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小説掲載プログ
09 2025/10 2 3 9 11 14 23 24 26 28 29 30 31 11

いかがわしいこと?いいえ。

「あっ、恋次」

「隊長、いいですか?」

「ああ、もっと」

「ここっすか?」

「あ、そこ。もっと激しく」

「隊長‥‥」

「恋次‥‥」


「恋次、貴様、兄様になにをいかがわしいことをしておるのだ!」

朽木邸の白哉の寝室から聞こえてきた声に、ルキアは赤くなりながらも怒ってふすまをすぱんと開ける。

「ルキア?」

うつぶせになった白哉の腰をもんでいる恋次がいた。

白哉は、何がどうしたのかという顔で、ルキアを見る。

「ルキア、どうしたのだ」

「あ、その、兄様が恋次に無理やりいかがわしいことをされていると思ってしまい」

ルキアは真っ赤になって、謝る。

「すみません兄様!どうか、続きをしてください!」

ふすまをすぱんと閉めて、ルキアは長い廊下を走って行ってしまった。

「だ、そうですよ、隊長。せっかくだから、いかがわしいことします?」

「兄は、立場を弁えよ」

「ここがいいんですよね?」

恋次が、腰をもみほぐすと、白哉が声をあげる。

「あっ」

「あんたの声、閨のものと似てるから、ルキアが勘違いするのも分かります」

「閨など‥‥‥んんっ」

恋次も、むらむらしだしたのだが、今白哉に手を出したらきっと禁欲2週間とか言われそうなので、我慢する。

「ルキアには、後で説明しておく。早く続きをせぬか」

ああ、この人は。

恋次は、なんとか我慢の糸が切れないように、白哉の腰をもみ続ける。

「んああっ」

たまらん。

けしからん。

「恋次?」

「隊長!」

盛った恋次に押し倒されて、白哉はびっくりする。

それから、恋次の鳩尾に蹴りを入れた。

「ぬお‥‥‥」

「今日は、そういうことはせぬ」

今日じゃなかったらしていいのかと、恋次が期待の眼差しで見てくる。

白哉は、白皙の美貌でうつむいて。

しばしして。

「明後日の夜ならば、いい」

その答えを聞いて、恋次は見えない犬のしっぽを振って、白哉に抱きつくのであった。


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黒猫と白猫の亜人12

「暑い」

その日のあまりの酷暑に、浮竹も京楽もダウンしている。

他の猫たちは、白哉が用意してくれた氷枕の上で寝そべりながら、涼をとっていた。

「白哉、俺たちにも氷枕を」

「兄らは、人の姿になれるであろう。水を浴びるなりなんなりできるはずだ。他のただの猫は毛皮を脱げぬゆえ」

白哉曰く、浮竹も京楽も猫の姿から人になれるので、人の姿で涼をとることを探せとのことだった。

浮竹は、小型冷蔵庫をもちだしてきて、その中にスイカをいれて、ついでに開けっ放しにして少しでも涼しい空気がくるのを味わう。

京楽も、冷蔵庫に頭をつっこみそうになっていた。

「没収」

白哉に見つかり、冷蔵庫は没収されてしまった。

大きな冷蔵庫はあるが、流石に食品のいっぱいつまった冷蔵庫は使えなかった。

「ねぇ、浮竹って確か氷の魔法使えるんじゃないっけ。氷だしてよ。かき氷にして食べながら、水桶に氷いれて水を冷やして足を浸そう」

「その手があったか」

浮竹は、氷の魔法を生成して、かき氷機をかりて、かき氷を2つの皿にいれる。

「シロップ、何かなかった?」

「シロップはなかったので、オレンジをもってきた。果汁をかけて食おう」

水桶もだし、水を入れてそこに氷をいれた。

「ん-、涼しいねぇ」

「極楽だ」

浮竹と京楽は、白哉に会いにきて、忙しいからと京楽と浮竹のところにやってきた恋次にも、かき氷を食わせてやった。

恋次はかき氷を何度もおかわりした。

結果、ぎゅるるるるとなる腹をかかえて、トイレに閉じこもり、波がすぎるのを待つ始末。

「氷と風の魔法を組み合わせて、冷たい空気を出している。涼しいか?」

浮竹が試しにクーラーのようなことをすると、京楽は親指を立てた。

「めっちゃ快適!」

「ただ、消費魔力が多いのが難点だ」

浮竹は自分にも冷たい風を送るが、1時間ほどして力尽きた。

「暑い」

「暑いねぇ」

もう魔力も底をつきかけていて、氷枕を一人分つくるので精一杯だった。

猫の姿になり、浮竹と京楽は氷枕の上で寝そべって、昼寝をしだした。

恋次が戻ってくる。

「ああ、二人してずるい!」

もう、氷枕はとっくに中の氷が溶けてしまい、ぬるま湯になっていた。

浮竹と京楽が、暑さにおきてきた。

「恋次君、ビニールプール出してくれ」

「え、あ、はい」

白哉の家の押し入れにあったビニールプールを出して、中に空気を入れて膨らませると、いくらか昼寝で魔力の回復した浮竹が、温度の低い水を出してプールの中を満たしていく。

「ひゃっほおおい」

恋次が、猫の姿でプールに飛び込む。

浮竹と京楽も、猫の姿で飛び込んだ。

人の姿だと、狭いからだ。

はしゃぎまくった恋次が、爪でビニールプールに穴を開けてしまい、快適な時間はあっという間に酷暑に戻った。

「仕方ない、水桶にするか。一人ずつだったら、入れるだろう」

水桶を3つ用意して、浮竹は氷水を3つの桶にいれる。

3人は、それぞれ桶の中で涼んで眠りだした。

「ぷはぁ!溺れかけた」

京楽は、ついつい眠って水の中に沈んでしまい、溺れかけた。

「浮竹、恋次君、大丈夫?」

二人を見ると、器用に頭だけ出して眠りこけていた。

「お腹すいたな‥‥‥浮竹、起きて」

「んー?」

「もう昼過ぎだよ。昼食食べに行こ?」

「ああ」

恋次は放置であった。

恋次が起きる頃には、3時になっていた。

「あー、お腹すいた」

「白哉君が、昼飯恋次君の分はなしだって」

「ええええ」

「キャットフードでも食べとけって言っていたぞ」

「しくしく」

泣き出す恋次に、浮竹がかき氷の入った器をあげる。

「まぁ、かき氷でも食べておけ」

「喉乾いたからもらいますけど、腹の足しにはらんないんすよね‥‥」

夕暮れになり、昼の酷暑が嘘のように気温が下がる。

「へっくしょい」

恋次が、盛大はくしゃみをする。

「風邪?うつさないでね」

「ああ、なんか熱っぽくなってきた。ほんとに風邪かも」

「一応、お医者さんに診てもらう?」

「あーまぁ、その辺は適当で」

恋次は、白哉と夜を共にした。

次の日、風邪は白哉にまでうつってしまい、恋次は2週間の謹慎になった。

「浮竹、京楽。兄らにもうつるから、あまり近寄るな」

白哉は、緑の魔法で風邪を癒そうとするが、病気なので症状を緩和するくらいだった。

「俺の光魔法の回復の魔法もかけとくな?」

浮竹が、光属性の回復魔法をかけると、緑の回復魔法と合わさって、白哉の風邪の症状は大分ましになった。

「緑魔法と光の回復魔法の成分をカプセルに詰め込んで‥‥‥風邪への、緩和症状になる薬のできあがりだ」

白哉は、特効薬ではないが、風邪の症状がましになる薬を作り出してしまった。

まずは風邪の症状がでまくりの恋次でためしてみたら、ばっちりと効いた。

その後、数人に試して成功だったので、王国中の薬局やら病院でもらう風邪薬は、朽木家の印がついたその風邪薬になるのだった。



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黒猫と白猫の亜人11

市場で、魔王の浮竹と幽鬼の京楽と出会う。

「元気にしてた?」

『前に会って、2週間も経ってないだろう?』

「ああ。でも、2週間はけっこう長いぞ?」

『そうかな?すぐだと思うけど』

魔王の浮竹と幽鬼の京楽は、猫の亜人である京楽と浮竹とは時間の流れが違うようにかんじれるらしい。

魔王の浮竹と幽鬼の京楽は、時間が経つのなどあっという間に感じれた。

逆に浮竹と京楽は2週間は長く感じれた。

ふと、浮竹が串焼きを4人分買ってきた。

「ここの市場の串焼き、うまいんだ。魔王の俺と幽鬼の京楽もどうぞ」

『ありがとう』

『ああ、本当においしいね。人間の世界の食べ物はおいしいのが多いから』

「もう一本食うか?」

『いや、気持ちだけでいい。さて、散歩も終わりだ。京楽、行くぞ』

『はぁい。君たち、また会おうね?』

魔王の浮竹と幽鬼の京楽は、テレポートの魔法で魔王城まで帰還してしまった。

京楽は、追加の串焼きを食べていた。

「京楽、もう一本食うか?」

「うん」

もぐもぐと串焼きを食べながら、浮竹と京楽は魔王の住んでいる城ってどんなところだろうと思うのであった。

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 「貧民街で、子供が消えている?」

「そうなのです。浮竹殿と京楽殿が最近貧民街に出入りしていると聞いたので、何か知っているのではないだろうかと」

ルキアの言葉に、浮竹が渋い顔をする。

「多分、奴隷として売られてしまったんだと思う。俺も、実際子供が一人奴隷商人に連れていかれそうなのを目撃している。その時は京楽が止めてくれたが‥‥黒猫と白猫の亜人に、懸賞金がかかっていて、あまり目立つ動きができないんだ」

「奴隷として売られていくのですか。犯人が誰なのか分かるといいのですが」

「俺と京楽が、囮になろう」

「ちょっと、浮竹?」

「俺たちには懸賞金がかかっている。奴隷商人たちが見過ごすはずもない」

「でも、危険だよ?」

京楽が心配そうな声を出すと、浮竹は京楽を鼓舞する。

「俺たちは、魔法を使えるだろう?」

「そういえばそうだね」

浮竹は、白哉から氷、雷、光の魔法を教えてもらい、魔法士並みの腕になっていた。京楽は風と火の魔法しか使えないが、研鑽を積んで、上位魔法を覚えている。

ちなみに、浮竹は基本の4大属性の魔法は全て上位魔法まで使えた。

「じゃあ、ボクたちが囮になるから、ルキアちゃんは白哉君と一緒に、現場を押さえて。ボクらの身は、監視役としては恋次君が水晶玉で見てくれるそうだから」

こうして、京楽と浮竹は、自分たちを囮として貧民街に赴いた。

白哉のものである証の純金の首輪は外していた。

治安の悪いほうに歩いていくと、早速柄の悪そうな男たちに囲まれる。

「黒猫と白猫の亜人だぁ。金になるぞお」

「あ、お前は教会にいた奴!」

教会で炊き出しの金を懐に入れていた元神官が現れたので、浮竹が叫ぶ。

元神官は、浮竹と京楽に純金の首輪がないことを確認して、忌々しそうに二人を見る。

「よくも、俺の居場所をなくしてくれたな」

「それで、なくなった次は貧民街の子供を奴隷として売り飛ばすんだね。人間として最悪だね」

「う、うるさい!純金の首輪がなくなって朽木家から捨てられた今、お前たちを庇護する者はいない。奴隷として、高値で隣国に売り飛ばしてやる!」

浮竹と京楽は、降参してわざと捕まる。

他の売られるはずの子供と一緒に、地下の牢屋に閉じ込められた。

「うわーんうわーん。おかあさーん」

「おとうさーん」

子供たちは泣きじゃくっていたが、奴隷商人が何かガスなようなものを使って、子供たちを静かにさせた。

浮竹と京楽は、ガスを吸い込まないように風の魔法を使う。

「へへへへ、黒猫と白猫の亜人は目玉が飛び出るような金額がつく。この取引が終わったら、屋敷を建てて遊んで暮らしてやる」

元神官は、実に楽しそうに笑っていた。

そこへ、騎士を連れたルキアと白哉がやってくる。

「全員、できるだけ生きたまま捕縛しろ!どうしても反抗してくる輩は切り捨ててもかまわん!」

ルキアが、剣をもって奴隷商人が有していた用心棒と戦うが、ルキアが圧勝していく。

「くそ、おいお前、こっちにこい!人質だ!」

元神官に、浮竹は乱暴に髪を掴まれて引っ張り出されて、喉に短剣をつきつけられる。

「こいつの命が惜しかったら‥‥‥」

「ファイア」

「あちいい」

元神官の男は、短剣を手ごと燃やされて、短剣を地面に落とす。

「スリープ」

眠りの魔法をかけると、男はあっけなく寝てしまい、その間に他の奴隷商人も用心棒たちも捕まった。

浮竹と京楽は、外していた純金の首輪をはめなおす。

それを見て、浮竹と京楽を売ろうとしていた男たちが青ざめた。

「ひいい、朽木様の猫だあああ」

「嫌だ、死にたくないいい」

純金の首輪をした朽木家の猫に害をなした者は、最悪処刑。

それを知っているので、男たちは一斉に命乞いを始める。

「心配せずとも、殺しはせぬ」

白哉の言葉を聞いて、男たちは安堵する。

「火山地帯の鉱山で、死ぬまで強制労働だ」

「ひいいい、嫌だあああ」

「死ぬのと同じじゃないかああ」

火山地帯の鉱山はよく有毒ガスが出て、長い間いると死んでしまう。そんな場所だった。

「どこに、どの子を奴隷として売ったのか、記録があったらよこせ。記憶を渡したら、減刑してやろう」

「そ、それなら俺の机の中にある!鍵をかけているが、鍵は俺がもっている!渡すから、減刑してくれ!!」

元神官の男が、鍵を騎士に渡す。それを、騎士は白哉に渡した。

「確認してくる」

しばらくしてやってきた白哉は、厳しい顔をしていた。

「取引先の相手は皆コルサス伯爵になっている。あの男は、子供を凌辱して殺し、蝋人形にするとして有名な相手だ。兄の減刑はない。主犯として、ギロチンで処刑だ」

「いやだああああ」

「兄様、コルサス伯爵にも逮捕の用意を」

「ああ。コルサス伯爵の逮捕は、ルキア、兄に任せる」



浮竹と京楽は、他の子供たちと一緒に救出されて、毛布を与えられていた。

「浮竹、髪大丈夫?随分と無理やりひっぱられてた」

「実は、まだちょっと痛い。けっこう毛が抜けた」

「でも、犯人の主犯である元神官の、浮竹を人質にした男、ギロチンで処刑だってさ。他のやつらは火山地帯の鉱山で、死ぬまで強制労働だそうだよ」

浮竹は、暗い顔をする。

「売られていった子は買われた先で凌辱を受けて殺され、蝋人形にされてしまうそうだ」

「浮竹、自分を責めちゃだめだよ」

「でも、もっと早くに子供たちを救出できていれば、被害者も少なかったはずだ」

「今回、発覚しただけでもましさ。このまま野放しにしていたら、もっと被害者が出ていたはずだよ」

「うん、そうだな」

「浮竹、京楽、大丈夫か?」

白哉が、心配そうに寄ってくる。

「ボクたちは大丈夫。それより、売られた子たちの救出を。まだ生きているかもしれない」

「コルサス伯爵の捕縛はルキアに任せた。売られた子をすぐには殺さないそうだ。思っていたよりも、多くの命が助かるかもしれぬ」

「よかった‥‥」

そこで、浮竹はがくりと力尽きる。

「どうしたんだ、浮竹?」

「ああ、安堵して気を失ったみたいだよ。早く家に帰って寝かせてあげなきゃ」

「今回の事件は、兄らがいなければ発覚できなかった。感謝する」

「ボクは当たり前のことをしたまでだよ。浮竹も、起きていればそんなことを言うはずだよ。じゃあ、ボクらはテレポートの魔法で先に帰っておくから」

「分かった」

その後の調べで、コルサス伯爵に20人の子供を奴隷として売ったことが発覚したが、死者は7人で、後の13人は凌辱されていたものの、命は助かったらしい。

白哉が自らの手で、子供たちから凌辱された記憶を消して、親元に返したそうだ。

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黒猫と白猫の亜人10

猫神祭も終わり、平穏な毎日がやってくる。

神子と呼ばれていた浮竹も、ただの猫の亜人として扱われる。

京楽と一緒に、市場を散歩していると、たくさんの猫に囲まれている魔王の浮竹を発見してしまう。

『おおい、また会ったな?』

「猫、いっぽいるな?」

「白哉君のとろこの猫も混じってるね」

『俺は動物に好かれやすいんだ。だから、猫も集まってくる』

魔王の浮竹の近くには、幽鬼の京楽がいた。

猫たちは幽鬼の京楽を怖がり、近づかない。

『ボクは、禍々しい魔力をもっているからね。動物に好かれないんだよ』

「確かに、ピリピリした気配がするが、俺は嫌いじゃないぞ?」

浮竹が、幽鬼の京楽に近寄る。

幽鬼の京楽は、しばらくぼーっとしていたが、ふと浮竹の白猫の耳をもふる。

「わ、びっくりした」

『やっぱ、本物なんだね』

「当り前だろう。猫の亜人なんだから」

『猫の姿になれる?』

「なれるが。ほら」

浮竹は猫になった。

それを、幽鬼の京楽が抱き上げて、抱っこした。

『温かいね』

「猫を抱きたかったのか?」

『うん』

『京楽は、花に好かれるが動物には嫌われるんだ。逆に俺は花を枯らし、動物には好かれる』

「ふ~ん」

京楽が、幽鬼の自分から浮竹の体を抱き上げる。

「浮竹はボクのものだから」

『そうかい。ごめんね。猫をいっぱい触ってみたかったから。浮竹が羨ましいんだよね』

「ああもう、そんなに猫をもふりたいなら‥‥‥…」

京楽は、魔法で音声を届けて、恋次を呼び出した。

「え。浮竹さんと京楽さんが二人!?」

びっくりしている恋次を猫の姿にすると、幽鬼の京楽に押し付ける。

「この子、思いっきりもふっていいから」

「ちょ、なんなんすか!もぎゃあああああああ」

恋次を生贄にした。

でも、幽鬼の京楽は。

『この子、なんか嫌。抱くなら黒猫のボクか白猫の浮竹がいい」

そう文句を言う。

魔王の浮竹と幽鬼の京楽は、遊びにきてちょっと会いたかっただけだからと、去ってしまった。

「うう、もうお嫁にいけない」

「誰の嫁にいくつもりだったんだ」

「もちろん、白哉さんっすよ」

「白哉が嫁ではないんだな?」

「あ、白哉さんが嫁です!」

「あほいってないで、散歩の続きしよ、浮竹。恋次君は消えていいよ」

「俺の扱い酷くないっすか!?」

恋次が涙目でいじける。

「後でねずみとって、君にあげるから」

「俺は本物の猫じゃないっすよ!ねずみなんて食えません!」

恋次をからかってから、京楽も猫の姿になると、集まっていた猫に挨拶してから、浮竹と一緒に市場に消えていく。

市場では、新鮮な魚、果物、野菜、肉、加工食品といった食べものから、衣服やアクセサリーといったいろんなものが売っていた。

ふと、浮竹がアクセサリー店で足を止める。

店の主人は、猫の浮竹が純金の首輪で亜人の証でもある記章をつているのを目ざとく見つけ、声をかけてくる。

「朽木様んとこの猫の亜人だね?猫用のアクセサリーもあるよ。お代は朽木様からもらうから、買っていかないかい?」

「じゃあ、この金の鈴を」

京楽が、店の主にそういうと、店の主は喜んで金の鈴を浮竹の首輪につけた。

「お代はボクが払うよ」

黒猫姿のまま、京楽は首にかけてあった財布を店の主人に見せる。星金貨がつまっていた。

「1枚とっていいよ」

「お、おつりはいくらいりますか?」

「おつりはいらないよ。浮竹にいいものつけてくれたお礼にとっておきなよ」

「ま、毎度あり!さすが朽木様のとこの猫だ。羽振りがいい」

そう上機嫌な店の主を見てから、浮竹と京楽は市場の散歩を続ける。

「あ、あの串焼きうまそう」

「待ってて。買ってくるから」

京楽は、ツケで串焼きを買ってきて、猫の姿のまま浮竹と分け合った。

「あーんあーん」

「ちっ、また貧民街のガキか。おら、てめぇのような貧乏人に売る串焼きはねぇぞ!」

「おなかすいたよう」

泣いている子供があまりにも哀れだったので、京楽はツケで串焼きを買うと子供に与えた。

「これ、くれるの、猫ちゃん」

「にゃあ」

「ありがとう!」

京楽も浮竹も、ただの猫のふりをした。

子供は串焼きを頬張って、手を振りながら貧民街のほうへ去っていく。

「猫の亜人のだんな。あんな子供にえさなんてやるべきじゃねぇですぜ。あいつら、徒党を組んで堂々と盗みしてきやがる」

「白哉君のもってる教会の炊き出しは?」

「そんなもの、雀の涙っすよ。貧民の全員にいきわたるはずがねえ」

貧民街の問題は、山積みのようだった。

「白哉君は、性格上から貧民の全てに渡るよう炊き出しをしてるはずだよね」

「そうだと思う」

「教会の誰かが、お金をねこばばして、炊き出しをしていない可能性があるね」

「見に行こう。炊き出しの現場を」

浮竹と京楽は、貧民街に向かう。

炊き出しに行列が並んでいたが、全員の分はなさそうであった。

教会の中を出入りしても、猫なのであやしまれない。

人の目につかないように動くので。

「ここ‥‥‥金貨がこんなにある」

「教会の不正だね。白哉君に知らせよう」

その後、二人は猫の姿のまま白哉の家にいき、人の姿になって教会の炊き出しの件について報告すると、白哉はすぐに動いてくれた。

「京楽、浮竹、兄らのお陰で助かった。教会の神父の一人が金だけせしめて、炊き出しを行っていなかったのが発覚した。鞭打ちの刑のあと、財産を全て没収した」

その神父は、貧民街に住むことになる。

不正を見つけてしまった浮竹と京楽を恨み、その後事件を引き起こすのだった。


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黒猫と白猫の亜人9

猫神祭がやってきた。

人々は猫を神として崇める。無論、猫の亜人もだ。

恋次は猫神様の神官なので、大変そうだった。

ルキアと一緒に領地の視察から帰ってきた白哉の元にくる時間もなく、祭事を行う。

猫神は豊穣を司る神でもあるので、人々は猫神に今年の作物を捧げる。捧げた後、自分たちで調理して食べるのが習わしだった。

ルキアも、巫女姫として猫神様のために舞を披露したりした。

京楽と浮竹はというと。

猫神様の使徒だと崇められながら、呑気に屋台で買い食いしていた。

猫神様の子=猫、もしくは猫の亜人なので、買い食いはただでできる。

「ああ、こんな祭りがずっとあればいいのに」

少し酒を飲んで、ほろ酔い気分の浮竹は、川に流される灯篭を見ていた。

「毎日あっちゃ、ありがたみがないじゃない。猫神様の祭りは、2年に1回で、3日間に渡ってとり行われるからね」

今日はまだ一日目だ。

京楽と浮竹は、酒場に入る。

猫神様の使いだと、ただ酒を飲めた。

浮竹はすぐに酔い潰れてしまったが、京楽は酒豪で、自分と同じ黒猫の亜人である四楓院夜一という女性と酒場で知り合って、飲み比べをした。

結果、京楽が勝った。

「うぬう、もうだめじゃ‥‥‥」

夜一もまた、猫神様の神官というか巫女だった。

猫神様の神社での仕事もせず、酒場を巡り歩いて、飲みまくっているのだという。

「夜一ちゃん、またね」

「おう。京楽といったか。浮竹とやらが起きている明日に、またここの酒場で会おうぞ」

酔いつぶれた浮竹を介抱して、その日は終わった。

次の日、猫神様から神託があったと、人々が噂していた。

白猫の亜人が、来年殿と再来年の豊穣を約束してくれるのだという。

浮竹は白哉の家にこもって、外に出たがらなかったが、ルキアがぜひにと言うので、巫女姫であるルキアと一緒に、舞を舞った。

「浮竹、綺麗だよ」

舞を舞っている最中、天から猫の姿をした神様が降りてきた。

それは、浮竹に宿った。

「神子だ!神子様だ!」

猫神を宿した浮竹は、豊穣の印である黄金の稲穂を人々に授ける。

「ありがたい」

「今年の神子様は白猫の亜人か。美しい」

「来年も、再来年も、豊作を約束しようぞ」

そう言って、浮竹の中から猫神様は消えていった。

「神子様、どうか私の子に祝福を!」

「神子様、我が娘と婚姻を!」

「神子様」

「神子様」

そんな風に求めてくる人々が怖くなって、浮竹は白猫になって、白哉の家まで逃げて帰ってきた。

後から京楽が追い付いてくる。

「浮竹?大丈夫?」

「神子だと‥‥‥偶然俺に猫神様が降りてきただけなのに」

「まぁ、神様だからね。それを宿した者は、神子として敬われる」

「ずっとか?」

「いいや、祭りの間だけだよ」

「そうか、よかった‥‥‥」

浮竹は、心からほっとした。

「そうだ。酒場に行かなきゃ。夜一ちゃんと約束してるんだった」

「昨日の、黒猫の亜人か?」

「うん、そう」

「俺は猫の姿でいく」

「猫の姿なら、神子って分からないね」

浮竹と京楽は、夜一と約束をした酒場までやってきた。

酒場では、夜一の美貌をほめたたえて、男たちが夜一に求婚していた。

「残念ながら、わしは自分より酒に弱い男とは付き合わぬ。付き合いたければ、そこにいる黒猫の亜人の京楽に勝ってからにしてみるがよい」

夜一は、すでに随分と飲んでいた。

猫神祭のせいで、猫賊の亜人が飲み食いした代金はただになるが、赤字にならぬようにこういった店に王家が補助金を出すので、夜一がどれだけ飲もうとも止める者はいなかった。

「兄ちゃん、飲み比べの勝負だ!」

「ずるい、俺が先だぞ」

「俺だ」

「京楽‥‥‥帰っていいか?」

浮竹は、人の姿で赤ワインを一つあけたが、酔ってもうここには居たくないと言い出す。

「白哉んちに帰る」

「ああ、もうちょっとだけ待って」

「さぁ、最後は俺と勝負だ」

人間の男5人と飲み比べの勝負は、京楽の勝利で終わった。

「ひっく。もう酒がないとな?」

夜一が、酒場のマスターの首を締めあげる。

「簡便してください。もう酒がないんです。今日は店じまいだ」

「夜一ちゃん、よければボクたちの家で飲みなおさない?」

浮竹は、また酔いつぶれて寝ていた。

そんな浮竹をおんぶして、夜一を連れて京楽は白哉の家に戻る。

「ほお、白哉坊のところの猫だったのか」

「白哉君とは知り合いなの?」

「ちょっとな」

浮竹を寝かせて、二人はエールを飲んだ。

そんなところに、白哉が帰ってくる。

「おう、白哉坊、元気にしていたか?」

「この化け猫め!出ていけ」

白哉は、実に迷惑そうな顔をしていた。

「わしとお主の仲ではないか」

「誤解を生むような言い方はよせ。京楽、見た目に惑わされてはだめだぞ。この化け猫は、実にもう100年以上生きている」

「うへぇ」

猫賊の亜人の平均寿命は人より少し長くて、120年ほどだった。

この若い見た目で100歳をこしているとは。

京楽は、白哉に迷惑をかけたくないので、エールをありったけ夜一に渡して、引き取ってもらった。

「うーん」

ソファーで、浮竹が目覚める。

「あれ、夜一さんは?」

「帰ってもらった」

「そうか」

浮竹は、大きく伸びをしてあくびをする。

それから、白猫姿になって、白哉の足の上に飛び乗って甘えだす。

「浮竹?」

「浮気者など、知らん」

「ええ、夜一ちゃんとはただ飲んでただけだよ」

「どうだか」

外が騒がしくなった。

なんだと窓から見てみれば.市場で出会ったことのある、魔王とやらが人に囲まれていた。

「神子様‥‥‥」

『だから、違う。俺は‥‥』

「魔王とやら、こっちにこい」

浮竹が、白哉の家の離れの自分たちの家に魔王を入れた。

『ああ、助かった』

『そうだねぇ』

魔王の影から、京楽と瓜二つの人物が出てくる。

『俺は魔王の浮竹十四郎。こっちは、幽鬼の京楽春水』

「姿形だけじゃなくって、名前も俺たちと一緒か。2重存在ってやつか?」

「みたいだね」

魔王の浮竹を、浮竹は興味深そうに見る。一方、幽鬼の京楽は関心がなさそうに、魔王の浮竹だけを見ていた。

『おっと、もうこんな時間か。会議があるので、俺たちは一度戻るな?また今度会おう』

そう言って、魔王の浮竹と幽鬼の京楽は消え去ってしまった。

「なんか、魔王ってスケールでかいね。この王国には遊びにきているようだけど」

「魔王の友人というのも、悪くないかもな」

ぽつりと、浮竹は呟く。

「うん、そうだね」

京楽も頷くのであった。


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黒猫と白猫の亜人8

「隣国のサシャル王国の王女のレティシエ様と夫の浮竹かがや様、娘で王女であられる浮竹花嵐(からん)様だ」

そんな、王国の騎士の声が聞こえてきた。

隣国の王家のパレードがあると見に行った浮竹を、京楽は強く止めようとしたのだが、懐かしい気配がするといってすり抜けて、パレードを見てしまった。

白哉が施していた、記憶を消去する魔法の効果が切れた。

「あ、俺は‥‥‥」

浮竹は、サシャル王国の王族が泊まる宿に来ていた。

「あら、かわいい白猫‥‥‥」

浮竹を抱き上げようとした花嵐を、母親であるレティシエが止める。

「本性を現しなさい。卑しい、奴隷が!」

浮竹は、白猫の亜人姿になる。

「母様」

「お前に母などと呼ばれたくありません。下賤な者の血を引くお前は、花嵐に会う資格もないのですよ」

「も、もしかして‥‥‥白猫の亜人ということは、お兄様?」

浮竹の母親、レティシエ・フォン・サシャルは、汚いものを見る目つきで浮竹を見る。浮竹と同じ白猫の亜人だった。

「俺の、妹、花嵐‥‥」

花嵐は、美しい兄を見て、うっとりしていた。花嵐は、金色の猫の亜人だった。

浮竹を、血をひかないが我が子という存在であるのを知っていながら犯した、浮竹かがやは人間で、かがやはレティシエを説得させようとする。

「私に内緒で、十四郎を奴隷商人に売り渡したのだろう。十四郎は私とお前の子だ。今からでも遅くない、やり直そう」

「あら、十四郎を男で息子であるというのに、犯したあなたは、ただ性奴隷として十四郎が必要なだけではないのかしら」

「レ、レティシエ」

「聞く耳をもちません。そこの卑しい白猫の亜人。処刑されたくなければ、早々に立ち去りなさい」

浮竹は白い猫になって、傷つきまくり、ただ花嵐の顔を見て話ができたのはよかったと、サシャル王家の者が泊っている宿を後にしようとする。

それを、騎士の一人が止めた。

「あなたを殺せとレティシエ様に命令されている。悪く思わないでくれ」

白猫である浮竹に、剣が振り下ろされる。

リンと鈴の音がして、純金の首輪にされてあった、結界魔法の鈴が作動する。

騎士の剣が折れたのと同時に、京楽が空から舞い降りてくる。

「この国にはこの国の掟がある。朽木白哉の所有する猫を害した者は処刑。君は、死にたいのかな?」

「な、違う!レティシエ様の命令で!」

「浮竹は、ここにいてね?」

「京楽?」

京楽は宿に入っていき、浮竹の実の母親であり、浮竹を奴隷にした王女レティシエの顔を、回復魔法でも癒せぬ酸で焼いた。

「ぎゃああああああああ!顔が、私の美しい顔があああ!!!」

京楽は捕まる前に黒猫姿になって宿から飛び出すと、浮竹を口でくわえて、テレポートの魔法を使う。

ついた先は、白哉の家だった。

「白哉、京楽‥‥‥すまない、せっかく記憶忘れて幸せに過ごしていたのに、俺は自分から」

「でも、ボクは君を奴隷にした君の母親に復讐できたし、君は妹と会えた」

「ああ。妹に会えただけで、俺は十分だ」

はらはらと、たくさんの涙を浮竹は流す。猫の姿で。

その涙を、同じ猫の姿の京楽がぺろぺろと舐める。

「兄は、妹と出会うために、きっと記憶を取り戻したのであろう」

「うん‥‥そうだな」

浮竹は涙を前足で拭って、顔をあげる、

「俺は浮竹十四郎。ただの、浮竹十四郎だ。父も母もいない。妹はいるが」

新しい一歩を踏み出そうとしていた浮竹を、京楽がそっとその背中を押す。

「ボクの、大切な恋人だよ」

「ありがとう、京楽」

浮竹は、ぎこちない笑顔を浮かべる。



「んあっ」

「ここ、いい?」

「あ、いいからぁ、もっと奥にちょうだい?」

京楽と浮竹は睦みあっていた。

京楽は、浮竹の奥を穿つ。

すると、浮竹は背をしならせていっていた。

「こっちも、いけるよね?」

浮竹のものをしごいて、精液を無理やり出させる。

「やあああん、頭、おかしくなるうう」

二重にいく浮竹の蕾を、ぐちゅりと音を立てて犯す。

「あ、もっと犯して」

「なんだかそう言われると、犯罪者になった気分だよ」

「もっとおお」

浮竹は激しく乱れた。

「んあ、もっと」

最奥を貫かれて、結腸にまで入りこんできた京楽のものを浮竹は締め付ける。

「んあああ、いい、ああ、いい」

「浮竹‥‥‥」

「キスして?」

「うん」

口づけると、浮竹は舌を京楽の舌を絡みあわせる。

「京楽、俺は淫乱な奴隷の男娼だけど、嫌いにならないで」

「君は君だよ。もう奴隷でも男娼でもない。白哉君ちの猫。ボクと一緒でね?」

「んああああ、くるうううう」

浮竹の奥に子種を吐き出すと、浮竹は潮をふいていた。

「やあああ、いくのとまらないいい」

「好きなだけいっていいよ」

「あああん」

ぐったりとなった浮竹を抱きしめて、京楽は誓う。

「浮竹。君は、ボクが守るからね」


ちなみに、サシャル王国の王族たちは、そそくさと自分たちの国に帰っていくのだった。美貌で名高いレティシエ王女は、顔を包帯でぐるぐる巻きにしていたそうだった。



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黒猫と白猫の亜人7

「白哉さん、浮竹さんひどいんすよ。眠れないって家に訪れたら、木材で頭を殴って気絶させて朝まで放置された」

「そうか。それはよかったな」

「白哉さん酷い!」

泣き真似をする恋次を放置して、白哉は貴族としての責務の仕事をしていた。

「白哉さーん、聞いてます?」

「今忙しいのだ。浮竹と京楽にかまってもらえ」

「今年も、領地を視察するんすか?」

「そのつもりだ」

白哉は、たくさん積み上げられている書類に目を通していく。

「白哉さん、また見合いの話が出てるそうですね」

「断った。私には恋次がいるからと」

「白哉さん!」

抱きついてくる白哉を手でどけて、白哉は落ちた書類を拾い上げた。

「猫族の亜人しか愛せないと言っておいたので、しばらく見合いの話はないであろう」

「白哉、書類仕事を手伝おうか?」

浮竹が入ってきた。京楽は、その付き添いのようであった。

「兄は、計算が得意であったな。この書類を頼む」

「ああ、任せろ」

「お、こっちの書類魔法学校のことについてだね。これなら、ボクも役に立つかも」

「では、その書類は京楽、兄に頼む」

京楽と浮竹は、てきぱきと仕事をしだす。

「俺も、仕事を‥‥‥‥」

「兄は、この国の文字をまだ読めないのであろう。邪魔なので、猫神様の神官として、私の代わりに今年も我が領地は豊作であると報告でもしておけ」

猫神様は、猫と猫族の亜人の祖とされているが、豊穣を司る神でもあった。

神殿が王国にあり、恋次はそこに所属する神官である。猫神様の声を聞くことができると、神殿では一目を置かれる存在であるが、白哉の前ではただの赤猫の亜人だった。

「白哉、根を詰めすぎではないか?少し休憩しよう」

「浮竹、兄が茶をいれてくれ。兄のいれる茶が一番うまい」

「分かった」

「じゃあ、ボクは茶菓子の用意でもするね?」

「俺は‥‥」

何かすることはないかと探している恋次は、はっきり言って邪魔だった。なので、白哉はきっぱり告げる。

「恋次、兄は邪魔だ」

「うわあああん」

泣きながら去っていく恋次を、白哉は放置する。夕飯の頃になると、またひょっこり現れると分かっているからだ。

「白哉、恋次君泣いていたぞ。放置していていいのか?」

「あれは、放置プレイをしても平気なのでな」

「ちょっとかわいそうだけど笑える」

京楽は、クスクスと小さく笑う。

「白哉の愛を独り占めしようとするから、ああなるんだろ?」

浮竹の言葉に、白哉はやや顔を赤くする。

「なんだかんだといって、うまくいってるみたいだね」

京楽は安堵する。

京楽は、白哉の幼い頃を知っている。

もっと、尖っていて、冷たい目をした子だった。妻を迎えて大分変わった。その妻が亡くなって、一時は少し荒れたが、今は優しい。

京楽も浮竹も、そんな白哉だから主と認めて、庇護下にいる。

「そろそろ夕飯の時間だ。食堂に行こう」

白哉は、京楽と浮竹を伴って食堂に行くと、白哉の席の一番近くに恋次が座っていた。

「ほら、この通り、大丈夫であろう?」

そんな恋次を見て、白哉だけでなく京楽も浮竹も笑う。

笑われる意味が分からなくて、恋次は首を傾げるのであった。

「あ、この鴨のソテーうめぇ」

恋次は遠慮なしにコース料理を食べていく。

白哉は、自分の分と京楽と浮竹の分以外に、恋次の分を作らせておいた。

ルキアは、巫女姫として王宮のほうに出ている。しばらく帰ってくる予定はなかった。

京楽と浮竹は、食事後に猫の姿になり、互いに毛づくろいをする。

それを恋次はじっと見て、ブラシを手に白哉の元まで行く。

「白哉さん、毛づくろいもどきのブラッシングしてください」

白哉がブラッシングすると、生え変わり時期なので沢山毛が抜けた。

「‥‥‥洗うか」

「え」

恋次は、猫の姿で洗われるのが大嫌いだった。

白哉は京楽と浮竹を呼び、何かを話した。すると二人は人の姿になって、がしっと恋次を捕まえて風呂場に連行する。

「にぎゃああああああああ」

恋次が泣き叫びながら洗われる。

京楽と浮竹も、ついでだと猫の姿になって洗われた。

薬用の猫シャンプーで、いい匂いがした。

恋次は、バスタオルでふかれる前に全身をぶるぶるふるわせて、白哉に水をかける。

彼なりの嫌がらせであった。

「私も、風呂に入ってくる」

「あ、俺も」

「兄はさっき洗ってやったばかりだろう」

白哉との混浴を拒否されて、恋次はしょんぼりする。

そんな恋次をルキアが抱き上げた。

「ル、ルキア!?王宮にいたんじゃねぇのか?」

「2週間ばかり、休暇をいただいた。兄様の領地の視察に同行するつもりだ」

ルキアは、すっかり綺麗になって毛皮がふかふかになっている恋次に頬ずりする。

「この毛皮と肉球がたまらぬ」

「ぎゃああああああああああ」

遠慮など全くなしで触られている恋次を見て、京楽と浮竹は逃げ出して、半野良の猫たちが集う猫の広場にきて、毛づくろいをしだす。

「毛皮、ふかふかになったけど、ちょっと違和感あるな」

「ルキアちゃんだけには、猫の姿の時、気をつけよう」

「ああ、そうだな」

恋次には生贄ならぬ猫贄になってもらった二人は、そのまま猫小屋に入って眠るのであった。


次の日、市場にきていた。

他の白哉の猫たちが、二人の青年を囲んでいた。

「あ、ボクらに瓜二つだね」

「魔王、らしいぞ」

「近寄らないのが吉だね」

「ああ」

猫の姿で、京楽と浮竹は、魔王らしい人物をちらりと見て、通り過ぎていくのだった。

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黒猫と白猫の亜人6

王国の貧民街で、疫病がはやりだした。

人に感染する疫病で、亜人には感染しない。それを知った京楽と浮竹は、白哉が感染する危険があるため動けないので、白哉に代わって炊き出しなどをした。

白哉はとても優れている。

はやった疫病が、かつてオルタニア帝国ではやったものだと突き止めて、錬金術で特効薬を作り出して、早くも量産の体制をとった。

「ありがたや、ありがたや」

病気にかかっていない貧民たちは、京楽と浮竹の炊き出しに感謝して、病人の分ももらっていく。

「なぁ、京楽」

「なんだい」

「人間って、なんでこんなに貧富の差があるんだろうな?」

京楽は生まれたのは猫の獣人の里だった。黒猫の亜人が生まれたと騒ぎになったが、里の者全員に愛されて、育ってきた。

王国にやってきて、はじめて人間には貧富の差がこんなにもあるのだと気づいた。

「仕方ないよ。貴族や王族は、恵まれているから。白哉君は、4大貴族だけど、こうして貧民にも手を伸ばす。いい貴族だと思うよ?」

「うん。白哉は金持ちだけど、困っている人をよく助けるから、いい貴族だ」

浮竹の中の貴族のイメージは、平民を虐げる貴族であった。

記憶をなくしているが、かつて貴族に虐げられ、性的暴行を受けていたので、浮竹の中の貴族のイメージは悪い。

「さぁ、炊き出しが終わったら、特効薬を配ろう」

「ああ」

京楽と浮竹は、猫神様の使いと言われて、貧民から崇められた。

「猫神様の使いのお方。感謝申し上げます。特効薬で、まだ幼い息子が一命をとりとめました」

「感謝なら、4大貴族の朽木白哉にするといい」

「でも、実際私たちを救ってくれたのは、あなた方猫神様の使いのお方です」

「あーうーん。ボクたち、猫神をあんま信じていないんだよね」

「あら。てっきり、猫神様の神官かと」

「そういや、猫神の神官とか恋次は言っていたな。疫病をよせつけないようにって、白哉の傍にいるけど‥‥‥本来なら、あいつが率先して貧民街を助けるべきなのに」

「まぁまぁ、浮竹、落ち着いて。特効薬も配り終わったし、後は白哉の傘下の教会が炊き出しやら病人の世話をするって」

浮竹と京楽は、白哉の家に帰還する前に念入りに体と髪を洗って、新品の服を着る。万が一にでも、白哉のところに病原菌をもちこまないためだった。

「浮竹、京楽、兄らのお陰で特効薬も配り終えたし、助かった」

「白哉が、貧民街に手をさし伸ばすから、俺たちも手をさし伸ばしたに過ぎない。それにしても、他の貴族はくそだな。貧民街を放置してる」

「まぁ、税をあまり納めない元はスラム街の住民だからな。王国の城下町を巡る壁の内側に入れただけ、ましなのだ」

「昔は、スラム街があったのか。今の貧民街より、酷かったのか?」

「人がすぐ死んで当り前の世界だった。犯罪の温床地帯で、女子供は昼でも街を歩けない、そんな有様だった。私の亡き父上が改革を行い、スラム街の住民を城壁の中に入れた。犯罪はなくならないが、騎士団が巡回するようなっているので、大分ましになった」

「そっか‥‥‥白哉君も苦労してるんだね」

京楽は、白哉の頭を撫でる。

「ああっ、ずるい!」

奥のほうに隠れていた恋次が出てきて、白哉を京楽から引きはがす。

「れ、恋次」

「あ、恋次君、君は猫神の神官だろうに。貧民街に一番に手を差し伸べるべきは、君のはずなんだよ」

「俺は、好きで猫神の神官になったんじゃねぇ。白哉さんの安全のほうが守る価値がある。実際、貧民街のやつらが、助けてほしいとこの家に群がってきた。騎士団に任せたけど、白哉さんは対応しようとしていた。疫病の者もいる中、だぞ」

「恋次、もうよい」

白哉が割って入る。

「でも、白哉さん」

「兄は、もう帰れ」

「嫌です。今日は泊まっていきます」

「はぁ‥‥もう、好きにせよ」

恋次は、ガッツポーズをとるが、白哉は疲れていたので早めに就寝してしまい、夜行性になって暇な恋次は、京楽と浮竹の家を訪ねてきた。

「こんな時間になんだい、恋次君」

「白哉さんが寝ちまった。俺は最近夜行性になってるから暇で」

浮竹も目を覚ます。

ちょうど、深夜の0時になったところだった。

「恋次君、こっちにこい」

浮竹が、恋次を手招きする。

「なんすか、浮竹さん」

ゴン。

浮竹は、恋次の頭にベッドの近くに置いてあった木材を手にとると、恋次の頭を殴った。

ベッドをちょっと改装しようと用意していた木材であった。

「ちょ、浮竹!?恋次君、大丈夫?」

恋次の返事はない。

完全に気絶して、白目をむいていた。

「これで、眠ったことになるだろ」

「浮竹、いくらなんでもやりすぎなんじゃあ。スリープの魔法を使うとか、方法はあるでしょ」

「めんどくさい」

浮竹は、ベッドのわきに気絶した恋次をね転がして、一応毛布をかけてやる。

それから、大きな欠伸をした。

「俺は、もう一回寝るぞ」

「あ、ボクも寝る」

結局恋次は、朝まで意識を取り戻さないのであった。

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黒猫と白猫の亜人5

「白哉、京楽を見なかったか?」

「いや、見ていないが」

昨日から、京楽の姿がなかった。

どこを探しても見つからず、浮竹は不安になる。

「京楽、俺に何も言わずいなくなるはずないんだけどな」



一方の、京楽は。

「あちゃあ、しくったね」

黒ミサをする連中に、捕まっていた。

純金の四大貴族の白哉のものだという首輪をしているにも関わらず、京楽に手を出してきた。

「サタン様に捧げる贄だ。丁重に扱うように」

黒猫姿であったが、すでに黒猫の亜人だとばれている。

黒猫の亜人の臓物は、黒ミサに使うと効果があるとされている。迷信なのに、京楽を捕まえた連中は信じていた。

「ほんとは、人は傷つけたくないんだけど。ウィンドカッター」

京楽は、檻を壊すと風の魔法で次々と黒ミサのサタン信者たちを倒していく。

「待て。サタン様の贄に‥‥」

「ファイアランス」

浮竹の後ろ脚を掴んだサタン信者を、とどめとばかりに火の槍で貫くと、男は黒焦げになり、しばらく痙攣していたが動かなくなった。

「さて、帰るか」

京楽は、白哉の家に帰ると浮竹が人の姿で抱きついてきた。

「京楽、よかった。帰ってこなかったから、何かあるかと思って‥‥‥これは血?けがをしていのか!?」

「ううん。サタン信者に捕まって、黒ミサに臓物を捧げられそうになっただけ」

その言葉に、白哉が秀麗な顔をしかめる。

「場所は覚えているか?」

「うん。市場を通って‥‥‥」

場所を伝えると、白哉は騎士団を派遣して、まだ生きていたサタン信者たちとその仲間を捕まえた。

「あの信者たち、どうなるの?」

「私のものである兄に手を出した罪だ。黒ミサを行おうとしていた者は処刑、それ以外の者は国外追放だ」

「わお、厳しい」

「それくらいしないと、兄も浮竹も守り抜けぬ」

「俺も、狙われているのか?」

浮竹は、自分を指さすと、人の姿になった京楽と白哉に頷かれた。

「兄は、京楽より狙われやすいかもしれぬ。くれぐれも一人で外を出歩かないように」

浮竹はこくんと頷き、京楽を見る。

「血で、汚れている。風呂に入って、着替えよう」

「浮竹も、ボクを抱き上げたから血がついてるね。一緒にお風呂入ろうか」

風呂場で、京楽は浮竹にキスをして、浮竹のものを口で奉仕した。

「んっ、ここはこういうことする場所じゃ、ないし、俺は」

「うん。最後まではしないから」

「ああっ」

浮竹は、京楽の口の中に射精していた。

「ボクのも、触ってくれる?」

京楽のものはギンギンに勃ちあがっていて、浮竹はおずおずと手でしごく。

勢いよく精子が飛び出して、浮竹の顔と白い長い髪を汚した。

「ああ、ごめんね。体も顔も髪も洗ってあげるから」

互いに人の姿で欲を吐き出しあうのは初めでではないが、慣れていないので浮竹は真っ赤になっていた。

「はぁ、いい湯だった」

「京楽のせいでのぼせた」

「顔が赤いの見せたくないって、湯の中に長い間もぐるように浸かるからだよ」

「むう」

浮竹は、扇風機に当たりながら、京楽からよく冷えたラムネをもらって、中身を一気に飲み干す。

「今日は、しないからな」

「今日も、でしょ?この前抱いたのはいつだったっけ」

「半月くらい前だな」

浮竹と京楽は猫の亜人であるので、人の姿でも過ごせるようにと白哉のいる屋敷の近くの一軒家を与えられていた。

たまに、京楽は人の姿になって浮竹を求める。

浮竹も、記憶にはないが、男娼として生きてきたので抱かれるのには慣れているし、逆に抱かれないと体が疼いて仕方なかった。

「俺は淫乱なのかもしれない」

風呂で抜いてもらったのに、まだ欲を抱いている自分を責める浮竹を、京楽が抱きしめる。

「君は、覚えていないから仕方ないけど、酷い人生を送ってきたから。仕方ないよ」

「俺は、白哉に記憶を消してもらったんだろう?俺自身の願いで」

「うん。思い出さないでね。君は傷つきすぎている」

「ああ、思い出したくない。でも、京楽に抱かれると思い出すかもしれないと思ったが、そうでもないんだよな」

「愛の力だよ」

「愛、か」

京楽は、浮竹を愛していた。

浮竹も、京楽を愛してる。

「俺は、お前を愛している」

「うん、知ってる。ボクも君を愛してるよ」

二人は、愛を囁きながら1つのベッドに横になり、互いを抱きしめあいながら寝た。

起きた時には、二人とも猫の姿になっていた。

「お互い、気をぬくと猫になっちゃうね」

「そうだな」

その日は、一日中猫の姿でいることにした。

「京楽、浮竹、珍しいな。今日は人の食事をとらぬのか?」

いつも、毎日京楽と浮竹は人の姿になって白哉と一緒に食事をとるが、今日は猫の姿のままだった。

「たまには、キャットフードだけでいいかなって」

「俺は、京楽が今日は猫の姿で過ごすというので、一緒にそうしているだけだ」

「浮竹、兄の大好きなエビフライがあるぞ」

白哉が小皿にエビフライを置いて床に置くと、浮竹は我慢できずにかぶりつく。

「あ、浮竹ずるい!今日は人の食事はなしにしようと言ったのに」

「す、すまん。しかし、エビフライだけは‥‥ああ、もうなくなってしまった」

白哉が笑って、2つ目のエビフライを小皿にいれて床に置く。

「にゃあっ」

浮竹は猫まるだしで、エビフライにかじりつく。

「にゃあ」

それに、京楽が猫の啼き声で答える。

「にゃあ‥‥‥」

白哉は、猫の言葉は亜人である京楽と浮竹の声だけなら分かった。

「ふむ、京楽も浮竹も、今夜の夕食はキャットフードでよいのだな?」

「うん、白哉君」

「俺もだ、白哉」

チリン。

白哉は、鈴を持ち出した。

「京楽は、一度危ない目にあったからな。浮竹、兄も危ない目に合うかもしれない。防護結界をはれる魔法の鈴をつけておこう」

「ありがとう、白哉」

浮竹は、動くたびにちりんちりんと鳴る鈴を気に入ったようだった。

京楽は、微妙な顔をしている。

「京楽?」

「いや、人の姿でえろいことしてる時も首輪をはめたままだから、鈴がなるのかなぁと」

浮竹は赤くなって猫パンチを京楽におみまいする。

「白哉の前で、そういうことは言うな」

「兄らは、本当に仲がよいな」

白哉は二人の黒猫と白猫の亜人を、猫のままの姿でいるので撫でまくり、二人は喉をくすぐられてゴロゴロと喉を鳴らすのであった。



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黒猫と白猫の亜人4

「おーい、浮竹?」

「んー?」

浮竹は、白哉がもっている図書館で、魔法に関する本を読んでいたのだが、いつの間にか眠気がきて眠ってしまっていた。

「いかん、眠ってしまっていた」

「まぁ、時間はいくらでもあるんだから、急ぐ必要はないよ?」

浮竹は、京楽が魔法を使えると知って、自分も使えるのだろうかと白哉に聞いてみたのだ。結果、魔力が高く魔法は使えるそうだ。

本来なら、浮竹は王族であった。

隣国の王家の王女が、浮竹の本物の母親であった。

その母親は、浮竹が生まれた瞬間から王位継承権を与えず、ろくな教育もせずに暮らさせた。浮竹には妹がいたのだが、会うことも話すことも禁じられていた。

浮竹の義理の父に当たる者が、浮竹の美しさにやられて浮竹を犯したことで、それまで存在を黙視していた母親の王女は、浮竹を奴隷商人に売った。

その存在は流れ流れて、今は白哉を主とする、京楽と同じで白哉の猫だった。亜人であるが。

白哉にとっては、大切な友人であった。

浮竹が魔法を使いたいと言い出した時、家庭教師をつけようかという案も出たのだが、それなら自分が教えると京楽が名乗りでた。

しかし、京楽は人に教えるのが壊滅的に下手だった。

なので、白哉が暇な時に直接白哉から教えてもらい、あとは図書館で知識を増やしたり、瞑想して魔力コントロールがうまくなるようにがんばった。

「ファイア!」

浮竹が、手のひらに小さな火を生み出す。

それは、生活魔法とも呼ばれ、魔法が使える者の多くはその火を生活の基礎に使う。

「ウォータ!」

今度は、ふよふよと浮遊する水の玉が現れる。

「アース!」

石礫が生まれる。

「ウィンド!」

そよそよと、風がおこる。

浮竹は、魔法の基礎となる4大属性の魔法の全てが使えた。

それは、非常に珍しい。

普通、使える属性は2つまで。

更に、浮竹は氷、雷、光の属性の魔法も使えた。

京楽は風と火属性が使えた。

白哉は、4大貴族の朽木家当主らしく、基本の4大属性に氷、雷、光、闇、無、生命、緑の魔法が使えた。

生命や緑の魔法が使える者は、王国でも数えるほどしかいない。

白哉は生まれながらの魔法のサラブレッドであった。

「京楽、俺は4大魔法の他に氷、雷、光の魔法が使えるそうだ!白哉に、氷と雷と光の魔法を習おうと思う。4大魔法は、魔法書を読めば魔法が使えるから、師匠は必要ないと言われた。あと、京楽から魔法を教わるなと言われた」

京楽は、だーっと涙を流していた。

「魔力ぐーんと伸ばして熱いって感じてにょーんってすると、フレアサークルって魔法が使えるよ」

涙を流しながら、浮竹に教えてみる。

「うーんわからん。フレアサークル」

京楽の言った通りにしてみると、アイスランスの魔法が出た。

「やっぱり、京楽、お前魔法教えるの下手だな。魔法大学に通うことも考えてみたんだが、白哉が目立ちすぎるから駄目だと言われた」

「まぁ、ボクたち黒猫と白猫の亜人は、人間にとって珍しい上に一部の者からすれば喉から手が出るほど欲しい存在だからねぇ」

獣人マニアなら、まずコレクションとして奴隷にしたがる。

中には、剥製にしたがる者もいる。

世界は、黒猫と白猫の亜人に厳しかった。

「他の獣人は普通に往来しているのに、何故に俺たちの黒猫と白猫だけ、狩りの目的にされるんだろうな?茶色や白銀、金、赤、青といった猫の獣人は普通に暮らせるのに」

「ボクたちは、特別なんだよ。黒猫の亜人は、黒ミサに捧げるために臓物が必要になり、また一部の病気を治す薬とされている。効果なんてないのにね?」

「白猫の亜人は‥‥‥見目がいいから奴隷にされるとか。俺はなってないけど」

白哉の、記憶抹消の魔法はまだ効果があるようで、奴隷にされていた頃の記憶は浮竹の中にはない。

「明日、ボクの故郷でボクが通ってた魔法大学で魔法の講義があるんだよ。生徒でない者も受けれる授業なんだけど、出てみる?」

「出たい!」

「じゃあ、耳は帽子で隠して、尻尾は色を染めようか」

「ああ、そうか。京楽は、そうやって魔法大学に通っていたのか?」

「うん」

「じゃあ、申し込みだけしておくね?」

「ああ」

次の日になり、浮竹は白い猫耳をニットの帽子で隠して、白い猫の尻尾を茶色に染めて、同じくニットの帽子で黒い猫耳を隠し、尻尾を茶色に染めた京楽と、魔法大学の講義を受けた。

「無属性の、消滅魔法と重力魔法、圧巻だったな」

「そうだね。ボク、白哉君以外ではじめて無属性の魔法を使える人と出会ったことになるよ。教師になれるのかぁ。白哉君も、多分教師になれるね?」

「そうだな。白哉の教え方はいいから」

京楽の風の魔法のテレポートで、住んでいる王国に戻った浮竹と京楽は、猫の姿になった。

猫にたくさん囲まれている、浮竹瓜二つの人物を見つけたからだ。

通りすがりの猫に聞いてむる。

「あの人、誰だい?」

「にゃあ(知らないの?今の魔王だよ)」

「魔王‥‥‥浮竹、白哉君の家に戻ろう」

「ああ‥‥でも、声を交わしてみたい」

『あ、そこの黒猫と白猫、亜人だな?』

「行こう、浮竹」

京楽に急かされて、魔王なる自分と瓜二つの人物を何度も振り返って診ながら、浮竹と京楽は主である白哉の家に戻るのであった。

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黒猫と白猫の亜人3

「魔王が、たまに人間の世界にやってくるそうだ。遭遇することはないと思うが、一応気をつけるがよい」

白哉は、浮竹と京楽にそう言った。

「あの、その赤猫、白哉と恋仲というのは本当か?」

白哉が抱いている、純金の首輪をもたない、真っ黒な首輪をしている恋次は、えっへんと胸をはる。

「俺は、白哉さんのものじゃなくて、白哉さんが俺のものなんだ」

「れ、恋次、黙っていろ」

ゴンと頭を殴られて、恋次は涙目になる。

「白哉さん、動物虐待反対」

「兄は余計なことを言うな。追い出されたいか」

「はい、すんません」

しゅんとなって項垂れる赤猫は、どう見ても白哉の猫で、恋次が白哉を自分のものにしているようには見えなかった。

「浮竹、今日は何する?」

「魚釣りがしたい」

「じゃあ、人型で遊びに行こうか」

「ああ」

「白哉君、釣竿ってある?」

京楽が、赤猫の恋次を抱いたままの白哉に聞く。

「離れの押し入れにある」

「うーん、白哉君ち広いから、どこが離れなのかわかんないよ」

白哉は、目を閉じた。

「釣り竿に、魔力を流しこんでおいた。京楽、兄なら魔力探知でわかるあろう?」

京楽も、目を閉じる。

そう遠くない場所に白哉の魔力を感じて、目をあける。

「じゃあ、釣竿借りていくね。いこう、浮竹」

「ああ。えさは?」

「それは、市場で買っていこう」

「どこまで釣りに出かけるんだ?」

「もちろん、海まで!」

浮竹は、人の姿で翡翠色の瞳を見開く。

「海!見たことがない。近いのか?」

「ううん、馬車で3日かかるよ」

浮竹ががっかりするが、京楽が釣竿を手に、京楽に耳打ちする。

「ボクはね、魔法大学に昔通っていたんだ。一通りの魔法なら使える。テレポートの魔法で、海までいくよ?」

浮竹は驚く。

「猫の亜人でも、魔法大学に通えるのか?」

「当り前だよ。猫の亜人は、一応獣人族ってことになってるから」

「そうか‥‥」

京楽は、市場で魚のえさになる虫を購入して、市場の路地にいく。

「ボクの手、しっかり握っててね。移動するから」

浮竹は、言われた通り京楽の手を握った。思いっきり握ったので、ちょっと痛かった。

「わぁ、海か、これが!」

「そうだよ」

「水がしょっぱい!」

「海だからね?」


一方、朽木家では、

人の姿をとった、赤猫の恋次が、浮竹と京楽の心配をしていた。

「あの、浮竹さんと京楽さんっての、黒猫と白猫の亜人でしょう。黒猫の亜人は黒ミサに臓器を使われるし、白猫の亜人は綺麗だから奴隷にされる、大丈夫かな?」

「私のものだという刻印の入った純金の首輪をしている。私の猫に害をなした者は、最亜処刑されるから、大丈夫であろう」

「そうだと、いいんすけど」


海で、岩場で二人はのんびりと釣竿を垂らす。

数分して、京楽の竿に魚がかかった。

「わ、大きい」

「俺も手伝おう」

二人して釣り上げると、立派な真鯛だった。

「今日、白哉君に頼んで、シェフに調理してもらおう」

「おや珍しい。黒猫と白猫の亜人じゃねぇか」

ガラの悪そうな、3人組が浮竹と京楽を囲む。

海辺の近くに売春宿があり、そこで働いている男たちだった。

「こっちの白猫、すごくべっぴんだ。男娼にしたらもうかりそうだな」

「う、頭が痛い‥‥」

浮竹は、消してもらった記憶が戻りそうで頭痛を訴える。

「消えてよ。ランダムテレポート」

二人を囲んでいた男たちは、怒った京楽の放ったランダムの場所に強制転移される魔法で、王国の王宮にテレポートさせられた。

今頃、無断侵入の罪で捕まっているだろう。

「浮竹、大丈夫?」

「ああ。あ、俺の釣竿に魚かかってる!」

浮竹は、喜んだ表情で釣竿を引っ張る。

これまた、立派な真鯛が釣れた。

その次は、タコが釣れた。

「浮竹、しんどくない?」

「何がだ?」

「その、頭痛とかどう?」

「さっきの男たちに囲まれていた時はあったが、今は大丈夫だ」

「そう」

「にゃあ」

「ん?」

一匹の野良らしき子猫がやってくる。

「にゃああ(魔王様にそっくりなのだ)」

「ん?魔王様?」

「にゃん?(知らないの?魔王様。白い髪に翡翠の瞳で、そっちの白猫の亜人のお兄ちゃんにそっくりで超絶美人だよ)」

「京楽、魔王って?」

「ああ、また今度教えるよ」

野良の子猫は、浮竹が釣った小魚を食べた。

「にゃあああ(ごちそうさま。魔王様に会ったら、仲良くしてもらうといいよ?)」

「魔王なぁ‥‥‥」

浮竹は少しだけ興味をもったようだが、今は釣りの方が楽しくてそっちに意識がいく。

浮竹が次を吊り上げると、海藻が釣れて、浮竹はがっくりする。

「ちょっと、釣り場かえようか」

真鯛の入ったバケツを手に、京楽と浮竹は釣竿をもって移動する、

「ここ、何気な穴場なんだよね」

「いっぱい釣るぞーー」

二人はたくさんの魚を釣って、白哉におみやげだと言って白哉の家に帰ってきた。

「真鯛は、ボクと浮竹が人の姿で食べるから、シェフに好きなように調理させて?」

「分かった。浮竹、兄は楽しかったか?」

「白哉、海をはじめてみたんだ!それから、魚がばんばん釣れて‥‥‥」

楽し気に浮竹が話しだす。

京楽も白哉も、楽し気に聞いた。

「白哉さん。今夜、いいですか?」

キャットタワーから降りてきて、人の姿になって白哉に抱きついてくる恋次を、白哉はひっぺがして蹴り転がす。

「浮竹と京楽の前で盛るな」

「いいじゃないっすか」

「猫神様に報告するぞ」

「うわ、それだけは勘弁してください」

涙を滲ませる赤猫の恋次を不思議そうに、浮竹と京楽は見る。

自分たちの主である白哉と恋仲。

本当なのか嘘なのか分からないが、白哉は恋次のことが嫌いではないようだった。


「兄様、食事の準備ができました。京楽殿と浮竹殿の分もあります」

「ルキア、俺の分は?」

「兄様に手を出す不届き者に食わせるものなどない」

「ひでえええ」

うなだれる恋次に、浮竹は自分の分の真鯛のポワレをあげた。

「うう、浮竹さんでしたっけ。あんた、いい人ですね」

「ちょっと、恋次君、ボクの浮竹にあんまり話しかけないでね。赤猫の菌がうつる」

京楽がそう言うと、もっともだとばかりに白哉も頷く。

「ぐすん。猫になって、キャットフード食べてくるからいいもん」

赤猫の恋次は、猫の姿になってキャットフードの置いてある広間に消えてしまった。

「京楽、俺も後でキャットフード食べたい」

「ああ、白哉君ちのキャットフードはおいしいからね」

二人は、人の食事をきちんと終えてから、猫の姿になってキャットフードを食べるのであった。


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黒猫と白猫の亜人2

浮竹は、白哉の家で発情期を迎えた雌猫たちに囲まれていた。

「にゃああ(ねえ、私に子種ちょうだいよ)」

「にゃあ(ずるい、私が先よ。私と寝てよ)」

「なーお(お前の子が欲しい)」

「いや、俺は白猫だが亜人なのでただの猫のお前たちに子をやれない。猫の姿で交尾したこともないし、したいとも思わない」

浮竹がそう言うと、群がっていた雌猫たちは興覚めした様子で浮竹から離れていく。

「にゃあにゃあ(じゃあ、京楽も同じなのかしら。あの人、優秀だから子が欲しかったけど、あの人も黒猫の亜人だから。残念だわ」

「ごめんねぇ。ボクもできれば君たちに子をあげたいけど、亜人だから」

京楽は、猫の姿でキャットタワーの一番上で黒い尻尾を優雅に揺らす。

「なおーん(ああ、亜人って分かってるけどやっぱり素敵)」

京楽は、雌猫にもてまくりであった。

浮竹は、一匹寂しそうにキャットタワーの近くに白猫の姿で寝そべる。

「まぁ、みんなの気持ちは嬉しいんだけど、ボクは浮竹が好きだから」

「にゃああ(きゃっ!亜人だから、同性でもいけるのよね。禁断の恋ね!)」

「にゃあああ(浮竹が羨ましいわぁ)」

「おい、京楽!」

浮竹は立ち上がると、身軽にジャンプしてキャットタワーの上にいた京楽の隣にくる。

「ボクは嘘はいってないよ。君が好きだよ、浮竹」

「皆の前で・・・・・・・恥ずかしいから、やめろ」

「君は?君は、ボクのこと好き?嫌い?」

「好き嫌いで言うなら、好きだ」

「やったぁ!」

京楽がキャットタワーから飛び降りて、人の姿になると、同じく人の姿になった浮竹を抱きしめた。

「京楽、だが俺の身は汚れている」

「そんなことないよ。過去のことは忘れよう?」

「忘れようとしても、毎夜悪夢を見るんだ」

「じゃあ、白哉君に頼んで、いやな記憶は消してもらおう」

「そんなこと、できるのか?」

いつの間にか、白哉がやってきて、黒猫姿になった京楽を抱きあげる。

「私になら、可能だ。魔法で、人の記憶をいじることができる。だが、あまり多用はできない。使えるとしたら一度きりだぞ。どうする、浮竹?」

白哉は、美しい顔で白猫姿になった浮竹も抱き上げる。

「ああ‥‥お願い、しようかな」

「先に警告しておく。記憶は失うが、何かのきっかけで戻ってしまうこともある」

「それでもいい。起きる度に死にたい気分になるんだ。俺の記憶を消してくれ。京楽と出会ったところは残して」

「分かった」

白哉は何か呪文を唱えだすと、浮竹を抱き上げたまま、その猫の頭にキスをする。

「これで、おしまいだ」

「あれ、白哉?俺はどうしたんだ?確か、京楽に拾われて‥‥」

「浮竹、外に散歩に行こう?」

京楽が、猫の姿のまま散歩に出かけようと誘ってくる。

周囲の猫たちも、思い思いに外に出たり、餌を食べたり、寝ていたりしていた。

「分かった、外で遊ぼうか」

「京楽」

「分かっているよ。浮竹の記憶が戻りそうな場所には、行かない」

その言葉に、白哉は安心した。

「浮竹、兄は来たばかりで記憶の整理がついていないだけだ」

「でも、俺は前の自分のことを思い出せない。何故だろう?」

「ここに来る前、高熱を出してショックで記憶を失ったんだよ」

すかさず、京楽がフォローする。

「そうか。京楽、市場のほうへ遊びにいこう。魚屋で魚をかっぱらっていこう」

浮竹は、明るい顔でいたずらを思いついて、京楽と一緒に散歩がてら、市場に行って、それぞれ魚をくわえて逃げ出す。

「あちゃあ、やられた。朽木様のとこの猫か。あとでお代もらいにいかないと」

魚屋の店主は怒らなかった。

目立つ純金の首輪をしている2匹は、朽木家の猫として扱われる。

朽木家に出入りしている猫の全部が、純金の首輪をしていた。

何かいたずらを起こしたりしたら、その度に白哉が弁償した。

「なぁ、京楽。こんなことして、白哉が困るんじゃあ」

「いいのいいの。白哉は好きでボクらを飼っているんだから」

かすめてきた魚を食べながら、京楽が笑う。

純金の首輪をした猫を害した者は、鞭打ちの刑が待っているので、人間たちは純金の首輪をとろうともしない。

一度、昔に純金の首輪をとり、白哉の猫を殺した野盗の男は、両目を潰されて拷問にかけられた後、処刑されたので、誰ももう四大貴族の白哉の猫を粗末に扱う者はいない。

野良猫でも、白哉のものの証である純金の首輪をもっていたら、そこらの奴隷よりいい暮らしができた。

「にゃああ(おや、見ない顔だね)」

市場の近くに、老齢の猫がいた。純金の首輪をしていて、自分たちの仲間だと分かって浮竹はほっとする。京楽は、老齢の猫に毛づくろいをする。

「この前、白哉君のものになった京楽春水。こっちは、浮竹十四郎」

「にゃああ(おや、珍しい。白哉様が猫の亜人に首輪を与えるなんて)」

「やっぱり、分かるんだ?猫の亜人だって」

「にゃあ(猫族には分かるとも。もっとも、人間には区別できないであろうが)」

「白哉は、俺たちのことすぐ亜人だって分かったぞ?」

浮竹が首を傾げると、老齢の猫は笑った。

「にゃあにゃあ(それは、白哉様が猫神に愛されておいでだからだ。猫神様は、全ての猫、猫の亜人のはじまりとされてる故)」

京楽も浮竹も、猫神様など聞いたこともなくて、目をまくるしていた。

「猫神様‥‥‥どこにいけば、会えるんだ?」

「ちょっと、浮竹」

「にゃあにゃあ(猫神様は他の神々のように、神界におられる。元は白猫の亜人だったそうだ)」

「白猫の亜人‥‥‥俺と同じ存在か」

「にゃあああ(白猫の亜人は高貴だからな。その身を欲しがる者は多い。浮竹といったか。純金の首輪をしているからと、安堵してはいけないぞ。奴隷狩りにあうかもしれない」

奴隷という言葉に、浮竹は頭痛がして顔を顰めた。

「頭が、痛い」

「浮竹。じい、また今度話しにくるよ。今は浮竹の具合が悪いみたいだから」

「にゃあにゃあ(猫神様を祭る神社にでも行くといい。痛みも柔らぐだろう」

老齢の猫は、猫神様を祭っている神社の場所を教えてくれて、京楽は浮竹を連れてその神社までやってきた。

まさに猫神様は、猫に慕われてるのだろう。

たくさんの猫がいた。白哉の家にも猫が多かったが、その数倍はいた。

「あれ、新しい白哉さんとこの猫か。亜人だな。俺は阿散井恋次。白哉さんが好きで、白哉さんと将来結ばれる、赤猫の亜人だ」

「なんか痛いこと言ってる子がいるけど、無視しよう」

「ああ、そうだな」

恋次は、赤い毛並みを逆立てる。

「白哉さんに、一応は認められているんだからな。恋仲だって。俺は猫神様の神官だ」

「白哉と本当にできているのかな?」

「さぁ、どうだろう」

浮竹と京楽は、たくさんの猫に挨拶して、白哉の家に帰宅する。

「白哉、阿散井恋次という赤猫が‥‥‥‥」

「れ、恋次のことはあまり話したくない」

白哉は、白皙の美貌を赤くして、浮竹を抱き上げる。

「記憶は、しっかりしているか?」

「ああ。大丈夫だ」

「京楽もついているのだ。まぁ心配あるまい」

「俺の記憶がなんなんだ?」

「いや、なんでもない。さぁ、夕餉の時刻だ。浮竹と京楽は猫のままキャットフードを食べるか?それとも人になって、人の食事をするか?」

「「もちろん人の食事で」」

二人の声ははもって、浮竹と京楽は顔を見合わせてから、人の姿になって笑うのであった。




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黒猫と白猫の亜人1

京楽は、黒猫の亜人だった。浮竹は、白猫の亜人だった。

普段は人の姿をしているが、猫にもなれた。

京楽は、金持ちの家の猫として飼われていた。ただの猫として。

浮竹は、その美しさのせいで奴隷で、飼われている主人から性的虐待を受けていた。それを見た京楽は、怒って浮竹の主の目を潰してしまった。

「ごめんなさいね。もう、あなたを飼えないの。あのお方は貴族であられる方だから」

京楽の主は、京楽を捨てた。

せめてもと、人の姿になった京楽に金貨をもたせた。

京楽は、その金で浮竹を買った。

「お前が、次の俺の主か?」

浮竹は、暗い目をしていた。この世に希望なんてどこにもない。そんな目をしていた。

「ボクは、君を自由にする」

「え?」

浮竹は、汚されていたのに、真っ新のように綺麗だった。

京楽は、浮竹の奴隷の証である首輪をとり、飼い猫の証である首輪をはめた。

「これで、君は誰かが飼っている猫だよ。でも、自由だよ」

「お前の名は?」

「京楽春水」

「俺の名は、浮竹十四郎」

「そう」

「お前は、俺の新しい主じゃないのか。自由と言われても、どこへ行けばいいのか分からない」

京楽は、黒猫姿で、白猫姿になった浮竹に、ついてこいという。

「ここ」

「ん?」

「ここは、四大貴族の朽木白哉って子の家。ここでは、ボクたちのような自由な猫が出入りしている。ここで、過ごすといい。ボクも、今この家で世話になっているよ」

「おや、京楽殿。また、新しい猫を連れてきたのですか?」

「うん。白猫の亜人の浮竹。ボクと一緒に、白哉君の家にいていいかな?」

「兄様は拒まないでしょう。ああ、浮竹殿といったか。白猫なのに、毛皮が灰色になっている。お風呂に、入りましょう」

相手が少女だったので、浮竹は猫の姿で洗ってもらった。

ちゃんと、猫用のシャンプーだった。

「ああ、綺麗な毛並みですね。この首輪、京楽殿が与えたのですか?」

「うん、そうだよ」

「こんな綺麗な白猫の亜人だと、また奴隷にされてしまうかもしれない。兄様の刻印の入った首輪に変えましょう」

猫の時でも、亜人の時でもはめっぱなしでいられる、高い魔法の首輪を浮竹はしてもらった。

「京楽殿も、野良だと奴隷狩りにあってしまう。念のため、兄様の刻印入りの首輪をしておきましょう」

「ありがとね、ルキアちゃん」

その少女は、朽木ルキアといって、朽木白哉、つまりは形式上では浮竹と京楽の主である青年の義妹であった。

白哉とは血がつながっておらず、死んでしまった緋真という妻の妹だった。

「あ、白哉君だ」

「え、どこだ?」

遠くから、やたら綺麗な青年がやってくる。

「白哉君、新しい仲間の浮竹だよ」

「京楽、兄はまた猫を連れてきたのか。亜人だな」

「うん。ボクと一緒」

亜人の猫は、京楽と浮竹だけだった。

白哉の家にはたくさんの猫がいたが、ただの猫だった。

京楽はその輪の中にまじる。浮竹も、とまどいながらその輪の中に入っていく。

猫の言葉を、京楽と浮竹は理解できた。

なんでも、また白哉にお見合いの話が出ているらしい。白哉の家の猫たちは、半分が基本野良猫で、餌をもらう時だけやってきたり、休みたい時にやってきたりした。

京楽と浮竹も、半分野良として白哉の家に厄介になるのであった。



「にゃあにゃあ」

ああ、泣いている。

これは俺。

俺の、悲しい記憶。

浮竹は夢を見ていた。

「にゃあああ」

高貴な身分の白猫の亜人の母が、暴漢に犯されてできた子。

それが、浮竹だった。

母は浮竹のことを幼い頃から虐待し、父である立場の者は、美しく成長していく浮竹に欲をもち、ついに父から犯され、何をされたのか分かっていない浮竹を見て、母は切れて浮竹を奴隷として売ってしまった。

いきつく先は地獄。

男娼として、扱われた。

それから、浮竹を欲しがる貴族の男が出てきて、浮竹は売られていった。

新しい家で、主は浮竹が人の姿をとると犯した。

それが嫌でずっと猫の姿でいると、折檻された。

そんな世界から、浮竹を救ってくれたのは、黒猫であるが同じ猫の亜人の京楽だった。

ああ。

また、俺はいつか捨てられるのだろうか。

そんな涙を流す浮竹を、京楽はぺろぺろ舐めた、

「安心して。ここは、穏やかなところだから。君をいじめるやつがいたら、ボクがやっつけてやるから」

浮竹は、初めて自分以外を好きになった。京楽を。

京楽は、浮竹を一目見た時から恋に落ちていた。

「白哉?」

「ああ、浮竹か」

「どこにいくんだ?」

「少し、夜の散歩を。兄もくるか?」

「うん」

白哉と早く仲良くなりたくて、浮竹は白哉の近くで過ごした。そのすぐ近くには、いつも京楽がいて、穏やかな顔で、浮竹を見つめるのであった。



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ドラゴン族の子とミミック18

浮竹と京楽は、Sランク昇格試験を受けれるまで成長して、Sランク試験を受けた。

苦労したが、無事Sランクになれた。

「先生のおかげです」

『お前と竜人の京楽が優秀だからだ』

Sランクの浮竹‥‥‥先輩の浮竹は、竜人である浮竹をねぎらう。

「はぁ。これで、ボクらもはれてSランク冒険者としてやっていけるね」

『慢心はだめだよ?君たちは、まだまだ伸びる。冒険者をしながら、成長していくといい』

霊刀の京楽の言葉に、浮竹と京楽も頷く。

「とりあえず、Sランク昇格祝いにミミック牧場でパーティーだ!」

「お。いいねぇ」



Sランクへの昇格試験は、2日にわたって行われた。1日目は筆記試験、2日目は擬似クエストにて擬似ドラゴン討伐だった。

筆記試験は問題なく通った。

2日目の疑似ドラゴン退治は、すでに何度かドラゴンを葬ってきた浮竹と京楽の手にかかれば、問題なく倒せた。

「アルティメットノヴァ!」

浮竹の禁忌の魔法の一撃だけで、疑似ドラゴンは跡形もなく消滅してしまった。

『おめでとう、合格だよ』

先輩の浮竹からそう言われて、浮竹と京楽は顔を見合わせあって、ハイタッチをする。

「先生、今までありがとうごいました」

『ふふ、今度はボクと霊刀の京楽と一緒に、Sランクダンジョンに挑もう?』

「はい!」

「そうこなくっちゃ」

かくして二人はSランクになり、ミミック牧場でパーティーを開いた。

酒がふるまわれたが、ミミックたちには害があるので、少ししかのまさなかったが、ミミックたちも酒が少しだけ飲めて喜んでいた。

「ほら、霊刀のボクももっと飲んで」

『十分飲んでるんだけど』

『竜人の浮竹は酔いつぶれたな』

「ああ、浮竹、牧場のど真ん中で寝ないで!」

「きしきしきし」

浮竹を守るように、黄金ミミックのポチがついていた。

「ああ。ホクたち、ほんとにSランクになれたんだね。夢みたい」

うーんとうなりながら、浮竹が起きる。

「いつか、里の者に名が知れ渡るような、そんなSランクになろう」

「うん、そうだね」

里を追い出した竜人族も認めざるを得ないSランク冒険者となって、浮竹と京楽は里に一時だけ帰還する。

浮竹はホーリードラゴンになれるようになっていて、京楽はダークドラゴンになっても暴走せず、自我を保てるようになっていた。

「ボクらを認めてくれるかな。竜人族として」

「いたしかたあるまい」

竜人族の長老は何か言いたげであったが、ここ数年で名を聞くようになった、里を追い出した竜人である浮竹と京楽の帰還を、仕方あるまいと受け入れた。

「まぁ、認められなくてもいいんだけどね。父さん、母さん、ただいま。そしてばいばい」

「春水!」

「なぁに?今更、両親としてボクに何かを求めるの?」

「父様、母様‥‥‥」

「ち、近寄るな。お前は、俺たちの子じゃない」

浮竹は、両親に拒絶されて、やっぱりかという顔をする。

「浮竹、行こう。ここは、ボクらの家にはなりえない」

「そうだな」

ドラゴン化した浮竹と京楽は、翼を広げて里を去っていく。

「やっぱり、ボクらの家はミミック牧場のある、あの一軒家だね」

「ああ」

Sランクとなった浮竹と京楽は、まだ誰もクリアしたことのない未開のSランクダンジョンを踏破して、その名をさらに高めるのであった。


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好き。最終章

二人で、旅行にきていた。

ホテルはそれなりに高級なところを選んだ。

一泊二日の旅行だった。

まずは近くの遊園地で遊んだ。ジェットコースターやらの絶叫系のやつに挑んで、ルキアは喜んでいたが、一護はぐったりしていた。

そのぐったりを直すためにと、お化け屋敷に入ると、今度はルキアがぐったりしていた。

「お前、死神のくせにお化け怖いのな?」

「う、うるさい。妖怪とか、存在しないものは怖いのだ]

「本物の霊とかはいけるのにな?不思議だ・・・・・・・・・」

その日の2時頃まで遊園地で遊んで、3時頃からホテルにチェックインして、水着に着替えて室内プールで遊んだ。

イカ焼きを一護が買ってくると、ルキアは焼きそばがいいと言って、一護の手を焼かす。

「ひゃほいいいいいい」

「うきゃあああああああああ」

ウォータースライダーを滑り落ちる。

ルキアが顔面蒼白になった。どうしたのかと、一護が聞くと、ルキアは今度は赤くなった。

「む、胸の水着が流された」

「お前の絶壁の胸‥‥‥あべし」

拳で殴られて、一護は周辺を捜索して、ルキアの胸の水着を見つけて、胸を隠しているルキアに渡す。

「絶壁で悪かったな」

「いや、俺貧乳派だから」

「貴様、何気に危ないやつだったのか」

「ルキアが好きなだけだ」

そのまま夜まで遊び、レストランで夕飯をとって、部屋に戻ると、ルキアが真っ赤になった。

つられて、一護まで真っ赤になる。

「その‥‥‥抱いて、いいか?」

「いちいち、聞くな」

ルキアを抱き寄せて、ベッドに押し倒す。

「俺、初めてだから、その、痛かったら言ってくれ」

「たわけ、私も初めてだ」

一護は、ルキアに口づけた。いつもの触れるだけのではなく、ディープキスだった。

「んあっ」

「声、もっと出してくれ」

一護は、ルキアの衣服を脱がしていく。

「あ、貴様も脱げ」

下着姿のルキアは、やや幼い下着を身に着けていて、一護は自分が犯罪者になるような気分を少しだけ味わう。

「その、触るぞ?」

「いちいち、許可をとらんでいい」

「分かった」

一護は、ルキアの細い肢体を抱き寄せて、全身を愛撫する。

「ああっ」

とろとろになるまで、愛した。

「んあっ」

ルキアが甘い声をあげるたびに、一護は動く。

ルキアは処女膜を破られたせいで、太ももから血が伝い落ちる。

「痛いか?やめようか?」

「痛くない。もっと、貴様をくれ。私の中に刻み込め」

一護は、ルキアを時間をかけてゆっくりと抱いた。

ルキアが快感を得て、ぐずぐずになるまで抱いた。

「もう、無理‥‥」

「俺も、もう限界だ」

一護とルキアは、結ばれた。一つになって溶けた。

朝起きて、一護はルキアと一緒にシャワーを浴びる。

ルキアと一護の初めては、そうして終わった。



それから、4年の歳月が流れた。

ルキアは、尸魂界の朽木家で、白無垢姿で頭だけウェディングヴェールを被って、白哉につきそわれて、和服で正装している一護の元にくる。

誓いの言葉を言い合い、結婚指輪を交換して、キスをした。

酒も飲みかわし合った。

西洋の結婚式も取り入れた、結婚式だった。

「ルキア。幸せか?」

「当り前だ」

ルキアは、ウェディングブーケを投げた。

それは、尸魂界まで見にきていた井上の手に落ちた。

「朽木さん、すごく綺麗だよ」

「ありがとう、井上」

恋次は大泣きしていた。

一護は、ルキアを伴って歩く。緋真の形見だったアメジストの髪飾りが、しゃらりと音を出す。

一護は、本当の死神になるために、12番隊に赴いた。

ルキアの元に帰ってきた時、一護はもう人間ではなく、死神であった。

「ルキア、幸せになろう」

「ああ」

二人は、触れ合うだけの口づけを交わす。

一歩一歩。

ここから、ルキアと一護の新しい人生が始まる。

それは、好き。という感情からきたもの。

ルキアが一護のことが好きで、一護がルキアのことを好きで。

付き合いだし、恋人同士になり、婚約し、共に同じ時間を過ごし、結婚して。

ちなみに、大学は結局、尸魂界の朽木家から通っていた。一護が、尸魂界にくることを選んだのだ。

二人は、新しい一歩を踏み出していく。

人生という名の、新しい門出を。





             好き。 fin

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