。
太陽を。
幼心の思い出は乳母とのものだ。乳母は暖かった。気苦労のせいで白髪になってしまったんだと笑っていた。目に少し緑が入っていて、綺麗だったのを覚えている。太陽のようだとかんじた。
年の差はあったが、本気で好きだった。
その乳母を亡くしたのは3年前だ。
まだ、彼女に恋慕していた。
代わりでいいから。太陽がほしかった。
できれば、緑色をもっている太陽がいい。
短い白い髪に、極上の翡翠の瞳をもつ、少年とも青年ともつかない年の浮竹は、求めいた太陽そのものに見えた。
浮竹の傍で過ごすことが多くなった。
浮竹は、本当に太陽のようだった。彼の周りにはいつも友人があふれていた。
最初は遠くから眺めるだけだった。
気づけば、その輪の中に入っていた。
欲しいと思った。
この太陽を振り返らせることができれば、どんなにいいかと思った。
「京楽、また授業を抜け出して・・・・・・」
さぼっていた京楽を、浮竹が叱って授業に連れ戻すことが多くなった。
それなりの友人としての関係は築けたのだと思う。
でも、まだどこかで太陽を欲していた。
ああ、この極上の翡翠は、研げばきっと、傾国になる・・・・・。
「浮竹」
「なんだ?」
「これ、あげるよ」
この前、親の金庫からくすねてきた磨いて綺麗にカットされた翡翠の石を、浮竹にあげた。
「こんな高価なもの、もらえない」
そう言って断ってくる浮竹に、嘘をつく。
「それ、イミテーションなんだ。偽物だから」
「そうなのか?なら、もらっておく。でも、こんな石、女の子の方が喜ぶだろう?何故、俺なんだ?」
そう聞かれると、普通に答えていた。
「君の瞳が、極上の翡翠だから。もしくはエメラルド。宝石みたいで綺麗だから、同じ色の石をあげたくて」
照れくさくもなくまくしたてると、浮竹は不思議そうにしていた。
「昨日の女の子に、あげればいいのに」
ぎくりとなる。
隣クラスの女子に告白されて、肉体関係に陥って、でもたった1週間で別れた。
京楽は女遊びが酷い。
そう噂される通りに、主に金目当てで近づいて告白してくる女を抱いて、捨てた。付き合う相手がいない時は、廓にいって女を買いあさった。
色街で買う女のほとんどが、目に緑に近い色の入った女だった。青とか灰色の時もあったが、どこが浮竹の瞳ににたかんじの女を選んでいた。美人とか不細工とか。そういうことにはこだわらなかった。
ある日、買ったのは花魁だった。飛ぶように金がかかった。濁ってはいるが、緑色の目をしていて、翡翠という名だった。
この女なら太陽になってくれるかと、告白すると、これは遊びなんだと言われた。色街で、普通女が男に本気になることはない。花魁とはいえ遊女だ。たくさんの男とそういう関係にある。
「浮竹・・・・・・」
行為の最中にそう呼んでしまい、翡翠という花魁は不機嫌になった。
「わっちを抱きながら、他の女の名を呼ぶなんて、酷いでありんす」
「あ、違うんだよ翡翠。浮竹はただの学友でね」
「もっと性質が悪いでありんす。その学友に惚れてるんでありんすか?」
「違う。違うんだよ」
一生懸命言い訳をして、翡翠を抱いた。金はかかったが、翡翠ならきっと偽りでいいから太陽になってくれると思った。
半月ほど関係は続いたが、翡翠は上級貴族の男に身請けされて、妾になるために花魁をやめてしまった。
また、なくした。
京楽は、酒に溺れた。
それを見かねた浮竹が、寮の部屋の相部屋の相手と部屋を交換して、京楽から酒をとりあげた。
「浮竹?なんでこの部屋に」
「頼んで、相部屋だった相手と部屋を交換してもらった。京楽、どうしたんだ。女の次は酒に溺れて・・・・何か、あったのか?」
さらさらと零れる短い白い髪に手を伸ばす。
「太陽が、欲しいんだ」
「太陽?」
浮竹の、翡翠の瞳に口づける。
「翡翠の瞳の、太陽が欲しい」
「?意味が分からない。飲み過ぎだぞ、京楽!」
京楽は、酒くさかった。どれだけ飲んだのか、酔っているのは明らかだった。
目に口づけらるのは二度目だったが、京楽だから許した。
一部の他の男のように邪(よこしま)な目で見てこない。
浮竹は、その可憐な容姿のせいで、同級生でなく、上級生からも同性から告白された。時には、無理強いさせられそうになった。
鬼道でなんとかしてきたが、いい加減うんざりする。
「浮竹・・・・・・・」
「なんだ、京楽?」
「僕の太陽にならないかい?翡翠の色をした太陽に」
「意味が、わからない・・・・もう、寝ろ」
手をとっていた。
抱き寄せる。体温は暖かかった。
「京楽?」
目の前に、極上の翡翠があった。
気づくと、京楽は浮竹の桜色の唇に、自分のそれを重ねていた。
「!」
浮竹が離れる。
「お前、酔いすぎだぞ。女と間違えるな!」
怒って、ベッドのほうに行ってしまった。
いきなり、同じ部屋になるなど、滑稽だ。京楽が求めていたのは、太陽だ。翡翠の色をした。
浮竹を、いつの間にか求めていた。
そんな相手と同室なのだ。
翡翠と別れてから、また京楽は女遊びが酷くなった。今度は緑の瞳ではなく、浮竹のような温かい女を探しては抱いて、行為の最中に「浮竹」と囁いた。
浮竹と同室なのは、精神上あまり好ましいものではなかった。
京楽の想いを知らずに、浮竹は京楽と、友人として接してくれる。
時間が少し経った。
京楽は、いつの間にか浮竹の親友になっていた。
京楽の意地悪さ
「これ日番谷隊長!」
「わーってるよ。すまねぇと思ってる」
山本総隊長にとって、日番谷などひ孫くらいであってもおかしくない、いやそれ以上の年の差に、山本総隊長は日番谷を叱りつけるのだが、自然と緩くなってしまう。
「此度で何度目なのか分かっておるのじゃろうな?」
「4回目だろ」
「5回目じゃばか者!」
厳しいお叱りの声だが、日番谷の態度は変わらない。
昔からこうだ。目上の者に敬意を払うことがない。責任感はあるし、何より史上最年少で隊長にのし上がった実力者でもあるが、肝心の目上の者に対する敬意がないせいで、何か事件を起こすと余計な叱りごとを受けた。
山本総隊長に関しても、総隊長とは呼ぶが、丁寧語を使わない。
親しみやすいといえばそうだが、不敬と捉えられても仕方ない。
「お主らもだぞ、春水、十四郎!」
息子のようにかわいがっている二人の死神が原因で、日番谷は自分の隊の執務室を壊してしまったのだ。
「お主らができておるのは知っておる。だが、日番谷隊長が執務室を壊した原因はお主ら二人にも責任がある」
「勘弁してよ山じい」
「先生、すみません」
責任逃れしようとする京楽とは反対に、浮竹は素直に非を認めて謝った。
「十四郎はちゃんと分かっておるようじゃ。こりゃ春水、お主はどうなんじゃ」
「僕が悪かったよ。すみませんでした」
ぺこりと頭を下げる京楽に、片眉をあげるも、山本総隊長は今度は日番谷を見た。
「日番谷隊長も、ちゃんと反省しておるな?」
「反省してる。すまなかったと思ってる」
「ならばよし。解散じゃ」
一番隊の広い執務室から解放されて、日番谷はすぐに去ってしまった。
「はぁ、まさか山じいから呼び出されるなんて思ってなかったよ」
お叱りの言葉をうけるなんてと、京楽は不満顔だった。
「だが、俺たちのせいで日番谷隊長は執務室を壊してしまったんだろう?」
「あんなの、我慢しようと思えばいくらだってできるよ。日番谷隊長個人の責任だと思うね」
京楽は辛辣だった。
元々の原因は、浮竹が日番谷のところにいき、京楽の愚痴をこぼしたことにはじまる。
それを追ってきた京楽が、浮竹に手を出してうやむやにして・・・・・その手を出すことに日番谷の我慢の尾が切れての、斬魄刀解放による執務室の破壊であった。
「日番谷隊長は若すぎるね」
「お前が、意地悪すぎるんだ」
「そうかな?」
「そうだ。あんな年端もいなぬ子の前で・・・・その、キスとか・・・・」
「日番谷隊長も死神なんだし、けっこう年いってると思うんだけど」
「子供は子供だ」
その言葉を日番谷が聞いていたら、きっと怒っていただろう。
結局、和解はした。
したが、日番谷の悩みは尽きない。
「なんで、この執務室なんだ!自分の執務室にいきやがれ!」
日番谷が仕事をしている間、浮竹と京楽が遊びにきて、松本と一緒に3人で騒ぐのだ。
「浮竹!」
「なんだい日番谷隊長」
「お前は、無自覚すぎるんだ!京楽という狼の前で、髪をかきあげてうなじを見せたり、潤んだ瞳で見つめたり、抱き着いたり・・・・!とにかく、浮竹、お前は京楽を刺激するな!」
「俺は別に何もしてないと思うんだが」
松本が用意してくれていた茶菓子を頬張りながら、浮竹は日番谷を見る。
「いいや、十分している」
うんうんと、松本も頷いていた。
「僕は、別に普通だよ。隠していないし、どこで浮竹に口づけたりしようが自由でしょ」
「いいやだめだ!この執務室で、いちゃつくことは厳禁だ」
「えー。キスとハグくらいはさせてよ」
京楽が、浮竹の白い髪をとって、口づける。
いちいち、見せつけてくるのだこの男は。本当に、どうしようもない。
「キスとハグまでだからな!」
「はいはい」
さっそくと、浮竹を抱き締めて、後ろからハグする。
「ん?なんだ、浮竹」
「別に何もないよ」
にっこり笑って、浮竹に口づける。
見せつけるように。
いや、わざと見せつけているのだ。この男は。
浮竹に対して、邪(よこしま)な思いを抱いたことはないが、そのしぐさや言動に、かわいいなと思ったことはある。
きっとそれを知っていて、京楽は見せつけてくるのだ。
浮竹が自分のものであるということを。
日番谷は、溜息をついた。
「もうどうでもいい。松本、俺にも茶をいれろ」
「は―い隊長、今いいところなんでもうちょっと後で」
松本は、浮竹に京楽が口づけるシーンを穴があくほどの勢いで見つめていた。
「忘れてた。松本は腐ってやがるんだ」
腐った松本にも見せつけている。
京楽の性根の悪さに、くらりときた。
「お前・・・・・ほんとに性格悪いな」
酒盛りをして眠り込んでしまった松本と浮竹を置いて、京楽にそういう。
「まぁ、否定はしないね」
「浮竹のどこがいいんだ」
「全部だよ。君も、浮竹を見て思うだろう?かわいいとか、構ってあげたくなるとか」
「否定はしない」
「僕はね。邪な目の他にも、そういう目で、浮竹が見られるのが嫌なんだ。たとえ、松本副隊長といえどもね。浮竹を閉じ込めて、誰にも見せたくない」
「それは、ただの独占欲だ」
「そうだよ。僕は独占欲の塊だよ。浮竹に関しては、僕は狂っているのさ」
自分が狂人だと認めるその大胆さに、少しだけ感服した。
「お前の性格の悪さは分かった。今日はもう、浮竹を連れて帰れ」
「そうするよ」
「どうすれば、ここにこなくなる?」
「それは浮竹に聞いてくれないかい。浮竹が、ここにきたがるから、僕もきている・・・・それだけのことだよ」
性根の悪い京楽は、そう言って浮竹を抱き上げて雨乾堂に帰っていった。
「ちっ」
まだ残っていた酒を飲んでみる。
「甘い・・・・」
確か、浮竹は甘い果実酒が好きらしい。
その中身を全部飲みほして、思う。
いつか、自分も雛森をとても大切に・・・他人に見せたくないと、思えるようになるのかと。
まだ付き合っているといえるかもわからない、あいまいな関係だ。
「ばからしい」
雛森とデートしたのは、この前の甘味屋で4回目だ。
デートと呼べるかもわからない。そもそも雛森は、日番谷のことを好いてはくれているが、異性として見てくれているのかも疑わしい。
日番谷は、次の酒を飲んでみた。
「なんだこれ・・・・」
京楽の酒だった。
「喉が焼ける・・・・・・」
なんてきつい酒を、平気な顔で飲むんだろう、京楽は。
その酒を、果実酒の合間に飲まされていれば、それは酔いつぶれることだろう。松本が酔いつぶれるのも早かった。
「寝るか・・・・・・」
酔いつぶれたままの松本には、一応毛布をかけておいた。
隊首室ではなく、与えられた屋敷の寝室で、眠りにつく。
明日も、浮竹がきたらまずは追い払おう。
そう思いながら、やってきた睡魔にかてず、酒を久しぶりに飲んだせいもあって、日番谷は遅刻した。
次の日から、ぱったりと浮竹と京楽はこなくなった。
「隊長、つまんない」
松本の意見に同意だった。
いなくなって分かる。どれだけ陽だまりだったのかを。
日番谷は、雨乾堂に来ていた。
「おや、日番谷隊長がここにくるなんて、珍しいな」
盆栽をいじっていた浮竹に、日番谷は言いにくそうに言葉を切り出す。
「その」
「なんだい」
「また遊びにいこい!いつでもいいから!松本と、待ってるからな!」
そう言われて、その次の日から、また浮竹は京楽と一緒に姿を見せるようになった。そしていちゃついて、度をこして日番谷が切れて
「蒼天に座せ、氷輪丸!」
と、いつものように叫ぶ日々がくるのであった。
「わーってるよ。すまねぇと思ってる」
山本総隊長にとって、日番谷などひ孫くらいであってもおかしくない、いやそれ以上の年の差に、山本総隊長は日番谷を叱りつけるのだが、自然と緩くなってしまう。
「此度で何度目なのか分かっておるのじゃろうな?」
「4回目だろ」
「5回目じゃばか者!」
厳しいお叱りの声だが、日番谷の態度は変わらない。
昔からこうだ。目上の者に敬意を払うことがない。責任感はあるし、何より史上最年少で隊長にのし上がった実力者でもあるが、肝心の目上の者に対する敬意がないせいで、何か事件を起こすと余計な叱りごとを受けた。
山本総隊長に関しても、総隊長とは呼ぶが、丁寧語を使わない。
親しみやすいといえばそうだが、不敬と捉えられても仕方ない。
「お主らもだぞ、春水、十四郎!」
息子のようにかわいがっている二人の死神が原因で、日番谷は自分の隊の執務室を壊してしまったのだ。
「お主らができておるのは知っておる。だが、日番谷隊長が執務室を壊した原因はお主ら二人にも責任がある」
「勘弁してよ山じい」
「先生、すみません」
責任逃れしようとする京楽とは反対に、浮竹は素直に非を認めて謝った。
「十四郎はちゃんと分かっておるようじゃ。こりゃ春水、お主はどうなんじゃ」
「僕が悪かったよ。すみませんでした」
ぺこりと頭を下げる京楽に、片眉をあげるも、山本総隊長は今度は日番谷を見た。
「日番谷隊長も、ちゃんと反省しておるな?」
「反省してる。すまなかったと思ってる」
「ならばよし。解散じゃ」
一番隊の広い執務室から解放されて、日番谷はすぐに去ってしまった。
「はぁ、まさか山じいから呼び出されるなんて思ってなかったよ」
お叱りの言葉をうけるなんてと、京楽は不満顔だった。
「だが、俺たちのせいで日番谷隊長は執務室を壊してしまったんだろう?」
「あんなの、我慢しようと思えばいくらだってできるよ。日番谷隊長個人の責任だと思うね」
京楽は辛辣だった。
元々の原因は、浮竹が日番谷のところにいき、京楽の愚痴をこぼしたことにはじまる。
それを追ってきた京楽が、浮竹に手を出してうやむやにして・・・・・その手を出すことに日番谷の我慢の尾が切れての、斬魄刀解放による執務室の破壊であった。
「日番谷隊長は若すぎるね」
「お前が、意地悪すぎるんだ」
「そうかな?」
「そうだ。あんな年端もいなぬ子の前で・・・・その、キスとか・・・・」
「日番谷隊長も死神なんだし、けっこう年いってると思うんだけど」
「子供は子供だ」
その言葉を日番谷が聞いていたら、きっと怒っていただろう。
結局、和解はした。
したが、日番谷の悩みは尽きない。
「なんで、この執務室なんだ!自分の執務室にいきやがれ!」
日番谷が仕事をしている間、浮竹と京楽が遊びにきて、松本と一緒に3人で騒ぐのだ。
「浮竹!」
「なんだい日番谷隊長」
「お前は、無自覚すぎるんだ!京楽という狼の前で、髪をかきあげてうなじを見せたり、潤んだ瞳で見つめたり、抱き着いたり・・・・!とにかく、浮竹、お前は京楽を刺激するな!」
「俺は別に何もしてないと思うんだが」
松本が用意してくれていた茶菓子を頬張りながら、浮竹は日番谷を見る。
「いいや、十分している」
うんうんと、松本も頷いていた。
「僕は、別に普通だよ。隠していないし、どこで浮竹に口づけたりしようが自由でしょ」
「いいやだめだ!この執務室で、いちゃつくことは厳禁だ」
「えー。キスとハグくらいはさせてよ」
京楽が、浮竹の白い髪をとって、口づける。
いちいち、見せつけてくるのだこの男は。本当に、どうしようもない。
「キスとハグまでだからな!」
「はいはい」
さっそくと、浮竹を抱き締めて、後ろからハグする。
「ん?なんだ、浮竹」
「別に何もないよ」
にっこり笑って、浮竹に口づける。
見せつけるように。
いや、わざと見せつけているのだ。この男は。
浮竹に対して、邪(よこしま)な思いを抱いたことはないが、そのしぐさや言動に、かわいいなと思ったことはある。
きっとそれを知っていて、京楽は見せつけてくるのだ。
浮竹が自分のものであるということを。
日番谷は、溜息をついた。
「もうどうでもいい。松本、俺にも茶をいれろ」
「は―い隊長、今いいところなんでもうちょっと後で」
松本は、浮竹に京楽が口づけるシーンを穴があくほどの勢いで見つめていた。
「忘れてた。松本は腐ってやがるんだ」
腐った松本にも見せつけている。
京楽の性根の悪さに、くらりときた。
「お前・・・・・ほんとに性格悪いな」
酒盛りをして眠り込んでしまった松本と浮竹を置いて、京楽にそういう。
「まぁ、否定はしないね」
「浮竹のどこがいいんだ」
「全部だよ。君も、浮竹を見て思うだろう?かわいいとか、構ってあげたくなるとか」
「否定はしない」
「僕はね。邪な目の他にも、そういう目で、浮竹が見られるのが嫌なんだ。たとえ、松本副隊長といえどもね。浮竹を閉じ込めて、誰にも見せたくない」
「それは、ただの独占欲だ」
「そうだよ。僕は独占欲の塊だよ。浮竹に関しては、僕は狂っているのさ」
自分が狂人だと認めるその大胆さに、少しだけ感服した。
「お前の性格の悪さは分かった。今日はもう、浮竹を連れて帰れ」
「そうするよ」
「どうすれば、ここにこなくなる?」
「それは浮竹に聞いてくれないかい。浮竹が、ここにきたがるから、僕もきている・・・・それだけのことだよ」
性根の悪い京楽は、そう言って浮竹を抱き上げて雨乾堂に帰っていった。
「ちっ」
まだ残っていた酒を飲んでみる。
「甘い・・・・」
確か、浮竹は甘い果実酒が好きらしい。
その中身を全部飲みほして、思う。
いつか、自分も雛森をとても大切に・・・他人に見せたくないと、思えるようになるのかと。
まだ付き合っているといえるかもわからない、あいまいな関係だ。
「ばからしい」
雛森とデートしたのは、この前の甘味屋で4回目だ。
デートと呼べるかもわからない。そもそも雛森は、日番谷のことを好いてはくれているが、異性として見てくれているのかも疑わしい。
日番谷は、次の酒を飲んでみた。
「なんだこれ・・・・」
京楽の酒だった。
「喉が焼ける・・・・・・」
なんてきつい酒を、平気な顔で飲むんだろう、京楽は。
その酒を、果実酒の合間に飲まされていれば、それは酔いつぶれることだろう。松本が酔いつぶれるのも早かった。
「寝るか・・・・・・」
酔いつぶれたままの松本には、一応毛布をかけておいた。
隊首室ではなく、与えられた屋敷の寝室で、眠りにつく。
明日も、浮竹がきたらまずは追い払おう。
そう思いながら、やってきた睡魔にかてず、酒を久しぶりに飲んだせいもあって、日番谷は遅刻した。
次の日から、ぱったりと浮竹と京楽はこなくなった。
「隊長、つまんない」
松本の意見に同意だった。
いなくなって分かる。どれだけ陽だまりだったのかを。
日番谷は、雨乾堂に来ていた。
「おや、日番谷隊長がここにくるなんて、珍しいな」
盆栽をいじっていた浮竹に、日番谷は言いにくそうに言葉を切り出す。
「その」
「なんだい」
「また遊びにいこい!いつでもいいから!松本と、待ってるからな!」
そう言われて、その次の日から、また浮竹は京楽と一緒に姿を見せるようになった。そしていちゃついて、度をこして日番谷が切れて
「蒼天に座せ、氷輪丸!」
と、いつものように叫ぶ日々がくるのであった。
言った言葉には責任を(閑話)
7月も少し過ぎた。
浮竹は、もうすぐ京楽の誕生日だなと思い、つい先日のことを思い出す。
いつものように、日番谷隊長のところへ遊びにいった。
少し熱があるかもしれないと思いつつ、京楽の誕生日プレゼントに何をあげればいいのかと、松本にも聞いた。
いつもは何をあげているのかと聞かれて、酒と答えた。
「今年も酒で・・・・現世のヨーロッパなる地域で人気の赤ワインを・・・・」
用意は、もうちゃんとしていたのだ。
でも、はっきりと覚えている。
あの時は熱にうなされていたとはいえ・・・・プレゼントに「俺」をあげると言ってしまったのだ。それがどういう意味だかは理解していた。
なんて大胆なことを・・・思い出すだけで恥ずかしくて、浮竹は顔を手で覆って畳の上でごろごろとしていた。
その日の夜、京楽が泊まりにやってきた。いつものように酒を飲み交わしあい、誕生日の話になった。
「浮竹の誕生日プレゼント、期待してるからね」
「赤ワインを・・・・」
なんとか誤魔かせないかと、浮竹は用意していた赤ワインを見せた。すると、京楽は何を思ったのか浮竹から赤ワインをとりあげると、中身を口にして浮竹の喉に流し込んだ。
「きょうら・・・あっ」
そのまま、飲み交わす酒の中に赤ワインが仲間にはいった。
給料数か月分はする、名のある赤ワインで高かったのにと思いながらも、その美味しさに吃驚する。
「誕生日プレゼント。期待してるからね?」
そのまま体を重ねあうこともなく、夜を共にした。
そのまま7月11日の、京楽の誕生日がやってきた。
どうしようと内心焦りつつ、8番隊のみんなで京楽の誕生日を祝った。七緒からの誕生日プレゼントは、赤ワインだった。
かぶらなくてよかった・・・・・・そう思いつつ、いよいよ宴もお開きになる。
どうしようどうしようどうしよう。
ドキドキしてきた。
もう気が気じゃなくて、七緒に声をかけた。
「どうしたんですか浮竹隊長」
「京楽の贈り物に、「俺」って言ってしまったんだ」
使おうか捨てようか、迷っているラッピングリボンを手に、浮竹は言葉を続ける。
「どうすればいいのか、分からないんだ」
経緯を話すと、七緒は力になりますと、浮竹を連れて行ってしまった。
「浮竹~?七緒ちゃ~ん?どこいっちゃったのかな・・・・」
その頃の、浮竹はというと。
七緒の手で、髪にラッピングリボンを結ばれていた。体にも、ラッピングリボンを結ばれた。
口には紅をさし、いつもの死覇装の肩をはだけさせて、白い肌が露わになるようにする。
「ちょ、これは・・・・・」
七緒は、浮竹の手をとって走り出す。
京楽の隊首室にくると、浮竹を中に入れて、去ってしまった。
「おい、伊勢副隊長!」
助けを求めるが、隊首室は外から鍵がかけられていた。
「・・・・・浮竹?」
浮竹がいないことにがっくりして、やけ酒を飲んでた京楽がやってくる。
ふわりと甘い花の香りがする。浮竹の匂いだ。
「これが今年の僕の誕生日プレゼント・・・・・」
京楽は、浮竹の姿にごくりと唾をのんだ。
潤んだ翡翠の瞳、華奢な手足、死覇装は乱れて肩がみえている・・・その肌の白さに、もう一度生唾をのみこんだ。
髪と体にラッピングリボンを巻いて、そのかわいらしさにくらりとくる。
「さっそく、もらっていいかな?」
浮竹を抱き上げて、隊首室のベッドに横たえた。
なんとか起き上がろうとして、浮竹があがく。
「ちょ、違うんだ、京楽、その、これは・・・・・・うんんっ」
口づけされて、露わになっている肩にもキスされた。髪のラッピングリボンはそのままに、衣服のラッピングリボンを外していく。
死覇装を、肩から腕に、腕から腰にと下げられていって、浮竹は声をあげる。
「んんっ」
「かわいいよ浮竹・・・・・・最高だ」
死覇装の下には襦袢を着ておらず、裸だった。
「僕に、こんなに食べられたかったんだね?」
「ちが・・・んんっ」
全身にキスの雨を降らされて、浮竹は啼いた。
「ああっ」
潤滑油まみれにした指で、早急に蕾を解される。
「うあっ」
寝台から這い出そうとしている浮竹の背後から、浮竹の手をとって勢いをつけて貫いた。
「ああっ」
「ほら・・・僕たち、今繋がっている。一つだよ」
「あうっ」
中にいれたまま、何度も体を揺さぶられた。
視界に涙がたまり、零れ落ちていく。
「君は僕のものだ・・・・・」
「んっ」
何度も腰に腰を打ち付けられて、前立腺をこすりあげられ、浮竹は京楽の手の中で果てた。
「ひゃんっ」
変な声が漏れた。
いっている最中に深奥のいいところを貫かれて、オーガズムで達する。
「あ、あ、いってるから、春水っ、犯しちゃやぁっ」
一度引き抜いて、ズプズプとまた突き上げた。そして、浮竹の最奥で精を弾けさせた。
まだ、京楽の熱は硬さを保ったままだ。一度では満足しきれない。
「あ、あ!」
浮竹が物理的にも精神的に果てている間も、関係なく浮竹を蹂躙した。
「キス・・・・して・・・・」
「愛してる、十四郎・・・・・・」:
「んっ・・・愛してる春水」
舌を絡ませあう。
浮竹は、行為中のキスが好きだ。
何度も浮竹を貫き揺さぶり、浮竹が意識を失うと、半ば無理やり起こして行為を続けた。
夜が更けるころには、泣きはらした目で、浮竹が京楽を見上げてくる。
その潤んだ瞳を、誰にも見せたくないと思った。
「もう、むり・・・・・・」
「僕も、流石にむりだ。やりすぎた、ごめんね」
「今日は・・・・・いや昨日か?京楽の、誕生日だから、別にいい・・・・・・・」
もっとねだられて、キスを何度も体中に降らせる。
「京楽のキスは好きだ・・・・」
ドクンと心臓がなる。
本当に、この子は。
舌を絡ませあうと、浮竹は積極的に受け入れてくれた。
「浮竹の誕生日プレゼント、しっかり受け取ったよ」
髪のラッピングリボンを外していく京楽。唇にさした紅など、一度目の口づけで消えてしまった。口にしてもいい染料で作られていて、苺の味がした。
ぺろりと、浮竹が自分の唇をなめる。
ああ、この子。果てたのに、まだ欲情してるんだ。
京楽は、何度も口づけをして、二人で泥のように眠った。
「おはよう」
「ん・・・・おはよう」
朝起きると、後始末をされて体も清められており、脱いだのと違う絹で金糸で刺繍をほどこされた夜着を着ていた。
「また高そうなものを・・・・・」
「それあげるから。好きにしていいよ。元々、君にあげるたけにしつらえたものだから」
京楽は、浮竹に巻かれていたラッピングリボンを捨てずに、綺麗にくるめて保管しようとしていた。
「京楽!そんなの捨てろ!」
「嫌だよ。君が僕に「君」をくれた記念の品なんだから」
これでもかというほどの、嬉しそうな笑顔に何も言えなくなる。
七緒のおかげで無事「俺」を誕生日プレンゼントにできたことに、安堵している自分と、ラッピングリボンを巻き付けたり、見た目とかいろいろで恥ずかしい思いをしたことがごちゃまぜになって、浮竹を襲ってきた。
恥ずかしい方の感情が勝って、浮竹は穴が開いていうたら入りたい心境になった。
「昨日の恰好のことは忘れろ!」
「無理だよ」
「いいから忘れろ!」
「写真、とっておいたから」
伝令神機に、ラッピングされた姿の浮竹が収められていた。
「ばか、消せ!」
「いいじゃない。誕生日プレゼント、君をもらった証をちゃんと残しておかないと」
恥ずかしい。
くそ恥ずかしい。
浮竹は、顔を手で覆ってベッドの上ででごろごろしだした。
「照れてるの?」
「気のせいだっ」
そんなこんなを・・・・・・日番谷に話したら、日番谷は真っ赤になっていた。
「てめぇ、何のろけ話してんだ!しかも今回は酷いなおい!18禁じゃねぇか!俺は子供じゃねぇが見た目は子供なんだから、ちょっとは遠慮しやがれ!」
「日番谷隊長でも恥ずかしいのか?」
「当たり前だ!誕生日プレゼントに「自分」をやるなんて、どこの漫画か小説だ!」
「俺もそう思う・・・・俺の誕生日の誕生日プレゼントがこわい。京楽が「僕をあげる」とかいいだしそうで」
「想像しただけで鳥肌がたった」
日番谷は、浮竹の言葉に蒼くなった。
「日番谷隊長~」
るんるん気分でやってきたのは、浮竹という誕生日プレゼントをもらった京楽だった。
「ああ、やっぱりここにいたのか浮竹!まだ出歩いちゃだめじゃない。昨日は、ちょっと無理させすぎちゃったしね」
その言葉に浮竹が朱くなる。
「昨日の君は、とても素敵だったよ・・・・・」
「なっ・・・・」
「あああああああ聞こえない、聞こえない」
日番谷は叫んで声が耳に届かないようにしていた。
「君の潤んだ瞳・・・ラッピングリボン・・・白い肌・・・甘い声・・・・」
「京楽!ここは、10番隊の執務室だからぁっ」
場所など関係なく、浮竹に口づけて死覇装の中に手をいれる京楽に、日番谷の我慢の糸がきれた。
「蒼天に座せ、氷輪丸ーーーーーーーー!!!!」
当たり前のように京楽が浮竹を抱きかかえて、瞬歩でかわされてしまった。
「この盛りのついた犬どもがあああああ!!」
「あははははは、酷い言葉だね日番谷隊長!」
氷輪丸で襲われても、京楽は楽しげだった。よほど「浮竹」をもらえたことが嬉しいのだろう。
「蒼天に座せ、氷輪丸!」
逃げ回る京楽を追いかけて、日番谷は走っていく。
結局、隊舎を半壊させて、山本総隊長にこっぴどく叱られる日番谷隊長の姿が、後日にあったという。
浮竹は、もうすぐ京楽の誕生日だなと思い、つい先日のことを思い出す。
いつものように、日番谷隊長のところへ遊びにいった。
少し熱があるかもしれないと思いつつ、京楽の誕生日プレゼントに何をあげればいいのかと、松本にも聞いた。
いつもは何をあげているのかと聞かれて、酒と答えた。
「今年も酒で・・・・現世のヨーロッパなる地域で人気の赤ワインを・・・・」
用意は、もうちゃんとしていたのだ。
でも、はっきりと覚えている。
あの時は熱にうなされていたとはいえ・・・・プレゼントに「俺」をあげると言ってしまったのだ。それがどういう意味だかは理解していた。
なんて大胆なことを・・・思い出すだけで恥ずかしくて、浮竹は顔を手で覆って畳の上でごろごろとしていた。
その日の夜、京楽が泊まりにやってきた。いつものように酒を飲み交わしあい、誕生日の話になった。
「浮竹の誕生日プレゼント、期待してるからね」
「赤ワインを・・・・」
なんとか誤魔かせないかと、浮竹は用意していた赤ワインを見せた。すると、京楽は何を思ったのか浮竹から赤ワインをとりあげると、中身を口にして浮竹の喉に流し込んだ。
「きょうら・・・あっ」
そのまま、飲み交わす酒の中に赤ワインが仲間にはいった。
給料数か月分はする、名のある赤ワインで高かったのにと思いながらも、その美味しさに吃驚する。
「誕生日プレゼント。期待してるからね?」
そのまま体を重ねあうこともなく、夜を共にした。
そのまま7月11日の、京楽の誕生日がやってきた。
どうしようと内心焦りつつ、8番隊のみんなで京楽の誕生日を祝った。七緒からの誕生日プレゼントは、赤ワインだった。
かぶらなくてよかった・・・・・・そう思いつつ、いよいよ宴もお開きになる。
どうしようどうしようどうしよう。
ドキドキしてきた。
もう気が気じゃなくて、七緒に声をかけた。
「どうしたんですか浮竹隊長」
「京楽の贈り物に、「俺」って言ってしまったんだ」
使おうか捨てようか、迷っているラッピングリボンを手に、浮竹は言葉を続ける。
「どうすればいいのか、分からないんだ」
経緯を話すと、七緒は力になりますと、浮竹を連れて行ってしまった。
「浮竹~?七緒ちゃ~ん?どこいっちゃったのかな・・・・」
その頃の、浮竹はというと。
七緒の手で、髪にラッピングリボンを結ばれていた。体にも、ラッピングリボンを結ばれた。
口には紅をさし、いつもの死覇装の肩をはだけさせて、白い肌が露わになるようにする。
「ちょ、これは・・・・・」
七緒は、浮竹の手をとって走り出す。
京楽の隊首室にくると、浮竹を中に入れて、去ってしまった。
「おい、伊勢副隊長!」
助けを求めるが、隊首室は外から鍵がかけられていた。
「・・・・・浮竹?」
浮竹がいないことにがっくりして、やけ酒を飲んでた京楽がやってくる。
ふわりと甘い花の香りがする。浮竹の匂いだ。
「これが今年の僕の誕生日プレゼント・・・・・」
京楽は、浮竹の姿にごくりと唾をのんだ。
潤んだ翡翠の瞳、華奢な手足、死覇装は乱れて肩がみえている・・・その肌の白さに、もう一度生唾をのみこんだ。
髪と体にラッピングリボンを巻いて、そのかわいらしさにくらりとくる。
「さっそく、もらっていいかな?」
浮竹を抱き上げて、隊首室のベッドに横たえた。
なんとか起き上がろうとして、浮竹があがく。
「ちょ、違うんだ、京楽、その、これは・・・・・・うんんっ」
口づけされて、露わになっている肩にもキスされた。髪のラッピングリボンはそのままに、衣服のラッピングリボンを外していく。
死覇装を、肩から腕に、腕から腰にと下げられていって、浮竹は声をあげる。
「んんっ」
「かわいいよ浮竹・・・・・・最高だ」
死覇装の下には襦袢を着ておらず、裸だった。
「僕に、こんなに食べられたかったんだね?」
「ちが・・・んんっ」
全身にキスの雨を降らされて、浮竹は啼いた。
「ああっ」
潤滑油まみれにした指で、早急に蕾を解される。
「うあっ」
寝台から這い出そうとしている浮竹の背後から、浮竹の手をとって勢いをつけて貫いた。
「ああっ」
「ほら・・・僕たち、今繋がっている。一つだよ」
「あうっ」
中にいれたまま、何度も体を揺さぶられた。
視界に涙がたまり、零れ落ちていく。
「君は僕のものだ・・・・・」
「んっ」
何度も腰に腰を打ち付けられて、前立腺をこすりあげられ、浮竹は京楽の手の中で果てた。
「ひゃんっ」
変な声が漏れた。
いっている最中に深奥のいいところを貫かれて、オーガズムで達する。
「あ、あ、いってるから、春水っ、犯しちゃやぁっ」
一度引き抜いて、ズプズプとまた突き上げた。そして、浮竹の最奥で精を弾けさせた。
まだ、京楽の熱は硬さを保ったままだ。一度では満足しきれない。
「あ、あ!」
浮竹が物理的にも精神的に果てている間も、関係なく浮竹を蹂躙した。
「キス・・・・して・・・・」
「愛してる、十四郎・・・・・・」:
「んっ・・・愛してる春水」
舌を絡ませあう。
浮竹は、行為中のキスが好きだ。
何度も浮竹を貫き揺さぶり、浮竹が意識を失うと、半ば無理やり起こして行為を続けた。
夜が更けるころには、泣きはらした目で、浮竹が京楽を見上げてくる。
その潤んだ瞳を、誰にも見せたくないと思った。
「もう、むり・・・・・・」
「僕も、流石にむりだ。やりすぎた、ごめんね」
「今日は・・・・・いや昨日か?京楽の、誕生日だから、別にいい・・・・・・・」
もっとねだられて、キスを何度も体中に降らせる。
「京楽のキスは好きだ・・・・」
ドクンと心臓がなる。
本当に、この子は。
舌を絡ませあうと、浮竹は積極的に受け入れてくれた。
「浮竹の誕生日プレゼント、しっかり受け取ったよ」
髪のラッピングリボンを外していく京楽。唇にさした紅など、一度目の口づけで消えてしまった。口にしてもいい染料で作られていて、苺の味がした。
ぺろりと、浮竹が自分の唇をなめる。
ああ、この子。果てたのに、まだ欲情してるんだ。
京楽は、何度も口づけをして、二人で泥のように眠った。
「おはよう」
「ん・・・・おはよう」
朝起きると、後始末をされて体も清められており、脱いだのと違う絹で金糸で刺繍をほどこされた夜着を着ていた。
「また高そうなものを・・・・・」
「それあげるから。好きにしていいよ。元々、君にあげるたけにしつらえたものだから」
京楽は、浮竹に巻かれていたラッピングリボンを捨てずに、綺麗にくるめて保管しようとしていた。
「京楽!そんなの捨てろ!」
「嫌だよ。君が僕に「君」をくれた記念の品なんだから」
これでもかというほどの、嬉しそうな笑顔に何も言えなくなる。
七緒のおかげで無事「俺」を誕生日プレンゼントにできたことに、安堵している自分と、ラッピングリボンを巻き付けたり、見た目とかいろいろで恥ずかしい思いをしたことがごちゃまぜになって、浮竹を襲ってきた。
恥ずかしい方の感情が勝って、浮竹は穴が開いていうたら入りたい心境になった。
「昨日の恰好のことは忘れろ!」
「無理だよ」
「いいから忘れろ!」
「写真、とっておいたから」
伝令神機に、ラッピングされた姿の浮竹が収められていた。
「ばか、消せ!」
「いいじゃない。誕生日プレゼント、君をもらった証をちゃんと残しておかないと」
恥ずかしい。
くそ恥ずかしい。
浮竹は、顔を手で覆ってベッドの上ででごろごろしだした。
「照れてるの?」
「気のせいだっ」
そんなこんなを・・・・・・日番谷に話したら、日番谷は真っ赤になっていた。
「てめぇ、何のろけ話してんだ!しかも今回は酷いなおい!18禁じゃねぇか!俺は子供じゃねぇが見た目は子供なんだから、ちょっとは遠慮しやがれ!」
「日番谷隊長でも恥ずかしいのか?」
「当たり前だ!誕生日プレゼントに「自分」をやるなんて、どこの漫画か小説だ!」
「俺もそう思う・・・・俺の誕生日の誕生日プレゼントがこわい。京楽が「僕をあげる」とかいいだしそうで」
「想像しただけで鳥肌がたった」
日番谷は、浮竹の言葉に蒼くなった。
「日番谷隊長~」
るんるん気分でやってきたのは、浮竹という誕生日プレゼントをもらった京楽だった。
「ああ、やっぱりここにいたのか浮竹!まだ出歩いちゃだめじゃない。昨日は、ちょっと無理させすぎちゃったしね」
その言葉に浮竹が朱くなる。
「昨日の君は、とても素敵だったよ・・・・・」
「なっ・・・・」
「あああああああ聞こえない、聞こえない」
日番谷は叫んで声が耳に届かないようにしていた。
「君の潤んだ瞳・・・ラッピングリボン・・・白い肌・・・甘い声・・・・」
「京楽!ここは、10番隊の執務室だからぁっ」
場所など関係なく、浮竹に口づけて死覇装の中に手をいれる京楽に、日番谷の我慢の糸がきれた。
「蒼天に座せ、氷輪丸ーーーーーーーー!!!!」
当たり前のように京楽が浮竹を抱きかかえて、瞬歩でかわされてしまった。
「この盛りのついた犬どもがあああああ!!」
「あははははは、酷い言葉だね日番谷隊長!」
氷輪丸で襲われても、京楽は楽しげだった。よほど「浮竹」をもらえたことが嬉しいのだろう。
「蒼天に座せ、氷輪丸!」
逃げ回る京楽を追いかけて、日番谷は走っていく。
結局、隊舎を半壊させて、山本総隊長にこっぴどく叱られる日番谷隊長の姿が、後日にあったという。
髪を結う
長くなってしまった髪が邪魔で、適当な長さに乱暴に切った。大体、肩くらいの長さで。
院生の4回生なっていた。
恋人である京楽は、髪を伸ばせとうるさいので、伸ばしてきたのがいい加減うんざりしてきた。もっと短く切ってやろうかとも思ったが、肩の長さで我慢した。
多分、京楽は嘆くだろうなと知りつつ、髪を短くした。
入学してから一度も髪を切っていない。全部、京楽のせいだ。
別に、京楽のことが嫌いになったわけではない。好きだと思うし、京楽も浮竹のことが好きだろう。
「髪くらい、別にいいよな」
ざんばらな髪を、京楽に切りそろえてもらおうと、寮の京楽の部屋の前で、扉をノックする。
「いるか、京楽」
「どうしたんだい」
部屋の中から応答があった。
ガチャリと扉が開いて、京楽が出てきた。京楽は、浮竹の姿を見て血相を変えた。
「誰に切られたの!くそ、殺してやる」
冷酷に光る瞳と荒ぶる霊圧が怖くて、一瞬言葉を失った。
誰かに無理やり切られたと見えるくらいに、浮竹の髪はざんばらだった。
「違う。自分で切ったんだ」
「え?」
「京楽が伸ばせという通りにしていたが、長くなりすぎて鬱陶しくて、つい」
その言葉に、京楽は少しだけ寂しそうな表情をしてから、室内に浮竹を招き入れた。
ふわりと、柑橘系の香がした。京楽がいつもつけている香水の匂いだ。
その匂いに安堵する。
「どうしたの?」
「な、なんでもない・・・・」
「ほら座って。髪、揃えてあげるから」
櫛で髪を梳かれて、万能鋏で浮竹の髪を切りそろえてく京楽。
「できた」
手鏡を渡されて、肩の長さで綺麗に揃えられたことに、感謝すると同時に勝手に髪を切ったことへの罪悪感が混ぜこぜになった。
「ありがとう。・・・・勝手に髪を切ってすまない」
背後から抱きつかれた。
「できれば、そのまま伸ばしてほしかったね」
「でも、ずっと短くしていたから。鬱陶しくて」
「僕がその、君の白い髪を好きだということを知ってて切ったんでしょ?」
「それは・・・・」
その通りなのだが。
「髪を切ったこと、怒っているのか?」
「怒ってはいないよ。ただ悲しいだけ」
「どうして悲しくなる?ただ髪を切ったくらいで」
抱き寄せられた。
「君の全ては僕のものだ。髪一房でも、僕のものだ」
肩の長さの髪を手で梳いて口づけられる。
「京楽・・・・」
「僕は、独占的なんだよ。君のことになると」
「京楽」
「なんだい」
「もう、勝手に髪を切ったりしない」
「うん。切りたいときは僕に言って。ちゃんと切りそろえてあげるから」
翡翠の瞳に口づけられた。
あれから、浮竹は二度と自分で髪を切ることはなかった。数百年の時の中、熱い夏に京楽に頼んで、少し髪を切ることはあったが、たいていは腰より少し短い程度で切り揃えられていた。
浮竹の白い髪からは、いつも花のような甘い香りがした。
それが、浮竹の匂いだ。
京楽は、いつものように雨乾堂にきていた。浮竹の花の香りに満足しながら、浮竹の白い髪をいじっていると、浮竹が声をかけた。
「京楽」
「なんだい、浮竹」
「前髪が伸びすぎて邪魔なんだ。切ってくれないか」
「分かったよ」
お互い、学院を卒業と同時に、浮竹は13番隊の、京楽は8番隊の席官の地位が待っていた。
最初は仕事に手いっぱいで、お互いに会うという時間をつくれなかった。
でも、慣れてくると二人で寄り添いあう時間も増えた。
隊長クラスまできた。責任のある地位にいることを理解しつつも、逢瀬の時をもつことはなくならない。
シャキンシャキンと、京楽がいつものように浮竹の髪を切る。
今回は前髪だけだったので、すぐに終わった。
手鏡を渡される。
少し髪を軽く見せるために、すかれた前髪に満足して、手鏡を返す。
「ありがとう」
「どういたしまして」
後ろ髪は、腰の位置のままだ。
「結おうか?」
「ああ、頼む」
京楽の手で、髪を結われていく。
「僕はね、この君の白い髪が大好きなんだ」
「俺も、京楽のおかげでこの白い髪が嫌いでなくなった」
昔は、あんなに嫌いだったのに。
白い色が美しいと言われ続けて、嫌いではなくなった。
肺の病で白くなった髪。こんな髪と、幼い頃短く短く切っていた。学院に入るのだかた、少しは見た目を気にしないと怒られて、少しだけ伸ばした。十分短いと評価される髪の長さは、浮竹には我慢できないくらいに長いものだった。
今では。腰より少し高い位置まで伸びた。
京楽の囁くままに、伸ばし続けて。伸びすぎると京楽が切ってくれた。
「ほらできた。かわいいね」
髪を編み込んで結い上げて、翡翠の簪で留められた。
「浮竹隊長失礼しま・・・・・・・うきゃあああああ」
口づけしているシーンをルキアに見られてしまった。
「朽木か。いい加減、慣れないのか?」
「無理です浮竹隊長!失礼しました!」
顔を真っ赤にして、ルキアは去っていってしまった。
来客用にと、お茶とお菓子が2つずつ盆の上に乗っていた。
「ルキアちゃんは初々しいねぇ。もう副隊長になって3か月でしょ?」
「ああ・・・・いつまでたっても慣れないな」
二人が付き合っていることは知っているし、体の関係もあることをルキアも知っていた。でも、ルキアはいつまでたっても、京楽が浮竹と過剰な接触をしているシーンを見ると、時には鼻血をだして・・・大抵は顔を真っ赤にして走り去っていく。
「この翡翠の簪・・・・大事にしてくれているんだね」
「最初は硝子玉とかいってたのはどこのどいつだ」
「だって、そうでも言わないと、君は高価なものは受け取ってくれないから!」
「別に、そんなものはいらないんだ」
少し、京楽が寂しそうな顔をする。
「俺は、こうして京楽が隣にいてくれて・・・・・それだけで満足だ。それだけで十分なんだ」
「誘ってる?」
「なぜ、そうなる」
二つの影は重なりあっていく。
「あ、髪が・・・」
乱れて、簪もとれてしまった。
「髪なんて、いつでも結ってあげるから。このまま食べられちゃいなさいな」
「京楽・・・・」
白い髪が、畳の上に乱れて、流れていた。
院生の4回生なっていた。
恋人である京楽は、髪を伸ばせとうるさいので、伸ばしてきたのがいい加減うんざりしてきた。もっと短く切ってやろうかとも思ったが、肩の長さで我慢した。
多分、京楽は嘆くだろうなと知りつつ、髪を短くした。
入学してから一度も髪を切っていない。全部、京楽のせいだ。
別に、京楽のことが嫌いになったわけではない。好きだと思うし、京楽も浮竹のことが好きだろう。
「髪くらい、別にいいよな」
ざんばらな髪を、京楽に切りそろえてもらおうと、寮の京楽の部屋の前で、扉をノックする。
「いるか、京楽」
「どうしたんだい」
部屋の中から応答があった。
ガチャリと扉が開いて、京楽が出てきた。京楽は、浮竹の姿を見て血相を変えた。
「誰に切られたの!くそ、殺してやる」
冷酷に光る瞳と荒ぶる霊圧が怖くて、一瞬言葉を失った。
誰かに無理やり切られたと見えるくらいに、浮竹の髪はざんばらだった。
「違う。自分で切ったんだ」
「え?」
「京楽が伸ばせという通りにしていたが、長くなりすぎて鬱陶しくて、つい」
その言葉に、京楽は少しだけ寂しそうな表情をしてから、室内に浮竹を招き入れた。
ふわりと、柑橘系の香がした。京楽がいつもつけている香水の匂いだ。
その匂いに安堵する。
「どうしたの?」
「な、なんでもない・・・・」
「ほら座って。髪、揃えてあげるから」
櫛で髪を梳かれて、万能鋏で浮竹の髪を切りそろえてく京楽。
「できた」
手鏡を渡されて、肩の長さで綺麗に揃えられたことに、感謝すると同時に勝手に髪を切ったことへの罪悪感が混ぜこぜになった。
「ありがとう。・・・・勝手に髪を切ってすまない」
背後から抱きつかれた。
「できれば、そのまま伸ばしてほしかったね」
「でも、ずっと短くしていたから。鬱陶しくて」
「僕がその、君の白い髪を好きだということを知ってて切ったんでしょ?」
「それは・・・・」
その通りなのだが。
「髪を切ったこと、怒っているのか?」
「怒ってはいないよ。ただ悲しいだけ」
「どうして悲しくなる?ただ髪を切ったくらいで」
抱き寄せられた。
「君の全ては僕のものだ。髪一房でも、僕のものだ」
肩の長さの髪を手で梳いて口づけられる。
「京楽・・・・」
「僕は、独占的なんだよ。君のことになると」
「京楽」
「なんだい」
「もう、勝手に髪を切ったりしない」
「うん。切りたいときは僕に言って。ちゃんと切りそろえてあげるから」
翡翠の瞳に口づけられた。
あれから、浮竹は二度と自分で髪を切ることはなかった。数百年の時の中、熱い夏に京楽に頼んで、少し髪を切ることはあったが、たいていは腰より少し短い程度で切り揃えられていた。
浮竹の白い髪からは、いつも花のような甘い香りがした。
それが、浮竹の匂いだ。
京楽は、いつものように雨乾堂にきていた。浮竹の花の香りに満足しながら、浮竹の白い髪をいじっていると、浮竹が声をかけた。
「京楽」
「なんだい、浮竹」
「前髪が伸びすぎて邪魔なんだ。切ってくれないか」
「分かったよ」
お互い、学院を卒業と同時に、浮竹は13番隊の、京楽は8番隊の席官の地位が待っていた。
最初は仕事に手いっぱいで、お互いに会うという時間をつくれなかった。
でも、慣れてくると二人で寄り添いあう時間も増えた。
隊長クラスまできた。責任のある地位にいることを理解しつつも、逢瀬の時をもつことはなくならない。
シャキンシャキンと、京楽がいつものように浮竹の髪を切る。
今回は前髪だけだったので、すぐに終わった。
手鏡を渡される。
少し髪を軽く見せるために、すかれた前髪に満足して、手鏡を返す。
「ありがとう」
「どういたしまして」
後ろ髪は、腰の位置のままだ。
「結おうか?」
「ああ、頼む」
京楽の手で、髪を結われていく。
「僕はね、この君の白い髪が大好きなんだ」
「俺も、京楽のおかげでこの白い髪が嫌いでなくなった」
昔は、あんなに嫌いだったのに。
白い色が美しいと言われ続けて、嫌いではなくなった。
肺の病で白くなった髪。こんな髪と、幼い頃短く短く切っていた。学院に入るのだかた、少しは見た目を気にしないと怒られて、少しだけ伸ばした。十分短いと評価される髪の長さは、浮竹には我慢できないくらいに長いものだった。
今では。腰より少し高い位置まで伸びた。
京楽の囁くままに、伸ばし続けて。伸びすぎると京楽が切ってくれた。
「ほらできた。かわいいね」
髪を編み込んで結い上げて、翡翠の簪で留められた。
「浮竹隊長失礼しま・・・・・・・うきゃあああああ」
口づけしているシーンをルキアに見られてしまった。
「朽木か。いい加減、慣れないのか?」
「無理です浮竹隊長!失礼しました!」
顔を真っ赤にして、ルキアは去っていってしまった。
来客用にと、お茶とお菓子が2つずつ盆の上に乗っていた。
「ルキアちゃんは初々しいねぇ。もう副隊長になって3か月でしょ?」
「ああ・・・・いつまでたっても慣れないな」
二人が付き合っていることは知っているし、体の関係もあることをルキアも知っていた。でも、ルキアはいつまでたっても、京楽が浮竹と過剰な接触をしているシーンを見ると、時には鼻血をだして・・・大抵は顔を真っ赤にして走り去っていく。
「この翡翠の簪・・・・大事にしてくれているんだね」
「最初は硝子玉とかいってたのはどこのどいつだ」
「だって、そうでも言わないと、君は高価なものは受け取ってくれないから!」
「別に、そんなものはいらないんだ」
少し、京楽が寂しそうな顔をする。
「俺は、こうして京楽が隣にいてくれて・・・・・それだけで満足だ。それだけで十分なんだ」
「誘ってる?」
「なぜ、そうなる」
二つの影は重なりあっていく。
「あ、髪が・・・」
乱れて、簪もとれてしまった。
「髪なんて、いつでも結ってあげるから。このまま食べられちゃいなさいな」
「京楽・・・・」
白い髪が、畳の上に乱れて、流れていた。
受難でない日番谷隊長
「日番谷隊長」
「二度と来るって言っただろうが!」
「そう言わないでくれ、日番谷隊長。真面目に相談したいことがあるんだ」
浮竹は、いつもより真剣な顔をしていた。
同じシロちゃん仲間であり、何かあるとお菓子を抱えて遊びにきたり、お菓子を与えて頭をなでらりするのが普通になってしまっていたので、日番谷はまた今回も浮竹が10番隊の執務室に入るのを許してしまった。
「松本副隊長はいないのか?」
きょろきょろ見回す浮竹に、お茶が出された。
「あたしはちゃんといますよ」
「ああ松本副隊長、君の意見も聞きたいんだ」
「どうしたんです?」
「もうすぐ京楽の誕生日なんだ」
「あ、そういえばそうですね」
日番谷が、茶をすする。
「誕生日プレゼントに悩んでいるのか?」
「その通りなんだ!」
浮竹が顔を輝かせた。
「お酒でいいんじゃないですかー?」
「ここ最近、ずっとお酒ばかりで・・・たまには、違うものをあげたいと思って」
「浮竹隊長かわいい!愛ですね!」
確かに、いじらしい浮竹は愛らしかった。長く白い髪を後ろで結いあげて、潤んだ翡翠の瞳で・・・・・。
ん?
なんでこんなに、瞳が潤んでいるのかと、日番谷は思った。
「お前・・・・まさか、熱あるんじゃねーのか?」
「え?」
松本が、慌てて浮竹の額に手を当てる。
「ちょ、浮竹隊長、京楽隊長呼びますから!」
地獄蝶を飛ばす松本。
日番谷も、浮竹の額に手をあてる。
「しゃれになんねーぞ!おい、松本氷もってこい!」
「氷輪丸で出した方が早いですよ、隊長!」
「それもそうか・・・・蒼天に座せ氷輪丸!」
氷の龍を呼び出して、一かけらの氷を作り出す。それを砕いて、ビニール袋にいれて、タオルでつつんで浮竹の額に置いた。
「日番谷隊長?」
「あんましゃべんな。こんな高熱で、よくうろうろできたもんだな」
「熱?そんなに、俺は熱があるのか?」
「それも分からないのか!?」
「ただちょっと・・・・いつもより、だるいかなと思って」
重症だ。、
「ああ・・・・視界がぼやけてきた」
「いいから、寝てろ」
長椅子に寝かせて、京楽が来るのを待った。
「地獄蝶から連絡うけて、きたよ」
やってきた京楽に、日番谷が非難の声をだす。
「お前、浮竹といつもいるんだろうが。恋人の体調管理くらいしてやれ。熱を出してうろついてたの、お前のせいでもあるんだぞ」
「僕のせいって?」
京楽が、浮竹を抱きかかえながら聞いてくる。
「お前の誕生日に、何がいいのかと聞いてきた」
「浮竹・・・・・君は・・・・本当に」
「きょら・・・く?」
「僕だよ。すぐに四番隊のところへいくから、少し我慢してね」
「プレゼント・・・・何も思い浮かばない。「俺」でいいか?」
「!」
思ってもいなかった言葉に、京楽は悦楽を感じた。
「それでいいよ。行こうか」
地獄蝶を4番隊のところに飛ばし、受け入れ準備は万全に整っている。
「京楽!」
「なんだい、日番谷隊長?」
「大事にしてやれよ。浮竹を」
「そんなこと、百も承知の上だよ」
瞬歩で去っていく二人を見送ってから、日番谷は思った。
「そういえば、初めて追うい払う目的以外で、氷輪丸を使ったな・・・・・・」
たまには、ためになる使い方もいいかと、思うのだった。
「二度と来るって言っただろうが!」
「そう言わないでくれ、日番谷隊長。真面目に相談したいことがあるんだ」
浮竹は、いつもより真剣な顔をしていた。
同じシロちゃん仲間であり、何かあるとお菓子を抱えて遊びにきたり、お菓子を与えて頭をなでらりするのが普通になってしまっていたので、日番谷はまた今回も浮竹が10番隊の執務室に入るのを許してしまった。
「松本副隊長はいないのか?」
きょろきょろ見回す浮竹に、お茶が出された。
「あたしはちゃんといますよ」
「ああ松本副隊長、君の意見も聞きたいんだ」
「どうしたんです?」
「もうすぐ京楽の誕生日なんだ」
「あ、そういえばそうですね」
日番谷が、茶をすする。
「誕生日プレゼントに悩んでいるのか?」
「その通りなんだ!」
浮竹が顔を輝かせた。
「お酒でいいんじゃないですかー?」
「ここ最近、ずっとお酒ばかりで・・・たまには、違うものをあげたいと思って」
「浮竹隊長かわいい!愛ですね!」
確かに、いじらしい浮竹は愛らしかった。長く白い髪を後ろで結いあげて、潤んだ翡翠の瞳で・・・・・。
ん?
なんでこんなに、瞳が潤んでいるのかと、日番谷は思った。
「お前・・・・まさか、熱あるんじゃねーのか?」
「え?」
松本が、慌てて浮竹の額に手を当てる。
「ちょ、浮竹隊長、京楽隊長呼びますから!」
地獄蝶を飛ばす松本。
日番谷も、浮竹の額に手をあてる。
「しゃれになんねーぞ!おい、松本氷もってこい!」
「氷輪丸で出した方が早いですよ、隊長!」
「それもそうか・・・・蒼天に座せ氷輪丸!」
氷の龍を呼び出して、一かけらの氷を作り出す。それを砕いて、ビニール袋にいれて、タオルでつつんで浮竹の額に置いた。
「日番谷隊長?」
「あんましゃべんな。こんな高熱で、よくうろうろできたもんだな」
「熱?そんなに、俺は熱があるのか?」
「それも分からないのか!?」
「ただちょっと・・・・いつもより、だるいかなと思って」
重症だ。、
「ああ・・・・視界がぼやけてきた」
「いいから、寝てろ」
長椅子に寝かせて、京楽が来るのを待った。
「地獄蝶から連絡うけて、きたよ」
やってきた京楽に、日番谷が非難の声をだす。
「お前、浮竹といつもいるんだろうが。恋人の体調管理くらいしてやれ。熱を出してうろついてたの、お前のせいでもあるんだぞ」
「僕のせいって?」
京楽が、浮竹を抱きかかえながら聞いてくる。
「お前の誕生日に、何がいいのかと聞いてきた」
「浮竹・・・・・君は・・・・本当に」
「きょら・・・く?」
「僕だよ。すぐに四番隊のところへいくから、少し我慢してね」
「プレゼント・・・・何も思い浮かばない。「俺」でいいか?」
「!」
思ってもいなかった言葉に、京楽は悦楽を感じた。
「それでいいよ。行こうか」
地獄蝶を4番隊のところに飛ばし、受け入れ準備は万全に整っている。
「京楽!」
「なんだい、日番谷隊長?」
「大事にしてやれよ。浮竹を」
「そんなこと、百も承知の上だよ」
瞬歩で去っていく二人を見送ってから、日番谷は思った。
「そういえば、初めて追うい払う目的以外で、氷輪丸を使ったな・・・・・・」
たまには、ためになる使い方もいいかと、思うのだった。