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小説掲載プログ
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魔王と勇者 11

「呪いの手紙。出さないと呪われる。どんな呪いかというと、金欠になる呪い・・・何て恐ろしいんだ!」

浮竹は、その呪いの手紙をもらって、不安に押しつぶされそうになっていた。

何せ、今まで京楽と再び出会う前は、極貧だったのだ。

パイプ椅子(中古)が玉座であるくらいに。

「浮竹、そんなの迷信だよ。信じなくていいよ」

「いや、俺は出すぞ。呪いの手紙を100通、新勇者に!」

「新勇者ならいいか」

京楽は、けろりとした声で、新勇者にふりかかる災難を良しとした。

ちなみに、新勇者は宿をとっていたのだが、魔王である浮竹の討伐にずっと失敗ばかりして、魔王領土に一軒家を買って住んでいる。

パーティーメンバーと一緒に住んでいるらしいのだが、なんでもかなりこき使われれているそうで、魔王討伐と銘打って遊びにきては、愚痴を零していた。

そんなこんなで、今日は珍しく、新勇者一人で魔王城にまで新勇者は来ていた。

「どうしたんだ。噂ではまた一人だけ宿に戻ったらしいな。ローンはないと言ってただろう。一括で一軒家を買ったと言って喜んでたじゃないか」

浮竹がそう話すと、新勇者は地面を見つめながら口を開いた。

「・・・・・なんだよ」

「声が小さくて聞き取りにくいよ」

京楽が、もっと大きな声を出せと求める。

「あいつら、何もかも俺に押し付けるんだよ!家事全部!掃除に洗濯、料理に買い出し・・・もうやだ!宿に泊まっていても、引きずり戻されるし・・・・・もうやだ、魔王城に家出してやる!」

「いや、それはこっちが嫌なんだが。一応魔王だし。新勇者を泊めるとか・・・・まぁ、新勇者って名乗ってるだけで、実際新勇者扱いしてるのはお前のパーティーメンバーと王様くらいだから、大丈夫といえば大丈夫か」

浮竹は、ぽりぽりと頭をかいた。

「一括の支払いだって、俺の貯蓄から出したんだ。なのに、あいつら俺の家を自分の家のように・・・・あげくに俺を家政婦と思ってやがる!」

「ふむ。呪いの手紙をお前あてに100枚書いたんだが、いるか?」

「そんなものいらんわぼけ!」

「エアリアルエッジ」

大気の精霊に命令して、浮竹は真空の刃を新勇者に向けて放ち、フルチンにした。

「きゃあああああ!えっち!」

新勇者は、フルチンのまま人造聖剣エクスカリバーで局部を隠した。

「新勇者ぁ~~。家に帰りましょう~~~」

女僧侶が、どこからともなく現れて、フルチンの新勇者を見て、股間を蹴りあげた。

「きゃああああああ!なんて汚いもの見せるのよ!この変態!」

「ぬおおおおおおおおお!!!」

新勇者は転げまわった。

京楽が、せめてもと、局部を隠す葉っぱでできた腰のみをくれたので、新勇者はそれを着た。

「これでも、まだ魔王城に泊まりたいか?」

「泊まりたい!だって、家事全部魔王がしてくれるんだろ!魔王と勇者京楽が!」

「はぁ。何を言っても無駄みたいだよ、浮竹」

「ふむ・・・・・新勇者を辞めて、魔王の幹部になるなら、泊めてやる」

「それは・・・・それだけはだめだ!俺は新勇者なんだ!敵に寝返ることはない!」

「だったら、敵の本拠地に泊まるとかいいだすな」

浮竹がハリセンですっぱーんと、新勇者の頭を殴った。

今日は縦巻きロールでなく、アフロでもなく、ウェーブのかかった茶色のロングヘアだった。顔立ちは整っているので、遠くから見れば女の子に見えなくはない。

「ファイアー」

ウェーブのかつらを、浮竹はいつものように魔法で燃やした。

「ああ、女僧侶のかつらが!」

「自分のじゃなかったのかい」

京楽が突っ込みを入れるが、新勇者は切れた女僧侶にボコボコにされていた。

「く、こうなればいつものかつらを・・・・・・」

銀髪の縦巻きロールのかつらをかぶった、葉っぱの腰のみとエクスカリバーだけを持った、謎な姿の新勇者は、女僧侶を突き飛ばした。

「いいか、女僧侶!俺を奴隷のように、家政婦として扱うなら、俺もお前の恥ずかしい写真を市場で売ってやる!」

「な!」

女僧侶は、固まった。

「じゃ、じゃあこっちもお前のけつ穴にきゅうりつっこんだり、乳首にクリップつけたりして、もだえていた変態写真をばらまいてやる!」

「な、なんだと!いつの間に盗撮していたんだ!俺の隠された性癖がばれてしまう!」

すでに浮竹と京楽は引いていた。

「新勇者・・・・変態なんだ・・・・・・」

「うわー、一人で・・・変態だー・・・・・・」

「な、お前たちだってできてるだろう!」

「それとこれとは話が別だろう。俺と京楽は愛し合っているからいいんだ。お前はきゅうりとクリップを相手に、愛し合っているのか?」

「そうだ!きゅうりとクリップを愛している!」

「重傷だねぇ」

京楽は、紅茶をすすって、椅子に座った。

浮竹も、紅茶を淹れてから、クッキーを食べだした。

「そんなあなたに朗報です。どんな性癖も治る「ナオールクン」金貨100枚」

「買った!」

女僧侶が、浮竹から「ナオールクン」を買いあげて、その場で新勇者に馬乗りになって無理やり飲ませた。

「あれ。俺は何を愛していたんだ?」

「魔王よ。魔王を愛していたの」

冗談のつもりで言ったのだが、新勇者は真に受けた。

「魔王浮竹、結婚してくれ!むちゅーーー」

「ぎゃあああああああああ」

「僕の浮竹に何するの!ああもう、近づかないでよ!」

「勇者京楽も、あなたは愛していたのよ!」

「このナオールクン、自己暗示能力が高すぎるのが欠点だね。うわ、こっちこないでよ」

「魔王浮竹に勇者京楽、どっちも好きだあああ!結婚して俺と家庭をもってくれええええ」

「ウォーターボール!」

「アイスウィンド!」

水攻めに氷ついた風を受けて、新勇者は我に返った。

「あれ?なんか魔王と勇者が恋しい気が・・・・・・」

「俺には京楽がいる」

「僕にも、浮竹がいるから」

「あら新勇者、ふられちゃったわね」

「ふられた・・・・?よくわからないが・・・・・・」

ガコン。

浮竹は、いつものように白い紐をひっぱった。

「ぎゃああああああああ」

「のあああああああああ」

落とし穴に、二人は消えていった。

「ぷぎーーーーー!」

「いやああああああ!豚の糞尿まみれえええ!」

「くせええええ!!!」

ガコン。

また音がして、豚はその場に残り、新勇者と女僧侶だけが石の手につまみあげられて、魔王城から放り出された。

新勇者はそっち系の変態であると、知った浮竹と京楽だった。











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メリークリスマス

「ルキア、メリークリスマス」

「一護、メリークリスマス」

ルキアと一護は、朽木家でささやかなクリスマスパーティーを開いた。

呼んだのは、恋次、白哉、冬獅郎。

大きなクリスマスパーティーはすでに終わらせたので、ルキアと一護は恋次と白哉とだけでクリスマスパーティーをしようかと思ったのだが、誕生日が近かった冬獅郎のバースディパーティーも兼ねることにした。

「すまねぇな。こんなにしてもらって」

冬獅郎は、4人からのプレゼントを手に、困ったような笑顔を浮かべた。

「メリークリスマス、冬獅郎」

「ああ、メリークリスマス」

冬獅郎は、プレゼントをもらって、ささやかな祝いの言葉をもらって、早めに帰ってしまった。

「兄様、今年も麗しい!」

白哉は、私服だった。

屋敷が建ちそうな絹でできた着物を着ていた。

「あー、すっげぇ金持ちってかんじ」

「実際金をもっているから、そうであろう」

「あるとこにはあるんだよな、金って」

「兄の着ている服も、元をただせば朽木家が出している」

「へーへー。おありがてぇことでございますだ」

一護の着ている服は、現代のものだった。ルキアも、現世に一度買い出しに行ったので冬用のふわふわのワンピース姿だった。

「ルキア、かわいいなぁ。なぁ、今度ミニスカサンタの恰好してくれよ」

「な、なにを言っておるのだ!兄様がいる前で!」

「お、いいな。一護、俺にも見せろよ」

恋次が、一護の提案に賛同する。

「それもまたよいな」

「兄様まで!」

ルキアは、真っ赤になった。

「実は、すでに用意してあるんだ。ミニスカサンタ。後はプレゼント交換だけだしな」

「着替えてこいよ、ルキア」

「恋次、貴様人妻のミニスカサンタがよいのか!?」

「いや、人妻だからなおさらそそるんだよ!」

恋次は開き直った。

ルキアは、結局用意されたミニスカサンタ服を手に、寝室に行ってしまった。

「なぁ、白哉のプレゼントってなんだ?俺とルキアは、マフラーと手袋にしたんだけど」:

「げ、かぶった。俺もマフラーだ」

恋次の言葉を聞かずに、白哉は一言。

「現金だ」

「うわー」

恋次が、自分の上官の金持ち加減を改めて知った。

「きたよこれ。金持ちはやることが違う」

一護は、呆れた声を出した。

そんなこんなで、朽木家で用意された豪勢な食事を楽しみながら、ルキアがプレゼントを手にミニスカサンタの恰好で現れた。

「お、似合ってる。かわいいぜ、ルキア」

「おう。似合ってるな」

一護と恋次の言葉に、ルキアは顔を真っ赤にさせた。

「この服、スカートが短すぎぬか?下着が見えそうで・・・・・」

ニーソックスをはいていて、絶対領域がまぶしかった。

裾はふわふわした毛で覆われており、ルキアの白い肌に赤いサンタの服はよく似合っていた。

「うむ。似合っているぞ、ルキア」

「兄様にそう言っていただけるなら!」

白哉は、ルキアの首にいつの間にか用意してあったマフラーを巻いた。

「でたよ、このブラコンとシスコン・・・・・・・」

「隊長は最近、いつもああだからな・・・・・」

一護と恋次は、二人でぶつぶつと文句を言い合っていた。



「こら、そこの二人!プレゼントが欲しくないのか!」

「いや、いります」

「同じく」

一護と恋次は、ルキアからクリスマスプレゼント・・・・・といっても、プレゼント交換なのだが、それをもらった。

一護はルキアの手袋をもらい、ルキアは白哉の現金100万をもらい、白哉は恋次のマフラーをもらい、恋次は一護のマフラーをもらった。

「プレゼントに現金、しかも現世の金ってどうなんだよ」

「一億とかじゃないだけましじゃねぇか?」

「それもそうだな」

一護と恋次はまたこそこそとやりとりをした。

「実は一億を用意していた。ルキアに多すぎると止められた」

「うわー。一億とか、現代人が一生かけて稼ぐ額だぜ」

「金持ちは金に関する感情が違うからな。一億なんて隊長にとってははした金なんだろうぜ」

「こえー。白哉金持ちすぎてこえー」

「こら、一護、恋次、兄様に対して無礼であろう!口を慎め!兄様、100万ありがとうございます!尸魂界の金に換金して、欲しかったチャッピーのグッズでも買おうと思います」

「まだ集めるのかよ、チャッピーグッズ・・・・・」

ルキアと一護の寝室は、チャッピーグッズで覆われていた。

「来年のお年玉は一千万環だ」

「うわー」

「もらって嬉しいけど、額が額だけに何に使う迷いそうだな、一護」

「恋次はもらえるのか?」

「一護は去年もらってないのか?俺とルキアは500万環もらったぜ」

「俺だけなしかよ・・・・・・」

「来年も、兄だけなしだ」

「そもそも、お年玉をもらう年齢じゃねぇだろ俺ら!」

「ルキアにあげなければ、誰にやるというのだ、お年玉を。去年は情けで恋次にもやったが、今年はルキアだけにしておくか」

「そりゃないですよ、隊長!」

「俺だけなし・・・・・・・」

一護は、用意されていた日本酒をがぶ飲みした。

「いいよ、どうせ俺だけいつも仲間外れなんだし!」

「その通りだ」

白哉に呪いをこめた藁人形でプレゼントしてやろうと思った、一護であった。

ちなみに、ルキアへの100万は桁をこえて1千万環と、尸魂界の金となって、それがクリスマスプレゼントとなったのであった。

一護は、何気にルキアにいっぱいおごられたりした。








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無題

知られてはいけない。

悟られてはいけない。

それが絶対のルール。

朽木白哉は、アルファ。

そう誰もが信じていた。四大貴族の当主であり、6番隊の隊長朽木白哉。

彼を、誰がオメガと思うだろう。

誰しもが羨む環境と容姿と頭脳、名声、富、地位。

朽木白哉は生まれながらにたくさんのものをもっていた。そしてたくさんのものを抱えてきた。

いずれ、嫁を娶り子を成して次代の当主を成すだろう。

そう考えられてきた。

緋真という流魂街の出身の嫁を娶ったが、子はできなかった。

緋真に問題があるとされたのだが、真実を知れば誰しもが驚愕するだろう。

知っているのは、阿散井恋次のみ。

彼だけが、朽木白哉がオメガであることを知っていた。


ある日のことだ。

完全にオメガであることを隠せる薬を飲み続けていた白哉は、薬に少し免疫ができてしまった。

かすかな甘いフェロモンを纏ってしまい、急いで新しい抑制剤を飲んだが、それを飲む前に、アルファである恋次に、接触してしまった。

「隊長・・・・俺、頭がおかしいんですか。隊長からオメガ特有のフェロモンの香りがする・・・・・・・」

抱きしめられて、白哉は戸惑った。

「私はアルファだ」

「分かってるんですが、どうにもオメガの匂いがするんです」

「恋次、離せ」

「甘い・・・・・・・」

恋次の、口づけは甘い味がした。

「んう・・・・・・」

「はっ・・・・・まじで、隊長オメガ?俺、アルファだからやべぇ・・・・・」

抑制剤を飲む一歩手前だった。

ヒートがきていたのを、薬で無理やり誤魔化して出勤したのがいけなかったのだろうか。

いつもはヒートがきても、強い特別な抑制剤を飲めば、通常のように動けた。

そんな抑制剤は、屋敷が建つような値段がしたが、金は惜しまなかった。

「隊長・・・・・俺やべぇ。隊長を抱きたい」

「やめろ、恋次!」

抱きついてくる恋次を押しのけて、白哉は抑制剤をかみ砕こうとするが、恋次に止められた。

「あんたを抱きたい。隊長」

その言葉は、甘く響いた。

ドクンと、白哉の心臓が鳴る。

何を期待しているのだろうか。

嫁を娶ったはいいが、女のように盛るのは自分自身だった。そんな過去がある。

4大貴族からオメガが出るなど、まして朽木家から出るなど、恥以外の何物でもない。

「あ・・・・・・」

優しく抱きしめられて、白哉は心の中でずっと硬くなっていた芯が溶けていく気がした。

「恋次。約束できるか。私がオメガであることを隠せると」

「約束します。だから、あんたを抱かせてください。番になりたい」

「番になっても、子は成さぬ。それでもいいか」

「はい」

白哉は、恋次に身を委ねた。



しゅるるると、紐を解かれて、隊首室のベッドに横にされた。

後ろは濡れていて、今すぐにでも子種を欲しそうにひくついていた。

「あ・・・・・・・・」

何度も優しい口づけをされた。

「んっ」

舌がぬるりと入ってきて、お互いに絡め合った。

つっと、唾液の銀の糸がひく。

「・・・・あっ」

首筋、鎖骨、胸、臍と舌がおりていき、ついに衣服を完全にはぎとられた白哉は、花茎に手をかけられて、自分でもあまりしない行為に、快感で頭がいっぱいになった。

先端に口づけられて、口に含まれる。

「あああああ!」

びくんと、体がはねた。

ねっとりとした濃厚な精液を恋次の口の中に吐き出して、吐精すること自体何カ月ぶりだろうか。

「いいですか?」

「あ、きくな・・・・・・」

続きをしていいかと問われて、答えを濁す。

恋次は、濡れている白哉の蕾に、指を宛がい、中に押し入る。

「んっ」

始めは異物感しかなかったが、男を誘うようにできているオメガの体は、貪欲にアルファである恋次を誘った。

「あ、あ、あ・・・・・・」

こりこりと、前立腺を刺激されて、それだけで白哉は達してしまった。

「うあ!」

恋次は、もう待てないとばかりに白哉の中に押し入った。

「れ、恋次・・・・・」

「すみません、優しくしますから・・・・隊長、ずっと好きでした。男だから相手にされないと分かってたけど、隊長がオメガだったなんて・・・・・・」

「恋次・・・・・・」

ズチュズチュと、挿入部から音がする。

入口まで戻っては、子宮口のある奥まで貫かれた。

「あああああ!!!」

とんとんと、奥をノックして、無理やり侵入する。

「ひあ!」

「愛してます・・・・隊長」

「あ・・・・・・恋次・・・・・・」

ドクンと、熱いものが白哉の最奥で弾けて、じんわりと体中に熱が伝わった。

「ヒート期間ですよね。まだ終わりませんよ」

恋次は、一度では終わらせないつもりで、白哉の体を拓いていく。

「うあ!」

一度引き抜かれて、騎乗位にされた。

「無理だ・・・・こんなの入らない・・・・・」

「さっきまで飲み込んでたんだから、簡単っす」

下から少しだけ突き上げれば、ずぶずぶと恋次の欲望を、白哉は飲み込んでいった。

「あああ!」

白哉は長い黒髪を乱す。

「ん!」

舌を絡めあいながら、濃厚に睦みあった。

「あ!」

恋次は、白哉の首に噛みついた。

番になることを、白哉は了承した。

恋次以外に、そんな関係になりたいという者はいなかった。

「あ・・・・・・・」

最奥でまた熱が弾けた。

そのまま騎乗位から押し倒されて、ぐりっと中を抉られて、白哉は涙を流した。

「んああああ!」

ぐちゅぐちゅと、結合部は泡立ち、恋次は夢中で白哉の体を貪った。

「やあああ!もう、やぁっ」

白哉が首を横にふると、恋次は甘く囁きながら白哉を犯した。

「好きです、隊長。もう、俺のものだ・・・・・・」

「あ、あ・・・・・・」

頭に霞がかったかんじがして、白哉は快感の中ふわふわと雲の上を漂っているような心地を感じていた。

「ふあ・・・・・・」

恋次と何度目かも分からぬディープキスをして、舌を絡めあいながら、お互いを抱きしめあった。

ひきぬかれると、どろりと大量の白い精液が白哉の蕾からあふれた。

このまま放置しておけば、妊娠してしまうだろう。念のためにもっていたアフターピルを、白哉は飲みたいと言い出した。

何度出されたのか覚えていないが、白哉が気が付くと体中をふかれて、中のものはかきだされていた。

恋次がアフターピルを手に、白哉に水の入ったコップを手渡した。

それを飲んで、ついでに抑制剤も飲んで、白哉の熱は落ち着いた。

「番にしてよかったんですよね、隊長」

「番がいなければ、抑制剤がきれた時に誰かれかまわずフェロモンを出す。ヒートを抑え続けるのも体に負担がかかる。これからも、共にいてくれ、恋次。ヒート期間を薬を飲んでやり過ごしてきたが、ずっと辛かったのだ」

「隊長が望むままに・・・・・・」

その日から、恋次と白哉はオメガとアルファとしての番になった。

だが、子は成さず、関係も周囲に悟られぬように、今まで通りにふるまわなけばならない。

だが、番だ。

愛がないわけではない。

白哉がオメガだということを知っているのは、恋次のみ。

薬は、親戚にオメガがいるということで手に入れている。

朽木白哉は、これからもアルファとして人前でふるまうだろう。

だが、恋次と二人きりの前ではオメガになってしまうのだ。

それは。

知られてはいけない。

悟られてはいけない。

それが絶対のルール。

朽木白哉は、アルファ。

でも、本当はオメガ。






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勇者と魔王 年末って

「はぁ。クリスマスが終わったと思ったら今年も終わりだな」

「そうだね。クリスマスパーティー楽しかったね」

「また、来年も開こう」

「クリスマスの前には君の誕生日があるのだって、すっかり忘れてたよ」

「誕生日、そういえば教えてなかったからな」

むくれる京楽に、浮竹は微苦笑を浮かべて、翡翠の瞳でのぞきこんだ。

「お前の誕生日には、俺を好きにしていいから・・・・・」

「言質、とったよ」

にんまりと笑う京楽に、浮竹は早まったことをしてしまったかと、少し後悔した。

まぁ、愛する者のためなら、それくらいどうってことはないかとも思うが、お互いもう若すぎるわけでもないし、限度というものを互いに知っていた。

「おう、魔王!お年玉くれ!」

二人で昼食をとり終わり、仕事の休憩のお茶の時間に新勇者はパーティーを連れてそう言ってやってきた。

「は?なんでお年玉?」

首を傾げる浮竹に、新勇者はえっへんと腰に手をあてる。

「俺はぴちぴちの16歳だ!まだお年玉をもらえるはずだ!未成年だからな!」

「仕方ないねぇ」

そういって、京楽は勇者の手に大根を乗せた。

「なんだこれ」

「何って、お年玉。兵士のダイコーンこと大根。庭で栽培してるよ。ちなみにまだ年明けてないからね。本物のお年玉は「LVアガール」をあげよう」

「何!LVアガールだと!」

「はははは。嘘~」

ちなみにLVアガールは、使うだけで文字通りLVがあがる1個で金貨1000枚はする代物である。

京楽は、めっちゃ嬉しそうな新勇者の頭を大根で殴って、血染めにした。大根の中には金属の棒が入っていた。

「あっはっはっはっは。面白い」

「おい、京楽。あんまり新勇者をいじめるなよ」

浮竹が止めるが、その右手には油性マジックがあった。

「そういう浮竹だっていじめる気満々じゃない」

「芸術を爆発させるだけだ」

浮竹は、油性マジックで新勇者の顔の眉毛をつなげて、うんこまーくを額にかいて、ひげをかいて、最後に顔中にうんこをかいて私はうんこですと、頬にかいた。

「ファイアー!」

少年魔法使いが、魔王である浮竹に魔法を使うが、標的となったのは浮竹でなく新勇者だった。

「あっちーー!」

気を失っていた新勇者は、どくどくと出ている血を女僧侶の呪文で治癒してもらいながら、らくがきだらけの顔のままずうずうしく、浮竹と京楽の席の向かいに座り、茶を飲み干した。

浮竹と京楽は、新勇者の顔を見て爆笑していた。

「あははははは!」

「ひははは!」

「ん?なにがおかしいんだ?とにかく、年があけたらお年玉くれ!」

「LVサガールをあげるでもいいか?」

「嫌だ!どうせなら本物のLVアガールをくれ!」

「てい」

浮竹は、新勇者の頭をハリセンで殴った。

ヅラの縦巻きロールが地面に落ちる。

何故に縦巻きロールなのか。

いつもアフロか縦巻きロールと、ヅラと分かるヅラをつけている新勇者。

「ファイアー!」

「ああ、俺のヅラが!」

浮竹がヅラを燃やして、魔王らしく偉そうにふんぞりかえるが、にこにこ笑っているのでその優しい笑顔のせいで悪いことをしたように見えない。

「俺はこれでも魔王だぞ、新勇者」

「宿命のライバルめ!」

そういう新勇者に、京楽が手鏡を新勇者にもたせた。

新勇者はレインボーカラーのアフロを荷物から取り出してかぶると、手鏡で自分の顔を見た。

「うわあああああああ!?うんこマークだらけじゃないか!」

「ぎゃははははは!」

「ぷっ」

「だっせー」

「いつもの行いのせいだな」

親勇者のパーティーたちが、新勇者を詰る。

「うわああああああん!ママにいいつけてやる!」

「それ、油性ペンの特殊なインクに魔力通したやつだから、ラクガキ洗ってもしばらくはとれないぞ」

浮竹の言葉に、新勇者は涙を流しながら叫んだ。

「なんでいつもこんな扱いなんだ!」

「いや、お前が新勇者だから」

「新勇者、敵対勢力だからじゃないの?」

浮竹と京楽は、茶をすすりながらそう言った。

ちなみに今日の二人の茶は緑茶だった。

浮竹は、白い紐をひぱった。

ガコン。

音がして、新しく作った坂道を丸い岩が転がり落ちてくる。

「のぎゃああああああ」

「きゃあああああああ」

「アイスウォール!!」

少年魔法使いが、必死で岩を止めるが、氷の壁はあっけなく破壊されて、新勇者とそのパーティーは岩の下敷きになってペラペラになった。

「さようなら~~~」

浮竹は、ペラペラになった新勇者一行を窓から風に流した。

「反物にしたほうがよかったかな」

「やめなよ。どうせすぐ元に戻るんだから」

「それもそうだな」

浮竹はからからと笑って、京楽と一緒に茶をすすりながら和菓子を口にした。

「来年もまた、賑やかになりそうだなぁ」

年末とあと少しで終わり。

そんな季節だった。




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ハロウィン

「ハロウィンですね、兄さま、一護!」

ルキアが、朝食の時間に一護と白哉を見た。

「あーそうだなぁ。もうそんな季節かー」

「ハロウィン?なんだそれは?」

「あ、兄さまはご存じなかったかもしれませんね。現世の人間のイベントです。10月の最後に、トリックオアトリートと言って、子どもがお菓子か悪戯かというやりとりをするのです。悪戯されたくなければ、子どもにお菓子を与えます。ちなみに仮装するのも大々的なイベントで、魔女や化け物の衣装をした姿に扮装したりするのです」

「魔女・・・かぼちゃ・・・・・」

白哉にはちんぷんかんぷんであった。

その日は、ちょうど10月の終わり頃。

白哉は朝食を食べ終わると立ち上がった。

「そのイベント、我が朽木家で行うとしよう!」

「ええ!白哉、ハロウィンに興味なんかあるのか!?」

「ルキアの仮装がみたい」

白哉は言い切った。

シスコンの白哉は、朽木家の名にかけて、素晴らしい衣装を用意するだろう。

一護の衣装も用意するだろう。きっと、何か変な仮装をさせられるだろう。

そんなこんなで話は進み、朽木家でハロウィンパーティーが行われることになった。



「おい、恋次その恰好はなんだ?」

「見ての通り、狼男だ。ってかぎゃははははは、一護てめぇのかっこ!」

一護は、黒い色の魔女の恰好をさせられていた。流石にスカートだけなのは嫌なので、下にハーフパンツを着ているが、ひらひらには変わりない。

片手にはほうき、肩には黒猫のぬいぐるみ、頭には黒いとんがり帽子・・・・普通、魔女ならルキアだろうと思ったのだが、ルキアは違う恰好をさせられていた。

頭には黒い猫耳、お尻には黒い猫の尻尾・・・全部作り物かと思ったら、本物でなんでも白哉が涅マユリに作らせた薬の効果のせいらしかった。

「あまり、見るな・・・・・・」

ルキアは顔を赤くして、もじもじしていた。

一護も恋次も、ドキドキしていた。

かわいい。めっさかわいい。

「ルキア、似合ってるぜ」

一護がそういうと、ルキアの黒い猫耳がピクピクと反応し、尻尾がゆらりと揺れた。

「貴様の仮装は、女装か。趣味が悪いな」

「白哉に言いやがれ!これ以外の服隠したんだぞ、あいつ!」

そういう白哉は、パーティー会場となった朽木家の庭の隅で、日番谷と松本と一緒になって酒を飲んでいた。

ちなみに白哉の仮装はドラキュラ。

よく似合いすぎていて、嫌気がさしてくるほどだ。

日番谷も狼男で、松本も魔女だった。

「兄さま流石です。魔女としての恰好を一護にさせるなんて、笑いはばっちりですね!」

ルキアが、白哉から酒器に酒を注いでもらい、一気飲みした。

「ルキア、よく似合っている」

「兄さま・・・・・」

「ルキア・・・・・・」

日番谷と松本は、二人を放置して他の仮装した隊長副隊長クラスの者に声をかけていた。

「何いい空気だしてんだ!」

ルキアと白哉の間に一護が入り、二人をべりっと引きはがした。

「ルキアは俺のものだ!」

「兄のものではない」

「俺のものだ!」

「この変態女装魔女が!」

「キーーーー!この恰好させたのはお前だろうが!」

「兄の言葉の意味が分からぬ」

白哉はしらばっくれようとしていた。

「まぁまぁ、隊長も一護も、せっかくのパーティーなんだし、楽しみましょう」

恋次の言葉に、二人はふんと、顔を背けあった。

ルキアは、酒をどんどん飲んでいた。

「ふにゃあ・・・・・・・・」

一護のところにくると、とろんとした瞳で見つめられて、しなだれかかられて、一護は息子さんが反応しそうになって焦った。

魔女の仮装しておったてるなんて、どこの変態だ。

いや、魔女の仮装をしている段階で変態と言われても仕方ないのだが。

白哉のようにヴァンパイアとまではいかないが、恋次のように狼男か、フランケンシュタインのような仮装のほうがまだ何倍もましである。

「なぁ、ルキア、今晩・・・・・・・」

「ふにゃ?」

ぴくぴくと動く猫耳につい手を伸ばすと、ルキアはびくんと反応した。

「い、一護、耳はだめだ。耳は弱いのだ」

「じゃあ尻尾は?」

ゆらりと揺れる尻尾を掴むと、ルキアは一護に抱き着いた。

「尻尾もだめなのだ!」

「へぇ・・・・」

バシャリ。

一護は、白哉に水をぶっかけられた。

「何しやがる」

「パーティー会場で盛るな」

「こんの、白哉、てめぇ!」

ヴァンパイアの衣装に手をかけようとすると、ひらりとかわされてしまう。

そして、会場にあったパイ投げ用のパイを、白哉は一護の顔に投げた。

べちゃりと、クリーンヒットする。

「くそ!」

一護も負けじとパイを持って投げるが、白哉は巧みによけて、全然当たらない。

「ちくしょー!」

パンパンパン。

くやしがっている間に、白哉がパイを投げてきた。全身パイまみれになって、魔女の仮装も見る影もない。

「ムキーーーー!」

ルキアの腕をつかんで、パイを投げてくる白哉の前に立たせる。

白哉は動きを止めた。

すかさず、一護がパイを白哉の顔面に投げた。

「あはははは、ざまーみろ!」

ルキアは危ないからと、恋次に連れられて水を飲まされていた。けっこう酔っぱらっているようだ。

「散れ、千本桜・・・・・・・」

「おい、まじになりすぎだろ!パイ投げたのはそっちが先で・・・・・もぎゃああああ!!」

朽木家のハロウィンパーティーは、最後は皆でパイ投げで終わった。

なぜパイ投げが入っていたのかは、最初分からなかったが、多分白哉が一護にぶつけるために用意したのだろう。したたかに酔った隊長副隊長たちは、パイまみれになって帰っていった。


宴も終わり、風呂に入って衣装を処理して、パイまみれの髪や顔を洗った一護は、寝室にやってきた。

すでに湯あみを終えているルキアが、猫耳と猫の尻尾を揺らして、煽情的な眼差しで一護を見つめてくる。

「今日は・・・・するのであろう?」

「ルキア・・・好きだ。かわいい」

一護は、ルキアの猫耳をもふもふしながら、ルキアを抱きしめる。

体温が高かった。

ゆらりと揺れる尻尾を手で撫でながら、褥にゆっくりとルキアを横たえる。

「んあ」

口づけを交わしていると、ルキアが高い声をあげた。

体全体のラインをなぞるように手を動かして、耳と尻尾をくりくりといじると、真っ赤になったルキアは一護に抱き着いた。

「あ!」

ちゅっと、頬にリップ音を立ててキスをする。

「貴様のせいだぞ・・・・・責任をとれ」

真っ赤になって、欲望を覚えたルキアの紫紺の瞳に見つめられて、一護はルキアに囁いた。

「愛してる、ルキア。世界で一番かわいい、俺の奥さん」

「あ、一護・・・・・私も、愛している」

パーティーでは散々だったが、甘い夜を過ごせたので、10月の終わりの一護の機嫌はとてもハッピーなものであったそうな。

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25話補完小説

「いやいや、どこもかしこも壊してくれちゃってまぁ」

京楽は、ひょいひょいと瓦礫の上を歩く。

「って、今のこれはあちらさんの建物だっけ」

もう、建物のどれがどれの残骸であるのかさえ、わからない。

「これ先々、敵さんたちを追い返したらちゃんと瀞霊廷の建物に戻ってくれるのかねぇ・・・戻ってくれたとして、戻った建物は壊れちゃってるのか元のままなのか・・・」

黒い影が、地面に落ちる。

「元のままだといいんだけど・・・ねぇ」

背後を振り返りもせずに、名を当てる。

「浮竹」

ふわりと、白い長い髪が風に靡いた。

浮竹は無表情だった。胸から首にいたるまで、包帯が巻かれていた。

「・・・・そうかな。壊れていたなら、また直せばいいじゃないか」

「そう言うと思ったよ」

「霊王宮への侵入を許したようだな」

浮竹は、空を真っすぐに見上げた。

白い髪が、さらさらと音をたててこぼれていく。

「気づいてたかい」

「それを見越しての「神掛」だ」

浮竹は、ふうと息をついた。

「・・・・・たしかに」

「神掛は成功したみたいだ」

「それなら、多少の無理もききそうだね」

京楽は、笠をぐいっと深くかぶった。

「医者のような口を聞く・・・・」

「浮竹」

ぱしっと、深くかぶりなおした笠をあげて、京楽は浮竹の手を取った。

「死ぬ、つもりだね?」

「ああ」

なんの躊躇もない答えに、京楽の眉が寄る。

「僕を、置いて行ってしまうのかい」

「そうなるな」

「君は・・・本当に、ずるい。こんなに僕は君のことを愛しているのに、君は瀞霊廷のために死のうとしている」

「それが、死神の義務だ」

「義務ね」

できることなら、浮竹を連れて何処かに逃げ出してしまいたい。

でもできない。

自分は護艇13隊隊長だ。

一人の命と、大勢の命を計りにかけることはできない。

「浮竹」

「なんだ」

「愛してるよ」

「ああ、俺も愛してる」

触れるだけの口づけを交わす。

「俺の分まで、生きろよ」

「僕が死ぬことは許されないんだね」

「一緒に最後の最後で死んだら、絶対お前を許さない」

浮竹は、翡翠の瞳で京楽の黒い瞳を睨んだ。

「あっちで待ってるから、千年くらい経ったら迎えにいくから」

浮竹は笑顔を浮かべた。

京楽も、笑顔を浮かべる。

ただ、京楽の瞳からは涙が溢れていた。

「泣くな」

大柄な体を抱き込んで、浮竹は京楽の背中を赤子をあやすようにぽんぽんと叩いた。

「泣きたくもなるよ。君を失いたくない」

京楽は、思い切り力をこめて浮竹を胸にかき抱いた。

細い。

神掛のために食べることも寝ることもせずに、過ごしていたのが分かる。

「京楽。これを返す」

京楽の腕から逃れた浮竹が、京楽の手に何かを投げた。

それは、京楽が院生時代に浮竹に送った翡翠のお守り石だった。

「俺は、もう持てないから。きっとその石が、お前を守ってくれる。俺の分まで」

「浮竹、僕は君を・・・・」

「京楽。我儘を言うな」

「でも!」

「尸魂界の、瀞霊廷のために死なば本望」

浮竹は、京楽の癖のある黒い髪を一束とって口づける。

「先に逝く。ただそれだけのことだ」

翡翠の瞳は、穏やかだったが、悲しさと寂しさも持ち合わせていた。



できることなら、一緒に隊長を続けて引退して、死ぬまで一緒にいたかった-------------。


叶うことのない願いは、口に出さない。

「じゃあ、俺は行く。元気でな、京楽」

「僕も行くよ。さようなら、浮竹」

京楽は、もう涙を零していなかった。

逢瀬はすでに済ませていた。

後はこうやって、最後の別れをするだけ。

浮竹は神掛のためにこれから命を散らしていく。

それを知っていても、京楽には止めることができない。



ああ。

神様って酷いね。

もっとも、信じているわけじゃあないけどね、神様の存在なんて。

もっともっと、浮竹と一緒に時間を過ごしたかった。

けれど、それは浮竹も同じで。

僕は浮竹が死ぬと決めたのを、止めることはできない。

浮竹は、ただこの時のためだけに、命を長らえさせてきたのだから。

ああ。

本当に運命って残酷だ。

命を長らえさせるために宿した神を、手放すと死ぬだなんて。

それが神掛だなんて。

ユーハバッハさえいなければ、こんなことにはならなかったのに。

ユーハバッハに対する怒りがわいてくるが、いずれにせよユーハバッハは時間が経てば復活する運命にあったのだ。

ただ運命を、真実を憎んだ。

憎んだ末の結論が、藍染を利用すること。

例え他者に憎まれても、少しでもユーハバッハの命を刈り取る可能性があるならば、手段は択ばない。

浮竹に言葉をかける。

「また、後で」

もう、後なんてないことは分かっているのに。

去っていく浮竹に手を振って、歩き出す。

例え愛しい存在が死んだとしても、歩き続けなけれなならない。

なぜなら、僕は総隊長だから。


ねぇ、浮竹。

本当に、愛しているよ。今まで、ありがとう。

たくさんの愛の言葉を君に送ろう。

愛しているよ。

そして、さようなら・・・・・・・・・・。









ねえ。

浮竹。

愛しているよ。世界で一番愛してる。

君に出会えて良かった。

そして、さようなら。

永遠の安らぎが、君にあらんことを。

愛しているよ・・・・・・・。

・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・涙が止まらない。




僕は、涙を流しながら四十六室に向かう。

四十六室につくまでには、涙をふかないと。

そう思っても、また涙が溢れてくる。

四十六室の部屋の前に来る頃には、なんとか涙は止まっていた。

僕は、僕がするべきできるべきことをするのみ。

浮竹が護るために死んでいくように。

僕もまた、命をかけて瀞霊廷を護ろう。


   

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魔王と勇者9

魔王浮竹は、中庭で野菜の世話をしていた。

「うん、いいかんじだ」

兵士でもあるダイコーンこと大根が、よく育っていた。

「ひまだよ浮竹ー」

農作業に没頭するあまり、勇者京楽を放置していた。

「ああすまない、もう終わりにする」

京楽も農作業をする時もあるが、基本的に浮竹が中心で行っていた。

大根と人参とキャベツを収穫して、牛の乳を搾り、鶏が産んだ卵をとる。

基本自給自足である。

裏で冒険者稼業をやって、それなりにもうけていたが、慈善団体に寄付したりしているので、城の改修工事と内装の工事が終わってからというもの、金はあまりかけないようにしている。

さすがにパンは買うので、ちょっとした食品や衣服などは金で買った。

「今日の朝食はエッグトーストと、フライドポテトだ」

すでに前に収穫していたジャガイモを細かく切って、油であげた。

街で買った食パンを焼いたものに、焼いた卵をのっけた。

昔なんて、米にたくあんひときれ、めざし1匹という食事だったが、朝食からもう普通のものになっていた。

たまにローストチキンを食べたりステーキを食べたり、贅沢をするときもある。

夕飯に限るが。

「ええと、今日は朝9時から会議か・・・・・」

出席するのは、浮竹、京楽、最近雇った死んだ宰相のサイッショの代わりに雇った、サイッショの弟のサイショーだ。ちなみに、魔族だ。

魔族は寿命がちょうど千年と決まっていて、サイショーは973歳。

あと27年は生きる。

浮竹は魔王になったため、肉体はほぼ不老である。同じく勇者になった京楽も魔王の加護で不老であった。

でも不死ではない。

なので、冒険者稼業をする時、特にドラゴンなどの強いモンスターを退治する時は気をつける。

といっても、二人ともLVが500に近いので、苦戦するようなことはないが。

この世界のモンスターも人間も、LV99までで、カンストだ。

魔王とその加護に肖った者だけが、レベル限界突破の500まであげることができる。

かなりチートな能力であった。


会議は滞りなく終わり、昼になった。

昼になるまで家畜の世話をしていた浮竹は、昼寝をしていた京楽をおこして、昼食を食べた。

そして城下町を視察して、3時になったのでお茶タイムにした。

「やっぱ紅茶はアッサムだな」

「えー、僕はダージリンのほうが好きだなぁ」

「俺はカモミールが好きだ」

いつの間にか、混ざっていた新勇者を、京楽が突き飛ばす。

「何普通に混ざってるの、君」

京楽に突き飛ばされて、新勇者はまくしたてた。

「昼の1時に「たのもう!」っておしかけたら留守だったから、待ってたんだ!」

他のパーティーメンバーも近くにいたが、みんな寝ていた。

暇だったのだろう。

「お、新勇者。お茶していくか?」

浮竹はのんきにそんなことを言っている。京楽はどうしようかと迷ったが、浮竹がいいならいいかと、新勇者はお茶会に加わった。

「んでそこでズドーンと一発、フレアをかまして俺はドラゴンのけつに火をつけて、パーティーメンバーに蓄えていた金銀財宝をもてるだけもたせて逃げ出したんだ」

「うわー、最悪」

「ドラゴンかわいそう」

「な!?ドラゴンだぞ!悪だ!」

新勇者は顔を真っ赤にしてまくしたてた。

「いや、ドラゴンは知恵も人間より高いし、どちらかというと中立の立場だし、時によっては味方にもなってくれる。魔に染まって狂暴化したドラゴン以外は、退治しないほうがいいとギルドの受付嬢も言っていた」

浮竹の言葉に、新勇者はショックを受けた。

「そんな・・・っていうか、魔王、そもそも諸悪の根源は貴様だ!」

人造聖剣エクスカリバーを抜いて、浮竹を斬ろうとするが、カキンと京楽が唱えたバリアの魔法で剣先は止まった。

「おのれ勇者京楽!どこまで邪魔をしくさってからに!」

「そりゃ愛する浮竹のためだもん。守るに決まってるでしょ」

「少年魔法使い、今だ!勇者京楽を燃やせ!」

「んー。むにゃむにゃ・・・・・・ファイアー」

「あちちちちちち」

少年魔法使いが使った炎の魔法は、縦ロールの金髪の新勇者のヅラを焼いた。

「俺のヅラ焼いてどうする!女僧侶、獣人盗賊、青年戦士、みんなちゃんと起きて戦え!」

「んー。むにゃー」

「ぐーぐーぐー」

「ZZZZZZZZZZZZ」

「どいつもこいつも使えねえええ!!!」

新勇者のパーティーは、少年魔法使いが寝ぼけてかろうじで起きている以外はみんな寝ていた。

「こんな敵地で寝るとかどうかしているぞ!」

「その敵地で魔王とお茶をする新勇者もどうかと思うがな」

浮竹は、楽しそうに笑っていた。

そして、天井から垂れ下がっていた白い紐をひっぱった。

ゴンゴン。

新勇者の頭の上に、タライが連続で落ちてきて、新勇者はたりらりら~になった。

「うふふふふ。お花が咲いてる」

らりってる新勇者を引きずって、寝ているパーティーメンバーも移動させて(ちなみに少年魔法使いもまた寝ていた)浮竹は、赤い紐をひっぱった。

ガコン。

床があいて、らりってる新勇者と寝ている新勇者パーティーが落ちていく。

「のわあああああああああ」

「ぎゃあああああああああ」

「ぎええええええええええ」

牛ふんのつまった落とし穴だった。

もう一度赤い紐を浮竹がひっぱると、ガコンゴゴゴゴゴと音がして水が流れ、トイレのように新勇者パーティーは吸い込まれて消えていき、城の外へぺっと吐き出された。

「おのれえええ!牛ふん風呂だと!」

「いやああ、あたしの一張羅があああ」

「くっさ。クリーン!」

少年魔法使いは、浄化の魔法を使って体中についていた牛ふんを綺麗にした。

「あ、あたしもお願い」

「金貨5枚」

「何、金とんの!?」

「嫌ならそのままでいればいいじゃない」

「ちっ、ほら金貨5枚!」

「クリーン」

「あ、俺も」

新勇者も金貨5枚を出そうとした。

「お前は頼まれても使ってあげなーい」

「ぐぬぬぬぬぬ。少年魔法使い、お前、俺は勇者だぞ!」

「王様と自分が名乗ってるだけじゃん」

「ぐぬぬぬぬ。あーーーーーーーー!!!!」

新勇者は奇声を発して、近くにあった川に飛び込んだ。

「いいもんいいもん。川で十分だもん」

泣きながら、新勇者は水浴びをした。

牛ふんの匂いは、洗ってもとれなくて、その日一日中、新勇者は泣いているのであった。











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21話補完小説

たくさんの滅却師に囲まれながらも、一護は遠くを見ていた。

「なんだ・・・あの光は?」

自分がやってきた、霊王宮から尸魂界に続く道に光が見えた。

「行くぞ、全ての息子たちよ。私と共にあれ」

ユーハバッハは、歩き出す。

霊王宮に向かって。

「黒崎一護。私の声が届いているだろう。黒崎一護。我らを光の下に導きし者よ。感謝しよう」

「どういう意味だ」

「お前のお陰で、私は霊王宮へと攻め入ることができる!」

零番隊の髪と骨で作った衣服は、72層になる障壁を貫いていける。しかし、その頑丈さ故に。

「その絶大な防御力ゆえ、お前の突破した72層の障壁は、その後6000秒の間閉ざすことができぬ!」

一護は走り出す。

ユーハバッハを止めるために。

けれど、行く手を滅却師たちに囲まれる。

「こいつらは、遠さねぇ」

恋次が、一護に一撃を放とうとしていた滅却師を止める。

「詳しいことは知らねぇが、滅却師の親玉とは因縁があるんだろ?ゆずってやるよ。おめぇの仕事だ」

「恋次・・・・・・」

一護は、恋次に背を向けて走り出す。

それを滅却師たちが止めようとする。

「かっこつかねぇから、何度も言わせんじゃねぇよ。通さねえっていったろ」

恋次、ルキア、白哉、一角、弓親、修平が、滅却師たちの前に出た。

一護はすでに瞬歩で駆け出している。


「ユーハバッハ!」

追いついた。

一護は斬魄刀を手に、ユーハバッハの間合いにまで入ろうとする。

「来たか、黒崎一護」

その間を割ったのは、滅却師の弓矢。

「石田、なんでお前が!?」

ユーハバッハを守るように、雨竜は弓を構えた。

「帰れ、黒崎一護。お前には、陛下を止めることはできない」

「何言ってんだよ、石田・・・・・」

「帰れ。命を無駄にしないうちに」

「なんでそこにお前が居るんだって聞いてんだよ!」

一護の叫びに、雨竜は弓を再度構えた。

「光の雨(リヒト・レーゲン)」

ズガガガガガ。

雨のように一護に降り注ぐ。

かわすことをしなかった一護に、弓矢が突き刺さる。

そこへ、虚圏からやってきた織姫と茶虎が、二人の間に割って入り、織姫の結界で雨竜の弓の雨は一護にそれ以上届くことはなかった。

「石田君・・・・・」

織姫を見て、雨竜はふいっと目を反らす。

「行くぞ、雨竜。別れは済ませたか」

「はい」

「永劫の別れになるぞ」

「承知の上です」

「石田あああああああ!!!」

一護の叫びが、雨竜の耳に届く。

(ああ・・・・最後だと、思ってくれて構わない。僕は、僕の手でユーハバッハを・・・・)

殺す。

ただそれだけのために、ユーハバッハの血を飲み同胞(はらから)となった。

黒崎と対立することになるとしても。

滅却師の不始末は、滅却師で消す。

「石田ああああああ!」

さよならだ、黒崎。

ふっと悲しい顔をして、一護を見る。

一護は、雨竜にむかって手を伸ばす。

その距離は届かない。

ユーハバッハと雨竜は、霊王宮へと消えていくのだった。


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20話補完小説

「なんだぁ?やちるの霊圧が随分グラついていやがるから探してみりゃ、ガキが一匹騒いでるだけじゃねーか」

現れた更木は、そう口にした。

「剣ちゃん」

やちるが嬉しそうに、更木に近づく。

「更木隊長・・・・あの卯の花隊長は」

虎徹が、戸惑いがちに更木に声をかけた。

「死んだ」

「そうですか・・・」

「俺が斬ったんだ。憎けりゃ俺を斬ってもかまわねぇ」

「よかった。更木隊長が斬られたということは、受け継いだんですね。卯の花隊長の名を」

虎徹は、悲しみをぐっとこらえ、涙を流すまいと我慢する。

「ああ」

更木の言葉に、ふとどこからか少年の声が聞こえた。

「舞台を用意したよ何しろあの更木剣八だ。立派な舞台でお迎えしないと失礼でしょ」

「なんだこりゃ。まじないの類か?」

地面が大きくせり上がり、更木はその上に立っていた。

「まじないも幻覚でもない。現実さ。僕は空想を現実にするザ・ビジョナリィのグレミィ。シュテルンリッターで一番強いのは僕だと思うから」

自信過剰なまでのグレミィに、更木をつまらなさそうな顔をした。

「そうかよ」

グレミィを斬魄刀で斬る。でも、傷はすぐに塞がった。

「もう一度いうよ。僕は空想を現実にできる。この世界で一番強いのは、想像力だ。今だってほら、僕の体が、鋼鉄をはるかに超える強度だったからって創造するだけで」

グシュリと、グレミィの肩口が裂けた。血が吹き飛ぶ。

「鋼鉄ぐらいの硬さならそう言っとけよ。最初から鉄斬るつもりで斬ってやるからよ」

「・・・・」

グレミィは沈黙した。

「言っとくぜ、てめぇごときの想像力で、俺に斬れねぇものなんざ創れねぇ。俺が剣八だからだ」

自信たっぷりの更木に、グレミィは顔をしかめた。

傷が塞がっていくのを見て、更木は舌打ちした。

「おめぇ、傷をてめぇで治せるのか」

「ぼくはただ、斬られた傷がもう治っている自分を想像しただけなんだけど」

更木は言葉を発しない。

「かかっておいでよ、更木剣八。指一本で相手するなんてちゃちなことは言わないよ。指一本だって使わない。頭の中だけで、きみを殺してあげよう」

ドンと、地面から暑い炎が現れた。

「なんだと思う?溶岩だよ」

「見りゃあわかる」

「じゃあどこからでてきたんだろうって?僕の頭の中からだよ」

「むちゃくちゃだな。だが、理屈が通じねぇのは嫌いじゃないぜ」

途中でやちるがいることに気づいて、更木はやちるを庇いながら、虎徹の霊圧があるのに気づき、治してもらえと言いそうになった。

だから、やりるの骨はクッキーのように脆くなっていて、身動きが取れない。

「いちいち、回りくでぇ野郎だ!」

斬りかかってくる更木を、グレミィは水中に閉じ込めた。

「わけがわからないでしょ。君の飛び上がった空中は、すでに水中だったよ」

グレミィは薄く笑った。

「君がいくら化け物でも、1時間あれば十分でしょ?」

水に浸かったまま、地割れにつぶされれば。

ドゴゥ。

すごい音がした。

更木が、やちるを片手にもって、グレミィに斬りつけたのだ。

「俺が抱えてもなんもねぇってことは、やちるの骨は元に戻ったみたいだな。俺との勝負に必死で、やちるに脳みそを使えなくなったか?」

「剣ちゃん」

「虎徹の霊圧はまだある。生きてるはずだ。下にいって腕治してもらえ」

「あい」

やちるは笑顔で飛び降りていった。

「おめぇ自分をなんつった。最強の滅却師じゃねぇのかよ。最強なら最強を叩き潰したいんじゃねぇのかよ。来いよ、戦いを始めようぜ」

更木は斬魄刀を肩に担いだ。

「目の前の敵以外に気をむけられるようなもんを、戦いだとは呼ばねぇだろ!」

たくさんのブロックを更木にあてた。

更木は平然とブロックを斬り捨てる。

(僕が一番強いことなんてわかりきっていることだから、誰かを殺して証明することなんかない。だから、誰かを叩き潰したいと思ったこともない。なのに。それなのになんで、僕はこんなにこいつを叩き潰したいと思っているんだ!」

たくさんの重火器を出して、一斉に発砲した。

ブロックをたくさん投げた。

「手ぇ、使ったな。いい顔だ。いい顔だ」

グレミィはにやりと笑んだ。

(いい顔だって?僕が今どんな顔をしているのか知らないけど、不思議だよ。なんでこんなに僕は、今僕はこんなに気分がいいんだ!)

戦いに、ドクリドクリと鼓動が高鳴った。

「芸がねぇな!言ったろ、鉄でも斬るってよ」

グレミィの肩を斬り裂いた斬魄刀は、動かなかった。

(抜けねぇ!)

真上から、手の形をした岩が降ってくる。更木はぺちゃんこになっているはずだ。だが、すぐにそんな思いはかき消された。

土煙の中から出てきた更木が、グレミィの体を刻んだ。

(しまった!)

「遅れたなあ!」

(斬られたことに気付くのが遅れた。気づくのが遅れれば治すのが遅れ、治すのが遅れれば次の防御も反撃も遅れ、その瞬時の遅れに次の一撃を叩き込まれる)

更木の斬撃をうけながら、グレミィは成す術もなく血を噴き出す。

「自分が負けるとこでも、想像したか?」

「ありがとう」

「何の話だ」

「今の君の言葉で、僕は完全に自分の死のイメージを消すことができた。僕はもう絶対に死ぬことはない。後悔するよ」

「したことねぇな!」

更木が叫ぶ。

グレミィは、二人になっていた。

「お礼に僕の、一番の力を君に見せるよ。分身じゃないよ。僕はもう一人の僕だ。僕は創造で命も作り出すことができる。どっちも斬れない。どっちも死なない。そして想像する力は単純に倍だ」

グレミィの頭上に隕石が現れた。火をまとう巨大な影が地面に落ちる。

「なんだ、ありゃあ」

「隕石だよ。瀞霊廷ごと、消えてなくなっちゃいなよ。僕だけは、瓦礫の中で生き残るけどね」

「隕石だと?そいつぁまだ斬ったことがねぇな。嬉しいなぁ、野晒」

更木は、斬魄刀の名を呼んでいた。

「たとえば、もし君が今すぐ僕を殺せたとしよう。でも無駄だ。隕石は既に現実m、消えやしない。想像通りに、なす術がないってこういうことさ、更木剣八」

グレミィは心から楽しそうにやついた。

「なす術がない?そうだな、てめえにはもうねぇだろうさ」

更木は、野晒を手に上空へと飛んでいく。

「呑め、野晒」

それは始解。

巨大な斧のような刀で、更木は隕石を切り崩した。

残骸がたくさん地上に降ってくる。

「なんだ・・・・なんなんだよ。あれを一太刀で粉々にしたっていうのか。化け物め!」

驚愕に顔を引きつらせるグレミィ。

「騒ぐなよ。単純な話だ。俺に斬れねぇものはねぇ」

「なるほど、単純な話だね。斬れないものがないなら、形のないもので君を殺す。宇宙空間に包まれて死ね!」

ぶわりと、黒い空間が更木を丸のみにする。

更木は、叫んだ。

体中の水分が沸騰する。

長々と、宇宙空間にいればどうなるかをグレミィが語る。

「それまで意識を保てればの話だけどね。何・・・・どうした」

黒い空間から、手が出てきた。

「体を硬くするの、忘れてるぜ」

復活した更木は、グレミィの体を上半身と下半身に斬り分けた。

グレミィは、なんとか瞬間再生をして、更木を睨んだ。

「なんなんだ、本当に化け物かよ。わかったよ。それなら僕自身が、お前より強くなればいいんだ!」

(勝ちたいーーーーーー)

その言葉だけが、グレミィの体を支配する。

「お前を叩き潰して、僕の力を証明するんだ。お前自身に!」

バキリと。

肉体が悲鳴をあげて、骨が露出する。更木を倒すための肉体を得ることは、不可能だった。

「おめえは、おめえの中で、俺を化け物にしちまった。その化け物に殺されたんだ。馬鹿野郎が」

(僕は、僕の想像力に殺されたのか?いや、僕は確かに奴の力を思い描けていた。完璧に)

ドン、と、ボロボロな姿の更木が、地面に転がって血まみれで動けないグレミィを見下ろす。

「違うよ、更木剣八。僕の想像力は正しかった。正しすぎたくらいさ。僕は君の力の全てを正しく想像できていたんだ。ただ一つ、僕が想像できなかったのは、君の力に耐えられるのは、君の体だけだったってことさ」

グレミィは、血を流しながら衣服を握りしめた。

「ああ、ちくしょう、勝ちたかったなぁ」

ぶわりと、グレミィの体が散っていく。

ごとんと、液体に包まれた脳みその入れ物がでてきた。

「なんだこれは?」

「ああ、そろそろ僕の想像力も限界だ。寂しくなるよ。この先の、何も想像できない世界を想像するとさ」

その言葉は、ユーハバッハが世界を掌握するということなのだろう。

更木は、構わずにやちるを探し始めた。

「やちる?どこだ、やちる?」

副官の証と死覇装だけが残されていた。

やってきた部下たちに、草の根を分けてもやちるを探せを言いつけた。

ダメージが大きい。

内臓をやられたのだろうか、血を吐いた。

「やちる・・・・・・」

嫌な予感がした。

やちるが、きえてしまったのではないか、と。

すぐに次の敵が現れた。

更木は舌打ちをしながら、斬魄刀を構える。

けれど体のダメージが酷く、ふらついてまともに戦えそうにない。

(こんなところでーーーーーーーーー)

更木は、再び舌打ちをしながらも、新たに現れた4人の敵に向かって斬魄刀を向けた。

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19話補完小説

一護は、浦原に連絡を入れていた。

「そんなワケだからそっちの着くの、もうちょい時間かかると思う」

帰りは徒歩、瞬歩で一週間かかれるといわれて、一護は焦った。もう、滅却師たちが攻めてきて3時間経っていると知って、焦りはやがて絶対に救って見せるという想いに変わった。

「なるほど、分かりました、お気をつけて」

「・・・・・なぁ、浦原さん」

「何スか?」

「生意気な言い方に聞こえるかもしれないけど・・・・そっちの戦い、もし危なくなっても、俺が行くまでもたせてくれ。俺が必ずなんとかする」

一護は、霊圧を高めて飛翔するスピードを高める。

「分かりました待ってますよ、黒崎サン」

浦原はそう言って、伝令神機を切った。

「浦原さん、むこうの状況何も言わなかった・・・・・急ぐか」

さらにスピードをあげる。

みんな、待っててくれ。

絶対に、救ってみせる。倒してみせる。


-------------------------------------

石田雨竜は、ユーハバッハの血を飲んだ。

敗者となったツァン・トゥたちの処刑が行われた。

「陛下は、全ての滅却師と繋がっておられる。お前は既に刻まれている。陛下の血杯を仰いだだろう。陛下の一部を身体に取り込むそれが刻印の儀式だ」

ハッシュヴァルトは、静かに答えた。

「陛下の魂を与えられた者は、全て死ねばその力を陛下に吸収される。還りゆくのだ」

「・・・・・・・・」

雨竜は、言葉もなく処刑されていった二人の、滅却師の亡骸を見た。

担架に乗せられて、処分場へと運ばれていく。

雨竜は、ユーハバッハの血を取り入れた。

すなわち、自分が死ねばその力はユーハバッハの元へ行くのだ。

(そんな仕組みになっていたとは・・・・・)

涼しい顔でいるが、内心は煮えたぎっていた。

すでに因子はばらまかれている。死神ですら、死ねばユーハバッハの力となるのだ。

(黒崎・・・・僕は・・・・・・)

「私もお前も、文字通り陛下の為に生き、陛下の為に死ぬのだ」

(------------そんなの、まっぴらごめんだ)

気づかれないように、ギリッと唇を噛んだ。

-----------------------------------


「僕は寂しい。僕の千本桜は何処?」

ぬっと現れた異形が、ルキアに影を作る。

「そうか・・・・貴様が兄様の卍解を奪った、エス・ノト」

ルキアは、袖白雪に手をかけた。

「君を知っている。朽木白哉の妹、朽木ルキア。朽木白哉はどこ?」

「貴様に答える義理はない」

ルキアは斬魄刀を抜き放った。

「君を殺せば、此処へくるかな?」

「そうかも知れぬな!」

何かが飛来してくる。それを避けて、氷で盾を作った。

「無駄だよ、恐怖は氷じゃ防げない」

ルキアの右手に、飛来してきた物体はあたった。

「あはっ、あはっ・・・・動けないね?仕方がない、それが恐怖。恐怖とはそういうものだよ」

じわりと、体に染み込むものがあった。

「これが恐怖・・・・」

「そうだ」

「ならば、貴様の恐怖とはなんだ?」

「何?」

「恐怖が通じぬことが、貴様にとって恐怖か?」

「恐怖が通じない?そんな訳は無い」

「見ろ。そして恐怖しろ。これが本当の袖白雪だ」

氷を、大気を凍てつかせる。

「恐怖が通じない訳など無いのだ。お前に命がある限り」

ルキアは、袖白雪を構える。

「ああ。だから、私に恐怖は通じぬのだ。わからぬか。今の私には、命がないと言っているのだ」

キィィィン。

大気が凍てついた音を立てる。

「どういうことだ?」

エス・ノトは無機質に尋ねた。

「袖白雪は、切っ先から凍気を発する刀ではなかった。所有者自身の肉体を氷点下以下にする斬魄刀だ。触れるもの皆凍りつく。刀身は、氷結範囲を拡げるための腕にすぎぬ」

「ふざけたことを言うな。生きていられるはずがない」

「そうだ。今の私は死んでいる。私は自らの霊子を制御することで、一時的に肉体を殺す術を手にしたのだ。この肉体の中では、全ての分子の運動は停止する。私の肉体に染み入った恐怖も、体表で動きを止める」

「そんな馬鹿なことが・・・・」

「マイナス18度。血液が凍結する。斬り口から、血は流れない」

ルキアは、エス・ノトの肩を斬り裂いた。でも、傷口は凍り付いて血は出ない。

「くっ」

「マイナス50度。私の足に触れる地面内部の水が氷結し、氷震を起こす」

ルキアは、たんと、地面を蹴った。

「マイナス213.5度。絶対零度。少し急がせてもらう。この温度での私の活動限界は4秒だ」

エス・ノトを氷結させる。

エス・ノトは氷像となった。

徐々に、体温をあげていく。

僅かに4秒をこえてしまったらしく、指に傷ができた。

(恐怖・・・・・こんなものが、恐怖か)

エス・ノトは、氷結していく自分の体を他人事のように感じていた。

(違う。僕の恐怖は、陛下に叱られる事だけ・・・)

「それに比べれば、戦いなんかに恐怖も苦痛も感じない!」

エス・ノトは姿を変えた。

「神の怯え(タタルフォラス)」

ルキアは、地面を蹴って、エス・ノトを斬ろうとした。

でも、できなかった。

「無駄だよ、届かない。足が竦んでいるから」

「なんだと?」

「僕を見ているだろう?神経は停止できない。神の怯えは、視神経を通って、君に恐怖を捩じり込む」

たくさんの目に囲まれて、ルキアは目を見開いた。

恐怖に、体が支配されていく。

エス・ノトが叫んでいる。

それさえも聞こえない。

ただ、恐怖に支配される。

それが終わったのは、唐突だった。

目でできた壁を、朽木白哉が斬っていた。

「朽木白哉!」

エス・ノトは、白哉の姿をみて、ニィと笑んだ。

「よくきた。まちかねたよ」

「だめです、兄様、こやつと目を合わせては!」

「もう、遅い」

エス・ノトは笑った。

目の壁を、白哉の花びらが刃となって貫いていく。

「遅いのは、どちらだ?」

「なるほど。千本桜景厳ですでにこの周囲を包囲していたのか。いいね、やっぱりその卍解、僕が欲しかったなぁ」

「卍解?よく見るがいい。兄も一度は、私の卍解を手にしたのなら、知っている筈だ。千本桜景厳は刀の全てを刃とする卍解だ。これは始解。只の千本桜だ」

「なんだと」

「兄に卍解を奪われたことで、私は千本桜の真髄を今一度見極めることができた。礼を言うぞ、エス・ノト」

みちみちみち。

エス・ノトの体は膨れ上がり、肉が弾け出す。

「殺さない殺さない。気を失う事も気を触れる事もできぬまま、苦痛と恐怖の海に沈めて、死ねれば幸せと思いながら、永久に生き永らえさせやる」

「ルキア。此処へ降りてくる途中、ずっとお前の霊圧を感じていた。強くなったな、ルキア」

(兄様が・・・・兄様が、私を強くなったと-----------)

「恐怖とは、無から生まれるものではない。心の中の僅かな不安を侵食されて、生まれるものだ。まだ恐怖はあるか、ルキア」

白哉は、ルキアを見た。ルキアは、強く否定した。

「いいえ!」

「終わりだ、朽木白哉」

醜く膨れ上がった巨体で、白哉を引き裂こうとするが、白哉は背を向けた。

「そうか、終わりか、だが済まぬ、兄を倒すのは、私ではない」

「何?」

「よく見ろ、ルキア。奴の姿に映るのは恐怖などではない。こちらの心に恐怖が無ければ、そこに映るの奴自身の怯えだけだ」

ルキアは、卍解していた。

「卍解。 白霞罸 」

エス・ノトの巨体を凍り付かせて、エス・ノトは氷の残骸となった。

白哉とルキアの勝利であった。

白哉は、ルキアに優しく声をかける。

「ゆっくり解け、ルキア。ゆっくりだ。素晴らしい卍解だった」

美しい。尸魂界一美しいと言われる、袖白雪に相応しい、白い世界の美しい卍解だった。

「だが、難しい卍解だ。半歩の過ちで命を落とす、危うい卍解だ。心して扱え。決して逸るな。命を捨てて、振るう刃で護れるものなどないと知れ」

白哉は、ルキアの体温が平常に戻り、卍解が解かれていくのを待ち、声をあげる。

「ゆくぞ、ルキア。尸魂界を護ろう」

「はい、兄様!」

ルキアは、瞬歩で走り出す白哉の後を追う。

(兄様が、強くなったと言ってくれた。私の卍解を褒めてくださった)

ルキアは、打ち震える感動を胸に秘めて、走り出す。

かつて、白哉と溝を作っていた頃のことが、嘘のようだ。

白哉は、背中をルキアに任せてくれた。

走る、走る、走る。

一護が到着するまで、私たちの手で尸魂界を護るのだ。




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魔王と勇者8

魔王浮竹と勇者京楽は、魔王城を出て三泊四日の温泉旅行にきていた。

枯渇したと思われていた温泉を、浮竹が魔王の力で地脈を活性化させて、再び温泉がでるようにしてくれた。

魔王領土の中の温泉街なので、浮竹の庇護下にある。

温泉が枯れたと泣きつかれて、浮竹もこのままでは街が寂れてしまうと、魔王の力を使った。普段は、魔王の力は使わない。強大すぎるからだ。

温泉が再びでるようになった温泉街は、以前の活気を取り戻していた。

浮竹はお礼にと、三泊四日のお泊り券をただでもらった。

京楽を誘って、温泉街で一番大きく、お値段の高い宿に泊まることになった。

しかもスィートルーム。

無駄に広く、洋風と和風の部屋が混在していた。

京楽は和風を好んだが、浮竹は洋風も好きだった。

豪華な夕飯を終えて、早速露天風呂に入ろうとする。

「この宿の温泉は、肩こりと腰痛に効果があるんだ。最近書類仕事で肩が凝ってるから、ちょうどいい」

「浮竹ってば、魔王はただいるだけでいいのに、書類仕事したり、領土内を視察したり真面目すぎるんだよ」

京楽はそういうが、たとえクジであれ魔王になったのだから、浮竹は魔王らしくあろうとした。

普通の魔王は人間を虐げ、戦争を起こし、血と肉と色を好む。

だが、魔王浮竹は畑を耕して、牛や豚、鶏といった家畜を飼育する平和主義者。

ちなみに、ペット同伴可能なので、兵士であるタロー&ジローも連れてきた。タロー&ジローは、犬専用の温泉で、浮竹に犬用シャンプーで体を洗ってもらったあと、湯船ではしゃぎまわっていた。

さて、浮竹と京楽が露天風呂に入っていると、見知った姿があった。

ハゲの年若い少年と、銀髪の少年、そして「ハラガヘッタ」とうるさい青年と、獣人。

「あれ、君ら新勇者パーティーじゃない。奇遇だねぇ」

「ななななな、なぜ魔王と勇者がこんな高価な温泉宿に!」

ツルピカな頭を光に煌めかせて、新勇者はザバっと、湯から立ち上がり、脱衣所においてあった人造聖剣エクスカリバーを持ち出してきた。

「ここであったが百年目、退治してくれる!」

「ウォーターボール」

浮竹が、水の魔法で温泉の湯を新勇者の顔にかぶせた。

「ゴボゴボゴボ・・・・ガボガボ!!!」

新勇者は苦しそうにしていた。

そして、湯を飲み干した。

「げほっげほっ!殺す気か!この魔王め!」

「宿とはいえ、公共の温泉で聖剣をふりまわしてはいけないぞ」

浮竹は、にっこりと笑った。

おぼれ死ぬ前に魔法を解こうと思っていたのに、新勇者は温泉の湯を飲んだ。

「ああ、そういえばこの温泉の湯は腹を下すから飲んではだめなんじゃ・・・・・」

京楽の言葉に、新勇者が叫ぶ。

「おのれ、魔王浮竹、わざと俺に温泉の湯を飲ませたな!?」

効き目は速攻なのか、ピーグルルルルと、新勇者の腹が鳴った。

「ぬおおおおおお、トイレえええええええ!!」

新勇者は、浴衣を適当に羽織って、トイレに閉じこもってしまった。

「くすっ・・・・・真水ぶっかけちゃえ」

新勇者の仲間の少年魔法使いが、トイレの上からウォーターボールの魔法を何度も弾けさせて、新勇者は水まみれになった。

「おのれ、魔王浮竹め!後で覚えていろ!」

浮竹も京楽も、その場にいなかった。

腹を下した新勇者を無視して、浮竹も京楽も、思う存分露天風呂に浸かって、日頃の疲れを癒していた。

やがて、温泉からあがって浴衣姿になると、びしょ濡れの新勇者が二人の通ろうとする道を塞いだ。

「わざと腹を下させたあげくに、トイレでウォーターボールの魔法で俺を水びたしにしやがって!」

「いや、湯を飲んだのはお前の勝手であって、あと新勇者がトイレにとじこもってた間、俺たちはずっと露天風呂にいたぞ。途中で、少年魔法使いが、顔をにやけさせながら出て行ったけど」

「なにい!少年魔法使い・・・・・あいつのせいだというのか!」

「さぁ?」

京楽はどうでもよさげに、聖剣エクスカリバーで、鞘ごと新勇者の頭を殴った。

ゴーンといい音をたてて、新勇者は伸びた。

「女風呂にでも捨ててこよう」

「京楽、女性に迷惑をかけてはいけないぞ」

「いや、まぁいろいろ面白そうじゃない。ちょっといってくる」

京楽は魔法で体を透けさせて、新勇者の首根っこを掴むと、ずるずると女湯の中に新勇者をぶちこんだ。

「がぼぼぼぼぼぼ・・・・・なんだ!?」

新勇者は、気を失っていたが、呼吸ができなくて起き上がった。

「きゃああああああああ!!」

女湯に浸かっていたのは一人だけだった。

新勇者パーティーの女僧侶だった。

「この新勇者の変態!すけべ、チカン!」

女僧侶は、僧侶にしては鍛え上げられた肉体で、新勇者をぼっこぼこにした。

「びでぶ、あべし!ご、誤解だ!きっと魔王浮竹の罠だ!」

「魔王がこの温泉にきているの!?」

「ああそうだ。ガボボッボボ。湯に沈めるな!」

女僧侶はバスタオルを体にまいて、湯から出た。新勇者も一緒になって湯を出る。

バスタオルで体をふいて、新しい浴衣に着替えると、女僧侶がバスタオル姿のままじとっとこっちを見ていた。

「なんだよ!」

「ここ女風呂なのよ!さっさとでていけ、チカン!」

「チカンじゃない!」

「じゃあなんで速攻でていかないのよ!」

「別に俺はお前の貧弱な裸なんか見ても・・・・」

「死ね」

女僧侶は、にっこりと笑って、新勇者を床にめりこませた。新勇者は気絶した。

「まったく、やんなっちゃう。魔王たちもこの宿にきてるのかー」

新勇者をけしかけてもいいが、やられるだけだろうな。

そう思いながらも、浴衣に着替えて、気絶した新勇者をずるずると引きずっていく。

女僧侶は、色仕掛けで攻めてみることにした。

浮竹と京楽が泊まっているスィートルームに侵入すると、浴衣を乱れさせて、浮竹にしなだれかかった。

「ねぇ、魔王様。私と、いいこと、し・な・い?」

「こら、服をちゃんと着なさい!」

浮竹は赤くなって、女僧侶を押しやる。

「ねぇ、勇者様、私と、いいこと、し・な・い?」

「乳臭い小娘に興味はないねぇ。僕は浮竹にしか反応しないから」

「乳臭いですって!キイイイイイ!」

持っていた暗器をとりあげられて、女僧侶はロープでぐるぐる巻きにされた。

ビタンバタンと、エビのようにはねる。

京楽は女僧侶を抱えて、新勇者パーティーの部屋にくると、彼女を布団の上において、簀巻きにした。

「ちょっと、何するのよ!」

「あーあ、女僧侶、何失敗してるんだよ。元暗殺者のくせに」

「うるさいわね、魔法使い!」

少年魔法使いと女僧侶は喧嘩をしだした。

青年戦士はひたすらせんべいをかじっていた。獣人盗賊の姿は見えない。

新勇者は、僅かに残っていたエリクサーを頭に塗って、成長促進の魔法を自分の頭部かけていた。

「君はさ、はげのほうがいいよ?」

わずかに生えてきた毛を、京楽がファイアーボールで毛根ごと死滅させた。

「うわあああああああああん!!!王様に訴えてやる!!!」

新勇者は、泣きながら露天風呂のほうに逃げていった。

「次に僕らの部屋にきたら、新勇者みたいに毛根が死滅すると思ってね?」

にっこりと微笑む京楽が怖くて、みんな手を出せないでいた。

「京楽、あまり怖がらせてやるな」

浮竹まで、ついてきていた。

「この温泉旅行は、前々から楽しみにしていたんだ。邪魔はしないでくれ。以上だ」

簡潔に話す浮竹と手を握りあいながら、京楽は去っていった。



「魔王と勇者って、やっぱできてるよな」

「できてるな」

「二人ともいい男なのに、もったいないわね・・・・・」


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さて、露店風呂で新勇者は、これまた隠しもっていたエリクサーの残りで、毛根を死滅から再生させようとしていた。

そこに、少年魔法使いがやってくる。

「ファイア」

短く唱えて、新勇者の頭を燃やす。

「少年魔法使い、てめぇ!」

「隠し持っていたエリクサーは全部売ったからな。それで最後だ。もう、お前の髪が生えてくることはない!」

「ううう・・・・・・うわあああああああああん!仲間にまで裏切られたああああああ!!」

新勇者は、泣きながら宿を一人後にして、王様に直談判した。

ツルッパゲになった新勇者に、王様は東洋の毛生え薬をくれた。

効き目は定かではないが、新勇者は髪が生えてくるのを楽しみにしていた。

他のパーティーとは、結局LVが高いのでパーティー解散は認められなかった。

一週間後、結局毛は生えてこなくて、ピンク色のアフロのかつらをかぶった新勇者とそのパーティーが、性懲りもなく、魔王城に魔王を倒しにやってくるのだった。










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18話補完小説

「卑怯だぞ、貴様ああ!!」

マスキュリンは叫んだ。

「なんだよ、しらねーのか?」

恋次が、嘲笑する。

「悪党ってのは、所詮卑怯なモンなんだぜ」

恋次は蛇尾丸でマスキュリンの胴体を切った。血しぶきが舞う。

「ふん!」

マスキュリンは、その傷口を自らふさいだ。

「死なぬ~死なぬ~スターが悪党にやられて、死ぬわけにはいかぬ~~そう思わんか、ジェイムズ!」

「はぁ~い」

恋次が切り捨てたはずのジェームズという子供のような存在は、再生してマスキュリンを応援した。

「がんばれスーパースター、がんばれスーパースター!」

「スターパワーアップ完了!」

マスキュリンの筋肉が膨れ上がり、着ていた衣服が破れる。

「なんでパワーアップすると、マスクの模様まで変わってんだよ」

恋次は突っ込みを入れていた。

ムキムキマッスルになっただけでもきもいのに、乳首には二プレスが余計にきもかった。パンツ一丁とマスクだけの姿になったマスキュリンは、単純にきもかった。

「きもいな、お前」

「うるさいわ!吾輩はスーパースターなのだ!」

「きもい」

「ムキーーー」

マスキュリンは構える。

「食らうがよいこれが真の力を手にした吾輩の必殺、スターラリアット!」

「ぐ・・」

恋次が吹き飛ばされる。

「ふはははははは!スーパースターの力の前に、貴様はもはや壁に手をつくことも地に足をつくこともまかりなりん!貴様は永久に空中を吹き飛び続け、そいて神の威光をまといしスーパースターの前に、地に戻ることなく塵となって死ぬのだ!」

マスキュリンは空中で止まった。

恋次は次々に繰り出される拳に吹き飛んでいく。

「さらばだ悪党よ!スーターフラッシュ、スーパーノヴァ!!」

光が爆発する。

煙が視界を遮る。

大地に現れたのは、異形の影。

「巨大な蛇の頭骨・・・・卍解というやつか?死に際に、必死の思いで発動させか、哀れな・・・・」

シュウウウと、蛇がうなる。

ジャキっと、刃物の音がする。

「なんだ、何が起きてる!?卍解とは、姿を変えるものなのか!?」

「卍解、双王蛇尾丸」



かつて、その名は違った。

狒々王蛇尾丸だった。

「うーむ、言いにくいが恋次よ、その名は嘘じゃな」

「はぁ!?嘘、どういうことだよそりゃあ!」

「その名しか教えおらんということは、蛇尾丸はおんしの事をまだ半分しか認めておらんということじゃ」

「嘘だろ。こんだけ長いこと一緒に戦ってきて・・・・・」

「そんなわけで、わしがこれから本当の名を教える!」

「うそだろ。なんでこの流れであんたが教えるんだよ」

「わしが霊王様からいただいた名前はまなこ和尚という。「真の名を呼ぶ」とかいて真名呼和尚。斬魄刀という名は、わしがつけた。始解も卍解も、わしが名付けた。尸魂界にあるあらゆる事象を、わしが名付けた」

恋次は、ごくりと喉を鳴らした。

「恋次よ。その蛇尾丸の本当の名を、おんしに教える。おんしはその名を呼べるよう、おんしの力を蛇尾丸に認めさろ。今、ここで!」

真名呼和尚から教えられた名。

「卍解、双王蛇尾丸」

「危険だな、悪党。その卍解は危険だ。このスターの最大の必殺技を防ぐとは!いよいよ貴様を生かしておけぬ!くたばれ!」

恋次向かって突進してくるマスキュリンに、恋次が吼える。

「狒々王!」

左肩にあった狒々の左手が伸びて、マスキュリンを掴んだ。

「なんだこんなもの!」

けれど、狒々王の手はマスキュリンの左腕を折っていた。

「くそったれがあああ!!!スターの左腕をへし折りやはがって!絶対に許さんぞ、三下がぁ!
正義とか悪とかもう関係ねぇ、ぶち殺す!!」

マスキュリンは切れた。

「オロチ王・・・・・双王蛇尾丸、蛇牙鉄砲!!」

恋次は、マスキュリンの体に新しい必殺技を浴びせた。

マスキュリンは、あまりの威力に灰となり、ボロボロと崩れていく。

「燃えつきたか・・・本望だろ、スーパースター」

恋次は、卍解を解いた。

そして、歩き出す。

ルキアと、一戦ごとに必ず身を潜ませろと言われている。

先手を打たれるなと強く言われたせいで、瓦礫に身を隠しながら移動した。



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「六車隊長と、鳳橋隊長が重症です!」

ルキアは、二人を抱えて4番隊の隊舎があった場所で、地面に転がされて回道を受けている負傷者の中に、二人の隊長を運び込んだ。

「そこに並ばせて!」

勇音の言葉に、二人の隊長をそっと横たえる。

「回道なら、私にも少しできます。お手伝いします!」

4番隊の隊員ほどではないが、少しなら回道が使えた。

ルキアは、隊長二人の傷を見ながら、回道をかける。

「変わります」

勇音がかわってくれたおかげで、六車も鳳橋も助かりそうだった。

ルキアは、他に負傷してい一般隊士に回道をかけ、ふと霊圧に気づいて口を開く。

「恋次・・・卍解したのか。敵の霊圧が消えている・・・やったのだな」

私も、そろそろ行動を開始せねば。

なんのために鍛えたのか、分からなくなる前に。

敵を、倒さなければ。

ルキアは後を4番隊に頼んで瞬歩で走り出した。


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「ここは、どこだ・・・・俺は、誰だ・・・・・」

一護は、ただ暗い道にほのかに光る向こう側に向かって、歩き続けていた。

「俺は・・・黒崎一護。死神代行・・・・・」

ザザザっと、脳内にノイズの画面が映る。

歩まねば。

止まってはいけない。

歩き続けなければ。

霊王。

その名を、ふと耳にしたように感じた。

王の力を注ぐ器たりえるのか。

一護もまた、ためされているのだ。




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魔王と勇者7

「うおおお、成功だ!」

新勇者は涙した。

勇者京楽に頭を燃やされ、毛根を死滅させられて半年。

いつもヅラをつけてたけど、やっぱり本当の髪がほしい。

魔王浮竹と勇者京楽を2カ月間無視して、ドラゴン退治に取り組んだ。

ドラゴンはLV80以上の場合が多い。新勇者パーティーは、まずはザコモンスターを倒しまくって経験値を稼ぎ、ドラゴンを倒してLV85まできた。

そして、エンシェントドラゴンを打ち倒し、魔石や血肉、うろこ、目玉、角、牙・・・ドラゴンには無駄がない。素材として一級品ばかりだ。

しかも、エンシェントドラゴン。古を生きるドラゴンの魔石には、たくさんの膨大な魔力が宿っていた。

それらを自分の武具購入にあてるでなく、売りさばいて新勇者は仲間とも相談せずに、一人で資金を使い、伝説のアイテム賢者の石を手に入れた。

その賢者の石を錬金術士に託して、神薬といわれるエリクサーを作り出してもらった。1つのエリクサーを作るのに、賢者の石が1つ必要だった。

もう、エリクサーは作れない。

賢者の石は白金貨2000枚だ。

エリクサーの効能は、どんな病やケガでも治してしまうというもの。欠損した四肢さえも戻ってくる。

新勇者は、仲間にばれてエリクサーを没収される前に使った。

頭部に塗り込んだ。そして飲んだ。

頭皮が熱くなって、気づけばぶわっと髪の毛が生えていた。

「やったー、成功だ!」

勇者京楽によって、毛根を死滅するまで燃やされた髪は、こうして再び生えてきたのである。

それに気づいたパーティーメンバーたちは、新勇者をボコった。

勝手に賢者の石を購入し、エクリサーにして使ったことに。

大金だったので、特に女僧侶と少年魔法使いは新勇者の髪をむしったりして、怒った。

「あばばばば、魔王浮竹を倒しにいこう!今日こそ、勇者京楽にも毛根を死滅する気分を味わわれてくれる!」

新勇者の手には、エリクサーと一緒にできた、デッドオブソウルという、劇薬があった。

パーティーメンバーの少年魔法使いはそれを新勇者に飲ませて、新勇者はグロッキーになったところを、女僧侶に治癒してもらった。

「このデッドオブソウルがあれば、勇者京楽の頭も毛根が死滅できる!ふふふ、俺の苦しみを身をもって味わえ!」


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「頼もう!」

新勇者パーティーは何十回訪ねてきたのかもわからぬ、魔王城にきていた。

「なんだ、また遊びにきたのか。オセロでもするか?」

浮竹の言葉に、新勇者がもだえる。

「オセロだと・・・・そんな貴族の遊び・・・・(*´Д`)ハァハァ。したいけど我慢だ!魔王浮竹、今日こそお前の命をいただく」

人造聖剣エクスカリバーで浮竹に斬りかかるが、ひらりと避けられてしまった。

「避けてばかりいないで、俺と戦え!」

「京楽、出番だぞー」

「はいはーい」

「げ、勇者京楽!」

新勇者は、頭部を手でおさえた。

つやつやな金髪が生えている頭部。この毛根だけは死滅させられたくない。

かつらのふりをすればいいのだ。

新勇者は、エクスカリバーで京楽に斬りかかる。

「LVあがった?前より力が強くなってるね」

「ふふふ。俺たちはLV85まであがったのだ!もはやお前たちなど雑魚同然!」

新勇者パーティーのメンバーも攻撃に参加してきた。

少年魔法使いは氷のランスをだし、女僧侶は補助魔法をかけ、獣人盗賊は浮竹の足元を狙って攻撃し、青年戦士は京楽と切り結びあっている新勇者を援護した。

京楽は、目を丸くした。

「すごいね。今までと動きが段違いだ。パーティー全員がちゃんと連携とれてる。修行でもしたの?」

「まぁそんなところだ!」

新勇者のヅラを燃やそうと、京楽は火の魔法を使おうとする。

とたんに新勇者は後ろに退き、魔法反射の護符を手にとった。

「うーん。なんか違和感あるんだよねぇ、君の頭部。髪の毛、伸びてない?」

「う、え、あ?」

新勇者は、気づいた。エリクサーがききすぎて、髪の毛は増えるわかめのような状態になっていた。

「あぎゃぎゃぎゃ!」

エクスカリバーで切っても切っても生えてくる。

「助けてくれーーー」

髪の海に沈みこんだ新勇者に、少年魔法使いが風の魔法で肩より上にざっくりと髪を切り落としてくれた。

「すまない」

「へぇ、どうしたのかは知らないけど、毛根復活したんだ」

にまーーー。

京楽が、邪悪な笑みを浮かべる。

「はっ!逃げるぞ、みんんな!」

「ファイアボール」

「あちゃちゃちゃ!」

まずは、新勇者の服を燃やした。

エンシェントドラゴンを退治した時の残り金でかった、ミスリル絹で織られた、普通の魔法程度なら防ぐはずの衣服が黒こげになる。フルチンになっていた。

「京楽、あまりいじめるなよ」

浮竹はそういうが、京楽はやっぱり京楽だった。

にまああああ。

「追加のファイアボール」

「ぎゃああああああああ!俺の大切な髪があああああああ!」

「毛根、もう1回死滅させてあげる♡」

ハートマークつきで微笑まれて、新勇者は頭部の火を消そうと転げまわった。

「あちちちちち!」

「ウォーター」

見かねた浮竹が、水の魔法で新勇者の頭の火を消してくれた。

しかし時すでに遅し。新勇者の頭は毛根が死滅してハゲになっていた。

「うわあああああああん!お前の母ちゃんでべそおおおおお」

新勇者は泣き出した。

デッドオブソウルを京楽に投げつける。ひょいっとかわされて、デッドオブソウルの入った瓶は粉々に砕けて、中身が床に転がった。

「ああ、デッドオブソウルまで!うわああああああん!!!」

「ほらほら、菓子をやるから泣き止め」

浮竹がペロペロキャンディーを新勇者にあげると、新勇者はそれを舐めながら、泣いていた。

「せっかくの俺の毛根がああ!ぺろぺろ・・・。また死んだあああああ。ぺろぺろ・・・」

「泣きながら食べてなくても・・・・」

「魔王浮竹、お前にはわからないだろ!毛根を死滅させられる俺の気持ちが!まだ俺は18だぞ!それなのに、ハゲになってカツラが手放せないんだ!」

「気の毒だな」

「うわああああああん!魔王浮竹、お前の母ちゃんもでべそおお!」

「俺の母は、でべそじゃないぞ。スタイルのいい美人だ」

「うわああああああん!」

新勇者パーティーは、みっともなく泣きわめく新勇者をかついで、えっさほいさと去っていった。

「京楽、毛根を死滅させるのはやりすぎじゃあないか?」

「浮竹、君、楽観視しすぎだよ。あいつらは、僕らの命を狙ってきてるんだ。殺しこそしないけれど、相応の目に合わせないと、またやってくる」

「遊びにきているだけじゃないか」

「あーもう、なんで君はそんなに平和主義なのさ」

浮竹が、新勇者パーティーに手を出すことはまずはほとんどない。

京楽が浮竹を庇い、怪我はしないが、衣服が切れたり燃やされたりはした。

LV85ならば、それなりの実力はあるが、LV395のチートであがったLVの差はいかんともしがたい。

浮竹なんて、新勇者がこなかった2カ月間の間に、ラッキースライム(経験値膨大)を倒しまくって、LV415からLV417になっていた。

「まぁ、新勇者パーティーと遊ぶのは楽しいから、また来てくれるといいな」

新勇者の襲撃を、遊びにきたと言い切る浮竹も、魔王らしいといえば魔王らしいかもしれない。

次の日。

新勇者パーティーは、また性懲りもなく魔王城にきていた。

新勇者はレインボーなカラーのアフロをかぶっていた。

その姿をみた浮竹は笑いまくり、京楽も我慢しながらも笑っていた。

「ふざけやがって!こんなカツラしか売ってなかったんだ!今日こそ、その首もらったり、魔王浮竹!」

新勇者は浮竹の首に、人造聖剣エクスカリバーで斬りかかった。

浮竹の首がころころと転がる。

「え!?やった!?」

浮竹は、イリュージョンの魔法で新勇者パーティーに幻覚を見せていた。

「やったぞ、魔王浮竹を打ち倒した!残るは勇者京楽だけだ!エアスラッシュ!」

新勇者は、剣技を京楽に叩きつける。

それをはじいて、新勇者の頭を殴った。

「え、あ、あれ!?魔王浮竹が生きてる・・・・く、卑怯だぞ、幻覚を見せるなんて!」

「少しは勝利の余韻に浸れただろう?」

浮竹はにこにこしていた。

純粋に新勇者に喜んでもらおうとやっている行動だから、なおさらたちが悪い。

「今日は何して遊ぼうか?」

浮竹の問いに、新勇者は顔を真っ赤にして。

「お前を倒すためにきてるんだ、こんちくしょーー!!!」

そう叫んで、人造聖剣エクスカリバーを叩きつけようとして、京楽に頭と衣服を燃やされて、また泣いて帰るのだった。

「もう、新勇者泣きすぎ!たかがフルチンのハゲにされたくらいで泣かないでよね!」

女僧侶がツンツンと尖る。

「まぁまぁ。魔王討伐に出ている間は報奨金がもらえますから」

獣人盗賊が、女僧侶を慰めた。

「オレ、ハラヘッタ」

頭まで筋肉でできている青年戦士は、他人の5倍は食う。でも力は確かだ。

「正直、今の僕らじゃ倒せないと思うんだけどねー」

少年魔法使いの言葉に、新勇者が少年魔法使いを蹴った。

「いて、何するんだよ!」

「俺たちは、何があっても魔王と元勇者を、退治するんだ!」

夕日を背に、かっこうをつけるが、マントを羽織っただけでフルチンでハゲだった。

「汚いもの見せんじゃないわよ!」

女僧侶の蹴りを股間に見事に喰らって、新勇者は撃沈した。

「のああああああああ!もげる、もげる!」

「いっそこと、本当にもいでやろうかしら!」

「新勇者が、オカマ勇者になっちゃうから、そこらへんで簡便してやりなよ」

少年魔法使いのため息が、夕暮れの空に吸い込まれていった。









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魔王と勇者

暇なので、「勇者と魔王」というパーティー名で冒険者として活躍していた。

ランクはS 。

Sランクはどんな依頼でも受けられる。

普通、ドラゴン退治とかになるのが、二人はあえてゴブリン退治を選んだ。

ゴブリンは子をたくさん産み、増える増える。おまけに家畜や人を攫って食う。

たかがゴブリン、されどゴブリン。

ゴブリン退治は下級冒険者向きの依頼だが、数が多いせいで退治依頼がたまる一方だった。

魔王城から一番近い街、二ニレムの街の郊外でゴブリンの巣が確認された。

ゴブリンロードやゴブリンシャーマン、ホブゴブリンなどの上級種もいて、普通はかけだしの冒険者がゴブリン退治を受けるのだが、今回は魔王城に近いということで、京楽と浮竹がその依頼を受けた。

「Sランクなら、安心ですね」

依頼書を受け付けの人に渡すと、そう言われた。

二人は、早速ゴブリンの巣にやってきた。

「数が多いねぇ。どうする?」

「いちいち、1匹ずつ相手にするだけ無駄だ。焼き尽くす」

「でも、君のLVじゃあ魔法で一掃すると、退治した証拠の魔石も残らないよ」

「別に、魔石なんて金になるだけだし・・・・金になる。うん、普通に殺していこう」

意見を覆す浮竹に、京楽は苦笑するのだった。

「エアカッター!」

「エアリアルエッジ!」

二人は、主に風の魔法でゴブリンを引き裂き、魔石を回収していった。

残った屍をさらしておけば、つぎのモンスターの苗床になるので、火の魔法で処理する。最初から火の魔法を使えばいいのだが、京楽はLV395、浮竹はLV415である。

そんなLVで火の魔法を使えば、魔石も消し飛んでしまう。

なので、加減した風の魔法で首をはねて魔石を回収した後で、ファイアボールで死体を一斉に焼き払った。

ゴブリンロードが、次々とやられていく手下のゴブリンを見て、雄叫びをあげる。

ゴブリンシャーマンが、魔法を使ってくる。

しかし、魔王である浮竹は魔法をかき消した。というか、耐えた。レジストしたのだ。

魔法耐性の強い職である魔王と勇者に、魔法攻撃などあまり効かないということを、理解する脳みそはない。

京楽は、聖剣エクスカリバーを抜いた。

洞窟の奥に、ゴブリンとは違う気配を感じたのだ。

「何かいるよ」

「腐臭がする。アンデッド系だ」

姿を現したのは、腐肉で凄い匂いを漂わせている、ドラゴンゾンビだった。

「キシャアアアアアアア」

ゴブリンたちが、あざ笑う。

ああ、この冒険者たちもドラゴンゾンビの手にかかれば、ひき肉だ。

その後は、鍋で煮て死体を食ってやろう。

そう、矮小な脳で考えていた。

「ドラゴンゾンビか・・・・聖属性の魔法は苦手だが・・・・ホーリーランス!」

浮竹は、聖なる槍を出現させた。

ドラゴンゾンビの腐肉が、浄化されていく。

「僕もおまけのホーリーファイア!」

ドラゴンゾンビのLVは80前後。

だが、LV395の京楽とLV415の浮竹の敵ではない。

聖なる槍と炎にやられて、ドラゴンゾンビは巨大な魔石を残して死んでしまった。すでに死んでいるのだから、死んだという表現もおかしいので、まぁ活動を停止した。

「残るゴブリンもめんどくさいから焼いちゃえ。ファイアアロー」

手加減した火の魔法でゴブリンたちを焼いていくが、魔石まで焼けていく。

まぁ、大半の魔石は回収したし、ドラゴンソンビの魔石がでかいし金になるので、ゴブリンの魔石なんて銀貨2枚程度なので、ゴブリンの巣ごと燃やしつくす。

「おまけだ。ファイアサークル」

浮竹は、思い切り魔力をこめて魔法を放った。

クレーターができた。

「我こそは勇者、ゴブリンを退治に・・・えええええええ!?クレーターになってる!?」

「お、そこにいるのは新勇者のパーティーじゃないか!」

「誰だお前は!」

「ああ、認識阻害の魔法をかけてるからわからないのか。今解くから」

浮竹は、認識阻害の魔法を解いた。

「のあああああ、魔王!?」

「僕もいるよー」

「勇者京楽まで!?」

今日の新勇者は、モヒカン頭のかつらをしていた。

「そのモヒカン似合うな」

「え、やっぱりそう思う?俺ってば元々の容姿がいいから、どんなヅラかぶっても似合ちゃって・・・・って、そんなおだてには乗らないぞ!」

「いやぁ、元をただせば僕が君の毛根を魔法で死滅させたせいなんだけどねぇ」

「思い出したぞ勇者京楽!おのれ、この卑怯者め!さてはゴブリンを集めていたのはお前たちだな!この近辺にゴブリンの巣があるはずだ!白状しろ!」

「いや、さっき俺がファイアサークルでクレーターにしたからな」

「ファイアサークル程度の魔法でクレーターだと!?寝言は寝て言え!と見せかけて、ドレイン!」

浮竹と京楽にドレイン、HP吸収の魔法をかけると、新勇者はめきめきと筋肉をふくらませていった。

「ふはははは、お前たちのHPは残りわずかなはず!」

水晶で見ると、HPが555/9999999になっていた。

「いやぁ、たまにはまともに魔法受けてみるものだな。なんかすごいHPが少なくてアラームが止まらない。笑える」

浮竹も京楽も、笑っていた。

「何がおかしい!あと555しかHPのない分際で!」

「止めさすチャンスだよ」

京楽があおると、新勇者は人造聖剣エクスカリバーで京楽を斬った。

HPを確認する。

9999/999999

「増えてるうううう!?」

「あっはっは、リジェネ(持続再生魔法)使ってあるからな。HPなんてすぐに元にもどるさ」

魔王のHPを調べると20000/999999になっていた。

「おのれ、サイレンス!」

一帯に、魔法が使えないように新勇者は沈黙の魔法を使った。

「おい、俺たちまで魔法使えないじゃないか!」

「そうよそうよ!」

新勇者パーティーの魔法使いの少年と、女僧侶が文句を言った。

「うるさい!奴らも沈黙になる!沈黙がかかった状態でのリジェネは無効!」

だけど、京楽も浮竹もキラキラ輝いて、リジェネの恩恵を受けているのが見ているだけで分かった。

「なんで魔法が持続しているんだ!」

「いや、勇者のスキル、沈黙無効を使たっだけなんだけどねぇ」

「俺にはそんなスキルないぞ!」

「そりゃ、本家本元の勇者であるのと、本物の聖剣で得たスキルだからね」

「くそ、卑怯だぞ!俺の人造聖剣にはスキル獲得の効果なんてないのに!」

「だから、本物とレプリカの差だよ」

「きいいいいいいいいい」

新勇者は、モヒカン頭をかきむしった。

ずっと黙っていた浮竹が、小さく唱える。

「ファイア」

それは、新勇者の口から出た魔法だった。

浮竹が、新勇者にファイアの魔法を使わせたのだ。

ぼっと、新勇者の尻に火が付いた。

「ぎゃあああああああ!魔法は尻から出る!冒険者アカデミーの先生が言っていたことは本当だったのか!」

新勇者は、けつの火を消そうとゴロゴロ地面でのたうちまわっている。

「きゃあああ、新勇者のけつが大変だ!」

女僧侶が、げしげしと新勇者のけつを蹴る。

少年魔法使いは、これしかないと、しょんべんをひっかけた。

「やめろおおおおおおお」

新勇者はびしゃびしゃとしょうべんをひっかけられて、なんとか火は消えたようだが、今度は股間の布がなくなっていて、下半身フルチンだったので、悲鳴をあげていた。

「ぬおおおおお、なんでいつも俺は服がなくなるんだあああ!!!」

そんな新勇者パーティーを放置して、京楽と浮竹は、手を繋いで歩き出す。

「認識阻害の魔法、かけ直しておいたから」

「すまない、京楽」

そのまま冒険者ギルドにいって、魔石を買い取ってもらい、依頼達成の報酬も得た。

「たまには外食でもしようよ」

「そうだな。二ニレムの街にある西の居酒屋が美味いんだ」

認識阻害の魔法を解いて、街に繰り出す。

勇者だ魔王だと、注目を集めたが、すぐに人々も慣れて、京楽と浮竹は街に溶け込んでいく。

街の西にある居酒屋に入ると、犬耳の獣人のメイドが注文をとりにきてくれた。

「生ビール2つ。あとチーズときのこのグラタン2つ」

浮竹が、他にもいくつか料理を注文して、一番初めに注文した料理が、この店で一番美味しいんだと、注文を決めてくれた。

やがて、生ビールがやってくる。

キンキンに冷えていて、二人して、一気のみをした。

「おかわりお願いする」

「あ、僕も」

ゴブリン討伐の報酬は、居酒屋での飲食で消えてしまったが、まだ魔石の買取りの金銭がかなり残っているので、また今度飲みにこようと、酔った浮竹を京楽が肩を貸しながら、魔王城に帰還した。

新勇者パーティーが、魔王城に来ていた。

「さっきは・・・みっともない場面を見せたが、いざ勝負!」

新勇者は、ガシャンガシャンと鎧を着ていた。

ミスリル銀でできた、いい鎧だった。

浮竹は酔って、ふにゃふにゃしている。

京楽も酔っているが、意識はしっかりしていた。

「ああ、1日に2回も見たい顔じゃあないね。エアロープ」

透明な空気の縄が、新勇者を柱に固定する。

「え、え、え!?」

「じゃあ、僕らは寝るから。おやすみー」

京楽はすでに眠りに入っていしまった浮竹を抱き上げて、寝所に帰っていく。

「ちょ、放置プレイ!?」

「ちょっとどうすんのよ!はがせないわよ!」

「もういいじゃん。放置して帰ろうぜ」

少年魔法使いは、新勇者を放置して帰った。女僧侶も、他のパーティーの獣人の盗賊も、戦士の青年も、帰ってしまった。

「ちょっとおおおお!トイレいきたいんだけど!!!」

京楽も浮竹も、もういない。パーティーメンバーにも見捨てられた。

結局おしっこをもらしてしまい、飯もぬきにされて、新勇者は浮竹がその存在に気付くまで放置されていたとさ。






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第17話補完小説

狛村左陣は、禁断の人化の方を使った。

心臓を捧げて、人の姿を得た。その間は不死だ。

バンビエッタに、卍解で挑む。

「あたしの爆撃は防げないのよ霊子の爆弾を打ち込んでいるんじゃないのよ。あたしの霊子を撃ち込んだもの全てが、爆弾になるの」

バンビエッタは、得意げに嘲笑した。

狛村は、雛森を守り、爆撃を受ける。

「何それ、ワンちゃんじゃなくなってるじゃん」

仮面の下は、犬の顔ではなく人の顔だった。

「卍解、黒縄天げん明王、段鎧縄衣!」

異形の明王が、姿を現す。

「何よそれ。ショック。その卍解の鎧の下までワンちゃんじゃなかったなんてさ」

バンビエッタは、空中を優雅に羽ばたいた。

「その化け物のカオの下がワンちゃんとか?」

バンビエッタは、霊子の爆弾を卍解に浴びせた。

けれど、すぐに再生する。

「何なの、どうなってるのよそれ」

「黒縄天げん明王は、命を吹き込まれた鎧の卍解。段鎧縄衣じゃその鎧を脱ぎ捨てて、霊圧のみ、力のみがむき出しになった姿」

「ふざけんじゃないわよ!」

バンビエッタは、狂ったように霊子の爆弾を浴びせた。

けれど、卍解はその傷を回復する。

「貴公の術で、倒すことはできん」

「何言ってんだがわかんない!霊圧がむき出しになったからって何?言ったでしょ、あたしの能力はあたしの霊圧を打ちこんだものを爆発する!霊圧むき出しなら、弱点丸出しでしょ!」

「わからぬか・・・・・爆弾となり、砕け散るのが恐ろしいのはそこに命があるからだ。命が無ければ砕け散ることに恐ろしさなどかけらもない」

「何を・・・

「天げん明王は鎧こそ命。段鎧縄衣は天げん明王が命を脱ぎ捨てた姿だ」

狛村の言葉に、バンビエッタは叫んだ。

「何を言ってんのよ!卍解に命がないからって何なのよ!知ってんのよ!あたし、さっきまであんたの卍解を持ってたんだから!」

空を自由に飛び舞わるバンビエッタ。

「その卍解は所有者とつながっている。卍解の方が壊されても平気でも、持ち主のあなたはそうじゃないでしょっ!」

霊圧の爆弾を、狛村にむけて思い切り放った。

「ほらぁ、どうなの、何とか言ったら・・・・・・」

狛村は、攻撃を受けて衣服がぼろぼろになったが、傷一つ負っていなかった。

「何よその胸の穴・・・・どうなってるのよ」

狛村の、心臓があるはずの場所は空洞だった。

「我が肉体は最早抜け殻。貴公らを倒すための器にすぎぬ。我らが秘術「人化の法」とは心臓を捧げることで、一時不死の肉体を得る術。人の姿をしているうちは、儂が息絶えることはない」

段鎧縄衣に攻撃されて、バンビエッタは空を飛び回る。

「何なの、あんた命すてんの!?負けたら死ぬから殺されるから、それがいやだから戦ってるんでしょ!戦いで命を捨てるなら、勝つ意味なんてないじゃない!」

「捨ててはおらぬ。ただ、かけたのだ。元柳斎殿が、命をかけた戦いに、儂が命をかけぬ理由などあるものか!この戦いに踏み入れる前に、命はとうに置いてきた!」

狛村の段鎧縄衣がバンビエッタを貫く。

バンビエッタは、吹き飛んでいった。

「ぐう・・・・・・」

まだ、ユーハバッハを倒していない。

「今も少しもってくれ、人化の秘術よ。儂の心臓よ!ユーハバッハを、倒さねばならぬのだ」

けれど、狛村の体が崩れていく。

副作用として、獣の体になっていく。

「元柳斎殿・・・敵をとれぬこと、許してくだされ・・・・これが、代償か」

狼の姿になった狛村は、地面に倒れ伏した。

「行きましょうや隊長。隊長は間違えとりゃしません」

射場が、狛村の体を背負った。

「戦いましょう、隊長。倒しましょう、ユーハバッハの野郎を」

すまない。

狛村は、心の底から感謝した。もう、人の言葉をしゃべることはできないけれど。

狛村は、射場に背負われて、一歩一歩歩いていく。

もう、人の姿も半分犬の姿もとれない。

物言わぬ獣となり果てた体調を、それでも射場は尊敬の眼差しで見つめて、背負って歩いていく。

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「なんだよこれ・・・・・・・・」

一護は、霊王のビジョンを見ていた。

体がきしむ。重い。

早くここから出たいのに、出れない。

足が前に進まない。

「こんなとこで、立ち止まってたまるか!」

また一歩一歩歩き出す。

そして、途中で王の力を注がれて、一護は叫んだ。

「うわああああああああ」

全身に痛みが走る。

「くそ・・・こんなことでへばってたまるか!」

一護は乗り切った。

ただ歩いていく。

まっすぐな道を。

ただひたすら、強くなるために。

大切な仲間たちを守れるようになるために。

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