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小説掲載プログ
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翡翠に溶ける 蘇る死神代行

元死神代行、銀城が動きだした。

完現術者(フルブリンガー)としての、一護がが目覚めようとしていた。

だが、銀城は完現術者としての一護の力を奪った。

一護は、泣き叫んだ。

やっと、守る力を取り戻したと思ったのだ。


「銀城が関係しているせいか、一護君に霊圧探知能力が復活した。今しかない」

浮竹の言葉に、尸魂界は動いた。

一護に、霊圧を取り戻すために、ルキアや白哉を含めた数人の隊長副隊長が赴いた。

ルキアは、浮竹の副官になっていた。

何十年と副官を置かなかった浮竹であるが、ルキアになら任せてもいいと思っていた。正に、その通りとなった。

やがて、皆の霊圧がこめた刀を受けて、一護は霊圧を取り戻し、銀城を倒した。


霊圧を取り戻した一護が、尸魂界へ挨拶へやってきた。

「ありがとな、浮竹さん。浮竹さんの言葉で、みんなが動いてくれたって」

「いや、一護君が自分で霊圧探知能力を身に着けたせいだ。霊圧を注ぐものはあった。今まで条件を満たしていなかったので、器の意味を成していなかったんだ」

「そっか・・・・銀城には、いろいろあったけど、感謝しなくちゃな」

一護は、一度銀城の遺体を引き取りに、尸魂界にきている。

銀城は、尸魂界から許される形として、現世に遺体を返された。

「君は、銀城のようにならないでくれ」

「ならねーよ。俺は俺だ」

「ところで、朽木とはうまくいっているのか?告白しあったんだろう?」

「浮竹さん、あんた何処でそれを・・・・」

「いや、朽木は俺の副官だろう?何かあるごとに、一護君がどうたらと・・・まるで、新婚カップルのようだなぁと思って」

「ルキアのやつ!」

「ああ、責めないでやってほしい。朽木も君に霊圧が戻って、以前のようにちゃんと会いにいけることに浮かれているようだから」

「浮竹さん、今度からルキアが何か俺のこと言ってきたら、筒抜けだと言っておてくれ」

「ああ、分かった」

走って去ていく一護を、浮竹と京楽は見ていた。

「青春だねぇ」

「青春だな」

「僕らも、あんな時代があったね」

「そうだな」

もう何百年前になるだろうか。

桜の木の下で、想いを告げ合って・・・・死神の隊長になると誓い合った。

お互い、その頃誓い合った通りに死神になり、3席となり副隊長となり、隊長となった。

尸魂界は、また穏やかな時間を取り戻した。

京楽と浮竹は、いつものように居酒屋にいた。何故か、ルキアまでいた。

「朽木、まあ飲め飲め~~」

浮竹が、ルキアの杯に果樹酒をなみなみと注いだ。

「あ、こぼれちゃいます、隊長!」

「まぁ、一気にぐいといけ。これはアルコール度が高くないから、朽木でも飲めるだろ」

ルキアは、杯の中身を飲み干した。

「うわぁ、このお酒甘いですね。兄様だと飲めないだろうな・・・・・」

「白哉と飲む時は、強い辛口の日本酒を飲ませるんだ」

「なるほど。隊長は兄様と仲が良いですね」

「白哉のことは子供の時から見てきたからなぁ。あいつも、成長したな。あれでも、昔は熱しやすくてよく怒る子だった」

「兄様が!?その話、もっと聞かせてください!」

一人、蚊帳の外に置かれた状態の京楽はすねて、一人で高級酒を飲みながら、つまみを注文した。

ゲソの天ぷらだった。

「お、それうまそうだな。すみません、これを同じものを2人前」

「それで、兄様!?」

「夜一がよくからかってなぁ。怒った白哉と、瞬歩で・・・・・」

それから、しばらくの間ルキアと浮竹は、白哉の過去話で盛り上がった。

やがて、酔い潰れた二人ができあがった。

「ルキアちゃんまで酔い潰しちゃって・・・・・ああ、浮竹は幸せそうだな」

酒の飲み過ぎで、すやすやと眠る浮竹を放置して、まずはルキアを抱き上げて、瞬歩で朽木家にまで届けた。

「ルキアがよった?兄が飲ませたのか」

「いや、浮竹だよ。君の過去話で盛り上がって、ルキアちゃんも酒をぐいぐいと飲むから、僕求めなかったんだけど・・・・止めたほうがよかったかい?」

「これは、あまり酒に強くない。今後、あまり飲ませないように」

「分かったよ」

居酒屋に戻って、勘定を払って、浮竹を肩に担いで外に出た。

「この平和が、いつまでもつことやら・・・」

嫌な予感がした。

尸魂界中が震撼するような出来事が起きるような。

今日は満月だった。

瞬歩で浮竹を雨乾堂に送り届けると、3席の仙太郎が面倒を見てくれるらしかった。

一人、ぶらりと8番隊隊舎まで歩いて帰っていくと、途中で趣味の夜の散歩をしていた白哉と出会った。

「何しるんだい、朽木隊長。眉間に皺なんて寄せて・・・悩み事なら、聞こうか?」

「最近のあれは・・・・黒崎一護と仲が良すぎる」

「ああ、まぁ恋に死神も人間も関係ないからねぇ」

最近、ルキアは休日のたびに現世の一護の場所に赴いていた。

「黒崎一護は人間だ。いずれ別れがくる」

「でも、そうなったら魂魄がこっちに来て、またやり直せるんじゃないかい?」

「あれに、黒崎一護の老いと死を見せたくない」

「朽木隊長は、ちょっと過保護だね」

「む・・・・」

自分でも、分かっているのだろう。

過保護ということを。

「あれには・・・緋真の分まで、幸せになってほしい」

「大丈夫。すでにルキアちゃんは幸せだよ。酔いながら言ってたよ。一護君と出会えたことが、人生で一番の幸福だと」

「ルキアが?」

「そうだよ。朽木隊長も、もう少し寛容になってあげればいい」

「すでに、譲歩している。毎週わざわざ現世にいくのを、黙って見ている」

「まぁ、僕は帰るよ。流石に眠くなってきた」

「兄は・・・浮竹を、幸せにいしているか?」

ふとされた質問に、京楽は笑った。

「幸せじゃなきゃ、今でも二人一緒にいることなんてないよ。僕も浮竹も、傍にいれるだけで十分に幸せなのさ」

「そうか・・・」

白哉は、月明りの中、闇に紛れるように歩き出した。

京楽も眠かったので、8番隊の隊首室に戻り、眠った。


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翡翠に溶ける 失われる霊力

藍染には、ヴァイザードたちも歯が立たなかった。

山本総隊長は、片腕を失っていた。

「これはまずいね・・・・・」

ワンダーワイスにやられた、浮竹の怪我は酷い。

他にも松本や雛森といった副隊長の怪我も酷かったが、まだ立てるような状況じゃないのに、松本は市丸を追って、尸魂界に行ってしまった。

「・・・ぐ。すまん、油断した」

「大丈夫かい?もうすぐ、卯ノ花隊長が診てくれる」

「肺をやられたようだ・・・・」

出血の量が酷かった。

輸血しないとまずいなと思いながら、血を流す浮竹を抱き締めていた。

「僕は回道はかっらきしだしねぇ」

「それは俺もだ」

ごほごほと、浮竹は咳込んだ。血を吐いた。

肺を傷つけられて、呼吸が苦しいのだろう。何度も血を吐いた。

「どいてください、京楽隊長!」

「卯ノ花隊長!後は、頼んだよ・・・・・・」

浮竹はすぐに回道が施されたが、出血量が酷いので尸魂界の救護院に、緊急入院が決まった。

「こんなことをしてる間にも、藍染は・・・・・」

「今は、一護君に全てを託すしかないよ」

「自分の力のなさが、歯がゆい」

「それは僕も同じさ」

藍染は、東仙と市丸さえも手をかけた。

一護自体が月牙天衝になり、藍染は破れ、それでもというところで、浦原がしかけていた封印が効力を出して、藍染は捕縛され無闇という何もない空間に、5感の全てを封印されて、実に2万年にも及ぶ刑期を課せられることとなった。

「藍染が、無闇に収監されたそうだよ。2万年だそうだ。今の藍染は殺すことができないから、封じるのが精いっぱいみたい」

「それでも、良かった・・・・・これでもう、尸魂界もやっと静かになるだろう」

「それより聞いたかい?一護君が霊圧をなくすそうだよ」

「そんな!」

浮竹は、一護の元へと走っていく。まだかろうじで残っている霊圧を頼りに。京楽も、その後に続いた。

一護が霊圧をなくした場合、それを取り戻す方法が模索されていると、移動中に京楽から聞いた。

「一護君・・・・」

一護を見る。

「霊圧を失うんだ。失う前に、皆に挨拶しなくていいのかい?」

「ああ、もう別れはすませてあるから」

一護は、寂しそう笑った。

背が少し伸びて、髪も伸びていた。

「戻る前に、髪を切ってあげよう」

「ああ、すまない浮竹さん」

「ということで頼むぞ、京楽!」

「やっぱり僕かい!」

京楽は、仕方ないと浮竹と一護と一緒に、雨乾堂に訪れていた。

浮竹の髪を切る要領ではあるが、少しだけ切っていく。

「この櫛・・・綺麗だな」

「ああ、京楽からもらったものだ」

螺鈿細工の櫛を、一護は見ていた。

「なぁ、浮竹さん、京楽さん。霊圧を失った俺は、もう尸魂界にはこれないのかな?」

「ああ、無理だろうな」

「そうか・・・・」

やっぱり寂しそうに、一護は笑った。

「恋次やルキアと、また会いたいんだけどなぁ・・・・」

霊圧を失う一護に、霊圧を取り戻させようとする動きはすでにあった。

だが、時間がかかりそうだった。

可能性を今話しても、焦らせるだけだろうと、浮竹も京楽も告げなかった。

あくまで、可能性の話だ。

霊圧を取り戻す方法は、全隊長副隊長たちの、霊圧をこめた刃を受け止めること。

まだ試作段階にもきていない。

京楽の手によって、元の髪の長さに戻った一護と、握手を交わした。

「じゃあ、二人ともお元気で」

「ああ、一護君もな。朽木が、君が霊圧を失っている間も、義骸に入って遊びにいくとかいってたので、まぁ楽しみにまっててあげてくれ」

「ルキアのやつ・・・・・」

一護は嬉しそうだった。

二人は、互いを好きあっていた。

だが、告白はまだだ。

「あのな、一護君、朽木は君のことを・・・・・もがーー!」

「これは二人の問題だよ。僕らは余計な首をつっこんないこと!」

京楽に言い聞かせられて、浮竹も頷いた。

「じゃあ、俺もう行かなきゃ。浮竹さん、京楽さん、いろいろありがとう!」

「ああ、一護君も元気で!

「達者にね」

いなくなった一護を見守って、二人は太陽が傾いていくのを見ていた。

「こんな美しい夕日は、尸魂界では珍しいな」

「太陽が悲しんでいるんだよ。尸魂界を救ってくれた太陽が力を失うから」

「一護君は、本当に太陽のような子だったな」

「ああ、そうだね」

「海燕とは全然違う」

「そうだね」

「朽木とうまくやっていけたらいいんだが」

「ま、なるようになるさ」

それから1年5か月。

尸魂界と一護は接触を絶っていた。

ルキアがたまに義骸に入り、一護の家に行く以外は、接触はない。

やがて、全隊長と副隊長の霊圧をこめれる刀ができあがった。

それに、浮竹も京楽も、ありったけ霊圧をこめた。

やがてそれは一護の霊圧復帰に向けて、動きだす。

ただ、最低でも霊力探知能力がないと、使っても無駄だ。

ただ、時を待つ。

一護の身に、変化が起きるのを-----------------。


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翡翠に溶ける エスパーダ

藍染の反乱がはじまった。

十刀(エスパーダ)の破面が現世に侵攻し、井上織姫を、脅して従属させる形で、ウルキオラが拉致していった。

「尸魂界は井上を見捨てるだって!?」

尸魂界の決定に、一護は噛みついた。

「なんとかしてやりたいが、元柳斎先生の決定は覆らない」

「浮竹さん・・・・・もういい、俺一人でも、井上を助けにいく!」

「待て、一護君!!」

一護は最後まで話を聞かず、現世の仲間である石田と茶虎と共に、浦原に虚圏に続く黒腔(ガルガンタ)をあけてもらって、虚圏に行ってしまった。

「全く・・・・頭に血がのぼると、周囲を見ないタイプか」

「まぁ、仕方ないんじゃないの。織姫ちゃん、かわいいしさ」

京楽の言葉に、つーんと浮竹の機嫌が冷たくなる。

「ああいうのがタイプなのか?」

「いやいや、これは言葉の綾でね・・・・」

少し冷たい態度の浮竹は、京楽を無視して、ルキアと恋次を見た。

「一護君の、手助けにいくんだな?」

「はい、隊長。止めても無駄ですから」

「そうだぜ、浮竹隊長!」

そう言う、ルキアと恋次を見る。色の薄いマントを羽織っていた。

「誰が止めると言った。そのマントは?」

「兄様が、虚圏は砂だらけだと・・・・」

「阿散井の分もか?」

「そうです」

「白哉もまぁ、変わっったなぁ・・・・朽木と一護君のせいかな?」

少し前の白哉は、少し冷たかった。

「兄様は元から優しい方です!」

「でも、尸魂界に帰還したお前たちがどこへ行こうと、知ったことではないと言ったのだろう?」

「そうです」

「つまりは虚圏に行くのを知っていて、尸魂界が虚圏に行ってはいけないという決まりを破るんだろう?」

「止めても無駄です!」

「そうだそうだ」

「さっきも言っただろう。誰も止めないと。行って来い。でも、必ず無事に帰ってこい!こちらも準備ができ次第、隊長クラスが動くだろう」

「え、そうなの?」

京楽が問うてくるが、浮竹が頷く。

「朽木や阿散井が動いたと知ると、先生の命令を無視して隊長クラスも虚圏に行くことになるだろう。とにかくお前たち二人は、早く虚圏にいって、一護君たちと合流するんだ」

「はい」

「勿論だぜ」

穿界門をあけさせて、黒腔の道が開ける浦原のところまで送った。

「それにして、僕らまで死神の虚圏行きに関わったって知ったら、山じいはどうなるんだろう」

「多分、尻に火がつくな」

「勘弁してよ~」

「まぁ、火をつけられ時は仲良く一緒だ」

数時間後、尸魂界に動きがあった。

恋次とルキアが虚圏に赴いたことがばれたのだ。

山本総隊長は怒っていたが、白哉と更木と4場隊が虚圏に派遣されることが決定した。

「本当に、仕方のない小童どもじゃ・・・・」

山本総隊長に呼び出されて、流刃若火で京楽も浮竹も、尻に火をつけられて、あちゃちゃと飛び上がっていた。

「これくらいで勘弁してやろう。朽木ルキアの処刑に盾突いたことといい、最近のお主らは全くもってわしの言葉を聞かんのじゃからな・・・・・・」

「ごめんよ、山じい」

「すみません、元柳斎先生」

2人は、済まなさそうにていたが、反抗したことを悔いてもいなかったし、反省してもいなかった。

ルキアの時は、あれが最善の策だと思っていたし、今回の件も尸魂界は一護が動くなら尸魂界も動くだろうと判断した結果であった。

「一護君勝てるかな・・・破面の十刀だって。強いだろうね」

「ああ。でも、彼ならなんとかする。そんな気がするんだ」

その通り、一護はグリムジョーを倒し、ウルキオラも倒した。

そして、井上を救い出した。


「さぁ、僕らも行かなくちゃ」

「ああ」

空座町を、一時的に尸魂界に移動させた。

結界をはったのだ。

浮竹も京楽も、白哉と更木と卯ノ花を除いた隊長総隊長が出陣した。

山本総隊長の姿もある。

藍染と東仙と市丸と、3以下の十刀が相手だった。

それぞれ敵対していた十刀に、特に砕蜂が酷い怪我を負った。左手を失っていた。

一角も、結界の守護石を守ろうとして負けて大けがを負った。

「僕の相手は君かい?」

「ああ、そうだ。エスタークという」

「そう。そっちの女の子は?」

「リリネット。俺たちは二人で一人だ」

「じゃあ、その子もこの戦いに?」

京楽はリリネットを見る。

「駄目だ駄目だ!子供でしかも女の子だ!戦闘には参加させられない」

浮竹が割って入ってきて、リリネットと戦うと嘘をいって連れ出していった。

「まぁ、浮竹はあんなんだから。さぁ、僕らもやろうじゃないか。君は何番の十刀だい?」

「1だ」

ひゅうと、口笛を吹いた。

「久しぶりに、僕も本気を出すかな・・・・・」

戦いの火蓋は、切って落とされた。


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翡翠に溶ける ルキアの処刑

朽木ルキアが、人間に死神の力を無断譲渡した罪で捕縛された。

「そんなばかな!処刑など、罪が重すぎる!」

「四十六室の決定じゃ。わしの力でもどうすることもできぬ」

そう言われて、浮竹がとろうとした行動は、双極の破壊。京楽と共にだった。

「もう、海燕のように、見殺しにはしない」

「この小童どもが!!!

怒った山本総隊長のすさまじい霊圧にあてられながら、それでも京楽と二人で歯向かおとした。

結局、全ては藍染のたくらみであり、四十六室のメンバーは全て皆殺しにされていた。

藍染の企みを阻止できなかった。

東仙と、市丸という隊長もついていってしまった。

黒崎一護の姿を初めて見た時、魂が揺さぶられた。

「海燕・・・・?」

髪の色は違うが、そっくりだった。

霊圧も垂れ流し状態で、全然違う。

でも、どこかよく似ていた。

「ちょっと、浮竹」

「え、ああ。すまない、一護君。これを渡しておこう」

死神代行証を手渡した。

「これは?」

「これを使うと、死神化できるんだ」

おおざっぱに説明した。

「ありがと、浮竹さん」

「あ、ああ・・・・・」

やはり、似ていた。

動揺を押し殺して、笑顔で一護に別れを告げた。

「兄には、世話になった・・・・・」

白哉が怪我から復帰して退院した。

見舞いに何度も行き、ルキアとの溝がなくなったことを知り、浮竹は自分のことのように喜んだ。

「そうか、白哉は朽木と打ち解けたのか」

「今まで、互いの距離を縮めていなかった。それが縮まっただけのこと」

「いやぁ、良かったねぇ、ルキアちゃん」

隠れていたルキアを発見して、京楽が声をかける。

「ひゃう!」

ルキアは、吃驚して変な悲鳴をあげていた。

「どうした、ルキア」

「いえ、兄様のお帰りが遅いと思って・・・・・」

「見ての通り、足止めを食らっていただけだ。兄ら、もう用がないなら、帰るぞ」

「ああ。またな、白哉」

「またねー、朽木隊長にルキアちゃん」

手を振ると、ルキアも嬉し気に手を振った。

「隊長、また遊びにいってもいいですか!」

「ああ、いつでもおいで」

特殊が義骸に入っていたせいで、霊圧をほとんどなくしている今のルキアには、死神業務は無理だ。

暇を持て余すルキアは、よく雨乾堂に遊びにきた。

「朽木なら・・・・いつか、副官を任せられるかもしれないな」

「お、ついに副官を置くことに決めたのかい?」

「まだ先の話だ。まだ今の朽木では、強さが足りない」

「言うねぇ」

久し振りに、酒を飲み交わしあった。

藍染の反乱が発覚して2週間が過ぎようとしていた。

みんな、3人の隊長の穴を埋めようと、躍起になっていたが、浮竹と京楽は相変わらずのほほんとしていた。

卯ノ花の次の古株だ。

今から100年ほど前に、隊長総隊長が虚化の実験の犠牲になり、浦原と夜一も消えてしまったことを考えると、3人が抜けたくらいでは2人は動じなかった。

「ん・・・するのか?」

キスをして、抱き締めてくる京楽に問う。

「ここ半月、ごたごたして体を重ねられなかったからね。君を抱いても構わないかい?」

「こい。久しぶりで、俺も疼いている」

それを合図に、お互いの隊長羽織と死覇装を脱がし出す。

「ああ!」

胸の先端をかじられて、びくんと浮竹の体がはねた。

「少し、痩せたかい?」

「ん・・・朽木のことが心配だったから・・・・」

処刑は後一歩のところで、一護によって阻止された。それはよかったのだが、藍染という大反逆者を生み出すことになった。

「藍染とか・・・いろいろと考えていると、どうにも食欲がな」

「ちゃんと食べなきゃだめだよ」

「ん!」

潤滑油に濡れた指が体内に入ってくる。

何千回と繰り返してきた行為なのに、未だに慣れない。

「ああ!」

ぐっと、前立腺のところで指を折り曲げられた。

「もういい、早くこい・・・・」

京楽は、浮竹の放つ艶っぽさにやられて、ごくりと唾を飲みこんだ。

「いくよ」

「ああああ!!!」

引き裂かれる痛みさえ、歓喜。

久し振りに京楽を受け入れたそこは、熱を孕んでいた。

「ん・・・だめだ、1回だすよ」

「んああああ!」

腹の奥で、京楽が弾けるのを感じた。

何度か、ぐちゃぐちゃと音を立てたれて突き上げられた。

やっとのことで、1回の目の精を浮竹も放っていた。

「ひああ・・・・・」

前立腺を突き上げられて、連続でいかされた。

「あああ・・・・思考が・・焼き切れれる・・・・・・」

「いっちゃいなよ。愛してるよ、十四郎」

「ああ、春水!!!」

くちゅりと中の浅い部分を犯された。

前立腺ばかり刺激されて、浮竹は啼く。

「ああああ!春水、愛してる・・・・・」

何度も熱に穿たれ、引き裂かれた。

「ひああああ!」

京楽が満足する頃には、もう吐き出すものはなく、透明な蜜をたらたら零して、ドライのオーガズムで何度もいかされた。

「愛してるよ」

「あ、俺も愛してる」

その想いは、院生時代から変わらない。

こうやって肌を重ね合わせるのも。

ああ、翡翠に溶けていく。

そう思った。

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翡翠に溶ける 海燕の死

海燕が死んだ。

数日の間、浮竹はあまり眠らず、食事をとらなかった。

倒れるまで。

点滴の管に繋がれた浮竹見て思う。

それほどまでに、海燕の存在は、浮竹の中で大きくなっていたのだ。

一緒にいたのは僅か数十年であるが、京楽もまた彼の死にショックを受けた。

京楽が見殺しにしたのだと、噂が立っていた。

それを、浮竹は否定するわけでもなく、受け入れていた。

「大丈夫?過労で倒れたんだよ」

目をあけた浮竹の顔色は酷いものだった。目の下の隈も、まだ完全にとれていない。

「いけたかな?」

「え?」

「海燕は、天国にいけたかな?」

涙が、ぽろりと零れた。

「大丈夫・・・・妻も都ちゃんだっけ。あの子と一緒に今頃天国で微笑んでるよ」

「朽木に・・・酷い仕打ちをしてしまった」

「ああ、朽木隊長の義妹のルキアちゃんね。大丈夫、始めは茫然自失になって、そのうち自分を責めだしたけど、君の姿を見て大人しくなったよ。「辛いのは私だけではない」と言っていたよ」

ルキアの姿を思い出す。アメジストの瞳に、涙をためていた。

「朽木を、呼んでくれないか?」

「いいけど、もう大丈夫なの?」

「ああ・・・・久しぶりに睡眠をまとめてとったから、気分がいい」

「ならいいけど・・・・」

地獄蝶を使い、ルキアを呼び出した。

「浮竹隊長!倒れたそうですが、大丈夫ですか!」

ルキアも、顔色がよくなかった。あまり眠れていないのだろう。目の下に濃い隈があった。

「すまなかった・・・・・巻き込んでしまって・・」

「いえ・・・・いいえ、あれは海燕殿の意思だったんです。私の手にかかって死ぬことを望んでおられた」

「それでも、すまない。あの虚を、海燕と出会わせる前に俺が倒しておけば・・・・」

「それは可能性の逃げ話になってしまいます。海燕殿は、心はここに置いていけると仰っていました。心は、私と浮竹隊長の中で、受け継がれていくんだと思います」

「そうか・・・・・・・」

浮竹は納得したように、頷いた。

「海燕は、俺たちの心の中にいる。いつまでも、一緒だ」

できれば海燕の葬儀に出たかったが、志波家から拒絶されていた。部下を見殺しにする隊長やその仲間になどきてほしくはないと。

霊圧をけして、遠くから海燕と妻である都が、荼毘に付されるのを遠くから見ていた。天に昇っていく煙を確認して、数日後に浮竹は過労で倒れ、今に至る。

浮竹は、また眠ってしまった。

深い眠りに入っているようだった。

「ルキアちゃん、この薬あげる」

「これは?」

「僕が不眠時に使っている眠剤だよ。あまり眠れてないんでしょ?それ飲んで、よく眠って疲れをとりなさい」

「はい・・・・・」

ルキアは、朽木家に戻っていった。

3日が経ち、すっかり持ち直した浮竹が姉乾堂に帰ってきた。

まだ完全に海燕の死を受け入れたわけではないが、彼が死んだとちゃんと認識していた。

入院する前は、海燕の名を時折呼んでいた。

「今度、海燕の墓参りにいこうと思うんだ」

「それはいいね。葬儀には出られなかったんでしょう?」

「ああ。海燕の姉が、死神は大嫌いだと誰も参加させす、身内だけで葬儀を行ったらしい。俺は遠くから、荼毘に付される様子を見ていたが、花をささげることもできなかったしな」

「そうだね。手配するから、立派な菊の花に酒に、海燕君が好きだったおはぎをそえて・・・今週の週末は空いてるかい?」

「ああ。今週末にでも、墓参りにいこう」

やがて週末になり、海燕の墓にいった。

立派な廟堂の中にあった。

流石、元5大貴族だけであって、墓だけが立派なだった。

菊の花を活けて、酒を墓石に注ぎ、おはぎを供えた。

線香に火をつけると、ゆらりと煙が揺れた。

「あっちでも、達者でいろよ。そのうち、俺たちもお前たちの方へいくから」

「こら浮竹、縁起でもないこと言わないでよ」

「ああすまん。訂正だ。しばらくそっちにはいけそうもないが、どうか天国から見守っていてくれ」

没落してしまっていたので、墓以外は質素で、海燕は家をもっていたが、席官クラスが館を構える場所に、海燕とその妻都の家はあった。

姉がすでに遺品を引き取りにきた後だったので、あまりめぼしいものはなかったが、ふと瑪瑙の簪を見つけた。

それは浮竹が、妻の都に贈るようにとあげた、結婚式祝いのものだった。

「海燕、都・・・この簪をもらっていく」

その館には、もう次に入る者が決まっていた。

海燕の姉が、わざと残していったのだろう。

そんな気がした。

それからしばらくて、山総隊長より数人の次の副官候補から、副官にしたい者を選べと言われた。

「元柳斎先生。すみませんが、当分の間は、副官を置きません」

「なんじゃと」

「海燕の死は俺の責任でもあります。もう、あんな目に誰も合わせたくないのです」

「お主のせいではない。悪いのは虚じゃ。副官は本当にいらぬのか?」

「はい」

「では、3席を2名おけ。副官の代わりになるような者を」

そう言われて、浮竹が選んだのは当時3席のままの清音と、4席だった仙太郎だった。

「この2名を、副官の代わりに置きます」

「ふうむ。まぁよいじゃろう。時間が経てば、いつか副官を選んでもらうぞ」

「はい」

仙太郎は感激していたが、清音が同じ3席になるということで、ライバル心を燃やしていた。

「この不細工!はげ!」

清音の言葉に、仙太郎が売られた喧嘩は買うように、叫んだ。

「はん、ブーーーーーーース!」

「なんですってぇ!私のほうが、長く3席をしているのよ!副官補佐は渡さないんだから!」

「ブスブスブーース!!!」

「きいいいいいいいい」

二人は、仲が良くなかった。

人選間違えたかなと思いながらも、3席の2人に今までの海燕ほどではないが、世話をみてもった。

やがて時は経ち、ルキアが空座町の担当死神になった。

「本当にいいのか?白哉に知らせなくて」

「はい。兄様は、この程度のことと言われるでしょう」

朽木家の養子にいったルキアが、義兄の白哉とうまくいっていないとは聞いていた。だが、ルキアが13番隊に入るにあたって、白哉から直々に副官にしないよにと、強く言われていた。

席官になればなるほど、命の危険も大きくなる。

「白哉も素直じゃないな・・・・・」

「え、浮竹隊長?」

「いや、分かった。それじゃあ、現世にいってこい。達者でな」

「はい!」

ルキアは、空座町に向かう。

そして、黒崎一護と運命の出会いを果たすのだ。

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翡翠に溶ける 海燕2

「ほらほら、さっさと起きてください」

「まだ眠い~」

「そんなこと言ってないで起きる!」

海燕は、浮竹の世話を率先して行ってくれた。

顔を洗い、着替えて朝餉を食べる。

海燕がいない時は、いつも朝食は抜きで、10時頃に起き出して動き出す浮竹を、8時にはたたき起こしていた。

「海燕君はすごいねぇ。僕でさえ、起こせなかった浮竹を、こんなに簡単に起こせるなんて」

「簡単じゃありません。とにかく布団を奪うんです。それで大抵起きます」

「布団を奪う・・・・僕は、浮竹に幸せに起きてほしいから、無理だねぇ」

京楽はよく雨乾堂を訪れるし、逢瀬の時も雨乾堂を使っていた。

この二人、見られていても平気で睦みだす。

海燕がそんな雰囲気になると、姿を消すようになったのは、睦みあいの最中に雨乾堂に入ってしまった時がきっかけだった。

浮竹も京楽も若くないが、まだまだ男盛りだ。

とくに京楽の性欲は旺盛で、1回の睦み事に3~4回は出す。

ある日、京楽がしつこいのだと相談を受けて、「ならば禁欲生活を送らせたらいい」というと、「俺も溜まるから無理」と言われてしまった。

京楽も浮竹も、心は院生時代のままなのだ。

付き合い始めた頃から、変わったのは外見と地位、あとは睦みあう回数くらいか。

学院時代には週に二度は睦みあっていたが、最近は週に一回程度だった。

お互いを想い合う心は、院生時代から不変である。

「はい、仕事をはじめる!ああもう、寝ようとしない!」

海燕は、浮竹を文机に誘導して、今日の仕事をどさどさと置き出す。

朝餉を食べても寝ぼけていたが、文机の前にくると少しずつ覚醒する。

ばりばりと働き出す。よくまぁそんあ速度で仕事ができるものだなと、浮竹の後ろ姿を京楽は見つめていた。

京楽も、今日は仕事をしようと。8番隊から仕事をもってきていた。

京楽のためにと、浮竹の隣に誂えられた黒檀の文机で、京楽も仕事をしだした。

「はい、12時!昼飯です」

海燕は、時間にきっちりだ。

昼餉をとり30分ほどうたた寝をして、1時から6時まで仕事。

6時に、やっと死神業務の終了時刻だが、海燕には浮竹の世話がある

湯を沸かして風呂においたてて、夕餉の準備をして、食べ終わった夕餉を下げてやっと、海燕の一日も終わる。

「あがります。お疲れさまでした」

「ああ、お疲れ」

「お疲れ~」」

去っていく海燕を見送って、今日は泊まることにした京楽は、浮竹の長い髪を結い上げていた。

「うーん、やっぱり髪の毛結った方が似合うと思うんだけどなぁ。翡翠の簪をさしたり・・・・そういえば、あげた簪や髪飾りとかはどうしてるの?」

「たんすの奥にしまってある。大切にしているぞ?」

たんすの中を開けて、見せてくれた。

「うん。売っても構わないけど、なるべく持っててほしいな」

「お前からもったもだ。売るはずがない」

「でもずっと前にあげたエロ本、売ったよね?」

京楽が浮竹に、抜くときのためにと、エロ本をあげたのだが、浮竹はもう女性の裸を見た程度では、たたなくなっていた。

「あんなくだらないもの、もってても無駄だ」

「けっこう高価なものだっただよ」

「ああ、いい値段で売れた」

「そしてそのお金はどこへ?」

「おはぎに消えた」

「そうかい。エロ本はおはぎになったのか・・・・・」

なんだか感慨深い。

京楽も、昔は女性の裸でたっていが、今はえろい動画を見ても何も感じなかった。

その代わり、頭の中で浮竹に変換して妄想するだけで、たった。

もぅ・・・300年以上は生きているだろうか。

長生きをしすぎで、途中から年を数えるのを止めてしまったため、自分たちが正確に何歳であるかは分からなかった。


「ああもう、こんなに散らかして!」

畳の上に、後て捨てようとまとめていた開けた菓子袋を見て、海燕が掃除を始めた。

「おい、そんなに頻繁に掃除しないでも」

「甘い!ほこりがたまってからじゃあ遅いんです!清潔であることが、隊長の肺にもいいんですから!」

「そういうものなのか?」

京楽の顔を見る。

「さぁ?」

京楽にも分からないようだった。

「どいたどいた!」

ちりとりと箒で、畳の上を掃除していく。

「ほら見てくださいこの髪!人は毎日髪がぬけるんですから!」

長い白髪に交じって、時折京楽のものらしい、黒髪があった。

「海燕は、お母さんみたいだな」

「ああ、よく言われます」

「否定しないのか」

「都もうるさいです。掃除のしすぎだとか、洗濯物を洗う頻度が高いとか。俺、汚れているのって見ていていらいらするんです」

浮竹は、妻の都に同情した。

「都も大変だな・・・・・そうだ子供ができたら、俺が名づけ親になってやろう」

「ちょ、気が早すぎです。まだ結婚して1年ですよ!?」

「お前の子供に、老後の面倒を見てもらうのもいいなぁ」

「なに勝手に人の家庭環境に自分を入れてるんですか!」

海燕の批難を無視して、続ける。

「いつか、引退して京楽と同じ屋敷で、ぼーっと毎日寝ていたい」

「あんたの脳には寝るしかないのか!」

「いや、性欲と食欲もあるぞ。それより睡眠欲がでかいだけで」

「あんたの睡眠欲はでかすぎだ。この前の日曜、昼の1時まで寝てたそうですね」

がみがみとお説教を食らう浮竹。

京楽は、我関せずという形で茶を飲んでいた。

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雲の上の浮竹

「あー・・・・・頭痛い」

「そりゃあんだけ寝てたらねぇ」

京楽がいた。

昨日、睦みあったのだ。

「今何時だ?」

「昼過ぎの3時」

「15時間は寝たか・・・・まぁまぁ寝たなぁ」

「海燕君がいなくてよかったね」

今、海燕は妻の都の家のほうに、里帰りしていた。

「海燕がいたら、こんな時間まで寝れないからなぁ・・・・・」

「起こすのもなんだから放置してたけど、ほんとに寝すぎだよ。体、大丈夫?」

「眠り過ぎの方が、体は楽なんだ」

「それならいいけど・・・・」

浮竹は京楽の方を見る。

「俺が寝てる間、何してたんだ?」

「暇すぎて、8番隊から仕事もってきて片付けてた」

「たまには、仕事もするんだな」

「これでも、溜めこむ前になるべく片付けてるんだよ!」

京楽は、いつも仕事をせずにふらついているか、寝ているか、酒を飲んでいるかのイメージしかなかった。

「お前がわざわざ仕事もってくるなんて・・・・明日は雨かな」

「僕を一人にする君が悪い」

抱き寄せられて、キスをされた。

ぐーー。

お腹が盛大になった。

「流石に朝、昼と抜くと腹が減るな」

「食堂に行こう。少し遅いけど、昼飯にしよう。君が起きるだろうと思って、僕も食べてなかったんだ・・・・お腹が、すいた」

いつもなら、海燕が食事の用意をしてくれるのだが、今はいないので、13場隊の隊舎の食堂までわざわざやってくると、平隊士たちに感激された。

「隊長だ・・・・本物だ・・・・」

「きゃあ、京楽隊長と一緒よ!」

女性は、黄色い声をあげていた。

「これだから、食事は雨乾堂でとりたいんだ・・・」

平隊士が並んで、握手を求めてきた。

時折食事の箸を止めて、それに応えてやる。

「君は人気者だね・・・僕は食堂にいっても、誰も何も言ってこないよ。七緒ちゃんが、さっさと飯食って、仕事の続きをしろってうるさく言われるくらいかな」

「まぁ、慕ってくれる隊士は多いな」

京楽と浮竹の性格の差だろうか。もしくは姿を見る頻度の差か。

京楽はよく隊舎を歩いている。

一方の浮竹は、雨乾堂に閉じこもって出てこない。たまに出てきて隊舎にきたと思ったら、すぐに雨乾堂に引っ込んでしまう。

「君、もっと日頃から隊舎にいないと、しまいには崇められるんじゃない?」

伝令神機で写真をとる隊士たちを見ながら、浮竹は首を傾げた。

「うーん。俺って、そんなに珍しいか?そこの君」

「え、俺ですか?」

「そうそう、君。俺って、そんなに珍しいか?」

「珍しいも何も、雲の上の存在みたいなかんじですよ!ほんとに隊長っていたんだなって思いました」

「君の隊・・・重症だね」

京楽の隊でもたまに珍しがられることもあるが、ここほど酷くない。

「もうちょっと、隊士たちと触れ合う時間を作ったほがいいんじゃない?」

「考慮しておく」


海燕が帰ってきた。

海燕に事情を話すと、水曜と土曜の日の昼飯と夕食は、しばらくの間雨乾堂ではなく、食堂でとって交流をはかるべきだと言われた。

あと、道場で剣の稽古を見てやればいいと言われた。

それから、3か月ほどが経った。

「隊長、お疲れさまです」

「ああ、お疲れさま」

浮竹の存在は、隊にすっかり馴染んでいた。

「俺の言った通りにして、正解でしょう」

「ああ、そうだな。しばらくまた、雨乾堂で食事をとることにする。剣の稽古については、引き続き指導を行っていく」

海燕は、間違ったことを言わない。

だから、安心して副官を任せれるのだ。

「それにしても、海燕は何も言われないんだな」

「言われますよ。前までは、隊長って本当に存在するのかとかも、言われてましたけどね」

「うわぁ、なんかすまない。もっと早くに、交流をはかるべきだった」

「いえ、言わなかった俺も悪いですから」

それから、今後はどうしよう、ああしようと言葉を交えた、

「う~き~た~け~」

幽霊のように、ずるずると這いずってやってくる京楽に、浮竹が驚く。

「なんだ、庭の落とし穴にでもはまったのか?」

「そうだよ!誰だい、あんな場所に落とし穴設置したのは!」

京楽は憤慨していた。

「俺です。最近、隊舎から雨乾堂に盗撮にくる輩がでてきたから・・・・・」

「え、そんな奴いるのか?」

「はい。隊長の・・・特に京楽隊長とのツーショットとかは高く売れるとかで・・・」

「けしからーーーーん!」

京楽が、叫ぶ。

「いや、けしからのはあんたの存在のせいでもありますから。あんたと隊長ができているせいで、女性の間で写真が高値で売買されてるんですよ」

「女性か・・・・・男のように力で捻じ曲げるわけにもいかないな」

「あ、中には購入していく男性もけっこういますよ」

「余計にけしからーーん!」

巨楽が叫ぶ。

「京楽は泥まみれだな。風呂に入ってこい。着換えを用意しておくから」

「え、ああうん。しかし、一度取り締まるしかないね。女性相手でも、強気にでるべきだ」

そう言って、京楽は浴室に消えていった。

海燕は、お触れを出した。

盗撮に関与した場合、拘束の上に減給3か月。

海燕のお陰で、盗撮していた女性死神が捕縛され、芋づる式に摘発されて、浮竹と京楽の写真を盗撮する者はいなくなった。

「これで、いちゃつける」

「いや、あんたの場合、人が見ていてもいちゃつくでしょうが!」

海燕の指摘に、京楽は舌を出した。

「俺を挑発してるんですか」

「君の大事な上官は、僕のものだよ」

「いつからあんたのものになった!隊長は、みんなのものか!」

「あのなー」

浮竹が飽きれた声を出す。

「俺は俺だ。誰のものでもない」

二人とも、顔を見合わせて、それもそうかと思うのだった。

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クリスマス

ルキアは、残りの高校生活を楽しんでいた。

一護と一緒に、また暮らしだした。

そうなる前から、大戦が終わった直後くらいにはお互いに好きだと告白しあって、付き合っていた。

現世は、クリスマス一色だった。

街の街路樹にはイルミネーションの飾りつけがされて、夜になると星より綺麗に瞬いた。

「一護、クリスマスだぞ!」

「わーってるよ。そんなにはしゃいでも、クリスマスは逃げていかねーよ」

ルキアは、長袖の分厚い生地のワンピーにダウンのコートを着ていた。

吐く息が白くなる。

夜のクリスマス一色に染め上げられた街を、一心の許可を得てぶらついていた。

まだ、高校生だ。

あまり深夜まで俳諧していると、きっと補導されてしまう。

「あったこの店・・・ルキア?おい、ルキア!!」

探すと、街路樹の傍に置いてあった、綺麗に飾りつけをされたもみの木を見上げていた。

「ルキア、はぐれたらどうするんだ」

「む?その時は、霊圧で貴様の場所を探知する」

「予約の時間に遅れるから、素直についてこい」

「うむ」

レストランを予約していた。高くもなく安くもない店だが、メニューが美味いと評判で、予約しなければ入れない盛況ぶりだった。

クリスマスということで、主にカップルが目立った。

予約していた席まで案内される。

すでに、時間であったのでメニューが置かれていた。

メインはタンドリーチキンを中心に、ピザ、グラタンといったものだった。

あつあつだったので、少し冷ましてから食べた。

「美味い・・・ほろほろと口の中で溶ける・・・けしからん美味さだ」

「けしからん美味さっってなんだよ」

一護が苦笑する。

「このような店、予約するの高かったのではないか?」

「そうでもねぇよ。でも、予約がいっぱいで、3か月前から予約してた」

食後に、クリスマスのアイスケーキが出てきた。

「かわいい・・・」

チョコのサンタが、トナカイに乗っていた。

ルキアはそれを食べることに戸惑ってたところを、一護がフォークをぶっさして食べてしまった。

「ああ、サンタさんが!」

「早く食わないと、溶ける」

「う、うむ・・・・・私のサンタさんが・・・・・」

「わーったよ。俺の分やるから」

一護は、まだ残してあったサンタのチョコを、フォークでぶっさした。

「ああ、またサンタさんを!」

「いいから、口開けろ」

素直に口を開けるルキアに、一護はサンタのチョコレートを口の中に入れた。

「ん、冷たくて甘い・・・・口の中でとろけていく」

アイスケーキを完食して、酒を飲むわけにもいかないので、ソフトドリンクを飲んでいた。

「これ、クリスマスプレゼント・・・・」

荷物の中から、一護はルキアのためのクリスマスプレゼントを出した。

「安物で悪ぃけど・・・」

それは、銀細工のブレスレットだった。アメジストがたくさん嵌め込まれていた。

「うわぁ、綺麗だな」

光に輝くアメジストのブレスレットに、ルキアは夢中になった。

「ありがとう、一護。私からのクリスマスプレゼントはこれだ!」

チャッピーのパジャマをもらった。

「おう、ありがとう」

着ぐるみじゃなくてよかったと思う一護だった。

「なぁ、高校卒業しても、またこうして会おうぜ」

「当たり前であろう!私と貴様は交際しているのだ!」

ルキアの言葉に、一護は微笑んだ。

ああ、その顔好きだな・・・・・。

そう思って、一護を見つめていた。

「む、兄様からだ」

白哉専門の伝令神機が鳴って、ルキアは出た。

「兄様どうしたのですか!」

「クリスマスプレゼントだ」

店員がやってきた。

というか、サンタのコスプレをした白哉であった。

「兄様・・・・素敵です、凄く似合っています」

「ルキアにはこれを・・・・黒崎一護、兄にはこれだ」

「つかなんで白哉が現世にいやがるんだ!」

「朽木家の財をもってすれば、不可能などない」

ふっと笑む白哉に、ルキアはメロメロ状態だった。

「ああ、素敵です兄様・・・・・」

白哉が渡してきたプレゼントの包みを少しあけて見てみる。

わかめ大使の着ぐるみだった。

「めっちゃいらねぇ・・・・」

小声だった。

「ルキアは何もらったんだ?」

「プラチナのブレスレットだ」

ああ。

贈り物が重なってしまった。

「一護からもらったのを右手に、兄様からもらったのを左手につければよい」

「そうか・・・・・」

重なっても、良かったのだ。

それに、ルキアの瞳と同じ色のブレスレットを、ルキアはとても気に入ってくれた。

「店、出ようか」

「ああ」


黒崎家の自宅に戻り、自室に戻った。

白哉とは、レストランの前で別れた。

「なぁ、ルキア」

「なんだ」

「俺のクリスマスプレゼント、白哉みたいに豪華なものじゃないが、そんなに気に入ったのか?」

「ああ・・・こうして光に透かすと、紫色の影が落ちるのだ」

天井の光に透かせてみせるルキア。

「ああもう、お前はかわいいな!」

抱き寄せて頭を撫でてやると、ルキアは甘えてきた。

「いちご、もっと・・・・」

さらさらの黒髪を手ですいて、舌が絡まるキスをした。

「ふあ・・・・もっと・・・」

「ああ、もうなんでこんなにかわいいんだ!」

ルキアの濡れた瞳が、煽情的だった。

もう一度キスをして、離れた。

「最後まで、しないのか?」

「高校を卒業してからだ。俺が一人暮らしするから、それまでは無理だ」

妹や父親のいる黒崎家では、睦みあえない。

「ラブホテルに、いくか?」

ぶーっと、一護は飲みかけのお茶を吹き出した。

「誰だ!誰がお前に、そんなことを吹き込んだ!」

俺の純白のルキアの思考を穢す奴は許さん。

「この前、テレビでやっていた。やる目的にのために、ラブホテルがあるのだと、言っていた。
その、いいのだぞ?お前が欲しいなら、行ってもいい。私の初めてを貴様に・・・」

「その話はそこまでで」

「いちご?」

「高校の間は、清いままで交際しようって約束したじゃねーか。それに、ラブホテルとかただ単にルキアの体目的のためみたいで、嫌だ」

「私はそれでも、良いのだぞ?一護が好きだ。一護のためなら・・・・・」

ルキアは、潤んだアメジストで見つめてきた。

「俺もルキアが好きだし、抱きたいと思ってる。でも、高校卒業まではだめだ。白哉とも、約束したしな・・・・」

「そうか、兄様が・・・・・ということは、私と付き合うために、わざわざ兄様に会いにいったのか!?」

「ああ、そうだ。すっげー顔して睨まれて、千本桜でその覚悟はあるのかって斬りかかってきた・・・・・・」

ルキアは、小さく笑った。

「兄様のしそうなことだ」

「最後は、妹さんを俺にくださいって言ったら、放心して、その後、卍解して互いに斬りあった」

「うわぁ・・・・・・」

「俺が諦めないてって何度も言うと、付き合うことを・・・・結婚前提に、許してもらった」

「え、結婚前提!?初耳なのだが!」

ルキアが、その大きな瞳をさらに大きく見開く。

「あ、言うの忘れてた」

「一護のたわけ!このばかばか!」

ぽかぽかと殴られたが、痛くはなかった。

「そういうことだから、俺も我慢するから、ルキアも我慢な?」

「分かった・・・・・・」

ルキアは、一護を押し倒して、唇を重ねてきた。

「ルキア?」

「私も、欲はあるのだ。結婚前提ということは、私が人間になるのであろうか?それとも、一護が死神化するのであろうか」

「多分後者だ。マユリに薬をどうとか言ってたから」

ルキアが目を輝かせる。

同じ時間を生きられるのだと。

「一護、しかしよいのか?家族を捨てることになるのだぞ」

「別にいいよ。完全に顔を出さなくなったりするわけじゃねーんだし」

「愛してる、一護」

「俺も愛してる、ルキア」

残りの高校生活を穏やかに暮らしていこう。

そう思う二人であった。






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お母さんな海燕

「おはよう、海燕」

「ええっ。隊長がこんな時間に一人で起きるなんて!明日は雨かな?」

今朝の7時だった。

いつもだらだらと寝ている浮竹が起きるのは10時くらいだ。

9時から仕事は始まっているのだが、この上司、ねぎたないので放っておけば昼過ぎまで寝る。

「朝餉を食べる」

「今日も食べないと思って用意してませんよ。仕方ない一般隊士の食事になりますが」

「ああ、それでかまわない」

朝餉を食べて、体操をした。

「何してるんですか」

「食後の運動だ」

「やっぱり明日は雨が降る!」

9時になり、仕事にとりかかる。

ささっと終わらせてしまい、昼までには今日の仕事は終わってしまった。

「明日の分もやるか」

「隊長、無理しないでくださいよ」

「ああ」

明日の分の仕事をして、昼餉をとっているところに、京楽がやってきた。

「やあ、春水、今日もいい天気だな」

京楽は、眉を顰めてひょいっと浮竹を抱き上げた。

「どうしたんですか、京楽隊長」

「この子、今日は真面目だったでしょ」

「ええ、そうですが・・・・・」

「やっぱり。熱あるよ、この子」

海燕が、驚愕の表情になる。

「ええ!嘘だ、こんなに元気そうじゃないですか」

「たまーにあるんだよねぇ。熱出しても自覚しないで真面目になるんだよ。仕事とかもできるから気づかないまま放置しておくと、倒れる。睦み事以外で僕を春水とは呼ばないからね」

「おい、俺は熱なんて・・・・・ないと思ったらあったーー!!」

自分の額に手をあてて、はっきりと熱いのを自覚した。

「道理で、体全体が重くて、だるいわけだ」

「症状あるなら最初から言ってください!」

「いやぁ、清々しい朝だったから。仕事もばりばりできたし」

「熱だしてるんだから、薬のんでちゃんと休もうね」

京楽が、浮竹の頭を撫でる。

「まあ、今日の分の仕事はできているから、それでもいいか」

海燕の手で、お日様に干していた布団がしかれて、その上に横になった。

「太陽の匂いがしてぽかぽかだ。おい京楽、人間ほっかいろになれ」

季節はまだ冬。

寒いのだ。

京楽は笠をとり、浮竹の隣に寝た。

「あんたら・・・昼間っから、盛らないでくださいね?」

「いやだなぁ、海燕君。熱のある浮竹に手を出すほど、飢えてないよ」

「あったかい・・・・」

毛布と布団を深く被って、浮竹はうとうとしだした」

「ああ、薬飲まさなきゃ」

「そうだ、解熱剤を」

海燕がもってきた解熱剤を、コップの水と一緒に放り込んで、口移しで飲ました。

「んんう・・・・あっ」

ごくりと嚥下した。

「ほら、もう邪魔しないから寝ていいよ」

「じゃあ寝る・・・・おやすみ」

「ああ。おやすみ」

浮竹が眠ると、京楽は布団から出て去ろうとする。

「どこいくんですか?」

「いやぁ、仕事貯めこみすぎちゃってねぇ。浮竹がこれだど暇だから、たまには仕事しようかなぁと思って」

「どんだけ貯めこんでるんですか」

「んー。半月分くらいかなぁ。1月分を過ぎると、七緒ちゃんに怒られるから、1か月分たまる前にぼちぼち処理いていくんだ」

その言葉に、七緒に心から同情した。

「あんたの副隊長もかわいそうですね」

「いやぁ、海燕君ほどじゃあないよ。七緒ちゃんは、いつも通り仕事して、仕事はたまりまくったら、切れて僕が連れていかれるだけだから」

「まぁ。浮竹隊長は私生活まで面倒みてますから・・・・・」

「それが大変そうなんだよ。浮竹、基本的に怠惰だからね」

「この前なんて昼過ぎまで寝てましたよ」

「学院時代から、朝には弱かったなぁ。まあ、週末の休みくらいしか寝過ごすとこはなかったけど」

「それって、隊長にとっては今が毎日が休みみたいなもんなんでしょうか」

「さぁ、それは浮竹に聞いてみないと分からないよ」

その浮竹は、幸せそうな顔で眠っていた。

熱も、起きる頃には下がっているだろう。

「まぁ、浮竹も忙しかった席官は副官時代を体験してるから、今は君がいてくれるせいで安心して寝てるんじゃないかな」

「それでも、寝すぎです」

「まぁ、臥せって寝てる時が多いから。癖になっちゃうんだろうね。吐血して2週間くらいの入院が終わって退院する頃には、寝すぎてちょっと昼夜逆転生活送ってたし」

「入院は暇ですからね・・・」

海燕が副官になっても、年に2回位は吐血を繰り返して入院していた。

お見舞いにいくと、いつもすまなさそうにしていた。

「まぁ、発作じゃなかっただけよしとするしかないよ。じゃあ、僕戻るから。夕刻過ぎにまた様子を見にくるから」

その時間帯は、海燕の1日が終了して、もう雨乾堂にはいない。

後のことは京楽に任せることになる。

浮竹は、7時頃に起き出してきた。

夕餉が置いてあった。

熱が下がったのを確認して、夕餉が二人分あるのに首を傾げる。

「京楽のか?まぁいいや、デザートもらっちゃおう」

よく甘味屋で注文する白玉餡蜜だった。

「浮竹、調子はどう?」

「あ、京楽。今日泊まるのか?」

「うん、その予定だよ」

「だから、夕餉がもう一人前あったのか。デザートもらってしまったけど、いいよな?」

「別に構わないよ」

京楽も、夕餉をとった。

少し冷めていたが美味しかった。

浮竹の額に手をあてる。

「うん、熱はもう大丈夫なようだね。今日は普通に寝ようか。また熱がぶり返したら困るから」

「ああ」

二人は一組の布団で寝ようとした。

「寝すぎて寝れない・・・・・」

「仕方ないねぇ。これ飲みなさい」

眠剤を渡された。

コップの水と一緒に飲み干す。

とろんとした眠気がすぐに襲ってきて、浮竹は眠ってしまった。

眠剤に耐性がないのだ。

たまに寝れない時用に処方してもらっているものだが、浮竹にはきついようだった。

次の日、薬のせいで眠ったままの浮竹に怒る海燕に、事情を話して、自然と起きるまま放置してもらった。

「ふあ~~~よく寝た。寝すぎで頭が痛い・・・・・」

「ったく、どんだけ寝るんですあんたは。11時ですよ」

「ちっ」

「今舌打ちしましたね!?もっと、寝ていたかったって思ったでしょう!」

「気のせいだ」

「ほら、さっさと起きて着替えて顔洗う!それから飯たべて、さっさと仕事にとりかかってください!」

その様子を見ていた京楽は、笑った。

「何がおかしいんでか、京楽隊長」

「まるで、お母さんみたいだなと思って」

「ええ!こんなでっかい子供いりません!こんな世話のかかる子、こっちから願い下げです!」

「海燕~旗減った飯~」

洗面所から間延びして聞こえてくる声に、京楽はまた笑う。

「頑張れ、海燕母さん」

「だああああああ!あんたらはもう!!!!」

頭をかきむしりながら、それでも海燕は二人分の昼餉を用意するのであった。


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寝たいだけ寝る

「いい加減に起きろおおおおおおお」

海燕は般若になっていた、

「いやだ、あと5分なんて言わずに、5時間寝る!」

「どれだけ寝るつもりなんだああああああああ」

「日が沈むまで!」

「仕事しろおおおおおおおおお」

「気が向いたら!」

「あーもう、好きにしてください。俺しーらないっと」

そう言って、海燕は布団のへばりついていた浮竹を放置して、雨乾堂から出た。

朝飯がいらないのはよくあることだが、昼飯も何も言ってこないので、雨乾堂に様子を見に行く。

浮竹は眠っていた。

「いい加減おきろおおおおおおおおお」

「まだ寝るうううううううううう」

また、浮竹は布団にへばりついた。

「ああもう、好きにしろおおおおおおお」

毛布を浮竹の体にかけた。

今日は午後から冷え込むからだ。

季節は冬になろうとしていた。

海燕は、隊舎で黙々と仕事をした。

ふと、浮竹のことが気になった。遅くても昼飯はいつも食べたいといってくる時間なのに、何もいってこない。

まさか、発作?

それとも高熱で動けないとか。

考えれば考えるほど思考は悪い方へ悪い方へと進んでいき、隊舎を飛び出していた。

「隊長!大丈夫ですか!?」

「ぐーーーーー」

ずさぁ。

海燕は、顔面から畳につっこんだ。

「まだ寝てやがんのかああああああああ!!!」

ついには、切れて布団を奪いとった。毛布もだ。

「寒い!眠い!腹減った!」

「いい加減に、頼むから起きてください・・・・・」

「ん・・まだ4時か」

「あのなぁ。もう4時ですよ!あんた、何時間寝たんだ」

「えーと。16時間くらい」

「寝すぎだあああああああ!!」

「何、最高26時間寝たことがある」

「病で?」

「全然元気な時に」

「だらだらしすぎだああああああああ!!!」

浮竹の頭を、殴った。

「暴力反対!もっかい寝るから、布団返してくれ」

「いーえ、いい加減起きてもらいます」

「そうだよ、いい加減起きなよ、浮竹」

京楽が、暖簾をかき分けて入ってきた。

「京楽か・・・・仕方ないなぁ、起きてやろうじゃないか。海燕、喜べ」

「起きて当たり前だああああああああ!!・・・・・・・疲れた。俺、帰ります。探さないでください」

「おい、海燕!?」

「もう好きなだけ寝てください。知りません」

「俺を置いていくのか!?」

「はい」

まるで、愛する者との別れのようで、京楽は良い顔をしなかった。

「まぁまぁ、どうせ家に帰宅するだけでしょ」

「副官辞めます」

「海燕!本気なのか!」

浮竹が、慌てだす。

「こんな手のかかる上官いりません」

「ちゃんと起きるから!そんなこと言わないでくれ!」

「ちゃんと、朝の8時には起きますか?」

「起きる!」

「仕事もちゃんとしますか?」

「京楽じゃあるまいし、さぼったりため込むことは元からほとんどない!」

京楽が、少し痛いところを突かれた顔になった。

「薬もちゃんと飲んで、熱が下がったからって勝手に甘味屋まで行ったりしませんか?」

「しない!全部、お前の言う通りにするから、副官を辞めるなんて言わないでくれ!」

涙を浮かべて抱き着いてくる浮竹に、海燕も長い溜息を零した。

「分かりました。副官はこのまま続けます・・・・・でも、俺のいいつけ、ちゃんと守ってくださいね」


次の日。

「起きろおおおおおおおおおお」」

「いやだああああああ!!!」

そんな二人のやり取りを見て。

「だめだこりゃ・・・・・・」

そういう、京楽の姿があった。


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健康とミニフィギュア

最近の体体重計ではいろいろ測れて、京楽は自分の体脂肪の高さに仰天した。

すぐに4番隊にいき、精密検査を受けると、確かに体脂肪は少し高いが、健康体であると言われた。ただ、酒の飲みすぎで体脂肪が増えているのだろうから、酒は控えめにするようにと言われた。

「はぁ・・・・・・・」

「どうしたんだ、京楽」

京楽は、浮竹と飲み交わしあっていたのだが、あまり飲んでいないようだった。

「お前が飲まないなんて、明日槍でも降るんだろうか」

「病院でさぁ。お酒の飲み過ぎっていわれた。酒を控え目にするようにって。体脂肪が、ちょっと高くなってた」

「控えろと言われたわりには、酒飲んでるな」

「うん。禁酒なんて僕には無理・・・・・」

ちびちびと飲んでいく。

「しばらく、いつもの半分以下でいこうと思う」

「いつまで続けられるか、だな。運動もしたほうがいいぞ。そうだ、毎朝俺とウォーキングをしよう」

「ねぎたない君が、朝早くに起きるとは思えない」

「う、それは・・・・・じゃあ、午後に」

「そうだね。いつも書類仕事ばかりだから最近運動してないし」

そういうことで、次の日の死神の業務が終わる6時から少し休憩をとって、6時半~7時の間を瀞霊廷を散策しながらウォーキングを繰り返した。

京楽はお陰で体脂肪がぐっと減った。

その体重計に浮竹も乗り、体脂肪と体重が減っているのにぎょっとする。

「筋肉をつけるための動いていたつもりなのに・・・卯ノ花隊長から、これ以上痩せるなって言われてるのに痩せてしまった」

「まぁ、食事の量をちょっと増やすとか工夫すればいいよ」

「お前の体重と体脂肪を分けてほしい」

「君と足して2で割ったら、ちょうどよさそうな健康体ができあがりそうだね」

そのまましばらくの間、ウォーキングを続けた。

京楽はもう気にすることなく酒を飲み、浮竹は夕飯を少し多めにとることで、体重維持を図るっていた。

「ああ、健康っていいなぁ」

京楽は幸せそうだったが、浮竹は違った。

「夜のウォーキングでこれまで3回風邪をひいた。俺には、ウォーキングが向いていないのだろうか」

「浮竹は病弱だから。健康体になろうと足掻いても、だめなのかもしれないね」

「やはりそうか・・・明日から、ウォーキングはなしにする」

「うん。僕も体重も体脂肪も減ったから、しばらくウォーキングは休むよ」

こうして、二人の健康な生活はまた元の不健康な生活に戻った。

しばらくして、また体重計の乗ってみた。

京楽の体脂肪は増えていた。

浮竹は、一時は体重が増えたのだが、また軽くなって細くなっていた。

「ウォーキング・・・・またはじめるかなぁ」

「一人じゃ辛いだろう。俺もまたすることにする」

「浮竹は無理しないでね!」

こうして、また毎日夕刻に二人はウォーキングをした。

お陰で京楽の体脂肪はまた減り、浮竹は待望の体重を増やすことに成功した。

「ウォーキングの他にも、ストレッチや筋肉トレーニングをしているんだ」

「道理で、ちょっと筋肉ついたわけだ」

お互い、体を重ねあっているので、ちょっとしか変化はすぐには分からないが、しなやかな筋肉をもつ浮竹の体が、無駄のない筋肉を少しつけたかんじだった。

「体重が増えて喜んでいるなんて、女性死神連中に知られたら、リンチに合いそうだ」

「それ、言えてる」

女性は、常に体重と戦っている。

「久しぶりに、飲み交わさない?今日は満月だし・・・・」

「いいな。飲もうか」

しばらくの間、酒を控えていた京楽だったが、その日は好きなだけ飲んだ。

浮竹も、京楽と付き合って、果実酒を浴びるように飲んで、酔いつぶれた。

「きょおらくーーーーー!俺の酒が飲めないのかー!」

「ちょっと、浮竹飲みすぎだよ」

「お前の酒をよこせーーー!」

酔っ払いにしては素早い速度で、京楽の酒の瓶を手に入れた浮竹は、中身をごくごくと飲んだ。

「あーあ・・・・・」

「ういっ。世界が廻る・・・・・・・・・ZZZZ]

京楽に抱き着いて、眠りこんでしまった愛しい浮竹の頭を撫でた。

白い髪が、サラサラと零れていく。

「本当に、君って子は・・・」

お互い、もう若くはない。

それでも、院生時代から変わらない愛を誓い合っている。

京楽は、布団を1組しいて、その上に浮竹を寝かせると、その隣にもぐりこみ、布団を被った。

すぐには眠れなかったが、1時間ほどして京楽も眠りについていた。

「ふあーよく寝たー」

次の日は休日だったので、昼過ぎまで怠惰に眠った。

「ああ、もう朝・・・っていうか、昼だね。酒飲み過ぎちゃったみたい」

海燕がいなくなり、二人を起こす者もいなくなったので、よく寝過ごした。

遅めの昼餉を食べて、甘味屋までいき、駄菓子屋で菓子をかって、浮竹は新しくでたブリーチのミニフィギュアのガチャガチャに夢中になった。

「出たーーーー!幻のウルキオラ!」

「ウルキ・・・?誰それ」

「一護君が倒した、十刀’(エスパーダ)の一人さ」

「破面か。どうりで知らないわけだ」

京楽は、興味を失ったように、ウルキオラのミニフィギュアを見た。

「この純白と黒のくっきり分かれた姿がかっこいい・・・」

「ちょっと、そのウルキなんとかに惚れてるとかいいださないでね!?」

「いや、普通にかっこいいぞ」

京楽は、浮竹の手からウルキオラのミニフィギュアを奪うと、口づけていた。

「んん・・・・・」

「惚れてないよね?」

「バカ・・・・俺が惚れているのも、好きなのも、愛してるのもお前一人だ」

その言葉に満足して、浮竹にミニフィギュアを返そうとして、そのあまりの出来のよさに関心をもった。

「このミニフィギュア、浮竹のもあるの?」

「ああ、あるぞ」

「よし、とってやる」

結局、京楽までガチャガチャにはまるのであった。



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10話補完小説

宙に舞い散る血。

「これにて、おしまい」

出される最後の言葉。

「おい、死ぬな。まだ足りねぇんだよ」

まだ戦い足りない。

まだ血を求てていたい。

「死ぬなあああ!」

更木が叫んだ。

ふふ・・・・・子供みたい。

役目を果たして死ねることの、なんたる幸福でることか。

「私は幸せでずよ、更木隊長。あなたの手にかかって死ねるなら、本望です」

「回道でなんとならねぇのか!」

「なるなら、とっくにかけています」

唇が、重なった。

「更木隊長?」

「好きなんだ。死ぬな」

「ふふ・・・・ありがとう。でも、先に逝きます」

「卯ノ花!」

「八千流と呼んでください」

「八千流・・・・・・」

「最強の剣八よ。私の名はあなたに受け継がれた。あなたは幼い頃にしてしまった戦闘への枷を外した。私の後を継ぐのは、あなたしかいない---------------」

「八千流、頼むから死なないでくれ」

「ふふ・・・・想い人にそう言われるのは心地よいですね」

少しずつ、動きが鈍くなっていく。

瞳に光がなくなっていく。

「つまらねーな。これで終わりなのかよ・・・・」

卯ノ花の体を抱き締めた。

命の匂いも味も、酷く甘美だった。

自分の斬魄刀が呼びかけてくる。その声を、初めて聞いた。

ああ----------------卯ノ花は、これのために俺に斬られて、命を落としたのか。

そう思うと、不思議な感覚だった。


「卯ノ花隊長が、逝ったか・・・・・・」

膨大な霊圧がかき消えた。

これで、護廷13隊の隊長のうち二人を失ったことになる。

「卯ノ花隊長は、更木隊長のために散ったのか」

まだ納得ができてない浮竹は、更木に対して怒っていた。

「何故、愛し合っているのに、剣を交じわせる必要があるんだ」

「それら彼らにしか分からないよ。斬りあうことが、愛情表現に近いんじゃないかな」

「どうか、している・・・」

浮竹は思った。

卯ノ花の回道はまだまだ必要なのだ。

「卯ノ花隊長、何故あなたは、自ら死を-----------------」

無暗から、更木一人が出てきた。、

「卯ノ花は中にいる。葬式でも、してやってくれ」

更木の霊圧は、今まで以上で、無暗に入る前とは別人のようだった。

「満足はしたかい?」

京楽が声をかける。

「ああ?満足するわけねーじゃねぇか!早く敵をぶった斬りたいぜ」

「頼もしいな・・・・・・」

浮竹の言葉に、むず痒そうな顔をしていた。

「俺は行く。じゃあな」

「卯ノ花隊長の遺言だ。これを」

血まみれの更木の体を癒すための、飲む薬を渡された。

それを口にすると、たくさんの傷跡が全て塞がっていた。

「卯ノ花・・・・愛していた・・・・」

もう、過去形だ。

卯ノ花烈は死んだs。

「ちょっくら行ってくるわ」

「何処へ?」

「敵のところへ。また侵攻してくるんだろう?」

「だが、いつになるかわからないぞ」

「この、目覚めたばかりの斬魄刀と会話もしなきゃいけねぇ。じゃあな」

消えていく更木の姿を、浮竹は見守っていた。

「卯ノ花隊長。あなたの魂は、きちんと更木隊長に受け継がれているよ」

京楽はそう言って、無暗の中に入り、卯ノ花の遺体を抱き上げた。

「葬儀になるね。山じいに続いて卯ノ花隊長か。次は誰が死ぬんだろう」

京楽も浮竹も、次が浮竹になるとは思ってもいなかった。

卯ノ花の死に顔はとても安らかで。

幸せに、満ちていた。

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翡翠に溶ける 海燕

隊長になって幾千の夜を重ねただろうか。

浮竹には、海燕という信頼できる副官ができた。

3席だった白銀音羽は、虚退治で命を散らせた。

海燕は、二人の関係を黙認しながら、浮竹の世話をよく焼いてくれた。

「ほらもう隊長、さっきからぽろぽろ零して!子供じゃあるまいし!」

昔に比べて、穏やかな日々が多くなった。

もう、若いとはいえない年になっていたが、週に1度は体を重ねていた。

「ああ、またそんなところにキスマーク残されて!京楽隊長、見えるところにキスマーク残すのちやめてもらえませんか!まともに見ていられない!」

「虫よけだよ」

「俺が虫っていいたんですか!」

「そうだよ」

「確かにうちの隊長は美人だけど、あんたと違ってそっちの趣味はないですから」

「でも、この前僕らの睦みあう浮竹の喘ぎ声聞いて、抜いてたでしょ」

「なんで知ってるんだ!ああそうですよ、抜きました!仕方ないでしょう、隊長の声腰にくるんだから!」

「海燕、ぬきたいならいくらでも喘ぎ声くらいあげてやるぞ?」

そう、冗談か本気なのかとれぬ浮竹の言葉に、必要ありませんときっぱり告げた。

浮竹は無防備だ。

京楽以外の男に迫られたことも何度かある。

その度に、なぜ自分がそんな目に合うのか理解していないのだ。

天然のたらしで・・・容姿はいいし、性格もいい。

海燕が女性だったら、きっと惚れて結婚を申し込んでいただろう。

でも、浮竹には京楽がいる。

それはもう少年時代からの付き合いで・・・なんとも用心深いことに、体を重ねるたびにキスマークをつけて、それが消えないうにち上書きするのだ。

「京楽は、海燕のこと嫌いか?」

「あんまり好きじゃないね」

「海燕を京楽をどう思う?」

「性欲の権化。隊長を抱くことか頭にない」

「お、喧嘩売る気かい?買うよ!」

「あんたに喧嘩なんか売っても、勝てるわけないじゃないですか!」

ぎゃあぎゃあいい合う二人の口に、浮竹はおはぎをつっこんだ。

「もぐもぐ・・・おいしいじゃないですか」

「もぐもぐ・・・僕は、浮竹にに少しでも気のある子が、近くにいるのはいやだ」

「大丈夫。海燕は安心できる。確かに俺の声で抜くとかちょっとずれてるけど」

「かなりずれてるよ。まぁ、君の声はほんとに腰にくるから、分からないでもないけど」

海燕いったん雨乾堂を下がり、茶をいれてやってきた。

「お茶です。3時ですから、おやつ許可します」

「やった!」

浮竹は、戸棚からおはぎを取り出すと、京楽と海燕に分けてやりながらゆっくりと食べた。

「長年隊長の傍にいるせいでしょうか・・・俺まで、おはぎが好物になってしまった」

もう、海燕が浮竹の副隊長になって10年以上経過していた。

「あ、これ報告しないと。今後、席官の都と籍をいれることになったんです」

「おい、それ重要案件じゃないか!結婚式は挙げないのか!?」

「お金、無駄にかかるだけですから、結婚式はしません」

海燕はきっぱりと言った。副官とはいえ、給料に限りがる。いつか子供ができたら、教育費がいる。

「そんな、勿体ない・・・・金なら京楽が・・」

「出しません」

「ええ、そんなこと言わずに」

「海燕君が泣いて土下座で謝るなら、出してあげないこともない」

「こっちからお断りです!」

京楽に、海燕が投げてよこした座布団がクリーンヒットした。

「あいた」

「こちとら、没落したとはいえ元5大貴族。金をかりるようなことは、俺のプライドが許せません」

「俺はよく京楽に金出してもらっているがなぁ」

「あんたは、京楽隊長の恋人だから」

「優しいぞ?」

首を傾げてくる仕草に、かわいいと思ってしまった。

「あんただけにです」

「だそうだ、京楽」

「まぁ、別に海燕君が嫌いというわけじゃあないんだけどね。あんまり好きじゃないけど。よく浮竹の面倒見てくれるから、浮竹が酷い発作を起こすことも少なくなったし、熱を出すことも昔に比べれば減った」

「え、あれで減ったんですか。昔の隊長ってどこまで病弱なんだ・・・・・・」

「昔は昔、今は今」

残していた、最後のおはぎを口になる。

空になった皿に、なんともいえない寂寥感を感じて、じっと京楽の顔を見た。

京楽は、海燕の方を向いてニヤリと笑った。

「じゃあ、浮竹が物足りないようだから、僕ら甘味屋に行ってくるよ」

「隊長、今は仕事の時間ですよ」

そう止める海燕の手を引っ張った。

「まぁ、お前もこい。共犯者になろう」

有無をいわせぬ力で引きずられて、仕方なく海燕も甘味屋に同行した。

京楽は面白くなさそうな顔をしていたが、浮竹が甘えてくるので仕方ないかと、納得した。

甘味屋で、おはぎと白玉餡蜜とぜんざいを3人分注文する浮竹に、正気かと聞くと、「これくらい軽い」と言って返されてしまった。

3人前が、ずらっとテーブルに並ぶ。それを、遅くも早くもない速度で、平げてしまう浮竹。

「どこにそんだけ入るんですか・・・その細い体で」

「甘味物は別次元の胃に繋がってるんだ」

「そうなんですか」

納得してしまう海燕がおかしくて、京楽は抹茶アイスを口にしながら、テーブルを叩いていた。

「ほら、海燕も何か頼め」

「じゃあ、おはぎを4つ」

「それだけでいいのか?おーいすみません、羊羹を3つ!」

海燕と京楽の分を頼んだのかと思ったが、一人で食べてしまった。

やがて満足した浮竹が、お冷を飲み干して、外に出ようとする。

「おいあんた、勘定は!」

「ああ、京楽が払ってくれる」

京楽は、浮竹と自分の分は払った。

「海燕君は、自腹ね」

「ああはいはい、最初からこうなるだろうと思って、ちゃんと財布もってきましたから」

京楽は舌打ちした。

「あんた、今舌打ちしましたね!?」

「気のせいだよ」

「本当に、性格がねじ曲がっているんだから・・・・」

「京楽の性格は、温厚で優しいぞ?」

「それは隊長にだけです・・・・・・」

財布を念のためもってきていて助かった。

なかったら、今頃食い逃げとして捕まっているか、京楽に土下座してお金を借りるしかなった。
金銭トラブルは避けたい。

元5大貴族であり、幼い頃は上流貴族として生きていた海燕であるが、家が没落していく様を、子供心に見ながら思った。

お金は大切にしないといけない。

貸し借りはしてはいけない。

浮竹が、純白の髪を、夕焼けの色に染めていく。

キラキラ光っていて、綺麗だった。

行き交う人が、男女の区別なしに振り返る。

「こうだから、僕は浮竹が心配なんだよ」

「なるほど・・・・・」

海燕も納得した。

翡翠の瞳の麗人は、男女の区別なく視線を集めてしまうのだ。


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翡翠に溶ける 愉悦

浮竹が、また大きな発作を起こした。

吐血しまくった雨乾堂は、真っ赤だった。

遊びにきていた京楽が倒れている浮竹を発見して、急いで4番隊にに駆け込んだ。

卯ノ花に回道をかけてもらっているが、発見が遅れたせいで状況は芳しくなく、集中治療室に連れていかれた。

点滴と輸血、酸素呼吸器に他にもいろいろと管に繋がれた浮竹が、痛々しかった。

浮竹の霊圧でいつもなら感知できるのに、その日は久しぶりの休暇だと浮かれていて、霊圧の感知をしていなかった。

そんな自分を、呪った。

「卯ノ花隊長、浮竹は・・・・・」

「処置は施しました。あとは浮竹隊長次第です」

「そうかい・・・仮眠室、借りるよ」

「あまり自分を責めないでください。もっと発見が遅れていたら、命はなかったでしょう」

そんな言葉、気休めにしかならなかった。

浮竹。

あのはにかんだ顔で笑う、翡翠の瞳が懐かしかった。

浮竹を思い、仮眠室で仮眠をとった。

「ご臨終です・・・・力及ばす、申し訳ありません」

卯ノ花が、申し訳なさそうに謝る。

「浮竹ーーーーー!」

白く美しい顔(かんばせ)のまま、浮竹はいってしまった。

はっと起きる。

「夢・・・夢だ。夢だよね?」

集中治療室の前にくると、大きな硝子越しに、青白い顔の浮竹がいた。

呼吸器を外していた。

1枚の窓ガラス越しに手を重ね、キスをした。

「卯ノ花隊長、浮竹が!!!」


浮竹は、一時はどうなることかと思ったが、意識を回復させてから2日後には、普通の病室に移ることができた。

「京楽・・・心配をかけた。すまない」

「いいんだよ。君が無事で良かった」

りんごをむいてやると、兎型にカットしたそれを、しゃりっと音を立てて齧った。

まだ安静にしていなければいけないので、食事は流動食で、果物だけは食べていいと言われたので、りんごと桃をもってきていた。

桃をむいて口元にもっていってやると、果汁にまみれた手ごと舐められて、果肉を口にする。

「桃は好きだ・・・・甘いから」

口元にもっていくと、おいしそうに食べてくれた。

桃は3個もってきたいたのだが、美味しそうに食べる浮竹についつい全部与えてしまった。2日に分けて食べさせてあげようと思っていがのだが。

「僕は、今日はここで帰るね。仕事しなきゃいけないから。明日、また桃をもってきてあげる」

「ああ・・・」

浮竹は、鎮静剤を投与されて、眠ってしまった。

天敵の管が、痛々しかった。

次の日になると、浮竹はベッドから降りてもいい許可をもらい、ふらつきながらも湯あみをしにいこうとしていた。

「浮竹、一人で湯浴みできる?」

「ちょっと、無理かもしれない・・・」

特別に許可をもらって、浮竹を抱き上げて湯殿までもっていき、湯に浸からせてから髪と体を洗ってあげた。

濡れたタオル体をふいているとはいえ、湯浴みが好きな浮竹にはできないのが苦痛で、洗ってもらって幸せそうな顔をしていた。

綺麗になったところで、水気を吸い取って患者服に着替えさせて、また抱き上げてベッドまで移動した。

浮竹はここ数日の発作で、大分疲れがたまっており、普通の食事を許可されたのに残してしまった。

「食欲がない・・・・・」

点滴がされてあるので、食事を残しても何も言われなかった。

桃をむいてあげて、皿にいれて、渡す。

「食べさせて?」

甘えてくる浮竹に、京楽はでろでろになって、桃を口にすると浮竹に食べさせた。

「んあう・・・・・」

その後は、人目が怖いので普通に食べさせた。

「なんか、桃と点滴で生きてるかんじがする」

「ちゃんと、ご飯も食べてね?」

「努力する」

それから1週間が経ち、ようやく退院が許可された。

京楽は、浮竹を抱きあげて、瞬歩で雨乾堂まできた。

そのまま、衣服を脱がせていく。

「早く・・・・・」

浮竹から求めてきた。

キスをする。

舌と舌とが絡まり合った。

「ううん・・・」

袴と下着を脱がすと、とろとろと蜜を零す花茎があった。

それに舌を這わす。

「ああああああ!!!」

数週間ぶりのセックスだった。

口腔にねっとりと絡みとられて、浮竹はあっけなく熱を放っていた。

「うあああああああ」

体内に潤滑油で濡らしているとはいえ、乱暴に入ってくる指に悲鳴があがる。

「止めた方がいい?」

「いいから、早く、お前をくれ!」

前立腺をいじりながら解して、浮竹が待ちに待った瞬間がやってくる。

引き裂かれながら、浮竹はびゅるるると、精液を吐きだしていた。

「ひあああああああ!!!!」

内部をすりあげる熱に、浮竹が涙を零す。

「つらい?」

「大丈夫・・・ああああ!」

何度もぐちゃぐちゃと中を犯す熱に、浮竹は愉悦を感じていた。

ああ、生きている。

「あああ!」

何度目かも分からない熱を中に放たれて、浮竹もまた熱を放ち、意識を失った。

京楽は、結局一度いっただけだったので、後は自分で処理した。

浮竹は病み上がりだ。

無理はさせられない。

「ん・・・・京楽?」

けっこうすぐに、浮竹は意識を取り戻した。

「したりないだろう、抱いてもいいぞ」

「いや、自分で処理したから」

「俺がまだ満足してない。いかせてくれ」

そう言われて、浮竹のものを口にした。

「あああ!手で、手でいいから!」

「こっちのほうが、きもちいいでしょ?」

「やあああ、変にになるうううう」

舌でちろちろと鈴口を刺激して、花茎全体を手でしごいてやると、透明な蜜の混じった液体が、京楽の口の中に放たれた。

さらにしごくと、またほとんど透明な蜜を吐きだした。

「ひああああああ!」

「もう、いくものないね。愛してるよ、十四郎」

「ああ!俺もあいしてる、春水!」

二人で、雨乾堂の風呂に入り、髪と体を洗い、浮竹の中に放ったものをかき出す。

一度しか放っていなかったので、少量だった。

湯からあがり、二人でシーツを変えた布団に横になっていると、セックスで体力を消耗したのか、何時の間にか意識は闇に落ちて行った。

浮竹は、愉悦に微笑む。

ああ、俺は今を生きている。京楽と、一緒に。


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翡翠に溶ける 錦鯉

目覚めると、一糸まとわむ姿だった。

隣は、白銀音羽と京楽が、同じく裸で眠っていた。

自分の体をチェックする。

痛いところも何もない。

とりあえず、散らばっていた自分の服を着た。

「おい、起きろ二人とも」

「あー頭痛い・・・・・」

「んーまだ眠い・・・」

「なんで裸なんだ!」

浮竹が叫ぶと、じゃんけんをして負けていった者が脱ぐという脱衣じゃんけんをした結果とのとこだった。

浮竹は、全然覚えていなかった。

「とにかく、二人とも服を着ろ」

「おっと失礼」

「裸のままじゃ、風邪ひくしな」

二人は服を着た。

ここは、雨乾堂だった。

2組の布団の上で、3人は仲良くまっぱのフルチンで寝ていたのだ。

「俺、行かないと・・・・アタマいてぇ。仕事に遅れる。じゃあ浮竹隊長、また後程」

「あ、ああ・・・・・・」

「京楽はいかないのか?」

「んー。今日は僕、休暇をもらっているんだよね。雨乾堂で、浮竹といちゃいちゃする」

「言っておくが、俺は仕事がある」

「うん。仕事しながら、いちゃつこう」

浮竹は、長い溜息を出した。

副官に、朝餉を二人分出してもらって、食べる。

「前から思ってたけど、13番隊のご飯って、質素過ぎない?」

卵焼きと、味噌汁と、たくあんと白飯だった。

「金がないからな・・・・前の隊長が派手好きで、隊の金を使ってしまったんだ」

「こんなんじゃ、美味しくないでしょう。僕がお金補助してあげる」

「いいのか?」

「うん。僕もよくここに泊まって、食事世話になるからね」

「なんだかすまないな・・・・」

「僕がしたいんだから、いいんだよ」

午前中は、浮竹は仕事に没頭した。

京楽が面白半分に、浮竹の長い白髪を三つ編みにしてきたが、無視して仕事をした。

昼飯を食べて、また仕事をして3時の昼休憩をいれた。

「ほら、おはぎだよ」

3時になる前に、京楽は外出して甘味屋でおはぎを10個ほど買ってきてくれていた。

「ありがとう」

京楽は3つほど食べた。残りの7個は、浮竹がペロリと平らげてしまった。

「せっかくお前が遊びにきているのだし、今日の仕事はこの辺にしとくか」

「何、構ってくれるの?」

「ああ」

「わーーい。浮竹、大好きだよ」

すり寄ってくるがたいのでかい男は、重かった。

「重い・・・・・・」

「あ、ごめん」

浮竹をひょいっと抱きあげて、京楽の足に上に座らせた。

「重いだろう」

「浮竹は軽いよ」

まるで猫のように甘えてくる京楽の頭を撫でてやった。

「そうだ。京楽、そろそろ俺の髪を切ってほしい。腰より長くなってしまった」

「いいよ」

浮竹の髪を切るのは、いつも京楽の役目だった。

浮竹を、椅子に座らせた。

螺鈿細工の櫛で髪をとかしていく。

浮竹の髪はさらさらだった。

「勿体ないけど、あんまり長すぎるのもあれだしね」

万能鋏で、ちょきんちょきんと切っていく。

ぱさぱさと、畳の上に浮竹の切られた髪が落ちた。

「こんなものかなぁ」

「もう少し、切ってくれ」

「え、腰より短くするの?」

「最近暑くて・・・・いっそ院生になる前の短い髪にしたいが、お前が嫌だろう?」

「うん。浮竹には長い髪でいてもらいたい」

頷く京楽に、ならばと。

「すぐ伸びるんだ。もう少し切ってくれ」

10センチほど、さっきより短くした。

「うん、大分すっきりした」

「勿体ない・・・・綺麗な白い髪なのに」

「そんなこと言うの、お前くらいだ」

浮竹は、溜息をついた。

散らかった髪をほうきでまとめて、ちりとりでとって、ごみ箱に捨てた。

「忘れてた。鯉に餌をやらないと」

前乾堂のすぐ近には大きな池がある。錦鯉が泳いでいた。

エサをもらえると、ぱくぱくと口をあけて水面に顔を出す。

たくさん餌をまいた。

「僕にもやらせて」

エサをもって移動すると、鯉もついてきた。

「なんだか面白いね」

「かわいいだろう」

「うーん。鯉の顔、あんまり好きじゃないからかわいいとは思えないけど、面白い。色は美しいけどね」

「みんな、処分前だったんだ。色が滲んでいたり、濁っていたりで」

「十分、綺麗だとは思うけど・・・・言われてみると、上流貴族の池にいる鯉のような綺麗さはないね」

「ああ。値打ちにならないからと、食べられる寸前だったんだ。隊長権限を使ってしまったが、食べるくらいしか価値がないから、いらないともらわれてきた子たちばかりだ」

だから、余計にかわいいのだ。

要らない子。

まるで、浮竹みたいだった。

両親は愛してくれてはいたが、かさむ借金にお前など要らぬ子だ、と言われたことを今で覚えている。

今は、両親と兄弟たちのために、給料のほとんどを仕送りしている。肺の薬代をだしてしまえば、手元に残る金は僅かだ。

飲食代も京楽に出してもらっている有様だった。

「俺は、高くて綺麗な錦鯉よりも、色が濁った出来損ないの錦鯉のほうが好きだ。まるで、俺みたいで」

「浮竹は出来損ないじゃないよ。ちゃんと立派に隊長をしているじゃないか」

「それでも、この身を蝕む病からは逃れられない」

「愛しているよ・・・君の病さえ、愛しい」

口づけられた。

「ううん・・・」

深く激しい、口づけだった。

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