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始祖なる者、ヴァンパイアマスター60

邪神ザナドゥは、藍染の血により意識を侵食されていく。

藍染の呪いは少しずつザナドゥを蝕んでいくか、期限にはまだ日数があった。

藍染が肉便器という奇妙な肉体にザナドゥの子種を注ぐと、数日で子は生まれ落ちた。

邪神ザナドゥさえ、嫌悪しそうなくらい醜い肉の塊が生まれた。

性別はどちから分からなかった。

「ほう、邪神の子といっても、邪神が生まれるわけではないのか。それになんて醜い。この世界に呪われて生まれ落ちたかのようだ」

「あああ・・・・・あたしは、う、美しくなりたい・・・・・」

自我は女性であるらしかった。

数日で立ち上がり、母親である肉便器に縋りついた。

「ああああ!太陽が、太陽が眩しい!!

太陽の光を嫌い、夜の闇の中で動いた。

「こんなもの、使えるかどうか分からんが、一応駒として使ってみるか」

「あああ!う、美しくなりたい」

「美しくなれる方法がある。始祖ヴァンパイアの血を浴びれば、お前は美しくなれる」

「本当に?」

「ああ、本当だ。名を与えていなかったな。醜いからミニクだ。それがお前の名前だ」

「ミニク・・・あたしは醜い。だから、美しくなる」

とぷんと、藍染の影の中にもぐりこんだ。

「なんだ!?」

「あたしは、影と影を移動できる。この力があれば、始祖ヴァンパイアの血を浴びれる?」

「ほう、面白い能力だ。せいぜい、がんばっておいで」

ミニクは、影の中を移動しながら、ガイア王国に向かう。

古城にいくと、そこは廃墟になっていた。

「始祖ヴァンパイア・・・・何処に住んでいるの」

ミニクは、辺りを探したけれど分からなかった。

「きゃあああああああ!!!」

通行人にみられて、ミニクはすぐに建物の影に潜り込んだ。

その日のうちに、アラルの町の冒険者ギルドでモンスターの手配書が回った。

「醜い、肉塊のような生き物だったそうだ。影を中を移動するらしい」

「影ねぇ・・・・」

京楽はどうでもよさそうだった。

「とりあえず、まだ被害でてないんだろう。見つけ次第退治する。それでいいだろう」

「ああ、そうしてくてれ」

ギルドマスターに用があると呼び出されたら、前の古城の廃墟の近くで蠢く醜い肉塊が目撃されたのだという。

藍染の手下の者という可能性が限りなく高かったが、少し探れば近くの古城に引っ越したことくらい分かるだろう。

「それより、明日のガイア王国の女王生誕祭に呼ばれているんだろう。行ってこい」

「何故それを・・・・」

「すっぽかしから、俺に咎がいくようにされてしまった。ギルドマスターとしての命令だ。明日の卯ノ花女王の生誕祭に参加すること」

ギルドマスターは、名誉貴族ということにされていた。

「女王とか貴族とか、そういう柵に捕らわれるのは嫌いなんだがな」

「まぁ、浮竹は卯ノ花に気に入られるみたいだし」

「また、夜の誘いをされるかもしれんぞ」

「それは許さないよ、浮竹!」

京楽が真剣な顔で諭してくるものだから、浮竹は笑った。

「このスタールビーにかけて、お前以外を愛さないと誓う」

「浮竹、愛しているよ!」

ギルドマスターの前で抱きついてくる京楽の頭をハリセンで殴って、浮竹と京楽は明日の女王生誕祭のために、正装するのだが、どの衣装にするのか困るのであった。


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結局、京楽は黒のスーツを。浮竹は極東の衣服の袴と羽織を着ていた。

「君がそういう服着ると思わなかった」

「スーツは窮屈で嫌いだ。この姿は、東洋の正装にもなるそうだ。京楽こそ、もっと着飾ればいいのに」

「いや、僕はこれで十分だよ。浮竹、こっちにおいで」

手招きされると、京楽の傍にいくと京楽は白いレースのリボンをとりだし、浮竹の両サイドの髪を三つ編みにして、後ろでリボンで結んだ。

「ほら、かわいい」

「俺は女じゃないぞ」

「でも、似合ってるよ」

そこへ、リンリンと来訪者を告げるベルが鳴った。

「はいはい、今行くから。ほら、浮竹も」

迎えの馬車がやってきたのだ。

卯ノ花は浮竹と京楽のことを気に入り、生誕祭に招いたが、こない可能性もあるでギルドマスターに手を回していた。

「わあ、豪華な馬車だねぇ」

二頭引きの馬車は、金細工が美しかった。

先に京楽がのり、エスコートするように浮竹の手を取る。

「さぁ、生誕祭の夜会に行こうか、僕のお姫様」

「誰がお姫様だ」

京楽のほっぺをつねって、浮竹と京楽を乗せた馬車は宮殿に向かって出発した。

「宮殿っていっても、ブラッディ・ネイの宮殿ほど広くないんだね」

馬車の外から、近くなっていく宮殿を見る。

「あれは、後宮が広いからな。寵姫をいつも40人前後は侍らしている」

「うわー、そんな後宮、浮竹はいっちゃだめだよ!」

「頼まれてもいかん」

一度狙われた京楽のために後宮に入ったことはあるが、それ以外だと女同士になって入ったことを除いて、普通の浮竹が後宮に足を伸ばすとこはあれど、ブラッディ・ネイのために後宮に入ったことなど一度もなかった。

後宮に入ったが最後、女になる魔女の秘薬を飲まされ続け、ブラッディ・ネイ好みの外見年齢にさせられて、子を孕めさせられるに違いない。

浮竹が、ブラッディ・ネイを避けるのは、ブラッディ・ネイが家族愛ではなく、伴侶としての愛を浮竹に囁くからであった。

「到着しました、浮竹様、京楽様」

馬車のドアを開けられて、まずが京楽が外にでた。

浮竹に手を差し出す。

浮竹は何も言わず、その手に手を重ねて、京楽にエスコートされて生誕祭の夜会が行われている広間にやってきた。

「まぁ、浮竹さん、京楽さん、きてくれたのですね」

卯ノ花は、とても3人の大きな子供がいるとは思えない、若々しい姿だった。

艶やかに笑みを浮かべる女王のドレスは真紅だった。

首飾りにピジョンブラッドのスタールビーの大きなものがついているのが見えた。

「あら、ペアリングをなさっているのですね。結婚式は挙げられましたか?」

「いや、まだだ。そういうことは、平和になってからしようと思って・・・・」

浮竹が頬を赤らめながらそう言う。

「果報者ですね、京楽さん」

京楽も赤くなりながら、卯ノ花を見る。

「今日は一段とお綺麗だね」

「ありがとうございます。でも、浮竹さんの出で立ちも可憐ですね。男性にしておくのがもったいないです」

「これは京楽が!」

「わたしと、一曲踊ってくださりませんこと?」

卯ノ花が、浮竹に手を差し出す。

無下にもできないので、その手をとって、広間の中心に来て、オーケストラを鳴らす楽器たちの音色に合わせて踊った。

「まぁ、どこの殿方でしょう。可憐で麗しいわ」

貴族の女性たちが、浮竹に視線を集める。

浮竹は夜会には慣れているのが、見事に踊り終わると、卯ノ花の手にキスをして別れた。

わっと、貴族の女性たちに、浮竹が取り囲まれる。

その間をぬって、京楽が浮竹の手に口づけた。

「俺と一曲踊ってくれないかい?」

浮竹がその手をとると、別に意味で貴族の女性たちはきゃあきゃあと騒ぎ始めた。

貴族の男性も、浮竹を見つめていた。

踊り終わり、貴族に囲まれるのを抜け出して、二人はバルコニーまでやってきた。

シャンパンのグラスを手に、中身を飲み干していく。

「夜会は頼んでいただけるでしょうか?」

「卯ノ花・・・びっくりさせないでくれ」

「あら、これは失礼しました。あなたたちが伴侶であると知らない貴族たちが、迷惑をかけましたね」

「いや、別にそれはいい・・・・」

浮竹は、スィーツ置いてある場所に移動して、次々にスィーツを平らげていく。

「京楽さんは、食べないのですか?」

「いや、僕もある態度食べたから。スィーツに関しては、浮竹の胃はブラックホールなんだよね」

「あら、まぁ。持って帰れるように、手配しましょうか?」

「え、いいの?でも貴族って普通持って帰らないんじゃ」

「あななたちは貴族ではないでしょう?まぁこの国では平民ということになっていますが、血の帝国の皇族でしょう」

「それはそうなんだけど・・・・浮竹、持って帰れると知ったら、大量に持ち帰るよ?」

「別に、構いません」

卯ノ花は、あまり食べられていないスィーツを持ち帰れるように手配してくれた。

アイスなどは溶けるので、その場で食べた。

「これはおみやけどいうことで。ではまた、遊びにきてくださいね」

卯ノ花の微笑みは、あったかい陽だまりのようで、浮竹も京楽もほわんとなった。

「母上!この方たちが、例のヴァンパイアの?」

「ジエ、失礼のないように。紹介しおくれました王太子のジエルド・ルドワール・レ・ガイアです」

「ジエルドと申します。お気軽にジエとお呼びください」

卯ノ花は3人の子が出来が悪いと言っていたが、少なくともこの皇太子のジエルドは普通に見えた。

「浮竹さん、ああ麗しい。どうか、僕と一晩の甘い夜を過ごしませんか」

実の母である卯ノ花と恋人でる京楽を目の前に、そんなことを言いだした。

「酷いわ、ジエ様!今日の夜はわたくしと過ごしてくれる約束だったはず」

貴族の少女が、ジエルドの手を取った。

「ああ、そうだった。君と約束をしていたね。でも、新しい麗し人を見つけたんだ。今日は3Pでどうだろうか」

「あら、それも悪くはないわね」

「どうしてそこに俺の数が入っている!このあほ皇太子が!」

見事な浮竹のアッパーを受けて、ジエルドは床に沈んだ。

「きゃああ、ジエ様!」

「悪いのはジエですよ。反省なさい。すみません、浮竹さん京楽さん。私のバカ息子どもは性欲が強くて、許嫁のいる相手にも手を出してしまうのです」

「そうかい・・・・・・」

「帰るぞ、京楽!」

スィーツのお土産を全部アイテムポケットに入れて、怒った浮竹はそのまま京楽と一緒に帰ってしまった。

帰りも馬車だったが、馬車が急に立ち止まって、浮竹と京楽は前につんのめった。

「何が起きた!?」

「何か、影の中に何かがいるんです!!」

御者の男性は、怖がっていた。

馬も怖がって、蹄で地面の影を蹴っていた。

「これは・・・・フレアロンド!」

ぽっ、ぽっ、ぽっ。

青い火花が生まれていき、影に向かって攻撃する。

「熱いいいいい!!あたしは、熱いの嫌い、ひいいい」

出てきたのは、醜悪な肉の塊だった。

生きているのだと認識はできるが、変な匂いもして、生理的に受け付けれなかった。

「始祖ヴァンパイアの血を浴びればぁ、あたしは美しくなるの。そう藍染様がおしゃったのだから!」

「こんな肉の塊が今回の敵か?」

「すごい醜いね。女の子の言葉を使うから、女なのかな?」

肉塊は、裸だった。

どこもうねっていて、女の特徴らしいものは見えなかったし、男にも見えなかった。

ただうねるだけの肉塊だった。

どうやってしゃべっているのかも、分からなかった。

「始祖ヴァンパイアぁぁあ。血をよこせえぇぇぇぇ」

浮竹は、気まぐれをおこしてミニクに数滴の血を滴らせた。

「あああ、始祖ヴァンパイアの血ぃ!これで、ミニクは醜いじゃない。美しいから、名前はウツクよ!」

何分たっても、肉塊は肉塊のままだった。

「嘘おおおお!なんにも起きない、どうして!!」

ミニクは、ねばねばした液体をどこからか吐き出した。

浮竹と京楽は避けるが、馬車の御者と馬がそのねばねばした液体をかけられて、シューシューと肉が腐っていき、骨になった。

「浮竹、こいつ見た目もやばいけど、能力もやばいよ!」

「攻撃する暇を与えず、攻めるしかないな!エターナルフェニックス!!」

「サンダーボルテックス!」

「いやあああ!ぎゃあああ、熱い、熱い!!」

その巨体を焦げさせて、燃やされて、ミニクは影に沈んだ。

「どこからくる?」

「京楽、後ろだ!」

ねばねばした液体が、さっきまえ京楽のいた空間の地面を腐らせていた。

「ふふふ、影を、利用すれば、あなたたちなんて倒せる」

「こいつ、影を利用するつもりだ」

「影がなくなればいいんだな。サンシャイン!」

かっと、疑似太陽が浮かびあがる。

それはちょうど浮竹と京楽の頭上に輝き、影がなくなった。

「いやああああ、太陽の光は、光は嫌い!!」

失われた影から、ミニクが飛び出してきた。

「「エターナルアイシクルワールド!!」」

「いやああ、寒い・・・さむい・・・・」

ミニクは完全に凍り付いた。

生命活動の停止を確認して、炎の精霊フェニックスではなく、イフリートを呼んだ。

「イフリート、あれを灰にしてくれ」

燃え上がる紅蓮の乙女は、頷いて氷を溶かしていき、ミニクを灰にかえた。

あんな醜いものを、もう一度この世界で違う何かとして生きさせるのがいやだったから、フェニックスではなくイフリートを呼んだ。

「主・・・完了しました」

ミニクは、完全な灰となった。

「分かった、戻ってくれイフリート」

イフリートは、浮竹の胸に吸い込まれていった。

「藍染にしては、えらく醜い化け物をよこしてきたもんだね」

「おまけに、馬と御者が死んでしまった。卯ノ花に詫びをいれないといけないな」

馬車も、腐り、ドロドロだった。

普通黄金は腐らないのに、黄金も腐っていた。

「これが、普通の意思をもって攻撃してきたら厄介だった」

「そうだね。黄金まで腐らせる液体なんて、聞いたことがないよ」

「名前は、醜いからミニクって名前だったんだろう。藍染らしい名づけ方だ」

「少し、可愛そうだね」

京楽が、灰となったミニクを見下ろす。

「藍染の手中で生まれたのが運の尽きだ」

「うん。とりあえずどうする?古城まで時間かかりそうだけど」

「ヴァンパイアの翼で飛んで帰ろう。あとは、式で馬車がだめになったことと、馬と業者を死なせてしまったことも報告しよう」

「ああ、そういえば、影に潜むモンスターの退治依頼があったよね。あれって、さっきの子じゃないの?」

「そうだな。まぁ、今日は遅い。明日、報告に行こう」

その日は風呂に入り、そのまま寝た。

翌日になって、浮竹と京楽は冒険者ギルドにいき、モンスター退治をしたと報告して、大金貨500枚をもらった。

古城に戻ると、式が帰ってきていた。

馬と馬車はいいが、御者の死には驚いたようで、王宮で追悼式が行われることとなり、浮竹と京楽も、喪服を着て参加した。

「卯ノ花すまない。俺たちの戦いに巻き込んでしまった」

「人の死はいつか訪れるもの。今は、黙祷してやってください」

皆で黙祷した。

身寄りはなかったらしく、王家が管理する墓場の片隅に墓が建てられることになった。

「おお、浮竹殿。喪服を着ていても美しい!この僕と、一晩の熱い夜を!!」

「浮竹は僕のものだよ!」

「では京楽さん、あなたも混ぜて3Pで!」

王太子のジエルドに常識は通用しないようで、京楽が怒ってジエルドの股間を蹴りあげた。

「ああん、僕の愛しいたまたまが」

「君には、これをあげよう」

京楽は、浮竹が悪戯で作ったモレ草の薬をジエルドに渡した。

「これは精強剤だ。飲めば効果はばつぐん」

「おお、それはすぐに飲まねば!」

ジエルドは、モレ草の薬をその場で飲んだ。

「のあああああああ!!漏れるうううううう!!!」

ジエルドはトイレにかけこみ、それから3時間は戻ってこなかった。

「京楽、さっき飲ませたのはモレ草の・・・」

「だって、浮竹に手を出そうとしたんだよ」

「効果は薄めてあるだろうな?原液を使うと、人なら死ぬことがる」

「その辺は大丈夫。3日もすれば効果は切れるよ。原液を20倍に薄めた薬を盛ったから」

「なら、いいんだ」

ちなみに、その会話は卯ノ花に筒抜けであった。

「そうですか、王太子のジエルドに、強力な下剤を・・・・・」

「浮竹、逃げよう」

「京楽、足が竦んで・・・・・」

「あら、私は褒めているのですよ?あのくそ息子に下剤をもるなんて、やりますね」

にーっこりと微笑む卯ノ花が怖くて、二人は王宮を去り、古城に戻るのだった。


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「ミニクは死んだか。死んだわりには、ガイア王国で懸賞金がかかるモンスターになるなんて、醜いわりには頑張ったものだ」

「次には、俺にいけというのか」

邪神ザナドゥは、やる気はあまりなさそうだった。

「そうだよ。嫌だと言っても、呪いの侵食まであと1週間。このまま呪いで死ぬか、浮竹と京楽を殺すか・・・・・それは君の自由意思に任せよう」

「では、俺もいくとしよう。ミニクが先に待っている。俺もすぐ、そこにいくさ」

「おや、すでに死ぬ覚悟をしているのかい?」

「あの始祖ヴァンパイアと血族の神喰らいの魔神京楽の力は歪(いびつ)だ。上位神の力をもっている。いずれ、お前も滅ぼされるだろう」

藍染は笑った。

「あれらが、上位神の力があるだって?笑わせないでくれるか」

「好きなようにとるといい。私は、滅ぼされにいく。安寧の死が欲しい・・・・・」

「私が世界で唯一無二の絶対神になるのだ!はははは!!」

邪神ザナドゥは死を見据えて。

藍染は欲望だけを輝かせて。

それぞれ、前へ前へと進んでいくのであった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝

「遊びに来たぞ」

「やっほー。遊びにきたよー」

(西洋の俺!元気にしてたか!)

(西洋のボクも、元気にしてた?)

雑居ビルの狭い部屋に、4人が並ぶ。狭いのに余計狭く感じれたが、楽しいからそんなことどうでもいいのだ。

(そうそう、また幽霊退治を依頼されてな)

東洋の浮竹の言葉に、西洋の浮竹は固まった。

「じゃあ、この前みたいに成仏させにいく?」

のりのりの西洋の京楽の首を、西洋の浮竹が締め上げる。

「お前、俺が幽霊とか悪霊とか、そういうの苦手なの知ってて、わざとやっているのか?」

「キブギブ!!苦じい”~~~」

西洋の京楽の首を解放すると、西洋の浮竹はつーんと違う方向を向いた。

(俺たちがついているから、大丈夫だ!)

(そうそう。いざとなればうちの十四郎が調伏できるし)

「お留守番、というわけにはいかないのか」

(せっかくきたんだし、一緒に行こう。きっと、幽霊も怖くなくなる)

「本当だな?怖かったら、10円はげこさえるぞ?」

(何それ!そっちのほうが怖いんですけど!!)

東洋の京楽の言葉に、みんな笑うのだった。


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(ここが、幽霊の出る場所・・・・って、早速でてるな)

男の幽霊だった。男性に憑依しては、道端を歩く女性に話しかけて、ナンパして振られていた。

「ちっ、もっとイケメンはいねーのかよ」

そこに、西洋の京楽と視線があった。

(いけない!)

「ふへへへ。この体は俺もんだ」

(この、憑依したな。無理やりでも調伏してやる)

「へぇ。俺の京楽に霊が憑りついたのか。物質に力でも効くんなら、容赦しなくてもいいな?」

(おーい、西洋の俺?)

「行きかう先々で、かわいい女の子みてニマニマしやがって!制裁してくれる!」

「ぎゃあああああ!!なんだこの体の持ち主、何をしたんだ!!」

(春水、止めなくていいのか?)

(そういう十四郎こそ、止めなくていいの?)

東洋の浮竹と京楽は、引いていた。

「ひいいい。俺が悪かった、成仏するから助けてくれえええ」

西洋の京楽に憑依していた男性の霊は、本当に成仏してしまった。

(あ、成仏しちゃった)

(ボクたちがきた意味、なくなちゃったね)

とりあえず、結界をはって、もう霊が戻ってこないようにした。

「幽霊はどこだ?」

「浮竹、僕が憑依されてたんだよ。酷いよ、ボコボコにしなくてもいいじゃない」

(霊は、成仏したぞ)

「え、まじか」

(まじで)

「じゃあ、帰るか」

帰ろうとする西洋の浮竹を、東洋の浮竹ががしっとその肩を掴んだ。

(さっきのは、ついでに依頼されていた霊だった。本物はあっちだ)

廃墟の病院があった。

窓から、明らかに人ならざる者がこっちを見つめてきていて、西洋の浮竹は東洋の浮竹の腕に縋りついた。

「な、なんかこっち見てる!」

(地縛霊だね。あの廃病院から動けないんだ。ここ最近、ここで事故が多発してる。あいつのせいだ)

(早く除霊しないと、怨霊になっちゃいそうだね。急ごう)

「はうあっ」

また幽霊と目があって、西洋の浮竹は軽く意識を飛ばして、西洋の京楽に支えられる。

(強い怨念があるね。とりあえず、中にはいろう)

ぴしっパリン。

硝子の壊れる、ラップ音が鳴り響く。

かたかたと、地面に転がった薬品の空の瓶が宙を舞う。

「簡便してくれ!俺はこういうのが一番苦手なんだ!」

西洋の浮竹は、東洋の浮竹の背後に隠れる。

「呪ってやる。あの医者の男、許さない。よくも妻がいることを黙っていたわね!許さない!」

(あー。痴情のもつれか。ああいうのは悪霊になりやすい)

「東洋の俺、どうでもいいから除霊だ!除霊してくれ!」

(まぁ、待って。ちょっと会話してみよう)

(ボクは反対だけどねぇ、こんな悪霊と会話したところで、普通に霊に戻ってくれるとは思えない)

「誰!そこにいるのは誰!!」

(君を退治しにきた。でも、怒りを鎮めてくれるなら、普通に成仏させてあげれる)

「成仏!?ばかじゃないの!あたしはあの男が来るまで、ずっとここにいるのよ!あの男が運転していた車だって事故らせてやったわ!殺せなかったけどね!」

女の地縛霊は、東洋の浮竹を見て、ついでに西洋の浮竹を見た。

「あなたのうちのどちらか一人が、あたしのものになるっていうなら、憎しみを捨ててやってもいいわ」

「君ごときにあげれるほど、僕の浮竹は安くないんでね」

(キミみたいな醜い女に、愛しい伴侶を渡す男がいるはずもない)

それぞれ京楽に抱き寄せられて、おでこにキスをされた。

西洋も東洋も、浮竹は顔を真っ赤にしていた。

「あたしをばかにしてるの!」

(君には、これがお似合いさ)

妖刀をだして、それで地縛霊の体を切る。

「あははは、あたしに物理攻撃がきくわけ・・・ぐっ、何をした!?」

(ちょっと瘴気を食っただけだよ。十四郎)

(分かった)

東洋の浮竹は、浄化の札を取り出して結界を張る。

「祓われる前に、お前を道連れにしてやる!!)

西洋の京楽の傍に隠れて怯えている、一番弱そうに見える西洋の浮竹に襲い掛かる。

(西洋の俺!)

「大丈夫だ。ちゃんと、浄化の護符を身に着けている。選別だ、受け取れ」

襲い掛かってきた幽霊に、小瓶の中の水をかけた。

「ぎゃああああああ!!痛い、苦しい!!」

「今だ、東洋の俺!」

(ああ、分かってる)

東洋の浮竹は、聖なる力を使って地縛霊を綺麗に除霊してしまった。

(怖いのに、よく地縛霊に相手をできたな?)

東洋の浮竹はしゃがみこんでいた。

「聖女の聖水をかけたんだが、こっちの世界でも効くみたいだ。それより・・・腰が抜けた。京楽、背負ってくれ」

「仕方ないねぇ」

西洋の浮竹をおんぶして、西洋の京楽は歩きだす。

ボコボコにしてもされても、二人の仲は良いのだ。

(なんか、仲が悪い時もあるように見えて、基本ラブラブなんだな)

「な、ラブラブなんかじゃないぞ!」

「浮竹、そんなに否定しなくてもいいじゃない。昨日、睦み合った仲でしょ」

「お前は余計なことを言うな」

背中におんぶした西洋の浮竹に首を絞められて、でも西洋の京楽は笑っていた。

「少し幽霊になれた気がする。少しだけだけど」

西洋の浮竹は、もう自力で歩けるからと、地面に立った。

(そうか。苦手なものを克服しようとするのは、いい心がけだぞ)

東洋の浮竹に頭を撫でられて、西洋の浮竹も東洋の浮竹の頭を撫でた。

(どうした?)

「いや、俺はお前の兄でありたいと思っているのに、今回もまたお前に助けられてばかりで情けない」

(そんなことないぞ。お前の強さを、俺も知っているからな?)

「俺も、お前の強さを知っている。鳳凰の技は、俺のエターナルフェニックス・・・炎の禁呪にとてもよく似ている」

(鳳凰と炎の不死鳥の違いはなんだろう?)

「ほとんど同じじゃないか?西洋か東洋かの違いだけで」

「浮竹、置いていくよ」

「待て、京楽!ああ、そうそう、おみやげを。マンドレイクの・・・・」

((却下))

「マンドレイクを乾燥させた茶葉なんだが・・・だめか?」

(茶葉なら、ぎりぎりセーフだな)

(そうだね。くれぐれも、生のマンドレイクを持ってこないように)

「生が欲しいなら、アイテムポケットに・・・・」

(わーわーわー、この世界じゃ生のマンドレイク禁止!乾燥させたやつもNG!)

「なのに、茶葉はいいのか?変なかんじだな」

西洋の浮竹は、乾燥させたマンドレイクの茶葉が入った瓶を、東洋の浮竹にあげた。

(あははは、もらっておくよ)

「こっちには、アッサムの最高級茶葉もある」

(そっちのほうがうれしいなぁ)

「そうか。じゃあこれもやる」

(十四郎、片方もつよ)

(じゃあ、この呪われてそうなマンドレイクの茶葉をもってくれ)

(本当に呪われてそう・・・)

マンドレイクの茶葉は、しなびているけれど、人間の顔をしていた。

「じゃあな、東洋の俺と京楽」

「おいていくよ、浮竹」

「待ってくれ、京楽!!」

歩き始めた西洋の京楽の背中を追って、西洋の浮竹の背中も小さくなってく。

(あのさ。この前もらった乾燥マンドレイク、まだ残ってるって言ったほうがよかっただろうか)

(でも、西洋の君ががっかりするでしょ)

(そうだな。しばらくは秘密にしておこう)

ちなみに、乾燥させたマンドレイクは、段ボールの中に入れっぱなしであった。

(この茶葉・・・お湯入れたら、悲鳴あげそうに見えるのは、気のせいだろうか)

(いや、気のせいじゃないでしょ。西洋の君は、本当にマンドレイクが好きだね)

(俺に言われてもな・・・・)

クスリと、東洋の京楽は笑みを零して、東洋の浮竹の額にキスを落とすのであった。


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始祖なる者、ヴァンパイアマスター59

血の帝国から、浮竹と京楽は、ルキア、一護、冬獅郎を呼び寄せた。

用があるのはルキアだけだが、その守護騎士をしている二人も一緒にやってくるのは、至極当然なことなので、浮竹も京楽も気にしなかった。

「出るんだ」

「何がですか、浮竹殿」

「ぼ、亡霊が出るんだ。13歳くらいの女の子で、私の赤ちゃんがいないって・・・俺は見てしまった。情けない話だが、ゴースト系の亡霊のモンスターなら平気なんが、本物の亡霊は苦手なんだ。昨日出会って、その場で気絶してしまった」

「だっせぇ」

冬獅郎の言葉に、ぐさっと浮竹の心が傷つく。

「浮竹さんにも苦手なものがあるんすね」

「一護君・・・・」

「亡霊なんかで怖がるなんて、かわいいところあるっすね」

「かわいくない!私はかっこいいのだ!」

「はいはい」

一護は適当にあしらって、京楽に話を聞く。

「13歳くらいの女の子の幽霊。赤子がいないってことは、すでに結婚して子供を産んでなくなった少女の霊っすね」

「この古城を買い取ってから、話を聞いたんだよ。今から100年くらい前に、12歳で無理やり嫁がされた少女が、13歳で子供を産み、そのまま亡くなったそうだよ」

「京楽殿、その亡霊は赤子を探していたと?」

浮竹はガタガタ震えて、怖がっていた。

「浮竹が言うには、そうみたいだね」

「ふむ。未練を残したまま亡くなった亡霊ですか。無理やり成仏させることもできますが、その赤子の霊とやらを呼び寄せて、それから成仏してもらった方がいいですね」

「あ、赤子の霊を呼び出すのか」

浮竹は、京楽の服の裾を引っ張った。

「浮竹、君は寝ていていいよ。今晩にでも除霊してもらうから」

「亡霊が現れるかもしれないのに、一人で寝れるはずがないだろう!」

「じゃあ、一緒に亡霊を探す?」

浮竹はガタガタ震え出す。

「そ、それはいやだ!」

「どうやら、その少女の霊は、浮竹殿を気に入ってるようですね。思念の残滓が残っています。浮竹殿には悪いが、囮になってもらおう」

ルキアの言葉に、浮竹は倒れた。

「ちょっと、浮竹!?」

「亡霊の囮なんて嫌だーーー」

「一夜の我慢だよ。成仏すれば、二度と亡霊はでないから」

「ほ、本当だな!?」

「多分、ですが」

ルキアの言葉に、浮竹はまた眩暈がした。

「亡霊は、何もしてこないよな!?」

「どうでしょう。場合によっては憑依したりする亡霊もいますが、100年も亡霊をしていてそれほど騒ぎになっていないところを見ると、憑依したり頻繁に出る亡霊ではない気がします。悪さを働くような亡霊でないなら、放置しておいても大丈夫なのですが」

涙目になっている浮竹を見て、ルキアは溜息をつく。

「まぁ、今晩除霊しましょう。今のうちに仮眠をとっておきましょう」

「ちょうど眠かったんだ。寝れるなら寝る」

冬獅郎は早々と、まるで自分の家のようにゲストルームに入るとベッドに横になった。

ルキアも違うゲストルームで横になる。一護は、ルキアのゲストルームにあるソファーで寝ることしにたようだ。

「一護クン、ゲストルームは5つあるから、そんなソファーで寝なくても、ベッドは空いているよ?」

「いや、念のためにルキアの傍にいたいっすから」

「君は、本当にルキアちゃんが好きんなんだね」

すでに、ルキアは眠り落ちている。

一護は顔を真っ赤にして「そんなことないっす」と言って否定するのだった。

こうして、浮竹、京楽、ルキア、一護、冬獅郎は仮眠をとった。

日が暮れて夜になる。

ささやかな晩餐がふるまわれて、皆、京楽と戦闘人形のメイドの作った料理に満足気であった。

「いいもの毎日食ってるな、浮竹は」

冬獅郎とて、守護騎士としてそれなりのものを食べているが、京楽の手料理や戦闘人形のメイドたちが作る食事はどれも美味で、おいしかった。

「いや、今日は特別だ。3人がいるから、フルコースのメニューになってるだけで、いつもはもう少し質素だ」

「どのみちいいもん食ってんじゃねぇか」

「否定はしない」

湯浴みをして、普通なら就寝時刻なのだが、ルキアが霊を呼び寄やすいお香を焚いた。

「こ、怖くなんかないぞ。どこからでも出てこい!」

「浮竹、そう言いながら僕の服の裾を掴んでるから、強がってるのが丸わかりだよ」

「浮竹殿。その場で一人でいてください。霊が集まってきています」

「じゃあ、そういうことで浮竹」

「お、俺は一人でも怖くないぞ!」

浮竹は、がたがた震えながら、夜は寒いので毛布をかぶって、その場で緊張しすぎてどうにかなったのか、船をこぎ始めた。

「寝ちゃったけど、いいの?」

「大丈夫です。霊は集まってきています。もう少しで現れそうです」

「俺と冬獅郎もいる。なんとかなるだろう」

一護が、ルキアに毛布をかぶせた。

「すまぬ、一護」

「風邪でもひかれちゃ、大変だからな」

おおおおおおおおおお。

うおおおおおおお。

何やら、哀しい叫び声がしてきた。

もやのようなものが集まり、13歳くらいの少女の形をとった。

「返して・・・私の赤ちゃんを返して・・・」

眠っている浮竹にそう訴えかける。

「返して・・・・・」

浮竹は、起きると目の前に亡霊がいて、言葉を失い毛布をかぶって縮こまっていた。

「あなたの名前はララ・フォン・シスターニア。合っていますか?」

ルキアは亡霊に話しかけた。

亡霊を意識をはっきりとさせて、言葉を返してきた。

「そうよ。私はシスターニア伯爵家の三女、ララ・フォン・シスターニア。嫌だといったのに、お父様が借金の肩代わりだと、私をラトゥール家へお嫁にいけと」

「はい、それで?」

「ラトゥール侯爵家は、身分こそ上だったけれど、当主はまだ12歳だった私を無理やり犯して、子を身籠らた。私は初産が13歳であったせいで、この世を去ってしまった。私の赤ちゃんを返して!!」

ルキアは、魔法陣を描きだした。

何か呪文を唱えて、それは天国と呼ばれる霊的な物質が漂う世界とゲートを開く。

魔法陣には、1人の青年が立っていた。

「この方が、あなたの赤ちゃんの成長した姿です」

「私の赤ちゃん・・・本当に?」

「母さん?」

「名前は、名前はなんというの」

「リザ・フォン・ラトゥール」

「ラトゥール・・・私の息子は、成人してそれからラトゥール侯爵の爵位をついだのね」

ララは泣いていた。

リザは、どこか浮竹に似ていて、白髪い翡翠の瞳をもっていた。

ララの亡霊が、浮竹に惹かれて姿を現したのも納得がいった。

「母さん、一緒に天国に行こう。父さんは、母さんを亡くしてしまったことを後悔していたよ。もっと優しく扱ってやるべきだったって。もう、この地に未練も何もないでしょ?僕に会えなかったことが未練なら、もう果たされたはずだ。さぁ、一緒に天国に行こう?」

ふわりと、浮かび上がるリザの背中には、白い翼が生えていた。

ララは、浮竹のところにくると、怯えている浮竹の頭を撫でた。

「ごめんなさい。あなたは私の赤ちゃんの色によく似ていたから、化けて出てしまったわ。でももうそれも終わり。私も、天国に行くわ」

ララの背中にも白い翼が生えていた。

「行くのか?」

「ええ」

「たまに、戻ってきてもいいんだぞ」

「そうね。考えておくわ」

そうして、リザとララは天国に戻っていた。

ルキアは念のために聖水をまき、魔法陣をいたるところで描き出して、結界を張った。

「ふう。これで不浄な霊はこの古城には入ってこれないでしょう」

「ルキアちゃん、ありがとね」

「用事が片付いたなら、俺は寝る。仮眠をとったといっても眠い。また夜だ」

「あれ、そういえば血の帝国での活動時間が夜じゃなかったのか?」

「浮竹殿、知らなかったのですか。血の帝国では、5年前からブラッディ・ネイが活動時間を夜から昼に変えています」

「ああ、そういえばみんな昼なのに活動していたな」

「浮竹、今頃気づいたの」

「今頃で悪かったな」

つーんと尖がる浮竹に、ルキアも一護も眠るといって、ゲストルームに行ってしまった。

「僕たちも眠ろうか。これで、亡霊騒ぎも一段落したし」

「ああ、そうだな」

次の日の昼に、ルキア、一護、冬獅郎は血の帝国へ帰ってしまった。

住んでいる古城が変わったのだが、3人ともあまり興味がないようで、せっかく新しい家具とかを自慢しようと思っていた浮竹は、もの悲しくなった。

ガタン。

音がして、びくっと浮竹が振り返る。

そこには、ララが立っていた。

「あら、驚かせちゃたようでごめんなさい」

浮竹は、気を失っていた。

「浮竹さん、浮竹さん」

ぺちぺちと頬を叩かれて、浮竹は飛び起きた。

「え、ララ?どうして。ルキア君が結界を張ったはずなのに」」

「どうやら、こっちの世界と天国とを行き来でるようになたみたいで。亡霊ではなく、害のある霊を弾く結界のようです。私が悪意がないので、すり抜けられました。私が、怖いですか?」

「ちょっとまだ怖い。でも、悪意がないということはいい幽霊なんだろう?」

「そうですね。あなたの背後霊は・・・・・」

「わあああああ!!そんな話聞きたくない!」

耳を塞ぐ浮竹に、ララは苦笑した。

「ちゃんと、京楽さんの許可もとってありますから」

「そうなのか!?」

驚く浮竹は、京楽の部屋にいき、京楽の首を締め上げた。

「おいこら、害のない幽霊が行き来可能だってなんで教えなかった。ララを見た瞬間気を失ってしまったじゃないか!」

「ぎぶぎぶ!!」

浮竹の手を外して、呼吸を整える。

「いや、まさらララちゃんがこっちにまた戻ってくるとは思わなくて」

「天国なんてつまらないわ。こっちの世界のほうが、よほど刺激がって楽しいわ」

「ララちゃん、くれぐれも僕と浮竹の夜には・・・・・」

「大丈夫、のぞいたりしませんから、安心してください」

浮竹は真っ赤になった。

この古城に引っ越してもうすぐ半月になる。その間に、京楽に4回も抱かれた。

「ララ、本当に見ていないだろうな?」

「ええ、見ていませんよ。これは本当です」

「るるるるる~~~~~~」

「りんりんりん~~~~~~」

ミミックのポチとタマも、ララを歓迎するかのように、その側でくるくる回る。

「古城、幽霊つき・・・・・白金貨50枚に値切っておくんだった」

そんなことを口にする浮竹を、京楽は見る。

「この古城のこと、嫌いになった?なんなら、元の古城に戻ってもいいんだよ?」

「いや、俺はこの古城が気に入っている。幽霊つきだが、前よりも心地よい気がする」

庭には、薔薇園があり、アーチを築いていた。

その薔薇の世話をしたり、もってきた桔梗のプランターの世話をするのも、浮竹の役割だった。

ちなみに、庭の一部では鶏を飼いだした。

毎日、新鮮な卵が取れる。

オスメス飼っているので、そのうちひよこも生まれそうだ。

多すぎたら、かわいそうだがチキンソテーにでもなってもらおう。

そんなことを考えるのであった。


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それは、イデア王国で管理されてた。

邪神、ザナドゥ。

その封印を、藍染は解いた。

ザナドゥは、藍染を殺した。だが、藍染は何度殺しても再生してくる。

「不老不死・・・・始祖の呪いか」

邪神ザナドゥは、諦めの境地に立った。

「自由が欲しくないか」

「別に、いらぬ」

「お前に呪いをかけた。始祖のヴァンパイア浮竹と、神喰らいの魔神京楽の血を浴びねば、1カ月後に死ぬ呪いだ」

「そんな呪い、あるものか!」

藍染は笑った。

「ぐはっ」

呪いの侵食により、ザナドゥは呼吸ができなくなった。

「くそ・・・・・・」

「仮にも邪神だろう?封印を解いてあげたんだ、私の言うことくらい、聞いてもらおうか」

「私は神に滅ぼされた。この器に残った力は、弱い」

「じゃあ、私が力を与えよう」

邪神である自分の血を、藍染はザナドゥに与えた。

邪神である藍染の血は、ザナドゥを侵食していく。

「殺す、浮竹、京楽」

「まずは、女神アルテナの残した肉塊に、子を宿させてもらおうか。私が神の完成体になるまで、遊ぼうじゃないか」

藍染は、そうして笑うのであった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター58

「浮竹殿、京楽殿」

やってきたのは、血の帝国の皇女であり、聖女であるルキアと守護騎士の黒崎一護であった。

「どうしたんだい、ルキア君、一護君」

「あれ、ルキアちゃん、冬獅郎クンの姿が見えないね?」

「その冬獅郎が!!」

ルキアの話では、冬獅郎は何者かに攫われたというのだ。

それが、藍染の手による者の可能性が近いと分かり、浮竹と京楽は顔色を変えた。

「ついに、友人たちに手を出し始めたか」

「ルキアちゃん、多分冬獅郎クンは僕らを襲ってくる。ちゃんと加減して、目を覚まさせてもらうから、ここは僕らに任せてくれないかな」

「浮竹殿と京楽殿がそういうのであれば・・・」

ルキアと一護は、冬獅郎のことは浮竹と京楽に任せることにして、騒ぎを大きくしないためにも、一度血の帝国に戻ってもらった。

「どう思う、京楽」

「そうだね。藍染の血を与えられて、やってくるに1票」

「奇遇だな。俺もそう思っていたところだ」


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「誰だ・・・・・」

冬獅郎は、揺蕩う意識の狭間で、夢を見ていた。、

自分を助けようとしてくれた母親が、優しくしてくれる夢だった。

冬獅郎の母親は、特別な血をもった人間で、稀にしか生まれぬヴァンパイアの子を確実に孕める血をもっていた。

冬獅郎の父親は、ヴァンパイアだった。

ヴァンパイアであった父親は、冬獅郎の母親に血を与えて花嫁と迎えることはせずに、ただ犯して子を産ませた。

ヴァンピールの力は、個体差があれど普通のヴァンパイアより強い。

現に、黒崎一護というヴァンピールは、聖女朽木ルキアの守護騎士をしていた。

冬獅郎には他に4人の兄弟姉妹がいたが、皆力に溺れて幼くして死んでいった。父親であるヴァンパイアは、強いヴァンピールである冬獅郎の力を求めた。

母親は、そのヴァンパイアの父親の元から、冬獅郎を連れて逃げ出そうとして、父親に殺された。

気づけば、冬獅郎は父親を殺して、親殺しのヴァンピールと蔑まれて生きてきた。

そんな冬獅郎に、救いの手を差し伸べてくれたのは、ルキアと一護、それに浮竹と京楽だった。

「誰か・・・・そこにいるのか」

「君は忌まわしきヴァンピール。君が守護するべき朽木ルキアは死んだ。殺したのは、浮竹十四郎と京楽春水」

「ルキアが死ぬはずがない・・・・」

「これを見ても?」

藍染は、強烈な洗脳を行っていた。

「これは・・・ルキアの生首。いやだ、ルキア、ルキア!」

「これも、浮竹十四郎と京楽春水のせいだよ」

次に冬獅郎の前に置かれ生首は、雛森桃のものだった。

「雛森!!うわああああ!!!」

実際は、ただの肉塊であったけれど、冬獅郎にはルキアと雛森の生首に見えた。

浮竹のことと、京楽に関することは記憶が奪われていた。

「許さない・・浮竹十四郎、京楽春水。この手で、葬り去ってやる」

「この血を飲みなさい。君の力になるだろう」

強烈な洗脳にかけられた冬獅郎には、藍染の邪神の血が女神の血に見えた。

冬獅郎は、ワイングラスに入れられた血を飲み干した。

「力が湧いてくる・・・・・」

「さぁ、行っておいで。浮竹十四郎と京楽春水を抹殺するんだ」

「殺す・・浮竹、京楽・・・・」

冬獅郎は、自分の愛刀である氷輪丸を手に、浮竹と京楽の住む古城に向かう。

冬獅郎は、氷の龍を出していた。

それに跨り、空を飛ぶ。

「ルキア、雛森・・・仇は、とってやる」

冬獅郎は、数日でイデア王国からガイア王国へと来ていた。

浮竹たちの住ま古城にくると、まずが使役できる氷の精霊フェンリルと氷女を出して、城ごと凍結させた。

けれど、一度火柱があがり、氷はどんどん溶かされていく。

「どうなっている!」

「待ってたよ、冬獅郎クン」

「冬獅郎君、元に戻るんだ」

庭に出てきた浮竹と京楽を、冬獅郎は憎しみの眼差しで見つめる。

「よくもルキアと雛森を・・・・殺してやる!」

「わお、冬獅郎クン本気みたいだね。どうする、浮竹」

「ある程度力を削ったところで、エリクサーを飲ませる」

冬獅郎は、魔狼フェンリルと氷女の精霊を操って、浮竹と京楽を攻撃する。

それをかわして、浮竹は炎の魔法を放つ。

「ゴッドフェニックス!!」

炎の不死鳥は、氷女を包み込んだが、氷女は炎を凍てつかせた。

「ちょっと、思ったより力つけてるね。これ、本気でいかなきゃ無理かも。サンダーボルテックス!!」

冬獅郎本人に魔法をかまそうとすると、フェンリルが代わりに魔法を受けた。

「げ、魔力に変換して食われた。ちょっと、浮竹どうにかならないの!?」

「ゴッドフェニックス、カイザーフェニックス、エターナルフェニックス・・トリプルファイアフェニックス!!!」

「いきなりそれかい!」

京楽が余波を浴びないように、シールドを張った。

「ウォォォォォン!!」

氷の魔狼フェンリル冬獅郎を庇い、蒸発してしまった。

「よくもフェンリルを!」

冬獅郎は、愛刀氷輪丸を手に、氷の龍を出してきた。

それは浮竹と京楽に襲い掛かる。

「ファイアシールド×5」

浮竹は、5枚重ねの炎の盾を張った。

じゅわっと、氷の龍が蒸発していく。

「まだだ、俺はこんなところで終わってたまるか、ルキアと雛森の仇を取るんだ!」

「冬獅郎!!」

「シロちゃん!!」

中庭から現れたのは、浮竹と京楽に殺されたはずのルキアと雛森だった。

「シロちゃん、私たちは無事だよ!藍染に洗脳されているの!お願い、元に戻って!!」

「全部幻だあああ!!」

冬獅郎は、氷の龍をルキアと雛森に向けた。

「いい加減、目を覚ましやがれ!!」

一護に殴られて、冬獅郎は瞬きを数回繰り返した。

「一護?なんでここにいやがる。ルキアと一緒に死んだはずじゃねぇのか!」

「勝手に殺すな!お前は藍染の手の者に攫われて、洗脳されてんだよ!」

「じゃあ、今この目の前にいるルキアと雛森は、本物?」

「ああ、そうだ!自分が守りたい存在を、自分で壊す気か!」

一護は、冬獅郎の頭を殴った。

でも、そんなことで藍染の洗脳がそう簡単に解けるわけもなく。

「浮竹と京楽、あいつらだけは許せねぇ」

「冬獅郎!」

「シロちゃん!」

浮竹は、さっと雛森の体を攫うと、早口で事情を説明する。

それに真っ赤になって、雛森はエリクサーを手に、冬獅郎の元に駆け寄る。

「シロちゃん、元に戻って!」

雛森は、エリクサーを口にすると、冬獅郎に口移しで飲ませた。

エリクサーを飲みこんで、冬獅郎は我に返る。

「俺は、一体何を・・・・・」

「冬獅郎、元に戻ったのだな!?」

「シロちゃん!」

ルキアと雛森に抱き着かれて、冬獅郎は真っ赤になっていた。

「雛森、さっきのは・・・・」

「えへへへ、ファーストキス。シロちゃんと、しちゃった」

その言葉に、冬獅郎は耳まで真っ赤になった。

「おい、冬獅郎、まずは言うことがあるだろうが!」

一護に急かされて、冬獅郎は、氷の龍が暴れたせいでめちゃくちゃに壊れた古城を見上げながら、浮竹と京楽に詫びを入れた。

「すまん!俺が、洗脳されたせいで、こんなことを引き起こして・・・・」

「まぁ、悪いのは全部藍染だから」

「そうそう。古城は恋次君の時間回帰の魔法でなんとかしてもらうから、気にしなくていいよ」

「京楽、この古城のことは藍染に知られているし、いっそ引っ越すのはどうだ?」

浮竹の言葉に、京楽が首を傾げる。

「けど、どこへ?」

「向こう側に、古城があるだろう。ほら、東の運河の近くにある」

「あれは、貴族が住んでいるよ?」

「ここに白金貨100枚ある。これで買いとる」

「金に全部物を言わす浮竹・・・なんかかっこいい!!」

浮竹はすぐに交渉に乗り出して、その貴族は没落寸前で、古城しか資産がなかったのだが、古城の買取り手もなく、維持費に必要な金を借金して賄っていた。

浮竹の出してきた条件に食いついてきた。

浮竹は、戦闘人形のメイドたちに命令して、無事だった家具やら衣服やらあとあらゆるものをアイテムポケットにいれさせると、まずは掃除が行き届いていないせいで、埃にまみれていた古城を、戦闘人形のメイドたちに徹底的に掃除してもらった。

そして、家具の配置を行っていき、クローゼットに衣服をしまいこむ。

絵画などを飾り、シャンデリアを前の古城のものと入れ替えた。

純金でできたハニワを玄関に飾ってみた。

ペルシャ絨毯を寝室にしいて、天蓋つきのキングサイズベッドのベッドを寝室に置く。

ダイニングルームには、テーブルと椅子に他にも、前の古城のものより広かったので、ホイワイトタイガーの毛皮をしいて、その上にソファーを置いた。

風呂場は前の古城より狭かったが、二人で入るには十分な広さを兼ね備えいた。

玄関から続く赤い絨毯は、職人技のものを選び、他に足りなかったり、壊れたりした家具は、金で一流のものを買いそろえた。

埃にまみれておいた古城は、ビフォアアフターで、どれだけ違いがあるのか分からないほどに、手入れする前の古城とは比べ物にならないくらいに豪華なものになっていた。

浮竹の手元には、ガイア王国の女王からもらった白金貨がまだ5千枚手つかずで残っていた。

ダンジョンにもぐったり、錬金術でもうけた金で事足りた。

前の古城のマンドレイクを全部引き抜いて、新しい古城は前の古城より中庭が広かったので、戦闘メイドたちに畑を耕してもらい、マンドレイクの苗を植えた。

最後に、地下に血の帝国と繋がる空間転移の魔法陣を設置した。

どのみち、周囲には鬱蒼と森が生えていたし、一番近くの町はやはりアラルだった。

前の古城よりもアラルの町が近くなった。

ゲストルームは前より少なくなったが、それでも5つはあって、広さは倍になった。

図書館を配置したり、錬金術用の館を5つ建てた。

外見は少々違えと、前と同じような古城ができあがった。

違う点があるとしたら、家畜小屋ができて、そこで鶏を飼うようになったことだろうか。

使わない暖炉では、いつも通りミミックのポチとタマの巣になっていた。

「るるるるる~~~」

「りんりんりん~~~~~」

ポチとタマは、お引越しは初めてなので、嬉しそうに古城の中を冒険しに出て行ってしまった。

「エリクサーが尽きてしまったな。材料を買い占めて、作るかー」

「また、新しく作った錬金術の館を吹き飛ばすつもりだね」

「当たり前だ!館は吹き飛ばすためにあるようなものだ!」

「そんなこと言う錬金術士は君くらいだと思うけどね」

「ほら、アラルの町に買いだしにいくぞ。ついでに乱菊と冒険者ギルドに引っ越しをしたことを伝えないと」

浮竹は、上着を着て、出かける用意をする。

ついでに夕飯とかの買い出しも兼ねて、外に出る。

鬱蒼とている森には獣道があって、そこを通るとすぐにアラルの町に出られた。

「あら、引っ越したの。古城から古城へ。あんまり、外見以外変わってないんじゃないの?」

乱菊の言葉に、浮竹は「鶏を飼いだした」と威張り始めた。

「まぁ、マンドレイクは相変わらず育ててくれるからいいけど。あの古城、出るって、噂よ?」

「な、何が・・・・・・・」

「ほら、亡霊が・・・・」

「そんなわけあるか!」

浮竹は、ヴァンパイアマスターなのに亡霊が怖いようで、京楽の服の裾を掴んでいた。

「浮竹、もしかして亡霊が怖いの?」

「こ、怖くなんかない!この世界にはゴーストとか亡霊系のモンスターもいるだろう!」

「そうだけど・・・・手が震えてるよ」

「き、気のせいだ」

京楽は、そんな浮竹はかわいくて、頭を撫でて抱きしめた。

「あら、お熱いこと」

「そんなに気になるなら、亡霊退治をしよう。聖女のルキアちゃんも呼んで。ちゃんと成仏してもらおう」

「あ、ああ、そうだな」

その後で、冒険者ギルドにより、住所を変更してその日は食事と風呂に入り、就寝となった。

ふと、すすり泣く声が聞こえて、目が覚めた浮竹は、泣き声をがするほうにふらふらと歩いていく。

「いないの・・・お腹に赤ちゃんがいたのに・・・いないの」

すすり泣く、少女の姿をした亡霊を見てしまい、浮竹はその場で気を失った。

「浮竹、おーい、浮竹。こんな場所で寝たら、風邪引くでしょ?」

朝になって京楽に起こされて、浮竹はその肩を掴んで揺さぶった。

「出た。本当に出た。お腹に赤ちゃんがいないとかいって・・・・13歳くらいの、少女の亡霊だった・・・本当に、出たんだ」

ガタガタと震えて、京楽の服の裾を掴む。

「夢じゃないようだね。今回は、幽霊退治と参りますか」

京楽は、血の帝国からルキア、一護、冬獅郎を呼び寄せて、幽霊退治と乗り込むのであった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター57

魔女エルは、京楽に最後の別れにと古城に会いに来ていた。

浮竹は、それが気に入らなかったが、魔女のエルに京楽の周囲をうろうろされたくなくて、しぶしぶ魔女エルを古城に招きいれた。

「このワインを飲んで。私も飲むから。それで最後ですから」

京楽は、ワイングラスに注がれたワインをなんの疑いもせずに飲む。

青いワインだった。この世界のワインは青や緑、オレンジ、紫などいろんな色があるので、浮竹も気にしていなかった。

青いワインを飲んだ京楽は、ワイングラスを落とした。

パリン!

けたたましい音がして、浮竹が京楽の名を呼ぶ。

「京楽!」

「気安く話しかけないでくれるかな。僕は、エルが好きなんだ」

「は?」

浮竹は固まった。冗談にしては、性質が悪い。

「エル・・・君を愛している。君が大好きだ」

魔女エルを、京楽は抱きしめていた。

「京楽!!!」

「うふふふ、京楽さんは私のものよ!」

狂った顔で笑う魔女エルに、京楽は惚れ薬でも飲まされたのかと、京楽を正気づけようとして、その頬をひっぱたいた。

「京楽、帰ってこい!」

「君みたいな始祖に用はないよ。僕はエルと共に生きる」

魔女のエルは、京楽と口づけしていた。

体が燃えるように熱かった。これが、嫉妬という感情なのだろうか。

「魔女エル、京楽に何を飲ませた!」

「女神の秘薬よ。きっとエリクサーでも治せないわ」

「そんなこと、分からないだろう」

魔女エルはホウキを取り出した。

それにエルが跨り、後ろに京楽を乗せた。

「あははは、京楽さんは私がいただいていくわ。男同士で愛し合うなんて不毛なのもこれで終わりよ。私と京楽さんは結婚して幸せな家庭を築き、子供にも恵まれるの」

魔法を放とうとしたが、京楽が巻き添えになると、我慢する。

「京楽!!」

「じゃあね、浮竹さん。永遠にさようなら」

「じゃあ、浮竹。長い間世話になったね」

「京楽ーーーー!!」

京楽と魔女エルはどこかへ飛び去ってしまった。

「・・・・・京楽のアホ」

浮竹は少しだけ泣いていた。

「俺から京楽を奪うだと?その行為がどれだけ俺を怒らせたのか、知らしめる必要があるな」

浮竹は錬金術士の館からエリクサーをあるだけもってきた。

「神の秘薬・・・・エクリサーは神の涙。どうか、効いてくれ」

浮竹は祈りながら、エリクサーをアイテムポケットに大切そうにしまいこんで、京楽の魔力を探知するのだった。

-----------------------------------------------------------------

「ああ、いいわ、京楽さん」

魔女エルと京楽は睦み合っていた。

「エル大好きだ。僕の主・・・・」

「ああん」

身をくねらす魔女エルに、それ以上に行為でがきなくれて、京楽は愕然とした。

「勃たない・・・」

「そ、そんなに急く必要はないんだから。ゆっくり、一緒に歩んでいきましょう?」

魔女エルは、裸のまま京楽にしな垂れかかった。

「そうだね。子供は、生まれたらでいい。僕は君を愛している。それだけで十分・・・・」

「京楽さん?」

「何か、大切な存在を忘れている気がする・・・」

「気のせいよ!それより、食事にしましょう?」

「ああ、僕が作るよ。戦闘メイドにも手伝ってもらって・・・あれ、戦闘メイドは?」

京楽が訝しがる。

「そ、そんな存在はじめからないわ!」

「頭が痛い・・・・」

「京楽さん!私が食事をつくるから、京楽さんは休んでいて!」

魔女エルは服を着ると、京楽をベッドに寝かせた。

女神の秘薬は効果は絶大だが、すでに最愛の者がいる京楽には、何か違う作用がおきているようで、魔女エルは不安になりながらも、京楽と共に過ごすのであった。

ピンポーーン。

チャイムが鳴った。

魔女の里の外れに新居を構えたのだが、魔女の知人でもやってきたのかと、扉を開ける。

そこには、浮竹がいた。

「浮竹さん!京楽さんは、渡さないわよ!」

浮竹はスリッパはかずに土足であがると、京楽のいる部屋までやってきて、扉を開けた。

「京楽!」

「君は・・君は誰?」

「俺は浮竹十四郎。お前の主で、お前は俺の血族のヴァンパイアロードであり、神喰らいの魔神だ」

「血族・・・主・・・・魔神。頭が・・・・」

浮竹は、アイテムポケットからエリクサーを出すと、それを口に含んで京楽に飲ませた。

「何を・・・・」

「全ての状態異常を治す神の涙と呼ばれている、エリクサーだ」

「僕は、何も異常なんてない。エルが好きなんだ」

その言葉を聞いても、浮竹は取り乱さなかった。

「必ず、京楽、お前を取り戻す。魔女エル、俺も今日からここに住むからな」

「な!部外者は出て行って!」

魔女エルは、驚いて浮竹にクッションを投げつけた。

「僕からもお願いするよ。何か、とても大切なことを忘れている気がするんだ。この浮竹って子が近くにいたら、思い出せる気がする」

「京楽さん、京楽さんは私のものよ!」

浮竹は、くつくつと笑いだした。

「必死だな。せいぜいあがくといいさ」

「浮竹だっけ。もっと傍においでよ」

ごく当たり前のように、京楽は浮竹の近くにくると、顎に手をかけてキスをしていた。

「京楽さん!何をしているの!!」

「え、は、本当だ!ごめんね、浮竹」

浮竹は、もう一度エリクサーを口に含むと、京楽に飲ませる。

「何を飲ませているの!」

「エリクサーだが?」

エリクサーと聞いて、魔女エルは慌て出した。

「無駄よ!女神の秘薬はエリクサーでも治らないと、藍染様がおっしゃっていたんだから」

「ほう。藍染からもらった惚れ薬か」

浮竹は、残忍に笑った。

「藍染と通じているということは、死を覚悟しているんだろう?」

「助けて、京楽さん!」

京楽は、浮竹と魔女エルの間に割って入った。

「エルを傷つけるのは、許さないよ。エルは、僕の全てなんだ」

浮竹は、左手の薬指にしているピジョンブラッドのスタールビーを見せた。

「お前の手も、はまっているはずだ」

「本当だ・・・どうして。ねぇ、エルは知ってる?どうして、僕と浮竹が同じペアリングをしているの?」

「ああああああああ!!!」

魔女エルは、包丁を取り出して、それで浮竹の胸を刺し貫いていた。

「死んで死んで死んで!!!私と京楽さんの中を引き裂こうとする者は、みんな殺してやる」

浮竹は、平気な顔で傷を再生させる。

「ああああ!!死んで!」

もう一度ふりあげようとしたエルの包丁を、京楽が奪う。

「エル、だめだ。人を傷つけてはだめだ」

「こいつは人じゃないわ!ヴァンパイアマスターよ!」

「ヴァンパイアマスター・・・・頭が・・・・・」

「素直に、京楽を解放しろ。そうすれば、命だけは助けてやる」

残酷に笑う浮竹に、魔女エルはきっと睨みつけた。

「嫌よ!京楽さんは私のものよ。私だけを見て、私だけを愛してくれると誓ったわ!」

「それが薬の効果でも?」

「そうよ!薬の効果でも、女神の秘薬よ!エリクサーでも解けなかった!もう、あなたに成す術はないのよ!諦めて帰ってちょうだい!」

「嫌だね。俺も今日からここに住む」

「京楽さん、何か言ってやって!」

魔女エルは、浮竹を追い出してくれるものだと信じていた。

「浮竹。君がよければ、こんな狭い家だけど、一緒に暮らそう」

「そんな・・・・京楽さん」

「どうしたんだい、エル。愛しているよ」

「うふふふ。京楽さんの愛は、私のものよ」

「本当にそうかな?」

浮竹は、血の魔法を使って、自分の指を切った。

にじみ出る鮮血に、ごくりと京楽が唾を飲みこむ。

「ああ、おいしそう・・・」

「ダメよ、京楽さん!あの人の血は猛毒なの!」

「そうなの?おいしそうなのに・・・・・・」

「私の!私の血を飲んで!処女の生き血よ!浮竹さんの血よりもずっとずっとおいしいはずだわ!」

魔女エルは、首を差し出す。

それに、京楽が噛みついて血をすする。

一口分も飲まない間に、京楽は牙をひきぬいた。

「どうしたの、京楽さん」

「まずい」

「え?」

「君の血がまずい。どうしてだい?君を愛しているなら、君の血は甘いはずだ」

不機嫌になる京楽の目の前に、ワイングラスが置かれた。

それに、浮竹が自分の手首をきって、滴り落ちる血を集めた。

「俺の血だ。飲んでみろ」

「浮竹の、血・・・・・」

ワイングラスを手にとり、魔女エルが止める間もなく、京楽は浮竹の血が入ったワイングラスの中身を飲み干した。

「甘い・・・甘すぎて、眩暈がする」

魔女エルは、絶望に顔を歪めた。

その日から、魔女エルに家には京楽の他に浮竹も住みつくことになった。

クスクスクス。

他愛ない会話をして、微笑み合う二人を、それでも京楽を手放すことができなくて、魔女エルは不思議な気持ち見つめていた。

「エルどうしたの。君を愛しているよ」

京楽はエルに愛を囁く。浮竹には愛を囁かない。

それでも、魔女エルといるより浮竹と一緒に過ごす時間のほうが、京楽には多かった。

「今日は一緒に寝よう」

「ええ、そうね!」

エルの寝室にやってきた京楽は、エルを求めた。

途中で違和感を感じた。

「やっぱり、勃たない・・・どうしてだろう。こんなにもエルを愛して、エルの子供が欲しいのに・・・・・・・」

「俺が相手してやろうか?」

ふと、眠っていたと思っていた浮竹が、寝室に入ってきた。

「浮竹!」

あられもない姿でいた京楽は、衣服を整えると、浮竹を抱きしめた。

「どうしてだろう。君を愛していないのに、体は君を求めている」

京楽のものは、浮竹を欲っして勃起していた。

「出てってちょうだい!さぁ、京楽さん、さっきの続きをしましょう?」

「うん、そうだね。おやすみ、浮竹」

「おやすみ、京楽」

浮竹はゲストルームに戻ってしまった。

硬く勃ちあがっていたものは、魔女エルの裸を見たとたん、萎えていた。

「あれ、どうして・・・僕は、浮竹に欲情しているのかな?」

「そ、そんなことないわ!いい加減、出ていってもらわないとね?」

魔女エルは、どうにかしてこの新居から邪魔者である浮竹を追放したがっていた。

「だめだよ!浮竹が出ていくなら、僕も出ていく」

「京楽さん・・・・・・」

もはや、薬の効果は薄れ始めていた。

刷り込み現象のように、エルに愛を囁くが、京楽の意識は浮竹に向かっていた。

「京楽さん、私と一緒に死んで?あの世で、永遠に一緒になりましょう?」

エルは包丁をもちだして、京楽の心臓を突き刺した。

次に自分の手首を切ろうとして、凄い殺気を感じてはっとなった。

「いやああ、私は!京楽さん、京楽さん」

「どけ、じゃまだ」

浮竹は、魔女エルを突き飛ばした。

魔神であっても、京楽はただのヴァンパイアロードだ。不老不死ではない。

心臓が再生されていくのを確認しながら、浮竹は念の為に傷口に自分の血を注ぎこみ、京楽を抱きしめた。

「ここまで愚かだったとは・・・・俺だけならいざ知らず、愛してるはずの京楽を傷つける。それがお前の愛し方か、魔女エル」

「違うの!違うのよ!!」

「もう、お前はいらない。死ね」

「いやあああああ!!京楽さんは私ものよ!私から奪わないでええええええ」

「ゴッドフェニックス!」

浮竹は、炎の不死鳥を呼び出すと、魔女エルを灰に変えてしまった。

「あれ・・・僕は何をしていたんだろう。浮竹?」

「京楽、お帰り」

浮竹は、涙を滲ませていた。

「なんだかよく分からいけど、ただいま」

こうやって、京楽はエルの死で惚れ薬の効果が切れて解放されて、浮竹の元に戻ってきた。

「本当に、お前という男は・・・・」

事情を聞いて、何度も謝る京楽に、浮竹はツーンを態度をとんがらせていた。

「そもそも、愛しい伴侶がいるのに、女なんかに近寄られて、変なものを飲まされるお前が悪い」

「だから、ごめんてば」

「ふん」

「今日の夜、たっぷり愛してあげるから」

耳元でそう囁かれて、真っ赤になる浮竹であった。


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「いいか、これはお仕置きだ。俺がいいっていうまで、これを外すなよ」

京楽のものは、根本が戒められていた。

「ああ・・・・十四郎。いかせてよ」

「だめだ。これはお仕置きなんだから」

騎乗位になって、浮竹は精液を弾けることができず、ずっと硬さを保ったままのそれを、自分の蕾にあてがい、ゆっくりと飲みこんでいく。

「あああ・・・・」

白い喉を見せ妖艶に笑う浮竹に、京楽はごくりと唾を飲みこんだ。

「んあっ」

下から僅かに突き上げられて、浮竹は声を漏らす。

「お仕置きなんだから・・・ひあっ」

ごりっと奥に入ってくるものに、浮竹が驚く。

根元を戒められているというのに、京楽は我慢しながらも浮竹を貪った。

「あああ!」

これでは、どっちがお仕置きをされているのか分からない。

「んああああ!」

ごりごりっと奥をすりあげられて、浮竹はせがんだ。

「春水、いっぱいだしてくれ」

「じゃあ、これとってもいいよね」

「仕方ない。とっていいぞ。ひあああああ!!」

浮竹の奥で、京楽はびゅるびゅると濃い精子を思い切り流し込んでいた。

いつもの2倍の時間をかけての射精に、浮竹もいっていた。

「あ、やあ、子種受けながらいっちゃううう」

「吸血もしてあげる」

肩に噛みつかれて、血をごくりと飲まれる。

その快感にも支配されて、お仕置きどころではなくなっていた。

「ああ、お仕置きが・・・ひあっ」

「我慢した後で出すのって、すごい快感。たまにはこういうのもいいね」

「ひああああ」

京楽は騎乗位から浮竹を押し倒して、ごりっと中を抉る。

その感覚に、浮竹はまたオーガズムでいっていた。

「ああああ!」

「ほら、十四郎、お仕置きは?」

「もう、やああっ」

「結局、僕がリードする羽目になるんだね」

薄く笑いながら、京楽は浮竹を突き上げる。

「やあああ」

「十四郎、かわいい」

「やあ、春水、お仕置き・・・」

浮竹は、自分の意思で京楽を締め上げる。

「んっ、そんなにされたら僕がもたなくなる」

浮竹の奥に精液を流し込む。

また締め付けられて、京楽は2回連続していっていた。

「確かに、お仕置き、だね。僕をこんな風にさせるなんて。十四郎、すごいね、君の中うねってしめつけてくる。熱いよ」

「あああん、春水、春水」

求められるままに口づける。

「んっ」

舌と舌が絡み合うキスを繰り返す。

もう、お仕置きとか関係なく、普通に交わっていた。

「んあああああ!!」

「くっ」

浮竹の最奥に精液を注ぎ込む。

浮竹はもう精を出し尽して、オーガズムでいくばかりであった。

「春水、愛してる。お前は?」

「僕も十四郎、君だけを愛しているよ」

「魔女エルにも愛を囁いていたくせに」

「あれは薬の効果だよ。僕が心から愛しているのは、十四郎、君だけだ」

お互いを抱しめあいながら、口づけを交わしていた。

「もう、惚れ薬なんて飲まされたりするなよ」

「そういう君も、記憶をいじられたりして、元血族にさらわれたりしないようにね」


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「そうか。魔女エルは滅んだか。もともと、うまくいくとは思っていなかった」

藍染は、城でワインを飲んでいた。

「魔女の里にいた魔族は、浮竹と京楽により滅ぼされました。どうなさいますか」

「放っておけ」

「はっ」

そう言って、部下は下がっていった。

「あなた」

「女神オリガか」

「言われた通り、攫ってきたわ」

「この子が、浮竹と京楽の友人か。まだ子供だが、守護騎士ということは、それなりに力があるんだろう。次回はこの子にいってもらおうか」

女神オリガが、血の帝国から攫ってきたのは、ルキアの守護騎士である日番谷冬獅郎であった。

冬獅郎は藍染の血を与えられて、狂暴化するのだった。




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始祖なる者、ヴァンパイアマスター56

魔族が守る。そういって、魔女の里に兵士を派遣していたのは藍染だった。

藍染の手中にあった魔女の里では、魔女狩りが行われていた。

老若問わず、高い魔力のものほど捕まえられていく。

魔女は錬金術士を嗜むものだ。多い魔力もちの者は、はっきり言って数が少ない。

それで、40人ばかり捕らえられて、魔国アルカンシェルの隣にある、現在藍染が住んでいるイデア王国に、魔女たちは連行された。

「君たちには、1人の魔女になってもらう」

藍染の言葉に、魔女たちの間に動揺が走る。

「藍染様、こんなこと聞いていません」

「藍染様、私たちを守ってくださるのではなかったのでですか」

「死神のキララ。後は君に任せたよ」

死神のキララは、半身を京楽に食われたが、女神アルテナの手によって魂と体を分けられて、今いるキララは魂を食われたキララの半分であった。

「はい、藍染様・・・・」

モレ草でトイレに閉じこもり、漏らしていた時は吹き出しだが、実際の藍染は冷酷だ。キララが命令に従わらないなら、どんな手でも使うだろう。

父である死神ナウセルは助けにきてくれない。

母である女神オリガは壊れている。

キララは、まだ保護者を必要とする年齢だった。藍染が、親代わりだった。

それは不幸でしかなかった。

キララは、連れてこられた魔女の肉体から魂を、新しく与えられたカーナの鎌で狩っていく。

魂が40人分抽出された。

肉体は、いらないからと、城の外に捨てられた。

40人分の魔女の魂は、は藍染の手により、難解な魔法をかけられて、1つの魂となった。

禁呪であった。魂に複合体を作る魔法であった。

「40人分の魔力を凝縮した魂だ。邪神である私には及ばないが、それなりの魔力を有しているだろう。さぁ、新生魔女の登場だ」

一番若い、アキラという名前の魔女に、その魂は宿った。

「許さない・・・殺す・・・・・」

魔女たちの無念が宿った魂は、藍染ではなく標的を浮竹と京楽にしていた。

魔女アキラの中で、自分たちをこうしたのは浮竹と京楽ということになっていた。

「殺す・・・浮竹、京楽」

魔女アキラは、ホウキに乗って、古城目指して飛び立っていく。

「少しは面白いことになりそうだ」

くつくつと笑う藍染めを、死神キララは不安な気持ちで見つめるのだった。

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「魔女乱菊さんに助けを求めたら、ここが一番力になってくれるって聞きました!お願いです、同胞たちを助けてください!」

浮竹と京楽に助けを求めにやってきたのは、魔女エル。

年若い15歳くらいの魔女で、とてもかわいかった。

「どういうことだ?」

「藍染の手の者に、40人の魔女が連れて行かれました。皆強い魔力もちの魔女ばかりです」

「魔女の里を、藍染が手中に収めたのは知っている。魔女が40人連れていかれといっても、こっちには関係のないことだ」

「そんな!」

「まぁ、エルちゃんだっけ。僕が詳しい話をきくよ」

浮竹はすることがあると、錬金術の館に閉じこもってしまった。

「藍染が、魔女の複合体の魂を作るために40人の魔女を・・・ねぇ、その魔女たちの肉体は灰にされたの?」

「いいえ、古城の外にまとめて穴をあけてそこに捨てられました」

「なら、なんとかなるかもしれない」

「本当ですか!」

「浮竹の力次第だけど」

「あんな白状な方はあてになりません。京楽さん、助けてください」

エルは、泣いて京楽に縋りついた。

「エルちゃん」

「助けてくれるなら、私、なんでもします!」

京楽に抱き着いて、エルは京楽に口づけていた。

そのシーンを、戻ってきた浮竹に見られた。

「浮竹、これは違うんだよ!エルちゃんから勝手にしてきたことで」

浮竹は、顔を顰めて京楽の頬をぶった。

「この浮気者が!」

いつもなら、ハリセンで頭をはたかれているところなのだが、今回は違った。

「魔女の里にいくぞ」

「あ、はい!」

「待ってよ、浮竹、誤解だってば」

「ふん。その件は後回しだ」

浮竹と京楽と魔女のエルは、閉鎖的な魔女の里に来ていた。

藍染の手下の者たちを皆殺しにした。

殺したのは、京楽だった。

魔神の咢でその魂を喰らい、残った体を浮竹が燃やして灰にした。

魔女の里の住人は、魔族の圧政から救われたと、浮竹と京楽に礼を言った。

「アキラという魔女はどこにいる?」

「魔女アキラは・・・あの魔女狩りで捕まって、唯一戻ってきた魔女です。でも、どこか変なんです。ただの錬金術が得意だった魔女なのに、魔力が高すぎて・・・・」

魔女アキラは、魔女の里に帰ってきていた。

まずは、魔族を滅ぼすためにきていたのだが、魔族は強い。隙を狙うつもりが、浮竹と京楽に先を越されてしまった。

「あたしは魔女アキラ。魔女40人の魂の複合体。こんな魂にされたのは、浮竹、京楽、あなたたちのせいよ!」

魔女アキラは、魔女エルや他の魔女の言うこと聞かずに、呪文を唱え出した。

「エターナルフェニックス!」

リュウウウウウン。

不死鳥は、鳴いて浮竹と京楽に襲い掛かった。

シールドを張ったが、それでも身を焼く温度に耐え切れず、浮竹が氷の魔法を放つ。

「ゴッドフェンリル!」

氷の魔狼は、炎の不死鳥を消していく。

「あたしのほうが魔力で押されている!?ばかな、あたしは魔女40人分の魔力をもっているのよ!!」

「魔女一人一人の魔力の保有量には限界がある。それに、仮に魔女40人分の魔力を複合体としてもったとしても、たった1つの魔女の魂で操れるわけがない」

魔女アキラのもつ魔力は、確かに高かった。魔神や邪神を名乗れるほどに。

けれど無理やり40人分の魔力を凝縮したせいで、歪な力になっていた。

「ああああ!魂が、壊れる!浮竹、京楽、せめて道連れにしてやる・・ゴッドフェニックス・カイザーフェニクス・エターナルフェニックス・・・トリプルファイアフェニックス!!」

炎の禁呪は、魔女の里に火柱をあげて、不死鳥の姿をして浮竹と京楽を燃やし尽くそうとした。

「浮竹さん、京楽さん!」

魔女エルは、二人の心配をしたが、火が魔女の里にもうつって、魔法で雨を降らしたりして消火活動に回った。

「うふふふ。私が新たに手に入れた禁呪。神にしか使えない禁呪よ!あたしの勝ちね!」

燃え盛る業火の中で、蠢く影が2つ。

浮竹と京楽であった。

「な、トリプルファイアフェニックスを受けて生きてるですって!?」

浮竹と京楽は、それぞれ魔力を吸収する闇魔法、ブラックホールを作り出していた。

「神が使う魔法?俺の得意魔法なんだが」

浮竹は、血の魔法を操り、魔女アキラの胸をさした。

「ああ、駄目だよ殺しちゃ」

「分かっている。魔法を使えなくするためだ。ちゃんと、臓器とかは避けた」

「がはっ・・くそ、40人分の魔女の魔力の禁呪よ!いくらブラックホールの魔法があるといえ、吸い尽くせる量じゃないわ!」

「複数設置したとしたら?」

見れば、ブラックホールの魔法は5つあった。

「そんな・・・闇魔法の禁呪でしょう!?それを同時に5つなんて、人間業じゃないわ!」

「その通り。僕らは、ヴァンパイアだ」

「そうだな。俺はヴァンパイアマスターで、京楽はヴァンパイアロードだ」

「ええい、何処までも忌々しい・・・・・」

魔女アキラは、更に魔法を使おうとして、胸の傷を再生するのが先だと体が勝手に反応して、回復系の魔法を唱え出した。

「ゴッドヒール。あはは、これでまたやり直し・・・・」

京楽が、魔神の咢で魔女アキラの魂を奪っていた。

ドサリ。

音を立てて、魔女アキラは倒れた。魔女エルが駆け寄るも、意識はなく心臓がが止まっていた。

「京楽さん、助けてくれるのではなかったのですか!」

「まぁ、ちょっと待ってよ。今、浮竹がなんとかしてくれるから」

浮竹は、血で魔法陣を作り、瞑想していた。

「ラム・アラム・エスタ・ドルキューリ。エドム・エスタ・ドルキューリ。哀れなる魂たちよ、元に肉体へ戻れ!エターナルエリクシール!!」

それは、複合体にされた魂を元に戻す魔法だった。これもまだ禁呪の一つだ。

「ぎゃああああああああ!!!」

魔女アキラが飛び起きる。

「あ、あれ!?元に戻ってる。魔神に喰われたはずなのに!」

魔女のエルは、泣いて魔女アキラを抱きしめた。

「よかった、元に戻ったのね!他の魂たちは!?」

「元の肉体に戻ったはずだ。まだ死んでからそう時間は経っていない。魂さえ戻れば、生き返るだろう」

魔女エルは浮竹の言葉に涙を流して、京楽に抱き着いた。

「京楽さん、ありがとうございます!」

「お礼なら、僕じゃなくて浮竹に言ってよ」

「いいえ、京楽さんが助けてくれると言い出したので、浮竹さんは動いたのでしょう?全ては京楽さんのお陰です!」

京楽も、若い女の子にそうやって抱きしめられて、満更でもなさそうな顔をしていた。

「京楽、お前は・・・・・・」

そこで、浮竹は言葉を区切った。

やはり、血族である京楽は女の伴侶のほうがいいのではいだろうかという不安が、大きな波となって浮竹を襲った。

やがて、夜になり、魔女の里ではホウキで帰還してきた、攫われた魔女たちが戻ってきたことで、大賑わいになっていた。

「全ては、浮竹様と京楽様のお陰です。今宵は、どうぞ魔女の里にお泊りください。精一杯のおもてなしをさせてもらいます」

魔女の里の族長は、そう礼を述べて浮竹と京楽を歓迎してくれた。

魔女の里の一軒の家に泊まるように言われて、そこへ行く。

途中で魔女のエルと会った。

立ち話もなんだからと、案内された家に入る。ベッドが2つと、シンプルな家具とバストイレつきの、簡素な家だったが、掃除は綺麗に行き届いていた。

浮竹ばベッドに腰かける。

魔女のエルは、京楽に抱き着いた。

「あたし、京楽さんが大好きです!」

「僕はね、浮竹のことだけが好きだから。浮竹が僕の伴侶なんだよ」

「それでも諦めません!!」

魔女エルは、京楽に抱き着いて離れなかった。

それを無理に引き離そうとしない京楽に、浮竹の心が不安に揺れる。

女性のほうが好きなのか・・・・。

魔女エルは、涙を零しながら浮竹を指さす。

「絶対に、あなたには負けません!男性の伴侶は普通女性です!あなたは男性だ!」

「京楽、お前もやっぱり伴侶は女性のほうが・・・・・・」

心に罅を入れる浮竹は、エルの言葉に余計に罅が広がっていた。

「何言ってるんだい、浮竹!」

「ちょっと、夜風に当たってくる・・・」

「ちょっと、浮竹!話を聞いて!」

浮竹の手を握ろうとしたら、思わぬ力で払われた。

「離せ!」

浮竹は涙を滲ませて、家の外に走り去ってしまった。

「京楽さん、やっぱり伴侶は女性のほうがいいでしょ?私は15歳で若いし、あなたの血族になれと言われたら、喜んで血を飲み干します」

「黙ってくれないか」

「え?」

「黙れといっている!」

「ひっ」

京楽は怒っていた。今まで感じてきた中で、感情が狂うほどの怒りだった。

自分が傷つけた。

浮竹の心を、傷つけてしまった。

京楽は魔力探知の魔法を使って、浮竹がいる魔女の里の外れの小川にきていた。

季節なのか、蛍が飛んでいた。

美しい蛍に照らされた浮竹もまた、美しかった。

元から浮竹は美しい。そこに蛍の幻想的な美しさが加わって、言葉にできないでいた。

浮竹は、泣いていた。目を真っ赤にしていた。

「浮竹」

「来るな!俺を見るな!」

「浮竹、僕は君の血族だ。君の伴侶で、君の永遠の恋人だ。僕は女性なんてどうでもいいし、浮竹がいてくれたらそれだけでいい。あんな乳臭い小娘に、用はないよ」

「じゃあ、なんで抱きついてくる腕を振り払わない」

「それは、あの子を傷つけると思ったから。浮竹が傷つくくらいなら、あの子の魂を食ったっていい」

浮竹は、それを信じられない顔で見ていた。

「俺のために、罪のない人間の魂をを食うと?」

「それで君の心の傷が癒えるなら」

浮竹は涙を拭い去り、京楽に抱き着いた。

「お前は俺のものだ。他の誰にも渡さない。俺だけを見ていろ」

「うん」

与えられた魔女の家に戻ると、目を真っ赤にした魔女のエルが待っていた。

「京楽さん!」

「近づかないでくれるかな。君は間接的ではあるが、浮竹を悲しませた。そんな存在を僕が許すとでも?これ以上僕らの仲に入ってくるなら、その魂、喰うよ?」

「あああ・・・・・」

魔女エルは、絶望に顔を歪めて走り去ってしまった。

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「君は、僕のものだよ」

「んっ」

たくさんのキスマークを刻まれる。

「あっ」

「君は、僕なしでは生きていけない体にしてあげる」

浮竹のものをなめあげて、指でしごくと、浮竹は簡単に精液を零していた。

「んあっ」

京楽と、深く口づけしあう。

「んんっ・・・はぁっ」

舌を引き抜かれると、銀の糸が垂れた。

京楽は、浮竹の薄い胸を何度もさわり、胸の先端をひっかく。

「んっ」

その刺激だけでまた硬くなってきた浮竹のものを見て、耳元ので囁いた。

「ほら、君の体は素直だ。僕なしじゃあ、生きられないね?」

「あ、春水・・・・・」

やや不安そうな顔で、京楽を見上げる。

「十四郎。僕には君だけだ。愛しているよ」

「んんっ」

「こんな時のために、アイテムポケットにローション入れておいて助かったよ」

「おいばか、外でも盛るつもりだったのか」

「実際、今古城の外じゃない。それとも、止める?」

胎の奥が疼いて、浮竹は素直に京楽を求めた。

「お前が欲しい。きてくれ。お前なしの体では、生きられないようにしてくれ」

京楽は、ローションを人肌の温度になじませると、浮竹の蕾にぬっていく。指をいれると、熱かった。

「君のここ、もうトロトロだね。そんなに僕が欲しいの?」

「ああ、欲しい・・・・・」

「いい子だね。僕の子種なしじゃあ、生きていけにようにしてあげる」

「あああああ!!」

京楽は、浮竹を貫く。

すぐに奥を衝かれて、その衝撃で目がちかちかした。

「んあああ!」

浮竹が精を放つのと、京楽が浮竹の胎の奥に精を注ぐのが同時だった。

「あああ・・・・・・・」

ずちゅずちゅっと、音を立てて、京楽のものが出入りする。

「んあっ」

京楽は浮竹を突き上げて奥をごりごりすりあげながら、浮竹の首筋に噛みついて、吸血していた。

「ああああ!」

オーガズムでいきながら、吸血される快感にも飲まれていく。

「ああ・・・あああ・・もう、お前なしじゃあ、生きられない・・・」

「それなら安心だよ」

京楽は、浮竹の結腸の中にまで侵入した。

「ひああああ!!深すぎる!」

「奥に、子種注いであげるからね?」

「あああああ・・・・」

京楽は、ごりっと最奥をけずりあげながら、精液を放っていた。

「んああああ」

浮竹は、京楽に噛みついて、血をすすりながらオーガズムでいくのであった。


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次の日、魔女アキラも目覚めた。魂の複合体を宿していた時の記憶はないようだった。

魔女エルの姿は見えなかった。たくさんの魔女にお礼をいわれ、金銭や珍しい魔道具、魔法書などをもらって、浮竹は上機嫌にそれらをアイテムポケットに入れていく。

「じゃあ、俺たちは行く。また魔族がくるような時があれば、式を送ってくれ。守ってやろう」

始祖ヴァンパイアに守るといわれて、その色香に惑わされた魔女たちが、ばたばたを気を失っていく。

「浮竹、何かしたの?」

「お前に悪い虫がつかないように、俺自身に京楽に興味を持つ者をチャーム(魅了)する魔法をかけた」

「ええ、じゃあ僕のライバルが増えてしまうよ!今すぐ解いて!」

「分かった。解呪」

魔女たちに一晩のお礼を言って、浮竹と京楽は古城に戻っていった。

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数日が経ったある日、京楽に重要な話があると呼び出された。

「君に渡したいものがあるんだ」

京楽は、改まって浮竹に向き直った。

「なんだ?」

「ペアリング。君と僕の愛が永遠だって証」

プラチナにピジョンブラッドのスタールビーがあしらわれた、指輪を見せられる。

「石の言葉は「絆を深める」。僕と君の絆は永遠だよ。ヴァンパイアだから、真紅の瞳をイメージしたら、この石に辿り着いたんだ」

「これは・・・・」

浮竹の目に、じんわりと涙が浮かんだ。

血の帝国には結婚式の概念がない。結婚指輪もペアリングも、普通つけない。

長い間外の世界にいた浮竹にとって、ペアリングをもらうということは、正式なプロポーズであった。

「お前が、つけてくれ」

左手を差し出すと、京楽は指輪を薬指にはめた。

同じデザインの指輪を、今度は京楽の左手の薬指にはめる。

「僕たちの愛は永遠だよ」

「ああ、永遠だ」

浮竹と京楽は口づける。

今この瞬間が永遠であればいいのにと、二人は思った。


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「そうか。魔女の複合体は解呪されたか。あの魔法には解呪の魔法があるからな。あんな古代の禁呪の解呪をしっているとは、流石は始祖ヴァンパイア。無駄に8千年を生きていないということか」

壊れた女神オリガは、赤子を抱いて揺らしていた。

藍染との間にできた子供だった。

「藍染様に、お目通りをしたいという魔女の小娘がいます。いかがいたしましょう」

「面白い。通せ」

「藍染様・・・私、始祖の浮竹が憎いんです。京楽さんを愛しています!京楽さんを手に入れられる方法をください」

「王に無礼だぞ、小娘」

「いや、いい。名前は?」

「エル・トゥ・バジエル」

少女は、京楽に拒絶された魔女のエルだった。

「いいだろう。君に、一目ぼれの幻の薬をあげよう」

「え、そんなものがあるんですか!?」

「魔女の里で作られるよう薬は、一時的なものだろう。この薬の効果は永遠だ」

ちゃぷんと、コバルトブルーに輝く液体の入った小瓶を、藍染は魔女のエルに渡した。

「うふふふ。これで、京楽さんは私のもの・・・・・」

「よかったんですか、藍染様。あれは、女神の秘薬」

「使い道もなかった。京楽があの薬を飲んで、魔女のエルとやらに夢中になれば、主の浮竹は壊れるだろう。それもまた一驚だ」

魔女エルは、京楽に最後の別れにするからと、秘薬入りの最高級ワインを飲ませた。

「エル・・・君を愛している。君が大好きだ」

隣にいた京楽が突然そんなことを言いだすので、浮竹は慌てた。

「京楽!!!」

「うふふふ、京楽さんは私のものよ!」

魔女エルは、ホウキに乗り、京楽を乗せて飛び立っていく。

「俺から京楽を奪う?馬鹿なことを・・・・その代償、命で償ってもらおうか」

浮竹は絶望していなかった。

残酷に微笑みながら、どうやって調理してやろうかと、考えるのだった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター55

メイドの少女には、女神アルテナが宿っていた。

藍染はその少女に毒を盛られた。普通の毒なら不老不死である始祖には効かないが、モレ草という強烈な下剤効果のある薬だった。

モレ草だけに、本当にもれそうで、藍染は黄金の便器に座り続けた。

玉座に戻ろうとすると、もれた。

なので、ずっと黄金の便器に座っていた。

寝る時も黄金の便器の上だった。食事と風呂は自室でとるが、いつでてもいいようにおまるを用意していた。

恐るべしモレ草と、藍染の手の者や女神オリガは、藍染を心配した。

1週間が過ぎて、やっとモレ草の効果がなくなり、かなりやつれた藍染は、モレ草をメイドに少女に盛った。

やられたらやり返せ。

メイドの少女に女神アルテナが宿っているのを知っての行動だった。

少女はモレ草の強烈な効果で、命を落とした。

女神アルテナの魂は彷徨う。

今度は、近衛騎士に憑依して、また藍染の料理にモレ草を盛った。

藍染は何か分からない宇宙語をしゃべりながら、黄金の便器の住人となった。

城の間では、モレ藍染とあだ名がついていた。

「モレ藍染様・・・・じゃなかった、藍染様」

「今、モレといったな?」

「いえ、気のせいであります!」

「禁固1カ月の刑だ」

「そんな、あんまりだー。このモレモレ藍染め!」

「禁固2か月だ!」

そう言い争っている間にも、腹がぐるるるるとなって、藍染は漏らしていた。

「着替えの下着と服をもってこい!」

急いで風呂場で体を洗い、けれど風呂場でも漏らした。

「くおおお、モレ草め!ああああもれそうだあああ!!」

こうやって、藍染が地獄の苦しみを味わっている間、女神アルテナは人の体を彷徨いながら、遠く魔女の里まできていた。

そこで、凍結封印されていた始祖の魔女、ローデン・ファルストルと邂逅する。

浮竹が生きている限り解けないはずの封印は、女神アルテナの魂によって溶け始めた。

魂は、やがて融合した。

「きゃはははは!あたしは>ローデン・ファルストルであり、女神アルテナよ」

魔女の里が騒がしくなる。

始祖魔女であり、女神アルテナであるローゼンは逃げた。

そして竜帝の子シアンと巡り合う。

二人は、螺旋にからみあいながら、始祖浮竹と神喰らいの魔神京楽を討ち取るべく、動き始めるのだった。


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「藍染がイデア王国を落としたそうだ」

真剣な表情で、浮竹は悩んでいた。

魔国アルカンシェルに放った、血の帝国の工作員の話では、魔国アルカンシェルの隣にあるイデア王国の王族を皆殺しにして、王位を簒奪したらしい。

国民は藍染に支配されていた。

歯向かう貴族や大臣たちを処刑して、残った貴族や家臣の者たちは、藍染に服従を誓った。

「実質、2つの国をもっていることになるねぇ」

「工作員が、この薬を盛った者がいると、薬の見本をもってきたんだが・・・・・」

「うわ、それモレ草の薬じゃない。飲んだが最後、1週間はトイレにこもって過ごすことになるよ」

「モレそうだけにモレ草か・・・・・」

冗談を言ったつもりだった。

「そうだよ。モレそうだから、モレ草って名前がついたんだ。妊婦とかが服用すると、流産するくらいに効果があるから気をつけてね」

「この薬を、藍染は連続して2回も盛られたんだそうだ」

「いい気味だね」

「全くだ」

二人は笑った。

イデア王国では、藍染は黄金の便器の上に座って、次の波が来るのを待っていた。

「あ、きたきた~~~」

ピーゴロゴロゴロ。

ブリリリリリ。

「あーすっきりした。ああ、でもまたもれそうだ。くそ、モレ草だと!?私をばかにして、あの始祖と血族も、今頃このことを聞いて笑っているんだろう!絶対にゆるさん!」

立ち上がったとろこで、次の波が襲ってきて、藍染は黄金の便器の上に座り直した。

「何々・・・・イデア王国の便器は純金でできてる・・・見た目は派手だが、黄金の便器で用をすませるとなると、笑ってしまいそうだ」

「今頃、ピーゴロゴロとかいって、うなってるんじゃないの?」

その通り、藍染は黄金の便器の上でピーゴロゴロになり、唸っていた。

「まぁ、藍染のことは放置で。今日は何をしよう?」

もはや暇人でしかない京楽と浮竹は、その日することもないで、午後は仮眠をとることにした。最近は深夜までS級ダンジョンにこもったりしていたので、睡眠のリズムが不規則になっていた。

「ホウホウ」

「ん?・・・冒険者ギルドからの式か」

昼なのに、梟が窓を開けると入ってきた。

梟の足には手紙が添えられてあった。

「何々・・・火急、依頼内容ができた。できれば今日中に、冒険者ギルドにきてほしい。ギルドマスターより。おい、京楽」

「うふふふ、十四郎のエッチ。そんなことしたら・・・・」

「変な夢を見るな!」

浮竹は、アイテムポケットから取り出したハリセンで、思い切り京楽の顔を殴った。

「うひゃあああ!!!」

変な叫び声をあげて、京楽が飛び起きる。

「なんの夢を見ていたんだ。冒険者ギルドからの呼び出しだ。至急に依頼したい内容があるらしい」

「いや、僕と浮竹がムフフフする夢を見てたよ」

浮竹は、ハリセンで京楽の頭を殴った。

「冒険者ギルドに行くぞ」

「せっかくいい夢を見てたのに・・・・・」

「その夢なら、今晩にでも俺が叶えてやる」

京楽の肩に噛みついて、吸血した。

「浮竹・・・」

つい体を抱きしめそうになったが、浮竹はそれをかわして、ギルドにいくために服を着替えた。

なるべく目立たない黒い服を着て、フードを被った。

「京楽も行く準備をしろ」

「はーい」

京楽も地味目な衣服に着替えて、黒いマントを羽織り、フードで顔を隠した。

最近、S級ダンジョンを踏破しすぎて、有名になりすぎていた。

浮竹が錬金術士であるこということもばれているし、ギルドマスターに至っては、浮竹が始祖ヴァンパイアであり、京楽もまたその血族のヴァンパイアであることがばれていた。

認識阻害の魔法はかけてあるが、鑑定スキルもちには素性はばれてしまう。

エルフとハーフエルフとして冒険者登録しているのも偽の情報になるので、最悪Sランクハンター試験をやり直す必要があった。

冒険者ギルドにやってくると、疫病で閑散としていた時とは大違いで賑わっていた。

「ああ、浮竹と京楽か。2階にきてくれ」

そのままギルドマスターに2階に通されて、依頼内容を聞く。

「北の崖のトエイに、ドラゴンが出没する。始祖の魔女と一緒に。旅人を殺して荷を奪い、襲われたくなければ浮竹と京楽を連れてこいと言ってる」

「ドラゴン・・・竜帝か?」

「そうだ。竜帝の証である燃える炎の鱗をもっていた。始祖魔女のほうは、よくわからんが自分は始祖魔女のローデン・ファルストルで同時に女神アルテナだと言っていた」

「女神アルテナ・・・よりにもよって、封印していた始祖魔女の体を手に入れたのか」

「報酬金は大金貨2百万枚。頼まれてくれるか?」

報酬の金額としては破格だった。

それくらい積まねば、このSランク冒険者を動かせないとギルドマスターは思っていた。

実際は、情報だけで討伐にいくのだが。

報酬金は前払いだった。

白金貨20枚にしてもらい、それをアイテムポケットの中に放り込む。

「依頼は必ず達成する。それまで、トエイの崖には誰も近づけさせないでくれ。王都までの道の中にあるが、迂回するように徹底してくれ」

「分かった。そのように取り計らっておく」

ずっと黙っていた京楽が、二人きりになって口を開く。

「竜帝の証の燃え盛る鱗をもっていたってことは、この前仕留めそこねたシアンとかいう、恋次クンの子だね」

「ああ。始祖魔女は5年ほど前に封印した、ローデン・ファルストルで間違いないだろう。どうやって氷の封印を解いたかは分からないが、ローデンと名乗り、同時に女神アルテナと名乗っているということは、きっと魂が融合したんだ」

「女神の魂・・・あれはうまい」

魔神としての顔を見せる京楽に、浮竹が呆れかえる。

「あの女神アルテナだぞ。よくうまそうなんて言えるな」

「だって僕は、魂を食らう魔神だし。今まで口にしてきた魂の中で一番おいしかたのは、女神だね。食べられるなら、今からわくわくするよ」

「食当たりを起こすなよ」

「分かっているよ、大丈夫さ」

二人は、戦闘の準備を整えて、トエイの崖にきた。

トエイの崖は、王都エザリエに通じる道があるので、商人などがよく行き来していた。そこを占領している、竜帝と始祖魔女の名を、浮竹は呼んだ。

「賊の竜帝の息子シアン、大罪人の始祖魔女ローデン。連れてこいと言われてやった通り、こっちからきてやったぞ」

「キャハハハ!ほんとに来るなんて、命知らずなバカねぇ!」

「俺のドラゴンブレスを食らえ!」

始祖魔女の攻撃も、ドラゴンブレスも、京楽が放った闇の魔法ブラックホールに吸い込まれた。

ブラックホールの口を閉じる。魔力をもっていかれたが、小規模のブラックホールだったので、思ったほどの魔力を失わずに済んだ。

「ばかなのか君たちのほうでしょ。僕と浮竹を敵に回して、生きて帰れるとは思わないでね?あとローデンだっけ。すごくいい匂いのする魂だ・・・やっぱり、女神アルテナの魂と融合してるんだね」

舐めるような視線で見られて、ローデンは身震いした。

「ソニックブレード!」

真空のカマイタチを、ローデンは放つ。それは大規模な魔法で、仲間であるはずのシアンも巻き込み、トエイの崖も崩れ落ち、森の木々が倒れていく。

「浮竹!」

カマイタチにやられて、浮竹は両手と両足に深い傷を負っていた。

「大丈夫だ、それより気をつけろ。あの女神アルテナ、もとい始祖魔女、かなりの魔力だ」

「俺を忘れるなああ!!!ハウリングボイス!」

キィィィンと、耳が嫌な音で塞がれる。

「ゴッドフェニックス!」

浮竹は、傷を再生させながら、魔法を放つ。

その不死鳥は、ローデンの魔法で相殺されてしまった。

「ローデン、俺の邪魔をするな!」

「キャハハハハ!この敵はあたしものよ!始祖浮竹ぇ、血族の京楽ぅ、あたしのカマイタチでばらばらにしてあげる。ソニックブレード!」

「エアリアルエッジ!!」

浮竹の作り出した真空の刃が、ソニックブレードを吹き飛ばす。

「な、なにぃ!?あたしのカマイタチを!ええい、ワールドエンド!!」

闇の終末の魔法を、浮竹が上書きする。

「ワールドエンド!ブラックホール!」

ワールドエンドは全てを無に還す魔法なので、上書きした後にブラックホールに飲みこませた。

ブラックホールは、ローゼンの魔力も吸い上げていく。

「アシッドブレス!!」

「サンダーボルテックス!」

「ファイアブレス!」

「ウォーターレイン!」

隣では、京楽とシアンが魔法とドラゴンブレスの戦いを始めていた。

「こっちもいくか。閉じろ、ブラックホール!」

ブラックホールを閉じたことで、ごっそりと魔力をもっていかれたが、魔力は十分にあるので、浮竹は気にしない。

「相手チェンジだ。女神の魂を、喰らいたいんだろう?」

「え、いいの?」

「くれてやる。とかげの相手は俺だ」

「誰がとかげだと!俺は竜帝!始祖のドラゴンだ」

浮竹は笑った。

「始祖のドラゴンは別にいる。お前よりももっと強い」

「ふざけるああああああ!!俺はドラゴンの中の最強種だ!カイザーブレス!!!」

火、風、土、水、闇、光、雷、氷。

全ての属性を重ねあわせた、最強のブレス攻撃だった。

「ゴッドシールド×5」

それを、浮竹は5重に重ねたシールドしのいだ。

シールドの外の空間は、何も可も吹き飛んでいた。

「俺の、最強のブレスが・・・・・・・」

「エアリアルエッジ!」

失意の底にいるシアンの首を、真空の刃で斬り裂いて首を落とした。

でも、シアンはまだ生きていた。

首だけになった状態で、カイザーブレスを吐きだした。

さっきより威力大きく、ゴッドシールドをとっさのことで3枚はったが、貫かれてしまった。

「ぐ・・・・・」

胸に、巨大な穴があいた。

「浮竹!」

「いいから、お前はそっちをやれ!俺はこいつを叩く」

「ふん、そんな大けがで大きいことほざいても」

「セイントヒール」

浮竹は、苦手な聖属性の魔法で瞬く間に怪我を癒してしまった。

「何だと・・・・回復魔法だと!?闇の眷属のヴァンパイアが、聖属性の魔法だと!?」

「首だけの分際で、ごちゃごちゃうるさい。死ね。ワールドエンド」

「うわああああ!!!」

全てを無に還す魔法に飲みこまれて、竜帝を名乗るシアンは吹き飛んでいく。

「あ、魂!」

京楽が、さっと現れて、魔神の咢でシアンの魂を噛み砕いた。

「ぎゃああああああああああああ」

魂の悲鳴が、響き渡る。

「次は、君だよ?浮竹に最初に怪我をさせたのも、君だしねぇ?」

ニタリと、不気味に京楽は微笑んだ。

「あたしの魂なんて、食べてもおいしくないんだからね!」

「カラミティファイアトルネード」

「きゃあああああああ!!」

災害クラスの炎の竜巻に、浮竹はシールドを張った。

「俺を巻き込むな、バカ!」

「ごめんごめん」

その炎は、ローデンを焼いていく。

「いやあああ、せっかく手にいれた、新しい肉体があああ!!!」

じわりと、女神アルテナの魂が滲みだして、肉体からの分離をしようとしていた。

「そうはいかないよ。いただきます」

魔神の咢が開かれる。

「いやああああああ!魔神に食われたら、終わってしまう!いやよ、いやよおお!!!」

ばりっ、ごりっ、ガリガリッ。

音をたてて、魔神の咢はローデンの魂ごと、女神アルテナの魂を噛み砕いた。

「うん、すごくおいしい。女神の魂って、いいね」

ニタァと笑って、京楽満足気だった。

「その体は灰にしろ」

「うん。それより、さっきの大けがは大丈夫?」

「ああ、魔法で癒した。お前にしては上出来だ。俺が怪我をしても、自我を失わなかった」

「その分、ご褒美くれるんでしょう?」

「仕方ない・・・・・」

浮竹は、夜の誘いに乗った。

「ファイオブファイア!」

京楽は、魂を失い、ただの肉塊になったローデンの体を灰にした。

「終わったね」

「血が足りない。お前の血を、今すぐ吸わせろ」

「やだ、積極的」

「ばか」

京楽の首筋に噛みつき、じゅるじゅると血を啜り、満足して浮竹は京楽から離れた。

「続きは、古城の夜で」


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「んっ」

何度もディープキスを受けて、浮竹は身をくねらせた。

胸の先端を舐めたり、噛みつかれたり、引っかかれたり、つまみあげられたり。

耳を甘噛みしてきたり、舐められたり、息をふきかけられたり。

弱いところばかりを攻められて、浮竹のものは硬くなっていた。

「さわってもいないのに、トロトロだね?感じてる?」

「あ、やっ」

自分のものに指をはわされて、浮竹は触られただけで精を弾けさせていた。

「ああああっ」

「早いね」

「ここ最近、お前と睦み合っていなかったから・・・・たまってる。胎いっぱいに、京楽のもの、ちょうだい」

情欲に濡れた瞳で見つめられて、それだけで京楽はいってしまいそうになって、慌てた。

「本当に、君はサキュバスかインキュバスのようだね」

「早く、こい。胎を満たしてくれ」

さぁと手を広げられて、京楽はローションを手に、蕾を性急に解して、自身にもぬりこんで、浮竹を引き裂いた。

「あああああ!!!」

「んっ、浮竹、そんなに締め付けないで」

「やああああああああ!!」

奥をすりあげてくる衝撃に、浮竹はオーガズムでいっていた。

「ああああ!」

奥をごりごりされて、それが好きで浮竹はせがむ。

「もっと、奥ごりごりってして?お前の子種で、俺の胎を満たして?」

「君って子は・・・でも、これは僕へのご褒美だから、遠慮しなくてもいいよね?」

スタミナポーションを、途中で京楽は口にした。

「ああ、ずるい、お前だけ・・・・・・」

「ふふふ。抱きつぶしてあげる」

「んああああ!!」

奥をごりごりされて、浮竹の胎はきゅんきゅんとなっていた。

「あ、もっと奥にいっぱいちょうだい!!」

乱れる浮竹を犯しながら、京楽は求められるままに浮竹の胎の奥に子種を注いだ。

「あ、もっと、もっと!」

せがんでくる浮竹を黙らせるために、唇を奪う。

そのまま、舌に噛みついてやった。

「はあぁぁん、んんんあああ」

吸血による快楽にも見舞われて、浮竹は突き上げてくる京楽の動きに精液を自分の腹に放ちながら、いっていた。

「んんんん!!!」

あふれ出した血液が、ベッドにまで滴り落ちる。

浮竹は、わざと再生を遅らせていた。

「君の血が・・・もったいない」

血の混ざった唾液をすする京楽に満足して、浮竹は自分の舌の傷を癒した。

「春水・・・愛してる」

「僕も愛してるよ、十四郎」

「ああああ!」

最後に最奥をゴリゴリと音を立てて侵入してくる京楽の動きに、浮竹はオーガズムでいっていた。

「ひああああああ!たくさんくるう。春水の子種♡」

「満足したかい?」

こくりと、浮竹は頷いた。

京楽が引き抜くと、大量の子種が逆流してきた。

「ああ、勿体ない・・・・」

「浮竹、意識がしっかりしているなら、お風呂にいこう」

「分かった」

京楽にお姫様抱っこされて、浮竹は風呂の湯船の中におろされる。

「浮竹の中のもの、かき出さないとね」

「やああ、お湯が入ってくるうう」

浮竹はお湯の中に入れられて、不満そうだった。

「こうしたほうが、かき出しやすいから」

「やあああ、胎がお湯で・・・京楽の子種が・・・」

「また、たっぷり注いであげるから」

「約束だぞ?」

「はぁ、素面の君までどんどんエロく・・・・まぁ、僕の主はエロい」

「俺はエロくなんかない」

ツーンととんがった浮竹の頭を撫でながら、京楽はご機嫌をとる。

「寝る前に、アイス作ってあげる」

「アイス!バニラ味がいい!」

「はいはい」

湯浴みを終えて、京楽は急いでアイスを作る。浮竹はそれを心待ちにして、できあがったばかりの冷たいアイスを口にして、幸せそうだった。


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「竜帝の子は、私の血を与えても、破れたか」

式で全てを見ていた藍染は、けれど黄金の便器の上にいた。

かっこつけているが、現在進行形で腹を下していた。

ぶりりりりーーーーーーーー。。

「ふう。波もようやく収まったようだ」

藍染は黄金の便器から立ちあがり、下着とズボンをはいて、玉座に座った。

「女神アルテナは、神喰らいの魔神京楽に食われたらしい」

「あら、アルテナ姉さま、今度こそ本当に消滅してしまったの。残念だわ」

「肉便器は、神の力を宿したまま残っている。問題はない」

ぷ~~ん。

玉座に座る藍染から異臭がした。

「あら、藍染様、また漏らして・・・・」

「ええい、替えの下着と服をもってこい!」

メイドに命じて、藍染は風呂場へと消えていく。

「女神オリガ。次の手はないか?」

「魔女たちを大量に生贄にして、一人の魔女を作りあげましょう?始祖のローデンなんかよりも、もっともっと強い魔力をもつ魔女を一人」

「魔女一人一人の魔力もなかなかあるが、複合体か。おもしろい」

藍染は、かっこつけているが、玉座の部屋に置かれた黄金のおまるに跨っていた。

「始祖のローデンよりも優れた魔女を作ろう。すぐに魔女の里にいき、若い力のある魔女を捕まえてこい!」

「はい、モレ藍染様!」

「モレは余計だ!あ、きたきた~~~」

次の波がきて、モレ草の効き目が終わるまで、藍染は違う意味で苦しむのであった。






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始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝

彼ら二人は、知る人ぞ知る退治屋だった。

東洋の浮竹と京楽であった。彼らは元々神々である。浮竹は浄化が得意で光と水の力を使えた。一方の京楽は、元が邪神なので瘴気を出し、それを力に変えることができて、影と闇を得意としていた。

二人は蛇の召還をできて、それぞれ白蛇と黒蛇を操った。

蛇だけに、二人とも毒の攻撃が得意だし、自分たちには毒どころか病気もきかなかった。

さて、そんな彼らに依頼が迷いこんだ。

ある村で、妖狐が暴れて人を食っているというのだ。

さっそくその村で聞き込みを行っていた二人の前に、意外な人物が現れた。

西洋の浮竹と京楽だった。

「おんやまぁ、退治屋さんは双子でしたか」

驚く村民を無視して、東洋の京楽は西洋の二人を怒った。

(こんなどこまできて、どういうつもり!?)

「いやな、お前たちには助けてもらったし、俺たちも助けてやろうと思って」

(気持ちはありがたいが、これは俺たちの仕事だ)

しゅんとなる西洋の浮竹の頭を、東洋の浮竹が撫でる。

(とにかく敵は妖狐だ。逃げられる前に、叩こう)

最もなと東洋の浮竹の言葉に、また村民から話を聞きながら、被害者が共通して参った神社があると知り、そこが怪しいとなった。

「よし、まずは俺が囮として行ってみよう」

「ちょっと、浮竹、本気かい?こっちの国のモンスターは僕らは知らないから、何かあったらどうするの!」

(まぁ、始祖ヴァンパイアだし、なんとかなるんじゃない?)

ぽっ、ぽっ、ぽっ。

神社の周りに、鬼火が灯った。

「何もなかった」

出てきた西洋の浮竹はそう言った。

「正体を現せ、この化け狐が!君が浮竹であるはずがない。魂の色が違うし、匂い違う」

(え、そうなのか?)

(流石に伴侶の違いは分かるようだね)

東洋の浮竹と京楽は武器を構えた。

(妖狐!追い詰めたぞ!)

「あたしに手を出したら、神社の奥にいったあの人間が死ぬわよ?」

「勝手に殺してごらん」

「ちっ。おい、お前ら、その人質を殺しちまいな!」

「ぎゃおう!」

「うぎゃああ!!」

「ぎゃひんん!」

凄い悲鳴が重なって、妖狐が訝しんだ。

「お前ら・・・・まさか、人間程度にやられたんじゃ・・・・・」

でてきたのは、真紅の瞳をして、妖怪の血を飲みつくしてしまった西洋の浮竹だった。

「東洋の妖の血の味・・・・悪くはない」

「まさか、ヴァンパイア!?」

妖狐はがたがたと震えだした。

屍鬼なら分かるが、本物西洋のヴァンパイアだとしたら、敵うはずもない。

「逃げてやる!」

(待て!)

東洋の浮竹が、呪符を飛ばすと、それは白い蛇になって妖狐の体をがんじがらめにした。

(今だ、春水!)

「僕も春水なんだよね。浮竹だけずるいよ。僕もこの国の妖の味を知りたい」

西洋の京楽は、魔神の咢で妖狐に噛みついた。

「ぎゃっ!魂が、魂が食われていく、ぎゃあああ!!!」

「へぇ。けっこうおいしいね」

そうやって、西洋の京楽は妖狐の魂を食べてしまった。

後に残されたのは、尾が9つに別れた狐の死体だった。

(美味しいところもっていかれた~~)

東洋の京楽は、妖刀を構えていたのに、自分の出番が全くなくて、しょげていた。

その頭を東洋の浮竹が撫でる。

(春水、いつもは春水が活躍するとこだが、たまにはこんなことが起きる時もあるさ)

(いや、西洋のボクらに仕事をとられたのにかわりはないよ!)

「なんだ、やる気か東洋の京楽」

(む、そっちがやる気ならボクだって)

「はいはい、二人ともそこまで」

西洋の京楽が止めに入った。

「とりあえず、その死体なんとかしないと、また悪いものにでも憑かれちゃうんじゃない?」

(そうだな)

東洋の浮竹は、死体を浄化しようとした。

「ゴットフェニックス!」

それを、西洋の浮竹が物凄い炎の鳥を出して、燃やして灰にしてしまった。

「俺の活躍の場が~~)

今度は、東洋の浮竹がしょげた。

東洋の京楽に頭を撫でられて、いじけていた。

「東洋の俺、すまん。でも、東洋のモンスターの血はうまかった・・・・」

ぺろりと唇についていた血を舐める西洋の浮竹に、東洋の浮竹が赤くなった。

(西洋の俺、なんかエロい・・・・・)

「そうか?」

西洋の浮竹はきょとんとしていた。

(確かにエロいね。あれが十四郎だと考えると・・・)

(いらん想像をするな、春水!)

東洋の浮竹と京楽はじゃれていた。

「報酬が発生するのだろう。そっちの方でもらっておいてくれ」

(え、いいのか)

「俺たちは、この世界で金に変えれものをいっぱい持ってるしな。金貨とか。あとこのマンドレイクとか」

西洋の浮竹がアイテムポケットからマンドレイクを取り出すものだから、みんな慌てた。

「大丈夫だ、すでに死んでいる。乾燥させたマンドレイクだ」

(よかった~~)

(生きたマンドレイク出された日には、村人が死んじゃうよ)

妖狐の退治の報酬金を受け取って、4人は雑貨ビルへと戻っていく。

「そうそう、ここにつく途中ラブホテルなるものに泊まってみたんだが、面白かったぞ」

(うわあああ、西洋の俺!!)

「ベッドが回転するんだ。風呂がジャグジーつきで、鏡が至るところにあった。証明ガキラキラしてた・・・あのラブホテルって、何をするところなんだ?」

(それはね・・・・)

東洋の京楽の口を、西洋の京楽と東洋の浮竹が止めた。

「なんかわからんが、面白かった。また泊まってみようと思う。ああ、金貨を換金したんだが、この国の一万円札?とかが100枚以上になって、いらんしお前たちにやる」

(いやいや、さすがにもらえない)

(僕も、さすがにもらうわけにはいかないね)

「そうか。じゃあ邪魔だから燃やそう。ファイ・・・・・・・」

ぎりぎりとのところで、東洋の浮竹が百万円札の札束をキャッチした。

(燃やすくらいなら、もらう!)

(燃やすのはやりすぎでしょ)

「そうか?この国は全くおかしいな。金貨で買い物をしようとしたら、高すぎるとか、お金に変えてこいとかいうんだ」

「浮竹、この国には金貨はあるけど、お金としてじゃなくて、貴金属の一部になってるから」

「むう。ますますわからん世界だ」

アイテムポケットから、元の世界の通貨である金貨をジャラジャラ出してくる西洋の浮竹に、東洋の浮竹と京楽は天を仰いだ。

(とりあえず止めてやってよ、西洋のボク)

(金貨が大量すぎて眩暈がする)

「浮竹、こっちの世界では金貨を出しちゃダメだよ。換金する時以外に、使っちゃだめ」

「むう、分かった」

その日は、雑居ビルの狭さが懐かしいという西洋の浮竹と京楽が、ダイニングルームの開いているスペースに布団をしくものだから、急いで4人分の食事を作った。

クリームパスタを夕飯にして、西洋の浮竹と京楽は一晩泊まると、元の世界へ帰っていった。

テーブルの上には、「世話になった」と書かれた紙と、金貨が2枚と、乾燥させたマンドレイクが置かれてあり、金貨は別として、乾燥マンドレイクの処理に困る二人であった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター54


キララは、そのドラゴンを見ていた。

「これが、始祖竜族の血脈・・・・」

真っ赤に燃え上がる鱗に、金色の瞳をつ恋次の子種から生まれた神と始祖竜の子は、シアンと名付けられた。

「シアン、遊びましょ」

「ぎゃう!」

「シアン、竜のふりはやめてよ。人の言葉、分かるんでしょ?」

7メートルはある巨体が、人型をとる。

「けっ、俺は始祖竜の子だ。あんな醜い肉便器から出てきなんて知られたら、恥だ」

「シアン、あれは女神アルテナ様よ?」

その言葉に、シアンはどこか恋次の面影のある赤い長い髪を結びあげた。

「あの肉便器が女神?はっ、女神も落ちたものだな」

シアンはアシッドブレスを肉便器にかけた。そのブレスは、肉便器をじゅわっと溶かしたが、肉便器はすぐに再生した。

「俺のアシッドブレスで溶けないなんて、やるじゃねぇか」

「シアン、やめて。それは女神アルテナ様よ。藍染様が子を作りやすくするために、女神アルテナ様をそんな姿に変えたの」

「藍染を怒らすなってことか?」

「そうよ。藍染様は神。邪神よ」

「たかだか邪神でいばれるようなことかよ?」

シアンは毒づく。

「シアン」

名を呼ばれて、びくっとシアンは振り返った。

「あ、藍染様・・・」

「怒られたくなければ、素直に始祖ヴァンパイア浮竹と血族の京楽の首をとっておいで。君は始祖竜の子だ。強いだろう?」

「当たり前だ!俺は強い!」

果たして、その強さは今の浮竹と京楽のどこまで通じるのか。

藍染にも、分からなかった。

--------------------------------------------------

そのダンジョンは、B級ダンジョンだった。敵は弱かったが、普通のダンジョンではなく迷宮ダンジョンだった。

まだ踏破したことがないので、浮竹が選んだダンジョンであったが、どこまで広がる迷宮に、浮竹は髪をかきむしった。

「おおい、浮竹?」

「ふふふ・・・・エターナルフェニックス!」

ダンジョンの壁を、炎の禁呪で破壊してしまった。

「ああああ、そんなことしたら罠が!」

ごろごろと転がってくる大きな岩を、浮竹は。

「アースクェイク!」

大きな地震を転がってくる岩にあてて、粉砕してしまった。

「うわあ、次は槍がふってきた!」

浮竹は、京楽の体を使って避けた。

「ちょっと浮竹、痛いんだけど」

「ヴァンパイアロードだろう。それしきの傷、すぐに再生するはずだ」

「でもねぇ、痛いものは痛いんだよ」

ガコン。

次は落とし穴だった。

「ウィングフライ」

飛翔の呪文で、なかったことにする。

「きいいいいい」

声がして、見るとダンジョンマスターである古代のエルフが、浮竹を睨んでいた。

「ちょっとこっちまできなさい。あんたもよ」

浮竹でなく、京楽までダンジョンマスターに呼ばれて、最下層より更に地下にある、ダンジョンマスターの空間にきていた。

「あなたねぇ、迷宮は謎をといてクリアすることに意味があるのよ!それを、いきなり壁を破壊するなんて!!」

古代エルフは、見た目は少女だったが、5千歳は生きているだろう。

古代のエルフやドワーフの命は長い。

「いいこと、次壁を破壊したら、ダンジョンから出てもらいますからね!」

ぱっと、元いた空間に戻される。

また迷宮が続いていた。

「エターナル・・・・むぐぐぐぐ」

「だめだよ、浮竹!壁の破壊はだめ!このダンジョン、踏破したいんでしょ?」

こくりと、浮竹は頷いた。

「じゃあ、ちゃんとマップをかいて、探索しよ?」

1階層で、すでに半日をかけてしまっていた。

宝箱は毒ガスの罠で、中身は偽物だった。

「もういい。エターナルフェニックス」

浮竹は、再びダンジョンの壁を破壊していた。

「ちょっとあなたねぇ!」

「エターナルフェニックス。サンダーボルテックス。エターナルアイシクルワールド」

浮竹は、こともあろうかダンジョンマスターに魔法を浴びせていた。

「やってくれるじゃないの」

ダンジョンマスターは怒っていた。

「今後百年、このダンジョンの出入りを禁止するわ!去りなさい!」

ぱっと、空間が変わる。

元の、ダンジョンの入り口に戻っていた。

「浮竹?」

「ダンジョンマスターのバーカバーカバーカ」

浮竹は、子供のようにダンジョンマスターをばかにする。

「あなたねぇ!」

出てきたダンジョンマスターに、浮竹は。

「エクスプロージョン!!」

爆発の魔法をお見舞いして、浮竹は走り去る。

「迷宮ダンジョンは性に合わない。戻ろう」

諦めるのも、早かった。

「浮竹、そもそもダンジョンはマッピングしながら、罠を解除して進んでいくものだから・・・・」

「そういうのは、初心者向けのダンジョンだろう。S級ダンジョンは敵が強すぎて罠なんてミミックくらいしかない」

「だからって・・・・」

「どのみち、百年の出禁を食らったんだ。このダンジョンは諦める」

「はあ。浮竹らしいというかなんというか・・・・・」

一階層さえクリアできなかった。

さすが迷宮ダンジョン。

未だに誰も踏破できないはずだ。

B級ダンジョンの割には、未踏破で不思議だと思っていたが、まさかたかが1階層で半日も迷うことになるなんて。

あの調子では、ダンジョン踏破に1カ月はかかりそうだった。

ワープの魔法を使って一度攻略したフロアを省略しても、敵は雑魚で素材になりそうにないし、宝箱はミミックじゃなくて偽物だし、浮竹の興味を刺激するものが何もなかった。

「気晴らしにドラゴンのS級ダンジョンでもいくか」

もう何回踏破したかも分からない、出てくるモンスターがドラゴンだらけのダンジョンに潜り、財宝を手に二人は古城に帰還するのであった。

「はぁ。B級ダンジョンには参ったな。クリアできるものと思っていたら、1階層から半日かかってもクリアできないなんて」

「まぁ、あのダンジョンは浮竹向きじゃないね。さすがにダンジョンマスターに魔法を放ったのには驚いたけど」

「ダンジョンマスターはダンジョンにいる限り、不老不死だ。ダンジョンの入り口でぶっぱなしたエクスプロージョンの魔法は効いたようだが」

その言葉通り、B級ダンジョンのダンジョンマスターの古代種のエルフは、髪をアフロにしていた。

「頼もう!」

リンリンリン。

鈴の音がして、来客を告げる。

「はいはい、今出るよ」

やってきたのは、見事だった長い金髪を、アフロにしたダンジョンマスターの古代エルフの少女だった。

「え、ダンジョンマスターさん?なんの用だろう」

「決まってるでしょ!このアフロになった髪の責任をとってもらうわよ!」

「ちっ、ここまできたか。そのアフロ似合ってるぞ」

「あなた!いい度胸ねぇ。他のダンジョンマスターに知らせて、S級ダンジョンに出入りできないようにしてあげようかしら」

「俺が悪かった」

その切り替わりの早さに、京楽が苦笑した。

「俺の血だ。飲むといい。元の髪形に戻れるだろう」

浮竹は、自分の血が入った小瓶をダンジョンマスターに渡した。

「始祖ヴァンパイアの血?あたしをヴァンパイアにしようって気じゃないでしょうね」

「お前みたいな生意気そうで乳臭いガキの血族なんていらんな」

「キイイイ」

「ふん」

ダンジョンマスターと浮竹はそりが合わないようだった。

ダンジョンマスターの古代エルフの少女は、小瓶の中の浮竹の血を口にした。

サラサラと、流れる滝のような、くるぶしまである自慢の金の髪に戻って、ダンジョンマスターは嬉しそうに手鏡で自分の髪を見ていた。

「治ったのなら、さっさとダンジョンに帰れ」

「きいいい。言われなくても帰るわよ!この馬鹿始祖が!」

「ふん」

「べーっだ」

そのまま、二人は喧嘩をして別れた。

「ねぇ、いいの浮竹。あんなにダンジョンマスターを怒らせて」

「まさか、本当にS級ダンジョンの出入り禁止になどできないだろう。B級ダンジョンなら分かるが。B級とS級じゃ差がありすぎる。それにS級ダンジョンの管理者は、古代のエルフではなく古代のドワーフだ。ドワーフとエルフが仲良くないのは知っているだろう」

「うん。犬猿の仲だよね」

森と自然を愛するエルフと、大地と鍛冶を愛するドワーフ。

別に敵対しているわけではないが、神々が決めたのか、存在した時から仲が悪かった。それはダンジョンマスターになっても変わっていないだろう。

「あーあ、また腹立ってきた。近くのS級ダンジョンいくぞ。ボスいじめてお宝奪ってやる」

もはや、冒険者というより賊のような言い方だった。


「しゃおおおおおおお」

倒れたアイスドラゴンに魔剣ラグナロクでとどめをさして、京楽は一息つく。

「ふう、今日はB級ダンジョンにいったり違うS級ダンジョンに2回行ったりして疲れたね」

「財宝の間が開くぞ」

「ごごごごご。そこにあったのは、巨大な宝箱だった」

「巨大宝箱発見!!」

「浮竹、危ないよ!」

ミミックだった。ビッグミミックに体ごと食われた。

「うわー出れない~。京楽、助けてくれ~~~~」

「全く、君は学習能力がないね」

ため息をつきながら、京楽が魔剣ラグナロクでビッグミミックの体を突き刺す。

でも、ビッグミミックは痛がりもしなかった。

「だめだ、通常攻撃が効かない。魔法ぶっとばすよ。中でシールドはってね」

「わかった」

「ゴッドフェニックス!」

炎の魔法を受けて、ビッグミミックは「ぎええええええええ」と叫び声をあねがら消えていった。

どさどさどさ。

出てきた宝物は、全部魔法書だった。

浮竹はめちゃくちゃ嬉しそうな顔をしていた。

「こんなに魔法書が!」

京楽は出てきた魔法書の1冊を読んでみる。

「何々・・乾ききった井戸水に水を再生させる方法。ふむ、聖帝国に売れそうだね」

「俺はこれが気に入った!」

浮竹は赤い魔導書を握りしめた。

「何々・・・・楽しいミミックの飼い方。人食いミミック編・・・浮竹、没収」

「何をする!」

「人食いミミックは、本当に食べるからだめ。それを飼いならすことができても、浮竹のことだから噛まれて血まみれになるに違いない」

「ええ、でもポチやタマはあんなに懐いてくれているぞ?」

「あれはミミックでも変異体だよ。人に懐くミミックなんて、普通はいないよ」

「ぶーー」

「ふてくされてもだめ。これは燃やすよ」

「あ、いくらなんでも燃やさなくても」

「ファイア」

炎の基礎魔法で、赤い魔導書は灰になっていった。

「あああああ、古代の貴重な魔法書が」

浮竹は涙を流していた。

「ほら、他にいっぱい魔法書あるでしょ。後、式がきて白哉クンの魔法書が今日届くそうだよ」

この前に、白哉に家になる魔法書をやらんでもないと言われて、欲しいと浮竹は言っていた。

「わお、じゃあ早く帰らないとな」

財宝の間に転がっているほとんど使えない民間魔法の魔法書を拾い集めて、アイテムポケットに入れていく。

「髪をモヒカンにする魔法・・・・これも没収!」

京楽は、実験台にされてたまるかと、ファイアの魔法で燃やしてしまった。

「今日の京楽は意地悪だ」

「はいはい、僕が悪かったよ。夕飯にジャンボパフェ出すから、機嫌直して?」

「それなら許す」

やっぱり浮竹ってちょろい・・・・・。そう思う京楽だった。

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S級ダンジョンからの帰り道、後ろから追ってくる巨大な影があった。

浮竹と京楽はヴァンパイアの翼を折りたたみ、巨大な影と対峙する。

「恋次クン?こんなところで、何やってるの」

真っ赤に燃え盛る鱗は、始祖竜である恋次だけが持っているものだった。

「恋次君にしては、少し小さくないか?あれは竜帝だ。15メートル以上ある。このドラゴンは8メートルくらいだ」

「俺はシルル。その竜帝とやらと、女神アルテの肉便器の子だ」

シルルと名乗ったドラゴンは、竜化を解いた。

真っ赤な髪に真っ赤な瞳の、恋次によく似た少年だった。

「恋次クンの子供!?」

「恋次君は無事だろうな!」

「俺は親父の顔なんて見たこともねぇ。ただ、裏ルートで始祖竜の子種を手に入れたとかで、藍染様に作られただけだ」

京楽は今日何回目になるかも分からないため息をついていた。

「やっぱり、藍染の手下か」

「恋次君の許可を得るか?」

「そんなことしてる間に、このドラゴンにやられてしまうよ。報告は後回しにして、倒してしまおう」

「なんだと!この竜帝の息子を殺すだと!笑わせてくれる、たかがヴァンパイアの始祖とその血族如きが!」

シアンは、ふんと笑って、ドラゴンブレスを京楽に浴びせた。

この前やっつけたシルルという名のドラゴンより強烈なブレスだった。

「シールド展開してるのに、突破された。流石は恋次クンの血を引いているだけはあるね」

京楽は僅かに焦げた体を再生させていく。

「俺のドラゴンブレスが通じないだと!?」

「なんで、ドラゴンはドラゴンブレスだけで倒そうとするんだろうな?」

浮竹は勝手に京楽から魔剣ラグナロクを引き抜いて、シアンの右腕を切り落としていた。

「あああ!許さん、死ね!」

右腕を瞬時再生させながら、シアンはアシッドブレスを吐いた。

「「ウォーターシールド!!」

沢山の酸を浴びた水は邪魔なので、炎の魔法で蒸発だせた。

「なんなんだ、お前らのその異常な強さ!」

「なんなんだって言われてもねぇ。始祖ヴァパイアの浮竹と、その血族である神喰らいの魔神京楽だよ」

「神喰らいの魔神だって!聞いてないぞ!」

「それはご愁傷さま」

京楽は、魔神の咢を出して、シアンの魂を食べようとする。

「やってられるか!!」

そう言って、シアンは強烈なアシッドブレスを吐いて、去ってしまった。

「逃げられちゃったよ。どうする?」

「放置しておけ。どうせ、また藍染のところでパワーアップでもして帰ってくるんじゃないか。その時に叩けばいい」

「あはは、パワーアップしようが平気そうだね」

「お前もな」

お互い、まだ全力を出して暴れたことなど、数回しかない。

今度またシアンが襲ってきても、大丈夫だろうと思っていた。

-----------------------------------------


そこは、食事の席だった。

「で、逃げてきたってわけかい」

「でも藍染様、あいつらの強さ、もしかしたらあんたより・・・・・」

シアンの腹を藍染は蹴り上げた。

「ぐはっ・・・・」

「私より、なんだって?」

「何でも、ありません・・・・・」

「君には、特別に邪神になった私の血をあげよう」

藍染は、爪をとがらすと、手首を切って流れ出す血をワイングラスに注いだ。

「さぁ、飲みなさい」

「はい・・・・・」

逆らうことは死を意味するので、シアンは藍染の血を口にした。

「おおおおおお」

のたうちまわるが、直に発作はおさまり、邪神の匂いをさせた竜帝がいた。

「今度こそ、討ち取ってみせる」

「いい子だね。さぁ、お行き」

「藍染様、食事をおもちしました」

食事をもってやってきたのは、女神アルテナに憑依されたメイドの少女だった。

藍染は、豪華な食事を適当に食べて、突然苦しみだした。

「あはははは!モレ草の毒よ!1週間はトイレから出れないわ!」

アルテナは、殺しても藍染は死なないので、嫌なほうに効く毒草を盛った。

「モレ草だけにもれそう!なんちゃってね!」

「連れていけ・・・ぐっ」

藍染はピーゴロゴロになった。

それから1週間、藍染は本当にトイレの住人と化すのであった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝

「これは・・・・東洋の邪神の血か。面白い」

藍染は、たまたま手に入れた、大量の東洋の浮竹の血を、試験官の中にいれて培養した。

ゴポゴポゴポ・・・・・。

試験官の中で、東洋の邪神の血はぶよぶよの不定形な形の肉の塊だったが、ちゃんと人間の形になり、完成して試験官の中からでてきた。

「名をあげよう。名は、そうだな・・・・東洋の邪神だから、トウだ」

「全ては、藍染様のために・・・」

トウは、そう言って藍染が手中に収めた藍染の城をたち、浮竹と京楽のところに向かった。

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「今日もいい天気だなぁ。なぁ、ポチ、タマ」

浮竹は、ミミックを古城の外に出してひなたぼっこをしていた。

「るるるるる」

「りんりんりん」

ポチとタマは、初めて触れる外の世界を気に入ったのか、はしゃぎまくっていた。

「浮竹、危ない!」

突然、京楽に押し倒されていた。

「なんだ、何が起こった」

「どうやら、藍染が東洋の僕の血を、何らかのルートで取り入れたみたいだね。ほら、あの影に居る子」

その少年は、ほぼ影と一体化していた。

しゅるるるる!

少年は、巨大な黒蛇を放ってきた。

「またか!」

少年は、いつか襲ってきた東洋の邪神の血を培養した化け物に似ていたが、ちゃんと人間の形をしており、黒い髪に黒い瞳で、東洋の人間っぽかった。

浮竹は、襲ってきた巨大な黒蛇に向かって魔法を放つ。

「ファイアオブファイア!」

「しゃああああ」

灰となっていく黒蛇。

少年の影から小さな黒蛇が無尽蔵に湧き出して、二人を襲った。

「ファイアオブファイア!」

「サンダーボルテックス!」

次々に沸いてくる黒蛇を魔法で焼いたり焦がしたりするが、数が数だった。

「ゴッドフェニックス!」

浮竹は、本体である少年に魔法を放った。

少年は、黒い蛇でバリアをつくると、魔法をはじき返してしまった。

つい、浮竹がさっきまで立っていた場所を炎の不死鳥が飛んでいく。

黒蛇の一匹が浮竹の足に噛みついた。

チクリと痛みがしたかと思うと、体中が燃えるゆうに熱くなった。

「く、毒か・・・・」

「浮竹、いったん撤退しよう」

「いや・・・どうやら本物のお出ましみたいだ」

「え?」

京楽が首を傾げると、見知った姿があった。

(まーまー、ボクの血が元かもしれないけど、よくもボクの友人たちを傷つけてくれたね)

(西洋の俺、大丈夫か!?毒は、今浄化してやるからな)

「東洋の俺!すまん、迷惑をかける」

(そんなことどうでもいいから・・・うわああ、これは強烈な毒だな。一滴で死者が100人は出そうだ)

「俺、けっこうかまれたけど、死んでないぞ?」

(そりゃ、お前は不老不死の始祖ヴァンパイアだから)

東洋と西洋の浮竹がそんなやり取りをしている間、東洋の京楽は、妖刀を取り出した。

(これが何か、分かるよね?)

ニタァと笑う東洋の京楽に、少年は恐怖心を覚えたのか、影にもぐりこもうとした。

(そういうわけには、いかないよ!)

東洋の浮竹は、自分も影にもぐりこむと、少年の首を締め上げた。

「わああああ!!!」

少年が影から出てきて、無数の黒い蛇を放つ。

それを東洋の京楽は吸収してしまった。

(元はボクの力なんだから、返してもらうよ!)

「あああああ!!!

少年は頭を抱えて奇声を発して、黒蛇を召還すると、負傷している西洋の浮竹と治療に当たっている東洋の浮竹に蛇をさしむけた。

「死んで?」

東洋の京楽は、妖刀で少年を斬り裂いていた。

ぶわっと、形が崩れていくが、まだ生きていた。

「エターナルアイシクルワールド!」」

西洋の京楽は、二人の浮竹の元に向かいつつあった黒蛇を全て氷漬けにしてしまった。

「つめが甘いんじゃないか、東洋の僕」

「いわれなくても!」

とどめを、少年にさす。

「ぎゃああああああああ」

少年は塵となって、その瘴気ごと東洋の京楽のもつ妖刀に吸われていった。

(まにあってよかたったよ)

「べ、別に助けてくれなんて言ってないんだからな!」

西洋の浮竹のツンデレぶりに、東洋の浮竹があわあわしていた。

「ほら、浮竹。ちゃんとお礼を言って。今回は助かったよ。助けてくれてありがとう」

ちゃんとお礼をいう西洋の京楽の言葉を受け取って、次は西洋の浮竹を見る。

「た、た、助けてくれてありがとう。ちゃんと言ったからな、ふん!」

西洋の浮竹は、頬っぺたを赤くしながら、キッチンの方へいってしまった。

「ほら、俺がいれたマンドレイク茶だ」

(はぁ?マンドレイクのお茶?)

(西洋の俺、それは飲めるものなのか?」

「ちゃんと乾燥させたものを使ってある。飲めるぞ。意外とうまいぞ?」

「騙されたと思って、飲んでごらん」

西洋の京楽もそう進めるものだから、唾をゴクリと飲んで、東洋の二人はマンドレイク茶を飲んだ。

(あ、ジャスミンティーに似てる)

(ほんとだね。おいしい・・・・あのマンドレイクを乾燥させると、こんなおいしいお茶ができるかい。なんだか勉強になったよ)

「じゃあ、このマンドレイクをおみやげに・・・・・」

おみやげにマンドレイクを渡そうとする西洋の浮竹の襟首を、西洋の京楽が掴んで離さなかった。

「だから、マンドレイクはいろいろ問題があるから、おみやげにしないの」

西洋の浮竹はしょんぼりして、アッサムの最高級の茶葉を渡した。

「こんなものしかないが・・・・・」

(いや、こっちのほうが正直ありがたい。さすがにマンドレイクを受け取るわけにはいかんしな)

(じゃあ、ボクたちは戻るよ。君たちの危機を助けにきただけだからね)

「東洋の京楽!」

(ん?)

西洋の浮竹は、東洋の京楽に抱きついて、匂いをかいでいた。

(な、何してるの!?)

「いや、お前からも俺の京楽と似た匂いがしたから、つい」

見ると、東洋の浮竹はぷくーと頬を膨らませていた。

(十四郎、これは違うからね!?)

(春水の浮気者!)

つーんとなった東洋の浮竹に、西洋の京楽がドーナツを差し出した。

「これでも食べながら、帰ってよ」

(ドーナツ!)

途端に目をキラキラさせる東洋の浮竹。

(かしは、1つだよ)

「助けてもらった分をいれて、ちゃらってことで」

こうして、東洋の浮竹と京楽は元の世界に戻っていった。

「あ・・・邪神の血をこっちの世界で流すなっていう、重要なこと忘れてた」

「まぁ、向こうも気づいてたみたいだし、大丈夫でしょ」

邪神の血は、悪用されやすい。

いや、悪用するのは藍染だけだが。


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「トウもやられたか。東洋の邪神の血はもうない。頻繁くるようでもないし・・・まあいい、駒はいくらでもある」

藍染は、自分の城でくつくつと笑うのであった。


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始祖なる者、ヴァンパイアマスター53

「あ・・・・」

アルテナの肉便器から生まれてきた子、神竜のエルルは、自分の母であったものを見て、おぞましく感じてドラゴンブレスを吐いていた」

「ぎゃああああ」

肉便器は言葉をしゃべった。

「この肉塊には、意識があるのか?」

「助けて!私は女神アルテナよ!」

「うわぁ、しゃべる肉便器・・・きもち悪い!」

エルルは、もう一度ドラゴンブレスを吐いた。

ただその肉塊は焦げることもなく、そこにあった。

「エルル」

「はい、藍染様」

「それは大事な肉便器だ。傷つけないように。次の子は、始祖のカイザードラゴンの子だ。きっと、強い子が生まれる」

藍染は、裏ルートで恋次の精液を手に入れていた。

恋次がこれを知ったら、憤慨しまくって肉便器アルテナも邪神となった藍染も殺そうとするだろうが、藍染は住んでいた城を放棄して、魔国アルカンシェルを出て、隣のイデア王国の古城に住むことにした。

配下の者、寵姫たち、その世話をする者たちに、女神オリガ、その子キララ、後は肉便器アルテナと大移動だった。

試験官などの大切な道具も移動させた。

電力は、藍染が雷の魔法で起こすので、常に試験官の中には何かがいた。

ゴポポポ・・・。

試験官の中では、偶然東洋の八岐大蛇の邪神の血を手に入れたので、それを栽培したものがゴポリと中で蠢いていた。

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浮竹は、女性の多いスイーツ食べ放題の店に京楽ときていた。

「あああ、視線が恥ずかしい」

京楽は、恥ずかしがっていた。

浮竹の前にはたくさんのケーキや甘いお菓子が置かれてあり、その細い体のどこに入るのが、次々にスイーツを平らげていった。

「次はパフェだ」

パフェを全種食べ終える。

「次はアイス」

いろんな味のアイスを食べた。

「ふう、満足だ」

浮竹が満足する頃には、食べ放題の時間は終わっており、明らかな赤字に手に店員は顔を青くしていた。

「ま、まいどありがとうございました~」

とりあえず、営業スマイルは忘れない店員に、二人分の金を払って外に出た。

「浮竹、食べ過ぎだよ。お腹壊しても知らないよ?」

「この程度、大丈夫だ。それより京楽、お前全然たべてなかっただろう。食べ放題なのに、勿体ない」

「いや、ちゃんとジャンボパフェとミルフィーユケーキと、マンゴー味のアイス食べてたたからね!?」

「そんなの、食べたうちの入らない」

浮竹は不満そうであった。

「いや、君がおかしいだけで、僕の胃は普通だから、それだけ食べればお腹いっぱいになるからね?」

「この店は気に入った。また来よう」

「いや、多分出禁になるんじゃないかなぁ」

念のため、京楽がまた来てもいいかと店員に尋ねると、店員は首を横に振った。

「やっぱり、出禁くらったみたいだよ」

「ちょっと食べただけなのに」

「店にとっては大損害だよ」

浮竹がぷくーっと頬を膨らませて、そっぽを向いた。

「こんな店、買いつぶしてやる」

本当にしそうな浮竹の手を握って、京楽は歩きだす。

「京楽?」

「ん、なんでもないよ」

桜の木の下にやってくると、桜が満開だった。

「明日、二人でお花見でもしようか」

「いいな」

浮竹はさも楽しそうに、桜の花を数個とって、自分の髪と京楽の髪に飾った。

「こういうのは、浮竹、君の方が似合ってる」

京楽は、浮竹の髪に自分の分の桜を飾った。

「似合っているか?」

くるくると、白い髪をなびかせて回る浮竹に、京楽は慈愛に満ちた眼差しを注いでいた。


次の日は、よい天気だった。

人の手があまり入っていない山奥までヴァンパイアの翼で飛ぶと、花見をすると京楽が決めた場所に降りた。

「わああ」

浮竹は、空を見上げた。

空も大地も、ピンク色に染め上げられていた。

「けっこう、いい場所でしょ。狂い咲きの桜の花の樹の群れだよ。この桜の木の下には、死体がある」

「え」

「冗談だよ。何、本気にしたの?」

クスリと笑う京楽にからかわれたのだと知って、浮竹は頬を膨らませた。

「お弁当だして、食べようか」

「そうだな」

ちらちらと散っていく桜の花びらを見ながら、洋風のお弁当に酒はワインだった。

ワインを飲み干して、浮竹は桜の枝を折り、アイテムポケットに入れた。、

「どうするの、それ」

「錬金術で苗にする。庭に埋めて、俺の血を注げば一夜で満開だ」

「あの古城に桜か。それも悪くないかもね」

ふと、穏やか時間を邪魔する無粋な連中が現れたと知り、浮竹は眉を顰めた。

「いるのは分かっている。出てこい」

まず現れたのは、肉塊だった。

試験官の中で育った、東洋の邪神の血を栽培した化け物だった。

その敵は、ぶよぶよしていて形が不安定だった。

「あははは、死んじゃえ」

肉塊は、言葉を操った。

しゅるしゅると、影から黒蛇を出して浮竹と京楽を追い詰める。

「これって、東洋の僕の技じゃない」

「どこかで見たと思ったら、やっぱりそうか。あいつ、血でも取られたのか」

「ファイアオブファイア!」

魔法で焼いても、次々に猛毒をもつ黒蛇を召還する。

「エターナルフェニクス!!」

浮竹は炎の禁呪をその名もなき化け物にぶつけた。

しゅるるる!

黒蛇たちがシールド代わりになって、本体を守る。

「厄介だな。東洋の邪神の血か」

浮竹も京楽も、その化け物が東洋の友人である邪神でもある者の血から、できていることはわかっいた。

「東洋の僕も邪神だったねぇ、サンダーボルテックス!」

雷に焦がされながらも、しゅるしゅると永遠に黒蛇を召還し続ける化け物に、浮竹と京楽は氷の魔法を出そうとした。

その化け物は、東洋の邪神がニタリと笑んで攻撃してくる幻影と幻聴を聞いていた。

「うわあああああああああ」

いきなりでもがき苦しむ、名もなき化け物に、今だと二人は氷の禁呪を放つ。

「「エターナルアイシクルワールド!」」

蛇は寒さに弱い。

凍り付いて、直に動かなくなった。

やがて氷のクリスタルの中で、化け物は自壊し、血の海へと還っていった。

「ふん、自信満々だった割に自壊とは、情けない」

次に現れたのは、真竜だった。

10メートルはあるだろうドラゴンだった。

「俺はエルル。肉便器アルテナとエンシェントドラゴンの子だ。神竜と呼んでもらおうか」

巨大なドラゴンを見上げて、浮竹と京楽はぶはっと吹き出していた。

「また出てきたぞ!肉便器アルテナ様の子供だ!」

「あはははは!肉便器アルテナ様、そっちで流行ってるの?ばっかじゃないの?」

浮竹と京楽の言葉に、エルルは怒ってドラゴンブレスを吐いた。

炎だったが、浮竹と京楽はカウンターバリアを張って、ドラゴンブレスはそれを吐いたエルルの元に返っていく。

「うわあああ!!」

自分のドラゴンブレスで体を焦げさせる。

「肉便器アルテナ様の子供は弱いねぇ」

「これでもくらえ!」

今度はアシッドブレス、酸の吐息だった。

常人なら骨も残らず溶けるだろうが、二人は水のバリアを張っていた。

酸を大量に含んだ水を、二人は神竜と名乗るエルルに向かって浴びせた。

「ひああああ、体が焼けるうう!!」

エルルはのたうちまわり、竜化を解いて人型になった。

金色の髪に青い瞳の、まだ幼い少年だった。

敵が幼いからといって、手加減したり油断したりする二人ではない。

「あーあ、ドラゴンのままなら竜素材になったのに。残念だよ。サンダーボルテックス」

「カウンターマジックシールド!」

京楽の放った雷の魔法は、跳ね返されて浮竹を焦がした。

「何をする、京楽!」

「ええ、僕のせいじゃないよ。魔法の反射だよ!」

「どうでもいい。さっきの邪神の血の化け物も、元を正せば全部お前のせいだ」

「ええ、それはあまりにも理不尽じゃない!?」

「ゴッドフェニックス、カイザーフェニックス、エターナルフェニックス・・・トリプルファイアフェニックス!」

「ぎゃああああ!!!」

全身を業火で焼かれて、そのまま灰になるかと思ったが、エルルは竜化した。

「踏みつぶしてくれる」

炎を全身にまとわせたまま、暴れるので地面にはクレーターができた。

「わわ、危ない!」

京楽は浮竹を抱き抱えると、ヴァンパイアの翼を出して空に逃れた。

「今度こそ死ね!」

エルルは、アシッドブレスを吐いた。

京楽は水のバリアをはる。

それを押しのけて、アシッドブレスは二人に迫ろうとしていた。

「ファイアテンペスト」

浮竹が炎の礫の交じった嵐を起こすと、エルルの放ったドラゴンブレスは自分のほうに戻ってきた。

「ぎゃあああああああ!!!」

骨をも溶かす酸を浴びて、エルルは地面に倒れた。

「おのれ、おのれえええ」

エルルは、神竜である。

唯のドラゴンではない。

まだ生きていた。

「そは禁忌。我生まれしは禁断の名のもとに。世界よ我を喰らいて力となせ!ブラックファイア!」

ボウッ。

黒い炎が生み出された。

それは、エルルの体を包み灰とした。地面も、桜の木も、森の木々や草も燃やして灰にしていく。

「自分の命を犠牲にする闇の禁呪だ!逃げても何処までもおってくるぞ」

「じゃあ、飲みこんじゃえばいいんじゃない?」

「どこに?」

「君の空間に」

「ああ・・・・・ブラックホール」

同じ闇の魔法が発動する。

浮竹の出したブラックホールは、周囲の灰ごと黒い炎も飲みこんでいく。

「ばかな・・・・俺の最高の魔法が・・・・・」

ブラックファイアに灯っていた、エルルの命の残滓は、そう言い残して消えてしまった。

「このブラックホール、消すのが大変なんだよな」

「そうなの?」

「消えろ!」

浮竹は魔力をぶつけて、ブラックホールを無にした。

「うわ、ごっそり魔力が減ったね。ああ、まだ魂が残ってるね。おいしそうだから、食べちゃおう」

京楽は、神竜エルルの魂を、魔神の咢で噛み砕いた。

浮竹は、魔力をごっそり減らされて、しんどそうだった。

「お前の血をよこせ。それで回復させる」

京楽は首元を差し出してきた。

浮竹はそれに噛みつき血を啜り、京楽の魔力を自分のものに変換した。

「さすがにもう、襲ってこないよな?」

「2匹もいたんだし、もういないんじゃない?藍染はゴキブリだけど、複数の強い敵をぶつけてくるような卑怯な真似はあまりしない」

「藍染は、ゴキブリだけど、ゴキブリならゴキブリ並みに対処にしようがあるということか」

「そうだね」

一方、古城では。

「はーっくしょん」

藍染は、くしゃみをしていた。

「邪神である私の存在を、誰か噂しているな。ふははは、上位神だな?」

いや、全然違った。

神は神だけど、魔神と神格を魂に持つ始祖ヴァンパイアだった。


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「ああ、早く生まれておいで、愛しい藍染様の子供・・・」

イデア王国の古城で、藍染は着実に勢力を伸ばしつつあった。

邪神としての自分の血を井戸水に混ぜて、市民を操り、イデア王国の王族たちを捕らえると処刑して、自分がイデア王国の国王になった。

「藍染様ばんざーーい」

「藍染様!!」

洗脳された市民たちは、藍染と女神オリガが王宮に入っていくのを喜んだ。

王国直属の近衛騎士や普通の騎士団の人間も、洗脳されていた。

貴族の大半は、藍染に忠誠を誓った。

誓わなかった貴族は、見せしめとして処刑された。

「ここは、私の新たなる王国だ。女神オリガ、君は王妃だ」

「嬉しい、藍染様」

死神キララは、そんな二人を遠くから見つめていた。

王宮には、藍染の手の者たちや寵姫の他に、蠢く物体が入った試験官などが王宮の地下に設置されていった。

かの肉便器アルテナは、地下深くに置かれた。

栄養をとる口がないので、いつも点滴を投与されていた。

「今に見ていなさい・・・・絶対に後悔させてやる」

肉便器になっても、まだ女神アルテナの魂は肉塊にしがみつていた。

「次は、始祖竜の子だ。子種を入手するのに苦労した。強い子を産んでくれ」

肉便器に、数滴しか入手できなかった始祖竜、阿散井恋次の子種を注ぐ。

「覚えてなない、藍染・・・・」

「まだ、魂は張り付いているのか。キララ」

「はい、愛染様」

キララは、死神の鎌を取り出した。

「この口うるさい女神の魂を、狩ってくれ」

「はい、藍染様」

「やめて、やめてええええ!!」

キララは、死神の鎌で女神アルテナの魂を狩りとった。

「うふふ、綺麗な色。女神の魂って、こんなに綺麗なんだ」

魂だけの存在となってしまったアルテナは、沈黙した。

まだ何かを叫んでいたが、封じ込められて、ただの魂となっていた。

女神アルテナの魂は、封じ込められていたが逃げ出して、メイドとして雇われいた少女の中に宿るのだった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター52

「やあ、おはよう、女神アルテナ。いや、アルテナだった物体かな?」

(藍染・・・許さない)

「おや、まだ意識が残っているのかい。ゴキブリ並みだねぇ」

(あなただってしぶとさはゴキブリ並みよ!)

「今日は肉便器になった君のテストだ。オークの子供を孕んで産んでもらう」

(いやあああ!あんな下等な生き物!私ば高貴なる女神よ!?)

「女神だった肉便器だろうが」

藍染は、震えて動く肉塊を蹴り上げた。

(覚えてらっしゃい。このままで済むと思うなよ!)

「女神オリガ」

「はい、藍染様」

「オークの子種を、このアルテナの肉便器にいれてやれ」

「あは、アルテナ姉さま、オークの子供なんて産むんだ。あははははは」

壊れた女神オリガは、アルテナだった肉便器にオークの子種をたくさん注いだ。

「たくさん産んでね、アルテナ姉さま。神の胎から生まれたオーク。面白そうだわ」

---------------------------------------------------------

死神キララは、分かたれた半分の姿で、女神オリガに抱きしめられていた。

「いい子ね、キララ。アルテナ姉さまには、お金がたくさんかかるの。涙を流してちょうだい?」

キララは、言われた通りに涙を流した。

もう、自分はただ金を生み出すためにいるのだと、痛感した。

「ねぇ、ナウセル父様はどこ?」

その言葉に、女神オリガは表情を変えてキララの頬を殴り、腹を蹴った。

「あの死神の名は口にしないでちょうだい。私を助けてくれると言っておきなながら、命惜しさのために逃げ出した、あんな裏切者名前なんて、聞きたくもないわ!」

「ご、ごめんなさい。オリガ母様。もう名前を言わないから、許して」

「ええ、いいわよ」

ただ涙を零す。

それは宝石となって、かつんかつんと、地面に落ちた。

「わあ、エメラルドだわ。こっちはスターサファイア・・・・・そうね、藍染様に頼んで、装身具を作ってもらおうかしら。もちろん、キララ、あなたの分も」

キララの母である女神オリガは壊れていたが、時折普通に振る舞う。

「オリガ母様・・・・・」

母の腕に抱かれて、キララはますます涙を零すのであった。

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浮竹と京楽は、アラルの町に買い出しに出ていた。

アラルの町を含めて、ガイア王国は疫病の終息から半年が経とうとしていた。

全ては、浮竹のお陰だった。

冒険者ギルドにいくと、ギルドマスターに2階に通された。

「よくきてくれたな。今回は本当に世話になった。これが残りの報酬金の白金貨100枚だ」

浮竹は中身を確かめて、アイテムポケットに入れた。

「実は、ガイア王国の国王であられる、女王陛下がお忍びでお前たちの住む古城に行くことになっているんだ」

「いつだ?」

「明日だ」

「はぁ!?」

京楽が目をむいた。急すぎた。

「女王陛下がどうしても、今回の疫病を終息に導いた錬金術士と会いたいと仰っていてな。お前たちを、Sランク冒険者の金持ちだと紹介しておいた」

「余計なことを・・・・」

京楽が苦虫を噛み潰した顔をした。

一方、浮竹は慌てていた。

「食料の買い出しにいかなくては!京楽、最高級のものを用意しておけ!戦闘メイドも出す。女王陛下とやらは、どうせ泊まるんだろう?」

「ああ、そうらしい。女王陛下の名は卯ノ花烈。とてもお優しい方だが、二面性があってな。罪人たちには容赦ないのに、民たちには優しいんだ」

「卯ノ花烈か・・・・覚えておこう」

冒険者ギルドを出て、浮竹と京楽は、戦闘メイドも交えて高級食材を買いあさり、明日の夕飯のフルコールのために、京楽と戦闘メイドは下ごしらえをするのであった。

次の日の、夕方近くに、女王卯ノ花を乗せた馬車が、古城の前についた。

馬車から降りてきたのは、優雅なドレスを纏った貴婦人の卯ノ花烈その人であった。

「女王陛下、よくぞおこしくださいました」

「陛下」

「あら、顔をあげてください、浮竹さん、京楽さん。それにこれは非公式のこと。口調は普通のままでいいです。私のことも、卯ノ花とお呼びください」

「では卯ノ花。何をしにここにきた」

「あら。今回の疫病を終息に導いたあなた方と会いたかったのです」

「本当に、それだけか?」

「貴族の爵位を用意してあります。あと、謝礼金も」

浮竹は首を横に振った。

「貴族の爵位はいらない。金はもらうが」

「騎士団長、お金をここへ」

「はっ!」

騎士団長はぶるぶる震えていた。もっている金額が金額だけに。

「いくらだ」

「白金貨5千枚です。この王国の税金の全ての1年分に相当します。足りませんか?」

「いや、十分だ。いただいておく」

浮竹は中身を確かめもせず、アイテムポケットに入れてしまった。

「女王陛下って綺麗な人だね」

食い入るように見つめる京楽の足を踏みつけた。

「俺より女王のほがいいか?」

「まさか!浮竹が一番だよ!!」

京楽が声を張り上げるものだから、近衛騎士などがなんだ視線を集中させてきた。

「あら、あなたたちは伴侶なのですね。貴族になっていたら、いい縁談があったのですが」

卯ノ花が微笑む。

「こちらへ」

ダインングルームに通して、最高級のワインをふるまった。

「あら、おいしい。値段がするものですね」

「今夜はフルコースを用意している。風呂もあるし、着替えも用意している。ゲストルームに泊まっていけ」

「あら、嬉しい。では、お言葉に甘えますね」

京楽は、近衛騎士たちの分までフルコースの料理をふるまった。

「こんなフルコースも、久しぶりだな」

当たり前のように、浮竹も食べて味わった。

「浮竹の分くらいなら、毎日でも用意するよ」

「いや、やめておく。太りそうだ」

「浮竹、スイーツいっぱい食べるのに太らないじゃない」

「そういう体質なんだ」

京楽が去っていった合間をぬって、卯ノ花が近くにやってくる。

「どうです?私と一晩の逢瀬を」

「やめておく」

「あら。私には子が3人いますがどれで出来が悪い。ヴァンパイアマスターの子ならあるい

はとおもったのですが」

偶然、その言葉を聞いていた京楽に、ぎりっと腕を摑まれた。

「浮竹。後でお仕置きだよ?」

にっこりと微笑む京楽に、浮竹は声をあげていた。

「京楽、誤解だ!!」

卯ノ花は、まだ浮竹に未練があるようで、浮竹に最高級のワインを飲ませた。

「くそ、京楽の奴・・・・・・」

「あら、伴侶に怒られてしまいましたね」

「誰のせいだと思っている」

「私のせいです」

卯ノ花は詫びもせず、ワインを飲んでいくのだった。

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「ああああ!」

浮竹は、京楽に勃ちあがった前を紐で戒められていた。

「いやああ」

精液を出したいのに出せなくて、もどかしく体を動かしていた。

「やああ、これとってええええ」

「僕が満足したらね」

「あああ!!」

京楽は、浮竹の蕾をローションで解すことなく、自身にローションをかけただけで、浮竹を貫いた。

「やああ、痛い」

「お仕置きだからね」

「違う、卯ノ花とはなんでもない・・・・ひあ!」

ごりっと奥を抉られて、浮竹は自分の戒められていた紐をとろうとする。

すると、京楽が今度は浮竹の手を後ろで戒めた。

「やあああ、いきたい」

浮竹のものを舐めてしごくが、浮竹は先走りの蜜をダラダラ零すだけで、射精を許されななった。

「ひあああ!」

敏感に反応し、ドライのオーガズムで浮竹はいっていた。

「ひあうう!」

ごりっごりっと奥を抉られて、浮竹は京楽の熱が自分の中で弾けるのを感じていた。

「あああ・・・・・・」

京楽は一度ひきぬくと、何度も浮竹を犯した。

「ほら、胎の奥に注ぐよ?」

浮竹の胎の奥にまで侵入し、そこで精液をぶちまけていた。

浮竹の前を戒めていた紐をとってやると、びゅるるると、濃い精子が弾け飛んだ。

「あああああ!!!」

京楽は、浮竹の肩に噛みついて、吸血してやった。

いってる最中に吸血されて、浮竹はいきっぱなしだった。

「ああああああ!こわれるうう」

「何回でも、いかせてあげる」

一度精液を出したが、浮竹のものはまだ硬かった。

京楽は浮竹の奥を突きあげながら、片手で浮竹のものをしごきあげる。

「いやあああああ!!」

浮竹はまた精液を吐き出していた。

同時に、オーガズムでもいっていた。

「吸血、してあげるからね?」

「だめえええ!!」

浮竹の太ももに牙をあてて、皮膚を斬り裂き流れ出る血を飲む。

「あ”あ”あ”!!!」

浮竹はいきまくって壊れた人形のようにびくんびくんと体をはねさせて、意識を失った。

「ごめんね、十四郎」

京楽は、意識の失った浮竹の額にキスを落とす。

「君は僕のもので、君のものだ」

すうすうと疲れ果てて寝息を立てる浮竹の涙を吸い取って、京楽は逢瀬の後始末をして、浮竹を抱き寄せて眠るのだった。

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やがて、朝になり卯ノ花が王宮に帰ることになった。

「あー、肩凝った。ついでに腰がいたい」

「僕も肩はこったね。昨日のは、お仕置きだから」

「何がお仕置きだ。このエロ魔神が。まぁ、卯ノ花は確かに綺麗な人だった」

「卯ノ花も綺麗だったけど、僕のエロくて妖艶な浮竹に比べれば・・・・・」

浮竹は、まだ護衛の騎士が残っていたので、京楽の鳩尾に拳を入れておいた。

「おぐ・・・鳩尾はきく・・・・」

そんなやりとりをしながら、卯ノ花が馬車にのって王宮に帰っていくのを眺めているのだった。

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古城の森で、完全に卯ノ花が帰ったことを確認すると、浮竹が声をあげた。

「出てこい。そこに、いるんだろう?」

現れたのは、10体のオークだった。

でも、ただのオークではなかった。神の匂いをさせていた。

「おでら、肉便器アルテナ様の子供。京楽、浮竹、お前たちを食う」

その言葉に、浮竹が笑った。

「あははははは」

「何が、おかしい」

「女神アルテナが肉便器だって?ついに、藍染に見限られたか!」

「そりゃ傑作だ」

京楽も一緒になって、笑っていた。

「肉便器アルテナ様を馬鹿にするな!」

「あははは、だって肉便器だよ?あの女神アルテナが肉便器になって、オークの子供孕まされて・・・・・あはははは」

「ははははは、肉便器アルテナ様だって!肉便器に様つけてやがる」

怒ったオークたちは、浮竹と京楽を引き裂こうとした。

「ゴッドフェニックス!」

じゅわっ。

3匹のオークの上半身が蒸発した。

それでもオークは生きていた。さすがに女神アルテナの子だけあるのか、再生力が半端ではなかった。

「エターナルアイシクルワールド!」

京楽は、氷結の禁呪を使う。

オークたちは全部氷ついた。

「サンダーボルテックス!!」

それに、浮竹がトドメの雷の禁呪の呪文を放つと、オークたちは凍り付いた体を粉々にして、体を散らせていった。

溶けていく肉塊は蠢いて集まり、一つの肉の塊になった。

それは、女神アルテナの形をしていた。

「た・・・助けて」

「女神アルテナも、藍染のようにゴキブリ並みにしぶといな?」

浮竹の言葉に、京楽も賛同する。

「そんな姿になってまで生きたいのかい、女神アルテナ」

「いやあああああ。私の美しい肉体が、美貌が。こんなのいやあああ!!」

「ゴッドフェニックス、カイザーフェニックス、エターナルフェニックス・・・・トリプルファイアフェニックス!!」

炎の中でも、最高位の位置する禁呪を受けて、オークの肉の塊の女神アルテナは灰となった。

「さすがに灰となれば、復活しないだろう」

「うん、そうだね」

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肉便器である女神アルテナだったものは、次の子を孕んでいた。

竜族の、真竜の子供だった。

父となるのはエンシェントドラゴン。

孕んで数日して、肉便器は神の匂いをまとった幼体のドラゴンを産んだ。

それは試験官の中に入れられて、残っていた邪神ディアブロの血を与えられた。

「しゃべれるかい?」

「はい、藍染様」

「君は神竜エルル。さぁ、目的は分かるね?」

「始祖の浮竹と、神喰らいの魔神京楽の始末、ですね?」

女神オリガは、京楽の傍でうっとりと、大きくなったお腹を撫でていた。

「あなたも、早く生まれてらしゃい。私と邪神ディアブロの血液のせいで、邪神化した藍染様との間の赤ちゃん・・・・・」

藍染は、神になっていた。

しかも、邪神だった。

「ふははははは!私はついに神になった!これからは、私の時代だ!」

邪神ディアブロの末路も知らずに、藍染は笑い続けるのだった。





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始祖なる者、ヴァンパイアマスター51

生まれ落ちた子は、死神であった。

神ではあるが、邪神や魔神に近かった。

女の子だった。見た目はまだ幼い13歳くらいだった。

名前を、キララと名付けられた。

星のように輝く瞳をもっていた。死神の元の始まりは、聖帝国にする神族であった。

なので、キララの瞳も宝石となりうるし、その涙はいろんな宝石になった。

「キララ、涙を流してちょうだい」

「はい、女神アルテナ様」

キララは感情を抑制していた。

無駄な反抗心を抱かぬように育てられた。

キララは。女神アルテナの言いつけ通り泣いた。それは極上のダイヤモンドとなって地面にカツンカツンと落ちた。

「うふふふ。これで装飾品には困らないわね」

地面に転がっているダイヤモンドを手に、女神アルテナは迷う。

「このまま浮竹と京楽の元に向かわせていいんだけれど・・・この宝石を生み出す力は惜しいわ。失うのは嫌ね」

女神アルテナは、キララの魂を二つにわけて、肉体も二つにわけた。

「あなたたちは、これで別々の死神よ」

「「はい、女神アルテナ様」」

「そっちのキララ。仕事よ。浮竹と京楽を、死神の力でその魂を屠るのよ」

「はい、女神アルテナ様。その魂を刈り取って、食べてもいいの?」

「ええ、もちろんよ」

女神アルテナは微笑む。

「じゃあ、行ってきます」

「いってらっしゃい」

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「ほらポチとタマ、ドラゴンステーキだぞ」

「るるるるるる」

「りんりんりん」

ポチとタマはよく浮竹に懐いていた。

よくその頭や上半身に噛みついた。

「あははは、ポチ、真っ暗だぞ」

頭に噛みつかれて、浮竹は笑っていた。

「ちょっと、タマ、やめてよ痛いから!」

浮竹がポチから抜け出すと、タマが京楽を噛んでいた。

京楽は股間をタマにかじられていた。

「ぶはっ」

浮竹は吹き出していた。

「ちょっと、浮竹笑ってないでどうにかしてよ。真剣に痛いんだけど」

「タマ、そんな男のイチモツをかじっていたら、性病がうるぞ」

「りんりんりん」

タマは、京楽の股間にかみつくのをやめて、浮竹にじゃれついた。

「浮竹ひどい!」

京楽はわっと泣き真似をする。放置していたが、ずっとそのままなので、仕方なく浮竹は京楽の頭を撫でた。

「ちゃんとタマにかじっちゃだめだって教えておくから、すねるな」

「性病はないでしょ!僕はかかったこともないよ。そもそも僕がかかってるなら、君も・・・」

言葉の続きを、赤くなった浮竹がハリセンでしばいていた。

「タマ、もう一回かじっていいぞ」

「りんりんりん」

「ぎゃああああああああ」

そんな和やか時間が流れていった。

---------------------------------------------

「また、疫病か・・・・・」

アラルの町に出ると、路地裏にいっぱい死体が放置されていた。

ガイア王国の至る場所で、疫病が流行っていた。

冒険者ギルドにいくと、人はほとんどいなくて、受付嬢も病気なのかいなかった。

ギルドマスターに、深刻な顔で呼び出された。

「この疫病は、先週から流行り出して・・・致死率20%だ」

「特効薬は?」

「まだ、王国宮廷錬金術士が、王族と貴族に配った分だけだ。ここに、闇ルートで入手した特効薬がある。君はミスリルランクの錬金術士なんだろう、薬の分析と大量生産を頼みたい。報酬は白金貨500枚だ。どうだろうか」

つまりは、大金貨5千枚分だ。

流石の報酬の高さに、浮竹の心も動いた。元より、このガイア王国が疫病で滅んでは困る。

アラルの町をはよく食料を買い出しにくる町でもある。

「分かった、引き受けよう」

「本当か!」

ギルドマスターが顔を輝かせた。

「期待して、いいんだな?」

「薬の分析のために、この特効薬はもっていくが、いいか?」

「もちろんだ。俺は特効薬を飲んでいて病気にかからない。何か手伝うことがあったら、遠慮せずに言ってくれ」

「分かった。足りない材料があったら、かき集めてもらう」

浮竹と京楽は、冒険者ギルドを後にした。

「浮竹、よかったの?あんな依頼引き受けて」

「このままにするわけにもいかないだろう。アラルの町が滅んでしまう。ガイア王国の王族貴族は特効薬があるから大丈夫だろうが、それが国民に浸透するまでにどれだけの犠牲者がでるか、分かったもんじゃない」

「それもそうだね」

京楽は、裏路地を見て、ため息を零した。

「王族、貴族だけが助かっても、民が死ねば国は機能しないよ。それを国王はわかってるのかな」

「分かっているだろう。そのうち民にも救いの手を差し伸べるだろうが、それまでに、老人と子供から先に死んでいく」

京楽は、特効薬を飲んだ。

味から分析を始める。

「マンドレイクのエキスだな。それにドラゴンの血・・・そんなものか。まぁ、マンドレイクは人間の世界では手に入りにくいからな」

浮竹は早速古城に戻る、錬金術の館で、京楽に中庭に生えていたマンドレイクを大量に引っこ抜いて洗ってもらい、釜に大量にぶちこんで、ドラゴンの血もぶちこんで煮始めた。

「とりあえず、特効薬の完成だ。これを薄めたものを配布する。小瓶が大量に必要だな・・・」

浮竹は、何かの呪文を唱えた。

すると、空の小瓶がたくさんでてきた。

「小さな無機物を複製する民間魔法だ。特別なものは複製できない。小瓶程度なら複製可能だ」

浮竹と京楽は、釜の中身を水で薄めた特効薬を大量に作り、冒険者ギルドに納入した。

あとは、魔女の里と乱菊にレシピを渡しておいた。これで、この疫病も収まるはずだと、浮竹は思った。

「なーんだ。ヴァンパイアは、疫病にかからないのか」

「誰だ!」

冒険者ギルドから古城の帰り道の途中で、幼い13歳くらいの、魔女の恰好をしてホウキにのった少女に話しかけられた。

「うふふふ。あたしは死神のキララ。この王国に疫病のウィルスを巻き散らした、犯人だよ」

「貴様!藍染の手の者か!」

「藍染~?ああ、あのぱっとしない女神アルテナ様の夫か」

「女神アルテナってことは、やっぱり藍染関係の手の者だね。浮竹、気をつけて。この子、本当に死神だよ。魂を狩る」

「うーん、そっちのお兄さん正解」

キララがニッと笑うと、ホウキから飛び降りて、巨大な鎌を構えた。

「さて、狩りの時間だよ」

「狩られるのはお前だ!」

浮竹は、渦巻く血を槍に変えてキララに襲い掛かる。

キララは、それを巨大な鎌で断ち切ってしまった。

「わたしの鎌はねぇ、魔法を吸い取るの。だから、あんたたちの得意な魔法はなんの意味もないんだよねぇ」

浮竹は舌打ちした。

「そんなことはどうでもいい。ここは町中だ。場所を変えるぞ!」

浮竹はヴァンパイアの翼を生やすと、空を飛んだ。

京楽も同じように空を飛ぶ。

「あ、待ってよ!」

キララも、巨大な鎌をホウキに変えて、それに乗って浮竹と京楽の後を追った。

行きついたのは、古城の近くにある森の外れの草原だった。

「ここなら、人間に見られることもないし、巻き込むこともないだろう」

浮竹は、静かに怒っていた。

何の関係もない人間を巻き込んだ、死神のキララに対して、明確な殺意を抱いていた。

「あは、そっちの白髪のお兄さん怒ってる。もしかして、関係ない人間巻き込んだこと怒ってるのお?でも、お陰であたしはいっぱい魂を狩り取れて満足なんだけどなー」

キララの前に、たくさんの魂が浮かんでいた。

「そっちの魔神のお兄さんにあげる。いっぱいあるから、邪神になれるよ?」

「僕はそんな魂はいらないし、邪神にもならない」

「なんでぇ?邪神になったら、やりたい放題できるんだよ?」

「それで、勇者か上位神に滅ぼされるんでしょ。まっぴらごめんだね」

「ちぇっ、うまくいくと思ったのに。普通魔神なら、魂を見ただけで食い始めるのに、どぉしてぇ?」

「僕は、浮竹の血族の魔神だからね!サンダーボルテックス!」

「きゃあ、雷怖い」

キララは、ホウキを巨大な鎌に変えて、京楽の魔法を吸い取った。

「エターナルフェニックス!」

浮竹も、魔法をキララに向けて放つ。

「魔法なんて怖くないもん。このゼーレの鎌が、全てすいとって・・・ゼーレ?」

ゼーレという名の鎌は、刃の部分が赤くなっていた。

「やっぱりな。吸い取るといっても限度があるようだ。魔神クラスの禁呪を2つも吸い取ったんだ。それ以上吸わせるなら、そのゼーレの鎌とやらが耐えきれなくなって、砕けるぞ」

「そんなことないもん!いくよ、ゼーレ!」

キララは鎌を手に、浮竹と京楽を斬ろうとした。

けれど、二人は13歳くらいの少女が振るう鎌の攻撃を簡単に避けた。

「その鎌、身長と筋力にあっていない。もっとまともな武器で攻撃してきたらどうだ」

「うるさい。ゼーレ、魂を刈り取っちゃえ!」

ゼーレの鎌は咢’(あぎと)を開き、浮竹の魂を食おうする。

それに、浮竹は笑んで咢から脱出した。

「なんで!?なんで魂が狩れないの!?」

「あいにくと、俺の魂は俺の体と一体でな!」

「そんなことがあるか!こうなったら、そっちの魔神の魂を狩ってやる!」

ゼーレの鎌の咢に、京楽は魔神の咢を向けた。

「いやあああ、ゼーレが、ゼーレが食べられちゃう!あたしの大切なゼーレが!」

「じゃあ、返すよ」

京楽は、ゼーレの魂を死神のキララに返した。

ゼーレの魂は、死神の鎌となり、キララの魂そのものを狩った。

「いやあああ!!」

キララはなんとか魂の半分だけで済ませて、今度こそ浮竹と京楽の魂を狩ろうと、ゼーレの鎌を向けた。

「エターナルアイシクルフィールド!」

「ゴッドフェニックス、カイザーフェニックス、エターナルフェニックス・・・・トリプルファイアフェニックス!!」

魔力をたくさん込められた、2つの禁呪を受けて、ゼーレの鎌は魔法を吸収しながら、刃の部分の罅を広げて、砕け散ってしまった。

「うそおおおお!!!ゼーレ、ゼーレ!!」

キララは泣いた。

その涙は宝石となって、地面に散らばった。

「よくもゼーレを!殺してやる!」

「武器を失った死神に、何ができるっていうの?」

「うるさいうるさいうるさい!!」

キララは魔法を唱えた。

「ファアイアロー!」

確かに威力がすごっかったが、そんな下位魔法で浮竹と京楽がどうにかなるわけでもない。

「死神かぁ。あんまりおいしくなさそうだけど、その魂、食べてあげる」

「いやああああああああ!!!!」

魔神の咢が開き、バリバリとキララは魂を食われた。

「あああ・・・ゼーレ・・・・ナウセルお父様・・・・」

それだけを言い残して、キララの肉体だけが残った。

「燃やしてしまおう」

「いや、もっといい方法があるよ」

京楽は、凶悪な笑みを浮かべた。

キララの四肢と首を切断し、胴体を2つに斬り分けて、箱に入れて密封し、それを藍染の居城にまで運ぶように式を放つ。

「僕の浮竹に手を出そうとしたらどうなるか、ちゃんと知らせてあげないとね?」

浮竹は、京楽の残酷な部分も受け入れた。

本当は、キララの持っていた人間の魂を大量に食いたかったに違いない。だが、京楽は浮竹との誓いを守るために、あえて人間の魂を食わなかった。

魂たちは、天に昇っていった。

ゼーレの魂は、結局京楽が食べてしまった。


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「すみませーん、藍染様からのお届け物でーす」

「あら、あの方からの届け物ってなにかしら。すこし、匂うわね。なんの匂いかしら」

女神アルテナは、今は城を抜け出している藍染からの贈り物だと思ってそれを受け取った。

中身をあけると、血が滴り落ちた。

「いやああああああああ!!!」

中身は、体をバラバラに切断された、キララの遺体だった。

うじが沸いており、腐りはじめて異臭を放っていた。

「いやよ、いやよ!!!」

女神アルテナは腰をぬかつつも、「ゴッドフェニクス」と唱えて、キララの遺体を焼いた。

「あはははは!アルテナ姉さま、みーつけた」

「女神オリガ?」

「藍染様がねぇ、アルテナ姉さまを実験台に使う許可をくれたの」

「な、何を言っているの!?」

「今度は、アルテナ姉さまが実験台になる番よ?」

そんな力がどこにあるのか、女神オリガが長い女神アルテナの髪をひっぱり、ずるずるとその体を引きずっていく。

「痛いわ、やめて、離して!!」

「アルテナ姉さま、私が嫌だって、やめてって言ったのに、私に子を孕ませたでしょ?アルテナ姉さまには、どんな種族の子供でも産める、道具になってもらうの」

「いやあああああああ!!女神オリガ、私が悪かったわ、やめてええ」

女神オリガにずるずると引きずられながら、実験体の失敗作たちのいる、ぶよぶよした肉の塊がある部屋の試験官の中に、女神アルテナは放り込まれた。

「ばいばい、アルテナ姉さま」

女神オリガの隣には、夫であるはずの藍染が立っていた。

「愛しいあなた!助けて!!」

「もう君にはうんざりだよ。私の許可なく、子を孕んだり、こんなかわいい女神オリガに邪神や死神の子を孕ませたりして・・・・・」

「うふふ。藍染様は、創造神イクシードの代わりになってくれるって誓ってくれたわ」

「藍染!裏切るの!!」

「私を裏切っていたのは、君だろう」

「始祖魔族如きの存在で、女神である私に・・・きゃあああ!!!!」

試験官の中に、ドリルが入ってきて、女神アルテナの体を穴だらけにした。

「ああ、だめよ。子宮は傷つけないで」

次にビームカッターがでてきて、女神アルテナの体から子宮と卵管を取り出す。

それを保存して、試験官の中では元女神アルテナであった肉塊が蠢き、合体してぶよぶとした肉体を作り出す。その肉体の中に、女神アルテナの子宮は埋め込まれた。

「あは、完成した。これで、どんな子種でも孕める。よかったわね、アルテナ姉さま」

アルテナの魂は、肉体を去ろうとした。

けれど、藍染の魔法で肉体に縛られた。

(いやあああああああああ)

魂の叫び声は、誰にも聞こえなかった。

神のアストラル体を作ることもできず、女神アルテナの意識はただの肉塊に飲みこまれていくのだった。



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始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝

「ポチとタマ~。ご飯だぞ~~」

「るるるるるる」

「りんりんりん」

2匹のミミックは、使われていない暖炉から出てきた。

「ほら、ドラゴンステーキだぞ。それぞれの分があるから、仲良く食べるんだぞ」

「るるるるる♪」

「りんりんりん♪」

2匹のミミックは、ドラゴンステーキを食べ終えて、浮竹と戯れだした。

上半身をポチにかまれ、下半身をタマにかじらていれる場面を、ちょうどやってきた東洋の友たちに見られて、西洋の浮竹は固まった。

「いや、これは、その!」

(まぁ、人の趣味っていろいろだし、まぁ自由にしたらいいんじゃないかなぁ」

「ミミックが増えてる・・・・・」

東洋の京楽と浮竹は、引き気味に西洋の浮竹を見ていた。

(じゃあ、ゆっくりしてて。ボクたちはお茶しに、ダイニングルームへいくから」

(じゃあ、ゆっくり自分の欲望を消化させてくれ、西洋の俺)

「だから、誤解だあああああああ」

浮竹は真っ赤になって叫ぶのであった。


-------------------------------------------


「おっほん。情けない姿を見られた」

「それは、浮竹がミミックを好きすぎるからでしょ?」

「うっ」

図星を刺されて、西洋の浮竹は、ジト目で西洋の京楽を睨んだ。

「俺の友がきているなら、何故先に教えなかった」

「だって、君がミミックと戯れるのを邪魔すると、君が怒るじゃない」

「うっ」

(あ~このアッサムの紅茶うまいな)

(本当においしいね)

「東洋の俺たち、あれはただ遊んでいただけなんだ」

(そうなんだ)

(何か欲望を消化しているように見えたけど)

「だから、誤解だ!ミミックと遊んでみれば、その可愛さが分かるぞ?おーい、ポチとタマ~~」

「るるるるる」

「りんりんりん」

呼ばれて、2匹のミミックはダイニングルームにやってきた。

ポチは、まず西洋の浮竹にかみついて挨拶すると、次に東洋の浮竹にかみつこうとして、すごい睨んでくる東洋の京楽に恐怖して、西洋の浮竹の後ろに隠れてしまった。

「そんなに殺気をふりむかなくても、かまれてもどうってことないぞ」

(俺、ちょっとかまれてみたいかも)

「るるるるるる」

東洋の浮竹に、ポチはかみついた。

(十四郎!)

(大丈夫。甘噛みだな。暗くて狭いけど、あったかい)

ポチは、かみつくのを止めて、東洋の浮竹のほっぺを舐めた。

(あははは、くすぐったい)

(このミミックめ!)

東洋の京楽が妖刀を持ち出すものだから、ポチとタマは鳴きながら寝床の暖炉にもどってしまった。

「西洋の京楽、落ち着け」

(ボクの十四郎に触れていいのは、ボクだけだよ)

「ふふふ、愛されてるな、東洋の俺」

東洋の浮竹は真っ赤になった。

「これ、僕がこの前もらったレシピで作ったシュークリームの中身をアイスにしたものだよ」

お茶菓子にと、西洋の京楽は皆に振舞った。

(冷たくておいしい。アイスシュークリームってやつだな)

(確かにおいしいね。口の中で溶けていくバニラがなんともいえないよ)

「うまいぞこれ、京楽。おかわり」

「はいはい。たくさんあるから、好きなだけ食べていいよ」

その言葉に、東洋の浮竹もおかわりを所望した。

「口にあって、何よりだよ」

西洋の京楽も、椅子に座って紅茶を飲みながら、自分で作ったアイスシュークリームを食べた。

「ああ、そういえば新しい鎮痛剤を作ってみたんだ。バナナの味にしておいたから、良ければ何か痛みがあるときにでも飲んでくれ」

西洋の浮竹が取り出した鎮痛剤は、真っ赤でボコボコと泡を吹いていた。

(なんか、服用したら別に傷みがありそう)

「そんなことないぞ」

西洋の浮竹は、スプーンで鎮痛剤をすくうと、紅茶を飲んでいた東洋の浮竹の口にそれを突っ込んだ。

(うわあ、ほんとにバナナの味がする。おいしいし、すーっとする)

「ミントも入ってるからな。ただ、ミントの味はでないように調整をしておいた」

「浮竹ってば、最近錬金術で薬作って、味を改良するのにはまってるの」

(へぇ。傷を治す薬とかはないの?)

「あるぞ。このダメージ回復ポーションだ」

見た目はメタリックブルーだった。

「チョコレート味だ。持って帰るか?」

(そうだね。何かあった時にでも、使わせてもらおうかな・・・十四郎?)

(俺が癒してやるのに・・・・)

しょんぼりする伴侶を抱き寄せて、東洋の京楽は東洋の浮竹を抱きしめた。

(そうだね、こんな得体の知れない薬を飲むより、キミに治してもらえるもんね)

「得体の知れない薬とはなんだ。これでも、ミスリルランクだぞ。王国宮廷錬金術士にも、勝ったのに・・・・・・」

「浮竹、向こうの世界には魔法がない。薬を飲んだら、いきなり傷が治る薬なんてあったら、やばいでしょ」

「それもそうか。じゃあ、この花粉症が治る薬でも持って帰れ」

にこにこ笑う西洋の浮竹に断り辛くて、結局二人は花粉症にきく薬をおみやげだともたされるのであった。

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「そっちにいったぞ!」

(蛇影!)

西洋の京楽は、影から蛇を出すと、目的の大ねずみを退治してしまった。

「食べるなよ?今、このねずみからウィルスが感染して疫病が流行っている。薬をつくる」

そう言って、古城に大ねずみの遺体を持ち帰ると、血を抽出して、そこに何かの液体を注ぎ、生きたマンドレイクをぶちこんで、ドラゴンの血もぶちこんで釜で煮込むこと20分。

透明な薬が完成した。

「量産するから、手伝ってくれ」

(わかった)

ある程度の数を作ると、あとはレシピを王国宮廷錬金術士に渡して、西洋の浮竹は薬を安価で市場に流した。

どんどん売れて、在庫はあっという間になくなってしまった。

猫の魔女乱菊にもレシピを渡したので、すぐにでも追加品がやってくるだろう。

「やっぱり、君、人間が嫌いじゃないんじゃない?」

「そんなことないぞ。嫌いだ」

「じゃあ、なんで疫病の病の薬なんて作るの。対して儲からないのに」

「ほら、血の帝国で流行ったらやばいだろう」

適当に口を濁す。

「やっぱり、君は人間が好きなんだね」

(そうなのか?)

(そうにしか見えないね、確かに)

「お、俺は人間は嫌いだ」

真っ赤になって否定する西洋の浮竹に、素直じゃないなぁと、皆思うのであった。

「東洋の俺。疫病の薬作りなんかに巻き込んで、すまなかった」

(ううん、この国の人のためだろ。俺に力になれることがあったら、どんどん頼ってくれ)

「いや、今回はこれで終わりだ。魔女たちにも薬のレシピは渡したから、疫病は直に治まるだろう」

(そうか。俺たちは、そろそろ戻らないと)

(うん。長時間留守にするのもなんだから)

「選別だ。もっていけ」

西洋の京楽は、大金貨を一枚投げてよこした。

「じゃあな!」

西洋の浮竹は走り去ってしまった。

(金貨もらっちゃった)

(記念に残しておく?)

(そうだな。残しておくか)

こうして、二人は元の世界に戻っていくのであった。ポケットには、花粉症にきく薬をちゃっかり入れていた。




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始祖なる者、ヴァンパイアマスター50

浮竹には、かつて5人の血族がいた。

1番目は志波海燕、2番目はニィ・ペルル・シュトレウス、5番目ブラディカ・オルタナティブ。

まだ3番目と4番目が不明であった。

その3番目は、かつて人間であり、京楽と同じように魔神となり、その存在を進化させて邪神となったディアブロであった。

ディアブロは、邪神として神々に滅ぼされた。

当時の浮竹は絶望し、休眠に入った。

休眠から起こした相手が、4番目の血族で、今はまだ不明であった。

「愛しい浮竹。わたしは、あなたのために邪神となった。待っていてくれ。愛しいあなたの血族に、もう一度なってみせる」

ディアブロは空を飛ぶ。その凄まじい瘴気に、森の木々が枯れていった。

---------------------------------------------------------------------


それは、浮竹が一人で古城のプランターの、桔梗に水をやっている時だった。

「浮竹。私の愛しい人・・・・」

「誰だ!?」

浮竹は、振り返った。

「ディア・・・ブロ?」

そこにいたのは、5千年前に血族として愛し、魔神になりやがて邪神になり、浮竹の目の前で女神ククルに滅ぼされ、封印されたはずの男だった。

「ディアブロ!」

京楽は驚きのあまり、愛していたディアブロを抱きしめていた。

「本当にお前なのか!生きていたんだな!?」

「そう、生きていた。封印を、藍染が解いてくれた」

「藍染・・・」

その言葉を聞いて、浮竹は身構えた。

「何をそんなに威嚇する?私は今でもあなたを愛している。あの頃と、何も変わっていない」

「ディアブロ・・・・俺には、今愛する血族がいるんだ。ディアブロをもう一度血族にすることはできない」

「知っているよ、浮竹。神喰らいの魔神京楽があなたの血族でしょう。彼を殺して、私が、私だけが愛するあなたの血族になるよ」

「ディアブロ!」

ディアブロは、匂いのない布で浮竹の鼻と口を覆った。

すぐに眩暈がして、猛烈な眠気を感じて、浮竹は意識を失った。

「京楽よ!」

大声をあげると、京楽がでてきた。

「誰だい・・・って浮竹!浮竹に何をした!」

敵の手に落ちたであろう浮竹を取り戻そうと、魔剣ラグナロクを引き抜いた。

「この場で、争う気はないよ。私の名はディアブロ。浮竹の3番目の血族。リンデルの花園ある、古い館においで。そこで待っているから」

そう言って、浮竹を抱き上げて、ディアブロは大きな黒い翼を広げると、飛び去ってしまった。

桔梗の花が枯れていた。

「瘴気・・・あれは、邪神か」

リンデルの花園は、古城からそう遠くはない場所にある。

京楽は、戦闘の準備を進めて、リンデルの花園に向かった。

そこにある古い館は、手入れがきちんとされていて、人が住んでいる痕跡があった。

「ディアブロ、言いつけ通りに来たぞ!浮竹を返してもらう!」

「よく、逃げずにきたね」

リンデルの花園は、花が咲き乱れる綺麗な場所のはずだった。ディアブロの瘴気にやられて、花は全部枯れていた。

「僕が逃げるわけないでしょ。浮竹を返してもらうよ」

「ディアブロ。誰かきたのか?」

「ああ、愛しい浮竹。なんでもないよ、ただの賊だよ」

「浮竹!!」

古い館の扉から出てきた愛しい主は、ディアブロに抱きしめられながら、うっとりとしていた。

「浮竹、僕が分からないの!僕が助けにきたよ!!」

「ディアブロの知り合いか?俺には心当たりがないんだが」

「浮竹の記憶をいじったの?」

「少しだけ。記憶を5千年前のものにすり替えた」

「君って人は・・・・・」

ゆらりと、魔神としての魔力が蠢きだす。

「さぁ、決着をつけようか。浮竹はどの時代でも、血族は一人しか作らない。私か君のどちからだ」

「浮竹の血族は僕だ!この地位は、どうあっても手放すわけにはいかない!」

京楽は血のでできた鎌を作り出す。

「私も、もう一度浮竹の血族になりたいのだよ。愛しい存在が、5千年の時を経て色あせることなく生きていると知った時の私の感動は言葉では言い表せない・・・・・」

「浮竹が愛しいなら、見守ることを選ぶことだってできたでしょ!」

血の鎌は、まだ攻撃しない。

「私は嫌なんだ。愛しい存在が、他の男に抱かれて乱れるなんて。私は浮竹さえいればそれでいい」

「それは僕も同じだよ!浮竹さえいれば、後は何もいらない」

「さぁ、愛しい浮竹。君は私とこの魔神、どっちを愛している?」

「ディアブロを愛している」

浮竹はなんと戸惑いもなしに、ディアブロだと即答した。

京楽は、アイテムポケットの中にエリクサーを忍ばせていた。

「戦う前に、浮竹に別れをいいたい。それくらい、いいでしょ?」

「ああ、いいとも。思う存分、別れを惜しんでくれ」

京楽は、浮竹の傍にいくと、エリクサーを口に含み、口移しで中身を飲ませた。

「・・・・あ。京楽?」

「何をした!」

ディアブロが、怒り出す。

「エリクサーを飲ませたのさ。浮竹を正気に戻しただけだよ」

「ディアブロ!退いてくれないか!俺は、お前と戦いたくない!愛していたんだ、ディアブロ!」

浮竹は記憶を戻して、ディアブロをただ見つめていた。

「愛していた・・過去形か。あなたは酷い。こんなにも私はあなたを愛しているのに、あなたは私を拒絶する」

「ディアブロ!!」

「さがっていて、浮竹。彼には言葉は通じない」

「京楽も、ディアブロも止めてくれ!こんな不毛な争いなんて見たくない!」

浮竹は涙を零していた。

その涙を、ディアブロが受け取る。

「君の体液は甘い。蜜のようだ」

「ディアブロ、お前は俺の目の前で5千年前に女神ククルに滅ぼされた。俺にとって、お前は亡霊なんだ」

「亡霊でもいいよ。すぐに君の血族になって、僕を愛しく思えるように、またしてあげるから」

京楽は、血の鎌でディアブロを切り裂こうとした。

ディアブロはそれを避けて、ディアブロもまた血の鎌で攻撃してきた。

邪神ではあるが、浮竹の血族だったこともあって、本来はヴァンパイアロードだった。

お互い、血の鎌や刃で切り結びあう。

「京楽!」

「ごめん、今は君の言葉でも聞いてあげれそうにない!」

ディアブロの血の鎌が、京楽の肩を切った。

「京楽!」

「これくらい、大丈夫」

京楽の血の鎌が、今度はディアブロの肩を切った。

それぞれ血を武器に、対峙する。

「エターナルフェニックス!」

京楽は、炎の禁呪を発動させた。

「エターナルアイシクルワールド!」

それを、ディアブロは氷の禁呪で迎え撃つ。

二人は睨み合いを続けた。

先に動いたのは、京楽のほうだった。

魔剣ラグナロクを手に、ディアブロに切りかかる。

ディアブロアはその刃を腕でわざと受けると、右腕が吹き飛んだ。

それをすぐに血で再生させて、京楽を血の槍で貫いていた。

「がはっ・・・・・・」

肺をやられたのか、京楽はゴホゴホと咳き込み、地面に膝をつく。

「ゴッドウォータープレッシャー」

水圧で潰しにかかったディアブロの魔法を、炎の魔法で水を蒸発させた。

「エターナルアイシクルフィールド!」

京楽は、自分ごとディアブロを巻き込んで、凍結させていく。

ざぁぁあと、天から雨が降り出した。

「うおおおおおお!」

ありったけの魔力をこめて、血の槍を作り出すと、それでディアブロの心臓を貫ぬいた。

「おおおおお!!」

ディアブロは、傷を再生させようとする。

けれど、渦巻く京楽の血が、それを邪魔する。

その瞬間を狙って、京楽は炎の不死鳥を呼んだ。

「エターナルフェニックス!」

ごおおおおと、心臓を焼かれて、ディアブロが前のめりに垂れる。

「ディアブロ!」

浮竹がかけつけると、ディアブロは牙を伸ばして浮竹の肩に噛みつき、血を啜った。

「何を・・・・ディアブロ・・・・」

浮竹は、その場に倒れた。

「ふう。君の血をもらったよ。こうでもしないと、愛しい君を前に死んでいたからね」

「浮竹が大事なのに、浮竹を傷つけるのか」

「違うよ、これは愛だよ」

「そんな愛、僕は認めない」

京楽は、血の弾丸を作り出すと、ものすごいスピードでそれを打ちこんだ。

「うわあああ!!」

ディアブロは何か所か血の弾丸を浴びて、血まみれになっていた。

「くそ、魔神程度が・・・・」

「魔神と邪神の差は、そんなにないものだよ」

すでに一度、邪神を喰らっているから分かることだった。

「君は愛という言葉で浮竹を傷つけた。許せない」

京楽は、ざあぁぁと激しく降ってくる雨の中、佇みその時を待った。

天から、神の怒りのような稲妻が、京楽に落ちる。

「あああああ!サンダーボルテックス!!!」

自然の落雷を利用した雷の禁呪に、ディアブロの体が焦げていく。

「私は、浮竹を愛して・・・・・」

ざっと、その場に頽れる。

「浮竹・・・浮竹、愛している・・・・」

倒れていた浮竹は、京楽の手で置き上がっていた。京楽の血を口にしていた。

「嫌だ、嫌だ、浮竹、私を捨てないでくれ・・・」

「ディアブロ・・・・・」

浮竹は、ディアブロの傍にやってくると、ディアブロに口づけた。

「愛していた。きっと、今も愛している」

「なら、せめて君の手で・・・・・」

浮竹は頷いて、京楽から魔剣ラグナロクを借りると、その首をはねた。

「愛しい浮竹。これで、私の命はあなたの記憶の中で生き続ける・・・」

浮竹は、ディアブロの首を抱きしめると、泣きだした。

「ディアブロ、ディアブロ、愛していたんだ。うわああああ!!!」

雨はさらにひどくなり、浮竹の涙は雨なのか涙なのか分からなくなった。

「浮竹」

びくりと、体を震わせる。

「俺は最低だ・・・・愛していた人を、その手にかけた」

「浮竹・・・・」

ディアブロは完全に生命活動を停止させて、冷たくなっていく。

「せめて、新しい命になれ・・・・・来たれ、フェニックス!」

浮竹は、炎の最高位精霊フェニックスを呼び出すと、ディアブロの遺体を焼かせた。

灰の中から、瑠璃色の小鳥が生まれて、ちちちちと鳴いて、浮竹の肩に止まった。

「ほら、抑えているとはいえ、京楽の瘴気にやられるから、森へお帰り」

瑠璃色の小鳥は、再度チチチと鳴いて、浮竹の肩に糞をして、去ってしまった。

「糞された」

浮竹は笑っていた。

「浮竹・・・もう大丈夫?」

「ああ。取り乱したりしてしまって、すまない」

「いいんだよ。君の愛した人だったんでしょ?」

「そうだ。5千年前、血族にして愛した。魔神になり、俺を迫害する王国を滅ぼして邪神になり、女神ククルに、俺の目の前で殺された」

浮竹は、笑いながら泣いていた。

「あれ、おかしいな。涙が止まらない・・・・」

「もういいんだよ。もっと思い切り泣いても」

「京楽・・・うわあああああ!!」

浮竹は、京楽の膝の上で泣きまくった。

「京楽・・・・何があっても、邪神にはなるな」

「ならないよ。そんなに人間を殺したくもないし。そう言えば、今回はディアブロの魂を食べ損ねたね。まぁ、君の愛しかった人の魂を食うほど、落ちてはいないけどね」

浮竹は、残ったディアブロの灰を花園にまいた。

瘴気はもう残っていなくて、浮竹の魔力もあり、リンデルの花園はいろんな花で満開になった。

雨はいつの間にか止み、虹が出ていた。

「綺麗だな」

「うん、綺麗だね」

「ディアブロは、邪神だが天国にいけただろうか」

「きっといけたよ。瑠璃色の小鳥もディアブロでしょ?」

「少し違う。ディアブロの魂の一部を宿らせただけだ。魂の全ては、天に還った。

「そう・・・・・」

京楽は浮竹を抱きしめて、くちづけた。

「あ、瑠璃色の小鳥の糞のこと、忘れてた」

抱きしめ合ったので、互いの服が汚れていた。

「上の服は脱いで帰ろう」

「ああ・・・」

ディアブロは、きっと幸せだ。

愛している人の手にかかり、死ねたのだから。

「ねぇ、浮竹・・・」

「嫌だ」

「僕、まだ何も言ってないよ?」

「それでも嫌だ。どうせ、邪神になったら君の手で殺してくれというつもりなんだろう。そんな哀しいことをいうな。そんなことにはさせない」

「あらら・・・・・・」

ジワリと涙を滲ませる浮竹を、胸にかき抱く。

「安心して。僕は絶対に邪神になったりしない」

「約束だぞ?約束を破ったら、死んでお前の傍にいくからな」

不老不死の呪いがあるが。

矛盾した言葉に、けれど愛しさがつもり、二人は古城に帰るとそのまま睦み合った。


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「ああああ!」

京楽のものを迎え入れたそこは、限界にまで広げられていた。

「ねぇ、指いれてもいい?」

「ひあ!」

広がったそこに指を一本入れてみると、やすやすと飲みこんだ。

「あーあ。浮竹の体、エロくなちゃって・・・・・・」

「お前のせいだろうが!あああ!」

浮竹を再度貫き、京楽は揺すぶった。

「あ、あ!」

浮竹は啼いて、その行為を受け入れた。

「君を本当に愛しているのは僕だけって、思い知らせないとね?」

「やああああ」

京楽は一度引き抜くと、浮竹をうつぶせにした。

そのまま四つん這いにして、背後から貫いた。

「やあああ!!」

ぱんぱんと肉と肉がぶつかりあう音はして、結合部はお互いの体液とローションが混じったもので泡立っていた。

「ひあああ!」

京楽は一度入口付近にまでくると、一気に最奥まで貫いた。

「いああああ!」

浮竹は背を弓なりにしならせて、精液をシーツに零しながら、オーガズムでもいっていた。

「今、血を吸ってあげるからね?」

「やあああ、だめえええ!今はいってるから、だめえええええ!!」

京楽はそんなことお構いなしに、浮竹の太ももに噛みつき、血を啜った。

「あ”あ”あ”!」

ごりっと奥の結腸にまで侵入されて、浮竹の中がきつく締まる。

「君に注ぐから、全部受け取ってね?」

「ひあああ」

浮竹は意識を朦朧とさせながらも、京楽の熱が自分の中で弾けるのを感じていた。

「あ、もっと・・・」

限界を感じながら、貪欲に求める。

「君の胎がちゃぷちゃぷになるまで、注いであげる」

間に休憩を挟み、お互い疲労回復のポーションを飲んで、交じりあった。

「や、もう限界・・・・・やああああ」

「ふふ、僕も限界だよ。胎はちゃぷんちゃぷんになった?」

「とっくの昔に、なっている」

外側から見ても分かるくらい、浮竹の胎はぽっこりしていた。

「抜くね?」

「あああ・・・・・・・」

ぶわっと、京楽が放ったものが逆流してきた。タオルで受け取めるが、量が多すぎてシーツにも染みを作っていく。

それはマットレスまで染みこんだ。

「新しいマットレス、買わなくちゃ・・・・」

「お前がこんなに出すからだ、ばか!」

殴られながら、自分は浮竹の血族であることを噛みしめて、京楽は幸せそうだった。

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「ポチ~~~」

「るるるる」

「ほら、とってこい」

浮竹がボールを投げると、ポチは嬉しそうにボールを追いかけて、くわえて浮竹のところにもってきた。

「えらいぞ。ほら、ドラゴンステーキだ」

「るる♪」

ポチは美味しそうにドラゴンステーキを齧る。

「るるるるるる」

浮竹の上半身にもかみつくが、甘噛みであった。

「ポチにな、友達を連れてきたんだ」

そう言って、浮竹は新しいミミックをポチに紹介した。

「タマだ。仲良くしてくれよ?」

「るるるるるーーー」

「りんりんりんりん」

ミミック2匹は、仲良く古城を散歩した。

ポチが、いろんな場所を紹介しているようで、タマは「りんりんりん」と鳴きまがら、ポチ仲良く遊ぶのだった。

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「そう。邪神ディアボロスは死んだの」

「はい。式で確かめました」

「死神ナウセル。あなたに頼みがあるの」

「始祖浮竹と、神喰らいの魔神、京楽の暗殺ですね?」

「堂々と戦うから、だめなのよ」

死神ナウセルと呼ばれた青年は、神ではあるが、死神でどちらかといと、存在は魔神や邪神に似ていた。

「僕は自分の命が惜しい、やるなら一人でやりな、この厚化粧ババァ」

「なんですって!!!」

女神アルテナは怒り、雷をナウセルに浴びせた。

ナウセルはぴんぴんしていた。

「この青二才が!」

「うふふふふ。次は、この子がいくわぁ」

壊れた女神オリガは、また子を孕まされていた。

今度は、死神ナウセルの子だった。

「早く生まれておいで、死神キララ」

性別は女の子だった。

「女神オリガ。僕の子は僕のものでもある。一緒に、この狂った世界を抜け出そう」

「ええ、どこにいくのぉ?」

「創造神イクシードの元へ」

「いやよ!」

女神オリガは、嫌がった。

「イクシードは私を助けてくれなかった。私は、ここで神々の子を産み続けるの」

「そうよ、女神オリガ。あなたの体は、私のものだもの」

「ちっ、狂ってる。僕は行かないからな。邪神ディアブロのようになりたくない」

死神ナウセルは、狂った藍染の居城から姿を消すのであった。

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