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浮竹と京楽が入れ替わった件

ゴン。

「あ」

「あ」

浮竹は、京楽と顔を見合わせあう。

もう、経験で分かった。

何度目かになるかもわからい、頭を打ったことによる人格の入れ違いがやっぱり起きていた。

「ひゃっほう!花街にいってくる!」

京楽の姿で、花街にいくと言い出た浮竹を、浮竹の姿の京楽が止める。

「浮気!?」

「お前もこっそり通っていただろう!」

浮竹が不満をもらすと、京楽は立ち眩みを起こす。

体は浮竹のものなのだ。

「浮竹、具合悪かったんだね」

「ああ、立ち眩みか。いつものことだ。ってことで、京楽の金で花街いってくる。心配しなくても遊女に手を出したりして浮気はしない」

「待って、浮竹!君じゃあ、花街は!」

京楽に止めらるが、浮竹は大金を握り締めて花街に出かけてしまった。


花街の、一番人気のある店を選んだ。

浮竹は、京楽の姿なので花街にくると、京楽の旦那様と呼ばれて、ああ、自分のことなのだと遅まきに気づきながら、一番人気の廓を選んだ。

酒も料理も豪華で、特に酒は浮竹は自分の体だとすぐに酔いつぶれてしまうのだが、体は京楽なので、たくさん飲んだ。

「酒がこんなにおいしいとは」

「おや、京楽のだんな、どうしたのでありんす?」

花魁が、浮竹を褥に誘う。

浮竹は、そんな気できたんじゃなかったのだが、酒を飲みすぎていつの間にか眠ってしまっていた。

朝起きると、浮竹も花魁も裸だった。

「や、やってしまった?」

「京楽のだんな、子ができたのでありんす.あちきを身請けしてほしいでありんす」

「俺、京楽じゃないから。じゃあ、そういうことで」

金を大量に払って帰ると、ちょうど入れ替わりが元に戻った。

「浮竹ええええええ」

「もぎゃあああああああ!?」

京楽は、白粉と酒の匂いをぷんぷんさせる自分の体を見て、悲し気に浮竹を見る。

「花魁と寝たの?」

「寝てない。いや、多分。酒で最後べろんべろんになって‥‥朝起きたら、お互い裸だった」

「それ、きっともられただけだから。ボクは花街に行っても、遊女と寝ないからね」

「でもその遊女、お前の子ができたとか言っていた」

「戯言だよ。身請けしてほしいから、そんな言葉で甘えてくる」

「なんか、花街は思っていたより面白くなかった」

「その割には、楽しんだ顔をしてるけど?」

「酒も料理もうまかったからな!」

浮竹は、酒をあれほど飲めるのは、もうまた京楽の体になった時くらいだろうと思った。

「さぁ、浮気者には罰をあげないとね?」

「へ?」

京楽に楽々と肩に担がれて、人払いしておいた雨乾堂の布団の上に、京楽は浮竹を押し倒す。

「ちょ、京楽?」

「二度と、花街に行けない体にしてあげる。ボクなしじゃあ、生きていけない体に」

「もぎゃあああああああああああああああああ」

合掌。


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ドラゴン族の子とミミック11

「あーんあーん」

「どうしたんだ?迷子か?」

「くすん」

小さな男の子が町のはずれで泣いていて、たまたま通りかかった浮竹が声をかける。買い物をした帰り道であった。

「お母さん、いなくなちゃった」

「じゃあ、一緒に探して‥‥‥うあ?」

小さな男の子は、浮竹の腕に注射器を打つ。

男の子の姿が揺らいで、がらの悪そうな成人した男性の姿になる。

「こりゃ、噂通りの上物だ。奴隷として売ったら金になるだろうが、やっぱり竜人族というと血の宝石のほうが高いからな」

「しまった‥‥‥京楽‥‥」

浮竹は、複数の男に囲まれて、麻酔を無理やり注射されてずた袋の中に入れられて、王都アルカンシェルのスラム街に連れ去られるのであった。



「おかしい」

時間になっても帰ってこない浮竹に、京楽がしびれを切らしそうになる。だが、浮竹とてAランク冒険者。

少々の危険は自分で回避できるだろう。

何か事件に巻き込まれて、解決しているんだろうと、その日は浮竹の帰りを待ちながら眠ってしまった。

「ポチ、浮竹が帰ってこない。匂いたどれる?」

「きしきし」

ミミックは鼻がいい。

犬と同じくらいか、それ以上の嗅覚をもっている。

リードにつないだポチに引きずられて、やってきたのは町の外れだった。

麻酔の注射器を発見して、京楽は顔を青ざめる。

「やっぱり、何かあったんだ!ポチ、このまま後を追える?」

「きしきし」

任せろ。

ポチは、王都アルカンシェルのスラム街に京楽を導く。

さて、それより数刻前。

浮竹は、縄でしばりあげられて、魔封じの首枷をされて、スラム街のある住宅に監禁されていた。

「なにが狙いだ」

「あんたの血さ。大量の血が欲しい。血の宝石にして闇ルートで販売するのさ」

「それにしても、男にしておくのはもったいないくらいの美人だな」

浮竹を取り囲んでいた男の一人が、舌なめずりをして浮竹の顎に手をかける。

「お前ら、死ぬぞ?俺の連れは、甘くないやつだからな。直に俺を助けにきてくれる」

「はぁ?ここまでなんの証拠も残してないはずだぜ?」

「俺はミミック牧場をしている。ミミックは、犬より嗅覚がいいんだ」

男たちは、ちっと舌打ちをする。

「とりあえず、血を抜けるだけ抜くぞ」

太い注射器を見て、浮竹の意識はそこで途切れた。



「よくも浮竹を‥‥‥‥」

血を抜かれまくって、その血はたくさんの血の宝石になっていた。

それを手にしながら、男たちが瞳の色を深紅に変えた京楽の、ありえない形に恐怖していた。

「きょうら‥‥く?」

「よくもボクの浮竹を傷つけたね」

京楽は、応急処置で同じ竜人族の自分の血を浮竹に与えてから、浮竹を攫った者たちを追い詰める。

半ば、ドラゴン化していた。

怒りのあまり、ドラゴン化はどんどん進行していく。

「ひぎゃあああ、化け物だああ!!!」

「ドラゴンだあああ!!」

「逃がすとでも?」

京楽が手を伸ばすと、ドラゴンのかぎ爪で男たちは次々とものいわぬ死体となっていく。

「主犯は君だね?」

「ひいいいいい」

浮竹の血を抜いた注射器をもっていた男に、京楽はブレスを吐いた。

「だめだ、京楽‥‥‥ドラゴンになったら、この平和な王都アルカンシェルを火の海に変えてしまう」

「ぐるるるるる」

すでに、京楽の姿はドラゴンになっていた。

浮竹は、幾度も意識を失いそうになりながら、ドラゴン化して暴れ出した京楽の傍に行き、人の小さな体でそのドラゴン化した京楽の大きな足に触れる。

「京楽‥‥」

「ぐるるるるる」

「きしきいしいい!!!」

ここまで案内してくれたポチが、涙を流しながら京楽の足をかじる。

その痛みに、京楽は足元を見た。

「‥‥‥うき、た、け‥‥ポ、チ」

「そうだ、俺たちだ。もう大丈夫だから。本気で暴れる前に、人の姿に戻ってくれ。お願いだ」

浮竹は、ぽろぽろと涙をこぼす。

その涙は、竜涙石というこれまた貴重な宝石となった。

「あああ‥‥‥俺は、人を殺して‥‥」

「大丈夫だ。俺でも、反対の立場なら殺してた」

「きしきし」

ポチが、わんわんと泣きまくる。

浮竹も泣いていた。

京楽は、気づくと人の姿に戻っていた。

「ボクは‥‥‥」

騒ぎで人が集まってくる。

憲兵隊がやってきて、まだ生きていた犯人の一味を捕獲する。

「竜人族の、拉致監禁暴行罪で、逮捕する!」

京楽と浮竹は、責められなかった。

憲兵隊の隊長が、浮竹と京楽に詫びる。

「この度は、このスラムの屑どもが大変な真似をしてしまって申し訳ない!本当なら、国王から謝罪が行われるべきなのだが、今遠征にでかけているので。代わりに、ツェーリッヒ公爵から謝罪があるかと」

「パスだよ。人間の社会に興味なんてない。犯人も捕まったようだし、ボクと浮竹は戻るよ」

「京楽殿、どうかドラゴンたちを呼んでこの王都アルカンシェルを火の海には」

「しないよ。ボクと浮竹は、竜人族の里を追われてやってきたんだ。今回は、怒りのあまりボクがドラゴン化してちょっと暴れちゃったけど、浮竹に感謝してね。彼のお陰で、ボクは暴走しないで済んだ。もしも暴走してたら、今頃この王都アルカンシェルは火の海になってたよ」

「浮竹殿、感謝する!」

「もういい。帰ろう、京楽」

「うん。血は足りてる?」

「ああ。血の宝石と竜涙石は、京楽が壊した建物とかの修繕費にあててくれ」

「しかし、この量の血の宝石だと高額すぎて‥‥‥‥」

「スラム街をなくして、スラム街の住人をちゃんとした国民に受け入れるのに使ってくれ。それでもおつりがくるはずだ」

「はい。では、国王と大臣とツェーリッヒ公爵にそのように通しておきます」

浮竹は、京楽にお姫様抱っこされながら、ミミックのポチを連れてリターンの魔法へ家に戻った。



「んー、今何時?」

「夕方の4時」

「もう一度寝る」

「ボクも。暴れちゃって、眠気が半端ない」

「俺も、血を抜かれすぎたせいで、休眠に入りかけている。眠くて仕方ない」

二人は、全てを放棄して、3日間眠り続けた。

「あー、よく寝たぁ」

「んー、いい朝だ」

「きしきし」

ポチが、二人が起きたことに喜んでやってくる。

「ああ、飯を食べれていなかったんだな」

浮竹は、まだ目覚めたばかりで少しぼーっとしていたので、4匹のミミックと8匹の子ミミック用にコーンフレークをあげた。

「浮竹、無理しないで寝ていて?ボクが朝食用意するから」

「ああ、任せた」

浮竹は、少しだけ仮眠した。

京楽がドラゴン化するのは数十年ぶりだった。昔は、浮竹が叫んでも元に戻らなくて、里の大きな大人の竜人族がドラゴンになって、無理やり京楽を倒して元に戻していた。

「俺のためにドラゴン化するくらい怒ってくれて、俺の声で人に戻ってくれた‥‥」

浮竹は赤くなる。

京楽は、心優しい。そんな京楽が本気で怒ることは滅多にない。

「ふふっ」

「どうしたの、浮竹?」

「いや、お前は俺にメロメロだなと思って」

「まぁ、否定はしないけど」

3日ぶりの食事だが、ちゃんと起きておくために主に肉料理が用意された。

鶏肉のソテーとか。

おいしそうに、浮竹が食べるのを見て、京楽も安心して自分も食べるのだった。


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ドラゴン族の子とミミック10

その日は、牧場のミミックたちの健康診断の日だった。

体重をはかり、口の中を見て、健康状態を把握する。たまに、変なものを食ってお腹を壊すミミックもいるので、口の中の空洞(お腹)はよく見なければいけない。

「ああ、75号俺のブーツ食ってた。こら!」

「きしきし」

ブーツをとりあげられて、ミミック75号は不満を訴えるので、とりあえず中に害のない、空き瓶に星の砂をいれたのをいれる。

「これなら、珍しいから守る価値があるだろう?」

「きしきし」

他のミミックたちが、いいなぁと星の砂の瓶をもらった75号を取り囲む。

「あーもう、お前たち仕方ないなぁ。みんなお揃いだ」

星の砂を空き瓶にいれた小さなプレゼントをみんな受け取って、ミミックたちは嬉しそうだった。

ダンジョンに放つ前なので、まだ宝をもっていないせいだ。

ミミックは宝物をもちたがるので、たまに変なものを宝物として体の中で保管してしまう。

熊の壊れたぬいぐるみはまだよかった。

中には自転車のタイヤとか、自転車のハンドルとか。

前に浮竹が購入した自転車がなくなったのだが、ミミックたちの仕業だった。

「よし、みんな健康だな。1週間後には、50号~60号までをダンジョンに放つからな」

「きしきし」

ミミックたちは、50号~60号のミミックたちを、囲んで、自分たちでお別れ会をはじめる。

「きしきし」

「はいはい。ブラックワイバーンの肉を用意するから」

「じとーーーーーーー」

「うわ、なんだ京楽!」

「だってええええ。浮竹ってばミミックばっかでちっともボクに構ってくれないじゃない!」

「じゃあ、お前もミミックの健康診断付き合えよ!」

「やだよ!噛まれるから!」

京楽はしくしくと泣いた。

「じゃあ、ブラックワイバーンの肉を焼くから、バーベキューの用意してくれ」

「分かったよ」

浮竹にやっと話しかけられて、京楽は嬉しそうだった。

バーベキューの用意をして、アイテムポケットにある、高級食材のブラックワイバーンの肉を次々と出して焼いていく。

Aランクダンジョンで倒しまくっているので、ミミック牧場の50匹にあげても大丈夫だった。

「来週独り立ちする子たちには、ボクからの選別。ラムネあげるから飲んで」

50号~60号のミミックたちは、しゅわしゅわするラムネを飲んで驚き、中の綺麗なビー玉を
宝物として体内に入れる。

「じゃあ、少し早いが送迎会だ!」

「きしきいしいい」

牧場のミミックたちは、おなかいっぱいブラックワイバーンの肉を食べて、眠ってしまった。

「あれ、暗い?生暖かい‥‥ぬおおお、ミミックの中だあああ」

京楽は寝落ちしていた。

その間にミミックの一匹が、京楽の頭をかじって首まで口の中にいれてしまっていた。

「ぬおおおお!浮竹、とってえええ」

浮竹はいなかった。

「ええ、まじ?この状態でいろと‥‥‥」

「ぎしししし」

京楽の頭をすっぽり口にいれたミミックは、ざまーみろと京楽をからかう。

「こら!」

京楽はふらふらと歩いて、石につまずいてこけた。

「ぎゃふん!」

「ぎゃん!」

ミミックが岩にぶつかって、鳴き声をあげて京楽を解放する。

「こらあああ!誰かと思ったらポチじゃんないか!」

「きししししし」

ポチは、京楽の尻に噛みつく。

「あいたたたた!」

「京楽、何してるんだ?」

「あ、浮竹!ポチがボクをいじめるんだよ!」

「ポチが?」

「きししし?」

きらきらした潤んだ瞳のポチの目を見て、浮竹は京楽の頭をハリセンで殴る。

「お前が悪い」

「なんで!?」

「ポチがそんなことするはずないだろう」

「きししししし」

うらめしい。

浮竹の前ではいい子ぶりっこして、京楽の前では本性を現す。

「きしきし」

「ん?京楽の宝物を持ってるって?」

「きしきし」

「なんだろう」

「だあああああああ、だめだよおおおおお」

京楽が慌てるので、浮竹は京楽を踏み倒してポチから京楽の宝物を見せてもらう。

浮竹の、隠し撮り写真だった。

「京楽ううううう!!!!カラミティサンダー」

「ひぎゃあああああああああああ!!!」

高位の雷の魔法で、京楽は真っ黒こげになって、写真も焦げて塵となるのであった。



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ドラゴン族の子とミミック9

「んっ」

満月の夜は、竜人族の血が騒ぐ。

浮竹は、京楽に口づけをされていた。

京楽もだが、浮竹も欲をもつ。それを解消するのはセックスだ。簡単なことだった。

「んあっ」

京楽に奥を穿たれて、浮竹は濡れた声をあげる。

「んんっ、ンあ、ひあ、やあ」

「いやじゃないよね?奥好きだもんね?」

「はぁ、もっとお」

浮竹は濡れた瞳で京楽を見上げる。

ぺろりと唇を舐めて、浮竹は京楽の背に手を回す。

「もっともっと、俺にお前を刻みこんでくれ」

「うん」

京楽は、出し入れを繰り返す。

秘所はぐちゃぐちゃと濡れた音を立てた。

「んあああ、いい。もっとお」

「浮竹は、欲張りだね」

「だって、気持ちいいんだもの」

「僕も気持ちいいよ。浮竹の中は最高だね」

「ひあっ、深いぃぃ」

京楽が、浮竹の片足を肩に抱え上げて、深く挿入するとびくんと浮竹は背をしならせてオーガズムでいっていた。

「んあっ」

「深い場所、好きだもんね?」

「あ、好き」

「ボクのことも好き?」

「好き。ミミックと同じくらい好きだ」

「そこは、ミミックより好きだっていってくれないと」

ずちゅっと、音を立てて奥を抉られて、浮竹は射精しながオーガズムでいっていた。

「ん、もうだめぇええ」

京楽は、浮竹の胎の奥に子種をどくんどくんと大量に注ぎこむ。

「満月の夜は、そういえば霊刀のボクは精霊の姿をしているんだっけ。まぁ、今はどうでもいいけど」

「はぁ、やあああ、もう無理」

「まだまだいけるでしょ?ボクはまだ1回出しただけだよ」

「ひあっ」

挿入れられたままやや乱暴に揺すぶられて、浮竹は涙を滲ませる。

「やあ、気持ち良すぎて変になるうう」

浮竹の涙を吸い取って、京楽は浮竹の中にまた子種を注ぐのだった。



「疲れた」

「まぁ、そりゃね。でも、君もいきまくってたじゃない」

「や、言うな」

浮竹は赤くなって、京楽の頭をハリセンで殴った。

「昨日もしたのに、今日もとか、満月の夜を忘れていた」

「まぁ、お互い気持ちよくなっただけだし」

「俺は腰が痛いぞ」

「魔法でどうにかなるでしょ」

「まぁ、そうなんだが」

浮竹は、湯あみを終えて情事の後を洗い流して眠ってしまった。

「君が、ボクだけのものならいいのにね?」

浮竹はミミックが好きで、保護活動にも力を入れていた。ミミックに対する愛情が全部自分に向いていればいいのにと思う京楽だった。



「いい朝だな。今日はこの前行った、Aランク上位ダンジョンのカスミスのダンジョンに行くぞ。サリーにも会いたいしな」

「また、数日かかるね」

「この前よりは1日は早くクリアしたい。強くなってるなら、可能なはずだ」

カスミスでエンシェントミミックからもらったアルティメットノヴァの魔法を、この短時間で浮竹は使えるようになっていた。

一度、誰もいない森の奥で使ってみたのだが、森が消し飛んだ。

禁忌の魔法は威力がすごすぎる。その中でも、かなり威力のある魔法だった。

浮竹も京楽も、禁忌の魔法は知っているし、一部は使えるが威力が強すぎるので、よほどのことがない限り使わない。

例えば、フロアボスやラスボス相手には使う。

雑魚でも、あまりに手強い相手なら使った。

中にはダンジョンの地形を変えてしまうものがあるので、そうするとダンジョンマスターに呼ばれて数日の攻略禁止、最悪な結果出禁を食らうので、浮竹も京楽も、ボス以外では禁忌の魔法は使わないようにしていた。

カスミスのダンジョンは、古代魔法文明の遺跡が見つかったことで、その奥にSランクの新しいダンジョンが見つかり、今賑わっていた。

「人が多いな」

「31階層までだよ。Sランクの冒険者が多いのは。新しいSランクダンジョン目当てだろうね」

40階層まで1日でもぐれて、フロアボスのヴァンパイアクイーンを倒して、財宝の間で一夜を過ごすことにした。

3日目には60階層に到達し、今回のラスボスは今までよりも一番強力なヒュドラだった。

「くそ、攻撃していく間に再生されるね」

「京楽、どいてろ」

「もしかして、あの魔法使う気?」

「こんな時のためにあるんだろう。アルティメットノヴァ!!!」

「わああああ」

京楽は、浮竹の分までシールドを張った。

焼野原となったフィールドで、下半身だけになってしまったヒュドラが息絶えてごおおんと音をたてて倒れる。

「ヒュドラって、普通Sランクダンジョンのボスでしょ?なんでまた、カスミスのAランクダンジョンにヒュドラが‥‥‥って、浮竹よく倒せたね」

「アルティメットノヴァの魔法のお陰だ」

財宝の間が開く。

「ぎしぎしぎいいい」

エンシェントミミックのサリーが現れた。

「サリー!」

「ぎしぎし!」

浮竹は嬉しそうにサリーに甘噛みされて、悦に浸るのであった。

「浮竹、ねぇ浮竹」

「はっ!あやうく極楽のあまり昇天しかかっていた」

「エンシェントミミックにかじられながら昇天とか、笑える死にかただよ」

「ぎししししし」

サリーは、京楽を挑発するかのように笑う。

「サリー!宝よこしなさい!」

「ぎしししいぃぃ」

やだよー。

サリーはそう言っているのだが、分かるのは浮竹だけだ。

「そうそう、大人しく宝をドロップ‥‥‥‥って、穴のあいたブーツ!?」

「ぎしししし」

「してやったり。そう言ってる」

「こらぁ!」

「ぎししし」

サリーは浮竹の前にきて、京楽にあっかんべーをして、浮竹の背後に隠れて本当の宝をドロップする。

オリハルコン製のブーツだった。

「サリー、ありがとな。さぁ、この財宝の類をアイテムポケットにいれて、家に帰ろう」

「ちょっと待って浮竹。何、サリーをアイテムポケットに入れようとしてるの」

「き、気のせいだ!」

「だめだからね!エンシェントミミックでなくても、これ以上ミミックを増やすのはダメだからね」

「ケチ」

「ケチでけっこう」

サリーは、京楽に噛みついた。

「暗いよ~息苦しいよ~~~~」

「ぎししししし」

酸欠で倒れた京楽を仕方なくずるずる引きずって、浮竹はスクロールを使ってダンジョンの外にでて、リターンの魔法で家の前に戻る。

「おい、京楽」

声をかけてみたが、起きそうにない。

「ミミック牧場にでもおいていくか。きっと、天国のような寝心地だろうから」

それは浮竹だけだろう。しかしつっこむ人はそこにいなかった。

浮竹は、気絶した京楽をミミック牧場の真ん中に放置して、家に戻る。

京楽は、ペロリと頬をなめられて、声を出す。

「うーん、浮竹ってば大胆だね」

がじがじ。足をかじられて、京楽は何かがおかしいなと思って目をあける。

そこに飛び込んできたのは、大量のミミックだった。

「もぎゃあああああああ」

京楽の悲鳴は、夕焼けに吸い込まれていくのであった。

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好き3

9月も終わり近くになる。

けれど残暑は厳しく、まだ暑い日々が続いていた。

「ルキア」

「なんだ、一護」

「あちい。アイス買ってきてくれ」

「クーラーが壊れているから暑いのだ。涼しい部屋に移動しよう」

「ああ、修理の人明日じゃないとこれないっていうからなぁ。今日は、ルキアは別室で寝ていいぞ。俺も、居間で寝るから」

「私は、もともとクーラーなどない尸魂界で暮らしていた。暑さにはまだ強い」

「クーラーのない世界なんて考えられねぇ」

一護は、自分の部屋のベッドで、扇風機をまわしながら、あちぃとぼやいていた。

室温は32度。

そりゃ、暑いだろう。

「仕方ない。アイスを買ってきてやるから、生き返れ」

「あー、俺スーパーエッセルのバニラ」

細かい注文を言ってくるので、ルキアは悪戯っぽく笑った。

「ガリガリ君の面白い味のを買ってきてやろう」

「ぬおおお、やめてくれええええ。ガリガリ君のソーダ味でいい」

「分かった。行ってくる」

玄関からでなく、開け放たれた窓から、ルキアは靴だけはいてコンビニに瞬歩でいってしまった。

「あー、溶ける‥‥‥‥」

今日は祝日だった。

ルキアに聞いても、特に行きたいところはないそうだし、デートのプランも練っていなかったので、家でだらだらすることにした。

いつの間にか、一護は眠っていた。

「ん‥‥‥」

起きると、3時間経っていた。

「ルキア、アイスは」

「貴様の分は私が食べた」

「ルキアに食われたああああ」

「それより貴様、昼からこんなに寝て、夜寝れるのか?」

「あー。うーん、わかんねぇ。あちいしなぁ。でも、寝れるもんだな」

「そうだな。この暑い中、貴様はいびきをかいて寝ていた」

「それ、嘘だな。俺はいびきなんてかかねぇ」

「ぐ、ばれたか」

一護は、ルキアを背後から抱き寄せた。

「なんだ、暑苦しい」

「好きだぜ、ルキア」

ルキアの体温がどんどん上昇していく。真っ赤になったルキアは、一護を殴った。

「ぐへ」

「暑いのだ!」

「ごめんってば」

「全く、貴様は」

「ルキア、いい匂いがする」

一護が、またルキアを抱き寄せた。

「どうせ、シャンプーの香りだろうが。貴様も同じいい匂いがするぞ」

「そうだな。なぁ、キスしていいか?」

「いいぞ」

一護は、いつもの触れるだけのキスではなく、ルキアの唇を舌で舐めて割って入ると、舌と舌とを絡めあって、ディープキスを繰り返す。

「ふあっ」

「ルキア、すげぇエッチな顔してる」

「貴様がそうさせたのであろう!」

「二人きりの旅行の時、抱いていいか?」

「ん‥‥‥好きにせよ。お前も男というわけだな」

一護は、ルキアの頭に顔を埋める。

「それまでは、ちょっと手を出すかもしれねぇけど、抱かねぇ」

「ちょっと手を出すとはなんだ!」

「たとえば、こんなの」

少ない胸のふくらみを触られて、ルキアは赤くなるが、逃げない。

「貴様は、巨乳が好きなのではないのか」

「いや、俺ルキアが好きだからめっちゃ貧乳派」

「貧乳とかうるさい!」

ごん!

肘で頭を殴ると、一護は無言になった。

「い、一護!?」

「きいた。あいてててて」

「す、すまぬ」

「いや、俺も調子のってたから」

互いに謝りあって、夜になった。

クーラーは故障していたが、夕立で雨が降ったおかげか、気温は30度を下回った。

扇風機をかけながら、ルキアと一護はいつものように、一護がルキアを背後から抱きしめて、ルキアが一護の腕の中でいる形で眠る。

一緒に窓側を見て眠るので、眠っている互いの顔は見えなかった。

ルキアは、ふと一護のほうを向く。

オレンジの髪は大分伸びてきた。思ったよりも長い睫毛だなと思う。整った顔立ちは、懐かしい海燕によく似ていた。

「好きだ、一護」

一護の薄い色の唇を、指でなぞる。

「ん‥‥‥」

「はっ!わ、私は何をしておるのだ。おとなしく寝よう」

一護は、ぼんやりと覚醒しかかったが、眠気に負けてまたすぐに眠ってしまった。

次の日起きると、ルキアは寝不足なんか欠伸ばかりしていた。

「ほら、もたもたしてないで、学校行くぞ」

「う、うむ」

一護が好きだ。

ルキアの中の感情は、一護のことばかりを思っていた。



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好き2

一護がルキアと付き合いはじめて、1週間が経とうとしていた。

「次は‥‥動物園とかかなぁ。ルキアのやつ、こっちの世界の動物をもっと見てみたいとか言ってたし」

ルキアの彼氏となる一護は、次の日曜にルキアと動物園でデートの計画を練っていた。

1週間前の水族館でのデートは大成功で、ルキアは白いワンピースと麦わら帽子がよく似合っていた。

「ああ、そういや服があんまねぇとか言ってたな。ショッピングもありか」

一護は、最近はバイトをしていないが、うなぎ屋でバイトした金がそこそこあったが、大学を入ると同時に一人暮らしを計画しているので、あまり大金は使えない。

「そういや、ルキアの奴白哉からけっこう金もらってるので金の心配はないとか言ってたな。服はその金で買うか」

ルキアが美化委員で帰りが遅くなって、一護が先に帰っていた。

「ルキア、今からいいか?」

「なんだ?」

「ちょっとした軽いデートみたいなやつ。着る服、あんまないつってたろ。白哉からは現世の金をもたされてるんだろ?その金で、お前の服買いにこうぜ」

「兄様からは、1千万円を」

「はい、ストーーーップ」

「へ?」

「1千万かよ!百万かと思ってたけどさらに上いってやがった。桁が一つ多かった」

「1千万では、足りぬのか?」

「どんな服だよ。5万でいい。シマムラででも服買いに行こうぜ」

「う、うむ。ワンピースでよいか?」

「ああ、いいぜ。でも、白ばっかりじゃなくっていろんな柄の、デザインも違うやつとかも買おうぜ」

「うむ」

こうして、ルキアと一護はシマムラで、一護がルキアに似合いそうなワンピースを選んで、ルキアが試着して、ルキアがいいと思ったものを買った。

ワンピース以外にも、新しいパジャマと、今はまだ暑いがあと2,3か月もすればどんどん寒くなってくるので薄い上着も何着か買った。

安いとはいえ、大量に購入したので、お会計は3万をこえた。

一護が荷物をもつ。

「私ももとうか?」

「いいよ。これくらい、俺一人でももてる。腹減ってないか?」

「少し減った」

「じゃあ、マックでもいくか」

「うむ」

荷物をコインロッカーに預けて、二人はマクドナルドにやってくると、それぞれセットのメニューを選んで、あいている席に座って食べ始める。

「ねぇねぇ、あそこのオレンジ色の頭の男の子かっこいー。隣の子、彼女かな?」

そんな声が聞こえてきて、ルキアは顔を赤くする。

「ん、どうしたんだ?]

「なんでもない。貴様の顔がおもしろいと誰かが言ってたいただけだ」

「なんじゃそりゃ」

一護は、コーラを飲み干して、ポテトとバーガーだけでは足りなかったので、追加を頼みにルキアの元を離れる。

「ねぇねぇ、君一人?」

「え、あ」

「かわいいねぇ。何年生?あ、もしかして中学生?」

3人の男が、ルキアを取り囲む。

そこに、トレイにポテトのLをのせた一護が戻ってくる。

「そいつ、俺の彼女だから」

「ちぇっ、彼氏つきか。かわいいのに残念」

「ルキア、何もされてねーか?」

「うむ。あろうことに、あやつらこの私を中学生扱いしおった。許すまじ」

「まぁ、そんだけ背が低くて華奢じゃ、間違われても仕方ねぇ。最初、妹のワンピース着れたくらいだしな」

「う、うるさい」

一護は、ルキアの隣に座って、ポテトを食べ始める。

「ああ、夕飯いらねぇって連絡入れとかねーとな」

妹あてに、メールを送る。

「そのスプライト、もらっていいか?」

「へあ?」

一護は、ルキアのドリンクを飲み干してしまった。

これって関節キスとか思うけど、すでにファーストキスは、告白した日に一護から奪われているので、思っていたよりは恥ずかしくなかった。

「さて、帰るか」

「うむ」

コインンロッカーから荷物を取り出して、帰路につく。

「今度の日曜、動物園でデートしようぜ」

「動物園!」

ルキアは目を輝かせた。

「お、お弁当を作ってもっていってもいいか?」

「ルキア、料理けっこううまいもんな」

家庭科などで、ルキアが作ったものを食べたことがあるが、それなりにおいしかった。

4大貴族の朽木家の令嬢だから、料理なんてできないと思っていたのだが、そうでもなかった。

「楽しみだな、動物園」

「ああ。楽しみにしている。お弁当を、楽しみにしていてくれ」



やがて、日曜になって動物園に行く日がやってきた。

その日は、青空でよく晴れていた。

ルキアは、麦わら帽子に薄い紫色のワンピースを着て.肩には白いストールを巻いていた。

「なんか、すげー育ちのいいお嬢様みてぇ」

「ふふ、何を言っておるのだ。見惚れたか?」

「ああ」

ルキアは冗談で言ったつもりだったのだが、一護にそう褒められて、頬を赤くする。

「さぁ、中に入ろうぜ」

「う、うむ」

キリンを一護が指さすと。

「あれはシマウマだな?」

「違う。キリンだ」

「麒麟?」

「いや、違うから。見ての通り首の長い動物で、キリンっていうんだ」

「ほぅ」

「あっちにいる鼻の長いのはゾウ」

「獏ではないのか?」

「ちょっと見た目は似てるけど違う。それに、獏は妖怪じゃないけど他にいる」

ほうほう。

いろいろ案内していると、昼飯時になった。

「これ、私が早起きして作ったお弁当だ。その、唐揚げがすこし焦げてしまった」

「へぇ。見た目はちょっとぐちゃってしてるけど」

「う、うるさい。いやなら、食べずともよい」

「いやいや。ルキアが俺のために作ってくれたんだろう?」

「うむ」

「うん、けっこう美味いじゃねぇか」

「ほ、本当か?」

ぱぁぁぁぁと、ルキアの顔をが明るくなる。

ルキアは、自分の分も食べた。味見をしていなかったが、自分でもそこそこおいしいと思えるできだった。

青空だったが、いつの間にか太陽は鉛色の雲で覆われて、雨が降ってきた。

「雨だ。今日はもう帰るか」

「もっと、見て回る」

「そうか。じゃあ、売店で傘買うか」

傘を1つだけ買って、相合傘をして動物園を巡り終えて、ルキアはお土産コーナーでキリンのぬいぐるみを欲しがったので、一護が買ってやった。

「すまん。大切にする」

「帰るか」

「一護」

「ん?」

ルキアは、背伸びして、屈んできた一護の唇に唇を重ねる。

「かわいいやつ」

「う、うるさい!帰るぞ!バスがくる!」

雨が小降りになってきたので、ルキアはバス停まで走るのであった。

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好き。

「い、一護‥‥‥‥その、ス、ス、ス‥‥‥」

「は?」

「涼しいな!」

「いや、めっちゃ猛暑で暑くて死にそうなんだが」

夏休みもあけて、放課後にルキアに屋上まで呼び出されて、一護は暑いといいながらあくびをしていた。

「す、す、す‥‥‥‥」

「んあ?」

「スキヤキが食いたい季節だな!」

「こんなに暑いのにか?」

じわじわと、太陽は30度を余裕でこえる温度で大地を照りつける。

「す、す、す‥‥‥」

「んー?」

「酢は体にいいな!」

「お前、さっきからす、す、すと何言ってるんだ?もしかして、俺のこと好きなのか?」

ルキアの頭をぽんぽんと叩いて笑うと、ルキアは真っ赤になった。

「え、まじで?」

「貴様のことが好きだ、一護」

「ルキア。俺も好きだぜ」

ルキアは、ぼんっと音立てて動かなくなった。

そんなルキアに、一護は軽くキスをする。

「な!」

「俺たち、付き合う?」

「え、あ、うむ」

「尸魂界に戻るから、高校卒業したらお別れとかなしだぞ?」

今のルキアは、一護が総隊長である京楽に高校卒業まで現世で過ごさせてほしいという、我儘のお陰で現世にいれた。

本当なら、13番隊の副隊長として復興に力を入れなければいけないのであるが。

「高校卒後したら、みんなで卒業旅行に行くか。その後で、二人だけでも旅行にいこうぜ」

「貴様、進路はあの大学でいいのか?」

「ああ。俺の頭でもいけるし、やりたい翻訳家になるのにいい大学だ。ドイツ語が盛んで、俺はドイツ語の翻訳家になりたい」

「貴様の傍に、私はいていいのか?」

「当り前だろ。好きだぜ、ルキア」

「う、うむ」

風が強くふいた。

ふわりとルキアのスカートがめくれる。

「ふむ、水玉模様か」

「な、一護!」

ぽかぽか殴ってくるルキアの頭を撫でて、一護は笑う。

夏は、もう終わりになりそうだった。

気温はまだまだ残暑で暑いが。

「暑いだろ。帰ろうぜ。コンビニでアイスおごってやる」

「ガリガリ君のソーダ味がいい」

「へいへい」

二人は、付き合うことになった。

今までも距離は近かったが、その日を境にぐっと距離が縮まった。

二人で、手を繋いで帰った。

自宅に戻ると、ルキアはいつも通り一護の部屋でだらだらしていた。

「先、風呂入ってくるから」

「うむ」

一護が戻ってくると、やや緊張したルキアがいた。

「お前も風呂入ってこい」

「わ、分かった」

ルキアは風呂に入り、屋上で告白したことを思い出して真っ赤になった。

「ど、どんな顔をして一護と会えばいいのか分からぬ。て、適当でよいか」

ルキアは風呂からあがり、一護の部屋に戻った。

いつも、一護と一緒に眠っていた。押し入れの時が大かったが、たまに一緒のベッドで眠った。

「ルキア、寝るぞ」

「では、私は押し入れに‥‥‥」

「なんでだ?一緒に寝ようぜ」

ルキアは赤くなる。

「なんも変なことはしねーよ」

ルキアを背後から抱きしめて、クーラーを28度の弱に設定して明りを消す。

「おやすみ」

「お、おやすみ」

ルキアははじめ、一護の体温にドキドキして眠れなかったが、いつの間にか眠っていた。

ふと、深夜に目がさめた。

「暑い‥‥」

「あー。まだ夜も暑いからな。おまけにこんだけひっついてると余計に暑いか」

「貴様、起きていたのか?」

「ルキアがもぞってしたから起きちまった。クーラーの温度はそのままにして風を強にするか」

一護が、クーラーのリモコンを操作する。少しして、随分と涼しくなった。

「ほら、寝るぞ」

「う、うむ」

ルキアの華奢すぎる体を腕の中に閉じ込めて、一護はすぐに眠ってしまった。

ルキアも、眠気で寝てしまった。

「ち、遅刻だ!一護、起きよ!」

「んー?まだ9時じゃねぇか」

「遅刻であろう!」

「今日は土曜だぜ?」

「へあ?」

理解して、ルキアは真っ赤になって薄い毛布にくるまってベッドの上で丸くなる。

「まぁ起きるか。デートでもするか?」

「で、でぇと?す、する!」

「じゃあ、手近なところで水族館でも行くか」

「行く!」

ルキアは嬉し気に、起きる。

まずは着替えて、顔を洗って朝食をとり、歯を磨く。

「水族館なるものには行ったことがない。今からすごく楽しみだ」

「おう。一生の思い出になるようなデートにしようぜ」

ルキアが明るく笑う。

今まで、普通に見ていた少女めいた笑顔だったが、付き合うことになってすごくかわいく見えた。

ルキアは、白いワンピースに、麦わら帽子をかぶっていた。あと、白い日傘をもっていた。麦わら帽子のリボンも白だった。

風が強くふいて、ルキアのスカートがめくれる。

「今日は白か‥‥‥‥」

「貴様、何を見ておるのだ!」

ルキアが真っ赤になって、スカートをおさえる。

「最近の風はグッジョブだな」

「何を言っているのだ」

「いや、こっちの話」

一護は笑って、ルキアと手を繋いで歩き出すのだった。

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ドラゴン族の子とミミック8

「ぎしぎし」

「ああ!幻のエンシェントミミック!」

Aランクの上位ダンジョンに挑んだ浮竹と京楽は、3日かけて45階層までもぐっていた。

さすがに上位ダンジョンなだけあって、雑魚モンスターにワイバーンが出てきたりした。フロアボスはブラックワイバーンの群れだったりした。

「ぎしぎし」

浮竹の目の前にいるミミックは、古代魔法文明時代に生まれたとされるまさに幻のミミック。

エンシェントミミックだった。

大きくて、人食いミミックより大きい。

「ああああ」

浮竹は目がハートになっていた。

「ちょっと、浮竹危ないよ!」

「エンシェントミミック‥‥‥(*´Д`)ハァハァ」

浮竹は危ない人になっていた。

「そうれ!」

浮竹は、アイテムポックスからブラックワイバーンのステーキを取り出して、エンシェントミミックの前でちらつかせる。

「ぎしぎし」

「ほら、やるから触らせてくれ。(*´Д`)ハァハァ」

「浮竹、大丈夫?」

「俺は今もううれつに感動している」

「あ、そう。怪我しないようにね?」

エンシェントミミックは、浮竹の手からブラックワイバーンのステーキをもらい、浮竹に懐いた。

「ああああ、このままお持ち帰りしたい」

「だめだよ、浮竹。この子はこのダンジョンだから生き残ってこれたんだ。LVもボクたちより高そうだし」

「ぎししししし」

「あああああ」

浮竹は、ひとしきりエンシェントミミックを撫でで、エンシェントミミックに頭を甘噛みされて、幸せそうだった。

「ぎしい」

「え、もうお別れ?」

「ぎし」

エンシェントミミックは、オリハルコンの剣をドロップして去っていった。

「オリハルコン‥‥ミスリルより貴重な神の金属」

「すごいね。やったじゃない」

「まだ使いこなせそうにないから、家に飾っておこう」

「そうだね。オリハルコンは使う者が弱いと本当の威力を発揮しないからね」

「ぎしぎし」

「ぬおおおお!?またエンシェントミミック!」

浮竹は、そのエンシェントミミックに嚙まれながらもふりまくっていると、甘噛みに変わった。

「ぎしぎし?」

「怖くないのかって?ミミックマスターの俺にはお前は太陽だ!」

浮竹は京楽の存在を忘れていた。京楽はぐすんと悲しそうな顔をする。

「どうせボクはミミックの次だよ」

「なぁ、京楽。このダンジョン、どこかで古代魔法文明の遺跡と繋がっているんじゃないか?そうじゃないと、エンシェントミミックがいる説明がつかない」

「そういえば、このダンジョン、31階層付近で大規模に崩れたらしいよ。その奥に、古代魔法文明の遺跡があったんじゃないかな」

「戻って、遺跡を探検してみよう」

「分かったよ。でも、そのエンシェントミミックは連れていかないからね?」

「ぶーぶー」

エンシェントミミックは、浮竹を甘噛みして、古代の魔法書をドロップして去っていった。

「禁忌だな、この魔法書」

「まだ、知られていない魔法だね。アルティメットノヴァ‥‥使うには、LVもっとあげないとね」

「とりあえず、遺跡があるだろう31階層に戻るぞ」

「うん」

31階層をくまなく調べると、崩れた部分があって、その奥に古代魔法文明の遺跡があった。

「これは‥‥‥すごいな」

荘厳。

遺跡は何千年と経っているだろうが、綺麗なままだった。

「ピピピピ、侵入者を発見。これより、駆除システムを導入します」

現れたのは、エンシェントドラゴンだった。

「ドラゴン!」

「あ、浮竹これじゃあ戦えないよ」

「話しかけてみよう」

浮竹は、古代語でエンシェントドラゴンに話しかける。

するとエンシェントドラゴンは人の姿をとった。

「竜人族の子か。同胞か。今回は、同胞ということで目をつぶろう。これ以上遺跡を荒らすようであれば、竜人族の子といえ、排除する」

「もう、戻ります」

浮竹が古代語でそう言って、京楽のほうを向く。

京楽はまだ古代語を完全にマスターしていない。

「このドラゴンは、どうやらこの遺跡の守護竜のようだ。俺たちがこれ以上ここにいると、荒らしたとみて排除するって。この件は冒険者ギルドに報告しよう。Aランクの俺たちでこれ以上この遺跡を探検するのは無理だ。Sランクじゃないと。それに俺たちではドラゴンを倒すには心構えがいる」

「そうだね。一度戻ろう」

遺跡の外に出ると、エンシェントミミックの赤ちゃんがいた。

「京楽‥‥」

「お持ち帰りはだめだよ」

「うう‥‥」

「とりあえず、45階層までもぐって、60階層のラスボスを倒して帰還しよう」

浮竹と京楽は、夜を52階層で明かして、60階層まで到着し、ラスボスと対峙する。

ラスボスは、炎の精霊王だった。

浮竹と京楽は、慎重に攻めて、炎の精霊王を氷の魔法で倒し、財宝の間が開く。

「ぎしぎしいいい」

そこにも、エンシェントミミックがいた。

財宝は、オリハルコンのインゴットや、魔法の武具と古代の魔法書の束、それに金銀財宝であった。

「ああ、このダンジョン俺気に入った。また明日ももぐろう」

「でも、ミミック牧場の子や家のミミックたちをあまり放置しすぎるのもどうかと思うよ?」

「う、それもそうだな。このダンジョンにもぐるのは、2日後にしよう」

「ほんと、浮竹はミミックが好きだねぇ」

エンシェントミミックに甘噛みされる浮竹を見ながら、京楽は笑うのであった。

「ああ、エンシェントミミック‥‥‥」

がじがじと甘噛みをこえて本気でかじられてちょっと血を出しているが、浮竹は痛みを感じないのか悦に浸っていた。

「浮竹、血が出てるよ」

「この子はサリーと名付けよう。サリー、血がでるくらいかんじゃいけないぞ。そんな風に噛んでいいのは京楽だけだ」

「なぜにボク!?」

「ぎいぎい」

サリーは、浮竹を解放して京楽に噛みついた。

「もぎゃああああああああああ」

ほぼ、半身がすっぽり入ってしまうエンシェントミミックに頭をかじられながら、京楽はとっておきのドラゴンステーキを取り出す。

「ずっと前にドラゴン化して暴れた時尻尾を切り落とされたんだよね。その時のボクの肉だよ。アイテムポケットに入れてる限り劣化しないからね。ステーキにして放置していたのがあってよかったよ」

向こうに投げると、サリーはぴゅーんと走ってドラゴンステーキをおいしそうに食べる。

「ぎいぎい」

「もっとくれだって」

「あいにく、それしかないんだよ」

「ぎいいい」

エンシェントミミックは残念そうな顔になる。

「サリー、お手」

「ぎい」

「お座り」

「ぎい」

京楽の言うことに、サリーは従う。

「これだけ聞き分けがいいとかわいいね。ボクを噛んじゃダメだよ。噛むのは浮竹だけにしてね」

「俺はいつでも齧られる準備ができているぞ!」

浮竹は目をハートマークにして、サリーがくるのを待っていた。

「ぎいぎいぎい」

サリーは、浮竹に噛みついた。

「ひゃっほうううう」

浮竹は喜んでいる。甘噛みなので、けがをすることはない。ちなみに最初に本気でかまれて血が出たところはヒールですでに治していた。

財宝や魔法の武具、古代の呪文書やオリハルコンのインゴットをアイテムポケットに入れて、一度アルカンシェルの王都まで戻ることにした。

「ああ、サリー、また一週間後くらいに。2日したらまたこのダンジョンに挑むから、最下層の60階層までたどり着くには4日くらいかかる。だから、大体一週間後に会おう」

「ぎいいいい」

サリーはぴょんぴょんはねて、浮竹と京楽との再会を誓った。


王都アルカンシェルの冒険者ギルドに、遺跡のことを報告すると、Sランク冒険者と学者が派遣されれることになった。

Sランクのパーティー2つが、国でも偉いさんの学者の護衛をしながら、遺跡を調べるらしい。

「いつか、あんな風に頼りにされるといいな」

「そうだね」

浮竹と京楽は家に帰り、ポチ、タマ、タロウ、ジロウ、8匹の子ミミックと食事をとり、浮竹派ミミック牧場にいって新鮮な水と餌を与えた。

「きしきし」

「ん?ポチ、俺から変わったミミックの匂いがするって?実はな、幻のエンシェントミミックと会ったんだ!」

「きしい!」

すごい!

ポチはそう言った。

ポチにエンシェントミミックのことを熱く語っていると、夕方になっていた。

「続きは家でな?」

「きしい」

「浮竹、夕ご飯食べるよね?」

「ああ」

「ステーキだよ」

「まさかドラゴンステーキとかいうんじゃないだろうな」

「まさか。ブラックワイバーンの肉のステーキだよ。あと、ミノタウロスの」

この世界では、モンスターの肉も普通に食用になる。

牛や豚、鶏や羊といった家畜もいるが、モンスターの肉の方が安く手に入れられたり、冒険者なら自分で狩った獲物を肉を素材として売らずに、自分たち用に残しておくこともある。

ブラックワイバーンもミノタウロスも、Aランクダンジョンで倒したモンスターの肉だった。

ミノタウロスは10階層のボスだった。

ダンジョンは、10階層ごとにフロアボスがいて、財宝の間がある。

ラスボスまでいくと、手強いが倒せばそれまでのフロアボスの財宝とは比較できない財宝が手に入った。

「サリー、元気にしてるかなぁ」

「元気にしてるでしょ。きっとSランクのパーティーに驚かれて、それから宝をドロップしているさ」

浮竹と京楽がダンジョンを踏破したことで、あのAランク上位ダンジョンは、ダンジョンマスターの手により、一度リセットされ、宝の配置、雑魚モンスターの配置、財宝の間の財宝、ボスなどを新しくされていることだろう。

「浮竹」

「ん?」

「抱きしめて寝ていい?」

「甘えんぼうだな。いいぞ」

「もしも手を出しちゃったら、ごめんね」


結局、浮竹は京楽に抱かれて、Sランク上位ダンジョンへの出発は1日のびるのであった。




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ドラゴン族の子とミミック7

アンデットドラゴン討伐は、結局Sランクの浮竹と霊刀の精霊の京楽の手で片がついた。

浮竹と京楽にとって、いい経験になった。

浮竹は、Sランクの浮竹の強さに心酔してSランクの浮竹を「先生」と呼ぶようになっていた。

浮竹と京楽は、ヤトの町にきていた。

「先生、剣の稽古をつけてくれ」

『んー、まぁいいけど。でも、お前はどっちかっていうと魔法使いだろう?』

「魔法剣士だからな。魔法も剣も使うが、京楽のほうが剣の腕が高い。負けるわけにはいかない」

『切磋琢磨することはいいことだ』

「ボクには魔法の稽古をしてほしいな」

Sランクの浮竹に、京楽も教えをこおうとする。

『俺一人で二人を一度に相手しよう』

「さすが先生」

『じゃあいくぞ!”春霖”!』

Sランクの浮竹は、霊刀の京楽を抜いて、浮竹に切りかかり、同時に魔法を唱える。

「サンダーストライク!」

浮竹はなんとか剣を受け止めて、魔法を放たれた京楽はマジックシールドでSランクの浮竹の魔法を凌ぐと、同じ魔法を唱える。

「サンダーストライク!」

『ファイアボルト!』

「く、なんて熱量だい。初歩魔法で上位魔法並みの威力‥‥ファイアサークル!」

『甘い!』

Sランクの浮竹は、検圧の風だけで京楽のファイアサークルの火を消してしまう。

「もらった!」

浮竹が、背後からSランクの自分に切りかかる。

『甘い甘い。動きが単調すぎるぞ』

「くそ、完全にフリーだと思うのに読まれてた!」

それからは、浮竹とSランクの浮竹の一対一の戦いになる。あえて魔法は使わない。

時折京楽が魔法を放つが、Sランクの浮竹の剣の動きは鈍らない。

『動きにもっと大胆さをいれろ!引くな!一太刀で切る勢いでかかってこい』

「はい、先生!」

午前は、Sランクの浮竹と浮竹の剣の稽古で終わってしまった。

午後になり、浮竹と京楽は魔法を習うことにした。

『まずは、基礎の精神集中から』

「う、俺苦手なんだよな」

『そこ、しゃべらない』

「はい、先生」

たっぷりしごかれて、日が落ちる頃にはくたくたになっていた。

「ちょっとは強くなったかな?」

「浮竹、まだ1日だよ。まぁ、続けていけばSランクが近くなってくるだろうけど」

『飯でも食べていくか?』

『ちょっと、浮竹、ボクを忘れてない?』

桜色の刀身をした霊刀の精霊の京楽が、Sランクの浮竹に不満をもらす。ちなみに、精霊の姿で存在しないと、精霊の京楽の言葉は浮竹と京楽には聞こえない。

『すまん、俺の相棒が不満を言ってるんで、今日はこのへんで』

「はい、先生!」

「じゃあ、ボクらも帰ろうか。ミミック牧場の子たちに餌あげないと」

「ああ、そうだな」

浮竹と京楽は、王都アルカンシェルに戻ってしまった。

「きしきしきし」

帰宅すると、ポチが甘えてきた。

「ポチ、まずは牧場のみんなに餌と水をあげてくるからな。その後風呂に入って夕飯だ。今日はエビフライカレーだぞ」

「きしいいいい」

じゅるりと、ポチが涎を垂らす。

「ポチ、タマ、タロウ、ジロウに生まれた子ミミック8匹分だとけっこうな量になるね」

「京楽、夕飯作り任せていいか。俺は牧場に行ってくる」

「分かったよ」

浮竹は、ミミック牧場に向かう。

「あれ‥‥‥3匹、足りない?」

50匹はいるはずのミミックの数が47匹だった。

「おーい、88号、76号、92号」

探すと、ミミック牧場の納屋で、アルコールを摂取して酔ってぴよぴよになっているミミックたちを発見する。

「こら、隠れて酒を飲んでたのか!」

「きしきしいぃ」

「みゅんみゅん」

「がぁがぁ」

3匹は、怒る浮竹が怖くて震える。

「お前たちは3日間飯ぬきだ!」

そんなぁって顔をするミミックたち。

転がっている酒瓶は京楽のもので、どうやらポチが持ち込んだらしい。

「ポチ、お前も3日間飯ぬきだ」

「きしきしきし!」

酷い!

そう言うけど。浮竹は怒っていた。

「ミミックは酒に弱いんだぞ。もしものことがあったらどうする!」

酒に手を出して飲みすぎて死んでしまったミミックを知っているので、浮竹も厳しい。

京楽は、エビフライカレーをみんなの分を作ったのだが、あとで食べれなかったポチにこっそりあげた。


「浮竹、明日はどうする?」

「んー。また、デートでもするか」

「ミミック連れて?」

「いや、ミミック抜きで。映画でも見に行こう」

「やっほい!」

「きしきしきし」

ポチは満腹で笑っていた。

「京楽?ポチに飯与えたな?」

「ひいいばれてるうううう」

「ポチの罰にならないだろう!まぁ、仕方ない。でも、明日とあさっては飯やるなよ。ミミックは水だけでも数カ月は生きているんだから。飲まず食わずでも二月は生きれる」

ポチは、浮竹に甘えまくって、結局次の日は京楽とデートして帰ってきた後に、オムライスをもらった。

その次の日は、普通に餌をあげていた。

すうすうと眠るポチを見て、浮竹もため息をつく。

「はぁ。俺も甘いな」

「そこが、浮竹のいいところじゃない」

京楽からキスをされて抱き寄せられる。

京楽の背に手を回して、浮竹は目を閉じるのであった。



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ドラゴン族の子とミミック6

AランクとSランクで受けれる依頼で、アンデットドラゴン討伐を受けることになった。

浮竹と京楽は、竜人族なのでドラゴンという言葉を聞いて顔をしかめたが、不死者となってしまったドラゴンを弔うためにも退治すべきだと、Sランクの浮竹から言われて、受けることにした。

今回は、SランクパーティーにAランクパーティーである浮竹と京楽も参加するので、事前準備うをすることを怠らない。

当日は、Sランクの浮竹と霊刀の精霊である京楽がサポートしてくれる。

満月の日、霊刀の精霊の京楽は人の姿になれる。

その日が、討伐の日と決められた。

「聖水はもちろんいるよな?」

「うん。アイテムポケットに入るだけもっていこう」

「あとは‥‥アンデットだから聖属性と火に弱いから、どっちがどっちを分担するか決めておこう」

「じゃあ、ボクが火属性の魔法を使うね?」

「じゃあ、俺は回復魔法をかけよう。アンデットだから、効くはずだ。多分、ターンアンデットの魔法と同じくらいダメージが入る。ターンアンデットとハイネスヒールの魔法を使うことにする」

準備は、ちゃくちゃくと進んでいた。

浮竹は、京楽と一緒にアンデットドラゴン退治の練習のために、アンデットがわくとあるAランクダンジョンの22階層を歩く。

「ぎああああああ」

グールやゾンビが襲ってくる。

「ターンアンデット!」

「ファイアサークル!」

「ぎいやあああああ」

アンデットたちは、浮竹の聖属性の魔法と京楽の炎の魔法で、綺麗に浄化されていく。

今回のアンデットドラゴン退治には、ミミックは連れていかない。

と思ったら、アイテムポケットにポチが入っていた。

「へくしゅ」

「ああ、中で聖水をかぶってしまったのか。一応、モンスターを退ける力があるからな」

「へくしゅん」

「まるで風邪ひいてるみたいだね?」

京楽が、ポチの頭を撫でると、ポチは鼻水を京楽にぶっかけた。

「待てやこらああああ」

「へくち」

くしゃみをしながら、ポチは逃げる。

それを、京楽が追いかける。

「あはははは、緊張が一気にどっかにいってしまったな。帰ったら、もう一度聖水の点検して、アンデットドラゴン退治に挑もう」

「うん」

「へくちっ」

ポチは、クリーンの魔法で鼻水を綺麗になくした京楽にまた鼻水をぶっかけた。

「わざとだね、ポチ?」

「きしししししし。へくちっ」

くしゃみをしながら、ポチは逃げる。京楽はひたすら追いかける。

「はぁ。大丈夫かな、ほんとに」

浮竹は、今から心配になってきた。

「ポチ、アンデットドラゴン討伐はSランク冒険者になるための大切なクエストだから、その時ばかりは連れて行けないからな?アイテムポケットに隠れていないか事前にチェックするからな?]

「きしきし?」

「ごめんな、ポチ」

「ポチ、よくも鼻水を‥‥」

「きしきし!」

ポチは、京楽の頭に噛みつく。

「京楽、緊張しっぱなしだったもんな。ポチが、気分を変えてくれたんだ。もう、緊張してないだろ?」

「へ?あ、そういえばそうだねって、いつまで噛みついているんだいポチ!!!」

「きしきしきしいいい」

京楽にぶん投げられて、ポチはミミックとは思えない柔軟な動きで地面でゆらゆらと体勢をとる。

「きしきしきし」

「ポチが、どっちが早く家まで帰れるか競争だって」

「くくくく。ボクには魔法がある。リターン‥‥‥って、ダンジョン内では使えないんだったあああああ」

「きしししし」

浮竹のアイテムポケットから勝手に帰還のスクロールをくわえて、ポチは先に家に帰ってしまった。

「ああ、帰還のスクロール高いのに!」

「まぁいいじゃないか。倒したアンデットたちの魔石を集めれば、帰還のスクロール3枚分くらいにはなる」

浮竹と京楽は、帰還のスクロールを使ってダンジョンから脱出すると、リターンの魔法で家まで戻ってきた。

家では、リターンのスクロールも使ったポチが先に待っていた。

「きしきし」

「俺の勝ちだ、ブラックワイバーンの肉よこせ、だってさ」

「ポチいいいいい」

「きししし」

アンデットドラゴン討伐を控えて、浮竹と京楽は休むことにした。



『さぁて、ボクの出番かな』

満月の夜がきた。

霊刀である京楽は姿に満月のせいで人の姿になり、自分の主であるSランクの浮竹と並ぶ。

『後輩の子たちの面倒を見ないとだな』

『全く、浮竹もおせっかいだね』

『いやじゃないくせに』

『まぁね。じゃあ、行くかい』

二人は、並んで歩き出す。一方の浮竹と京楽は。



「きしきしきし」

「だから、お留守番。今日だけは連れて行けないからな」

「きしい」

悲しがるポチを、浮竹が宥める。

「浮竹、時間だよ。行こう」

「ああ。京楽、行くか」


「きしきしいいいいい」

早く帰ってきてねと、ポチは涙を流しながら白いハンカチを口でふるのであった。







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ドラゴン族の子とミミック5

浮竹と京楽は、Sランクの冒険者だというもう一人の浮竹と出会った。

ちょうどミミック牧場で仕事をしていたら、浮竹宛だという魔法書をもって、Sランクの浮竹が現れた。

京楽は、Sランクの浮竹に見惚れて、浮竹に思い切り足を踏んづけられていた。

浮竹自身も、自分を鏡で見ているようなものに近いが、かなり美人で、まさに麗人というかんじで自分とは雰囲気が全然違うくて、赤くなっていた。

『じゃあ、ヤトの町にいつでもおいで』

そう言って、去ってしまった浮竹と、刀であろう精霊の京楽の存在を感じながら、浮竹はてきぱき仕事を終えて、次の日には京楽と一緒にヤトの町にきていた。

「たのもうーーー」

「たのもーーーー」

浮竹と京楽は、町で聞き込みをして、ヤトの町のSランクの浮竹と刀の京楽のところまでやってきた。

『よくきたな。まぁ、立ち話はなんだからあがってくれ』

情事の後のなのか、やや潤んだ瞳に上気した頬のSランクの浮竹を見て、京楽は赤くなった。浮竹もつられて赤くなる。

「きしきし」

浮竹は、ポチを連れてきていた。

『かわいいな。触っても大丈夫か?』

「あ、ああ」

ポチは、Sランクの浮竹に頭を撫でられて、その手を甘噛みする。

『噛まれたのだが』

「甘噛みだ。懐いている証拠だ。痛くないだろう?」

『そうだな』

『ちょっと、ボクの浮竹に‥‥‥』

刀の姿のままの京楽が声を出すが、浮竹と京楽には聞こえない。ただ、桜色の刀身が震えているように見えた。

「その霊刀、京楽なんだな」

『ああ、その通りだ。気分屋でな。なかなか人の前では姿を現さない。おい、人型になれ京楽』

『言っとくけど、京楽はボクのものだからね』

人型になったとたん、Sランクの浮竹を抱きしめる刀の精霊の京楽を、Sランクの浮竹が殴る。

『殴ることないじゃない!』

『客人の前だ!』

「その‥‥‥Sランクになるには」

『努力かな』

「やっぱりか」

浮竹は、分かってはいたがSランクまで遠いなぁと京楽と共に思う。

『でも、力があればけっこうすぐになれる。お前たちを見る限り、力もあるようだし、普通の冒険者よりずっと早くSランクになれるんじゃないか』

『浮竹の言う通りだね。禁忌の魔法をぶっぱできるようになれば簡単だよ』

「禁忌の魔法は、覚えているが何度も使えるようなものじゃないのであまり使わない」

『ちなみに、冒険者になって何年目?』

刀の精霊の京楽が、Sランクの浮竹を抱きしめながら聞いてくる。

「3年目だが」

『Eランクから始めたの?』

「そうだよ」

Sランクの浮竹と、刀の精霊の京楽は顔を見合わせた。

かけだしのEランクから始めて、もうAランク。

記録としてはかなり早い。相当強い。

『心配しなくても、Sランクにはなれるだろう』

『そうだね』

「Sランクの俺に言われると、そんな気になってきた」

「そうだね。ボクら、何年もかかると思ってたけど、そんなにかからない気がしてきたよ」

Sランクの浮竹は頷いて、甘噛みしてくるポチを撫でる。

「きしきしきし」

『ほら、紅茶』

刀の精霊の京楽が、紅茶をいれてくれた。

京楽の分の紅茶を、ポチが飲んでしまった。

「あ、ポチ!」

「きしきしきし」

ざまーみろという顔をするミミックのポチに、京楽が怒る。ポチは、京楽の頭をかじった。

「暗いよー狭いよー息苦しいよー」

「何しているんだ、京楽!恥ずかしいからやめろ!」

浮竹が、ポチから京楽を引きはがす。

「ポチが!」

「はいはい。ポチ、こんな京楽なんてかじってばかりいるとアホがうつるから、ほどほどにな?」

「きしきし?」

浮竹は、飼っているミミックと意思疎通ができる。

「紅茶を気に入ったそうだ。もう一杯、ポチの分をもらえるか」

『いいけど。まぁ、ついでだからそっちのボクの分も出すよ』

二人?分の紅茶を入れて、刀の精霊の京楽がテーブルの上に紅茶を置くと、ポチが凄まじいスピードで自分の分を飲み、京楽の分まで飲んでしまった。

「ポチいいいいい」

「きしいいいいい」

ばちばちと、京楽とポチは目線で火花を散らす。

「はいはい、ポチ、そこまでだ」

「きししし」

京楽に大きくあっかんべーをして、ポチは大人しくなった。

「ぐぬぬぬ、ポチめ。明日の予定のハンバーグ、ポチだけ豆腐ハンバーグにしてやる」

『はははははは』

『くすっ』

楽しそうに、Sランクの浮竹と刀の精霊の京楽は、京楽とポチのやりとりを見て笑っていた。

「す、すまん。俺の家のポチが失礼した」

『なんでミミックなの?』

「え?」

『牧場まで経営してるんでしょ?なんでミミックなの?』

「かわいいから。このつぶらな瞳、大きな口、全然体温のない体、軽いしもの入れれるし、何より見た目よりも懐くし愛情表現もいろいろある。なんでミミックを選んだのかというと、その、はじめて魔法書をドロップしてくれたのはミミックだったから」

『あははははは』

『はははは』

Sランクの浮竹も、刀の精霊の京楽も笑っていた。

浮竹は真っ赤になる。

『いや、おもしろいから。いいな、そういうの』

「ペットが飼いたかったんだが、俺たちは冒険者だ。何日か留守になることがある。ミミックなら、数週間何も食べなくても飲まなくても生きていけるからな」

「ほんとは、犬か猫が飼いたかったんだよね、浮竹は」

「ああ。だから、名前もポチとかタマとか」

『でも、ミミックを好きになって牧場まで経営して‥‥‥変わってるけど、素敵な生き方だと俺は思うぞ?』

「そ、そうか?」

浮竹は赤くなりながら、紅茶を飲む。

京楽も飲もうとして、ポチに飲まれたことを思いだしてカップを元に戻す。

『俺たちでよければ、Sランクになることへの助言やサポートをしよう』

「助かる。じゃあ、今日はこのへんで」

「きしきしきし」

「ポチが、紅茶おいしかったごちそうさまって」

『ふふ。ありがとう』

「浮竹、ポチは今度から連れてこないでね!」

「いいじゃないか。今度は、タマを連れてこようかな」

そんな会話をしながら、浮竹と京楽はヤトの町を後にして、王都アルカンシェルに戻っていくのであった。


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オメガバース恋白読み切り短編

その日、恋次はお忍びで城下にきていた。

恋次は、その国の第14代目の国王だった。政治は大臣に任せていて、恋次はお飾りの国王とばかにされるが、文武両道で、幼い頃から帝王学を学ばされており、自分で統治することもできたし、重要な場面ではちゃんと国王として責務を果たしていた。

ふと、目の前を奴隷商人が横切った。

「へぇ、奴隷商人か‥‥最近、後宮の寵姫にも飽きてきたしな。何か珍しい奴隷でもいないか見ていくか」

恋次は、奴隷市に顔を出した。

「さぁさぁ、今回の目玉はこの青年だぁ!見よ、この美貌!美しい歌声をしているし、何より純白を通りこした白銀の翼!絶滅しかかっている有翼族の中でも、こんな色の翼をもつ有翼人は他にいないよ!しかもオメガだ!子を産むよ!金貨千枚から!」

「金貨2000枚!」

「金貨5000枚!」

「金貨5500枚!」

「さぁさぁ、他にいないかね?」

恋次は、奴隷としてステージに立たせられた有翼人の青年に魅入っていた。

美しかった。今まで相手をしてきたどの寵姫よりも。

ふと、財布の中身を確かめる。

金貨では重いので、星金貨をもっていた。

星金貨1枚で、金貨100枚分に値する。

それを、300枚もっていた。

「星金貨200枚」

「おおーっと、ここで星金貨200枚が出た!金貨にすると2万枚だぁ!」

ざわっと、周囲が騒がしくなる。

「おっと、これは決まりか!」

目の前にいる有翼人の青年は、長い黒髪に黒い瞳、透き通るような白い肌に紅をさしたような唇をしていて、うすく化粧も施されていた。

着ている服も、よく似合っていた。

他の奴隷はボロの服のまま出されていたが、有翼人の青年は目玉商品なので少しでも高い値がつくように綺麗な身なりで出品されていた。

「決まりだ!星金貨200枚で赤い髪の青年が落札だぁ!」

奥で星金貨200枚を払い、恋次は有翼人の青年と出会い、手と首の鎖をもらった鍵で取り去って自由にさせた。

「私の名は、朽木白哉。有翼族の吟遊詩人だった。人に捕らえられ、奴隷に落ちたが、私は屈しない」

「あ‥‥‥」

「なんだ?」

「あんがすごい綺麗だから見惚れてた。白哉さんと呼んでいいっすか?」

「好きにするといい」

恋次は、白哉を連れて王宮に戻る。

「王族だったのか」

白哉が驚いていた。

「オメガってことなんで、歌姫として後宮に入れます。あんたは、今日から俺の、俺だけの寵姫だ」

「‥‥‥‥」

「あ、なんかほしいものありますか?」

「リュートを。弾いて歌いたい」

「分かりました。すぐ用意させます。とりあえず、湯あみして新しい服着てください。一緒に食事とりまよう」

白哉は、恋次の言われた通りにした。

中性的な衣服を着せられて現れた白哉は、やはり美しかった。

有翼族だが、翼は出し入れが可能だった。起きている時は出したままで、眠る時に消すらしい。

豪華な食事を与えれて、白哉は困った表情をしていた。

もっとひどい買い手に買われて、前の主人のように性的に暴行をくわえられると思っていたからだ。

「兄は‥‥私を、抱かぬのか?」

「ぶばっ」

飲みかけの紅茶を、白哉の顔に吹きかけた。

「す、すんません」

「兄はアルファなのであろう?私はオメガだ。前の主は、私をいつも犯していた」

「白哉さん。俺はそんな無理やりはしないっすから、安心してください」

「だが、寵姫にするということは、そういう気があるということであろう?」

「まぁ、そうなんすけど‥‥‥‥ぶっちゃけ、一目惚れっす。立場上、他の国の姫とかの寵姫も相手にしなきゃいけないんで、そのあたりは勘弁してください」

「国王だからな。仕方あるまい」

白哉は、恋次に呼ばれて寝る前にリュートを奏でて歌を歌った。

前の主が白哉を犯したというが、そんなことは微塵も感じさせない上品で気品のある立ち振るいと、歌声は素晴らしかった。

「もう遅いし、一緒に寝ましょう」

「するのか?」

「ただ、一緒に寝るだけです。何か欲しいものが他にあったら言ってくださいね?」

「分かった」

その日、白哉は久しぶりに深く眠れた。

次の日は慌ただしかった。

白哉が、秘所から血を大量に流したのだ。

「流産だそうです」

輸血と点滴を受けながら、憔悴した様子の白哉の頬を、恋次が撫でる。

「前の主は、避妊させてくれなかったから‥‥あの男との間にできた子であろう。流れてくれて、せいせいしている」

「じゃあ、なんでそんなに悲しそうな顔してるんすか」

「オメガに生まれたことのない兄にはわかるまい」

「そうっすけど‥‥‥‥俺は、子供がちゃんと生まれていても、俺の子として扱いましたよ?」

「戯言を‥‥‥眠いのだ。寝る。一人にしてくれ」

2週間ばかり安静にして、前の主に刻まれた番をとくために、大量の薬を投与されて、白哉は2週間ずっとベッドの上で眠っていた。

買った時から細かったが、さらに細くなってしまった腕を見て、恋次は心を痛めた。

「白哉さん‥‥‥目を、覚ましてください」

毎晩、恋次は白哉の部屋で眠った。白哉は体が弱いわけではないが、番を解消させる薬は副作用も大きいので、心配で心配で、恋次は食事をとるのも執務をするのも白哉の部屋でしていた。

「ん‥‥‥」

ゆっくりと、白哉は目を開けた。

飛び込んできたのは、看病し疲れて眠っている、この国の国王であるはずの恋次の姿だった。

「なぜ‥‥‥‥」

珍しいとはいえ、たかが一人の奴隷のために、国王である恋次がここまでしてくれるのか、理解できなかった。

「恋次‥‥‥」

眠っている恋次は、年より幼く見えて、燃え上がるような赤い髪はわりとさらさらしていた。

「白哉さん?」

「目を、覚ましたぞ」

「ああ、よかった。点滴ばっかりだったから、お腹すいてるでしょう。消化にいいもの、そうだな、スープかリゾットでも作ってきてもらいますね」

「兄は」

「ん?」

「兄は、私が珍しいから大事なのであろう?」

悲し気に目を伏せる白哉の手を引いて、恋次は白哉にキスをした。

「あんたが、好きです」

「私は、オメガだ。アルファである兄がそんな感情を抱くのは、私がオメガであるせいだ」

「そうだとしても、好きなんです。俺の番になってください」

「前の主に無理やり番にされて‥‥‥」

「今時、番は解消できるもんすよ。副作用が大きいから躊躇しましたけど、子が流れるのを見たら、もうあんたには誰も手を出してほしくないから、俺の番にするために番解消の薬を投与しました」

白哉が目を見開く。

「食事を毎日きちんととって、俺と一緒に軽く運動しましょう。少しでも元気になるために」

「運動とは、セックスか?」

「ち、違います!普通に走ったりです」

「有翼族は、翼があるせいであまり走らぬ。一人で走ってくれまいか」

「あああ、じゃあ、体操で!」

白哉は、恋次と一緒に体操したり散歩したりして、毎日きちんと3食食べていくうちに、元気になっていった。

白哉は、毎日恋次のためにリュートを奏でで歌を歌った。とても綺麗な声だった。

白哉が恋次に買われてから、1ヵ月が経とうとしていた。

恋次は、その間に後宮に囲っていた寵姫たちを故郷に戻した。

「なぜ、寵姫たちを故郷に戻す?子は、一人でも多いほうがいいのではないか?」

「あんたとの間にできた子を、男であれ女であれ、次の跡継ぎにします」

白哉は、赤くなる。

「わ、私と子など‥‥‥‥」

「今日、あんたを抱きます」

「私は‥‥その」

「俺はあんたがいい。白哉さん、あんたを愛してます。番になって、俺の子を産んでください」

白哉は、直球すぎる言葉にまた赤くなった。

「分かった」

白哉も覚悟を決める。買われた時から、前の時のように性奴隷にされると思っていたのだ。それが、他の男の手垢にまみれてしまっているというのに、恋次は番にして子が欲しいという。

子供が目的かとも思ったが、本当に白哉のことが大好きで愛してくれているんだと、接しているうちに分かった。

「では、今夜」

「ああ」

その日の夜になって、恋次は素面ではいられずに酒を少し飲んで、白哉にも飲ませた。

「んっ」

服の上から体全体を弄られて、白哉は甘い声を小さくあげる。

かりかりっと、服の上から胸の先端ばかりいじっていると、濡れた瞳で白哉が恋次を見上げる。

「‥‥‥もっと」

「はい」

衣服を脱がしていき、すでに勃っていた白哉のものを口に含んで優しく愛撫する。

男に抱かれ慣れてはいたが、こんなに優しくされたことはなくて、白哉は目を閉じた。

「ふあっ、んあ!」

精液を、恋次の口の中に吐き出してしまった。

「あ、ティシュを」

恋次は、かまわず飲み干した。

「あ‥‥‥」

「あんたの体液、なんでこんな甘いの?」

「それは、前の前の主がそうなるような薬を私に」

「そっか。つらいこと思い出させてしまってすんません」

「あ、恋次」

自分の声ではないような甘ったるい声で、白哉は恋次の名を呼ぶ。

恋次は、ゆっくりと潤滑油にまみれた指を白哉の蕾にいれる。

ゆっくり動かすと、いい場所に指があたって、白哉はビクンと反応した。

「うあっ」

「ここ、いい?」

「やあああ」

ごくりと、恋次が喉をならす。

「挿入れますよ?」

「んあっ」

熱で一気に引き裂くと、慣れているのか白哉は何も言わず、ただじっと耐えた。

「んっ‥‥‥大きい、やぁ」

「あんたの中すごい。なんて熱いんだ。溶けちまう」

「やああ」

ずっずっと音を立てて動かされる。

そのうち、ぐちゅぐちゅと濡れた音になってきた。

「ひあああああ!!!」

奥を抉られて、白哉は精液を出しながらオーガズムでもいっていた。

「奥に、出しますよ?俺の子、孕んでくださいね?」

「ああああ!」

どくんどくんと、大量の精液を注ぎこまれて、白哉は唇を舐めた。

艶めいた仕草に、恋次の熱がさらにこもる。

「あ、また大きく」

「今日は、寝かせませんからね?覚悟してください。まず、番にしますね?」

交わりながら、うなじを噛まれて、ぴりぴりと電撃が走ったような感覚を抱く。

「うあ」

「番に、なりましたね?あんたはもう、俺のもんだ」

「あっ」

「たっぷり、愛してあげますからね?」

白哉は、心を許した恋次に抱かれたことで初めてヒートを催した。

その次の日も、次の日も‥‥‥1週間くらい、抱かれて眠るを繰り返して、白哉ははじめてのヒートを無事過ごし終える。

恋次も白哉も若いので、ほぼ毎日のようにセックスをした。

「‥‥‥‥身籠った」

「マジっすか!」

医者に診せて、男児を懐妊しているいのが分かって、出産までの間、白哉を抱かなくなった恋次に、白哉は熱をもてあまし、恋次に交わるまでもしないが、ぬいてもらったり、ぬいたりしていた。

やがて臨月がきて、帝王切開で無事、王太子を産んだ。

生まれてきた子の背中には、小さいが翼があった。

白哉は有翼人だ。白哉の願いで、子の小さなあるだけの翼は切除された。

「私は、子に亜人の血を引いているからと差別を受けてほしくない」

「俺は反対だったんすけど、あんたにこれだけ懇願されるとなぁ」

白哉は、またヒートを起こしたが、それから2年ほどは避妊してないのに子はできなかった。

3年目に、今度は女児を懐妊し、無事生まれた。

「愛してます、白哉さん」

「んっ、恋次‥‥‥‥‥」

また懐妊して、口づけだけを交わしあう。

セックスは、子が流れる危険があるからとストップされていた。

「はぁ‥‥‥早く、兄に抱かれたい」

「俺も、白哉さんを抱きたい」

その日の夜は、子が胎にいるが、セックスしてしまった。

子が流れなかったので、たまに恋次は白哉を抱いた。

3人目の子を産んだ後は、避妊するようになった。

「白哉さん‥‥綺麗だ」

「あ、恋次」

求められて、白哉は自分から足を開く。

ヒート期間が終わると、白哉はすくすく育っていく恋次との間の子と恋次のために、リュートを奏でて美しい歌声を披露する。



「隣国から、王太子の婚約者として10歳の姫君の名があがってるんすけど」

「まだ王太子は5歳だぞ。早すぎる」

「そうなんすけどね。姫のほうも、もらいたいって国が多くて」

白哉と恋次は、子が亜人との間の子だからと忌み嫌われることを危惧していたが、有翼人はもう絶滅種に近く、優れた魔術を使えるというその血筋を欲した。

白哉は魔力は高かったが、魔術は使えなかった。

子供たちは、幼い頃から魔術が使える片鱗を見せていた。

この世界では、魔術を使える者は地位が高い場合が多く、珍しかった。

平民でも、魔術が使える子は名のある貴族の養子としてもらわれていく。

そんな子供たちに囲まれ、王国の正妃となった白哉は、恋次と長く長く幸せに生きていくのであった。





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ドラゴン族の子とミミック4

冒険者ギルドに行くと、山じいに呼び出された。山じいは、ギルドマスターだ。

「お主たち、Sランクの春水と十四郎を知っておるか?」

「ああ。俺たちとそっくりなんだろう?」

浮竹が、少し興味をもったような顔をする。

「そうじゃ。名前もお主たちと同じじゃ。あまり冒険者として活躍はしておらんが、そのうち出会うこともあるじゃろう。春水のほうは刀の精霊なので、人の姿は滅多に取らぬ。まぁ、会うとしたら十四郎とかの」

「そうだな。Sランク冒険者になりたいから、一度会ってみたいな」

「そっちの浮竹も美人なんだろうねぇ」

京楽が、そんなことを言うものだから、浮竹は京楽の足を踏んづけた。

「あいたたた。ごめんってば」

「浮気者」

「美人だろうなって思っただけじゃない」

「ふん」

「ああ、ごめんってばぁ」

京楽は、浮竹の機嫌を取るのに必死になる。

「さて、お主たちを呼んだのはSランク冒険者のパーティーに交じって、Sランクダンジョンに挑んでほしいからじゃ」

「断る」

浮竹の言葉に、京楽が驚く。

「浮竹?」

「Aランクの俺たちが行くとただの足手まといにしかならない。Sランクダンジョンには、Sランクになってからチャレンジしたい。だから、断る」

「うーむそうか。Sランクダンジョンは確かにAランクはきついからのう。分かった、今回はなしということで通しておく」

「京楽のアホ」

「いきなりなんなの!?」

「こんな幸運、京楽の幸運で引き寄せたんだろう。今日はラッキーディだからな」

京楽はジョブに遊び人ももっていた。

今日はとてもついている日で、朝スロットマシーンで金貨300枚を稼いできたところだった。

「では、代わりに、同じAランクの黒崎一護と朽木ルキアという冒険者と一緒にAランクダンジョンに挑んではくれまいか?なりたてのAランクなのじゃ」

山じいの言葉に、浮竹はどうしようかと思ったが、京楽はラッキーディだし、まぁいいかとOKを出す。

「分かった。その子たちと一緒にAランクダンジョンに挑もう」

「そうかそうか。そう言うだろうと思ってすでに呼んでおいたのじゃ。こっちに来るのじゃ、黒崎一護、朽木ルキア」

「ああ」

「はい」

現れたのは、オレンジの髪の少年と、黒髪に珍しい紫色の瞳の少女だった。

「人間じゃないね。精霊族かい?」

京楽は、一目で一護とルキアの種族を言い当てた。精霊族はエルフやドワーフと同じ亜人種で、精霊と会話ができて魔法が得意だった。

「俺は黒崎一護。17歳です。よろしくお願いします」

「私は朽木ルキア。16歳です。よろしくお願いします」

「冒険者なのに上品だな。さすが精霊族」

浮竹をルキアはじっと見ていた。

「浮竹殿と京楽殿は、竜人族なんですよね?」

「ああ、そうだが」

「でも、たった3年でAランクになられたとか」

「ルキア、それ言ったら俺たちだって4年でAランクまでこれたじゃねーか」

一護の言葉に、ルキアが顔を赤くする。

一護が、ルキアを抱き寄せたからだ。

「ふむ。人生のパートナーでもあるのか」

「そ、そんなんじゃないっす!」

一護は顔を真っ赤にして、ルキアから離れる。

「若いっていいねぇ」

京楽は、おっさんくさくなっていた。

「じゃあ、ここから一番近いムムルのダンジョンに行こう。それでいいか、一護君、ルキアちゃん」

「あ、はい」

「はい」



こうして、4人でムムルのAランクダンジョンに挑むことになった。

「ミミックだあああああ」

「あの、京楽さん‥‥‥」

「京楽殿‥‥‥」

「ああ、浮竹は三ミック牧場を作ったり野良ミミックを拾って家で飼うような三ミックマニアだから気にしないで」

「でも、あれかじられてますよ」

「甘噛みだから」

確かに甘噛みで、浮竹は三ミックを撫でまくり、ミミックは宝物をドロップして去って行ってしまった。

「ああ、ミミックがあああ」

「浮竹、一護君とルキアちゃんの前だよ?」

「え、あ、いやぁ、ミミックは強敵だったなぁ」

取り繕ったとろこで後の祭りである。

「何ドロップしたんすか?」

「金塊だね」

「うわぁ、すげぇ。Bランクダンジョンとは大違いだ」

「あ、あっちにいるのもミミックだぁ」

「京楽さん、浮竹さんって‥‥‥」

「あはははは。まあ、ここまでの道のりで見てきたように、冒険者としての実力は本物だよ?」

浮竹は、この19階層にくるまでに魔法をぶっぱしたり剣で出てくるモンスターを京楽と一緒に倒してきた。

一護とルキアへの援護も忘れない。

「浮竹殿、ミミックの小さいがいます!」

「おおおお、自然下で生まれたミミックの子供か!」

浮竹は目を輝かせて、ルキアに噛みつこうとしていた小さなミミックに、クッキーを差し出す。

「ぴぃぴぃぴい」

子三ミックは、嬉しそうにクッキーを食べて、浮竹から風呂に入った後でも感じれる、三ミックのかすかな匂いに反応して、浮竹の頬をペロリと舐めて、ミスリルのインゴットを落として去っていった。

「ああ、このダンジョンはいいな。階層ごとに水がわき出していて、ミミックが食べれる緑もある。自然下で繁殖できるダンジョンはいいダンジョンだ」

「京楽、今日は一護君とルキアちゃんの援護できたのを忘れずにね」

「ああ、もちろんだ‥‥‥ああああ、ミミックが水飲んでるうううう」

ムムルのダンジョンは、ミミックが多かった。

「浮竹殿、こっちにも三ミックがいます!」

「ルキアちゃん、危ない!」

京楽が、その三ミックを見てルキアと突き飛ばすと、剣で噛みつかれるのを防いだ。

「ぎいいいい」

「京楽殿!?」

「京楽さん?」

「人食いミミックだよ!浮竹!」

「ああ!ファイアランス!」

浮竹がミミックなのに躊躇もなく殺したことで、ただの三ミックではないと分かって、一護とルキアは顔を蒼くした。

「人食いミミック‥‥‥‥はじめて会った」

「そうだね。人食いミミックはAランクダンジョン以降から出てくるから。宝物もドロップしないし、肉食で狂暴で強いから、出会ったらできる限り逃げるようにね?」

京楽の言葉に、一護とルキアが浮竹がショックを受けているんじゃないかと、浮竹のほうを見るが、浮竹はすでに違うミミックとじゃれあっていた。

「人食いミミックはかわいくない。それに比べて、普通のミミックはこんなにかわいい」

浮竹は、ミミックを頭の上にのせてバランスをとって遊んでいた。

「浮竹、今日はボクだけじゃないんだから‥‥‥‥」

「はっ!」

すでに、ミミックを見ると一護とルキアの存在を忘れてしまうので、言い訳をしようとするが、一護とルキアが生暖かい目で見つめてくるものだから、浮竹はもう存在を忘れてミミックとのスキンシップを優先する。

「はぁ‥‥ボクが今日ラッキーディだから、宝物をもったミミックがたくさんでてくるね」

「京楽殿は、遊び人のジョブももっているんですか?」

ルキアの問いに、京楽が答える。

「魔法使い、剣士、遊び人、僧侶、賢者のスキルをもっているよ?」

「すごい!」

「ちなみに、浮竹は魔法使い、剣士、僧侶、賢者、それに発動しないけどモンスターテイマーのジョブももっているから、そのせいで三ミックから好かれるんだろうね」

「へぇ」

一護が、納得したように頷く。

30階層まで降りてきて、ラスボスのフロアだった。

出てきたのは、ブラックワイバーン。

その肉がうまいので、肉が高級食材として重宝されるが、ラスボスだけあってそれなりに強いモンスターだった。

浮竹と京楽は、一護とルキアのサポートに回る。

「ウィンドカッター!」

ルキアが風の刃でブラックワイバーンの翼を切り裂く。

一護は、精霊族であるが剣を得意とするようで、大きな黒い大剣でブラックワイバーンに切りかかる。

「ファイアエンチャント!」

浮竹が、一護の大剣に炎をエンチャントする。

「ルキアちゃん、もう1回ウィンドカッターでブラックワイバーンの翼を!」

「はい、京楽殿!ウィンドカッター!!!」

翼を切り裂かれて、ブラックワイバーンが地面に落ちる。

その首を、炎の大剣で一護がはねた。

「やった、勝った!」

「浮竹殿、私と一護に、身体強化魔法をいくつも重ねがけしましたね?」

「ああ、まぁ最初のラスボスだからな。怪我もしてほしくなかったし」

「助かりました。礼をいいます、浮竹殿、それに京楽殿も」

「財宝の間が開くよ~~」

京楽が、ラッキーディなのできっとたくさんの財宝が出てくるものだと思っていた。

財宝の間にいたのは、ミミックだらけの集団だった。

「ミミック天国だああああ!!!」

すでに浮竹はねじが飛んでいた。

三ミックに甘噛みされ、ミミックをもふり、撫でまくった。

財宝の間のミミックたちは、毛皮が生えているハイミミックだった。

「きしきしきしいい」

不思議な笑い声をあげて、次々に宝物をドロップしていく。

その量、普通の財宝の間にあるような金銀財宝ではなく、魔力のこもった武具や貴重な魔法書、中でも神の秘薬と呼ばれるエリクサーもあった。

エリクサーはSランクダンジョンでしかドロップされないはずだった。

「こりゃあ、大量だねぇ。4人で分けても、星金貨何十枚にもなるねぇ。さすがボクのラッキーディ」

「ああ‥‥麗しいミミック。ハイミミックをもふれるなんて。俺、ここに住もうかな」

「はいはい、アホ言ってないで財宝をアイテムポケットに入れて撤収するよ」

「京楽、明日またこのダンジョンにこよう」

ハイミミックと戯れられたのが非常に気に入ったようだった。

「はいはい。分かったよ。とりあえず、今日は一護君とルキアちゃんがいるからね?一度、王都の冒険者ギルドに戻るよ?」

ダンジョンから出る魔法陣で外に出て、リターンの魔法で王都に戻る。

「ギルドマスター、ムムルのAランクダンジョンを踏破しました!」

「おお、そうかそうか。それにしても、1日で踏破してしまうとは」

「浮竹殿とミミックの仲がよかったです!」

「そ、そうか」

「なぁ、ギルドマスター、浮竹さんほんとに大丈夫か?ミミックになると目の色かえちまうが」

「まぁ、十四郎はミミックを構っていても、後ろから襲われても対処できるからの。Aランク冒険者としてそれなりにダンジョンを踏破しておるしな」

「いやぁ、早速奥の部屋で素材になるモンスター出すから解体よろしく。他の財宝も奥に一度出すから、売る売らないを区別して4等分しよう」

一護とルキアが顔を輝かせる。

かけだしのAランクだったが、はじめて挑んだAランクダンジョンを踏破できた上に、財宝が多かった。

結局、一人星金貨30枚になった。

金貨3千枚分だ。

「ブラックワイバーンの肉は、もらっていいか?牧場のミミックたちにも食べさせてやりたい」

「はい!浮竹殿と京楽殿のお陰でダンジョンクリアできましたので、どうぞ持って行ってください」

一護とルキアが食べる分だけ残して、残りの肉は浮竹が引き取った。

家に帰ると、浮竹はブラックワイバーンの肉をバーベキューで焼くことにした。

「きしきしいいい」

「きしいいい」

牧場に、ポチとタマとタロウとジロウ、それにこの前うまれた子ミミックも混ぜて、バーベキューでブラックワイバーンの肉を焼いて、牧場のミミックたちにも食べさせる。

「きしいい!!!」

おいしいおいしい。

ミミックたちは、まだ食べていないミミックは涎を垂らして、食べ終えたミミックはおかわりがほしいと浮竹に甘える。

京楽は、浮竹と一緒に肉を焼いてミミックにあげていく。いつもは噛みつかれるのが、今日はご褒美にあげているので京楽もミミックに甘噛みされて、ミミックがかわいく思えた。


ちなみに、ラッキーディの反動の日のアンラッキーディが1週間後にきて、京楽は股間を牧場のミミックにかじられて悶絶するのであった。




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残り火

「んっ」

褥の上で、白哉が乱れる。

「隊長」

「んあああっ」

恋次に後ろから突き上げられて、白哉は少し長い黒髪を揺らす。

「あ、恋次、顔がみたい」

「隊長、好きです」

一度抜いて、正面から突き上げた。

「ふ、んんん」

舌が絡み合うキスを繰り返して、白哉がびくんと背をしならせる。

白哉は恋次の肩に噛みついた。

「隊長、すっげぇいい」

淫靡な白哉は美しく、白哉は恋次の背に手をまわしてその背中をひっかいた。

「ああああ」

白濁した液体を出しながら、恋次の精液を胎の奥で受け止める。

「んあああっ」

恋次のものはすぐにまた硬くなって、白哉を攻め立てる。

「んあっ、あ、あ」

恋次の体液を再度胎の奥に受け止めて、白哉は意識を失った。





「ん‥‥‥」

白哉が気づくと、後処理はちゃんとすませられていて、新しい着物を着ていた。

「恋次」

「はい、隊長」

隣でうとうと眠っていた恋次が、目を覚ます。

「足りないのだ」

「へ?」

「まだ、足りない。私をもう一度抱け」

「え、でも俺のほうがもう無理っす‥‥‥‥」

体を燻る残り火に、白哉は悩む。

「風呂に入ってくる」

「あ、俺も一緒に入ります」

結局、風呂場で恋次にぬいてもらった。

白哉の中にある残り火。

まだ、完全に消えない。どうすればこの火が消えるのか、白哉には分からない。

恋次の傍にいると、いつもいつの間にか残り火が灯る。

「恋次、愛している」

愛を囁けば、恋次は見えない犬の尻尾を振って白哉を抱きしめる。

恋次の匂いが好きだった。

恋次の鍛え上げられた体が好きだった。

恋次の入れられたタトゥーが好きだった。

「隊長、俺も愛しています」

「ふあっ」

何度も舌を絡み合わせて口づけをされると、白哉の中の残り火が大きくなる。

いつからだろうか。

こんな浅ましい欲を抱くようになったのは。

その夜はもう寝て、次の日執務室で恋次と会った。

「おはようございます隊長」

「おはよう」

白哉は、瞳を潤ませながら恋次を見た。

「残り火が」

「へ?」

「残り火が、兄といると灯るのだ。体の奥が疼き出す」

「隊長、誘ってるんすか?」

「そんなつもりはない。ただ、心の中にも体にも残り火が灯っていて苦しい」

「俺のことを、愛しているからですよ」

「そうなのか?」

恋次でもはっきりとは言えなかったが、肉欲をいつも抱くような白哉ではない。

欲がない時でも残り火があるというのは、そんな感情が白哉の中に灯っている証だろう。

「隊長は俺と違って欲をあんま出さないじゃないっすか。でも、残り火があるってことは俺のことを愛していて、欲がなくて俺の傍にいると残り火が消えないのは、そんな愛とかいう感情があるからじゃないっすか?」

「そうなのか。そう言われると、そんな気がしてきた」

「隊長、今も残り火は灯ってますか?」

「ずっと。兄がいない時は残り火はない」

「やっぱり、その残り火ってきっと愛なんすよ」

「そうか。そうなのか」

白哉の中で消えない残り火は、恋次がいる時だけ灯る。

「ならば、無理に消そうとしなくてもよいか」

「隊長、かわいいなぁ」

「恋次、苦しい」

大柄な体の恋次に強く抱きしめられて、白哉は呼吸をするのを忘れる。

「恋次」

「はい」

白哉は、ぎゅうぎゅうと抱きしてめてくる恋次に、深呼吸してから頭を拳で殴った。

「今は仕事中だ」

「あ、はい。すんません」

しゅんと項垂れる恋次は、まるで大きな犬だ。

白哉の中にある残り火が、少し大きくなる。

「ふ‥‥‥‥」

こんな感情を抱き続けるのもよいかもしれぬと、白哉は思うのだった。

残り火は、恋次がいる時だけ灯って、大きくなりすぎると欲となる。

それでもいいかと、思うのだった。


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ブレスレット

9年前、恋次は白哉になけなしの金で買ったプラチナのブレスレットをあげた。

お揃いだった。

公式の場ではつけてくれないが、二人きりの時とかたまにつけてくれて、恋次はそれだけで嬉しかった。

白哉と恋仲になってもう10年にはなるだろうか。

尸魂界も、復興してから大分変わり、家電製品が当たり前にあるようになっていた。

一護はルキアと結婚して、死神となって朽木家に婿入りしていた。

ある日、白哉が悲しそうな顔で執務室にやってきた。

「どうしたんすか、隊長」

「なくしてしまったのだ。兄からもらったブレスレットを」

「え」

「大切なものだったのは分かっている。私の落ち度だ」

「いえいえ、また新しい同じもの贈るんで」

「あのブレスレットでなければ、意味がないのだ」

白哉は、顔色も悪い。ずっと探して、ろくに眠っていないのだろう。

「隊長」

「なんだ」

「俺は、別にブレスレットにこだわったりしません」

「だが、あれは兄からの初めてのプレゼントで‥‥‥‥大切に、していたのだ」

本当に大切にしてくれていたのだろう。

そうでなければ、贈ってから9年も経つのに身に着けてくれたりしない。

「俺も一緒に探しますから」

「本当か?怒ってはいまいか?」

恋次は苦笑する。

「俺は、いつでも隊長にメロメロなんすよ。贈り物をなくされたくらいで、怒ったりしません」

「だが‥‥‥」

「だから、一緒に探しましょう?それでも見つからなければ、同じもの2つ買うんで、また隊長がもらってください」

「分かった」

白哉と恋次は、朽木家を探してみたが、結局見つからなかった。

1週間ほど経ったある日、落とし物として届け出を出してみたのだが、偶然にも拾われて届けられていた。

「夜の散歩道の時に着けていたのだ。夜桜が綺麗なのでしばしの間、その下で桜を見ていた。その時、切れて落としてしまったのであろう」

川辺の桜の木の下で見つかったらしい。

「ああ、修理すぐに頼みますんで。俺の手から、再び受け取ってください」

「分かった」

3日ほどして、恋次は白哉を夜桜の下に呼び出した。

ブレスレットが見つかった場所だった。

「これ、隊長に再び贈ります。ずっと、俺と歩んでください」

「分かった」

白哉は直ったブレスレットを右手首にはめて、恋次を抱き寄せて、自分からキスをした。

「隊長‥‥‥」

「んっ」

深く口づけると、白哉は目を閉じる。

「んあっ」

何度も口づけしあっていると、白哉はやや甘い声をあげる。

「やっべ‥‥‥‥したくなってきた」

「宿を、とろう。近くに、宿がある」

白哉から望んでくることは稀で、恋次はその誘いに乗った。



「目覚めたか?」

「あ、はい。すんません、昨日俺ばっかりいってしまって‥‥‥」

「よい。私から誘ったのだ」

「隊長、ブレスレット、もうなくさないでくださいね」

「ああ」

白哉は柔らかく笑った。

白哉が恋次の前で素直に表情を出し始めたのは、付き合いはじめて3、4年経った頃だ。

今は、もう周囲に付き合っていることを知られても、動揺はしない。一応関係は隠していたが、よく恋次から白哉と同じ匂いがしたり、反対に白哉が恋次と同じ匂いをさせていたりで、隠しても無駄な場面が多かった。

「隊長、好きです」

「私もだ、恋次」

唇を重ねると、昨日のことを思い出して、乱れた白哉があまりにも淫靡で、恋次は赤くなる。

「どうしたのだ」

「いや、昨日の隊長エッチだったなぁと思って」

「く、くだらぬことを言うでない。昨日のことなど知らぬ」

白哉まで赤くなって、そっぽを向く。

「仕事しに行きましょうか。あ、朝食どっかで食っていきません?」

「まだ時間に余裕があるな。一度、朽木家に戻る。恋次の分まで朝食は用意させる」

「はい。じゃあ、隊長の家に向かいますか」

宿を出ると、まだ朝早いので誰も通っていなかった。

「あの、ちょっとだけ手を繋いでみていいっすか」

「仕方のない」

昔なら、決して許してくれなかっただろが、10年も恋仲でいると、甘えても叶えてもらえることができてくる。

白哉は右手で恋次の左手をとる。

「俺の手、ごつごつしてるっしょ。隊長は刀を握るのにすべすべだ」

「ふ‥‥‥‥」

桜が散っていく並木の下、二人並んで手を繋ぎながら歩く。

恋次が手に少しだけ力をこめると、白哉も手を握りなおしてくれた。

ああ、俺、幸せすぎる。

今、死んでもいいかも。

「何をにやにやしておるのだ」

「いえ、なんでもないっす」

「手を繋ぐのはここまでだ。屋敷が近くなってきた」

「はい」

恋次は、結局白哉の家で朝食を食べて、朝風呂をもらって白哉と一緒に執務室のある6番隊舎までいくのであった。



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