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小説掲載プログ
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オメガバース京浮シリーズ「記憶というもの」

最近、尸魂界内で問題が起きていた。

貴族階級のΩが、攫われて売られていくのだ。

行く先は、流魂街。性奴隷として、売られていくのだ。

浮竹は上流貴族ではなく下級貴族出身であるが、学院でも数少ないΩとして有名だった。

「浮竹、大丈夫だとは思うけど、帰り道には気をつけてね」

「大丈夫、俺の強さ、知ってるだろう?」

「うん。知ってるけど、もしヒートになったりして動けなくなったら、すぐに助けを呼んでね」

運命の番になったが、ヒート自体がなくなったわけではない。ただ、京楽にしかフェロモンが効かなくなるだけで、浮竹のフェロモンは他のαやβには無害になっていた。

京楽は、浮竹の帰りが遅いので、心配して学院までの夜道を歩いた。

浮竹の鞄だけが、落ちていた。

「浮竹・・・・・?」


---------------------------------------------


「浮竹、浮竹どこだい!?」

京楽は、浮竹を探し回った。浮竹が突然姿を消した。

次の日には、同じ特進クラスの者も浮竹を探すのを手伝ってくれた。

しかし、ようとしてその足がかりは得られることはなかった。


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流魂街67地区。

「今日の獲物は上玉だぜ。番がいるみてぇだが、薬を打てばどうせ何もわかりゃしない」

長い白髪の、麗人だった。

「高い値段がつきそうだな」

浮竹は意識を失っていた。即効性の麻酔薬をかがされたのだ。

「ん・・・・・」

「気が付いたか?」

浮竹は、ガンガンと頭痛を訴える頭を動かした。

「ここは?」

「流魂街67地区の奴隷売り場さ。お前は、これから性奴隷として売られていくのさ」

「な!」

自分の恰好を見ると、肌も露わな襦袢姿にされて、鬼道を封じる枷が両手につけられていた。

「やめろ、俺は性奴隷じゃない!」

「Ωだろ?立派な性奴隷さ」

「Ωは、そんな存在じゃない!」

「うるせー。おい、こいつの口封じておけ。あと、薬投与するの忘れるなよ。おい、嬢ちゃん。お前には、番がいてもフェロモンを他のβやαに出す特別な薬を打つ。なぁに、最初は怖いだろうが、後は気持ちよくなって誰とでもセックスし放題の、性奴隷になるだけさ」

ぶるりと、浮竹は身を震わせた。

怖い。

注射器が目の前に光る。

浮竹は目をつむった。

(京楽!)

口にタオルをつっこまれて、悲鳴も京楽を呼ぶ声も出なかった。

ちくりと、何かを打たれた。

かっと、体が熱くなった。

番ができたΩに、無理やり発情させるための薬なんだと、遠ざかっていく意識の上で認識した。

次に気づくと、誰のものかも分からぬ精液をぼたぼたと垂らしている裸の自分の恰好だった。

ザーザーと、意識にノイズが混ざる。

正気を、保っていられない。

「きょう・・・ら・・・く・・・・」

それが誰の名であるのかさえ、思い出せない。



「あの子はいい。いい声で啼くし、見た目もいい。ただ、体が弱いな。このまま客をとらせるより、誰かに大金で身請けさせたほうが稼げるかもしれん」

そんな声が、また遠ざかっていく意識の中で聞こえた。


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人身売買を行っている組織は、ほどなくして死神に捕縛された。

誰がどこに売られていったという書類をもとに、花街から、売られていったΩたちが助け出されていく。


「浮竹・・・・・?」

「誰・・・・?」

浮竹は、ふと浮かんだ意識のはざまで、京楽を見た。

「きょう・・・・らくに似てる。京楽って誰だっけ・・・・ああ、もっと子種が欲しい。誰か、抱いてくれ・・・・・・・」

京楽は、ボロボロと涙を零して、変わり果てた姿の浮竹を抱きしめた。

「浮竹、浮竹!」

「抱いて・・・旦那様、どうかいけない俺に、お慈悲を」

京楽にしなだれかかり、欲情する浮竹を強く抱きしめた。

「何もかも、洗い流そう」

京楽は浮竹を抱き上げると、瞬歩で自分の館に戻り、湯浴みをさせた。アフターピルも飲ませる。

浮竹は、実に1カ月もの間行方不明となり、花街で春を売らされていたのだ。上客が何人もいた。

京楽は、浮竹になんとか食事をさせると、それからすぐに四番隊の救護詰所に連れていった。

「記憶を、消すのですか?」

「はい」

「都合のいいように、いらない記憶だけを消すことはできません。あなたのことを忘れることになったとしても、いいのですね?」

「はい」

京楽は、涙を零しながら、卯の花と話をしていた。

打たれた薬は麻薬に似ていて、抜けるのに時間がかかると言われた。

浮竹は、いつもうとうとしていた。

それが、Ωとして自分の身を守るために得た知識であった。

微睡んでいれば、誰に抱かれても大丈夫。大好きな--------のことは、絶対に忘れない。

--------------と、愛し合った記憶を。

かわした約束を。

---------------は、いつも愛してるといってくれた。

名前は。

名前は確か・・・・・。

だめだ、思い出せない。自分がΩであり、番がいたことしか、思いだせない。

浮竹は薬物中毒ですぐに入院となった。

そして、京楽の強い願いで、花街で春を売らされていた記憶を消去してもらった。

京楽のことも忘れる可能性が大いにあった。

だが、浮竹は奇跡を起こしてくれた。


「京楽、春水。俺の番で、俺の最愛の人・・・・・・・・・」


浮竹は、綺麗に花街でいた頃の記憶だけ消えた、真っ白ではない浮竹に戻っていた。忘れていた京楽のことを思い出した。

真っ白になれば、京楽のことも忘れていただろう。

記憶のリセットは難しい。

自分との記憶も忘れてもいいと、京楽は望んだ。

真っ白になったら、また一からやり直せばいいと。

でも、そんなのエゴだ。

浮竹は、つらいだろうにふわりと笑った。

「俺はもう大丈夫だから。いい加減、泣き止め京楽」

京楽はぼたぼたとたくさんの涙を零していた。

「僕を、覚えているんだね・・・・」

「覚えている。運命の番で、俺の伴侶。学院を卒業したら、結婚するんだろう?安いが、手作りのビーズ細工の指輪をあげた」

「浮竹、愛しているよ!もう君を離さない。君は、僕だけのものだ」

「ああ。俺は、京楽のものだ」

浮竹は、帰ってきた。

実に1カ月ぶり以上の再会だった。

麻薬の成分が抜けるまで、入院となったが、さしたる問題ではなかった。

運命の番、だからだろうか。

一度失ったはずの京楽の記憶を、浮竹は思い出していた。




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オメガバース京浮シリーズ「山じいの苦悩」

ヒートを起こす度に、浮竹と京楽は授業を欠席した。

ヒート休暇が認められているせいで、欠席した分の補習があった。

京楽と浮竹は運命の番になった。

山本総隊長も驚いていた。

世話を頼むといっておいたが、まさか番になるとは思っていなかったのだ。

山本総隊長は、Ωの子を庇護してきた経験がないが、Ωがどういう人生を辿るかを知っていた。

今は法律で禁止されているが、売られるのだ。流魂街などでは、法律など関係なくΩは売られていく。

春を売るのに、Ωは最適だった。

だから、花街には今でもΩが多い。

番に飽きられたΩも売られていく。一部は合法だ。

山本総隊長は、京楽を呼び出した。

「どうしたの、急に呼び出したりして」

「十四郎の件じゃ」

「ああ・・・うん、仲良くやってるよ」

「ばかもん!」

ごつんと、流刃若火の杖で頭を思い切り小突かれた。

「痛い!」

「十四郎を任すとは言うた。確かにヒートをおさえるには交わるしかないのかもしれぬ。だが、番になるなど聞いておらぬぞ!」

「僕は浮竹のことが好きだよ。もう運命の番になっているし、僕の伴侶だ」

「まだ、死神統学院の3回生じゃろうが・・・・」

「年齢をいってたら、いつまでも浮竹を狼の群れに子羊を与えるような環境で暮らせっていうの?」

「お主なら、もっとうまく十四郎を守ると思っておった」

「守ろうとしたよ。でも、毎日毎日行動を監視するわけにもいかないし、いつ強姦されるかも分からない環境でいるより、番を得て、Ωとして落ち着いた状態になったら、もう強姦される可能性もないでしょ」

「ふうむ・・・・」

京楽の言葉にも一理ある。

「じゃが、成り行きで番になったようなものじゃろう」

「山じい、怒るよ。僕は本気で浮竹のことを好きだし愛してる。運命の番にしたことを後悔していない」

「重四郎を、死ぬまで愛せると誓えるか?Ωの番になった者の中には、複数のΩを囲っている者もおる。正妻がおりながら、Ωを側室や愛人に迎えるケースも多い」

「僕は、浮竹以外いらない。妻として娶るとすれば浮竹だよ。浮竹はΩだから、男性だけど結婚できるし」

「ふうむ・・・・・・」

山じいは、苦悩した。

京楽に浮竹のことを任せたのが悪かったのか良かったのか、判断がつかない。

だが、京楽の真剣さから、ちゃんと責任をとって浮竹を運命の番のまま、結婚するのだろうと思った。

「春水の意見は分かった。次は重四郎に問うので、連れてきなさい」

「浮竹を、傷つけないでね」

「ばかもん、かわいい弟子を傷つけるものか!」


京楽に言われて、浮竹は山じいのところにやってきた。

首筋に浮竹を所有する証の噛み傷は、治ることはないだろう。

「十四郎、今幸せか?春水と運命の番になって、幸せか?」

「はい、先生。幸せです」

「もしも、この先春水が妻を娶ったりしても、幸せのままでいられるかのう?」

「京楽が、妻を・・・・・・?」

「春水は、いずれ、上流階級の姫と婚姻するかもしれん。家のために」

「それでも、俺は京楽の傍にいます。京楽は、俺を愛してくれる。きっと、その妻になった者のほうから、京楽なんてΩである俺に夢中になってやってられないと、離縁されると思います」

大した自信であった。

「俺は俺の意思で京楽を選びました。今に自分に、文句はありません」

浮竹なら・・・・Ωであるが、将来隊長になるかもしれぬと、思った。

霊圧の桁が、他の死神と違う。京楽と同じく、隊長となるべくして生まれ、育てられてきた子に思えた。

「お主が幸せならいいのじゃ。春水にはちぃとばかしきついことを言ったが、十四郎が選んだ選択じゃ。もはや何も言うまいて。ただし、結婚はするのじゃぞ。わしを呼ぶことも忘れぬように」

浮竹は、真っ赤になった。

運命の番にはなったが、結婚などこれっぽっちも考えていなかったのだ。


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「京楽、先生から結婚をちゃんとしろと言われたのだが・・・・・」

赤くなった顔で、ちらちらと京楽の方を見る浮竹。

「そうだね。学院を卒業したら、結婚しよう」

約束だよと、翡翠の髪飾りを渡された。

「こんな高価なもの、受け取れない」

「結婚式の時につけてね」

クスクス笑う京楽は、浮竹を抱きしめた。

「在学中に結婚してもいいんだけど、親のすねをかじってる身分で結婚なんて嫌だし。まぁ、僕は金だけ渡されて放置されてるわけなんだけど」

「俺も、仕送りの金でいろいろ賄っているし・・・卒業して死神になったら、結婚しよう」

浮竹は、安いビーズ細工でできた指輪を、京楽の手にはめた。

「金もないし、俺にはこんなものくらいしか渡せないが・・・・・」

小金を手に入れるために、浮竹はたまにビーズのアクセサリー作りの内職をしていた。

「浮竹からプロポーズされちゃった!明日、みんなにこの指輪見せびらかそっと」

「わあ、そんなことするなら返せ」

「嘘だよ。大事にするね」

「死神になって、ちゃんと自分でお金を稼げるようになったら、もっとちゃんとしたものを贈る」

「それ、僕の役目だと思うんだけど」

「俺はお前の嫁になる気はない。結婚するとしても、新郎と新郎だ」

浮竹は、すでに未来図を描いていた。

死神になって、京楽と結婚して、何人か子供を産んで・・・・。

いずれ、隊長になろう。

そう思った。








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オメガバース京浮シリーズ「抑制剤」

Ω用に、新たな抑制剤が開発された。

それを服用すると、ヒートの時以外は普通に生活できる。

浮竹は、さっそくその抑制剤を飲みだした。

前の抑制剤とは違い、体に影響はなく、ヒートがこない間、普通に学院生活をおくれていた。

いつもならヒート時以外もかすかなフェロモンの香りをさせて、αやβを誘うのだが、新し抑制剤は完全にフェロモンを出さなかった。

浮竹がいるのは特進クラスだ。

京楽を含めて周りはほとんどαで、浮竹のフェロモンに誘われそうにならないために、皆抑制剤を飲んでいた。

一人のΩのせいで・・・・・。

そんな影口を裏で叩かれていたのは知っている。

でも、Ωでも学院に入れてよかったと思っていた。

ヒートの時は京楽に抱いてもらい、将来運命の番になることを決めて、アフターピルを飲んで交わってもまだ子は早いので、孕まないようにしていた。

その日は、京楽が法事で休みだった。

いつも守ってくれる京楽がいなくて、浮竹は学院を休もうかと思ったが、根っからの真面目人間なので、授業にちゃんとでた。

最悪なことに、そんな日に限ってヒートがきた。

浮竹は、押し倒されて衣服をやぶかれた。

「なぁ、やらせろよ浮竹。お前の出すフェロモンのせいで、みんなおかしくなってる」

「京楽がいなくて寂しいだろ?俺たちが慰めてやるよ」

男の手が浮竹の体を這う。床にぬいとめられると、大柄な男にのしかかられた。

じたばたともがいても、びくともしない。

強姦される。

その恐怖に、かちかちと歯がなる。

「こんなことで・・・・!破道の8、白雷」

京楽以外に抱かれるのは嫌だ。

鬼道を使って相手を油断させると、浮竹は熱に支配された体でなんとか瞬歩を使い、教室から逃げ出した。

寮の部屋の自室につくと、カタカタと体が震えた。

強姦未遂だ。

「京楽・・・・・・・」

今どこにいるんだ?

俺の傍にていてくれ。

俺のこの熱をどうにかしてくれ・・・。

浮竹は食事もとらず、眠剤を飲んで眠りについた。ヒートのせいでなかなか寝付けなかったけれど、起きると強張った顔の京楽がいた。

「どうしたの、この格好」

院生の服は、破かれたままだった。

「お前がいない間に、ヒートになって・・・襲われそうになった」

「大丈夫?何もされてない?」

「されそうになったから、瞬歩で逃げ出した」

「もう、待てない。君が他の男に抱かれると想像しただけで腸が煮えくり返りそうだ。君を運命の番にする。いいね?」

「あ・・・・番に。なりたい。京楽と、運命の番になりたい」

番ができれば、Ωは番の相手以外にフェロモンを出さなくなる。番以外と性行できなくなる。

破かれた衣服を脱がされていく。

「君をこんな目にあわせたのは?」

そのクラスメイトの名前を教えると、京楽は後で報復すると言っていた。

「俺がΩじゃなければ・・・ヒートさえこなければ・・・・・・」

浮竹は、涙を零した。

「君がΩじゃなかったら、僕は君を手に入れられなかった。僕は君がΩでよかったと思ってる」

「京楽。・・・・・好きだ。どうしようもないくらいに。ヒートになるといつもお前のことしか考えられなくなる」

「それでいいよ。君は僕のもので、僕は君のものだ」

口づけられる。

「ふあ・・・・・・」

舌を吸い上げられて、甘く噛まれた。

口内を、京楽の舌が好きなよう動く。お互いに混じった唾液を飲み込んで、浮竹は京楽の頭を抱きかかえた。

「あっ」

ぴりっと、首筋にキスマークを残されて、その小さな痛みに反応する。

破かれた衣服を脱がされて、体のラインを確かめるように京楽の手が動いた。

「相変わらず細いね。もっと食べなきゃ」

「あ・・・・食べても、太らないんだ・・・・・・ああっ」

胸の先端をかじられて、その感触に背筋がぞわぞわした。

「んっ」

摘ままれると、小さな快感が生まれる。

浮竹のたちあがったものを、京楽がしごく。

「あ、あ、あ・・・・・」

「熱くてつらいでしょ?一回出しておこうね」

「あ・・・・・・」

先端を口に含まれて、鈴口をちろちろと舐められて、全体をしごかれて浮竹は精液を放っていた。

「んや・・・・・あ、ああ!」

蕾の周囲を、円を描くように指が触れる。

「濡れてるね。でも、一応解すね」

潤滑油は、もう使っていなかった。

体内で指をばらばらに動かされると、子宮が疼いた。胎が疼いた。

「あ、指じゃ無理だ・・・早くきて、春水!」

淫らに足を開くと、京楽の体が伸し掛かってくる。

「いれるよ。そして、首を噛むから。君を運命の番にする」

「あ!」

ずちゅっと、京楽が入ってきたのと、首筋に歯が食い込むのが同時だった。

「ああああああああ!!!!」

首筋にを噛まれて、この男を体が伴侶だと認めて、Ωとしての体質が変わっていく。

伴侶、すなわり番以外にフェロモンはもう出ない。

「大丈夫?」

ドライでいきまくっている浮竹を、心配そうに京楽がのぞき込んでくる。

「春水・・・・・もう、俺は完全にお前のものだ。お前も、俺のものだ。もう、俺以外を抱くことは許さない」

翡翠の瞳が、熱で潤んでいた。

「続けるよ」

浮竹の中を、ゆっくりと犯していく。

「あ、あ・・・・・奥にいっぱい欲しい。春水の子種、いっぱい欲しい」

「分かってるよ。たくさん出してあげるから、受け取ってね」

ずちゅずちゅと蕾を犯す京楽のものはでかい。

Ωでなかったら、挿入に困るだろうサイズだった。

「ああっ!」

前立腺をすられて、浮竹は快感のあまり涙を滲ませた。

番になるってすごい。

普通の何倍も感じる。

「あ、あ!」

京楽に、浮竹は子宮の中にたくさんの子種を出されながら、また首筋に噛みつかれていた。

「ひあう!」

番であることを、確かめるように。上書きするように。

「あ、いっちゃう・・・・やぁあぁ」

浮竹は、胎の奥でびゅるびゅると精子を受け止めながら、射精していた。

「はー。あ・・・もっと・・・・」

浮竹は、貪欲に京楽を求めた。

京楽は、一度引き抜くと、浮竹をうつぶせにして腰を高くさせた。

そのまま、腰に枕を置いて、獣の恰好で交じりだす。

「あ、あ、あ!」

受け側の浮竹には負担の少ない恰好だったが、浮竹が首を振った。

「いやだ、このままじゃ・・・・春水の顔が見れない。春水、春水・・・」

「分かったよ」

浮竹を仰向けにさせて、正常位で交じりだす。

「あーー、あ、あ、春水、春水」

手を伸ばして、京楽の首にまわしてしがみつく。

結合部からずちゅずちゅと音がする。

結合部は泡立ち、お互いの体液がまじったものがシーツに零れていた。

「十四郎・・・・またいくよ、受け取ってね」

「あ、いくのか?びゅるびゅる、俺の中に出してくれ。俺の胎を京楽の子種でいっぱいにしてくれ。あ、あ”あ”!」

子宮にずるりと入り込んできた京楽は、粘膜に直接子種を注いだ。

「あ”・・・俺もいく、あ、あああああ!」

浮竹は、精液を吐き出した。

中に注がれて、中でも外でもいって、頭が真っ白になった。

「あ、おかしくなる・・・ひあああああ」

最後の一滴までを浮竹の中に出しきって、京楽は浮竹に口づけた。

「今日は、ひとまずここまでにしよう。眠っておきたら、また抱いてあげるから。今綺麗にしてあげるよ」

京楽がずるりと浮竹の中から引き抜くと、白濁した液体がどろりと浮竹の腿を伝い落ちた。

濡らしたタオルで体をふいていく。本当なら風呂に入りたかったが、そこまので余力は浮竹には残されていなかった。

交じり終わり、京楽に後始末をしてもらって、シーツを変えた布団で横になると、すぐに睡魔が襲ってきて、浮竹は眠ってしまった。

起きれば、また性欲を復活させているだろう。

Ωのヒートとは、子を成すためにあるもので、そういうものだ。

番となった者も、ヒート中のΩと性行するのに十分な性欲を得る。

京楽は、自分の運命の番になった浮竹を抱きしめて、浮竹と同じように眠りについた。



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オメガバース京浮シリーズ「ヒート2」

浮竹がヒートを迎えると、浮竹は京楽と共に寮の部屋にこもるようになった。

浮竹のヒートは、3カ月に1回だが、必ずしもきっちり3カ月後というわけでもなかった。2か月半めで訪れたヒートには困った。

授業中に浮竹がヒートになって、倒れて、そのフェロモンに特進クラスだけにαが多かったせいで、浮竹を他のαにとられそうになった。

あとで怒られたが、浮竹に触ろうとしたαは男女関係なく、鬼道で攻撃していた。

3回生になって、ヒートにも慣れてきた。

学院はΩのヒート休暇を認めており、番となるべき相手のヒート休暇も認めていた。

正確には、浮竹と京楽はまだ番になっていない。

6回生になるまでには番になろうと決めているが、京楽の両親のことが心配だった。浮竹を番にしたら、真っ先に浮竹を攻撃にするだろう。

上流貴族でαである京楽が、どこの馬の骨とも知らない、Ωの、しかも男と番になるなんてと、糾弾されるのは必須だろう。

浮竹がそんなことでやられるような相手ではないと分かっているが、浮竹の肉親を手玉にとられる可能性がある。

京楽と番になるためにも、両親を説得させる必要があったが、浮竹との間に子を一人でももうけておけば、もう両親も諦めるだろう。

「あ、春水・・・・どこ?」

京楽は、ヒート休暇を利用して、浮竹を京楽のもつ屋敷に連れてきた。

そこで働いているのはβばかりで、比較的Ωのフェロモンに当たらない使用人であるが、念のために抑制剤を飲んでもらっていた。

「夕飯の準備が整いました」

「春水・・・・飯より、抱いて」

「夕飯食べたら、お風呂に入ろう。その後、好きなだけ抱いてあげる」

「本当だな?」

浮竹は、上品に豪華な夕食を平らげると、先に風呂に入ってしまった。

それから、浴衣を着て現れた。

「春水、抱いてくれ」

「僕がまだ風呂に入ってないから、少し待っててね」

「じゃあ、院生の服を貸してくれ」

「何に使うんだい?」

「巣作りをそのうちし始めると思うんだ・・・・匂いを、覚えておきたい」

「分かったよ。じゃあ、この服は君にあげる」

「ありがとう、春水」

浮竹は、にっこりと微笑んだ。

京楽は早めに風呂を出ると、浮竹の元に急いだ。

浮竹は、京楽の院生の服を握りしめて、はぁはぁと熱い息をしながら、苦しそうにしていた。

「待たせてごめんね」

「あ、春水・・・・早く、お前で満たしてくれ」

浮竹の子宮が、胎の奥が疼いた。

秘所はとろりと濡れていて、浮竹は浴衣の下に下着をつけていなかった。

「あ・・・・・」

浴衣に、染みができた。

「ごめん、なさい」

浮竹は、京楽を押し倒していた。

「浮竹、時間はいっぱいあるから、がっつかないで」

「でも、早くお前ので満たされたい。子を孕みたい」

後でアフターピルを飲まされると分かっていても、ヒート期間中は子供を欲しがるために子を孕みたがる。

「ん・・・・・ふあっ」

口づけされる。

唇を開くと、ぬめりとした京楽の舌が入ってきた。

舌を絡ませあう。浮竹の舌を柔らかく噛んで、吸い上げる。

「んあ・・・・・・」

浮竹は、京楽との唾液がまざったものを、こくりと嚥下した。

その音が、京楽に火をつけた。

「やっ」

浮竹のものに手を触れて、しごきはじめた。

浮竹の花茎は、それだけでトロトロと先走りの蜜を零し始める。

体全体のラインを、手と舌で確認しながら愛撫する。

既に尖っている胸の先端を摘ままれると、ズクリを胎が疼いた。

「アッ・・・・・・・」

浮竹は、京楽の服を脱がせて、京楽のものを口に含んだ。

「十四郎、そんなことしなくていいから」

「いやだ。俺も、春水を気持ちよくさせたい」

「君になめられなくても、十分に気持ちいいんだけどね」

「あ。またおっきくなった・・・・・」

口に含みきれなくて、全体をしごきあげてちろちろと舌で先端を刺激すると、びゅるびゅると精子が浮竹の綺麗な顔にかかった。

「ごめんごめん」

ティッシュでふきとると、浮竹は恍惚とした表情をしていた。

「いっぱいでた。俺の中にも、いっぱい注いでくれ」

「本当に、君って子は・・・何処で覚えたの、そんな台詞」

「覚えてない」

浮竹の蕾に指をいれる。そこは柔らかく、濡れていた。

「あ、もういいから・・・・いれてくれ」

京楽は、浮竹の蕾に顔を近づけると、そこを舐めて舌をいれた。

「んあ、そんな、や、やぁっ」

浮竹が、羞恥で顔を赤くする。

結合部を見られることはあったが、そこを直接舐められたことは今まで一度もなかった。

「やっ・・・恥ずかしい、やめてくれ」

そう言いながらも、浮竹の花茎は興奮でたくさんの先走りの蜜を零していた。

「んあっ」

じゅるじゅると、したたり落ちてくる愛液を啜って、舌で蕾を舐めあっつげて、ねじ込んだ。

「あ、もっと奥がいい。お前のこれじゃないと、届かない・・・・・」

京楽のものを握りこんで、しごいた。

「・・・・っ、もう、仕方のない子だね」

京楽は、腹に反り返んばかりに勃起したものを、浮竹の内部に埋め込んでいく。

「あ、きた、春水の・・・ああああ!」

熱に引き裂かれているのに、気持ちいいしかなかった。

「あ、気持ちいい、もっと!」

浮竹は、素直に言葉に表現する。

京楽は、浮竹の中に一度全部埋め込んでから、熱い息を吐いた。

「動くよ」

「あ、あ、あ・・・・」

じゅぷじゅぷと、京楽のものが出入りする。

「もっと・・・・」

浮竹は、京楽のものをもっと奥まで奥まで誘おうと、腰を動かした。

「腰降るなんて、珍しいね。もっと奥まで欲しいの?」

こくこくと頷く浮竹に口づけて、京楽は最奥まで熱を叩きこんだ。

「あ、あ、あ、奥まできてる!あ、あーーー」

一度引き抜いて、再度奥の子宮口にまでえぐりいれると、浮竹は京楽の背中に爪をたてた。

「あああ!」

びゅるびゅると、京楽の精子が子宮の中に注がれる。

そのまま動いてやると、浮竹が首を振った。

「あ、あ、あ。いってるから、動くな・・・ああああ!」

浮竹もまた、精液を自分の腹に出していた。

「・・・・あ」

京楽のもので満たされた胎が、疼く。

もっと欲しいと。

「まだ、足りない。俺を、いっぱいに満たしてくれ」

「愛してるよ、十四郎」

「あ。俺も愛してる、春水!」

体位を変えて、また交わる。

その日は、浮竹が満足して何も吐き出せなくなるまで、交じり続けた。

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オメガバース京浮シリーズ 「ヒート」

1回目のヒートから時間が経ち、浮竹は普通の院生生活を送っていた。

何かあるごとにΩだと影口を叩かれるが、その度に、親友である京楽が庇ってくれた。

京楽は、肺の病も持っている上に、病弱だった。

強いヒート抑制剤は体に負担をかける。

それでも、普通であるために抑制剤は欠かせない。

ある日、軽い肺の発作をおこしたと思ったら、真っ赤な鮮血を吐いた。

ごぽりと、また鮮血を吐き散らす浮竹の姿に、京楽が悲鳴をあげた。

「浮竹、しっかりして!今医務室に・・・・・ううん、4番隊のところに連れていくから!」

すでに瞬歩を覚えていた京楽は、浮竹を抱き上げて、救護詰所までくると、浮竹はすぐに入院となった。

「浮竹・・・・」

集中治療室に運ばれて、管で繋がれていく浮竹の姿に、京楽の心が痛んだ。

ああ、早く元気になって。

君の笑顔が見たいよ。

浮竹はそのまま3日ほど昏睡状態に陥って、意識を取り戻したのは発作を起こして4日目のことだった。

回道で手当てを受けて、一般病室に移された浮竹の傍に、京楽はいた。

「すまない・・・迷惑をかけた」

「君が死んでしまうのかと思った。怖かった」

浮竹の手を握って、京楽は点滴の管に繋がれた浮竹の細い腕を手でさする。

「早く元気になって、美味しいものたくさん食べよう。君、前々から思っていたけど、細すぎだよ」

「甘味屋にいきたいな・・・・・」

「いいね。退院したら、甘味屋に行こう。奢ってあげるから、好きなだけ食べるといい」

浮竹はヒート抑制剤を飲んでいなかったので、かすかなフェロモンが京楽を刺激するが、京楽はしっかりと浮竹に会うために、フェロモンに対する抑制剤を飲んでいたので、心配はなかった。

浮竹の点滴には、抑制剤の薬の代わりになる成分含まれている。

浮竹の体をふいてやったりして、京楽は浮竹の面倒を見た。

ある時、4番隊隊長である卯の花に、京楽は呼び出された。

「あなたが、京楽さん?」

「あ、はい」

「浮竹さんの飲んでいる抑制剤が、強すぎるようで、その薬のせいで今回の発作が重症なものになったんです。軽い抑制剤に変えますが、今後ヒートが発生する可能性が高くなります。山本総隊長より、浮竹さんの世話などは京楽さんに任せてあると言われてあります・・・・今後ヒートが起こった時は、なるべく二人で過ごすようにしてください」

「は、はい」

「年頃でしょうから、ヒートの抑え方は教えずともわかりますね?」

「はい・・・・」



浮竹は、退院した。

病欠していた間の補習などに参加して、前向きに生きている。

浮竹の知らない間に、浮竹のヒート抑制剤は弱いものに変わっていた。

「あいつ、いい匂いするな」

「泣かせたら、どんな顔するんだろう」

そんな言葉を吐く、男子生徒を京楽がギラリと睨みつける。

男子生徒たちは、京楽に恐怖を感じて、浮竹には近づかないようにしていた。

「君は・・・・僕の、ものだ」

1か月後、2回目のヒートが浮竹を襲った。

「京楽・・・・・」

教室に残り、ふらふらと歩いている。

「医務室に・・・ヒートが・・・・抑えられない。抑制剤飲まないと」

Ωのフェロモンに対する抑制剤を飲んでいたが、それでもぶわりと匂ってくるフェロモンの甘い香に、抗えなかった。

「浮竹、戻るよ」

「京楽?」

浮竹を抱き上げて、寮の部屋に戻ると、浮竹をベッドで寝かせて、京楽は浮竹に囁いた。

「好きだよ、浮竹」

「あ、俺も好きだ、京楽。抱いてくれ」

浮竹はヒートの熱に当てられていた。

リップ音をたてて、浮竹の頬にキスをすると、浮竹は京楽の唇に触れた。

「お前になら、抱かれてもいい」

「本当に、どうなっても知らないよ」

京楽は、衣服を脱ぎ捨てた。

浮竹は熱にうなされているようで、ぼーっとしていた。

「服、脱がせるよ」

「ああ・・・・」

衣服を脱がせると、白い肌が露わになった。

自分のものだという所有者の印を刻むように、首筋から鎖骨、胸にかけてキスマークを残した。

「あ・・・あ・・・」

浮竹が、京楽にしがみつく。

浮竹のものに触れると、先走りの蜜を出していた。

それを手でしごいて、同時につんと尖がった胸の先端をかじると、浮竹はびくんと体を反応させた。

「あ、あ!」

「きもちいい?」

「やっ・・・へん、変になる・・・」

浮竹のものは、完全にたちあがっていた。それに舌を這わせる。

「ひあ!」

熱い口内に蝕まれて、浮竹は京楽の髪を掴んだ。

「あ、だめだ京楽、そんなことしたら・・・・あああ、いってしまう」

「いっていいよ、浮竹」

「ああああ!」

熱を京楽の中に吐き出して、浮竹は少しの間意識を飛ばした。



「ん・・・・・・・」

「起きた?続きしても、大丈夫?」

「あ・・うん」

潤滑油に濡れた指が、体内に入ってくる。

「うあ・・・んん・・・・」

ずくりと、胎が疼いた。

浮竹のそこは、濡れていた。

男を受け入れるために。本来なら濡れるはずのない場所であったが、Ω故に濡れていた。

「濡れてるけど、一応潤滑油でも濡らすから」

「あ、早く!」

前戯などいらないのだとばかりに、浮竹が求めてくる。

それでも、フェロモンに当てられても京楽は浮竹に気持ちよくなって欲しくて、指で秘所にこりこりと刺激を与えた。

「あー、あ、あ!」

後ろをいじられながら、前もいじられて、浮竹は脳みそがぐずぐずになりそうになっていた。

「あ、頭真っ白になる・・・・あああ!」

京楽は、浮竹の胸の先端にを舌で転がしながら、片手は秘所の前立腺をいじって、もう片方の手で前を宥めた。

「ひああああ!」

前と後ろの両方でいってしまい、浮竹はぐったりとなる。

ぐったりとなった浮竹に、京楽が心配そうな声をかける。

「もうやめたほうがいい?」

「あ、だめだ春水・・・」

いつの間にか、下の名前で呼ばれていた。

「俺の子宮に、春水のものを出せ」

アフターピルは、念のために買ってある。

まだ学生だ。子を作るわけにはいかない。

「いれるよ」

「早く!」

ずくりと、浮竹の中に入ると、その締め付けと熱さにすぐにもっていかれそうになった。

「は・・・すごいね、君の中。うねって、吸い付いて・・・・・」

「あ、動いて・・・・春水で、俺を満たして」

「動くよ」

緩慢な動作で動き出すと、浮竹はとろんとした瞳で京楽に口づけた。

「全て・・・お前のものだ」

「うん。十四郎は、僕のもの・・・・・」

じゅぷりじゅぷりと音を立てて秘所を犯してやれば、浮竹は京楽にしがみついて、離れない。

「あー、あ、あ、あ!」

胎の奥を犯されて、狂ったように感じた。

「あ、もっと!もっと、お前をくれ!」

だんだんと、差し入れするスピードが早くなっていく。

ずぶずぶと、京楽のものを飲み込む秘所は、濡れて粟立っていた。

「あ、あ、あ!」

「出すよ」

「あ、いきたい。一緒に、いきたい・・・・・・」

「うん、一緒にいこう」

浮竹の最奥の子宮口に、熱をはじき出すのと、浮竹が自分の腹に白濁した熱を弾けるのが一緒だった。

「あー。あ、あ・・・・まだ、足りない・・・・」

浮竹の残念そうな声に、京楽が一度引き抜いた。どろりと、白濁した液体が溢れる。

京楽は、浮竹を抱きかかえた。騎乗位になって、浮竹を下から突き上げる。

「ううん・・あ、あ・・・あ、いい、いい、春水!」

京楽は、ふと動くのをやめた。

「あ、春水、どうして?やめないで、春水、春水」

「どうしてほしいか、言ってごらん?」

「あ、春水のもので犯してくれ。ごりごりって中をこすって、胎の奥の子宮に出してくれ!」

浮竹は、ヒートの熱にうなされながらもそう口走っていた。

京楽は、下から突き上げる。

浮竹は、少し長い白髪を宙に乱した。

「あ、あ、くる・・・・!あ、いっちゃう!」

「好きなだけいっていいよ、十四郎」

絶頂の余韻に浸っている浮竹を、後ろから犯してやると、浮竹は泣きだした。

「春水・・・・俺は、おかしくなったのか?こんなにいっぱいもらってるのに、まだ足りないんだ」

「おかしくなんてないよ。ヒートに当てられているだけだから。好きだよ、十四郎」

「あ、俺も好きだ、春水」


ヒートはなかなか収まらない。

京楽は、浮竹が求めるまま浮竹を抱いた。

そんなヒートが1週間も続いた。

寝て食べてお風呂に入る以外、ほとんど睦み合っていた。

寝ている時間が圧倒的に多かったのは、浮竹の体を心配した京楽が、肺の薬に眠剤をいれていたせいである。

ヒートが終わると、浮竹は申し訳なさそうに京楽に謝った。

「すまなかった京楽。お前しかいなかったとはいえ、お前は男なんて抱きたくなかっただろうに」

「そんなことないよ。浮竹がたまたま男だっただけで。ヒートを経験して抱いたせいもあるかもれしれないけど、きちんと告げておくよ。愛してる。将来、僕の番になって」

「京楽・・・・・・」

浮竹は、涙を零した。

京楽と、運命の番になりたい。

本気で、そう思った。


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オメガバース京浮シリーズ 「出会い」

ずっと、自分のことをβだと思っていた。

家族は父を除いた全員がβで、父はαだった。

αとβの長男として生まれ、病弱で肺の病を患っていたが、最初の検査ではβであると言われた。

霊圧があるので、死神統学院に入り、やがては死神となって、α、Ω、βなどとは関係なしにいずれ誰かと恋愛して、結婚するものだと思っていた。

βにしては整いすぎた容姿と、何故か同じ男を魅了するその姿に、念のためと再検査されて、自分がΩであることを知った。

世界には、男女の他にα、β、Ωという3つめの性がある。

αは上流階級の貴族に多く、一般的に多いのはβだ。Ωは今でこそ保護されているが、3カ月に一度1週間は続くヒートや、αやβをその意思関係なく惑わすフェロモンを出すことで、忌諱され、社会に冷遇されてきた。

強姦されてもΩが悪いのだとされて、社会の底辺のゴミとして見られてきた。

それが変わりだしたのは、ヒートに対する抑制剤ができ、αやβもΩに対する抑制剤を飲むことでΩ のフェロモンに当たりにくくなるという医療技術の発展だった。

「あいつ知ってる?」

「ああ、確かに主席で合格した浮竹十四郎だろう?Ωなんだってさ」

「いくら優秀でも、Ωじゃなぁ・・・」

影口を叩かれるのには慣れていた。

田舎から合格と一緒に引っ越してきて、寮に入ることが決まっていた。

同じ部屋に入る子は、同じΩだと聞いていた。

コンコンと、ノックがされて出ると、背の高い男性がいた。

「僕は京楽春水。君と同じ寮の部屋に入る相手だ。よろしくね」

「俺は浮竹十四郎。Ωなんだ。お前も同じΩだろう?お互い苦労するな」

「え、僕αだけど」

「え」

二人して、固まってしまった。

「君、Ωなの」

「ああ。寮の部屋、変えてもらうか?」

「山じいの配慮で僕が同じ部屋になったんだよ」

「先生の、配慮で?」

「君を他のαやβから守ってくれって。なんのことだろうって思ってたけど、そうか、君はΩだったんだね」

「強めの抑制剤を飲んでいる。多分、ヒートは来ない」

「僕も定期的にΩのフェロモンに当たらないようになる抑制剤を飲んでるから、きっとうまくやっていけるよ。もしもの時になっても、僕なら君を強姦したりしない。抱くしか解決方法がない時は責任をもって番になるから」

「そんなこと、言わないでくれ」

浮竹は、自分がΩであることで、他人に迷惑がかかるのが嫌だった。

「ヒートなんて、きっとこないから・・・・」

Ωだと分かって、一番強い抑制剤を出してもらい、毎日のように飲んでいた。

肺の薬も飲んでいるし、金がかかると思ったが、Ωが抑制剤を買う金は学校側が負担してくれた。

優秀な者なら、たとえΩでも学院に迎える。

少し前なら、Ωだと学院にも入れなかった。

世界は変わっていく。

浮竹は、自分がΩであることを忘れるように、授業に出て剣や鬼道の腕を磨いた。

いつしか、さぼりまくって花街に行ったりする京楽のさぼりをつきとめて、授業に強制参加させるようになっていた。

αである京楽と親友になり、対等の立場を手に入れていた。

だが、Ωであることには変わりない。

初めてヒートが訪れたのは2回生の夏休み。

抑制剤を飲みまくり、なんとか凌いだ。

けれど、一度発情期を迎えてしまえば、ヒートは定期的に訪れて、やがて抑制剤の意味も薄くなってくる。

「大丈夫。俺は、大丈夫」

病院で新たに処方された抑制剤をがりがりとかじって飲んで、浮竹は初めてのヒートを耐えた。

「君・・・・発情期だね。ヒート、きてるでしょ」

「なんで・・・・」

「抑制剤飲んでも、フェロモンが漏れてるんだよね。僕は対Ω用の抑制剤を飲んでるから大丈夫だけど、ヒートが終わるまで外出しちゃだめだよ」

京楽は、初めてヒートをおこした浮竹を病院に連れて行ってくれたり、食事を運んでくれたりといろいろ世話を焼いてくれた。

「すまない、京楽。俺がΩのせいで、お前に迷惑ばかりかける」

浮竹は、翡翠の瞳に涙を浮かべていた。

美少女にしか見えない浮竹の、泣いている姿は心に響いた。

あ。

まずいかも-----------。

そう思った時には、京楽は浮竹にキスをしていた。

「なんで?」

浮竹が、目を見開く。

「いや、これはフェロモンに当たったわけじゃなくって・・・・泣いている君をなぐさめたくって・・・・その、ごめん。突然すぎたね」

「ううん。京楽には、いろいろ世話になっているか・・・ら・・・」

ボロボロと、浮竹の翡翠の瞳から涙が溢れた。

「俺は・・・Ωになんて、生まれたくなかった!」

京楽は、震える浮竹の体をそっと抱きしめた。フェロモンの甘い香りがしたが、抑制剤を飲んでいるので自我は保てた。

「大丈夫。君は大丈夫だよ。Ωでも、今までやっていけたじゃない。きっと、大丈夫」

泣き続ける浮竹を抱きしめて、京楽は浮竹を慰めた。

いつか。

番になる相手を選ばされる時がくるなら、僕は浮竹の番になりたい。

京楽は、そう思った。

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院生時代の部屋 添い寝チケット

「今日は僕の誕生日!ということで、愛をちょうだい!」

半裸で飛びかかってきた京楽を、ひょいと避けてけてから、浮竹はその足に回し蹴りをいれた。

「酷い!僕の誕生日なのに!」

「お前の誕生日だからって、プレゼントは用意してないぞ!」

「じゃあ、これを僕にプレゼントして!」

京楽が渡してきた紙を見る。

(浮竹と×××するチケット、1枚につき2時間有効)と書かれたものが、10枚あった。

「誰がこんなこと、許可するか!」

びりびりに破いて捨てる。

「酷い!( ノД`)シクシク…」

しくしくと泣き出した京楽が鬱陶しくて、浮竹は白い紙に、(添い寝してやるチケット。3枚のみ有効。添い寝以外は禁止)と書いたものを渡した。

「浮竹の添い寝!嬉しい、さっそく今日使うね!」

京楽は目を輝かせていた。

浮竹は、サービスしすぎたかと思ったが、毎年誕生日になると高価なものを贈ってくる京楽のことを考えて、まぁいいかと自分自身を納得させた。

夜になり、京楽がチケットを1枚浮竹に渡して、浮竹のベッドに寝ころぶ。

「もっと離れろ!鬱陶しい!」

「添い寝、してくれるんでしょ?」

「う・・・・・」

大きな犬みたいに見上げられて、浮竹は仕方なく京楽と一緒のベッドで眠りについた。

いざ、寝ようとすると京楽が(*´Д`)ハァハァと荒い息をしていたので、何かと思えば伸びた髪をくんかくんかとかがれていた。

「大人しく、寝ろ!」

浮竹は、京楽を簀巻きにした。

夏なので、薄い毛布で簀巻きにした。

簀巻きにされた京楽は、それでも浮竹と一緒に寝れるのが嬉しいのか、にこにこしていた。

浮竹は、京楽を簀巻きにしたことに安堵して、眠りについた。

「ん・・・暑苦しい・・・」

夏に入り、夜とはいえ室温も暑くなっていた。

薄い布団をかぶっていたのだが、隣にいたはずの京楽が簀巻きから逃れて、浮竹を抱きしめて寝ていた。

「暑い!」

京楽の腕から脱出して、京楽を再び簀巻きにしてから、ベッドから蹴り落とした。

「ん~。浮竹ぇ、大好きだよお」

京楽は、深く眠っているようで、起きなかった。

浮竹は、京楽をなんとかベッドの上にもちあげると、ため息をついて同じベッドでまた眠ることにした。

チケットの約束は、約束だから。

窓をあけて、夜風が入るようにする。

それでも暑くて、なかなか寝つけないでいた。

「京楽のやつ、こんな暑いのによく寝れるな」

よくよく見ると、京楽は氷枕を胸に抱いていた。

さわってみると、よく冷えていて京楽の体も冷たかった。

「今日だけ、だから・・・・・」

浮竹は、京楽というか、京楽の氷枕を抱きしめるような形で、うとうと、と意識を失っていく。

朝起きると、京楽がやっぱり簀巻きから脱出して、浮竹を抱きしめていた。

その腕からなかなか出れなくて、浮竹が叫ぶ。

「京楽起きろ、朝だぞ」

「浮竹の肌がすべすべ。花の甘い香がする」

「おい、起きてるんだろう、京楽!」

「ふふふん、僕はまだ寝ている。なので、浮竹と添い寝するんだよ」

「起きてるだろうこのバカ!」

京楽の頭を、ばしばしと何回もはたいた。

「痛い、痛い」

伸びたひげを引っ張ると、京楽は降参して浮竹を自由にしてくれた。

「ひげ、ひっぱらないで。痛いから」

「じゃあ、次からはそのもじゃもじゃの胸毛をひっぱってやる」

「それも痛そう」

京楽は、へらりと笑った。

浮竹は、ため息をつく。

添い寝するだけが、完全に抱きしめられていた。あと2回、チケットあるんだよなぁと悩みながらも、朝から寝汗を流すためにシャワーを浴びた。

院生の服をきて、少し長くなった白髪をタオルで水分とふきとる。

京楽は、浮竹のシャワーシーンを覗き見して、鼻血を垂れていた。

「・・・・・やっぱり、チケット返せ」

「嫌だよ!この添い寝チケットは僕のものだ!」

朝からぎゃあぎゃあとわめいていると、隣の部屋の寮の者が苦情を言ってきた。

「朝っぱらからうるさいんだよこの夫婦が!」

「夫婦だと?」

「浮竹、僕ら夫婦だそうだよ」


実際に、オシドリ夫婦と呼ばれるようになるのは、この先数百年後のことであった。




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魔王と勇者

京楽は、勇者だった。

上流貴族であるが、その放蕩ぶりに呆れられて、なりたくもないのに冒険者となるために、冒険者アカデミーに入れられた。

無事卒業し、冒険者として生きていこうとする中、城下町で祭りがあった。

新しい勇者を生み出す祭りだった。

聖剣エクスカリバーを引き抜けば、勇者となり、魔王討伐に旅立つのだ。

次々と若い冒険者たちが台座からエクスカリバーを引き抜こうとするが、誰も引き抜けない。

京楽は、遊びの気持ちでそれに参加した。

すると、聖剣エクスカリバーは京楽の手でするすると台座から引き抜かれた。

民衆がわっと歓声をあげた。

「新たな勇者の誕生だ!」

いや、そのつもり全然なかったんだけど。

「僕は勇者になんてなりたくないよ」

エクスカリバーを投げ捨てるが、エクスカリバーは鞘に収まって京楽の背中にくっついた。

何度投げ捨てても戻ってくるので、京楽も諦めた。

「汝、京楽春水を、これをもって正式に勇者と認定する」

王様にそう言われて、ショックを受けた。まさか、自分が勇者になるだなんて。

「パーティーメンバーを決めたり、武具を買ったりいろいろと金が必要じゃろう。ここに白金貨100枚を用意してある。これを軍資金に、魔王を討伐するのじゃ」

白金貨は、普通の金貨の10倍の価値がある。

つまりは金貨1千枚を渡されたことになるのだ。

京楽は、白金貨には手を付けず、パーティーメンバーとしてやってきた仲間を放置して、ひたすら周囲の森でスライムを殺した。

スライムに恨みはないが、一応モンスターを討伐して勇者らしいことをしなければと、スライムを倒し続けた。

スライムは素材としては悪くなく、金もたまった。

いろんな種類のスライムを退治した。中には純金やらレアメタルでできたスライムもいて、財布が潤った。

京楽は、気づけはLV99になっていた。

それは、聖剣エクスカリバーにあったチートスキルのせいだ。獲得経験値×10と、様々な魔法をのスキルを覚えられるというもの。

勇者のレベルがカンストしたと聞いて、国王は今まさに魔王を打ち滅ぼす時だと、京楽を城に呼び、パーティーメンバーを与えた。

僧侶、魔法使い、戦士、盗賊であった。

翌日には出発するという時に、京楽はレベルがカンストしたことで覚えた、テレポートの魔法を使って街を抜けだし、パーティーメンバーなぞ足を引っ張るだけでいらないのだと、魔王城を目指して一人ふらりと旅に出た。

テレポートの魔法を多用していたせいで、1週間で魔王城についた。

おどろおどろしい城か煌びやかな城を想像していた京楽は、その城を見て、驚いた。

すごくぼろかったのだ。

財政不足かな?

そう思って庭をみると、畑が広がっていた。

鶏や牛、豚やヤギなどが飼われており、自給自足の生活をしているようだった。

魔王って、貧乏なんだ。

京楽の中の魔王像が、粉々に壊れていく。

「あれ、京楽じゃないか」

「え、浮竹!?」

畑を耕していた、幼馴染に、京楽はビックリした。

浮竹とは、冒険者アカデミーに入る前の普通の学校で一緒で、幼馴染だった。

肺の病をもっており、病弱な浮竹を京楽はよく見舞いにいった。

長い白髪に翡翠の瞳をもつ、見目麗しい青年であったが、京楽と同じ冒険者アカデミーに通うには体が弱すぎるという理由で、一緒にいられなくなった過去がある。

京楽は、浮竹のことが好きだった。

「何してるんだい、こんなとこで。まさか浮竹が魔王とか・・・・あははは、あるわけないね」

びっくりした顔で、浮竹が京楽のもつ聖剣エクスカリバーを見る。

「そうか。京楽は勇者なのか。魔王を討伐にきたんだな・・・・こっちにこい。案内する」

城の中を案内される。

ぼろいが、それなりに広かった。

玉座と書かれたパイプ椅子に座って、浮竹は京楽を見た。

「第16代目魔王、浮竹十四郎だ」

「え、まじで?」

「魔王福引会で、2位の金貨1千枚を狙って福引したら、魔王が当たった」

「どんな選び方なのそれ。魔王って、そんな適当でいいの?」

「いいらしいぞ。とりあえず、存在すればいいらしいから。でも、俺は魔王の加護のお陰で健康な肉体を得た。魔王といっても、ただこの城で生活しているだけで、部下はいるけど同じように生活しているだけだ。ちなみに2位の金貨1千枚は偽物だった。貧乏だからな、魔王は」

「魔王って、悪くないんだ。人間の存在、脅かしてないんだ。おまけに貧乏なんだ・・・・・」

京楽の中で、魔王を倒すという意味がなくなっていく。

「ここにね、白金貨100枚あるんだ。これで、ちょっとは生活よくなる?」

「白金貨!」

浮竹が驚く。

白金貨を目にするのは数年ぶりだ。

浮竹は下級貴族出身で、兄弟姉妹が8人もいて、浮竹の肺の病の薬に金がかかるということで、幼い頃から兄弟姉妹たちはスライムなんかの弱いモンスターをやっつけて、素材を売って金にして両親や浮竹を助けていた。

「本当は、冒険者になりたかったんだ。でも、冒険者アカデミーで体弱いということで入れなくて、ギルドには登録はしてあるが、ちゃんとした冒険者じゃない」

「うーん」

京楽は、浮竹の傍に近寄る。

「魔王、やめれないの?」

「やめると、加護がなくなって健康じゃなくなる。魔王の加護は、近しい者にも与えられるから・・・京楽こそ、勇者やめないか?勇者やめて、ここで俺と暮らさないか?」

「プロポーズ?」

その言葉に、浮竹が真っ赤になる。

「違う、そういう意味じゃ・・・・そりゃ、お前のことは好きだけど」

「奇遇だね。僕も君が、好きなんだ」

二人は、触れるだけのキスをした。

「勇者やめたら、新しい勇者が浮竹を倒しにくるだろうから、勇者のままで魔王側に寝返ることにする」

(勇者したままだけど、魔王と恋人になったので、魔王城で暮らします)

そう書いた手紙をしたためて、伝書鳩を飛ばした。

後日、勇者パーティーに入るはずだった者たちと一緒に、新しい勇者と名乗る男が魔王城にせめこんできたが、魔王の加護を受けた京楽の敵ではなかった。

魔王の加護には、LV制限突破がある。

勇者京楽LV395。魔王浮竹、LV415。

この二人にかなう者など、まず世界に存在しない。

京楽は、近くの冒険者ギルドで適当に依頼を受けて消化し、金銭を得てそれで浮竹と一緒に魔王城に住んだ。恋人同士になっていた。

基本自給自足の生活を成り立たせていたので、暮らしは質素だが幸せだった。

「僕、勇者になれてよかった。君とこうして一緒にいられるから」

「俺も、魔王でよかった。健康になれたし、京楽とまた出会えたから」

魔王と勇者は、仲良く過ごした。

ちなみに、パイプ椅子だった玉座は、普通の玉座に変わっていた。金銀細工が施されて、魔王が座るのに威厳を損なわぬものになった。

京楽が勇者だということは、近場の冒険者ギルドにばれたが、国王がもう魔王は脅威でないとして、魔王討伐をやめたので、問題はなかった。

勇者京楽と魔王浮竹は、人類史上最も仲のいい勇者と魔王として、後世にまで名を遺すことになるのであった。


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好きなものは好き15

「ハッピーバースデー!一護!」

家に帰宅すると、ルキアがそう言って出迎えてくれた。

「一護、誕生日おめでとう」

「ああ、もうそんな時期か・・・・・」

ルキアは、エプロンを着ていた。

「なんか、台所がすごいことになってるんだが」

なんかいろいろ零れていたり落ちていたり、とにかく散らかっていた。

「貴様へのバースデーケーキを作ったのだ!ちょっと見てくれは変かもしれないが、味はまぁまぁだぞ」

チョコレートケーキだった。

「ルキア、この前もチョコレートケーキ作ってたよな。あん時はすげー苦かったけど・・・どれどれ」

味見をすると、ちゃんとチョコの味がする普通のケーキだった。

「けっこう美味いじゃねーか」

「そうであろう。私とて、やればできるのだ。誕生日プレゼントもあるのだぞ!」

「お、なんだ?」

「私とお揃いのチャッピーのリュックサックだ!」

「お、おう。ありがと」

いらねぇと、心の中で叫んだ。

ルキアは、そのチャッピーのリュックサックに一護の荷物を詰めていく。

「おい、何してんだ」

「月曜から、貴様はこのリュックで大学に行くのだ」

「まじかよ。簡便してくれよ」

「私とお揃いなのだぞ!使わぬのは許さぬ!」

「わーったよ」

ルキアの愛に根負けする。

はじめは友人たちにからかわれるだろうが、慣れてしまえばいいだけだ。



チョコレートケーキを食べて、台所を片付けて、ちゃんとした夕飯を作って食べて、風呂に入って出るともう時計は11時をさしていた。

「明日は休みだし、ゆっくりするか」

「だめだ!尸魂界でも貴様の誕生会をするのだ!」

「えー?めんどくせぇ」

「尸魂界を救った英雄の誕生日だぞ。京楽隊長から、その日でなくともいいから連れてこいと言われているのだ」

「仕方ねーなぁ」

その日は、いつものようにルキアを胸に抱きしめる形で眠って、朝になってルキアは一護を起こした。

「んー。あと10分・・・」

「たわけ!今日は貴様のバースディパーティーを尸魂界で用意してあるのだ!起きろ!」

なかなか起きない一護に、肘鉄を食らわせると、寝癖のついた髪で一護が起きた。

「あー。誕生日会か・・・・子供の頃、思い出すな」

まだ母の真咲が生きていた頃、よくバースデイパーティーをしてもらった。

母がなくなってからは、妹たちが祝ってくれた。

さすがに中学生になる頃にはプレゼントをもらうくらいで、バースディパーティーはなかった。

大学生にもなって、バースディパーティーとは、ちょっと重い気もするが、祝ってもらえるのは正直にうれしい。

「さぁ、いくぞ一護」

ルキアは一護の手をとって、穿界門をくぐる。

尸魂界にいき、瀞霊廷に出向くと、ぱんぱんと、クラッカーの嵐に見舞われた。

「お誕生日おめでとう、一護君」

「京楽さん・・・・」

「今日は君が主役だよ。現世でも酒が飲める年齢になっているんだろう?みんなで飲んで食べて騒ごうじゃないか」

みんな、騒ぐ口実が欲しいのだろう。

瀞霊廷は大分復興したが、まだ大戦の傷跡を色濃く残している。

「おう、今日は飲むぞー!」

一護が、生ビールのジョッキを手に飲みだすと、みんな歓声をあげて飲み始めた。

一護に、次々と誕生日プレゼントが渡されていく。

白哉からは、鍵を渡された。

「なんだこれ?」

「兄の屋敷だ。瀞霊廷に新たに作った、兄とルキアの屋敷だ」

「おいおいおい、そんな高価なもん受け取れねぇよ!それに俺は現世にいる生活のほうが長いから、こっちくるのはたまになんだぞ」

「いずれ、兄は、尸魂界にくるのそうであろう」

「何十年先の話だよ」

「死神にとっては、それほど長くない時間だ」

一護は、結局白哉から鍵を受け取った。

「ルキア、夏休みになったら、二人でその屋敷とやらに住むか」

「いいのか、一護?」

ルキアが、目をきらきらさせている。

まるで、新婚のようだと、小声で言っていた。

「どうせ、大学の夏休みはバイト入れて終わりの予定だったけど、せっかくだから、夏休みの間だけでも一緒に住もうぜ」

バイトしないと金がないので、借りている家の家賃とかは全て白哉が負担してくれるらしい。

「尸魂界に住むのも、悪くないかもな」

「そうだぞ。尸魂界はよい場所だ」

ルキアの笑顔が、眩しかった。

誕生日も過ぎて、大学は本格的な夏休みに突入した。9月の末まで休みだ。

「行くか、ルキア」

「うむ」

白哉が建ててくれた屋敷には家具なども全て揃っており、使用人も何人かいた。

二人で、新居の寝室の真新しい畳の上で寝転がってごろごろする。

ルキアと、いつか結婚しよう。

そう思う一護であった。




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15話補完小説

「お前の炎は通らなかったぜ」

日番谷は、氷輪丸を抜いた。

「・・・・へぇ?」

シュテルンリッター「H」のバズビーは、にやりと顔をあげた。

「なんだなんだ、誰かと思えば思い出したぜ。蒼都のヤローに卍解を奪われた氷の隊長さんじゃねーかよ」

日番谷は、氷輪丸を構える。

「十番隊隊長、日番谷冬獅郎だ」

「シュテルンリッター「H」のバズビーだ!」

バズビーは、炎を生み出す。

「俺たち相性がよさそうじゃねぇか!随分とよお!」

「そうだな」

日番谷は、燃え盛る炎を睨んだ。

「おいおい、薄い氷だなぁ!」

日番谷の出した氷を、バズビーが溶かしていく。

「隊長、隊士たちの退避完了しました!」

乱菊が、日番谷の元に駆けつける。

「すまん、頼んだ。やはり俺一人じゃあ、コントロールが難しい・・・・何だ?」

乱菊はにやにやと笑みを浮かべた。

「いやぁ、卍解なくなちゃったのも悪いことばっかりじゃないなーって。だってあたしのこと頼ってくる隊長かわいー!」

「な!松本ぉ!」

日番谷は、少し頬を赤くした。

「いきまーす。唸れ、灰猫!」

ぶあっと、乱菊の灰猫が灰を巻きちらす。

「いくわよー、ミルフィーユ大作戦!」

「そんな作戦名にした覚えはない!」

日番谷は、つっこんでいた。

「なんだぁ?」

バズビーが、炎をまき散らす。

「溶かせねえ!?」

目の前に出てきた日番谷の氷を溶かせなくて、バズビーが一瞬だけ怯んだ。

「真空多層氷壁だ。灰猫の灰で作った多層の壁の表面を薄い氷の壁で覆い、灰猫だけを刀に戻す。そうすることで多重の真空の層を持つ氷の壁が生まれる・・・・・」

日番谷は、氷輪丸で氷をさらに生み出していく。

「俺の氷輪丸は、恐らく隊長格の斬魄刀の中で最も始解と卍解の能力差の少ない斬魄刀だ」

バズビーは、声をなくして日番谷を見る。

「それはただ単純に生み出せる氷の量が圧倒的に少ないということ。それを補うために、少ない氷で戦うことを鍛錬したんだが・・・・・お前程度の炎を防ぐには、このぐらいで丁度良かったらしいな」

「てめぇ!」

バズビーは、圧倒的な炎を日番谷に叩きつけようとした。

「通らねぇって、言ったろ。お前の炎は真空氷壁を通過できねぇ。さぁ、真空の氷の刃で斬り裂かれろ!」

氷の刃は、バズビーを貫いたかに見えた。

まだ戦っていた周囲の隊士たちから、喜びの声が漏れる。

「お前程度の炎を防ぐにはって言ってたけな」

「な!」

「てめぇに、今卍解がなくて残念だぜ。てめぇの卍解の氷ぐらい、指だけで十分って事を見せてやれたのによぉ」

日番谷の氷壁を、バズビーはいとも簡単に溶かしていく。

日番谷は、氷をバズビーに向けて放った。

「届かねーよ」

その炎の勢いに、じりじりとこちらの髪や服まで燃やされそうだった。

「退くぞ松本!体勢を立て直す!」

「はい!」

一端退いて、なんとかしなければ。

日番谷は焦り出した。

細かく編んだ氷の壁を、けれどバズビーは溶かしていく。

「教えとくぜ。指一本ってとこだ。バーナーフィンガーワン」

バズビーは、炎の槍のようなもので、日番谷を貫いた。

「くそ・・・・」

退却しようにも、圧倒的に不利だ。

「おいおいおい、逃げんじゃねーよ、隊長だろうが!」

日番谷は、氷を生み出してバズビーに向けて放つ。

「届かねぇつってんだろ!」

日番谷は、氷の霧を生み出して、刀を構えた。

策は、ある。

「今度は氷の霧かよ。つくづく小細工の好きなヤローだ。こんなもん・・・・バーニング・ストンプ!」

がっと、大地を踏みしめる。

氷の霧は、それだけで晴れてしまった。

「なんだよ。目の前に突っ立ってんじゃねーよ。何考えてんだ、霧張ってる間に隠れて、作戦でも立ててろよ」

「そうだな、作戦を立てる暇はなかった。だが、罠なら仕掛けたぜ」

日番谷は、冷静だった。

「六位氷結陣」

バンビーを中心に、6つの方角から氷の柱がうまれる。だが、それさえもバズビーの炎で壊されて、溶かされていく。

「嘘だろ・・・・」

日番谷は、目を見開いた。

ありえない。

「嘘だろはこっちの台詞だぜ。てめぇの氷なんざ、指一本だって何回言えばわかんだよ!それとも俺を怒らせて、2本目を使わせたいのかよ!?」

日番谷は、血を吐きながらも走り出す。

氷輪丸で氷を生み出し、立ち向かっていく。

負けられない----------。

ここで負けたら、だめだ。

「バーナーフィンガー2!」

どぉぉぉおん。

破壊の炎が、瀞霊廷を震撼させる。

日番谷は、攻撃をもろに受けて、よろめいた。

「そこまでにしろ、バズビー。卍解を奪われた隊長は、奪った本人に任せる約束だったはずだ。止めは僕がさす」

ドサリと、日番谷は倒れた。

意識が遠くなっていく。

だめだ。

まだ、死ぬわけにはいかない。

目の前に、卍解を奪った敵が現れたのだ。

なんとかして卍解を取り戻さなければならない。

「ぐっ」

地面に、じわりと血が広がっていく。

「まだ、負けるわけには・・・・・」

いかないのだ。

負ける、わけには。






黒崎一護は、ただ歩いていた。

遠くから、声が聞こえる。

「早く・・・みんなの元へ行かなきゃ・・・・・・」

ドクン、ドクンと。

鼓動が、聞こえる。

強く、ならなければ。

誰よりも強く。

もう、誰一人として死なせたくない。


「俺は・・・・・必ず、強くなる」


尸魂界を。

死神たちを。

守りたい。


ただひたすら、純粋に力がほしい。

「強く・・・・・」

強く。

純粋にまでひたむきに。

強く、なりたいのだ。





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色のない世界番外編「椿」

冬になった。

花の神、椿の狂い咲きの王のために、たくさんの椿を、白哉の了承を得てつむと、花の神が眠る池に沈めた。

「今年も寒いね」

「ああ、そうだな」

死覇装の上に京楽は一番隊の隊長羽織を着て、浮竹は何も書かれていない白い羽織を着て、そこに上着を着て、マフラーを巻いて手袋をして耳当てをして。

防寒対策はばっちりだった。

京楽は、浮竹のマフラーを巻きなおす。

「寒くないかい?」

「ああ。こんだけもこもこ着ていれば、さすがにあまり寒くない。まぁ、露出している部分は少し寒いが、ホッカイロまでもってるしな」

浮竹が花の神によって、尸魂界に姿を現してもう10年以上が経過していた。

一度、浮竹の墓石はなくなってしまったが、せっかくなのだからと、京楽はまた墓石を建てて、そこに気が向いたら浮竹と、墓参りにきた。

浮竹にしてみれば、自分の墓参りというのは微妙な感覚であるが、花の神も眠っていると思うと、つい足を向けたくなる。

特に冬は、花の神が眠る雨乾堂の傍にある池に、椿を沈めた。

花の神の名は「椿の狂い咲きの王」

その名の通り、椿に恋い焦がれて狂った孤独な王。通称花の神。

地方で信仰されている、小さな存在であるが、二人にとっては奇跡をおこしてくれた恩人である。

椿をたくさん沈めると、ゆらりと水面が揺らいだ。

「愛児らよ・・・・・元気にしておるか?」

「元気だよ」

「ああ、元気だ」

「そうか。椿の花をありがとう」

ゆらりと揺れる花の神は、以前姿を現した京楽の若い頃の姿でも、小鳥の姿でもなく、薄紅色の瞳と髪をした、とても美しい姿をしていた。

神と名のつくだけあって、人外の美貌だった。

「いろんな世界軸で、愛児らを見てきたが、絆が深いな」

「こことは、違う世界ってこと?」

「そうだ。私の器となって、半神になった京楽のいる世界もある」

「僕が器だって?」

「そうだ。愛しい愛児の浮竹のために、何でも言うことを聞くというので、器にした」

「その世界では、浮竹は生きているの?」

「ああ、生きている。この世界のように、仲良く二人で」

「そっか。ならいいんだ」

京楽は、椿の花を花の神に渡して、微笑む。

「椿の花、受け取って」

浮竹は、終始無言で、京楽と花の神とのやり取りを見ていた。

「どうしたの、浮竹」

「いや・・・なんか、どことなく花の神が京楽と似ている気がして・・・・」

自分を愛してくれるところとか、とは言えなくて、浮竹は少し照れて俯いた。

「愛児らよ。愛している。どうか永久(とこしえ)を・・・私のように孤独な王になるなよ」

ちらちらと、花の神は散っていく。

桜の花びらになって散っていく花の神を見てから、浮竹は叫んだ。

「お前は一人じゃない!俺たちがいるから!孤独じゃない!俺たちも、花の神を愛している!」

それに応えるように、花びらは浮竹の周りをくるくると回って、消えていった。

「浮竹?」

気づけば、浮竹は涙を流していた。

「なんだろう・・・花の神の意識かな。すごく寂しいって感じた」

「僕がいるでしょ?花の神にも僕らがいる。孤独なんかじゃないよ」

「ああ、そうだな」

この世界で、生きられた。

京楽の隣で、これからも二人で生きていく。

「春になれば、結婚記念日になるね。そしたら、ちょっと現世に旅行にいこうか」

「大丈夫なのか?」

「まぁ、なんとかなるでしょ」

ふわりふわり。

桜の花びらが、風に流れていった。


水底で、また眠りにつきながら花の神は、そうか、もう自分は孤独ではないのかと、ゆらりと笑うのだった。











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院生時代の部屋 熱射病

夏真っ盛り。

暑いので、うちわであおいでいるけれど、なまぬるい風がくるだけでだらだらと汗が出る。

その朝も、浮竹は京楽と学院に向かった。

同じ特進クラスなので、授業も一緒に受ける。

剣技の授業になり、炎天下の中木刀で打ち合っていた。

浮竹は、相手の胴に木刀を打ち込んだところで、倒れた。

「浮竹!?」

「きゃあ、どうしたの!」

「おい、大丈夫か!」

浮竹に返事はない。

教師が何かを言う前に、京楽が浮竹を抱き上げていた。

「多分、熱射病だよ。医務室に連れていくから・・・浮竹のことは任せてください」

「え、ああ。頼む」


浮竹が気づくと、医務室のベッドの上だった。額には氷嚢が置かれており、隣で京楽が眠っていた。

それだけならよかった。

京楽はあろうことか、素っ裸で寝ていたのだ。

「この変態が!」

大分具合のよくなった浮竹が、隣ですやすやと寝ていた京楽を蹴り飛ばす。

「のあ!」

京楽は、顔から床に激突した。

「気づいたの、浮竹」

「どうでもいいから服を着ろ、服を!」

「あ、うん。あれ、服どこにやったっけ」

「この変態が!」

頭をはたくと、京楽は隣のベッドの下に置いてあった服に気づいて、いそいそと着込んだ。

「なんでベッドの下に・・・・」

「いや、他にベッド使う人がいたら、困るでしょ?」

「その前に、俺の隣でお前が全裸で寝ているのを見て困るに決まってるだろう!」

京楽の尻を蹴ると、京楽は頬を染めた。

「浮竹、もっと」

ざぁぁぁぁ。

浮竹は顔色を真っ青にした。

「ああん、冗談だから!」

「お前が言うと、冗談に聞こえない!」

浮竹は、自分の体に異常がないかチェックして、ベッドから降りた。

「水分補給してね」

麦茶のペットボトルを渡されて、水分を補給すると、意識はよりくっきりとなった。

「今何時だ?」

「3時だよ」

「お前は、俺について授業さぼっていたのか?」

「看病してたんだよ」

「寝ていたくせに」

「あはははは」

「もう、午後の授業も終わりだな。あと1時間しかない。帰るか」

背後から、京楽が抱きしめてきた。

「?」

「浮竹、ちょっとこのままで・・・・・」

ハグやキスは許しているので、浮竹は京楽の腕の中でじっとしていた。

「ええい、暑苦しい!もういいだろう!」

「えー。浮竹成分が足りない」

「離れろ」

「嫌だ」

「離れろ」

「嫌だ」

「離れろおおおお!」

背負い投げすると、京楽は見事に床に転がった。

「浮竹・・・腕をあげたね。ふふん、でも僕も受け身とれるよになってるから、ダメージはあんまりないよ」

浮竹は構えていた。

次に京楽が抱きついてきたら、鳩尾を蹴ってやろう。

そう思っていのだが、京楽は浮竹の額に手をあてて、それからちゅっとリップ音をたてて額にキスをした。

「なっ」

浮竹が真っ赤になる。

「赤くなった。かわいい」

「このばか!」

浮竹は、照れ隠しに京楽のけつを蹴りあげながら、医務室を出ていく。

「あ、待ってよ」

「知るか!」

どことなく甘い空気の中、二人は並んで寮の部屋に戻っていく。

太陽はまだじりじりと地面を焦がしている。

「大丈夫?眩暈とかしない?水分、もうちょっととったほうがいいね」

飲みかけだった麦茶のペットボトルを渡されて、中身をあおって浮竹はため息を吐いた。

「ぬるい」

最初は冷蔵庫にでも入れられていたのだろう。冷えていたそれは、夏の外気にさらされてすっかりぬるくなっていた。

それでも、水分補給したことになる。

「京楽、今日はすまない。ありがとう」

寮の部屋に戻ると、浮竹は素直に礼を言った。

すると、京楽は笑って。

「浮竹の寝顔見ながらピーーーーした」

「やっぱ一回死ね!」

京楽の股間を蹴りあげて、浮竹はやっぱりこいつは変態だと思うのだった。





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京楽と浮竹と海燕と 水遊び

海が見たい。

ふとそう思った。

尸魂界には海がない。大きいな湖より広い水たまり。でも、それが彼方まで続いているのだ。

「なぁ、京楽。海にいきたい」

「こんな炎天下で?」

みーんみーんと蝉のなく音がうるさかった。

「ああ、この炎天下でも、行きたい」

「隊長、我儘言わないでください」

海燕が窘めるが、浮竹は海に行きたいと繰り返した。

「分かったよ。山じいの許可はもらえそうにないから、秘密でね」

12番隊に連絡して、穿界門を開ける用意をしてもらい、京楽は浮竹の手をつないで、穿界門をあける。

海燕もついてきた。

ざぁんざぁんと、引き返す波に、どこまでも続く水平線に、浮竹は喜んで足を海にひたして遊びだした。

「京楽もこいよ」

「仕方ないねぇ」

「ほどほどにしてくださいよ」

念のために、海燕はタオルをもってきていた。

京楽と水のかけあいっこをしていたら、足がもつれて転倒する。

「浮竹、大丈夫!?」

「ああ。きもちいいぞ。お前もこい」

浮竹にひっぱられて、京楽もずぶ濡れになる。

直射日光は、現世では少し曇っていたので、浮竹が日光で倒れそうな心配は必要ないようだった。

ただ、水に濡れた格好のままで風邪をひいてしまうだろう。

「浮竹、風邪ひくよ」

「こんなに暑いんだ。きっと、大丈夫だ」

波に漂いながら、京楽と浮竹は海の中で戯れていた。

「隊長、そろそろ戻らないと。現世にあまり隊長クラスの者がくるのは虚を呼び集めてしまいます」

「ああ、そうだな」

浮竹は、海からあがって海燕からタオルを受け取ると、髪をふくが、ずぶ濡れですぐにタオルは使いものにならなくなってしまった。

「満足したかい?」

京楽が、浮竹の濡れた白髪に口づける。

「ああ、もう十分だ。尸魂界に戻ろう」

穿界門をくぐり、雨乾堂までもどってくると、浮竹はくしゃみをひとつした。

「ああ、もう。お湯いれてますから、風呂に入ってきてください。本当に風邪ひきますよ」

「すまない、海燕」

「僕も一緒に入るよ」

京楽は、浮竹と一緒に風呂に入り、互いの髪と体を洗って、十分に体を温めたことを確認すると風呂からあがった。

お互い、髪が長いので乾かすには時間がかかる。

浮竹が京楽の髪をふいて、京楽が浮竹の髪をふいた。

「本当なら、スイカ割りだとか、ビーチバレーとか釣りとか、いろいろしたいけど、こんな暑さだしね。いつか、大人数で海に行けるといいね」

「そうだな」

「それにしても暑いな」

ミーンミーンと、蝉のなく声がうるさい。

「スイカ冷やしてたのありますから、切りますね」

海燕が、湯上りの熱さにだらけている二人を見て、そう言った。

赤い果肉だけを切り分けられたスイカが、2つの皿にもられて出てくる。

「海燕は?食べないのか?」

「俺は昨日スイカ食いましたから。ご近所からわけてもらって、都と二人では食べきれないからここにももってきてますし」

「ああ、このスイカは買ってきたものじゃなくてもらったものなのか」

「そうですよ。味は甘いです。売ってるものと同じくらい甘いですよ」

「ありがたくいただく」

フォークでさして食べれば、ほんのりとした甘さが口に広がった。

「うん、美味い」

「浮竹、ほしいなら僕の分も食べていいよ」

「いや、大丈夫だ。海燕、おかわりあるだろ?」

「どんだけ食うつもりですか。ありますけどね、一応」

「ほら」

浮竹はふわりと微笑んだ。

京楽は、ぼーっとなる。

「どうした、京楽?」

「いや、癒しの女神がいると思って」

「脳みそわいたか?この暑さのせいで」

「好きだよ、浮竹!」

「ぎゃああああああああ!!!!」

浮竹の悲鳴に、海燕がハリセンを手にやってくる。

スパン!パンパンパン!

盛った京楽の頭をはたきまくった。

「海燕君、仮にも上司の頭をハリセンで殴るのはどうかと思うよ」

「俺直属の上司じゃないからいいんです」

海燕は、京楽が落ち着いて浮竹も落ち着いたのを見計らって、ハリセンをしまう。

「盛るなら、夜にしてくださいね。こんな暑い気温の中やってたら、熱射病で倒れますよ」

浮竹が、顔を赤くする。

海燕には、京楽とできているシーンを何度か見られたことがある。

海燕はなかったことのように接してくれることが多いが、けっこう恥ずかしいのだ。

浮竹は、少しぬるくなったスイカをかじりながら、縁側から空を見上げた。

かっと、太陽が睨んでくる。

「京楽、この前みたいにたらいに井戸水汲んでくれ。足で涼みたい」

「仕方ないねぇ」

京楽はスイカを食べ終えて、たらいに井戸水を汲んで、縁側にもってきた。

京楽は浮竹を抱きしめながら、二人で足を水につける。

太陽は、少し角度を変えたので直射日光は当たらなくなっていた。

「涼しいね。夏は暑いけど、君とこうやって過ごすのは好きだよ」

耳元で囁かれて、浮竹はくすぐったそうにしていた。

海燕は、そんな二人を見ながら、残っていた書類の仕事を片付けた。

今年の夏は、京楽がいろいろと工夫して涼ませてくれるせいか、浮竹が暑気あたりで倒れることはなかった。

「明日は、かき氷でも作ろうか。氷室を開くから」

「ああ、いいな。俺はイチゴシロップな」

「はいはい」

ミーンミーン。蝉のなく音と、チリンチリンと風鈴のなる音が、ごちゃまぜになる。

暑い夏は、まだまだ続きそうだった。






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ローション

日番谷は、執務室で仕事を終え、茶を飲んでいた。

松本はというと相変わらず仕事をしないで、同人誌の原稿を書いていたので、データを削除してやるとめっちゃ泣いた。

「仕事の時間はちゃんと仕事をしろ!」

「ひどいです隊長!いいかんじで京浮の小説かけてたのに!」

そこに浮竹が遊びにやってきた。

わかめ大使を持参して。

「日番谷隊長も食え、わかめ大使」

「ああ」

白哉が考案したわかめ大使は、見かけこそ悪かったが味はいい。

「最近、また松本がお前と京楽の同人誌の小説を書いているぞ」

「あー。放置でいい」

「それでいいのか?」

「松本副隊長はどうせデータ消しても消しても書くだろうし。もう放置でいい。別に俺と京楽ができているのは事実だし、京楽は松本副隊長の出す同人誌見るの好きだしな」

「お前も苦労するな」

「そうなんだ、聞いてくれ。京楽が最近現世のグッズに興味をもって、ローションとかいうのを使いたがるんだが」

ぶばーー。

日番谷はお茶を噴き出していた。

「薔薇の匂いがするんだ。何か、体に悪そうで・・・・・」

「浮竹、みーつけた」

「京楽!」

10番隊の執務室に入ってきた京楽の手には、ローションなるものがあった。

「これ、体に悪くないよ!さぁ、試しに使ってみようよ」

「おい、ここは10番隊の・・・・ん・・・・・」

ローションを片手に、京楽は浮竹にキスをする。

浮竹を抱きしめて、京楽はローションを邪魔だとばかりに放り投げた。

ごん、べしゃっ。

それは日番谷の頭に当たって、中身が日番谷の頭にかかる。

「「あ」」

固まる二人。

「やーん、京浮の生本番が見れると思ったのにー」

松本は、一人もだえていた。

「貴様らは・・・・・蒼天に座せ、氷輪丸ーーーー!」

「あ、ローションが」

「今は逃げるが先だ!」

京楽を連れて、瞬歩で空に逃げる。

氷の龍は、そこまで追いかけてきた。

京楽は浮竹を抱きあげて、瞬歩でかわして日番谷隊長に謝る。

「ごめんねぇ、日番谷隊長。ローションっていうだけど、それ体に害はないから。じゃあね!」

そういって、京楽は浮竹を連れて去って行ってしまった。

「おい、京楽!」

ローションは少し頭にかかっただけなのだが、ぬるぬるした。

確かに、薔薇の香りがする。あと、甘い香りが。

「日番谷隊長、ローションでぬるぬる。京楽隊長と浮竹隊長はローションを使おうとしている。うふふふふ」

松本は、ふっとばされたのに、メモをとっていた。

「松本、全くお前はふっとばされてもこりないのか」

「隊長、こりるわけないじゃないですか」

「はぁ・・・・・」

ローションで濡れた髪を、水で洗う。

ぬるぬるしていたが、害はないようだ。

あれを、その・・・・本番に使うのだろう。そう想像すると、なんともいえない気分になる。

天井にあいた穴を見て、また京楽の金で修理してもらおうと、日番谷は茶をすするのであった。





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運命の糸

「ルキア・・・・」

一護は、ルキアを抱きしめる。

大戦が終わり、10年が経過した。

ルキアは恋次と結婚して、苺花という娘をもうけて、一護は織姫と結婚して、一勇という息子をもうけていた。

何かが、すれ違ったのだ。

お互い、好きなままで別の人と結婚して子供を授かった。

ルキアは恋次のことを愛していたし、一護も織姫のことを愛していた。

でも。

魂のレベルで刻まれた、好きという感情。

それは、結婚しても子供ができても、変わらなかった。


「なぁ、ルキア、こっち向いてくれ」

「たわけ・・・・このようなシーン、誰かに見られたら・・・・」

「今は俺たちしかいない。なぁ、俺はまだルキアのことが好きなんだ。今更だよな」

ルキアの細く小さな体をきつく抱きしめる。

ふわりと、甘いシャンプーの匂いがした。

「たわけ。今更だ・・・・でも、魂のレベルで私たちは繋がっている。私も貴様のことが、未だに好きなのだ」

唇が、重なった。

いつの日か、告げようと思っていた想いは、お互い届くことなく、大戦から10年の時を要した。

「ん・・・・・」

「ルキア、好きだ」

「たわけ。私たちは、お互い伴侶がいて子供がいる」

「分かってる。それでも、好きなんだ」

一護は、短くなったオレンジの髪を風になびかせて、ルキアを抱きしめていた。

ルキアの長くなった黒絹のような髪も、風でなびく。

窓は、開け放たれたままだった。

一護の部屋。

いつもあの窓から出入りしていた。

あのベッドで、いつも抱きしめ合って眠った。

もう、遠い過去のこと。

お互いを好きと感じながらも、想いを告げられなくて、今に至る。

好きだというのが、遅すぎた。

でも、ルキアにも一護にも、まだまだ時間はある。

「不倫になるな」

「そうだな」

「ルキアは、恋次がいるのに俺と一緒にいてもいいのか?」

「貴様こそ、織姫がいながら、私と一緒にいてもいいのか?」

二人で、昔のようにベッドに横になって、抱きしめあった。

ルキアを抱きしめるかんじで、ベッドでゴロゴロする。

ルキアと肉体関係をもちたい気分はなかった。

ただ、想いが伝わればいい。

そう思った。

ルキアもまた、一護と同じ思いだった。


「「好きだ」」


さわさわと、庭の木が風で揺れる。

互いを抱きしめ合いながら、もう一度唇を重ねた。

触れるだけの、優しいものを。

「俺、死んだら死神になる。んで、ルキアを恋次から奪う」

「たわけ。何十年かかると思っているのだ。それに、私は恋次を愛している。そう簡単に、別れられぬよ」

「それでも、いつか・・・・・」

いつか。

ルキアを手に入れたい。

一護はそう思った。

今はただ、時折会うだけでいい。

携帯で、連絡を時折とるだけでいい。

魂のレベルで刻み込まれた運命の糸は、決して切れない。

たとえ、どんなに時間が経っても。


「「愛してる」」

運命の糸は、決して消えない。

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