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小説掲載プログ
02 2024/03 1 3031 04

始祖なる者、ヴァンパイアマスター35

始祖魔族、藍染惣右介は自分の配下であるグリムジョーに、魔人ユーハバッハの血を大量に注射した。

グリムジョーは魔人ユーハバッハの意識に飲まれそうになりながら、己を保った。

「始祖浮竹と血族の京楽・・・・」

藍染にすりこまれた、敵の名前であった。

すこまれた怒りと憎悪は、グリムジョーの心を真っ黒に染め上げた。

「殺す。俺が殺す」

ただ血を求めて、グリムジョーは歩き始める。

魔国アルカンシェルで、グリムジョーは藍染を手にかけていた。

自分をこんな風にした藍染に、耐えきれなくなったのだ。

ぐしゃりと、藍染の顔を床に叩きつけて、その脳みその中身をぶちまけてやった。

でも、藍染は不老不死だ。

ゆっくりと傷を再生する藍染を最後まで見守ることもなく、グリムジョーは魔国アルカンシェルを後にするのだった。

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「浮竹、そのまま動かないで」

古城で、京楽は浮竹をモデルにして絵を描いていた。

「ちょっと見せろ」

「ああ、動いちゃだめだよ!」

浮竹が見た京楽の絵は、例えるならピカソであった。

「これのどこが俺なんだ」

「ほら、こことかちゃんと髪長いし、君のエロティックな瞳もここにちゃんとあるし、桜色の唇だってここに」

スパーーン。

ハリセンをうならせて、浮竹は京楽の頭を殴った。

「恥ずかしいこと言うな!」

「まぁまぁ。続き描きたいから、もう一回座ってモデルになって?」

始めはヌードモデルをしろと言われて、京楽の頭をハリセンが殴り続けたら、普通の姿でいいと言われた。

ソファーに腰かけて、ただ動くこともできずにじっとしてるのは、苦痛だったが。

やがて2時間ほどが経って、絵は完成した。

絵具で塗られた絵は、やはりピカソのようであった。

「ほら、どこからどこを見ても、君にそっくりでしょ?」

「俺がこんな姿なら、顔から目と唇がはみ出ている」

「あくまで君の個性を重点的に描いたから」

瞳は赤く、真紅だった。

背中には、出していなかったヴァンパイアの翼が描かれていた。

「俺かどうかはさておき、とりあえずヴァンパイアを描いたことだけは分かる」

「やだなぁ、そんなに僕の絵が気に入ったの?アトリエとして使ってる部屋に、君の絵は何枚もあるから、壁にでも飾ろうか?」

「やめろ、この美しい古城の中身が損なわれてしまう」

美しく高い調度品が溢れる古城に、京楽の絵を交えると、そこだけ不毛な空間ができそうな気がして、浮竹は断っていた。

「やほー。遊びにきたわよ」

「お、乱菊じゃないか」

「乱菊ちゃん、ちょっとだけお久しぶり」

この前、乱菊が遊びにきたのは今から1カ月ほど前。

ちょうど、浮竹が女神に攫われて4カ月が経った頃だった。

浮竹は相変わらず強いが、京楽は再覚醒をして、今までと比べ物にならないくらい強くなっていた。

「相変わらず、京楽さんの魔力の高さには驚きの言葉しか浮かばないわ」

「僕も、強くなりたくてね。きっかけがあって、再覚醒したんだよ」

「その再覚醒の内容、詳しく聞きたいけど、駄目よね?」

乱菊は、そっと京楽の手をとって、神々の谷間に誘導した。

「いくら乱菊ちゃんでも、言えないね。浮竹が嫉妬しちゃからね」

「おい、京楽、その手はなんだ」

乱菊の神々の谷間に手をつっこんでいる状態に、気づけばなっていて、京楽は焦った。

「いや、これは乱菊ちゃんが勝手に」

「問答無用!」

スパーンとハリセンで叩かれて。京楽は少しだけ涙目になるのであった。


「いやーん、やっぱりこの古城のご飯おいしいわ~」

「好きなだけ滞在するといい」

「じゃあ、お言葉に甘えて、1週間ほどここに泊まってもいいかしら?」

「ゲストルームはいくつもあるし、どれも空いてる。好きなようにするといい」

「やったあ!」

乱菊は、それから1週間泊まった。

その間に、京楽は乱菊にモデルになってくれと頼み、乱菊の肖像画を2枚完成させた。

「うーん、なんていのかしら。斬新だと言われれば、斬新ね」

「僕の浮竹は駄作っていうんだよ。僕の芸術を理解してくれなくてね」

「うーん。でも、プロの人が見たら、何か意見くれるかもね」

「僕にも浮竹にも、プロの芸術家の知り合いなんていないよ?」

「あたしにつてがあるの。ちょっと任してちょうだい」

そうして、乱菊は京楽の絵の何枚かをもって、出かけてしまった。

帰ってもってきたのは、金貨の袋だった。

「凄いわよ、京楽さん。先生が大絶賛なの。絵を売ってくれって言われて売っちゃたけど、別にかまわないわよね?」

「うん、僕はかまわないよ」

「信じられん。あの京楽の絵が売れたのか」

にわかに信じがたくて、その画商の名を聞くと、そこそこ有名な画商で、浮竹もその画商から何枚か高価な絵をかって、古城に飾っていた。

「あの絵がなぁ」

浮竹は、まだ納得がいかないようだった。

「もう、浮竹も素直に僕を褒めてよ!」

「ああ、良かったな京楽。あんな幼稚園児の落書きのような絵が評価されるなんて」

「酷い、何気にけなしてる!」

「まぁ、祝いだ。今日は俺が何か作って・・・・・」

「わあああ!お祝いとかいいから、今日は僕が作るね!」

そう言って、京楽はキッチンに向かってしまった。

その日の夕食を食べて、次の日の朝には乱菊はガイア王国の、古城に近い街にある屋敷に帰っていった。

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「あのー、浮竹さん、京楽さん、これ届け物なんすけど」

現れたのは、一護だった。

「誰からだい、一護君」

「ブラッディ・ネイから」

浮竹は荷物を受け取り、中身を見る。

そして中身を流し台に捨てて、容器をゴミ箱に放り投げた。

「何が入ってたんすか?」

「媚薬だ。おまけに強烈なやつ」

「ええ、勿体ない!」

京楽が、流し台を見るが、全部綺麗に流れた後だった。

「京楽に飲ませたら、お前朝まで俺を犯すだろう!ブラッディ・ネイは変なものしか送ってこない。この前は、大人のおもちゃだったか・・・叩き壊したが」

「はは・・・・」

一護は、乾いた笑いを浮かべるのであった。

「じゃあ、俺の用は済んだんで、戻りますね」

ピリリリリリ。

いきなり、警告音が響いた。

「な、なんすか?」

「侵入者だ。一護君は、安全な場所に避難していてくれ。奥のゲストルームにでも入っていてくれ」

「はい」

「行くぞ、京楽」

「うん、分かってるよ」

侵入者は、若い男だった。

「藍染の匂いと、魔人ユーハバッハの匂いがぷんぷんする」

「魔人ユーハバッハの血を、大量に注射されてるようだね」

「俺はグリムジョー・ジャガージャック。大人しく、殺されやがれ!」

グリムジョーは、鋭い爪で襲い掛かってきた。

「なんて速さだ!反応速度がはやい」

「足場を悪くしよう」

浮竹は、そう言って、足場を沼地にかえた。

「ちっ、これくらいで俺の素早さを奪ったつもりか!」

「浮竹!」

グリムジョーの爪が、浮竹の肩に触れた。

鮮血が舞う。

「よくも浮竹に傷を・・・!」

京楽は、その神に匹敵しうる魔力をとがらせて、グリムジョーに向けては放つが、グリムジョーは特技のスピードで、それを避けてしまった。

「く、ちょこまかと・・・・・」

「フリーズアイビー!」

浮竹が呪文を唱えた。

それは氷の蔦となってグリムジョーの体にまといつき、グリムジョーの動きを封じた。

「今だ、京楽!」

「うん、分かってるよ!」

京楽は、自分の血でできた槍で、グリムジョーの腹を貫ていた。

「がはっ」

「グリムジョー!?」

出てきたのは、一護だった。

「一護君、危ない!」

怪我を負ったものの、致命傷にはなりえず、グリムジョーは尖らせた爪で一護に襲いかかろうとした。

「一護!?一護じゃねぇか!」

グリムジョーは、振り上げていた手を下げた。

「やっぱりグリムジョーだ。懐かしいな」

「一護君、知り合いか?」

「ああ、浮竹さん。こいつ、ヴァンピールなんだ。生まれ故郷で一時期一緒に暮らしてた」

「今回の敵が、一護の知り合いだったとはな。止めた止めた。強そうで勝てそうにねぇし、命は惜しいしな」

そう言って、グリムジョーは尖らせていた爪を元に戻した。

殺気が消えて、一護の知り合いということもあって、浮竹と京楽も昂っていた魔力を通常に戻す。

「君は、魔人ユーハバッハの血に汚染されているね。取り除いてあげるから、こっちいおいで」

「なんだと?そんなこともできるのか?」

グリムジョーは半信半疑で京楽に近寄る。

京楽は魔法陣を描きだすと、グリムジョーの中の血液から、魔人ユーハバッハの血だけを取り除いた。

魔人ユーハバッハの血は、蠢いて次の標的に京楽を選んだ。

「おっと、危ない危ない」

京楽は自分の血を燃やし、ついでに魔人ユーハバッハの血を燃やして蒸発させた。

「これで、君はもう大丈夫だ」

その言葉に、グリムジョーが簡単に動く。前よりもスピードは落ちているが、いつもの自分の肉体だった。渦巻くような血液の濁りが消えていた。

腹の傷も塞がっていた。

ふと、グリムジョーが一護を見た。

「一護、今てめぇは何してやがるんだ」

「ああ、血の帝国で聖女ルキアの守護騎士をしてるぜ」

「守護騎士だぁ?面白そうじゃねぇか。俺も混ぜろとはいわねぇが、お前についていく」

「え、まじかよ。まぁ、俺のだちだし、ルキアに迷惑かけないなら、連れていってもいいぜ」

一護の言葉を受けて、グリムジョーは嬉しそうにしていた。

グリムジョーは戦いが好きだった。戦いの中で己を見つけていた。

「やっぱお前とのバトルが一番滾るからな。一護、今度俺と勝負しろ」

「とりあえず、ルキアの許可を得てからだな」

「話は決まったな。じゃあな、始祖の浮竹とその血族の京楽。藍染からお前らを殺せって命令されてたが、俺にはあいつの言葉を守る義理はねぇ。あばよ」

そう言って、突然襲いかかってきた藍染の手の者は、自分たちに危害をほとんど加えずに、血の帝国に一護と一緒に帰ってしまった。

「なんだか、台風のような子だったね」

「それより京楽、お前いつの間に魔人ユーハバッハの血を取り除けるようになったんだ?」

「ん、再覚醒してからだね。今度、君に魔人の血が入っても、僕が浄化できるから、安心していいよ」

「いや、まずそんな状態になってたらピンチだろ」

二人とも顔を見合わせて、血の帝国に行ってしまったグリムジョーの成功を祈った。

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「グリムジョーめ!あの裏切者が!」

魔国アルカンシェルでは、藍染が怒りに顔を歪ませていた。

「拾って育ててやった恩を忘れるとは・・・・・」

「藍染様」

「なんだ!」

「寵姫アルテナ様がお見えです」

「愛しいあなた」

ゆらりと、女神アルテナの魂を宿した女性が現れた。女神アルテナは、創造神ルシエードに滅ぼされる直前に、魂だけの存在となり、このアビスの世界に逃れてきていた。

「愛しいあなた。今度は、私たちの子がいくわ。注いでやった女神の力で、あのにっくき始祖浮竹と、その血族京楽を殺してやるのよ」

魂だけの存在となった女神アルテナは、アビスで女神の器を探して、藍染と出会った。藍染は、器にと、魔人ユーハバッハの血を与えた寵姫を差し出してきた。

その器は、嘘のようによく女神アルテナの魂と交じりあい、女神アルテナは復活した。女神としての力は魂にあった。憎き始祖ヴァンパイア浮竹とその血族京楽を葬れるなら、女神アルテナはなんでもした。

「女神と始祖魔族の子、セイラン」

「はい、母様」

女神アルテナは、藍染との間に子を産んでいた。子はセイランと名付けられた女の子であった。

臨月までに1カ月、あと4か月をかけて、セイランは10歳まで成長した。

「さぁ、行ってらっしい。始祖魔族と血族京楽を、いたぶってくるのよ」

「はい、母様」

セイランの顔には、なんの感情も生まれていなかった。

あくまで、女神アルテナにとっても、藍染にとっても、駒にしか過ぎなかった。

「女神アルテナ、次の子を産んでくれ」

「いいわ、愛しいあなたのためなら、何人でも産んであげる」

女神アルテナと、藍染は口づけを交わし合いながら、次の子を作るために寝所に引きこもるのだった。





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始祖なる者、ヴァンパイアマスター34

「浮竹・・・・・」

むざむざ、愛しい者を攫われた京楽は、自分の力のなさに嘆き悲しんだ。

血の暴走は止まらず、自分自身を傷つけながら、血の竜巻を起こしていた。

体が燃えるように熱かった。

何かが、自分の中で弾けていた。

ふと、京楽の傍に違う女神が立っていた。

「女神アルテナ、よくも浮竹を!浮竹を返せ!」

それは、浮竹を攫って行った女神アルテナによく似ていた。

「私は女神アルテナの妹、女神クレス」

「そんな存在が、僕になんの用だ!」

「女神アルテナから、伴侶を取り戻したいのでしょう?私の血を飲みなさい。あなたは再覚醒を始めています。私の血を飲めば、再覚醒を成功させるでしょう」

京楽は、その言葉に逡巡した。

「他意はありません。愚かな姉の後始末をしたいだけです。私の血を飲めば、あなたの再覚醒は確実なものとなるでしょう。ただ、私の血を飲むのはきっかけです。始祖ヴァンパイアの血族であることには、変わりありません」

「血を飲めば、強くなれるのかい?その再覚醒とやら・・・この熱い体の鼓動が、どうにかなるのかい?」

「再覚醒をすれば、少なくとも、女神アルテナから伴侶を連れ戻すくらいには、なれるでしょう」

その言葉に、京楽はごくりと唾を飲みこんだ。

女神クレスは、聖杯を取り出し、その中に己の血を注いでいく。

「このまま女神アルテナに愛しい伴侶を奪われたまま嘆くか、それとも私の血を飲んで再覚醒し終わり、女神アルテナから愛しい伴侶を連れ戻すか・・・決めるのは、あなた次第です」

京楽は、やや戸惑いがちに聖杯を手にとった。

そして、中身を一気に飲み干した。

「ああああああ!!!!」

激しい痛みが、京楽を襲った。

「痛いでしょう、苦しいでしょう。でも、それを乗り越えた時、あなたは神の子の血族として、再覚醒するでしょう」

女神クレスは、それだけを言い残して、世界から消えてしまった。

「うああああああ!!」

京楽は苦しんだ。

その、気が狂いそうな痛みと苦しみは、三日三晩続いた。

次に京楽が目覚めた時、己から湧き上がる魔力に驚いた。

「魔力が・・・浮竹くらいになってる・・・・」

じっと目をこらす。

確かに、女神アルテナの残滓と浮竹の気配を感じ取った。

「浮竹を、返せ・・・・」

空間を破り、京楽は女神アルテナの支配下にある空間に、忍び込む。

「誰!?侵入者よ!」

女神アルテナは、自分を守護する使徒たちを、京楽に向けた。

京楽は、猛毒でもあるその血の刃だけで、使徒たちを葬っていた。

「ここは私、女神アルテナの聖域。何人たりとも、無断で立ち入ることは許さないわ」

「許さないのは、僕のほうだよ・・・・・」

ゆらりと揺らめくその魔力は、創造神ルシエードの子、浮竹の魔力のようであった。

「来ないで!この子がどうなってもいいの!?」

女神アルテナは、自分の傍にいた浮竹の首の動脈に、ミスリルの短剣を向けた。

「く、卑怯な」

神の愛の不死の呪いをもっていても、神に殺されるとどうなるか分からない。

「ふふふ。あなたも、この子のように、私の虜にしてあげる」

女神アルテナが近付いてくる。

その魅了の魔法にかかったふりをして、女神アルテナに近づいた。

女神アルテナの胸を、京楽の血の刃が貫いていた。

「ぐふっ・・・そんな馬鹿な・・・女神である私が・・この血の匂い、そうか、女神クレスか!」

女神アルテナは、美しいその容貌を醜くして、叫んだ。

「死んでおしまいなさい、あなたなんて!」

神の呪いがふりかかる。それは即死魔法だった。

でも、京楽はそれを魔法で反射していた。

「ぐ・・・こうなったら、その血、奪うまでよ!」

女神アルテナは、京楽の体から血を抜き取ろうとした。

反対に、自分の血を抜き取られていた。

「ひああああ!?私の、生命の源が!」

女神アルテナは、浮竹にしがみついた。

「助けて、愛しいあなた。私を助けて・・・・」

浮竹は動いた。

まだ女神アルテナの術中にあるだろうと、京楽は攻撃を止めた。

「浮竹、戻っておいで?君のいるべき場所はそこじゃない。僕の隣だ」

浮竹の翡翠の瞳に、光が戻っていく。

「いかないで、愛しいあなた!私を助けなさい!あの、京楽という血族を始末なさい!」

ゆらりと、浮竹の魔力が蠢いた。

女神アルテナでも、ぞっとするくらいの魔力であった。

「こんな存在が、神の子であるなんて・・・どうして、神ではないの?」

そんなことを言う女神アルテナの心臓を、浮竹は自分の血の刃で貫いていた。

「いやああああああ、私の体が!」

美しかった女神アルテナは、神としての力に耐えきれないほどに体が破損していた。

「許さない。絶対に、許さない」

肉体を捨てて、アストラル体となって、浮竹と京楽に襲いかかった。

その、神の証であるアストラル体を、浮竹は血の刃で斬り裂いていた。

「俺は創造神ルシエードの子、始祖ヴァンパイアマスターにして、神の子・・・・」

浮竹は、京楽と手を握りあった。

「京楽、いけるか?」

「僕はいつでもOKだよ」

二人の神に匹敵する魔力が、うねり、波となる。

「あ・・・・助けて」

女神アルテナは、その時になって自分が虜にした存在が、神である自分を超えているのだと知った。

浮竹は精霊神を宿らせて、魔人ユーハバッハの血液を浄化してもらった後、魔力が更にあがった。

そしてついこの間、創造神ルシエードが、始祖浮竹のために生み出した力の残滓である人間の姿をした浮竹を吸収したことで、魂に神格を宿していた。

「助けて・・・・」

「勝手なことを言う。俺を好きなように操っておいて・・・・・」

「助けてくれれば、女神の祝福を与えるわ!不老不死になれるのよ!」

「残念だが、俺は元々不老不死だ」

女神アルテナは、創造神ルシエードの子が神のように不老不死であると知らなかった。

「じゃ、じゃあ金義財宝を好きなだけあげる!」

「金には困ったことはない」

「じゃ、じゃあ・・・・・」

浮竹は、酷薄に笑った。

「この世界から、消えてなくなれ。どうせ、サーラの世界に本体があるんだろう?」

「何故、それを・・・・・・」

女神アルテナは目を見開いた。

「まぁ、こちらもほぼ本体と同じように構築されてある。死ねば、少しは本体にもダメージがくだろう」

「もう、この世界に干渉しないでね。バイバイ」

京楽が、浮竹と手を握りあいながら、空いていた手で女神アルテナに手を振った。

「「ゴッドフェニックス・バーストロンド」」

二人が放った魔法は、二羽のフェニックスの形を纏い、女神アルテナのアストラル体を焼いた。

「いやあああああああ!!!!」

「僕の浮竹に手を出したことを、後悔させてあげる」

火だるまになりながら、転げまわる女神アルテナに、京楽は猛毒の血を滴らせた。

それはじゅわっと音を立てて、女神アルテナの顔を焼いた。

「本体に届くように、女神クレスの血を混ぜておいた。じゃあね」

「いやああああ、私の、私の美貌が!私の顔があああああ!!!」

しばらくのたうちまわった後、女神アルテナはこの世界から消えた。


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「いやああ、私の美貌が、私の顔が!!」

異世界サーラで、女神アルテナの本体は身悶えていた。

アビスの世界で葬られた分身体は、限りなくオリジナルに近くしておいた。

そのせいで、受けた傷も、本体にまで届いた。

女神アルテナは、自慢の美貌が焼けただれていることを知り、自分より身分が下の処女の女神を呼び出すと、殺してその生き血を顔に塗った。

焼けただれていた美貌は、元に戻っていた。

「この私が、ヴァンパイアとその血族如きに・・・・覚えてらっしゃい、必ず後悔させてやる」

復讐心に燃えるが、サーラとアビスの世界へのゲートは閉じてしまっている。

「誰か、誰か女神クレスを呼びなさい!」

下働きの者たちに命じて、自分の実の妹を呼び出した。

「あなたも、分身体をアビスに残していたのね。あなたのせいで、私は屈辱を味わったわ、覚悟はできているんでしょうね?」

「これは、なんだと思います?」

女神クレスは、さっき女神アルテナが殺した下級女神の魂を、保護していた。

「何故、魂がここに!」

「同族殺しは極刑。忘れたわけでは、ありませんね?」

「違うのよ、違うのよこれは!」

「創造神ルシエード。あなたが、決めてください」

現れた、6枚の翼をもつ美しい創造神は、一言だけ言った。

「滅びよ」

その言葉だけで、女神アルテナはさらさらと灰になっていく。

「創造神ルシエード、私はあなたに愛されたかっただけ・・・・・」

それだけ言い残すと、女神アルテナは灰となって消えていった。

「女神アルテナは、あなたの子に干渉しました。どうしますか?」

「あれは、私の手を離れている。私はあれをどうこうしようと思わない」

「御意」

女神クレスは、創造神ルシエードに優雅に礼をすると、女神アルテナが創造神ルシエードの怒りを買い、処刑されたと他の神々にふれて回った。

創造神ルシエードは、神の世界のヒエラルキーのTOPに位置していた。

同格の神々は他にもいたが、皆違う世界で神として君臨し、好き放題していた。

創造神ルシエードは、世界に干渉しない。

創造神として世界を作りあげ、生命を生み出し、しばらくはその世界に留まるが、世界が安定したら、その世界を去った。

アビスとサーラをはじめ、今まで10個の世界を作り上げてきた。

アビスとサーラは双子のような存在で、世界そのものは似ていなかったが、そこに住まう住民である種族は似ていた。

他の世界には、ヴァンパイアは作らなかった。

アビスとサーラの世界にだけ、ヴァンパイアという種族が存在した。

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「浮竹、ああよかった。戻ってきてくれたんだね?」

「京楽、すまない。心配をかけた。それにしても見違えたぞ。いつの間に、そんなに強くなったんだ?魔力に至っては、俺と同等くらいじゃないか」

「女神アルテナに君が攫われた後、再覚醒してね。女神アルテナの妹女神クレスの血を飲んだら、再覚醒を終えたんだよ」

その言葉に、浮竹がそっぽを向く。

「ふん、どうせ女神クレスとやらがさぞかし綺麗だったんだろうな。そんな女神から血をもらえてよかったな」

「浮竹、嫉妬してるの?」

「な、違う!」

浮竹は顔を真っ赤にさせた。

「ああ、嫉妬する浮竹はかわいいね」

京楽は、腕の中に浮竹を抱き込んだ。

「一緒にお風呂入ろ。その後は・・・ね?」

お風呂に入り、身を綺麗にしてから、浮竹はいつもの寝室の天蓋つきのベッドに押し倒されいた。

「ああああ!」

硬くなった京楽のものが、浮竹の中を出入りしていた。

「んああ!」

ずりずりと中のいいところをすりあげて、最奥まで届く京楽のものに、浮竹は涙を零しながら求める。

「あ、春水の、いっぱいちょうだい?俺を満たして」

ペロリと唇を舐める妖艶な浮竹に、京楽は夢中になっていた。

「何度だって、出してあげるよ。君が望むまで」

すでに、浮竹の中で一度熱は弾けていた。

同時に、浮竹のものも弾けて、自分の腹に白い液体を零していた。

それを、京楽が舐めとる。

「やあああ」

「君の体液は甘い。もったいない」

ぺろりと全部なめて、京楽は浮竹の首筋に噛みついて、ジュルジュルと血液を啜った。

「あああああ!!!」

最奥をごりっと抉られながら、吸血されて、浮竹はいきながら吸血されることの快感にも酔わされていた。

「ひあああ!?」

結腸の中を、ごりごりと京楽のものが入っていく。

はじめて味わう感触に、浮竹は泣きながら、許しを請うた。

「やあああ、もうやめ、春水、春水」

「君の中に何度何度でも注いであげるっていったでしょ?」

京楽は、浮竹の最奥に精液を注ぎこんだ。

「ひあう!やあああ!!」

ぷしゅわああと、浮竹は潮をふいていた。

「やああ、潮でちゃう、やだあああ」

「もっと感じて?僕だけのものだよ、十四郎」

「あ、春水、春水」

名を呼ばれて、京楽は浮竹に口づけた。

「十四郎・・・愛してるよ」

「あ、俺も愛してる、春水」

二人は熱い抱擁をしあいながら、更に乱れていった。


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「グリムジョー、期待しているよ」

魔族の始祖である藍染は、十刃の一人であるグリムジョーに魔人ユーハバッハの血を注射した。

「うおおおおおお」

駆け巡る熱い鼓動を抑え込む。

「俺は俺だ!魔人ユーハバッハなどに乗っ取られててたまるか!」

そう言って、藍染に更に魔人ユーハバッハの血を注射される。

「ははははは!私こそ神だ!この世界は全て私のものだ!さぁいっておいでグリムジョー。その大量の魔人ユーハバッハの血で、世界を赤に染め上げるのだ」

藍染は、そう言って笑い続けるのであった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター33-2

それから、90階層の財宝の間で一晩明かしてから、一気に最深の120階層まで降りた。

120階層のラスボスは、本物にそっくりのコピーだった。

「ちっ、ここまで正確にコピーされるとやりにくい。京楽は補助を。平子が俺を叩け。俺が平子を叩いて、京楽も叩く」

コピーは真っ黒な泥人形でできていたが、持っている魔力から身体能力、魔法までコピーされていた。

「ファイアロンド!」

浮竹のコピーが打ってきた魔法を、平子の魔法がかき消す。

「フレアサークル!」

ごおおおおと燃やされても、浮竹のコピーはぴんぴんしていた。

2時間ほどを費やして、3人はやっとコピーを倒した。

「ああ、もう魔力がすっからかんだ」

「僕もだよ」

「俺もや。魔力切れの時の為に、魔力回復のポーションもってきといたんや。分けたるわ」

「ありがとう、助かる」

「ほんと、助かるよ」

3人は、魔力回復のポーションを飲んだ。

その味のまずさに、水を飲む。

「少しだけ魔力が回復した。これでダンジョンの入り口まで転移できそうだ」

浮竹は、最後の財宝の間をあけた。

金銀財宝から珍しい生き物のはく製、毛皮、貴重なマジックアイテム、それに古代の魔法書があった。

「古代の魔法書がこんなに!見ろ、京楽、平子!」

二人は、魔力切れでポーションで少しは回復したものの、疲れて眠ってしまっていた。

「仕方ないな」

浮竹はテントを出すと、平子と京楽の体を運び、テントの中に寝かせて毛布をかけた。

「今日は、ここで休憩してから、明日帰るか・・・・」

浮竹も、疲労感から眠気を催して、いつの間にか眠ってしまった。

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「浮竹、起きて、浮竹」

「ん・・・・・・?」

「魔法書が、奥の棚からたくさんでてきたんだ」

「何!」

浮竹は、がばりと起き上がった。

「浮竹は魔法書を覚えてコレクションするのが趣味なんやろ?俺は別に新しい魔法なんていらんから、全部持って帰り」

「ありがとう、平子!」

浮竹は、思い切り平子に抱き着いて、スリスリしていた。

「平子君、浮竹は渡さないよ・・・・・」

「ちょお、誤解やって!ぎゃああああ」

京楽にハリセンでしばかれて、平子はドラゴンでもあるので、金銀財宝を欲しそうに見ていた。

「ああ、欲しいなら好きなだけもっていけ。俺は古代の魔法書があればそれでいいからな」

「ええんか?この広間の金銀財宝、全部持って帰るで?」

「いいぞ。別に、金には困ってない。倒したレッドドラゴンをギルドで売れば、ここにある財宝くらいの値段はつく」

「ほんじゃ、遠慮なくもらうわ」

平子は、自分のアイテムポケットに大切そうに金銀財宝を収めた。

「ああ、俺の金銀財宝のコレクションがまた増えたわ。この前、留守の間に大分盗まれてしもうたからなー」

「ああ、浮竹みたいにドラゴンの金銀財宝だけぶんどって、逃げるような存在がそっちにもいるんだ」

「京楽、人聞きの悪いことを言うな!ちゃんと、ドラゴンを殺さず勝利して、戦利品をいただいてるだけだ」

浮竹は、京楽の頭を小突いた。小突かれながらも、京楽は構ってもらえて嬉しそうだった。

「真竜の、竜族を意味もなく殺すことはできないからね」

「あー、こっちではドラゴンの全てが人の形とって、人の言葉しゃべるわけやないからな。昨日のレッドドラゴンは、竜族やないねんろ?」

「そうだ。ただのドラゴンだ。竜族はこの世界には200体ほどしかいないからな。貴重だし、強いからよほどの事情がない限り、手を出さない」

「始祖の竜、カイザードラゴンとは友達なんだよ、僕ら」

「へぇ、すごいんやな。始祖の竜か・・・こっちの世界にもおったけど、不老不死じゃないから、冒険者に倒されて死んでもうたわ」

「カイザードラゴンは不老不死だからな」

「始祖の呪いは、この世界独特のもんやな」

しんみりした空気を追い払うように、浮竹は古代の魔法書をアイテムポケットに入れて、古城で見るつもりだった。

「さぁ、踏破したし戻ろう」

120階層のS級ダンジョンを踏破したとして、ギルドでまた注目を無駄に集めてしまった。

平子は冒険者ギルドに登録したばかりのEランク冒険者なのに、浮竹と京楽と一緒にS級ダンジョンを踏破して、受付嬢を失神させた。

「いやぁ、悪いことてもうたかな」

ギルドの解体工房で、15体のレッドドラゴンの死体を出すと、ギルドマスターも青い顔をしていた。

「ぜ、全部で大金貨6万5千枚になります・・・これ以上は出せません。ギルドが破産してしまいます」

以前のように、金貨かと思っていたら、ドラゴンの素材が不足しているということで、大金貨で買い取ってもらえた。

財布の中が潤った。

そのお金で、浮竹はさっそく魔法屋に出かけて、怪しい古代の魔法書5冊を金貨500枚で買ったりしていた。

「さぁ、とにかく古城に戻ろう。魔法書を見るためにも」

魔法書を手に、目をきらきらさせている浮竹は可愛かった。

「じゃあ、戻ろか」

「うん、戻ろう」

3人は、こうしてまだ未踏破だったダンジョンを攻略して、帰っていった。

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2週間ほど、平子は古城で厄介になった後、血の帝国でドラゴンの竜族が守護すべき金銀財宝のある遺跡があいてると聞いて、平子はそこに行きたいと言い出した。

「いいのか?サーラの世界に戻らなくて」

「あっちの世界は刺激がなくてつまらんねん。女神とその使徒がいばり散らかしててな。服従しろとうっさいねん。このアビスの世界が、よほど心地ええわ」

「じゃあ、この世界に残るのか?」

「うん、そうするわ」

平子の言葉に、京楽が心配そうになる。

「でも、サーラの世界とのゲートはもうすぐ閉じちゃうんでしょ?本当にいいの?」

「他の神々は帰っていったけど、俺は神いうたかて、神界に入れる神とちゃうからな。大丈夫や。たまに遊びに行ってもええか?」

「もちろんだ。盛大にもてなそう」

「おおきに。ほな、俺行くわ」

「元気でな!」

「元気でね!」

こうして、星の精霊ドラゴン平子真子は、この世界、アビスの存在となった。

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浮竹は、S級ダンジョンで手に入れた魔法書を読んでいた。

ちなみに、S級ダンジョンで手に入れた魔法書の数は162冊。

大量だった。

売れば、古城がいくつも買える金になるだろう。

「これも民間魔法か・・・・効果はぱっとしないな」

S級ダンジョンで手に入れた魔法のほとんどは民間魔法で、効果は微妙で、役に立ちそうな魔法書は5冊だった。

それぞれ、違う属性を組み合わせた魔法の魔法書であった。

浮竹はそれを読み、魔法を習得した。

試し打ちしようにも、古城を破壊してしまいそうなので、浮竹はさっそく遊びに来た平子に、次元の空間へと転送してもらい、そこで魔法を放った。

念のために京楽と平子もついてきていた。

「サンダーフレアスピア!」

かっと、青い雷の槍が出現した後で、その場を焦がすような炎が踊った。何もないはずの空間に、罅ができていた。

「ちょお、強すぎへん、その魔法。空間に罅できとるで」

「うーん。威力の調整が難しいな。サンダーフレアスピア!」

さっきより出力を下げて魔法を使うと、いいかんじだった。

「じゃあ、他の魔法も試し打ちするか」

そうやって、次元の空間は浮竹の魔力で揺れた。

「堪忍や。もう、この空間保ってられへん」

「僕も、シールドこれ以上はれないよ」

浮竹の魔法は、その威力の高さを知らずに最大限にまで引き延ばしてしまって、炎やら雷やらが京楽や平子のところにまできて、それを京楽がシールドを張って防いでいた。

「ああ、ありがとう。お陰でどんな魔法か分かった。どれも禁呪に匹敵する。使う時は威力を下げて使う」

「使うことがないよう、祈っておくよ」

「空間から出るで」

3人は、元の古城の中庭に戻っていた。

「今日は、平子の分まで俺が夕食を作ってやろう」

「え、浮竹、料理できたんかいな?」

「ばっちりだ!」

京楽は、顔を真っ青にして首を横に振っていた。

「ま、まぁ食べてみいひんことには、美味いか不味いかもわからんからな」

その日の夕食は、いつの日にか見たことのある、緑色の蠢くカレーだった。

「すごい匂いしとるな。マンドレイクとドラゴンの血、ぶちこんだんやな」

「お、分かるのか」

「マンドレイクもドラゴンの血も大好物やで」

そう言って、平子はスプーンでカレーを口に入れた。

「なんやこれ、めっちゃすごい味するやん。おもしろうて、もっと食べたなるわ。おかわり」

ついでに、京楽は食べ終えて気絶していた。

「お、俺の料理を分かるとは、なかなかだな」

京楽が気が付いた時には、平子は3回おかわりをした後だった。

「平子君、毒消しのポーションと胃腸薬を!」

「そんなものいらへんで?おいしかったし」

「浮竹の料理がおいしい・・・・かわいそうに、今までろくな食べ物食べてこなかったんだね」

涙ながらに、京楽は平子の肩を叩いた。

「まぁ、いつもは竜化して獲物丸のみやからな。毒とか酸もったモンスターは大好物やで」

「つまり、浮竹の毒料理に耐性があるということかい・・・・・」

「おい京楽、誰の料理が毒料理だって・・・・・?」

「いや、違う、これは言葉のあやで・・・・うぎょええええええええ」

口の中に緑色で蠢くカレーと、生きたままのマンドレイクをつっこまれて、京楽はまた意識を失った。

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そうして、平子は血の帝国に、浮竹が作った料理の数々をアイテムポケットに入れて、帰ってしまった。

「浮竹、いい加減機嫌治してよ」

「つーん」

「ああ、ツンデレのツンになってる。君が大好きだよ、十四郎」

耳元で囁かれて、浮竹は赤くなった。

「何をする!」

「君を抱きたい」

「きょ、京楽・・・・」

「春水って呼んで?いつもみたいに」

「あ、春水・・・・・」

ベッドの上に押し倒されて、浮竹は情欲で濡れた瞳で京楽を見つめていた。

「んっ」

京楽のキスを受け入れて、浮竹は自分から舌を絡めた。

「あっ」

胸の先端を甘噛みされて、浮竹は震えた。

衣服を脱がしていく京楽を、ただ見つめていた。

「んっ」

ぴちゃりと浮竹のものに舌が這う。

「ひあ!」

その刺激に耐え切れず、浮竹は精を京楽の口の中に放っていた。

「んっ・・・・」

「どしうたの十四郎、今日はいつもみたいに乱れないんだね?」

「あ・・・春水」

蕾を指でぐちゃぐちゃに解される。

「んあっ!」

貫かれて、浮竹は喘いだ。

「春水、春水」

ただひたすらに、京楽を求めた。

「あ・・・・・・・」

じんわりと広がっていく京楽の熱を感じながら、浮竹は安らかな眠りに落ちて行った。


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「ここが、星の精霊ドラゴン、平子真子の言っていた、創造神ルシエード様の子がいる場所・・・・・・」

それは、女神だった。

サーラの世界に存在する、女神アルテナ。サーラとアビスの世界が繋がった時、こちら側の世界に降りてきていた。

女神は、創造神ルシエードを愛していた。だが、創造神ルシエードが愛していたのは、始祖のヴァンパイアであり、我が子である浮竹十四郎。

その存在が、欲しくなった。

喉から手が出るほど。

その存在を手に入れれば、きっと創造神ルシエードも振り向いてくれるに違いない。

そんな妄想に憑りつかれた女神は、神の力に抗う術を持たぬ浮竹に、魅了の呪文をかけた。

「愛している、アルテナ」

「うふふふ。嬉しい。私も愛しているわ、浮竹」

「浮竹、しっかりして!浮竹!」

女神アルテナは、空間を開いた。そこに、浮竹を誘い入れる。

「ぼうやの浮竹は、私がもらってあげる。私は女神アルテナ」

「浮竹ーーーーー!!」

京楽は、血の暴走を始めていた。

再覚醒が、静かに始まろうとしていた。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター33

「必死ぶりやなぁ。俺や俺」

それは、星の精霊ドラゴン、平子真子であった。

古城の突然の訪問者に、浮竹と京楽はびっくりしながらも、快く招いてくれた。

「そちらの世界とこちらの世界の行き来が可能になったのか?」

「まあ、そんなもんやな。俺の他にもサーラの世界の神々も降りてきとる。まぁ、神様やしこっちのアビスの世界へは干渉しないから、ただの観光旅行にきたようなもんや」

「で、君も観光旅行にきたわけ?君から、浮竹の匂いがするんだけど、どういうことかな」

「あちゃー。もうばれとるんかいな。サーラの世界で創造神ルシエードが作った浮竹の残滓。いわば劣化コピーの人間。それがこっちに来とる。というか、あんたに会いたいうから連れてきた」

平子はそういうと、魔法陣を展開する。

魔法陣の中心には、浮竹が立っていた。

東洋の世界の浮竹とは全く違う、オリジナルの浮竹にどこまでも似せたコピーの人間だった。

「もう一人の俺か。創造神ルシエードが作ったんだな?」

「そうや。戦いになりそうなたったら、俺がとめるからな」

「サーラの世界の俺。俺に何の用だ?」

「浮竹十四郎。創造神ルシエードの子。俺はお前と一つになりにきた」

その言葉に浮竹が驚く。京楽は、もう一人の浮竹を見て、固まっていた。

「俺は、別にお前の存在なんていらない。サーラの世界へ帰れ」

「俺には、お前が必要だ。できそこないの俺には、本物の俺がいる」

「一つになって、お前に意識を乗っ取られたくない」

「大丈夫だ。お前がベースになる。俺は、お前を強くし、より完璧に神の寵児にするだけだ」

ぱぁぁぁぁと、サーラの世界の浮竹が輝いた。

それは、こちらの世界の元の浮竹の胸に吸い込まれていった。

「ちょっと待て、まだ承知したわけじゃないぞ」

すでに吸い込まれてしまった浮竹からの返答はなかった。

「一体なんなんだ」

「そうだよ。浮竹、変なところはない!?」

京楽がそう心配して尋ねてくるが、浮竹はどこにも以上を感じなかったので、頷いた。

「ああ、大丈夫のようだ」

「いきなり、違う浮竹に乗っ取られたりしないよね?」

「それは大丈夫ちゃうかな。さっきの子は、あんたを完璧に生みそこなった創造神ルシエードが、あんたのために用意した媒介みたいなもんや」

「だから、俺が必要だと・・・・」

「感じてみ?魔力があがっとるはずや」

「確かに、魔力があがってる・・・・」

「自由意思をもった、あんたの欠片みたいな存在やった。元の鞘におさまっただけや」

星の精霊ドラゴン平子の言葉を、浮竹も京楽も信じた。

「じゃあ、俺であり続けることに変わりはないんだな?」

「そうなるな。なんか変なことになりそうっやたら、俺の力でどうにかしてたから、大丈夫やろ。それより、この世界のダンジョンにもっかい行きたいねん。冒険者とやらになって。サーラの世界にはダンジョンなんてあらへんしな。こっちのアビスの世界が楽しくて仕方あらへんわ」

「君、神様なのに遊びにきたんだね?」

「まあ、そうなるな。せっかくアビスの世界と繋がったんや。こなきゃ勿体ないやろ」

「この世界は、アビスというのだな」

浮竹は、自分の住んでいる世界が神々になんと呼ばれているのかを知った。

ぐううぅぅ~~~~。

その時、浮竹の腹がなった。

「な、これは!さっき昼食を食べたばかりだぞ!?」

「あんたに吸収された、媒介の浮竹は水も食料もとらずに生きとったからな。いきなり食べ物を必要とするあんたの体に支配されて、空腹を訴えとるんやろ」

京楽は、少し困ったような顔をしながらも、食事の用意をしにキッチンに向かおうとする。

「戦闘人形に作ってもらうけど、平子クン、君の食べたいものはあるかい?」

「ピザが食いたいな。あっちの世界じゃあらへん食べ物や。あと、ポテトフライも食いたいねん」

「はいはい。戦闘メイドに頼んでくるよ。僕はデザートを作ってくるね」

京楽は、キッチンに行ってしまった。

「なんや、浮竹あんたえらい強なったな。前の魔力も桁違いやったけど、今じゃ神を自称してもいい感じやで」

「大袈裟だな」

「いや、まじやて。魂に神格がないのが不思議なくらいや。創造神ルシエード、あんたの父はあんたを神にしたかったんとちゃうか」

「それはないだろう。俺がざ神になる気はないし、父も神にさせる気はないと、同じこのアビスの世界にいたころ、そういう会話をしたことがある」

「創造神ルシエードもこじれたやっちゃなぁ。わざわざ後からあんたに足りないものまで補って。愛されとるねんね」

「俺の魂には、愛の不死の呪いがある。愛されているからこそ、死ねない呪いだ」

「死にたいと思ったことはあらへんの?」

「何回でもあった。でも死ねないから、代わりに休眠に入った。でも、自分に何かあれば目覚める、そんな休眠だった」

「ヴァンパイアって便利やね。俺なんて休眠して、次おきたら人間どもに毛皮はぎとられかかってたんやで。みんなぶち殺したけど。人間なんか、大嫌いや」

「奇遇だな。俺も人間が大嫌いだ」

「そういうわりには、血族の京楽は元人間なんやね」

「京楽を血族にしたのは、寂しさを癒すためだった。今じゃ、俺になくてはならない、かげがえのない大切な存在だ」

頬を染めてそんなことを言うものだから、平子はごちそうさまと言った。

「再度、昼食の用意ができたよ。僕はもうお腹いっぱいだから、デザートだけ食べるね」

ダイニングテーブルに、ジャンクフードでもある熱々のピザと、ポテトフライが用意されてあった。デザートは苺のシャーベットだった。

「うまそうやな。さっそく、食ってもええか?」

「好きなようにするといいよ。浮竹も腹がへってるんでしょ?遠慮なく食べて」

平子はたくさん食べた。浮竹も負けずと食べた。

3人前は用意してあったのに、二人はそれを平らげてしまった。

「やあ、うまいわ。やっぱ浮竹んとこの料理が一番やね」

「俺の戦闘人形は、家事がなんでもできるからな。便利だろう」

「その能力俺も欲しいわ」

「これは俺の血の魔法だから。天性のものだ。他の魔法のように、覚えさせることはできない」

「残念やわ~。神様いうたかて、万能じゃあらへんからな。お、この苺のシャーベットもうまいわ」

「ありがとう。僕の好きなスィーツだよ。苺が好きなんだ」

「うまいわぁ」

「うまいな。この口の中で溶けていくかんじがなんともえない」

「僕も食べよっと」

3人で、デザートを口にして、その美味しさに酔いしれた。

京楽は、自分で自分の腕を褒めていた。

「我ながらいい出来だったよ」

「ごちそうさまや」

「ごちそうさま」

「お粗末さまだよ」

そんな感じで昼食をとって、その日は平子のいるサーラの世界について語ってもらい、夜になって夕食をとり、風呂に入って就寝した。

平子は3階のゲストルームに泊まった。

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次の日になって、浮竹たちが起きてくると、平子の髪が爆発していて、浮竹も京楽も笑った。

「俺専用のシャンプーじゃないと、俺の髪爆発するん忘れとったわ。なんとかならへん?」

それに浮竹は、民間魔法の髪をキューティクルにする魔法をかけた。

「お、元に戻っとる。俺の自慢の髪のままや」

平子の髪は金髪の肩まであるストレートだった。

「その魔法、俺でも覚えれるかいな?」

「覚えれると思うぞ。民間魔法だから、魔力があれば誰にでも使える」

平子は、その髪をキューティクルにするという魔法を覚えて、ご機嫌だった。

「これで、違うシャンプーも使えるわ。おおきにな、浮竹」

「浮竹、今日はダンジョンに潜るのかい?」

「ああ、そのつもりだ」

「ダンジョン!魅惑の響きやね」

3人分のテント、寝袋、食用と水を用意して、S級ダンジョンに潜ることにしたのだが、その場所まで遠く、どう移動しようかと迷っている間に、平子が竜化した。

10メートルはあろうかという、白い羽毛の毛皮に覆われたドラゴンが姿を現す。

「俺の背中にのっけてやろやないか。地図の位置、覚えたから1日もあれば到着するやろ」

1日をかけて、馬車だと10日以上かかる距離を飛んだ。

ダンジョンに着くころには、夜もすっかりふけていた。

とりあえず、一番近い街まで引き返して、宿をとった。

宿は高級の宿をとったので、冒険者の荒くれ者がいるような、普通の酒場兼宿屋をかねた物騒な場所ではなく、3人とも安心して休息した。

「朝やで~。起きや」

「んー、あと3時間・・・」

「そんなに待ってられへん。起きなこちょこちょしちゃうで」

平子は、起きない浮竹の脇腹をくすぐった。

「あはははは、こしょばゆい」

「お、起きたんか」

「平子君?僕の浮竹の上に乗って、何してるのかな?」

「いや、違う、これは誤解やて。ぎゃああああああ」

京楽は、平子に浮竹のアイテムポケットにあったハリセンで頭を一回殴った。

「神様である俺をハリセンで殴るなんて、あんたくいらやわ」

頭にできた小さなたんこぶをさすりながら、それぞれ起きて朝食を宿でとった。

「あんたら、Sクラス冒険者かい?」

「ん、そうだが」

宿屋の女将が声をかけてきた。

「気をつけなさいよ。最近、あのS級ダンジョンに挑んだパーティーが帰ってこなくてねぇ。唯一の生き残りも、手当てのかいなく死んじゃってね。なんでも、下層にレッドドラゴンの巣があるとかいってたよ」

「レッドドラゴンか。素材になりそうだ」

「浮竹、ドラゴンを金として見るのはやめようね?」

「なんや、レッドドラゴンかいな。何度か相手したことあるけど、そんなに用心することもないやろ」

そんな会話を繰り広げるSランクの冒険者に、宿の女将を開いた口が塞がらなかった。

「ほんとに、気をつけるんだよ」

しばらくて、女将にそう言われて、出発するのだった。

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120階層まである、最近新しくできたS級ダンジョンだった。

まだ30階層までしか踏破されていないらしい。

ダンジョンに入るなり、宝箱を見つけて、浮竹は目を輝かせた。

「宝箱だ!」

「ちょっと、浮竹、それ絶対ミミック・・・・・」

「暗いよ~狭いよ~怖いよ~息苦しいよ~」

「何やっとんの、あれ」

平子が、浮竹を指さす。

「ああ、浮竹はミミックに噛まれる趣味をもっているから」

「変な趣味やな。まぁ人それぞれやけど」

京楽は、浮竹を救出した。

「ファイア」

魔法の初級呪文を唱えると、ボンと火花が散った。

「浮竹、本当に魔力があがってるね。威力を抑えたほうがいいよ」

「ああ、分かった」

ミミックを倒した後には、聖なる石板が残されていた。

「何々・・・・この石板を全て集めた者に、究極の魔法を授ける。よし、京楽、平子、宝箱という宝箱を片っ端からあけるぞ!」

意気込む浮竹に、京楽と平子は天を仰ぐのだった。

1日で、30階層まで降りてきた。

出てきたボスはジャイアントケルベロス。巨大なケルベロスだった。

浮竹が氷の矢を放つと、それを溶かそうとジャイアントケルベロスは炎のブレスを吐く。

しかし、浮竹の氷の矢は溶けずに、ジャイアントケルベロスの右目に刺さった。

「ぎゃおおおおおおおお」

叫びわめくジャイアントケルベロスを、平子がどこからか取り出し刀で、一刀両断してしまった。

京楽の出番はなかった。

「君ら、強すぎ」

「敵が弱すぎなだけだろ」

「そうやな。敵が弱すぎる」

京楽一人でもジャイアントケルベロスくらいは倒せるが、オーバーキルにような状態にはならないだろう。

財宝の間が開く。

そこにあったのは、聖なる石板の欠片たちと、魔法書であった。

「魔法書は古城に戻ってからゆっくり読むとして・・・聖なる石板はこれで全て集まった。意外と早かった」

「30層までしか踏破されていないことを踏まえての、ダンジョンマスターの意思じゃないかな」

ダンジョンには、ダンジョンマスターという管理者がいる。主に古代のエルフで、ダンジョンのモンスターや宝箱の配置を行っていた。

「ええと・・・古代の太陽が出て月が姿を消す。サンライトメテオ・・・・?」

「なんやそれ。俺の世界の魔法の禁呪やんけ」

「え、そうなのか?」

「ああ、そうや。消費魔力が高すぎて、誰も覚えんかった魔法や」

「威力はすごいのか?」

「究極の魔法と書いてあったし、凄いんじゃないの?」

「確かにすごいけど、消費魔力が高すぎるから連発には向かんな。今の浮竹なら、それでも4回くらいは使えるやろ」

「4回か。覚えておこう」

こうして、浮竹はサインライトメテオを習得した。

ちなみに平子は使えないからと、覚えれるのに覚えなかった。

30階層の財宝の間で、一晩を明かした。

次の日は、65階層まで降りた。

60階層のボスはまたジャイアントケルベロスで、群れで襲ってきて、浮竹は魔法を唱えた。

「サンライトメテオ!」

巨大な隕石が降ってきた。ぐしゃりぐしゃりと、ジャイアントケルベロスをつぶしていく。

ぞれは、浮竹と京楽と平子もつぶそうとした。

「ウィンドシールド!」

「ウォーターバリア!」

平子と浮竹がシールドの魔法を使い、京楽がそれの補助をして、なんとか生き残った。

「なんだこの魔法。味方も巻き込むのか。使えないな。それに消費魔力も多いし」

「そやろ。だから、誰も使わんから、究極の魔法とか言われるようになったんや」

「浮竹、今後は使わないでね。シールド展開するのに必死にならないと、本当にこっちまで潰れちゃうよ」

「ああ、分かった。封印する」

浮竹は、一度覚えたその魔法を削除した。

石板は粉々にして、もう覚える者も出ないようにした。

財宝の間は10階層ごとのボスを倒した後に出る。

60階層の財宝は金銀財宝で、興味をなくした浮竹はそれの回収を京楽と平子に任せてしまった。

「ほんと、あんたとこの浮竹はミミックと魔法書しか目に入らんのやな」

「まあ、そうなんだけどね。でも、そこがまたかわいいところでもあるんだよ」

「こんな場所でのろけても、つっこまへんで」

「え、つっこんでよ!」

「京楽、あんた俺を誰やと思とるねん」

「ツッコミ役の冒険者C」

「なんでやねん!」

平子は、思わずつっこんでいた。

「あかん、つっこんでもうたわ。いかんいかん、冷静にせな。ドラゴンブレス吐きそうになったわ」

「えええ!つっこまれてドラゴンブレス吐かれたら、焦げちゃうよ」

「京楽の丸焼きのできあがりやな」

おいしくなさそうだと、平子は笑った。

「京楽、平子、65回層まで進んだが、今日はこの60階層の財宝の間で夜を明かそう。財宝の間なら、モンスターは襲ってこないから、寝ずの番をしなくていい」

「そうやな。雑魚でも、眠り邪魔されると鬱陶しいもんな」

「そうだね。財宝の間はモンスターが来ないし、安心して寝れるよ」

3人は、もちこんだ食材でシチューを作り、それを食べて就寝した。

次の日は、90階層まできた。

宿屋の女将が言っていた通り、レッドドラゴンの巣があった。

15匹くらいのレッドドラゴンに囲まれて、京楽はブレスを防ぐシールドを張った。

「平子、行ってこい」

「おや、俺に譲ってくれるんか。おおきにな」

そう言って、平子は真っ白な羽毛をもつドラゴンになると、レッドドラゴンを食いちぎっては投げた。

「まずい。こっちの世界でもレッドドラゴンの味はかわらんのやな」

「平子君、これって共食いになるんじゃ・・・・・・」

「食っとらへんわ。トドメさすのに、首にかみついただけやで」

「ドラゴンの血が流れてる。勿体ないから集めよう」

浮竹は、自分の血を操る要領で、ドラゴンたつが流した血を透明な巨大な瓶に入れると、封をしてアイテムポケットにしまった。

京楽が、ドラゴンの体をアイテムポケットにしまっていく。

「ドラゴン、そういえば素材になるねんあ」

「爪も牙も鱗も血も肉も目玉も骨も、何もかも素材になるからな。金銭に変えるには、一番てっとり早い」

こうして、一向はレッドドラゴンの巣を壊滅させて、財宝の間にきた。

ドラゴンの素材で作られた、高そうな武器防具が置いてあった。

「なんだ、また魔法書はないのか。つまらん」

浮竹の目がきらりと光った。

財宝の間の奥の奥に、宝箱があったのだ。

「宝箱だ!」

「だから、ミミックだってば!」

「暗いよ~狭いよ~怖いよ~息苦しいよ~」

「だから、言わんこっちゃない・・・・・・」

救出しようとした京楽は、浮竹が血を流しているのにびっくりして、ミミックから救出する前にミミックを倒してしまった。

「人食いミミックやな。古代の遺跡とかで稀に出てくるミミックや」

「浮竹、怪我は?」

「かじられたところからちょっと血が出たくらいだ」

傷は、高い自己再生能力で、すぐに塞がった。

「魔法書の代わりに、古代の魔法の石板か・・・・・」

浮竹は魔法関係のコレクターでもあるので、古代の魔法の石板を、自分のアイテムポケットに入れた。

「ちょっと待って。さっきの石板、よく見せてぇな」

「ほら」

平子にそれを渡すと、平子はわなわなと震えた。

「これはあかん。人の手に触れたらあかんことが書かれてる石板の欠片や。粉々にしてええか?」

「別にいいが」

「これは、人が神になるための方法を記した古文書のある場所を示した石板の欠片や」

そう言って、平子は古代の魔法の石板を粉々にした。

「人の手に渡ってはいかんものや。普通の人間でも、神になれてしまう」

「そんな大層な代物が、なんでこんなS級ダンジョンになんてあるんだろうね?」

京楽の質問に、全くだと平子は頷いた。

「こんな石板の欠片、冒険者が出入りする場所に置くもんやないで。ここのダンジョンマスターは、ひねくれとるんやろな」

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター32-2

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「ああ、兄様の料理、思い出すだけで心臓が止まりそう」

後日、回復したブラッディ・ネイは二度と実兄の料理を口にしないと決めた。

それは白哉も恋次もルキアも一護も冬獅郎も、全員そうだった。

「浮竹の料理の腕が、あれほど壊滅的だとは・・・・・」

「白哉さん、3日間寝こんでましたからね」

恋次の言葉に、ルキアも顔を青くしながら頷いた。

「浮竹殿の手料理は今後一切口にしないようにしよう。ちなみに一護は1週間寝こんだ」

「ルキア、それ言うな」

「軟弱だな。俺は2日だけだ」

「それ、自慢になってねーぞ、冬獅郎」

浮竹は、自分の手料理のせいで皆が倒れたことを知らずに、古城に戻っていった。

ちなみに、浮竹の作った海鮮パスタを穴に埋めたところ、穴からマンドレイクが生えてきて、ちょっとした騒ぎになった。

「マンドレイクを、毎度生きたままぶちこむそうだよ、兄様。マンドレイクは主に錬金術の材料で、食べるには向かないのにね」

「浮竹殿は、錬金術で料理を作っているらしい」

「だから、あんなに壊滅的なのか・・・・」

みんな、頷きあった。

ちなみにいつも被害にあっている京楽は、3時間で目を覚ました。

目覚めるまで個体差があるようで、一番長かったのは一護の1週間だった。

ブラッディ・ネイは8千年間浮竹の妹であったが、実の兄が料理している姿を見たことがなかった。いつも戦闘人形を出し、それに調理させていた。

「兄様の欠点を見つけてしまった・・・・・」

ブラッディ・ネイは、もう倒れるのはこりごりだが、愛しい兄の弱点を見つけて、一人ニマニマするのであった。

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「浮竹、そこでマンドレイクを入れようとしない!」

「だって、京楽、スープにはマンドレイクが必須だろう」

「必須じゃないから!マンドレイクを入れずに、煮込み続けてごらん」

浮竹は、京楽の言う通りに調理をした。

それを、京楽は恐る恐る口にした。

そして、倒れた。

「隠し味にドラゴンの血をぶちこんだんのだが、だめだったか?」

「だめに決まってるでしょ!ドラゴンの血は錬金術の材料であって、料理に放りこむものじゃないからね!?」

「だが、俺の料理は錬金術だぞ!」

「料理と錬金術を一緒にしない!」

「京楽がいじめるーーーー」

そう言って、浮竹は東洋の浮竹の元に逃げてしまった。

(どうしたんだ、西洋の俺)

突然現れた、泣いている西洋の浮竹に、東洋の浮竹はその頭を撫でながら、事情を聞いた。

(そうか。手料理がうまくなればいいのにな?)

「こっちの京楽は、うまいといって食べてくれたのに」

(春水はゲテモノ好きだからね)

「俺の料理はゲテモノなのだろうか・・・・」

(うーん、迷うところだなぁ)

「あ、こんなところにいた浮竹、帰るよ!」

「京楽にいじめられるー」

(こら、西洋の京楽。西洋の俺をいじめちゃだめだ)

「いじめてない、いじめない。料理の指導をしてただけだよ」

(でも、向こうの俺は泣いていたぞ?)

「浮竹、泣いてたの?」

「泣いてなんかない!」

そう言いつつも、ぽたりぽたりと、地面に雫が落ちた。

「ごめん、もっと優しく指導するから、泣かないで」

「マンドレイクを」

「ん?」

「生きたままのマンドレイクをまるかじりして食べたら、許してやる」

「ええええ!それ、ちょっとハードル高すぎない?」

「じゅあ、マンドレイク5体にするか?」

「1体で十分です」

「ああ、東洋の俺。浄化のお札をありがとう。おかげで、ネクロマンサーとアンデットの大軍をやっつけれた」

「わあ、役に立ったんだ!嬉しいなぁ」

「凄く役に立ったぞ。お札がなかったら、苦戦していたかもしれない」

西洋の浮竹は、東洋の自分の頭を撫でた。

(こそばゆい)

それに、東洋の浮竹が照れて、顔を赤くする。

(何してるの、3人で)

そこに、東洋の京楽が現れた。

雑居ビルの部屋は、4人で狭くなっていた。

いろいろ事情を話すと、東洋の京楽は西洋の自分を指さした。

(キミが悪い。愛しい伴侶の料理くらい、食べて平気でいるべきだ)

「でもねぇ、自動的に気絶するんだよ!?」

(西洋の浮竹は、マンドレイクを料理にぶちこまないこと。いいね?)

「分かった・・・・・」

「ちょっと、僕の言葉は聞かないのに、こっちの僕のいうことは聞くの?」

「こっちの京楽は、嘘をつかないから」

「僕も嘘はつかないよ?」

「この前、美味しいといって食べた料理、影で毒消しのポーションと胃腸薬飲んでただろ」

「ぎくっ」

「やっぱり、マンドレイク5体まるかじりコースだな」

「簡便してよお」

そんな二人に、東洋の二人も笑うのだった。

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結局、なんとか言いくるめて、マンドレイク丸かじりではなく、マンドレイクのスープにしてもらった。

とりあえず、マンドレイクをそのままぶちこまれそうになったので、刻むようにお願いしておいたら、いつもはマンドレイクをそのままぶちこむ浮竹も折れて、マンドレイクを一口サイズに刻んでくれた。

マンドレイクは刻まれる度に叫んでいて、かなりグロッキーな構図だった。

「うん・・・味は、いつもよりましだね」

マンドレイクだけを煮込んだスープは、ほんのりとした塩コショウの味しかしなかった。

「く、これでは罰にならない」

「罰!?僕、そこまで酷いことした!?」

「まぁいい。風呂に入ろう」

「え、なんでいきなり?」

「仲直りしよう」

「ああ、うん」

お風呂に入り、お互いの体と髪を洗って、風呂場からあがると京楽は浮竹の髪の水分を拭き取った。

ベッドの上で、浮竹は裸になり、足を広げて浮竹を誘った。

「来い、春水」

「十四郎・・・・・」

京楽は、その白い肌の至るところに、キスマークの赤い花びらを散らせていった。

「あ!」

浮竹の感じる部分を重点的に攻めていった。

胸の先端を口に含まれて、浮竹は顔を隠した。

「十四郎、感じてる顔、ちゃんと見せて?」

「嫌だ」

「そんなこと言わないで」

「あっ」

浮竹のものに手を這わすと、ピクリと浮竹の体がはねた。

「ああ!」

京楽の口の中で、浮竹のものはどんどん硬くなっていった。

「ひあ!」

欲望を、浮竹の口の中に放っていた。

「十四郎、愛してるよ」

「あ、春水、春水」

浮竹の欲望を飲みこみながら、浮竹の唇を奪った。

「んんっ」

舌に舌を絡ませあいながら、口づけを続ける。

燃え滾るように昂った京楽の熱をみて、浮竹は唇を舐めた。

「京楽のこれが欲しい」

「今あげるからね」

まずはローションを人肌の温度にまで温めて、浮竹の蕾を解していく。

ぐちゃぐちゃと音を立てて、3本を余裕で飲みこむようになったら引き抜いて、京楽は一気に浮を引き裂いた。

「あああ!!!」

「んっ、出すよ。中で受け止めてね」

「んあああ!」

浮竹の中の浅い部分に精液を放った。

それを塗り込むように、奥へ奥へと侵入する。

「あ・・・・・・」

結腸の入り口をとんとんとノックされて、浮竹はオーガズムでいっていた。

「やああああ!」

「血をすうよ?」

「やあ、だめぇ、いってるからぁ!」

京楽は、浮竹の太ももの内側に噛みついて、吸血した。

「あああ!」

吸血による凄まじい快感を感じながら、京楽のものを締め付けた。

「んっ、僕も君の中で出すよ?受け取ってね?」

「ああーーーーー!!」

京楽は浮竹の最奥で精を放った。

同時に、浮竹もまたシーツの上に欲望をぱたぱたと零していた。

「ん・・・・・」

引き抜かれていく感触に、浮竹が首を振る。

「まだ、繋がっていたい」

「でも、かき出さないと」

「いいから!」

二人は、繋がったまま眠った。

朝起きると、隣に京楽はいなくて、後処理をされて体は綺麗に拭われており、バスローブを着せられていた。

「京楽・・・・」

「ああ、起きた?」

「何をしているんだ?」

「君の手料理を真似て、マンドレイクのスープを作ってみたんだ」

鍋の底には、真っ赤に茹でられたマンドレイクが3体、刻んでいれられていた。

「マンドレイクは隠し味だぞ?」

「まあ、そう言わずに食べてみて?」

恐る恐る口にすると、ほのかな甘みを感じた。

「うまい・・・・・」

「そうでしょ?一晩水につけて、独特の渋みを取り去っておいたんだ。この方法のマンドレイクなら、隠し味にしても、大丈夫でしょ?」

「いや、だめだ」

「なんで!?」

「マンドレイクは生のまま、ぶちこむのがいいんだ」

結局、浮竹の料理に生きたマンドレイクをそのままぶちこむ癖は、治らないのであった。

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「何故だ!何故、私の子ではだめなのだ!」

藍染は、死んだルクレチアを悼むのではなく、怒っていた。

「魔人ユーハバッハの血が足りないのか・・・・いっそ、魔人ユーハバッハの封印を解くか?」

そんなことをすれば、この世界が滅ぶことなど、藍染も承知していた。

「私は神だ。神である私を崇めぬものはいらない」

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異界サーラで、眠っていた星の精霊ドラゴン、平子真子は目覚めた。

「なんや。誰かが、俺を呼んどる」

歌声のするほうに、平子は歩いていった。

純白の羽毛に覆われたドラゴンの姿をしていた。

「おまえが、星の精霊ドラゴン、平子真子か?」

「そやけど、あんたは誰や。いやあんたは・・・浮竹か?」

姿形も、魔力すらもそっくりであった。

「俺は、浮竹十四郎の残滓。創造神ルシエードが、このサーラの世界で作り上げた浮竹十四郎。本物の浮竹十四郎と会いたい。この世界サーラと、始祖ヴァンパイアの浮竹がいるアビスの世界を繋げた。さぁ、共に行こう。アビスの世界へ」

「でも、あんた人間やろ?」

「でも、浮竹十四郎だ」

「アビスの浮竹は俺の友人やで。その存在を傷つけるなら、俺は許さんで」

「一つになるだけだ」

「まぁいい。アビスの世界に運んでやろやないか。そこで、本物の浮竹にボコボコにされるとええわ」

「俺は残滓。浮竹の一部」

サーラの世界と、アビスの世界は繋がった。

神々が降りていく。

サーラの世界から、アビスの世界へ。

星の精霊ドラゴンもまた、神であった。



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始祖なる者、ヴァンパイアマスター32

藍染に突然呼ばれ、犯された魔女の女は、孕んで僅か10日で臨月を迎え、子を出産した。

男児であった。

ルクレチアと名付けられた。

「ああ、愛しいルクレチア。お前のお陰で、母さんは故郷に戻れるのよ」

藍染の寵姫は、皆、美しいからと故郷から無理やりつれてこられた、ある意味の人質でもあった。

ルクレチアの母は、故郷である魔女の里に帰された。

ルクレチアは、僅か半月で16歳くらいの見た目まで成長した。

ルクレチアに与えた魔人ユーハバッハの血は、ルクエレチアをネクロマンサーにした。

ルクレチアには言葉を理解する知能はあったが、自由意思はもたせなかった。

自我はあったが、藍染の言いなりになるように作られた。

「さぁいけ、私のかわいい息子よ。そのネクロマンサーの力で、血の帝国を荒らし、始祖とその血族京楽を引き付けて、封印するのだ!」

「はい、お父様」

もう、ラニとレニのような失敗は繰り返さない。

そう藍染は心に決めて、息子を成長促進の魔法を使って育てた。

「このネクロマンサーの力で、血の帝国をアンデットで満たして、必ずや始祖浮竹とその血族京楽を封印してみせます」

「いい子だ、ルクレチア」

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血の帝国中で、死んだはずのヴァンパイアがアンデット化して、復活する事件が相次いでいた。

藍染の気配を感じたブラッディ・ネイは、すぐに実の兄である浮竹に知らせて、助力をこうた。

「アンデットが出ているだって?」

「そうなんだ、兄様。中には、村一つを滅ぼすアンデットの群れが確認された。ネクロマンサーの存在が確認されたけど、藍染の匂いがするんだ。あと、魔人ユーハバッハの血の匂いもした」

「藍染の子か何かか」

「多分、そう思う。でも、すでにネクロマンサーで死者だ。騎士団を向かわせたけど、みんな瘴気にやられて倒れてしまった」

ブラッディ・ネイは精鋭の騎士団を失って、今ピンチに陥っていた。

「だから、俺と京楽の出番というわけか」

「毎回毎回、藍染もこりないねぇ」

「ラニとレニの件はまだボクも怒っているんだよ、兄様」

「あの件はすまなかったと思っている」

娘にした藍染の双子の娘ラニとレニは、藍染と通じていた。

浮竹は一度刺され、心臓に魔人ユーハバッハの血液が凝固した宝石を砕かれて入れられて、浮竹そのものに魔人ユーハバッハの意識を宿した。

8人の精霊王たちのお陰でなんとかなったが、もしも精霊王と契約していなかったら、今頃好きなように体をユーハバッハに使われていただろう。

そして、それを誰かに封印されていたに違いない。

「もう、同じ過ちは繰り返さない。東洋の俺から、邪気を払うお札ももらったしな。藍染の手の者にも効くそうだ」

「ああ、浄化のお札だね」

それを聞いて、ブラッディ・ネイが微笑んだ。

「なんだ、浄化のお札。そんなものがあるなら、今回のアンデット事件は兄様に任せていいよね?」

「念のため、白哉、恋次君、ルキア君、一護君、冬獅郎君を借りていく。アンデットはいろんなところに沸いているんだろう?」

「それがね、一直線なんだ。この宮殿に向かって、進んでいる」

「ブラッディ・ネイ、お前を狙っているのか?」

浮竹は、ブラッディ・ネイを見た。

ブラッディ・ネイは首を横に振った。

「分からない。もしそうなら、すでにこの宮殿を襲っているはすだよ」

「多分、僕らをおびき寄せるためじゃないかな」

京楽の言葉に、浮竹は頷いた。

「ブラッディ・ネイ。帝都を封鎖しろ」

「うん。もう準備は整ってるし、侵攻されそうな地域の民の避難も済ませてる」

「ブラッディ・ネイにしてはうまくやってるね」

「余計なお世話だよ、ひげもじゃ」

こうして、浮竹と京楽は、白哉、恋次、ルキア、一護、冬獅郎たちと共に、アンデットの群れと対峙するのであった。

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アンデットは、たいていがスケルトンだったが、グールやゾンビもいた。

下位の低級アンデットの群れではあるが、数が数だけに、帝国の騎士団が瘴気に飲まれて倒れるのが分かるほど、空気が淀んで濁っていた。

「神の息吹を。ゴッドブレス!」

ルキアが、瘴気を祓う魔法を唱えてくれた。

「いくぜ、うおおおお!」

恋次は竜化して、炎のドラゴンブレスで敵を焼き払う。

白哉は避難していない者がいないか確かめていた。

ルキアは常に清浄な空気を維持するのに手いっぱいで、その守りは一護と冬獅郎に任せていた。

「お札・・・・始めて使うが、効いてくれよ」

浮竹が手にしたお札は、邪気を払い浄化の力のある護符だった。東洋の浮竹からもらったものだった。

光が満ちた。

お札の光を浴びたアンデットの軍団が、ボロボロと灰となっていく。

「効いてるね!今だよ!」

恋次が、ドラゴンブレスで、アンデットの軍隊の中央にいたボスであろうネクロマンサーを攻撃した。

「笑止!この程度の炎で焼かれる俺ではない。俺の名はルクレチア。藍染様の息子にして、お前たちを屠る者だ!」

ルクレチアは、ネクロマンサーであると同時に、すでに死者であった。

「浄化の札か。厄介な・・・・・・」

浮竹は、真っ赤なヴァンパイアの翼を広げて、お札でアンデットの軍隊を少しずつ小さくしていいく。

長く行列ができていたアンデットたちは、今は丸い円形に追い込まれていた。

「京楽、チェンジだ。お札をもって、更にアンデットを消してくれ」

「分かったよ」

浮竹が、京楽にお札を渡し、今度は京楽が浄化の護符でアンデットを葬っていった。

「おのれ、始祖浮竹!その血族京楽め!」

ネクロマンサーは、呪いの言霊を吐くが、それは反射された。

「まぶしい・・・・」

お札の効果で、それまでネクロマンサーの体を守っていた瘴気が、消えた。

「いけ、フェニックス!」

浮竹は炎の最高位精霊フェニックスを呼ぶと、ネクロマンサーを攻撃した。

「はははは!俺に炎は効かぬ!魔人ユーハバッハの血を注がれた俺に、魔法など効かぬ!

だが、かすかにルクレチアの顔に罅が入った。

「これしきの傷!」

瘴気を生み出し、ルクレチアは傷を癒してしまった。

「いけ、不死の軍団たちよ!」

だが、ルクレチアの操るアンデットたちは、次々と灰になっていく。

「ええい、浄化の札など、こうしてくれる!」

瘴気を、浄化の札にあてた。

浄化の札は、その瘴気も浄化した。

「くそ、くそおおお!!」

ルクレチアは、悔しそうに叫んで、自分の血をアンデットたちに与えた。

「これで、我が軍はそのような札など、効かぬ!」

「そうか?じゃあこれならどうだ!」

浮竹は、浄化の札を中心にして、またもや炎の最高位精霊フェニックスを召還すると、その破壊と再生の炎に、浄化の炎が足されて、アンデットたちを燃やしていった。

「そんなばかな!」

ルクレチアを覆っていた瘴気が、取り払われる。

「いけ、京楽!」

「おおおお!!」

ミスリル銀の魔剣に、聖属性を付与させて、京楽はルクレチアを袈裟懸けに斬った。

ぶわりと濃い瘴気にあてられて、京楽が怯む。

「おのれ、おのれ!!!」

傷口を再生させながら、ルクレチアは、また瘴気に潜んだ。

いつの間にか、アンデットの群れは消えていた。

ルクレチアが吸収したのだ。

浮竹は、手元に戻ってきたお札で、再び瘴気を祓う。

「ぬおおおおおおお」

ルクレチアは吠えた。

その血が溢れるたびに、地面から強化されたアンデットが這い出してきた。

「どうやら、お札の効果も魔人ユーハバッハには決定的には効かないようだね」

「でも、弱らせることには成功している!」

強化されたアンデットたちは、白哉、恋次、ルキア、一護、冬獅郎でなんとかしてくれていた。

「俺たちは、とにかくあの親玉を叩こう!」

「分かったよ!」

浮竹と京楽は、互いの魔力を練り、うねらせて、槍の形を形成した。

それに、お札の効果をエンチャントする。

更に、フェニックスの炎を纏わせて、その上からもお札の効果をエンチャントした。

二重のお札の効果と、破壊と再生を司る精霊の炎と、純粋な魔力槍が、ルクレチアめがけて射出された。

まずはお札の効果で、瘴気を祓い、次の炎で肉体を焼き、更にお札の効果でに腐肉を更に焼いて、露出した心臓部のコアめがけて、純粋な魔力の槍が貫いた。

「おおおおお!!」

「うおおおおお!!」

浮竹と京楽は、純粋な魔力の槍に更に魔力をこめた。

「藍染様・・・・父様、俺は・・・・・・」

どさりと、ルクレチアは倒れた。

「俺は・・・・あなたに、愛され・・・たかった・・・・・」

ボロボロと灰となっていくルクレチアを、浮竹と京楽が哀しそうに見ていた。

「今度生まれ変わってきたら、世界を自由に羽ばたく鳥になるといい」

そう言って、浮竹は鳥の形をした式神を、崩れていくルクレチアの傍に置いた。

「鳥に・・・・俺は、鳥になる・・・・」

ボロボロと崩れていくルクレチアの体からかけたコアの一部が式に宿り、式は意思をもった小鳥となって青空に羽ばたいていった。

「いいの、浮竹。コアの一部を宿らせちゃったよ」

「大丈夫だ。あの式は、お札で清めておいたから、邪悪な存在だと宿れない」

「あのネクロマンサーの子は、元々はネクロマンサーじゃなかったんだね」

「きっと、藍染の息子として生まれてきて、魔人ユーハバッハの血のせいで、ネクロマンサーになったんだろう」

「無事ですか、浮竹殿、京楽殿!」

心配してかけつけてきたルキアに、京楽がその場に座りこんだ。

「ごめん、ルキアちゃん、魔力回復の魔法をかけて。浮竹と魔力を練り合わせて槍を作ったけど、ごっそり魔力をもっていかれて、魔力切れだよ」

「あの程度で音をあげるなど、情けないぞ京楽」

「そうは言ってもねぇ。君の体に精霊神が入った後で、君は爆発的に魔力をあげた。あいにく、こっちはそこまで魔力はないよ。君の3分の1くらいだ」

「前は2分の1といっていただろう」

「それだけ、君が強くなたってことさ」

ルキアから魔力回復の魔法を受けながら、飛び立っていった鳥が大空を旋回し、青い羽毛が降ってきた。

「おやすみ、ルクレチア。いい夢を」

青い小鳥となり、世界へ自由に羽ばたいていくルクレチアを、皆見上げていた。

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「今日は、皆に勝利を祝して、俺の手料理を振舞ってやる」

「ええ、浮竹殿の手料理ですか!?」

ルキアが顔を輝かせた。

「お前、料理なんてできたのか?」

「こら、冬獅郎、失礼だろうが!浮竹さん、うちの冬獅郎がすみません」

「京楽?」

浮竹は、京楽の名を呼んだ。

「一番に、お前に食べてほしいんだが」

「ブラッディ・ネイ!乱菊ちゃんの毒消しポーションとかある!?」

「あるが、それがどうかしたの?」

「みんなの分を用意しといて。あと胃腸薬も」

「兄様の手料理くらいで、大げさな・・・・・」


「今日は、海鮮パスタにしてみた」

その物体を見た、皆が顔を青くした。

パスタが青くてビチビチはねていた。

海鮮というが、貝はどす黒く、エビはショッキングピンクだった。

「た、食べてみないと味は分からないからな」

そう言って恋次は一口食べて、倒れた。

白哉もルキアも一護も冬獅郎も、みんな食べて倒れた。

「あれ、おかしいなぁ。マンドレイクぶちこんで、他にもいろいろぶち込んで茹でただけなんさが」

浮竹は、自分で味見してみた。

「うん、うまい。ブラッディ・ネイもどうだ?」

「に、兄様の手料理なら喜んで!」

青い顔をしながら、ブラッディ・ネイは一口食べて泡をふいた。

「きゃああ、ブラッディ・ネイ様が!」

「しっかりして!」

寵姫たちが、慌ただしく医者を呼んできた。

医者は、みんなの容態を見て、次に浮竹の手料理を見た。

「これはなんとも・・・・」

一応、浮竹はブラッディ・ネイの実の兄なので、皇族ということになっている。

不敬なことは言えなくて、困っているところに京楽がかけつけてきた。

「あああ、またやってる!」

「京楽、皆が俺の料理を口にして、倒れたんだ。どこかで毒でも盛られていたのだろうか?」

君の料理のせいだとは言えなくて、京楽は言葉を濁す。

「ああ、医者がきてたの。みんなにこのポーションと胃腸薬を飲ませて」

城に備蓄されていた、乱菊の薬をもって、かけつけてきたのだ。

医者は、それらを皆に飲ませたが、味のショックからか、皆はまだ倒れてうーんうーんとうなっていた。

「京楽なら、俺の手料理、残さず食ってくれるよな?」

キラキラした期待の眼差しで見られて、京楽は覚悟を決めて浮竹の海鮮パスタを口にした。

かっと目を見開いた。

その姿のまま、京楽は気絶していた。

この件があり、浮竹は宮殿のキッチンに出入り禁止の令を、ブラッディ・ネイに受けることになるのだった。


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始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝

西洋の浮竹と京楽は、東洋の浮竹と京楽の元に遊びに来ていた。

「遊園地にいきたい。このパンフレットに書いてある、ジェットコースタートやらに乗りたい」

そう、西洋の浮竹は言い出した。

「ごめんね。浮竹ってば、遊園地に行きたいとって聞かなくてね」

(お、今回は貸し切りじゃないのか?)

(いつもほいほい貸し切りにしてたら、お金がもたないよ)

(それもそうだな)

「いや、貸し切りにしようかと思って交渉してみたが、駄目だった。他のお客さんがいっぱいくるからと言われた」

しょぼんと落ち込む西洋の浮竹に、東洋の浮竹はその頭を撫でた。

いつもとは正反対であった。

(人がいっぱいいて賑わっている遊園地もきっと楽しいぞ)

「そうか?そうだな。人で賑わっている中ではしゃぐのも楽しいかもな」

西洋の浮竹はすぐに調子を取り戻して、4人分のお弁当をそれぞれ西洋と東洋の京楽が作って、出発となった。

電車で揺られること1時間。

目的の遊園地についた。

人がたくさんいた。

「あ、あったあれだ!東洋の俺、並ぼう!」

西洋の浮竹が、ジェットコースターを指さした。東洋の浮竹の手を握り、列に並んだ。

平日なので、まだ人ごみは少ないほうであった。

ジェットコースターの列に並んで、西洋の浮竹はわくわくしていた。東洋の浮竹も、ドキドキしてきた。

やがて順番がきて、ジェットコースターに乗りこんだ。

「うわああああああ」

(わああああああ)

両方の浮竹は、その勢いに叫び声をあげていた。

「落ちる、落ちる!」

(大丈夫だ。ちゃんと落ちないようになっている)

「のわああああああああ」

西洋の浮竹は、悲鳴をあげながらも楽しんでいた。

東洋の浮竹も楽しんでいた。

ただ、西洋と東洋の京楽は青い顔をしていた。

「ぎゃあああああ」

(うわわわ)

ジェットコースターから降りる頃には、西洋と東洋の京楽はぐったりとなっていた。

「京楽、お前たちはああいうの苦手なのか」

「高いところは別に平気だよ。でもあのスピードでぐるぐる回られたら、気分が悪くなる」

(ボクは、純粋に高いところがだめだよ)

「なら、無理して付き合ってくれなくてもよかったんだぞ?」

(そうだぞ、春水)

(君を一人で行かせれないからね)

「右に同じく」

しばらく休憩してから、4人はミラーハウスに入り、鏡にぶつかったりしながら、クリアした。

「あれ、これも鏡か。こっちも鏡・・・えええい、ライトニング・・・ムガーー」

魔法をぶっぱしそうになった西洋の浮竹を、西洋の京楽が口を封じてなんとか凌いだ。

「こっちの世界で魔法は禁止だよ」

「すまん。つい癖で魔法を使いそうになる」

(魔法はだめだぞ、西洋の俺)

「ああ、分かった」

(物わかりが早くて助かるね)

絶叫ものは避けて、メリーゴーランドやコーヒーカップに乗った。

ちなみに、西洋の浮竹はコーヒーカップを回し過ぎて、目を回していた。

「あああ・・・・星が回ってる」

「あんなにコーヒーカップを回すからだよ」

(ちょうどいいし、お昼休憩にしようか)

4人は休憩所でお昼を食べることにした。

「うまいな。京楽たちの作った弁当だけあって、おいしい」

(うん、おいしいな)

サンドイッチを中心に、卵焼き、焼いたしゃけ、ウィンナー、ポテトサラダ、カレーコロッケ、唐揚げが入っていた。

「口に合うならよかったよ」

(ウィンナーはたこさんにしておいたよ。ああ、十四郎ほっぺについてる)

東洋の京楽は、東洋の浮竹のほっぺたについていた米粒をとって、自分で食べてしまった。

それに、東洋の浮竹は真っ赤になっていた。

それを見た西洋の京楽は、わざと自分のほっぺたにご飯粒をつけた。

「京楽、ついてるぞ」

そう言って、ハンカチで思い切りごしごしふかれて、西洋の浮竹はちょっとがっかりしていた。

「ああ、僕の浮竹はやっぱり浮竹だね」

「何を言っている」

ポテトサラダを頬張って、西洋の浮竹は西洋の京楽の顔をのぞきこんだ。

「顔が赤いな。熱でもあるのか?」

額と額をくっつけられて、西洋の京楽は嬉しそうにしていた。

「熱もないし、それだけ元気そうなら大丈夫だな、次はお化けや屋敷に行こう」

昼食を食べ終えた4人は、お化け屋敷の列に並んだ。

お化け屋敷は大がかりの仕掛けがしてあったが、妖である東洋の浮竹と京楽は平気そうで、西洋の浮竹と京楽も、モンスターのいるような世界に住んでいるせいで、平気だった。

「本物の幽霊でも出てこないと、怖くないな。まぁ、本物の幽霊が出ても成仏させるだけだが」

「幽霊なんか出てきたら困るよ。成仏させるのに時間かかりそう」

西洋の浮竹と京楽は、そんなことを言っていた。

(妖怪に慣れているせいか、ちっとも怖くなかった。でも、それなりに面白かった)

(お化け屋敷から幽霊が定番だろうけど、その幽霊を生身の人間がしてるんじゃねぇ)

東洋の浮竹と京楽は、怖くはないが、それなりに楽しんでいるようだった。

お化け屋敷の外は人込みに紛れており、西洋の浮竹は西洋の京楽を探した。

「おい、そっちに京楽はいなかったか?」

(いや、見てないぞ)

(僕も見てないね)

「まさか、迷子?」

3人は、西洋の京楽を探したが、一向に見つからなかった。

「仕方ない、迷子のお知らせしてもらおう」

(それってけっこう恥ずかしいような)

(確かに恥ずかしいね)

「俺のところの京楽は、こっちの世界には慣れていないからな。迷子のお知らせをしてもらったほうが早く見つかる」

西洋の浮竹は、西洋の京楽の恥ずかしさなど知ったことではないと、迷子センターに向かった。



その頃西洋の京楽はというと、西洋の浮竹と東洋の浮竹と京楽を見失ってしまい、一人途方にくれていた。

「どうしよう」

きょろきょろと3人の姿を探すが、完全にはぐれてしまった。

魔力で探知しようにも、人が多すぎて無理だった。


その頃。

西洋の浮竹と、東洋の浮竹と京楽は迷子センターに来ていた。

「ここにもいない。呼び出してもらおう」

ピンポンパーン。

音がした。

「迷子のお知らせです。西洋の京楽様、迷子になられているので、お連れの方が迷子センターにまで来ています。どうぞ、迷子センターにおこしください」

場内アナウンスで迷子だと言われて、西洋の京楽は火が出るほど恥ずかしくなった。

穴があったら入りたいとは、このことだろうか。

道を歩いている人に尋ねて、迷子センターの場所を教えてもらうと、西洋の浮竹は駆け足で急いだ。

「迷子のお知らせです。西洋の京楽様を探しています。年齢は・・・」

「ああもう、そんな放送しないで!」

真っ赤になりながら、西洋の京楽は迷子センターにまでやってきた。

「京楽、探したんだぞ」

(よかった、見つかって)

(迷子の放送をされた気分はどうだい?)

「穴があったら入りたいほどに恥ずかしい」

そんな西洋の京楽に、3人とも笑って、見つかってよかったと安堵した。

遊園地を一通り回って、最後に観覧車に乗ることにした。

「東洋の京楽は、高いところがだめなのだろう?待っているか?」

(ううん、十四郎と一緒に乗るよ)

「そうか。じゃあ俺は京楽と一緒に乗ろう。なんでも、一番てっぺんでキスすると、永遠の恋人同士になれるそうだぞ」

「何そのジンクス。早く乗ろう!」

西洋の京楽は、西洋の浮竹の手をとって観覧車に乗った。

その次の観覧車に、東洋の浮竹と京楽が乗り込んだ。


てっぺんにまでくると、西洋の京楽は西洋の浮竹にディープキスをかましていた。

「んんっ」

牙を伸ばされて、吸血までされた。

「んあっ」

何処からかハリセンを取り出すと、それで西洋の京楽の頭を殴った。

「盛るな!」

「ええ、でもてっぺんですると結ばれるんでしょう?もう結ばれてるけど」

西洋の浮竹は赤くなって、何度もスパンスパンと西洋の京楽の頭を殴るのであった。

一方、東洋の浮竹と京楽は、てっぺんにくると、まずその景色を楽しんだ。

それから、啄むような優しいキスを、東洋の京楽は東洋の浮竹に与えた。

(こんなことしなくても、ボクたちは永遠の恋人同士だけどね)

(春水、恥ずかしいからそのへんで止めてくれ)

東洋の浮竹は、真っ赤になって、でも東洋の京楽の胸の中にいるのだった。


「どうだった?こっちは盛ってきたから、成敗した」

「グスン」

ハリセンで叩かれたようで、西洋の京楽は自分の頭を撫でていた。

「浮竹ってば酷いんだよ。ちょっとディープキスして吸血したくらいで・・・・」

「ばか、それは夜の誘いになるって知っててやったんだろうが!」

「えへへへ」

「えへへじゃない」

スパーン。

西洋の京楽は、また西洋の浮竹にハリセンでしばかれていた。


(ボクたちは、普通だったよ。てっぺんでキスはしたけど)

(わーわー!春水、ばらすな!)

(別にいいじゃない。向こうはもっとすごいことになってたみたいだし)

「うん、凄かった。乱れてる浮竹って、色っぽくて・・・」

「京楽、一度灰になるか?」

ゴゴゴゴと、怒った西洋の浮竹に謝りまくって、西洋の京楽はなんとか許してもらった。

夕方になり、遊園地のレストラン夕食をとった。

値段は少し高かったが、そこそこのおいしさだった。

(この後、7時から花火があがるんだ)

「花火!」

西洋の浮竹には、かなり無縁の代物で、花火大会やら普通の家庭でする花火も好きだった。

「浮竹ってば、花火が大好きだからね」

(そうなのか、西洋の俺)

「ああ。あの花のように色鮮やかに咲いて、すぐに散ってしまう風情が好きだ」

(じゃあ、特等席用意しないとね)

東洋の京楽の言葉に、皆頷いた。

ひゅるるるるぱぁあぁん。

ひゅるるるぱああぁあん。

打ちあげられていく花火を、建物の屋上から見ていた。

「綺麗だな・・・・」

「うん、綺麗だね」

(僕の十四郎には負けるけどね)

(こら春水、今は花火を楽しめ!)

(ちゃんと楽しんでるよ?)

(じゃあなんで俺の顔ばっか見ている)

(キミの瞳に映った花火を、見ているの)

「熱いな」

「わあ、熱いなぁ」

西洋の浮竹と京楽は、純粋に花火を見上げて楽しみながら、東洋の二人の邪魔はすまいと、少し離れた。

花火は15分ほど続き、終わってしまった。

「帰ろうか。最後のいいものが見れた。花火を目にするのは数年ぶりだ」

「付き合ってくれてありがとうね、東洋の僕と浮竹」

(いや、こっちこそありがとう。おかげですごく楽しかった)

(うん。こんな一日も悪くないね)

4人は、満足して雑居ビルまで戻った。

ちなみに帰りは、西洋の浮竹もちでタクシーだった。

何気に一万円札を渡し、釣りはいらないと言った。

(今度、外で花大会しようか)

「家庭用の、花火か?」

(うん)

「いいな、それ。俺も混ざってもいいか?」

(もちろんだよ。むしろは花火が好きって君のためにやるんだから、是非参加して)

西洋の浮竹は、ほろりとなって、東洋の自分の頭を撫でた。

「東洋の俺はいいやつだな。いや、そんなこと最初から分かってたけど」

「えへへへ」

撫でられて、褒められて、東洋の浮竹は恥ずかしそうにしていた。

「おっと、もうこんな時間だ。浮竹、そろそろ帰るよ」

「ええ、もうちょっといたい」

「ミミックのポチに餌あげてないでしょ」

「そうだった。あ、東洋の俺からもった金魚は元気にしているぞ。血を与えたから、元気すぎるくらいだ」

(それはよかった)

(ふあ・・・・ボク、眠くなってきちゃった)

時刻は0時をまわりそうだった。

「じゃあ、また。元気でな!」

「元気でね!」

(西洋の俺も、元気でな!)

(西洋のボクも、達者でいてよね)

そうして別れをすませて、二人は去っていった。


「ポチ、えさだぞ~~~」

「るるるるーーー」

ミミックのポチは、浮竹の上半身に噛みついた。

「暗いよ狭いよ怖いよ息苦しいよ~~~~」

「何やってるのさ、浮竹」

「ポチがあらぶってる」

ポチから浮竹を救出して、京楽はぽちの頭を撫でた。

「るるる」

がぶりと噛まれて、京楽は手をさすった。

「ほら、ポチの大好物のドラゴンステーキだぞー」

「るるっるるーーーーーーーー♪」

ポチは、浮竹の手ごとかじりついた。

でも、綺麗にドラゴンステーキだけを持って行った。

「かわいいなぁ、ポチは」

「世界中を探しても、ミミックを飼ってるのは君くらいだよ」

「何せ、ミミック教の教祖様でもあられるからな」

ポチの頭を、浮竹は撫でた。

ポチは噛みつかなかった。

「また、むこうに遊びにいこうな、京楽」

「うん。今回は手土産とかなかったから、何か作ってもっていくよ」

そんなことを話し合い、風呂に入って天蓋つきのベッドで一緒に就寝した。

夢の中で、ポチと花火をしていた。

「んーポチ、むにゃむにゃ」

東洋の浮竹と京楽もでてきた。

肝心の西洋の京楽は、なぜか水を汲んだバケツだったりするのだった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター31後編「

「何を言ってるんだい、浮竹?」
京楽は、震え出すラニとレニを放置して、浮竹の心臓をもう一度癒した。
「計画は失敗よ、レニ。逃げましょう!」
「待って、ラニ姉さま!」
「逃がさないよ」
京楽が血の結界を作り出して、二人を閉じ込めた。
「私の名はユーハバッハ。人は私を魔人と呼ぶ。私は千年の封印を破り、この始祖ヴァンパイアの体を手に入れた!ははははは!!」
哄笑する浮竹を、信じられないような目つきで、京楽は眺めていた。
「浮竹の体を返せ!」
「もう、この体は私のもの・・・ぐっ、抗うか始祖ヴァンパイアよ」
「浮竹、負けないで!魔人ユーハバッハの血液の欠片を心臓に入れられたんだね!?ほとんどを僕の血液にしたから、ユーハバッハが居続けられるほど、血はまじっていないよ!」
「京楽・・・・ぐっ、ごほっ」
浮竹は、瞳を真紅にしたり、翠色に戻したりして、自分の中の血と戦っていた。
「京楽・・・もしも俺が、魔人ユーハバッハに完全になったら、お前が封印しろ。これをお前に預ける」
それは、黒水晶の結晶だった。
「精霊界にいき、精霊王たちを集めて、俺を封印しろ・・・・ぐっ」
浮竹は頭をかきむしった。
「私はユーハバッハだ!」
「違う、浮竹だ!」
京楽は、血を暴走させて狂暴になった。
「君の心臓が駄目だというなら、抜き取ってやる」
「な、正気か!愛する者をその手にかけるというのか!」
「ユーハバッハに渡すくらいなら!」
京楽は、本当に浮竹の心臓をくり抜いた。
「がはっ」
大きく血を吐く浮竹。
抜き取られた心臓は、赤い結晶にまみれていた。
「私の体が、私の体があああああああ!!」
倒れる浮竹を、京楽は抱きしめた。
「浮竹、戻っておいで、浮竹!」
狂暴な血の暴走は、己の体も巻き込んで、血の竜巻となった。
その様子を、ラニとレニは震えながら見ていた。
浮竹は目覚めない。
心臓は再生を始めているが、また赤い結晶を・・・ユーハバッハの血が混じっていた。
「うわあああああああ!!」
京楽は、絶望した。
何もかもが、どうでもよくなった。
浮竹以外、何もいらない。
浮竹をユーハバッハになど、渡したくはなかった。
「うわああああああ!!」
京楽の絶望に呼応して、古城に罅が入る。
「今だ、逃げようラニ!」
レニが、放心状態のラニを引っ張って、古城を抜け出す。
古城は、京楽の凄まじい魔力の衝撃を受けて、消し飛んでいた。
辺り一帯が、瓦礫にまみれる。
京楽の絶望は、深かった。
浮竹の体をユーハバッハに渡すくらいなら、いっそ一緒に休眠するか封印するか・・・・。
「一緒に行こう・・・・・」
黒い水晶の結晶が、精霊界への扉を開いてくれた。
精霊界に向かわずとも、8人の精霊王が向こう側からやってきた。
「我が友が、我が最も古き友と戦っている」
炎の精霊王はそう言った。
「封印を・・・・」
絶望の中にいる京楽が出した答えは、一緒に封印されることだった。
「待て、我が友の血族よ。ユーハバッハの器には、まだ我が友はなっていない。まだ、可能性はある」
「浮竹が元に戻ると?」
「我らに任せよ。古の封印を解く」
8人の精霊王は、合体して精霊神となった。
「我は神。我は絶対。さぁ、ヴァンパイアの子よ。始祖をこちらに・・・・・」
「浮竹を頼むよ」
精霊神は、浮竹の体に入り込み、浮竹の中から魔人の血を完全に消し去った。
「我は神。我の選択は神の意思。ヴァンパイアの子よ、汝の始祖は、汝を必要としている。いこうとするな」
死の向こう側に旅立ちそうな、京楽を精霊神が呼び止めた。
京楽は、絶望の淵にいた。
愛していた者を傷つけてしまった。
ユーハバッハになる浮竹など、見ていられなかった。
「でも、僕は浮竹を傷つけた。浮竹の血族でいる値など・・・・」
「それを決めるのは、汝ではなく、汝の主だ」
「浮竹・・・・・・」
「ん・・・・」
「浮竹!?」
「京楽・・・・俺は?封印は?」
「8人の精霊王が合体して、精錬神になってくれたんだ。その力で、君を救ってくれた。でも、僕は君を傷つけてしまった。血族を解いてくれ」
浮竹は、泣きながら京楽の頭をポカポカ殴った。
「勝手に俺の血族をやめようとするな!お前になら、殺されてもいい。それくらい愛してるんだ、京楽」
「浮竹・・・僕は、君の血族であり続けていいのかい?」
「当たり前のことを言うな!」
泣きじゃくる浮竹を抱きしめながら、京楽は浮竹の血族でいられることを、神に感謝した。
「では、我はこれで帰る」
精霊神は、8人の精霊王に戻ると、精霊界のに戻っていった。
「浮竹、守れなくてごめんね」
「ラニとレニは?」
「さぁ、どっかに行っちゃった。戻ってきたら、殺すけどね」
「ラニとレニは、短いが娘だった。許してやれ」
「君がそれを望むなら」
ラニとレニは、それ以後浮竹と京楽の元に戻ってくることはなかった。
ガイア王国の冒険者のパーティーにラニとレニによく似た、魔法使いが二人いると風の噂で聞いたが、浮竹と京楽はもう関係ないのだと、放置しておいた。
--------------------------------------------------------
「ラニもレニも私を裏切った!」
魔国アルカンシェルで、藍染はいらだっていた。
もう少しで、浮竹と京楽を封印にまで追いこめれたのに。
水鏡で、藍染は全てを見ていた。
「こうなったら、私がユーハバッハの血を・・・しかし、飲みこまれるには不愉快だ」
藍染は。寵姫を一人呼ぶと、その場で犯した。
「私の子を孕ませた。10日でその子は臨月を迎える。子を産んだら、お前は解放してやろう」
「本当ですか、藍染様!故郷に戻っていいのですか!」
犯された寵姫は、元々魔族ではなく魔女であった。藍染の思うままに玩具にされて、絶望していたが、故郷に戻っていいと聞いて、腹を撫でた。
「早く生まれておいで、愛しい子。私の贄となれ。
----------------------------------------------------------------------------
ラニとレニがいなくなって、半月が過ぎた。
古城は、カイザードラゴンである恋次の時間回帰の魔法で元通りになった。
しばらくの間、京楽はずっと浮竹の後をついてきた。
まるで、孵化して初めて人間を見たカルガモのひなのように、後ろをついて回った。
「ええい、気が散る!たまには一人でいさせろ」
「やだよ。浮竹が何処かへ行ってしまう」
「行こうとしたのは、お前の方だろう!俺との血族を放棄しようとした!」
「あれはなかったことにして?」
ちゅっとリップ音を立てて、京楽は浮竹の額にキスをした。
「今日、君を抱いてもいいかい?」
「好きにしろ」
浮竹は、久しぶり過ぎて赤くなっていた。
釣られて、京楽も赤くなった。
お風呂に入り、本当に浮竹を抱くのは久しぶりだった。
ラニとレニを預かってから、ずっと禁欲生活を送っていたのだ。
浮竹を抱くのは、実に4カ月ぶりくいらいになる。
「君を初めて抱いた日を思い出すね」
「そんなこと、忘れた」
「100年以上も、昔のことだからね」
浮竹と向かい合って、正座をする。
ぺこりとおじぎをして、まずは唇を重ねた。
「んんっ・・・・」
京楽の舌がは熱く、浮竹の情欲をそそった。
「あ・・・・・」
薄い胸板を撫でられて、胸の先端をかりかりと引っかかれた。
「あ!」
浮竹は、感じているのかもどかしそうにしていた。
「今、触ってあげるから」
服の上からでも分かるほどに勃ちあがり、蜜を零して下着を濡らしていた。
「あ!」
京楽は、服の上から浮竹のものを刺激した。
それだけで、浮竹はいってしまい、精液で下着を濡らしてしまっていた。
「今、服を脱がせるから」
浮竹の着ている服を全てはぎとった。
「綺麗だよ、十四郎」
「あ、や・・・・」
見られるその視線に堪え切れず、浮竹は瞳を閉じた。
鎖骨を噛まれて、吸血される。
「あああああ!!」
襲ってきた快感の波を受けながら、京楽をローションを手に、浮竹の蕾に手はわせた。
「あ!」
浮竹は、たまらずシーツを握りしめた。
「んんっ」
浮竹の下が、蕾に入ってくる。
「やああ!」
次に、ローションにまみれた指が入ってきた。
「んんん!」
京楽の指は、ばらばらに動いた。
そのうちの一本が前立腺を刺激して、浮竹はまた欲望を自分の腹にぶちまけていた。
「あああ!」
「指だけでいっちゃうなんて、昔だと考えられなかったよね?」
「知るか」
「いれるよ?」
「ああああああ!!」
京楽の熱に引き裂かれて、浮竹は涙を零していた。
「あ、春水、春水。俺の前から、いなくなるな」
「うん。もう絶対、血族を解いてなんていわないから」
「春水・・・・」
突き上げてくる熱を感じながら、浮竹はドライのオーガズムでいっていた。
「ひああああ!!」
最奥を抉られて、びくんと浮竹の体が反応する。
「あああ!」
背をしならせて、浮竹はシーツにぱたぱたと精液を零した。
「君の奥で注ぐからね?受け止めてね?」
「ひああああ!!!」
愛奥の結腸をゴリゴリ刺激されて、浮竹はまたいっていた。
熱い京楽のものを胎の奥に受け止めて、幸せを噛みしめていた。
「もう1回、いくね?」
「何度でもこい。お前の全てを注げ」
言われるがままに浮竹を犯して、精液を全て浮竹の体に注いだ。
「ああ、久しぶりすぎて出し過ぎだね」
浮竹の下腹部は、京楽が出したものでかすかに膨らんでいた。、
「いい、お前の子種だ」
「お風呂、いこっか」
「ああ」
二人は風呂でも睦み合った。
そして、浮竹はお風呂からあがり、髪を乾かすと、幸せな眠りへとついていくのだった。
---------------------------------------------------------------------------
「君の血を抜くのは、何回目だろうね?」
「知らぬ。始祖魔族如きが」
「おや、言うねぇ。身動きもとれないくせに」
藍染とユーハバッハは、そんなやりとりをしていた。
「次の子には、自由意思をもたせない。君の血を、たっぷりあげるのさ」
「魔人と呼ばれた私も落ちたものだ。始祖魔族如きに、血を抜かれ続けるとは」
海の底で、ユーハバッハはまた微睡み始めた。
「始祖浮竹・・・・・あの体、悪くはなかった。次の器には、あれがいい・・・・」
始祖の体に一度は意識は宿った。
不老不死の神の愛の呪いをもつ、素晴らしい肉体だった。あえて文句があるとするならば、もっと魔力が高ければいい。それぐらいだろうか。
ユーハバッハは、また封印の眠りにつく。それを起こすのは、藍染くらいだ。
かつて栄華を極めた古代魔法文明を思いながら、眠りにつくのであった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝 ヴァンパイア殺人事件

「えー、容疑者は二人いるようだ」

そこは古城のある、ガイア王国だった。

あろうことか、浮竹の住まう城で、ヴァンパイアの殺人事件が起きたのだ。

被害者は血の帝国に住む、上流階級の女性だった。

容疑者は二人。

被害者となったヴァンパイアの夫と、その愛人であった。

まるでテレビのアナウンサーのように、マイクを構えて西洋の浮竹は、西洋の京楽に聞いた。

「どっちが犯人だと思う?」

「僕は愛人のほうが怪しいと思うね。夫がいるのに逆上して、殺したんだと思う」

「東洋の浮竹はどう思う?」

(自殺の可能性はないのか。銀の武器で頸動脈を切られたことによる失血死だそうだが、普通のヴァンパイアは銀が毒なのだろう?容疑者の二人とも、手に火傷を負っていなかった)

「東洋の京楽はどう思う?」

(ボクは、夫のほうが犯人だと思うね。妻に内緒で多額の借金を抱えていた。相続する財産目当てだと思う」

「うーむ。2人ともアリバイがある。死後約6時間。夫のほうは血の帝国でカジノに行っていたし、愛人のほうは他の恋人のところにいた。むう、難事件の予感だ」

「あの、俺たちいつまでここにいればいいですか」

「そうですよ。ちゃんとした警察を呼んでくれ!」

「警察なら、今目の前にいるだろうが」

「え、どこに?」

「どこですか」

きょろきょろと辺りを見回す容疑者二人に、西洋の浮竹は自分を指さした。

「俺だ。今日の1時間前に、血の帝国の警察に式を飛ばして、警察の職についた。この事件が解決すると同時に退職する」

「めちゃくちゃだ」

「そうだそうだ」

容疑者の二人は、西洋の浮竹の抗議して、殴りかかろうとした。

それを、東洋の京楽は、血の糸で戒めた。

「かわいそうだけど、暴れるみたいだから、縄をかけさせてもらうよ」

そんじょそこらの魔法では解けない、戒めの魔法をかけられて、容疑者の二人は古城の床に転がった。

手足全部、体ごと戒められて、容疑者の二人は床をうねうねしていた。

「こいつが犯人だ!式を飛ばして、殺したんだ!妻の金目当てに!」

「そういうこいつこそ、犯人だ!多額の借金を抱えていたというじゃないか!」

二人の言い合いは、続いた。

「東洋の僕たちなら、何か分かる?」

(うーん、妖なら分かるんだけど、ヴァンパイアだしねぇ。おまけに、こっちのヴァンパイアは血の帝国に住んでいて、人間とあまり大差がない。血が欲しくて殺したんじゃないなら、やっぱり怨恨か金銭トラブルだろうね)

(あの、愛人という男の影にもやもやが見える、被害者に、少なからず恨みを抱いていたみたいだ)

「東洋の俺は、そんなことが分かるのか。すごいな」

西洋の浮竹に頭を撫でられて、東洋の浮竹は恥ずかしそうにしていた。

「えへへ」

そんな二人を、西洋と東洋の京楽は、和やかに見るのだった。


「金ならやる!だから、釈放してくれ!」

「一人だけずるいぞ。どうせ、あの女の遺産なんだろうが!」

「そういう貴様こそ、妻の金を湯水のように使いやがって!目障りなんだよ!」

「お前みたいなハゲでデブと結婚したのが間違いだったと、ステラは言っていた。ステラを返せ!」

「そういうお前こそ、妻を返せ!」

被害者は、ステラという名前だった。

血の帝国の貴族の血を引く、上流階級の女性で、夫がいるのに愛人が途切れたことはなかった。

「古城の庭で、この銀のナイフを見つけた。血がついていた。残念ながら、指紋はついていなかった」

西洋の浮竹が、古城を戦闘人形に探させて、見つけた加害武器であった。

「特殊な銀でできているね。手袋をはめないと、火傷するよ。それも、酷く。この特殊な銀のせいで、被害者は血の再生ができなかったんだろうね」

西洋の京楽が、自分の指をその銀の短剣で切ってみる。通常はすぐに再生が始まるのだが、なかなか再生が始まらず、滲み出た血はそのままだった。

「もったいない」

西洋の浮竹が、西洋の京楽の指を口に含んで、その血を舐めとった。

ごくりと、容疑者の二人が唾を飲みこむ。

血を啜る西洋の浮竹は、淫らでエロかった。

(ちょっと、西洋の俺!俺たちがいるから、そこらへんにしてくれ!)

(ボクは別に構わないけどね?」

東洋の浮竹と京楽の態度は、正反対であった。

東洋の浮竹は、赤くなった。

そんな東洋の頭を、また西洋の浮竹が撫でる。

「もう今日はしないから、大丈夫だ」

(ああ・・・西洋の俺は、優しいな)

(ちょっと、ボクの十四郎はあげないよ)

「ケチ」

そんなやりとりをする二人を、西洋の京楽は仕方なさそうに、東洋の浮竹はハラハラと見守るであった。

ふと、西洋の浮竹が、容疑者の夫と愛人の手を見た。

「この二人、式を使えるようだ。血の帝国のアリバイは崩れるな。式を使って殺すこともできるし、式を使って自分を装うこともできる」

「誤解だ!俺は式なんて使えない!」

「じゃあ、その手の紋章はなんだい?力のない者でも式を使えるようにする、特別な紋章でしょ」

容疑者の夫の手を、西洋の京楽は広げてみせた。

「やっぱり、その夫が犯人だ!」

愛人の男が、まくしたてる。

「それがねぇ。君も、同じ紋章、左手にもってるでしょ」

西洋の京楽が、今度は愛人の男のほうの左手を開かせた。

男の手の平には、被害者の夫と同じ紋章があった。

「これでアリバイは崩れ去った。あとは、どちかが犯人であるかを、明かすだけだね」

「式を呼んでもらおう。式を使ったとしたら、血で汚れているはずだ」

「誰がそんな!」

シャオオオ。

東洋の京楽が、影から複数の蛇を向けると、容疑者の二人はそれに恐怖して、式を呼んだ。

(おや。2人とも、黒のようだね)

(そうなるな)

容疑者の式は、2つとも真っ赤な鮮血に塗れていた。

「どうせもうこうなっては隠し通せない。ハニー」

被害者の夫は、被害者の愛人をハニーと呼んだ。

「ううう、せっかくうまくいきそうだったのに、ダーリン。古城で事件を起こせば、警察の手も伸びないし、他国まで逃亡できるからって、古城を選んだ俺のミスだ、ダーリン」

((まさかできてた!?))

東洋の浮竹と京楽は、見事にはもった。

「ああ、血の帝国は恋愛は自由だからな。同性を愛する者は、お前たちの世界の3倍くらいいる」

(3倍も・・・凄い世界だ)

(じゃあ、犯人はこの二人ということだね?)

「そうなるな。本物の警察を呼んでおいた。身柄は、そちらに引き渡そう」

「僕たちの古城で事件を起こしたのが、そもそもの間違いだったね。血の帝国でも、いずれ捕まってたとは思うけど」


こうして、古城のヴァンパイア殺人事件は、終末を迎えた。

結局、被害者の夫と愛人はできており、被害者の財産目あてで殺したと、自供した。


「事件解決に貢献したとして、警察から謝礼金が出た。俺たちはいらないから、二人でもっていけ」

(え、でもいいのか!金貨だぞ!)

「僕と浮竹は金には困ってないからね。事件に貢献したのは確かなんだから、もらっていきなよ」

(でもやっぱり悪い。受け取れない)

「じゃあ、そのお金で、町にいって食材を買ってきて。僕とそっちの僕で、料理作るから。それなら、いいでしょ?」

(あ、うん。それならいい。預かって、食材買ってくる)

「そっちの浮竹は、節約家だね。質素が好きみたい」

「俺とは正反対だな。俺は豪華なのが好みだ」

東洋の京楽は、金貨を珍しそうに見ている、東洋の浮竹の頭を撫でていた。

西洋の浮竹も撫でたそうで、うずうずしていたが、お互い恋人いるのだしと、納得させた。

「なぁ、京楽。東洋の俺って、なんか小動物のようでかわいくないか」

「あーうん。僕もそう思ったけど、まさか浮竹までそう思ってたなんて」

「思わず、何か食べ物をあげたくなるんだよな」

「その気持ちは、分からないでもないね。すごくおいしそうに食べてくれるから」

認識阻害の魔法をかけられて、東洋の二人は町に買い出しにいった。

戻ってきた二人は、ちょうど金貨を使い果たしていた。

残ったのは銅貨が数枚。

銅貨くらいならいいかと、東洋の浮竹も京楽も、記念に持って帰ることにした。

「さて、腕によりをかけて作りますか」

(ボクはメイン料理作るから、キミはデザートをお願い)

「分かったよ」

今日のメニューは寄せ鍋だった。

西洋の京楽は、食材を切っていく。

戦闘人形を下げさせて、二人の京楽は四人分の夕食とデザートを作ってくれた。

デザートはチョコレートパフェで、東洋の浮竹はおいしそうに食べていた。西洋の浮竹も美味しそうに食べていた。

西洋の京楽はそのまま自分で食べて、東洋の京楽は手をつけなかった。

(それ、食べていいか?)

キラキラした目で、チョコレートパフェをみる東洋の浮竹に、東洋の京楽が頷いた。

(君が欲しがると思って残しておいたんだよ。さぁ、好きなだけ食べていいよ)

(ありがとう、春水!)

その様子を見て、3人ともかわいいなぁと思うのであった。


次の日、視察だとブラッディ・ネイが寵姫ロゼを連れて古城を訪問してきた。

「兄様、会いたかった!兄様、愛してるよ!」

そんな様子のブラッディ・ネイを見て、東洋の浮竹は東洋の京楽の背に隠れると、じーっと様子を見ていた。

「ああ、違う世界の兄様もいるの」

「ブラッディ・ネイ。彼はお前のことを苦手としているから、ちょっかいを出すなよ」

「はーい」

そう言いつつ、ブラッディ・ネイは東洋の浮竹を食い入るように見つめていた。

東洋の浮竹は警戒して、更に東洋の京楽の影に隠れた。東洋の京楽の服の裾を掴む。

(ブラッディ・ネイだっけ。ボクの十四郎が怯えるから、あっちに行ってくれない?)

「向こうの世界のひげもじゃも生意気そうだね。まぁいいや。兄様、今回はヴァパイアの殺人事件に貢献したそうだね。血の帝国中で噂になってるよ」

「そうか。じゃあ、帰れ!」

「早いし、酷くない!?」

「お前がいると、騒ぎが起きそうだ。何か起きる前に帰れ」

「仕方ないなぁ。じゃあ、兄様も、また血の帝国の宮殿にきてね。じゃあ、もう一人の兄様も、バイバイ」

何気に、東洋の浮竹は手だけはかろうじで振っていた。

「ブラッディ・ネイがすまない。あの愚昧には、俺も苦労させられている」

(あ、うん)

東洋の浮竹は、去っていたブラッディ・ネイの背中を見ていた。

西洋の浮竹の実の妹なのが、未だに信じられずにいた。

「東洋の俺は妹がいないからな。警戒したくなる気持ちも分かる」

(ごめん。でも、苦手なんだ)

「気にするな。俺も苦手だ」

二人は、クスリと笑い合った。

そんな二人を、微笑ましそうに、二人の京楽が見守るのであった。












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始祖なる者、ヴァンパイアマスター31前編

「ラニ、レニ」

「はい、お父様」

「はい、父上」

「いいかい、始祖のヴァンパイア浮竹十四郎か、その血族である京楽春水を屠るんだ。それができなかったら、力を削り取るだけでもいい。がんばりなさい」

「「はい」」

ラニとレニ、藍染は愛娘も手ごまのように扱った。

だが、使い捨てにする気はなかった。

ちゃんと戻る意思を持たせておいたし、魔人ユーハバッハの血を注射して与えて、化け物化することもなかった。

使い捨てにできる手ごまなど、たくさんいる。

藍染は、藍染なりに娘を愛していた。

それが愛ではなく、ただの執着であることに、藍染が気づくことはなかった。

-------------------------------------------------------


ラニとレニは、逃げ出した。

ラニとレニは、肩まである金髪に青い目をした、人形のように整った顔立ちの双子だった。

始祖ヴァンパイアのところに行くふりをして、実際に古城にまでやってきた。

そして、浮竹の元にいくと、逃げてきたのだと説明し、魔人ユーハバッハの血液を凝固して作った赤い宝石を差し出した。

「私たちのお父様は、あなたとあなたの血族を狙っているの。私たちに、屠れと命令してきたわ。でも、私たちはお父様の操り人形じゃない。お母様は利用されて殺されてしまった。あんな風には、なりたくないの」

その母様とやらを殺したのは自分たちだとは、浮竹も京楽も言えなかった。

「しばらく古城で保護しよう」

「でもいいの、浮竹。藍染の子だよ。もしも藍染が取り返しに来たら・・・・・」

「その可能性は限りなく薄い。藍染は俺たちの力を知っている。だから、自分の力でなく他者を利用する」

「そうだけどさぁ。なんかきな臭いんだよねぇ」

「京楽の考えすぎだろう。それにまだ幼い少女だ。血の帝国に遣いを送って、血の帝国で保護してもらおう。それなら、京楽も安心だろう?」

「うん、それならいいよ」

こうして、浮竹と京楽と、藍染の双子の娘という奇妙な構図ではあるが、一緒に暮らす生活が始まった。

「ラニ、レニ、起きろ。朝だぞ」

「はい、浮竹様」

「はーい、起きます」

二人は、行儀正しかった。

本当に藍染の娘なのかと疑わしいほどに、似ていなかった。

魔女の血を濃く引き継いだせいか、魔族の匂いもなかった。

逆に魔女の匂いが濃くて、まるで猫の魔女乱菊と生活をしている錯覚に陥った。

双子は幼いなりに、よくできていた。

読み書きもできたし、難しい計算もできた。

特に姉のほうのラニには魔法の才能があるようで、浮竹が個人的に授業を開いて、ラニに魔法の使い方を教えた。

「ファイア!」

「わあ、姉さま上手!」

何もない空間を、凄まじい勢いの炎が宿る。

それを見て、ああ確かに藍染の血を引いているのだなと、おぼろげながらに実感した。

「レニにも魔法の才能はあるようだね。浮竹、レニにも教えてあげたら?」

「そうだな。レニ、明日からお前も授業に参加できるが、参加するか?」

「私も姉さまみたいに、魔法が使えるの?」

「ラニほどうまく魔法は使えないかもしれないが、そこそこ使えるようになると思うぞ」

「なら、私も明日から参加する!」

二人は、純心爛漫を絵に描いたような双子だった。

知識をより貪欲に吸収して、古城にきて1カ月は経という時期には、ラニはもう火と風と水の中級魔法まで使えるようになっていた。

レニのほうは、火と水の魔法の初級までだった。

「いいなぁ、姉さま。中級魔法が使えるなんて」

「学んでいけば、レニも使えるようになるさ」

浮竹も京楽も、すっかり敵対心をなくしていた。

ミミックのポチも、ラニとレニに懐いていた。

「D級ダンジョンに潜ろうと思う。ラニ、レニ、冒険者ギルドに行くぞ」

ラニとレニを、独立させるには冒険者が一番手っ取り早かった。

血の帝国から、保護するための使者が来ていたが、何かと理由をつけて、浮竹は先延ばしにしていた。

ラニとレニを気に入ったのだ。

ラニとレニを連れて冒険者ギルドにいくと、ギルドマスターが直々に来てくれた。

「なんだ、幼い魔女か。冒険者になりたいのか?」

「浮竹様が、それが一番手っ取り早いって」

「まぁそうかもしれないが、命の危険と隣り合わせなことを、忘れるなよ」

それだけ言い残して、ギルドマスターは去って行った。

ラニとレニは、ギルドの受付嬢から渡された書類に記入して、Eランクの冒険者となった。

Eランクなら、D級ダンジョンでもなんとかやっていけるだろう。そういう判断だったのだが、その判断は浮竹を迷わせた。

D級ダンジョンに出てくるモンスターを、レニだけの魔法でやっつけていた。

Sランクの浮竹と京楽は、一切手助けをしなかった。

「やあ!ファイア!」

炎の魔法を受けて、スライムがどろどろに溶けていく。

「レニだけで攻略できそうだな。ラニも、何か魔法を使うといい」

D級ダンジョンは20階層まであった。10階層のボスはリトルケルベロス。

ケルベロスを小さくした魔物だったが、炎をのブレスを吐いてくるしで、意外と強敵だった。

「ウォーターシールド!」

まず、レニがそう唱えて、水の盾を出してリトルケルベロスの炎のブレスを防いだ。

「ウォータープリズン!」

ラニは、リトルケルベロス全体を水の魔法に閉じ込めた。

リトルケルベロスは呼吸ができなくなり、じたばたとしばらくもがいた後で、動かなくなった。

「よくやった、ラニ、レニ」

「浮竹様の指導があってのものです」

「私もそう思います。浮竹様の教えがいいから、ここまで成長できました!まだ成長したいです!もっといろいろ教えてください!」

「ラニ、レニ・・・・・」

浮竹は、ラニとレニを引き取りたいと、京楽に言い出した。

「でも、一応藍染の子なんだし、それは無理だよ」

「だが・・・」

「浮竹様、最下層の20層が見えてきました」

「京楽様も、行くきましょう?」

ラニとレニに手を引っ張られて、京楽と浮竹は最後の20階層を進む。

ボス部屋があった。

中に入ると、プチドラゴンがいた。

「なんだ、プチドラゴンか」

浮竹には雑魚でも、ラニとレニには強敵だった。

「ファイア!」

「ウォーターランス!」

プチドラゴンは、ドラゴンブレスを吐いた。

二人が唱えた魔法は、ドラゴンブレスに相殺された。

「やあああ!!!」

レニが、短剣を取り出して、プチドラゴンの右目を刺した。

「ギィイイイイイイイ!」

プチドラゴンが、悲鳴をあげてレニを振り回す。

レニはそれでも短剣にしがみつき、割れた眼球めがけて、炎の魔法を放った。

「ファイア!」

「ギエエエエエエエエ」

悲鳴をあげて、プチドラゴンは倒れた。

「よくやったな。偉いぞ、ラニ、レニ」

「まさか、ここまでやるとは思ってなかったよ。二人の実力には、僕も脱帽だよ」

「京楽様、財宝の間が見えます!」

「浮竹様も早く早く!」

ラニとレニに追い立てられて、財宝の間にくると、100枚ほどの金貨と宝石がいくつかあった。

D級ダンジョンにしては、報酬は大きかった。

ダンジョンのランクが上がるほど、出てくる敵は強くなり、報酬の財宝の量も増える。

S級ダンジョンをクリアできれば、一生遊んで暮らせるような金が手に入るが、S級ダンジョンを踏破した者は、浮竹と京楽以外では数少ない者しかいなかった。

浮竹と京楽の存在が規格外すぎるのだ。

「ダンジョン踏破の報告に行こう。Dランクに昇格できるはずだ」

念のため、一切手伝っていないことを示す水晶玉を手にして、浮竹と京楽とラニとレニは冒険者ギルドへ帰還した。

「なんですって、その二人だけでD級ダンジョンを踏破したとういうのですか!?」

ギルドの受付嬢が、そんな新人冒険者は久しぶりだと喜んでいた。

「この宝石だが、買いとれるか?」

「あ、はい。金貨6枚になります」

浮竹が、D級ダンジョンでドロップした宝石を売った。

「ほら、ラニとレニ。金貨3枚ずつだ。報酬の金貨も、50枚ずつで分けておいたからな」

「ありがとうございます、浮竹様!」

「京楽様、帰ったS級ダンジョンを攻略した時の話を聞かせてください!」

ラニとレニは、無事Dランクへ昇格した。

このままいけば、半年以内にはCランクへの昇級もありえそうだった。


ラニとレニが寝静まったのを確認して、浮竹と京楽は今後のことについて話し合っていた。

「ラニとレニを、正式に娘にしたい」

「浮竹、君の気持は分かるし、ラニとレニはいい子だ。でも、何かがひっかかるんだ」

「藍染のことか?」

「そう。彼が、愛娘が脱走したのに、何もしてこないのはおかしすぎる」

「俺がいるからじゃないか。藍染は、一度俺に敗れている」

「それもそうなんだけど・・・・・」

京楽は、なんとも言えない表情を作った。

「血の帝国に、保護の必要はないと言っておいた」

「それは!」

つまりは、ラニとレニを手元に置くことを意味していた。

ラニとレニが、そんな二人の会話を聞いて、笑っているなどとは、浮竹にも京楽にも想像できなかった。

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ラニとレニは、深夜になって古城を抜け出した。

一番近くの川の水を桶にはって、水鏡を作る。そして、呼びかける。

「藍染父様」

「やあ、愛しいラニとレニ。計画は順調かな?」

「始祖浮竹と血族京楽は、私たちを娘として迎えようとしているわ」

「それはいいことだ。いいかい、決して殺意を抱いちゃいけないよ。悟られるからね」

「父上、本当にこれでいいのでしょうか」

「レニ?」

「何を言っているの、レニ」

「だって、浮竹様はこんな私たちにとても優しくしてくれる。純粋にいい人に思えて・・・・」

パンと、ラニがレニの頬を叩いた。

「忘れたの、レニ。私たちのお母様を殺したのは、あの始祖浮竹とその血族京楽よ!」

「でも、ラニ姉さま!」

「いいわけは聞きたくないわ。もしも邪魔するなら、レニ、あなたでも殺すわよ?」

「ごめんなさい、ラニ姉さま。私にはラニ姉さまと父上だけなの。私を嫌わないで、ラニ姉さま」

「分かればいいのよ、レニ」

ラニは、レニの金髪を撫でた。

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双子は、殺意を抱かずに浮竹と京楽との生活を楽しんだ。

まるで、浮竹と京楽を実の父親のように感じて、二人の娘であろうとして振る舞った。

ラニとレニに近づいても、水晶のペンダントはいつも濁ることなく、光に煌めいて輝いていた。

「ラニ、レニ、誕生日おめでとう」

「浮竹様、私たちの誕生日は私たちも知らないわ」

「だから、出会って2カ月経ってしまったけれど、今日をラニとレニの誕生日にしようと思う」

「嬉しい、浮竹様!」

ラニとレニは浮竹と京楽に抱き着いた。

「ほら、誕生日プレゼントだ」

そう言って、浮竹はラニとレニに大きな兎のぬいぐるみと、魔法使い用の杖をあげた。

「嬉しい、浮竹様!」

「今日から、父様と呼んでくれ。正式に家族になることにした」

ブラッディ・ネイの許可をとらず、浮竹はラニとレニを娘として迎えた。

「浮竹父様、京楽父様・・・・・」

「なんか、エメラルドを思い出すようで、懐かしいな」

かつて、浮竹と京楽には、エメラルドという名のヴァンピールの娘がいた。

今から100年以上前の話だが。

「今日から、君たちは僕たちの家族だよ」

京楽も、浮竹の熱意に負けて、ラニとレニを娘にすることを許可してくれた。

浮竹も京楽も、幸せだった。

その幸せを壊す足音は、静かに忍びよとうとしていた。


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それから更に一カ月が経った。

「レニ、起きて、レニ」

「ううん、ラニ姉さま?」

「今日が、藍染父様との約束の日よ」

「うん。浮竹父様と、京楽父様を殺す日ね?」

「そうよ。私たちの手で、血の帝国の歴史を変えるのよ」

ラニとレニは、就寝中の浮竹と京楽に近寄る。

浮竹と京楽は、よく眠っていた。

夕飯に混ぜた眠剤が、効いているようであった。

「さよなら、浮竹父様」

ラニは、特殊な銀の短剣で、浮竹の心臓を一突きした。傷口に、回収しておいた魔人ユーハバッハの血を結晶化したものを砕いて、浮竹の心臓に降り注がせる。

「ラニ、レニ!?」

「ぐ・・・・ごほっ」

浮竹は真っ赤な血を吐いて、苦しそうに身を捩った。

「ラニ、レニ!!!」

京楽は、血を暴走させていた。

今までにない、暴走だった。

愛していた者に裏切られた。

何より大切な浮竹を傷つけられた。

「ラニ、レニ、許さないよ」

京楽は、じわりと猛毒の血を滲ませ、まずはラニの手の短剣を砕いた。

次に浮竹の傷口を覆い、侵入していた魔人ユーハバッハの血を自分の血に変えて、浮竹の心臓を癒す。

「許さない。僕の浮竹を傷つける者は、誰であろうと許さない」


「はははは!手に入れたぞ!始祖のヴァンパイアの体だ!」

「浮竹?」

「違う。私の名はユーハバッハ。人は、私のことを魔人と呼ぶ」





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始祖なる者、ヴァンパイアマスターお料理大会

そこは古城だった。

西洋と東洋の浮竹と京楽で別れて、料理大会をすることになった。

それを決めたのは、西洋の浮竹だった。

なんでも東洋の京楽はゲテモノ食いだと聞いて、是非、ゲテモノになる自分のものを食べて欲しいからしかった。

「お題は、卵を使った料理だ!」

「僕は親子丼かな」

(ボクはオムライスかな)

(俺も参加するのか?)

「強制参加だ」

東洋の浮竹は料理ができないで、少しもじもじした。

(じゃあ、卵粥を)

「俺は卵焼きだな」

「ちょっと、浮竹たち。そんな簡単な料理で」

言葉の途中で、西洋の浮竹が西洋の京楽の頭をハリセンで殴った。

「卵を使用すればいいルールだろ。別に問題はないはずだ」

(そうだね。卵粥も卵焼きも、卵を使った立派な料理だよ)

ほれ見ろとドヤ顔する西洋の浮竹に、西洋の京楽は東洋に京楽に「南無阿弥陀仏」と唱えて、合掌した。

(ボクは、こう見えてもなんでも食べれるよ)

「浮竹の料理というか錬金術は殺人級だよ」


こうして、それぞれ西洋と東洋で別れて、料理が始まった。

西洋の京楽は、軽やかにオムライスの具をつくり、トマトケチャップで味付けをする。味見を任された東洋の浮竹は、「おいしい」とにこにこしていた。

さて、西洋のほうはというと。

鶏の肉をある程度の大きさに切る。

玉ねぎをきって、フライパンで炒める。卵をボウルで溶かす。 フライパンにサラダ油をぬって、鶏のもも肉を焼く。ある程度火が通ったら、玉ねぎを入れてこんがり狐色になるまで焼く。水気がなくなったら、卵の3分の2をいれて、卵が半熟状になったら、残りの卵をいれて、10秒ほど炒めてあからじめたいておいた米の上にのせる。

「さぁ、完成だよ」

「ボクも完成だよ」

あつあつの親子丼に、ホクホクのオムライスができていた。

東洋の浮竹は、温度調節が難しいのか、卵粥を少し焦がしてしまったが、一応完成となった。

皆、西洋の浮竹を見ていた。

卵を大量に混ぜたボウルの中に、隠し味だと「うおおお」と悲鳴をあげるマンドレイクをぶちこんだ。あとは、レッドスライムの粉末をぶちこんで、ドラゴンの血もぶちこんだ。

ほいほいといろいろぶちこんでいく姿を、東洋の京楽を除く二人が、かなり引き気味で眺めていた。

「ねぇ、見てよ浮竹の釜の中身。料理なのに、錬金術使ってるんだよ!錬金術の材料ぶちこんで、料理しているんだよ」

(西洋の俺、思っていたのとは違う意味で壊滅的だな)

てっきり、東洋の浮竹は自分と同じように料理ができないものと思っていたのだ。

「料理はできるけど、いらない材料をぶちこむんだよね、僕の浮竹」

(ボクの浮竹は、ただ純粋に料理が苦手なだけだからね)

錬金術の釜でぐつぐつ似ていた液体を、フライパンに乗せて焼いて、それで西洋の浮竹の料理も完成であった。

「ああああ~~ひいい~~~~」

「料理がしゃべってる!」

(西洋の俺の卵やき、なんか足生えてるんだが)

「さぁ、試食といこうか」

(うう、緊張する)

「うわぁ、食べたくないなぁ」

(ボクはけっこう美味しそうに見えたけどね)

「ええ、君、本気かい?」

東洋の京楽は、自分のオムライス、親子丼、次に卵粥を食べた。

(東洋のボクの料理は完璧だね。十四郎は、もっと火力を落としたらいいと思うよ)

(なぁ、春水。本当に、あれたべるのか?)

(食べるよ。美味しそうじゃない)

「うわぁ、勇気あるなぁ。ちなみに僕はたまに浮竹の手料理食わせられるけど、その度に生死の境を彷徨っているよ」

「ウヴァ~~~~ヴァヴァア~~~~」

足をはやして、かさかさ逃げていこうとする卵焼きを、西洋の京楽はフォークで突き刺した。

「ギャアアアア」

「南無阿弥陀仏」

(平気だって)

西洋の京楽は、悲鳴をあげる卵焼きを口に入れてしまった。

(んー辛さの中にツーンとした刺激があり、甘酸っぱい後、口の中がイガイガする。けど、美味しいよ?)

「ええっ、そんな食えるもののはずが!」

西洋の京楽は、足の生えた卵焼きを一口食べて、昇天した。

(しっかりしろ、西洋の京楽!)

「東洋の浮竹も食べてくれ」

期待の眼差しで見られて、東洋の浮竹は困った。

(これ美味しいから、ボクに全部ちょうだい?)

そう、東洋の京楽から助け船を出されて、東洋の浮竹は安堵した。

(うん、病みつきになりそう。この味)

「やっぱり、マンドレイクとドラゴンの血の隠し味が効いているな」

西洋の浮竹は、他のメンバーの料理も食べてから、自分が作った卵焼きを食べた。

「ぎゃあああああ」

悲鳴をあげる卵焼きを咀嚼して、飲みこむ。

「うん。うまい」

(・・・・・西洋の京楽、大丈夫か?)

倒れた西洋の京楽を、東洋の浮竹が癒しの力で治してくれた。

そして、東洋の浮竹は西洋の京楽の作った親子丼を食べた。

目をきらきらさせていた。

「おかわりなら、そっちにあるから」

復活した西洋の京楽からおかわりをもらって、もっきゅもっきゅと食べていく。

その姿がかわいくて、3人とも微笑ましそうに見ていた。


「俺もオムライスとやらを作ってみる」

「ちょっと、浮竹!?」

「さっき、西洋の京楽が作っていた手順で作ればいいんだな」

(そうだよ)

「お願いだから、マンドレイクは・・・・・」

白飯をなべにいれた瞬間、西洋の浮竹はフライパンにマンドレイクをぶちこんだ。

「ああああ!せめて刻んでからにして!」

「マンドレイクはそのままぶちこむほうが、生きがいい」

「オムライスに変な鮮度求めないで!」

(そこで、卵をいれてつつむんだよ)

「こうか?」

(そうそう)

浮竹は、隠し味だと、ドライアドという植物型のモンスターの葉をぶちこんだ。

葉はくねくねとうねっていたが、フライパンの火力にまけて静かになった。

「できた、オムライスだ」

ツーンとした刺激臭がした。

どうにも、それはマンドレイクのせいらしい。

「東洋の俺には、マンドレイクとドライアドの葉抜きのものをやろう」

(ありがとう!)

東洋の浮竹は、それを受け取っておそるおそる食べた。

(ん、意外とおいしい!)

「そうだろう。そこにマンドレイクをぶちこめばもっと美味しくなるんだ。西洋と東洋の京楽には、マンドレイクをぶちこんだものをやろう。マンドレイク、最近高いんだぞ。一本で金貨3枚になる」

マンドレイクをぶちこんだオムライスはくねって、皿の上で踊っていた。

「いただきます・・・・ぐふっ」

西洋の京楽は、数口食べてテーブルの上で白目をむいていた。

(いただきます・・・お、さっきよりツーンとした刺激があっていいね。マンドレイクのせいかな)

「ドライアドの葉っぱも、効いているだろう。炭酸水のように弾けるはずだ」

(お、ほんとだ。口の中でぱちぱちいってる。はじめての食感だね)

東洋の浮竹も、自分のオムライスを食べる。

「こんなにおいしいのに、何故俺のところの京楽は白目をむいて気絶するんだろう」

ある意味、西洋の浮竹もゲテモノ食いだった。

自分の料理を食べて、それを美味いと感じていた。


「うーーーん」

「あ、気が付いたか?東洋の俺に礼を言えよ。治癒してもらったんだ」

「ああ、ありがとう東洋の浮竹」

(いや、別にいいんだ。それより、マンドレイクとドライアドの葉をぬきした西洋の俺のオムライスは美味しかったぞ)

「ええ!じゃあ、変なものをぶちこまないと、浮竹はそれなりに料理できるってこと!?」

「バカをいうな。俺が作る料理は全てマンドレイクをぶちこむ!」

信念があるようだった。

料理=マンドレイク。

それが西洋の浮竹の考え方だった。

「ほら、生きのいいマンドレイクだ。今日の朝、中庭の畑から収穫したものだ」

そう言って、東洋の浮竹と京楽に手土産だと渡そうする、マンドレイクのつったまたビニール袋を奪い取った。

「何をする、京楽!」

「それはこっちの台詞だよ。マンドレイクはこっちにしか存在しない食材だし、その死の悲鳴を聞いた者は、普通命を落とす」

(俺たちはどうってことなかったが)

(ボクもだね)

「あくまで対象は普通の人間だよ。とにかく、こんな厄介な代物は禁止。それより、こっちを持って行って」

西洋の京楽が渡してきたのは、餃子だった。

「東洋の僕からもらったレシピで作ってみたんだ。味は、うちの浮竹が保証して・・・なんか、浮竹の保証が怖くなってきた」

マンドレイクをぶちこんだなんともいえぬ料理を、美味いと食う西洋の浮竹であった。

(ありがとう。食べるの楽しみだなぁ。こっちの春水は、俺の春水と同じくらい料理ができるから)

「俺はマンドレイクに水をやってくる。途中まで、送ろう」

「あ、見送りなら僕もついていくよ」

そうして、二人のヴァンパイアに見送られて、東洋の浮竹と京楽は元いた世界に戻っていった。


「さて、マンドレイクの育ちは順調が見ようか」

「こっちのマンドレイク、しなびれかけてるよ」

「それは大変だ。俺の血を混ぜた水をかけよう」

じょうろいっぱいの水に、浮竹は一滴だけ血を垂らした。

しなびれていたり、枯れかけいたマンドレイクが持ち直し、ツヤツヤと輝いて、日の光を浴びていた。

「ねぇ、浮竹。こんなにマンドレイク育ててどうするの」

「猫の魔女、乱菊に安めに売るんだ。最近マンドレイクが高いから、不足しがちだと言っていた」

「なんだ、料理に使うわけじゃなかったんだね。安心したよ」

「料理にも使うぞ?」

「え?」

「今日の夕飯は俺つくろう。牛肉とマンドレイクのビーフシチューだ」

想像するだけで、昇天しそうだった。

「マンドレイク入れないで~~」

「ばか、マンドレイクを入れなきゃ料理にならんだろう」

そんなやりとりを中庭で広げていた。

浮竹の血のお陰か、マンドレイクはどれもツヤツヤ輝いて、おいしそうだと、浮竹は思うのだった。ちなみに、京楽にはすごい怨念のこもったマンドレイクに見えていたそうな。


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始祖なる者、ヴァンパイアマスター30-2

後日になり、西洋の浮竹と京楽は、改めて東洋の浮竹と京楽を招待した。

「この間はありがとう。おかげで、オロチ教とかいう変な宗教が壊滅した」

(オロチ教か・・・。それにしても、いきなりでびっくりしたぞ!)

東洋の浮竹は、西洋の二人にお土産にと持ってきたカップケーキを当たり前のように頬張りながら、口をもぐもぐさせていた。

「禁呪の連発で倒せないこともなかっただろうが、建物の中だったしな」

(それでボクを呼んだんだね)

「オロチ教というくらいだから、偽物に本物を見せてやりたかったんだ」

「人的被害は騒ぎ少しでたけど、まぁ許容範囲でしょ」

4人は、東洋の京楽のもってきてくれたカップケーキをお菓子にして、お茶会を開いた。

茶は、アッサムの紅茶と、なぜか麦茶だった。

(こっちの世界にも麦茶はあるんだな)

「緑茶もあるぞ?いい茶葉のものが揃ってる。持って帰るか?」

(いいのか?)

「この間に礼だ。それくらいお安い御用だ。ああ、お前からもらった本の栞は、使うことがないから世界三大秘宝をいれた宝石箱に直しておいた」

(せ、世界三大秘宝?大袈裟すぎないか)

「何を言う!東洋のお前の手作りなんだぞ!」

(ぅ、ありがとう…なんか照れるな)

と言いながら、頬を真っ赤に東洋の浮竹はする。

西洋の浮竹はさも嬉しそうに笑う。そんな笑みに釣られて、東洋の浮竹も笑っていた。

西洋と東洋の京楽は、そんな二人を見て微笑まく見守るのだった。


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「浮竹、浮竹」

揺り起こされて、浮竹は目を開けた。

「あれ、東洋の俺と京楽は?」

「お茶をして帰ってもらったじゃない。それより、侵入者だよ」

がばりと、浮竹は起き上がった。

「数は?」

「5人。手練れのヴァバンパイアハンターみたい」

「このまえ、ダニエルというAランクのヴァンパイアハンターを倒したからな。その報復か」

「そうかもね」

浮竹と京楽は、二手に別れた。

「助けてくれ!」

Aランクのヴァンパイアハンターだろうか。

少し顔見知りの人間を、人質にとっていた。

「俺は関係ないんだ!助けてくれ!」

「この古城に、食料を納めていたそうじゃないか。なぁ、ヴァンパイアロードさん?」

銀の短剣を舐めて、ヴァンパイアハンターは好色そうな目で浮竹を見た。

「なんなら、命を取らずに飼ってやってもいいんだぜ?」

「死ね」

浮竹は血の魔法で剣を作り、男の体を引き裂いていた。

「くーー、効くねぇ、さすがヴァンパイアロード」

ヴァンパイアハンターは、古城に食料を納める男を殺していた。

「お前も、魔人ユーハバッハの血を・・・・・」

「そうそう、ご名答。それが5人だ。さぁ、どうする?」

「どうもしない。殺すだけだ」

浮竹は、炎の精霊王と氷の精霊王を呼び出していた。

「炎の精霊王、氷の精霊王。俺の魔力を好きなだけ使っていいから、侵入者を排除しろ」

「我が友の命令とあらば」

「汝がそれを望むなら」

地獄の業火と、地獄の氷結を纏わせた二人に、ヴァンパイアハンターが顔を青くする。

「なんでだ!なんで、ヴァンパイアロード如きが、精霊王などを使役する!」

「それは俺が、ヴァンパイアロードではなく、始祖のヴァンパイアマスターだからだ」

「聞いていたのと話が違う!俺は逃げるぞ!」

「待て、仲間を置いていくのか!」

男たちは、醜くその圧倒的な存在に、我先にと逃げ出そうとしていた。

「精霊王たち、先に京楽の方のヴァンパイアハンターを倒してくれ。血の猛毒がきかいない分、不利になっている」

「承知した」

「汝の望む通りに」

炎と氷の精霊王は、京楽の元へ行ってしまった。

「精霊王がいなければ、こっちのもんだ。死んじまいな!」

銀の弾丸を何度も受けた。

だが、その傷の最初から癒えていく。

「なんだ、こいつ、銀がきかねぇ!」

「聖水だ!くらえ!」

ばしゃりと聖水をかけられるが、浮竹は平気だった。

「なぁ、もしかして、こいつは本当にヴァンパイアマスター?」

「嘘だろ・・・・でも、それならダニエルが死んだのも頷ける・・・・」

「逃げろ!」

「逃がすと思っているのか」

浮竹は、平穏を乱されて怒っていた。

ヴァンパイアハンターたちの下半身から上半身にかけて、血の杭を出して貫いた。

「魔人ユーハバッハの血をもらったのに・・・・・」

男たちは生きていたが、直に生命活動を停止させた。

くらりと、浮竹がふらつく。

二人も精霊王を召還したので、魔力が足りないのだ。

「浮竹!」

炎と氷の精霊王を連れて、京楽がやってきた。

「片付いたんだね。大丈夫?魔力切れを起こしてるの?」

「精霊王たち、戻っていいぞ」

「承知」

「分かった」

二人の精霊王を精霊界に戻して、浮竹は京楽の肩に寄りかかりながら、魔力を回復するポーションを飲み続けるのであった。


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「襲撃が東洋の僕らが帰った後でよかったよ。いらない戦いに巻き込むところだったね」

「あいつらも、藍染がけしかけてきたんだろうな」

「そうだね。魔人ユーハバッハの血を手に入れたんでしょ」

「封印されているといっても、生身の肉体のままなんだろうな。血を抜けるということは」

浮竹は、そう言いって人工血液を口にする。魔力回復ポーションも飲んだ。でもまだ足りないのだと、京楽を見た。

「魔力が足りない。お前の魔力をよこせ」

浮竹が、そう言いながら、寝室のベッドに上に京楽を押し倒した。

浮竹と京楽は、舌が絡み合うディープキスをしていた。

「んっ」

浮竹は唇を舐めて、京楽を見下ろした。

 「わお、こんな方法でも魔力は譲渡可能なの?」

「血族の魔力は主のものだ。触れているだけでも、その気になれば奪える」

「いいよ。僕の魔力全部君にあげる。君の中にいっぱい注いであげるから、受け止めてね?」

そう言って、京楽は浮竹の衣服脱がしていく。

「んんっ」

体全体の輪郭を確かめるように手で触れて、薄い胸の先端をつまみにあげる、

「あ!」

敏感に反応する浮竹に、京楽が笑う。

「ああ、君はこんなところでも感じるようになってしまったね」

「誰のせいだと、思っている」

「僕のせいだね。昂ってきた熱は、ちゃんと処理してあげるから」

京楽は、ゆるく勃ちあがりかけていた浮竹のものに舌をはわせて、手でしごきあげた。

「あああ!」

我慢できずに、浮竹は京楽の口の中に放っていた。

「今度は、俺がしてやる」

「え」

また押し倒されて、京楽が下になった。

すでにぎんぎに昂っているもに、おずおずと舌を這わせる。

「ああ、きもちいよ。もうちょっと上の方もなめてくれないかな?」

「こうか?」

あまりこういった行為を浮竹はしないので、京楽の言われた通りにする。

鈴口にちろちろと舌をはわせた。

「わっ」

ピュッと勢いよく京楽の精が弾けたせいで、浮竹の顔を汚してしまった。

「ごめん、ティッシュで拭くから」

「いい。これにもお前の魔力は宿っている」

浮竹は、自分の顔についた京楽のものを手にして、舐めとってしまった。

「ああ、君は本当に淫らだ」

浮竹を再び押し倒して、京楽はローションを手にとった。

人肌にまで温めて、浮竹の蕾にぬりこみ、自分の指と灼熱にも垂らした。

「んん・・・・あああ!」

指が入り込んできたことで、浮竹は体から力を抜いた。

「あ、あ!」

京楽の指は、わざと前立腺に触れずに解していく。

「やああ、中のいいところ、触って!」

「後でね」

京楽は、前立腺にふれずにかすめる程度にして、指を抜き去った。

「ああ・・・・・」

熱いものが触れてくる。

それで貫かれるのだと、快感を伴う行為の中、そう思った。

「ああああああ!!」

思っていた以上の質量と熱に、本来はそんなことのために使うはずでない器官が、排除するかのようにうねり、締め付けた。

「浮竹、ああ、だめだ出ちゃうよ」

「あ、あ、俺の奥で注げ!」

「無理いわないで」

ドクドクと、浅い部分で精液を注がれた。

京楽は、魔力が吸い上げられていくのを感じていた。

「もっと・・・」

唇を舐めて、京楽の背中に手を回してくる浮竹の色香にやられて、京楽は浮竹を何度も突き上げた。

「ああああ!!!」

前立腺をごりごりすりあげられて、待ち望んでいた快楽に涙を流した。

「春水、きもちいい、もっと」

「いくらでもあげるよ」

前立腺をこすりあげながら、京楽のものは浮竹の最奥まで入っていた。

ズルリと結腸まで入りこんできた京楽は、そこに熱を叩き込んだ。

「うあ、魔力吸われる・・・」

ドクドクと出していく精液と一緒に、京楽の魔力は吸い上げられいった。

「ふう、もう僕のには魔力ないよ?」

何度も浮竹の中に注ぎ込んだ。京楽の魔力はほぼ空になっていた。

「魔力なんてなくてもいい。お前の子種がほしい」

耳元でそう囁かれて、京楽は最後の一滴まで浮竹に注ぎこんで、横になった。

「満足かい?」

「ああ。大分魔力が回復した。満足だ」

「いや、僕とのセックスのこと」

「春水とのセックスは好きだぞ」

「そういえば、一度も噛んでなかったね」

京楽は半身を起き上がらせて、浮竹の首筋に噛みついて吸血した。

「ひああ!」

まだセックスの余韻に浸っていた浮竹は、大きな声を漏らしていた。

「この、不意打ちは、やめろ」

クタリとなった浮竹を抱きしめて、京楽はその長い白髪を手ですいていた。

「俺も喉が渇いた。血をよこせ」

他の者には猛毒なる血液を、主である浮竹は啜った。

浮竹にだけは、京楽の毒は効かなかった。

唇についた血液を舐めとって、満足そうに浮竹が離れていく。

その熱を共有したくて、京楽は浮竹を抱きしめ続けるのであった。


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「ラニ、レニ、元気にしているかい?」

「はい、お父様」

「はい、父上」

藍染の双子の子、ラニとレニは、父である藍染を見上げた。

半月前は赤子だったのに12歳くらいまで成長していた。

「成長促進の魔法がうまくいったようでよかったよ。ラニ、レニ、プレゼントがあるんだ」

「何、お父様?」

「父上のことだから、また力をあげる何かでしょ」

「レニの言う通りだね。魔人ユーハバッハの血液を固めた宝石だ。2人にあげよう」

「わぁ、綺麗」

「綺麗だわ、父上」

「何かあったら、その宝石を噛み砕きなさい。さぁ、僕の敵である始祖の浮竹を屠っておいで」

「はい、お父様」

「はい、父上」

成長促進の魔法をかけた双子の赤子は、美しい少女に育っていた。

魔女の血が濃く、藍染の血も引いているのに藍染の匂いは全くしなかった。

これなら、うまく古城に紛れ込み、始祖ヴァンパイアを殺すまではできなくとも、傷つけられるだろうと、父親である藍染は思った。

「仮にも私の子供だ。そうそううまく、倒せると思うなよ、始祖が」

闇の中、藍染の嘲笑がいつまでも木霊していた。








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始祖なる者、ヴァンパイアマスター30

魔女アリスタシアの腹にいた赤子は、成長促進の魔法をかけられ、臨月を迎えた。

生まれてきたのは、双子の姉妹だった。

「よくやったね」

「待って、その子たちを返して!」

「何故だい?」

「藍染様の子でも、私の子でもあるのです!」

「君はこの子たちを産んだ。もう用はない。魔女の里に帰っていいよ」

「そんな!」

魔女アリスタシアは藍染の足に縋りついて泣き出した。

「お願いです、まだ乳も与えいないんです。赤ちゃんを返して!」

「なら、君が実験台になるといい」

「え?」

魔女アリスタシアは顔をあげた。

藍染の顔は、醜く歪んでいた。

「私の血と魔人ユーハバッハの血を混ぜた、この血液を注射する。さぁ、暴れておいで」

「いやあああああああああ」

魔国アルカンシェルで、藍染の花嫁の悲鳴が響き渡った。


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「んー」

浮竹は、ガイア王国の街の魔法屋で買った、魔法書とにらめっこしていた。

古代エルフ語と古代ドワーフ語、さらには古代魔法文字で書かれていて、謎解きのようになっていて、解読に時間がかかった。

「魔法の威力を一度だけ倍にする魔法・・・・・・」

「すごいじゃない」

「でも、媒介にいろいろと必要だ。普通の時には使えんな」

そう言って、浮竹は読んだ魔法書を棚に入れた。

その棚は古城内にある図書館と繋がっており、いろいろと便利だった。

浮竹と京楽が、魔人ユーハバッハの血を舐めたというヴァンパイアハンターの襲撃から、半年が
経過していた。

始めは二人は次がくるのではないと警戒していたが、何も変わらぬ穏やかな日々に、すっきかり毒されてしまっていた。

「今日の昼食は、海鮮パスタだよ」

「あーうん。そこらへんに置いておいてくれ」

「もう、浮竹ってば自堕落すぎるよ!朝食もベッドの上で食べてたでしょ!」

「別にいいだろう。古城には俺とお前と戦闘人形とポチだけだ」

ソファーで寝転がって、新しい魔法書に夢中な浮竹から、魔法書をひったくった。

「何をする!」

「ちゃんとダイニングルームで昼食とって。僕と一緒に」

「お前、最近暇だからって戦闘人形の仕事手伝ってるし、だらだらする俺をたしなめるし・・
まるで、おかんだな?」

「おかん!それはないよ」

「ははは、分かった。ちゃんとダイニングルームでお前と昼食をとる」

浮竹は起き上がると、ずり落ちそうなふわふわのコートを着直して、ダイニングルームに移動すると、用意されてあった海鮮パスタのいい匂いに釣られて、椅子に腰かけた。

「後はアボガドサラダと、コンスメスープ。どうぞ、召し上がれ」

「いただきます。うん、うまいな」

「るるる~~」

「なんで何気にミミックのポチまで・・・」

「いつも残飯だとかわいそうだろう」

「るるーーー」

ポチは、意思表示するように、箱をかばかぱと開けた。

「浮竹、君毎日ドラゴンステーキあげてるんでしょ?」

「それだけじゃ足りないんだとさ」

浮竹から海鮮パスタを分けられて、ポチはそれを美味しそうに食べていった。

「僕も食べるか」

「るる!」

がばりと、ポチが京楽の頭の齧りつく。

「うわ、真っ暗で何も見えない!」

「ポチ、お座り」

「るーー」

京楽を吐き出して、ポチはお座りと言われた場所で待機していた。

「君たちって、意思の疎通できてるよね」

「ミミック教の教祖様であられるからな、ポチは」

「そう言えば・・・・最近、町でオロチ教って信仰宗教が流行っててね。僕も危うく勧誘されそうになったよ」

京楽は、さも疲れたという顔をしていた。

「オロチ教・・・そういえば、東洋の京楽は八岐大蛇だったな。それと関係しているのだろうか?」

「さぁ、いくらなんでもボクも詳しいことは知らないよ」

「一度、宗教の集まりに参加してみよう」

「ええっ!信仰するの?」

「血の帝国でも流行りだしているそうだ。一度様子を見てくれと、この前ブラッディ・ネイの式の梟が手紙をよこしてきた」

「信者になって、教会本部に潜りこむんでしょ?大丈夫なの?」

「大丈夫だろ」

そんな調子で、二人はオロチ教に入ることとなった。

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「あなたは恵まれいます。このオロチ教の神官になれるのですから!」

持っていた金銀財宝の一部を寄付すると、浮竹と京楽は、一般信徒からすぐに神官まで、スピード出世した。

恐れるべきは、金の力であろうか。

「こちらが、教皇のおられる部屋です」

ドクンドクンと、鼓動が脈打つ音が聞こえた。

「失礼を・・・教皇様は、ベッドの上から動けません。謁見は、カーテン越しに行ってもらいます」

浮竹と京楽は、それに従うそぶりを見せた。

「新しい神官の方ですね。なんでも、莫大な寄付をして下さっとか・・・・」

教皇は、薄いカーテン越しでもわかるほどに、細い少女だった。

だが、ドクンドクンと、醜く脈打つ血管が、部屋のいたるところにあった。

「私のこの部屋を見ても驚かないのですね。流石は、ヴァンパイア」

「血の帝国でも、オロチ教は流行ってるからな」

「それで、何の用なのですが、始祖のヴァンパイア」

浮竹が、薄いカーテンを引き裂いた。

「きゃあああ!」

「うわあああ!!」

教皇の姿をみた、他の神官や巫女が逃げだしていく。

ベッドにいたのは、一人の魔女だった。

魔女であった、というほうが正しいか。

上半身は普通だった。下半身は鱗にまみれて、まるで蛇のようであった。

「ラーミア?」

まるで、蛇の下半身をもち、人間の上半身をもつラーミアというモンスターに似ていた。

だが、ドクリドクリと、脈打つ血管が、ただのラーミアではないと告げていた。

「この血の匂い・・・・藍染!」

「藍染は、私の夫です」

その言葉に、浮竹と京楽が驚愕する。

「あの藍染に、こんなかわいい・・・うん、多分かわいい女の子の妻がいるなんて」

「あなたたちを、おびき出すように、オロチ教などという宗教を作り、教祖となりました」

浮竹と京楽は、それぞれ血の武器を構えていた。

「争い事にはしたくありません。始祖ヴァンパイアの浮竹十四郎。その血族の京楽春水。どうか、あなたの血をください。猛毒というあなたの血を」

「どうして、僕たちを倒さないんだい?」

「私にはそんな力はないから。あるのは、夫である藍染と魔人ユーハバッハの血を注射された、この蛇の下半身」

「なんか、深い事情がありそうだね」

魔女アリスタシアは、京楽からその猛毒である血をもらい、飲みほした。

数分のたうちまわっが、死ぬことができずに、苦しんでいた。

「どうやら、お前の血でも魔人ユーハバッハの血には対抗できないようだ」

「そうみたいだね」

「殺して、ください。お願いします・・・せめて、人の心をもったまま、死にたい・・・・・」

魔女アリスタシアは、ベッドの上で蛇の下半身をくねらせた。

部屋中にとりつき、脈打っていた血管が全てアリスタシアの蛇の下半身が取り込んでしまった。

浮竹は、蛇の下半身と人間の上半身の部分を斬り分けた。

「ありがとうございます。私は、魔女のまま死ねる・・・」

そのまま、上半身のアリスタシアは息絶えた。

浮竹と京楽は、上半身をなくした蛇の下半身に取り囲まれていた。

「これって、ピンチ?」

「とにかく、この場から逃げよう。建物の中だと、障害物が多すぎる!」

浮竹と京楽は中庭に出た。

真っ黒な鱗をもった蛇の下半身が、追いかけてくる。

「ファイアオブファイア!」

浮竹が、禁呪の火の魔法を打ちこむが、蛇の下半身んの鱗を数枚焼いただけだった。

「魔人ユーハバッハって、強いんだね!血だけでこんなに強くなるんだから!」

京楽が、ミスリル銀に氷の魔法を纏わせて、切りかかる。

鱗は斬り裂かれたが、すぐに再生した。

「蛇か・・・そういえば、東洋の京楽は八岐大蛇、オロチ教のシンボルっぽいな。同じ蛇でも、蛇神のほうが数段存在は上だろう。こんな場所で長く戦っていると人目につくし、被害が大きくなる!」

浮竹と京楽は、東洋の友人からもらったお札に祈りをこめた。

ポン。

そんな音を立てて、東洋の京楽は、東洋の浮竹の膝枕で耳かきをしてもらっていたのに、召還されてしまった。

(ちょっと、いきなり何!西洋のボクたち、タイミングってものを・・・何こいつ。複雑な呪いでできてるね・・・ちょっと待って)

東洋の浮竹は、膝枕をして耳かきをしていた場面を目撃して、赤くなったが、下半身しかない黒い蛇の体を見て、清浄な空気を作り出し、まずは結界をはって黒蛇を閉じこめた。

「しゃあああああああああ」

黒蛇の下半身から、女の姿を模倣した上半身がはえてくる。

「食わせろ・・・・始祖を、食わせろ!」

(ボクの友人を食い殺すなんて、許さないよ)

東洋の京楽が、瞳を金色にした。フードで顔を隠してはいるが、その東洋の京楽がまとうものは、魔力ではなかったが、神力でもいうのか、とても凄まじいものだった。

「しゃああああああ」

威嚇する蛇を、召還された数えきれない黒蛇が襲った。

「あああ、食われる、ああああ!!」

蛇の化け物は、獰猛な京楽の黒蛇に食われて、骨だけになった。

「うわぁ、僕たちが苦戦してたのに、あっという間だったねぇ」

「東洋の京楽は蛇神だからな。下位の蛇をやっつけてくれるだろうと思ったんだ」

(呪術というか、ただの蛇の肉の塊が動いてただけだった。ただ、血が・・・・・なんというのか、どす黒すぎて、普通じゃあ殺せないだろうね)

「魔人ユーハバッハの血を取り込んでいたからな」

((魔人?))

首を傾げてハモる東洋の二人に、西洋の浮竹が頷いた。

「人でありながら、人を超越して神になろうとした男だ」

(この世界でも、凄い存在がいるんだね)

(神なろうとした・・・・藍染みたいだな)

「こっちの世界の藍染の血も入ってるからね、さっきの化け物」

(大丈夫だろうとは思うけど、黒蛇たちが胸やけ起こさないといいけど)

「じゃあ、騒ぎになる前に撤収したい。東洋のお前たちは、一度帰ってくれ。また後日にでも呼び出すから」

(うん、分かったよ)

(またな、西洋の俺たち)


騒ぎにかけつけてきた者たちから、自分たちの存在を消し去り、浮竹と京楽はオロチ教を壊滅させた。

実際に壊滅してくれたのは、東洋の浮竹と京楽であったが。

教祖は蛇のお化けだった。

そんな噂が流れて、数日たち、オロチ教は見る影もないほど衰退していった。


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始祖なる者、ヴァンパイアマスター29-2

「くそ、この女が死んでも・・・・・・・」

ブラディカに似せた人形を見せつけてくる。

一瞬の隙をついて、浮竹は血を操りブラディカの人形を奪い取り、それを手で握った。

「ブラディカを傷つけた罪、京楽を傷つけた罪、その命で贖てもらおうか?」

ゆらりと、浮竹が動く。

窓の外の月は、赤くなっていた。

「ブラッディ・ムーン・・・・・」

京楽はぞくりとした。

赤い月は、ヴァンパイアの力を増す。

強ければ、強いほどに。

「浮竹、僕も加勢するよ!」

猛毒の血を燃やして、毒ガスをダニエルに吸わせた。

「く、一度に2匹も!厄介な!」

「フレイムロンド」

ぽっ、ぽっ、ぽっ。

ダニエルの周りに、火の玉が現れる。それは踊るように揺らめき、一気にダニエルに襲いかかった。

「ああああああ!!」

でも、ダニエルは薄い火傷を負っただけだった。

「また、呪術で何かにダメージを負わせているな」

「はは、誰にだろうね?」

浮竹の体が燃え上がった。

「あはははは!馬鹿だね、自分に呪術がかけられているのにも気づかなんて」

浮竹は、炎を纏わせながら、一歩一歩ダニエルに近づいた。

「なんでだ!なんで死なない!」

「俺は始祖ヴァンパイアマスター、浮竹十四郎。神の愛の呪いをもっているせいで、不老不死だ」

「始祖!ヴァンパイアマスター!!」

驚愕に、ダニエルは目を見開いた。

「あはははは、そんな存在に殺されるのもいいね!」

「狂ってるね」

「ああ」

浮竹はいたぶることはせず、ダニエルの首をはねた。

「あははは、最高だね。首をはねられるなんて」

「どうして、死なない!?」

「あの方の血を飲んだからね」

「藍染か」

「違う。魔人ユーハバッハ」

「何!?」

「なんだって!?」

かつてこの世界には、魔人と呼ばれる存在があった。

8種の精霊王を従え、アストラル体となって神界に攻め込み、神の怒りをかって、千年の眠りについている。

「あは、本気にしたの?冗談だよ。染藍さ」

「また藍染か・・・・・・」

浮竹は頭を抱えながらも、ダニエルにトドメをさした。

「死ね。ファイアオブファイア」

「ふふふふ、ひっかかったね!!」

炎に焼かれても、ダニエルは死ななかった。

「な、まさか本当に魔人ユーハバッハの血を!?」

「古代遺跡の研究施設に残されていた血を、盗んで舐めたのさ。飲むことなんでできない。ユーハバッハに支配されてしまう」

「そうそう、支配されるんだよ」

「支配されちゃいなよ」

ダニエルは、複数の自分の声を聞いて、苦しみだした。

「うるさい、うるさい」

「なんだ、様子が変だぞ」

「浮竹、今の間にトドメを」

「分かった。ライトニングフレイムスートム!」

始めは電撃が走り、次の炎の嵐に巻き込まれた。

「支配、されちゃいないよ・・・・・」

体を炭化させながら、ダニエルはまだ生きていた。

「支配する、僕が支配する。支配されるんじゃない、支配するんだ」

心臓を、浮竹の手が貫き、それを握りつぶした。

心臓にはコアがあって、それはかの魔人ユーハバッハの血をとりこんだせいであった。

「ぐはっ・・・・」

ダニエルは血を吐いた。

「まだ死なないのか!?」

「一人でいくのはいやだ。お前も道連れにしてやる・・・・」

血で真っ赤になりながら、ダニエルは浮竹に縋りついた。

「僕の浮竹に、手を触れないで」

心臓に猛毒の血液を注ぎこみ、数分するとダニエルは生命活動を停止させた。

「京楽、怪我はないか?」

「うん、大丈夫。浮竹は?」

「ああ、全部返り血だ。それよりブラディカが危険だ。急いで離宮にいこう」

ブラディカの美しい褐色の肌の生首を手に、二人は古城を抜け出して離宮には入った。

ブラディカは、封印されたまま棺をあけられて、首から上がなかった。体中にいくつも傷ができていた。特に心臓近くが酷かったが、幸いにもコアは無事だった。

浮竹が手首を自分の血の刃で斬ると、じゅわりと滲みだした血をブラディカに与えた。

「ブラディカ嬉しい・・・浮竹、愛してる・・」

ブラディカの首と頭は繋がり、心臓に受けた傷も回復していく。

「ブラディカ、またお眠り」

「ブラディカ・・・・また、眠る。この青い薔薇の棺の中で、浮竹を思いながら、浮竹と過ごす楽しい夢を見るの・・・・・」

ブラディカは、休眠状態に入りながら、まら封印された。


「魔人ユー八バッハ・・・まさか、そんな存在が出てくるなんて」

「こればかりは、どうしよもないね。封印は続いているはすだよ。まだ封印されているということは、こちらに手出しはできないよ。今のうちに魔人ユーハバッハを殺すかい?」

「いや、神と対等に戦った存在だ。封印が破れでもしたら、世界は混沌の渦に飲まれる」

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ドクン、ドクン、ドクン。

それは、鼓動を打っていた。

ドクン、ドクン、ドクン。

それは、脈打っていた。

魔人ユーハバッハは、神の怒りの封印を受けていた。

でも、生きていた。

「ああ。私は、世界だ」

そう言った。

水底であった。ただ、静かに揺らぐ波の中にいた。

「魔人ユーハバッハ。君の血を、もらうよ」

魔族の始祖藍染は、注射器を取り出すと、ユーハバッハの血を抜いていった。

ユーハバッハは、何も言わずされるがままだった。

神の怒りの封印は、動くことさえままならぬ。

「これで、あの始祖ヴァンパイアを・・・」

「始祖、ヴァンパイア?」

ユーハバッハが、興味をもったように聞いてきた。

「そう。始祖ヴァンパイアの浮竹十四郎」

「始祖ヴァンパイア・・・次の私の器には、よいかもしれぬ」

「魔人ユーハバッハ。残念ながら、その始祖が私に殺されるんだよ」

「そうなれば、それもまた運命」

ユーハバッハは目を閉じた。

波の音がする。

藍染が何か言っていたが、ユーハバッハはもう聞いていなかった。

魔人ユーハバッハを封印したのは、創造神ルシエード。

浮竹の父であった。




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始祖なる者、ヴァンパイアマスター29

魔女アリスタシアは、魔国アルカンシェルにいた。

藍染の花嫁として迎え入れられた。

魔国アルカンシェルは、魔女の里の安全を保障した。

そんな保障、始祖浮竹の手にかかえれば何の意味もないのだが。

少なくとも、今浮竹が魔女の里に何かをしかけてくることはなかったし、至って平穏のように見えた。

魔女の里は、事実上魔族の支配下に置かれた。

魔女たちは、魔族のために肉体を強化するなどという薬を作らされていた。

助けを呼ぼうにも、魔女の里は閉鎖的すぎて、仲の良い国などなかった。

血の帝国ならばあるいは、という希望を見出した者もいたが、同胞である魔女や始祖魔女が、ヴァンパイアの始祖である浮竹に行った行為を思い出すと、到底助けてもらえなさそうだった。

事実、今魔女の里が魔族に支配されていると知っても、女帝ブラッディ・ネイはそれがなんだという顔をするし、始祖浮竹に至っては自業自得と思われていた。

魔国アルカンシェルに同盟国はない。

一方、栄えている血の帝国は、聖帝国をはじめとして、いくつかの人間国家と同盟を結んでいた。

血の帝国は、歴史上類を見ないほど長く栄え、今なおそれが続こうとしていた。


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「はぁ・・・」

今日何度目かのため息を、浮竹はついていた。

結婚記念日というか、浮竹が京楽を血族に迎え入れて120年と3年が経とうとしていた。

ヴァンパイアに結婚の概念はない。

血を与えることで、同族を増やすことがあるので、結婚というものを何度もしなければならない時があるからだ。

浮竹はご機嫌だった。

愛しい男と血族になった記念の日だった。

戦闘人形に頼らず、自分の手で料理を作ろうと思った。

メニューは、カレーライスのはずだった。

まず、錬金術に使う釜を使っている時点で終わっていた。

じゃがいも、人参、たまねぎ。

全部、洗うだけで丸ごといれた。

隠し味に、処女の血ではなく、ドラゴンの血を入れた。しかも、大量に。

ドラゴンの血をベースに、疲労回復と魔力回復のポーションを入れる。

鍋でぐつぐう煮込み、死の悲鳴をあげるマンドレイクをぶちこんだ。

辛みをつけるために、レッドスライムの粉末をぶちこんだ。

カレーのルーを大量にぶちこんで、味見をする。

「少し辛さが足りないか」

タバスコとレッドペッパーを大量に放り込んだ。

ぐつぐつとまた煮る。

棚に干してあった、毒薬を薬草と間違えてぶちこんで、また煮た。

カレーらしい匂いのまざる、ツンとした刺激臭の何かができあがった。

「京楽できたぞ。食え」

ガタガタガタガタ。

京楽は震えていた。

過去に浮竹の料理を食べて、倒れなかったことなど一度もなかった。

それほどに壊滅的なのだ。

ご飯は普通だった。

白飯に、緑色の震えて動く物体を出された。

「ねぇ、これ何?」

「見てわからんのか。カレーだろう」

「カレーは普通黄土色だよ!茶色だよ!なんで緑なの!?」

「ドラゴンの血を入れたから」

「あああ、そんな高級な錬金術で使うものを入れないで!しかもこの釜、錬金術の釜だよね!?

「それがどうした」

浮竹は、自分が料理できないなんて、思っていなかった。

料理はできると思い込んでいた。

「なんで震えて動いてるの!?」

「マンドレイクを生きたままぶちこんだせいじゃないか?」

「マンドレイクの死の悲鳴は、普通聞くと死ぬよ!?」

「俺は神の愛の呪いで不死だからな。関係ない。あと、体力つくように疲労回復と魔力回復のポーションをぶちこんでおいた」

京楽は、頭をかきむしった。

こんなもの食えるかと、突き返してやりたかったが、わくわくしながら料理をした浮竹にそんなことをすると、切れるというより本気で泣かれる。

「あああああああ」

「早く、食え」

「君、味見した?」

「したぞ。辛かった」

京楽は、かっと目を見開いて、一気にかきこんだ。

「ぐふっ」

京楽は、倒れそうになるをなんとか踏みとどまった。

「デザートもあるんだ。りんごを使ったケーキだ」

浮竹は、ケーキを切り分けた。

スポンジの中心に丸ごとりんごが入っている、豪快なケーキだった。

それを、京楽は勢いのまま食べた。

「辛い!?どうしてケーキが辛いの!」

「それは俺が、砂糖とタバスコを間違ったからだ」

えっへんと威張る浮竹を、京楽は今にも昇天しそうな魂で見つめる。

どこをどうしたら、砂糖とタバスコを間違えるのだろう。砂糖と塩なら分かるが。

ケーキも平らげて、京楽はぶっ倒れた。

「京楽!?倒れるほどに俺の料理がうまいのか!?」

「僕のHPはあと3だよ・・・。頼むから、僕のアイテムポケットから、乱菊ちゃんの毒消しのポーションと胃腸薬だして、飲ませて」

「分かった」

浮竹は、京楽のアイテムポケットから薬を出すと、京楽に飲ませた。

「ああああ~~~~~。生き返る。流石乱菊ちゃんの薬だ」

「HPはどこまで回復した?」

「ん、半分くらいかな」

「まだ、お替わりあるんだが・・・・・」

京楽は逃げ出した。

マッハで。

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京楽が逃げ出したことで、浮竹はがっかりした。

「やっぱり、俺が作った飯はまずいんだろうな。残りはポチにでもやるか」

ポチに残りのカレーを与えると、ポチは一瞬動かなくなった。

「ポチ、おい、ポチ!?」

「ルルルルルーーー!!!」

ポチは味に怒って、浮竹に噛みついた。

「いたた、ポチ、ごめんてば!」

「ルルルーー!」

ポチに噛みつきまくられてたけど、ポチはカレーを全部食べてくれた。

「ポチ、まずかったんだろう?」

「ルルル~~~~?」

「京楽が逃げていくくらいだ。俺の料理の腕は壊滅的なのかもしれない」

「ルル!ルルルル~~~~~!!!」

「何、元気出せって?」

「ルル!」

「ありがとな、ポチ。大好物のドラゴンステーキを2枚やろう」

「ルルルル~~~♪」

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次の日、昼食を京楽と一緒に作ることになった。

「僕の料理の手伝いからはじめよう。いきなり作らせてもできないからね」

「メニューは?」

「クリームシチューだよ」

「簡単だな」

「工程はね。でも、君には難題だ」

材料を見ていく京楽だったが、マッシュルームを忘れていた。

「おかしいなぁ。ここに、お化けきのこから採取したマッシュルームがまだ残っていたはずなんだけど」

密封されたガラスの瓶を見て、浮竹は。

「ああ、マッシュルームならポチが食べたそうにしていたからあげた」

「ええっ!あのマッシュルームは、最高級なんだよ。シチューに入れると入れないで、美味しさが全然変わるんだよ!」

「じゃあ、取りにいくか?」

「今から?」

「そう、今から」

「夕方になっちゃうよ」

「シチューを夕飯にすればいい」

京楽は、ため息をついた。

浮竹はそう言いだしら、聞かないことがある。

「分かったよ。最寄りのC級ダンジョンで採取できるから、さくっといこう」

お化けきのこのレベルは低い。

でも、お化けきのこに生えているマッシュルームはそこそこ高く売れるので、初心者から一人前の冒険者になる前のパーティーがよく退治した。

「お化けきのこ、いればいいけど・・・・・」

人気が高いので、討伐済みの可能性もあった。

ガイア王国にある、最寄りのC級ダンジョンに潜った。

パーティーが複数いて、浮竹と京楽は目立っていた。

Sランク冒険者がC級ダンジョンに来ているのだ。悪目立ちもするだろう。

そんな視線を無視して、浮竹と京楽は、6階層まで潜り、お化けきのこを探した。

「いた、お化けきのこだ!」

「そっちにいったよ!」

「ウィンドカッター!」

風の魔法で足を切ってやった。

「お、いっぱい生えてる・・・・」

マッシュルームを採取していく。

「せっかくきたんだし、できる限りマッシュルーム採取して帰るか」

「そうだね」

Sランク冒険者の腕にかかればC級ダンジョンのモンスターなんて、雑魚の雑魚である。

次々とお化けきのこを倒して、マッシュルームを採取した。

「この辺でいいか」

「そうだね。しおどきだ」

「全部狩ると、他の冒険者の迷惑にもなるしな」

十分迷惑になっているのだが、二人は気づかない。

ダンジョンを去ると、すれ違った人間から声をかけられた。

「ヴァンパイア?」

浮竹は聞こえないふりをした。それにつられて、京楽も聞かなかったことにする。

「ヴァンパイアの匂いがする・・・今夜あたり、あの古城にヴァンパイアハンターを差し向けよう」

「お前!」

浮竹が振り返るが、そこには人影はもうなかった。

「嫌な気がする。今日は古城に戻らず、町で宿をとろう」

「うん。不穏な気配だったね。ただのヴァンパイアハンターにやられる僕らじゃないけど、念には念を、ね・・・・・」

宿の食堂を貸してもらい、お化けきのこから採取したマッシュルームをふんだんに使った、クリームシチューを作り、それを食べた。

その味に、宿屋の女将がレシピをくれと京楽に頼んできたほどだった。

次の日、古城に戻ると、戦闘人形たちは全て倒されていた。

古城の中は、けれど荒らされていなかった。

「ポチ!?ポチ!?」

いつもは玄関付近にいるミミックのポチの姿が見えなくて、浮竹と京楽は必至に探した。

「るるるる~~~」

ポチは、暖炉の中に身を隠していた。

「よかった、ポチ、無事だったんだな」

「るるるーーー」

「あはははは、見----つけた」

「何!?」

浮竹は、喉の動脈を掻き切られていた。

「ぐっ!」

「あは、やっぱ再生しちゃうんだ?」

「浮竹!」

「京楽、くるな!」

京楽は首に糸を巻かれて、呼吸ができなくなった。

「ぐ、かはっ」

「僕はヴァンパイアハンターAクラスのダニエル・ロンド。さぁ、遊ぼうか」

「Aクラスの、ヴァンパイアハンターだと!?」

「そう。僕は今まで100体以上のヴァンパイアを屠ってきた。古城にヴァンパイアロードがいるって聞いて、退治しに、もとい遊びにきたのさ」

「ヴァンパイアハンター如きが・・・」

浮竹は血の刃で、京楽を戒めている糸を絶ち切った。

「わお、僕の糸を切るなんて、すごいね?」

「死ね」

浮竹は、血の渦を作り出し、ダニエルに向けた。

「これ、なーんだ?」

ダニエルが見せたのは、生首の状態の、ブラディカだった。

「貴様、離宮に侵入したのか!」

「だって、そこにしかヴァンパイアの反応がなかったんだもの。大人しくしないと、この生首の子のコアを破壊しちゃうよ?」

浮竹の動きが止まる。

「だめだよ、浮竹!」

「だが、ブラディカの命が!」

「ブラディカより、僕には君の命の方が重い!」

京楽は、ブラディカの生首を奪い取りながら、猛毒となった自分の血を、ダニエルに向けた。

「わぁ。本当に猛毒なんだ。あの人の言ってた通りだね」

確かに、心臓を貫いたはずだった。

ただの人間のはずなのに、ダニエルは生きていた。

「僕への攻撃は、みんなこの人形が肩代わりしてくれる」

それは、ブラディカに似せた人形だった。

「まさか、ダメージは全部ブラディカにいくのか!」

「正解。呪術だよ」

ダニエルは京楽の背後にくると、糸で京楽をしばりあげ、血で染め上げた。

「このまま、バラバラになっちゃいな」

「ヴァンパイアハンターが!」

京楽は、猛毒の血を燃やした。

毒ガスを吸い込み、ダニエルが怯む。

「ブラディカにかけた呪術など、跳ね返してやる!」

「そんなことできるわけ・・・・ぎゃああ、熱い!」

浮竹は、呪術も操る。

呪術の返しなど、造作もないことだった。

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