院生時代の部屋36 アホとプールとポロリと
「プールへ行こう!この間、新しくできた温水プールのレジャー施設のチケットが数枚あるんだよ!」
「へぇ、いいな」
「なぁなぁ、女子も誘っていこうぜ」
「ポロリもあるかもか!?」
京楽は、チケットをとっていく友人たちにもまれながら、ひたすら浮竹を見ていた。
「どう、浮竹も行かない?」
「俺はいい」
「じゃあ、プールは中止ね」
京楽が、チケットを回収していく。
「そりゃねーだろ」
「だめだぞ、変態京楽は浮竹が来ない限り行きそうにもないぞ」
「浮竹、頼む俺たちのための生贄になってくれ!」
「浮竹、頼むよ」
「俺、もうプール一緒に行こうって彼女誘っちゃったんだ」
「俺は・・・・・・・」
はぁ。溜息を零す。常に周囲にいる友人のほとんどが集まって、浮竹にプールに来いと懇願しだした。
「分かった、行くから。それでいいんだろう?」
ニヤリ。
京楽は、明らかにほくそ笑んだ。
何を考えているのか、大体の察しはついた。
そして、プールに行く日になった。
浮竹は、水着をもっていなかったので、新しく通販で買った。それと同じ水着を、京楽も買った。
はっきりいって、色も柄も一緒でややこしかった。
浮竹はあまり泳ぎが得意でないので、浮輪も買った。
「さぁ、いざバカンスへ!」
浮竹の手をとり、私服でサングラスをかけた京楽は、そこらの柄の悪い若者に見えた。ハーフパンツは目に痛い蛍光ピンク。シャツはど派手なアロハ柄。
いやでも人目を引いた。
「はぁ・・・・・」
その日何回目に分からないため息を零して、浮竹は温水プールまで京楽や友達たちとやってきた。
「早速、着換えにいこう浮竹!」
浮竹の手をとって、男性更衣室へ行く。
京楽はすぐにすっぽんぽんになった。
フルチンの京楽は、隙をついて自分の水着と浮竹の水着を交換した。
「あ、忘れ物をした」
そう浮竹が言って、京楽の視線を外した時に水着は元に戻された。
それを着用する。京楽は、自分の水着は浮竹のものだと思っていた。そして細工を加えた水着は浮竹が着ているものと思い込んでいた。
浮竹は、腰にバスタオルを巻いて、変態京楽に見られないように着替えた。
「ぐほっ」
上半身が裸というだけで、すでに昇天しつつあったが、なんとか気力を振り絞って、浮竹の手をとって温水プールに入った。
「きゃははははは」
「やーん」
女性の友人たちの、露わな肌に、浮竹の視線がいく。
「浮竹は、僕だけを見ていればいいんだよ」
さっと視界を京楽で塞がれる。
「何が悲しくて、京楽と泳がねばならんのだ」
浮輪をつけて、京楽を無視してバシャバシャ泳ぎだした。
「ああん、待ってマイスウィートハニー」
その後を、スイスイと泳いで京楽がついてくる。
「今日の京楽、けっこう普通だな」
「ああ。もっと変態行為に出ると思っていたんだが」
友人たちが、こそこそと会話をしだす。
「浮竹、あのウォータースライダーに乗ろう」
「何が悲しくて、京楽とウォータースライダーに・・・・・・」
ぶつぶつ文句を言っていたが、京楽に手を引っ張られるままに、ウォータースライダーの入口まで昇る。
「ひゃっほう!浮竹のポロリがあるよ!」
滑っている途中に、やっぱりこいつと、浮竹は溜息を零した。
ザッパーン。
ぷーるにつくころには、京楽の水着が破けてポロリしていた。
「ええ!?なんで僕の水着がポロリと!?浮竹の水着に細工した僕の水着を着せたはずなのに!」
「そうだと思って、隙を見て再度交換しておいたんだ」
ポロリと露出した京楽の水着は、破けてすでに水着の原型を留めていなかった。
フルチンになった京楽は、前を隠すが、悲鳴があがる。
「きゃあああああああ!変態があああああ!」
「いやあああああ、変質者よおおおお!」
「ポロリしてる!裸よーーー!」
見回りにきていた警備員がやってきて、京楽は捕まった。腰にバスタオルを巻かれて。
浮竹は安堵する。やっぱり水着が交換された時点で、交換しなおしておいて正解だったと。
交換しなかったら、今頃ポロリをしていたのは浮竹だったろう。
ちなみに、浮竹にすごく助けを求めにきていた。
「彼の友人なんだ!水着は手違いなんだ」
「こんなことを、露出の容疑者は言っていますが、彼の友人ですか?」
「いえ、違います」
きっぱりそう言ってやった。
「NO~~~~~!!!」
京楽が連行されていく。
それを見ていた男女の友人が。
「やっぱり出たか、京楽の変態が」
「浮竹君、庇わないのね。でもそこが素敵」
「浮竹、身柄引き取り人になってくれよ?」
「京楽もばかだなぁ。レジャー施設でポロリ作戦だなんて・・・・」
結局、着替えた浮竹は、こってりとしぼられた京楽を迎えに行った。
「これに懲りたら、外でアホな真似はしないことだ」
「はい・・・・・」
しゅんとなって、項垂れた京楽の頭を撫でてやった。
尻尾を振る犬に見えた。京楽が。
触れるだけのキスをすると、すぐに京楽はいつも通りの変態京楽に戻った。
「もっとキスして!あそこにしてもいいんだよ!」
「調子に乗るな」
けつを蹴りあげておいた。
「けつがもげるーーーーー」
一昨日も昨日も、変態京楽だった。今日だけがまともとか、あり得るはずがないと思っていたが、やはり正しかった。
今日も浮竹は頭痛を抱える。
京楽が、次にどんな変態行為に出るか警戒しながら、一日は終わっていくのだった。
「へぇ、いいな」
「なぁなぁ、女子も誘っていこうぜ」
「ポロリもあるかもか!?」
京楽は、チケットをとっていく友人たちにもまれながら、ひたすら浮竹を見ていた。
「どう、浮竹も行かない?」
「俺はいい」
「じゃあ、プールは中止ね」
京楽が、チケットを回収していく。
「そりゃねーだろ」
「だめだぞ、変態京楽は浮竹が来ない限り行きそうにもないぞ」
「浮竹、頼む俺たちのための生贄になってくれ!」
「浮竹、頼むよ」
「俺、もうプール一緒に行こうって彼女誘っちゃったんだ」
「俺は・・・・・・・」
はぁ。溜息を零す。常に周囲にいる友人のほとんどが集まって、浮竹にプールに来いと懇願しだした。
「分かった、行くから。それでいいんだろう?」
ニヤリ。
京楽は、明らかにほくそ笑んだ。
何を考えているのか、大体の察しはついた。
そして、プールに行く日になった。
浮竹は、水着をもっていなかったので、新しく通販で買った。それと同じ水着を、京楽も買った。
はっきりいって、色も柄も一緒でややこしかった。
浮竹はあまり泳ぎが得意でないので、浮輪も買った。
「さぁ、いざバカンスへ!」
浮竹の手をとり、私服でサングラスをかけた京楽は、そこらの柄の悪い若者に見えた。ハーフパンツは目に痛い蛍光ピンク。シャツはど派手なアロハ柄。
いやでも人目を引いた。
「はぁ・・・・・」
その日何回目に分からないため息を零して、浮竹は温水プールまで京楽や友達たちとやってきた。
「早速、着換えにいこう浮竹!」
浮竹の手をとって、男性更衣室へ行く。
京楽はすぐにすっぽんぽんになった。
フルチンの京楽は、隙をついて自分の水着と浮竹の水着を交換した。
「あ、忘れ物をした」
そう浮竹が言って、京楽の視線を外した時に水着は元に戻された。
それを着用する。京楽は、自分の水着は浮竹のものだと思っていた。そして細工を加えた水着は浮竹が着ているものと思い込んでいた。
浮竹は、腰にバスタオルを巻いて、変態京楽に見られないように着替えた。
「ぐほっ」
上半身が裸というだけで、すでに昇天しつつあったが、なんとか気力を振り絞って、浮竹の手をとって温水プールに入った。
「きゃははははは」
「やーん」
女性の友人たちの、露わな肌に、浮竹の視線がいく。
「浮竹は、僕だけを見ていればいいんだよ」
さっと視界を京楽で塞がれる。
「何が悲しくて、京楽と泳がねばならんのだ」
浮輪をつけて、京楽を無視してバシャバシャ泳ぎだした。
「ああん、待ってマイスウィートハニー」
その後を、スイスイと泳いで京楽がついてくる。
「今日の京楽、けっこう普通だな」
「ああ。もっと変態行為に出ると思っていたんだが」
友人たちが、こそこそと会話をしだす。
「浮竹、あのウォータースライダーに乗ろう」
「何が悲しくて、京楽とウォータースライダーに・・・・・・」
ぶつぶつ文句を言っていたが、京楽に手を引っ張られるままに、ウォータースライダーの入口まで昇る。
「ひゃっほう!浮竹のポロリがあるよ!」
滑っている途中に、やっぱりこいつと、浮竹は溜息を零した。
ザッパーン。
ぷーるにつくころには、京楽の水着が破けてポロリしていた。
「ええ!?なんで僕の水着がポロリと!?浮竹の水着に細工した僕の水着を着せたはずなのに!」
「そうだと思って、隙を見て再度交換しておいたんだ」
ポロリと露出した京楽の水着は、破けてすでに水着の原型を留めていなかった。
フルチンになった京楽は、前を隠すが、悲鳴があがる。
「きゃあああああああ!変態があああああ!」
「いやあああああ、変質者よおおおお!」
「ポロリしてる!裸よーーー!」
見回りにきていた警備員がやってきて、京楽は捕まった。腰にバスタオルを巻かれて。
浮竹は安堵する。やっぱり水着が交換された時点で、交換しなおしておいて正解だったと。
交換しなかったら、今頃ポロリをしていたのは浮竹だったろう。
ちなみに、浮竹にすごく助けを求めにきていた。
「彼の友人なんだ!水着は手違いなんだ」
「こんなことを、露出の容疑者は言っていますが、彼の友人ですか?」
「いえ、違います」
きっぱりそう言ってやった。
「NO~~~~~!!!」
京楽が連行されていく。
それを見ていた男女の友人が。
「やっぱり出たか、京楽の変態が」
「浮竹君、庇わないのね。でもそこが素敵」
「浮竹、身柄引き取り人になってくれよ?」
「京楽もばかだなぁ。レジャー施設でポロリ作戦だなんて・・・・」
結局、着替えた浮竹は、こってりとしぼられた京楽を迎えに行った。
「これに懲りたら、外でアホな真似はしないことだ」
「はい・・・・・」
しゅんとなって、項垂れた京楽の頭を撫でてやった。
尻尾を振る犬に見えた。京楽が。
触れるだけのキスをすると、すぐに京楽はいつも通りの変態京楽に戻った。
「もっとキスして!あそこにしてもいいんだよ!」
「調子に乗るな」
けつを蹴りあげておいた。
「けつがもげるーーーーー」
一昨日も昨日も、変態京楽だった。今日だけがまともとか、あり得るはずがないと思っていたが、やはり正しかった。
今日も浮竹は頭痛を抱える。
京楽が、次にどんな変態行為に出るか警戒しながら、一日は終わっていくのだった。
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ポッキーゲーム
「好きだよ」
「俺も好きだ」
「愛してるよ」
「俺も愛してる」
抱き締めあい、キスをする。
愛を囁くのはいい。問題は場所だった。
ここは10番隊執務室。つまりは日番谷の仕事部屋だった。
「お前らなぁ、愛を確かめ合うのはいいが、他所でやれ」
「気にするな、日番谷隊長!」
「思いっきり気になるわぼけ!」
「日番谷隊長。ポッキーをあげよう。雛森副隊長とポッキーゲームをするといい」
そう言って、浮竹はポッキーを懐から出した。
「ポッキーは現世のお菓子だろ。なんだ、ポッキーゲームって」
「こうやって」
浮竹が、ポッキーを銜える。その先を、京楽が銜えた。ポリポリと食べあって、最後はキスになった。
「こうする、ゲームだ」
「んなこと雛森とできるわけないだろう!蒼天に座せ氷輪丸!・・・あれ?氷輪丸?」
浮竹と京楽を見ると、ニヤリと笑っていた。
「お前らか!お前らの仕業か!」
「何、ちょっと範囲結界をね」
「俺は、反対したんだがな・・・・・」
でも、言葉のわりには浮竹も楽しそうであった。
構築するには数日の期間がいる。それをわざわざ日番谷の10番隊執務室で、本人に気づかれないように展開するには骨が折れた。
わざわざそんなことしなくてもいいだろうと、浮竹も京楽も思ったけど、いつも氷輪丸を向けられるので、たまにはいいかとほくそ笑みながら結界を作った。
「いやあ、いい顔するねぇ日番谷隊長!」
京楽が、ざまぁみろと言いたそうな顔をしていた。
「始解と卍解させ封じてしまえば、日番谷隊長は恐るるに足りない。ただのお子様だ」
京楽のものいいに、カチンときて抜刀したままの氷輪丸で切りかかった。
「たとえ始解や卍解ができなくとも、お前みたいなおっさん!」
京楽と日番谷は、何度も切り結びあったが、体格で不利の日番谷が圧され気味になりだした。
「京楽も日番谷隊長も、まぁ落ち着け」
一人、浮竹が勝手にお茶をいれて茶菓子を食べていた。
「浮竹、お前も一枚かんでいるんだろ!」
「まぁまぁ」
「全く、こんな時に限って松本はいねぇし」
「乱菊ちゃんがいたならいたで面白いけど、日番谷隊長を単独でからかうにはやっぱり結界くらいないとねぇ」
「からかうためだけに、こんな大がかりな結界を作ったのか」
「そうだよ。僕たち、けっこう暇人だから」
「暇人すぎるだろ!」
「否定はしないな」
浮竹が、お茶菓子のわかめ大使の足を食べていた。
「浮竹、ポッキーゲームするぞ。お前と」
「ええっ、日番谷隊長!?」
京楽が慌てだす。
「俺は別に構わないが・・・・いいのか、日番谷隊長」
「誰かさんをぎゃふんと言わせるには、これに限る」
日番谷がポッキーを銜えた。その端を、浮竹が銜える。
ポリポリポリ。
「だめだよ!」
途中で邪魔をされて、ポッキーが折れた。
「ふふふ。京楽の最大の弱点、見つけたり」
「ん?」
浮竹は何も分かっていないようだった。
日番谷は、浮竹の白い髪を手にとって口づけた。
「ぬあああああ、お子様の分際で!」
「なんだと、このおっさんの分際で!」
「このまだあそこに毛も生えてないようなガキンチョのくせに!」
「けつ毛がボーボーで、あそこの毛と臍から下のギャランドゥが濃いおっさんが!」
お互い霊圧を極限にまで高めあっていると、結界が耐えきれなくなってパリンと割れた音がした。
「ガキンチョ!」
「くそおっさん!」
二人は言い争いを続ける。
そして、結界が壊れたことに気付いた日番谷が、京楽に氷輪丸を向けた。
「卍解!大紅蓮氷輪丸!」
結界で邪魔されて放てなかった分の霊圧を極限にまでの濃縮した一撃が、京楽に襲いかかる。
「なんの!」
瞬歩で交わすが、浮竹のことを失念していた。
「危ない、浮竹!」
浮竹は、日番谷にひっぱられて、宙にいた。
「返してほしければこっちまでこい」
「このガキンチョめ!」
京楽が高く跳躍すると、そこに巨大な氷の龍が現れた。
「のああああああああああ!」
どんがらがっしゃん。ひゅるるるるるーーー。
氷の龍の一撃を受けて、彼方にまで飛んでいく京楽。
「あ、おい京楽。何楽しそうなことしてるんだ!」
浮竹には、加減した氷の龍がぶつかってきた。
「ぬあああああああああ!」
ひゅるるるるるーーーー。
二人とも飛んでいったのを確認して、卍解を解いて氷輪丸を鞘にしまう。
執務室は、全壊だった。
「またやっちまった・・・・・・」
床に、ポッキーがまだ入った箱が落ちていた。
「ポッキーゲームか・・・・・」
後日、ポッキーゲームをする日番谷と雛森の姿があったという。
「俺も好きだ」
「愛してるよ」
「俺も愛してる」
抱き締めあい、キスをする。
愛を囁くのはいい。問題は場所だった。
ここは10番隊執務室。つまりは日番谷の仕事部屋だった。
「お前らなぁ、愛を確かめ合うのはいいが、他所でやれ」
「気にするな、日番谷隊長!」
「思いっきり気になるわぼけ!」
「日番谷隊長。ポッキーをあげよう。雛森副隊長とポッキーゲームをするといい」
そう言って、浮竹はポッキーを懐から出した。
「ポッキーは現世のお菓子だろ。なんだ、ポッキーゲームって」
「こうやって」
浮竹が、ポッキーを銜える。その先を、京楽が銜えた。ポリポリと食べあって、最後はキスになった。
「こうする、ゲームだ」
「んなこと雛森とできるわけないだろう!蒼天に座せ氷輪丸!・・・あれ?氷輪丸?」
浮竹と京楽を見ると、ニヤリと笑っていた。
「お前らか!お前らの仕業か!」
「何、ちょっと範囲結界をね」
「俺は、反対したんだがな・・・・・」
でも、言葉のわりには浮竹も楽しそうであった。
構築するには数日の期間がいる。それをわざわざ日番谷の10番隊執務室で、本人に気づかれないように展開するには骨が折れた。
わざわざそんなことしなくてもいいだろうと、浮竹も京楽も思ったけど、いつも氷輪丸を向けられるので、たまにはいいかとほくそ笑みながら結界を作った。
「いやあ、いい顔するねぇ日番谷隊長!」
京楽が、ざまぁみろと言いたそうな顔をしていた。
「始解と卍解させ封じてしまえば、日番谷隊長は恐るるに足りない。ただのお子様だ」
京楽のものいいに、カチンときて抜刀したままの氷輪丸で切りかかった。
「たとえ始解や卍解ができなくとも、お前みたいなおっさん!」
京楽と日番谷は、何度も切り結びあったが、体格で不利の日番谷が圧され気味になりだした。
「京楽も日番谷隊長も、まぁ落ち着け」
一人、浮竹が勝手にお茶をいれて茶菓子を食べていた。
「浮竹、お前も一枚かんでいるんだろ!」
「まぁまぁ」
「全く、こんな時に限って松本はいねぇし」
「乱菊ちゃんがいたならいたで面白いけど、日番谷隊長を単独でからかうにはやっぱり結界くらいないとねぇ」
「からかうためだけに、こんな大がかりな結界を作ったのか」
「そうだよ。僕たち、けっこう暇人だから」
「暇人すぎるだろ!」
「否定はしないな」
浮竹が、お茶菓子のわかめ大使の足を食べていた。
「浮竹、ポッキーゲームするぞ。お前と」
「ええっ、日番谷隊長!?」
京楽が慌てだす。
「俺は別に構わないが・・・・いいのか、日番谷隊長」
「誰かさんをぎゃふんと言わせるには、これに限る」
日番谷がポッキーを銜えた。その端を、浮竹が銜える。
ポリポリポリ。
「だめだよ!」
途中で邪魔をされて、ポッキーが折れた。
「ふふふ。京楽の最大の弱点、見つけたり」
「ん?」
浮竹は何も分かっていないようだった。
日番谷は、浮竹の白い髪を手にとって口づけた。
「ぬあああああ、お子様の分際で!」
「なんだと、このおっさんの分際で!」
「このまだあそこに毛も生えてないようなガキンチョのくせに!」
「けつ毛がボーボーで、あそこの毛と臍から下のギャランドゥが濃いおっさんが!」
お互い霊圧を極限にまで高めあっていると、結界が耐えきれなくなってパリンと割れた音がした。
「ガキンチョ!」
「くそおっさん!」
二人は言い争いを続ける。
そして、結界が壊れたことに気付いた日番谷が、京楽に氷輪丸を向けた。
「卍解!大紅蓮氷輪丸!」
結界で邪魔されて放てなかった分の霊圧を極限にまでの濃縮した一撃が、京楽に襲いかかる。
「なんの!」
瞬歩で交わすが、浮竹のことを失念していた。
「危ない、浮竹!」
浮竹は、日番谷にひっぱられて、宙にいた。
「返してほしければこっちまでこい」
「このガキンチョめ!」
京楽が高く跳躍すると、そこに巨大な氷の龍が現れた。
「のああああああああああ!」
どんがらがっしゃん。ひゅるるるるるーーー。
氷の龍の一撃を受けて、彼方にまで飛んでいく京楽。
「あ、おい京楽。何楽しそうなことしてるんだ!」
浮竹には、加減した氷の龍がぶつかってきた。
「ぬあああああああああ!」
ひゅるるるるるーーーー。
二人とも飛んでいったのを確認して、卍解を解いて氷輪丸を鞘にしまう。
執務室は、全壊だった。
「またやっちまった・・・・・・」
床に、ポッキーがまだ入った箱が落ちていた。
「ポッキーゲームか・・・・・」
後日、ポッキーゲームをする日番谷と雛森の姿があったという。
花街恋話4
花街に売られて、4か月が経った。
京楽は相変わらず週2くらいのペースで浮竹を買っていく。椿が荒れ狂って浮竹に手を出すので、仕方なく京楽は椿を前のように2週間に一度くらいの頻度で買った。
ある日、花街の外で祭りがあった。
浮竹はとても行きたそうにしていたが、足抜け防止のために遊女や色子が花街を抜けることはできなかった。通行手形がいるのだ。
「京楽、我儘をいっていいか?」
「どうしたんだい」
「花街の外の祭りに行ってみたい」
「祭りに興味があるのかい?」
「幼い頃、父上と母上に連れて行ってもらった」
昔を懐かしんでいるのだ。
「いいよ。通行手形を作ってもらおう。一人では花街の外には出れないけど、僕と一緒なら出れるから」
その日、早速通行手形を作ってもらい、花街の外に出かけた。
「わあ・・・・・」
人の多さに、驚かされた。
花街も人でに賑わっていたが、それの数倍は人がいた。
小遣いをもらい、好きな屋台で好きなものを買った。
林檎飴ばかり買う浮竹に、京楽が苦笑する。
「そんなに林檎飴ばかり買わなくても、林檎飴くらい廓にもっていってあげるよ」
「本当か!」
浮竹が顔を輝かせた。
京楽は、焼そばを二人前買った。浮竹に与えて、昼餉ということにした。
「今だけ、俺は自由だ」
浮竹のはしゃぎ具合に、定期的に外に連れ出してあげようという気になる。
綿あめをお土産に買ってもらい、輪投げ、ビンゴ、金魚すくいをした。
金魚を持って帰るかと聞かれて、少し悲しそうに首を横に振る。
「廓では、勝手に生き物をかっちゃいけないんだ」
「僕が、廓の主人に話しをつけてあげるから」
「いいのか?」
「ああ、勿論だよ」
「やった!」
浮竹は、2匹の金魚を入れてもらい、それを手首にぶら下げて、歩き出す。
こうしてみていれば、また育ち盛りの普通の子供に見えた。
着ている服が女もののせいであるのと、浮竹本来の容姿が美しく整っているせいで、どうみても少女に見えた。
13歳。
それは微妙な年だった。
大人というには幼過ぎて。子供というには少し大きすぎて。
最初、廓にきたときは酷く痩せていて、あばら骨が浮いていた体も、食生活が改善されて、細いがしなやかな筋肉がつくようになった。
「京楽、こっちだ」
お面を売っている屋台で、狐のお面を買う浮竹。京楽の分も買って、お揃いにした。
狐のお面を被った浮竹は、はしゃいでいた。
フランクフルトを食べながら歩いていると、柄の悪そうな若者にぶつかった。
「ああ、嬢ちゃん何してくれてんだ。俺様の服が汚れただろうが!」
「す、すまない」
「はぁ?金だせや金。服が台無しになっちまった」
京楽が何か言う前に、浮竹はもっていた所持金を見せる。子供がもつ額には多すぎて、柄の悪い若者はにやりと笑った。
「有り金おいてけ。それがいやなら、俺の相手でもしてもらおうか」
「はい、そこまでね」
「なんだよ、てめぇ・・・・・・」
「護廷13隊8番隊隊長京楽春水」
「げ、死神かよ。くそ、覚えてろよ」
足早に去っていく柄の悪い若者に、浮竹は不思議そうな顔をしていた。
「死神の隊長って、そんなに恐れられるものなのか?」
「そうだねぇ。一般的には、お近づきになりたくない相手かもね」
「でも、京楽は優しい。俺に、いろんなものを与えてくれるし、いろんなことを教えてくれる」
「それは、君を愛しているからだよ」
肩の上に抱き上げられた。軽い浮竹の体重は、身長も少し13歳にしては低めなので、40キロもないだろう。
「まだ、祭りを見るかい?」
「まだいいのか?いつもなら、仕事があるからって帰るのに」
「今日は特別だよ。明日、久しぶりの非番なんだ」
明日は、一日中浮竹といよう。そう決めた京楽であった。
廓に戻って、夕餉はとらずに湯あみをして普通に二人で眠った。そう毎回抱くわけではない。
次の日になって、まだ浮竹が寝ていたので、顔を洗いに井戸のところまできた。
「京楽のだんなっ。あたしを買っておくれよ」
「椿か・・・・・この前買ったじゃないか」
「もう3週間前のことじゃないか!」
「まだ3週間前だろう。君には他にも馴染の客もいるし・・・・僕が買わなくても、不自由はしないでしょ」
「あたしを身請けしておくれよ!」
「君を身請け?冗談じゃない、僕は気の強すぎる子は好きじゃないんだ。大人しい子がタイプなんでね」
「それは、翡翠のことかい?」
「さぁ、どうだろうね。椿、君は美しい。でも、中身をあければ腐っている。翡翠をいじめたり・・・・もう、僕は君を買うことをしない」
「翡翠め。どうしてくれよう」
「もしも、翡翠に何かしたら、僕が許さないからね」
花魁の命である美貌の顔に、持っていた斬魄刀をあてる。
「一生、残る傷を顔につけるよ?」
ゆらりと、霊圧が高くなる。殺気を迸らせた。
「ひいっ」
椿は、腰を抜かした。そのまま、廓の中に去っていく。
「ん・・・・・京楽?」
寝ていた浮竹が、霊圧の高さに気づいて起きてきた。
「なんだろうこれ・・・・京楽、何かがお前の体を取り囲んで、高まっていく」
「翡翠?霊圧が見えるのかい?」
「これ、霊圧っていうのか?皆に気味悪がられるから言わなかったけど、何もしなくても物を動かせたり、壊すことができる」
「ふむ・・・・確かに、霊圧があるね」
浮竹の中の霊圧を探ると、思っていた以上に霊圧があることが分かった。
「君、死神になるつもりはないかい?」
「死神に?」
「そう。借金を返し終わるか身請けされて自由になったら、真央霊術院っていう、死神になるための学校に通う気はあるかい?」
「今のとこそんな学校に通う気はないかな。だって俺、色子だぞ?そんな身分だったやつが、死神になんて・・・・・」
「なれないこともないよ。真央霊術院は、貧困にあえぐ流魂街の民でも、上級貴族みたいな僕でも受け入れる。元が罪人でも、ちゃんとその罪を償っていれば学院は受け入れるよ。勿論、花街の住人でも」
浮竹は、少し興味を持ったようだった。
昨日、金魚鉢と色硝子と、金魚の餌を買った。
色硝子を入れた金魚鉢の中で、持って帰ってきた金魚が2匹、仲よさげに泳いでいる。それを見ながら、浮竹は言う。
「死神になったら、ずっと京楽の傍にいれるか?」
「さぁ、それはどうだろう。配置される隊によるかな」
「じゃあ、今はこのままでいい」
「どうして?」
「京楽が、俺のところに来てくれるから」
「参ったね・・・・・・」
護廷13隊の8番隊隊長ともあろう者が、僅か13歳の色子に腑抜けにされている。そんな噂でも広まりそうなほど、浮竹にのめりこんでいた。
「翡翠は、身請けしてくれとは言わないんだね」
「だって、俺の場合しょっていた借金そのものプラスで、身請けの金額が途方もない。そんな金を出してくれる酔狂な輩はいない」
確かに、廓の主人松村が提案した身請けの金額は、花魁の椿の身請けの金額の5倍。
屋敷が数件建てられる。
今すぐにそんな巨額の金は動かせないので、翡翠を買うまでに留まっていた。
廓の主人も意地悪なことをする。こっちの足元を見て、出せるぎりぎりの金額まで搾り取るつもりだ。
「今日は一日休みんだ。おいで、翡翠」
京楽の腕の中に寝転んで、浮竹は笑う。
「こんな平和な時間が、ずっと続けばいいのに・・・・・・」
京楽は相変わらず週2くらいのペースで浮竹を買っていく。椿が荒れ狂って浮竹に手を出すので、仕方なく京楽は椿を前のように2週間に一度くらいの頻度で買った。
ある日、花街の外で祭りがあった。
浮竹はとても行きたそうにしていたが、足抜け防止のために遊女や色子が花街を抜けることはできなかった。通行手形がいるのだ。
「京楽、我儘をいっていいか?」
「どうしたんだい」
「花街の外の祭りに行ってみたい」
「祭りに興味があるのかい?」
「幼い頃、父上と母上に連れて行ってもらった」
昔を懐かしんでいるのだ。
「いいよ。通行手形を作ってもらおう。一人では花街の外には出れないけど、僕と一緒なら出れるから」
その日、早速通行手形を作ってもらい、花街の外に出かけた。
「わあ・・・・・」
人の多さに、驚かされた。
花街も人でに賑わっていたが、それの数倍は人がいた。
小遣いをもらい、好きな屋台で好きなものを買った。
林檎飴ばかり買う浮竹に、京楽が苦笑する。
「そんなに林檎飴ばかり買わなくても、林檎飴くらい廓にもっていってあげるよ」
「本当か!」
浮竹が顔を輝かせた。
京楽は、焼そばを二人前買った。浮竹に与えて、昼餉ということにした。
「今だけ、俺は自由だ」
浮竹のはしゃぎ具合に、定期的に外に連れ出してあげようという気になる。
綿あめをお土産に買ってもらい、輪投げ、ビンゴ、金魚すくいをした。
金魚を持って帰るかと聞かれて、少し悲しそうに首を横に振る。
「廓では、勝手に生き物をかっちゃいけないんだ」
「僕が、廓の主人に話しをつけてあげるから」
「いいのか?」
「ああ、勿論だよ」
「やった!」
浮竹は、2匹の金魚を入れてもらい、それを手首にぶら下げて、歩き出す。
こうしてみていれば、また育ち盛りの普通の子供に見えた。
着ている服が女もののせいであるのと、浮竹本来の容姿が美しく整っているせいで、どうみても少女に見えた。
13歳。
それは微妙な年だった。
大人というには幼過ぎて。子供というには少し大きすぎて。
最初、廓にきたときは酷く痩せていて、あばら骨が浮いていた体も、食生活が改善されて、細いがしなやかな筋肉がつくようになった。
「京楽、こっちだ」
お面を売っている屋台で、狐のお面を買う浮竹。京楽の分も買って、お揃いにした。
狐のお面を被った浮竹は、はしゃいでいた。
フランクフルトを食べながら歩いていると、柄の悪そうな若者にぶつかった。
「ああ、嬢ちゃん何してくれてんだ。俺様の服が汚れただろうが!」
「す、すまない」
「はぁ?金だせや金。服が台無しになっちまった」
京楽が何か言う前に、浮竹はもっていた所持金を見せる。子供がもつ額には多すぎて、柄の悪い若者はにやりと笑った。
「有り金おいてけ。それがいやなら、俺の相手でもしてもらおうか」
「はい、そこまでね」
「なんだよ、てめぇ・・・・・・」
「護廷13隊8番隊隊長京楽春水」
「げ、死神かよ。くそ、覚えてろよ」
足早に去っていく柄の悪い若者に、浮竹は不思議そうな顔をしていた。
「死神の隊長って、そんなに恐れられるものなのか?」
「そうだねぇ。一般的には、お近づきになりたくない相手かもね」
「でも、京楽は優しい。俺に、いろんなものを与えてくれるし、いろんなことを教えてくれる」
「それは、君を愛しているからだよ」
肩の上に抱き上げられた。軽い浮竹の体重は、身長も少し13歳にしては低めなので、40キロもないだろう。
「まだ、祭りを見るかい?」
「まだいいのか?いつもなら、仕事があるからって帰るのに」
「今日は特別だよ。明日、久しぶりの非番なんだ」
明日は、一日中浮竹といよう。そう決めた京楽であった。
廓に戻って、夕餉はとらずに湯あみをして普通に二人で眠った。そう毎回抱くわけではない。
次の日になって、まだ浮竹が寝ていたので、顔を洗いに井戸のところまできた。
「京楽のだんなっ。あたしを買っておくれよ」
「椿か・・・・・この前買ったじゃないか」
「もう3週間前のことじゃないか!」
「まだ3週間前だろう。君には他にも馴染の客もいるし・・・・僕が買わなくても、不自由はしないでしょ」
「あたしを身請けしておくれよ!」
「君を身請け?冗談じゃない、僕は気の強すぎる子は好きじゃないんだ。大人しい子がタイプなんでね」
「それは、翡翠のことかい?」
「さぁ、どうだろうね。椿、君は美しい。でも、中身をあければ腐っている。翡翠をいじめたり・・・・もう、僕は君を買うことをしない」
「翡翠め。どうしてくれよう」
「もしも、翡翠に何かしたら、僕が許さないからね」
花魁の命である美貌の顔に、持っていた斬魄刀をあてる。
「一生、残る傷を顔につけるよ?」
ゆらりと、霊圧が高くなる。殺気を迸らせた。
「ひいっ」
椿は、腰を抜かした。そのまま、廓の中に去っていく。
「ん・・・・・京楽?」
寝ていた浮竹が、霊圧の高さに気づいて起きてきた。
「なんだろうこれ・・・・京楽、何かがお前の体を取り囲んで、高まっていく」
「翡翠?霊圧が見えるのかい?」
「これ、霊圧っていうのか?皆に気味悪がられるから言わなかったけど、何もしなくても物を動かせたり、壊すことができる」
「ふむ・・・・確かに、霊圧があるね」
浮竹の中の霊圧を探ると、思っていた以上に霊圧があることが分かった。
「君、死神になるつもりはないかい?」
「死神に?」
「そう。借金を返し終わるか身請けされて自由になったら、真央霊術院っていう、死神になるための学校に通う気はあるかい?」
「今のとこそんな学校に通う気はないかな。だって俺、色子だぞ?そんな身分だったやつが、死神になんて・・・・・」
「なれないこともないよ。真央霊術院は、貧困にあえぐ流魂街の民でも、上級貴族みたいな僕でも受け入れる。元が罪人でも、ちゃんとその罪を償っていれば学院は受け入れるよ。勿論、花街の住人でも」
浮竹は、少し興味を持ったようだった。
昨日、金魚鉢と色硝子と、金魚の餌を買った。
色硝子を入れた金魚鉢の中で、持って帰ってきた金魚が2匹、仲よさげに泳いでいる。それを見ながら、浮竹は言う。
「死神になったら、ずっと京楽の傍にいれるか?」
「さぁ、それはどうだろう。配置される隊によるかな」
「じゃあ、今はこのままでいい」
「どうして?」
「京楽が、俺のところに来てくれるから」
「参ったね・・・・・・」
護廷13隊の8番隊隊長ともあろう者が、僅か13歳の色子に腑抜けにされている。そんな噂でも広まりそうなほど、浮竹にのめりこんでいた。
「翡翠は、身請けしてくれとは言わないんだね」
「だって、俺の場合しょっていた借金そのものプラスで、身請けの金額が途方もない。そんな金を出してくれる酔狂な輩はいない」
確かに、廓の主人松村が提案した身請けの金額は、花魁の椿の身請けの金額の5倍。
屋敷が数件建てられる。
今すぐにそんな巨額の金は動かせないので、翡翠を買うまでに留まっていた。
廓の主人も意地悪なことをする。こっちの足元を見て、出せるぎりぎりの金額まで搾り取るつもりだ。
「今日は一日休みんだ。おいで、翡翠」
京楽の腕の中に寝転んで、浮竹は笑う。
「こんな平和な時間が、ずっと続けばいいのに・・・・・・」
花街恋話3
花街の椿亭に色子として売られて、3か月が経とうとしていた。
初見世を京楽に買ってもらい、抱かれぬまま時を過ごす。他の色子のように、毎晩のように違う男に抱かれることもなく。
京楽は、浮竹を色子として買っていたが、実際はハグやキス程度の仲で、よく飴玉やらチョコやら、お菓子をもらった。
ある時、京楽に抱いてもいいと言い出した。
きっと、京楽はこんな子供の俺を不憫に思っているだけなのかと思ったら、意外と性欲の対象に見られていて、それがなぜか嬉しくあった。
最近、花魁の椿が荒れていた。
「最近、京楽の坊ちゃんが来てくれない。なのに翡翠、なんであんたのとこにはくるの!」
「知らない」
「あんたが京楽坊ちゃんをそそのかしたんでしょ!」
「言いがかりだ」
椿は、京楽以外にも馴染の客がいる。でも、京楽に身請けされることを望んでいた。
多分、京楽は椿なんて花魁を身請けはしないだろうなと、思った。
感情の幅が激しい。京楽は、きつい性格の子より、大人しめの性格の子のほうが好きだと思った。
「翡翠、お前生意気だよ!新入りのくせに!」
パンっと、頬を叩かれた。長い爪で頬に傷跡ができて、血が流れた。
「何しているんだい椿!おちつきなさい」
主人の松村が止めに入るが、椿は激高して浮竹を蹴り上げた。
「ぐ・・・・・げほっげほっ」
肺を蹴られて、治まっていた肺の発作が起こる。
ボタボタと吐血して血が畳の上に広がり、大変だと松村は医者を呼びにいった。花魁の椿は、浮竹を傷つけたことで咎められて、お仕置きされた。
それがより一層、椿を暴力的にさせていた。
「なんで花魁のあたしがお仕置きされなきゃいけないのさ!」
軽い仕置きだったが、それでも椿は言うことを捻じ曲げず、反省の色もなかった。
「翡翠、なるべく椿に近づいてはいけないよ」
松村の言葉通り、血を吐いて倒れた浮竹は、椿を避けた。
食事の時間もずらして、湯あみの時間もずらした。
その二日後、京楽がやってきた。
「大丈夫なの?血を吐いたってきいたけど」
「慣れている。もう大丈夫だ」
「これ、新しい肺の薬。苦いかもしれないけど飲んでみて」
新しく4番隊で作られという薬を飲んだ。苦かったが、肺がすっとしたような気がした。
「新薬は高いだろう」
「なに、翡翠のためと思えば出費なんてなんでもない」
「今夜、君を抱くよ?いいかい?怖いならやめるけど」
「怖くなんてない」
京楽の前では、強がりをするだけ無駄だ。
「少し、怖い・・・・・」
「大丈夫、優しくするから・・・・」
今日が、本当の意味での初見世になるのだ・
褥に横たえられた。
肩までの長さの髪に触れてくる。そのまま抱き締められ、深い口づけをうける。
「んうっ」
ぬるりと、咥内に舌が入り込んでくる。おずおずと答えると、飲み込み切れなかった唾液が顎を伝った。
遊女の着物を脱がされて襦袢姿にされ、それも脱がされていく。
シミ一つない白い裸体が、露わになった。
右手首には、包帯を巻いたままだ。
それを外そうとする京楽を、止めた。
「これはいいんだ・・・・」
「どうしたの、この傷。ずっと前から気になってたんだけど」
「13歳になる2日前、一度死のうとした」
「ええ!」
衝撃の告白に、京楽がおろおろしだす。
「もう大丈夫なんだ。俺には京楽、お前がいるから」
「そうかい。よかった・・・・。続きしてもいいかな?」
「お好きなように」
京楽の唇が、喉、鎖骨、胸、臍へと降りてくる。
「んっ」
胸の先端を指でつままれると、かすかに電流が流れたようなかんじがした。
そのまま、何度も舐め挙げられて、京楽は精通を迎えてまだ間もない浮竹の花茎を口に含んだ。
「ああっ」
「君のは、幼いからかわいいサイズだね」
「ばかっ・・・あああっ!」
何度も吸い上げられ、愛撫されているうちに、吐精してしまった。
それをごくんと飲みこんだ京楽の頭を殴る。
「そんなもの、飲み込むな」
「君のは、味が淡泊な気がする。他に飲んだことないから分からないけど」
「あっ」
潤滑油で濡らされた指が体内に侵入してくる。
「ううんっ」
ばらばらに動かされて、前立腺を刺激されると、まだ若い浮竹のものは反応した。
「ああっ」
「ここがいいの?」
「やだっ、またくる!」
前立腺をいじられてばかりいるのが悔しくて、大きな京楽のものに手をかけた。
「翡翠?」
「俺もする・・・・・」
京楽の大さにどきまぎしながら、舌を這わせた。先端を口に含み、それ以外は手を動かしてじゅぷじゅぷと音がたつまで刺激していると、一際京楽のものが大きくなった。
「出るから、離れて」
浮竹は咥内でそれを受け止めた。びゅるるるると出される勢いにまけて、飲み込みきれずに零す。
「あああ、飲まなくていいのに」
「変な味がする」
浮竹は、京楽の精液を綺麗になめとった。
「僕が恥ずかしい!」
「続き、しないのか?」
「するよ・・・・力抜いて」
潤滑油を己の欲望に塗りまくって、幼い体の蕾にあてがい、一気にではなくゆっくりと挿入していった。
「んあ・・・でかいな」
「ここが入りきればあとは大丈夫だから」
「ああっ」
抑えがきかなくなって、京楽は浮竹の体の奥まで突き上げてしまった。
「ごめん、優しくするって言ったのに・・・・・君の中があまりにもきもりよくて、先に果てそうだ」
京楽もまだ若い。浮竹の最奥に射精した。
「あ、あ、ああああ!」
京楽が、浮竹を突き上げる。そのたびに、結合部から卑猥な水の音がした。
「やだっ」
前立腺ばかりを突き上げられて、浮竹がまた精を放ちたくなっていた。
「もうちょっと我慢して・・・・・」
浮竹の花茎を戒めて、京楽は突き上げた。
「ひあああああ!」
前立腺をこすりあげ、最奥まで突き上げるのと一緒に、戒めを解放する。浮竹の2回目の射精は、一度目の時より量が多かった。
「ん・・・まだいけそう?」
「んあ・・・・」
ずちゅっと音がして、体位を変えられる。
背後から貫かれた。
「あっ」
そのまま何度か貫かれて揺さぶられているうちに、3回目の射精を迎え、京楽も浮竹の中に欲望をぶちまけた。
お互い、横になって呼吸を整える。
「ごめん、はじめてなのに、無理させちゃったね・・・・・・」
「そんなに乱暴じゃなかった。大丈夫だ」
浮竹は、情事の後の気だるい感覚を覚えた。
「動ける?」
「少しなら」
「支えるから、湯あみしにいこう。このままじゃべとべとだ。褥も変えよう」
襦袢をきて、同じく襦袢姿の京楽に抱きかかえられて、湯殿にいって体を清め、京楽が浮竹の体内にだしたもをかきだされた。どろりと、けっこうな量が出た。
「また今度、抱いてもいいかい?」
「俺を買っているのだろう。俺は色子だ。お前だけの。お前になら、抱かれてもいい」
「・・・・本当に、この子は」
ちゅっと音のなるキスを頬にされた。湯あみを終えて、襦袢を着換え、お互い新しい衣服を着る。
「君の服、普通なのないの?」
浮竹の服は、遊女のものだった。といっても、とても小柄なものだが。
「なんでも、この前身請けされた人気のあった遊女がとても小さい子だったらしくて、その人が残していった着物が、俺にぴったりなんだそうだ」
「そうか。まぁリサイクル精神はいいけど、今度僕が君専用の着物を誂(あつら)えてあげる。男物と女物、両方作ってあげるから、好きな方を着るといいよ」
「俺は、別に女物でも構わない。色子だし・・・女物のほうが、俺には似合うだろう?俺を買いたいという男はみんな、俺が女物の着物を着ている時にいうんだ」
「なんだって。君を買いたいだって?」
「ああ、暇だから他の遊女や色子の世話をしている。その時に、声をかけられるんだ。全部断ってるし、松村様が許さない」
「そりゃね。君は僕のものってことにしてるから。君を買うお金も随分かかってるけど、君を他の男に抱かせないためのお金のほうがかかってるからね」
「搾り取れるだけ搾り取れ、だそうだ」
「ふふん、この程度で僕のお金を搾り取ろうだなんて甘いよ。その気になったら、廓ごと余裕で買いとれるんだから」
「そしたら、お前が廓の主人になるのか?」
「いや、僕は死神だから、ちょっと廓の主人は無理かなぁ」
くすくすと、浮竹は笑った。
「翡翠、おいで」
手招きされて、京楽の膝の上に乗る。
「これをあげる」
それは、翡翠でできた首飾りだった。一番いい石を使っていると、素人の目でもわかるほどの輝きだった。
「こんな高そうなもの、もらえない」
「受け取りなさい。京楽からの命令だよ」
「仕方ないな・・・・・・」
「かしてごらん。つけてあげるから」
翡翠のペンダントは、浮竹によく似合った。浮竹が今している髪飾りも、螺鈿細工のもので、京楽が買い与えたものだった。
初見世を京楽に買ってもらい、抱かれぬまま時を過ごす。他の色子のように、毎晩のように違う男に抱かれることもなく。
京楽は、浮竹を色子として買っていたが、実際はハグやキス程度の仲で、よく飴玉やらチョコやら、お菓子をもらった。
ある時、京楽に抱いてもいいと言い出した。
きっと、京楽はこんな子供の俺を不憫に思っているだけなのかと思ったら、意外と性欲の対象に見られていて、それがなぜか嬉しくあった。
最近、花魁の椿が荒れていた。
「最近、京楽の坊ちゃんが来てくれない。なのに翡翠、なんであんたのとこにはくるの!」
「知らない」
「あんたが京楽坊ちゃんをそそのかしたんでしょ!」
「言いがかりだ」
椿は、京楽以外にも馴染の客がいる。でも、京楽に身請けされることを望んでいた。
多分、京楽は椿なんて花魁を身請けはしないだろうなと、思った。
感情の幅が激しい。京楽は、きつい性格の子より、大人しめの性格の子のほうが好きだと思った。
「翡翠、お前生意気だよ!新入りのくせに!」
パンっと、頬を叩かれた。長い爪で頬に傷跡ができて、血が流れた。
「何しているんだい椿!おちつきなさい」
主人の松村が止めに入るが、椿は激高して浮竹を蹴り上げた。
「ぐ・・・・・げほっげほっ」
肺を蹴られて、治まっていた肺の発作が起こる。
ボタボタと吐血して血が畳の上に広がり、大変だと松村は医者を呼びにいった。花魁の椿は、浮竹を傷つけたことで咎められて、お仕置きされた。
それがより一層、椿を暴力的にさせていた。
「なんで花魁のあたしがお仕置きされなきゃいけないのさ!」
軽い仕置きだったが、それでも椿は言うことを捻じ曲げず、反省の色もなかった。
「翡翠、なるべく椿に近づいてはいけないよ」
松村の言葉通り、血を吐いて倒れた浮竹は、椿を避けた。
食事の時間もずらして、湯あみの時間もずらした。
その二日後、京楽がやってきた。
「大丈夫なの?血を吐いたってきいたけど」
「慣れている。もう大丈夫だ」
「これ、新しい肺の薬。苦いかもしれないけど飲んでみて」
新しく4番隊で作られという薬を飲んだ。苦かったが、肺がすっとしたような気がした。
「新薬は高いだろう」
「なに、翡翠のためと思えば出費なんてなんでもない」
「今夜、君を抱くよ?いいかい?怖いならやめるけど」
「怖くなんてない」
京楽の前では、強がりをするだけ無駄だ。
「少し、怖い・・・・・」
「大丈夫、優しくするから・・・・」
今日が、本当の意味での初見世になるのだ・
褥に横たえられた。
肩までの長さの髪に触れてくる。そのまま抱き締められ、深い口づけをうける。
「んうっ」
ぬるりと、咥内に舌が入り込んでくる。おずおずと答えると、飲み込み切れなかった唾液が顎を伝った。
遊女の着物を脱がされて襦袢姿にされ、それも脱がされていく。
シミ一つない白い裸体が、露わになった。
右手首には、包帯を巻いたままだ。
それを外そうとする京楽を、止めた。
「これはいいんだ・・・・」
「どうしたの、この傷。ずっと前から気になってたんだけど」
「13歳になる2日前、一度死のうとした」
「ええ!」
衝撃の告白に、京楽がおろおろしだす。
「もう大丈夫なんだ。俺には京楽、お前がいるから」
「そうかい。よかった・・・・。続きしてもいいかな?」
「お好きなように」
京楽の唇が、喉、鎖骨、胸、臍へと降りてくる。
「んっ」
胸の先端を指でつままれると、かすかに電流が流れたようなかんじがした。
そのまま、何度も舐め挙げられて、京楽は精通を迎えてまだ間もない浮竹の花茎を口に含んだ。
「ああっ」
「君のは、幼いからかわいいサイズだね」
「ばかっ・・・あああっ!」
何度も吸い上げられ、愛撫されているうちに、吐精してしまった。
それをごくんと飲みこんだ京楽の頭を殴る。
「そんなもの、飲み込むな」
「君のは、味が淡泊な気がする。他に飲んだことないから分からないけど」
「あっ」
潤滑油で濡らされた指が体内に侵入してくる。
「ううんっ」
ばらばらに動かされて、前立腺を刺激されると、まだ若い浮竹のものは反応した。
「ああっ」
「ここがいいの?」
「やだっ、またくる!」
前立腺をいじられてばかりいるのが悔しくて、大きな京楽のものに手をかけた。
「翡翠?」
「俺もする・・・・・」
京楽の大さにどきまぎしながら、舌を這わせた。先端を口に含み、それ以外は手を動かしてじゅぷじゅぷと音がたつまで刺激していると、一際京楽のものが大きくなった。
「出るから、離れて」
浮竹は咥内でそれを受け止めた。びゅるるるると出される勢いにまけて、飲み込みきれずに零す。
「あああ、飲まなくていいのに」
「変な味がする」
浮竹は、京楽の精液を綺麗になめとった。
「僕が恥ずかしい!」
「続き、しないのか?」
「するよ・・・・力抜いて」
潤滑油を己の欲望に塗りまくって、幼い体の蕾にあてがい、一気にではなくゆっくりと挿入していった。
「んあ・・・でかいな」
「ここが入りきればあとは大丈夫だから」
「ああっ」
抑えがきかなくなって、京楽は浮竹の体の奥まで突き上げてしまった。
「ごめん、優しくするって言ったのに・・・・・君の中があまりにもきもりよくて、先に果てそうだ」
京楽もまだ若い。浮竹の最奥に射精した。
「あ、あ、ああああ!」
京楽が、浮竹を突き上げる。そのたびに、結合部から卑猥な水の音がした。
「やだっ」
前立腺ばかりを突き上げられて、浮竹がまた精を放ちたくなっていた。
「もうちょっと我慢して・・・・・」
浮竹の花茎を戒めて、京楽は突き上げた。
「ひあああああ!」
前立腺をこすりあげ、最奥まで突き上げるのと一緒に、戒めを解放する。浮竹の2回目の射精は、一度目の時より量が多かった。
「ん・・・まだいけそう?」
「んあ・・・・」
ずちゅっと音がして、体位を変えられる。
背後から貫かれた。
「あっ」
そのまま何度か貫かれて揺さぶられているうちに、3回目の射精を迎え、京楽も浮竹の中に欲望をぶちまけた。
お互い、横になって呼吸を整える。
「ごめん、はじめてなのに、無理させちゃったね・・・・・・」
「そんなに乱暴じゃなかった。大丈夫だ」
浮竹は、情事の後の気だるい感覚を覚えた。
「動ける?」
「少しなら」
「支えるから、湯あみしにいこう。このままじゃべとべとだ。褥も変えよう」
襦袢をきて、同じく襦袢姿の京楽に抱きかかえられて、湯殿にいって体を清め、京楽が浮竹の体内にだしたもをかきだされた。どろりと、けっこうな量が出た。
「また今度、抱いてもいいかい?」
「俺を買っているのだろう。俺は色子だ。お前だけの。お前になら、抱かれてもいい」
「・・・・本当に、この子は」
ちゅっと音のなるキスを頬にされた。湯あみを終えて、襦袢を着換え、お互い新しい衣服を着る。
「君の服、普通なのないの?」
浮竹の服は、遊女のものだった。といっても、とても小柄なものだが。
「なんでも、この前身請けされた人気のあった遊女がとても小さい子だったらしくて、その人が残していった着物が、俺にぴったりなんだそうだ」
「そうか。まぁリサイクル精神はいいけど、今度僕が君専用の着物を誂(あつら)えてあげる。男物と女物、両方作ってあげるから、好きな方を着るといいよ」
「俺は、別に女物でも構わない。色子だし・・・女物のほうが、俺には似合うだろう?俺を買いたいという男はみんな、俺が女物の着物を着ている時にいうんだ」
「なんだって。君を買いたいだって?」
「ああ、暇だから他の遊女や色子の世話をしている。その時に、声をかけられるんだ。全部断ってるし、松村様が許さない」
「そりゃね。君は僕のものってことにしてるから。君を買うお金も随分かかってるけど、君を他の男に抱かせないためのお金のほうがかかってるからね」
「搾り取れるだけ搾り取れ、だそうだ」
「ふふん、この程度で僕のお金を搾り取ろうだなんて甘いよ。その気になったら、廓ごと余裕で買いとれるんだから」
「そしたら、お前が廓の主人になるのか?」
「いや、僕は死神だから、ちょっと廓の主人は無理かなぁ」
くすくすと、浮竹は笑った。
「翡翠、おいで」
手招きされて、京楽の膝の上に乗る。
「これをあげる」
それは、翡翠でできた首飾りだった。一番いい石を使っていると、素人の目でもわかるほどの輝きだった。
「こんな高そうなもの、もらえない」
「受け取りなさい。京楽からの命令だよ」
「仕方ないな・・・・・・」
「かしてごらん。つけてあげるから」
翡翠のペンダントは、浮竹によく似合った。浮竹が今している髪飾りも、螺鈿細工のもので、京楽が買い与えたものだった。
花街恋心2
京楽春水と出会った数日後、熱を出して倒れた。それを発見してくれたのは、京楽だった。
「この子、体が弱いんだって?」
「はぁ、京楽の坊ちゃん。おまけに肺の治らない病を患っておりまして・・・・でも、人にうつる病でないので・・・・・」
「こんな状態の子の初見世を?」
「いやぁ、今日の予定だったんですが、この通り熱を出したので次回にしますよ」
「初見世の相手は決まったのかい?」
「それがまだで。店を張って、客引きもかねてと思っていたんですが」
「これも何かの縁だ。この子の初見世の相手をするよ」
「本当ですか、京楽の坊ちゃん!これは翡翠もいい相手に恵まれたものだ。どうか、椿ともども、可愛がってあげてくださいませ」
高熱を出して眠っていた間に、初見世の相手が京楽と決まった。
誰かもわからない男に初めてを奪われるよりは、少しだけであったが、優しく接してくれた京楽ならいいかもしれないと思った。
初見世の日がやってきた。
磨き上げられ、着飾った浮竹は、色子というより幼い遊女に見えた。
「何歳?」
「13」
「嘘、11歳くらいだと思ってた。色子は幼くても客を取らされるからねぇ。そうか、13か・・・・・・」
何やらぶつぶついっていた京楽だったが、浮竹を抱き寄せた。
びくりと、浮竹の体が強張る。
「あの、俺、初めてだから・・・・・」
「安心して。初見世の相手するっていったけど、抱かないから」
「え」
「こんな・・・・11歳くらいにしか見えない子供の初見世なんて、見ちゃいられないよ」
「でも、じゃあお金は・・・・」
「借金、いっぱいあるんだってね。高くついたよ。花魁と同じ値段をふっかけられた。まぁいいんだけど・・・・・・」
「俺は、あの・・・・」
「まだ本調子じゃないんでしょ?いいから寝なさい」
微熱があった。
言われるままに、床に入る。
「そうだね、ちょっと我慢してね」
「?」
「痕とかないと、怪しまれるからね」
「んっ」
首筋やうなじ、鎖骨などにキスマークを残された。
「あ・・・・・」
「かわいい声だね。その気になっちゃいそうで、自分が怖いよ」
京楽は、浮竹に自分のものであるというマーキング行為であるキスマークをつけて、浮竹を解放した。
「翡翠」
「なんだ」
「その性格、いいね。僕に対して媚びへつらわない。普通の色子なら、手練手管で僕を落とそうとするのに、君は初見世だからかもしれないけど、何も知らない。純白の雪のようだ。その髪の色のように」
「この髪の色は嫌いだ」
「そう言わないで。とても綺麗だよ。日の光を受けると、銀色に見える」
「俺は、稼がないとだめなんだ。売られていった妹や弟たちを買い戻すんだ」
「何年先になるんだろうねぇ」
「それでも、諦めない」
布団で寝ていたが、ふと布団の中に京楽を誘った。
「一緒に寝よう」
「ああ、まぁそうだね。このまま一夜を過ごすことになってるから。そうだ、これあげる。もうみんな食べちゃったでしょ?」
たくさんのいろんな味の飴玉が入った袋をもらった。
「あと、これも飲みなさい。肺の薬を溶かしてある」
甘露水と檸檬水をまぜて、甘い味付けにした肺の薬を混ぜた液体をさしだされた。
「ん・・・・」
こくこくと飲んでいくと、肺の痛みが治まった気がした。
「13か・・・・守備範囲は15から・・・・んーでも色子なら13でもありか・・・・うーんうーん」
「おい、京楽」
「あ、なんだい?」
「檸檬水、もっと飲みたい」
「はいはい。今注文してくるから」
檸檬水の他に薔薇水、甘露水を取り寄せた。
けっこうな出費になったが、京楽にとっては痛くもなかった。
夕餉はもう終えたし、お互い湯あみも終わっている。時計をみると、0時をさしていた。
「子供はもう寝る時間だよ。僕も一緒に寝るから、ちょっと布団きつくなるかもしれないけど」
男女が睦みあうために作られた布団だったので、きつくはなかった。
その日、京楽は腕の中に浮竹を抱いて眠った。
寝ている間に、浮竹が「母上・・・」と寝言をいって、一粒の涙を零したのが心に痛くて、この子を守ってあげたいと思った。
朝になり、廓の主人の松村と女将がやってきた。
「どうでしたか、翡翠は」
「とてもいい子だったよ。素直だしね」
「かわいがってもらえたかい、翡翠・・・おっと、キスマークがこんなに。野暮ったい質問だったみたいですなぁ」
朗らかに、松村は笑った。
「翡翠、朝餉の準備をしなさい」
「はい」
「ああ、それから主人」
ずっしりとした金の板を渡された。
「こ、これは!?」
「翡翠は、この廓にいるだけで、体は売らせないように。僕が全部買う。だから、他の男を宛がったり、しないように。これは当座の代金だ」
「へい、京楽の坊ちゃん。翡翠は坊ちゃんのものということで」
金の板をしまいこんで、揉み手で朝餉の準備をする浮竹を呼んだ。
「翡翠」
「はい」
「今日から、京楽坊ちゃんのことを旦那様と呼びなさい」
凄くいやな顔をされた。
「いやいいよ。この子に旦那様なんて呼ばれたら、背徳感がありすぎる」
「でもこの子、呼び捨てにしてしまうでしょう。教えないと、京楽ぼっちゃんのことも」
「いや、すでに京楽って呼び捨てにされてるから」
「こら、翡翠!」
「いや、いいから。僕も、呼び捨てにされた方が気軽だし」
京楽は、1週間に2、3回はやってきた。それが2か月くらい続いた。
全部、翡翠である浮竹を買いにだ。たまに花魁の椿を買っていったりもした。それは2週間に一度くらいだった。
浮竹を買っても、京楽は頭を撫でたり、抱き締めたりするだけだった。
ある日、浮竹が京楽を押し倒した。
「翡翠?」
唇を重ねられた。京楽は我慢が出来ずに、浮竹の舌に舌を絡めて、ディープキスをする。
「んっ・・・・・・あっ」
「翡翠、無理しなくていいから」
「でも、何もしないままただ買われるなんて・・・・・」
「僕の話相手をしてくれているだろう?」
「でも、大金を松村様に払って、他の男に抱かれないようにしているって聞いた」
「君は、他の男に抱かれたいの?」
「嫌だ。抱かれるなら、京楽がいい」
「君って子は・・・・・」
浮竹を抱き上げて、頭を撫でる。
体温を共有しあうように抱き合って、そのまま褥に寝転んだ。
「もしも、僕が君を抱きたいっていったら、純白の雪のような君は、僕の色に染まるのかい?」
「そうだ」
「参ったね・・・・・・」
京楽は、2か月も触れあっているうちに、13歳という幼さを理由に抱くまいと思っていたのだが、浮竹を抱きたくなっていた。
「今度来たとき、君を抱く。いいかい?」
「俺は構わない」
そう、浮竹は答えを返した。
「この子、体が弱いんだって?」
「はぁ、京楽の坊ちゃん。おまけに肺の治らない病を患っておりまして・・・・でも、人にうつる病でないので・・・・・」
「こんな状態の子の初見世を?」
「いやぁ、今日の予定だったんですが、この通り熱を出したので次回にしますよ」
「初見世の相手は決まったのかい?」
「それがまだで。店を張って、客引きもかねてと思っていたんですが」
「これも何かの縁だ。この子の初見世の相手をするよ」
「本当ですか、京楽の坊ちゃん!これは翡翠もいい相手に恵まれたものだ。どうか、椿ともども、可愛がってあげてくださいませ」
高熱を出して眠っていた間に、初見世の相手が京楽と決まった。
誰かもわからない男に初めてを奪われるよりは、少しだけであったが、優しく接してくれた京楽ならいいかもしれないと思った。
初見世の日がやってきた。
磨き上げられ、着飾った浮竹は、色子というより幼い遊女に見えた。
「何歳?」
「13」
「嘘、11歳くらいだと思ってた。色子は幼くても客を取らされるからねぇ。そうか、13か・・・・・・」
何やらぶつぶついっていた京楽だったが、浮竹を抱き寄せた。
びくりと、浮竹の体が強張る。
「あの、俺、初めてだから・・・・・」
「安心して。初見世の相手するっていったけど、抱かないから」
「え」
「こんな・・・・11歳くらいにしか見えない子供の初見世なんて、見ちゃいられないよ」
「でも、じゃあお金は・・・・」
「借金、いっぱいあるんだってね。高くついたよ。花魁と同じ値段をふっかけられた。まぁいいんだけど・・・・・・」
「俺は、あの・・・・」
「まだ本調子じゃないんでしょ?いいから寝なさい」
微熱があった。
言われるままに、床に入る。
「そうだね、ちょっと我慢してね」
「?」
「痕とかないと、怪しまれるからね」
「んっ」
首筋やうなじ、鎖骨などにキスマークを残された。
「あ・・・・・」
「かわいい声だね。その気になっちゃいそうで、自分が怖いよ」
京楽は、浮竹に自分のものであるというマーキング行為であるキスマークをつけて、浮竹を解放した。
「翡翠」
「なんだ」
「その性格、いいね。僕に対して媚びへつらわない。普通の色子なら、手練手管で僕を落とそうとするのに、君は初見世だからかもしれないけど、何も知らない。純白の雪のようだ。その髪の色のように」
「この髪の色は嫌いだ」
「そう言わないで。とても綺麗だよ。日の光を受けると、銀色に見える」
「俺は、稼がないとだめなんだ。売られていった妹や弟たちを買い戻すんだ」
「何年先になるんだろうねぇ」
「それでも、諦めない」
布団で寝ていたが、ふと布団の中に京楽を誘った。
「一緒に寝よう」
「ああ、まぁそうだね。このまま一夜を過ごすことになってるから。そうだ、これあげる。もうみんな食べちゃったでしょ?」
たくさんのいろんな味の飴玉が入った袋をもらった。
「あと、これも飲みなさい。肺の薬を溶かしてある」
甘露水と檸檬水をまぜて、甘い味付けにした肺の薬を混ぜた液体をさしだされた。
「ん・・・・」
こくこくと飲んでいくと、肺の痛みが治まった気がした。
「13か・・・・守備範囲は15から・・・・んーでも色子なら13でもありか・・・・うーんうーん」
「おい、京楽」
「あ、なんだい?」
「檸檬水、もっと飲みたい」
「はいはい。今注文してくるから」
檸檬水の他に薔薇水、甘露水を取り寄せた。
けっこうな出費になったが、京楽にとっては痛くもなかった。
夕餉はもう終えたし、お互い湯あみも終わっている。時計をみると、0時をさしていた。
「子供はもう寝る時間だよ。僕も一緒に寝るから、ちょっと布団きつくなるかもしれないけど」
男女が睦みあうために作られた布団だったので、きつくはなかった。
その日、京楽は腕の中に浮竹を抱いて眠った。
寝ている間に、浮竹が「母上・・・」と寝言をいって、一粒の涙を零したのが心に痛くて、この子を守ってあげたいと思った。
朝になり、廓の主人の松村と女将がやってきた。
「どうでしたか、翡翠は」
「とてもいい子だったよ。素直だしね」
「かわいがってもらえたかい、翡翠・・・おっと、キスマークがこんなに。野暮ったい質問だったみたいですなぁ」
朗らかに、松村は笑った。
「翡翠、朝餉の準備をしなさい」
「はい」
「ああ、それから主人」
ずっしりとした金の板を渡された。
「こ、これは!?」
「翡翠は、この廓にいるだけで、体は売らせないように。僕が全部買う。だから、他の男を宛がったり、しないように。これは当座の代金だ」
「へい、京楽の坊ちゃん。翡翠は坊ちゃんのものということで」
金の板をしまいこんで、揉み手で朝餉の準備をする浮竹を呼んだ。
「翡翠」
「はい」
「今日から、京楽坊ちゃんのことを旦那様と呼びなさい」
凄くいやな顔をされた。
「いやいいよ。この子に旦那様なんて呼ばれたら、背徳感がありすぎる」
「でもこの子、呼び捨てにしてしまうでしょう。教えないと、京楽ぼっちゃんのことも」
「いや、すでに京楽って呼び捨てにされてるから」
「こら、翡翠!」
「いや、いいから。僕も、呼び捨てにされた方が気軽だし」
京楽は、1週間に2、3回はやってきた。それが2か月くらい続いた。
全部、翡翠である浮竹を買いにだ。たまに花魁の椿を買っていったりもした。それは2週間に一度くらいだった。
浮竹を買っても、京楽は頭を撫でたり、抱き締めたりするだけだった。
ある日、浮竹が京楽を押し倒した。
「翡翠?」
唇を重ねられた。京楽は我慢が出来ずに、浮竹の舌に舌を絡めて、ディープキスをする。
「んっ・・・・・・あっ」
「翡翠、無理しなくていいから」
「でも、何もしないままただ買われるなんて・・・・・」
「僕の話相手をしてくれているだろう?」
「でも、大金を松村様に払って、他の男に抱かれないようにしているって聞いた」
「君は、他の男に抱かれたいの?」
「嫌だ。抱かれるなら、京楽がいい」
「君って子は・・・・・」
浮竹を抱き上げて、頭を撫でる。
体温を共有しあうように抱き合って、そのまま褥に寝転んだ。
「もしも、僕が君を抱きたいっていったら、純白の雪のような君は、僕の色に染まるのかい?」
「そうだ」
「参ったね・・・・・・」
京楽は、2か月も触れあっているうちに、13歳という幼さを理由に抱くまいと思っていたのだが、浮竹を抱きたくなっていた。
「今度来たとき、君を抱く。いいかい?」
「俺は構わない」
そう、浮竹は答えを返した。
花街恋心1
浮竹が12の時、両親が他界した。多額の借金を残して。浮竹の薬代を出すための借金だった。
浮竹は、肺の病を患っていた。他人にはうつらないが、よく咳込み血を吐いた。おまけに、病弱だった。
「こんな命・・・・・」
真っ白になってしまった髪を、かきむしる。
幼い妹や弟たちは、そのまま人買いに売られていった。
一人残されたのは長兄の浮竹十四郎。
病のせいで薬代がかさみ、親戚も引き取ってくれない。一度色子にと売りに出されたが、売られた場所で血を吐いて倒れ、元の家に戻された。
妹や弟たちが売られて行ったことで、借金は少なくなっていたが、それでもまだまだあった。
「こんな命・・・・・・」
13になる2日前、手首を切った。
幸いにも早くに見つかり、処置が施されたせいで一命は取り留めた。
「あんたが死んだら、誰があんたら一家の残した借金を背負わなきゃならないのか分かってるの!あくまで姉さんの借金は姉さんのもの!あんたはまた売られるのよ。やっと買い手がついた。花街の椿亭だよ」
また、色子として売られるのか。
ああ、死んだほうがましなのに。
「椿亭でいい人でも見つけて身請けでもされれば、売られていった弟や妹たちも見つかるかもねぇ」
その言葉に一縷の希望を見出した。
そして、大人しく色子として売られていった。
浮竹が13の時だった。
「買ったはいいが、肺の病がなぁ・・・・。あの女のに騙されたか・・・・」
「女?」
「お前の母親の妹だよ」
買われた廓で、主人の松村が浮竹を見た。
「酷い親戚だよなぁ。借金を整理するために、姉の子供を全部売り払って・・・残ったお前さんも、うちの店に売りつけよった。借金なんて、するもんじゃないよ」
「俺は・・・・・・」
「死のうなんて、思わないことだ。売られて行った妹や弟たちに借金が重ねられて、きっと酷い目にあう」
手首に巻かれたままの包帯を、松村は手に取った。
「とりあえず、桜花(おうか)、この子を風呂で磨いてこい。それからちゃんとした食事を与えてあげなさい。それから、禿(かむろ)用の着物を着せて、化粧は紅だけさして、何か髪飾りをつけてあげてここに来るように」
松村に言いつけられて、遊女の桜花は浮竹の手をとった。
ざんばらに伸びた白い髪。ろくなものを食べさせてもらえなかったので、やせ細った体。湯あみもまともにできなくて、酷い状態だった。
久しぶりの湯で、石鹸で体をごしごし洗われると、汚れが良くとれた。ざんばらな髪もシャンプーで洗われて、久しぶりに真っ白の色にもどった。
「あらぁ、かわいい。上玉じゃないの」
湯あみをすませた浮竹は、幼いし痩せてはいたが、とても美しい子供だった。
焼き魚とみそ汁、白いご飯を出されれて、恥ずかしいがお腹がなった。
前にいた場所では、ろくに食べさせてもらえなかった。それが、母親の妹の住む、母の実家だった。祖父祖母も他界しており、形だけおいてもらえていたが、薬も与えられず、飯も満足に与えられなかった。
この廓にきて、久しぶりに肺の病の薬を飲むと、発作がましになり、血を吐かなかった。
すいていたお腹にはあらがえず、出された料理を全部食べてしまった。白いご飯を食べるなんて、何週間ぶりだろうか。いつも残飯しか与えられなかった。
着ていた襦袢の上に、禿用の女の子用の着物を着せられた。それから、ざんばらな髪は肩で切りそろえられて、少し結われて、銀細工でできた髪飾りをつけられ、元々肌が白いせいもあって、白粉はなしで唇に紅をひかれた。
「まぁまぁ、かわいいこと。これは松村様もいい買い物したわねぇ」
手をひかれて、廓の主人の松村の前につれてこられた。
「おやまぁ、驚いた。器量はよさそうだったが、ここまでとは。女なら、将来花魁になれただろうに。少し残念だ。まぁ、色子でもこれだけ綺麗な子だったら元はとれるだろう。名前はそうだなぁ・・・・瞳が緑だから、翡翠にしよう。これからは、翡翠と名乗りなさい」
手首の傷には、新しい包帯が巻かれていた。
「いいかい、花街は遊女にも色子にとっても苦海だ。いい人を見つけなさい。精一杯働いて、借金を返すんだ。身請けされば、きっと売られていった妹や弟も見つかる」
それだけが、浮竹の生きる希望だった。
その日から、1週間はあまりにも痩せていたために、食べて薬を飲んで、掃除などの簡単な雑用をさせられた。
「生きてやる・・・・」
浮竹は、この逆境で死のうと思っていたのに、生きる希望を見出しはじめていた。
身請けされなくてもいい。年季明けまで働いて金をためて、売られて行った妹や弟たちを買い戻そう。そう思った。
売られて半月がたったが、まだ雑用ばかりさせられていた。
ある日、花街の中の違う店まで着物を届けるお使いを頼まれた。
浮竹は大分肉もついて、人目を惹く綺麗な子供だった。遊女の着物を着ていたので、よく女に間違われた。
「確か、ここの店・・・・・」
柊亭と書かれた廓の暖簾をくぐる。
「おっと、ごめんよ」
一人の男とぶつかりそうになった。
「すみません」
浮竹は素直に謝った。
「君すごくかわいいね・・・・・何処の遊女?」
「え。椿亭の・・・・・」
「椿亭はこんな幼い遊女までいたかなぁ?まぁいいや、またね。僕は京楽春水。椿亭にいるなら、近々会うこともあるだろうさ」
少し毛深かったが、立派な体躯の美丈夫だった。整った顔立ちをしていたが、何処か愛嬌があった。
それが、この花街で有名な護廷13隊、8番隊の隊長であり、上級貴族である京楽春水との出会いであった。
「松村様、いわれてきたお使い、いってきました」
「ああ、翡翠、ごくろうだったね」
「京楽春水という方に会いました」
「ああ、京楽の坊ちゃんとあったのかい。京楽の坊ちゃんはね、この店を贔屓にしてくださっている上流貴族で、なんと護廷13隊の8番隊の隊長様であられるんだ。今、3階で花魁の椿といるはずだよ。そうだ、お酒を所望されていたんだ。もう一度挨拶するついでに、酒をもっていきなさい」
「はい・・・・・」
浮竹は、酒瓶と徳利(とっくり)を手に、3階にあがった。
「すみません、京楽さま、お酒をお持ちしました」
「入っておいで」
襖をあけると、半裸の花魁の椿と、全く衣服を乱していない京楽の姿があった。
「あん、京楽のだんな、お酒なんて後でいいじゃないの」
「まぁまぁ。椿、後で可愛がってあげるから」
「おや、君は柊亭で見た遊女の・・・・・・?」
浮竹は首を傾げる。遊女だなんて、一言も言っていないからだ。
「あははは。違うよ違うよ、その子、遊女の恰好をさせられているけど、男の子さ。最近きた、色子の翡翠っていうんだよ」
「色子かい。色子でもこんなかわいい子いるんだねぇ。おいで」
手招きされて、近寄ると、口に何かを放り込まれた。
「飴玉。これ全部そうだから、暇な時にでもお食べ」
甘い苺の味がした。
小さな袋に、たくさんの飴玉が入っていた。
「あ、ありがとうございます。し、失礼します」
浮竹は、涙を零した。
最後に飴玉を食べたのは、父と母が亡くなる2日前のことだった。その記憶がどっと溢れてきて
浮竹は涙を流しながら蹲った。
「父上母上・・・・・」
借金の果てに、色子にまで落ちた自分を呪いそうになった。
「おっと、まだいたのかい?」
「あ・・・」
「どうしたの、何を泣いているんだい?」
抱き上げられて、涙を吸い取られた。
「わっ」
当然抱き上げられたことにも、涙を吸い取られたことにも驚いた。なんとも手慣れたかんじだったが、嫌ではなかった。
「な、なんでもない!」
首をぶんぶんと横の振って、京楽の手から降りると、浮竹はもらった飴玉の袋を手に逃げ出した。
「翡翠か・・・・・可愛い子だなぁ」
京楽は、浮竹に興味を抱いたようだった。
浮竹は、肺の病を患っていた。他人にはうつらないが、よく咳込み血を吐いた。おまけに、病弱だった。
「こんな命・・・・・」
真っ白になってしまった髪を、かきむしる。
幼い妹や弟たちは、そのまま人買いに売られていった。
一人残されたのは長兄の浮竹十四郎。
病のせいで薬代がかさみ、親戚も引き取ってくれない。一度色子にと売りに出されたが、売られた場所で血を吐いて倒れ、元の家に戻された。
妹や弟たちが売られて行ったことで、借金は少なくなっていたが、それでもまだまだあった。
「こんな命・・・・・・」
13になる2日前、手首を切った。
幸いにも早くに見つかり、処置が施されたせいで一命は取り留めた。
「あんたが死んだら、誰があんたら一家の残した借金を背負わなきゃならないのか分かってるの!あくまで姉さんの借金は姉さんのもの!あんたはまた売られるのよ。やっと買い手がついた。花街の椿亭だよ」
また、色子として売られるのか。
ああ、死んだほうがましなのに。
「椿亭でいい人でも見つけて身請けでもされれば、売られていった弟や妹たちも見つかるかもねぇ」
その言葉に一縷の希望を見出した。
そして、大人しく色子として売られていった。
浮竹が13の時だった。
「買ったはいいが、肺の病がなぁ・・・・。あの女のに騙されたか・・・・」
「女?」
「お前の母親の妹だよ」
買われた廓で、主人の松村が浮竹を見た。
「酷い親戚だよなぁ。借金を整理するために、姉の子供を全部売り払って・・・残ったお前さんも、うちの店に売りつけよった。借金なんて、するもんじゃないよ」
「俺は・・・・・・」
「死のうなんて、思わないことだ。売られて行った妹や弟たちに借金が重ねられて、きっと酷い目にあう」
手首に巻かれたままの包帯を、松村は手に取った。
「とりあえず、桜花(おうか)、この子を風呂で磨いてこい。それからちゃんとした食事を与えてあげなさい。それから、禿(かむろ)用の着物を着せて、化粧は紅だけさして、何か髪飾りをつけてあげてここに来るように」
松村に言いつけられて、遊女の桜花は浮竹の手をとった。
ざんばらに伸びた白い髪。ろくなものを食べさせてもらえなかったので、やせ細った体。湯あみもまともにできなくて、酷い状態だった。
久しぶりの湯で、石鹸で体をごしごし洗われると、汚れが良くとれた。ざんばらな髪もシャンプーで洗われて、久しぶりに真っ白の色にもどった。
「あらぁ、かわいい。上玉じゃないの」
湯あみをすませた浮竹は、幼いし痩せてはいたが、とても美しい子供だった。
焼き魚とみそ汁、白いご飯を出されれて、恥ずかしいがお腹がなった。
前にいた場所では、ろくに食べさせてもらえなかった。それが、母親の妹の住む、母の実家だった。祖父祖母も他界しており、形だけおいてもらえていたが、薬も与えられず、飯も満足に与えられなかった。
この廓にきて、久しぶりに肺の病の薬を飲むと、発作がましになり、血を吐かなかった。
すいていたお腹にはあらがえず、出された料理を全部食べてしまった。白いご飯を食べるなんて、何週間ぶりだろうか。いつも残飯しか与えられなかった。
着ていた襦袢の上に、禿用の女の子用の着物を着せられた。それから、ざんばらな髪は肩で切りそろえられて、少し結われて、銀細工でできた髪飾りをつけられ、元々肌が白いせいもあって、白粉はなしで唇に紅をひかれた。
「まぁまぁ、かわいいこと。これは松村様もいい買い物したわねぇ」
手をひかれて、廓の主人の松村の前につれてこられた。
「おやまぁ、驚いた。器量はよさそうだったが、ここまでとは。女なら、将来花魁になれただろうに。少し残念だ。まぁ、色子でもこれだけ綺麗な子だったら元はとれるだろう。名前はそうだなぁ・・・・瞳が緑だから、翡翠にしよう。これからは、翡翠と名乗りなさい」
手首の傷には、新しい包帯が巻かれていた。
「いいかい、花街は遊女にも色子にとっても苦海だ。いい人を見つけなさい。精一杯働いて、借金を返すんだ。身請けされば、きっと売られていった妹や弟も見つかる」
それだけが、浮竹の生きる希望だった。
その日から、1週間はあまりにも痩せていたために、食べて薬を飲んで、掃除などの簡単な雑用をさせられた。
「生きてやる・・・・」
浮竹は、この逆境で死のうと思っていたのに、生きる希望を見出しはじめていた。
身請けされなくてもいい。年季明けまで働いて金をためて、売られて行った妹や弟たちを買い戻そう。そう思った。
売られて半月がたったが、まだ雑用ばかりさせられていた。
ある日、花街の中の違う店まで着物を届けるお使いを頼まれた。
浮竹は大分肉もついて、人目を惹く綺麗な子供だった。遊女の着物を着ていたので、よく女に間違われた。
「確か、ここの店・・・・・」
柊亭と書かれた廓の暖簾をくぐる。
「おっと、ごめんよ」
一人の男とぶつかりそうになった。
「すみません」
浮竹は素直に謝った。
「君すごくかわいいね・・・・・何処の遊女?」
「え。椿亭の・・・・・」
「椿亭はこんな幼い遊女までいたかなぁ?まぁいいや、またね。僕は京楽春水。椿亭にいるなら、近々会うこともあるだろうさ」
少し毛深かったが、立派な体躯の美丈夫だった。整った顔立ちをしていたが、何処か愛嬌があった。
それが、この花街で有名な護廷13隊、8番隊の隊長であり、上級貴族である京楽春水との出会いであった。
「松村様、いわれてきたお使い、いってきました」
「ああ、翡翠、ごくろうだったね」
「京楽春水という方に会いました」
「ああ、京楽の坊ちゃんとあったのかい。京楽の坊ちゃんはね、この店を贔屓にしてくださっている上流貴族で、なんと護廷13隊の8番隊の隊長様であられるんだ。今、3階で花魁の椿といるはずだよ。そうだ、お酒を所望されていたんだ。もう一度挨拶するついでに、酒をもっていきなさい」
「はい・・・・・」
浮竹は、酒瓶と徳利(とっくり)を手に、3階にあがった。
「すみません、京楽さま、お酒をお持ちしました」
「入っておいで」
襖をあけると、半裸の花魁の椿と、全く衣服を乱していない京楽の姿があった。
「あん、京楽のだんな、お酒なんて後でいいじゃないの」
「まぁまぁ。椿、後で可愛がってあげるから」
「おや、君は柊亭で見た遊女の・・・・・・?」
浮竹は首を傾げる。遊女だなんて、一言も言っていないからだ。
「あははは。違うよ違うよ、その子、遊女の恰好をさせられているけど、男の子さ。最近きた、色子の翡翠っていうんだよ」
「色子かい。色子でもこんなかわいい子いるんだねぇ。おいで」
手招きされて、近寄ると、口に何かを放り込まれた。
「飴玉。これ全部そうだから、暇な時にでもお食べ」
甘い苺の味がした。
小さな袋に、たくさんの飴玉が入っていた。
「あ、ありがとうございます。し、失礼します」
浮竹は、涙を零した。
最後に飴玉を食べたのは、父と母が亡くなる2日前のことだった。その記憶がどっと溢れてきて
浮竹は涙を流しながら蹲った。
「父上母上・・・・・」
借金の果てに、色子にまで落ちた自分を呪いそうになった。
「おっと、まだいたのかい?」
「あ・・・」
「どうしたの、何を泣いているんだい?」
抱き上げられて、涙を吸い取られた。
「わっ」
当然抱き上げられたことにも、涙を吸い取られたことにも驚いた。なんとも手慣れたかんじだったが、嫌ではなかった。
「な、なんでもない!」
首をぶんぶんと横の振って、京楽の手から降りると、浮竹はもらった飴玉の袋を手に逃げ出した。
「翡翠か・・・・・可愛い子だなぁ」
京楽は、浮竹に興味を抱いたようだった。
それから(泥酔と告白の続き)
泥酔したルキアにキスされて、告白しあった。1週間の滞在期間の間、一度だけ体を重ねた。
付き合いだして、まだ1か月も経っていない頃、また現世の任務でこちらの世界にきたルキアと会った。今回は、3日いられるらしい。
「やっぱ、白哉に会いに行くべきか?妹さんと付き合っていますって」
「兄様に殺されるから、やめておけ」
ルキアは、現世にくるのが楽しくて楽しくて仕方ないようだった。
一護も、ルキアと会える日を心待ちにしていた。
尸魂界も、大戦からやっと復興を始めていた。本当なら、ルキアは尸魂界で13番隊隊長代理として働かねばならないのだが、何かに理由をつけて現世にきていた。
「大丈夫なのか?こんなにほいほい現世にきて。尸魂界は今大戦からの復興中で忙しいんじゃないのか?」
「忙しいに決まっておろう!目が回る忙しさだ!でも、私の想いに気づいてくださった京楽総隊長が、特別に私に現世の虚退治の任務をくださるのだ」
「へえ、京楽さんがね」
「今日は特別だぞ!私が料理を作ってやろう!」
「え。なんか不安しかねぇんだけど」
「失礼なやつだな!私だって、料理くらいできる・・・・気がする・・・・・・」
過去を思い出す。兄様に食べてもらうために、白玉いりのお汁粉を、カレーを、最終的には明太子ののった白粥になってしまったが、他の料理を食べた者たちからはけっこういけるといわれた。
「それは、一護が作るほど美味しくないかもしれないが・・・・」
どんどん言葉と一緒に消極的になってきた。
「不安なんて嘘だって。お前が作ったものなら、激マズでも食うよ」
「激マズは余計だ!」
さて。冷蔵庫や野菜の入った棚を見る。人参、ジャガイモ、玉ねぎ。冷凍室には、むき海老をはじめとしたシーフードミックス。
ふと、冷蔵庫の横をみるとカレーのルーがあった。
「今日はシーフードカレーだ!」
「でた、小学生でも作れるカレー!」
「たわけ、貴様そんなことばっかり言っておると、食べさせてやらぬぞ」
「冗談だって。そんなにかっかするなよ」
一護は、ルキアを後ろから抱き締めた。
「ひゃあ」
耳元に息を吹き込まれて、変な声がでた。
「こら、一護!」
一護は笑ってTVをつけた。
つまらない番組ばかり流れていたので、適当にニュースを流す。
茶虎がボクシングの世界チャンピオンに挑むとの特集があり、ルキアも料理の手を止めて一緒にニュースを見た。
「茶虎は、我らの中で一番の有名人になってしまったな」
「ああ、凄いよな。世界チャンピオンか。きっと、茶虎ならなれるさ」
茶虎は、大学入学と共に本格的にボクシングを始めた。石田も医者を目指して医療大学に進んだし、井上はまだはっきりとした夢はないが、花屋や幼稚園の先生になりたいと言っていた気がする。
一護だけが、なんの夢も抱かずに大学に進学した。
尸魂界を守ることで終わった高校時代。全てが終われば、もう尸魂界とは関係のない現世をただ歩く。途方もなく広い世界を、一人で何をしたいかも分からぬまま。
ただ、ルキアと付き合いだして、ぼんやりと浮かんできた。
ルキアと一緒にいても、恥のない職を得ようと思った。できれば翻訳家になりたいと思い、語学の道を進みだそうとしていた。
ルキアが13番隊副隊長になったように、一護も変わろうとしていた。
「野菜を炒めて、玉ねぎが飴色になったら・・・鍋に放り込んで、シーフードスペシャルを適量いれて、湯をたして最後にカレーのルーを・・・ぬおおおお、入れすぎた。お湯をたして・・・ぬおおおおお、ふきこぼれる!別の鍋も出そう」
「大丈夫かよ、ルキアのやつ・・・・・」
一護は、心配になってきた。
「できたぞ、一護!」
「おー。見た目はましだな・・・って、こんなにいっぱい作ってどうするつもりだーー!!」
大鍋2つ分のカレーを指さす。
「朝昼夜毎日カレーを2,3日続ければどうってことはない!」
「毎日毎食カレーかよ!勘弁してくれ」
「むう。勿体ないが、捨てるか?」
「せっかくルキアが作ってくれたんだ。根性で食べる。残った分は腐らないように冷蔵庫にいれとけば、2~3日ならもつだろ。だからルキア、お前も責任をもって食べろ!」
「わ、分かった・・・」
「んー。味は悪くねぇな」
「美味いか?」
「ああ、けっこう美味いぜ」
おっしゃと、ルキアはガッツポーズをとった。
料理の腕では一護に適わないが、その一護に美味いといわせたのだ。やれなできるじゃないか自分と思いながら、自分の分のカレーも食べた。
「少し、辛いな」
「俺はこれくらいがちょうどいいけどな」
「確か、蜂蜜があったな。あれを少しいれたい」
「自分の分だけにしろよ」
「分かっておる」
結局、蜂蜜をかけすぎて、甘くて全然カレーの味のしないものを食べる羽目になるルキアであった。
おまけにカレーをこぼして、ワンピースにシミがついた。お気に入りのワンピースだったのに。
一護が、シミ抜きをして綺麗に洗えるからと、後のことは一護に託した。
湯あみをすませると、着る服がなくて、一護のスウェットの上下を借りた。
「だぼだぼだ」
それを見た一護は、いろいろと我慢していた。
「あーもう、お前はかわいいな」
「そうか?それより前に預けておいたワンピースはこの部屋に残しておるな?」
マーメイドワンピースを経費で何着かかって、一護の部屋のクローゼットに入れておいたのだ。
「ああちゃんと残してあるぜ」
「それならよいのだ」
その日は、久しぶりだったので貪りあうように体を重ねた。
次の日は、あいにくの雨だった。
「むう。布団を干そうと思っていたのだが」
綺麗に染み抜きされた、お気に入りのワンピースは室内で干された。もう、半袖のワンピースの季節は過ぎて、長袖のワンピースの上に上着を羽織っていた。これも経費というか、白哉から経費としてもたされた現金から買った。
一護は大学で、ルキアもついていった。
「お、また彼女連れじゃん」
友人が、ルキアを見て手を振る。
ルキアは、見た目だけなら深窓の令嬢で通るような、美少女だ。少しはねた黒い髪に、アメジスト色の瞳が特徴的だった。
「ルキアちゃんだっけ。何処住んでるの?」
「尸魂界」
「そう・・・・?外国?」
「ルキア、行くぞ」
授業が終わり、いつもなら歓迎なのだが、今回はルキアを連れているので他の友人に来てほしくなかった。
ルキアを独り占めしたい。そんな気持ちでいっぱいだった。
できれば家に置いてきたかったが、ルキアが暇でつまらないし、一護の傍にいたいというので、前回来た時のように大学に連れてきた。
「おはよう黒崎君・・・朽木さん、また現世にこれたんだ」
バチバチバチ。ルキアと井上は、目線で争いあっていた。
「一護は渡さぬぞ!」
「朽木さんがいない間、黒崎君を独り占めするからいいもん!」
「ぐぬぬぬぬ」
「むむむむむ」
「ほらほら、二人ともあほなことやってないで、昼飯食いに食堂にいくぞ」
そんな3人の姿を見ていた一護の友人たちは、両手に花で羨ましいと、見ているのだった。
「最近、伝令神機で出たと言われる虚を退治しにくと、全く虚が出現しないのだが、何かあるのだろうか」
「いや、平和なんだからいいんじゃね?」
「それが・・・・伝令神機には確かに出たと出るのだ」
「伝令神機の故障じゃね?」
「うーむ」
井上が、天ぷら丼を手に帰ってきた。
「ほら、朽木さんの分」
「すまぬ、金はこれで足りるか?」
1万円札を3枚出したルキアの頭をはたく一護。
「たわけ、何をするのだ!痛いではないか」
「相変わらず、金銭感覚麻痺してやがんな。千円札1枚もあれば十分なんだよ。500円玉でも十分だ」
天ぷら丼は、370円だった。
「ふうむ。兄様に、何事も1万円札なるものをさしだせば万事解決と言われたのだが」
「白哉の教育が間違ってるな」
「兄様は悪くない!悪いのは、この現世だ」
「うわーすごいブラコン」
一護が引くと、ルキアは真っ赤になった。
「ブ、ブラコンで悪いか!私は兄様が貴様と同じくらい好きなのだ!」
「誰も悪いなんていってねーだろ」
「あはははは」
井上が笑い出した。
「黒崎君と朽木さんって、面白い」
「一護は渡さぬぞ」
「むむっ」
「いいから、食べ終われ。昼休みが終わっちまう」
次の授業は、少人数制のためにルキアは一緒に授業を受けれず、大学の校内で、ぶらぶらしていた。あいにくと、井上も授業だった。
「ねぇ、君、見かけない顔だけど・・・・」
「はい?」
見知らぬ男にからまれた。なんだかんだと言いくるめられて、車に乗せられそうになったところに、一護がかけつけてきた。
「てめぇ!」
「うわ、黒崎だ!やべぇ、逃げろ!」
男の一人を殴った。
「ひい、助けて!」
「てめぇら、ルキアに何しようとしてた!」
「な、何もしてません!」
「てめぇら、前は井上に同じことしようとしてたな。この野郎、ふざけやがって!」
取り残された男は二人だった。運転しようとしていた男と、ルキアを乗せようとしていた男。
「やめぬか、一護!」
「お前、もう少し自分の身の心配をしろ!こいつら、女の子連れ去って、悪戯するって有名な屑やろうどもだぞ!」
ルキアと言い争っている間に、男たちは逃げて行った。
「一護、私は死神だ。自分の身を守る術くらい、心得ておる」
「それでも、心配になるだろうが!」
「すまぬ。私が悪かった・・・・もう、見知らぬ男にはついてゆかぬ」
「約束だぞ」
「ああ」
ルキアを抱き締めた。騒ぎが大きくなる前に、撤退する。井上にも注意するように説明して、その日は帰った。
「今日はなんと!カレーうどんだ!」
「カレーにはかわりねぇ」
「作りすぎたのだ、仕方なかろう!」
「俺とお前でカレー食い終わったら、しばらくカレーはなしにしようぜ」
「同意見だ」
結局、ルキアが滞在できる3日間はすぐに過ぎてしまった。
「また必ずくる!だから、井上と浮気などするなよ!」
穿界門が開けられる。
「そういうお前も、恋次と浮気するなよ!」
伝令神機でメールのやりとりをしだすことにした。
(またな)
(またくる、一護。愛している)
(俺も愛してる、ルキア)
言えなかった言葉をメールで伝えた。
世界は廻る。
時は流れる。
偽りと真実と。生と死と。人間と死神と。
決して混じり合わぬものが、混じり合おうとしていた。
付き合いだして、まだ1か月も経っていない頃、また現世の任務でこちらの世界にきたルキアと会った。今回は、3日いられるらしい。
「やっぱ、白哉に会いに行くべきか?妹さんと付き合っていますって」
「兄様に殺されるから、やめておけ」
ルキアは、現世にくるのが楽しくて楽しくて仕方ないようだった。
一護も、ルキアと会える日を心待ちにしていた。
尸魂界も、大戦からやっと復興を始めていた。本当なら、ルキアは尸魂界で13番隊隊長代理として働かねばならないのだが、何かに理由をつけて現世にきていた。
「大丈夫なのか?こんなにほいほい現世にきて。尸魂界は今大戦からの復興中で忙しいんじゃないのか?」
「忙しいに決まっておろう!目が回る忙しさだ!でも、私の想いに気づいてくださった京楽総隊長が、特別に私に現世の虚退治の任務をくださるのだ」
「へえ、京楽さんがね」
「今日は特別だぞ!私が料理を作ってやろう!」
「え。なんか不安しかねぇんだけど」
「失礼なやつだな!私だって、料理くらいできる・・・・気がする・・・・・・」
過去を思い出す。兄様に食べてもらうために、白玉いりのお汁粉を、カレーを、最終的には明太子ののった白粥になってしまったが、他の料理を食べた者たちからはけっこういけるといわれた。
「それは、一護が作るほど美味しくないかもしれないが・・・・」
どんどん言葉と一緒に消極的になってきた。
「不安なんて嘘だって。お前が作ったものなら、激マズでも食うよ」
「激マズは余計だ!」
さて。冷蔵庫や野菜の入った棚を見る。人参、ジャガイモ、玉ねぎ。冷凍室には、むき海老をはじめとしたシーフードミックス。
ふと、冷蔵庫の横をみるとカレーのルーがあった。
「今日はシーフードカレーだ!」
「でた、小学生でも作れるカレー!」
「たわけ、貴様そんなことばっかり言っておると、食べさせてやらぬぞ」
「冗談だって。そんなにかっかするなよ」
一護は、ルキアを後ろから抱き締めた。
「ひゃあ」
耳元に息を吹き込まれて、変な声がでた。
「こら、一護!」
一護は笑ってTVをつけた。
つまらない番組ばかり流れていたので、適当にニュースを流す。
茶虎がボクシングの世界チャンピオンに挑むとの特集があり、ルキアも料理の手を止めて一緒にニュースを見た。
「茶虎は、我らの中で一番の有名人になってしまったな」
「ああ、凄いよな。世界チャンピオンか。きっと、茶虎ならなれるさ」
茶虎は、大学入学と共に本格的にボクシングを始めた。石田も医者を目指して医療大学に進んだし、井上はまだはっきりとした夢はないが、花屋や幼稚園の先生になりたいと言っていた気がする。
一護だけが、なんの夢も抱かずに大学に進学した。
尸魂界を守ることで終わった高校時代。全てが終われば、もう尸魂界とは関係のない現世をただ歩く。途方もなく広い世界を、一人で何をしたいかも分からぬまま。
ただ、ルキアと付き合いだして、ぼんやりと浮かんできた。
ルキアと一緒にいても、恥のない職を得ようと思った。できれば翻訳家になりたいと思い、語学の道を進みだそうとしていた。
ルキアが13番隊副隊長になったように、一護も変わろうとしていた。
「野菜を炒めて、玉ねぎが飴色になったら・・・鍋に放り込んで、シーフードスペシャルを適量いれて、湯をたして最後にカレーのルーを・・・ぬおおおお、入れすぎた。お湯をたして・・・ぬおおおおお、ふきこぼれる!別の鍋も出そう」
「大丈夫かよ、ルキアのやつ・・・・・」
一護は、心配になってきた。
「できたぞ、一護!」
「おー。見た目はましだな・・・って、こんなにいっぱい作ってどうするつもりだーー!!」
大鍋2つ分のカレーを指さす。
「朝昼夜毎日カレーを2,3日続ければどうってことはない!」
「毎日毎食カレーかよ!勘弁してくれ」
「むう。勿体ないが、捨てるか?」
「せっかくルキアが作ってくれたんだ。根性で食べる。残った分は腐らないように冷蔵庫にいれとけば、2~3日ならもつだろ。だからルキア、お前も責任をもって食べろ!」
「わ、分かった・・・」
「んー。味は悪くねぇな」
「美味いか?」
「ああ、けっこう美味いぜ」
おっしゃと、ルキアはガッツポーズをとった。
料理の腕では一護に適わないが、その一護に美味いといわせたのだ。やれなできるじゃないか自分と思いながら、自分の分のカレーも食べた。
「少し、辛いな」
「俺はこれくらいがちょうどいいけどな」
「確か、蜂蜜があったな。あれを少しいれたい」
「自分の分だけにしろよ」
「分かっておる」
結局、蜂蜜をかけすぎて、甘くて全然カレーの味のしないものを食べる羽目になるルキアであった。
おまけにカレーをこぼして、ワンピースにシミがついた。お気に入りのワンピースだったのに。
一護が、シミ抜きをして綺麗に洗えるからと、後のことは一護に託した。
湯あみをすませると、着る服がなくて、一護のスウェットの上下を借りた。
「だぼだぼだ」
それを見た一護は、いろいろと我慢していた。
「あーもう、お前はかわいいな」
「そうか?それより前に預けておいたワンピースはこの部屋に残しておるな?」
マーメイドワンピースを経費で何着かかって、一護の部屋のクローゼットに入れておいたのだ。
「ああちゃんと残してあるぜ」
「それならよいのだ」
その日は、久しぶりだったので貪りあうように体を重ねた。
次の日は、あいにくの雨だった。
「むう。布団を干そうと思っていたのだが」
綺麗に染み抜きされた、お気に入りのワンピースは室内で干された。もう、半袖のワンピースの季節は過ぎて、長袖のワンピースの上に上着を羽織っていた。これも経費というか、白哉から経費としてもたされた現金から買った。
一護は大学で、ルキアもついていった。
「お、また彼女連れじゃん」
友人が、ルキアを見て手を振る。
ルキアは、見た目だけなら深窓の令嬢で通るような、美少女だ。少しはねた黒い髪に、アメジスト色の瞳が特徴的だった。
「ルキアちゃんだっけ。何処住んでるの?」
「尸魂界」
「そう・・・・?外国?」
「ルキア、行くぞ」
授業が終わり、いつもなら歓迎なのだが、今回はルキアを連れているので他の友人に来てほしくなかった。
ルキアを独り占めしたい。そんな気持ちでいっぱいだった。
できれば家に置いてきたかったが、ルキアが暇でつまらないし、一護の傍にいたいというので、前回来た時のように大学に連れてきた。
「おはよう黒崎君・・・朽木さん、また現世にこれたんだ」
バチバチバチ。ルキアと井上は、目線で争いあっていた。
「一護は渡さぬぞ!」
「朽木さんがいない間、黒崎君を独り占めするからいいもん!」
「ぐぬぬぬぬ」
「むむむむむ」
「ほらほら、二人ともあほなことやってないで、昼飯食いに食堂にいくぞ」
そんな3人の姿を見ていた一護の友人たちは、両手に花で羨ましいと、見ているのだった。
「最近、伝令神機で出たと言われる虚を退治しにくと、全く虚が出現しないのだが、何かあるのだろうか」
「いや、平和なんだからいいんじゃね?」
「それが・・・・伝令神機には確かに出たと出るのだ」
「伝令神機の故障じゃね?」
「うーむ」
井上が、天ぷら丼を手に帰ってきた。
「ほら、朽木さんの分」
「すまぬ、金はこれで足りるか?」
1万円札を3枚出したルキアの頭をはたく一護。
「たわけ、何をするのだ!痛いではないか」
「相変わらず、金銭感覚麻痺してやがんな。千円札1枚もあれば十分なんだよ。500円玉でも十分だ」
天ぷら丼は、370円だった。
「ふうむ。兄様に、何事も1万円札なるものをさしだせば万事解決と言われたのだが」
「白哉の教育が間違ってるな」
「兄様は悪くない!悪いのは、この現世だ」
「うわーすごいブラコン」
一護が引くと、ルキアは真っ赤になった。
「ブ、ブラコンで悪いか!私は兄様が貴様と同じくらい好きなのだ!」
「誰も悪いなんていってねーだろ」
「あはははは」
井上が笑い出した。
「黒崎君と朽木さんって、面白い」
「一護は渡さぬぞ」
「むむっ」
「いいから、食べ終われ。昼休みが終わっちまう」
次の授業は、少人数制のためにルキアは一緒に授業を受けれず、大学の校内で、ぶらぶらしていた。あいにくと、井上も授業だった。
「ねぇ、君、見かけない顔だけど・・・・」
「はい?」
見知らぬ男にからまれた。なんだかんだと言いくるめられて、車に乗せられそうになったところに、一護がかけつけてきた。
「てめぇ!」
「うわ、黒崎だ!やべぇ、逃げろ!」
男の一人を殴った。
「ひい、助けて!」
「てめぇら、ルキアに何しようとしてた!」
「な、何もしてません!」
「てめぇら、前は井上に同じことしようとしてたな。この野郎、ふざけやがって!」
取り残された男は二人だった。運転しようとしていた男と、ルキアを乗せようとしていた男。
「やめぬか、一護!」
「お前、もう少し自分の身の心配をしろ!こいつら、女の子連れ去って、悪戯するって有名な屑やろうどもだぞ!」
ルキアと言い争っている間に、男たちは逃げて行った。
「一護、私は死神だ。自分の身を守る術くらい、心得ておる」
「それでも、心配になるだろうが!」
「すまぬ。私が悪かった・・・・もう、見知らぬ男にはついてゆかぬ」
「約束だぞ」
「ああ」
ルキアを抱き締めた。騒ぎが大きくなる前に、撤退する。井上にも注意するように説明して、その日は帰った。
「今日はなんと!カレーうどんだ!」
「カレーにはかわりねぇ」
「作りすぎたのだ、仕方なかろう!」
「俺とお前でカレー食い終わったら、しばらくカレーはなしにしようぜ」
「同意見だ」
結局、ルキアが滞在できる3日間はすぐに過ぎてしまった。
「また必ずくる!だから、井上と浮気などするなよ!」
穿界門が開けられる。
「そういうお前も、恋次と浮気するなよ!」
伝令神機でメールのやりとりをしだすことにした。
(またな)
(またくる、一護。愛している)
(俺も愛してる、ルキア)
言えなかった言葉をメールで伝えた。
世界は廻る。
時は流れる。
偽りと真実と。生と死と。人間と死神と。
決して混じり合わぬものが、混じり合おうとしていた。
果たし状
「果たし状。今日の午後3時に、屋上に来られたし。重要な話がある」
「なんだ、京楽。果たし状なんてもらったのか?」
浮竹と京楽共通の友人の一人が、それを見て古風だなと笑った。
「誰だからだよ?」
「さぁ・・・・・名前が書いていない。でもこの文字の形何処かで見覚えが」
「そういえば、浮竹は?」
「なんか用事があるとかで先に帰っちまったぜー」
京楽は、果たし状を無視しようかとも思ったが、文字の形を見てもしかしたらと思い、授業が終わって3時に屋上にやってきた。
風が強かった。
京楽の、短い黒髪が乱される。
「やっぱり、君か。どうしたんだい、果たし状なんて」
浮竹が、肩より長くなった髪を風に遊ばせて、佇んでいた。
「人生の果たし状だから」
「どうしたの」
「お前のことが好きだ」
「え」
京楽は、もっていた果たし状の紙を風にさらわれていってしまった。
「浮竹?」
「冗談じゃないんだ。恋愛感情でお前のことが好きなんだ。付き合ってくれとは言わない。ただ、好きだということを知っていてほしい」
「僕は女の子が好きなんだよ?浮竹が僕を好きだって言っても、蔑ろにして女の子と付き合うよ?」
「それでも構わない。お前の傍にいれるなら、それだけでいい」
ああ。
浮竹は美しい。これで女性だったら、何の問題もないのだが。
「君の気持ちはわかった。でも、今まで通り、友人でいいね?」
「構わない」
それは院生3回生の出来事。
相変わらず、京楽は女遊びが激しいし、廓で花魁や遊女を買っていた。
ある日、浮竹を連れて花街に遊びにいった。中性的な衣服を着ていた浮竹を、遊女や色子に間違えられて、京楽の想い人に間違われた。
「京楽、何処に行くんだ?」
「君も、女の子の味を知ると、きっと僕なんて好きでなくなるよ。この花街で一番の廓へいく。椿亭だ」
椿亭につくと、上客である京楽を、店の主人と女将が出迎えた。
「僕には椿姫を。この子には、手慣れた遊女がいい・・・・そうだね、桜花なんてどうだろう」
「失礼ですが、この方は?京楽坊ちゃんの想い人ではないのですか?」
「違うよ。友人さ」
浮竹は、京楽があげた服に髪飾りをつけていた。花街に入ってからは、容姿のせいで背の高い遊女か、色子に間違われた。
「初めでですかい?」
「うん、そうなんだ。桜花なら、安心して任せれるかなって思って」
「そうですか。お名前は?」
「浮竹だ」
そのまま、京楽は椿姫という花魁と、そして浮竹は桜花という遊女と一晩を過ごした。
「どうだったい、初めての経験は」
浮竹は朱くなりながらこう言った。
「最後まで、できなかった。その、たたなくて」
「はは、まぁそういう時もあるよ。僕も最初の時はたたなくて、苦労したものさ」
結局、初体験はできないまま、花街を去った。
そのまま時だけが過ぎていく。
5回生になった頃、ある日京楽は珍しいことに酔っぱらって帰ってきた。同じ寮の部屋の浮竹は、京楽を介抱しとうとして、押し倒された。
「僕と、こういう関係を望んでいるんでしょう?」
「京楽?んっ・・・・・・」
京楽にキスされて、浮竹は上ずった声をあげた。
「優しくしてあげるから」
そのまま、酔った勢いで京楽に抱かれた。
朝起きると、隣に裸に近い浮竹がいて、昨日のことを思いだす。すごい快感だった。今まで味わってきたどの女よりよかったし、浮竹はとても愛らしかった。
でも、ほぼ酒の力を借りた無理やりだった。
「はー。可愛かったなぁ」
浮竹の肩より長い白髪を撫でる。
「んっ・・・京楽?」
「浮竹、そのごめん!君に対して、誠実じゃなかった。酒の力でなんて、最悪だ」
「俺は別に、それでも構わない。京楽に抱かれて嬉しかった」
はにかむように笑う浮竹を抱き締める。
「ごめん。責任はとるから」
「責任?」
「君の初めてをいただいてしまった。付き合おう、浮竹」
「無理していないか?俺は、今まで通りの友人関係でも構わない」
「はっきりいうと、もう一度抱きたい」
かっと、浮竹が朱くなった。
「京楽・・・・・んっ」
ディープキスをされて、浮竹は京楽を抱き締めた。
「俺でいいなら、付き合ってくれ」
「今の彼女とは別れる。廓にもいかないようにする。その上で浮竹と付き合う。それでいいね?」
「ああ・・・・・・」
浮竹は微笑んだ。
とても愛らしいと思った。
それからの京楽は、浮竹ばかりを見て、追いかけていた。5回生の終わりに正式に付き合いだした。
友人にもその関係を知られるが、ごく普通に受け入れられた。浮竹と体を重ねるのが好きで、浮竹の行動に支障が出ない程度に、また病弱で肺の病をもつことを念頭に、浮竹を抱いた。
花魁や遊女のように、体の関係だけではない。精神的にも愛していた。
ある時、99本の黒い薔薇をもってこられて、プロポーズを受けた。
「99本の薔薇は、永遠の愛。黒薔薇の花言葉は変らない愛。全てを、君に」
エンゲージリングをさしだすと、浮竹は泣きだしてしまった。
「浮竹、どこか具合が悪いの?」
「違う。嬉しすぎて、泣いている」
永遠の変わらぬ愛を誓って。
やがて、学院を卒業するときがやってきた。
「あの時、果たし状みたいなバカな真似をしてよかったと思う」
「僕も、あの字を見て、君だろうなと思ったんだ。でも、なんで果たし状?」
「人生をかけた、選択だから」
「お互い、死神の席官になることが決まっている。暇ができたら、飲みにいったりしよう」
「ああ、二人で隊長にまで昇りつめよう」
その数年後、若くして二人は隊長となった。
その二人が、逢瀬を重ねているのは秘密だった。
だけど、副官あたりには気づかれているようだった。
「隊長の今もいいけど、院生時代にもう一度戻りたいなぁ。自由に遊べたから」
「せっかく隊長になったんだ。昔は懐かしむだけでいい」
「浮竹、髪伸びたね」
「お前が切るなというから・・・」
腰まで伸びた髪を一房すくいあげて、口づける。
「どうか、この関係がずっと続きますように」
「永遠があればいいのにな・・・・・・・」
その後、数百年を共に生きた。
想いは永遠に似ていて。
世界は廻っている。
いつか、別れが来るときまで。
永遠を胸に抱いて、生きる。
「なんだ、京楽。果たし状なんてもらったのか?」
浮竹と京楽共通の友人の一人が、それを見て古風だなと笑った。
「誰だからだよ?」
「さぁ・・・・・名前が書いていない。でもこの文字の形何処かで見覚えが」
「そういえば、浮竹は?」
「なんか用事があるとかで先に帰っちまったぜー」
京楽は、果たし状を無視しようかとも思ったが、文字の形を見てもしかしたらと思い、授業が終わって3時に屋上にやってきた。
風が強かった。
京楽の、短い黒髪が乱される。
「やっぱり、君か。どうしたんだい、果たし状なんて」
浮竹が、肩より長くなった髪を風に遊ばせて、佇んでいた。
「人生の果たし状だから」
「どうしたの」
「お前のことが好きだ」
「え」
京楽は、もっていた果たし状の紙を風にさらわれていってしまった。
「浮竹?」
「冗談じゃないんだ。恋愛感情でお前のことが好きなんだ。付き合ってくれとは言わない。ただ、好きだということを知っていてほしい」
「僕は女の子が好きなんだよ?浮竹が僕を好きだって言っても、蔑ろにして女の子と付き合うよ?」
「それでも構わない。お前の傍にいれるなら、それだけでいい」
ああ。
浮竹は美しい。これで女性だったら、何の問題もないのだが。
「君の気持ちはわかった。でも、今まで通り、友人でいいね?」
「構わない」
それは院生3回生の出来事。
相変わらず、京楽は女遊びが激しいし、廓で花魁や遊女を買っていた。
ある日、浮竹を連れて花街に遊びにいった。中性的な衣服を着ていた浮竹を、遊女や色子に間違えられて、京楽の想い人に間違われた。
「京楽、何処に行くんだ?」
「君も、女の子の味を知ると、きっと僕なんて好きでなくなるよ。この花街で一番の廓へいく。椿亭だ」
椿亭につくと、上客である京楽を、店の主人と女将が出迎えた。
「僕には椿姫を。この子には、手慣れた遊女がいい・・・・そうだね、桜花なんてどうだろう」
「失礼ですが、この方は?京楽坊ちゃんの想い人ではないのですか?」
「違うよ。友人さ」
浮竹は、京楽があげた服に髪飾りをつけていた。花街に入ってからは、容姿のせいで背の高い遊女か、色子に間違われた。
「初めでですかい?」
「うん、そうなんだ。桜花なら、安心して任せれるかなって思って」
「そうですか。お名前は?」
「浮竹だ」
そのまま、京楽は椿姫という花魁と、そして浮竹は桜花という遊女と一晩を過ごした。
「どうだったい、初めての経験は」
浮竹は朱くなりながらこう言った。
「最後まで、できなかった。その、たたなくて」
「はは、まぁそういう時もあるよ。僕も最初の時はたたなくて、苦労したものさ」
結局、初体験はできないまま、花街を去った。
そのまま時だけが過ぎていく。
5回生になった頃、ある日京楽は珍しいことに酔っぱらって帰ってきた。同じ寮の部屋の浮竹は、京楽を介抱しとうとして、押し倒された。
「僕と、こういう関係を望んでいるんでしょう?」
「京楽?んっ・・・・・・」
京楽にキスされて、浮竹は上ずった声をあげた。
「優しくしてあげるから」
そのまま、酔った勢いで京楽に抱かれた。
朝起きると、隣に裸に近い浮竹がいて、昨日のことを思いだす。すごい快感だった。今まで味わってきたどの女よりよかったし、浮竹はとても愛らしかった。
でも、ほぼ酒の力を借りた無理やりだった。
「はー。可愛かったなぁ」
浮竹の肩より長い白髪を撫でる。
「んっ・・・京楽?」
「浮竹、そのごめん!君に対して、誠実じゃなかった。酒の力でなんて、最悪だ」
「俺は別に、それでも構わない。京楽に抱かれて嬉しかった」
はにかむように笑う浮竹を抱き締める。
「ごめん。責任はとるから」
「責任?」
「君の初めてをいただいてしまった。付き合おう、浮竹」
「無理していないか?俺は、今まで通りの友人関係でも構わない」
「はっきりいうと、もう一度抱きたい」
かっと、浮竹が朱くなった。
「京楽・・・・・んっ」
ディープキスをされて、浮竹は京楽を抱き締めた。
「俺でいいなら、付き合ってくれ」
「今の彼女とは別れる。廓にもいかないようにする。その上で浮竹と付き合う。それでいいね?」
「ああ・・・・・・」
浮竹は微笑んだ。
とても愛らしいと思った。
それからの京楽は、浮竹ばかりを見て、追いかけていた。5回生の終わりに正式に付き合いだした。
友人にもその関係を知られるが、ごく普通に受け入れられた。浮竹と体を重ねるのが好きで、浮竹の行動に支障が出ない程度に、また病弱で肺の病をもつことを念頭に、浮竹を抱いた。
花魁や遊女のように、体の関係だけではない。精神的にも愛していた。
ある時、99本の黒い薔薇をもってこられて、プロポーズを受けた。
「99本の薔薇は、永遠の愛。黒薔薇の花言葉は変らない愛。全てを、君に」
エンゲージリングをさしだすと、浮竹は泣きだしてしまった。
「浮竹、どこか具合が悪いの?」
「違う。嬉しすぎて、泣いている」
永遠の変わらぬ愛を誓って。
やがて、学院を卒業するときがやってきた。
「あの時、果たし状みたいなバカな真似をしてよかったと思う」
「僕も、あの字を見て、君だろうなと思ったんだ。でも、なんで果たし状?」
「人生をかけた、選択だから」
「お互い、死神の席官になることが決まっている。暇ができたら、飲みにいったりしよう」
「ああ、二人で隊長にまで昇りつめよう」
その数年後、若くして二人は隊長となった。
その二人が、逢瀬を重ねているのは秘密だった。
だけど、副官あたりには気づかれているようだった。
「隊長の今もいいけど、院生時代にもう一度戻りたいなぁ。自由に遊べたから」
「せっかく隊長になったんだ。昔は懐かしむだけでいい」
「浮竹、髪伸びたね」
「お前が切るなというから・・・」
腰まで伸びた髪を一房すくいあげて、口づける。
「どうか、この関係がずっと続きますように」
「永遠があればいいのにな・・・・・・・」
その後、数百年を共に生きた。
想いは永遠に似ていて。
世界は廻っている。
いつか、別れが来るときまで。
永遠を胸に抱いて、生きる。
夫婦
10番隊に遊びにきた浮竹は、天気もいいのか、茶菓子を口にして茶を飲むと、そのまま長椅子に座ったまま眠ってしまった。
それを見て、京楽が勝手に隊首室から毛布をもってきて、浮竹にかけてやった。そしてその隣で、京楽も眠りだした。
「・・・・・・・なんだかなぁ」
「息がぴったりですね」
日番谷は、ここは10番隊の執務室だと叫ぼうとして、やめてしまった。
浮竹が、あまりに幸せそうに眠っていたせいでもあるし、その姿を見て安心して京楽もすやすやと静かな寝息をたてて眠ってしまったからだ。
「まぁ、静かだしこのままにしとくか」
「うわ、珍しく隊長が優しい!明日は雪じゃなくって槍が降りますね!」
「松本ぉ!お前は仕事をしろ!」
「やーん隊長、浮竹隊長と京楽隊長、幸せそう。まるで夫婦ですね」
「夫婦か・・・・・・・」
ふむと、納得する。
尸魂界で一番熱いカップルはと聞いたら、100%浮竹と京楽と答えが返ってくるだろう。
それほど仲が良いと知れ渡っているのだ。
夫婦、と言われても二人は否定しないだろう。
もしも尸魂界で男同士で籍をいれられたら、二人は婚姻して確実に籍を入れるだろう。
「京楽はちょっと浮竹に甘かったり、薬盛ったり、変態行為をしたりいろいろと問題はあるが、基本は優しいしな。浮竹は文句のつけようもなしで優しい。二人の間に子供ができるとしたら、多分浮竹に似て品性のいい子供がきるだろうな・・・・・ってなんでこんな想像してるんだ俺」
「隊長~。二人に大分毒されてますね~」
松本がにまにましていた。
松本にいらなくなって丸めた紙を投げて、再び怒鳴る。
「松本お、腐った脳と腐った目と腐った耳しかないのか!写真とってないで仕事しろお!」
「はーい」
今日は、松本も素直に・・・・と思ったら、二人を見ながら何かを打っていた。
「何してやがる」
背後から回って見てみると、伝令神機を使って京楽×浮竹の腐った小説を書いていた。
「京楽は、そっと浮竹の白い肌に手をかけて、言う。「綺麗だよ十四郎」浮竹はやや視線を伏せて、京楽の・・・・・・・お前は、何を打ってるんだ」
「いやぁ、だから京楽隊長と浮竹隊長の寝顔を見ていたら、執筆の神さまが降りてきて」
「変なものを降臨させるな!」
「ん・・・・・」
浮竹が、身を捩った。
「隊長、ちょっと静かに!」
小声で、松本が言う。
「せっかく幸せそうに寝てるんですから、邪魔しちゃ悪いですよ!」
「邪魔をするも何も、ここは10番隊の執務室なんだがな・・・・・」
「まぁ細かいことはいいじゃないですか!」
「細かいことか、これ?」
結局2時間ばかり寝て、二人は起きた。
「あーよく寝た」
「おはよう、浮竹」
京楽に、おはようのあいさつのキスをされて、浮竹もそれに応えた。
「おい、ここが10番隊の執務室だってこと、忘れてねーか?」
「ああ、日番谷隊長おはよう。いやぁ、昨日は京楽がしつこくて寝かせてくれなくて、ついつい寝てしまった」
「おい京楽、浮竹にあまり無理をさせるなよ」
「分かってるよ。日番谷隊長は、まるでお母さんだね」
「は?」
ぴきっと、イラついた。
「浮竹を大事にしろとか、まるで浮竹のお母さんみたい」
「そういうお前らは夫婦だもんな」
「やっぱそう見える?」
京楽はでれでれしていた。
「京楽の妻になんてなりたくない!」
浮竹が叫んだ。
「ええっ、浮竹、お嫁さんにきてくれないの」
「お前が嫁に来い!俺は長男でお前は次男だろう!」
「え、いってもいいならいっちゃうよ。白無垢でも着ようか?」
京楽の白無垢姿を想像して、浮竹も日番谷も気分が悪くなった。
「京楽なら、本当に着そうだな・・・・・・」
「まじで想像しちまった・・・・・鳥肌たった」
日番谷は、何かめもをとっている松本を呼んだ。
「松本、茶をいれてくれ」
「はいはい。私の分もいれて、3人分ですね」
「おい、一人分足りないぞ」
「隊長は、自分の分は自分でしろっておしゃったから、自分でお茶いれてくださいね」
「松本おおおおおおお!!!」
日番谷の怒声が、今日も10番隊の執務室で響く。
「浮竹愛してるよ」
「あ、京楽・・・・愛してる」
「・・・・・・・・蒼天に座せ、氷輪丸」
別に、その必要はなかったのだが。
氷輪丸を始解させないと、一日が始まらないし、終わらないのだ。
「お茶入れてただけなのにいいいい」
松本が、悲鳴をあげて吹っ飛んでいく。
京楽と浮竹は、瞬歩で氷の龍を交わしながら、雨乾堂に戻っていくのだった。
それを見て、京楽が勝手に隊首室から毛布をもってきて、浮竹にかけてやった。そしてその隣で、京楽も眠りだした。
「・・・・・・・なんだかなぁ」
「息がぴったりですね」
日番谷は、ここは10番隊の執務室だと叫ぼうとして、やめてしまった。
浮竹が、あまりに幸せそうに眠っていたせいでもあるし、その姿を見て安心して京楽もすやすやと静かな寝息をたてて眠ってしまったからだ。
「まぁ、静かだしこのままにしとくか」
「うわ、珍しく隊長が優しい!明日は雪じゃなくって槍が降りますね!」
「松本ぉ!お前は仕事をしろ!」
「やーん隊長、浮竹隊長と京楽隊長、幸せそう。まるで夫婦ですね」
「夫婦か・・・・・・・」
ふむと、納得する。
尸魂界で一番熱いカップルはと聞いたら、100%浮竹と京楽と答えが返ってくるだろう。
それほど仲が良いと知れ渡っているのだ。
夫婦、と言われても二人は否定しないだろう。
もしも尸魂界で男同士で籍をいれられたら、二人は婚姻して確実に籍を入れるだろう。
「京楽はちょっと浮竹に甘かったり、薬盛ったり、変態行為をしたりいろいろと問題はあるが、基本は優しいしな。浮竹は文句のつけようもなしで優しい。二人の間に子供ができるとしたら、多分浮竹に似て品性のいい子供がきるだろうな・・・・・ってなんでこんな想像してるんだ俺」
「隊長~。二人に大分毒されてますね~」
松本がにまにましていた。
松本にいらなくなって丸めた紙を投げて、再び怒鳴る。
「松本お、腐った脳と腐った目と腐った耳しかないのか!写真とってないで仕事しろお!」
「はーい」
今日は、松本も素直に・・・・と思ったら、二人を見ながら何かを打っていた。
「何してやがる」
背後から回って見てみると、伝令神機を使って京楽×浮竹の腐った小説を書いていた。
「京楽は、そっと浮竹の白い肌に手をかけて、言う。「綺麗だよ十四郎」浮竹はやや視線を伏せて、京楽の・・・・・・・お前は、何を打ってるんだ」
「いやぁ、だから京楽隊長と浮竹隊長の寝顔を見ていたら、執筆の神さまが降りてきて」
「変なものを降臨させるな!」
「ん・・・・・」
浮竹が、身を捩った。
「隊長、ちょっと静かに!」
小声で、松本が言う。
「せっかく幸せそうに寝てるんですから、邪魔しちゃ悪いですよ!」
「邪魔をするも何も、ここは10番隊の執務室なんだがな・・・・・」
「まぁ細かいことはいいじゃないですか!」
「細かいことか、これ?」
結局2時間ばかり寝て、二人は起きた。
「あーよく寝た」
「おはよう、浮竹」
京楽に、おはようのあいさつのキスをされて、浮竹もそれに応えた。
「おい、ここが10番隊の執務室だってこと、忘れてねーか?」
「ああ、日番谷隊長おはよう。いやぁ、昨日は京楽がしつこくて寝かせてくれなくて、ついつい寝てしまった」
「おい京楽、浮竹にあまり無理をさせるなよ」
「分かってるよ。日番谷隊長は、まるでお母さんだね」
「は?」
ぴきっと、イラついた。
「浮竹を大事にしろとか、まるで浮竹のお母さんみたい」
「そういうお前らは夫婦だもんな」
「やっぱそう見える?」
京楽はでれでれしていた。
「京楽の妻になんてなりたくない!」
浮竹が叫んだ。
「ええっ、浮竹、お嫁さんにきてくれないの」
「お前が嫁に来い!俺は長男でお前は次男だろう!」
「え、いってもいいならいっちゃうよ。白無垢でも着ようか?」
京楽の白無垢姿を想像して、浮竹も日番谷も気分が悪くなった。
「京楽なら、本当に着そうだな・・・・・・」
「まじで想像しちまった・・・・・鳥肌たった」
日番谷は、何かめもをとっている松本を呼んだ。
「松本、茶をいれてくれ」
「はいはい。私の分もいれて、3人分ですね」
「おい、一人分足りないぞ」
「隊長は、自分の分は自分でしろっておしゃったから、自分でお茶いれてくださいね」
「松本おおおおおおお!!!」
日番谷の怒声が、今日も10番隊の執務室で響く。
「浮竹愛してるよ」
「あ、京楽・・・・愛してる」
「・・・・・・・・蒼天に座せ、氷輪丸」
別に、その必要はなかったのだが。
氷輪丸を始解させないと、一日が始まらないし、終わらないのだ。
「お茶入れてただけなのにいいいい」
松本が、悲鳴をあげて吹っ飛んでいく。
京楽と浮竹は、瞬歩で氷の龍を交わしながら、雨乾堂に戻っていくのだった。
院生時代の部屋35
「ぐふふふふ」
京楽の手には、鋏があった。それで浮竹の衣服がはいっているタンスをあけて、一番上のぱんつをとりだすと、股間の部分に穴をあけた。
浮竹はまだ帰ってきていない。
そっと穴をあけたパンツを元の場所に戻して、鋏をしまった。
浮竹は京楽とでない、他の友人に頼まれて、打ち合いの稽古をしていた。特進クラスの中でも、浮竹と京楽は群をぬいていて、教師に打ち合うよりも気軽に頼めるし、好きな時にやめれるので、時折打ち合いや鬼道を見てくれと頼まれた。
こういう場合、京楽は断る。浮竹がOKを出すと、京楽もつきあってくれた。浮竹は時間に余裕がある時は付き合ってくれるので、みんなから頼りにもされていた。
いつもなら、京楽も隣にいるはずなのに、今日は忙しいからといって帰ってしまった。
いつも浮竹といたがる京楽にしては珍しかった。
寮の自室に戻り、汗をかいたので湯あみをすることにした。一番上のパンツと、まだ夕食にいっていないので、新しい院生の服を出して、脱衣所に鍵をかけて浮竹は湯あみをした。
「ぎゃあああああああ」
脱衣所から、悲鳴が響いた。
「げふふふふふ」
京楽が、がらっとあいた脱衣所のすぐ傍にいた。ポロリを大いに期待していたのだが、浮竹は腰にバスタオルを巻いていた。
それでも十分だった。
浮竹の完全な裸ではないが、裸体を見て京楽は鼻血を出した。
そんな京楽を無視して、浮竹は新しいパンツを手に取ると、穴があいていないことを確認しで脱衣所に戻った。鍵をかけ忘れていた。そっと、隙間から中を覗く京楽。
浮竹の白い肌を思う存分堪能して、大量の鼻血を出した。
「お・ま・え・は!」
鼻血が止まった京楽に、往復ビンタを10回食らわせた。
「あぎゃあ!」
股間をぐりぐりと蹴られて・・・・痛いのだが、相手が浮竹なので勃起した。
「このど変態があああああ」
股間を思いきり蹴り上げられて、さしもの京楽も白目をむいて気絶した。
「ほんと、毎度毎度下らない真似ばかりしやがって・・・・・・」
穴のあけられたパンツを見る。念のために、他のタンスのパンツを確認するが、穴をあけられたのは幸いもそれ一枚だった。
全部にあけていたら、京楽のパンツを全部燃やすつもりだった。ついでに、京楽の股間に破道の4の白雷を落とそうと思っていた。
「はぁ・・・・・」
白目をむいたまま気絶している京楽の尻を蹴った。
「あれ、僕は・・・あいたたたたた」
股間を抑えて蹲る京楽が、親指をたてる。
「おいしい光景をありがとう!」
頭を、辞書の角で殴ると、京楽は力尽きた。
「気絶してないで、夕餉食べに行くぞ。気絶しておきたいんだったら、そのまま気絶しておけ」
力尽きていた京楽は復活していた。
「今日のメニューはなんだろうねぇ」
もう、京楽の脳内に自分が変態行為をしたという記憶はない。
浮竹も慣れているので、すでになかったことにしていたが、念のため付け加える。
「今度、同じ真似をしたらお前の浮竹抱き枕没収な。全部に穴をあけていたら、お前のパンツを全部燃やして股間に白雷落としてた」
あわわわ。
危なかった。
実は、全部あけようか迷っていたのだ。
でも、普通にはくパンツがないと困るだろうなと思って、1枚だけにしておいてよかった。
いくら京楽でも、浮竹の腕で股間に白雷を落とされたら、大事な息子さんが4番隊のお世話になるとこだった。
食堂にくると、今日は焼き魚定食だった。
いくつかある種類のうち、一番値段の低いものを注文する。
「遠慮することないよ。足りないなら僕がお金だしてあげるから」
「そうだな、お前の変態行為で大変な目にあっているから、甘えておこう」
注文を変更して、貴族用の特別メニューを注文した。浮竹も一応下級ではあるが、貴族だ。
豪華なメニューとそれに釣り合う値段に、浮竹が驚く。
まぁ、毎日ではないし、注文するのも始めてだった。伊勢海老とか普通にのってあったりする。
「お嬢ちゃん、僕は焼き魚Bランチ定食で」
「あらやだ、京楽ちゃん。今日も山盛りにしとくわね」
食堂のおばちゃんが、頬を朱くして京楽の分の飯を山盛りにする。
育ち盛りなので、京楽はよく食べた。
浮竹は伊勢海老を食べて、その味に感動していた。生まれて初めて食べたのだ。
「どうしたの、浮竹」
「伊勢海老食べたの、生まれて初めてなんだ」
「なんだって!今度、料亭にいこう!伊勢海老もウニもアワビもカニもフグも!いろんあ海の幸の美味しいもの取り扱っている店知ってるから、そこにいこう」
「お前のおごりなら」
「勿論おごるよ!」
その次の日、さっそくその料亭に連れてこられた。
「冷やかしなら、お断りだよ」
院生の服を着こんだ二人を見て、店の女将がそう言った。
「これ見れば分かる?」
京楽が、京楽家の血を引いている証の家紋と印篭を見せる。
それを見て、女将が顔色を変えた。
「京楽家の坊ちゃんでしたか、失礼しました。お連れの方は?この料亭は、貴族の方専門なんですのよ」
「俺は・・・・・・」
「僕の恋人なんだよ。今は証ないけど京楽家に養子にくることになっているんだ」
「あら、そうなんでしたの。京楽家の坊ちゃんに惚れられるなんて、特別な方なんですのね」
「京楽!」
「しっ、黙って。浮竹は家紋とか印篭もってないでしょ。でも貴族であることに変わりはないんだから、堂々としてればいいんだよ」
そのまま奥の座敷に通されて、浮竹が1年間で使う食費を、あっという間に溶けてしまいそうな値段の料理が並んだ。
「うまいが・・・なんていうか、罪悪感であまり感動しないな」
「ちょっと高級すぎたかな?」
「俺は、もっと家庭的な食事を出す店が好みかな」
「じゃあ、今度はそういうお店みつけとくね」
その日は、珍しい海の幸を楽しんだが、浮竹は緊張しっぱなしで、逆に疲れた。その日は酒を飲み交わし、浮竹は酔って京楽に肩を貸してもらいながら歩いた。
「下級貴族で悪かったなー」
「誰もそんなこと言ってないでしょ!」
「あの女将、俺を物珍しげに見てた。二度とあんな店いくもんか」
「確かにね。貴族専門ってとこがだめだったね。料理はおいしいけど、接待がなってない。僕の浮竹が入っちゃだめみたいなのとか、店として失格だね」
「お前のものじゃない・・・・・・・」
「えー、いいじゃない。僕のものになっちゃいなよ」
「お前のパンツと袴の股間に全部鋏で穴をあけてやろうか」
「昨日のこと、何気に根に持ってるね!?」
「変態のものになったら、変態がうつる」
「いや、うつらないから!」
部屋につくと、浮竹はベッドにつっぷしてそのまま眠ってしまった。
浮竹の、肩より少し短めになった髪に口づける。
「おやすみ」
ちゃんと毛布と布団をかけて、うつぶせにして寝かせた。
京楽の想いが実るには、まだまだ時間がかりそうであった。
京楽の手には、鋏があった。それで浮竹の衣服がはいっているタンスをあけて、一番上のぱんつをとりだすと、股間の部分に穴をあけた。
浮竹はまだ帰ってきていない。
そっと穴をあけたパンツを元の場所に戻して、鋏をしまった。
浮竹は京楽とでない、他の友人に頼まれて、打ち合いの稽古をしていた。特進クラスの中でも、浮竹と京楽は群をぬいていて、教師に打ち合うよりも気軽に頼めるし、好きな時にやめれるので、時折打ち合いや鬼道を見てくれと頼まれた。
こういう場合、京楽は断る。浮竹がOKを出すと、京楽もつきあってくれた。浮竹は時間に余裕がある時は付き合ってくれるので、みんなから頼りにもされていた。
いつもなら、京楽も隣にいるはずなのに、今日は忙しいからといって帰ってしまった。
いつも浮竹といたがる京楽にしては珍しかった。
寮の自室に戻り、汗をかいたので湯あみをすることにした。一番上のパンツと、まだ夕食にいっていないので、新しい院生の服を出して、脱衣所に鍵をかけて浮竹は湯あみをした。
「ぎゃあああああああ」
脱衣所から、悲鳴が響いた。
「げふふふふふ」
京楽が、がらっとあいた脱衣所のすぐ傍にいた。ポロリを大いに期待していたのだが、浮竹は腰にバスタオルを巻いていた。
それでも十分だった。
浮竹の完全な裸ではないが、裸体を見て京楽は鼻血を出した。
そんな京楽を無視して、浮竹は新しいパンツを手に取ると、穴があいていないことを確認しで脱衣所に戻った。鍵をかけ忘れていた。そっと、隙間から中を覗く京楽。
浮竹の白い肌を思う存分堪能して、大量の鼻血を出した。
「お・ま・え・は!」
鼻血が止まった京楽に、往復ビンタを10回食らわせた。
「あぎゃあ!」
股間をぐりぐりと蹴られて・・・・痛いのだが、相手が浮竹なので勃起した。
「このど変態があああああ」
股間を思いきり蹴り上げられて、さしもの京楽も白目をむいて気絶した。
「ほんと、毎度毎度下らない真似ばかりしやがって・・・・・・」
穴のあけられたパンツを見る。念のために、他のタンスのパンツを確認するが、穴をあけられたのは幸いもそれ一枚だった。
全部にあけていたら、京楽のパンツを全部燃やすつもりだった。ついでに、京楽の股間に破道の4の白雷を落とそうと思っていた。
「はぁ・・・・・」
白目をむいたまま気絶している京楽の尻を蹴った。
「あれ、僕は・・・あいたたたたた」
股間を抑えて蹲る京楽が、親指をたてる。
「おいしい光景をありがとう!」
頭を、辞書の角で殴ると、京楽は力尽きた。
「気絶してないで、夕餉食べに行くぞ。気絶しておきたいんだったら、そのまま気絶しておけ」
力尽きていた京楽は復活していた。
「今日のメニューはなんだろうねぇ」
もう、京楽の脳内に自分が変態行為をしたという記憶はない。
浮竹も慣れているので、すでになかったことにしていたが、念のため付け加える。
「今度、同じ真似をしたらお前の浮竹抱き枕没収な。全部に穴をあけていたら、お前のパンツを全部燃やして股間に白雷落としてた」
あわわわ。
危なかった。
実は、全部あけようか迷っていたのだ。
でも、普通にはくパンツがないと困るだろうなと思って、1枚だけにしておいてよかった。
いくら京楽でも、浮竹の腕で股間に白雷を落とされたら、大事な息子さんが4番隊のお世話になるとこだった。
食堂にくると、今日は焼き魚定食だった。
いくつかある種類のうち、一番値段の低いものを注文する。
「遠慮することないよ。足りないなら僕がお金だしてあげるから」
「そうだな、お前の変態行為で大変な目にあっているから、甘えておこう」
注文を変更して、貴族用の特別メニューを注文した。浮竹も一応下級ではあるが、貴族だ。
豪華なメニューとそれに釣り合う値段に、浮竹が驚く。
まぁ、毎日ではないし、注文するのも始めてだった。伊勢海老とか普通にのってあったりする。
「お嬢ちゃん、僕は焼き魚Bランチ定食で」
「あらやだ、京楽ちゃん。今日も山盛りにしとくわね」
食堂のおばちゃんが、頬を朱くして京楽の分の飯を山盛りにする。
育ち盛りなので、京楽はよく食べた。
浮竹は伊勢海老を食べて、その味に感動していた。生まれて初めて食べたのだ。
「どうしたの、浮竹」
「伊勢海老食べたの、生まれて初めてなんだ」
「なんだって!今度、料亭にいこう!伊勢海老もウニもアワビもカニもフグも!いろんあ海の幸の美味しいもの取り扱っている店知ってるから、そこにいこう」
「お前のおごりなら」
「勿論おごるよ!」
その次の日、さっそくその料亭に連れてこられた。
「冷やかしなら、お断りだよ」
院生の服を着こんだ二人を見て、店の女将がそう言った。
「これ見れば分かる?」
京楽が、京楽家の血を引いている証の家紋と印篭を見せる。
それを見て、女将が顔色を変えた。
「京楽家の坊ちゃんでしたか、失礼しました。お連れの方は?この料亭は、貴族の方専門なんですのよ」
「俺は・・・・・・」
「僕の恋人なんだよ。今は証ないけど京楽家に養子にくることになっているんだ」
「あら、そうなんでしたの。京楽家の坊ちゃんに惚れられるなんて、特別な方なんですのね」
「京楽!」
「しっ、黙って。浮竹は家紋とか印篭もってないでしょ。でも貴族であることに変わりはないんだから、堂々としてればいいんだよ」
そのまま奥の座敷に通されて、浮竹が1年間で使う食費を、あっという間に溶けてしまいそうな値段の料理が並んだ。
「うまいが・・・なんていうか、罪悪感であまり感動しないな」
「ちょっと高級すぎたかな?」
「俺は、もっと家庭的な食事を出す店が好みかな」
「じゃあ、今度はそういうお店みつけとくね」
その日は、珍しい海の幸を楽しんだが、浮竹は緊張しっぱなしで、逆に疲れた。その日は酒を飲み交わし、浮竹は酔って京楽に肩を貸してもらいながら歩いた。
「下級貴族で悪かったなー」
「誰もそんなこと言ってないでしょ!」
「あの女将、俺を物珍しげに見てた。二度とあんな店いくもんか」
「確かにね。貴族専門ってとこがだめだったね。料理はおいしいけど、接待がなってない。僕の浮竹が入っちゃだめみたいなのとか、店として失格だね」
「お前のものじゃない・・・・・・・」
「えー、いいじゃない。僕のものになっちゃいなよ」
「お前のパンツと袴の股間に全部鋏で穴をあけてやろうか」
「昨日のこと、何気に根に持ってるね!?」
「変態のものになったら、変態がうつる」
「いや、うつらないから!」
部屋につくと、浮竹はベッドにつっぷしてそのまま眠ってしまった。
浮竹の、肩より少し短めになった髪に口づける。
「おやすみ」
ちゃんと毛布と布団をかけて、うつぶせにして寝かせた。
京楽の想いが実るには、まだまだ時間がかりそうであった。
院生時代の部屋34
「うふふふ、浮竹!」
パンツ一丁の姿のまま、京楽は浮竹の抱き枕にダイブした。
「好きだよ愛してるよ。そうかい、君も僕のことが好きなのか。いいんだよ、何も言わなくても。君の気持ちは知ってるから」
「そうか・・・・・なら、何も言わないでおく」
扉の隙間から、その京楽の一部始終を見てしまった浮竹は、何も言わずに扉を閉めた。
「ああっ、浮竹、これは違うんだ!」
京楽が、扉をあけて浮竹の足にしがみつく。
「どうでもいいから、服を着ろ!」
もじゃもじゃの恰好のパンツ一枚は、かなりきつい。なんとか院生に服を着こんだ京楽は、浮竹に謝りまくった。
「すみません、やり過ぎました。もうしませんから、許して~」
「許すも何も、お前の変態は変らないから、どうでもいい」
浮竹は、あまりショックを受けたわけでもなく、いつもの京楽の変態具合が今日はちょっときつめかなぁと思ったくらいだった。
あれで裸だったら、股間を蹴ってしばらく起き上がれない目に合わせいたのは間違いない。
「俺も大分慣れたな・・・・・・・」
京楽が、浮竹を襲ってくるようなことはない。
変態であるが、そのあたりはちゃんとわきまえている。
京楽から、浮竹の写真がプリントアウトされた、抱き枕を没収することもなかった。あの抱き枕が、京楽にとっては情事の時の浮竹なのだ。取り上げたら、きっと京楽は泣き出す。
「はぁ・・・・」
俺も、大分京楽の変態に甘くなったなぁと溜息を零しながら、その日も一日が終わっていった。
朝起きると、もじゃもじゃだった。否、服をだらしなく脱いだかんじの京楽のベッドの上で、寝ていた。
見ると、自分もパンツ一丁だった。
何処も痛くないし、痕もない。とりあえず、浮竹は京楽にビンタをかまして起こした。
「これはどういうことだ」
「え、覚えてないの」
「?」
「昨日、君と僕は酒盛りしたでしょ。止めたのに、僕のお酒飲んで酔っ払って、君は服を脱いで僕のベッドで眠ってしまったんだよ」
断片的ではあるが、思い出した。
思いっきり、酔っぱらっていた。
「よく、手を出さなかったな」
「僕は、君が僕を受け入れてくれるまで、キスとハグ以上はしないよ」
たまに、それ以上する時もあるが、基本は手を出してこない。
それが浮竹とうまく付き合うコツでもあった。
ぱんつ一丁はさすがに寒いので、脱ぎ散らかした院生の服を着る。
「はっくしょん」
「一緒に眠ったけど、やっぱり風邪ひいちゃったかな?」
「うーん。まぁ、この場合俺の自業自得になるから仕方ない。はっくしょん」
毛布にくるまるが、寒気がしてきた。数時間後には、熱を出した。幸いなことに休日だったが、明日は学校がある。
このままだと、休むことになるなと思いつつも、自業自得なので仕方ないと思った。
「浮竹、大丈夫?」
京楽が、ずっと傍にいてくれた。熱を出した後は、タオルを水でしぼって、額にあててくれた。
「慣れてるから、平気だ」
熱はそれほど高くない。喉の痛みを覚えて、風邪薬を飲んだ。解熱剤も飲んだので、だんだん眠くなってきた。
「少し、眠る・・・・」
次に起きると、目の前に京楽の顔があった。
少し驚いて起きると、同じベッドで眠っていたらしかった。とりあえず、眠ったままの京楽を自分のベッドで寝かせたままにして、空いている京楽のベッドで横になる。、
「京楽の匂いがする・・・・・・・」
柑橘系の香水の香りと、紫煙の香り、後は酒の香り。
もう一度風邪薬と解熱剤をのんで、また眠ってしまった。
次に起きると、朝になっていた。
熱は下がっていたし、風邪の症状もなかった。ただ、完全に遅刻だった。
「どうして起こしてくれなかった」
まだ登校していなかった京楽に声をかけると、京楽は困ったような表情を浮かべた。
「だって、あんまりにも気持ちよさそうに眠っていたし、風邪ひいてたから」
「もう治った」
「午後から、学校にいこうよ」
時計をみると、10時半だった。
2時間目の授業に、今からでは間に合わない。溜息をついて、まずは昨日湯あみをしていなかったので湯あみをすませて、新しい下着と院生の服に着替えた。
京楽は、脱いだ浮竹の院生の服をスーハースーハーしていたので、とりあえず蹴りを入れておいた。
「ああ、愛が激しい!」
洗濯をするものの籠に、没収した院生の服とかを入れた。
後で、手で洗わなければいけない。この時代、まだ洗濯機は普及していなかったので、服は全部手洗いだった。
3日に一度、まとまった洗濯物を手洗いするのだが、浮竹と京楽で、交互で互いの服も含めて手洗いしていた。
京楽が浮竹の分も、浮竹が京楽の分も洗う。
もっとも、京楽に洗濯させるとよく下着がなくなった。首を絞めると、返してくれるので、よく首を絞めた。
その日は、午後から学校にいった。昼休みになる前に食堂にいくと、がらんとしていた。
お腹が減っていたので、いつもはよく残すのだが、今日は全部平らげた。
「ああっ、浮竹の食べ残しがない。仕方ない、スプーンを・・・・」
浮竹が使っていたスプーンを舐める京楽を無視して、浮竹は次の授業の部屋で移動する。それに気づいた京楽が追いかけてきた。
「僕を置いていかないでマイスウィートハニー」
「放置プレイが好きだろ」
「そんなことないよ!」
なんだかんだいって、仲のいい二人。
まだまだ、くっつきそうになかった。
パンツ一丁の姿のまま、京楽は浮竹の抱き枕にダイブした。
「好きだよ愛してるよ。そうかい、君も僕のことが好きなのか。いいんだよ、何も言わなくても。君の気持ちは知ってるから」
「そうか・・・・・なら、何も言わないでおく」
扉の隙間から、その京楽の一部始終を見てしまった浮竹は、何も言わずに扉を閉めた。
「ああっ、浮竹、これは違うんだ!」
京楽が、扉をあけて浮竹の足にしがみつく。
「どうでもいいから、服を着ろ!」
もじゃもじゃの恰好のパンツ一枚は、かなりきつい。なんとか院生に服を着こんだ京楽は、浮竹に謝りまくった。
「すみません、やり過ぎました。もうしませんから、許して~」
「許すも何も、お前の変態は変らないから、どうでもいい」
浮竹は、あまりショックを受けたわけでもなく、いつもの京楽の変態具合が今日はちょっときつめかなぁと思ったくらいだった。
あれで裸だったら、股間を蹴ってしばらく起き上がれない目に合わせいたのは間違いない。
「俺も大分慣れたな・・・・・・・」
京楽が、浮竹を襲ってくるようなことはない。
変態であるが、そのあたりはちゃんとわきまえている。
京楽から、浮竹の写真がプリントアウトされた、抱き枕を没収することもなかった。あの抱き枕が、京楽にとっては情事の時の浮竹なのだ。取り上げたら、きっと京楽は泣き出す。
「はぁ・・・・」
俺も、大分京楽の変態に甘くなったなぁと溜息を零しながら、その日も一日が終わっていった。
朝起きると、もじゃもじゃだった。否、服をだらしなく脱いだかんじの京楽のベッドの上で、寝ていた。
見ると、自分もパンツ一丁だった。
何処も痛くないし、痕もない。とりあえず、浮竹は京楽にビンタをかまして起こした。
「これはどういうことだ」
「え、覚えてないの」
「?」
「昨日、君と僕は酒盛りしたでしょ。止めたのに、僕のお酒飲んで酔っ払って、君は服を脱いで僕のベッドで眠ってしまったんだよ」
断片的ではあるが、思い出した。
思いっきり、酔っぱらっていた。
「よく、手を出さなかったな」
「僕は、君が僕を受け入れてくれるまで、キスとハグ以上はしないよ」
たまに、それ以上する時もあるが、基本は手を出してこない。
それが浮竹とうまく付き合うコツでもあった。
ぱんつ一丁はさすがに寒いので、脱ぎ散らかした院生の服を着る。
「はっくしょん」
「一緒に眠ったけど、やっぱり風邪ひいちゃったかな?」
「うーん。まぁ、この場合俺の自業自得になるから仕方ない。はっくしょん」
毛布にくるまるが、寒気がしてきた。数時間後には、熱を出した。幸いなことに休日だったが、明日は学校がある。
このままだと、休むことになるなと思いつつも、自業自得なので仕方ないと思った。
「浮竹、大丈夫?」
京楽が、ずっと傍にいてくれた。熱を出した後は、タオルを水でしぼって、額にあててくれた。
「慣れてるから、平気だ」
熱はそれほど高くない。喉の痛みを覚えて、風邪薬を飲んだ。解熱剤も飲んだので、だんだん眠くなってきた。
「少し、眠る・・・・」
次に起きると、目の前に京楽の顔があった。
少し驚いて起きると、同じベッドで眠っていたらしかった。とりあえず、眠ったままの京楽を自分のベッドで寝かせたままにして、空いている京楽のベッドで横になる。、
「京楽の匂いがする・・・・・・・」
柑橘系の香水の香りと、紫煙の香り、後は酒の香り。
もう一度風邪薬と解熱剤をのんで、また眠ってしまった。
次に起きると、朝になっていた。
熱は下がっていたし、風邪の症状もなかった。ただ、完全に遅刻だった。
「どうして起こしてくれなかった」
まだ登校していなかった京楽に声をかけると、京楽は困ったような表情を浮かべた。
「だって、あんまりにも気持ちよさそうに眠っていたし、風邪ひいてたから」
「もう治った」
「午後から、学校にいこうよ」
時計をみると、10時半だった。
2時間目の授業に、今からでは間に合わない。溜息をついて、まずは昨日湯あみをしていなかったので湯あみをすませて、新しい下着と院生の服に着替えた。
京楽は、脱いだ浮竹の院生の服をスーハースーハーしていたので、とりあえず蹴りを入れておいた。
「ああ、愛が激しい!」
洗濯をするものの籠に、没収した院生の服とかを入れた。
後で、手で洗わなければいけない。この時代、まだ洗濯機は普及していなかったので、服は全部手洗いだった。
3日に一度、まとまった洗濯物を手洗いするのだが、浮竹と京楽で、交互で互いの服も含めて手洗いしていた。
京楽が浮竹の分も、浮竹が京楽の分も洗う。
もっとも、京楽に洗濯させるとよく下着がなくなった。首を絞めると、返してくれるので、よく首を絞めた。
その日は、午後から学校にいった。昼休みになる前に食堂にいくと、がらんとしていた。
お腹が減っていたので、いつもはよく残すのだが、今日は全部平らげた。
「ああっ、浮竹の食べ残しがない。仕方ない、スプーンを・・・・」
浮竹が使っていたスプーンを舐める京楽を無視して、浮竹は次の授業の部屋で移動する。それに気づいた京楽が追いかけてきた。
「僕を置いていかないでマイスウィートハニー」
「放置プレイが好きだろ」
「そんなことないよ!」
なんだかんだいって、仲のいい二人。
まだまだ、くっつきそうになかった。
泥酔と告白と
一護の住むアパートの呼び鈴が、深夜の1時なのに鳴らされた。
「誰だよこんな時間に・・・・・・」
最初は無視していたのだが、何度も鳴るので、頭にきてドアをあけた。
「常識考えやがれ!今何時だと思ってやがんだ!」
叫ぶと、細い体が倒れてきた。
「うへへへ、一護好きだぞー」
「うっわ、酒くせぇ!誰だ、ルキアに酒飲ませたのは!」
久しぶりに現世にやってきたルキアは、これでもかというほどに泥酔していた。
「一護、チューしてやろうか」
「うわ、おいやめろ!」
そのまま、ルキアは一護にキスをした。本来なら喜ぶところだが、泥酔しているルキアにキスをされてもあんまり嬉しくなかった・
「とにかく中入れ!」
「ぐー」
一護の腕の中で、ルキアは眠ってしまった。
「勘弁してくれよ」
ルキアを抱き上げて、自分のベッドまで運ぶ。酒の匂いばかりがした。
次の日、ルキアは起きると、頭痛を訴えた。
「私はいつの間に現世に・・・・・・あいたたたた、頭が痛い」
「泥酔するまで飲んでたんだろ。誰と飲んでたんだ?」
「一護か・・・・いや、京楽総隊長と、浮竹隊長の懐かしい話を聞いて盛り上がって・・・そこまでしか覚えておらぬ」
「京楽さんか。あの人の飲む酒はきついらしいからな。泥酔して当然か」
今はもういない浮竹隊長のことで盛り上がったのだろう。
「故人を懐かしむのはいい。酒を飲むなともいわない。ただ飲み過ぎるな!」
「す、すまぬ・・・・あいたたたた」
「痛み止めと頭痛薬でも飲んでろ」
救急箱の中から、薬を取り出してルキアに投げてよこした。
「すまぬ・・・・・」
薬を飲んでしばらくして、頭痛がましになったのか、ルキアはベッドの上で横になっていたのだが、起き出した。
「その、すまぬな。いきなり押しかけて、しかも泥酔していたとは。私は、何かやらかしたか?」
「チューしてやろうかとかいって、キスしてきた」
「ぬああああ」
穴があったら入りたい心境にルキアはなっていた。
「キスするなら、ちゃんと意識がある時がいい」
一護が、ルキアの顎に手をかけた。ルキアが瞳を閉じる。
触れるだけのキスをして、二人は離れた。
付き合っているわけではない。体を重ねることもない。ただ、キスやハグはした。
「あー。やっぱり、付き合わねぇか、俺たち」
ルキアが、一護を好きなことを一護は知っていたし、一護がルキアを好きなことをルキアも知っていた。
「いつか別れが来る・・・付き合うのはその・・」
「嫌か?」
「まさか!嫌なわけあるまい!」
「じゃあ、付き合おうぜ」
「う、うむ・・・・・」
真っ赤になったルキアは、一護の腕の中にいた。
「今日はどうする?泊まってくか?それとも尸魂界に帰るか?」
今日という日は、大学がたまたま休みだった。明日は授業があるので、大学には行かなくてはならない。
「その、虚退治で派遣されたのだ。1週間くらい、こちらにいる予定だ。その間、泊めてくれる嬉しいのだが・・・・・・・」
「いいよ、泊まってけよ。ただ、明日は俺も大学あるし、バイトもあるから、帰ってくるのは夜になるぞ」
「ああ、構わぬ!」
現世で虚退治で一番困ることは、寝泊まりする場所がないことだろう。
こうして、一護の部屋に泊まれるルキアは、まだ運がいいほうだ。
その日は、二人で一緒のベッドで眠った。付き合うことになったが、関係は今までと変わらない。いつものように、一護の腕の中で安心してルキアは眠っていた。一護も、湯あみしてぶかぶかな一護のパジャマをきたルキアの風呂上がりにいい匂いを感じながら、眠った。
次の日は、マーメイドワンピースを着たルキアが、一護の隣にいた。
「お前、虚退治はいいのかよ」
「出現したら、伝令神機が教えてくれる。それまで暇なのだ」
一護と一緒に大学の講義に出ていた。
「一護、おはよう。綺麗な子だね、彼女?」
「ああ、そんなもんだ」
大学でできた友人と会話して、ルキアを紹介する。
「朽木ルキアと申します。一護君とは前々から付き合っておりました」
「嘘ばっか・・・・いてぇ!」
ルキアが、小言をいいだした一護の足を蹴った。
授業が終わると、昼休みになった。
「黒崎君!朽木さん、久しぶり!」
一緒の大学に進んだ井上と、食堂で落ち合う。
「井上、元気にしておったか?」
「うん、私はいつも元気だよ。どうしたの、黒崎君」
「俺たち、付き合うことになったんだ」
「あわわわわ、お、おめでとう!」
少し寂しそうな表情で、井上はそう言った。
「んでルキア、何食うんだ」
「カレーがいい。あれは辛いが美味いのだ」
「へいへい。じゃあカレー定食二人前な」
一護は立ち上がって、カレー定食を注文しにいった。
「朽木さんは、いつまで現世にいれるの?」
「うむ、今週いっぱいかな」
「そっか。私も、黒崎君が好きなこと、知ってるよね?」
「ああ」
「負けないんだから!」
ルキアと井上は友人同士であり、ライバル同士であった。
「ふふ、井上には負けんぞ」
「何の話してるんだ?」
一護が、ルキアの分のカレー定食をもって帰ってきた。
「今日は、エビフライつきだとさ」
「おお、エビフライ!豪華だな」
「いや、普通だろ」
一護は、あいた手でルキアの頭を撫でた。
「福神漬けはお代わりし放題だ」
「おお、早速山盛りにしてくる」
カレーライスを手に、セルフサービスになっている福神漬けの置いてある場所までルキアが走っていく。
「黒崎君!私も、黒崎君のことが好きなの!朽木さんを振って付き合えって言わないけど、友人としてだけじゃなくて、異性としても見てほしいの!」
いきなりの井上に告白に、一護が固まる。
そして、真っ赤になった。
「ななななななな」
「朽木さんと付き合いだしたのは知ってるし、仲を裂こうとは思ってないよ。でも、いつか朽木さんと別れる時があったら、私と付き合って!」
「ルキアとは、しばらく別れねーよ。ただ、俺は人間だ。ルキアと別れることになったら・・・・・」
「山盛りにして戻ってきたぞ!」
ルキアが帰ってきたことで、一護の言葉の続きは聞けなかった。
「どうしたのだ、二人とも?」
「なんでもねーよ。ワンピースに、カレー零すなよ」
「分かっておるわ、たわけが!」
結局、井上とは深く話合わないままで終わった。
今は、ルキアだけを見ていたい。それが本音だった。いつか、ルキアと別れることがあったとしても、どちらかが泣くようなことがないようにしたい。
そう思う、一護であった。
「誰だよこんな時間に・・・・・・」
最初は無視していたのだが、何度も鳴るので、頭にきてドアをあけた。
「常識考えやがれ!今何時だと思ってやがんだ!」
叫ぶと、細い体が倒れてきた。
「うへへへ、一護好きだぞー」
「うっわ、酒くせぇ!誰だ、ルキアに酒飲ませたのは!」
久しぶりに現世にやってきたルキアは、これでもかというほどに泥酔していた。
「一護、チューしてやろうか」
「うわ、おいやめろ!」
そのまま、ルキアは一護にキスをした。本来なら喜ぶところだが、泥酔しているルキアにキスをされてもあんまり嬉しくなかった・
「とにかく中入れ!」
「ぐー」
一護の腕の中で、ルキアは眠ってしまった。
「勘弁してくれよ」
ルキアを抱き上げて、自分のベッドまで運ぶ。酒の匂いばかりがした。
次の日、ルキアは起きると、頭痛を訴えた。
「私はいつの間に現世に・・・・・・あいたたたた、頭が痛い」
「泥酔するまで飲んでたんだろ。誰と飲んでたんだ?」
「一護か・・・・いや、京楽総隊長と、浮竹隊長の懐かしい話を聞いて盛り上がって・・・そこまでしか覚えておらぬ」
「京楽さんか。あの人の飲む酒はきついらしいからな。泥酔して当然か」
今はもういない浮竹隊長のことで盛り上がったのだろう。
「故人を懐かしむのはいい。酒を飲むなともいわない。ただ飲み過ぎるな!」
「す、すまぬ・・・・あいたたたた」
「痛み止めと頭痛薬でも飲んでろ」
救急箱の中から、薬を取り出してルキアに投げてよこした。
「すまぬ・・・・・」
薬を飲んでしばらくして、頭痛がましになったのか、ルキアはベッドの上で横になっていたのだが、起き出した。
「その、すまぬな。いきなり押しかけて、しかも泥酔していたとは。私は、何かやらかしたか?」
「チューしてやろうかとかいって、キスしてきた」
「ぬああああ」
穴があったら入りたい心境にルキアはなっていた。
「キスするなら、ちゃんと意識がある時がいい」
一護が、ルキアの顎に手をかけた。ルキアが瞳を閉じる。
触れるだけのキスをして、二人は離れた。
付き合っているわけではない。体を重ねることもない。ただ、キスやハグはした。
「あー。やっぱり、付き合わねぇか、俺たち」
ルキアが、一護を好きなことを一護は知っていたし、一護がルキアを好きなことをルキアも知っていた。
「いつか別れが来る・・・付き合うのはその・・」
「嫌か?」
「まさか!嫌なわけあるまい!」
「じゃあ、付き合おうぜ」
「う、うむ・・・・・」
真っ赤になったルキアは、一護の腕の中にいた。
「今日はどうする?泊まってくか?それとも尸魂界に帰るか?」
今日という日は、大学がたまたま休みだった。明日は授業があるので、大学には行かなくてはならない。
「その、虚退治で派遣されたのだ。1週間くらい、こちらにいる予定だ。その間、泊めてくれる嬉しいのだが・・・・・・・」
「いいよ、泊まってけよ。ただ、明日は俺も大学あるし、バイトもあるから、帰ってくるのは夜になるぞ」
「ああ、構わぬ!」
現世で虚退治で一番困ることは、寝泊まりする場所がないことだろう。
こうして、一護の部屋に泊まれるルキアは、まだ運がいいほうだ。
その日は、二人で一緒のベッドで眠った。付き合うことになったが、関係は今までと変わらない。いつものように、一護の腕の中で安心してルキアは眠っていた。一護も、湯あみしてぶかぶかな一護のパジャマをきたルキアの風呂上がりにいい匂いを感じながら、眠った。
次の日は、マーメイドワンピースを着たルキアが、一護の隣にいた。
「お前、虚退治はいいのかよ」
「出現したら、伝令神機が教えてくれる。それまで暇なのだ」
一護と一緒に大学の講義に出ていた。
「一護、おはよう。綺麗な子だね、彼女?」
「ああ、そんなもんだ」
大学でできた友人と会話して、ルキアを紹介する。
「朽木ルキアと申します。一護君とは前々から付き合っておりました」
「嘘ばっか・・・・いてぇ!」
ルキアが、小言をいいだした一護の足を蹴った。
授業が終わると、昼休みになった。
「黒崎君!朽木さん、久しぶり!」
一緒の大学に進んだ井上と、食堂で落ち合う。
「井上、元気にしておったか?」
「うん、私はいつも元気だよ。どうしたの、黒崎君」
「俺たち、付き合うことになったんだ」
「あわわわわ、お、おめでとう!」
少し寂しそうな表情で、井上はそう言った。
「んでルキア、何食うんだ」
「カレーがいい。あれは辛いが美味いのだ」
「へいへい。じゃあカレー定食二人前な」
一護は立ち上がって、カレー定食を注文しにいった。
「朽木さんは、いつまで現世にいれるの?」
「うむ、今週いっぱいかな」
「そっか。私も、黒崎君が好きなこと、知ってるよね?」
「ああ」
「負けないんだから!」
ルキアと井上は友人同士であり、ライバル同士であった。
「ふふ、井上には負けんぞ」
「何の話してるんだ?」
一護が、ルキアの分のカレー定食をもって帰ってきた。
「今日は、エビフライつきだとさ」
「おお、エビフライ!豪華だな」
「いや、普通だろ」
一護は、あいた手でルキアの頭を撫でた。
「福神漬けはお代わりし放題だ」
「おお、早速山盛りにしてくる」
カレーライスを手に、セルフサービスになっている福神漬けの置いてある場所までルキアが走っていく。
「黒崎君!私も、黒崎君のことが好きなの!朽木さんを振って付き合えって言わないけど、友人としてだけじゃなくて、異性としても見てほしいの!」
いきなりの井上に告白に、一護が固まる。
そして、真っ赤になった。
「ななななななな」
「朽木さんと付き合いだしたのは知ってるし、仲を裂こうとは思ってないよ。でも、いつか朽木さんと別れる時があったら、私と付き合って!」
「ルキアとは、しばらく別れねーよ。ただ、俺は人間だ。ルキアと別れることになったら・・・・・」
「山盛りにして戻ってきたぞ!」
ルキアが帰ってきたことで、一護の言葉の続きは聞けなかった。
「どうしたのだ、二人とも?」
「なんでもねーよ。ワンピースに、カレー零すなよ」
「分かっておるわ、たわけが!」
結局、井上とは深く話合わないままで終わった。
今は、ルキアだけを見ていたい。それが本音だった。いつか、ルキアと別れることがあったとしても、どちらかが泣くようなことがないようにしたい。
そう思う、一護であった。
猫でも愛してる
「おやすみ。永遠に、愛してるーーー」
浮竹十四郎がこの世を去った。
その訃報は、尸魂界中を駆け巡った。
大戦も何とか終わり、復興に向けて動き始めたばかりだった。
山本元柳斎重國、卯ノ花烈に並んで、また隊長が死んだ。尸魂界はこれからという時期を迎えていたのに、亡くなった。
たくさんの人が悲しんだ。一番悲しんだのは、総隊長となった京楽だろう。
何せ、何百年も連れ添った恋人だったのだ。
だが、葬儀の時は京楽は涙を見せなかった。蒼い薔薇で満たされた棺の中に、ミミハギ様を失ったことで病が進行し、少しやせ細った浮竹の遺骸があった。
穏やかな顔をしていた。
声をかければ、今すぐ起ききそうで。
「浮竹隊長ーーー!!!」
ルキアは泣きまくっていた。京楽と一緒に最期を看取ったが、やはり涙を流した。
「おやすみ、浮竹。また、何処かで会おう」
別れは、浮竹の意識がある時にもう済ませたのだ。
泣いたところで、何かが変わるわけでもない。
でも、と思う。
棺が閉まり、火がつけられる。
その全てが灰にになるまで、京楽もルキアも、そして訃報を受けてかけつた一護も、ただじっと見ていた。
「一護、浮竹隊長が!」
泣きじゃくるルキアを抱き締めて、一護は優しかった浮竹の面影を思い出す。
「どうか、安らかに・・・・・・」
「ルキア、もう泣くな」
そう言ったのは、白哉であった。
白哉は浮竹と交流が深かった。見れば、最後まで残っていたのは日番谷に松本・・・・交流がある人物ばかりだった。
後の人物たちは、見ていられないと、灰になるまでの間に去ってしまった。
浮竹は、自分の在り方に満足して死んでいった。
神掛けをおこない、自分が死ぬであろうことも分かっていたのに。
霊王は、尸魂界の民には死んでいないことにされていた。本当は、もういないのに。偽りと真実と。生と死と。いろんなものが混ざりあい、時は過ぎていく。
浮竹の焼け残った骨と灰は、主を失ったことで取り壊された雨乾堂の下に埋められて、立派な墓石が建てられた。
京楽は、その日も浮竹の墓参りに来ていた。
「にゃーん」
猫アレルギーの京楽は、一匹の白猫を飼いだした。その猫に対してだけは、アレルギーはでなかった。
疑似愛玩動物。特別な義骸で作られた、死ぬことのない愛玩動物。その白猫に、京楽は浮竹がまだ息がある時に抜き取った記憶の一部を埋め込んだ。
猫は、浮竹の意識をもっていた。
「にゃぁ」
京楽の傍にいつもまとわりついて、隊首会の時でさえ一緒にいた。
「にゃおーん」
周囲は、浮竹が亡くなったせいで、猫を飼いだしたと思っていた。
「にゃあ・・・・」
(京楽)
「どうしたんだい、シロ」
京楽は、その猫にシロという名をつけた。
「にゃあ」
(腹減った)
記憶があるからといって、元の浮竹がいるわけではない。猫の理性を持っていて、時折浮竹がでてくる。何をいっているのか分かるように、涅マユリの作った怪しい薬も飲んだ。
「今、ご飯あげるからね」
「にゃあ」
(愛してる)
「僕もだよ、シロ」
真実を知れば、京楽は狂人であると言われるだろう。
それでも構わない。
浮竹の死を、受け入れるにはまだまだ時間がかかりそうだった。
「にゃあ」
(一緒に寝よう)
「ちょっと待ってね。湯あみしてくるから」
猫に話しかける姿をよく見る七緒は、その猫が浮竹の代わりなのだと思った。まさか、浮竹の記憶そのものと感情を、あやふやではあるが、それを持つ猫などとは思わないだろう。
「にゃーん」
シロは、七緒にもよく懐いた。
誰にでもよく懐いていた。
湯あみをして夕餉を食べ、シロとひとしきり遊んだ京楽は、シロを抱き上げて一緒のベッドに横になった。
シロは、眠る京楽の横で丸くなって眠った。
いつか、京楽が自分の死を受け入れたら、いなくなろう。そうシロは思っていたのだが、シロの中に残された、京楽へ恋慕がそれをさせてくれない。
シロは、義骸でできた猫だ。年を取らない。
京楽が刻む年を、一緒に過ごしていくが、年をとらないので、最後には1匹になってしまうだろう。その時は、京楽と一緒の棺に入って、灰になろう。
そう思いながら、今日も京楽の隣で、喉をなでられてゴロゴロとご機嫌な声で鳴いた。
「にゃあ」
(猫でも愛してる)
「僕もだよ、シロ」
「にゃーーん」
猫の玩具に、体が反応する。シロは、よく遊び、よく食べて、よく眠った。
傍らには常に京楽がいた。
「いつか、僕がそっちにいくまで、まっててね、シロ」
「にゃーーん。にゃあにゃあ」
(いっそ、お前も俺と同じように猫になったらどうだ)
「考えておく・・・・・・」
京楽は、最期を迎える時、記憶を抜き取らせ、感情と一緒ににもう当たり前になった疑似愛玩等物の黒猫の脳に埋め込みさせた。
シロは旧タイプなのでいろいろガタがきていて、脳はそのままで新しい白猫のボディをもらった。
「にゃーん」
「にゃーお」
餌をもらう時だけ、人にすりよる2匹の猫が、かつて隊長と総隊長であったとは、もう誰も知らない。
遥か未来まで、2匹の猫はじゃれあいながら生きた。
猫でも、互いを愛している。
その気持ちだけは、変わらなかった。
浮竹十四郎がこの世を去った。
その訃報は、尸魂界中を駆け巡った。
大戦も何とか終わり、復興に向けて動き始めたばかりだった。
山本元柳斎重國、卯ノ花烈に並んで、また隊長が死んだ。尸魂界はこれからという時期を迎えていたのに、亡くなった。
たくさんの人が悲しんだ。一番悲しんだのは、総隊長となった京楽だろう。
何せ、何百年も連れ添った恋人だったのだ。
だが、葬儀の時は京楽は涙を見せなかった。蒼い薔薇で満たされた棺の中に、ミミハギ様を失ったことで病が進行し、少しやせ細った浮竹の遺骸があった。
穏やかな顔をしていた。
声をかければ、今すぐ起ききそうで。
「浮竹隊長ーーー!!!」
ルキアは泣きまくっていた。京楽と一緒に最期を看取ったが、やはり涙を流した。
「おやすみ、浮竹。また、何処かで会おう」
別れは、浮竹の意識がある時にもう済ませたのだ。
泣いたところで、何かが変わるわけでもない。
でも、と思う。
棺が閉まり、火がつけられる。
その全てが灰にになるまで、京楽もルキアも、そして訃報を受けてかけつた一護も、ただじっと見ていた。
「一護、浮竹隊長が!」
泣きじゃくるルキアを抱き締めて、一護は優しかった浮竹の面影を思い出す。
「どうか、安らかに・・・・・・」
「ルキア、もう泣くな」
そう言ったのは、白哉であった。
白哉は浮竹と交流が深かった。見れば、最後まで残っていたのは日番谷に松本・・・・交流がある人物ばかりだった。
後の人物たちは、見ていられないと、灰になるまでの間に去ってしまった。
浮竹は、自分の在り方に満足して死んでいった。
神掛けをおこない、自分が死ぬであろうことも分かっていたのに。
霊王は、尸魂界の民には死んでいないことにされていた。本当は、もういないのに。偽りと真実と。生と死と。いろんなものが混ざりあい、時は過ぎていく。
浮竹の焼け残った骨と灰は、主を失ったことで取り壊された雨乾堂の下に埋められて、立派な墓石が建てられた。
京楽は、その日も浮竹の墓参りに来ていた。
「にゃーん」
猫アレルギーの京楽は、一匹の白猫を飼いだした。その猫に対してだけは、アレルギーはでなかった。
疑似愛玩動物。特別な義骸で作られた、死ぬことのない愛玩動物。その白猫に、京楽は浮竹がまだ息がある時に抜き取った記憶の一部を埋め込んだ。
猫は、浮竹の意識をもっていた。
「にゃぁ」
京楽の傍にいつもまとわりついて、隊首会の時でさえ一緒にいた。
「にゃおーん」
周囲は、浮竹が亡くなったせいで、猫を飼いだしたと思っていた。
「にゃあ・・・・」
(京楽)
「どうしたんだい、シロ」
京楽は、その猫にシロという名をつけた。
「にゃあ」
(腹減った)
記憶があるからといって、元の浮竹がいるわけではない。猫の理性を持っていて、時折浮竹がでてくる。何をいっているのか分かるように、涅マユリの作った怪しい薬も飲んだ。
「今、ご飯あげるからね」
「にゃあ」
(愛してる)
「僕もだよ、シロ」
真実を知れば、京楽は狂人であると言われるだろう。
それでも構わない。
浮竹の死を、受け入れるにはまだまだ時間がかかりそうだった。
「にゃあ」
(一緒に寝よう)
「ちょっと待ってね。湯あみしてくるから」
猫に話しかける姿をよく見る七緒は、その猫が浮竹の代わりなのだと思った。まさか、浮竹の記憶そのものと感情を、あやふやではあるが、それを持つ猫などとは思わないだろう。
「にゃーん」
シロは、七緒にもよく懐いた。
誰にでもよく懐いていた。
湯あみをして夕餉を食べ、シロとひとしきり遊んだ京楽は、シロを抱き上げて一緒のベッドに横になった。
シロは、眠る京楽の横で丸くなって眠った。
いつか、京楽が自分の死を受け入れたら、いなくなろう。そうシロは思っていたのだが、シロの中に残された、京楽へ恋慕がそれをさせてくれない。
シロは、義骸でできた猫だ。年を取らない。
京楽が刻む年を、一緒に過ごしていくが、年をとらないので、最後には1匹になってしまうだろう。その時は、京楽と一緒の棺に入って、灰になろう。
そう思いながら、今日も京楽の隣で、喉をなでられてゴロゴロとご機嫌な声で鳴いた。
「にゃあ」
(猫でも愛してる)
「僕もだよ、シロ」
「にゃーーん」
猫の玩具に、体が反応する。シロは、よく遊び、よく食べて、よく眠った。
傍らには常に京楽がいた。
「いつか、僕がそっちにいくまで、まっててね、シロ」
「にゃーーん。にゃあにゃあ」
(いっそ、お前も俺と同じように猫になったらどうだ)
「考えておく・・・・・・」
京楽は、最期を迎える時、記憶を抜き取らせ、感情と一緒ににもう当たり前になった疑似愛玩等物の黒猫の脳に埋め込みさせた。
シロは旧タイプなのでいろいろガタがきていて、脳はそのままで新しい白猫のボディをもらった。
「にゃーん」
「にゃーお」
餌をもらう時だけ、人にすりよる2匹の猫が、かつて隊長と総隊長であったとは、もう誰も知らない。
遥か未来まで、2匹の猫はじゃれあいながら生きた。
猫でも、互いを愛している。
その気持ちだけは、変わらなかった。
院生での想い
「好きだ」
そう言われて、こう答えた。
「知ってる」
京楽が、浮竹を好きなことは、浮竹自身知っていた。でも、と思う。ずっと長い間、親友であったのに、恋人同士になれるのかと。
「僕は本気だよ?本気で君が好きだ。愛してる」
「俺はそれを知っていた。好きなのかと聞かれると、多分好きなんだろう。でも、愛しているとまでは断言できない」
「いいよ、それでも。君が振り向いてくれるまで、ずっと傍にいるから。振り向いてくれた後も、勿論傍にいるけどね」
京楽は、その日を境に廓に行かなくなった。付き合っていた女生徒とも手を切った。
「浮竹、一緒に食堂に行こう」
好きだと言われた日から、何かが急激に変わるものでもなかった。
いつものように、一緒の部屋で寝起きして、一緒に学院に登校し、授業を受けて食堂で食事をする。
京楽が好きと言い出しのは2回生の終わりごろ。気づけば、もう4回生になっていた。
ある時、現世で虚退治の特別授業があった。
そこで出るはずの虚は、院生でも倒せるクラスのものであるはずだった。
「そんなバカな・・・・大虚(メノスグランデ)・・・いくらなんでも、無理だ!」
引率していた教師が、絶望の声をあげる。
黒腔(ガルガンタ)が開き、そこから1匹の大虚が叫び声をあげた。
「京楽、いくぞ!」
「ああ、浮竹!」
斬魄刀を始解させて、大虚に切りかかる。何度か切りつけていると、大虚が虚閃(セロ)を放った。あまりの速度に、交わしきれなくて、浮竹が目を見開く。
「危ない!」
突き飛ばされた。
虚閃を浴びて、京楽が大地へと落ちていく。
「京楽!この!」
もう一度、虚閃を浴びせられたが双魚の理で何とか吸い取って、反対側の刃から虚閃を収縮して打つとと、大虚は悲鳴をあげて黒腔の中に逃げて行った。
今の力量で、大虚を倒すことはまだ無理だ。
幸いにも、大虚は一体だけで、混乱してた教師たちも生徒も、大虚と一緒になって現れた普通の虚の退治へと移行する。
「なんとかなるか・・・・・」
様子を見て、浮竹は京楽の落ちて行った場所へ降りて行った。
「京楽、しっかりしろ!」
酷い火傷を負っていた。
「なんであんな馬鹿な真似した!」
「君が危ないと思ったら、勝手に体が動いていたんだよ・・・・ごほっごほっ」
肺に穴が開いていた。
血を吐く京楽が、まるで自分のように見えて、背筋が凍る。すぐに念のためにきていた4番隊の死神に声をかける。
「急患なんです、頼みます」
4番隊の席官が、すぐに京楽の手当てのために回道を行った。肺の傷は小さかったのでなんとか血止めがされ、致命傷に近かった火傷も少しましになった。
「あとは入院して治すしかないな。それまでもつかどうか心配だが」
「京楽、しっかりしろ!」
京楽は、すでに意識を手放していた。
「京楽・・・・・」
浮竹は、京楽がこのまま逝ってしまうのではないかと、気が気ではなかった。
その時にやっと気づいた。
涙が頬を伝う。
「お前のことを、愛している・・・・・・」
そう、自覚した。
京楽は入院し、集中治療室に運ばれた。
数日の間は危険な命の境を彷徨ったが、回道で手当てを受けていく間に、なんとか一命をとりとめることができた。
やっと集中治療室から出てきて、意識の戻った京楽に、学院の授業が終わると、浮竹は毎日お見舞いにやってきた。
「京楽、好きだ。愛している・・・・・」
「浮竹?本当に?」
「お前を失うと思って気づいたんだ。こんなに愛していることを」
病室で、抱き合ってキスをした。
「愛しているよ、浮竹」
「分かっている。だから、もうあんな無茶な真似、やめてくれ・・・・・・・」
1か月が経ち、やっと退院が許された。
まだしばらくは通院しなければいけないが、京楽は戻ってきた。
「歩けるか?」
「微妙だね」
京楽に肩をかして、一歩一歩寮の自室に向かって歩き出す。
「まだしばらくは、学校を休め。こんな体じゃあ、通学なんて無理だ」
「早めに日常生活に戻りたくて、退院を早めたんだけど、無意味だったようだね」
「退院を無理に早めただって!?このバカ!」
頭をぽかりと殴ると、京楽は言った。
「ごめんね。君に心配をかけさせたくなかったんだ」
「俺のことはもういい」
「よくないよ。君が死ぬかと思ったんだ、あの時・・・・・」
「俺は、お前が死ぬかと思った。もうあんな想いはこりごりだ」
寮の部屋につくと、抱き締めあった。
そのまま唇が重なる。
その日、初めて体を重ね合った。
告白されて、2年が経とうとしていた。
6回生になった。
お互いを大事にしあい、時には体を重ね、座学に励み、剣術や鬼道の腕を磨いた。
もう、大虚でも倒せそうなくらいの力をつけた二人の行き先は、決まっていた。
浮竹が13番隊の3席に。京楽が8番隊の3席に。
卒業する前から、席官入りが決まったのは初の例だった。
しかも3席。
卒業してからは、お互い忙しく、二人きりの時間をとることができなかった。
ある時、非番の日になった。たまたま同じ日にだ。
いつもは、非番の日でも責務に追われていたり、現世に虚退治の遠征に出かけたりと、時間をとれなかった。
その日は、一緒に過ごした。昼までいつもの疲れをとるためにゴロゴロ寝て、午後から酒盛りを始めて、夕方にはすっかり浮竹は酔っぱらっていた。
「こらー京楽ー」
「好きだよ、浮竹」
「おう、俺も好きだぞー」
そのまま、浮竹を押し倒す。
「京楽のあほー。お前ももっと飲め」」
「浮竹、飲み過ぎだよ」
杯をとりあげた。
「んう」
舌が絡み合う口づけをすると、久しぶりのこともあってか、どちらかが、というわけでもなく貪りあった。
「あ・・・・・」
酔っているせいで、世界がふわふわする。
「ん・・・・」
痕を残されたが、本当に久しぶりだったので何も言わなかった。
次の日は、浮竹は二日酔いで結局休んでしまった。京楽も、休暇が溜まっていたので休みをとった。
「いつも、こうしていられたらいいのにね」
「お前のことだ、体を重ねてくるだろう・・・・いつもは無理だ」
昨日、久しぶりだったのでかなり無茶をさせられた。数回意識を飛ばした。
「今みたいに、数日に1回あえる距離がちょうどいい」
「僕はもっと君に会いたいよ」
「じゃあ、お互い出世しないとな」
そう言って、笑いあった。
それから数年後。
二人は、若くして隊長にまで登りつめた。
くしくも、先代の隊長が戦闘によって一人は死亡し、一人は引退になるまで体を欠損した。
二人とも卍解は使えたし、能力的にも十分とされて、山本元柳斎重國に太鼓判を押された。
浮竹は、病弱であることも考えられて、雨乾堂という、隊首室と執務室を一つにした特別な建物が建てらた。
その雨乾堂に、京楽はよくお忍びで遊びにきた。
8番隊としての仕事を終えてからなので、浮竹も何も言わなかった。
「今日、なんの日か覚えてる?」
「覚えてない」
「やっぱり・・・・・」
少しがっくりした京楽に、浮竹がキスをして機嫌をとる。
「今日はね、僕がはじめて君に告白した日だよ」
「お前は、いつも好きだ好きだというから、そんな日のこと覚えていなかった」
浮竹が、京楽の腕の中で、ごろりと寝転がった。
「今日はするのか、しないのか?」
「する」
再び、唇が重なる。
そのままの関係で、数百年の時を重ねることになるなど、その時は知る由もなかったのだが。
院生時代の想いは、今も胸の中に燻っているのだ。
お互いに。
好きで愛していている。
その想いは、永遠に似ていた。
そう言われて、こう答えた。
「知ってる」
京楽が、浮竹を好きなことは、浮竹自身知っていた。でも、と思う。ずっと長い間、親友であったのに、恋人同士になれるのかと。
「僕は本気だよ?本気で君が好きだ。愛してる」
「俺はそれを知っていた。好きなのかと聞かれると、多分好きなんだろう。でも、愛しているとまでは断言できない」
「いいよ、それでも。君が振り向いてくれるまで、ずっと傍にいるから。振り向いてくれた後も、勿論傍にいるけどね」
京楽は、その日を境に廓に行かなくなった。付き合っていた女生徒とも手を切った。
「浮竹、一緒に食堂に行こう」
好きだと言われた日から、何かが急激に変わるものでもなかった。
いつものように、一緒の部屋で寝起きして、一緒に学院に登校し、授業を受けて食堂で食事をする。
京楽が好きと言い出しのは2回生の終わりごろ。気づけば、もう4回生になっていた。
ある時、現世で虚退治の特別授業があった。
そこで出るはずの虚は、院生でも倒せるクラスのものであるはずだった。
「そんなバカな・・・・大虚(メノスグランデ)・・・いくらなんでも、無理だ!」
引率していた教師が、絶望の声をあげる。
黒腔(ガルガンタ)が開き、そこから1匹の大虚が叫び声をあげた。
「京楽、いくぞ!」
「ああ、浮竹!」
斬魄刀を始解させて、大虚に切りかかる。何度か切りつけていると、大虚が虚閃(セロ)を放った。あまりの速度に、交わしきれなくて、浮竹が目を見開く。
「危ない!」
突き飛ばされた。
虚閃を浴びて、京楽が大地へと落ちていく。
「京楽!この!」
もう一度、虚閃を浴びせられたが双魚の理で何とか吸い取って、反対側の刃から虚閃を収縮して打つとと、大虚は悲鳴をあげて黒腔の中に逃げて行った。
今の力量で、大虚を倒すことはまだ無理だ。
幸いにも、大虚は一体だけで、混乱してた教師たちも生徒も、大虚と一緒になって現れた普通の虚の退治へと移行する。
「なんとかなるか・・・・・」
様子を見て、浮竹は京楽の落ちて行った場所へ降りて行った。
「京楽、しっかりしろ!」
酷い火傷を負っていた。
「なんであんな馬鹿な真似した!」
「君が危ないと思ったら、勝手に体が動いていたんだよ・・・・ごほっごほっ」
肺に穴が開いていた。
血を吐く京楽が、まるで自分のように見えて、背筋が凍る。すぐに念のためにきていた4番隊の死神に声をかける。
「急患なんです、頼みます」
4番隊の席官が、すぐに京楽の手当てのために回道を行った。肺の傷は小さかったのでなんとか血止めがされ、致命傷に近かった火傷も少しましになった。
「あとは入院して治すしかないな。それまでもつかどうか心配だが」
「京楽、しっかりしろ!」
京楽は、すでに意識を手放していた。
「京楽・・・・・」
浮竹は、京楽がこのまま逝ってしまうのではないかと、気が気ではなかった。
その時にやっと気づいた。
涙が頬を伝う。
「お前のことを、愛している・・・・・・」
そう、自覚した。
京楽は入院し、集中治療室に運ばれた。
数日の間は危険な命の境を彷徨ったが、回道で手当てを受けていく間に、なんとか一命をとりとめることができた。
やっと集中治療室から出てきて、意識の戻った京楽に、学院の授業が終わると、浮竹は毎日お見舞いにやってきた。
「京楽、好きだ。愛している・・・・・」
「浮竹?本当に?」
「お前を失うと思って気づいたんだ。こんなに愛していることを」
病室で、抱き合ってキスをした。
「愛しているよ、浮竹」
「分かっている。だから、もうあんな無茶な真似、やめてくれ・・・・・・・」
1か月が経ち、やっと退院が許された。
まだしばらくは通院しなければいけないが、京楽は戻ってきた。
「歩けるか?」
「微妙だね」
京楽に肩をかして、一歩一歩寮の自室に向かって歩き出す。
「まだしばらくは、学校を休め。こんな体じゃあ、通学なんて無理だ」
「早めに日常生活に戻りたくて、退院を早めたんだけど、無意味だったようだね」
「退院を無理に早めただって!?このバカ!」
頭をぽかりと殴ると、京楽は言った。
「ごめんね。君に心配をかけさせたくなかったんだ」
「俺のことはもういい」
「よくないよ。君が死ぬかと思ったんだ、あの時・・・・・」
「俺は、お前が死ぬかと思った。もうあんな想いはこりごりだ」
寮の部屋につくと、抱き締めあった。
そのまま唇が重なる。
その日、初めて体を重ね合った。
告白されて、2年が経とうとしていた。
6回生になった。
お互いを大事にしあい、時には体を重ね、座学に励み、剣術や鬼道の腕を磨いた。
もう、大虚でも倒せそうなくらいの力をつけた二人の行き先は、決まっていた。
浮竹が13番隊の3席に。京楽が8番隊の3席に。
卒業する前から、席官入りが決まったのは初の例だった。
しかも3席。
卒業してからは、お互い忙しく、二人きりの時間をとることができなかった。
ある時、非番の日になった。たまたま同じ日にだ。
いつもは、非番の日でも責務に追われていたり、現世に虚退治の遠征に出かけたりと、時間をとれなかった。
その日は、一緒に過ごした。昼までいつもの疲れをとるためにゴロゴロ寝て、午後から酒盛りを始めて、夕方にはすっかり浮竹は酔っぱらっていた。
「こらー京楽ー」
「好きだよ、浮竹」
「おう、俺も好きだぞー」
そのまま、浮竹を押し倒す。
「京楽のあほー。お前ももっと飲め」」
「浮竹、飲み過ぎだよ」
杯をとりあげた。
「んう」
舌が絡み合う口づけをすると、久しぶりのこともあってか、どちらかが、というわけでもなく貪りあった。
「あ・・・・・」
酔っているせいで、世界がふわふわする。
「ん・・・・」
痕を残されたが、本当に久しぶりだったので何も言わなかった。
次の日は、浮竹は二日酔いで結局休んでしまった。京楽も、休暇が溜まっていたので休みをとった。
「いつも、こうしていられたらいいのにね」
「お前のことだ、体を重ねてくるだろう・・・・いつもは無理だ」
昨日、久しぶりだったのでかなり無茶をさせられた。数回意識を飛ばした。
「今みたいに、数日に1回あえる距離がちょうどいい」
「僕はもっと君に会いたいよ」
「じゃあ、お互い出世しないとな」
そう言って、笑いあった。
それから数年後。
二人は、若くして隊長にまで登りつめた。
くしくも、先代の隊長が戦闘によって一人は死亡し、一人は引退になるまで体を欠損した。
二人とも卍解は使えたし、能力的にも十分とされて、山本元柳斎重國に太鼓判を押された。
浮竹は、病弱であることも考えられて、雨乾堂という、隊首室と執務室を一つにした特別な建物が建てらた。
その雨乾堂に、京楽はよくお忍びで遊びにきた。
8番隊としての仕事を終えてからなので、浮竹も何も言わなかった。
「今日、なんの日か覚えてる?」
「覚えてない」
「やっぱり・・・・・」
少しがっくりした京楽に、浮竹がキスをして機嫌をとる。
「今日はね、僕がはじめて君に告白した日だよ」
「お前は、いつも好きだ好きだというから、そんな日のこと覚えていなかった」
浮竹が、京楽の腕の中で、ごろりと寝転がった。
「今日はするのか、しないのか?」
「する」
再び、唇が重なる。
そのままの関係で、数百年の時を重ねることになるなど、その時は知る由もなかったのだが。
院生時代の想いは、今も胸の中に燻っているのだ。
お互いに。
好きで愛していている。
その想いは、永遠に似ていた。
わかめちゃん
「うーん。こうでもない・・・・・こうでもない・・・・」
暇を持て余していた浮竹は、雨乾堂の外にでて、盆栽をいじっていた。
「浮竹。僕と盆栽とどっちが大事なの」
同じく暇を持て余していた京楽が遊びにきていたが、することもないので盆栽をいじっていた。
「盆栽」
「酷い!僕とのことは遊びだったのね!」
泣き真似をする京楽を無視して、盆栽をいじる。
枝きり鋏でパチンと切れば、切りすぎた。
「京楽のせいだぞ!盆栽を切りすぎたじゃないか!」
「なんで僕のせい!?」
「もういい、次の盆栽だ」
パチンパチンと切っていたら、丸坊主になった。
「おかしいな?」
次の盆栽に手をかける。
今度は控えめに、切ってみた。
ちょうどよいかんじに仕上がって、浮竹は満足したが、京楽が横から鋏をいれた。
パチン。
ぼとっと枝が落ちる。
「これくらいしたほうがスッキリするよ」
せっかく綺麗に揃った盆栽の右半分が、なくなった。
「京楽、お座り!」
「何それ!僕は犬かい!?」
でも、その場で正座した。
「せっかくいい感じで仕上がったてたのに!」
蹴りを入れられて、京楽は地面に体を投げ出して泣き真似を始めた。
「酷い!盆栽と僕とで盆栽を選ぶ浮竹が酷い!僕を弄んだ!」
じーーー。
視線を感じて振り返ると、日番谷がいた。
「暇だから、遊びにきたら変態ごっこか。すまん、邪魔したな」
「待ってくれ」
浮竹が呼び止める前に、京楽がかさかさと移動して、日番谷の足首をとらえた。
「君も一緒に盆栽で・・・・・・」
「うわあああああああ、来るなああああ!!」
日番谷は、エクソシストのような動きをする京楽に恐怖を感じた。
「ぎゃああああああああ」
日番谷は、京楽に捕まった。
「捕まえた」
にやり。
笑みを刻む京楽に蹴りをいれる。
「なんか僕の扱い、みんな酷くない!?」
「素直に立って移動すればいいだろうが」
浮竹の最もな意見に、日番谷が同意する。
「京楽は、いつもこうなのか?」
「いや、今日は特に酷いな。まぁ、俺が構ってないせいだろうが」
「構ってやれよ」
「盆栽をいじるのに忙しい」
暇で始めたた盆栽いじりに、熱中していた。
「まぁ、日番谷隊長が遊びにきてくれるなんて珍しいから、この辺にしとくか。茶を入れるから中に入ってくれ」
「ああ」
「僕のことは無視!?酷い、僕とのことは遊びだったのね!」
京楽も、日番谷と一緒になって雨乾堂にはいってきた。
湯呑は2つ。
浮竹は、自分と日番谷の分の茶をいれた。
「僕の分はないの!?」
「仕方ないなぁ。清音ーーーー。湯呑1つもってきてくれ」
「はーい隊長!」
できる3席は、すぐに湯呑と、そして茶菓子を数人分用意して現れた。
「あら、日番谷隊長が雨乾堂にくるなんて珍しいですね!」
「まぁ、暇だし近くにきたら寄ってみただけだ」
新しい湯呑に、玉露の茶を入れる。
茶菓子はわかめ大使であった。
「わかめ大使・・・・お前、好きだな」
「ああ、味はいいからな。見た目はあれだが。定期的に白哉のところにいって買ってきてる」
「僕もいってるよ~。荷物持ちで」
京楽は、入れられたお茶をのみながら、わかめ大使を食べた。
浮竹は京楽の頭を撫でた。
それだけで、京楽は満足してしまった。
ちょろいな。日番谷も浮竹も思った。
「こっちが新開発のわかめちゃん・・・・・・・白あんこなんだ」
わかめ大使を少しかわいくしたかんじのお菓子を出す。
「ふーむ。悪くはないな。見た目はあれだけど」
日番谷が素直な意見をする。
「白あんこ合うんだよな、これ。わかめちゃん・・・・・・・・・・」
浮竹が、2個目のわかめちゃんを食べる。
「和風菓子ってところがいいと思うけど、見た目がねぇ」
京楽も、わかめちゃんを食べた。
「「「うーーーん、見た目が」」」
はもった。
その後、日番谷もわかめ大使とわかめちゃんを白哉から買うようになって、浮竹と京楽の他にも浸透したと喜ぶ白哉の姿があったとかなかったとか。
暇を持て余していた浮竹は、雨乾堂の外にでて、盆栽をいじっていた。
「浮竹。僕と盆栽とどっちが大事なの」
同じく暇を持て余していた京楽が遊びにきていたが、することもないので盆栽をいじっていた。
「盆栽」
「酷い!僕とのことは遊びだったのね!」
泣き真似をする京楽を無視して、盆栽をいじる。
枝きり鋏でパチンと切れば、切りすぎた。
「京楽のせいだぞ!盆栽を切りすぎたじゃないか!」
「なんで僕のせい!?」
「もういい、次の盆栽だ」
パチンパチンと切っていたら、丸坊主になった。
「おかしいな?」
次の盆栽に手をかける。
今度は控えめに、切ってみた。
ちょうどよいかんじに仕上がって、浮竹は満足したが、京楽が横から鋏をいれた。
パチン。
ぼとっと枝が落ちる。
「これくらいしたほうがスッキリするよ」
せっかく綺麗に揃った盆栽の右半分が、なくなった。
「京楽、お座り!」
「何それ!僕は犬かい!?」
でも、その場で正座した。
「せっかくいい感じで仕上がったてたのに!」
蹴りを入れられて、京楽は地面に体を投げ出して泣き真似を始めた。
「酷い!盆栽と僕とで盆栽を選ぶ浮竹が酷い!僕を弄んだ!」
じーーー。
視線を感じて振り返ると、日番谷がいた。
「暇だから、遊びにきたら変態ごっこか。すまん、邪魔したな」
「待ってくれ」
浮竹が呼び止める前に、京楽がかさかさと移動して、日番谷の足首をとらえた。
「君も一緒に盆栽で・・・・・・」
「うわあああああああ、来るなああああ!!」
日番谷は、エクソシストのような動きをする京楽に恐怖を感じた。
「ぎゃああああああああ」
日番谷は、京楽に捕まった。
「捕まえた」
にやり。
笑みを刻む京楽に蹴りをいれる。
「なんか僕の扱い、みんな酷くない!?」
「素直に立って移動すればいいだろうが」
浮竹の最もな意見に、日番谷が同意する。
「京楽は、いつもこうなのか?」
「いや、今日は特に酷いな。まぁ、俺が構ってないせいだろうが」
「構ってやれよ」
「盆栽をいじるのに忙しい」
暇で始めたた盆栽いじりに、熱中していた。
「まぁ、日番谷隊長が遊びにきてくれるなんて珍しいから、この辺にしとくか。茶を入れるから中に入ってくれ」
「ああ」
「僕のことは無視!?酷い、僕とのことは遊びだったのね!」
京楽も、日番谷と一緒になって雨乾堂にはいってきた。
湯呑は2つ。
浮竹は、自分と日番谷の分の茶をいれた。
「僕の分はないの!?」
「仕方ないなぁ。清音ーーーー。湯呑1つもってきてくれ」
「はーい隊長!」
できる3席は、すぐに湯呑と、そして茶菓子を数人分用意して現れた。
「あら、日番谷隊長が雨乾堂にくるなんて珍しいですね!」
「まぁ、暇だし近くにきたら寄ってみただけだ」
新しい湯呑に、玉露の茶を入れる。
茶菓子はわかめ大使であった。
「わかめ大使・・・・お前、好きだな」
「ああ、味はいいからな。見た目はあれだが。定期的に白哉のところにいって買ってきてる」
「僕もいってるよ~。荷物持ちで」
京楽は、入れられたお茶をのみながら、わかめ大使を食べた。
浮竹は京楽の頭を撫でた。
それだけで、京楽は満足してしまった。
ちょろいな。日番谷も浮竹も思った。
「こっちが新開発のわかめちゃん・・・・・・・白あんこなんだ」
わかめ大使を少しかわいくしたかんじのお菓子を出す。
「ふーむ。悪くはないな。見た目はあれだけど」
日番谷が素直な意見をする。
「白あんこ合うんだよな、これ。わかめちゃん・・・・・・・・・・」
浮竹が、2個目のわかめちゃんを食べる。
「和風菓子ってところがいいと思うけど、見た目がねぇ」
京楽も、わかめちゃんを食べた。
「「「うーーーん、見た目が」」」
はもった。
その後、日番谷もわかめ大使とわかめちゃんを白哉から買うようになって、浮竹と京楽の他にも浸透したと喜ぶ白哉の姿があったとかなかったとか。