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小説掲載プログ
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キスはレモンの味

「なぁ、ルキア好きだぜ」

「知っておる」

屋上で、ルキアと一護は、井上、石田、茶虎と共に昼食をとっていた。

もう、高校卒業まであと3か月しかない。

だから、一護は想いをルキアに伝える。

すると、ルキアは「知っておる」とだけ答えて、それ以上は何も言ってくれなかった。

「はぁ・・・今日も「知っておる」で終わりか・・・・」

チャイムが鳴った。

一護と井上を残し、3人は授業を受けるために戻ってしまった。

「どうしたんだよ、井上。授業でないのか?」

「黒崎君!私、黒崎君のことが好き!」

抱き着いてきた井上に、動揺を隠しきれない一護。

でも、ふっと悲しそうに笑って、井上から離れた。

「それでも、例え振り向いてくれなくても、俺はルキアが好きなんだ」

「朽木さんのことなんて忘れさせてみせる!」

豪語する井上であるが、一護はルキアを好きな気持ちのまま井上と付き合うことはできなかった。

「ありがとう。気持ちだけ、受け取っておく」

「黒崎君!私、いつでも待ってるから!黒崎君が私を見てくれなくてもいい!私は黒崎君のことが好きなの!」

ガタン。

音がした。

そちらの方を見ると、ルキアが立っていた。

涙を、流していた。

そして、そのまま走り去ってしまった。

「まて、ルキア!」

「黒崎君、追わないで!私を見て!私の想いを受け入れて!」

「井上、俺が必要としているのはルキアだ!お前じゃない!」

「酷い!」

井上が泣きだすが、今はそんなことどうでもよかった。

ルキア。

ルキア、ルキア、ルキア。

涙を流すということは、俺に少しでも気があったと受けとっていいんだよな?

走り去っていったルキアを追うが、どこにいったか分からなくなった。

精神を研ぎ澄ます。

ルキアの僅かな霊圧を感知して、川の近くの河川敷にまできていた。

ルキアは、草の上に座っていた。

12月の寒い中、上着も羽織らずに。学校を無断で二人とも抜けだしたので、二人とさぼりということになる。

ルキアの背後から、ルキアに制服の上着をかけてやった。

「一護・・・・・私は、卑怯なのだ。貴様には、私以外などいないと思っていた。私だけが貴様を見ていると思っていた・・・・井上と幸せになれ」

煌めく水面を見つめながら、涙を零し続けるルキアを、そっと背後から抱きしめた。

「何度も言っただろう。お前が好きだって」

「知っている」

そんなルキアの言葉にカチンときて、ルキアの頭を殴った。

「何をする、たわけ!」

「俺が井上に告白されてお前は泣いてるのに、なんでもっと素直になれねーんだよ!「私だけが貴様を見ていると思っていた」だって!?そりゃつまり、お前も俺のこと好きってことじゃねーか!」

「そうなのか?」

「ああ、もう!」

一護は、ルキアを抱き締めた。

「一護、苦しい・・・・・・」

「お前は、俺のことが好きなんだよ。素直になれ。俺もお前のことが好きで・・・両想いだ」

「だが、私はもうすぐ尸魂界へ・・・・・!」

「そんなこと関係ねぇよ。恋愛に年も種族も性別も、住んでるところも身分もなにもねぇ」

「だが、私はいずれ朽木家から、上流貴族に嫁ぐことが決まっておる・・・」

「そんなもの、俺がめちゃくちゃにしてやるよ!」

「ふふっ・・・・・」

ルキアが泣き止み、やや赤い目をしながら笑った。

「そうだと、いいなぁ・・・・」

「そうなる。そうさせる」

「一護・・・」

二人で、手を繋いで河川敷を歩いた。

石を川に投げ入れる。

「あと3か月しかないけど・・・・・一緒に過ごそう。3か月が過ぎたら、会いにきてくれ」

「なんなのだ・・・まるで、恋人同士のようではないか」

「あのなぁ」

一護が、ルキアの頬を両手で挟み込んだ。

「お互い好き同士は、もう恋人みたいなもんなんだよ!」

「そ、そうなのか!?」

「ああもう、これだから天然は・・・・・」

くどくどと、恋愛とはどういうものかを語って聞かせた。

「つ、つまり貴様の部屋で一緒に生活していた時点で、私はその恋人やらと同じことを・・・・」

ルキアは真っ赤になって、ボンと破裂した。

「はう~~」

ショートしてしまったルキアを背中におぶって、黒崎家に帰宅する。

ルキアは意識を取り戻したが、朱い顔で一護のほうをまともに見なかった。そのまま、夕食の時間になり、風呂に入り、消灯前になった。

「なぁ、ルキア。もう一度、今度こそ言葉にしてくれ」

「な、何をだ!」

「ルキア・・・俺はお前のことが好きだ。ルキアは?」

「わ、私は・・・」

「ルキア、かわいい。なぁ、言ってくれよ。はっきり言葉にしてくれ。ルキア」

ルキアは逡巡していた。

想いを完璧に告げることで、今後の死神としての生き方が大きく変わる気がした。

でも、ルキアも伝えたかった。

「一護・・・貴様のことを、ずっとずっと想っていた。尸魂界に、処刑のために連れ去れた私を助けに来てくれた頃から・・・・ずっと、好きだった」

「俺も、お前のことがずっと好きだった。お前と会えなかった1年と7か月はとても辛かった」

「一護・・・・・」

「絶対に幸せにしてみせる。だから、付き合ってくれ、ルキア!」

一護は、ルキアのために用意していたアメジストの髪飾りをルキアの髪に飾った。

「このような、高価そうなもの・・・貧乏な学生の貴様には、大金であったろうに」

「バイトでためた金だ。どう使おうが俺の自由だ。綺麗だ、ルキア。少し早いけど、誕生日プレゼント」

「一護、貴様はそこまで、私を想ってくれるのか」

「ああ。今の俺には、ルキア以外何も見えていない」

「井上はどうするのだ」

「いらない。井上が欲しいんじゃない。ルキアが欲しいんだ」

「一護・・・・」

ルキアは、ぽろぽろと涙腺を決壊させた。

「好きだ。好きだ好きだ好きだ。貴様がどうしようもないくらいに好きなのだ。貴様は人間で、私は死神・・・この差はどうしても埋めがたい。それでも、どうしようもないくらいに、貴様が好きだ、一護!」

一護は、優しくルキアを包み込んだ。

「そんなに泣くなよ。死神が人間と付き合うの、別に尸魂界の法でだめだって決められているわけじゃないんだろ?」

「それはそうだが・・・・でも・・・・・」

「いいじゃねぇか。死神と人間でも」

「一護・・・貴様はずるい。私の心をもっていく・・・」

「ああ。俺はずるいんだ。お前の全てが欲しい」

「好きだ、一護」

「俺も好きだ、ルキア」

その日は、お互いを抱き締めあうように丸くなって眠った。


「遅刻する!」

「瞬歩でいくぞ、一護!」

想いをぶつけ合って、二人は正式に交際をスタートさせた。

後の残り3か月。

それを過ぎたら、ルキアは多くても週に一度くらいしかこちらにこれない。

一日一日が、宝物のようで。


「ルキア・・・・・」

「ん?」

学校の帰り道、振り返ったルキアに、はじめてキスをした。

「ななななな!」

まだ、清い関係でしかない二人。

「もう一回、してもいいか?」

「好きにせよ・・・・」

今度は、舌が入ってきた。

「ん・・・・・」

キスは、一護が食べていたレモンのキャンディの味がした。


やがて、卒業式を迎えた。

一護は、ルキアと一緒に黒崎家へと帰っていく。

帰宅すれば、同時に尸魂界へと戻る。

「俺の大学進学も決まったし、一人暮らしもきまった。地図かいておいただろ?今度来るときは、その住所のところを訪ねてくれ」

「たわけ!そんなことしなくても、貴様の霊圧を探ればどこにいるかくらい分かる!」

「ルキア!また来週会おうぜ!大学、案内してやるよ!」

「ああ!」

穿界門が開く。

でも、開ききり、ルキアが去る前に一護はルキアとキスをした。

キスは、やっぱり一護が食べていた、レモンのキャンディの味がした。


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抜けだした浮竹と罰

海燕は怒っていた。

熱をだし、安静にしていなければいけないはずの浮竹の姿がなかった。

「ほんと、どこいったんだあの人・・・・・」

海燕は知らない。

浮竹の熱がもう下がってしまったことを。でも、念のため今日一日は大人しくしてほしかった。

「海燕君入るよ。おみやげもってきた」

そう言って雨乾堂に入ってきた京楽の右腕には、京楽に捕まってしまった浮竹の姿があった。

「おみやげありがとうございます。どこで拾ったんですか」

「壬生の甘味屋で、お見舞いのためにおはぎでも買おうとしてたら、中で食べてた」

まだ、浮竹はもぐもぐと手にしたおはぎを食べていた。

反省する気ゼロな上司に、いつもは穏やかな海燕も般若になる。

「隊長、のんきにおはぎなんて食べてないで、なぜ勝手に部屋を抜け出したんですか!」

「いや、熱も下がったし平気だと思って。今日は壬生の甘味屋オープン50年セールで、半額だったんだ。行くしかないだろう!」

そんなことを言う浮竹の頭をぽかりと思い切り叩いた。

「あいた!暴力反対!」

またぽかりと叩いた。

「あんたは!俺がどれだけ心配したか・・・・・・」

「その程度じゃ、浮竹は動じないよ。浮竹、来月いっぱい甘味屋に行くのはなしね」

「!!!!!!」

凄くショックな顔をする浮竹。

「すまない、俺が悪かった海燕。今度からは、勝手にいなくなったりしない。熱が下がったら、ちゃんと下がったといって出かける」

甘味物でつられないと、反省もなかなかしない浮竹に、ほんとに心からの長い溜息が出る。

「京楽隊長は、よくこんなのと一緒に何百年もいられますね」

「おい、上司に向かってこんなのとはなんだ!」

浮竹の言葉を、海燕は無視した。

「まぁ、こんなんだけど、これはこんなんなりにかわいいんだよ。熱が下がったらすぐに甘味屋に行こうとする行動もかわいい」

「京楽、こんなんってなんだ」

「はいはい。浮竹はそこで大人しく座って反省でもしてなさい」

しぶしぶと、座布団の上に座る浮竹。

海燕に、文机でもう約束を破らないようにと、書道で「健康一番、許可なしに抜け出さない」と、書かされた。

1枚だけならいいのだが、5枚も書かされて、浮竹も海燕に心から謝った。

「すまなかった。行動が軽率だった・・・・・」

「言いますけどね、こうやって勝手に抜け出すの、今年で8回目ですからね」

「う・・・・・」

「あんたって人は、ほんとに約束守らないんだから・・・」

「心を入れ替える!」

「はいはい。期待しないで待ってます」

海燕は、本当に期待していなかった。

この上司は・・・・・流石に肺の発作を起こした後は安静にしているが、熱をだして臥せっていると思ったら勝手にいなくなるのだ。

そのたびに海燕は大きく心配したが、段々と心配する心は呆れる心に変わってきた。

何処にいったと探し、甘味屋で見つけてずるずると引きずるように帰ってきたこともあった。

大抵、いなくなったと思ったら甘味屋にいる。

それか、京楽のところだった。

「京楽隊長。今日は俺が許します。浮竹隊長に罰を与えてください」

「え、海燕!?」

「むふふふふ~~そういうことなら。おいしくいただきます!」


海燕が去った雨乾堂で、日が高いうちから、お仕置きと称されて、死覇装を脱がされていった。

何か、黒い布で視界を塞がれて、浮竹は恐そうに震えていた。

「ただ抱いただけじゃあ、お仕置きにならないからね」

「あ、いやだ京楽、これとって・・・・」

手も、死覇装の帯で戒められた。

キスをされた。

いつもと違うのか怖いのか、浮竹の舌が縮こまっていた。それを無理絡めとる。

「ふあっ・・・・」

全身を這う、指の動きにさえ敏感になっていた。

鎖骨から胸、胸から臍へと舌を這わせていく。

「んんっ・・・怖い、京楽・・・・・」

「こうでもしないと、お仕置きにならないでしょ」

「でも・・・・」

「こんなに感じてるくせに」

袴を脱がせていくと、浮竹の花茎はだらだらと先走りの蜜を零していた。

「まだ、触ってもいないのに・・・・・」

「ああ!」

直接握られて、ビクンと痙攣した。

それだけでいってしまったのだ。

「もしかして、目隠しプレイ気に入った・・・・?」

「や、そんなんじゃない・・・・京楽、京楽どこだ・・・・」

触れてこない京楽に我慢ができずに、見えない目で探した。

「こっちだよ」

「ふあっ・・・」

後ろから抱きしめられて、キスをされた。

鎖骨から臍まで、キスマークをいっぱい残された。

「京楽・・・」

胸の突起を口に含み、わざとがりっと強めに噛めば、浮竹は戒められた手で、京楽に触れてきた。背中で戒めるのは流石に可愛そうだと思い、前で戒めた。

自由にはできないが、触れることくらいはできる。

「俺をお仕置きするんだろう・・・・?」

「浮竹・・・・・・・」

潤滑油を指にかけて、浮竹の内部に指をいれる。

「ああ!」

浮竹は、その衝撃を心待ちにしていた。

こりこりと前立腺ばかりいじられて、気持ちいいとしか考えられなくなる。

京楽と肌を重ねるのは好きだ。いつも、意識を飛ばすくらいいく。

くちゅくちゅと水音とたてていたそこから、指が引き抜かれる。

ああ、今度こそ・・・・・・。

「ああああ!」

衝撃に、先走りの蜜を零していた花茎から白濁した液が漏れた。

「んあああああ!」

浅く深く。

前立腺をすりあげて、突き上げられる。

「これじゃあ、罰にならないねぇ。ここも戒めてしまおう」

花茎を紐で戒められて、いきたくてもいけなくなってしまった。

「や、やあああああ!!!」

ぐちゅぐちゅと中を犯す熱は、まだ硬度を保ったままだ、

一度、最奥に京楽は精液をたたきつけた。

それでも硬いまま、浮竹を刺し貫いた。

「ああああ!」

いきたい。でもいけない。

「ひう・・・京楽、いきたい、とってえええぇ」

「まだ、だーめ」

「あああ!」

目隠しをされた瞳の奥から、涙が溢れてきた。

いきたいのにいけないもどかしさで、頭が変になりそうだ。

「ひっ、いく!」

びくんびくんと浮竹の体が痙攣する。でも前を戒められているせいで、射精できない。ドライでいってしまった浮竹に、ごくりと唾を飲み込みながらも、腰をうちつけた。

「やああ、あああ、あ、や・・・・・変になる・・・・」

京楽は、二度目の熱を浮竹の中に放った。

浮竹は、刺激のたびに体を痙攣させた。もう何度ドライのオーガズムでいったのか分からなかった。

「一緒にいこう、十四郎」

「ああ!春水!」

ぐちゃりと音をたてて、一度引き抜くと、溢れてくる白い液体に栓をするように最奥まで突き入れた。

同時に、浮竹の前の戒めを解いてやる。

「あ、あああーーーーーー!!」

びゅるびゅると、凄い勢いで浮竹は精液を放った。それは浮竹の腹と胸を汚した。

中のしめつけもすごく、最後の一滴まで浮竹の中に注ぎこんだ。

「ふあ・・・・・あああ・・・・・・あ・・・・・・」

目隠しも手の戒めもとってやりでで、びくびくとまだいった余韻に浸っている浮竹を、濡れたタオルで清めてやる。

「ふあっ・・・・・・」

体内から精液をかきだすと、それだけでまた浮竹はいってしまった。

「こりゃ、違う意味の罰だねぇ。いきまくりの罰」

浮竹は、ゆっくりと意識を失った。


数時間して、海燕が二人の様子を見に来る。

いつもと同じように、1つの寝具で眠っていた。

「隊長、京楽隊長、起きてますか?」

「ああ、海燕君。今起きたとこ」

「夕餉の時刻ですが、どうしますか」

「ああ、いただくよ・・・・・浮竹?」

「ん・・・・・・俺も、食べる・・・・・・」

「京楽隊長、どうやったんですか。隊長の罰。元気ないみたいだし、ほんとに罰になってる」

「いやね目隠しして、手も戒めて、前も戒めたら・・・いきまくってね。いきすぎて疲れてるみたい」

「ぶーーー!」

茶を飲みかけていた海燕は、それを京楽の顔にかけてしまった。

「海燕君・・・・・」

「ああ、すみません京楽隊長!」

「とにかく夕餉の支度を。それまでに、ふにゃふにゃになった浮竹を連れて湯浴みしてくるから」

湯浴みで精神がすっきりしたのか、浮竹はもう元に戻っていた。

でも、京楽に怒っていて、半月の禁欲を迫ってきた。

「これは、海燕君のせいなんだよ!」

「ああ、京楽隊長全部俺のせいにするつもりですか!」

京楽と海燕はぎゃあぎゃあやりだした。

そんな二人のやり取りを他所に、今回のセックスは悪くなかったと思う浮竹がいたという。

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卯ノ花の決意

「あなたは変わりましたね。まぁ、私もなんですが」

卯の花は、早急に建てられた山本元柳斎重国の墓の前まできていた。

本当なら時間をかけて立派な墓建ててやりたいと思っていた京楽と浮竹であったが、暫定的に仮初の墓を建てた。

山本元柳斎重国は、あまり酒を飲まなかった。

茶を好み、茶道教室を開いていた。

なので、酒でも水でもなく茶を墓石に注いだ。

「変わったせいで、あなたはユーハバッハにやられた----------でも、かつての私でも太刀打ちできなかったでしょうね。年を取りすぎたせきいでしょうか・・・平穏になってしまい、私も腑抜けたものです・・・・でも、剣八の名を継ぐ者には、目覚めてほしい----------」

命をかけることになるだろう。

「死剣」卯ノ花八千流。

「私ももうすぐそちらへ参ります。だから、寂しくはないでしょう?----------------」

山本元柳斎重国の墓に、菊をささげた。一番隊の隊花でもある。

真実と潔白。

まさに山本元柳斎重国にふさわしい。

「卯の花隊長じゃないか!」

「これは京楽隊長に浮竹隊長・・・・・・」

「山じいの墓参りかい」

「ええ、まぁそんなものです」

死を告げにやってきた・・・・・そんなことを言ったら、二人は絶対に更木と切りあいになることを止めるだろう。

止められるわけにはいかないのだ。

たとえ、この命が散ることになっても。

「山じい・・・・安らかに。尸魂界は、僕らで守ってみせるから」

「先生・・・俺たちの手で、尸魂界は守ります」

若い。

卯の花はそう思った。

古参の二人であるが、卯の花からみればまだ子供だ。

「先に失礼します」

卯の花は歩き出す。自分の死へむかって。

「卯の花隊長、ちょっと雰囲気かわったかな?」

「なんだか-----------いつもより修羅に近いというか、鋭い切っ先のようだった」

二人とも、隊花である菊を捧げた。

すでにそこには卯ノ花が捧げた見事な菊があった。大ぶりの花で、白かった。

京楽と浮竹は手を繋ぎあった。

山本元柳斎重国の死を無駄にしないように、二人は歩んでいく。

卯ノ花八千流の次は、浮竹十四郎。

連鎖していく死の螺旋。

浮竹はまだその時がくること気づいていない。

「いこう、浮竹」

「ああ」

愛しい京楽と過ごせるのもあと僅か。

それでも、時がきたら浮竹も歩いていく。

死へと。

山本元柳斎重国の死は始まりにすぎない。

二人の隊長が、その後を追うことに、その時はまだ誰も知らなかった。

卯ノ花八千流-----------「死剣」にして初代剣八。


「ああ・・・・空は、いつもぬけるように蒼いですね」

ふと空を見上げる。

太陽がぽかぽかと照ってくる。

まるで、私の死を祝福しているよう----------。

「もうすぐですよ、山本元柳斎重国。罪人であった私を護廷13隊に引き入れたあなたの元へ、私ももうすぐ落ちていくでしょう・・・・」

卯ノ花は、4番隊に帰って重傷者に回道を施しながら、後の全てを勇音に任せるために、自分の死を告げた。

勇音は最初は受け入れなかったが、何度も話あっているうちに分かってくれた。

護廷13隊隊長。

死神。

尸魂界のために死なば本望。

更木を目覚めさせ、尸魂界を守らせるために死ぬならば、それも本望。

そして、その後を浮竹十四郎が追う。

彼もまた、死神としての矜持のために。

尸魂界のために死なば本望。


愛する者を残してでも、尸魂界を守るために、命をかけるのだ。



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浮竹死んだけど幽霊です憑いてます17 恐怖と手加減 

目覚めると、いつも透けて隣にいるはずの浮竹の姿がなかった。

「浮竹?浮竹!?」

探しても、どこにもいなかった。

「どこにいってしまったの、浮竹・・・・・・」

まさか、京楽を置いて成仏してしまったのではないか。

そんな不安が襲ってきて、布団を被って丸くなった。

「浮竹のいない世界は嫌だ・・・・」

一度、浮竹を失い色のない世界になってしまった。幽霊であるが、浮竹が隣にいてくれたことで世界はまた色づきだした。

「ただいまー」

「浮竹!?」

浮竹は、霊体のまま白哉のところに遊びにいき、わかめ大使を食べさせてもらったと嬉しげだった。

「実体化できる?」

「少しなら」

「浮竹、浮竹、浮竹!」

狂おしいほどに胸にかき抱かれて、浮竹は苦しそうにしていた。

「京楽?」

「君が、僕を置いて成仏してしまったんじゃないかと思った。長い距離を離れる時は、頼むから何か言ってからにして」

京楽は、涙を滲ませていた。

「すまない!ただ、遊びにいっただけの軽い気持ちだったんだ。ちょっとの間なら長く離れれるようになったから、それも楽しみたくて・・・・・・・」

「うん。でも、そうやって出かけるなら、頼むから何か言ってからにして」

京楽は、本気で浮竹をまた失ったと思ったのだろう。

カタカタと体が震えていた。

その体に毛布を掛けてやり、抱き締めた。

「俺はどこにもいかない。京楽と、死ぬまで一緒だ」

「うん・・・・」

ずっと抱き締めていると、京楽も安堵したのか浮竹に触れるだけのキスをした。

「京楽の分もわかめ大使もらってきたぞ」

「ええ、そんなことできるの?」

「霊体化する時に触れたものも霊体化する。それを実体化すればこの通り」

どさどさと大量のわかめ大使が、ベッドの上に置かれた。

「こんなに食べきれないよ」

「主に俺が食うから大丈夫だ。京楽は1つか2つなら食べれるだろう?」

「うん」

先ほどまでの恐怖がなくなり、京楽はわかめ大使を1つ食べた。

「甘い・・・・」

「不思議だろう、京楽。白哉は甘いものが嫌いなのに、わかめ大使には甘いあんこを入れるんだ。そしてそれを食べるんだ」

「朽木隊長は、4大貴族だけど、こんなわかめ大使をとか思いついたりするし、ちょっと変わったところがあるからね」

「自慢の白哉なんだがな。子供の頃はそれはそれは愛らしくて・・・・・」

霊体に触われる手袋をして、京楽が浮竹を抱き寄せた。

背中だけに触れているので、抱き締めることは叶わず、浮竹の霊体が京楽の体にめり込んだ形になる。

「ああ、もう、仕方ないな。本当は来週の予定だったんだが・・・今から2時間、実体化する」

「浮竹・・・・・」

「煮るなり焼くなり、好きにしろ」

「浮竹、愛してる・・・・・十四郎」

抱き着いてきた京楽を抱き締め返す。

「俺も愛してる、春水」

京楽は、しばらく抱き締めあっていたが、2時間しか時間がないことに気づいて、浮竹に口づけた。

「ううん・・・・・」

深いディープキスを繰り返し、服の上から輪郭をなぞり、衣服を脱がしていく。浮竹も、京楽の衣服を脱がした。

「はぁっ・・・・・」

平らな胸を撫でまわされて、突起を強くつままれた。

「ん・・・・」

またキスを繰り返す。浮竹は、行為中の京楽とのキスが好きだった。

「あああ!」

潤滑油で濡れた指が体内に入ってきた。

もう慣れたが、そこはやはり異物を排除しようと動く。それを無理やり指をつっこんでかき回された。

ぐちゃりと水音がした。

「んああああ」

前立腺をコリコリされて、涙がでた。

気持ちよすぎる。

「あ、もっと・・・」

前立腺を刺激されまくって、浮竹は一度目の熱を京楽の手の中に吐きだした。

「いくよ・・・」

ずっずっと音をたてて、指とは比較にならないものが侵入してくる。

「ひあっ!」

「息、ちゃんとして。きつい」

ぎちりと締め付けてくる内部に、京楽の眉が寄る。

なんとか力を抜こうとするが、うまくいかない。

「仕方ないね・・・・・」

浮竹の花茎を手でいじってやれば、中も緩んだ。

その隙をついて、最奥まで突き上げる。

「あ!」

最奥で、京楽は弾けた。

まだまだ1時間半くらいは時間がある。

京楽は、ことさらゆっくり浮竹の体を犯した。

「んああああ!」

前立腺ばかりすりあげられて、花茎に手をそえてしごかれて、もう浮竹の思考はきもちいいしかなかった。

「あ、あ、きもちいい、春水、もっと・・・・・・」

奥へ奥へと、誘ってくる。

前立腺をすりあげてやりながら、奥を犯してやった。

「ひあう、あ、あ、あ・・・・・・」

舌が絡まるキスを何度も繰り返した。

「ひう!」

最奥を穿たれて、浮竹の体がびくんと痙攣する。もう何度もいったので、出すものもない体はドライのオーガズムでいってしまった。

「きょうら・・・・やああ・・・もう、以上気持ちいいのイラナ・・・・頭が、変になる・・・」

「もっと気持ちよくなって、十四郎」

ゆっくりと奥を突きあげながら、京楽も何度目も分からぬ精を放った。

濡れたタオル体中をぬぐい、浮竹の中にだしたものをかきだすと、トロリと溢れてきた。

「きもちよかったかい?」

とろんとした目つきの浮竹が頷いた。

「僕もすごくよかったよ」

実体化していられるまであと10分を切った。

衣服を着せてやり。一緒にベッドに横になっていると限界時間がきて、浮竹の体はすーっと透けていった。

霊体を触れる手袋をして、浮竹の頭を撫でてやった。

「さ来週もなしだ」

「ええ、なんで!」

「きもちよすぎて気が変になる」

「じゃあ、今度から回数減らすし、君をいかせすぎたりしないから!」

京楽も必死だった。月に2回抱く浮竹との睦み事が生きがいなのだ。

「本当だな?手加減しろよ?」

「うん、約束する」

結局、その約束は2週間後の交わりで、果たされることなく、とろとろになるまで浮竹は京楽に犯されるのであった。



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卯ノ花と浮竹と京楽と

優しき笑みの中に般若を宿す。

その名は卯ノ花烈。


4番隊綜合救護詰所の病室に入院していた浮竹。酷い発作を起こして血を大量に吐いて、京楽の手で4番隊綜合救護詰所まで運ばれて、意識を回復した。

安静にしていろと言われた1週間を過ぎても、退院許可が下りなかった。

この前も発作を起こして倒れたばかりなので、念のためと3日間入院させられた。京楽がよく見舞いにきてくれたが、ずっといてくれるわけじゃない。

おまけに4番隊の飯は質素すぎて味も薄く、浮竹は辟易していた。

近くに甘味屋があったので、浮竹はベッドに丸めたシーツを入れているふりをして、甘味屋にでかけた。

見つからないようにと、窓から瞬歩で移動した。

久しぶりに4番隊の飯以外のものを口にして、感激した。

甘い味が体に浸透していく。

甘味物に目がない浮竹は、京楽のつけということにして、3人分は甘味物を食べて、満足して病室に戻った。

「浮竹隊長、そんなに入院を長引かせたいのですか?」

「うげ、卯ノ花隊長!」

にこにこにこ。

その笑顔が、怖かった。

笑顔の裏に般若がいた。

「そうですか・・・そんなに入院を長引かせたいなら、新しく開発させたこのウィルスを・・・・」

「ウィルス!?涅隊長じゃあるまいし!」

4番隊綜合救護詰所では、今後流行るであろうこのウィルスの治療に躍起になっています。そんなに実験体になっていただきたいのなら、もっと早くに言ってくださればいいのに」

「ごめんなさい!もう無断でぬけだしたりしません!」

ベッドの上で土下座すると、修羅は菩薩に変わった。

「あなたは、ただでさえ病弱なのですから。肺の発作が立て続けにおこって体が疲弊しているのです。大人しく、安静にしていてください」

「一つだけいいだろうか、卯ノ花隊長」

「なんですか?」

「飯を、13番隊のものを食べてもいいだろうか」

「そんなにお口に合いませんか?」

「薄味すぎて、食べた気にならない」

「まぁいいでしょう。元気になってきている証ですから・・・・特別ですよ?」

「やった!」

浮竹は喜んだ。

清音に伝えて、夕食は13番隊のものを用意してもらった。

それを食べて湯浴みをして病室に戻ると、京楽がいた。

「どうしたんだ、こんな時間に」

「君が、病室を抜け出したって聞いてね」

「それは・・・・」

「浮竹、頼むから無茶なことはしないで。安静にしていろと言われたら、その通りにして」

「悪かった・・・・ちなみに、この近くにある甘味屋にいったんだ。金がなかったから、お前のツケということにした」

「はぁ・・・・・君がこんな調子だから、利用したこともない店でツケを払えと取り立てられる僕・・・・・」

「すまない!」

すまないとは言うが、返すとは言わない浮竹である。

浮竹の給料の大半は仕送りで、残りは薬代で消えてしまい、飲み食いする金がないのだ。

だから、京楽のつけがきくのをいいことに、たまに勝手に甘味屋で飲み食いをした。

居酒屋などでは、ツケがきかない店もあるので、そういう時は必ず京楽と一緒にでかけた。京楽の財布は浮竹の財布状態だった。

「卯ノ花隊長、怒ってたでしょ」

「般若だった。怖かった。新しいウィルスに感染させられそうになった」

「うわーまるで涅隊長のようだね。怖い怖い。山じい言わせると、古参中の古参らしいのに、全然老けてないし・・・妖怪かな?」

いつもは菩薩なのだが。

「京楽隊長、誰が妖怪ですって?」

卯ノ花が、音も立てずに病室にいた。

「うわあああああ!!!」

「病院内では静かにお願いします」

「な、なんでもないんだ、卯ノ花隊長!」

京楽は顔を真っ青にして、ぶんぶんと首を横に振っていた。

「そんなに元気があるなら、献血してください」

「助けてーうーきーたーけー」

ズルズルと引っ張っていかれる京楽に、浮竹は手を合わせた。

「成仏してくれ」


卯ノ花烈。

菩薩と修羅をもつ女性。

色々と謎が多い。

その卯ノ花が、初代剣八であり、護廷13隊結成当時からいる古参中の古参であり「死剣」と呼ばれていたことがわかるのは、まだ先のお話であった。


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それは愛

このもやもやとした感情が、何であるのかやっと分かった。

それは「恋心」

愛しているのだ、恋次を。

緋真だけを愛すると誓った白哉は揺れていた。

このまま、全てを恋次に与えて、恋次に包み込まれていいのだろうか?

なぁ、緋真。

そなたなら、どう思う?

このようになってしまった私を。


大戦も終結し、尸魂界はゆっくりとではあるが復興の道を辿っていた。

かつて、白哉は死にかけた。生きてるのが奇跡だという傷を負い、斬魄刀である千本桜も失ってしまった。

あの時の、恋次の顔が今でも時折ちらつく。

とても傷ついた目をしていた。

愛する者を失う時の目だった。

かつて、私が身罷った緋真を見る目だった。

仏壇に手をそえて、緋真の写真に向かって語る。

「緋真・・・・私は、もう一度幸せになっていいのであろうか?」

ずっとそうしていたら、外から恋次が白哉の名を呼んだ。

「緋真・・・許してくれ。私は当分そちら側にいけぬし、緋真そなたを残して・・・愛する者と、歩み出す」

一歩一歩を噛みしめるように、歩き出す。

「隊長、どうすたんですか。あんまりにも襲いので、迎えにきました」

「恋次・・・・」

白哉は、辛そうな顔をしていた。

「どうしたんですか、隊長!どこか具合でも悪いんですか!」

恋次を連れて、6番隊の執務室にいくと、何もなかったように一日が始まる。

でも、白哉は今まで雰囲気がどことなく違っていて・・・なんていうのか、空気が優しかった。

「隊長?カラムーチョでも食べますか?」

3時になり、一休憩いれる。

辛い味の好きな白哉は、現世の辛い菓子のカラムーチョに夢中であった。

茶をいれると、それを全部飲みほしてしまった白哉のために、また茶をいれた。

「恋次」

「はい」

「愛している」

「は?」

「もう言わぬ」

「ちょ、隊長!今なんつったあんた!」

長椅子に座っていた白哉を押し倒した。

夢中になって口づけを繰り返す。

「ああっ」

少し死覇装を乱させてしまった。

白哉は、熱の入った潤んだ瞳で、こちらを見てきた。

でも、こんな仕事の部屋で白哉を抱くことなどできぬので、我慢した。

「あんた、確かに俺のこと愛しているっていいましたよね?」

「知らぬ」

嘘をつく白夜の服ごしから体を触っていくと、白哉は戸惑った。

「やめよ」

「いやだ。あんたが、はっきり言ってくれないならここで抱く」

こんな場所で抱かれては困るので、仕方なしにもう一度口にする。

「恋次、愛している。今の私には、お前だけだ」

「おっしゃああああああ!」

恋次は、ガッツポーズをとった。

ずっと愛していると言わせようとしていた、雪解け水前の氷の白哉に、やっと言わせたのだ。

今の白哉は雪解け水。

恋次を愛していると告げて、自分の中にある感情にくぎりをつけた。

「今夜、抱いてもいいですか」

「ならぬ」

「どうしてですか」

「おとつい、抱いたばかりであろう」

「それでも、あんたを抱きたい」

「ならぬ。愛され続けてほしければ、限度を弁えよ」

愛されている。

今は、その言葉だけで十分だった。

白哉に舌が絡み合う深い口づけをして、お互い離れる。

なんか、こそばゆかった。

新婚さんのような気分だ。

恋次は、望んでいた白哉の全てを手に入れた。幸せの絶頂にいた。

大戦の時、一度白哉を失うかと思った。

恋次も満身創痍だったが、白哉の傷はそれよりはるかに深かった。零番隊の湯治がなければ、白哉はこうして意識をもっていることも、話すこともできなかったであろう。

「じゃあ隊長、今日は飲みに行きましょう」

「お前の馴染の店は、品性がない」

「まぁそういわずに。高級酒ばかりだと飽きるでしょう。たまには、安酒を浴びるほど飲むのもいいですよ」

ふっと。

微かに白哉が笑った。

時折、恋次にだけ見せる顔だった。

「今日だけだぞ」

「よっしゃ!」

居酒屋で、白哉を口説き落としてやろう。

愛する恋次は、そんなことを企んでいるなど知らずに、名もない感情に気づいたばかりの白哉は、恋次に誘われるままに居酒屋で飲み、酔いつぶれて寝てしまうのであった。

「あんた、安酒だと弱いのか・・・」

いつもは高級酒を飲んでもあまり酔わない白哉。

白哉の幸せそうな顔を見ていると、口説き落とせなかったこともどうでもよくなってきた。

「ありがとう、隊長。俺を選んでくれて・・・・・」

その桜色の唇は、酔いつぶれる前に「恋次、お前だけを愛している」

と言ってくれた。

今は、その言葉だけで十分だった。





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7~8話補完小説

卍解を奪われた。

千本桜の奥の刃を受けて、白哉は傷だらけになりながら壁にめりこんだ。

「隊長!」

「くるな!恋次!」

「卍解!」

「卍解はするな!お前まで、卍解を奪われる!」

名も分からぬ敵だった。

ただ、滅却師であるとは分かった。

また、億の刃に切り刻まれる。

「私は・・・もう、無理だ。戦えぬ。恋次、お前だけでも生き延びて・・・・・」

がくりと、白哉の意識はそこで一度途絶えた。

「うおおおおおおおお!」

敵にむかって、卍解せぬまま切りかかる。

千本桜の奥の刃を受け止め切ることができず、全身に酷い怪我をした。

ああ、この敵は本当に隊長の卍解を奪ってしまったのだと思った。

「とどめだ・・・・・」

ああ、ここで死ぬのか。

隊長と一緒なら、それもいいかもしれない。

けれど、敵は引いていった。


一護がかけつけてきた。

「白哉!」

「・・・・・尸魂界を、守ってくれ・・・・・・」

白哉の怪我は酷いものだった。酷過ぎて、どうすればこんなに傷つくことができるのか分からないほどだった。

「尸魂界を・・・・兄の力で・・・・」

「俺は!」

一護が叫ぶ。

「俺は誰も守れなかった!俺は!」

「それでも。兄の力は、必要だ・・・・・ごほっ」

ぼたりと、大量の血をはいた。

「隊長・・・・・」

白哉の傍で、恋次も力尽きた。


「うおおおおおおおおおおおお!」

しとしとと雨が降り出した。

傷にしみた。

でも、それよりも心の傷が痛んだ。

じくじくと血を流している。


ああ。

もっと早くに尸魂界についていれば。

もっと俺が強ければ。


4番隊の手によって、白哉と恋次は運ばれ、施術を施されたが、どうにもならない状態だという。その中には、ルキアの姿もあった。

やがて、0番隊が現れ、意識のない白哉、恋次、ルキアと一人重症のわりには元気一護を連れて
湯治がされた。

白哉も恋次も、ふと少しだけ意識を取り戻した。

「生き延びたか、恋次・・・・」

「隊長を一人にして死ぬことなんて、できるはずがないでしょう!」

湯の中に沈んでいるのに、呼吸もできたし言葉も交わした。

「少し、眠る・・・・・」

「俺も・・・・」

流れ出る濁った血と霊圧。

それを、湯治で入れ替えるのだ。

湯の中は、まるで母の胎内にいるようで心地よかった。

二人は微睡む。

まだ、生きている。

生きている限り、挽回の余地はある。

生きて生きて生き延びて、醜くてもいいから敵の喉笛にかみつけ。

そう思った。

卍解を奪い返し、今度敵と会ったら無様に一方的にやられたりせず、せめて一太刀でも浴びせろ。


尸魂界は揺れていた。

山本元柳斎重國の死。

尸魂界は泣いていた。

ユーハバッハによる侵攻と侵略。


ああ。

私は、きっとまた戦える。


ああ。

俺は、きっとまた戦える。


だから、今は黙して傷を癒そう。


世界は廻る。

軋む音を立てて。

次の侵攻までに、力を取り戻せ!



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8話補完小説

「ルキア・・・・・・・」

施術が終わったルキアは、重症だった。

一護も重症であったが、立って歩くくらいはできた。

ふと、片目になっていたルキアの意識が戻る。

「一護・・・・そうか、守れなかったのだな」

「すまねぇ!」

「貴様が謝ることはない。今回の事態は、総隊長が亡くなるほど酷い戦いだったのだ・・・」

「おい、あんましゃべんな。傷に響く」

「これ以上は悪化せぬ」

ルキアは、片方だけの瞳から涙を零した。

「一護、一護、一護・・・・尸魂界を、守ってくれ・・・・・」

「分かってる」

ルキアに触れるだけのキスをして、別れた。


白哉の怪我は酷かった。

もう、意識は戻らないといわれた。

そんな中、0番隊が迎えにきた。

霊王を守る集団である。


カポーン。

「なんだよこれ!」

「みりゃ分かるだろ、湯治だ!」

白哉もルキアも恋次も、湯の中に沈んでいた。

滲み出す血は、けれど血と一緒に濁り切った霊圧を2種類の湯に浸り分けて入れ直すのだという。

ぷかりと浮かんできた白哉を、0番隊の男は紅い湯に無造作放り投げた。

「おい、乱暴に扱うなよ!」

「てめぇは、てめぇの心配だけしときやがれ!」

ふと、少しだけ白哉の意識が戻った。

でも、体は動かない。

「そうか・・・・私は、助かったのか・・・・」

ぶくぶくぶく。

また、湯に沈められた。

不思議と息苦しさはなかった。湯の中でも息ができた。

同じように湯に沈んでいる恋次とルキアを見る。二人とも重症だ。

黒崎一護だけが、見た目より元気そうだった。

「尸魂界を守るには、兄の力が必要なのだ・・・・黒崎一護」

白哉はまた、意識を失った。


ざっぱーんと、ルキアの体を0番隊の男が投げる。

包帯を巻かれているとはいえ、裸に近い恰好に、一護の眉が寄る。

「心配しなくてもとってくったりしねぇよ」

ルキア。

助けられなくてごめん。

ルキア。

愛してる。

どうか早く元気になってくれ。

一護の斬魄刀は折れた。だが、元に近い形に叩き直せるという。

今は、それにすがるしかなかった。


「ルキア、恋次、白哉・・・・・俺は絶対に強くなる。そして尸魂界を守ってみせる。だからお前たちも、早く元気になってくれ」

一人、傷の癒えかけた一護は誓うのだった。


ルキア。

今度は、必ず尸魂界を守ってみせる。

だから、ルキアも強くなってくれ。

ルキアは、漂う意識の中で、一護に触れた。

「ふふ・・・貴様は、なんでも一人でしょいこんで・・・・仲間だろう私たちは」

一護。

愛している。

どうか、尸魂界を守ってくれ。

一護は立ち上がる。未来に向かって、歩き出すために。


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ネオンテトラ

「いちごおお」

「うおっ、酒くせぇ!」

「うふふふふ」

甘てくるルキアは、浴びるように酒を飲んだらしく、酒臭かった。

「おい、しっかりしろよ」

「にゃふふ。世界が回っておるー」

ここは現世の一護の部屋だった。

ルキアの見た目は十代半ば。

現世で酒が飲めるはずがない。尸魂界で酒を飲み、わざわざべろんべろんに酔っぱらって一護に会いにきたのだ。

「好きだぞ、いちごおお」

「おい、そういう冗談はやめろ」

ルキアのことは、好きか嫌いかでいうと好きだった。

でも、こんな酒に酔った状態で好きと言われても、うれしくない。

「何故、信じぬのだ」

アメジストの瞳からボロボロと涙が零れている。

「何故って、お前冗談だろ?」

「たわけ!酔っていても、このような冗談は言わぬ!」

「ルキア・・・・・」

「付き合ってくれ、一護」

その細い体を、気づけば抱きしめていた。

「ああもう、酔っ払いのくせになんでこんなにかわいいんだよ!」

「いちご?」

「俺もお前が好きだ、ルキア。言われてはっきりした。この心の中でお前に対して抱いていた感情は恋なんだって」

「一護、私の手をとってくれるのか。私と生きてくれるのか」

「ああ。ルキアが好きだ。愛してる」

ルキアは涙をぼろぼろと零したまま、一護に抱き着いた。

浴びるような酒の匂いがしたが、気にならなかった。

「明日起きたら、全部忘れましたってパターンなしにしてくれよな」

「ふにゃあ・・」

緊張が解けたのか、ルキアは一護の腕の中で眠ってしまった。

その細い体を抱き上げて、ベッドに寝かせる。

ルキアをその腕の中で抱きしめるような形で、一護も眠った。

次の日は休日だった。

「ん・・・・」

少し遅めにルキアが瞼を開く。

「おはよう、ルキア」

すぐ近くに一護の顔があって、ルキアは吃驚した。

「昨日、べろんべろんに酔って俺の部屋にきて・・・・・俺に言った言葉、覚えてるか?」

かーっと、ルキアの頬が赤くなった。

「おぼえておるわ、たわけ!」

一護をぽかぽかと叩いてきた。

「貴様が悪いのだ!私の想いにも気づかず、私の方ばかりみているくせに何も言ってこない貴様のことを、恋次にぶつけて一緒に飲んでいたら、想いをぶつけてこいと現世に追い出されて・・・・・仕方なしに、貴様に想いを打ち明けた」

「それでも、すげぇ嬉しい」

起き上がったルキアを抱きしめる。

ルキアは、一護の腕の中で身動ぎしていたが、おとなしくなった。

「責任をとれ!貴様にここまで言わせた責任を!」

「ああ、いいぜ。付き合おう」

耳までルキアは赤くなった。

「分かった・・・・今日から、私は一護の彼女だ」

「俺は、今日からルキアの彼氏だ。恋人同士だからいいよな」

「何をだ」

最後まで言わせず、唇が重なった。

「んん・・・・」

舌が絡むディープキスだった。

ルキアはじめてで、立っていられなくなった。

一護はルキアをベッドに座らせて、その柔らかい黒髪を手ですいた。

「ルキアはかわいいな」

「そんなこと言うの、貴様くらいだ。恋次には色気のないガキと言われた」

「恋次もお前のこと好きなんだぜ」

「ええ!ではなぜ、私を現世に送り出した」

「そりゃ、好きな相手に幸せになってもらいたいからに決まっているだろ」

ルキアは、真っ赤になった。

「私は、二人の男に思われていたのか?」

「そうだ。恋次の態度とかばればれなんだよ。俺もだけど」

ルキアを腕の中に抱きしめて、とさりとベッドに横になる。

ルキアの心臓のドキドキが、こっちまで伝わってきた。

「すげぇドキドキいってる」

「そ、それは貴様も同じであろう!」

「ああ」

ルキアの目をふさいだ。

「ふあ・・・・」

口づけられた。

「一護・・・・今日はもう帰らねばならぬ」

「もうかよ」

「来週の土日!必ずくるから、浮気するなよ!」

「そりゃこっちの台詞だぜ。恋次といちゃいちゃするなよ!」

「たわけ、恋次は家族だ!そんなものではないわ!」

ルキアは、穿界門をあけて、尸魂界へ帰ってしまった。


次の週の土曜。

眠っていた一護めがけて、何かが突撃してきた。

「なんだ!?」

驚いておきた一護であるが、布団の上から一護の体の上に座っていたルキアを見て、はにかむような笑みを浮かべた。

「おはよう、ルキア」

「たわけ、私が呼びに来ねば、貴様寝過ごしていたであろう!」

「う・・・・・」

目覚ましなんてセットしていなかった。

ルキアがいつ来るかも分からずに、眠っていただろう。

「迎えにきてくれたのか?」

「そうだ。まずはデートをするぞ」

「ああ、いいぜ」

ルキアの言う通りに、水族館を訪れていた。

ネオンテトラばかりを見ていたルキアに、一護がいう。

「熱帯魚、好きなのか?」

「イルミネーションのようで美しい。なぜアマゾンという場所には、これほど美しい魚がいるのであろう。尸魂界にもこんな魚がいればいいのに」

4大貴族であるルキアが望めば、自家用発電機でヒーターを用意して、熱帯魚を飼うこともできるだろう。

だが、白哉を困らせたくないので、我儘を言わないルキア。

「そんなに好きなら、飼おうか、熱帯魚」

「え、いいのか!?そもそも、売っているものなのか!?」

「ペットショップに普通に売ってるぜ」

飼育も、そんなに難しくない。

水族館の帰り道、ペットショップに寄って水槽のセットと水草と、ネオンテトラを15匹ほどかった。あとグッピーと掃除屋としてシュリンプを。

黒崎家に戻り、一護の部屋に水槽をセットする。

水をいれてヒーターをいれ、じゃり石と色硝をひいて、水草をはやして、ネオンテトラを中心とした熱帯魚をはなった。

「綺麗だ・・・・」

泳ぐ優雅な姿に、ルキアは一護の方を見ようともせず、ずっと水槽を見ていた。

「おい、ルキア」

「なんだ」

「お前、俺の彼女だろ。彼氏を放置するな」

そう言われて、耳まで真っ赤になった。

「べ、別に一護と同じ部屋にいるのがドキドキして、一護の匂いがするとかそんなこと露ほども思っておらぬからな!」

ルキアの言葉に、一護がルキアを抱き寄せた。

「熱帯魚、またいつでも見に来いよ。俺にも会いにこい。彼女だろ?」

「一護・・・・・」

とさりと、同じベッドで丸くなりながら、体温を共有しあった。

「私は死神だ。いつか貴様は私を置いていってしまう」

「ああ」

「そしたら、私は必ず貴様の魂魄を見つけ出して、また付き合うのだ」

「それ、いいな」

寿命を全うし、ルキアと別れても、またルキアと会える。

そう考えるだけで、死神と人間だからという、大きな障害も気にならなくなった。

「俺がよぼよぼのじいさんになっても、愛してくれるか?」

「当たり前であろう!貴様はあと60年もすれば死んでしまう。魂魄は若い姿のまま現れる・・・ふふ、今から楽しみだ」

「勝手に殺すなよ。今は今の幸せを享受しろ」

ルキアの目を隠して、キスをすると、ルキアがもっととねだってきた。

深く浅く口づけを繰り返す。

そうして夕飯を食べた後、湯浴みもしていちゃついていたら、いつの間にか眠ってしまっていた。

「おはよう、ルキア」

「ふにゃああ」

「ルキア、朝に弱いのか?」

まだ寝ぼけ眼のルキアを起こす。

「今日は水槽を見ながら、怠惰に一日を過ごすぞ」

「おう。でも彼氏である俺も見てくれよな」

「一緒に水槽を見るのだ」

ルキアは、熱帯魚が大層気に入ったようで、餌やりもしていた。

日曜はルキアと一緒にだらだら過ごした。

ルキアの膝枕の頭をのっけて、イチャイチャラブラブしていた。

「明日の朝には、尸魂界に戻らねば」

「窓、何時でも開けておくから、いつでもこいよ」

「また、来週の土日んいくるからな!」

「ああ!」

付き合いはじめたと一護は、まるで水槽の中の水草のように漂う。

ネオンテトラのルキアが泳いでくれることで、生きる意味を見出した。

それから何度か会い、一護は一人暮らしを始めて、そこに熱帯魚も移動した。

ネオンテトラは、いつまでも美しい色で泳いでいた。

まるで、ルキアのように。

二人は人間と死神だ。

子はできなかったが、ルキアは毎週土日になると遊びにきた。

やがて、一護も老いた。寿命がくる。

一護が死んだ時、その体から滲み出た魂魄を、ルキアがさらっていった。

「もう、貴様は私だけのものだ」

少年時代の姿をした一護は、約束通りずっと傍にいてくれたルキアに感謝しつつも、尸魂界へとやってくる。

本物の死神になるために。

「朽木ルキア、只今戻りました。黒崎一護を連れてまいりました!」

大戦の英雄は、死神として尸魂界に迎え入れられるのだった。






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寝不足の浮竹

朝8時は、浮竹が起きていた。

朝餉をとり終わり、定時の9時から仕事を始める。そのまま昼餉も食べず仕事をバリバリする浮竹の様子が変に思って、見ていたら、目を開けたまま、仕事をするふりをして寝ていた。

「隊長、起きてください!」

「はっ、おはぎは!?」

見ると、仕事は4分の1くらいしか終わってなかった。

ずっと、目を開けたまま寝ていたのだ。

「あんた、目を開けたまま寝てましたよ」

「ああ。最近できるようになったんだ」

にっこりと、海燕は笑った。

「仕事しやがれこのくそ隊長があああああああああああ!」

キーーーーン。

耳元で叫ばれて、浮竹がコロンと寝転んだ。

「だめだ眠い・・・昨日、京楽がしつこくて余り寝ていないんだ。今日の仕事は明日片付けるから、昼寝させてくれ」

ダメと言っても、どうせ目を開けたまま寝るのだ。

仕方なしに、布団をしいてやった。

「すまん」

布団に横になると、本当に眠かったのだろう。1分もしないで眠ってしまった。

京楽に、無理をさせないように言おう。

そう思っていたら、今日の仕事を終えたらしい京楽がやってきた。ご機嫌だった。

羊を寝不足にするまで襲った狼は、自分だけ満足しているようであった。

「京楽隊長、話しがあります」

「ふふふ~~ん♪なんだい海燕君」

「あんた、隊長に無理させ過ぎだ!隊長、あまり寝かせてもらえなかったって、そのせいで今昼寝してます!」

「あー。確かに昨日はちょっと無理させちゃったかなぁ」

「もう少し、回数を減らすとか時間制限をするとかしたらどうですか!」

「海燕君」

「なんですか」

「それはね、浮竹と僕の問題なの。第三者である君が口出しする権利はないよ」

「でも!」

食い下がろうとする海燕に、京楽が言う。

「最近、浮竹発作おこしてないでしょ」

「え、ああはい」

「新しい新薬を投与してるんだ。お値段は1日分で30万。浮竹からだよ、体で返すって言ってきたの。まぁ、もっともそんなつもりはないんだけどね」

「30万・・・・」

海燕の収入の3分の1だ。

とてもじゃないが、浮竹が払える額ではないだろう。

「僕を満足させようと、浮竹がね・・・それで、ちょっとやりすぎになっちゃうだけ」

「それでも!」

「もー、海燕君は心配性だなあ。熱を出してる浮竹を抱いてるわけじゃあないんだから」

「そんなことしたら、俺はあんたを軽蔑します」

「おーきついきつい」

京楽は、この話はここで終わりだとばかりに、浮竹の眠っている布団に入りこんで、京楽も眠ってしまった。

3時間くらいして浮竹が起き出す。

「え、京楽?」

京楽はまだ眠っていた。

起こすのもなんなので、そのままにしておいた。

「むふふふふ・・・・・浮竹、外でなんて・・・・・」

「なんの夢を見てやがんだ・・・・・」

それでも、京楽は起こさない。

京楽も、一度味わってしまえばいい。寝すぎて、夜眠れない辛さを。

浮竹は、臥せっている時寝すぎで、よく夜に眠れなかった。安静にしていろと言われるので、仕方なしに布団の上で羊を何千匹も数えだす。

その日、本当に久しぶりに肺の発作を起こした。

京楽からもらった新薬が効いていて、しばらくの間発作を起こしていなかった。

「ごほっ、ごほっ、ごほっ」

洗面器の中に大量に吐血する。

「大丈夫ですか、隊長!」

「どいて!」

京楽が、浮竹を抱き上げると瞬歩で4番隊にまでいった。

隊首室に入り、卯ノ花を起こす。

「すまない、卯ノ花隊長。突然発作を起こしたんだ」

寝ようとしていた卯ノ花は驚いたけれど、すぐに回道で浮竹を癒してくれた。

「発見が早かったようなので、大事には至らないでしょう。今日は特別ですよ。寝ようとしている女性の元に無断侵入なんて、頬を往復ビンタされても文句は言えませんからね」

「ごめんよ・・・・・」

浮竹と京楽と卯ノ花は、500年以上隊長をしている古株だ。

「浮竹隊長には、念のため3日ほど入院してもらいます。文句はありませんね、京楽隊長」

「うん・・・・」

それから、退院するまでの3日間、京楽は浮竹の傍にいた。

海燕も様子を見に来たが、仕事があるのでずっとついていることはできなかった。

京楽の甲斐甲斐し様を見て、京楽を最悪な男だと認識していた海燕の考えも改まる。やはり、二人は尸魂界でも有名な夫婦なのだ。

夫婦の中に口を挟むのは、なるべくしないようにしようと決める海燕であった。


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夜一と砕蜂

「はっくしょん。夜一、頼むから猫の姿のままは止めてくれ!」

猫アレルギーの京楽は、美しい黒猫姿の夜一にくしゃみをしていた。

「こんなに美しのにのう。猫は美しくかわいい」

「そうだぞ、京楽!」

夜一を思いっきりもふりながら、浮竹がいう。

「猫はかわいい!」

「浮竹、お主は分かっているようじゃの。猫のよさを・・・・ごろごろ」

喉を撫でると、夜一はゴロゴロと鳴いた。

「ほれほれ」

猫じゃらしを見せつけると、夜一の体が反応する。

「またたびはどうだ?」

「あ、やめろ、またたびはだめじゃ!」

「ほれほれ」

「はっくしょん」

大きなくしゃみをして、夜一は人間に姿になった。

「夜一、服、服を着ろ!」

浮竹も京楽も真っ赤になった。

「うーむ、服を用意するを忘れておったわ」

「俺の服でいいから着ろ!」

雨乾堂で、夜一は浮竹の死覇装を着た。

「うーむ。さすがにぶかぶかじゃの」

彼氏のシャツみたいなことになっていて、まともに夜一を見れないでいた。

「夜一様、ここにおられましたか・・・・その恰好は!?」

愛しの夜一の霊圧をたどり、雨乾堂まできた砕蜂は、もっていた暗器を浮竹と京楽に向けた。

「貴様ら!美しすぎる夜一様の裸を見たな!」

「いや、ほとんど目をつぶってたし!」

「そうそう」

「問答無用!」

暗器を手に襲ってくる砕蜂から逃げるために、雨乾堂で追いかけっこがはじまる。

「砕蜂、やめよ。騒々しいぞ」

「は、夜一様!」

すぐに砕蜂は大人しくなった。

「砕蜂隊長は、本当に夜一が好きなんだねぇ」

「貴様如きが、夜一様を呼び捨てにするなど!」

「よい、やめよ砕蜂」

「はい、夜一様!」

その繰り返しだった。

どうも、夜一は砕蜂が怒る様を頼んでいるようで、性質が悪かった。

「砕蜂隊長、ここにまたたびがあるのだが」

「またたび!」

「こら、京楽!」

夜一は、人間の姿でもまたたびに弱いのだ。

そのままたびを放ってよこされて、砕蜂はにじりにじりと夜一に近づきだす。

「夜一様・・・・・・♡」

「あ、こら、やめぬか!ぎゃああああああああああ!」

そんな夜一と砕蜂をぺっと、雨乾堂から追い出して、京楽は茶をすすった。

「はぁ。平和だね」

「砕蜂隊長は、夜一のこととなると人が変わるからなぁ」

同じように、茶をすする浮竹。

腹が減ったと押し寄せてきた夜一に、二人分の夕餉は平らげられてしまった。

夜一は大食漢だ。甘味物を食べる浮竹以上に。

夜一はお替りばかりを所望して、10人分は平らげただろうか。それでもまだ足りないと、隠しておいた浮竹のおやつも食べられてしまった。

「しばらく夜一には来てほしくないな。食費がかさみすぎる」

「まぁ、あんだけ食ったらね」

外では、まだ夜一と砕蜂が追いかけっこをしているらしかった。

「ああ、夜一様!もう一度、先ほどの顔を!」

「ええい、しつこいぞ砕蜂!またたびをもって追いかけ回すな!」

「無理です、夜一様!さっきのお姿をもう一度拝見するまで、この砕蜂去りません!」

「だあああああああああ!!!」


「夜一も夜一で、慕ってくれる相手がいるのはいいことだけど、大変そうだね」

「京楽に、ちょっと似てるな」

「ええ、僕はあそこまで酷くないと思うんだけど!」

「その代わり、盛るだろう!」

「う・・・・・」

「その点では、砕蜂隊長のほうがましだな」

「そんなこと言わないでよ、浮竹」

そっと、背後から京楽が抱き締めてくる。

自然と、唇が重なった。

「ん・・・・・・・」

舌が絡まるキスを繰り返し、死覇装をはだけさせる。

さぁ続きをというところで、二人の腹がぐ~と鳴った。

夕餉を、夜一にとられてしまったのだ。

お互い苦笑しながら、13番隊の食堂へ行く。

夜一が10人分も食べたせいで、ろくなものが残っていなかったが、とりあえず果物類やらを大量に食ったので、おなかはまんぷくになった。

雨乾堂の前にくると、真っ赤になって失神した砕蜂と、猫の姿の夜一がいた。

「はっくしょん!僕、先に雨乾堂に帰っておくから」

そそくさと逃げ出すように、京楽が雨乾堂に消える。

「またたび・・・・人間の姿でもきくのか」

「く、それを言うな」

「砕蜂隊長はこのままか?」

「人になるとまた着る物がない。すまぬが、13番隊のあいている隊室にでもねかせておいてくれ」

むんずと、猫の夜一を掴む。

「お前も一緒にいろ。砕蜂隊長が起きて騒ぎだすと困る」

「仕方ないのお」

猫の姿の夜一は、浮竹が抱き上げた砕蜂を見ながら、その肩の上で大きな欠伸をした。

「よく食べ、運動した後は眠いのう」

「夜一、しばらく雨乾堂にくるなよ」

「何故じゃ」

「食費がかさむ!」

「ふーむ。大前田のいる、砕蜂の隊では何も言われぬのじゃがのう」

「大前田は金持ちだからな。夜一がたくさん食っても、何も言わないだろうさ」

「大前田のよなカスが砕蜂の副隊長というのもどうかと思うのだがのう」

「まぁ、カスはカスなりに頑張っているさ」

何気に、浮竹も辛口なのであった。


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ネオンテトラ(京浮)

ペットショップで、ネオンテトラを見ていた。

まるで、瞬くイルミネーションのようだ。

「欲しいの?」

「あ、いやそんなわけじゃ・・・・」

物欲しそうに見ていた浮竹に、京楽が声をかけた。

「ヒーターあるから、飼えるよ?」

「え、本当なのか!」

熱帯魚は金魚や鯉のように、寒い水温では生きられない。死んでしまう。

ヒーターが必須だった。

「確か、前に金魚飼ってた時に使ってた水槽とヒーターがそのまま置いてある。濾過機もあるし、飼えるよ?」

「じゃあ、買ってもいいのか!?」

浮竹の嬉しそうな顔に、京楽は苦笑する。

「でも雨乾堂には大きな自家発電機ないから、僕のいる8番隊の執務室になるけど、それでいいなら」

「水槽はでかいか?」

「ああ、大きいよ」

浮竹は、ペットショップの店員を呼んで、ネオンテトラ20匹、グッピーペア10匹、掃除屋にシュリンプ5匹と、プレコ1匹、あとはプラティ5匹にバルーンモーリーを3匹。

「そんなに入るかな・・・確かに大きな水槽だけど」

熱帯魚の入った袋に酸素を入れてもらい、水温が下がる前にと、8番隊の執務室の物置にあった水槽を出してくる。

かなり大きかった。

二人で掃除して、じゃり石をいれて水草をはやして、水を入れヒーターを入れる。濾過機をセットして、買ってきた熱帯魚を袋のまま水槽にいれた。

水温が同じになった頃を見計らって、袋から出してやると、色鮮やかな魚たちは水槽の中を自由に泳ぎまわった。

エサをやると、人が近づくと餌をもらえると思っているのか、面白いほど寄ってきた。

「綺麗なだけじゃなくって、かわいいんだな」

「このバルーンモーリーっていうの、ふっくらとしてて本当に風船みたいでかわいいね」

「俺は断然ネオンテトラだな・・・・」

「グッピーも綺麗だと思うけどね」

「グッピーは、卵生だけど子供を孵化させて産むんだぞ。知っていたか?」

「え、そうなの」

京楽が、驚いた顔をする。卵で産まない魚なんて、珍しい。

「妊娠したメスを隔離する水槽を用意しないとな。グッピーは、産んだ子を親や他のグッピーが食べてしまうから」

「綺麗なのに、残酷なんだね」

まるで、浮竹のようだ。

綺麗なのに、不用心に他人が触ると痛い目を見る。

「あーいいなぁ。和むなぁ。しばらくの間、8番隊で泊まってもいいか?」

「勿論!」

雨乾堂でもいいのだが、たまには8番隊で一緒に朝を迎えたい。

数日して、妊娠していたグッピーが子供を産んだ。

食べられないように水草に隠れているのを、網ですくって、小さめの水槽に移す。

「食べられなくてよかった・・・・」

その次の日には、また違うグッピーが子供を産んだ。

8番隊の執務室に水槽が増えていく。

「ここはペットショップじゃありませんよ?」

七緒の冷たい言葉に、京楽が困ったようにいう。

「今ベビーラッシュなんだよ。ある程度大きくなったら、ペットショップに引き取ってもらうから、この水槽の山、しばらく我慢してよ七緒ちゃん」

「まぁ、綺麗なんですけどね・・・・・・」

七緒も悠々自適に水槽の中を泳ぐ熱帯魚を見ていると、夢中になってはりついた。

「七緒ちゃんも、餌やってみる?」

「け、けっこうです!」

ツーンとそっけない態度がまたかわいいと思う京楽だった。

「餌をやりにきたぞー」

「あ、浮竹、またグッピーが子供を産んだんだ」

「またか!?5回目だろう!」

「10ペアも飼育してるからね・・・・・」

8番隊の執務室の棚の上やらテーブルの上は、水槽でいっぱいだった。

「ちょっと増えすぎたな。でも、分けようにもヒーターのある水槽をもっているところなんて・・・・ああそうだ、白哉がいた!」

白哉は、一時期海月にはまって、ヒーターと水槽を用意して飼っていた。

「白哉なら、もらってくれそうだ」

伝令神機で白哉に連絡をとると、了承してくれた。

グッピーをたくさんもって、二人は朽木家を訪れた。朽木家には大きな発電機があり、それで湯をわかしたり冷蔵庫を冷やしたりしていた。

尸魂界ではまだ珍しいエアコンがあり、電気毛布まである。

水槽はすでに用意されており、グッピーだけでは寂しいからと、カラフルな魚たちが泳いでいた。

グッピーをその中に混ぜていく。

まるで踊る宝石。

じゃりのかわりに色硝子が沈められていて、光も明滅するようになっていた。

「今までみてきた水槽の中で、一番綺麗だ・・・・・」

「当たり前であろう」

白哉の自信たっぷりな声に、京楽も頷く。

「流石4大貴族朽木家」

「浮竹、兄に渡したいものがある」

「なんだ、白哉」

「今年の冬は冷えるから、これを」

電気毛布だった。

雨乾堂にも、小さいが発電機がある。

「ああ、高そうだからと買わなくて欲しいと言ってたの、覚えててくれたのか」

「そうだ」

二人のかもしだす空気に、京楽が割って入る。

「例え朽木隊長でも、うちの子はあげませんからね!」

「兄は・・・・あほうだな」

「キーーーー」

「ほら、京楽、行くぞ」

京楽を引きずっていく浮竹。

「あほっていうほうがあほなんだよこの大アホ!」

「見ているこっちが恥ずかしくなるから止めてくれ!」

浮竹は、京楽の頭を殴って黙らせると、朽木邸を後にするのであった。





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ルキアを攫ってしまおう 虚圏の女王

ルキアが破面になったことを、恋次は結局白哉に打ち明けれなかった。

義妹が、破面になったことを知れば、白哉は命に代えても、ルキアを殺そうとするだろう。そして、強大ばな力をもちすぎた一護に敗れさるだろう。

「恋次?どうしたのだ・・・・」

「もしも、ルキアが生きているとしたらどうしますか」

「ありえぬ。あれはもう死んだ」

白哉の中で、ルキアはすでに死んでいた。

失踪した時は、白哉も必死になって探したが、年を経るごとにそれはなくなっていき、10年が経って殉職という扱いになった時、白哉はルキアの遺体がない棺を葬式に出して、喪に服した。

今更、生きているといっても、白哉を混乱させるだけだろう。

「ルキア・・・・・・」

全く20年前から変わっていなかった。ただ、胸には破面の証である穴があいていた。仮面は髪留めのようだった。

「ルキア、ルキア、ルキア・・・・・」

「ふふ、恋次、好きだぞ」

そう言って、微笑んでいた姿が今でも脳裏にこびりついている。

今の妻を愛していないわけじゃない。

でも、ルキアは家族で特別で・・・・恋次の初恋の相手だった。

もう、戻ってはこないだろう。

ルキアは、一護を選んだ。

虚圏の王になった一護を。


その頃、井上の魂は尸魂界にきて、若いままの魂魄の姿で、真央霊術院を卒業し、4番隊に配属されていた。

迷ったが、井上にも真実を告げた。

「そう。黒崎君生きててくれたんだ。朽木さんと、今も生きてるんだ・・・・」

ボロボロと、涙を零した。

「やっぱり、だめだね、私。黒崎君から朽木さんのこと、忘れさせることができなかった」

それは、恋次の分の涙でもあった。

「会いに行くか?井上、お前くらいなら、虚圏に連れていける」

「ううん、いいの!黒崎君に会って、拒絶されるのが怖いから!」

「井上・・・」

どこで、どう間違ったのだろう。

ルキアは恋次と。一護は井上とそれぞれ結ばれた。

二人とも、お互いの伴侶を愛していた。

でも、ルキアは一護を。一護はルキアを、ずっと好きで愛していたのだ。

それに気づいてやれなかったから、こうなった。


虚圏で、王となった一護は、グリムジョーと戦っていた。

ハリベルやネリエルの姿もあった。

「王となったからには、その力、落とすなよ!」

グリムジョーが虚閃(セロ)を放つ。

それを、一護は卍解もしない斬月防いでしまった。

「ちっ、力の差が大きくなりすぎて全然楽しくねぇ!やめだやめだ!」

グリムジョーが去っていく。ハリベルも去っていくが、ネリエルだけが残った。

「一護、今のあなたは破面になってまで、幸せを手に入れたといえるの?」

「人間もだめ、死神もだめ・・・・じゃあ、破面になるしかねーじゃねぇか」

「探せば、もっと他の選択肢もあったはずよ」

「ありがとな、ネル。でも、俺は今の俺に満足してるんだ。何者がきても、攫っていったルキアを取り戻させねぇ」

「朽木ルキア・・・・あなたが選んだ道だわ。私たちの王でもある。私たちは、ただ黙してあなたに従うだけ」

「ネル、もしも死神がきたら真っ先に教えてくれ。追い出す」

「あなたは、相変わらず甘いのね。殺すと言わない」

何度か虚圏に死神が紛れ込んだことがあったが、ザエルアポロが残した薬で記憶を消して尸魂界へと戻した。

誰かを傷ついてたいのでも、殺したいのでもないのだ。

ただ、ルキアと一緒にいたい。

その願いは、現世、尸魂界、虚圏を巻き込んだ。


「ルキア、起きてるか・・・・」

「ああ・・・・」

「この前、恋次がきた時、尸魂界に帰る気持ちは少しも起きなかったか?」

「この姿だ。行っても、殺されるだけだ」

「もう、俺もルキアもかなり力をつけた。ルキアには、王である俺の力も注ぎ込んである。護廷13隊の隊長だろうが、返り討ちにできる」

「もう、戻ろうなどと思わぬよ。貴様が破面になった時、私の運命も決まった」

「ルキア・・・・好きだ・・・・」

「ん・・・一護・・・・」

体を何度も重ねた。

でも、破面の体には子はできなかった。

子が欲しいと思い、ザエルアポロの残した方法で、子を作った。

「だぁあああ」

「お前は、今日から俺とルキアの娘だ。名は・・・ウルキ」

死んでいったウルキオラの名前を、つけた。

破面の赤子は、男児だった。

いずれ、数百年後、一護の後を継いで、虚圏の王になるだろう。

「ふふ・・・赤子か。かわいいな」

虚圏では、食事は必要なかったが、一護とルキアは好んで人間の食事を口にした。

ああ。

恋次と白哉と食卓を囲んでいたあの頃が懐かしい。

私は、もう尸魂界には戻れぬ。

恋次も兄様も、元気にしているだろうか。

「何を考えてんだ?」

「いや・・・昔のことを」

「もう、昔を振り返るのはやめろ。お前は俺の妻で、虚圏の女王だ」

もう、戻れぬのだ。

こうなるくらいならば、あの高校時代に一護の手をとっていればよかった。そう思うルキアがいた。

一護は虚圏の王として、数百年君臨した。その傍には女王であるルキアの姿もあった。

破面になり、一護と結ばれたことを幸福には思うが、恋次や白哉ともう会えぬだけあって、悲しみにも打ちひしがれた。

ウルキと名付けられた破面の男児は、美しい青年に成長していた。

「ウルキ・・・・よくぞここまで成長してくれた」

ルキアは、ウルキを抱き締めた。

そんなルキアの様子を見て、一護は満足そうだった。

理を捻じ曲げ、虚である破面に落ちてまで-----------------ルキアを愛した男、黒崎一護。

だめだと分かっていながら、それについていって自ら一護と同じ運命を辿った女、朽木ルキア。

共に結婚していた。けれど、お互いだけを見ていた。

ハッピーエンドにはならぬ物語。

そう分かっていて、二人は常に傍にいた。

数百年もの間、お互いだけを必要として。

「愛している、ルキア」

「私も愛してる、一護」


世界が軋む。

星が落ちる。


それでも、狂った二人の愛は続く。

ただ、永久(とこしえ)に。

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ルキアを攫ってしまおう 虚圏の王

虚圏に、二人はいた。

虚夜宮(ラス・ノーチェス)に、二人はいた。

「このようなこと・・・」

「ルキアは、もう死神じゃない」

ルキアを攫った一護は、その力で虚圏の王になっていた。

ルキアは、その妻になっていた。

ルキアの魂を落として、破面にした。一護もまた、自分の中にある虚を引き出し、破面となった。

もう、お互い死神と人間には戻れない―-―――。


霊圧を完全に虚のものに変えた二人に、従わない破面はいなかった。もっとも、王となったといっても名ばかりで、虚圏の支配権は未だにハリベルにあり、反乱はなかった。

一護は、破面となりさらに圧倒的な力を身につけた。ルキアは最後まで死神で在ろうとしたが、虚化していく一護を放置しておくことができず、自ら破面となった。

もう二度と、恋次や兄様には会えない・・・・。

そうだと分かっていながら、一護の隣にいて必要とされることが嬉しかった。

「お前の言葉通り、お前を攫った。お前はもう、俺のものだ」

ルキアを閉じ込めて、強制的に連れてきたわけではない。

ただ、ルキアを抱き上げて黒腔(ガルガンタ)までの道を浦原にあけてもらい、このことは他言無用とした。


変わって、現世では。

何時まで経っても戻ってこないルキアと一護に、井上は心労から病にかかった。

恋次はルキアを求め探し歩いた」が、現世も尸魂界にも、痕跡は残されていなかった。

霊圧を消して、何処かに隠れているのだと思っていた。

でも、一護は霊圧を消すのが下手で、どんな場所でもどこにいたのかすぐに分かった。

やがて、二人の捜索は打ち切られ、死亡したものとして処理された。

それから20年の月日が流れた。

井上は、心労がたたり、若くして亡くなった。

恋次は、ルキアを求めて探しまくったが、ルキアの心の中に一護がいるのを知っていた。

ルキアとの籍を抜き、恋次は同じ6番隊の違う女性と結婚した。

「なぁ、一護。こんな何もない場所で、何時まで過ごすのだ」

「ルキアと俺が完全に死んだてことになるまで」

「それなら、もうなっている。消息を絶って10年以上が過ぎると、死神は殉職したものとされる」

「そうか・・・・一度、現世に戻ってみるか」

破面だというが、見た目はほとんど昔と変わっていなかった。

ただ、胸の真ん中に破面の証である穴があった。

ルキアも、顔に破面としてのものがない。ただ、胸に大きな空洞があった。

二人は、黒腔を開き、現世にやってきた。

霊圧を0にする技を習得した。

黒崎家にくると、隣人から井上が死んだ話を聞かされた。

悲しいとも、思わなかった。

20年以上が経過しても、我が家は我が家だった。

もう遊子も夏梨も結婚して家を出てしまった。

家にあがると、父親の一心がいた。

「一護、お前生きていたのか!ルキアちゃんまで!」

初老にさしかかっている父親には、昔の覇気が感じられなかった。

「見た目が変わっていない・・・・どういうことだ?」

「俺は、人間でも死神でもない。ルキアもだ。破面だ」

「おい、お前!」

殴りかかってくる父親をいなすのは、簡単なことだった。

「恋次君や白哉君にばれたら、殺されるぞ」

破面は、虚の一種だ。

死神の敵だった。

「もう無理だ。それ以上の力を手に入れた。俺からルキアを取り上げようとするなら、恋次や白哉であれ許さない」

「恋次、兄様・・・・今頃、どうしておられるだろう」

「いくぞ、ルキア」

「あ、待て一護!」

一護とルキアが破面になっていた。

そんなこと、とてもじゃないが尸魂界には伝えれなかった。

だが、その二人の様子を見ていた者がいた。

恋次だった。

波長は全然違うかったが、愛したルキアの霊圧に似た霊圧を僅かながらに感知した。

黒腔をあけて、戻っていく二人に紛れて、恋次も虚圏に来てしまった。

「ルキア・・・愛してる」

「ああっ、一護」

睦み合う二人を、遠くから見ていた。

もう、俺の知る純情なルキアは死んだのだ。

せめて、俺の手で葬ってやろう。

いや、涅マユリに見せれば元に戻る方法もあるかもしれない。

そう思って、ルキアの腕をとって逃げ出そうとした。

「恋次?ああ、懐かしいな・・・貴様は死神だから、あまり見た目が変わらぬのだな。兄様はどうしている。元気か?」

そう口早に言われて、恋次は歩みを止めた。

「なんで破面なんかになった!俺を愛してたんじゃねーのかよ」

「私はな・・・・ずっと、一護を見ていたのだ。一護が破面になる道を選び、私も同じ道を選んだ。今の破面は大人しい。私も一護も、手を出されない限り、何もせぬ」

恋次は、ルキアを抱きしめて、口づけた。

すると、ゆらりとあのユーハバッハさえこす、凄まじい霊圧がぶつけられた。

「何、俺の世界に紛れ込んで、俺の妻を手を出してるんだ!」

「恋次!逃げよ!」

一護は基本無害だ。だが、ルキアのこととなると、人が変わる。

「ルキア、破面になるなんて!涅隊長のところに行けば、元に戻す薬を作ってもらえるかもしれない!俺と一緒に行こう!」

さぁと、元夫であった愛しい恋次が手を差し伸べてくる。

「破面から、死神になど戻れぬ。一度落ちたのだ。それに、涅マユリの実験体にだけはなりたくない」

ルキアは、涙を零しながら、恋次の手を取らず、一護の隣に並んだ。

「兄様には、このことは伏せておいてくれ。今の一護の力はすさまじい。あのユーハバッハや藍染以上だ。たとえ兄様でも、一護には勝てぬ」

「ルキアああああああああ!」

恋次の叫びは、黒腔におちいく。

「それでいい、ルキア」

隣に在ることを選んだルキアを抱き締めて、口づける。

「このような、罪深い存在・・・・・」

「お互い、妻と夫がいた。でも、もう昔のことだ」

ルキアには、もう一護しかいなかった。一護の隣で、何もない虚圏で時を過ごす。




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ルキアを攫ってしまおう 高校3年の終わり

高校生活最後の冬がやっきた。

あと4か月したら、ルキアは尸魂界に戻ってしまう。

だから、思いのたけをぶつけようとした。

「ルキア・・・・好きだ」

「ありがとう、一護。だが、私は貴様の思いを受け入れられない。人間と死神・・・・この差はどうあがいても、結ばれぬ」

「それでも好きだ、ルキア」

「その心、嬉しく思う。だが、答えるわけにはいかぬのだ」

何度ルキアを好きといっても、ルキアは首を縦に振ってくれなかった。

それでも、一緒に生活し、一緒のベッドで寝て、一緒に起きて登下校を繰り返す。

まるで恋人同士のようであるが、ルキアは頑なに一護の想いを受け入れてくれなかった。

それでもルキアの傍にいた。

片思いでもいい。そう思いはじめていた。

「恋次と、付き合うことになった」

そう報告されて、目の前が真っ暗になった。

「なぁ、ルキア。俺がお前のこと好きだって知ってるのに、そんな残酷なこというのか?」

「あ、違うのだ一護・・・」

「もう知るか。恋次の嫁にでもなっちまえ!」

その日を最後に、ルキアの姿は現世から消えた。

もうどうでもいいと思った。

大好きなルキア。

一護にとっても友人である恋次と付き合い始めたという。

それでもルキアが好きだった。

気づけば、自分のことを好きと慕ってくれる井上と交際を始めていた。

「ルキア・・・・・・・」

ルキアを思わない日はなかった。

ルキアが去って1年が経ち、2年が経ち、3年が経ち・・・5年が経った。

一護の中では、ルキアの姿はあの日のまま凍り付いて、時を止めていた。

一護は、井上と結婚した。

もう、ルキアのことばかりを考える一護はいなくなっていた。

ある日、ルキアが恋次を伴って会いにきた。

「よお」

「よ」

恋次とは言葉を交わせたがルキアの顔は見れなかった。

「貴様!私を無視とはいい度胸だな!」

顔面に蹴りをくらって、さすがの一護もルキアの方を向いた。

「何しやがる!」

「たわけ、それはこっちの台詞だ!5年ぶりになるというのに、言葉一つ交わさぬとは何事か!」

「一護・・・・報告遅れちまったが、俺たち結婚したんだ」

その言葉は、ストンと一護の胸に落ちてきた。

「ああ。俺も井上と結婚した。もう、黒崎織姫で、井上じゃねーけどな」

「みんな!懐かしいね!」

一緒に住んでいる井上が、恋次とルキアの顔を見て顔を輝かせた。

「結婚、したんだ?」

「ああ」

「おめでとう!」

井上は、心底嬉しそうだった。安堵したのだ。

いつまでもルキアのことを忘れない一護も、これでルキアのことに諦めがつくと。

でも逆だった。

一護の諦めがついていた心に火がついた。

気づくと、ルキアを攫うように家の外に出ていた。

「どうしたんだろう、二人とも」

「積もる話があるんじゃねーか?」

「おい、貴様何処へ行く!」

「誰もいない場所!」

そう言って、浦原のところにいくと、地下室をかりてそこでルキアを向き合った。

「死神として、幸せか?」

「勿論だ」

「俺がいなくて、幸せか?」

「それは・・・・・」

「なぁ、ルキア。恋次と付き合いだしたって言ったときも、嬉しそうじゃなかったな。恋次と結婚したって言ったさっきもだ。本当に、幸せなのか?」

「幸せに決まっておろう!幸せでないといけないのだ!兄様も恋次なら私を託せるとおしゃってくださった!」

「じゃあさ。なんで、そんな泣きそうな顔してるんだ?」

「そんなことは」

ポロリと、一粒の涙がアメジストの瞳から零れ落ちた。

「どうすればよかったというのだ。人間の貴様と結ばれぬことが分かっていながら、好きだと告げろと?」

「やっぱり、ルキアも俺のこと、好きだったんだな」

「たわけ。もう、お互い引き返せないところにまできてしまったのだ」

「なぁ、ルキア。5年だ。お前がいなくなってから5年経って、俺は諦めて井上と結婚した。幸せだと思ってた。でも違うんだ。隣にお前がいない。俺は、未だにお前が好きなんだ、ルキア」

「たわけ!私は恋次の妻だぞ!好きだというなら、攫え」

「そうする」

一護は。

ルキアを連れて、行方をくらませた。

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