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僕は君の瞳の色の名を知らない6

花見に来ていた。学院の桜の木の下で、二人きりで花見をしあいながら酒を飲んでいた。

山じいに、この前呼び出された。

「最近、やけに親密になっているようだが、まさか付き合ったり、体の関係があったりするのではないじゃろうな?」

「あ、当たってるよ山じい」

「へ?」

「僕と浮竹、付き合ってるの。体の関係にいくまで少し時間がかかったけど、肉体関係までもってるよ。浮竹はかわいいから、僕はいろいろと心配なんだ」

「しゅ、春水、十四郎が言っていることは本当か!?」

「すみません先生。京楽を愛しています」

「はうあ」

そう言って、山じいはぶっ倒れた。

「あの時の山じいの顔ったら、面白かったなぁ」

「先生に失礼だぞ、京楽」

「まぁまぁ、飲みなよ」

ちらちらと桜の花が散る。

飲みに行かないかと京楽に誘われて、飲み屋にいくのも金がかかるし、花街に連れていかれたくもないので、休日の学院の桜の木の下で花見をしながら飲みあおうということに決まって。

浮竹は、酔いつぶれないように、甘い果実酒を飲んでいた。

京楽は高いであろうアルコール度の高い日本酒を豪快に飲んでいた。

「君も飲むかい」

「少しだけなら」

杯に、京楽の日本酒が注がれる。

それを飲むと、美味いが体がかっと熱くなった。

「これまた強いな・・・・」

「んーそうかな。僕は酔うこともあまりないから、まぁ美味しいから飲んでるんだけど」

そのまま飲み会を続けて、浮竹がギブアップして、花見は終了となった。

この桜の木の下で、思いを告げると永遠に成就するとかなんとかのいわれがある桜の木だった。

「君が好きだよ、浮竹」

京楽は、空になった酒瓶を片付けて、浮竹を抱き上げて瞬歩で寮の部屋まで戻った。

「ん・・・・京楽?」

「眠い?」

「いや・・・・俺も、好きだ」

噛みつくよなキスをされて、京楽は浮竹に押し倒された。

「え、何これ」

浮竹は、ぽいぽいと服を脱いでいく。京楽の服もぽいぽいとむしりとっていった。

「浮竹、酔ってる?」

「少しだけ」

顔を赤くした浮竹は、見た目より大分酔っているらしい。まず、自分からこういうことをしてくることがない。

「あ・・・・」

体のラインをなぞるように京楽の手が動く。

「んんっ・・・・」

胸の先端を口に含まれて、それからドサリとベッドに押し倒された。

「浮竹の、もうこんなになってる」

「ばか、言うな・・・・」

「触るよ?」

「んあっ」

キスをしながら、京楽の手が浮竹の花茎にかかり、じゅぷじゅぷと音を立てて扱われる。

「あ、お前も一緒に・・・・」

「うん」

京楽も、自分の猛ったものを浮竹に添えて、お互いの手でこすりあった。

「んあああっ」

「きもち、いいかい?」

こくこくと、浮竹が頷く。

二人で扱きあいながら、それぞれ熱を放った。

「はぁはぁ」

浮竹は、息も絶え絶えで、とてもじゃないが交われそうになかった。

「浮竹、今日はいれないけど、かわりに股を閉じおいて?」

「何をするんだ?」

「素股」

「すまた?」

「そう。後ろからいくよ」

「え」

突きいれられる衝撃を覚悟していた浮竹は、潤滑油にまみれた京楽のものが、閉じた太ももの間をぬるぬるといききするその感覚に、戸惑っていた。

「これ、きもちいいのか?」

「うん。きもちいよ、すごく。浮竹に負担はあんまりかけないし、これならいいでしょ?」

「なんか変な気分だ・・・」

「浮竹もいこうよ」

素股をしながら、浮竹の花茎を手で追い詰める。

「んああ・・・ああ・・・・」

「ふう・・・」

「あ、いってしまう」

「一緒にいこう」

浮竹のものの先端に爪をたてて、浮竹が弾けるのと、京楽が浮竹の太ももに精液を弾けさせるのはほぼ同時だった。

「ぬるぬるする・・・シャワー、浴びてくる」

「あ、僕もシャワー浴びる。一緒に浴びよう」

「変なことは、しないだろうな?」

「もうすっきりしたから、しないよ」

シャワーを浴びた二人は、互いに軽い疲労感を覚えた。

浮竹は京楽に髪を乾かさせながら、こっくりこっくりと船をこいでいた。

「浮竹、眠いなら寝ていいよ。夕飯の時間には起こしてあげるから」

「すまない・・・・少し、横になる」


閉じられた浮竹の瞳。

僕は君の瞳の色の名を知らない。

ただ、映る桜や青空の色が綺麗だったのを、覚えた。





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僕は君の瞳の色の名を知らない5

3回生の誕生日の日に、浮竹は京楽に呼び出されて、桜の木の下で告白された。

その桜の木の下で、告白すると思いが永遠に成就するとか何とか言われてる場所だった。

「君が好きなんだ。一緒に、生きてくれないか」

「俺もお前が好きだって、知っているだろう?今更告白なんて・・・・」

「だって、ちゃんと告白してなかったじゃないの。ちゃんと付き合おう。もちろん、今までもお付き合いになってたけど、今回はプロポーズも兼ねているから」

「恥ずかしいやつだな・・・。いいぞ。俺の一生を、お前にやるよ」

指輪は目立つだろうからと、翡翠のペンダントを渡された。

いつもなら院制服の下に隠れて見えないからだ。

その日の夜は、長い一日になりそうだった。


--------------------------------------


年末の休みになっていた。

「本当にいいのかい?」

「男に二言はない」

浮竹は、京楽と肌を重ね合わせることを承諾した。

「途中で嫌がっても、止めてあげられないよ」

「覚悟の上だ」

その日のために、知識を身に着けて腹の中を綺麗にして、自分がきっと抱かれる側になるのだろうと覚悟を決めていた。

「ん・・・・」

口づけは優しく、舌を絡ませあうと夢中になった。

「んあ・・・・・」

ぴちゃぴちゃと唾液の音がする。うまく飲み込めきれなかった唾液が、顎を滴った。

「好きだよ、十四郎」

院生の服を脱がされていく。

下着姿にされると、恥ずかしさが募って、明かりを消してくれと頼み込んだ。

「お前も、脱げ」

浮竹は、京楽の服に手をかける。京楽はばさりと院生の服を脱いで、ついでに下着もさっさと脱いでしまった。

鎖骨を舌がなぞっていく。

胸からへそにかけて手を這わされて、体が硬くなった。

「緊張してるね」

「当たり前だ」

胸の先端をかりかりとひっかかれると、なんともいえない感触に、声を出してしまった。

「あっ・・・」

「ここ、感じる?」

くにくにと先端を指でこねられて、浮竹は真っ赤になった。

「なんか、変だ、俺・・・・」

「変じゃないよ。かわいい」

胸を先端を舐めあげられて、そのまま下着を脱がされて、花茎に手をかけられた。

「んあ!」

あまりの衝撃に、体がのけ反る。

そのまま、花茎を手でしごいて、先端を口で舐めあげられた。

「あ!」

口で刺激を受けて、鈴口を舌で舐めあげられて、じゅぷじゅぷと音を立てて扱われて、そのまま達してしまった。

「・・・・・・っ!」

京楽の口の中に射精してしまって、浮竹はティッシュを手にとってよこすが、京楽は飲み干してしまった。

「京楽、お前・・・・」

「濃いね。あんまり、自分で抜いたりしてないかんじだね」

「うるさい!」

顔を手で覆っていると、京楽が手をどけてきた。

「ちゃんと見せて。君の表情が見たい。声も我慢しないでね」

「んっ・・・・・・」

潤滑油を手にとって、人肌まで温めると、浮竹の受け入れるための本来はそんなことに使う場所ではない器官に、指を入れられた。潤滑油が足される。

ぬるっとして、指が一本入ってきた。

「息吸ってはいて、楽にしてて」

「無理いうな・・・・」

なんとか3本目まで入るようになって、ばらばらと指を動かされて、その一本がある場所を刺激して、浮竹は素直に言葉にした。

「あ、そこ気持ちいい・・・・」

「ここかい?」

こりこりと刺激を受けて、浮竹がびくんとはねた。

「ああっ」

そこばかり指でいじめられるうちに、萎えていた自身がまたゆっくりとたちあがった。

「僕ももう限界だ・・・・いれていいかい?」

こくりと、言葉もなく浮竹は頷いた。

「あ!」

指とは比較にならない質量をもつ京楽のものが、中に入ってくる。

ずずっと音を立てて、一気に奥まで侵入してきた。

「ひああああ!」

ちかちかと視界が明滅する。

あまりの刺激に、一瞬意識を失った。

「大丈夫かい?」

「・・・・・あ。しばらく、動くな」

「うん」

しばらく動かずにいたが、京楽がもちこたえられなくて耳元で囁いてきた。

「君の中凄く熱くて締め付けもすごい。一度中で出していいかい?」

この時代、コンドームなんてなかったので、生で出すしかなかった。

「ああ」

浮竹の許可をもらって、少し浮竹を揺さぶってから、京楽は熱を浮竹の胎の中に出していた。

「んあ・・・・」

深い口づけを交わしあいながら、混じりあう。

京楽が動き始めると、受け入れているその場所はぐちゅぐちゅと卑猥な音をたてた。

「あ・・・・ああ・・・んん」

「十四郎・・・・好きだよ」

「俺も好きだ・・・・春水」

前立腺を突き上げられて、浮竹の体が弓なりに反りかえる。

「ああ!」

「気持ちいい?」

「あ、あ・・・・気持ち・・いい・・・あ、もっと!もっと奥までこい!」

京楽のものを飲み込んで、胎の奥が疼いた。

ぱちゅんぱちゅんと音を立てて、挿入されては抜かれる。

前立腺のある場所を突き上げてすりあげてやれば、浮竹は中でいくということを覚えた。

「あ!」

先走りの蜜をたらたらこぼしていた浮竹の花茎から、白い液体が飛び散る。

「あ、またいく・・・・ああ!」

「一緒にいこう」

「ん・・・・・」

京楽が胎の奥に出したのとほぼ同時に、浮竹もまた精を放っていた。

がくがくと揺さぶれて、ふと意識が浮上する。

一度くったりとなってしまったが、京楽のものはまだ硬かった。

「ごめん・・・もう少し、付き合って」

「んん・・・加減しろ、ばか」

揺さぶられて、突き上げられて京楽が最後の熱を放ったのを確認する頃には、浮竹は意識を飛ばしていた。

起きると、後処理をされたのか、シーツは新しいものに変えられており、体のどこにもべたべたする場所はなかった。京楽が浮竹の中にだしたものもかき出されたようで。

新しい院生の服を着ていて、浮竹は起きようとした。

「いてて・・・・・」

腰に鈍痛がした。

「ああ、起きたの。寝てて。回道、一応かけておくから」

セックスに回道なんて、使い方が間違っているだろうが、まぁ元から浮竹も京楽も回道は基本ができる程度だ。

京楽も着替えていて、シャワーを浴びたのか髪が湿っていた。

「俺も、シャワー浴びたい」

「いいよ。今は、一人じゃ無理だろうから、僕が洗ってあげる」

二人してシャワーを浴びた。やましいことは一切ぬきで、京楽は浮竹の体と髪を洗ってあげた。

髪を乾かされながら、浮竹はこっくりこっくりと眠りかけていた。

そのまま寝てしまい、京楽が浮竹を抱き上げて、ベッドに寝かせて毛布と布団をかけてあげた。

冬場なので、髪はしっかりと乾かしておいた。風邪でもひかれたら大変だ。


彼の瞳の色は、緑。

でも、僕はまだ君の瞳の色の名を知らない。

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僕は君の瞳の色の名を知らない4

3回生になっていた。

京楽は、浮竹を誘い飲みにきていた。

普通の飲み屋とは違う、花街の京楽常連のお店にきていた。

「こちらは、京楽様の想い人でありんすか?」

「うん。浮竹っていうんだ」

「ばか、京楽!」

「まぁまぁ。どうせただ飲んで食べるだけだし。飲み屋で飲むより、ここのほうが静かだし、飲みつぶれても泊まることもできるし」

「そんなに飲むつもりはない」

豪華な食事になれないのか、浮竹はちびちびと酒を飲みながら、食事をしていた。

「京楽、この店は高いんだろう?」

「浮竹は気にすることはないよ。僕が誘ったんだし、いつものように僕が支払うから。それより、ちょっと向こうで着替えてきて」

「え?」

浮竹は、遊女に連れられて、奥の間へと消えていった。

肩より長くなった白い髪を梳られて、横髪だけを三つ編みにして結い上げられて、翡翠のかんざしで飾られる。

いつもの院生の服ではない、上等な着物を着せられた。

「京楽、なんだこれは」

戻ってき浮竹は、少し怒っていた。

「君への誕生日プレゼント。少し早いけど・・・こうでもしないと、君はこんなもの受け取ってくれそうにないからね」

「だからって、こんな高級品・・・・・」

「いらないっていうなら、捨てるから」

「もったいない!」

「じゃあ、素直にもらっておいて」

「うー。京楽め・・・・」

浮竹はどさりと座って、女性とも男性ともつかない格好で、また酒を飲みだした。

今度は、ちびちびとではなく、豪快に飲んでいく。

「そんな勢いで飲むと、酔いつぶれるよ」

「どうせ泊まるんだろう。どうでもいい」

「君ってけっこう男らしいよね」

「言ってろ」

そのまま、結局浮竹は酔いつぶれてしまった。

浮竹を抱き上げて、布団に寝かすと、京楽も眠りについた。

触れるだけのキスをして。


----------------------------


「ん・・・頭痛い・・ここは?」

「ああ、起きたかい。二日酔いかな。今水もってくるから」

豪華な布団と部屋で寝かされていたことに気づき、浮竹が京楽を見る。

「ああ・・・・結局、泊まったのか」

水を渡されて、浮竹はそれをこくこくと飲んでいった。

「今日は休日だし、ゆっくりしよう」

「とりあえず、寮の部屋に戻りたい」

「まぁ、こんな場所じゃ落ち着かないだろうし。瞬歩使うから」

浮竹を抱き上げて、京楽は瞬歩で寮の自室に戻った。

「ふう・・・・」

浮竹は痛み止めを飲んで、頭痛をやり過ごしながら、院生の服に着替えた。ただ、髪は結われてかんざしが飾られたままにしておいた。

「京楽は、いつもあんな店にいくのか」

「いや、最近はあまりいってないよ。行っても飲むだけかな。遊女はもう抱いてない」

「その・・・・俺のせいか?」

「え?」

「俺のせいで、女が抱けなくなったとか・・・そういうことか?」

「まぁ、そうだね。君の身代わりに抱いてたから。でも、それも飽きた。本物が目の前にいるのに、妄想で女を抱いてもむなしいだけだしね」

「俺は・・・・その、お前のことが好きだけど、そういう風にはまだ・・・・」

「うん。ゆっくりでいいんだ。僕はいつまで待つから。君が好きだよ。愛してる」

「俺も好きだ、京楽」

唇が重なる。

京楽は首筋にキスマークを残しただけで、それ以上は何もしてこなかった。

浮竹と両想いになれたのだ。

急ぐ必要などない。

京楽は、学院に入ってよかったと思うようになっていた。

浮竹との出会いは、その後山じいから世話をしてやってくれと頼まれていたので、同じ寮の部屋になることが続いていた。

浮竹は翡翠のかんざしをとって、大事そうにたんすにしまうと、そのまま寝てしまった。

結局、夜更けまで飲んでいたので、京楽も眠気がやってきて、浮竹の眠るベッドで浮竹を胸に抱きながら、一緒に眠った。


「おい、起きろ」

「んー」

「んーじゃない。もう5時だぞ!」

「え?夕方の5時?」

「ああ、そうだ。食堂にいくぞ」

風呂に入ったのか、石鹸とシャンプーの甘い匂いをさせた浮竹に起こされて、京楽は飛び起きた。

仮眠をするつもりが、しっかり寝てしまっていたようだ。

それは浮竹も同じことで、痛み止めには鎮痛剤の成分の他にも眠りやすくなるものが含まれているせいで、5時前まで寝過ごしてしまったらしい。

寮に帰ってきたときは、昼前だったというのに。

二人で歩きながら、食堂へ向かう。

「もう、花街になんて行かないからな」

「分かったよ。僕が悪かった。でも、あの着物姿と翡翠のかんざしをした君を見れて、僕は嬉しかったけどね」

「・・・・・」

浮竹は真っ赤になっていた。

「ねぇ、手をつないでもいいかい?」

「今だけだぞ」

まだ夕食をとるには早い時間なので、人通りはなく、手をつないだ。

その暖かさに、ほわりと心が温かくなる。

「僕は君の瞳の色の名を、まだ知らないんだ・・・・・・」

君の瞳の色。

それがなんであるのかを、僕はまだ知らない。

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僕は君の瞳の色の名を知らない3

浮竹が熱を出して寝込んだ。

京楽は授業が終わると、浮竹の看病をした。

タオルを氷水にひたし、額に乗せる。

「京楽・・・・?」

「ああ、起きたの。何か食べれそうかい?」

「食欲がない・・・・」

「でも、何か食べなくちゃ、薬飲めないから。りんごむいてあげるから、それでも食べてよ」

「いつもすまない、京楽。寝込む度に看病してもらって」

「いいんだよ。僕が好きでやってることだし。それに山じいからも、浮竹のことを頼むって言われてるしね」

「先生が、そんなことを・・・・」

京楽は、冷蔵庫で冷やしておいたリンゴを、ウサギのカットにむいて、浮竹に皿を差し出した。

「うまいな・・・・・」

ただのりんごなのに、いつもよりおいしいと感じた。

りんごを食べ終わり、解熱剤とその他もろもろの薬を飲んで、浮竹はまた横になった。

「京楽・・・手を、繋いでくれないか」

浮竹は、京楽が傍にいると落ち着くのでそう言っていた。

「いいよ。君が眠るまで、傍にいるから」

ちゅっと、リップ音をたてて、浮竹に口づける。

お互いを好きだと思っているが、正式な告白はまだしていなかった。

「もう一度、キスしてくれ。お前とのキスは好きだ」

「仕方ないの子だね」

口づけると、浮竹はおずおずと唇を開いた。

ぬるりとした感触と共に、京楽の舌が入ってくる。

「んん・・・・・」

逃げる浮竹の舌を吸い上げて、甘く噛み、絡めあって、唇を離した。

つっと、銀の糸が垂れる。

キスだけじゃものたりない。でも、浮竹は大事にしたいので、まだこれ以上は手を出せないと思った。

京楽は、いつの間にか眠りについた浮竹の手を握りながら、椅子に腰かけて、いつの間にか京楽自身も眠ってしまっていた。


「京楽、京楽」

「ん・・・・どうしたんだい、浮竹」

「どうしたじゃないだろう。看病したまま寝るなんて、体に悪い」

「ああ・・・・僕、眠ってしまったのか。それより、熱はどうだい?」

「お蔭さまで、すっかり下がった」

浮竹は、半身を起き上がらせて、ベッドの上で繋がれたままの手を放した。

「ずっと、手を握っていてくれたんだな。ありがとう」

「ごめん」

「なんで謝るんだ?」

「いや、なんとなく・・・・・」

「変な奴だな。風呂に入ってくる」

「うん」

2日ほど、熱を出して風呂に入れていなかったので、一応京楽が浮竹の体をふいていたが、それではものたりないのか浮竹は風呂に入るといって、風呂場に消えていった。

「はぁ・・・・重症だな」

浮竹のことが好きすぎる。

ガタンと、風呂場で大きな音がして、京楽は様子を見に行った。

浮竹は、体にまだ力が入らないのか、倒れかけていた。

「浮竹!ああもう、こんな体で風呂なんて」

「でも、風呂に入りたいんだ」

「分かったよ。一緒に入ろう。洗ってあげるし、倒れないように様子を見てあげるから」

「うん」

お互い裸になって、腰にバスタオルを巻いて風呂に入った。

湯はぬるめ。

浮竹の長い髪を洗い、体は浮竹が自分で洗い、背中だけ京楽が洗ってやった。

浮竹の裸体をきちんと見るのは初めてだが、なるべく視界に入れないように心がけた。

京楽はたったらどうしようと思いながらも、ごしごしと自分の体を洗って、髪は浮竹が洗ってくれた。

二人で入ってもまだ余裕のある浴槽に浸かる。

温泉の素をいれているせいで、湯は緑色だった。

「ゆず風呂かい」

「本物のゆずを入れると面倒だしな」

湯につかって上気した素肌が色っぽい。

だめだと分かっているのに、たってしまった。

「お前・・・・」

「ごめん。ちょっと向こうむいてて。抜くから」

「・・・・・俺のせいだな。手伝う」

「え」

「いいから!」

浮竹は、京楽のものに手をそえて、しごいた。

京楽のものは、あっけなく精を放ってしまった。

「早いな」

「君がしてくれるなんて思ってもみなかったから。僕も君の、してあげる」

「俺はいい!」

「いいから・・・・ね?」

浮竹のものに手をそえてしごくと、浮竹のものがだんだん硬くなってきた。

「んん・・・・ふあ・・・・やぁっ」

浮竹の声に、京楽は我慢だ我慢と、理性をつなぎとめた。

「んあっ」

キスをしてやった。

舌をからませあいながら、浮竹のものの先端に爪をたてると、びくんと体がはねて、浮竹は京楽の手の中に精液を出していた。

ざっと湯でお互い体を流しあって、風呂からでた。

大人の階段を、一歩のぼってしまい、二人とも顔が赤いまま、そそくさと服をきてベッドに横になる。

「京楽・・・・・今日のことは、忘れろ」

「無理っぽい・・・・」

「はぁ・・・俺のせいかなぁ」

「いや、僕のせいだから。僕が浮竹の欲情して、それを浮竹が慰めてくれて・・・僕だけじゃああれだから、浮竹のもしちゃったけど・・・・・」

「もう、今日は寝る!おやすみ!」

「うん・・・おやすみ」


僕は君の瞳の色の名を知らないけれど、この心に灯る色を知っている。

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14話補完小説

「私は、この者を後継者にする」

石田雨竜は、こつこつと壇上を歩いた。

ユーハバッハは、石田雨竜を後継者に選んだ。

滅却師たちは不満を露わにした。

滅却師たちの中で亀裂が走り、仲間割れを始める輩もいた。

「何故、俺を後継者に選んだのですか」

「雨竜、お前は今なぜ生きている?」

「・・・・・・」

「お前が生き残ったからだ。滅却師の中でアウスヴェーレンの中、唯一生き残ったのがお前だからだ。お前は最後の生き残りだ。お前には、私の力を超える何かがある。それが、お前を後継者にした理由だ」

雨竜は、表情を表に出さなかった。

「理解しろ雨竜。疑問など必要ない。私と共にくるのだ」

雨竜は、渦まく心を平成に保つために深呼吸をする。

「・・・・・・はい、畏まりました、陛下・・・・俺は・・・・死神とは、決別します」


一方、一護は。

「一護お前には死神をこえてもらう」

そう言われて、一護の修業が始まった。



また一方、麒麟殿で、白哉は目覚めた。

「どうだ、逆上せちゃいねぇか?」

「心配は無用だ。逆上せるには、私の力は未熟に過ぎることを知っている。永らえたからには、逆上せるには足る力を身につけねばなるまい」

白哉は、服をきた。

「私は、まだ未熟だ・・・・・・」

白哉が目覚めたという知らせを受けて、ルキアはとても喜んだ。

無論、一緒に修行していた恋次もだ。

「兄様が目覚められた!」

「おう!俺たちも、強くならねーとな」

「そろそろ、奥の間で鷲と修行せんか?」

ふいにかけられた言葉に、ルキアも恋次も、声を揃えた。

「「はい!!」」


-------------------------

雨竜は、考え込んでいた。

シュテルンリッター、Bのユーグラハム・ハッシュヴァルトと、すれ違った。

石田雨竜は、シュリフト Aの文字を与えられた。

それが意味するのは、ユーハバッハとほぼ対等という意味。

時期皇帝と言われていたユーグラハムの地位は、不動のものではなく危ういものになっていた。

それでも、ユーハバッハの選んだ言葉に文句は出せない。

ただ、黙して従うのみ。

「俺は・・・・死神と、決別を・・・・」

雨竜は、心の中で黒崎と名を呼びながらも、死神であり友である戦友の姿を思い浮かべた。

「たとえ、たどる道が違えど・・・・・」

ユーハバッハは、僕がこの手で。

一護もまた、ユーハバッハをその手で倒すために、行動を開始している。


「願わくば、世界に平穏あれ・・・・」

雨竜は、これから死にゆくであろう尸魂界の死神たちのために、黙祷をささげた。

すぐに、尸魂界への出撃命令が下った。

「封じられし滅却師の王は、900年を経て鼓動を取り戻し、90年を経て理知を取り戻し、9年を経て力を取り戻し・・・・・」

「・・・・・・・」

雨竜は、黙してそれを聞いていた。隣には、ハッシュバルトの姿があった。

「9日間をもって、世界を取り戻す。世界の終わる、9日間だ」

ああ。

黒崎一護。

どうか、尸魂界を守ってくれ。

儚い希望を胸に、石田雨竜は、ただユーハバッハに従う。

死神と袂を分かつ。

そんなこと、例え口で誓っても、叶えることはできないのだ。

黒崎一護がいる限り。

きっと、尸魂界は滅びない。今は敵対となっていても、仲間たちがきっと。

「きっと・・・・大丈夫」

誰にも聞こえない声で、雨竜はそういうと、ユーハバッハの後を追っていった。










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現世グッズ

「暑い・・・・・・・」

「暑いですね、隊長」

「扇風機だけでは、どうにもならぬな」

「例のあの館、冷房つけたそうですね」

「ああ。この前使った時、あまりに暑くてお互い何もできなかったのでな」

「今日はここ一番の猛暑になるそうですから、明日は休日ですし、あの館に行きませんか」

「ふむ・・・・」

白哉は思案する。

あの館とは、いつも恋次と白哉が逢瀬で使う白哉の離れの館のことだった。

恋次と週に2回以上は肌を重ね合わせている。この前したのは先週のはじめか。1週間以上していないと今更ながらに気づき、白哉も自分の性欲処理をしたいと思って、許可を与えた。

「いいだろう」

「やった!」

恋次は素直に喜んだ。

お互い、たまっている。

仕事が終わり、二人で館を訪れた。

すでに冷房が入れられており、涼しげな空調に、恋次が布団に寝転がってごろごろしだす。

「先に、風呂に入ってくる」

「あ、はい」

白哉が風呂に入っている間に、恋次はいつも使っている潤滑油ではない、現世で入手したローションなるものを取り出した。潤滑油よりもぬるぬるで、体に害がないのだ。潤滑油も体に害はないが、少しべとべとするのが、使用後の問題だった。

それから、いちいち白哉の体からかき出さなくていいように、コンドームも用意した。

本当は生が一番いいのだが、いつも白哉が辛そうにしているので、コンドームを使うことにしたのだ。

「恋次、風呂にはいれ」

「はい」

恋次は風呂で汗を流した。体も髪も洗って、風呂からあがると浴衣を着た。

「恋次、これはなんだ?」

ローションを手にとって珍し気にしている白哉に、言う。

「潤滑油の代わりです。ローションっていって、現世でよく使われているそうで。今回はお試しってことで」

「ふむ・・・・・」

白哉に近づいて、まずは抱きしめた。

冷房がよく効いていて、暑苦しくならずにすんで、これなら最後までできそうだと思った。

食事は、すでに外で済ませてきていた。

「ん・・・・・」

口づけられて、白哉がやや高い声をあげた。

最初は触れるだけのキスを。

次に、舌を絡み合わせる。おずおずと開かれた白哉の咥内に侵入して、歯茎や上あご、舌を柔らかく吸ったり噛んだりした。

「ふあっ・・・・」

どちらのものかもわからぬ唾液が、糸を引く。

「あ、あ・・・・」

「隊長・・・・・」

浴衣から手を侵入させて、体全体を手でなぞり、鎖骨から胸にかけてキスマークを残す。

はらりと浴衣を脱がせると、裸になった白哉の花茎はゆっくりと顔をもたげていた。

それに触らずに胸の先端をかりかりとひっかき、押しつぶしたりつまんだりした。

「あ・・・・恋次っ」

「胸、気持ちいい?」

「聞くな・・・・」

「こっちも、触ってほしい?」

「あ・・・・・やぁっ」

花茎に手をかけられて、手でしごかれた。それから恋次は白哉のものを口に含んで、荒淫した。

口の中で、ゆっくりとしみでる先走りの蜜を吸い取って、ちろちろと鈴口を舐めあげて、全体の茎を手でこすると、白哉はびくんと体をはねさせた。

「あ・・・・」

恋次は、口の中に出された液体を飲み干した。

「愚か者・・・・・」

「隊長のものですから。後ろ、触りますよ」

「んっ・・・」

蕾は、固く閉ざされている。

ローションを手にとって、人肌の温度にまで温めて、指と一緒に蕾に塗りこんでいく。ローションは、花の香りがした。

何度が塗り込んで、指を増やしていく。

「あ・・・・・あ・・・・・」

前立腺に触れると、白哉は身を捩った。

「ここですよね?隊長の気持ちいいところ」

もう何度も抱いてきたので、白哉の中のどこがいい場所なのかも把握していた。

「んあっ」

ぐちゅぐちゅと濡れた水音がする。3本指を埋め込んで、慎重に解していく。

コンドームを口でやぶり、自分の猛ったものにつけて、白哉の足を抱えた。

「いきますよ」

「うあ!」

白哉はぎゅっと目をつぶった。

衝撃で、いつも少し痛みを感じるからだ。だが、今回は痛みなど全くなく、すんなりと恋次のものを受け入れた。

「あ・・・痛みが、全くない・・・・?」

「え、ほんとですか!このローション、けっこういいかも」

「や・・・なんかぬるぬるする・・・」

「いつも使ってる潤滑油よりぬるぬるしてますから」

恋次は、動き出した。

「あ、あ・・・・・・」

揺さぶられて、白哉が生理的な涙を零す。

それを吸い取って、恋次は熱い己を白哉に叩きつけた。

前立腺をすりあげるように動くと、白哉もきもちがいいのか、声が高くなる。

「んあ・・・・ああ・・・・」

「ねぇ、隊長。俺ので、いってください」

「ん・・・・」

中をすりあげて、最奥まで侵入してぐちゃぐちゃと音をたてて攻めると、白哉は体を弓なりにしならせた。

「あ、いく・・・・・!」

「俺もいきます。一緒にいきましょう」

白哉は恋次のと自分の腹へ、恋次はコンドームの中に精液を放った。

「ア・・・・腹が、温かくならない?いったのではないのか」

「コンドームなる、いわゆる厄介袋の類をつけているんで、隊長の奥にはだしてません。かき出されるの、いつもつらいでしょうから」

生で出して、かき出さないと、体にくるので、いつも大変だが白哉の中に出したものはかき出していた。

「コンドームか・・・便利だな」

「そうでしょう。現世のものですが、こっちでも最近広まってるみたいで。通販もあるらしいから、今度から通販で買うことにします」

「ん・・・・もういいのか?」

「え、あ、まだしてもいいんすか?」

「まだ硬い」

「はい、もっかいさせてください」

1回で終わること自体が少ないのだ。

慣れている白哉は、恋次に身を委ねた。

「ああっ」

前立腺をいきなりすりあげられて、白哉は黒髪を布団の上で乱した。

「あ・・・・ひあ・・・んん・・・」

互いに向き合って、抱き合う。

涙を零しそうな白哉の大きな黒い瞳とぶつかりあう。

「あ・・・・ああ・・・」

貫かれて、揺さぶられて、白哉もまた恋次と共に、高みへと昇りつめて、果ててしまった。

「ん・・・・」

ずるりと引き抜かれると、ローションと白哉の体液だけが溢れてくる。

コンドームの中は洪水になっていた。

「あー。便利だけど、やっぱ生でやったほうが気持ちいいかも・・・・・」

「ちゃんと処理するなら、生でもよい」

「え、まじっすか」

「今まで散々生でしてきただろう」

「それもそうですね」

今度からは、ローションはありにして、コンドームはなしでOKかと、恋次は記憶した。

「風呂に入りたい・・・手伝え」

行為の後は、白哉は身を清めたがる。

二人で風呂に入り、後始末をして体液でぐちゃぐちゃになったシーツを交換した布団で、それぞれ眠りについた。

冷房は切ってある。

寝ている時までつけていると、ない場所にいた時冷房がないと・・・・という自体になりかねない。

今年も夏は暑そうだ。

今は7月の終わり。

太陽が昇りきって、暑いと思う時間まで、二人は寝過ごすのであった。



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七夕(恋白)

「そういえば、今日は七夕ですね」

「ああ、もうそんな季節か。暑くなってきたわけだ」

扇風機を回しながら、うちわで涼んでいた白哉は、氷の入った麦茶を飲みながら、書類に目を通しはじめた。

昼休憩ももう終わりだ。

することもないので、仕事にとりかかろうとする白哉に、恋次が声をかける。

「そういえば、総隊長のところで笹が飾ってあるそうですよ。俺は短冊に願いかきました。隊長は?」

「叶わぬ願いなどあまりないので、いらぬ」

「風情がないなぁ」

恋次は、思ったことを口にした。

「七夕など・・・子供の頃でも、はしゃいだ記憶がない。ただ星を見る日だった」

「じゃあ、今夜星を見に行きませんか」

「どこで?」

「現世の、ちょっと田舎ですけど、空気が綺麗なところで、尸魂界にはない海が広がっている海岸です」

「ほう」

白哉は、少し気になった。

海は、ここ数年見ていない。現世の夜に照らされた星明りもだ。

「いいだろう。今日、総隊長に許可をもらいに行ってこい」

「え、俺がですか」

「そうだ。お前以外に誰がいる。私と行きたいのであれば、許可をもぎとってこい」

「今から行っていいですか!?」

「ただし、1時間以内に帰ってこい」

「わかりました!」

恋次は、飛び出していった。

そしてきっかり1時間後に、許可をもらったと、汗をかいた恋次が顔を出した。

義骸は用意されてあったが、誰かに会いにいくわけでもないし、霊体のままでよいかということになった。

夜の11時。

穿界門をあけてもらい、1時間だけの現世いきとなった。

「わぁ・・・星が綺麗ですね」

恋次は、空気が綺麗な田舎に穿界門を通じさせてもらった。

ざぁんざぁんと、波が打ち寄せる音がする。

「海か・・・・・」

何度か見たことがあるが、月明かりと星明かりに照らされただけの海は、少し寂しく感じられた。

「あれが七夕の星です」

現世の星の知識などない白哉に、恋次が語って聞かせる。

彦星と織姫の話になって、白哉は空を見上げながら恋次の手を握った。

「隊長?」

「私とお前は、離れたりせぬ。そうだな?」

「はい、そうですよ。彦星と織姫のようにはなりません」

恋次の手に口づけると、恋次は顔を赤くした。

「隊長?」

「証だ。離れ離れにならぬ証。お前もしろ」

白哉が右手を差し出す。

それに恋次が口づける。

自然と、唇が重なった。

「ふ・・・・・」

「隊長・・・・」

「現世も、暑いな・・・・」

抱き着いてくる恋次を押しどけて、白哉はひょいっと空を走る。

海の上を走る。

「散れ、千本桜」

ちらちらと、海に桜の花びらが落ちてくる。

その光景に、恋次は息を飲んだ。

綺麗だ。

そう思った。

隊長はまるで精霊かなにかのようで。

とても孤高な存在なのだと、世界に知らしめているようで。

あまりに綺麗だったので、つい伝令神機で写真をとった。

「帰るぞ」

「あ、はい」

穿界門があけられる。

1時間にも満たなかったが、美しいものを見れたので恋次は満足したし、白哉も久しぶりに海が見れたし、恋次にいろいろと現世の星のことを教えてもらって、満足した。

「また、来年も来ましょうね」

「気が向いたらな」

白哉の言葉はそっけないけれど、恋次が強請ればきっと来年も星を見に一緒に現世に行ってくれるだろう。

許可をとるのは大変だが。

今度からは、前もって許可をもらって、1時間以上は現世にいられるようにしようと思う恋次だった。




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七夕

「一護、七夕だぞ」

ルキアは、その日、笹をもって一護との寝室にやってきた。

「うわ、でけぇ。なんだよ、その笹」

「朽木家で伐採したものだ」

小柄なルキアに対して、笹は大きく、重いだろうにどこにそんな力があるのか、笹をどさりと部屋に置く。

「こんなの、7月7日までだろ。いらねーだろ」

「そんなことはないぞ!笹に願いを書くと、願いはかなうのだ!」

そりゃな。

どこかの義兄が、甘いから毎年義妹の願いを叶えてやってるもんな。

そんなことは、口には出さないでおいた。

今年の、ルキアの願いは。

(一護との子供がほしい)だった。

さすがの白哉でも、かなえられないだろう。

こればかりは、運を天に任せるしかない。

でも、笹には他にも願い事がかかれていた。

(ちゃっぴーの新作リュックサックがほしい)

(ちゃっぴーのペンライトがほしい)

(ちゃっぴーの布団がほしい)

「どこまでもちゃっぴー尽くめだな」

「笹に願いをかくと、叶うのだ。ほぼ90%」

こんな義妹をもつ白哉を、憐れんだりはしない。

朽木家の財力をもって、白哉はルキアの願いを叶える。売っていないチャッピーのグッズだろうからして、きっと作るのだ。

「義兄様にも、何か願いを書いてもらおう。一護もついでだから、何か書いておけ」

ぺっと、1枚の紙をよこされる。

一護は・・・・。

(白哉と仲良くできますように)

と書いたのを、笹に飾った。

白哉の願いを書いた短冊を、ルキアは笹に飾った。

「何々・・・・辛いものが食べたい・・・・なんだそりゃ。いつでも食えるだろ」

朽木家の財力をすれば、現世の辛い食べ物の手に入るだろう。

「義兄様・・・・今度現世に行ったとき、キムチでも買ってきます!」

白哉の願いは、そうそうにルキアによって叶えられそうだった。

「一護は・・・・ははん、義兄様と仲良くなりたいのか。どれ、私が・・・・・」

「いらんことするな!頼むから、余計なことはするな!」

「むー」

ふてくされるルキアはかわいかったが、白哉との微妙な仲をこじれさせられたら元も子もない。


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笹が、外に飾られた。

白哉が、口早に家のものたちに何かを命令していた。

チャッピーのグッズがどうたらの話だった。

「よお、白哉」

「兄か・・・・兄との仲は、このままでいいと、私は思っている」

「うん、まぁなんていうかお互い喧嘩みたいなことはできるだけやめようぜ」

「それは兄次第だ」

「あーうん、そうだな」

やっぱり、白哉って苦手だ。

そう思う一護だった。


後日、ちゃっぴーの新作リュックサックにペンライト、布団を手に入れたルキアは嬉しそうにしていた。

そして白哉に現世から持ち帰ったキムチをあげて、義兄妹は、とても幸せそうだった。

ただ一人、一護だけがぽつんと取り残されているのであった。




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海燕と浮竹と京楽と スイカ

「京楽、スイカが冷えてるんだ。食べていかないか」

雨乾堂に遊びにきた京楽は、浮竹にそう声をかけられた。

「あーうん、いいね。こう暑いと、冷えたスイカは美味しいだろうね」

海燕がスイカを切り分けてくれた。

「ほら、京楽お前の分だ」

スイカは丸ごとの分を三等分されて、さらには食べやすいように赤い果肉の部分だけを切り分けられていて、フォークを突き刺して食べた。

「甘いね」

「今年のスイカは甘いらしいぞ」

「うん、甘い。それによく冷えていておいしいよ」

京楽は、まだ手がつけられていない海燕の分まで少し食べた。

「あんた、自分の分があるでしょう。意地汚く人の分まで食べないでください」

スイカの皮を捨てに行った海燕が雨乾堂に入ってくるのと、京楽が海燕の分のスイカをフォークでさして口にもっていったのはほぼ同時だった。

「いいじゃない、ちょっとくらい」

「よくありません」

「けち」

「上流貴族のくせに、意地汚いですね!スイカなんていくらでも買えるでしょう!それこそ瀞霊廷中のスイカ買い占めることだってできるでしょうに!」

「あ、それいいね」

「おい、京楽・・・・」

「いや、ウソウソ。冗談だよ。そんなにスイカばかり買って食べても飽きるだけだから。ああ、浮竹もう食べちゃったの。僕の分も食べるかい?」

浮竹がもっと食べたそうな顔をしていたので、京楽は自分の分を分けてあげようとした。

「浮竹隊長、俺の分をどうぞ」

「いや、浮竹が食べるのは僕の分でしょ!」

「いや、俺の分です」

浮竹は、ほわりと笑って、京楽と海燕、両方の皿からスイカをフォークでぶっさして、食べた。

「喧嘩両成敗だ」

「はい、すみませんでした」

「ごめん」

また、浮竹はほわりと笑った。

「なんか機嫌いいね」

「朝からあの調子なんです」

京楽は、浮竹の額に触れた。

「やっぱり。熱あるよ、浮竹」

「そうか?全然苦しくないんだが・・・・・」

海燕が体温計で測ると、37.8度という体温が出た。

「微熱だけど・・・・一応、解熱剤飲んで横になろうか?」

京楽がそう言うと、浮竹は素直に頷いた。

「分かった」

「なんか今日の浮竹は一段とかわいい・・・って、何その手は」

「隊長に手出しする前に帰ってもらおうと思いまして」

解熱剤を飲ませようと浮竹に伸ばした手を、海燕に捕まえられた。

「そんなことするわけ・・・・ないとは言い切れないけど」

「半年前、微熱の隊長を襲って高熱ださせましたよね?」

「う・・・・・」

過去のことを出されて、ちょっとその気があった京楽は言葉を詰まらせた。

「じゃあ、キスだけ」

「分かりました。キスだけなら、許しましょう」

海燕に自由を与えられて、京楽は浮竹の頬に手を当てた。

「浮竹、好きだよ」

触れるだけのキスかと思うと、舌が絡みあうディープキスに変わっていく。

「んあ・・・ふあっ」

ぴちゃりと、音がした。

「んん・・・・」

「長い!」

どこからもちだしたのかわからないハリセンで頭をはたかれて、京楽が海燕をにらんだ。

「ちょっとくらい、いいじゃない」

「3分以上キスしてたでしょう。長すぎです」

「たかだか3分くらい」

「3分もです」

ぎゃあぎゃあと言い争っていると、浮竹がハリセンを奪って、京楽と海燕の頭をどついた。

「喧嘩はだめだぞ」

「はい」

「ごめん」

布団がしかれて、浮竹は素直に横になった。

水と解熱剤を飲んで、眠りにつく。

その横で、京楽は浮竹にうちわで風をおこしてあげながら、海燕を見た。

海燕は、京楽の様子を見ていたが、大丈夫と判断したのか、隊舎のほうに下がっていった。

「浮竹、七夕そういえばすぎちゃったね。今年は雲で星が見えなかったし・・・・また来年かな」

「んー」

浅い眠りについている浮竹は、京楽の声に少し反応する。

「やっぱり、キスだけじゃ無理だよ」

浮竹の鎖骨にキスマークを残した。

「ん・・・・・・」

鎖骨を甘噛みして、満足する。

「早く元気になってね」

君の笑顔が、見たい。

甘いスイカを、用意させよう。

熟れて、それで大きくて、冷えたものを。

スイカなら、食欲があまりなくても多分食べられるだろう。

そう思いながら、京楽は浮竹が目覚めるまで畳の上でうたた寝をはじめるのであった。


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僕は君の瞳の色の名を知らない2

死神統学院に入って2年目の春。

親友のポジションを獲得していた京楽は、浮竹に甘かった。

「浮竹、今日は顔色がちょっと悪いね」

「そうか?別にどうってことないんだが・・・・・げほっ、げほっ」

「大丈夫?」

京楽が、浮竹の背中をなでる。

「大丈夫・・・・ごほっ」

ごぼりと、血を吐いて、浮竹は倒れた。

「浮竹!」

京楽は浮竹を抱きかかえて、医務室まで連れていった。

保険医から、回道の処置を施してもらった浮竹は、意識を朦朧とさせながらも、京楽の手を握っていた。

「僕はここにいるよ。君の傍にずっといるから」

「京楽・・・・本当に?」

青白い顔であったが、幾分生気を取り戻した浮竹の頬に手を添えて、触れるだけのキスをする。

「京楽?」

「ごめんね。ごめんね」

京楽は、そう言って泣いた。

なんで謝るんだろう。

浮竹はそう思った。

「君は真っ白で綺麗なのに・・・僕が君を汚してしまう。君の傍を離れなきゃ」

「ずっと・・・傍にいてくれるんじゃあ、ないのか・・・?」

うつらうつらと眠りかけながら、浮竹はそう言って眠ってしまった。

そんな浮竹の傍で、浮竹が目覚めるまで京楽は傍にいた。


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「京楽、次は経済学の座学だろう?一緒に移動しよう」

「うん、そうだね」

浮竹の笑顔がいつでも眩しかった。

この前のキスのことについて、浮竹は何も言ってこなかった。

夢だと思っているんだろう、多分。

最近、浮竹が眠っている時に時折キスをするようになってしまった。堪えなければならないと分かっていても、目の前に大好きな浮竹が無防備な姿でいると、つい手を出しそうになる。

これではいけない。

だからといって、浮竹から離れることもできない。

ぐるぐると思考が回る。

浮竹の傍にいるのは、我慢をしなければならないことだけど、傍にいれるのは心地よかった。

「ああ、教科書を忘れてしまった。ちょっと、ロッカーまでとりにいってくる」

「うん。先に教室移動して、君の分の席もとっておくから」

経済学の教室に入り、自由席の窓に近い場所をとって、浮竹が来るのを待つ。

浮竹はすぐに戻ってきた。

「ありがとう、京楽。席をとっておいてくれて」

「窓の外、見てごらん」

京楽は、浮竹にそう促した。

「うわぁ。桜が満開だな」

「うん。綺麗だね。あと4回は、この桜が見れるんだろうな」

「早く卒業して、死神になりたいなぁ」

「浮竹は、どうして死神になりたいの?」

「ああ、言ってなかったかな。家族のためだ。実家は下級貴族だけど兄弟姉妹で俺を含めて8人になるんだ。俺の薬代とか借金してまで親は工面してくれたんだ。兄弟姉妹にももっといい生活をしてほしいし、死神になって仕送りをしようと思っているんだ」

「そうなの」

家族のための資金援助なら、京楽もできるが、浮竹は受け取らないだろう。

だけど、仕送りの少ない浮竹のために京楽は金を出してやることはけっこうあった。甘味物が好きな浮竹のために、甘味屋へ連れていくと、浮竹は金がないからと渋る。京楽が奢るからといえば、浮竹は喜んで甘味屋に入った。

一方の京楽は、なぜ死神になるのかというと、上流貴族の京楽家から厄介払いされたような形になる。自由気ままに生きるよりは、せめて霊圧があるのだから死神になれと、強制的にこの死神統学院に入れられた。

「僕の家族が、浮竹のような家族ならよかったのに」

「言っておくが、大変だぞ?人数が多いから、家も狭いし」

「うん・・・でも、僕は上流貴族でも厄介払いされたかんじだから」

浮竹と仲がよくなる前は、よく花街にいっていた。

今でも時折いくが、買う女はどこか浮竹に似たような雰囲気の女ばかりだった。

ああ。

浮竹の傍を離れたくないけど、このままいけば浮竹を汚してしまう。

でも、傍を離れられない。

そんな矛盾が、心に痛い。


次の授業、京楽はいつものようにさぼった。いや、さぼろうとした。

しかし浮竹に見つかって、半ば強制的に授業に出させられた。

授業が終わり、桜の木の下に来ていた。

「ねぇ、浮竹」

「なんだ」

「キスをしたいって言ったら、どうする?」

きょとんと眼を丸くする浮竹は、少しだけ笑って、こう言った。

「俺が寝ている時、時折キスしてくるだろ。今更じゃないか」

ああ、気づかれていたのか。

「じゃあ、今してもいい?」

「俺の事、好きなんだろう?」

「うん」

「俺もお前のこと、けっこう好きだから、別にいいぞ」

京楽は、浮竹を抱きしめていた。

「好きだよ、浮竹」

ちらちらと、桜の花びらが散っていく。

浮竹の緑の瞳にも映っていて、それが綺麗で見とれていた。

「京楽?」

「好きだよ」

「ん・・・・」

京楽は、浮竹の唇を奪っていた。

いつもの触れるだけの口づけとは違う、大人のキス。

舌を絡めあいながら、浮竹の咥内を攻めて、陥落させる。

「はぁ・・・・・んん・・ふっ・・・・・」

息が苦しそうな浮竹から離れると、顔を真っ赤にした浮竹が京楽の胸の中で顔を隠していた。

「多分顔が真っ赤だ・・・・見るなよ」

「君の瞳に、ちらちらと桜が映っていて綺麗だったよ」

「ばか・・・」

浮竹はまた真っ赤になって、京楽から離れると桜を見上げた。

浮竹も散っていってしまいそうに見えて、京楽が浮竹の細い手首を握って、抱きしめる。

「京楽?」

「君が・・・・桜の花びらになっていなくなってしまいそうで、怖い」

「俺は散ったりしないぞ」

「うん」



君の瞳に映るのは桜。

僕は君の瞳の色の名を知らない。

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僕は君の瞳の色の名を知らない

まだ未成年の、少女めいた美貌が眩しかった。

長く伸びていく白髪を手ですいてやると、気持ちよさそうに目を細める彼のことが好きだった。

初めて出会った時、白い髪に驚いて、手で触れた。

「白い髪・・・・綺麗だね」

「え?あ・・・そうかな」

白い髪の少女とも少年ともつかないその子は、ふわりと綺麗に笑った。


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「京楽は、今年は座学は何をとるんだ?」

少年時代を抜けきれない、まだ幼い眼差し。

それの虜になっていると知ったら、彼は何というだろう。

「あーうん。歴史の他は経済学でもとろうかと・・・・・」

「お、一緒だな」

ふと微笑むその笑顔が眩しかった。

長い白髪に、緑の瞳、女の子に間違われてしまいそうな美貌に華奢な体。

ああ。

僕は、浮竹に恋をしているんだ。

そう自覚した時、それが初恋であることに気づいた。

なんでもない一日が、また始まる。

でも、京楽は気づいてしまった。

傍で微笑む親友に、恋をしていると。

隠さなきゃいけない。ばれてはいけない。

そう思いつつも、スキンシップは止まらない。

抱き着いたり、抱きしめたり、頭をなでたり、髪をすいたり。

浮竹は、なんの疑いも抱かずに、京楽の隣にいる。

京楽が自分のことを恋愛感情で好きなのだと、全く気付いていなかった。

あふれ出る感情を殺そうとしても、同じ寮の相部屋でもあるせいか、とにかく浮竹の傍にいることが多かった。

浮竹を邪な視線で見る輩から守るのも、京楽の役目だった。

浮竹だけは、守りたい。

世間の柵(しがらみ)からも、何からも。

ある日、浮竹は上級生に呼び出されて、京楽にすぐに戻るからと告げていなくなってしまった。

嫌な予感がした。

京楽は、浮竹の霊圧を探ってみると、急激に上昇したり下降したりしているのがわかって、屋上だと場所を特定して走った。

屋上には倉庫があった。

鍵がかけられていたが、鬼道で破壊すると、その中に院生の服を破かれて涙を零し、ガタガタと震えている浮竹を見た時、何かが弾けた。

浮竹を襲おうとしていた上級生に、手加減のない鬼道を使う。

上級生は気を失い、浮竹は京楽を見て破れた衣服を手で隠しながら、京楽に抱き着いた。

「京楽・・・・怖かった・・・・京楽!!」

「浮竹、もう大丈夫だから」

浮竹を襲ったその犯人は、後日退学処分になった。

「泣かないで、浮竹。もう大丈夫だから」

「でも、こんな格好だと・・・・」

「その上級生は縄でしばって屋上の隅に転がしておくから、この倉庫に隠れてて。新しい院生の服、取りにいくから」

「あ、京楽!」

「どうしたの?」

「ううん、なんでもないんだ。早く帰ってきてくれ」

「うん。瞬歩使うから、すぐだよ」

数分して帰ってきた京楽の手には、浮竹の新しい院生の服があった。

それに着替えて、浮竹がまた涙を零す。

「俺・・・・こんな目にあうの初めてで、・・・学院でまで襲われるなんて思っていなかった」

「やっぱり、君、こういうの初めてなの?」

「子供の頃から見た目がよいせいで、声をかけられるとか、少しつきまとわれるとかあったけど、こんな怖い思いをしたのは初めてだ」

「ごめんね、浮竹。ちゃんと守ってあげられなくて」

「京楽のせいじゃない。ちゃんと用心しなかった俺が悪いんだ」

まだカタカタと震えている浮竹を、京楽の大きな体が包み込む。

「不思議だ・・・京楽にこうされると、落ち着くんだ」

どくんと、京楽の鼓動が高くなった。

多分、赤い顔をしているだろう。

「その、本当にすまない」

「いいんだよ。君が無事でよかった」

京楽は、浮竹の肩を抱いて寮の相部屋まで戻った。

互いに風呂に入り、夕飯を食べて就寝の時間になった時、浮竹が京楽に声をかけた。

「京楽・・・まだ怖いんだ。今日だけでいいから、同じベッドで眠ってくれないか」

浮竹に他意はないのだと分かっていても、京楽はまた鼓動が高鳴った。

浮竹を腕に抱きしめて、その日は浮竹のベッドで眠った。

「おはよう・・・・・」

「ああうん、おはよう」

「ありがとう、京楽。お影で、怖くなくなった」

「そう。それはよかったね」

京楽にとっては、甘いシャンプーや石鹸の匂いをさせる浮竹を抱きしめて寝るのは、けっこうな根気が必要だった。

好きなんだと、ばれてはいけない。

そう思うほど、心は苦しくなった。

浮竹は、朝からシャワーを浴びた。

まだ水の滴る白髪からぽたぽたと伝い落ちる水が、キラキラと太陽の光に輝いて眩しかった。

「ちゃんとかわかさないと、風邪を引くよ?」

「ああ、うん。俺の髪も伸びたな・・・・切ろうかな」

「もったいない!」

京楽は、タオルでごしごしと浮竹の髪の水分をとってあげながら、もったいないと悲鳴をあげていた。

「浮竹の白い髪は綺麗だし、肩まで伸びたんだしいっそこのまま伸ばしたら?僕はそのほうが嬉しいなぁ」

「変な奴だなぁ。俺のこの白い髪を綺麗というのは、お前くらいだ」

「そんなことないでしょ」

「俺はこの白い髪が嫌いだった。でも、お前が初めて会った時、白い髪が綺麗だと言ってくれたので伸ばす気になった。いっそ、腰まで伸ばすか」

「そうしてくれると嬉しいなぁ」



僕はまだ・・・・・。

君の瞳の色の名を知らない。




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院生時代の部屋 朝起きたら・・・・・

「・・・・・・・・・」

朝起きると、裸だった。

いけない一線をこえてしまったのかと、体を見るが痛みはどこにもない。

隣では、同じく裸の京楽が寝ていた。

とりあえず、パンツをはいてため息を一つ。

それから新しい院生服に袖を通して、すやすやとよく眠る京楽の一物を蹴り飛ばした。

「ひぎゃん!」

変な悲鳴を出して起きた京楽は、股間を抑えてのたうちまわっている。

「お前、俺に何をした?」

何分かごろごろのたうちまわってから、痛みが落ち着いたのか京楽は涙を滲ませて浮竹をにらんだ。

「君が酒飲んで酔っ払って・・・・僕の服も脱がして寝ちゃったんじゃないか!お互い裸だからするんだと思って君に挑んだのに、鳩尾に拳を・・・股間も蹴られて、泣く泣く同じベッドで寝るだけにしたんだよ」

「俺がお前の衣服を脱がせた?」

思い出そうとするが、昨日は確かに飲みすぎたせいか記憶がふっとんでいた。

浮竹は、酒癖が悪いわけではないが、時折変な行動に出るので、京楽はそれが心配だった。

2カ月前の飲み会が終わった後では、薬局のマスコット人形に話かけて、タオルで頭をこすっていたそうだ。

謎だ。自分でもよくわからない。

「あー。俺のせいなら・・・・すまない」

とりあえず、謝っておく。

あんまり謝罪の気持ちはおきないけど。

「おはようのちゅーを!」

そういって抱き着いてくるマッパの京楽の眼に、指を突き刺した。

「ぎょわあああ!!」

「服を着ろ!」

浮竹は赤くなって京楽から目を反らす。

京楽は、それに気づかずにベッドの横に散らばっていた衣服を身に着けた。

「あー、まだ朝の5時かぁ。僕はもうひと眠りするね」

「俺も、もう少し眠る・・・・・」

自分のベッドに横になると、京楽が当たり前のようにベッドに入ってきた。

とりあえず、蹴り飛ばす。

「ひどい!」

「誰が一緒に寝ていいといった?」

「昨日の君」

「はぁ・・・・・・・」

本当に、そんなことを言ったのだろうか。

酒癖は悪くないはず・・・いや、悪いのか?

親友?の服を脱がせて自分も脱いで、一緒のベッドで眠っていいと許可をする。酒癖悪いな、これ。

「酒はほどほどにしよう・・・・」

あまり金がないので、酒は奢られる時くらいしか飲まない。

酒に弱いというわけではないが、飲みすぎると眠ってしまう。もしくは変な行動に出るらしい。

何はともあれ、一線をこえなくてよかったと思った。

2時間ほどそれから仮眠をとって、朝の7時に起きる。

京楽はまだ寝ていた。

放置しようとすると、浮竹センサーを感じた京楽が目を覚まして、すぐに着替えて浮竹の横に並んでいた。

「お前は・・・・・犬か」

「浮竹の犬・・ご褒美もらえる?」

「やらん」

「なら今のままでいいよ」

京楽はでかい。

大型犬に懐かれたような気分がした。

「早く、学院に行こうよ。今の時間なら朝食とれるでしょ」

「ああ、そうだな」

学院の食堂は朝からやっている。

7時から開いていて、夜の9時まで営業している。安くておいしくてボリュームがあると、院生の大半はその食堂で1日3食をとる。

相部屋を出て、食堂に向かい、日替わり定食を注文して席についた。

「よお、浮竹昨日は大丈夫だったか?かなり飲んでたみたいだったが」

「あー。記憶飛んでた」

「まじかよ」

友人の一人が、隣のテーブルについて、笑っていた。

「眠ったかと思うと、タオルもちだして京楽の頭をふいていたから、みんなで笑ってた」

浮竹はそれを想像して、恥ずかしくなった。

京楽が、にんまりとなる。

「いやぁ、昨日の浮竹はかわいかったなぁ。寮の部屋についても、かわいかったなぁ」

「まさか、お前ら」

「誤解だ誤解だ。俺と京楽の間には何もない!」

「夜はあんなに激しかったのに」

「ええい、いちいち誤解されるようなことを言うな!」

京楽を椅子ごと蹴り飛ばした。

「愛が痛い!」

椅子を直して、京楽は普通に座りなおすと日替わり定食を食べていった。

浮竹も、友人とのやりとりをやめて朝食を食べる。

「お前ら、ほんと仲いいのな」

「腐れ縁だ」

「愛だよ、愛」

愛とかほざく京楽のご飯に醤油をかけてやった。

「朝から塩分が!でも浮竹の愛をかんじるよ」

「一回死ね」

素早く朝食を食べた京楽は、浮竹に抱き着いた。

「苦しい」

「1日1ハグ」

「はぁ・・・・・・」

京楽の足を踏みつけながら、浮竹は今日一日は平和に過ごしたいと思うのだった。




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手紙

君に手紙を書いている。

君がいなくなってもう1年。

今頃君は、どこでどうしているんだろう?

大切な人が何人も死んだ。

でも、尸魂界は今は平和を取り戻している。




君に手紙を書いている。

君がいなくなってもう2年。

いろんなことがあったよ。

嬉しいこと悲しいこと。

君もそんな思いを抱いているんだろうか?

こっちは元気だよ。君も元気にやってるかい?




君に手紙を書いている。

君がいなくなってもう3年。

たくさんの手紙を書いたけれど、君には届いてるのだろうか。

君の笑顔が懐かしい。

君の声が聞きたい。




君に手紙を書いている。

君がいなくなってもう4年。

君は幸せかい?

僕は君がいないので、寂しいよ。

早く君に会いたいな。

君の笑顔も声も、少しずつ記憶からかすれていく。





君に手紙を書いている。

君がいなくなってもう5年。

ルキアちゃんが結婚したのは知っているよね?赤ちゃんがうまれたんだ。

君のことだから、どこかで知らせを受けて喜んでいるのかもね。





君に手紙を書いている。

君がいなくなってもう6年。

いい加減、寂しくなってきたよ。

君に会いたい。

今すぐにでも、飛び出していきたい。

でも、それは叶わない。

だって、僕は総隊長だもの。





君に手紙を書いている。

君がいなくなってもう7年。

久しぶりに尸魂界で大雪が降ったんだ。

昔の院生時代、君とかまくらを作ったのを思い出したよ。

雪だるまを作ったんだ。

君の分まで。





君に手紙を書いている。

君がいなくなってもう8年。

君との大切な記憶が、徐々に薄れていく。

それがとても怖い。

君のことを忘れてしまいそうで。





君に手紙を書いている。

君がいなくなってもう9年。

いい加減、手紙の返事の一つくらい返してくれないかい。

こうも静かだと、君に書いた手紙が本当に君に届いているのかもわからない。

でも、死神の命は長いから、ゆっくりでいいから、返事を書いてほしい。

今すぐにでも会いたいよ。

君に。




君に手紙を書いている。

君がいなくなってもう10年。

周囲に散々言われて、むきになって否定して。

手紙を・・・・書き続けていた。

はじめから、知っていたんだ。

君が、もう死んでいることに。

ねぇ、浮竹。

死んだ君に手紙を送るんだ、僕は。

その手紙は、いつもどこかへ消えてしまうらしい。

君に書いた手紙は、君の元にたどり着いているのかな?

ねぇ、浮竹。

愛しているよ。

昔も今もこれからも。ずっとずっと。

もう、君に手紙を書くのをやめようと思う。

君との記憶を大切にしようと思う。

大分こじれちゃったらしい、僕は。

ねぇ、浮竹。

最後の手紙を、書いていいかい?


「愛してる」

ただ、その一言を書いた手紙は、翌日には消えていた。

君が受け取ってくれたのかな?

君への手紙は、いつも送る途中でなくなってしうまうそうだから。

浮竹。

君がいなくなって10年経ったんだ。

いい加減、君の死を受け入れなくちゃね。君が生きてると思いこんで手紙を書き続けて。

本当に、滑稽だ。

でも、本当に愛しているんだよ。

言葉に表せないくらいに。

いつか、君の元へいったら、手紙は届いていたかいと問おう。

この10年で300通以上の手紙を書いた。全部消えてしまったらしい。

手紙は、ほろほろと水に溶けるように消えてしまうそうだ。

君の元へ、行っているのだろうと考えてもいいのかな?

最後の手紙には、薔薇を添えた。その薔薇も消えてなくなっていた。


「愛しているよ、浮竹」

言葉を紡ぐと、ほろほろと涙が零れた。

ほろほろと。

手紙が消えていく時のように涙が流れる。

本当に、どうしようもないな、僕は。

君の死を受け入れず、生きていると思い込んで、傷つくのを恐れて。

僕は、永遠に、君を愛し続けるよ。

君が迎えにくるまで、君の分まで生きよう。

だから、まだ君には会えない。

浮竹。

手紙はもう書かないけど、待っていてくれるかい。

浮竹。

愛しているよ。

僕の愛しい人。















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朝顔

夏がやってきた。

さわさわと揺れる風の音には緑の匂いも混じり、梅雨が明けたばかりなので、まだ少し空気は熱気だけでなく湿気をはらんでいた。

直射日光に弱い浮竹は、縁側で朝顔を見ていた。日差しに当たらないようにと、注意しながら。

「ああ、今年も見事に咲いたねぇ」

「そうだろう」

隣に当たり前のように座る京楽は、薄紫色の小ぶりの朝顔に彩られた雨乾堂の庭を見て、綺麗だなと思った。

「毎年この時期は朝顔が咲き乱れるんだ。紫陽花の季節でもあるが、朝顔のほうが目立つな、この庭は」

確かに、雨乾堂の庭にはいろんな花が咲き乱れていたけれど、紫陽花よりも朝顔の咲き乱れる様のほうが視線を集めた。

紫陽花の上にまでつるを伸ばして、朝顔が花を咲かせている。

チリリンと、風鈴が涼しげな音を立てる。

「麦茶、飲むかい?」

氷をいれて冷やされた麦茶をすすめられて、浮竹は頷いて麦茶を飲んだ。

「夏だからねぇ。直射日光だけでなく、熱中症にも注意してね」

京楽も、カランと氷の音をたてる麦茶の入ったコップを傾ける。

「ねぇ、キスしていい?」

「ん?」

「なんだかよくわからないけど、むしょうに君にキスがしたい」

「好きにすればいい・・・・・」

浮竹は、京楽に抱きしめられた。

浮竹はこの前まで臥せっていたため、少し細かった。

「ん・・・・」

触れるだけのキスをしたのかと思うと、舌が浮竹の唇をなめて、浮竹は唇を開いた。

「ふ・・・んん・・」

舌と舌が絡まりあう。歯茎をなぞって京楽の舌が動き、咥内を蹂躙する。

チリン。

風鈴の音がやけに耳にこびりつく。

「んん・・・も、いいかげんに・・・・・んっ」

今日の京楽はしつこかった。

互いの唾液を飲み込んで、それでもまだ執拗に攻めてくる。

「京楽・・・・・」

「ん?・・・・スイッチ入った?」

「今日はしない。おとついしたばっかだろう」

「僕は貪欲だから」

クスクスと、京楽が笑って浮竹を押し倒す。

チリン。

風鈴がなる音がとても涼しげに聞こえるが、実際暑かった。

「今日はこれ以上何もしないよ。ただ君の傍にいれれば、それでいいよ」

京楽は、浮竹を抱きしめて何度も口づけをしてきた。

薄紫色の朝顔は、太陽が真上に真上にくればくるほどしおれていく。

ごろごろと、二人して畳の上で自堕落な時間を過ごす。

今日は仕事はしない日と、二人で決めた休日の日だ。

「ねぇ、キスしてもいいかい?」

「さっきから、してるくせに」

「君にしてほしいって言ってもらいたい」

「めんどくさい」

「いいじゃない。言うくらい」

「じゃあ・・・・京楽、キスをいっぱいしろ」

「うん」

京楽は、浮竹の唇だけでなく、首筋や鎖骨あたりにキスマークを残した。

「キスマークを残すな」

「いいじゃない。どうせ見る相手は僕くらいなんだから」

副隊長がいない13番隊では、3席が二人いる。

「清音と仙太郎がいるだろうが」

「ああ、でも見て見ぬふりしてくれるし、あの二人なら」

「そういう問題じゃ・・・・・ん・・・・」

深く口づけられて、だんだん思考がぼーっとしてきた。

酸素不足かもしれない。

「朝顔・・・種できたら、集めないと・・・・」

畳の上に白い長い髪を乱しながら、ふとそう思った。

今年も綺麗に咲いてくれた。

薄紫色の小ぶりなものが大かったが、赤紫、ピンク、水色、白といろんな色の朝顔が咲いてくれた。

特に種を集めなくても、自然に地面に落ちたものがまた来年も双葉をだし、また勝手に生えてくるのだが、種は集めて植えたほうが見栄えはいい。

京楽は、ふと庭に出ると、まだしおれていない水色の大きめの朝顔をとって雨乾堂ないに戻ってきた。

それを、浮竹の髪に飾る。

「愛してるよ、浮竹」

「・・・・・・恥ずかしいやつ」

浮竹が笑う。

「ねぇ、浮竹は?僕のことどう思ってるの?」

「ああ、愛しているさもちろん」

でなければ、こんなに近くにいて抱きしめあったりキスしたりしない。

「君から愛しているとか好きだとか言われること少ないから、声を残しておきたいよ」

「やめてくれ」

「ふふ・・・・好きだよ、浮竹」

浮竹は言葉に出さず、俺もと口だけつぶやいて、京楽の肩にかみついた。

「あいてて」

「ふん」

浮竹は、京楽を押し倒して、その目を見る。

ぱらぱらと、白い髪が京楽の顔に落ちる。

「ああ、いいね。君のその表情・・・・・・」

長い白髪を、京楽の手がすいていく。

ぽとりと、水色の朝顔が落ちた。

それを手に取って、京楽はまた浮竹の髪に朝顔を飾る。

「朝顔は、儚いね。君に似てる気がする」

「でも強いぞ」

「そうだね。君も儚いようで、実はとても強い」

「儚いは余計だ」

「実家から、スイカがたくさん送られてきたんだ。明日にでももってくるから、一緒に食べないかい?」

「ああ、いいな。スイカか。今年はまだ食べてない」

「今年のスイカは甘いらしいよ」

まるで僕らの仲みたいにと、京楽は笑った。

チリンと、風鈴が乾いた音を立てた。



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好きなものは好き13

しとしとと、雨が降る。

現世でも尸魂界でも、梅雨がきていた。

「ふう・・・現世なら晴れていると思ったのだが、雨か」

ルキアは、穿界門をくぐってすぐに雨に気づいて、近くの商店街の軒下に避難した。

どしゃぶりではないが、そこそこ降っている。

ルキアは、一護にメールした。

(現世にきた。しかし雨にあって、商店街の軒下で止むのを待っている)

(傘はもってきてねーのかよ)

(こちらは晴れていると思ったのだ、たわけ!)

(迎えにいってやるから、しばらく動くな)

(仕方ない、迎えに来させてやろうではないか)

「なんつー尊大な・・・・」

メールのレスを見て、一護はルキアのための傘を物色していたのだが、自分の傘以外はビニール傘で、しかも壊れている。

「傘・・・・仕方ねえ、買いにいくか・・・・」

ルキア用の傘を買いに行こう。

それはそれで楽しいかもしれない。

「迎えにきたぞ、ルキア」

「一護!一週間ぶりだな!」

「ああ」

ルキアは、商店街の軒下で一護に抱き着いた。

「私の分の傘はどこだ?」

「ねーから、今から買いにいくぞ。予算は4千円。ほら、行くぞ」

一護の藍色の傘の下に移動しながら、商店街から百貨店にやってくる。

傘のコーナーで、あれでもないこれでもないと、ルキアは現世の傘のカラフルさに目を輝かせていた。

何せ、尸魂界の傘は黒一色で、とても地味だ。

「これに決めた!」

ルキアが手にした傘は、一護と同じ藍色に紫陽花の模様がある傘だった。

「これなら、貴様の傘と同じ色合いだし、お揃いのようでいいではないか」

「別に傘なんてお揃いにしなくてもいいだろ」

「いやだ。本当はお揃いにしたいのだが、藍色だけでは味気ない。紫陽花の色合いが美しいこの傘が気に入ったのだ」

お値段は、2980円だった。

予算以内だったので、一護はそれ以上何も言わずにレジでお金を払う。

「夕食の買い出しにもいくか。ついてくるだろ、ルキア」

「無論だ!」

百貨店を出て、スーパーまで足を伸ばす。

ルンルンと、ルキアは新品の傘をくるくる回して、はしゃいでいた。

その姿がかわいくて、一護はキュン死しそうになった。

落ち着け、俺。

「今日の夕飯は唐揚げとコンソメスープ、タコの酢のものに・・・・・」

「唐揚げか!一護の作るものは、なんでも美味いので好きだ!」

「仕方ないから、白玉餡蜜も買ってやるよ」

「やった!」

ルキアの綻ぶ顔を見ているだけで、幸せになれる気がした。

二人で、傘を片手に荷物をぶら下げて、帰路につく。

しとしとと、雨は少しましになったが、まだ降っていた。

ルキアは、買ってもらった傘が気に入ったのが、嬉しそうにくるくる回していた。

「ルキア」

「なんだ」

傘をずらして、一護はちゅっとリップ音をたてて、ルキアの唇にキスをした。

突然のことに、ルキアが真っ赤になる。

「たわけ、往来で何をする!」

「わりぃ、お前があんまりかわいいもんだから」

「な!」

また真っ赤になるルキアが、かわいかった。

一護は傘を手にした腕にスーパーの袋をぶら下げて、ルキアの手を握ると、一緒に歩きだした。

とりあえず、夕飯を作る前にルキアを抱きしめたい。

一護のアパートにつくと、ルキアは傘を名残惜しそうにたたんで、玄関の傘置き場に置いた。


「ルキア」

一護に思い切り抱きしめられて、ルキアが目を丸くする。

「好きだ、ルキア」

「ふふ・・・そんなの、知っている」

ルキアのほうが、一枚上手のようだった。

一護はスーパーの袋を玄関に置いて、ルキアを抱き上げると、そのままべッドまで運んで、また抱きしめた。

「くすぐったい」

「ルキア・・・・・・」

「ん、一護・・・・・」

戯れるようにキスを繰り返す。何度も口づけしあって、それからベッドに横になってルキアを一護は抱き寄せた。

「雨も、たまにはよいかもな」

「そうだな」

しとしと。

降り続ける雨は、朝まで止みそうになかった。

「唐揚げ作るから、手伝ってくれ」

「いいだろう」

ルキアは尊大だけど、素直だ。

そんなところもかわいいと思う。

好きなものは、好きだから。


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