甘い呼び声
浮竹が死んだ。
神掛をおこない、そのまま病気が進行して、京楽の腕の中で息を引き取った。
枯れ枝のように細くなってしまった浮竹の遺体を抱いて、泣いた。
棺の中に白百合がいっぱいいれられて、大戦も終戦したので皆で見送った。
棺の蓋が閉じられる。
そのまま、荼毘に付されるを、京楽はただ黙って見ていた。煙が、空高く昇っていく。
本当は泣き叫びたかった。
でも、京楽は総隊長だ。恋人が死んだからといって、泣き叫んでなどいられない。総隊長としての責務を果たさねばならない。
浮竹の墓は、雨乾堂に建てられた。
浮竹が死んで1か月が経った。
世界は色を失った。
浮竹が死んで半年が経った。
世界はようやく色を戻し始めた。
浮竹が死んで1年が経った。
もう君は、どこにもいないんだね。
そう呟いた。
浮竹が死んでも、世界は廻る。
時折浮竹の墓参りにいっては、夢でいいから会いたいと思った。
すると、その日の夜、本当に夢の中で浮竹が出てきた。
いつもと変わらぬ姿で、元気そうだった。
真っ白な長い髪を風になびかせて、桜吹雪の中に凛として立っていた。
「浮竹!」
京楽は、浮竹を抱き締めた。暖かかった。
キスをすると、浮竹は京楽の背中に手を回した。
そして、柔らかく微笑んだ。
「京楽、俺がいないからって、いつまでもくよくよするなよ。俺は、待っている。お前を。お前を迎えにいく日まで、長生きしろよ」
そういって、浮竹は桜の花びらとなって散ってしまった。
「浮竹!」
目覚めると、涙を流していた。桜の花びらが、どこから入りこんできたのか布団の上に散らばっていた。
「浮竹・・・夢で、会いにきてくれたの?」
京楽は、意を決して浮竹の遺品を引き取ることにした。
翡翠の髪飾り、かんざし、お守り石、螺鈿細工の櫛・・・高価なものから、硝子細工でできた安い髪飾りとかまで。
京楽が学院時代から浮竹が死ぬ前にまでに贈った様々なものがあった。
「懐かしいねぇ・・・・」
翡翠の石を太陽に透かしてみると、翠の影が落ちた。
浮竹の遺品をまとめて、自分の屋敷の一室に保管することにした。
翡翠のお守り石は、いつも浮竹が持っていてくれたものなので、京楽がもつようになった。
世界は・・・・・色づいている。
浮竹を失くしたことは悲しい。ずっと一緒に傍にいたかった。一緒に引退して、老後を送りたかった。
でも、世界は色づいている。
浮竹を失ったことで色を失った世界は、時と共に色づきはじめた。
そうやって、数百年も、気づけば総隊長を続けていた。髪に白いものがまじるようになった。さらに数百年時が経った。
もう、山じいをばかにできない年齢になっていた。
「迎え来たぞ、京楽」
長い白髪の麗人は、京楽の寝ているベッドの傍にくると、京楽に口づけた。
「浮竹・・・・?ずるいな、君だけ年をとっていないなんて」
「いこう。果てのない世界へ。墜ちて墜ちて墜ちて・・・いつか、生まれかわろう」
「なんとも甘い呼び声だね」
「京楽、老衰だ。お前を千年もまたせて、すまなかった。でも、これからはずっと一緒だから。同じ場所に墜ちていこう。俺は輪廻を拒否していた。京楽がくるまでと思って」
「浮竹・・・・・」
気づくと、京楽の姿は浮竹と同じくらいの姿に変わっていた。
「君をずっと待っていたんだ・・・・・・もう、離さない」
浮竹を抱き締めて、二人は桜の花びらになって散っていく。
かつんと、翡翠のお守り石が落ちた。
「あ、あれは大事なものだから」
散っていく中で、京楽が手を伸ばして拾いあげる。
「俺のお守り石・・・・・お前が、持っててくれたのか」
「うん。君だと思って」
唇が重なった。
さらさらと、世界から消えていく。
ただ永久にある安寧の大地へと墜ちていく。
いつか、きっとまた新しい世界で、二人揃って産声をあげて巡り合える。
そんな気がした。
浮竹の甘い呼び声に、京楽は答えた。
京楽は遺体もないまま生死不明となり、京楽の人生の幕は閉じる。
でも、傍らには愛しい浮竹がいるので、京楽は寂しくなかった。
ああ。
墜ちていく。
世界の果てに。
ああ。
愛している。
千年経っても、まだ浮竹を愛している。
ああ。
浮竹が迎えにきてくれてよかった。
甘い呼び声に、そっと身を任せて、ただ墜ちていく--------------------。
神掛をおこない、そのまま病気が進行して、京楽の腕の中で息を引き取った。
枯れ枝のように細くなってしまった浮竹の遺体を抱いて、泣いた。
棺の中に白百合がいっぱいいれられて、大戦も終戦したので皆で見送った。
棺の蓋が閉じられる。
そのまま、荼毘に付されるを、京楽はただ黙って見ていた。煙が、空高く昇っていく。
本当は泣き叫びたかった。
でも、京楽は総隊長だ。恋人が死んだからといって、泣き叫んでなどいられない。総隊長としての責務を果たさねばならない。
浮竹の墓は、雨乾堂に建てられた。
浮竹が死んで1か月が経った。
世界は色を失った。
浮竹が死んで半年が経った。
世界はようやく色を戻し始めた。
浮竹が死んで1年が経った。
もう君は、どこにもいないんだね。
そう呟いた。
浮竹が死んでも、世界は廻る。
時折浮竹の墓参りにいっては、夢でいいから会いたいと思った。
すると、その日の夜、本当に夢の中で浮竹が出てきた。
いつもと変わらぬ姿で、元気そうだった。
真っ白な長い髪を風になびかせて、桜吹雪の中に凛として立っていた。
「浮竹!」
京楽は、浮竹を抱き締めた。暖かかった。
キスをすると、浮竹は京楽の背中に手を回した。
そして、柔らかく微笑んだ。
「京楽、俺がいないからって、いつまでもくよくよするなよ。俺は、待っている。お前を。お前を迎えにいく日まで、長生きしろよ」
そういって、浮竹は桜の花びらとなって散ってしまった。
「浮竹!」
目覚めると、涙を流していた。桜の花びらが、どこから入りこんできたのか布団の上に散らばっていた。
「浮竹・・・夢で、会いにきてくれたの?」
京楽は、意を決して浮竹の遺品を引き取ることにした。
翡翠の髪飾り、かんざし、お守り石、螺鈿細工の櫛・・・高価なものから、硝子細工でできた安い髪飾りとかまで。
京楽が学院時代から浮竹が死ぬ前にまでに贈った様々なものがあった。
「懐かしいねぇ・・・・」
翡翠の石を太陽に透かしてみると、翠の影が落ちた。
浮竹の遺品をまとめて、自分の屋敷の一室に保管することにした。
翡翠のお守り石は、いつも浮竹が持っていてくれたものなので、京楽がもつようになった。
世界は・・・・・色づいている。
浮竹を失くしたことは悲しい。ずっと一緒に傍にいたかった。一緒に引退して、老後を送りたかった。
でも、世界は色づいている。
浮竹を失ったことで色を失った世界は、時と共に色づきはじめた。
そうやって、数百年も、気づけば総隊長を続けていた。髪に白いものがまじるようになった。さらに数百年時が経った。
もう、山じいをばかにできない年齢になっていた。
「迎え来たぞ、京楽」
長い白髪の麗人は、京楽の寝ているベッドの傍にくると、京楽に口づけた。
「浮竹・・・・?ずるいな、君だけ年をとっていないなんて」
「いこう。果てのない世界へ。墜ちて墜ちて墜ちて・・・いつか、生まれかわろう」
「なんとも甘い呼び声だね」
「京楽、老衰だ。お前を千年もまたせて、すまなかった。でも、これからはずっと一緒だから。同じ場所に墜ちていこう。俺は輪廻を拒否していた。京楽がくるまでと思って」
「浮竹・・・・・」
気づくと、京楽の姿は浮竹と同じくらいの姿に変わっていた。
「君をずっと待っていたんだ・・・・・・もう、離さない」
浮竹を抱き締めて、二人は桜の花びらになって散っていく。
かつんと、翡翠のお守り石が落ちた。
「あ、あれは大事なものだから」
散っていく中で、京楽が手を伸ばして拾いあげる。
「俺のお守り石・・・・・お前が、持っててくれたのか」
「うん。君だと思って」
唇が重なった。
さらさらと、世界から消えていく。
ただ永久にある安寧の大地へと墜ちていく。
いつか、きっとまた新しい世界で、二人揃って産声をあげて巡り合える。
そんな気がした。
浮竹の甘い呼び声に、京楽は答えた。
京楽は遺体もないまま生死不明となり、京楽の人生の幕は閉じる。
でも、傍らには愛しい浮竹がいるので、京楽は寂しくなかった。
ああ。
墜ちていく。
世界の果てに。
ああ。
愛している。
千年経っても、まだ浮竹を愛している。
ああ。
浮竹が迎えにきてくれてよかった。
甘い呼び声に、そっと身を任せて、ただ墜ちていく--------------------。
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温泉旅行
京楽と、温泉にやってきた。
湯治目的であるが、なんの病にもきく湯というちょっとうさんくさい温泉だった。
まぁ、せっかくまとまった休日を二人揃ってもらえたのだから、何処か小旅行でもいこうということになって、最近肺の発作をおこした浮竹のために、京楽が湯治はどうだと言い出したのだ。
浮竹は、京楽の心使いに感謝して、湯治にいくことにした。
瀞霊廷の端の端にあるその温泉旅館は寂れていた。
なんにでもきく湯というのがふれこみだが、きっとただの温泉なのだろう。
浮竹と京楽は2泊3日で泊まりこむことになったが、他の客はいなかった。
まぁ、お陰で露天風呂とか貸し切りだったし、寂れているとはいっても、閉店に追いやられるというほどでもなく、中は綺麗だった。
京楽が洋室を頼んだので、和室ではなくベッドで寝ることになった。
「とりあえず、温泉いこっか」
「そうだな。せっかくここまできたんだ。なんにでも効くってのがうさんくさいけど」
二人は、浴衣と下着をバスタオルを手に、露店風呂に入った。
互いの背中を流しあい、髪を洗いあった。
温泉は、白桃の湯で、ふんわりと甘い香りしがして、暖かかった。
「白桃か・・・・まさか京楽・・・」
「あ、ばれた?僕が、入れておいてって頼んだの」
「またお前はそうやって金を無駄にする・・・・・」
白桃の湯の元は高い。こんな温泉風呂をまるごと白桃の湯にするのにいくらかかったのか、考えたくなくて、浮竹は湯船にぶくぶくと浸かった。
先に京楽があがったが、浮竹はもう少し入るといった。
20分が経ち、流石におかしいと思った京楽が見たのは、ぷかりと浮かんでいる浮竹の姿だった。
「浮竹!」
「あー。湯当たり、しただけ、だから・・・・」
浮竹を抱き上げて、水気をふいて浴衣を着せてから、冷水を飲ませる。
ほてった体を冷やすために、氷をもらってきて氷まくらをつくり、その上に浮竹を寝かせた。
30分ほどで、浮竹は何もなかったかのように元気になった。
「温泉の効果は本当にあるんだろうか。温泉に入る前より、体調がよくなっている」
「さぁ、どうだろうね。血のめぐりがよくなっただけかもしれないよ。でも、体が楽になるのはいいことだ。また夜にでも入ろう」
二人で、することもなく旅館の中庭を散策したり、卓球をしたりした。
夕方になり、夕ご飯が運ばれてくる。
寂れた旅館のわりには、豪華だった。
「まさか、これも京楽が?」
「ううん。ここの旅館の料理だよ」
「ふむ・・・けっこうおいしいな。なんでこんなに寂れているんだろう」
「やっぱ、瀞霊廷の隅の隅にある立地条件と、なんにでも効く湯っていう、うさんくさいふれこみのせいじゃないかな」
「そうか・・・・・」
浮竹は思案する。
そして、旅館の女将に会って、効能をしぼったほうがいいと言っておいた。
翌日には、何でも効くという湯は、腰痛、血のめぐりがよくなるというフレーズにかわっていた。
浮竹はそれを見て、なんともいえない感覚を味わった。
まぁ、確かに血のめぐりはよくなった。体が軽い気がする。
腰痛はもっていないので分からなかったが。
1泊したその次の日も、温泉に入った。
普通の透明な湯だった。
浮竹が白桃の湯にするなというので、京楽がやめたのだ。
2日目は、湯あたりすることなく、今度はサウナに入った。
あまりの熱さに、浮竹はすぐに出て冷水に浸かった。
京楽はしばらくの間サウナに入っていた。
山本総隊長に尻に火をつけられるくらいなので、熱いのには耐性があるのだろう。
30分経って、冷水につかった京楽は、いい汗をかいたと嬉しそうだった。
2日目の夜になって、京楽が浮竹のベッドにやってくる。
「頬に赤みがさしているね。湯治、正解だったかもね」
「ん・・・・・・」
触れるだけのキスをされた。
「ねぇ、もっと求めていい?」
「聞くまでもないだろう」
京楽は、浮竹の浴衣を脱がせていく。
浮竹も京楽の浴衣を脱がせた。
「んっ」
口づけが深くなる。
京楽は労わるように浮竹を、優しく愛撫する。
「あ・・・・・・」
たちあがったものに手をかけられる。
「んんん!」
浮竹も、京楽のものに手を伸ばした。
お互い、こすりあって、ぬるぬると先走りの蜜で滑るのをそのままに、お互いをいかせようと手の動きを早くさせるが、快感に弱い浮竹が先に根をあげて、白濁した液体を放った。
「あああ!」
「君の中で君を犯して孕ませたい」
「春水・・・・・・」
「好きだよ、十四郎」
体内に潤滑油で濡らした指が入ってくる。解されて、とろとろになったそこに、まだいっていない京楽のものが宛がわれた。
「ああああ!」
みしりと、音をたてて引き裂かれた。
痛みはあるが、すぐに快感に変わったてしまった。男に抱かれ慣れてしまった体は、貪欲に快楽を求めている。
「キスを・・・・・」
浮竹は京楽とのキスが好きだ。
何度も深く口づけを繰り返し、突き上げられた。
「ひあう!やっ」
最奥を抉られて、浮竹は痙攣した。
同時にドクドクと最奥に注がれる京楽の熱を感じた。
「あ・・・く・・・ああ・・・んんん」
前立腺を突き上げられて、抉られて快楽に真っ白に染まる思考の中で、京楽の名を呼ぶ。
「春水・・・春水・・・・・」
「どうしたの、十四郎。僕はここにいるよ」
「好きだ・・・・」
「僕も大好きだよ」
突き上げられて、揺さぶられる。白い髪が乱れた。
お互い、出すものもないくらい睦みあって、満足した。
「温泉にいこう。このまま寝るのはいやだ」
「分かったよ」
浮竹はと京楽は、髪と体を洗い、浮竹の中にだしたものをかきだしてから、温泉に浸かった。
「この温泉は、血のめぐりのよさと腰痛に効くという効果にしたらしい」
「へー。高齢者の利用客が増えそうだね。腰痛だと。あとは女性かな。血のめぐりがよくなると冷え性とかもきくからね」
「まぁ、どっちも本当に効果があるのか分かったものじゃないが・・・」
「まぁいいじゃないの。人がくるようになれば、それでいいんじゃない?」
京楽の言葉に、浮竹は首を傾げる。
「でも、効かない効果で温泉というのもなぁ」
「まぁ、よければまたこよう。血のめぐりがよくなるのは本当っぽいから」
浮竹の頬には赤みがさしたままで、肺の発作もおこしそうになかった。
「じゃあ、いつかまたここにくるか」
「そうだね。来年なんてどう?」
「早いな」
浮竹が、クスリと笑う。
京楽も、クスリと笑った。
年に数回、一緒に休暇をとる。何処かへ出かけたりもするけど、基本雨乾堂でだらだら過ごす。
海燕が亡くなった今、副官を置いていない浮竹は仕事が京楽より多い。それでも、二人揃って休日をもぎとった。
「今度は違う温泉にいこう」
「じゃあ、流行ってるところいこうか」
「それも、いいかもな」
肺の発作がこのまま起きず、熱が出なかったらの話だが。
きっと、肺の発作も起こすし、熱も出すだろう。
でも、そんな時傍らに京楽がいてくれるだけで、苦しくなくなるのだ。
「俺は、お前のお陰で苦しくないんだ」
「何が?」
「お前が傍にいてくれると、発作の苦しみも熱も和らぐ気がする」
「じゃあ、発作おこしたら今まで通り傍にいればいいんだね」
「ああ」
何度も助けられてきた。
その甘い手に身を委ねて。
これからも、身を委ねていくのだろう。
そう思うのだった。
湯治目的であるが、なんの病にもきく湯というちょっとうさんくさい温泉だった。
まぁ、せっかくまとまった休日を二人揃ってもらえたのだから、何処か小旅行でもいこうということになって、最近肺の発作をおこした浮竹のために、京楽が湯治はどうだと言い出したのだ。
浮竹は、京楽の心使いに感謝して、湯治にいくことにした。
瀞霊廷の端の端にあるその温泉旅館は寂れていた。
なんにでもきく湯というのがふれこみだが、きっとただの温泉なのだろう。
浮竹と京楽は2泊3日で泊まりこむことになったが、他の客はいなかった。
まぁ、お陰で露天風呂とか貸し切りだったし、寂れているとはいっても、閉店に追いやられるというほどでもなく、中は綺麗だった。
京楽が洋室を頼んだので、和室ではなくベッドで寝ることになった。
「とりあえず、温泉いこっか」
「そうだな。せっかくここまできたんだ。なんにでも効くってのがうさんくさいけど」
二人は、浴衣と下着をバスタオルを手に、露店風呂に入った。
互いの背中を流しあい、髪を洗いあった。
温泉は、白桃の湯で、ふんわりと甘い香りしがして、暖かかった。
「白桃か・・・・まさか京楽・・・」
「あ、ばれた?僕が、入れておいてって頼んだの」
「またお前はそうやって金を無駄にする・・・・・」
白桃の湯の元は高い。こんな温泉風呂をまるごと白桃の湯にするのにいくらかかったのか、考えたくなくて、浮竹は湯船にぶくぶくと浸かった。
先に京楽があがったが、浮竹はもう少し入るといった。
20分が経ち、流石におかしいと思った京楽が見たのは、ぷかりと浮かんでいる浮竹の姿だった。
「浮竹!」
「あー。湯当たり、しただけ、だから・・・・」
浮竹を抱き上げて、水気をふいて浴衣を着せてから、冷水を飲ませる。
ほてった体を冷やすために、氷をもらってきて氷まくらをつくり、その上に浮竹を寝かせた。
30分ほどで、浮竹は何もなかったかのように元気になった。
「温泉の効果は本当にあるんだろうか。温泉に入る前より、体調がよくなっている」
「さぁ、どうだろうね。血のめぐりがよくなっただけかもしれないよ。でも、体が楽になるのはいいことだ。また夜にでも入ろう」
二人で、することもなく旅館の中庭を散策したり、卓球をしたりした。
夕方になり、夕ご飯が運ばれてくる。
寂れた旅館のわりには、豪華だった。
「まさか、これも京楽が?」
「ううん。ここの旅館の料理だよ」
「ふむ・・・けっこうおいしいな。なんでこんなに寂れているんだろう」
「やっぱ、瀞霊廷の隅の隅にある立地条件と、なんにでも効く湯っていう、うさんくさいふれこみのせいじゃないかな」
「そうか・・・・・」
浮竹は思案する。
そして、旅館の女将に会って、効能をしぼったほうがいいと言っておいた。
翌日には、何でも効くという湯は、腰痛、血のめぐりがよくなるというフレーズにかわっていた。
浮竹はそれを見て、なんともいえない感覚を味わった。
まぁ、確かに血のめぐりはよくなった。体が軽い気がする。
腰痛はもっていないので分からなかったが。
1泊したその次の日も、温泉に入った。
普通の透明な湯だった。
浮竹が白桃の湯にするなというので、京楽がやめたのだ。
2日目は、湯あたりすることなく、今度はサウナに入った。
あまりの熱さに、浮竹はすぐに出て冷水に浸かった。
京楽はしばらくの間サウナに入っていた。
山本総隊長に尻に火をつけられるくらいなので、熱いのには耐性があるのだろう。
30分経って、冷水につかった京楽は、いい汗をかいたと嬉しそうだった。
2日目の夜になって、京楽が浮竹のベッドにやってくる。
「頬に赤みがさしているね。湯治、正解だったかもね」
「ん・・・・・・」
触れるだけのキスをされた。
「ねぇ、もっと求めていい?」
「聞くまでもないだろう」
京楽は、浮竹の浴衣を脱がせていく。
浮竹も京楽の浴衣を脱がせた。
「んっ」
口づけが深くなる。
京楽は労わるように浮竹を、優しく愛撫する。
「あ・・・・・・」
たちあがったものに手をかけられる。
「んんん!」
浮竹も、京楽のものに手を伸ばした。
お互い、こすりあって、ぬるぬると先走りの蜜で滑るのをそのままに、お互いをいかせようと手の動きを早くさせるが、快感に弱い浮竹が先に根をあげて、白濁した液体を放った。
「あああ!」
「君の中で君を犯して孕ませたい」
「春水・・・・・・」
「好きだよ、十四郎」
体内に潤滑油で濡らした指が入ってくる。解されて、とろとろになったそこに、まだいっていない京楽のものが宛がわれた。
「ああああ!」
みしりと、音をたてて引き裂かれた。
痛みはあるが、すぐに快感に変わったてしまった。男に抱かれ慣れてしまった体は、貪欲に快楽を求めている。
「キスを・・・・・」
浮竹は京楽とのキスが好きだ。
何度も深く口づけを繰り返し、突き上げられた。
「ひあう!やっ」
最奥を抉られて、浮竹は痙攣した。
同時にドクドクと最奥に注がれる京楽の熱を感じた。
「あ・・・く・・・ああ・・・んんん」
前立腺を突き上げられて、抉られて快楽に真っ白に染まる思考の中で、京楽の名を呼ぶ。
「春水・・・春水・・・・・」
「どうしたの、十四郎。僕はここにいるよ」
「好きだ・・・・」
「僕も大好きだよ」
突き上げられて、揺さぶられる。白い髪が乱れた。
お互い、出すものもないくらい睦みあって、満足した。
「温泉にいこう。このまま寝るのはいやだ」
「分かったよ」
浮竹はと京楽は、髪と体を洗い、浮竹の中にだしたものをかきだしてから、温泉に浸かった。
「この温泉は、血のめぐりのよさと腰痛に効くという効果にしたらしい」
「へー。高齢者の利用客が増えそうだね。腰痛だと。あとは女性かな。血のめぐりがよくなると冷え性とかもきくからね」
「まぁ、どっちも本当に効果があるのか分かったものじゃないが・・・」
「まぁいいじゃないの。人がくるようになれば、それでいいんじゃない?」
京楽の言葉に、浮竹は首を傾げる。
「でも、効かない効果で温泉というのもなぁ」
「まぁ、よければまたこよう。血のめぐりがよくなるのは本当っぽいから」
浮竹の頬には赤みがさしたままで、肺の発作もおこしそうになかった。
「じゃあ、いつかまたここにくるか」
「そうだね。来年なんてどう?」
「早いな」
浮竹が、クスリと笑う。
京楽も、クスリと笑った。
年に数回、一緒に休暇をとる。何処かへ出かけたりもするけど、基本雨乾堂でだらだら過ごす。
海燕が亡くなった今、副官を置いていない浮竹は仕事が京楽より多い。それでも、二人揃って休日をもぎとった。
「今度は違う温泉にいこう」
「じゃあ、流行ってるところいこうか」
「それも、いいかもな」
肺の発作がこのまま起きず、熱が出なかったらの話だが。
きっと、肺の発作も起こすし、熱も出すだろう。
でも、そんな時傍らに京楽がいてくれるだけで、苦しくなくなるのだ。
「俺は、お前のお陰で苦しくないんだ」
「何が?」
「お前が傍にいてくれると、発作の苦しみも熱も和らぐ気がする」
「じゃあ、発作おこしたら今まで通り傍にいればいいんだね」
「ああ」
何度も助けられてきた。
その甘い手に身を委ねて。
これからも、身を委ねていくのだろう。
そう思うのだった。
2月の終わり
「2月も終わりだというのに、雪か・・・・」
白哉は、どんよりと曇った空を見て、ちらちら降りだした雪を手に受け止めた。
雪はすぐに水になってしまった。
今週は最後の寒波で、これがすぎると大分温度も温かくなるだろう。
梅の花も終わりか。
そう思いながら、執務室の窓硝子を閉じた。
「隊長、寒いでしょう」
恋次が、ストーブを近くにもってきてくれた。
「ああ、すまぬ」
「2月も終わりってのに雪ですか。なんか季節外れですね」
「雪ももう終わりだ。春の足音が聞こえてくる」
桜が満開になったら、千本桜も喜ぶだろう。同胞だと。
「3月が終わったら4月・・・・人事異動の季節ですね」
「お前には関係ないであろう」
「でも、席官がたまに入れ替わったり、新しい死神が入ってきますからね」
6番隊でも、新しい死神が10名ほど配属される予定だった。
みんな、白哉に憧れての入隊だった。
「入隊動機が、隊長に憧れてってばかりなのが気になりますが」
「そういうお前も、6番隊の副官になったのは私に憧れてであろう」
「まぁ、憧れがほとんどでしたけど、隊長を追い抜きたいって動機もありました」
「若造だった分際で、目標が大きすぎるな」
今では、卍解も双王蛇尾丸となり、副官に配属された頃に比べると数倍も強くなった。
それでも、まだ白哉に届かない。
届いたと思ったら、白哉は更に高みにいってしまう。
「いつになった、隊長に届くんですかね」
「お前は副隊長だ。私に届かなくともよいのだ。今のままでも十分に強いのだから」
「隊長・・・・・・」
白哉の細い体を抱き寄せる。
「いつか、追い越してみせます」
「できるものなら」
唇が重なった。
「ん・・・・」
「夜の技なら、負けないんですけどね」
かっと、白哉が赤くなる。
「お前は、何を言っているのだ」
「冗談ですよ、隊長。そう距離をとらないでください」
恋次が何かしかけてくるかもしれないと、身構える白哉を見て、恋次が笑う。
「今年の新人死神もしごくぞー」
「ほどほどにしておけ」
恋次の修行はきつい。新人にはたまったものではないだろう。
「隊長の修行のほうが、よほどきついですよ」
「そうか?」
「精神的にきますからね。自分の斬魄刀との対話もできないような死神は、6番隊にはいらないって言いますし」
「事実だ」
「でも、対話できるようになるのも時間がかかるんですよ」
「死神になった時点で、斬魄刀を持っているのだから、対話できないほうがおかしい」
「いや、新人はなかなか対話までいけませんから」
恋次がつっこむが、白哉は対話もできないほどの死神には、精神修行をさせた。
それがまたきついのだ。朝も昼も夜も、飯ぬきで、ただ座禅をして斬魄刀と向き合う。かろうじで水をとることは許されるが、それが2日は続くのだ。寝ることも許されない。
でも、それを乗り越えた死神は自分の斬魄刀と対話できるようになり、始解できなかった者も始解できるようになる。
6番隊の平隊士は、圧倒的に他の隊の平隊士より始解できる者が多い。
「命を賭けるのだから、始解くらいできぬような死神に、価値はない」
まぁ、どうしても始解までいけなくて、鬼道や白打で死神をしているような子もいるけれど。
「隊長は、そこらが厳しいです」
「そうか?」
恋次は、白哉の黒髪を手にとって、口づける。
「言いたいことはわかりますけど、入ったばかりの隊士を追い出すような真似はしないでくださいね」
「分かっている」
大戦を経験してからの白哉は、厳しさも緩くなった。昔は孤高であったが、今は隊士たちと歩み寄ったりしている。昔に比べて・・・白哉も変わったのだ。
優しくなったと思う。
「俺は、昔の気高い隊長も好きですが、どっちかっていうと、誰かを気遣うことを覚えた今の隊長のほうが好きです」
「そうか。今の私は、確かに昔の傲慢だった私を捨てた」
「隊長は、傲慢っていうより厳しいんですよ。自分自身に対して」
「ふ・・・・」
「隊長?」
「変わったのは、お前のせいかも、しれぬな。お前に愛されて、人を愛することを覚えた。弱い自分を受け入れることを覚えた」
「殺し文句ですか」
「んう・・・」
舌が絡まるキスをされて、恋次の腕の中で白哉は目を閉じた。
「変わろうと思えば、変われるものなのだと、知った」
白哉は、恋次の背中に手を回した。
「愛している、恋次」
「それはこっちの台詞です、隊長。愛してます」
ちらちらと降る雪はいつの間にか止んでいた。
2月の終わりの最後の雪は、あまり長く降らなかった。
季節が移ろうように、人も移ろう。
だが、白哉と恋次は変わらない。共に歩み道を進んでいくのだ。
白哉は、どんよりと曇った空を見て、ちらちら降りだした雪を手に受け止めた。
雪はすぐに水になってしまった。
今週は最後の寒波で、これがすぎると大分温度も温かくなるだろう。
梅の花も終わりか。
そう思いながら、執務室の窓硝子を閉じた。
「隊長、寒いでしょう」
恋次が、ストーブを近くにもってきてくれた。
「ああ、すまぬ」
「2月も終わりってのに雪ですか。なんか季節外れですね」
「雪ももう終わりだ。春の足音が聞こえてくる」
桜が満開になったら、千本桜も喜ぶだろう。同胞だと。
「3月が終わったら4月・・・・人事異動の季節ですね」
「お前には関係ないであろう」
「でも、席官がたまに入れ替わったり、新しい死神が入ってきますからね」
6番隊でも、新しい死神が10名ほど配属される予定だった。
みんな、白哉に憧れての入隊だった。
「入隊動機が、隊長に憧れてってばかりなのが気になりますが」
「そういうお前も、6番隊の副官になったのは私に憧れてであろう」
「まぁ、憧れがほとんどでしたけど、隊長を追い抜きたいって動機もありました」
「若造だった分際で、目標が大きすぎるな」
今では、卍解も双王蛇尾丸となり、副官に配属された頃に比べると数倍も強くなった。
それでも、まだ白哉に届かない。
届いたと思ったら、白哉は更に高みにいってしまう。
「いつになった、隊長に届くんですかね」
「お前は副隊長だ。私に届かなくともよいのだ。今のままでも十分に強いのだから」
「隊長・・・・・・」
白哉の細い体を抱き寄せる。
「いつか、追い越してみせます」
「できるものなら」
唇が重なった。
「ん・・・・」
「夜の技なら、負けないんですけどね」
かっと、白哉が赤くなる。
「お前は、何を言っているのだ」
「冗談ですよ、隊長。そう距離をとらないでください」
恋次が何かしかけてくるかもしれないと、身構える白哉を見て、恋次が笑う。
「今年の新人死神もしごくぞー」
「ほどほどにしておけ」
恋次の修行はきつい。新人にはたまったものではないだろう。
「隊長の修行のほうが、よほどきついですよ」
「そうか?」
「精神的にきますからね。自分の斬魄刀との対話もできないような死神は、6番隊にはいらないって言いますし」
「事実だ」
「でも、対話できるようになるのも時間がかかるんですよ」
「死神になった時点で、斬魄刀を持っているのだから、対話できないほうがおかしい」
「いや、新人はなかなか対話までいけませんから」
恋次がつっこむが、白哉は対話もできないほどの死神には、精神修行をさせた。
それがまたきついのだ。朝も昼も夜も、飯ぬきで、ただ座禅をして斬魄刀と向き合う。かろうじで水をとることは許されるが、それが2日は続くのだ。寝ることも許されない。
でも、それを乗り越えた死神は自分の斬魄刀と対話できるようになり、始解できなかった者も始解できるようになる。
6番隊の平隊士は、圧倒的に他の隊の平隊士より始解できる者が多い。
「命を賭けるのだから、始解くらいできぬような死神に、価値はない」
まぁ、どうしても始解までいけなくて、鬼道や白打で死神をしているような子もいるけれど。
「隊長は、そこらが厳しいです」
「そうか?」
恋次は、白哉の黒髪を手にとって、口づける。
「言いたいことはわかりますけど、入ったばかりの隊士を追い出すような真似はしないでくださいね」
「分かっている」
大戦を経験してからの白哉は、厳しさも緩くなった。昔は孤高であったが、今は隊士たちと歩み寄ったりしている。昔に比べて・・・白哉も変わったのだ。
優しくなったと思う。
「俺は、昔の気高い隊長も好きですが、どっちかっていうと、誰かを気遣うことを覚えた今の隊長のほうが好きです」
「そうか。今の私は、確かに昔の傲慢だった私を捨てた」
「隊長は、傲慢っていうより厳しいんですよ。自分自身に対して」
「ふ・・・・」
「隊長?」
「変わったのは、お前のせいかも、しれぬな。お前に愛されて、人を愛することを覚えた。弱い自分を受け入れることを覚えた」
「殺し文句ですか」
「んう・・・」
舌が絡まるキスをされて、恋次の腕の中で白哉は目を閉じた。
「変わろうと思えば、変われるものなのだと、知った」
白哉は、恋次の背中に手を回した。
「愛している、恋次」
「それはこっちの台詞です、隊長。愛してます」
ちらちらと降る雪はいつの間にか止んでいた。
2月の終わりの最後の雪は、あまり長く降らなかった。
季節が移ろうように、人も移ろう。
だが、白哉と恋次は変わらない。共に歩み道を進んでいくのだ。
院生時代の部屋 恐怖、押しかけ花嫁
朝起きると、白無垢姿の京楽がいた。
「ぶばっ」
その姿に、浮竹が吹き出す。
「何してるんだ、おまえ」
「え。浮竹と結婚する準備。白無垢は着てくれないだろうから僕が着るから、袴姿になってね正装してね」
置かれていた花婿の正装の和服に、浮竹は冗談に付き合うつもりで着替えた。
手をひかれて、移動する。
今の京楽は、押しかけ花嫁だ。
神主がいた。
酒を注がれて、京楽が飲み干す。浮竹は、飲み干さずに逃げ出した。
本気だった。
観客はいなかったけど、本気で結婚式を挙げるところだった。
その気のない浮竹は、寮に戻って着替えて、和服の正装を踏みつけた。
「危なかった・・・・・冗談のつもりだと思っていたら、本気なんだものな」
京楽の白無垢姿はあまりに滑稽で笑えたけど、あのまま酒を飲んでいれば、結婚が行われたことになってしまうだろう。
「京楽と結婚とか・・・ありえない」
親友以上恋人未満。この関係から外れるとしたら、ただの友人に戻るという選択肢で、京楽と結婚式を挙げて既成事実を作られ、迫られるなどもっての他だった。
「浮竹~」
白無垢姿の京楽が、逃げてきた浮竹を追って、寮に入ってくる。
「おまえなんかこうだ!」
白無垢をはぎとってやった。
「あーれー。浮竹ってば大胆♡」
「あほいってないで、服を着ろ!」
京楽の院生服を出してやり、それの顔に投げつけた。
「僕が花嫁なら、結婚してくれると思ったのになぁ」
「おまえみたいな花嫁、願い下げだ」
「やっぱり、花嫁は浮竹じゃないとだめか」
「そういう問題じゃない!男同士で結婚式なんて挙げれるわけないだろう」
京楽は、笑った。
「金さえ積めば、結婚式なんていくらでもできるんだよ」
「そんなことに金を積むな!俺はおまえと結婚する気はないからな!」
「えー。けちー」
「あほ!」
京楽の脛を蹴飛ばした。
「あいたっ」
「結婚式なんて挙げなくても、俺たちは今のままでもいいだろう?」
京楽を押し倒してみる。
京楽は、ふっと真顔になって、浮竹の頬に手を当てた。その手に手を重ねる。
自然と唇が重なった。
「んっ・・・・」
離れようとしても、京楽がむちゅーと吸い付いてきて離れない。
「この駄アホ!」
京楽の顎を殴って、軽い脳震盪を起こさせると、ばたりと京楽は倒れた。
「なんか最近、京楽のペースに乱されがちだな・・・・・」
とりあえず、京楽はベッドの上で寝かせて、布団で簀巻きにしておいた。
1時間ほどして気づいた京楽は、簀巻きにされたのに喜んでいた。
「浮竹、我慢できないからって僕を簀巻きにしなくても」
「おまえの頭は本当に花が咲いてるな」
京楽が、手を出してこないように簀巻きにしたのだ。
簀巻きにした京楽の傍に座る。ギシリと、二人分の体重をかけたベッドが軋んだ音をたてる。
「もう、白無垢とは笑える恰好はするな。それと、俺はお前と結婚式を挙げるつもりはない。遥かなる未来までは分からないが、今は挙げるつもりはこれぽっちもないからな」
「残念」
京楽が悲しそうな声を出すが、遥かなる未来までは分からないという言葉に、希望を見出したようだった。
「学院を卒業する頃には、君は僕のものになっている。その時に改めて結婚式を挙げよう」
「勝手に言ってろ」
浮竹はため息を零した。
次の日、普通に学院に登校する。
「結婚式は洋風のほうがいいの?」
「和風よりは俺は洋風のほうが好きだ」
「じゃあ、僕がウェディングドレスを着るね」
「やめろ、塑像してしまう。毛むくじゃらのウェディングドレス姿を想像させるな!」
「じゃあ、浮竹がウェディングドレス着てくれる?」
「バカ言うな。タキシードなら着てやってもいい」
他の生徒がいる中でそう言い合いあって、二人は夫婦になるとか噂がたったが、いつも通りのバカップルぶりに、周囲にまたこの二人は・・・・などと、思われるのだった。
「ぶばっ」
その姿に、浮竹が吹き出す。
「何してるんだ、おまえ」
「え。浮竹と結婚する準備。白無垢は着てくれないだろうから僕が着るから、袴姿になってね正装してね」
置かれていた花婿の正装の和服に、浮竹は冗談に付き合うつもりで着替えた。
手をひかれて、移動する。
今の京楽は、押しかけ花嫁だ。
神主がいた。
酒を注がれて、京楽が飲み干す。浮竹は、飲み干さずに逃げ出した。
本気だった。
観客はいなかったけど、本気で結婚式を挙げるところだった。
その気のない浮竹は、寮に戻って着替えて、和服の正装を踏みつけた。
「危なかった・・・・・冗談のつもりだと思っていたら、本気なんだものな」
京楽の白無垢姿はあまりに滑稽で笑えたけど、あのまま酒を飲んでいれば、結婚が行われたことになってしまうだろう。
「京楽と結婚とか・・・ありえない」
親友以上恋人未満。この関係から外れるとしたら、ただの友人に戻るという選択肢で、京楽と結婚式を挙げて既成事実を作られ、迫られるなどもっての他だった。
「浮竹~」
白無垢姿の京楽が、逃げてきた浮竹を追って、寮に入ってくる。
「おまえなんかこうだ!」
白無垢をはぎとってやった。
「あーれー。浮竹ってば大胆♡」
「あほいってないで、服を着ろ!」
京楽の院生服を出してやり、それの顔に投げつけた。
「僕が花嫁なら、結婚してくれると思ったのになぁ」
「おまえみたいな花嫁、願い下げだ」
「やっぱり、花嫁は浮竹じゃないとだめか」
「そういう問題じゃない!男同士で結婚式なんて挙げれるわけないだろう」
京楽は、笑った。
「金さえ積めば、結婚式なんていくらでもできるんだよ」
「そんなことに金を積むな!俺はおまえと結婚する気はないからな!」
「えー。けちー」
「あほ!」
京楽の脛を蹴飛ばした。
「あいたっ」
「結婚式なんて挙げなくても、俺たちは今のままでもいいだろう?」
京楽を押し倒してみる。
京楽は、ふっと真顔になって、浮竹の頬に手を当てた。その手に手を重ねる。
自然と唇が重なった。
「んっ・・・・」
離れようとしても、京楽がむちゅーと吸い付いてきて離れない。
「この駄アホ!」
京楽の顎を殴って、軽い脳震盪を起こさせると、ばたりと京楽は倒れた。
「なんか最近、京楽のペースに乱されがちだな・・・・・」
とりあえず、京楽はベッドの上で寝かせて、布団で簀巻きにしておいた。
1時間ほどして気づいた京楽は、簀巻きにされたのに喜んでいた。
「浮竹、我慢できないからって僕を簀巻きにしなくても」
「おまえの頭は本当に花が咲いてるな」
京楽が、手を出してこないように簀巻きにしたのだ。
簀巻きにした京楽の傍に座る。ギシリと、二人分の体重をかけたベッドが軋んだ音をたてる。
「もう、白無垢とは笑える恰好はするな。それと、俺はお前と結婚式を挙げるつもりはない。遥かなる未来までは分からないが、今は挙げるつもりはこれぽっちもないからな」
「残念」
京楽が悲しそうな声を出すが、遥かなる未来までは分からないという言葉に、希望を見出したようだった。
「学院を卒業する頃には、君は僕のものになっている。その時に改めて結婚式を挙げよう」
「勝手に言ってろ」
浮竹はため息を零した。
次の日、普通に学院に登校する。
「結婚式は洋風のほうがいいの?」
「和風よりは俺は洋風のほうが好きだ」
「じゃあ、僕がウェディングドレスを着るね」
「やめろ、塑像してしまう。毛むくじゃらのウェディングドレス姿を想像させるな!」
「じゃあ、浮竹がウェディングドレス着てくれる?」
「バカ言うな。タキシードなら着てやってもいい」
他の生徒がいる中でそう言い合いあって、二人は夫婦になるとか噂がたったが、いつも通りのバカップルぶりに、周囲にまたこの二人は・・・・などと、思われるのだった。
浮竹と京楽と海燕と 朝っぱらから盛った
「んっ・・・・んんっ・・・・・・」
朝に起こしにきた海燕が見たのは、乱れた着衣の浮竹と、それを押し倒している京楽の姿だった。
「なっ・・・あんたら、朝っぱらから何してるんだ!」
「え。せっくす」
「ばか、京楽、こんな朝からなんて・・・・んんっ」
浮竹の文句は、京楽の唇に塞がれて、届かない。
「海燕君、2時間どっかいってて。2時間後にまたきてね」
そう言って、海燕を雨乾堂から追い出して、京楽は浮竹との行為を再開した。
「もう、1か月も君を抱いてない・・・いい加減、我慢の限界だよ・・・・」
「だからって、何も朝に・・・・・」
「夜になって、抱こうとしたら眠ってしまうのはどこの誰だろうね」
「どこの、誰、だろうな」
浮竹は、体を這う恋人の指に翻弄されながら、言葉を濁した。
「んっ」
胸の先端を口に含まれて、もう片方を指でひっかかれて、ぴくんと浮竹の体が反応する。
「君なしじゃ、僕は狂ってしまう」
「俺は、別にこんな行為なくてもいいんだがな・・・・」
性欲の薄い浮竹にとって、京楽と体を重ねるのは苦痛ではなかったが、自分から抱かれにいくとかいうことはほとんどなかった。
しなかったらずっとしないままで、一人で抜いて処理することもしない。
「あああ!」
死覇装を脱がされて、花茎に手をかけられて、浮竹は喘いだ。
「君は、本当に淡泊だねぇ。そのくせ、ここはとろとろに愛されることを願っている」
蕾に潤滑油で濡れた指が突き入れられる。
2時間と時間を決めたので、行為は性急だった。
「んあ!」
浮竹の花茎を手でしごきながら、もう片方の手で浮竹の体内に埋めた指をばらばらに動かしていく。
「あ!」
前立腺を刺激されて、浮竹はいってしまった。
「もういいかな?」
潤滑油を直接注ぐくらいたっぷり中までいれられて、京楽の灼熱に引き裂かれた。
「ひあああああああ!」
「ん・・・久しぶりだから、狭いね」
「んあ・・・・ああ・・・・」
ズチュリと音をたてて、突き上げられる。
「あ!」
くちゅくちゅと音をたてて、浅い部分を抉り、次に最奥まで突き上げた。
「んあ!」
浮竹は、キスをねだってきた。
「京楽・・・・キス、して・・・・」
「愛してるよ、十四郎」
「春水・・・・」
睦み合いの時だけ、下の名で呼びあった。
「んん・・・・んう」
ぴちゃりと舌が絡みあう。
「あ!あ!・・・・やっ」
背後から突き上げられて、浮竹の白い髪が宙を舞う。
「やああ!」
「十四郎・・・・・・」
浮竹の腹の奥で、京楽は熱を弾けさせた。
でも、それだけではまだ行為は終わらない。
何度も、浮竹を貫いた。
抉られ、突き上げられて、浮竹も精液を吐きだしていた。
京楽に抱かれ慣れてしまった体は、京楽の行為に敏感に反応する。
お互い何も出ないほどに貪り合って、終わった。
「うわお。1時間45分。3時間にしてもらうべきだったかな」
「海燕がくるんだろう!早く風呂に入るぞ!」
浮竹は、とろりと太腿を京楽の出した精液が伝い落ちるのも構わずに、風呂に入って体や髪を洗ったりはせずに、行為の痕を洗い流した。
京楽が、浮竹の中に出したものをかき出す。
「んっ」
「もう、そんな声ださないでよ。またしたくなっちゃう」
「ばか!」
浮竹は慌てていたが、京楽はゆっくりしていた。
一人、湯船に浸かっている。
浮竹は先にあがって、髪をかわかしていた。
長い白髪は、なかなかかわいてくれない。水分をふきとって、あとは自然乾燥に任せることにした。
「・・・・・・失礼します」
ちょうど2時間きっちり経って、海燕が現れた。
「海燕、これはだな・・・・・」
「仕事は、してもらいますからね。ああもう、また髪を乾かしてないんですか。ドライヤーあるでしょ。乾かしますよ?」
「あ、ああ、すまない」
その時、京楽が風呂からあがってきた。
「すとーっぷ。浮竹の髪を乾かすのは、僕の役目だよ」
「どっちでもいいですけど。朝餉はなしです。いい年なんだから、朝っぱらから盛らずに夜に盛ってくださいね」
「ああ、すまない・・・・・・」
全くその通りだ。
まさか京楽が朝から盛ってくるとは思っていなかったので、浮竹も頷く。
「全部、京楽が悪いんだ」
ドライヤーで浮竹の髪を乾かしながら、京楽がにんまりと笑む。
「僕が悪いでいいよ。君を抱けるなら」
「ああもう、お前は!」
浮竹は、頭を抱えた。
「気にしないでください。俺は空気になれますから。どうぞ、気にせず睦み合うなり、仕事するなり、好きにしてください」
「海燕~~~」
情けない声をあげる浮竹に、京楽はキスをする。
「空気なら、何しても・・・・」
ばきっ。
浮竹に殴られて、京楽は地面に沈んだ。
「仕事するぞ、仕事!」
海燕が、京楽を踏みつけた。
「もぎゅっ!」
「ああ、いたんですか」
絶対、わざとだった。
「海燕君・・・・空気になれるわりには、わざとだね」
「そりゃわざとですよ。体の弱い上司を、朝っぱらから抱く他の隊の隊長なんて、この雨乾堂にはいりませんから」
「でも、浮竹は拒否しなかったよ」
「そりゃ、あんたとは夫婦ですからね」
「そうだねぇ。よく夫婦っていわれる」
「ああもう、京楽も海燕も、いいから仕事するぞ仕事!京楽も仕事もってきているんだろう?」
浮竹が聞くと、京楽は仕事をまた持ち込んでいて、浮竹と並んで黒檀の文机の上に書類を置き、二人で仕事にとりかかった。
すでに10時をこえており、仕事時間には遅刻だが、さぼることのない浮竹と、浮竹と一緒にいたいがために、わざわざ8番隊から仕事を持ち込む京楽は、けっこうなスピードで仕事を片していった。
やがて昼食の時間になる。
京楽がくると思っていなかったし、指示を忘れていたので、京楽だけ一般隊士の食事をとった。浮竹は隊長だけあって、一般隊士より豪華なメニューだった。
「今日は泊まっていくんですか」
「うん」
海燕は、夕食を二人分にするように、厨房に指示を出した。
浮竹が終わらせた書類をチェックしていく海燕は、溜息をつきつつ3時の休憩時間を入れた。
「冗談抜きに、朝から盛るんは勘弁してくださいね」
「悪かった」
「隊長に言ってるんじゃありません。そこの笠を被ったどこぞの隊長に言ってるんです」
「えー、うん、まぁなるべく夜にするから」
曖昧な回答をして、京楽はへらへらと笑った。
浮竹を抱けて満足して、浮竹と同じ空間にいれることを素直に喜んでいるのだ。
全く。
海燕は思う。
自分の隊長の恋人の分まで、食事とか世話を焼かないといけないのだが、浮竹のためと思えばそれも苦でないと思う自分がいるのに、苦笑するのだった。
朝に起こしにきた海燕が見たのは、乱れた着衣の浮竹と、それを押し倒している京楽の姿だった。
「なっ・・・あんたら、朝っぱらから何してるんだ!」
「え。せっくす」
「ばか、京楽、こんな朝からなんて・・・・んんっ」
浮竹の文句は、京楽の唇に塞がれて、届かない。
「海燕君、2時間どっかいってて。2時間後にまたきてね」
そう言って、海燕を雨乾堂から追い出して、京楽は浮竹との行為を再開した。
「もう、1か月も君を抱いてない・・・いい加減、我慢の限界だよ・・・・」
「だからって、何も朝に・・・・・」
「夜になって、抱こうとしたら眠ってしまうのはどこの誰だろうね」
「どこの、誰、だろうな」
浮竹は、体を這う恋人の指に翻弄されながら、言葉を濁した。
「んっ」
胸の先端を口に含まれて、もう片方を指でひっかかれて、ぴくんと浮竹の体が反応する。
「君なしじゃ、僕は狂ってしまう」
「俺は、別にこんな行為なくてもいいんだがな・・・・」
性欲の薄い浮竹にとって、京楽と体を重ねるのは苦痛ではなかったが、自分から抱かれにいくとかいうことはほとんどなかった。
しなかったらずっとしないままで、一人で抜いて処理することもしない。
「あああ!」
死覇装を脱がされて、花茎に手をかけられて、浮竹は喘いだ。
「君は、本当に淡泊だねぇ。そのくせ、ここはとろとろに愛されることを願っている」
蕾に潤滑油で濡れた指が突き入れられる。
2時間と時間を決めたので、行為は性急だった。
「んあ!」
浮竹の花茎を手でしごきながら、もう片方の手で浮竹の体内に埋めた指をばらばらに動かしていく。
「あ!」
前立腺を刺激されて、浮竹はいってしまった。
「もういいかな?」
潤滑油を直接注ぐくらいたっぷり中までいれられて、京楽の灼熱に引き裂かれた。
「ひあああああああ!」
「ん・・・久しぶりだから、狭いね」
「んあ・・・・ああ・・・・」
ズチュリと音をたてて、突き上げられる。
「あ!」
くちゅくちゅと音をたてて、浅い部分を抉り、次に最奥まで突き上げた。
「んあ!」
浮竹は、キスをねだってきた。
「京楽・・・・キス、して・・・・」
「愛してるよ、十四郎」
「春水・・・・」
睦み合いの時だけ、下の名で呼びあった。
「んん・・・・んう」
ぴちゃりと舌が絡みあう。
「あ!あ!・・・・やっ」
背後から突き上げられて、浮竹の白い髪が宙を舞う。
「やああ!」
「十四郎・・・・・・」
浮竹の腹の奥で、京楽は熱を弾けさせた。
でも、それだけではまだ行為は終わらない。
何度も、浮竹を貫いた。
抉られ、突き上げられて、浮竹も精液を吐きだしていた。
京楽に抱かれ慣れてしまった体は、京楽の行為に敏感に反応する。
お互い何も出ないほどに貪り合って、終わった。
「うわお。1時間45分。3時間にしてもらうべきだったかな」
「海燕がくるんだろう!早く風呂に入るぞ!」
浮竹は、とろりと太腿を京楽の出した精液が伝い落ちるのも構わずに、風呂に入って体や髪を洗ったりはせずに、行為の痕を洗い流した。
京楽が、浮竹の中に出したものをかき出す。
「んっ」
「もう、そんな声ださないでよ。またしたくなっちゃう」
「ばか!」
浮竹は慌てていたが、京楽はゆっくりしていた。
一人、湯船に浸かっている。
浮竹は先にあがって、髪をかわかしていた。
長い白髪は、なかなかかわいてくれない。水分をふきとって、あとは自然乾燥に任せることにした。
「・・・・・・失礼します」
ちょうど2時間きっちり経って、海燕が現れた。
「海燕、これはだな・・・・・」
「仕事は、してもらいますからね。ああもう、また髪を乾かしてないんですか。ドライヤーあるでしょ。乾かしますよ?」
「あ、ああ、すまない」
その時、京楽が風呂からあがってきた。
「すとーっぷ。浮竹の髪を乾かすのは、僕の役目だよ」
「どっちでもいいですけど。朝餉はなしです。いい年なんだから、朝っぱらから盛らずに夜に盛ってくださいね」
「ああ、すまない・・・・・・」
全くその通りだ。
まさか京楽が朝から盛ってくるとは思っていなかったので、浮竹も頷く。
「全部、京楽が悪いんだ」
ドライヤーで浮竹の髪を乾かしながら、京楽がにんまりと笑む。
「僕が悪いでいいよ。君を抱けるなら」
「ああもう、お前は!」
浮竹は、頭を抱えた。
「気にしないでください。俺は空気になれますから。どうぞ、気にせず睦み合うなり、仕事するなり、好きにしてください」
「海燕~~~」
情けない声をあげる浮竹に、京楽はキスをする。
「空気なら、何しても・・・・」
ばきっ。
浮竹に殴られて、京楽は地面に沈んだ。
「仕事するぞ、仕事!」
海燕が、京楽を踏みつけた。
「もぎゅっ!」
「ああ、いたんですか」
絶対、わざとだった。
「海燕君・・・・空気になれるわりには、わざとだね」
「そりゃわざとですよ。体の弱い上司を、朝っぱらから抱く他の隊の隊長なんて、この雨乾堂にはいりませんから」
「でも、浮竹は拒否しなかったよ」
「そりゃ、あんたとは夫婦ですからね」
「そうだねぇ。よく夫婦っていわれる」
「ああもう、京楽も海燕も、いいから仕事するぞ仕事!京楽も仕事もってきているんだろう?」
浮竹が聞くと、京楽は仕事をまた持ち込んでいて、浮竹と並んで黒檀の文机の上に書類を置き、二人で仕事にとりかかった。
すでに10時をこえており、仕事時間には遅刻だが、さぼることのない浮竹と、浮竹と一緒にいたいがために、わざわざ8番隊から仕事を持ち込む京楽は、けっこうなスピードで仕事を片していった。
やがて昼食の時間になる。
京楽がくると思っていなかったし、指示を忘れていたので、京楽だけ一般隊士の食事をとった。浮竹は隊長だけあって、一般隊士より豪華なメニューだった。
「今日は泊まっていくんですか」
「うん」
海燕は、夕食を二人分にするように、厨房に指示を出した。
浮竹が終わらせた書類をチェックしていく海燕は、溜息をつきつつ3時の休憩時間を入れた。
「冗談抜きに、朝から盛るんは勘弁してくださいね」
「悪かった」
「隊長に言ってるんじゃありません。そこの笠を被ったどこぞの隊長に言ってるんです」
「えー、うん、まぁなるべく夜にするから」
曖昧な回答をして、京楽はへらへらと笑った。
浮竹を抱けて満足して、浮竹と同じ空間にいれることを素直に喜んでいるのだ。
全く。
海燕は思う。
自分の隊長の恋人の分まで、食事とか世話を焼かないといけないのだが、浮竹のためと思えばそれも苦でないと思う自分がいるのに、苦笑するのだった。
浮竹と京楽と海燕と 海へ行く
3人で、許可をとって現世の海にきていた。
まだ春で、海水浴をするには早すぎる時期であるが、浮竹は一度海燕に、本物の海を見せてやりたがっていたので、京楽も一緒になってなんとか山じいから許可をもぎとった。
「これが海だぞ、海燕。お前の名前の元になるものだ」
「これが海ですか・・・・どこまでも、水が続いてるんですね」
海燕は、夕暮れに染まっていく海を、ただ見ていた。
「綺麗ですね」
「ああ、綺麗だろう。夕暮れになると、海も浜辺も街も、何もかもオレンジ色に染め上げられていく」
「どうせなら、夏にくればよかったのに」
京楽の言葉に、海燕もそうだなと思った。
「夏は・・・・暑いし、人が多いだろう。それに俺は直射日光に弱いから、夏はあまり外に出れない」
「それもそうだね」
京楽が、浮竹を抱き締めた。京楽の腕の中で、浮竹は申し訳なさそうにしていた。
滞在が許された時間は半日。
なので、夕暮れから夜にかけてを選んだ。
「せっかくだし、写真でも撮ろうか」
「そうだな」
カメラで、3人で夕暮れの海をバックに、写真をとった。
綺麗にとれて、後日焼き回しをして浮竹と京楽と海燕だけでなく、一般隊士までなぜか出回るようになった。
夜の海は静かだった。
ざぁんざぁんと、押し寄せては返す波を、海燕はただ見ていた。
「海って・・・綺麗だけど、なんか寂しいですね」
「そうか?」
「俺は雨乾堂にある池のほうが好きです」
「まぁ、人懐っこい鯉もいるしな」
雨乾堂にある池は、浮竹にとってもお気に入りだ。
「隊長、今日は海に連れてきてくださって、ありがとうございました。記憶に一生刻みこんでおきます」
「そんな大層なことじゃないだろう」
「だって、俺が現世にこれることなんてそうそうないですから」
「それを言えば、俺と京楽だって現世にはこれないぞ」
「まぁ、今回は僕が山じいを脅したに近いからね」
「なんだと!」
浮竹が気色ばむ。
「まぁまぁ。現世に行かせてくれないと、浮竹と一緒にかけおちするって言っただけだし」
京楽なら、その気になれば、本当に浮竹を連れて現世にでもかけおちしそうだった。
「山じい、困った顔してたねぇ。けっさくだった」
「あまり、先生を困らせるなよ」
「まぁ、お陰で海燕君は余計だけど、現世の海を二人で見れたことだし」
「また俺は空気ですか」
「うん」
「こら、京楽!海燕は空気じゃないぞ」
「隊長・・・」
自分の部下が空気扱いされたことに、浮竹が怒るが、そんな浮竹にキスを何度もしていると、浮竹はそれ以上空気じゃないとか言わなかった。
「んっ」
現世の、夜とはいえは浜辺で男同士でキスしているシーンを、他に見られてはなるまいと、海燕がきょろきょろと辺りを見回した。
「隊長、京楽隊長、盛るなら雨乾堂でしてください!」
手を伸ばせば、届きそうな星空が綺麗だった。
「多分、現世には今後ほとんどこれないだろう。海燕、もういいか?」
「はい。俺は別に、現世に興味なんて元からあんまりありませんから」
「そうか・・・・海を見せたこと、余計だったか・・・」
しゅんとしおれる浮竹を見て、海燕が首を横に振る。
「いえ、海は見れて感動しました」
「そうかそうか」
朗らかに笑う浮竹に、海燕も安堵する。
「多分、3人で現世にこれることなんてもうないだろうから。海燕、海は綺麗だろう。本当は、南の珊瑚礁のある昼の海も見せてやりたかったんだが、そっちは写真だけになるが、いいよな?」
「はい」
「もし、また許可が下りたら、夏に一度珊瑚礁の海にいこう。俺も直射日光でやられないように対策するから。京楽も、たまには現世の海で泳ぐのもいいだろう?」
「そうだねぇ。無人島なら、人に会う心配もないだろうし」
「じゃあ、決まりだ。もし、また現世にくることがあったら、昼の珊瑚礁の海に行こう」
「はい」
珊瑚礁の海。
とても綺麗な色をしていると、書物で読んだことがあった。
「じゃあ、戻ろうか。尸魂界へ」
「はい」
「うん、戻ろう。僕たちのいるべき場所へ」
名残惜しいが、滞在時間が限られている。海を最後に振り返った。3人で。
「また、いつか・・・・」
現世の海に手をふって、浮竹たちは穿界門をくぐった。
尸魂界に戻ると、山じいが待っていた。
「うげっ」
「こりゃ、春水!お主、ようもわしを脅しよったな!体の弱い十四郎が、お主と共にかけおちななど、考えてみればするはずもないことじゃ!」
ぼっと、流刃若火で京楽の尻に火がついた。
「あちゃちゃちゃ!」
「十四郎、その身になんの危険もなかったか?」
「はい、先生。海燕もついていてくれましたし」
浮竹は、尻に火がついた京楽の火を消してやってから、海燕を見た。
「ほんに、お主はよい副官をもった。志波海燕、今後も十四郎を頼む」
「はい!」
海燕は、山じいから直々に声をかけられて、感動で震えていた。
ああ。
やっぱり、浮竹隊長の副官でよかった。
そう思うのだった。
まだ春で、海水浴をするには早すぎる時期であるが、浮竹は一度海燕に、本物の海を見せてやりたがっていたので、京楽も一緒になってなんとか山じいから許可をもぎとった。
「これが海だぞ、海燕。お前の名前の元になるものだ」
「これが海ですか・・・・どこまでも、水が続いてるんですね」
海燕は、夕暮れに染まっていく海を、ただ見ていた。
「綺麗ですね」
「ああ、綺麗だろう。夕暮れになると、海も浜辺も街も、何もかもオレンジ色に染め上げられていく」
「どうせなら、夏にくればよかったのに」
京楽の言葉に、海燕もそうだなと思った。
「夏は・・・・暑いし、人が多いだろう。それに俺は直射日光に弱いから、夏はあまり外に出れない」
「それもそうだね」
京楽が、浮竹を抱き締めた。京楽の腕の中で、浮竹は申し訳なさそうにしていた。
滞在が許された時間は半日。
なので、夕暮れから夜にかけてを選んだ。
「せっかくだし、写真でも撮ろうか」
「そうだな」
カメラで、3人で夕暮れの海をバックに、写真をとった。
綺麗にとれて、後日焼き回しをして浮竹と京楽と海燕だけでなく、一般隊士までなぜか出回るようになった。
夜の海は静かだった。
ざぁんざぁんと、押し寄せては返す波を、海燕はただ見ていた。
「海って・・・綺麗だけど、なんか寂しいですね」
「そうか?」
「俺は雨乾堂にある池のほうが好きです」
「まぁ、人懐っこい鯉もいるしな」
雨乾堂にある池は、浮竹にとってもお気に入りだ。
「隊長、今日は海に連れてきてくださって、ありがとうございました。記憶に一生刻みこんでおきます」
「そんな大層なことじゃないだろう」
「だって、俺が現世にこれることなんてそうそうないですから」
「それを言えば、俺と京楽だって現世にはこれないぞ」
「まぁ、今回は僕が山じいを脅したに近いからね」
「なんだと!」
浮竹が気色ばむ。
「まぁまぁ。現世に行かせてくれないと、浮竹と一緒にかけおちするって言っただけだし」
京楽なら、その気になれば、本当に浮竹を連れて現世にでもかけおちしそうだった。
「山じい、困った顔してたねぇ。けっさくだった」
「あまり、先生を困らせるなよ」
「まぁ、お陰で海燕君は余計だけど、現世の海を二人で見れたことだし」
「また俺は空気ですか」
「うん」
「こら、京楽!海燕は空気じゃないぞ」
「隊長・・・」
自分の部下が空気扱いされたことに、浮竹が怒るが、そんな浮竹にキスを何度もしていると、浮竹はそれ以上空気じゃないとか言わなかった。
「んっ」
現世の、夜とはいえは浜辺で男同士でキスしているシーンを、他に見られてはなるまいと、海燕がきょろきょろと辺りを見回した。
「隊長、京楽隊長、盛るなら雨乾堂でしてください!」
手を伸ばせば、届きそうな星空が綺麗だった。
「多分、現世には今後ほとんどこれないだろう。海燕、もういいか?」
「はい。俺は別に、現世に興味なんて元からあんまりありませんから」
「そうか・・・・海を見せたこと、余計だったか・・・」
しゅんとしおれる浮竹を見て、海燕が首を横に振る。
「いえ、海は見れて感動しました」
「そうかそうか」
朗らかに笑う浮竹に、海燕も安堵する。
「多分、3人で現世にこれることなんてもうないだろうから。海燕、海は綺麗だろう。本当は、南の珊瑚礁のある昼の海も見せてやりたかったんだが、そっちは写真だけになるが、いいよな?」
「はい」
「もし、また許可が下りたら、夏に一度珊瑚礁の海にいこう。俺も直射日光でやられないように対策するから。京楽も、たまには現世の海で泳ぐのもいいだろう?」
「そうだねぇ。無人島なら、人に会う心配もないだろうし」
「じゃあ、決まりだ。もし、また現世にくることがあったら、昼の珊瑚礁の海に行こう」
「はい」
珊瑚礁の海。
とても綺麗な色をしていると、書物で読んだことがあった。
「じゃあ、戻ろうか。尸魂界へ」
「はい」
「うん、戻ろう。僕たちのいるべき場所へ」
名残惜しいが、滞在時間が限られている。海を最後に振り返った。3人で。
「また、いつか・・・・」
現世の海に手をふって、浮竹たちは穿界門をくぐった。
尸魂界に戻ると、山じいが待っていた。
「うげっ」
「こりゃ、春水!お主、ようもわしを脅しよったな!体の弱い十四郎が、お主と共にかけおちななど、考えてみればするはずもないことじゃ!」
ぼっと、流刃若火で京楽の尻に火がついた。
「あちゃちゃちゃ!」
「十四郎、その身になんの危険もなかったか?」
「はい、先生。海燕もついていてくれましたし」
浮竹は、尻に火がついた京楽の火を消してやってから、海燕を見た。
「ほんに、お主はよい副官をもった。志波海燕、今後も十四郎を頼む」
「はい!」
海燕は、山じいから直々に声をかけられて、感動で震えていた。
ああ。
やっぱり、浮竹隊長の副官でよかった。
そう思うのだった。
好きなものは好き9
金曜になっても、ルキアが一護の家に帰ってこなかった。
何故だろうと思いつつ、ルキアのメルアドにメールをいれる。返信はなかった。
土曜になった。ルキアはやっぱり、現世にこなかった。
まさかルキアの身に何かおきたのかと、いてもたってもいられずに、浦原に頼んで穿界門を開けてもらい、尸魂界に足を運ぶ。
もう慣れてしまった朽木邸までの道を歩いていく。
朽木邸では、梅の花が満開に咲いていた。4月になれば、きっと桜の花も満開になって、お花見とかでもするのに使われるのかもしれない。
「よお、白哉」
「兄は・・・何故、尸魂界にいる」
朽木邸に入った一護は、無断で屋敷内に入ることもできないので、とりあえず白哉を呼んだ。
白哉も今日は休日のようで、朽木邸にいた。
「ルキアか?」
「ああ。帰ってこないんだ。いつもなら、金曜の夜には現世にくるのに」
「インフルエンザにかかって、臥せっておる」
「そうかーインフルエンザかー・・・・・って、全然よくねぇ!会えるか?」
「よかろう。屋敷内に入るがよい。ルキアは寝室にいる」
何度か足を踏み入れたことのある、ルキアの寝室にやってきた。
中に入ると、ルキアが布団の上で寝ていた。
「ルキア・・・・寝てるのか?」
「ん・・・いちご?ついには幻聴と幻覚まで現れ出したか・・・私の命も、もう長くないな」
「インフルエンザ程度で、何不吉なこといってやがる」
ルキアの髪に手を伸ばす。
「いちご?本物なのか?」
ルキアが吃驚して、半身を起き上がらせた。
「ああ、いいから寝てろ!熱あるんだろ?」
「すまぬ・・・・金曜には帰ろうと思っていたのだが、この通りインフルエンザにかかってしまってな・・・・熱が下がらぬので、現世にいくのは中止にしたのだ。メールを送ろうと思っていたのだが、眩暈がして打てなかった」
ルキアは、一護の言葉に甘えて横になった。
「事情は理解したから、もういい。メールもなかったし、ルキアの身に何か危険なことが起きたのかと思ったけど、インフルエンザなら、治れば大丈夫だしな」
「すまぬ。せめて、メールだけでも送るべきだった。私の身を案じてわざわざ尸魂界まできてくれたのであろう?」
「ああ、そうだけど。まぁインフルエンザも病気だけど、命に関わるものじゃないから・・・本当に、よかった」
布団に寝ているルキアを自分のほうに抱き締めた。
「ばか、うつるぞ」
「俺、予防注射打ってるから、多分大丈夫だ」
「だが・・・・・」
ルキアの頬にキスをする。
予防接種を受けているからといって、100%かからないわけではないので、唇にキスしたかったが、頬にした。
「身の周りのことはどうしてるんだ?」
「それは、ちよが・・・・」
「ああ、ルキアお付きのあの女の人か」
時間が少し経ち、そのちよが消化によさそうなお粥をもってきてくれた。
「ああ、そこにおいてくれ。俺が食べさせるから」
「はい、一護様。ルキア様、何か他に欲しい物はございませんか?」
「特にない。ありがとうちよ」
「かしこまりました。では、夕方には夕食と、お風呂に入れませんので体を清めるための蒸しタオルを用意しますね」
「ああ」
一護は、ルキアのお粥を手にすると、スプーンを一口もって、ルキアの口元にもっていた。
ルキアは雛鳥のように、一護からお粥を食べていく。
「なんか、親鳥になった気分だ」
「私は雛鳥になった気分だ」
互いに、笑いあった。
お粥を食べ終えたルキアに、解熱剤を含んだ薬を飲ませた。
「一護、現世には戻らぬのか?」
「今日はルキアの部屋に泊まる」
「でも、インフルエンザがうつってしまうと・・・・」
「そん時はそん時だ」
一護は、寝てばかりで暇なルキアに、自分の子供の頃の話をしてやった。
やがて夕方になり、一護の分も含めた食事が出された。
ルキアの熱は大分下がり、普通の食事になった。
「やっぱ美味いな、お前んとこの家の食事って」
「それは、4大貴族朽木家お抱えの料理人だからな」
「なんかルキアの家に泊まるのって、ちょっとした旅館に泊まる気分になる」
「ふふ・・・じゃあ、しばらく泊まるか?」
「まぁ、月曜の朝までなら」
食事を一緒にとり、まだ熱が少しあり、風呂に入れないのでルキアの体を一護がふいてやった。その後、一護は風呂を借りた。
浴衣を出してもらい、着ていたものは洗濯されることになった。男用の新しい下着をもらい、それを着ているのだが、いつものはきなれたボクサーパンツではない、トランクスタイプで、ちょっと違和感があったが文句はいえない。
ふんどしじゃないだけましだ。
ルキアの隣に布団をしいて、ルキアと一緒に眠った。
ルキアは、薬がきいているのか、日中も眠っていたのに、すうすうと静かな寝息を立てていた。
そんなルキアの髪をかきあげて、額にキスをした。
「尸魂界にきてよかった・・・ルキアが無事だって分かったから」
一護も、眠りについた。
次の日も熱はまだあったが、ルキアは元気そうだった。一護が傍にいるせいかもしれない。
半身を起こし、一護と背中合わせで適当に見繕ってもらった書物を読んでいた。
「あははは!」
ルキアは、最近売り出され始めた漫画を読んで笑っていた。一護は、感動する小説を読んで涙ぐんでいた。
「それ、そんなに笑えるのか?その漫画」
「そういう貴様こそ、そのような小説で泣けるのか?」
日曜は、退屈といえば退屈だが、ルキアの傍にいるだけで幸せな気分になれた。
互いに読み終わり、それぞれ読んでいたものを交換する。
一護は大爆笑し、ルキアはボロボロと大泣きした。
「なんか、尸魂界の読み物も侮れないな・・・・・・」
一護は、笑いすぎで腹の筋肉が痛かった。ルキアは泣きすぎて、目がはれていた。
「ルキア、あんま泣くな。小説のせいだって分かってるけど、俺が泣かしてる気分になってくる」
「だって・・・パトラッシュが・・・・・」
現世の物語を多少ぱくってはいたが、泣けた。
「ああ、パトラッシュ・・・・一護は、どこかパトラッシュに似ているな」
「誰がパトラッシュだ」
小説の中のパトラッシュも犬だった。
「熱は?」
ルキアの額に額を当てると、もう平熱だった。一護にインフルエンザがうつった様子もない。
「明日には、俺も現世に戻るから。今日も泊まってく」
「ああ。そうしろ、一護。たまには我が家で週末を過ごすのもよいな」
白哉は、一護が泊まることについて、何も言わなかった。
すでに嫁に出したようなものとして、考えているのだろう。
いつか、ルキアと結婚式を挙げよう。
一護はそう思った。尸魂界でも現世でも。
でも、大学を卒業するまでの間は、彼氏彼女の関係が続くのだろう。それでもいいと、思った。
結婚したところで、今の関係が強固になるだけで、周囲にルキアは俺のものだと知らしめるもので・・・・・急ぐ必要もない気がした。
何故だろうと思いつつ、ルキアのメルアドにメールをいれる。返信はなかった。
土曜になった。ルキアはやっぱり、現世にこなかった。
まさかルキアの身に何かおきたのかと、いてもたってもいられずに、浦原に頼んで穿界門を開けてもらい、尸魂界に足を運ぶ。
もう慣れてしまった朽木邸までの道を歩いていく。
朽木邸では、梅の花が満開に咲いていた。4月になれば、きっと桜の花も満開になって、お花見とかでもするのに使われるのかもしれない。
「よお、白哉」
「兄は・・・何故、尸魂界にいる」
朽木邸に入った一護は、無断で屋敷内に入ることもできないので、とりあえず白哉を呼んだ。
白哉も今日は休日のようで、朽木邸にいた。
「ルキアか?」
「ああ。帰ってこないんだ。いつもなら、金曜の夜には現世にくるのに」
「インフルエンザにかかって、臥せっておる」
「そうかーインフルエンザかー・・・・・って、全然よくねぇ!会えるか?」
「よかろう。屋敷内に入るがよい。ルキアは寝室にいる」
何度か足を踏み入れたことのある、ルキアの寝室にやってきた。
中に入ると、ルキアが布団の上で寝ていた。
「ルキア・・・・寝てるのか?」
「ん・・・いちご?ついには幻聴と幻覚まで現れ出したか・・・私の命も、もう長くないな」
「インフルエンザ程度で、何不吉なこといってやがる」
ルキアの髪に手を伸ばす。
「いちご?本物なのか?」
ルキアが吃驚して、半身を起き上がらせた。
「ああ、いいから寝てろ!熱あるんだろ?」
「すまぬ・・・・金曜には帰ろうと思っていたのだが、この通りインフルエンザにかかってしまってな・・・・熱が下がらぬので、現世にいくのは中止にしたのだ。メールを送ろうと思っていたのだが、眩暈がして打てなかった」
ルキアは、一護の言葉に甘えて横になった。
「事情は理解したから、もういい。メールもなかったし、ルキアの身に何か危険なことが起きたのかと思ったけど、インフルエンザなら、治れば大丈夫だしな」
「すまぬ。せめて、メールだけでも送るべきだった。私の身を案じてわざわざ尸魂界まできてくれたのであろう?」
「ああ、そうだけど。まぁインフルエンザも病気だけど、命に関わるものじゃないから・・・本当に、よかった」
布団に寝ているルキアを自分のほうに抱き締めた。
「ばか、うつるぞ」
「俺、予防注射打ってるから、多分大丈夫だ」
「だが・・・・・」
ルキアの頬にキスをする。
予防接種を受けているからといって、100%かからないわけではないので、唇にキスしたかったが、頬にした。
「身の周りのことはどうしてるんだ?」
「それは、ちよが・・・・」
「ああ、ルキアお付きのあの女の人か」
時間が少し経ち、そのちよが消化によさそうなお粥をもってきてくれた。
「ああ、そこにおいてくれ。俺が食べさせるから」
「はい、一護様。ルキア様、何か他に欲しい物はございませんか?」
「特にない。ありがとうちよ」
「かしこまりました。では、夕方には夕食と、お風呂に入れませんので体を清めるための蒸しタオルを用意しますね」
「ああ」
一護は、ルキアのお粥を手にすると、スプーンを一口もって、ルキアの口元にもっていた。
ルキアは雛鳥のように、一護からお粥を食べていく。
「なんか、親鳥になった気分だ」
「私は雛鳥になった気分だ」
互いに、笑いあった。
お粥を食べ終えたルキアに、解熱剤を含んだ薬を飲ませた。
「一護、現世には戻らぬのか?」
「今日はルキアの部屋に泊まる」
「でも、インフルエンザがうつってしまうと・・・・」
「そん時はそん時だ」
一護は、寝てばかりで暇なルキアに、自分の子供の頃の話をしてやった。
やがて夕方になり、一護の分も含めた食事が出された。
ルキアの熱は大分下がり、普通の食事になった。
「やっぱ美味いな、お前んとこの家の食事って」
「それは、4大貴族朽木家お抱えの料理人だからな」
「なんかルキアの家に泊まるのって、ちょっとした旅館に泊まる気分になる」
「ふふ・・・じゃあ、しばらく泊まるか?」
「まぁ、月曜の朝までなら」
食事を一緒にとり、まだ熱が少しあり、風呂に入れないのでルキアの体を一護がふいてやった。その後、一護は風呂を借りた。
浴衣を出してもらい、着ていたものは洗濯されることになった。男用の新しい下着をもらい、それを着ているのだが、いつものはきなれたボクサーパンツではない、トランクスタイプで、ちょっと違和感があったが文句はいえない。
ふんどしじゃないだけましだ。
ルキアの隣に布団をしいて、ルキアと一緒に眠った。
ルキアは、薬がきいているのか、日中も眠っていたのに、すうすうと静かな寝息を立てていた。
そんなルキアの髪をかきあげて、額にキスをした。
「尸魂界にきてよかった・・・ルキアが無事だって分かったから」
一護も、眠りについた。
次の日も熱はまだあったが、ルキアは元気そうだった。一護が傍にいるせいかもしれない。
半身を起こし、一護と背中合わせで適当に見繕ってもらった書物を読んでいた。
「あははは!」
ルキアは、最近売り出され始めた漫画を読んで笑っていた。一護は、感動する小説を読んで涙ぐんでいた。
「それ、そんなに笑えるのか?その漫画」
「そういう貴様こそ、そのような小説で泣けるのか?」
日曜は、退屈といえば退屈だが、ルキアの傍にいるだけで幸せな気分になれた。
互いに読み終わり、それぞれ読んでいたものを交換する。
一護は大爆笑し、ルキアはボロボロと大泣きした。
「なんか、尸魂界の読み物も侮れないな・・・・・・」
一護は、笑いすぎで腹の筋肉が痛かった。ルキアは泣きすぎて、目がはれていた。
「ルキア、あんま泣くな。小説のせいだって分かってるけど、俺が泣かしてる気分になってくる」
「だって・・・パトラッシュが・・・・・」
現世の物語を多少ぱくってはいたが、泣けた。
「ああ、パトラッシュ・・・・一護は、どこかパトラッシュに似ているな」
「誰がパトラッシュだ」
小説の中のパトラッシュも犬だった。
「熱は?」
ルキアの額に額を当てると、もう平熱だった。一護にインフルエンザがうつった様子もない。
「明日には、俺も現世に戻るから。今日も泊まってく」
「ああ。そうしろ、一護。たまには我が家で週末を過ごすのもよいな」
白哉は、一護が泊まることについて、何も言わなかった。
すでに嫁に出したようなものとして、考えているのだろう。
いつか、ルキアと結婚式を挙げよう。
一護はそう思った。尸魂界でも現世でも。
でも、大学を卒業するまでの間は、彼氏彼女の関係が続くのだろう。それでもいいと、思った。
結婚したところで、今の関係が強固になるだけで、周囲にルキアは俺のものだと知らしめるもので・・・・・急ぐ必要もない気がした。
浮竹と京楽と海燕と 安心の空気
「起きろおおおおおおおお」
「もう春だし、起きてる」
ずさーーーー。
海燕は、畳の上を滑った。
浮竹が意地汚く10時とか11時とかまで寝るのは、決まって寒い冬だった。冬眠する動物のようだ。
春がくると、自分から8時には起き出した。
桜の花が舞い散る季節。
雨乾堂の庭に植えてある、少し大きな桜の木も今が満開だった。
「桜かぁ・・・・春ですね」
「そうだな。腹が減った。飯はまだか」
「はいはい。今用意しますから」
ぼけーっと桜の花を見ながら、浮竹は朝食を食べだした。
のろーりとした動きで、見ていて非常に腹立たしかった。
「もっときびきびしてください!」
「だって、春なんだぞ・・・・・」
「あんたは、冬眠から起きた熊かなんかか!」
「はぁ・・・春は眠くなる」
食事をしながら、途中から浮竹は寝落ちしていた。
「ああ、全く手のかかる!」
水でぬれたタオルで、浮竹の鼻と口を抑えた。
「ぶは!死ぬ!」
「どうですか。これなら、目が覚めるでしょう」
「お前、上司を殺す気か!」
浮竹は、窒息させた海燕に文句を言う。だが、確かに目が覚めた。さっきまでの眠気など、どこかに吹き飛んでしまった。
「はぁ・・・もう朝食はいい。さげてくれ」
珍しく残した浮竹を見て、海燕は額に手を当てる。
ほんのり熱かった。
「熱がありますね。今日の仕事は中止です。寝てください」
「お前な、あんな起こし方をしておいて、次は寝ろって滅茶苦茶だな」
「あんたの熱があるのが悪いんです」
「春でも熱が出る自分が疎ましい」
布団をしいて、薬を飲んで横になった。
「入るよ~~~」
呑気な声で、京楽が暖簾をあげて入ってきた。
右手には、仕事を抱えていた。
今日も、いつのものように雨乾堂で仕事をして、浮竹と同じ時間を過ごすつもりだったのだろう。だが、肝心の浮竹が額にタオルを置かれて寝ているのを見て、仕事の書類を自分用に置いてもらっている黒檀の文机の上に乗せる。
「大丈夫?熱あるの?辛くない?」
「寝てないといけないのが辛い」
「気分はいいんだね。熱があるわりには元気そうで安心したよ」
京楽はほっとして、浮竹の頬に手を当てる。
その手に、浮竹は手を重ねた。
「お前の体温、心地よいな」
「僕の手でいいなら、いくらでも触っていていいよ」
「はいはい。仕事をもってきたんでしょう、京楽隊長。一人で仕事してくださいね」
「海燕君のけちーーーーー」
海燕にそういいながら、京楽は仕方なく仕事をはじめた。
その姿を見ながら、浮竹が時折京楽の名を呼ぶ。
「京楽」
「ん、どうしたの?」
「好きだ」
「うん、僕も好きだよ」
また仕事を始める京楽。
「京楽」
「なぁに?」
「昼飯は、一緒に食べよう」
「そうだね」
京楽は優しく微笑みながら、浮竹と会話をする。
時折仕事を放りだして、寝ている浮竹にキスをしたりしてくるが、熱があるのでキスやハグまでで、それ以上はしてこない。
海燕は、そんな二人を不思議そうに見ながら、仕事をしていた。
数百年と一緒にいたら、こうも自然体でいれるのだろうか。そんなことを考えた。
「京楽隊長は、俺がいなかったら、もっと隊長といちゃついてますか?」
「いや、そんなことないよ。熱がある浮竹に無理はさせられないからね。それに、いちゃついてる時は僕にとって海燕君は空気だから」
空気。
そう言われて、そうだろうなぁと納得した。
海燕がいるのに、堂々と浮竹にキスをするのだ。空気か、似たような扱いじゃないと、キスできたりしないだろう。
「でも、とってもできた空気だと思ってるよ」
「空気空気って、連呼しないでください」
「あ、ごめん。でも、海燕君がいるお陰で、僕も安心できるからね」
海燕は、その言葉にくらりときた。
女ったらしと言われる京楽であるが、副官たらしだ。海燕は京楽の言葉に胸がほっこりした。
自分がいる場所は、ここしかない。
同時にそう思うのだった。
「もう春だし、起きてる」
ずさーーーー。
海燕は、畳の上を滑った。
浮竹が意地汚く10時とか11時とかまで寝るのは、決まって寒い冬だった。冬眠する動物のようだ。
春がくると、自分から8時には起き出した。
桜の花が舞い散る季節。
雨乾堂の庭に植えてある、少し大きな桜の木も今が満開だった。
「桜かぁ・・・・春ですね」
「そうだな。腹が減った。飯はまだか」
「はいはい。今用意しますから」
ぼけーっと桜の花を見ながら、浮竹は朝食を食べだした。
のろーりとした動きで、見ていて非常に腹立たしかった。
「もっときびきびしてください!」
「だって、春なんだぞ・・・・・」
「あんたは、冬眠から起きた熊かなんかか!」
「はぁ・・・春は眠くなる」
食事をしながら、途中から浮竹は寝落ちしていた。
「ああ、全く手のかかる!」
水でぬれたタオルで、浮竹の鼻と口を抑えた。
「ぶは!死ぬ!」
「どうですか。これなら、目が覚めるでしょう」
「お前、上司を殺す気か!」
浮竹は、窒息させた海燕に文句を言う。だが、確かに目が覚めた。さっきまでの眠気など、どこかに吹き飛んでしまった。
「はぁ・・・もう朝食はいい。さげてくれ」
珍しく残した浮竹を見て、海燕は額に手を当てる。
ほんのり熱かった。
「熱がありますね。今日の仕事は中止です。寝てください」
「お前な、あんな起こし方をしておいて、次は寝ろって滅茶苦茶だな」
「あんたの熱があるのが悪いんです」
「春でも熱が出る自分が疎ましい」
布団をしいて、薬を飲んで横になった。
「入るよ~~~」
呑気な声で、京楽が暖簾をあげて入ってきた。
右手には、仕事を抱えていた。
今日も、いつのものように雨乾堂で仕事をして、浮竹と同じ時間を過ごすつもりだったのだろう。だが、肝心の浮竹が額にタオルを置かれて寝ているのを見て、仕事の書類を自分用に置いてもらっている黒檀の文机の上に乗せる。
「大丈夫?熱あるの?辛くない?」
「寝てないといけないのが辛い」
「気分はいいんだね。熱があるわりには元気そうで安心したよ」
京楽はほっとして、浮竹の頬に手を当てる。
その手に、浮竹は手を重ねた。
「お前の体温、心地よいな」
「僕の手でいいなら、いくらでも触っていていいよ」
「はいはい。仕事をもってきたんでしょう、京楽隊長。一人で仕事してくださいね」
「海燕君のけちーーーーー」
海燕にそういいながら、京楽は仕方なく仕事をはじめた。
その姿を見ながら、浮竹が時折京楽の名を呼ぶ。
「京楽」
「ん、どうしたの?」
「好きだ」
「うん、僕も好きだよ」
また仕事を始める京楽。
「京楽」
「なぁに?」
「昼飯は、一緒に食べよう」
「そうだね」
京楽は優しく微笑みながら、浮竹と会話をする。
時折仕事を放りだして、寝ている浮竹にキスをしたりしてくるが、熱があるのでキスやハグまでで、それ以上はしてこない。
海燕は、そんな二人を不思議そうに見ながら、仕事をしていた。
数百年と一緒にいたら、こうも自然体でいれるのだろうか。そんなことを考えた。
「京楽隊長は、俺がいなかったら、もっと隊長といちゃついてますか?」
「いや、そんなことないよ。熱がある浮竹に無理はさせられないからね。それに、いちゃついてる時は僕にとって海燕君は空気だから」
空気。
そう言われて、そうだろうなぁと納得した。
海燕がいるのに、堂々と浮竹にキスをするのだ。空気か、似たような扱いじゃないと、キスできたりしないだろう。
「でも、とってもできた空気だと思ってるよ」
「空気空気って、連呼しないでください」
「あ、ごめん。でも、海燕君がいるお陰で、僕も安心できるからね」
海燕は、その言葉にくらりときた。
女ったらしと言われる京楽であるが、副官たらしだ。海燕は京楽の言葉に胸がほっこりした。
自分がいる場所は、ここしかない。
同時にそう思うのだった。
恋する瞬間 終章一瞬でいい
一護が大学を卒業した6月。
尸魂界では、豪華な結婚式を挙げた。
隊長副隊長がほぼ全員集い、白哉に付き添われた白無垢のルキアが入場する。
一護は、正装して袴をはき、ルキアと酒を飲み交わしあい、婚姻は大勢の祝福の中終わりを迎えた。
尸魂界での婚姻が終わった後は、現世での婚姻だった。
式場を探し、白哉が金を出して一流ホテルの結婚式場とロビーを貸し切りにして、現世でも結婚式を行った。
尸魂界ではこれなかった、井上、石田、茶虎、たつき、水色、啓吾もきていた。
一心と双子の妹もきていた。
「ルキア・・・・2回目の結婚式になるけど、しんどくないか?」
「貴様となら、何度でも結婚式を挙げてやる」
真っ白な純白のウェディングドレスとウェディングヴェールを被ったルキアは美しかった。
白無垢のルキアも綺麗だったけれど、一護としてはウェディングドレス姿のルキアの方が、個人的に好きだった。
誓いの台詞を口にして、結婚指輪をはめあい、キスをする。
あまりの幸せさに、ルキアは涙を零していた。
一護と一緒に、これからも生きていく。
そう、新たに誓った。
新居は、白哉が金を出して買ってくれたこじんまりとした一軒家だった。週末にしかこれないルキアのために、時折ちよが世話係をしてきてくれた。
幸せだった。
死神と人であるため、子はできなかったが、いつまでも一緒にいた。
やがて年月はあっという間に過ぎさり、一護は60手前で亡くなった。
魂葬をして、その魂魄を尸魂界へと導くルキア。
涙は流れなかった。
何故なら、ここからがまた新たなスタートだから。
尸魂界にきた一護は、17歳の姿になっていた。
「ルキア・・・・愛してる。永遠の愛を、お前に」
「一護・・・私も愛している。今度は、子が欲しいのだ。現世では子が成せなかったからな」
夕暮れのオレンジ色に染まる尸魂界で、一護は2回目になるプロポーズをした。
「ルキア。死神となった俺と、永遠を生きてくれ」
「一護・・・・ああ、私は貴様と共に歩く」
3回目になる結婚式を挙げて、ルキアと一護は二人の子供に恵まれて、一護は13番隊の副隊長に就任した。
「見てるかい浮竹・・・・ルキアちゃんに、家族ができたよ」
尸魂界で仲睦ましく過ごす一護とルキアを見て、京楽は浮竹の墓の前で報告をしていた。
「あれ、京楽さん?」
「おや、一護君にルキアちゃんじゃないか。どうしたんだい」
「いや、浮竹さんの墓参りに・・・・・・」
「京楽総隊長も、墓参りですか?」
そう聞いてくるルキアに、京楽は笑顔で、浮竹に報告していたんだと言ってくれた。
京楽が、一護の我儘を受け入れて、ルキアの高校生活を許してくれなかったら、今の一護とルキアは多分なかった。
ルキアは見合いの相手か恋次と結婚して、一護は井上と結婚していただろう。
もう、遠い話だが。
「一護君の霊圧は変わったね・・・・守るものができたせいか、更に強くなったかもしれない」
「あー。死神代行してた頃より、霊圧ちょっとあがってるみたいで」:
「京楽総隊長、一護は私の存在のせいで変わったというのです」
「まぁ、ルキアちゃん。守るものができると、男は強くなるものだよ。子供たちは元気かい?」
今日は子供たちの面倒は、ちよに見てもらっている。
「はい。二人ともやんちゃすぎるくらいで、元気です」
一護は、浮竹の墓に菊の花を添えて、おはぎを供えた。
「やあ、嬉しいねぇ。年月が経ったのに、一護君は浮竹の好物を覚えてくれてていたのかい」
「はい。お世話になったし」
「浮竹も、あの世で喜んでいるよ。13番隊の副隊長には、流石に慣れたでしょ」
こくりと、一護は頷いた。
今の13番隊の隊長はルキアだ。
もう、ずっと昔から。
ルキアは、まだ20代前半の容姿を保っていた。下手をすると10代でも通るかもしれない。
一方の一護は、17歳のまま時が止まったかのようだった。
一度死別して、尸魂界でまた巡り合い、実質3回目の結婚をした。
子供二人に恵まれて、幸せな家庭を築けている。
「じゃあ、俺たちはこれで」
「京楽総隊長、ではまた」
「ああ、またね」
恋する瞬間は、一瞬。
でも、恋した後は、ずっと恋が続くのだ。
だから、恋する瞬間は一瞬でいい。
一護とルキアは、ゆっくりと流れていく時間に身を任せながら、永遠の愛を誓い合い、寄り添いあうのだった。
尸魂界では、豪華な結婚式を挙げた。
隊長副隊長がほぼ全員集い、白哉に付き添われた白無垢のルキアが入場する。
一護は、正装して袴をはき、ルキアと酒を飲み交わしあい、婚姻は大勢の祝福の中終わりを迎えた。
尸魂界での婚姻が終わった後は、現世での婚姻だった。
式場を探し、白哉が金を出して一流ホテルの結婚式場とロビーを貸し切りにして、現世でも結婚式を行った。
尸魂界ではこれなかった、井上、石田、茶虎、たつき、水色、啓吾もきていた。
一心と双子の妹もきていた。
「ルキア・・・・2回目の結婚式になるけど、しんどくないか?」
「貴様となら、何度でも結婚式を挙げてやる」
真っ白な純白のウェディングドレスとウェディングヴェールを被ったルキアは美しかった。
白無垢のルキアも綺麗だったけれど、一護としてはウェディングドレス姿のルキアの方が、個人的に好きだった。
誓いの台詞を口にして、結婚指輪をはめあい、キスをする。
あまりの幸せさに、ルキアは涙を零していた。
一護と一緒に、これからも生きていく。
そう、新たに誓った。
新居は、白哉が金を出して買ってくれたこじんまりとした一軒家だった。週末にしかこれないルキアのために、時折ちよが世話係をしてきてくれた。
幸せだった。
死神と人であるため、子はできなかったが、いつまでも一緒にいた。
やがて年月はあっという間に過ぎさり、一護は60手前で亡くなった。
魂葬をして、その魂魄を尸魂界へと導くルキア。
涙は流れなかった。
何故なら、ここからがまた新たなスタートだから。
尸魂界にきた一護は、17歳の姿になっていた。
「ルキア・・・・愛してる。永遠の愛を、お前に」
「一護・・・私も愛している。今度は、子が欲しいのだ。現世では子が成せなかったからな」
夕暮れのオレンジ色に染まる尸魂界で、一護は2回目になるプロポーズをした。
「ルキア。死神となった俺と、永遠を生きてくれ」
「一護・・・・ああ、私は貴様と共に歩く」
3回目になる結婚式を挙げて、ルキアと一護は二人の子供に恵まれて、一護は13番隊の副隊長に就任した。
「見てるかい浮竹・・・・ルキアちゃんに、家族ができたよ」
尸魂界で仲睦ましく過ごす一護とルキアを見て、京楽は浮竹の墓の前で報告をしていた。
「あれ、京楽さん?」
「おや、一護君にルキアちゃんじゃないか。どうしたんだい」
「いや、浮竹さんの墓参りに・・・・・・」
「京楽総隊長も、墓参りですか?」
そう聞いてくるルキアに、京楽は笑顔で、浮竹に報告していたんだと言ってくれた。
京楽が、一護の我儘を受け入れて、ルキアの高校生活を許してくれなかったら、今の一護とルキアは多分なかった。
ルキアは見合いの相手か恋次と結婚して、一護は井上と結婚していただろう。
もう、遠い話だが。
「一護君の霊圧は変わったね・・・・守るものができたせいか、更に強くなったかもしれない」
「あー。死神代行してた頃より、霊圧ちょっとあがってるみたいで」:
「京楽総隊長、一護は私の存在のせいで変わったというのです」
「まぁ、ルキアちゃん。守るものができると、男は強くなるものだよ。子供たちは元気かい?」
今日は子供たちの面倒は、ちよに見てもらっている。
「はい。二人ともやんちゃすぎるくらいで、元気です」
一護は、浮竹の墓に菊の花を添えて、おはぎを供えた。
「やあ、嬉しいねぇ。年月が経ったのに、一護君は浮竹の好物を覚えてくれてていたのかい」
「はい。お世話になったし」
「浮竹も、あの世で喜んでいるよ。13番隊の副隊長には、流石に慣れたでしょ」
こくりと、一護は頷いた。
今の13番隊の隊長はルキアだ。
もう、ずっと昔から。
ルキアは、まだ20代前半の容姿を保っていた。下手をすると10代でも通るかもしれない。
一方の一護は、17歳のまま時が止まったかのようだった。
一度死別して、尸魂界でまた巡り合い、実質3回目の結婚をした。
子供二人に恵まれて、幸せな家庭を築けている。
「じゃあ、俺たちはこれで」
「京楽総隊長、ではまた」
「ああ、またね」
恋する瞬間は、一瞬。
でも、恋した後は、ずっと恋が続くのだ。
だから、恋する瞬間は一瞬でいい。
一護とルキアは、ゆっくりと流れていく時間に身を任せながら、永遠の愛を誓い合い、寄り添いあうのだった。
浮竹死んだけど幽霊です憑いてます25 浮竹、舞う
浮竹は、霊体のまま甘味屋で甘味物を食べまくっていた。
注文されて、もってこられるものを、片っ端からさっさっと消して食べていく。
実体化するためのエネルギーを蓄えるためだった。
「よく食べるねぇ」
「実体化するには、エネルギーがいるからな。ただ憑いてるだけなら、お前の霊圧を食っているだけでいいんだが」
浮竹はすでに死人だ。
何の悪戯だか、幽霊になって復活した。
京楽にとり憑いていて、始めは離れることさえできなかった。
実体化できるようになったり、長距離を離れていれるようになったりと、できることは増えていった。1日実体化できるようになったら、長い時間を抱かれるようになった。
それまでは、喘ぎ声を無理にあげて、京楽が自分で抜くのを手伝ったりしてやっていた。
今は月に2日くらい実体化できるので、その時に抱かれて、京楽が一人で抜くことはなくなったが、回数が生前よりぐっと減ったので、意識を飛ばしてしまうまで抱かれることが多かった。
軽く6人前くらいを食べて、浮竹は満足したようだった。
京楽と、会計に向かう。
けっこうな金額になったが、浮竹のためなら金なんていくらでも出す京楽だ。痛くも痒くもなかった。
「桜の季節だな・・・・・・」
甘味屋を出て、並木道を歩くと、桜が綺麗に咲いていた。
「ちょっと待ってなよ」
京楽が、背伸びして桜の花を手に戻ってきた。
「ちょっと実体化して」
「あ、ああ・・・・・」
実体化した浮竹の髪に、桜を飾った。
「白い髪だから、もっと濃い色がいいかもしれないけど、とっても似合っているよ。幻想的で綺麗だよ」
「ありがとう」
浮竹は、頬を朱くして霊体に戻った。
桜の花も、霊体化してしまう。
「今度、花見に行こうか。そうだね、ルキアちゃんたちも誘って」
「ああ、それはいいな。朽木家に、阿散井家、両方誘おう」
白哉とルキアと恋次と、あと生まれた苺花で、花見に行こうと決める。
「場所はどこがいいかな?」
「普通に、朽木邸でいいんじゃないか」
「まぁ、苺花ちゃんは幼いから、遠出するわけにもいかないしね」
本当なら、山奥に二人の秘密の桜の園があるのだが、流石にそこまでは行けそうになかった。
「じゃあ、明日花見にしよう!」
「えらい、早いな」
「桜が散る頃は、人事異動で仕事も忙しくなるからね」
「そうか・・・・・京楽も、一応総隊長だもんな」
「一応は余計だよ」
「はははは」
浮竹は、朗らかに笑った。
どんなに京楽が忙しくても、いつも一緒にいるのだ。寂しくはない。
そして、次の日本当に、白哉とルキアと恋次、そして苺花を連れて朽木家で花見を行った。
「兄は・・・・また、今年も我が家で花見か」
京楽は、白哉にそう言われて、笑った。
「ここらへんじゃ、朽木家が一番花見にいいくらい、綺麗に桜が咲いているんだから」
「ふむ・・・まぁいい。浮竹とは、うまくいってるのか?」
「うん。もうばっちり」
その浮竹は、ルキアと恋次と話し込んでいた。
「おーい浮竹」
「なんだ、京楽」
「朽木隊長が、僕らはうまくいっているのかって聞いてきたんだけど、夜の営みもしてるし、うまくいってるよね?」
浮竹は、真っ赤になって京楽の頭を殴った。
実体化して、すとんと地面に降り立つ。
「浮竹隊長!」
苺花をちよに託したルキアが、実体化した浮竹が珍しくて笑顔で寄ってきた。
「浮竹隊長、せっかくなんですから、食べて飲んでください!」
「え、ああ・・・・」
「ルキア、無理はさせるなよ」
「恋次、貴様は黙っておれ!浮竹隊長が実体化されるのは珍しいことなのだぞ」
「いや、そうか?けっこう俺、京楽総隊長と一緒にいるとき、実体化してる場面に出くわすことあるが・・・・・」
「何、ずるいぞ貴様!」
自分の夫を責めるルキアに、浮竹が苦笑する。
「まぁまぁ、今日は花見にきたんだ。仲よくやろう」
「はい」
きらきらした顔で、ルキアは浮竹を見ていた。ルキアにとって、いつまで経っても浮竹は上司なのだ。例え死んでいても。
朽木家の料理が振る舞われて、浮竹も京楽もその味を楽しんだ。
酒が用意されて、飲んでいく。
ふと、浮竹が桜の散る庭で、舞うといいだした。
ちらちらと散る桜の中、白い髪をなびかせて舞う浮竹は綺麗だった。
京楽だけでなく、白哉まで見入っていた。
「拙くて、すまない」
「浮竹、兄の舞いは、素晴らしかった」
「そうか?」
白哉の言葉に、浮竹が照れる。
「いや、ほんとに綺麗でした浮竹隊長」
「さすがです、浮竹隊長」
恋次とルキアにまで褒められて、浮竹は照れ隠しに酒をあおった。
「いつもは、京楽の前でしか舞わなないんだがな」
「独り占めはよくありません!」
ルキアが京楽にそう詰め寄ると、参ったねといいながら、京楽は酒をあおった。
「ルキアも、舞ったらどうだ?」
恋次に言われて、酒が大分入っていたせいか、いつもはそういうことは断るルキアもその気になった。
袖白雪を抜き放ち、剣舞を披露する。
その美しさに、浮竹も拍手を送っていた。
「朽木の舞のほうが、綺麗だと思うぞ」
「そんなことありません!浮竹隊長の舞のほうが綺麗でした」
皆に意見を聞くと、どちらも素晴らしかったと言われて、二人してちょっと赤くなった。
酒を追加して飲みあい、騒ぎあいながら、朽木家の花見は終了した。
「今度は・・・そうだね、また来年くらいになったら、あの山奥の秘密の場所で、花見をしよう」
そう誘ってくる京楽に、浮竹は静かに頷く。
「大人数での花見もいいが・・・・お前と二人きりの花見も、いいものだしな」
手を出してこないのであれば、であるが。
3時間ほど実体化していた浮竹は、最後に京楽に抱き締められて、霊体化した。
「君の舞、よかったよ。見るのは何十年ぶりかな」
「そういえば、舞うこと自体久しぶりだったからな」
「ねぇ、また舞ってよ。霊体のままでいいから、僕だけのために」
「いいぞ」
寝る前に、京楽の前で浮竹は霊体のままで舞いをした。
花見の席では、普通の舞いであったが、寝る前は双魚理を霊体化して剣舞を舞った。
「綺麗だねぇ。心が洗い流されるようだよ」
「大げさだぞ」
舞いを終えて、一息つく。
「水飲むかい」
「ああ」
水がさっと消える。
「君の舞いを見れるのは、嬉しいことだね」
「こんなことくらい、何時でも言ってくれればするのに」
「君が舞いをすること自体、珍しくて忘れていたよ」
「実は、俺自身も忘れていた・・・・ただ、桜が散っていく様を見ていると、体が勝手に動き出していた」
「珍しいこともあるものだね・・・・そろそろ、もう、寝ようか」
「そうだな。夜も大分更けてしまった。明日に障るといけないから、寝るか」
京楽が、ベッドにもぐりこむ。その横に、浮竹も霊体のまま寝転ぶ。
幽霊だけど、睡眠もちゃんととるのだ、浮竹は。
京楽が眠りについたのを確認して、浮竹も眠った。
次の日、京楽は仕事にとりかかっていたが、いつもは起きている浮竹は寝坊で寝たままだった。京楽は浮竹を起こさなかった。
久し振りに深く眠っているようで、そっとしておいた。
浮竹が起きると、昼を過ぎていた。
「おはよう。よく寝れたかい?」
「舞いを舞ったことで、エネルギーが消耗されてしまったようだ。お前の霊圧を吸い上げている・・・・すまない」
「いいよ、そんなこと。吸い上げてるっていってもちょっとでしょ。僕自身、霊圧が吸われているとか感じていないし。その程度のこと、別にいいよ」
「朝食を食べ損ねた。昼食は食べてもいいか?」
「ああ、うん。これからとろうと思っていたところだから。食堂までいこう」
「ああ」
霊体化した浮竹を伴って、食堂にいくと、いつものように視線が集まった。
まぁ、京楽だけでも視線が集まるのに、浮竹が透けてその隣にいるのが原因だった。
「ほらほら、見世物じゃないよ。散った散った」
京楽が声をかけると、皆視線を彷徨わせる。
「俺は、別に見られても平気だが・・・・」
「僕がやなの。君は僕だけのものだ。僕以外のやつが、君を見るのがいやだ」
「無茶苦茶な理由だな」
「そうだよ。嫉妬深いからね」
「はぁ・・・・・」
京楽がここまで浮竹に執着を見せるようになったのは、幽霊になってからだ。昔はそんなことなかったのに。
一度失ったことで、相当の悲しみを味合わせてしまったのだろうなと思い、浮竹は実体化して京楽にキスをした。
「浮竹?」
「俺からの、返答だ。嫉妬深くならなくていい。俺はずっと、お前の傍にいる」
「浮竹・・・・・・」
京楽は、心の中がじんわりと暖かくなるのを感じつつ、浮竹と昼食をとるのだった。
注文されて、もってこられるものを、片っ端からさっさっと消して食べていく。
実体化するためのエネルギーを蓄えるためだった。
「よく食べるねぇ」
「実体化するには、エネルギーがいるからな。ただ憑いてるだけなら、お前の霊圧を食っているだけでいいんだが」
浮竹はすでに死人だ。
何の悪戯だか、幽霊になって復活した。
京楽にとり憑いていて、始めは離れることさえできなかった。
実体化できるようになったり、長距離を離れていれるようになったりと、できることは増えていった。1日実体化できるようになったら、長い時間を抱かれるようになった。
それまでは、喘ぎ声を無理にあげて、京楽が自分で抜くのを手伝ったりしてやっていた。
今は月に2日くらい実体化できるので、その時に抱かれて、京楽が一人で抜くことはなくなったが、回数が生前よりぐっと減ったので、意識を飛ばしてしまうまで抱かれることが多かった。
軽く6人前くらいを食べて、浮竹は満足したようだった。
京楽と、会計に向かう。
けっこうな金額になったが、浮竹のためなら金なんていくらでも出す京楽だ。痛くも痒くもなかった。
「桜の季節だな・・・・・・」
甘味屋を出て、並木道を歩くと、桜が綺麗に咲いていた。
「ちょっと待ってなよ」
京楽が、背伸びして桜の花を手に戻ってきた。
「ちょっと実体化して」
「あ、ああ・・・・・」
実体化した浮竹の髪に、桜を飾った。
「白い髪だから、もっと濃い色がいいかもしれないけど、とっても似合っているよ。幻想的で綺麗だよ」
「ありがとう」
浮竹は、頬を朱くして霊体に戻った。
桜の花も、霊体化してしまう。
「今度、花見に行こうか。そうだね、ルキアちゃんたちも誘って」
「ああ、それはいいな。朽木家に、阿散井家、両方誘おう」
白哉とルキアと恋次と、あと生まれた苺花で、花見に行こうと決める。
「場所はどこがいいかな?」
「普通に、朽木邸でいいんじゃないか」
「まぁ、苺花ちゃんは幼いから、遠出するわけにもいかないしね」
本当なら、山奥に二人の秘密の桜の園があるのだが、流石にそこまでは行けそうになかった。
「じゃあ、明日花見にしよう!」
「えらい、早いな」
「桜が散る頃は、人事異動で仕事も忙しくなるからね」
「そうか・・・・・京楽も、一応総隊長だもんな」
「一応は余計だよ」
「はははは」
浮竹は、朗らかに笑った。
どんなに京楽が忙しくても、いつも一緒にいるのだ。寂しくはない。
そして、次の日本当に、白哉とルキアと恋次、そして苺花を連れて朽木家で花見を行った。
「兄は・・・・また、今年も我が家で花見か」
京楽は、白哉にそう言われて、笑った。
「ここらへんじゃ、朽木家が一番花見にいいくらい、綺麗に桜が咲いているんだから」
「ふむ・・・まぁいい。浮竹とは、うまくいってるのか?」
「うん。もうばっちり」
その浮竹は、ルキアと恋次と話し込んでいた。
「おーい浮竹」
「なんだ、京楽」
「朽木隊長が、僕らはうまくいっているのかって聞いてきたんだけど、夜の営みもしてるし、うまくいってるよね?」
浮竹は、真っ赤になって京楽の頭を殴った。
実体化して、すとんと地面に降り立つ。
「浮竹隊長!」
苺花をちよに託したルキアが、実体化した浮竹が珍しくて笑顔で寄ってきた。
「浮竹隊長、せっかくなんですから、食べて飲んでください!」
「え、ああ・・・・」
「ルキア、無理はさせるなよ」
「恋次、貴様は黙っておれ!浮竹隊長が実体化されるのは珍しいことなのだぞ」
「いや、そうか?けっこう俺、京楽総隊長と一緒にいるとき、実体化してる場面に出くわすことあるが・・・・・」
「何、ずるいぞ貴様!」
自分の夫を責めるルキアに、浮竹が苦笑する。
「まぁまぁ、今日は花見にきたんだ。仲よくやろう」
「はい」
きらきらした顔で、ルキアは浮竹を見ていた。ルキアにとって、いつまで経っても浮竹は上司なのだ。例え死んでいても。
朽木家の料理が振る舞われて、浮竹も京楽もその味を楽しんだ。
酒が用意されて、飲んでいく。
ふと、浮竹が桜の散る庭で、舞うといいだした。
ちらちらと散る桜の中、白い髪をなびかせて舞う浮竹は綺麗だった。
京楽だけでなく、白哉まで見入っていた。
「拙くて、すまない」
「浮竹、兄の舞いは、素晴らしかった」
「そうか?」
白哉の言葉に、浮竹が照れる。
「いや、ほんとに綺麗でした浮竹隊長」
「さすがです、浮竹隊長」
恋次とルキアにまで褒められて、浮竹は照れ隠しに酒をあおった。
「いつもは、京楽の前でしか舞わなないんだがな」
「独り占めはよくありません!」
ルキアが京楽にそう詰め寄ると、参ったねといいながら、京楽は酒をあおった。
「ルキアも、舞ったらどうだ?」
恋次に言われて、酒が大分入っていたせいか、いつもはそういうことは断るルキアもその気になった。
袖白雪を抜き放ち、剣舞を披露する。
その美しさに、浮竹も拍手を送っていた。
「朽木の舞のほうが、綺麗だと思うぞ」
「そんなことありません!浮竹隊長の舞のほうが綺麗でした」
皆に意見を聞くと、どちらも素晴らしかったと言われて、二人してちょっと赤くなった。
酒を追加して飲みあい、騒ぎあいながら、朽木家の花見は終了した。
「今度は・・・そうだね、また来年くらいになったら、あの山奥の秘密の場所で、花見をしよう」
そう誘ってくる京楽に、浮竹は静かに頷く。
「大人数での花見もいいが・・・・お前と二人きりの花見も、いいものだしな」
手を出してこないのであれば、であるが。
3時間ほど実体化していた浮竹は、最後に京楽に抱き締められて、霊体化した。
「君の舞、よかったよ。見るのは何十年ぶりかな」
「そういえば、舞うこと自体久しぶりだったからな」
「ねぇ、また舞ってよ。霊体のままでいいから、僕だけのために」
「いいぞ」
寝る前に、京楽の前で浮竹は霊体のままで舞いをした。
花見の席では、普通の舞いであったが、寝る前は双魚理を霊体化して剣舞を舞った。
「綺麗だねぇ。心が洗い流されるようだよ」
「大げさだぞ」
舞いを終えて、一息つく。
「水飲むかい」
「ああ」
水がさっと消える。
「君の舞いを見れるのは、嬉しいことだね」
「こんなことくらい、何時でも言ってくれればするのに」
「君が舞いをすること自体、珍しくて忘れていたよ」
「実は、俺自身も忘れていた・・・・ただ、桜が散っていく様を見ていると、体が勝手に動き出していた」
「珍しいこともあるものだね・・・・そろそろ、もう、寝ようか」
「そうだな。夜も大分更けてしまった。明日に障るといけないから、寝るか」
京楽が、ベッドにもぐりこむ。その横に、浮竹も霊体のまま寝転ぶ。
幽霊だけど、睡眠もちゃんととるのだ、浮竹は。
京楽が眠りについたのを確認して、浮竹も眠った。
次の日、京楽は仕事にとりかかっていたが、いつもは起きている浮竹は寝坊で寝たままだった。京楽は浮竹を起こさなかった。
久し振りに深く眠っているようで、そっとしておいた。
浮竹が起きると、昼を過ぎていた。
「おはよう。よく寝れたかい?」
「舞いを舞ったことで、エネルギーが消耗されてしまったようだ。お前の霊圧を吸い上げている・・・・すまない」
「いいよ、そんなこと。吸い上げてるっていってもちょっとでしょ。僕自身、霊圧が吸われているとか感じていないし。その程度のこと、別にいいよ」
「朝食を食べ損ねた。昼食は食べてもいいか?」
「ああ、うん。これからとろうと思っていたところだから。食堂までいこう」
「ああ」
霊体化した浮竹を伴って、食堂にいくと、いつものように視線が集まった。
まぁ、京楽だけでも視線が集まるのに、浮竹が透けてその隣にいるのが原因だった。
「ほらほら、見世物じゃないよ。散った散った」
京楽が声をかけると、皆視線を彷徨わせる。
「俺は、別に見られても平気だが・・・・」
「僕がやなの。君は僕だけのものだ。僕以外のやつが、君を見るのがいやだ」
「無茶苦茶な理由だな」
「そうだよ。嫉妬深いからね」
「はぁ・・・・・」
京楽がここまで浮竹に執着を見せるようになったのは、幽霊になってからだ。昔はそんなことなかったのに。
一度失ったことで、相当の悲しみを味合わせてしまったのだろうなと思い、浮竹は実体化して京楽にキスをした。
「浮竹?」
「俺からの、返答だ。嫉妬深くならなくていい。俺はずっと、お前の傍にいる」
「浮竹・・・・・・」
京楽は、心の中がじんわりと暖かくなるのを感じつつ、浮竹と昼食をとるのだった。
翡翠に溶ける番外編
「浮竹」
花の神を半身に宿らせて、薄紅色の髪になった京楽が、浮竹の元を訪れた。
死ぬはずだった命を救われたが、代わりに京楽が神の器になった。
「浮竹、大丈夫?」
肺の病は癒えたのだが、熱を出す虚弱体質はそのままで、今日も浮竹は熱を出していた。
肺の病が癒えたが、熱が出やすくなってしまい、前とあまり変わらぬくらいに臥せっていた。
今の浮竹に霊圧はない。もっていた膨大な霊圧は、生命力に変換されてしまった。
「おはぎもってきたんだけど・・・・食べれる?」
「ああ・・・今日は微熱なんだ。頭が少し痛いが、肺の発作を思えばこれくらい平気だ」
布団に半身を起こした浮竹の背を支えてやり、まずは白湯を飲ませた。
「そういえば、最近甘味屋に行っていないな・・・・・・」
「熱が下がったたら、行こうね」
「ああ、そうだな」
二人で寄り添いあう。
死ぬはずだった浮竹の運命を変えた、花の神。
運命を変えられた、浮竹。
運命を変えられることを望み、器となった京楽。
思いは様々だが、こうやってまた一緒に生きれることが嬉しかった。
もう、浮竹に死の気配はない。
肺の病は、花の神の力で癒された。
浮竹は、京楽がもってきてくれたおはぎを食べた。
もう、浮竹は13番隊隊長ではない。その地位は、ルキアが継いだ。
霊圧を失くした浮竹は、13番隊の隊長補佐となっていた。もう戦う力はないが、書類仕事などを任されていた。
「お互い、早く引退したいものだな」
「その気になれば、君は引退できたのに」
「まだ、人生長いんだぞ。それに俺だけ引退しても、お前が引退しないと意味がない。一緒に生きると、決めたんだ」
ふわりと、窓から風が入ってきた。
薄紅になってしまった瞳を瞬かせて、京楽は微笑む。
「じいさんになるまで、お互い引退はなしかな」
「じいさんか・・・・後何百年あるんだろう」
途方もない時間があるだろう。ここまで約500年。さらに千年ほどは時間がいりそうだった。
「今日は、泊まっていっていいかい?」
「ああ」
雨乾堂は、取り壊されることがなかった。
浮竹が生きているからだ。
ただ、ルキアのために新しく13番隊の執務室と隊首室ができた。
「今日も頑張るか」
熱が引いた浮竹は、京楽のいる一番隊の執務室に仕事を持ち込み、一緒に時間を過ごした。
総隊長となった京楽は、仕事をさぼりまくるわけにもいかず、昔のように雨乾堂にくる回数がぐっと減った。
会いに来れないなら、こっちから会いに行けばいいのだ。
大戦を経てもなお、生きていられる。
それがこんなに穏やかで静かで、そして愛しいものだとは思わなかった。
「京楽、おはよう」
「ああ、浮竹おはよう」
今日の京楽は、花の神が所用でどこかににいってしまったせいで、瞳も神の色も元の黒だった。
「花の神は?」
「なんか、神力を貯めるためとかいってどっかいったよ」
「そうか。黒いままのお前の髪と瞳の色を見るのも、久し振りだな」
「僕はどっちでもいいけどね」
花の神の器になったことで、契約は成っている。
浮竹が死ぬことは、もうない。
「仕事が終わったら、久し振りに甘味屋にでも行かないかい」
「行く!」
浮竹が食いついてきた。
翡翠に溶けた浮竹は、たゆたうように人生を漂っている。その手を繋ぎ止めるのは、京楽の役割だった。
翡翠に溶けて。
桜のように、溶けて溶けて。
ただ、たゆたう。
けれど、愛し合う。
翡翠は、愛し合うことで輝きを増すのだった。
花の神を半身に宿らせて、薄紅色の髪になった京楽が、浮竹の元を訪れた。
死ぬはずだった命を救われたが、代わりに京楽が神の器になった。
「浮竹、大丈夫?」
肺の病は癒えたのだが、熱を出す虚弱体質はそのままで、今日も浮竹は熱を出していた。
肺の病が癒えたが、熱が出やすくなってしまい、前とあまり変わらぬくらいに臥せっていた。
今の浮竹に霊圧はない。もっていた膨大な霊圧は、生命力に変換されてしまった。
「おはぎもってきたんだけど・・・・食べれる?」
「ああ・・・今日は微熱なんだ。頭が少し痛いが、肺の発作を思えばこれくらい平気だ」
布団に半身を起こした浮竹の背を支えてやり、まずは白湯を飲ませた。
「そういえば、最近甘味屋に行っていないな・・・・・・」
「熱が下がったたら、行こうね」
「ああ、そうだな」
二人で寄り添いあう。
死ぬはずだった浮竹の運命を変えた、花の神。
運命を変えられた、浮竹。
運命を変えられることを望み、器となった京楽。
思いは様々だが、こうやってまた一緒に生きれることが嬉しかった。
もう、浮竹に死の気配はない。
肺の病は、花の神の力で癒された。
浮竹は、京楽がもってきてくれたおはぎを食べた。
もう、浮竹は13番隊隊長ではない。その地位は、ルキアが継いだ。
霊圧を失くした浮竹は、13番隊の隊長補佐となっていた。もう戦う力はないが、書類仕事などを任されていた。
「お互い、早く引退したいものだな」
「その気になれば、君は引退できたのに」
「まだ、人生長いんだぞ。それに俺だけ引退しても、お前が引退しないと意味がない。一緒に生きると、決めたんだ」
ふわりと、窓から風が入ってきた。
薄紅になってしまった瞳を瞬かせて、京楽は微笑む。
「じいさんになるまで、お互い引退はなしかな」
「じいさんか・・・・後何百年あるんだろう」
途方もない時間があるだろう。ここまで約500年。さらに千年ほどは時間がいりそうだった。
「今日は、泊まっていっていいかい?」
「ああ」
雨乾堂は、取り壊されることがなかった。
浮竹が生きているからだ。
ただ、ルキアのために新しく13番隊の執務室と隊首室ができた。
「今日も頑張るか」
熱が引いた浮竹は、京楽のいる一番隊の執務室に仕事を持ち込み、一緒に時間を過ごした。
総隊長となった京楽は、仕事をさぼりまくるわけにもいかず、昔のように雨乾堂にくる回数がぐっと減った。
会いに来れないなら、こっちから会いに行けばいいのだ。
大戦を経てもなお、生きていられる。
それがこんなに穏やかで静かで、そして愛しいものだとは思わなかった。
「京楽、おはよう」
「ああ、浮竹おはよう」
今日の京楽は、花の神が所用でどこかににいってしまったせいで、瞳も神の色も元の黒だった。
「花の神は?」
「なんか、神力を貯めるためとかいってどっかいったよ」
「そうか。黒いままのお前の髪と瞳の色を見るのも、久し振りだな」
「僕はどっちでもいいけどね」
花の神の器になったことで、契約は成っている。
浮竹が死ぬことは、もうない。
「仕事が終わったら、久し振りに甘味屋にでも行かないかい」
「行く!」
浮竹が食いついてきた。
翡翠に溶けた浮竹は、たゆたうように人生を漂っている。その手を繋ぎ止めるのは、京楽の役割だった。
翡翠に溶けて。
桜のように、溶けて溶けて。
ただ、たゆたう。
けれど、愛し合う。
翡翠は、愛し合うことで輝きを増すのだった。
さよならを。
文に、想いをしたためた。
さよならを。
口ではたくさんを語れないから。
ユーハバッハの侵攻により、霊王が死んだ。
浮竹は、死神としての矜持を守り、ミミハギ様を解放し、神掛をした。
残り僅かな命。
その場で力尽きなかったことが、奇跡のようだった。
けれど、刻々と死への時間は近づいている。
「京楽・・・・愛してる」
「僕も愛してるよ、浮竹」
生命維持装置に繋がれることを拒否した浮竹は、雨乾堂にいた。
ユーハバッハは、一護が倒した。
もう、未来は明るい。
でも、京楽の未来は明るくなかった。
「俺はもうすぐ死ぬ・・・・別れをいいたい」
「だめだよ、死んじゃだめだ!」
京楽は涙を流しながら、細くなった浮竹の体を抱き締めた。
もう、食事をすることもできず、ずっと点滴に管に繋がれていた。
「京楽・・・・お前と出会えて、本当によかった」
心からの安堵の言葉に、京楽の目から涙が零れた。
「浮竹・・・・ああ、神様。どうか浮竹の命をもっていかないでください」
「伝えたいことはたくさんある・・・・でも、時間がもうないようだ」
浮竹は、京楽の手の中で深い昏睡状態に陥り、そのまま息を引き取った。
愛しい人がいなくなった雨乾堂に、今日も京楽は訪れた。
いつものように、笑ってきたのかと、微笑みかけてきてくれる麗人は、もういない。
京楽は総隊長だ。責務がある。
いつまでも、浮竹のことを引きずっていてはいけないのだと分かっていても、悲しみは治まらなかった。
雨乾堂を取り壊し、そこに浮竹の墓を作ることになった。
浮竹の遺言だった。
ある日、浮竹の持ち物を整理していると、一通の手紙が混じっていた。
京楽へ。
そう書かれてあった。
中身を読んでいく。
どれほど浮竹が京楽を愛していたのかが、そこに綴られていた。
「こんなのずるいよ、浮竹・・・・・・・もう君は、いないのに」
隻眼となった目から、ぽろぽろと涙が零れ落ちた。
(俺はお前を愛している。たとえ先に逝くことになっても、この想いは永遠だから。永遠の愛をお前に、京楽。どうか泣くな。笑って、俺のことを懐かしむようになってくれ。どうか・・・お前が、俺のせいで狂わないように)
「すでに狂ってるよ・・・・・・」
愛に狂っている。
「大好きだよ、浮竹」
手紙を、鬼道で燃やす。
「君のいない世界は、色がない」
京楽の瞳に映る世界は、モノクロだった。
「君のいない世界なんていらない・・・と言いたいところだけど、そういうわけにもいかないからね」
本当なら、君の後を追いたいくらいには、愛に狂っている。
その日、取り壊しが決まった雨乾堂で、最後の夜を過ごそうと京楽は雨乾堂で寝た。
夢の中に、浮竹が現れた。
「俺がいないからって、くよくよするな」
「無理だよ、浮竹・・・・こんなにも愛してるのに」
「俺も愛している。でも、未来は続いている。いつかきっと、未来でお前に会えるから。いつか同じ場所に辿り着くから・・・それまで、ずっと待ってるから、俺は先に逝く。京楽も、人生をほどほどにしてこっちにこいよ。また夢の中で会いにいくから。そして、いつかきっとお前にもう一度、会いにいく」
そう言われて、ふっと心が軽くなった。
人生はまだまだ長いが、浮竹は京楽の心の中にずっと生きている。
いつか、同じ場所に辿り着ける。
また、夢の中だが、会いにきてくれると誓ってくれた。いつか会いにきてくれると言ってくれた。
雨乾堂は取り壊されて、浮竹の立派な墓ができた。
「君が僕の中にいる・・・・いつか、そっちにいくまで、待っててね」
墓石に酒を注ぐ。
さよならを。
あえて、言わない。
また、いつか。
きっとまた、巡り合える。
たとえ死神でなかったとしても。
いつか、巡り合えると信じて。
「僕は京楽春水っていうんだ。君は?」
白い髪をした少年は、浮竹そっくりだった。
「えっと・・・・春風十四郎です」
名前まで同じ。流石に苗字は違うようだが。
「会いにきた、京楽」
「十四郎・・・・愛してる」
「俺もだ、春水」
ほら。
きっと。
会える。
さよならは、だから言わない。
さよならを。
口ではたくさんを語れないから。
ユーハバッハの侵攻により、霊王が死んだ。
浮竹は、死神としての矜持を守り、ミミハギ様を解放し、神掛をした。
残り僅かな命。
その場で力尽きなかったことが、奇跡のようだった。
けれど、刻々と死への時間は近づいている。
「京楽・・・・愛してる」
「僕も愛してるよ、浮竹」
生命維持装置に繋がれることを拒否した浮竹は、雨乾堂にいた。
ユーハバッハは、一護が倒した。
もう、未来は明るい。
でも、京楽の未来は明るくなかった。
「俺はもうすぐ死ぬ・・・・別れをいいたい」
「だめだよ、死んじゃだめだ!」
京楽は涙を流しながら、細くなった浮竹の体を抱き締めた。
もう、食事をすることもできず、ずっと点滴に管に繋がれていた。
「京楽・・・・お前と出会えて、本当によかった」
心からの安堵の言葉に、京楽の目から涙が零れた。
「浮竹・・・・ああ、神様。どうか浮竹の命をもっていかないでください」
「伝えたいことはたくさんある・・・・でも、時間がもうないようだ」
浮竹は、京楽の手の中で深い昏睡状態に陥り、そのまま息を引き取った。
愛しい人がいなくなった雨乾堂に、今日も京楽は訪れた。
いつものように、笑ってきたのかと、微笑みかけてきてくれる麗人は、もういない。
京楽は総隊長だ。責務がある。
いつまでも、浮竹のことを引きずっていてはいけないのだと分かっていても、悲しみは治まらなかった。
雨乾堂を取り壊し、そこに浮竹の墓を作ることになった。
浮竹の遺言だった。
ある日、浮竹の持ち物を整理していると、一通の手紙が混じっていた。
京楽へ。
そう書かれてあった。
中身を読んでいく。
どれほど浮竹が京楽を愛していたのかが、そこに綴られていた。
「こんなのずるいよ、浮竹・・・・・・・もう君は、いないのに」
隻眼となった目から、ぽろぽろと涙が零れ落ちた。
(俺はお前を愛している。たとえ先に逝くことになっても、この想いは永遠だから。永遠の愛をお前に、京楽。どうか泣くな。笑って、俺のことを懐かしむようになってくれ。どうか・・・お前が、俺のせいで狂わないように)
「すでに狂ってるよ・・・・・・」
愛に狂っている。
「大好きだよ、浮竹」
手紙を、鬼道で燃やす。
「君のいない世界は、色がない」
京楽の瞳に映る世界は、モノクロだった。
「君のいない世界なんていらない・・・と言いたいところだけど、そういうわけにもいかないからね」
本当なら、君の後を追いたいくらいには、愛に狂っている。
その日、取り壊しが決まった雨乾堂で、最後の夜を過ごそうと京楽は雨乾堂で寝た。
夢の中に、浮竹が現れた。
「俺がいないからって、くよくよするな」
「無理だよ、浮竹・・・・こんなにも愛してるのに」
「俺も愛している。でも、未来は続いている。いつかきっと、未来でお前に会えるから。いつか同じ場所に辿り着くから・・・それまで、ずっと待ってるから、俺は先に逝く。京楽も、人生をほどほどにしてこっちにこいよ。また夢の中で会いにいくから。そして、いつかきっとお前にもう一度、会いにいく」
そう言われて、ふっと心が軽くなった。
人生はまだまだ長いが、浮竹は京楽の心の中にずっと生きている。
いつか、同じ場所に辿り着ける。
また、夢の中だが、会いにきてくれると誓ってくれた。いつか会いにきてくれると言ってくれた。
雨乾堂は取り壊されて、浮竹の立派な墓ができた。
「君が僕の中にいる・・・・いつか、そっちにいくまで、待っててね」
墓石に酒を注ぐ。
さよならを。
あえて、言わない。
また、いつか。
きっとまた、巡り合える。
たとえ死神でなかったとしても。
いつか、巡り合えると信じて。
「僕は京楽春水っていうんだ。君は?」
白い髪をした少年は、浮竹そっくりだった。
「えっと・・・・春風十四郎です」
名前まで同じ。流石に苗字は違うようだが。
「会いにきた、京楽」
「十四郎・・・・愛してる」
「俺もだ、春水」
ほら。
きっと。
会える。
さよならは、だから言わない。
恋する瞬間 プロポーズ
ルキアが現世にいられる5か月が終わった。
卒業式は滞りなく終わり、ルキアは尸魂界に戻ることが決まった。
一護は国際大学に進んだ。
ルキアは、週末になると、黒崎家に顔を出した。
「ルキア・・・・」
「好きだ、一護・・・・・・」
その日のルキアは、酔っぱらっていた。
しきりに体を押し付けてきて、一護の我慢も限界を迎えてしまい、幸いにも家族は一護を残して旅行に出かけていたので、体を重ね合った。
「あ、一護・・・・・」
「好きだ、ルキア・・・・」
何度も混じり合った。
一つに溶けてしまうのではないかと思った。
幸福な微睡みの中、ルキアは思う。
一護と結ばれてよかったと。
一護は、大学2年になると、一人暮らしを始めた。
バイトで貯めたお金を使い、2部屋あるアパートを借りた。
ルキアが、週末になると転がり込んできた。
今までのように、家族を気にすることなく過ごすことができて、一護もルキアも、体を重ねあうことに後ろめたい思いをすることがなくなった。
「今日は何が食べたい?」
「んー。キムチチャーハン」
「わーった。材料買いに行くから、一緒に行こうぜ」
土日になるとやってくルキアに、現世の好きな食べたいものを食べさせてやり、デートに出かけたりもした。
「なぁ、ルキア」
「ん?なんだ」
「明日、触れ合い動物園にいこう。ルキア、うさぎ好きだろ?チャッピーじゃないけど。今年はうさぎ年だし」
「触れ合い動物園?なんだそれは」
「犬とか猫、うさぎとかモルモット、あとはアルパカとかカンガルーとかまぁ、いろいろいるんだけど・・・・・」
パンフレットを見ながら、一護がこれだと、そのパンフレットをルキアに差し出した。
「ふむ・・・そう遠くはないな。触れ合えるとは普通の動物園ではできないからな。よいな、行きたい」
「じゃあ、決まり。明日はデートな」
「デートか・・・・」
始めてのデートは水族館だった。甘酸っぱい思い出だ。
あれから2年が経った。
ルキアは土日になると、現世の一護のアパートに転がり込んでくる。それを当たり前のように、一護は受け入れた。
次の日、触れ合い動物園に出かけた。
うさぎに人参をあげて、ルキアは目をキラキラ輝かせていた。
「抱っこ、してもよいだろうか?」
係員に尋ねると、そっとならと言われて、壊れものを扱うように一匹の子うさぎを抱き上げた。
子うさぎは、動くこともなくルキアの手の中でじっとしていた。
「写真とるぞ」
スマホで、一護はルキアがうさぎを抱っこしている写真をとった。
いろんな場所で、二人で写真をとりあっていて、スマホと伝令神機には「ルキアと一護」という
フォルダができてしまっていた。
写真の数は、年月を経るごとに増えていった。
夏きがきて秋がきて冬がきて、また春がきた。
一護は、大学3年生になっていた。
将来の仕事は、翻訳家になるのが夢だった。ドイツ語の翻訳家を目指し、3年の夏に2カ月留学した。
その間は、ルキアとはスマホでもやりとりができず、一護はとにかくルキアは寂しい思いをしていた。
「なぁ、ルキア」
「なんだ、恋次」
「ルキアは、このまま中途半端に一護と付き合うのか?」
「中途半端とはなんだ!」
「だって、そうだろう?婚姻もしないまま、ずっと付き合うだけなのか?」
はっとなった。
一護と付き合いはじめて3年以上になる。でも、好きだ、愛していると言ってくれるが、結婚のことについては何も言ってくれなかった。
ふとした不安感に襲われて、ルキアはその日恋次と夜まで飲み明かした。
「一護は、人間なのだ。死神の私と婚姻など・・・・・」
「前例がないわけじゃないだろ?一護の父親の一心さんは、死神でありながら、一護の母親の、人間と結婚して子供が生まれた」
「私に、死神をやめろと言っているのか?」
「いや、そうじゃねーよ。でも、それくらいの覚悟がないと、これから先やっていけないぞ。もうすぐ、一護も大学卒業して社会人になるんだろ?」
「それはそうだが・・・・一護と、結婚か・・・・・」
ルキアは、酒をぐいぐい飲んだ。
そして、酔っぱらって、恋次を殴った。
「いってぇ」
「貴様が悪いのだ!私を不安にさせるから!」
「それは、一護に言えよ」
殴られた頭を押さえながら、酔っぱらったルキアをルキアをおんぶして、朽木家にまで送り届けた。
一護が、留学から帰ってきた。
その一報を聞いて、ルキアは土日でもないのに、一護の家に転がりこんだ。まとまった休みをもぎとっていた。
「一護、ずっと会いたかった!」
飛びついてくるルキアを抱き締めて、一護はルキアが少しおかしいのに気づいた。
「どうした、ルキア」
「・・・・・・」
ルキアは、しばし無言だった。
「貴様は、このままでいいのか?」
「何がだ」
「このまま、私と付き合い続けることだけで・・・んっ」
唇が重なった。
「参ったな・・・秋頃までとっておこうと思ってたんだけど」
ルキアの手に、一護は指輪をはめた。
「エンゲージリング。俺と結婚してくれ、ルキア」
「一護・・・・・・・!」
ルキアは、アメジストの瞳から涙をポロポロ零しながら、微笑んだ。
「喜んで!貴様と、結ばれてやる」
恋する瞬間は一瞬。
でもその恋は、永遠と続くのだった。
卒業式は滞りなく終わり、ルキアは尸魂界に戻ることが決まった。
一護は国際大学に進んだ。
ルキアは、週末になると、黒崎家に顔を出した。
「ルキア・・・・」
「好きだ、一護・・・・・・」
その日のルキアは、酔っぱらっていた。
しきりに体を押し付けてきて、一護の我慢も限界を迎えてしまい、幸いにも家族は一護を残して旅行に出かけていたので、体を重ね合った。
「あ、一護・・・・・」
「好きだ、ルキア・・・・」
何度も混じり合った。
一つに溶けてしまうのではないかと思った。
幸福な微睡みの中、ルキアは思う。
一護と結ばれてよかったと。
一護は、大学2年になると、一人暮らしを始めた。
バイトで貯めたお金を使い、2部屋あるアパートを借りた。
ルキアが、週末になると転がり込んできた。
今までのように、家族を気にすることなく過ごすことができて、一護もルキアも、体を重ねあうことに後ろめたい思いをすることがなくなった。
「今日は何が食べたい?」
「んー。キムチチャーハン」
「わーった。材料買いに行くから、一緒に行こうぜ」
土日になるとやってくルキアに、現世の好きな食べたいものを食べさせてやり、デートに出かけたりもした。
「なぁ、ルキア」
「ん?なんだ」
「明日、触れ合い動物園にいこう。ルキア、うさぎ好きだろ?チャッピーじゃないけど。今年はうさぎ年だし」
「触れ合い動物園?なんだそれは」
「犬とか猫、うさぎとかモルモット、あとはアルパカとかカンガルーとかまぁ、いろいろいるんだけど・・・・・」
パンフレットを見ながら、一護がこれだと、そのパンフレットをルキアに差し出した。
「ふむ・・・そう遠くはないな。触れ合えるとは普通の動物園ではできないからな。よいな、行きたい」
「じゃあ、決まり。明日はデートな」
「デートか・・・・」
始めてのデートは水族館だった。甘酸っぱい思い出だ。
あれから2年が経った。
ルキアは土日になると、現世の一護のアパートに転がり込んでくる。それを当たり前のように、一護は受け入れた。
次の日、触れ合い動物園に出かけた。
うさぎに人参をあげて、ルキアは目をキラキラ輝かせていた。
「抱っこ、してもよいだろうか?」
係員に尋ねると、そっとならと言われて、壊れものを扱うように一匹の子うさぎを抱き上げた。
子うさぎは、動くこともなくルキアの手の中でじっとしていた。
「写真とるぞ」
スマホで、一護はルキアがうさぎを抱っこしている写真をとった。
いろんな場所で、二人で写真をとりあっていて、スマホと伝令神機には「ルキアと一護」という
フォルダができてしまっていた。
写真の数は、年月を経るごとに増えていった。
夏きがきて秋がきて冬がきて、また春がきた。
一護は、大学3年生になっていた。
将来の仕事は、翻訳家になるのが夢だった。ドイツ語の翻訳家を目指し、3年の夏に2カ月留学した。
その間は、ルキアとはスマホでもやりとりができず、一護はとにかくルキアは寂しい思いをしていた。
「なぁ、ルキア」
「なんだ、恋次」
「ルキアは、このまま中途半端に一護と付き合うのか?」
「中途半端とはなんだ!」
「だって、そうだろう?婚姻もしないまま、ずっと付き合うだけなのか?」
はっとなった。
一護と付き合いはじめて3年以上になる。でも、好きだ、愛していると言ってくれるが、結婚のことについては何も言ってくれなかった。
ふとした不安感に襲われて、ルキアはその日恋次と夜まで飲み明かした。
「一護は、人間なのだ。死神の私と婚姻など・・・・・」
「前例がないわけじゃないだろ?一護の父親の一心さんは、死神でありながら、一護の母親の、人間と結婚して子供が生まれた」
「私に、死神をやめろと言っているのか?」
「いや、そうじゃねーよ。でも、それくらいの覚悟がないと、これから先やっていけないぞ。もうすぐ、一護も大学卒業して社会人になるんだろ?」
「それはそうだが・・・・一護と、結婚か・・・・・」
ルキアは、酒をぐいぐい飲んだ。
そして、酔っぱらって、恋次を殴った。
「いってぇ」
「貴様が悪いのだ!私を不安にさせるから!」
「それは、一護に言えよ」
殴られた頭を押さえながら、酔っぱらったルキアをルキアをおんぶして、朽木家にまで送り届けた。
一護が、留学から帰ってきた。
その一報を聞いて、ルキアは土日でもないのに、一護の家に転がりこんだ。まとまった休みをもぎとっていた。
「一護、ずっと会いたかった!」
飛びついてくるルキアを抱き締めて、一護はルキアが少しおかしいのに気づいた。
「どうした、ルキア」
「・・・・・・」
ルキアは、しばし無言だった。
「貴様は、このままでいいのか?」
「何がだ」
「このまま、私と付き合い続けることだけで・・・んっ」
唇が重なった。
「参ったな・・・秋頃までとっておこうと思ってたんだけど」
ルキアの手に、一護は指輪をはめた。
「エンゲージリング。俺と結婚してくれ、ルキア」
「一護・・・・・・・!」
ルキアは、アメジストの瞳から涙をポロポロ零しながら、微笑んだ。
「喜んで!貴様と、結ばれてやる」
恋する瞬間は一瞬。
でもその恋は、永遠と続くのだった。
恋する瞬間 恋は止まらない
なんだかんだで、無事に現世に戻ってきた二人は、一心に無断外泊について怒られた。
それさえ甘酸っぱくて、二人はもじもじしていた。
付き合い始めたばかりなのに、周囲は婚姻まで考えているようで。
一護はその覚悟も決めて、いつか再度ルキアにプロポーズしようと思った。
「ルキア、大好きだ」
「私も好きだ、一護」
2回目のキスをした。
味はしなかったが、甘ずっぱい気がした。
それから、また平和な毎日が訪れた。
一護は、ルキアと交際をしだしたことを周囲に告げて、驚かせていた。
「やっぱり、一護は朽木さんとできてたんだね」
たつきの言葉に、ルキアが顔を真っ赤にする。
「できていたというか、できたのはつい最近なのだ・・・」
「じゃあ付き合いだしてまだ日が浅いんだ」
井上が、残念そうにしていたが、相手がルキアと知って、一護とルキアを祝福してくれた。
「朽木さんも、黒崎君も幸せそう。いいなぁ」
季節は冬なのに、二人には春が訪れていた。
「私のところにも、黒崎君みたいな王子様現れてくれないかなぁ」
井上の言葉に、ルキアが赤くなる。
「い、一護は王子様なんかじゃないぞ。む、むしろ魔王だ!」
「魔王!なんかかっこいい!」
その日のうちに、魔王一護とかいうわけのわからないあだ名が、一護につけられた。
「魔王ってなんだよ、ルキア」
「だ、だって!結婚を誓いあいそうになった桐蔭殿から、私をさらっていったであろう。桐蔭殿はとてもできたお方で、王子様のようであった。だから、一護は魔王だ」
「最近はやりの、異世界アニメかなんかの見すぎだ、お前は」
一護は溜息をついて、魔王とか呼ばれるのを好きにさせていた。
「一護、貴様は何故、皆に私と付き合い出すことを言ったのだ?」
「ん?別に意味はあんまないけど・・・・隠れていちゃいちゃとか面倒じゃねーか」:
「いちゃいちゃ・・・!」
ルキアは真っ赤になった。
「まぁ、学校では極力我慢するけど、キスしたりハグしたりしてーじゃん」
「たわけ!そのようなこと、学校で!」
「まだやってもいないのに、怒るなよ」
「う、うむ・・・・・そうだな」
昼休みになって、屋上で昼食をとった。
メンバーは一護、ルキア、井上、石田、茶虎。
「それにしても黒崎が、朽木さんと付き合いだすなんて、てっきり、もう付き合っているものと思ってたのに・・・・・」
石田の言葉に、茶虎も頷いた。
「はたから見ればラブラブカップルだった」
「な、な、な・・・・」
ルキアは真っ赤になって、オレンジジュースを飲みほした。
「今までの私のどこが、一護とラブラブカップルなのだ!」
「えーだって、登下校は一緒、教室移動も一緒、休み時間には二人でいることが多いし、昼食をはまぁみんなととってたけど・・・・・」
井上の言葉に、くらりとルキアは眩暈を覚えた。
「これのどこが、カップルじゃないっていうんだろう?」
「うう・・・・・」
ルキアは頭を抱えた。
一護は、気にせずにコーヒーを飲みながらパンをかじっていた。
「全部貴様が悪い!責任をとれ、責任を」
「責任とって、付き合いだしてるだろ」
「う、そうであった・・・・私と貴様は、付き合い始めているのだったな」
ルキアの手をとり、抱きしめる。
「な、皆の前で!」
ルキアはさらに真っ赤になった。
「見せつけてくれるね」
石田が、パンを食べながらそう言う。
「青春だな」
と茶虎が。
「あーあ、いいなぁ朽木さん。私も黒崎君にそんな風に扱ってもらいたい」
「井上まで!」
皆に茶化されて、ルキアは真っ赤になって縮こまるのだった。
昼休みを終わるチャイムが鳴って、皆それぞれのクラスに戻っていく。
1年の時は皆同じクラスだったが、3年になってルキアと一護は同じクラスだが、井上、石田、茶虎とは違うクラスになっていた。
授業が全て終わり、一護が鞄を手にルキアに声をかける。
「一緒に帰ろうぜ」
「う、うむ」
いつもなら、何も言わずに一緒に帰るのだが、恋人同士になってから、何故か少しぎこちなくなった。今日の昼休みにハグされたけど、あれは別らしい。
自然体であろうとすればするほど、相手を意識してしまう。
まぁ、それも長くは続かなくて、2週間も過ぎる頃には、告白する前のように自然体で二人は過ごしていた。
「ねぇ、朽木さんは黒崎君と何処まで進んだの」
「な、な、な!」
興味本位の井上の質問に、ルキアは真っ赤になって何も言えなくなった。
「その様子だと、最後までいっちゃたんだね」
いや、全然違うから。
ルキアの代わりに、一護がそう言った。
「俺らは清く正しく交際してるんだよ。キスとハグまでだ」
「きゃー、清く正しくだなんて!」
井上がくねくねしていた。
暴走していく井上を放置して、その日も一緒に帰宅する。
「そのな・・・貴様と、寝るのが・・・すごいドキドキして・・・・・」
寝る前に、いつものようにルキアを抱いて眠ろうとしたら、ルキアがそう言って小さくなった。
「別に、手出したりしないから、安心しろ」
「私では・・・その気にならぬか?」
アメジストの瞳をうるうるさせて、見つめてくるルキアに、一護も理性が吹き飛んだ。
「ルキア・・・・・」
家族がいるのに。
気づかれたら、やばいのに。
分かっていても、止まらなかった。
その日、二人は体を重ねあい、一歩大人の階段を踏み出した。
翌日は休みだったので、とろとろになってしまったルキアを見る者が、一護だけだったので安心できた。
ルキアは、まだ余韻を残したけだるげな表情で、ベッドの上で寝そべっていた。
「いちご・・・・好き・・・・」
「ルキア・・・・」
睦み合うことはできないので、キスを何度も繰り返した。
「ああもう、なんでお前はそんなにかわいいいんだ」
「いちご・・・・・?」
「やっぱ、清く正しく交際するべきだった」
「私と関係をもったのが、嫌だったのか?」
不安そうなルキアの頭を撫でた。
「違う。一度味わってしまうと、貪欲になりそうで怖い」
「私は、一護になら・・・・・」
「ルキア、あおらないでくれ。我慢するの、けっこう大変なんだから」
「す、すまぬ」
ルキアは真っ赤になった。
毎日、同じベッドで抱き締めあいながら寝た。
学校で、時折キスをした。
告白してからの毎日が新鮮で、気づけば5か月という時間が過ぎ去ろうとしていた。
それさえ甘酸っぱくて、二人はもじもじしていた。
付き合い始めたばかりなのに、周囲は婚姻まで考えているようで。
一護はその覚悟も決めて、いつか再度ルキアにプロポーズしようと思った。
「ルキア、大好きだ」
「私も好きだ、一護」
2回目のキスをした。
味はしなかったが、甘ずっぱい気がした。
それから、また平和な毎日が訪れた。
一護は、ルキアと交際をしだしたことを周囲に告げて、驚かせていた。
「やっぱり、一護は朽木さんとできてたんだね」
たつきの言葉に、ルキアが顔を真っ赤にする。
「できていたというか、できたのはつい最近なのだ・・・」
「じゃあ付き合いだしてまだ日が浅いんだ」
井上が、残念そうにしていたが、相手がルキアと知って、一護とルキアを祝福してくれた。
「朽木さんも、黒崎君も幸せそう。いいなぁ」
季節は冬なのに、二人には春が訪れていた。
「私のところにも、黒崎君みたいな王子様現れてくれないかなぁ」
井上の言葉に、ルキアが赤くなる。
「い、一護は王子様なんかじゃないぞ。む、むしろ魔王だ!」
「魔王!なんかかっこいい!」
その日のうちに、魔王一護とかいうわけのわからないあだ名が、一護につけられた。
「魔王ってなんだよ、ルキア」
「だ、だって!結婚を誓いあいそうになった桐蔭殿から、私をさらっていったであろう。桐蔭殿はとてもできたお方で、王子様のようであった。だから、一護は魔王だ」
「最近はやりの、異世界アニメかなんかの見すぎだ、お前は」
一護は溜息をついて、魔王とか呼ばれるのを好きにさせていた。
「一護、貴様は何故、皆に私と付き合い出すことを言ったのだ?」
「ん?別に意味はあんまないけど・・・・隠れていちゃいちゃとか面倒じゃねーか」:
「いちゃいちゃ・・・!」
ルキアは真っ赤になった。
「まぁ、学校では極力我慢するけど、キスしたりハグしたりしてーじゃん」
「たわけ!そのようなこと、学校で!」
「まだやってもいないのに、怒るなよ」
「う、うむ・・・・・そうだな」
昼休みになって、屋上で昼食をとった。
メンバーは一護、ルキア、井上、石田、茶虎。
「それにしても黒崎が、朽木さんと付き合いだすなんて、てっきり、もう付き合っているものと思ってたのに・・・・・」
石田の言葉に、茶虎も頷いた。
「はたから見ればラブラブカップルだった」
「な、な、な・・・・」
ルキアは真っ赤になって、オレンジジュースを飲みほした。
「今までの私のどこが、一護とラブラブカップルなのだ!」
「えーだって、登下校は一緒、教室移動も一緒、休み時間には二人でいることが多いし、昼食をはまぁみんなととってたけど・・・・・」
井上の言葉に、くらりとルキアは眩暈を覚えた。
「これのどこが、カップルじゃないっていうんだろう?」
「うう・・・・・」
ルキアは頭を抱えた。
一護は、気にせずにコーヒーを飲みながらパンをかじっていた。
「全部貴様が悪い!責任をとれ、責任を」
「責任とって、付き合いだしてるだろ」
「う、そうであった・・・・私と貴様は、付き合い始めているのだったな」
ルキアの手をとり、抱きしめる。
「な、皆の前で!」
ルキアはさらに真っ赤になった。
「見せつけてくれるね」
石田が、パンを食べながらそう言う。
「青春だな」
と茶虎が。
「あーあ、いいなぁ朽木さん。私も黒崎君にそんな風に扱ってもらいたい」
「井上まで!」
皆に茶化されて、ルキアは真っ赤になって縮こまるのだった。
昼休みを終わるチャイムが鳴って、皆それぞれのクラスに戻っていく。
1年の時は皆同じクラスだったが、3年になってルキアと一護は同じクラスだが、井上、石田、茶虎とは違うクラスになっていた。
授業が全て終わり、一護が鞄を手にルキアに声をかける。
「一緒に帰ろうぜ」
「う、うむ」
いつもなら、何も言わずに一緒に帰るのだが、恋人同士になってから、何故か少しぎこちなくなった。今日の昼休みにハグされたけど、あれは別らしい。
自然体であろうとすればするほど、相手を意識してしまう。
まぁ、それも長くは続かなくて、2週間も過ぎる頃には、告白する前のように自然体で二人は過ごしていた。
「ねぇ、朽木さんは黒崎君と何処まで進んだの」
「な、な、な!」
興味本位の井上の質問に、ルキアは真っ赤になって何も言えなくなった。
「その様子だと、最後までいっちゃたんだね」
いや、全然違うから。
ルキアの代わりに、一護がそう言った。
「俺らは清く正しく交際してるんだよ。キスとハグまでだ」
「きゃー、清く正しくだなんて!」
井上がくねくねしていた。
暴走していく井上を放置して、その日も一緒に帰宅する。
「そのな・・・貴様と、寝るのが・・・すごいドキドキして・・・・・」
寝る前に、いつものようにルキアを抱いて眠ろうとしたら、ルキアがそう言って小さくなった。
「別に、手出したりしないから、安心しろ」
「私では・・・その気にならぬか?」
アメジストの瞳をうるうるさせて、見つめてくるルキアに、一護も理性が吹き飛んだ。
「ルキア・・・・・」
家族がいるのに。
気づかれたら、やばいのに。
分かっていても、止まらなかった。
その日、二人は体を重ねあい、一歩大人の階段を踏み出した。
翌日は休みだったので、とろとろになってしまったルキアを見る者が、一護だけだったので安心できた。
ルキアは、まだ余韻を残したけだるげな表情で、ベッドの上で寝そべっていた。
「いちご・・・・好き・・・・」
「ルキア・・・・」
睦み合うことはできないので、キスを何度も繰り返した。
「ああもう、なんでお前はそんなにかわいいいんだ」
「いちご・・・・・?」
「やっぱ、清く正しく交際するべきだった」
「私と関係をもったのが、嫌だったのか?」
不安そうなルキアの頭を撫でた。
「違う。一度味わってしまうと、貪欲になりそうで怖い」
「私は、一護になら・・・・・」
「ルキア、あおらないでくれ。我慢するの、けっこう大変なんだから」
「す、すまぬ」
ルキアは真っ赤になった。
毎日、同じベッドで抱き締めあいながら寝た。
学校で、時折キスをした。
告白してからの毎日が新鮮で、気づけば5か月という時間が過ぎ去ろうとしていた。
恋する瞬間 恋と気づいた時
ルキアは、水曜に現世に戻ってきた。
「義骸の具合、どうだった?」
「あ、ああ。それはもうよいのだ」
「そっか。京楽さんの話を聞いていてさ。京楽さんは浮竹さんの大切な相手で。それを考えていたら、俺の大切な相手はルキアなんだなって思ったんだ」
ルキアは、顔を真っ赤にした。
「たわけ!なんだそれは!」
「いや、なんか魂のレベルで繋がりあってるっつーか。とにかく、ルキアは俺にとって「特別」なんだなーって思って・・・・・・」
「たわけが・・・・」
ルキアは、平静に戻っていた。
ルキアにとっても、一護は特別だ。
だが、特別すぎて、好きとか嫌いとか、そんな感情が沸いてこなかった。
「そのな・・・・見合いを、したのだ」
「え・・・・」
「桐蔭那由他という方で・・・13番隊を立て直すのに尽力を尽くしてくださった方で・・・」
「ルキア、そいつと結婚するのか?」
「このままいけば、そうなるだろうな。貴様には井上がいることだし、私は大人しく貴族としての責務を果たすよ」
ルキアの言葉に、一護が叫ぶ。
「井上とはなんでもない!告白されたけど、断った!」
「え・・・・・・」
今度は、ルキアが困惑する番だった。
「だって、貴様は井上のことを好いて・・・・・・」
「ああ、仲間として大切だ。好きだ。でも恋愛感情じゃない。恋愛感情で誰を好きだって聞かれると・・・・多分、ルキアだ」
ぶわりと。
ルキアの大きな紫紺の瞳から、涙が零れた。
「貴様は・・・・こんな私を、好きだというのか?」
「ああ。大好きだ。きっと、これは恋だ。今、恋してる瞬間なんだ」
「貴様は、わけのわからぬことを・・・・・」
「見合いなんてやめろ。俺を選べ!」
「私は・・・・・」
ルキアは逡巡する。
でも、魂まで繋がった仲なのだ。
答えは、初めから決まっていたのだ。
「貴様が、好きだ・・・・・・」
「ルキア。俺も、お前が好きだ・・・・・」
影が重なる。
初めて、異性とキスをした。
ルキアの細い体を抱き締めて、一護は思った。
ルキアを大切にしたい。ずっと一緒にいたい。でも、高校の残りの生活は5か月だ。
「なぁ。付き合おう、俺ら」
「う、うむ・・・・・・」
ルキアは真っ赤になりながら、頷いた。
「それでな。高校を卒業したら、定期的に俺のところに来い。好きなら、それくらいできるだろう?」
「貴様は、無理難題を、軽くおしつけるな・・・・」
「ルキアが会いにこいななら、俺が定期的に尸魂界に行く」
一護は、本当に尸魂界に出向くつもりだった。
「貴様ならしかねぬな。分かった、なんとか月に数回は会えるように、上とかけあってみよう」
「それに、会えないときはメールとかで、連絡取り合うことも今じゃできるし・・・空白の17カ月を思えば、毎日会えないことくらい、なんでもないさ」
「そうだな」
告白しあって、心が軽くなった。
「桐蔭殿には、悪いが見合いはなかったことにしてもらおう」
「お前が見合いしてそのまま結婚するってんなら、俺はお前をさらっていく」
一護は、本気だった。
尸魂界からルキアをさらって、現世も捨てて、虚圏にでも行こうとするだろう。
「帰ってきてあれだが・・・話は早いほうがよい。今日、もう一度尸魂界に戻り、桐蔭殿と話しをつけてくる」
「俺も一緒に行く」
「しかし・・・・・」
「俺の大切な恋人だ。見合いを断るのには俺の責任もある。俺もちゃんとその人と話をしたい」
一護の決意に、ルキアは止めることができないと判断して、尸魂界から戻ってきたばかりなのに、また尸魂界に行くために、穿界門を開けてもらった。
先週のように、一護と一緒に尸魂界に行く。
でも、行く場所は同じだ。
まず朽木家に行き、白哉にルキアは自分の心を正直に告げた。
白哉は許してくれた。一護と付き合うことも。
「黒崎一護・・・・兄は、ルキアの「特別」であることは知っていた。恋愛感情に至っていなくとも、いずれそうなるだろうと思っていた」
「白哉・・・・・・」
「妹を、幸せにしてやってくれ」
「ああ、約束する。俺は、ルキアのために生きる」
少し遠いが、桐蔭家まで一護とルキアと白哉は訪れた。
「どうしたのですか、ルキアさん」
那由他は、一護を見て、ああと納得した。
「愛する人がいることに気づいたのですね。私との縁談は、なかったことで、大丈夫です」
「自分勝手ですみません、那由他殿・・・・・」
「よいのです。幸せに、なってくださいね」
暖かな手で頭を撫でられて、ルキアは嗚咽を漏らした。
「すっげー紳士・・・・・」
一護も、ルキアの相手に選ばれるわけだと、納得してしまった。
「どうか、永久(とこしえ)の愛が、あなたたちにあらんことを」
「ありがとうございます、那由他殿・・・・・」
「ありがとう」
一護も、礼を言っていた。
「兄には、迷惑をかけた」
白哉が頭を下げる。それに驚いて、那由他は慌てた。
「そんな、白哉殿、顔をあげてください。ただ、縁がなかった。それだけのことです。桐蔭家は、これからも13番隊を支持します」
はらはらと、ルキアは泣きっぱなしだった。
まるで自分が悪いような錯覚を覚えて、一護はルキアを抱き寄せた。
「幸せになるから。ありがとう、那由他さん」
ルキアと一護と白哉は、朽木家にまで戻ってきた。
「今日はもう遅い。兄は、今日は朽木家に泊まっていけ」
「え、いいのか白哉」
そんな許しが出るなんて思っていなかったので、一護は驚いた。
「兄は、いずれ義弟になるかもしれない者。放りだすわけにもいくまい」
まだ、付き合うことを決めたばかりなのに、話は先へ先へと進んでしまっていて、ルキアも一護も、なんともいえない顔をしていた。
「義骸の具合、どうだった?」
「あ、ああ。それはもうよいのだ」
「そっか。京楽さんの話を聞いていてさ。京楽さんは浮竹さんの大切な相手で。それを考えていたら、俺の大切な相手はルキアなんだなって思ったんだ」
ルキアは、顔を真っ赤にした。
「たわけ!なんだそれは!」
「いや、なんか魂のレベルで繋がりあってるっつーか。とにかく、ルキアは俺にとって「特別」なんだなーって思って・・・・・・」
「たわけが・・・・」
ルキアは、平静に戻っていた。
ルキアにとっても、一護は特別だ。
だが、特別すぎて、好きとか嫌いとか、そんな感情が沸いてこなかった。
「そのな・・・・見合いを、したのだ」
「え・・・・」
「桐蔭那由他という方で・・・13番隊を立て直すのに尽力を尽くしてくださった方で・・・」
「ルキア、そいつと結婚するのか?」
「このままいけば、そうなるだろうな。貴様には井上がいることだし、私は大人しく貴族としての責務を果たすよ」
ルキアの言葉に、一護が叫ぶ。
「井上とはなんでもない!告白されたけど、断った!」
「え・・・・・・」
今度は、ルキアが困惑する番だった。
「だって、貴様は井上のことを好いて・・・・・・」
「ああ、仲間として大切だ。好きだ。でも恋愛感情じゃない。恋愛感情で誰を好きだって聞かれると・・・・多分、ルキアだ」
ぶわりと。
ルキアの大きな紫紺の瞳から、涙が零れた。
「貴様は・・・・こんな私を、好きだというのか?」
「ああ。大好きだ。きっと、これは恋だ。今、恋してる瞬間なんだ」
「貴様は、わけのわからぬことを・・・・・」
「見合いなんてやめろ。俺を選べ!」
「私は・・・・・」
ルキアは逡巡する。
でも、魂まで繋がった仲なのだ。
答えは、初めから決まっていたのだ。
「貴様が、好きだ・・・・・・」
「ルキア。俺も、お前が好きだ・・・・・」
影が重なる。
初めて、異性とキスをした。
ルキアの細い体を抱き締めて、一護は思った。
ルキアを大切にしたい。ずっと一緒にいたい。でも、高校の残りの生活は5か月だ。
「なぁ。付き合おう、俺ら」
「う、うむ・・・・・・」
ルキアは真っ赤になりながら、頷いた。
「それでな。高校を卒業したら、定期的に俺のところに来い。好きなら、それくらいできるだろう?」
「貴様は、無理難題を、軽くおしつけるな・・・・」
「ルキアが会いにこいななら、俺が定期的に尸魂界に行く」
一護は、本当に尸魂界に出向くつもりだった。
「貴様ならしかねぬな。分かった、なんとか月に数回は会えるように、上とかけあってみよう」
「それに、会えないときはメールとかで、連絡取り合うことも今じゃできるし・・・空白の17カ月を思えば、毎日会えないことくらい、なんでもないさ」
「そうだな」
告白しあって、心が軽くなった。
「桐蔭殿には、悪いが見合いはなかったことにしてもらおう」
「お前が見合いしてそのまま結婚するってんなら、俺はお前をさらっていく」
一護は、本気だった。
尸魂界からルキアをさらって、現世も捨てて、虚圏にでも行こうとするだろう。
「帰ってきてあれだが・・・話は早いほうがよい。今日、もう一度尸魂界に戻り、桐蔭殿と話しをつけてくる」
「俺も一緒に行く」
「しかし・・・・・」
「俺の大切な恋人だ。見合いを断るのには俺の責任もある。俺もちゃんとその人と話をしたい」
一護の決意に、ルキアは止めることができないと判断して、尸魂界から戻ってきたばかりなのに、また尸魂界に行くために、穿界門を開けてもらった。
先週のように、一護と一緒に尸魂界に行く。
でも、行く場所は同じだ。
まず朽木家に行き、白哉にルキアは自分の心を正直に告げた。
白哉は許してくれた。一護と付き合うことも。
「黒崎一護・・・・兄は、ルキアの「特別」であることは知っていた。恋愛感情に至っていなくとも、いずれそうなるだろうと思っていた」
「白哉・・・・・・」
「妹を、幸せにしてやってくれ」
「ああ、約束する。俺は、ルキアのために生きる」
少し遠いが、桐蔭家まで一護とルキアと白哉は訪れた。
「どうしたのですか、ルキアさん」
那由他は、一護を見て、ああと納得した。
「愛する人がいることに気づいたのですね。私との縁談は、なかったことで、大丈夫です」
「自分勝手ですみません、那由他殿・・・・・」
「よいのです。幸せに、なってくださいね」
暖かな手で頭を撫でられて、ルキアは嗚咽を漏らした。
「すっげー紳士・・・・・」
一護も、ルキアの相手に選ばれるわけだと、納得してしまった。
「どうか、永久(とこしえ)の愛が、あなたたちにあらんことを」
「ありがとうございます、那由他殿・・・・・」
「ありがとう」
一護も、礼を言っていた。
「兄には、迷惑をかけた」
白哉が頭を下げる。それに驚いて、那由他は慌てた。
「そんな、白哉殿、顔をあげてください。ただ、縁がなかった。それだけのことです。桐蔭家は、これからも13番隊を支持します」
はらはらと、ルキアは泣きっぱなしだった。
まるで自分が悪いような錯覚を覚えて、一護はルキアを抱き寄せた。
「幸せになるから。ありがとう、那由他さん」
ルキアと一護と白哉は、朽木家にまで戻ってきた。
「今日はもう遅い。兄は、今日は朽木家に泊まっていけ」
「え、いいのか白哉」
そんな許しが出るなんて思っていなかったので、一護は驚いた。
「兄は、いずれ義弟になるかもしれない者。放りだすわけにもいくまい」
まだ、付き合うことを決めたばかりなのに、話は先へ先へと進んでしまっていて、ルキアも一護も、なんともいえない顔をしていた。