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金木犀

「甘い花の匂いがする」

「え、それいつもの君の香でしょ」

「ちがうちがう。もっとこう・・・ああ、金木犀だ」

橙色の小さな花を集めて咲いた木を見上げる。

「ああ、金木犀の匂いか・・・・たしかに、甘ったるいよね」

「俺もこんなに甘い香がするのか?」

「いや・・・君は甘い花の香はするけど、湯あみでシャンプーとか石鹸の匂いがまじっていない限り、甘ったるくないね」

「つまり、湯あみした後は甘ったるいのか?」

「少しね」

溜息をつく。それは生来のもので、赤子の頃花の神に捧げられ、祝福を受けた証として、浮竹はいつも甘い花の香がしていた。

「でも、高級ってかんじの匂いで、悪くはないよ」

散っていく金木犀の花を集めてみた。

その香はけっこう好きだと、浮竹は思う。

「今みたいな10月の半ばに花を咲かして、2週間ばかりで散ってしまうか・・・・・」

花としては2週間もてばいいほうだろう。

「何、金木犀気に入ったの?」

「ああ。けっこう好きだ、この甘い香」

「へぇ。じゃあ、金木犀の香水でも・・・・・・ああ、でも君は元来の甘い花の香があるからね。室内に置いておけるタイプの芳香剤でも買ってあげるよ」

「そんなの売ってるのか?」

「このサイト・・・・・いろいろそろってるから」

伝令神機の、雑貨屋を見せられる。検索すると、金木犀の芳香剤がでてきた。

その値段に驚く。

「3万・・・・・けっこう、高いんだな」

「いや、安いでしょ。このサイト、僕はよく利用しているけど・・・というか、上級貴族向けのサイトだからね。3万は高いのかい?」

「普通なら、高くても3千くらいだろう」

「ふーむ。まぁいいや、ぽちっとな」

テロレロリンと音が鳴って、購入した証のデータが出てきた。

「ここの便利なとこは・・・」

テロレロリン。

音がして、金木犀の芳香剤がぽんっと届いた。

「ほら、ごらんの通り・・・・注文したら、すぐ届くんだ。場所とか関係なく」

「どうなってるんだ一体・・・・」

「僕にもよくわからないけど、技術開発局もかかわってるらしいから、簡易の転送じゃないかな」

「ふーむ」

芳香剤の入った箱をいろんな角度から見てみたが、これといって怪しい箇所はなかった。

「まぁいいか。ありがたくおもらっておく」

「何か欲しいのあれば、君も伝令神機で買うといいよ」

「金がない」

「僕のアドレスとID教えておくから。1500万までは使えるから」

家が1軒買える値段に、浮竹が驚く。

「そんなに、こんな雑貨屋に使うのか?」

「いやー?ただ、僕のクレジットの残高。最近けっこう使ったから、10分の1以下になってるけど」

10倍・・・1億5千・・・・くらりと眩暈をおこしそうだった。

「お前の金銭感覚は、相変わらずだな」

「えーそうかい?まぁ、屋敷買うわけじゃないし、今は1500万でいいかなーって」

「この雑貨屋で屋敷を買うのか?」

「そうだよ。雑貨屋っていうより、なんでも屋だね。職人とかもくるから便利でね・・・他のとこのほうがもっと安くつくだろうけど、手続きとか簡単だから、いつもここを使ってるね」

「13番隊の隊舎の一部に雨漏りがあって、困っているんだ」

「屋根修理だね。頼んでおいたよ。今回は安いね50万だって」

いや、普通5万くらいだろう・・・・思ったが、浮竹は何も言わなかった。京楽の懐から13番隊の隊舎を直させるのに、良心は痛むというより、経費を使わなくてすんでいいなと、ちょっと腹黒くなっていた。

「この芳香剤、雨乾堂に置いてくる」

「ああ、僕もいくよ」

雨乾堂から出て10分もしない道端での会話だったのだ。

風がふく。

ちらちらと、橙色の花が散っていく。

桜の花ような可憐さも美しさもないけれど、これはこれでいいと思えた。

後日、購入履歴を見たのだが、浮竹グッズばかりで、浮竹は京楽の院生時代の変態さを垣間見た気がして、困ったという


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紫薔薇姫

その日、朽木白哉は趣味の夜の散歩に出ていた。

月が綺麗な夜だった。

「お、白哉じゃないか」

向こう側からやってくるのは、浮竹だった。

「どうした浮竹。こんな時間に」:

「いや、最近臥せって運動不足だったから、運動とあとはずっと寝ていたせいで眠れなくてな」

そういう浮竹の額に、白哉は手を当てた。

「熱は、もうないようだな」

「そうじゃないと、外出なぞせん。隣いいか?」

「好きにするがよい」

浮竹は、白哉の隣に並んで歩きだす。

「月が綺麗だな」

「今宵の月は格別だ」

月光の中を、二人で他愛もない昔話をしながら歩く。

「母上は、かなり美人で、俺は母上似なのだ」

「・・・・母親が生きているだけいいではないか。私は、最愛の妻とも死別してしまった」

「やっぱり、再婚する気はないのか?」

「緋真以外に、娶りたい女性などおらぬ」

「朽木の妹は妹だしな・・・・・」

「そういう兄こそ、所帯はもたぬのか」

「こんな病弱なのに、結婚なんてできない。それに、俺には京楽がいるからな」

何気にのろけられた。

「はっくしょん」

「今宵は冷えるな。これでも被っていろ」

そう言って、銀白風花紗を浮竹の首に巻いた。

「お前、これめっちゃ高いやつ・・・・」

「心配無用だ。すでに1つ、この間兄が血を吐いた時に、つかいものにならなくなったものがある」

「うわあ、弁償したいけどできない・・・・・・・・」

浮竹は頭を抱えた。

「兄に弁償しろなどとは言わぬ。それに、発作は仕方のないことだ。兄に近づかなければ銀白風花紗は汚れなかった。だが、倒れた兄を放置しておくわけにもいかぬだろう」

「ありがたいけど、そのシーンを京楽に見られたら、あいつのことだから絶対嫉妬しそう」

「京楽隊長は、兄のことになると性格が変わる。あれは独占欲の塊だ」

「まぁ、そう言わないでやってくれ。あれでも、とても優しいんだ」

「それは兄にだけであろう」

「ああ、うん、そうかも・・・・・」

「そろそろ私は帰る。その銀白風花紗は今度会う時に返してくれればいい」

「あ、待て白哉!」

白哉は、瞬歩で消えてしまった。

「これをもって帰れと?」

仕方なく、浮竹も瞬歩で雨乾堂に帰った。次の日、天日に干していた銀白風花紗を見て、京楽がにっこりと笑んだ。

「あれは何かな?」

「あれは、昨日夜の散歩をしていたら白哉に会って、くしゃみをしたら首に巻かれて、そのまま今度返せばいいと言われて・・・・・・・」

「へえ。病み上がりなのに、夜に散歩に。朽木隊長に・・・・・・・」

「京楽、勘違いするなよ、何もなかったからな!」

「何もなくてもね・・・・・・」

ちりっとした感覚を、首に感じた。、

キスマークを残された。

「こら、京楽!」

「大人しくしてないと、またキスマーク残すよ」

びくりと、浮竹の動きが止まる。

「ほんとにこの子は・・・・・・」

抱き締められて、何度もキスされた。

「ふあっ・・・」

服の上から体の輪郭をなぞられる。

「あ・・・・・・」

「99本の紫の薔薇をもってきたのに」

薔薇の花束。99本の意味は永遠の愛。

「紫の薔薇の花言葉は「誇り」「気品」「尊敬」だよ」

「白哉に合いそうだな・・・・・・・」

「まぁそうだね。朽木隊長にぴったりの花言葉だろうねぇ」

薔薇を一本手折って、いつものように浮竹の髪に飾る。

「僕だけの紫薔薇姫。せめて、一緒にいる間はあまり他の男のことを考えないで」

「そんな無理なことを・・・・・・」

「浮竹は今、この薔薇の花を朽木隊長に渡してみたいって思ってるでしょ」

「なんで分かるんだ?」

「花言葉がぴったりだから、でしょ」

「それもあるが、
銀白風花紗を返したい」

「あれは、僕が責任をもって朽木隊長に渡しておくから」

「そうか?すまないな・・・んっ」

口づけられて、押し倒される。

「最近臥せっていて、お預け食らってた分、もらってもいいよね?」

「好きにしろ・・・・・・・・」

浮竹は、全身から力を抜いた。

「愛してるよ、十四郎」

「俺も愛してる、春水・・・・」

交じりあいながら、愛を囁く。

紫の薔薇も、ドライフラワーにされて、蒼薔薇の隣にかざられるのであった。

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カニ鍋2

ルキアに案内されて、遊びにきていた一護たちを、瀞霊廷は迎え入れた。

一護の他にも、井上、石田、茶虎がきていた。

「ああ、一護君」

「浮竹さん、久しぶり。体はいいのか?」

「ああ、この通り最近は元気なんだ。熱も出ないし、肺の病の発作もないし」

「そりゃよかった」

「こら一護!浮竹隊長に失礼であろう!ちゃんと敬語で話せ!」

「うっせーなルキア」

「まぁまぁ、朽木もそのへんにしておけ」

「なりません、浮竹隊長!こやつは、つけあがると・・・・・」

ぐりぐりと、一護の頭を拳で殴っていたルキアを、一護が振り切る。

「さっきから大人しくしてると、いてぇなこの野郎!」

「もきゃあ!?」

尻もちをついたルキアを、一護が助け起こす。

「仲がいいんだな、二人とも」

「こ、こんなたわけのことなどどうでもいいのです!」

真っ赤になったルキアが、ぶんぶんと首を振る。

同じく真っ赤になった一護が、ルキアを指さす。

「こ、こんな傲慢で我儘なルキアのことなんて!」:

「おーい、みんな、私たちもいること忘れてないー?」

井上が、石田と茶虎を連れてきた。

「ぬおっ、井上!そうだ、兄様に井上を紹介しに行かねば!」

「私なら、先ほどからここにいるが?」

「兄様、いつの間に・・・・気配を絶っておりましたね?」

「騒がしいのは、好かぬ」

「兄様、こやつが井上織姫!現世の、高校なる場所で出会った、一番の友人です」

「朽木さん、一番の友人だなんて照れるなぁ」

「ふむ。井上とやら、ルキアを今後も頼む」

「あああ、朽木さんのお兄様、それはこちらのほうから言いたい言葉です」

わいわいと賑わっていたら、京楽がやってきた。

「おや、珍しい面子がそろっているねぇ」

「京楽!日番谷隊長と松本副隊長は!?」

「ちゃんといるよ。ねぇ?」

「なんなんだ、いきなり呼びつけたりして」

「なんか美味しいもの食べさせてくれるらしいですよ」

松本がわくわくしていた。

すでに、段取りは決まっていた。

朽木家に移動して、座敷でカニ鍋が現世組、ルキアと白哉用、日番谷と松本用、浮竹と京楽の、4つの鍋があった。

現世組は人数が多いので大鍋だった・

「白哉を口説き落として用意させたんだ。みんな、カニの季節だし好きなだけ食べていってくれ」

「わーカニなんて久しぶりー」

井上がとても嬉しそうにしていた。

「隊長、カニですよカニ。最近食べてませんね」

「俺はこの前食べた」

「ええっ、ずるい!」

「ばあちゃんちで、カニ鍋したんだよ!ばあちゃん、質素な生活してるから、俺が帰らないと、豪華なもの食わねーからな」

「へえ、冬獅郎ってばあちゃんいるのか」

一護が、珍しそうな声を出した。

「いちゃ悪いのかよ!」

「なんでそうなるんだよ!」

「日番谷隊長と呼べ!」

ワイワイ言ってる間に、鍋が沸騰しだして、カニや海老、はまぐりに鮭、あとは白菜、椎茸、えのきだけ、人参、うどんなどを入れていく。

「んー美味しい」

「美味しいー」

松本と井上の反応は似ていた。

白哉は、ややためらいがちに、はじめて誰かと鍋をつつくということを経験していた。

「兄様、カニはこうすると身がとりやすいのです」

「こうか?」

「お上手です、流石兄様!何をされても絵になります!」




「まぁ、上手に朽木隊長を口説き落としたもんだねぇ」

「3日かかった」

「うわぁ。さすがに朽木隊長に同情しちゃうよ」:

「でも、皆でカニ鍋を囲むのも悪くないだろう?」

「まぁ、人数が多すぎて鍋は別々だけどね」

楽しそうに浮竹は笑う。

その笑顔を、京楽だけでなく日番谷と白哉も見ていた、

段取りまで時間がかかったせいもあって、その日の夕方にが一護たちは現世に帰ることが決まっていた。

「じゃあ、みんなまたな!」

一護が、手を振る。ルキアは現世組についていって現世に戻るので、白哉はルキアにマフラーをもたせた。

「風邪など、ひかぬように」

「ありがとうございます兄様!それではまた戻る時まで、しばしの別れです」

「気を付けて。一護君も、元気で」

「ああ、浮竹さんもな!」

京楽は、小声で「一護君はもうこなくていいよ」とかいってたので、浮竹がその頭を殴っていた。

「白哉、朽木家を貸してくれてありがとうな」

「兄がそうしないと、血を吐くと脅したせいであろう」

実際、脅しているわけではなかったが、一度血を吐いた。浮竹は発作の我慢はできないが、血を吐こうとしたら、そうできるときがあるので、白哉も気が気ではなかった。

「京楽も、手伝ってくれてありがとう」

「どういたしまして」

皆、帰路についていく。

その日の夕焼けは、いつもより格段に綺麗だった。

夕日に照らされて、紅色に染まる白い髪を見ていた京楽は、その髪に口づけた。

「楽しかったかい?」

「ああ、久しぶりに楽しんだ」:

「今日の夜、いいかい?ご褒美に」

浮竹は、夕暮れのせいではない朱さで頬を染めた。

「仕方ないな・・・・・・」

3日前にしたばっかりなので、1週間に2回と決められているせいで、そろそろいいかと思っていたのだった。

「じゃあ、雨乾堂に戻ろうか」

「ああ、そうだな。京楽」

「なんだい?」

「俺は白哉に日番谷隊長に一護君が大好きだが、一番大好きなのはお前だからな!」

顔を真っ赤にしながら、そう叫んだ。

「浮竹は、かわいいね」

にんまりとした優越感に浸る笑みを、京楽が刻む。

こうして、冬も過ぎていくのであった。









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朽木白哉と浮竹

「なぁ白哉、今度みんなでカニ鍋をしようと思っているのだが、来てくれるか?」

「断る」

「そう言わずに・・・・・・」

朽木家の用意されていた執務室で、浮竹が白哉に甘えていた。

ゴロゴロゴロ。

広い畳の上をゴロゴロ転がって、甘えているのだが、白哉はなかなかうんと言ってくれないのだ。

「隊長・・・・・・あのかわいい生物、どうしましょう」

「兄にやる」

恋次は、ゴロゴロとやってきた浮竹を見て、思わず頭を撫でた。

「どうした、阿散井副隊長」

「あんまりゴロゴロ転がらないでください。かわいいから」

「うーん?もう少し転がっとく」

恋次を置いて、白哉のほうに転がっていく浮竹。

「兄は何がしたい」

「だから、カニ鍋を・・・・・」

「そんなもの、個人で食せばいいだろう」

「いや、鍋をみんなで囲むから楽しいし美味しいんだ」

「兄はそうかもしないが、私はあいにくと鍋を囲むようなことはしたことがない」

「だから、これを機に、他の隊長たちと仲良く・・・・・・ぐっ」

「浮竹?」

「ぐっ・・・・ごほっごほっごほっ」

突然だった。白哉の近くにまで転がってきたかと思うと、急に咳込みはじめた。

「すまな・・・・ごほっ」

ぼたぼたぼた。

執務室の畳の上が、血で汚れた。

「ごほっごほっ」

ぼたぼたと、口をおさえた手の隙間から大量の血を吐く浮竹。

「恋次、京楽隊長と卯ノ花隊長を呼んでこい」

「は、はい!」

白哉は、衣服をが汚れるのも構わずに、浮竹の背をなでた。

「薬はあるか?」

苦しそうに、携帯用の薬の入った箱を出す。

「しばしして落ち着いたら、飲むといい。今布団をしく」

白夜自らが布団をしいて、その上に抱き上げた浮竹を寝かせた。

「ごほっごほっ・・・・・すまない、白哉・・・・・」

「すぐに京楽隊長と卯ノ花隊長がくる。それまで、しばし我慢しろ」

白い長い髪を撫でる白哉の表情は、慈愛に満ちていた。

「ごほっ・・・・・・・」

しばらくして、京楽と卯ノ花がやってきた。

「これまた酷く吐血したねぇ」

それ1つで家10軒が建てられるという、銀白風花紗も血まみれだった。

「あまり動かさないほうがいいですね。朽木隊長、屋敷をお借りします」

卯ノ花が、回道で手当てを開始した。

京楽は、その傍で様子を見守っていた。同じように、白哉も様子を見守っている。

「すまないねぇ、朽木隊長。銀白風花紗、弁償するよ」

「いらぬ。それより兄は、浮竹を大事にしているか?」

「それはもちろんだよ」

「そうか。それならいい」

そのまま、白哉は薬を飲んで眠ってしまった浮竹の顔を見ていた。

「じゃあ、雨乾堂に帰るから」

浮竹を抱き上げようとした京楽を、百哉が制した。

「まだ寝たばかりだ。動かしては起きるだろう。このまま寝かせておけ」

「でも、君の屋敷が・・・・・」

「浮竹が眠っている間くらいは構わぬ」

「そうかい。じゃあお言葉に甘えるよ。僕もいていいのかな?」

卯ノ花は、あとは本人次第だといって帰ってしまった。

「兄を放り出すと、浮竹が悲しむ」

「朽木隊長って、浮竹のこと呼び捨てにするんだね」

「それがどうした」

「交流は、けっこう前から?」

「ああ。ルキアが13番隊に所属した頃から、少しだが交流がある」

「そうかい」

心なしか、京楽の態度が少し強張った気がした。

「別に、兄のように浮竹をどうこうするわけではない。ただ、わかめ大使を与えたり、遊びにきた浮竹を構うだけだ。仲のよさなら、日番谷隊長のほうが上だろう」

「日番谷隊長は子供だからね・・・・」

「どういう意味だ」

「別に・・・・・」

「兄は、浮竹のこととなると大人げなくなるな」

「恋敵は、一人でも少ない方がいいからね」

「下らぬ。私は、兄のような感情を浮竹には抱いておらぬ。ただ純粋に兄のようだと思っているだけだ」

「ああ、それは浮竹も言っていたね・・・・君のことを、弟のようだと」

「浮竹は兄弟が多いからな・・・・一番下の弟と、同じ年くらいだそうだ」

「それは新情報だね」

それを京楽には教えずに白哉にだけ教える浮竹に、少し複雑な感情を抱く。

「約束しろ。兄は、浮竹を大切にすると」

「勿論約束するよ。約束しなくても、大切にするけどね」

そのまま、結局京楽は朽木家で一晩を明かした。

朝になる頃には、浮竹の意識も回復していた。まだ無理は禁物だが、雨乾堂に帰るくらいはできそうなので、京楽と浮竹は、京楽は普通の朝餉を、浮竹には卵粥が出された。

それを食してから、浮竹は京楽に抱き上げられて、雨乾堂に帰ることになった。

「すまない白哉、世話になった」

「構わぬ。また、気が向いたら遊びにくるといい」

「ああ、そうする」

「じゃあいくよ、浮竹。しっかり捕まってなよ」

瞬歩で、雨乾堂まで走る。

「浮竹と朽木隊長は、思っていた以上に仲がいいんだね」

「まぁ、弟のようなものだ」

「そうかい。それを聞いて安心したよ」

恋敵にならなくて、と、心の中で付け加えた。




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カニ鍋

その日は、深夜まで雪が降った。

ちらちらと降り積もる雪を、窓から外を眺めていた浮竹は、少し窓を開けてみた。

室内に、ちらちらと雪が入り込んでくる。同時に身を震わすような寒気も感じて、すぐに窓を閉める。

「雪、けっこう積もるかな?」

「この調子なら、つもるんじゃないの」

こたつの中に入って、その暖かさに安堵する。

今日は、京楽が泊まる日だ。ためていた仕事を片付けてからきたので、夕方から雨乾堂に来ていた。

「夕餉食べるか?」

「うん」

「清音ーーー!仙太郎ー!」

「はい」

「どうしたんですか隊長」

「あ、このクソ女、俺のほうが先にきたんだぞ」

「なんだとこのインキンタムシがっ」

「まぁまぁ、二人とも落ち着け。そろそろ夕餉の用意をしてほしい」

「了解しました!」

「新鮮な材料手に入ってますから、美味しいですよ!」

そういって、仙太郎と清音は一度隊舎のほうまで下がってしまった。

「13番隊のところは飯がうまいからねぇ」

「今日は特別だぞ」

「え、どうしたんだい」

清音が、少し小さめの鍋をもってきた。その下に、火をつけたコンロを置く。すでにある程度用意されてあったのが、すぐにいい匂いがした。

「今日はカニ鍋だ」

「ええっ、カニだって」

尸魂界に海はない。魚介類を手に入れるために、定期的に専門の職人が海の幸を尸魂界に持ってくる。だから、カニはかなり高価な代物だった。

現世でもカニは高い。現世には禁漁区や禁漁期間があるが、尸魂界には関係なかった。

流魂街の住人が口する魚といえば、主に川魚か、多く取れて安めの海産物かだ。

カニは、13番隊の厨房係が食べやすいようにと、殻の部分をカットされていた。白菜やえのきだけ、しいたけ、人参と鍋に放りこんで、綺麗にカットされたカニを放り込んでいく。あと、海老とはまぐり、鮭をいれた。

「今日は豪勢だねぇ」

京楽も、今年になってカニを食べるのは初めてだった。

ぐつぐつといい匂いとともにカニが真っ赤になって、食べ頃と知らせてくれる。

海老やはまぐり、鮭も食べ頃で、良い出汁がでていた。

「隊長、追加です」

「ああ、そこにおいておいてくれ」

「お、酒かい」

熱燗であった。

「いいねぇ」

仙太郎と清音だけでなく、隊士のほとんどが今日はカニ鍋だった。

大分費用がかかったが、冬の寒くなる時期に士気をあげるためにもと、浮竹が許可をした。

本当は浮竹と京楽の分しかなかったのだが。

こたつに入りながら、いい匂いをさせてぐつぐつと煮込まれていく鍋を見る。

仙太郎と清音が、隊舎に下がったのを確認してから、二人は酒を飲みなながらカニを食べた。

はまぐりや海老、鮭もおいしかった。

カニの身をほじくりだすのに少々時間がいるが、美味しいのでそれも苦ではない。

からになったカニの殻は、深めの皿にいれた。

ふと、人参をみると紅葉の形に切ってあった。こんな細かいところにまで気配りがされてあって、京楽は少し羨ましかった。

8番隊の飯は、京楽が金を出している分それなりに豪華な時が多いが、いかにも職人が調理しましたというかんじで美味しいが、できたてを食べれるわけではないのでいつも冷めていて、13番隊で朝餉や昼飯、夕餉をとるようにできたてを食べれないのだ。

「んー体にしみるねぇ」

熱燗をあおって、海の幸を堪能する。

「今度、皆を誘ってカニ鍋でもするか」

「それもいいねぇ。あ、費用は僕がもつから」」

日番谷や松本、ルキアや今尸魂界にいる一護たちのメンバーも誘って。

「白哉は、流石にこないだろうな」

「そうだねぇ。誰かと同じ鍋をつつくのは貴族としてはないに近いから、多分むりじゃないかな」

「ないというわりには、京楽は平気なんだな」

「まぁ、院生時代からみんなで鍋を囲んだこともあるからね。いろいろと慣れたよ。入学するまでは、鍋なんて自分の分しか食べたことがなくて、よく残してたね」

「勿体ない・・・・俺が子供の頃は、川魚か安いいわしやアジとかばかりだったな。鍋なんて豪華なものはなかった」

「浮竹は下級貴族だし、兄妹が多いから、食べるだけでも大変じゃなかったのかい」

「ああ。俺の薬代で借金を重ねていたな。だから、隊長となった今は給料のほとんどを仕送りしているが、親族がそれに頼ってしまってな・・・だからといって、仕送りを打ち切るわけにも減らすわけにもいかないし」

困っているのだと、カニを食べながら言う。

「一族に隊長をもつとねぇ。給料の額が額だから」

京楽にはそれほど大金ではなかったが、浮竹には大金であろう。隊長の給料の額は。

カニを食べおえて、ついてきた卵とご飯をいれて、雑炊をつくる。

「やっぱり、しめは雑炊に限る。いい出汁がでていてうまい」

「美味しいねぇ」

全部食べ終えて、京楽も満足げだった。

「このまま、酒を飲み交わそう」

「いいぞ」

いつもの京楽用の強い日本酒と、浮竹用の甘い果実酒を取り出す。杯に互いの酒を入れる場合は、京楽は用意しておいた果実酒を注いだ。

京楽の好きな高級な日本酒は、喉を焼くくらいに強い。それに浮竹は飲ませ続けていると、酔って潰れてしまう。

「一護君たちは、冬休みらしい。朽木に誘わて遊びにきているが、あと2日くらいで帰るらしい。それまでに、彼らにもカニ鍋を食べてもらいたいな」

「まぁ現世ではカニなんて、こちら側より安いし、そこそこ食べ慣れているんじゃないのかい」

「一護君には双子の妹がいて―----」

1時間ほど、一護の話をしていただろうか。段々と京楽が不機嫌になってきた。

「どうしたんだ、京楽」

「浮竹、僕の気持ち知ってるでしょ?僕が一護君にあまりいい感情抱いていないこと」

「それは・・・・・んう」

いきなり口づけられて、浮竹は杯を零してしまった。

「あ、酒が・・・・」

「一護君のことはもいいよ。他の会話をしよう」

「あ、ああ、そうだな・・・・・・」

浮竹は失念しがちだった。

海燕によく似た一護のことを、浮竹は大好きだった。それを知っているから、嫉妬して京楽の機嫌が悪くなる。それなのに、一護のことを1時間ばかり延々と話してしまった。

「すまない、京楽」

「謝るほどのことじゃあないけどね。まぁ、浮竹があまりに楽しそうな顔するから、ちょっとね」

嫉妬しているのだと付け加えた。

浮竹は苦笑して話題を変えた。

3席の清音と仙太郎の話を始める。それが面白くて、他にもいろいろ聞いていたら、夜も暮れてしまった。

夕餉になる前に湯あみはすませていたので、そろそろ寝ようと、浮竹が切り出す。

「おい、それは俺の布団・・・・・・・」

「寒いでしょ。一緒に寝よう」

「仕方ないやつだなぁ」

甘えてくる京楽の願いを聞き入れる。

来客用の布団は、結局使われないまま、夜は更けていくのだった。

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静かな怒りの白哉

始末したはずの同人誌が、前より数が増えて本棚に並んでいた。

「やーん、隊長、そんなに怒んないでくださいよーほら、隊長の好物の甘納豆」

「こんなものでほだされると思うな」

そう口にしながら、甘納豆を食べていた。

浮竹は思う。かわいいなぁと。

「日番谷隊長はかわいいなぁ」

「よせ、浮竹!そういう言葉は・・・・・・!」

「やーんネタげっとおおお!」

松本は、メモ帳に何かを書きこんでいく。

「松本おおおおおおおお!!!」

日番谷の怒号が、今日も10番隊の執務室で響きわたる。

浮竹は、茶菓子と茶を口にしていた。一緒に来ていた京楽は、本棚から最新の松本の浮竹受の小説を読んでいた。

白哉×浮竹を読んでいた。

「平気なのか?お前のことだから、怒ってやぶきそうなのに」

「何、創作だからね。それに、新鮮だしね」

京楽はてっきり嫉妬で、本を破くかと思っていたが、けっこう大人な対応をしていた。

「乱菊ちゃんの書く浮竹は、リアルとは全然違うのが面白いんだよ。たまにリアルに近いのもあるけどね」

「どう違うんだ?」

「小説の中には、君が誘って最後まで君が腰を振ってる小説があったね」

ブーーーーー!

浮竹はお茶を吹き出した。

「なんだその小説は!」

「僕も一度でいいから、腰を振った浮竹を体験してみたい」

ばしゃり。

浮竹は、残っていたお茶を京楽の顔面にかけた。

「この変態ムッツリスケベが!」

「浮竹、嫉妬してるんだねかわいい」

「ぎゃあああああああ」

一方の日番谷は、ひたすら仕事をしていた。

仕事をすることで、周囲の雑念とした空間から切り離されたところにいる錯覚を覚えられて、冷静でいられる。

「隊長~そんなに気に入りませんでした?この浮竹隊長×日番谷隊長の18禁本」

「仕事をさせろおおおおおおお!!松本、お前は首になりたいのかあああああ!!!」

「いやん隊長ってばそんな意地悪なこと言わないで」

神々の谷間に日番谷を押し付ける。

日番谷は呼吸ができなくなって、松本を蹴った。

「いったーい」

「お前は、俺を窒息死させる気か!」

「京楽隊長は、けっこうに気に入ってくれてるんですよ。この浮竹隊長×日番谷隊長の18禁本」

「本気か、京楽?」

「何、ただの作り話しさ。本物とのギャップがありすぎて、逆に笑えたりする」

「俺は、作り話でも自分が受けになっている小説なんか読むか!」

松本が音読をはじめる。

「日番谷は、潤んだ瞳で浮竹をみた。「十四郎、もう我慢できない、俺をめちゃくちゃにしてくれ」浮竹も同じように限界なようで「手加減できないぞ、シロちゃん」・・・・」

「読むなあああああああああ!」

「日番谷隊長に同意見!」

浮竹と日番谷には、受けないようだった。

「蕁麻疹でてきた」

「俺は鳥肌が止まらない・・・・・」

「えー、これそんなにでき悪いですかー?この前のコミケで完売して、重版かかってるんですよー」

現世のコミケで、松本は売り子をしながら、他のサークルの京浮本を買いあさっていた。他にも、日番谷受けの本を買いあさっている。

松本は一応副官なので、屋敷をもらっていた。その屋敷には本棚がずらりと並び、日番谷受けと京浮の本で大半を占められていた。たまに、泣きそうになるけど、ギン乱本を買ったりもする。

「隊長も浮竹隊長も、気にしすぎですってば。ただの作り話ですよ?」

「それでも受け入れられるか!」

「同じく」

「じゃあ、朽木隊長×浮竹隊長・・・・白哉は、言った。「その体、一晩100万で買ってやる」
多大な借金をしてる浮竹はそれを拒否できない。「あああっ」白夜が与える熱に翻弄されて・・・・」

「やめてくれえええ」

浮竹は、耳を塞いだ。

「白哉はいいやつなんだ。そんな小説・・・・・あ、白哉だ」

「「「え!?」」」

松本も日番谷も京楽も、入口を見てみる。

ゆらりと、冷たい霊圧をもった白哉が佇んでいた。

「最近、同人誌なるもので、私が浮竹隊長と絡んでいる小説が世に出回っていると聞いた。その諸悪の根源は、松本副隊長と聞いた」

「お、朽木、松本を好きにしていいぞ」

日番谷は、凍り付いた松本を白哉の前までもってきた。

「命ばかりはお助けを~~~ごめんなさい、もう白哉×浮竹本はかきかせん~~~」

泣きながら、冷たい霊圧の白哉に、謝罪する。、

「散れ、千本桜・・・・・・」

白哉は、松本がもっていた白哉×浮竹本と京楽が同じように読んでいた本と、本棚にあった白哉×浮竹本を全て千本桜で紙吹雪のように粉々にしてしまった。

「これに懲りたら、もう私の小説とやらは書かぬことだ」

白哉は、瞬歩で消えてしまった。

「怖かったーー隊長のバカ、守ってくださいよーーー」

「無理言うな。怒った朽木には、俺でも対等に戦えるか分からない」

天童と呼ばれる日番谷であるが、その若さ故に、朽木白哉のような手練れに勝てるかどうか分からない。

「これにこりたら・・・・」

松本は、携帯から何かのデータを取り出した。

「やった、粉々にされて小説のデータ、ばっちり残ってる!まぁ、人気ないから重版はいいかぁ」

「松本おおおおおおおお!少しはこりろおおおおおおおおお、蒼天に座せ氷輪丸!!」

ちゅどーん。

巻き添えをくらった浮竹と京楽はいつものことなので、瞬歩でかわす。

「もきゃああああああああ」

松本は、データもぶっ壊されて、泣いていた。

「隊長のばかああああああああ」

「バカはお前だああああああ」

今日もまた、十番隊の執務室は半壊するのであった。



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浮竹隊長と日番谷隊長の受難

「松本おおーーーー!仕事をしろーーー!」

今日も、10番隊の執務室で、日番谷のどなり声が響く。

「俺も手伝おうか?」

遊びにやってきていた浮竹がそういうが、日番谷は首を横に振った。

「これは10番隊の仕事だ。13番隊の浮竹に任せられねぇ」

「そうか」

茶菓子のわかめ大使を食べながら、ふとキラキラした装丁の少し薄い本を見つけた。

「なんだこれ?」

「あ、それは・・・・・・」

「何々・・「あんあん」浮竹は喘いだ。京楽はその凶器を広げた浮竹のあの場所につぎあげて・・・・・・ブーーーーーー!」

浮竹がお茶を吹き出した。

それは、日番谷の顔面を直撃した。

「あ、すまない日番谷隊長・・・でもなんだこの18禁の俺と京楽の小説は」

「松本が作った同人誌だ」

「ここにある本、もしかして全部そうか?」

「ああ・・・松本が、置いておかなきゃ執務室半壊にするとうるさいので、置いてある」

「うわー。けっこうな数だな」

「怒らないのか?」

「うーん。実際、そういう関係だから。怒ったところで、松本副隊長はこりないだろ?」

「お前、松本のことよく理解してるな」

そう話していると、松本がやってきた。

「やーん浮竹隊長、あたしの本見てくださってるんですかー」

「まぁなんだ。同人誌だから多めにみるが、あまり表沙汰にしないようにな」

「ここにある本、よく京楽隊長が借りていくんですよ」

「あのエロ親父・・・・・・・」

ばきぼきと、指の関節を鳴らす。

「最新作はこれです!18禁のない、ラブラブ京楽隊長×浮竹隊長のバースディ話!」

「ふむ。読んでもいいかい?」

「やーん、あたしの本が本物の浮竹隊長の手に・・・・・・・」

ぱらぱらと文字をおって、ぺージをめぐっていく。

「なんだ、来年の誕生日プレゼントは「俺」って・・・・・」

「ああ、なんかそんなことを七緒から聞いたものですから」

「はぁ・・・・・・」

ただの同人誌ではない。

実際に、浮竹と京楽にあったこととかまで書かれてあって、まぁ周囲の者がみたのをそのまま書いたのだろうが、こうして読んでいると、恥ずかしくなってきた。

「こっちの本も読みますかー?ちょっとマニアックで、あんまり売れてないんですけど」

白哉×浮竹というサブタイトルを見て、浮竹がお茶を吹きだした。

ブーーーーー!

「白哉と・・・・?」

「だって浮竹隊長、朽木隊長とも仲良いじゃないですか」

「ああ、まあわかめ大使もらったり他にもいろいろ世話になっているが・・・・」

だからって白哉と?

白哉がこの本の存在を知ったら、絶対千本桜で細切れにするだろう。

「乱菊ちゃーんいるかーい。これの2巻借りにきたよー。うえっ、浮竹!?」

京楽が、10番隊の執務室にやってきて、松本の書いた分厚い小説の2巻を頼もうとしていた。

「京楽~。お前、お前と俺の18禁小説本読んでるんだってな」

浮竹は笑顔だったけど、血管マークがいくつも浮かんでいた。

「ちょっとこっちこい」

「いいじゃない、ただの創作なんだし。君のことを穢してるわけでも、なんでもないんだから、それに、この小説のお陰で、最近週1にしてるでしょ?」

「む、そうなのか」

ブーーーーー。

今度は、日番谷がお茶を吹き出した。

「お前ら、俺のいる場所でそういう会話やめろ」

「日番谷隊長は平気だろう?俺たちの仲を一番よく知っている」

「うんうん。んで乱菊ちゃーん、2巻借りてくねー」

本棚から勝手に2巻を取り出して、ぱらぱらとページをめくっていく。

京楽は、鼻血を出して倒れた。

「あらー。2巻、めっちゃ18禁だから・・・・・・」

「松本おおおおおお!!!」

「隊長、ちなみにここに禁断の浮竹×日番谷小説本が」

「蒼天に座せーーー氷輪丸ーーーーーーー!!!!」

松本と、鼻血を出して倒れた京楽、それに本棚にあった腐った小説の群れ巻き込んで、天に向けて氷の龍が昇っていく。

「あああ、あたしの大事な小説がーーーーーー!」

「浮竹・・・・・うふふふ」

浮竹は、見事に半壊した10番隊の執務室で、よく無事なことがおおい長椅子に腰かけて、お茶を飲んでいた。

「日番谷隊長も、腐った副官をもって大変そうだな」

「そうなんだ。松本の野郎、仕事しないで原稿原稿そればっかりでな。なんでも、俺らの給料より、同人誌で稼いでいるそうだぞ」

ブーーーー!

浮竹が、お茶を吹き出した。

「そんなに、俺と京楽の本が儲かっているのか?」

「けっこう買い求める女性誌死神が多いらしいぞ。あと、一部で男性死神も購入しているらしい」

松本は、コミケにも参加するが、通販も行っていた。ネットで注文を受け、銀行振り込みを確認した後に発送するのだそうだ。

「はぁ・・・・日番谷隊長も、怒るのもいいが、ほどほどにな」

「お前は怒らないのか?」

「同人誌だからなぁ。それに京楽とそういう関係だって、瀞霊廷でも知れ渡っているし。取り締まったところで、焼け石に水さ」

「そうでしょう浮竹隊長!もっとネタをください」

復活した松本に迫られる浮竹は、困惑していた。

「じゃあ、2巻かりてくからね~」

何事もなかったように去ろうとする京楽。

「蒼天に座せ、氷輪丸ーーーーー!あ、やべ、浮竹も巻き込んじまった・・・まぁいいか」

ひゅるるるるるどっかーーーん。

3人を巻き込んで、氷の龍は暴れまわる。

それでも、京楽はしっかりと小説の2巻を守り切っていた。松本は、ネタを紙にかきこんでいた。

浮竹はお茶を飲みながら・・・。

「ああ、なんかもう氷輪丸もお気の毒に・・・・・」

全壊した執務室で、一人日番谷は、本棚の奥からでてきた浮竹×日番谷の本を鬼道で燃やし尽くすのであった。








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尸魂界での婚礼

日曜がきて、浦原に頼んで穿界門を開いてもらう。

拘突(こうとつ)がいないのを確認してから、断界を走り抜ける。

尸魂界につくと、ルキアと白哉が待っていた。

ルキアはもう、13番隊の隊長羽織を着ていた。

「ルキア、隊長就任おめでとう。これ、祝いの品」

渡されたのは、アメジストできた髪飾りと、プラチナでできた指輪。

「この指輪は?」

「結婚指輪だ」

かっと、ルキアの頬が朱くなった。

「現世での結婚式は、6月にしようと思っているんだ」

朽木家に移動して、一護はルキアに6月1日を指定した。

「少し先になるけど、もう井上と石田と茶虎には話をしてある」

「その、井上は大丈夫なのか?随分と荒れていたが」

「ああ、石田がついててくれて、大分改善された。あの時の謝罪を、ルキアにしたいんだってさ」

ルキアに向かって、現世に来るなと叫んで、頬を叩いた件だろう。

「もう、気にしてはいないのだがな」

「井上は後悔してる。俺にもちゃんと謝罪してきたし、ルキアも謝罪の言葉を受け取って、そして許してほしい」

「許すなど、最初から許しておる」

ルキアがいなければ、否、ルキアが一護と付き合いださなければ、今一護の隣にいるのはルキアではなく、井上だったろう。

「現世の結婚式には、兄様もきてくださるそうだ」

「ああ、俺が声をかけていたんだ。隊長副隊長に全員に声かけてみたんだけど、一気に現世に行くわけも行かないって言われて、恋次と冬獅郎、乱菊さんがきてくれるって」

「そうだな、あとは13番隊の席官数人くらいか・・・希望者は」

「全員が現世にくるわけにはいかないからな。それだけくればいいほうじゃないのか」

「そうだな。これぬ方は、明日行う婚礼にきてもらう予定だ」

「え、明日!?」

「え、話していなかったか」

「聞いてねぇ」

明日が結婚式と聞いて、一護はいろいろ焦りだした。

「まだ心の準備が・・・・・」

「そんなものいらぬ。すでに籍はいれておるのだ。もう結婚したも同然だ」

「ええっ、籍ってそんな簡単にいれられるものなのか?貴族関係って、けっこうごたごたしてるって聞いたけど」

「兄様が、いろいろと手続きを行ってくれたのだ。今日はよく寝て、明日の婚礼に遅刻せぬようにな」

その日、いろんなことが想いを駆け巡り、一護はなかなか寝れなかった。

「一護、起きておるか?」

「どうしたんだ、ルキア」

別室で眠っていたはずのルキアが、夜着姿で一護の傍にきた。

「眠れぬのだ」

「ああ、俺もだ。もっとこっちこいよ」

布団の中にひっぱりこむと、ルキアははにかんだ笑みを零した。

「いよいよ明日だな」

「大学のほうは卒業するとして、その後は?」

「尸魂界で死神として生活してもらう予定だ」

「そっかー。まぁ、家族にもスマホや携帯とかで連絡とれるし、友人たちも進路はばらばらだしな」

10分ほどしゃべっていると、睡魔に負けたのかルキアのすーすーという、静か寝息が聞こえてきた。一護も目を閉じる。数分は眠れなかったが、意識はすぐに闇に落ちていった。


次の日、いよいよ婚礼の日がきた。

「こちらへ、ルキア」

「はい、兄様・・・・・・・・」

死神姿のままきた一護を、朽木家の使用人が取り囲む。

「うわ、どうなってるんだ!?」

「こちら側の礼服を着てもらいます」

朽木家に案内されて、ポイポイと着ていた死覇装を脱がされて、朽木家の家紋が入った袴と上着を着せられた。

「どうぞ、奥へ・・・・」

奥にいくと、ルキアがいた。

白無垢姿だった。

「ルキア・・・・・」

「一護・・・・・・」

「ルキア、綺麗だぜ。似合っている」

「そういう一護もかっこいいぞ」

そのまま、朽木家の屋敷の中で、厳かに結婚式が行われた。他の隊の隊長副隊長はもちろんのこと、夜一や浦原といったメンバーまでいた。

現世のメンバーは呼んでいない。現世のメンバーは、現世の時の結婚式に来てもらう予定になっていた。

「ルキア、幸せになれよ!」

「恋次・・・・・ああ、必ず幸せになってみせる!」

最後までルキアのことが好きだった恋次は、一護を見た。

「幸せにしろよ。そうじゃなきゃ、とっちまうからな」

「とられてたまるかよ!」

和風の結婚式は初めてだったので、一護にはちんぷんかんぷんであったが、酒を飲み交わしあったりして、ルキアとの結婚は成立した。

後は、無礼講の酒宴となった。

「夜一様、私とも式をあげましょう!」

「砕蜂と式をあげなくとも、いつも一緒ではないか」

「ああ、夜一様・・・・・」

酒を飲む前のすでにハイになっている連中もいれば、朽木家の高級酒が飲めると、ただ酒を飲みに来たやつもいた。

「それにしても一護が朽木と結婚式だなんて、びっくりだよ」

「弓親さん・・・・・」

「いいじゃねーか。幸せになれよ、一護」

「一角さん・・・・」

たくさんの人に祝われた。

「おめでとう、朽木」

「日番谷隊長!」

「おめでとうルキア!」

「松本副隊長まで・・・・・・ありがとうございます!」

白無垢姿から普通の衣装に戻って、酒宴に交じったルキアは、幸せそうだった。

「いやあ、ルキアちゃんの結婚式、浮竹に見せてあげたかったねぇ」

「京楽総隊長・・・・・」

「きっと、天国から浮竹も見守っているよ」

「はい!」

ルキアから、笑顔が零れる。

「こちらへ・・・・黒崎一護」

「どうしたんだ、白哉」

「兄には、これから朽木一護となってもらう」

「へ?」

「なんだその間抜けな顔は。言ったであろう、朽木家に名を列ねると。ルキアを黒崎ルキアなどにはせぬ」

凄いシスコンきたー。問答無用の、婿入りきたー。

「俺は、黒崎の名を捨てる気は・・・・」

「ないのなら、ルキアとの婚姻はなしだ」

「朽木一護になります・・・・・・・」

「まだ先になるが、ある程度年をとったら、涅隊長の薬を飲んでもらう。ルキアと同じ時間を生きるように」

「人間やめろってことか」

「それくらいの覚悟はあるだろう」

「ある。でも、家族は・・・・」

「兄の父は死神であった男だ。人間の伴侶と共に生きるために、義骸に入り年を刻んだ。だが、私はルキアに早世してほしくない。これは私の我儘だ。それに、涅隊長の薬は完全に死神化する薬だ。ルキアとの間に子を作っても、問題はなくなる」

魅力的な話でもあった。

でも、家族と友人の顔がちらつく。

それでも、ルキアを選ぶか家族と友人を選ぶか。

答えなど、最初から決まっていた。

「ルキアと同じ時間を生きる」

「兄の言葉に、安心した」

白哉は、ルキアを呼んだ。

「ルキア、朽木一護は、例の条件を飲んだぞ」

「一護、本当に良いのか?」

「ああ。お前と共に生きたい」

「一護・・・・・・・」

一護は、ルキアを抱き上げた。

「一緒に生きよう。どちらかが老化で早世することもない、平和な世界を生きよう」

「ああ、もちろんだ、一護・・・・・・!」

抱き締めあって、キスを交わしていたら、みんな見ていた。

「あつあつだのう」

「夜一さん、こういうのマジでからうのやめてくれ」

「ルキアと一護の間にできる子は、朽木の次期当主となる。心しておけ」

白哉は、緋真以外の妻を娶る気はもうない。次の当主は、直系ではなく傍系になると思われていたが、養子とはいえルキアはすでに朽木家の子である。

その子を、次の当主にしようというのは、他の四大貴族から何か言われることかもしれないが、それは百哉が守ってくれるだろう。

こうして、新しく隊長や副隊長になった者も含めて、みんなに祝われて、尸魂界での婚礼は終了した。

一護は、ルキアと婚姻したことにより、アパート代や生活費、それに学費などを朽木家から援助してもらい、バイトを止めた。

土日になれば、尸魂界にいって、新婚生活を送る。あと3年は、通い妻ならぬ通い婿になりそうだが、大学は1、2年を真面目にいっていれば、3,4年は楽だ。

夏季休暇などの大型休暇は尸魂界で過ごすつもりであった。

家族や友人に事情を話す。怒る者(妹たち)もいたが、結局もう婚姻は成立し、黒崎家の人間ではないと父親は判断した。
ただ、いつでもルキアと一緒に帰ってこいとは言われた。

井上、石田、茶虎も驚いていたが、それが一護の決めたことならと、受け入れてくれた。

一護は、大学を卒業したら、現世を去る。

朽木一護として、真央霊術院の教師になることが決まっていた。一護の力は巨大だ。戦闘あった際は、一番隊に所属するようになっていた。


世界は廻る。

朽木一護となって、あっという間に6月になり、現世での最後のイベント・・・・現世での結婚式を迎えようとしていた。

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白夜が現世にやってきたその2

5つ星のホテルのスウィートルームに、二泊三日したルキアと一護は・・・・・・というか、まだ名残惜し気だったルキアを連れて、やっと白哉の貴族はなんたるであるかとかから逃げ出した一護が、自分のアパートの前まできた。

アパートの前にくると、さっき別れたはずの白哉がいた。

ラフな格好に着替えた一護に見習って、白哉も若者らしいファッションに身を包んではいるが、その気品は凛としていて、すれ違う女性たちがちらちらと白哉のほうを振り向く。

「今日は、兄の部屋に泊まる」

「兄様!またご一緒できて嬉しいです!」

ルキアはそう言ったが、一護はすでに口からエクトプラズマを出しそうになっていた。

5つ星のホテルのスウィートルームから、いきなり黒崎一護のアパート。その落差に、果たして白哉は耐えれるのであろうか?

「この狭い部屋も、現世での苦行での一貫と思えば、どうということはない」

一護の部屋で、白哉は正座して茶を飲んでいた。

「尸魂界に帰りやがれ!もう、用は済んだんだろ!?」

白哉の目的は、一護とルキアがどう生活しているかという問題だった。ホテルのスウィートルームに泊まった時に説明したし、もう十分だと白哉もいったのだ。

それなのに、部屋までついてくるとは。

ぐぬぬぬ。

一護は、その日もバイトを休むしかなかった。幸いなことに、夏休みだったので、大学の授業はなかった。

「兄は、ルキアの手料理を食べたことはあるか?」

「ねーよんなもん」

「ふっ・・・・・・」

「百哉があんのかよ!?」

「何度か、な・・・・・・・」

じーっとルキアの方を見ると、ルキアは顔を朱くして小さい声でこう言った。

「たまにだ。たまに、厨房の者に言って、料理をさせてもらうことがあり、それをたまたま兄様が口にすることがある。それだけだ」

一番初めに口にしてもらったのは、藍染の反乱が発覚し、4番隊のところで入院していた白哉に、明太子を入れた白粥食べてもらったことだった。

あの件がきっかけで、それまで強張っていたルキアと白哉の関係は、雪解け水のようになり、氷のようだった溝も、溶けてしまって。今では義妹LOVEの、シスコンだ。

「兄が、ルキアの手調理を口にするのは百年早い」

「百年も生きれるかばかが」

「惰弱な人間であったな、兄は・・・・・・」

「うっせーよ」

なんだかんだで言い合いしていたら、夕食の時間になった。

すでにホテルから出た時にスーパーにいって、二人分の食材は買っていたが、そこに白哉が加わることになったので、追加でルキアと買い物にでかけた。

白哉もついてこようとしたのだが、迷子になられても困るので、家にいてもらった。

二泊三日のホテル暮らしの時に、ホテルの中で迷子になったりして、朽木白哉が実は方向音痴ということが発覚した。

アパートにきていたのは、霊圧をたどった瞬歩に間違いない。

「一護、今日は何を作るのだ!材料をいろいろと買ってきたな!兄様は、ちなみに甘いものが嫌いで辛いものが好きだぞ!」

「知ってる」

事前に、恋次から情報はゲットしておいた。

今日の夕飯は、麻婆豆腐にエビチリ、キムチ炒飯だった。中華ばかりになったが、メニューはこれでいいだろう。

「兄が、作るのか?」

「そうだ。文句あるか」

「せめて、人が食えるものを作れ」

「うっせーな。食べさせてやんないぞ」

少しすると、麻婆豆腐のいい匂いが漂ってきた。

「ふむ・・・・匂いは、悪くない」

冷めないうちに、急いでエビチリを作って、炒飯の中に刻んだキムチをいれて、中華鍋でかき混ぜる。

一護は、ラーメン店でバイトしているが、その前は中華料理店のコックのバイトをしていた。腕は確かだ。

「ほらよ、白哉」

できあがった品をテーブルの上に置いていく。3人分も置けなくて予備の折り畳み式のテ-ブルをだした。

「ふむ・・・・・」

匂いは合格。

箸を手に、白哉はいざ中華の世界へ。

「む、これは・・・・・」」

「兄様、今日の一護のご飯はいつにも増して美味しいです!」

「黒崎一護」

名を呼ばれて、白哉を見る。

「我が屋敷の厨房の料理人になる権利を与えよう」

「いらねぇよそんなもん!素直にうまいとか口にできねぇのかよ!」

「まずくはない」

「だから、素直にうまいっていえよこんちくしょうが」

負けてなるものか。

白哉は、なんだかんだいって、結局全てを平げてしまった。きっと、口にあったのだろう。

「この料理の仕方を、メモに書いておくがいい。朽木家の料理人にも作らせるようにする」

「へいへい」

なおしであった、レシピをとりだして、紙にめもしていく。

手慣れているので、レシピなんて見なくても一護は作れるが、きっと尸魂界では中華料理は珍しいのだろう。

「ルキアにだけ、おまけな」

白玉餡蜜をこっそり作って、デザートにルキアに与えた。

ルキアは喜んでそれを食べた。

その様子を、愛し気に白哉が見ていた。ああ、こんな顔もするのかと、一護も思ったほどに優しい表情だった。

「兄は、ルキアに随分甘いのだな」

「そういう百哉も甘いだろうが」

「お互いさまというわけか・・・・・・」

白哉はせまいせまいといいながら、黒崎家のアパートの風呂に入った。パジャマもちゃんともってきていた。わかめ大使柄のパジャマだった。

笑ってはいけないのだが、その情けない姿に、一護は吹き出すのをこらえた。

次にルキアが風呂に入った。チャッピー柄の、こちらもなんともいえないパジャマを着ていた。

最後に一護が風呂に入り、そして寝る時の試練が訪れた。

本来なら、ベッドで一護とルキアが一緒に眠るのだが。布団は2組ある。

床に布団をしいて、その上で白哉に寝ろというと、ベッドを明け渡せと迫ってきた。仕方なく、ベッドを白哉に譲り、来客用の布団でルキアと寝る・・・・つもりだったのだが、ルキアは白哉と一緒にベッドで眠ってしまった。

「どういう展開だよ。シスコンすぎるだろ。いや、この場合ブラコンも問題か・・・・・」

朝起きると、白哉はカジュアルな服装をしていた。

なんでもルキアが体験した「動物園」に行きたいらしい。「虎」をみたいのだとか。

仕方ないので、電車とバスにゆられて、この前デートにきた動物園にやってくると、虎を見せた。

「あれが虎か・・・・・優雅で凛としていて、気高く美しいな」

「そうでしょう!まるで兄様のようです」

ルキアの褒め言葉に、若干照れくさそうにする白哉。

白哉とは数日しか過ごしていないが、喜怒哀楽などないのではないかという鉄面皮のわりに、優しく微笑んだり、照れくささそうにしたり、人並みに感情はあるようだった。

ただ、その感情の揺れが薄く小さく、常に冷静であろうとする朽木家の当主としての誇りを捨てきれないから、表情が分かりにくいのだ。

その日の夕方に、白哉は隊長ということもあり、現世を去って尸魂界へ戻ることになった。

「兄と過ごした時間は、悪くなかった・・・・・・」

「素直に楽しかったっていえよ」

「ルキアは、あと3日ほど現世にいれるように手配しておいた」

「本当ですか、兄様!」

本当なら、明日にはルキアも尸魂界に帰らなければならなかったのだ。それが2日ほど伸びて、ルキアは百哉を抱き締めた。

「ご自愛ください、兄様。闘いは終われども、またいつ争いがおきるかわかりません。3日後には戻りますゆえ、どうかご心配なさらずに」

「ルキアよ」

「はい、兄様」

「亡き緋真の分まで、幸せになれ」

「兄様・・・・・・・・・」

それは、朽木白哉が、黒崎一護という青年に、ルキアを託すということ。

すでに妹さんをくださいといと、許可をもらって婚約しているが。

ルキアは涙を零しながら、先に去って行った義兄の姿が見えなくなるまで、佇んでいた。

「はー疲れたー。バイト休みまくったから、首になってないといいんだけど」

「たわけ!せっかくの感動のシーンを台無しにするな!」

ルキアに足を蹴られて、一護が叫ぶ。

「こちとら、白哉をもてなすために神経使いすぎて、ボロボロなんだよ!」

「兄様は満足しておられた。安心して、貴様に私を託された。その意味が分かるな?」

「朽木ルキアの伴侶として、合格ってことだろ」

ルキアは朱くなって、一護に抱き着いた。

「貴様の告白を受けて良かった。愛している、一護」

「ルキア・・・愛してるぜ」

二人は、触れあうだけのキスをして、また日常に溶け込んでいく。バイトをしにいく一護を見守って、家で大人しくしたり、買い物にいったりして、ルキアが現世を去る日がやってきた。

「一護・・・・また、今度はいつになるか分からないが、会おう」

「ああ、またな」




二人は人間と死神。共有する時間が違う。でもそれを乗り越え、婚約した。

やがて、ルキアは護廷13隊の、13隊隊長となることが、決まった。

(隊長就任おめでとう。今度の日曜、そっち行くから。祝いの品、もっていく)

(ありがとう、一護。もう付き合いはじめて1年になるな。兄様が、区切りをつけないかと、私に言うのだ)

(どういうことだ?)

(婚礼だ。結婚式をあげないか、一護)

(それ、俺が先に言おうとしてたのに。現世でも、式を挙げよう。ウェディングドレスとか、式場の手配とか、もうしてあるんだ)

(一護・・・・・・私は幸せだ。こんなに幸せでいいのか?)

(いいんだよ。お前は今まで頑張ってきた。たまには、それを俺にも分けろ。現世での結構式は井上、茶虎、石田・・・・・尸魂界からもきてくれるように、手配は済んである)

「一護・・・・・・・・」

尸魂界の美しい夕焼けを見ながら、ルキアは伝令神機にメールを打つ。

(今、尸魂界は夕日が美しい。そちらではどうだ?)

(Iこっちでも綺麗だぜ。俺たちを祝福しているみたいだ)

「ルキア・・・・・」

もう、2月も会っていない。今度に日曜に、尸魂界で式を挙げる日取りを決めよう。ルキアも一護も、お互いのことを胸に、一日一日を過ごしていく。


世界は廻る。

婚礼へと、時間は加速していく。












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院生時代の部屋30

如月那由他。上級貴族である、京楽よりも更に上位の上流貴族。

その那由他に、浮竹は呼び出されていた。京楽に気を付けろと言われているので、念のために京楽を伴っていた。

「浮竹、もう一度言う。俺のものになれ」

「俺はものじゃない。誰のものにもならないし、なるつもりもない」

「お前の両親は、共働きで妹や弟がたくさんいるそうだな。両親が職を失い、妹や弟たちが人買い買われて行っても、平気か?」

「貴様、父上と母上に何をするつもりだ!」

「答えは、お前次第さ」

「父上と母上に何かしたら、たとえ上級貴族のお前でも、容赦はしない!」

立ち上る霊圧は切れそうなまでに冷え切っていて、殺気が感じられた。

京楽は思う。

ばかなやつだ。脅しで浮竹が手に入るなら、苦労はしない。

「貴様、この上級貴族の如月家時期当主を・・・・」

「関係ない」

浮竹は、完全に切れていた。

まず、那由他を殴った。那由他は金はあるが、最下位クラスで、力などほとんどなかった。今まで、全部を金で手に入れてきた。この学院での生活もそうだ。
別に死神になるつもりもないのだから、成績などどうでうもいいのだ。

股間を殴って、気絶した那由他の服をはいだ。

「ちょ、浮竹?」

京楽が、浮竹が何をするのか分からなくて、声をかけてみるが、浮竹は止まらない。

下着までむしりとって、靴だけはいた姿にして、木製の板に、那由他の体を固定して、ロープでぐるぐるまきにした。

それを、学院の運動場に置いた。

「ぎゃあああああああああ」

「いやああああああああ」

「きゃああああああああ」

たくさんの悲鳴に、那由他が起きる。

「うわあああああああああ、なんだこれはああああああ!!!」

自分のあまりにも変態な姿に、那由他は、初めて浮竹を怒らせてはいけない人物なのだとわかった。

ちなみに、近く看板に「私は露出するのが好きな変態です、泥だんごを投げてくれると、嬉しくて泣きます」」

と書かれてあった。

近くに、いっぱい泥だんごが用意されてあった。それを手にしても手が汚れないようにと、いくつもの手袋があった。

「ぎゃあああああああ」

男子生徒も投げたが、特に今まで那由他の地位に脅かされて、セクハラを受けていた女生徒たちがこぞって泥だんごを那由他になげた。

「もぎゃああああああああ」

京楽は思う。浮竹を本気で怒らせるとこんなことになるのかと。

全部、浮竹と京楽で準備した。

「でもいいのかい?相手は上級貴族だよ」

「全部写真に収めたし、声も録音しておいた。もしも何か言いだしたら、元柳斎先生になんとかしてもらう」

「僕らってついてるね。山じいのお気に入りになれて」

「そうだな」

その日の事件をきっかけに、那由他は大人しくなったと思ったら、本当に浮竹の両親の職を奪おうとしてきたので、今までの行動を記録したメモ、脅迫状、証拠の写真、音声入りのテープ・・・・全てを山本元柳斎重國に提出した。

結果、那由他は退学処分になった。

数日後、一人で寮に戻ろうとした浮竹を、那由他が薬を使って拉致し、報復行動にでようとした。
数人の男たち囲まれても、浮竹は平気な顔でこう言った。

「正当防衛にする。命が惜しいなら、今のうちに去ることだ」

「那由他坊ちゃん、本当にいいのかい?こんな上玉、輪姦して」

「好きにしろ」

浮竹は、最後のまで凛としていた。

「大丈夫かい、浮竹!」

京楽が、かけつけてくれた。

「破道の4、白雷」

浮竹は、自分で自分をしばっていたロープを外すと、鬼道を放った。、

京楽を除く男たち全てに、平等に雷は降り注いだ。

「うぎゃあああ」

「ぎゃああああ」:

手加減もなしの鬼道は、男たちの股間を焼いた。

那由他とて、例外ではなかった。

「貴様、こんなことして・・・・・」

すぱっ。

那由他の首を、京楽がはねた。

「ひいいいい」

その場にいた男たちも、京楽の手によって始末された。

「京楽?」

「ここにいた男たちは、京楽家の次男を殺そうとして、返り討ちにあった。そういう筋書きでいいかい」

「でも、お前に迷惑が・・・・・」

「那由他のやつ、如月家の時期当主だったけど、廃嫡されたらしいよ。酷くて手がつけれなかったそうだ。念のため、君に手を出した場合の抹殺許可はとってあるよ」

「そうなのか・・・・・・・」

この事件は、如月家の恥を隠すために内々で処理されて、表沙汰にはならなかった。

「京楽も、けっこう残酷なところがあるんだな」

「でも、僕が処理しなきゃ、君が殺してたでしょ。下級貴族が、廃嫡されたとはいえ、上流貴族の人間を手にかけるといろいろ問題がおきるよ?」

「鬼道で、灰にするつもりだった。跡形もなくなれば、流石に何も言われないだろ」

「僕は、君のほうが残酷だと思うけどねぇ。まぁ、そんなところは男らしくて、違う意味で好きになりそうだけど」

「もう、この件は忘れよう」

「そうだね」

「でも、なんで俺が拉致されたと分かったんだ?」

「君の匂いをかいでいったら、あそこに辿り着いたんだ」

くんくんと、浮竹の甘い花の香をかぐ京楽を張り倒す。

「この変態が!」

「助けに行ったのに酷い!」

しくしくと泣き真似をする京楽を放置して、浮竹は体を伸ばした。

「ああ、周囲の香ばしいのが一部排除できてスッキリした」

「その香ばしいのに、僕も入ってる?」

「勿論だ」

笑顔で返されて、いじける京楽の姿があったとかなかったとか。



                                                                                                                             




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院生時代の部屋29

雪が降って、休校になった。

午前中は吹雪に見舞われて、外出も困難だったが、午後になって晴れてきた。

浮竹は、雪自体を見るのは初めてではなかったが、積もったのを見るのは初めてだった。

冷たいと思いながらも、雪を丸めて京楽の顔に当てると、京楽も雪玉をつくって投げてきた。

それがおもしろくて、何度も雪玉の投げ合いをしていると、他の友人も加わって、京楽チームVS浮竹チームになっていた。

雪の投げ合い大会になった。勝ったのは浮竹チーム。敗因は、京楽が浮竹に雪玉を投げることを戸惑ったから。その隙に他の友人たちが京楽に雪玉をぶつけて、京楽は参ったと降参した。

それから、移動して浮竹と京楽は、二人で雪だるまを作った。枯れ枝で手をつくり、ばけつをかぶせて、目と口を植物の木の実や枝でつくった。

浮竹は、雪だるまの隣に、かわいい雪うさぎを2匹作った。

「これは、俺と京楽だ」

寄り添いあうように、2匹の雪うさぎは、雪だるまのそばにいた。

ふと、京楽が浮竹の手をとる。手袋をしていなかった手は、大分冷たくなっていた。

「部屋に戻ろうか。お湯か何かで、手を温めなきゃ」

「まだかまくらを作っていない・・・・・・」

「そんなに、一日でできないよ。雪は多分明日も残るだろうから、明日にすればいいじゃない」

「明日は学校がある。授業が終わる頃には、雪はかまくらなんてできるくらいには残っていない」

浮竹の我儘に、京楽もつきあってあげることにした。

友人数人を呼んで、みんなでかまくらを作った。

「中は、暖かいんだな」

「はい、浮竹。今更だけど、手袋。防水対策されてあるの、探すのに手間取ったよ」

いつの間にか京楽が消えていたことは知っていたが、わざわざ自分のために手袋をもってきてくれたことが、素直に嬉しかった。

「もう少し、遊んでもいいか?」

「こうなったら、とことん付き合うから」

雪で遊んで、夕方になった。

食堂があいて、夕飯を食べに出かける。

「浮竹・・・・大丈夫かい?」

今日のメニューは、おでんだった。

はんぺんを食べていた京楽は、少し顔を朱くしている浮竹の額に手を当てる。

「あちゃあ、やっぱ熱でたね。雪であんなに遊べば、無理もないかな」

「すまない・・・ああっ、卵!最後に食べようと残しておいたのに」

「えっ、食べ残しじゃなかったの」

「京楽のあほー」

「ごめんごめん」

浮竹の頭を撫でる。そんな二人のやりとりを友人たちは、暖かく見守っていた。

「よければ、俺の分の卵食えよ」

「本当か。ありがとう」

京楽の次に仲のいい友人に、卵をもらって浮竹の気分は直った。

だが、熱はどんどん高くなっていく。

「はぁはぁ・・・・・・・」

「一人で歩くの辛いでしょ。よっと」

人がいるので、横抱きではなく肩の上に担ぎあげた。

「京楽・・・・・」

「部屋に戻るよ。じゃあみんな、また明日」

「またねー」

「浮竹、無理するなよ。明日もだめそうなら休め。ノートはとっておくから」

「すまない、みんな・・・・・・」

もう慣れてしまったので、京楽に担ぎあげられたまま、お礼を言った。

浮竹と京楽の周囲の友人は、理解もあるし何より優しく温かい。太陽のような浮竹を中心とした集まりだが、そこの京楽が加わって、その太陽を独占しようとしても、文句を言う者はいない。独占といっても、友人たちから取り上げるわけはない。

「さて、戻りますか」

「一人で歩ける」

「本当に?」

「ああ」

熱には慣れているので、少しふらつきながらも京楽の手を借りて、寮の自室まで戻ってくる。

「今日は楽しかった・・・・・雪遊びに付き合ってくれて、ありがとう。雪であんな風に遊んだの初めてだ」

「そうかい。一緒に遊んだかいがあったってもんだよ」

「俺の故郷はどちらかというと気温が高くてな。雪なんて、この瀞霊廷に入るまで、見たこともなかった」

「へぇ。浮竹は南のほうの出身なのか」

「ああ・・・・・・・」

しばらく話こんでいると、浮竹はまた熱があがったのか、瞳が潤んできた。

「京楽・・・・・・・」

「そんな目で見られると、食べてしまいたくなるよ」

「んっ・・・・・」

ディープキスをした。

「はぁ・・・・・・」

酸素を求めてあえぐ浮竹を抱き締める。

「今日は、もう寝ようか」

「京楽・・・・・」

「うん?」

「もっとキス・・・・」

浮竹は、熱のせいで意識が朦朧としだしていた。

こうやって甘えられると、いつもの数倍可愛く見えて、京楽もそれに付き合ってしまう。

「何度でも、キスしてあげるよ」

啄むようなキスを繰り返してから、解熱剤を含んだ肺の病の薬を飲ませようとすると、また甘えてきた。

「飲ませて・・・・・・・」

「仕方のない子だね」

京楽は薬を口にすると、水分と一緒に浮竹に口移しで飲ませた。

「甘い・・・・」

最近、苦くて嫌だという薬を、京楽は金をかけて甘い味のものに変えた。

尸魂界では高級な蜂蜜を使っており、値は高くついたが、浮竹が少しでも飲みやすくなるならと、金は惜しまなかった。

「京楽、一緒に寝てもいいか?」

ああもう。

本当に、この生き物はどうしてこうもかわいいのだろう。

いつもは突っぱねる癖に、酒で寄ったり、熱にうなされるとこうして甘えてくる。

「いいよ、おいで」

京楽は、自分のベッドにスペースをつくり、そこをぽんぽんとたたいた。

浮竹が、そこに寝転ぶと、すり寄るように京楽に身を寄せた。

「京楽があったかい・・・・・・」

「もう眠いでしょ。薬のせいで」

「もう少し、こうしていたい・・・・・・・」

「仕方のない子だねぇ」:

頭を撫でて、ハグをしてキスをする。でもそこまで。それ以上はしない約束だ。

「少し眠くなってきた・・・・・もう、寝る」

「おやすみ。僕も寝るよ」

次の日、起きるとベッドから蹴落とされた。

「なんで京楽のベッドで俺が眠っているんだ!さては、俺のベッドから体を移動させたな!」

「いや、君が甘えてきて・・・・・」

うろ覚えではあるが、記憶が残っていたので、浮竹は真っ赤になった。

「昨日のことは忘れろ!」

「無理いわないでよ。あんなかわいい君の姿、忘れられるわけないじゃないか」

「いいから、忘れろ!」

尻を撫でてきた京楽の鳩尾に蹴りを入れて、そして最近見つけた、京楽の浮竹写真集を手に取る。

「ああっ、それは僕の宝物・・・・・・」

ただの写真であれば、何も文句はいわない。

肌色がやけに多めの、盗撮した写真集だった。

鬼道で焼き尽くす。

「あああああああああ( ゚Д゚)」

京楽が、ショックで涙する。

「これで今年5冊目だな・・・・・・」

「6冊目だよ」

「お前には、学習能力というものがないのか」

「あるよ。いかに浮竹に気づかれずに盗撮するかのテクニックを学習して身に着けた」

「そんなもの身に着けるな!」

京楽の脛を蹴ると、京楽は足を抑えて蹲った。

「ネガがあるもんね・・・・・」

ゆらり。

霊圧の高まりを感じて、背後を振り返る。

「ネガ、全部よこせ」

「いやだよ!」

「ハグとキス禁止にするぞ」

「そういって、この前禁止期間中にハグとキスしてきたの、浮竹のほうじゃない。酔ってたけど」

「う・・・・・」

もう、京楽は少々の脅しでは屈しない。

どうしようと思う浮竹であった。









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院生時代の部屋28

山本元柳斎重國自身が、生徒の手合いを見る時がやってきた。

浮竹と京楽は山本元柳斎重國のお気に入りであり、愛弟子である。

特進クラスでも目を見開くような強さをもつ二人は、お互いでないと本気を出せない。今日も、浮竹と京楽がペアになって手合わせを行った。

浮竹が鬼道で攻撃してくるのを避けると、木刀で突きをいれられた。それを避けて、京楽は木刀で浮竹の体を凪はらおうとする。それを木刀で防いで、得意の蹴りの体術が上半身をかすめる。

「浮竹甘いよ!背中ががら空きだ!」

背中に向けて、竹刀を振り落とす。普通の浮竹なら、苦も無く避けるか木刀で受けるはずが、浮竹がよろめいた。

威力の乗った竹刀を殺しきれずに、そのまま竹刀は浮竹の肩を打った。そして、ふらりと倒れこんだ。

「浮竹!?」

京楽が、木刀を放り投げて浮竹を抱き上げた。

その体が熱かった。

「山じい、この子熱あるよ!」

「ふーむ。動きにきれがないと思っておったら、やはりそうであったか。十四郎は、まず相手の動きを探ることをするでな」

「そんな悠長なこと言ってないで、医務室に運んでくる」

浮竹を抱き上げて立ち上がり、医務室へ行こうとする。

「医務室に運んだら、帰ってくるのじゃぞ。お主にはクラス中の相手をしてもらうでな」

「勘弁してよ」

いつもなら、浮竹と京楽が別れて、特進クラスの他のメンバーと手合いをするのだが、その片方の浮竹が熱を出して倒れてしまった。

普通なら、そこで授業が終了なのだが、今回は特別に山本元柳斎重國がきていた。

みんな、お気に入りになろうと腕の見せ所だとばかりに、打ち込んでくるはずだ。

浮竹を医務室に送り、京楽が帰ってきた。

すでに、生徒の列ができていた。

「これ全部僕一人で相手するの・・・・」

「春水、お主なら造作もないことであろう」

「それはそうだけど」

結局、1時間半の授業の時間をまるまるとかけて、同じクラスの連中の手合いをした。

流石の京楽もばて気味だ。

浮竹や京楽ほどではないが、特進クラスというだけあって、腕に覚えのある猛者ばかりだった。

「山じいもうだめだ。次の時間も同じ授業の内容だけど、僕は抜けさせてもらうよ」

「こりゃまたぬか春水!」

山本元柳斎重國が相手でも、京楽は変わらない。

そのまま授業を抜け出した京楽は、浮竹のいる医務室にやってきた。

誰かが、浮竹にキスをしていた。

「誰だ、貴様!?」

突き飛ばして、浮竹を守ろうとする。

相手は、この前浮竹と京楽を侮辱した那由他という男だった。

「ほんとに、君彼氏?浮竹が隙だらけだよ。今日はこの辺で退散するけど、次はキスだけじゃすまさないから」

「この!」

殴った。本気なら顎が砕けるパンチだったが、手加減した。

那由他・・・・・本名を、如月那由他。上流貴族出身だ。京楽よりも、更に上の階級をいく、上流貴族。

今まで京楽がしてきたように、退学に追い込めなかった。

だが、浮竹のためなら、たとえ停学や退学になろうと、守ってみせる。

那由他が去った後で、京楽は毒消しとばかりに浮竹に口づけた。

「ん・・・京楽?」

「きづいたのかい、浮竹」

「ああ・・・元柳斎先生の授業だから、少し無理をして出てみたんだが、相手がお前だったせいもあり、だめだったようだ」

「たとえ山じいの授業でも、体調の悪い時は休まないと」

「そうだな・・・・・」

「熱は・・下がってるようだね。でも、あと1時間授業は様子見にして、出るなら昼からにしないと」

「すまない」

「いいんだよ。薬は飲んだかい?」

「いや、まだだ」

「じゃあ、今のうちに念のため解熱剤を飲むといい。本当は何か食べてからがいいんだけど、この時間は食堂もあいてないしね」

携帯していた薬箱の中から、解熱剤を渡されて、コップに水を入れられて、それを受け取って飲んだ。

「いたた・・・・」

「どうしたんだい?」

「お前の木刀をまともに受けた肩が内出血を・・・」

最後まで言わせず、浮竹の院生の服を脱がせる。

「おい、何をする」

「湿布でなんとかなるかな。だめなら、回道の得意な友達になんとかしてもらおう」

浮竹の白い肌に、肩から背中にかけて、内出血のあとがあった。

「大げさだな。湿布で十分だ」

「だめだよ、君の白い肌には傷一つつけたくない」

「大げさな・・・・・」

「抱くよ?」

「回道の手当てをうけることにする」

京楽の抱くよという台詞は、浮竹にとって脅し文句に近い。本当に抱かなくとも、その手前まではしてくる。

「2限目も山じいの授業だけど、僕は君が心配で抜け出してきた」

「せっかくの元柳斎先生の授業だぞ!」

「もう、クラス中の相手とは手合わせしたし、することもないだろうからね」

「ああ・・・・いつもは俺が半分を受け持つのに、全部お前が相手をしてくれたのか。すまないな」

「別にいいよ。昼まであと1時間くらいあるから、横になってなさいな」

「ああ・・・・・・・」

院生の服をしっかり直して、1時ばかり浮竹は寝た。

浮竹に、如月那由他に気をつけろと、言っておいたが、浮竹は苦笑するだけで、自分の身におこったことを知らなかった。

もしも、他の男にキスをされたと知ったら、浮竹のプライドが傷つくだろう。

それに、浮竹にキスをしていいのは、京楽の特権なのだ。

その日、寮に戻ると京楽は、一番腕のいい、4番隊に所属がきまっている女生徒の友達に頼み込んで、浮竹の内出血を治してもらった。

「ありがとう」

「どういたしまして」

綺麗に内出血が消えたのを確認して、京楽がほっとする。

「愛されてますね」

女生徒は、朗らかに笑った。

「なんなら、この立場をあげようか?」

「変態につきまとわれたくないので、丁重にお断りいたします」

朗らかに毒舌をされて、浮竹は溜息を零す。

「でも、正直羨ましいですよ。こんなに愛されるなんて」

「俺は、愛はいらないんだけどなぁ・・・・・」

窓から、ちらちらと雪が降ってきた。

「ああ、もうそんな季節か」

道理で熱を出すわけだ。寒さにやられたのだろう。

その日の雪はやまずに、数年ぶりに雪がつもることになる。初雪にも関わらず、吹雪とあいまって、次の日は休校になるのだが、それはまた別のお話。






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無題

「はっくしょん」

大きなくしゃみをした浮竹は、こたつの中に入った。それでも寒くて、毛布を被った。

「はっくしょん。あー、風邪かな・・・・」

開け放たれたままの窓から、白い何かが降ってきた。

「お、雪か。今年の初雪だな・・・・・・・」

「よっと、お邪魔するよ」

京楽が、閉め切っていた扉から入ってくる。

「こんなに寒いのに、窓を閉めないのかい」

「換気のために開けておいたんだが・・・・流石にしめるか」

こたつから出たくなくて、京楽に閉めてもらった。

「あー。こたつ最高。みかんもあるし、これで今年も無事に過ごせる・・・・」

「ちょっとぐうたらしすぎじゃないかい?」

「いいんだ。冬はこたつの上で仕事するし・・・・寝る時以外は大抵こたつの中だ」

「こたつ星人じゃないか」

「いいな、それ。冬の間中ずっとこたつの中にいたい・・・・」

「明日、隊首会だよ」

京楽が、念のために教えた。

「う、忘れてた。こんな寒い中、外を歩きたくない・・・・隊長羽織の上に何か羽織ろうかな」

「僕みたいに、女ものの着物でも着るかい?」

「それすると、冗談でなく女装みたいになるからいやだ」

一度、廓で花魁の恰好をさせられて以来、女ものの着物を着るのに拒絶反応がでた。

「朽木と白哉から、この前マフラーと手袋をもらったからな・・・それでも、つけていくか」

「山じいが怒るよ。たるんどるって」

「それでもいい。こたつの外は氷河だ」

「大分、こたつに毒されてるね」

「ちょっと暑くなってきた・・・・・着こみすぎたかな」

「顔赤いよ・・・・熱あるんじゃない?」

「こたつがあるから熱は・・・・・・あるかもしれない。眩暈がする」

「こたつの中で汗かいて、それが冷えたんだ。こたつもほどほどにしないとね」

浮竹が嫌がるのをなだめて、こたつから出す。

布団をしいて、横にならせて解熱剤と肺の病の薬を飲ませる。

「うーん。冬の布団は、最初は冷たくて嫌だけど、こうやっているとぬくいな」

布団の中に、湯たんぽ代わりとばかりに京楽を寝かせて抱き着いていた。

「あったかい・・・・眠くなってきた。少し。寝る・・・・・」

「おやすみ」

浮竹が完全に寝たのを確認してから。布団の中から出て、毛布と布団をちゃんとかぶせて、こたつの中に入ってみる。

確かに、これは中毒になりそうだ。

「暇だね。何をしようかな・・・・・」

浮竹の寝顔を見ていると、こたつの入っていた京楽まで眠くなってきた。こたつの中で寝るなんて、風邪をひくようなものだと分かっているけど、結局その暖かい魅力に抗えずに、京楽はこたつの中で寝てしまった。

「京楽、京楽”!!」

起こされると、すごい寝汗をかいていた。それがすぐに冷えて、寒さを覚えた。

「俺にこたつから出ろと言っていたお前がこたつで寝てどうする。寝汗がすごいこのままじゃ風邪をひいてしまう。湯あみしてくるといい。いつものように、下着とか服とか揃えてあるから」

「浮竹も寝汗酷かったんでしょ。一緒にお風呂に入ろう」

「いいが、何もしないな?」

「熱が下がったばかりの君に、無理強いするほど飢えてはいないよ」

二人で湯あみをした。

白桃の湯の元をいれて、ちゃぷんと大人二人には少し狭い浴槽に浸かる。

「あー。極楽」

「この湯の元、高いんだよ」

「いくらだ?」

ごにょごにょ。耳打ちされて驚く。

「たかが湯の元で、そんなにするのか」

浮竹の肺の病の薬の1か月分の値段がした。高級店で飲む喰いしほうだいのその金額に、浮竹は湯を捨てるのがもったいないと感じた。

でも、一度浸かった湯をわかしてまた入る気にはなれない。

湯あみが終わり、のぼせる前に風呂からあがった二人は、互いの髪の水分をふきあって、湯を流した。

「ああ、お金が流れていく・・・・・・」

「大げさだよ、浮竹」

京楽から、白桃の湯の匂いがした。

「俺からも匂いはするか?」

「するね。甘い花の香とまじって、すごく甘ったるい匂いがする。食べたくなっちゃう」

「食べられると困るから、やめてくれ」

浮竹の髪をかわかしながら、京楽はその白い髪に口づける。

「シャンプー変えたんだね」

「ああ、松本副隊長からもらったやつをな・・・・・・」

この前、京楽からもらったシャンプーをあげたら、お詫びにと女性死神に人気の高いシャンプーをもらった。

シャンプーの銘柄にこだわらない浮竹は、もったいない精神があるので、そのシャンプーを使っている。

その匂いが、これまた異性の心をくすぐるような甘ったるいものなのだ。

ここでは、京楽がその対象となった。

「浮竹、そのシャンプー使うのはいいけど、風呂上がりはあんまり外に出ちゃだめだよ」

「どうしてだ?」

「ものすっごく甘ったるい匂いがして・・・・僕でも、君を食べたくなる。他の死神も同じようなことを思うかもしれないから」

「またまた。そんなの、京楽だけだ」

「いや、ほんとに甘ったるいんだってば」

「白桃の湯と同じくらいにか?」

「もっとだよ」

「ええっ」

浮竹は、京楽白桃の湯の匂いに、少し貪りたくなった。それ以上と言われて、浮竹はシャンプーを元のものに変えようと決意する。

「今のシャンプーはもったいないから、清音にでもあげるか・・・・」

後日、清音にシャンプーをあげると大変喜ばれた。女性に人気の品で、品薄で欲しても手に入らないという。

「その、使いかけで悪いが・・・・・」

「いえ、いっそ使いかけのほうが、隊長とおそろいのものを使ったって気分がでていいです」

お礼にと、清音からこれまた女性に人気の石鹸をもらった。

使う前に、匂いをかいでみる。金木犀の香がした。大分きつくて甘ったるい。

甘ったるいものは、食べもの以外にいらないので、体を洗うためであったが、手を洗う時のために使った。

外を見ると、また雪がちらちらと降っていた。

ちなみに隊首会には、また熱をぶり返して参加できなかった。

京楽が、たまに甘ったるい匂いをさせることがある。そんな日は、浮竹のところで泊まり、一緒に湯あみをした日らしいという噂が、隊長たちの間で流れた。

実際そうなので、二人は否定もしないし、肯定もしなかった。

「羨ましい・・・私も夜一様と一緒のお風呂に入りたい・・・・・・」

砕蜂の想いは燃え上がる。

後日、夜一を同じ匂いを漂わせた砕蜂が、京楽に礼をいうという珍しい姿を見かけることができたのだという。

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院生時代の部屋27

「それじゃあ、この前現世に行った時にとった写真、配るぞ」

虚退治ではなく、観光にいったのだ。

島国で、治安がいいとか悪いとかじゃなしに、人がいなかった。無人島だったのだ。

海の幸は豊富で、魚介類を現地調達して、キャンプをした。二泊三日の旅行。浮竹は、体調の問題もあり休もうと思っていたが、たくさんの友人に誘われて、やや微熱気味であったが参加した。

露店風呂が近くにあり、無人島ではあったがそれなりに楽しめた。

その時の写真ができあがったという。

「ひいいいいい、呪われてる!」

友人の一人が、写真を見てそういった。

何か影が映り込んでいた。浮竹のいる写真には、幽霊のように・・・・・京楽が、必ず映っていた。

誰か友人と一緒に映っていると、ねたましい嫉妬の顔で。浮竹が一人で笑っていると、にこにこと背後から。

ほぼ全員が集まった写真には、浮竹の隣をゲットして映っていた。

数人の友達と、浮竹の写真。影のように、憤怒の顔の京楽が。

「ひい、これにも映っている!」

知り合いの一人が、写真を投げ捨てた。

それは、隠し撮りの写真であった。露店風呂に入っている、浮竹を盗み撮りした写真であった。
それの全部に、京楽が映っていた。

「これじゃあ、売り物にならない・・・・・」

浮竹は、その容貌のせいもあり、下級生にも上級生にも、女性だけでなく男性からももてた。

隠し撮りされることは多々あったが、いつも京楽が退治してくれるので、安心していた。というか、その京楽自身が隠し撮りをするのだが。

「君の写真には、全部僕が映ってるからね。それでも売りたければ、売るといいよ。なお、今後このような行為をした場合、相応の処置が待っているからね」

退学は覚悟しておけと最後に呟いて、京楽は浮竹の盗み撮りの写真をかき集めた。

「コレクションが増えた\(゜ロ\)(/ロ゜)/」

「お前な・・・・・」

浮竹は、怒るのと呆れるのと同時で、どう感情表現すればいいのか悩んでいた。

「隠し撮りにきづいたのなら、まず止めろ!それから、普通の写真に幽霊のように映り込むな!」

ゴンと、喜んでいる京楽の頭を、拳骨で殴った。

「痛い!痛いけどコレクションが増えたのでうれしい!」

「俺が映っているどの写真も心霊写真状態だな・・・・・すまない、みんな」

浮竹が映っている写真には、100%京楽が映っていた。普通に映っていたのなら文句はないが、大抵が憤怒か嫉妬の表情な上に、影のように映り込んでいたる、体の一部だけだったりで、どう見ても心霊写真だった。

「これはこれで売れるかも・・・・・・」

二泊三日のキャンプを提案したリーダーが、言いだす。

「恐怖、京楽の愛憎嫉妬写真!浮竹は呪われている―———」

「おい」

「うん、悪くないな」

そうして、次の旅行の企画を立て始めた。今度は特進クラスだけでいくららしく、写真の売り上げはその一部に使わるのだという。

浮竹がよせといったのに、その写真は心霊写真として堂々と売り出され、学年も関係なくよく売れた。

「はぁ・・・・」

ほくほく顔のリーダーに、もうやめろといっても通じないだろう。

「あ、あの子よ。浮竹君。かわいいー」

「隣にいるのは、例の幽霊京楽ね。あの写真では分からなかったけど、本物かっこいいじゃない」

院生の中でも、かなりの有名人になってしまった二人。

すれ違うたびに、「浮竹だ」「京楽だ」と言われて、辟易した。

まぁ、それも1週間ばかりの我慢であったが。

「次の旅行にも、浮竹と京楽も来てくれ。今度はもっとすごい心霊写真をとるぞ!」

「行くわけがない」

「浮竹が行かないなら僕もいかない」

「そんなぁ」

リーダーの悲しい声を無視して、食堂で昼飯を食べていた。

「隣いいかい?俺、那由他っていうんだ」

「ああ、別に構わないが」

カッ。

正面に座っていた京楽が、般若になった。

「君のこと、ずっと見てたんだ。なぁ、付き合ってくれないか」

カッ。

般若をこえて破壊神となった京楽がいた。

「ああ・・・もう、俺はこいつと付き合ってるんだ」

京楽を指さす。

「ええっ、やっぱりできてたのか。それでもいいや、付き合ってよ」

「浮竹、行くよ」

京楽が、浮竹の手を取り去ろうとする。

その反対側を那由他と名乗った男にとられた。

「その様子じゃ、始めてもまだなんだろ?俺に任せろよ。京楽なんかよりもっともっとよくして、色子みたいにしてやれるぞ」

「・・・・殺すよ?」

京楽が。後に自分の斬魄刀となるべき刀をひきぬいて、那由他の首元にあてる。頸動脈を切ろうとする動きに、那由他が縮こまった。

「やめろ京楽。この程度のことで」

「こいつ、君を侮辱してるよ」

「それでもだ。刀はしまえ。頭にくるなら殴れ」

殴れという前に、すでに京楽は殴っていた。

「いってぇ・・・・覚えてろよこの野郎!」

「京楽の名ににおいて、院生でいられなくしてやろうか」

「ちっ・・・・・」

走り出す背中を、京楽が睨みつける。

そんな二人のやりとりを、周囲が見ていた。

「やっぱできてたんだ」

「やーん、浮竹君京楽君のものなのね」

「もう二人は禁断の関係を!?」

いろいろ好き勝手にいわれる。

「はぁ・・・・もういい、否定するのもめんどくさい。しばらく、お前とできてるってことで話を合わせてくれ」

「僕はいつでも歓迎だよ!」

両手を広げてくる京楽を無視して、その足を踏んでから、浮竹は食堂を出た。

残してしまったが、食べ終えて片付けもすませた。

次の授業まで、10分を切っていた。

食堂にいた人数も、時間のせいかいつもより少なかった。

京楽と浮竹ができている。その噂は1日で院生中に知れ渡り、友人たちに呼ばれて祝杯をあげられそうになり、事実を話すと、つまらないと言われた。

浮竹としては、髪も切ったし、心機一転、変態の京楽も惑わされることもなくと思ったのだが、そうは問屋が卸さないようだ。

幽霊写真の件も京楽と浮竹ができているという噂がおさまるのに、そう時間はかからなかった。

みんな、娯楽に飢えている。いつまでも同じネタで盛り上がるわけではない。

「俺とお前の件、友人にも真相を話したし、他の生徒ももう騒がなくなって助かった」

「僕はもっと騒いで、本当に付き合わなきゃいけないように、してほしかったけどねぇ」

京楽は相変わらずのんびりと、愛を囁いてくる。

「好きだよ」

「知ってる。俺も友人としては好きだ」

「そこは俺も愛してる好きだ京楽っていってくれなくちゃ」

「誰がいうかこのバカ!調子に乗るな!」

京楽の脛を蹴って、教室を移動する。

「愛が痛い!」

京楽は、蹴られた足をおさえながら、こりずに浮竹にまた愛を囁くのだった。







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誕生日プレゼントは「僕」

「じゃーーん。今年の誕生日プレゼントは「僕」だよー」

その日は、日番谷の誕生日が終わり、1日違いの浮竹が誕生日を祝われている日だった。

たくさんの隊士に囲まれ、たくさんの、持ちきれない誕生日プレゼントに喜ぶ浮竹は、京楽の存在をなかったものとして扱うことにした。

「浮竹隊長・・・・・手編みではありませんがこれを」

「朽木・・・マフラーか。最近寒いからな。大切に使わせせてもらう」

「私は、兄にこれを・・・」

「おお、白哉までくれるのか。これはあったかそうな手袋だ。朽木兄妹は、息もぴったりだな」

ルキアは頬を染めて、白哉は僅かながらに嬉しそうに微笑んだ。

「はいはーい。一般隊士の誕生日プレゼントの列はここですよー」

清音が、一般隊士の贈り物をうけとり、仙太郎がその仕分けをしていた。

とにかく、朗らかで優しい浮竹を慕う中には、他の隊の隊士もいて、日番谷の祝いの人数もすごかったが、その2倍は死神がいただろうか。

祝宴の酒などは、全部京楽がもってくれている。

3時間ほどで酒宴はうちきられ、ただ酒を飲みに来ていた輩も消えていく。

残ったのは、主人公の浮竹、日番谷、松本、白哉、ルキア、放置されている京楽くらいだろうか。
あとは仙太郎と清音が、いろいろ後片付けをしてくれていた。

他の隊長副隊長も祝いにきてくれたのだが、祝いの時間も終わり、帰ってしまった。

後に残ったのは、交流の深い人物たち。

「浮竹隊長~最近執筆が滞りがちなんですよ~~~京楽隊長との絡みをくださいよーー」

「松本ーー!ばかなこというな!」

「あーん隊長のいけずーー」

日番谷と松本は、一心地ついたのでやっと遅めの食事をとりだした。

ルキアと白哉は、仲よく何かの打ち合わせをしていた。

「京楽・・・・・少しはこりたか?」

2時間ほど放置されていた京楽は、涙ながらに頷いた。

「そういえば、院生時代も「僕」をプレゼンゼントしたら散々な目にあわされたね・・・・・・思い出した」

「お前をもらったところで、ろくな目にあいそうにない」

「そんなことないよ。尽くすタイプだよ、僕は。この酒宴だって僕がもったじゃないの」

バチコーンと、ウィンクを飛ばした。

「頼んでもいないのにな」

「いいじゃない。僕はこういう形でも、君のためになるなら金はおしまないよ」

「見返りが何もなければもっと嬉しいんだがな・・・・・」

「そんなぁ。来年は姫はじめする約束でしょ?」

浮竹は、その言葉に顔を朱くする。

「おい、あまり堂々と言うな。恥ずかしい」

「えー浮竹隊長と京楽隊長の姫はじめ・・・・・・・むふふふ、執筆のネタ発見!年明けまで原稿しあげるわよ!」

そう言って、松本は走り去ってしまった。

翡翠の瞳が揺れる。

寒いので、朽木兄妹がくれた手袋とマフラーをした。

日番谷は、まだ食べていた。松本は、食べる時間もおしいのか、持ち帰れるものだけ袋につめて走り去ってしまったままだ。

「日番谷隊長、酒は飲むかい?」

「甘いのなら・・・・」

「じゃあ、俺の果実酒をあけよう」

「おいこれ、去年に京楽からもらったやつじゃないのか?」

『もったいなくて飲まないでいたら、そろそろ賞味期限が切れそうだからな。一人で飲むより、多いほうがいい」

白哉とルキアにも酒を配った。

「乾杯」

皆で乾杯して、酒を飲んだ。

「乾杯」

少し遅れて、ラッピングリボンを外した京楽がやってくる・

「懲りたか?」

「懲りたよ」

京楽も酒を飲んでいた。去年自分がプレゼントしたものを、自分も飲む羽目になるとは思ってもいなかったが。

他の酒もあけて、わいわいと少人数で賑わった。

夜も更けて、日付が変わる。

「では、私も兄様も、ここまでで」

「ああ、ありがとう朽木、それに白哉」

「兄は、風邪をひかぬよう、気をつけろ」

「ああ」

朽木兄妹が去って残ったのは日番谷と京楽だった。

清音と仙太郎には、もう暇(いとま)を出しておいた。

「おいおっさん、浮竹を大事にしろよ」

「分かってるよ、日番谷隊長」

日番谷は少し酔ったのか、ふらついた後、瞬歩で消えてしまった。

「浮竹・・・・・もう日付はすぎてしまったけれど、誕生日おめでとう」

「ありがとう、京楽」

雨乾堂に戻ると、押し倒された。

「誕生日は僕っていったよね?君は僕に溺れるといいよ」

「あっ・・・・」

結局、誕生日は僕というわけのわからないプレゼントで、浮竹はおいしくいただかれてしまうのであった。














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