堕天使と天使外伝
天使の浮竹と堕天使の京楽は、ヴァンパイアの京楽とフェンリルの浮竹と一緒に海に行った。
泳いで遊ぶ中、ヴァンパイアの京楽は暑さに弱いらしく、ビーチパラソルの下で、暑い日光を遮って、飲み物を飲んでなんとか涼もうとしていた。
『みんなで競争だ!お城を作ろう!』
『ボクはパス。この暑さの下だと倒れそう』
「じゃあ、僕もパース」
堕天使の京楽がそういうと、フェンリルの浮竹が唸り声をあげた。
『参加しないと尻を噛むぞ』
「なんで僕だけそんな扱い!?」
「まぁまぁ、俺も参加するから」
天使の浮竹が、場を和ませようとする。
『じゃあ、競争だ。誰が一番立派な城を作るか!勝った者は、一番下だった者の言うことを1つ聞くこと!』
「なんだって!それは勝たないと!君の僕への態度を改めてもらうよ!」
『そう簡単にいくと思うなよ』
3人は、それぞれ制限時間を2時間として砂の城を作り始めた。
フェンリルの浮竹は、何処で覚えてきたのか、西洋の本当にありそうな立派な砂の城を作った。
天使の浮竹もそこそこ城に見れる形にものを作った。
しかし、堕天使の京楽が作った城は、城というよりただの砂の山だった。
『審査するのはヴァンパイアの京楽だ!』
『はい。何も言わなくても優勝はフェンリルの浮竹だね』
「それ、私情入ってない?」
『はいってないよ。見事なものでしょ、このお城。精緻過ぎて真似できる人いなさそう』
「確かに、すごいな。俺もそれなりのものを作ったつもりだが、なんだか恥ずかしい」
「ふん、僕の城はダイナミックだよ!」
みんな、ただの砂の山を城という堕天使の京楽をアホだと思った。
『じゃあ、ドベは堕天使の京楽だな。黒猫の姿で水かきして泳げ!』
「何その命令!なんで黒猫姿になって泳がないといけないの!海にさらわれちゃう!」
『なんなら、そのまま溺れ死んでもいいんだぞ』
堕天使の京楽は、溜息をついて黒猫姿になった。
海水パンツが地面に落ちる。
「僕の猫かきを甘く見ないでもらおうか!」
マッハで海に向かって駆け出す。
そして、波に乗って泳ぎ始めた。
「ふふん、人魚の子とデートした頃を思い出すなぁ」
『天使の俺を傷つける言葉だ!サンダーボルト!』
「ぎにゃあああああああああ!!でも僕はこれくらいで、猫かきをやめて溺れるわけにはいかない!」
半ば意味不明の使命感に燃えて、堕天使の京楽は波の間をひたすら猫かきして泳いだ。
「ああ、いい運動になった」
黒猫姿の京楽は、浜辺に戻るとぷるぷると体を震わせて水分を飛ばして、大好きな天使の浮竹の腕の中。
『いいなぁ。なぁ、京楽、お前もあれ俺にやってくれ』
『ええ!キミの場合、サイズがでかいから無理だよ。逆ならできるかもしれないけど』
『ん、逆ってことは、フェンリル姿の俺がお前を抱き上げるのか?』
『抱き上げることはできないだろうから、乗せてもらうかくわえられるかだね』
『むー』
「フェンリルの俺、そんな残念がるな。京楽は黒猫姿だから抱き上げられるだけで、まぁ見かけは綺麗な黒猫だけど中身は色魔の堕天使だからな」
『臭いしな』
フェンリルの浮竹の言葉に、天使の浮竹が黒猫姿の京楽を落っことす。
「臭くない!余計なこと言わないでよ!」
「ああ、言われたらなんか潮の香りが・・・帰ったら、猫用シャンプーで洗ってやるか」
『ずるいぞ、堕天使の京楽!天使の俺に洗ってもらうなんて!俺も洗ってほしい!』
「それは、まぁまた今度な」
天使の浮竹は笑って、フェンリルの浮竹の頭を撫でた。
フェンリルの浮竹は、尻尾をばっさばっさと振って、喜んでいた。
『んー、かわいいねぇ』
ヴァンパイアの京楽が、悦に浸る中、同じように黒猫の京楽も。
「かわいいなぁ。フェンリルの浮竹も黙っていればかわいい」
『あげないよ』
「いらない!絶対ほしくない!」
『だそうだよ、浮竹』
『俺もお前なんていらない!そこらの石より価値がない!』
「酷い!僕は天使の浮竹さえいればいいから、君なんていらない!」
フェンリルの浮竹は、狼の耳をぺたんとさせた。
『浮竹を傷つけないでね。サンダーボルト』
「ぎにゃああああああああああ」
ヴァンパイアの京楽は、堕天使の京楽に大分威力を落としたサンダーボルトの魔法をかけた。
「仕方ないやつだなぁ。ヒーリング」
天使の浮竹が、まだ黒猫姿の京楽(服がないので)に、回復魔法をかけてやった。
「浮竹は優しいねぇ。ああ、やっぱり僕には天使の君が一番大好きだよ」
黒猫姿で、ぴょんと天使の浮竹の肩に乗り、顔をこすりつける。
『ラブシーンなのかな、これ』
『さぁ。まぁどうでもいいから、帰ろうか』
『天使の俺、帰るぞ!そんなドブネズミみたいな黒猫は捨てていけ!』
「いや、これでも一応、伴侶だしな。一緒に帰るさ」
海での一日は、それなりに楽しい日であった。
泳いで遊ぶ中、ヴァンパイアの京楽は暑さに弱いらしく、ビーチパラソルの下で、暑い日光を遮って、飲み物を飲んでなんとか涼もうとしていた。
『みんなで競争だ!お城を作ろう!』
『ボクはパス。この暑さの下だと倒れそう』
「じゃあ、僕もパース」
堕天使の京楽がそういうと、フェンリルの浮竹が唸り声をあげた。
『参加しないと尻を噛むぞ』
「なんで僕だけそんな扱い!?」
「まぁまぁ、俺も参加するから」
天使の浮竹が、場を和ませようとする。
『じゃあ、競争だ。誰が一番立派な城を作るか!勝った者は、一番下だった者の言うことを1つ聞くこと!』
「なんだって!それは勝たないと!君の僕への態度を改めてもらうよ!」
『そう簡単にいくと思うなよ』
3人は、それぞれ制限時間を2時間として砂の城を作り始めた。
フェンリルの浮竹は、何処で覚えてきたのか、西洋の本当にありそうな立派な砂の城を作った。
天使の浮竹もそこそこ城に見れる形にものを作った。
しかし、堕天使の京楽が作った城は、城というよりただの砂の山だった。
『審査するのはヴァンパイアの京楽だ!』
『はい。何も言わなくても優勝はフェンリルの浮竹だね』
「それ、私情入ってない?」
『はいってないよ。見事なものでしょ、このお城。精緻過ぎて真似できる人いなさそう』
「確かに、すごいな。俺もそれなりのものを作ったつもりだが、なんだか恥ずかしい」
「ふん、僕の城はダイナミックだよ!」
みんな、ただの砂の山を城という堕天使の京楽をアホだと思った。
『じゃあ、ドベは堕天使の京楽だな。黒猫の姿で水かきして泳げ!』
「何その命令!なんで黒猫姿になって泳がないといけないの!海にさらわれちゃう!」
『なんなら、そのまま溺れ死んでもいいんだぞ』
堕天使の京楽は、溜息をついて黒猫姿になった。
海水パンツが地面に落ちる。
「僕の猫かきを甘く見ないでもらおうか!」
マッハで海に向かって駆け出す。
そして、波に乗って泳ぎ始めた。
「ふふん、人魚の子とデートした頃を思い出すなぁ」
『天使の俺を傷つける言葉だ!サンダーボルト!』
「ぎにゃあああああああああ!!でも僕はこれくらいで、猫かきをやめて溺れるわけにはいかない!」
半ば意味不明の使命感に燃えて、堕天使の京楽は波の間をひたすら猫かきして泳いだ。
「ああ、いい運動になった」
黒猫姿の京楽は、浜辺に戻るとぷるぷると体を震わせて水分を飛ばして、大好きな天使の浮竹の腕の中。
『いいなぁ。なぁ、京楽、お前もあれ俺にやってくれ』
『ええ!キミの場合、サイズがでかいから無理だよ。逆ならできるかもしれないけど』
『ん、逆ってことは、フェンリル姿の俺がお前を抱き上げるのか?』
『抱き上げることはできないだろうから、乗せてもらうかくわえられるかだね』
『むー』
「フェンリルの俺、そんな残念がるな。京楽は黒猫姿だから抱き上げられるだけで、まぁ見かけは綺麗な黒猫だけど中身は色魔の堕天使だからな」
『臭いしな』
フェンリルの浮竹の言葉に、天使の浮竹が黒猫姿の京楽を落っことす。
「臭くない!余計なこと言わないでよ!」
「ああ、言われたらなんか潮の香りが・・・帰ったら、猫用シャンプーで洗ってやるか」
『ずるいぞ、堕天使の京楽!天使の俺に洗ってもらうなんて!俺も洗ってほしい!』
「それは、まぁまた今度な」
天使の浮竹は笑って、フェンリルの浮竹の頭を撫でた。
フェンリルの浮竹は、尻尾をばっさばっさと振って、喜んでいた。
『んー、かわいいねぇ』
ヴァンパイアの京楽が、悦に浸る中、同じように黒猫の京楽も。
「かわいいなぁ。フェンリルの浮竹も黙っていればかわいい」
『あげないよ』
「いらない!絶対ほしくない!」
『だそうだよ、浮竹』
『俺もお前なんていらない!そこらの石より価値がない!』
「酷い!僕は天使の浮竹さえいればいいから、君なんていらない!」
フェンリルの浮竹は、狼の耳をぺたんとさせた。
『浮竹を傷つけないでね。サンダーボルト』
「ぎにゃああああああああああ」
ヴァンパイアの京楽は、堕天使の京楽に大分威力を落としたサンダーボルトの魔法をかけた。
「仕方ないやつだなぁ。ヒーリング」
天使の浮竹が、まだ黒猫姿の京楽(服がないので)に、回復魔法をかけてやった。
「浮竹は優しいねぇ。ああ、やっぱり僕には天使の君が一番大好きだよ」
黒猫姿で、ぴょんと天使の浮竹の肩に乗り、顔をこすりつける。
『ラブシーンなのかな、これ』
『さぁ。まぁどうでもいいから、帰ろうか』
『天使の俺、帰るぞ!そんなドブネズミみたいな黒猫は捨てていけ!』
「いや、これでも一応、伴侶だしな。一緒に帰るさ」
海での一日は、それなりに楽しい日であった。
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堕天使と天使19
フェンリルの浮竹に連れてこられて、服屋で天使の浮竹は背中があいている服を買われた。
その服にはマントがついていて、背中が隠れるようになっているので、外で着ても大丈夫だった。
『うん、やっぱりそれ似合ってるな』
フェンリルの浮竹は、天使の浮竹の買ってあげた服を着てくれてきたことに嬉しがっていた。
「はじめは背中がスースーして落ち着かなかったが、マントをすれば大丈夫だから、着ていても大丈夫になった」
『翼を出す時、服は破れないのか?』
フェンリルの浮竹の素朴な疑問に、天使の浮竹が答える。
「ああ。翼はアストラル体でできていて、霊的物質なんだ。衣服を着ていても、翼は透けて外に出る」
『じゃあ、その服じゃなくても良かったんだな』
がっかりするフェンリルの浮竹に、ヴァンパイアの京楽が助け舟を出す。
『彼に似合っているから、買ってあげたんでしょ。ほら、浮竹そんなしょげないの』
『むー。でも、似合ってるぞその服、天使の俺!』
「うん、ありがとう」
天使の浮竹は、真っ赤になった。
「ああ、僕の浮竹は何を着ても似合うからいいね」
『お前はボロ布でも着てろ』
「酷い!」
『べーっだっ』
フェンリルの浮竹は、堕天使の京楽に少々心を許していたが、元に戻っていた。
「フェンリルの俺、京楽とは仲良くしてやってくれ」
『お前がそう言うなら、少しだけ仲良くしてもいい。1ミリくらい』
「何それ!1ミリって仲の良い単位なの!?」
堕天使の京楽がわめく。
『まぁまぁ、ボクの浮竹はシャイだから』
「全然シャイどころかいじめてくるんですけど!」
フェンリルの浮竹は、狼の姿になって、黒猫姿になって逃げる京楽を追い駆けだした。
「浮竹~助けて~~~」
「京楽、ほどほどに遊んでもらえ」
「浮竹の白状者おおおお」
堕天使の京楽は、フェンリルの姿の浮竹に転がされて遊ばれるのであった。
-----------------------------------------------------
「でも、ほんとにその服似合ってるね」
京楽の言葉に、浮竹は赤くなった。
「マントなんてつけなくてもいいよ。君の綺麗な背中が見えていいね」
「翼で隠してやる」
浮竹は、セラフの光り輝く6枚の翼を出した。
「あ、反則!」
京楽も、漆黒の6枚の翼を出した。
「翼出してないと、自分が堕天使だってこと忘れそうだよ」
「お前の脳みそは軽いからな」
「酷い!ちょっと、フェンリルの君みたいなこと言わないでよ」
「いや、そんなつもりじゃなかったんだ。すまない」
しょげる浮竹の頭を、京楽が撫でた。
「依頼がきているな・・・・アークデーモン退治。悪魔か」
「ああ、思い出すなぁ。アークデーモンの女の子とちょめちょめした・・・」
「カラミティファイア」
「のぎゃあああああ」
自業自得な京楽を焦がして引きずって、依頼された場所まで車で移動した。
「いるいる・・・・アークデーモンが5体か」
「2体引き受けるから、残りの3体はお願いね」
「ああ、分かった」
大きな音を炸裂させて、建物の外に出てきたアークデーモンを、まずサンシャインの光で目を焼いて視界が効かないようにして、魔法で片付けていく。
「カラミティサンダー!」
「ファイナルフレア!」
京楽も浮竹も容赦はしなかった。
依頼だと、小さな子供を生贄として捧げており、まだ生きている子供がいるなら保護してほしいとのことだった。
魔法で灰をなり、魔石だけを残して消えていったアークデーモンのいた建物の中に入る。
5歳くらいの男の子と、3歳くらいの女の子がいた。
他にもいたが、皆生贄として捧げられて、息をしていなかった。
「もう大丈夫だ。俺たちが君らを責任もって保護するから」
「母さんに会えるの?」
「もう、痛いことしない?」
子供たちは、浮竹に縋りついた。
京楽は、そのうちの3歳くらいの女の子を抱き上げて、背中をさすった。
「うわああああああん」
「ああああん」
3歳の女の子が泣きだしたのをきっかけに、5歳の男の子も泣き出した。
「もう、怖いことも痛いこともないからな。安心してくれ」
「「うん」」
浮竹が5歳の男の子を抱き上げて、車に乗せて京楽も3歳の女の子を車に乗せて、冒険者ギルドまでいくと、魔石を提出し、依頼料をもらった。
子供を二人保護したことで、追加の謝礼金ももらった。
「それにしても、なぜアークデーモンが子供を生贄になんて・・・・」
「なんでだろうねぇ」
「悪魔がいってたの。藍染様のためだって」
保護された5歳の男の子が、保護者がくるまでの間、京楽と浮竹の傍にいた。
「藍染・・・・・その名前がここで出てくるのか」
藍染は、今回の事件の全ての黒幕であるようだった。
「藍染に懸賞金をかけました。見つけ次第、殺してほしい」
男の娘のギルドマスターは、他の冒険者にも藍染のことについて教えていた。
「藍染か・・・・なんでも、堕天使らしいな。京楽、お前は会ったことはあるのか?」
「うん・・・・あるよ。彼は、僕と同じ神の12使徒の一人だったから」
「じゃあ、2千年以上も生きているのか」
「さぁ・・・・転生を繰り返しているようだし。今は堕天使で、この前は悪魔だった気がする」
京楽は、藍染の顔をおぼろげながらにしか覚えていなかった。
常に認識阻害の魔法を使っていた藍染は、素顔が分からない。
「いつか、衝突する日がきそうだな」
「そうだね。きっと、神に復讐したがっているから、セラフを使って神を呼び出すだろう。浮竹、くれぐれも気をつけてね。君は大天使長ミカエルの子供だし、セラフとしての力は地上にいる天使の中で一番だよ」
「気をつける・・・・」
結局、何故藍染が子供を生贄にしていたかは分からずじまいなのであった。
----------------------------------------------------
「ククク・・・・純粋な子供の魂は価値が高い。これで、大悪魔を召還できる」
藍染は、集まった子供たちの魂を封じ込めたガラス瓶を机の上に置くと、ゆっくりと目を閉じて、自分と同じ12使徒だったかつての仲間たちの顔を思い出す。
今活動しているのは、京楽とあと二人だ。
藍染は笑う。
「さて、この計画に賛同してくれる者は・・・・・・」
12使徒から、堕天したのは何も京楽や藍染だけではない。
藍染は、協力してくれそうな人物を思い出して、くつくつと笑うのであった。
その服にはマントがついていて、背中が隠れるようになっているので、外で着ても大丈夫だった。
『うん、やっぱりそれ似合ってるな』
フェンリルの浮竹は、天使の浮竹の買ってあげた服を着てくれてきたことに嬉しがっていた。
「はじめは背中がスースーして落ち着かなかったが、マントをすれば大丈夫だから、着ていても大丈夫になった」
『翼を出す時、服は破れないのか?』
フェンリルの浮竹の素朴な疑問に、天使の浮竹が答える。
「ああ。翼はアストラル体でできていて、霊的物質なんだ。衣服を着ていても、翼は透けて外に出る」
『じゃあ、その服じゃなくても良かったんだな』
がっかりするフェンリルの浮竹に、ヴァンパイアの京楽が助け舟を出す。
『彼に似合っているから、買ってあげたんでしょ。ほら、浮竹そんなしょげないの』
『むー。でも、似合ってるぞその服、天使の俺!』
「うん、ありがとう」
天使の浮竹は、真っ赤になった。
「ああ、僕の浮竹は何を着ても似合うからいいね」
『お前はボロ布でも着てろ』
「酷い!」
『べーっだっ』
フェンリルの浮竹は、堕天使の京楽に少々心を許していたが、元に戻っていた。
「フェンリルの俺、京楽とは仲良くしてやってくれ」
『お前がそう言うなら、少しだけ仲良くしてもいい。1ミリくらい』
「何それ!1ミリって仲の良い単位なの!?」
堕天使の京楽がわめく。
『まぁまぁ、ボクの浮竹はシャイだから』
「全然シャイどころかいじめてくるんですけど!」
フェンリルの浮竹は、狼の姿になって、黒猫姿になって逃げる京楽を追い駆けだした。
「浮竹~助けて~~~」
「京楽、ほどほどに遊んでもらえ」
「浮竹の白状者おおおお」
堕天使の京楽は、フェンリルの姿の浮竹に転がされて遊ばれるのであった。
-----------------------------------------------------
「でも、ほんとにその服似合ってるね」
京楽の言葉に、浮竹は赤くなった。
「マントなんてつけなくてもいいよ。君の綺麗な背中が見えていいね」
「翼で隠してやる」
浮竹は、セラフの光り輝く6枚の翼を出した。
「あ、反則!」
京楽も、漆黒の6枚の翼を出した。
「翼出してないと、自分が堕天使だってこと忘れそうだよ」
「お前の脳みそは軽いからな」
「酷い!ちょっと、フェンリルの君みたいなこと言わないでよ」
「いや、そんなつもりじゃなかったんだ。すまない」
しょげる浮竹の頭を、京楽が撫でた。
「依頼がきているな・・・・アークデーモン退治。悪魔か」
「ああ、思い出すなぁ。アークデーモンの女の子とちょめちょめした・・・」
「カラミティファイア」
「のぎゃあああああ」
自業自得な京楽を焦がして引きずって、依頼された場所まで車で移動した。
「いるいる・・・・アークデーモンが5体か」
「2体引き受けるから、残りの3体はお願いね」
「ああ、分かった」
大きな音を炸裂させて、建物の外に出てきたアークデーモンを、まずサンシャインの光で目を焼いて視界が効かないようにして、魔法で片付けていく。
「カラミティサンダー!」
「ファイナルフレア!」
京楽も浮竹も容赦はしなかった。
依頼だと、小さな子供を生贄として捧げており、まだ生きている子供がいるなら保護してほしいとのことだった。
魔法で灰をなり、魔石だけを残して消えていったアークデーモンのいた建物の中に入る。
5歳くらいの男の子と、3歳くらいの女の子がいた。
他にもいたが、皆生贄として捧げられて、息をしていなかった。
「もう大丈夫だ。俺たちが君らを責任もって保護するから」
「母さんに会えるの?」
「もう、痛いことしない?」
子供たちは、浮竹に縋りついた。
京楽は、そのうちの3歳くらいの女の子を抱き上げて、背中をさすった。
「うわああああああん」
「ああああん」
3歳の女の子が泣きだしたのをきっかけに、5歳の男の子も泣き出した。
「もう、怖いことも痛いこともないからな。安心してくれ」
「「うん」」
浮竹が5歳の男の子を抱き上げて、車に乗せて京楽も3歳の女の子を車に乗せて、冒険者ギルドまでいくと、魔石を提出し、依頼料をもらった。
子供を二人保護したことで、追加の謝礼金ももらった。
「それにしても、なぜアークデーモンが子供を生贄になんて・・・・」
「なんでだろうねぇ」
「悪魔がいってたの。藍染様のためだって」
保護された5歳の男の子が、保護者がくるまでの間、京楽と浮竹の傍にいた。
「藍染・・・・・その名前がここで出てくるのか」
藍染は、今回の事件の全ての黒幕であるようだった。
「藍染に懸賞金をかけました。見つけ次第、殺してほしい」
男の娘のギルドマスターは、他の冒険者にも藍染のことについて教えていた。
「藍染か・・・・なんでも、堕天使らしいな。京楽、お前は会ったことはあるのか?」
「うん・・・・あるよ。彼は、僕と同じ神の12使徒の一人だったから」
「じゃあ、2千年以上も生きているのか」
「さぁ・・・・転生を繰り返しているようだし。今は堕天使で、この前は悪魔だった気がする」
京楽は、藍染の顔をおぼろげながらにしか覚えていなかった。
常に認識阻害の魔法を使っていた藍染は、素顔が分からない。
「いつか、衝突する日がきそうだな」
「そうだね。きっと、神に復讐したがっているから、セラフを使って神を呼び出すだろう。浮竹、くれぐれも気をつけてね。君は大天使長ミカエルの子供だし、セラフとしての力は地上にいる天使の中で一番だよ」
「気をつける・・・・」
結局、何故藍染が子供を生贄にしていたかは分からずじまいなのであった。
----------------------------------------------------
「ククク・・・・純粋な子供の魂は価値が高い。これで、大悪魔を召還できる」
藍染は、集まった子供たちの魂を封じ込めたガラス瓶を机の上に置くと、ゆっくりと目を閉じて、自分と同じ12使徒だったかつての仲間たちの顔を思い出す。
今活動しているのは、京楽とあと二人だ。
藍染は笑う。
「さて、この計画に賛同してくれる者は・・・・・・」
12使徒から、堕天したのは何も京楽や藍染だけではない。
藍染は、協力してくれそうな人物を思い出して、くつくつと笑うのであった。
堕天使と天使18
『少しは、お前のこと認めてやる』
「ああ、明日は槍が降る」
フェンリルの浮竹の言葉に、堕天使の京楽は空を見上げた。
堕天使の京楽、天使の浮竹、ヴァンパイアの京楽、フェンリルの浮竹の4人で、ヴァンパイアの京楽の屋敷の庭の手入れをしていた。
季節は春をゆうに過ぎ去り、夏がこようとしていた。
綺麗に咲き乱れる朝鮮朝顔の鮮やかな紫と、薔薇園に咲いた白い薔薇が今日は見頃だった。
『すまないねぇ。何分広いものだから、2人だけで維持していくのは無理で、作り出した人形に管理を任せていたんだけど、薔薇を枯らしてしまってね』
ヴァンパイアの京楽は、天使の浮竹がもつ剪定鋏で、枯れた薔薇を切ってもらっていた。
『せっかくの薔薇園が、お前の臭さで汚くなるけど、許してやろう』
「何それ!僕は臭くなんでないですぅ!許すも許さないも、何もしてないじゃない!」
『存在が罪だ』
「はぁ!?君、僕を少しだけ見直してくれたんじゃなかったの!」
『見直したぞ。戦闘面では。プライベートでは、まだまだ』
「戦闘面でだけって、全然僕を見直してくれてないじゃない!」
『そんなことはないぞ。お前の存在を認めている。少しはな』
そう言って、フェンリルの浮竹は尻尾をばっさばっさと振った。
「京楽、フェンリルの俺と少し仲良くなったんだな」
「ええ、これが仲いいように見えるの!?」
「だって、お前をみて尻尾振ってるぞ、フェンリルの俺」
自分の尻尾がばっさばっさと振られているのに気づき、フェンリルの浮竹は真っ赤になって天使の浮竹の背後に隠れた。
『これは違う。その・・・お前が臭いからだ!』
「はぁ、ツンデレだね。まぁいいけど」
「薔薇園の手入れを終えてしまおう。茶菓子とかもってきているし」
4人で薔薇園の手入れをして、新しい苗を植えたり、肥料をやって水をやった。
「しかし、見事な薔薇園だなぁ」
『そうでしょ。僕の自慢の庭だよ』
『俺が育てた薔薇がこれだ!』
フェンリルの浮竹は、水色の薔薇をみんなに見せた。
薔薇が青い色素をもつことは今のところ、天使の浮竹のいる世界にはない。
水色の薔薇はすごく価値のあるものだった。
「水色の薔薇か。いいな」
『あ、天使の俺欲しいか?苗ならまだ余ってるぞ』
「もらえるのか?」
『もちろん、喜んで』
尻尾をばっさばっさと振って、フェンリルの浮竹は天使の浮竹の水色の薔薇の苗をくれた。
それを大事にアイテムポケットに入れて、4人は庭作業を切り上げて、お茶にすることにした。
『最近、こっちでも魔物の活動が活発化していてね。原始の聖女の件もあったりで、ちょっときな臭いことになってるよ』
「こっちの世界でも、魔物は活発化しているんだな。俺のいる世界でも、魔物の活動が活発化している。こちらと俺たちのいる世界は、合わせ鏡のようなものなのだろうか」
「そうだねぇ。なんか、暗躍する影があるとかないとか」
『こっちの世界でも、何か裏でありそうなんだよね』
『このパンケーキ、もっと食っていいか?』
フェンリルの浮竹は、目の前の美味しいパンケーキに夢中で、魔物のことなどどうでもよさそうであった。
「まぁ、俺たちの世界ではまだそっちの、原始の聖女がキメラになったような出来事はおきていないだけ、安心だけどな」
天使の浮竹は、苦笑いしながら、ヴァンパイアの京楽の分を食い尽し、さらに欲しそうにしているフェンリルの浮竹に自分の分のパンケーキをあげた。
『いいのか、天使の俺』
「家に帰れば、いつでも食えるからな」
ばっさばっさ。
フェンリルの浮竹の尻尾は揺れまくりだ。
「この食いしん坊狼め」
『うるさい。噛むぞ』
「噛んでから言わないでよ!痛い痛い!」
堕天使の京楽は、フェンリル姿になった浮竹に足を噛まれていた。
フェンリルの浮竹は、すぐに人型に戻る。
『パンケーキ・・・・これ、くせになりそうな美味しさだ』
「京楽が作ったんだぞ?」
『このパンケーキを、この臭い堕天使の京楽が?』
「そうだ」
『料理の面では一人前と認めてやろう』
「別に認めてくれなくていいですぅ」
「すねてる」
天使の浮竹は、堕天使の京楽の子供じみた仕草に、溜息を零した。
お茶会をして、それぞれの世界のことを話し合い、今後の方針を決める。
ヴァンパイアの京楽とフェンリルの浮竹は、引き続き世界の異変に敏感にいることに。
堕天使の京楽と天使の浮竹は、依頼を通して、世界の変化を見ることに。
そうして、4人はそれぞれ二人ずつ別れた。
元の世界に戻ると、堕天使の京楽と天使の浮竹のところに、依頼がきていた。
巨大なトロールが複数現れて、町を占拠しているとのことだった。
「出るぞ」
「うん」
車で町の近くまでいき、巨大なトロールの群れを発見して、殲滅に移る。
「アースクェイク!」
「フレアワールド!」
2人で、魔法を使って巨大トロールを退治していった。
「それにしてもでかいな。普通のトロールじゃない。何か、人為的なものを感じる」
「そうだね。普通は町まで来るようなモンスターじゃないし」
20体は倒して、魔石を入手した。
冒険者ギルドにもっていくと、報酬金金貨200枚と、魔石は粗悪品ということで全部で金貨3枚だった。
そして、男の娘のギルドマスターに呼ばれた。
「最近、モンスターを使って暗躍している者の名が分かった。名前は藍染惣右介。堕天使だ。天使から落とされたことに憤怒しているようで、世界を滅茶苦茶にして神を殺したいらしい」
「神を殺す?そんなこと、できるのか?」
「セラフの力があれば、神に会うことができる。その力を利用して、神を害することも完全に不可能とはいいきれない」
ギルドマスターの言葉に、京楽が心配げに浮竹を見た。
「俺は大丈夫だ」
浮竹は天使であるが、セラフだ。
セラフである浮竹を利用されることを、京楽は恐れていた。
「僕が、何があっても君を守るから」
「ああ、信じている」
「ごほん」
「「あ」」
ギルドマスターの前でいちゃついていた二人は、通常運転に戻って、家に帰宅した。
「でも、本当に気を付けてね、浮竹。怪しい人物に近付いちゃだめだよ」
「お前も随分怪しいがな」
「あはははは」
--------------------------------------------------------------
「大天使長、ミカエルには、手が出ない・・・・手ごろなセラフは、やはり浮竹か」
藍染は、ワイングラスをあおりながら、いつか神に復讐するその時を夢見ていた。
「ただ、堕天使が邪魔だな・・・・・」
堕天使の京楽を、先に始末するべきか。
藍染は、迷うのだった。
「ああ、明日は槍が降る」
フェンリルの浮竹の言葉に、堕天使の京楽は空を見上げた。
堕天使の京楽、天使の浮竹、ヴァンパイアの京楽、フェンリルの浮竹の4人で、ヴァンパイアの京楽の屋敷の庭の手入れをしていた。
季節は春をゆうに過ぎ去り、夏がこようとしていた。
綺麗に咲き乱れる朝鮮朝顔の鮮やかな紫と、薔薇園に咲いた白い薔薇が今日は見頃だった。
『すまないねぇ。何分広いものだから、2人だけで維持していくのは無理で、作り出した人形に管理を任せていたんだけど、薔薇を枯らしてしまってね』
ヴァンパイアの京楽は、天使の浮竹がもつ剪定鋏で、枯れた薔薇を切ってもらっていた。
『せっかくの薔薇園が、お前の臭さで汚くなるけど、許してやろう』
「何それ!僕は臭くなんでないですぅ!許すも許さないも、何もしてないじゃない!」
『存在が罪だ』
「はぁ!?君、僕を少しだけ見直してくれたんじゃなかったの!」
『見直したぞ。戦闘面では。プライベートでは、まだまだ』
「戦闘面でだけって、全然僕を見直してくれてないじゃない!」
『そんなことはないぞ。お前の存在を認めている。少しはな』
そう言って、フェンリルの浮竹は尻尾をばっさばっさと振った。
「京楽、フェンリルの俺と少し仲良くなったんだな」
「ええ、これが仲いいように見えるの!?」
「だって、お前をみて尻尾振ってるぞ、フェンリルの俺」
自分の尻尾がばっさばっさと振られているのに気づき、フェンリルの浮竹は真っ赤になって天使の浮竹の背後に隠れた。
『これは違う。その・・・お前が臭いからだ!』
「はぁ、ツンデレだね。まぁいいけど」
「薔薇園の手入れを終えてしまおう。茶菓子とかもってきているし」
4人で薔薇園の手入れをして、新しい苗を植えたり、肥料をやって水をやった。
「しかし、見事な薔薇園だなぁ」
『そうでしょ。僕の自慢の庭だよ』
『俺が育てた薔薇がこれだ!』
フェンリルの浮竹は、水色の薔薇をみんなに見せた。
薔薇が青い色素をもつことは今のところ、天使の浮竹のいる世界にはない。
水色の薔薇はすごく価値のあるものだった。
「水色の薔薇か。いいな」
『あ、天使の俺欲しいか?苗ならまだ余ってるぞ』
「もらえるのか?」
『もちろん、喜んで』
尻尾をばっさばっさと振って、フェンリルの浮竹は天使の浮竹の水色の薔薇の苗をくれた。
それを大事にアイテムポケットに入れて、4人は庭作業を切り上げて、お茶にすることにした。
『最近、こっちでも魔物の活動が活発化していてね。原始の聖女の件もあったりで、ちょっときな臭いことになってるよ』
「こっちの世界でも、魔物は活発化しているんだな。俺のいる世界でも、魔物の活動が活発化している。こちらと俺たちのいる世界は、合わせ鏡のようなものなのだろうか」
「そうだねぇ。なんか、暗躍する影があるとかないとか」
『こっちの世界でも、何か裏でありそうなんだよね』
『このパンケーキ、もっと食っていいか?』
フェンリルの浮竹は、目の前の美味しいパンケーキに夢中で、魔物のことなどどうでもよさそうであった。
「まぁ、俺たちの世界ではまだそっちの、原始の聖女がキメラになったような出来事はおきていないだけ、安心だけどな」
天使の浮竹は、苦笑いしながら、ヴァンパイアの京楽の分を食い尽し、さらに欲しそうにしているフェンリルの浮竹に自分の分のパンケーキをあげた。
『いいのか、天使の俺』
「家に帰れば、いつでも食えるからな」
ばっさばっさ。
フェンリルの浮竹の尻尾は揺れまくりだ。
「この食いしん坊狼め」
『うるさい。噛むぞ』
「噛んでから言わないでよ!痛い痛い!」
堕天使の京楽は、フェンリル姿になった浮竹に足を噛まれていた。
フェンリルの浮竹は、すぐに人型に戻る。
『パンケーキ・・・・これ、くせになりそうな美味しさだ』
「京楽が作ったんだぞ?」
『このパンケーキを、この臭い堕天使の京楽が?』
「そうだ」
『料理の面では一人前と認めてやろう』
「別に認めてくれなくていいですぅ」
「すねてる」
天使の浮竹は、堕天使の京楽の子供じみた仕草に、溜息を零した。
お茶会をして、それぞれの世界のことを話し合い、今後の方針を決める。
ヴァンパイアの京楽とフェンリルの浮竹は、引き続き世界の異変に敏感にいることに。
堕天使の京楽と天使の浮竹は、依頼を通して、世界の変化を見ることに。
そうして、4人はそれぞれ二人ずつ別れた。
元の世界に戻ると、堕天使の京楽と天使の浮竹のところに、依頼がきていた。
巨大なトロールが複数現れて、町を占拠しているとのことだった。
「出るぞ」
「うん」
車で町の近くまでいき、巨大なトロールの群れを発見して、殲滅に移る。
「アースクェイク!」
「フレアワールド!」
2人で、魔法を使って巨大トロールを退治していった。
「それにしてもでかいな。普通のトロールじゃない。何か、人為的なものを感じる」
「そうだね。普通は町まで来るようなモンスターじゃないし」
20体は倒して、魔石を入手した。
冒険者ギルドにもっていくと、報酬金金貨200枚と、魔石は粗悪品ということで全部で金貨3枚だった。
そして、男の娘のギルドマスターに呼ばれた。
「最近、モンスターを使って暗躍している者の名が分かった。名前は藍染惣右介。堕天使だ。天使から落とされたことに憤怒しているようで、世界を滅茶苦茶にして神を殺したいらしい」
「神を殺す?そんなこと、できるのか?」
「セラフの力があれば、神に会うことができる。その力を利用して、神を害することも完全に不可能とはいいきれない」
ギルドマスターの言葉に、京楽が心配げに浮竹を見た。
「俺は大丈夫だ」
浮竹は天使であるが、セラフだ。
セラフである浮竹を利用されることを、京楽は恐れていた。
「僕が、何があっても君を守るから」
「ああ、信じている」
「ごほん」
「「あ」」
ギルドマスターの前でいちゃついていた二人は、通常運転に戻って、家に帰宅した。
「でも、本当に気を付けてね、浮竹。怪しい人物に近付いちゃだめだよ」
「お前も随分怪しいがな」
「あはははは」
--------------------------------------------------------------
「大天使長、ミカエルには、手が出ない・・・・手ごろなセラフは、やはり浮竹か」
藍染は、ワイングラスをあおりながら、いつか神に復讐するその時を夢見ていた。
「ただ、堕天使が邪魔だな・・・・・」
堕天使の京楽を、先に始末するべきか。
藍染は、迷うのだった。
堕天使と天使17
今回の依頼。
フェンリルの上位種である浮竹を、一日だけ預かってくれ。
依頼者、ヴァンパイアの京楽。
「キーーー!彼は何を考えているんだ!よりにもよって、フェンリルの浮竹なんて!」
『それはこっちの台詞だ!ワフ!』
堕天使の京楽が、依頼を受けた天使の浮竹をなじろうとして、フェンリルの姿になった浮竹にけつを噛まれた。
「いたたたた!」
『臭い!』
「失礼だね!人型の時は毎日お風呂入ってるよ!」
京楽は、天使の浮竹の背後に隠れた。
「まぁ、2人とも落ち着け。お互いが好きじゃないのは分かるが、今日はフェンリルの俺は、俺の家に泊まるんだから」
「納得いかない!あの洋館で、一人でいればいいでしょ!」
「それが不安だから、ヴァンパイアの京楽はわざわざ依頼という形で、俺たちに頼んできたんだろう?報酬も前払いで金貨50枚ももらってしまったから、今さら拒否することもできない。京楽、1日の辛抱だ。フェンリルの俺も、1日だけだ。いいな?」
『天使の俺がいうなら、我慢してやらんこともない』
「何その上から目線!」
『ふん。お前が作った飯を、我慢して食べてやろう』
「キーーー!君なんてドッグフードで十分だ!」
『俺は犬じゃない!フェンリルの上位種だ!』
わふわふと吠えるフェンリルの浮竹は、存在が進化して前のフェンリル種からさらに上位の個体神をも喰らう大狼となり、ヴァンパイアの京楽と同じ原初の王になっていた。
血族にされ、更に共に長き時を生きるようにされて、上位種に進化した。
フェンリルの狼の姿に戻ると、今までの大型犬の大きさではなく、座った状態で京楽や浮竹の背丈を優に追い越してしまう。
「今日は、夕飯は俺が作るから、京楽は黒猫姿で、フェンリルの浮竹と遊んでやれ」
「ええ、やだよ!」
「命令。聞かなかったら、禁欲1カ月」
「ひどいーーー」
堕天使の京楽は、黒い6枚の翼を出して、しくしくと泣きだした。
『俺が遊んでやろう。黒猫になれ。人型でいられるより、匂いがましだ』
「もう、どうなっても知らないからね!」
京楽はやけくそになって、黒猫姿になると、大きなフェンリルの狼姿の浮竹の足を引っかいた。
『痛い!』
「みたか、秘技猫爪とぎとぎ」
『お返しだ!』
フェンリル姿の浮竹に、京楽は黒猫の姿のままごろりと転がされた。
「ぎゃあああああ」
『あ、けっこう面白い。ごろごろしてやる』
「あばばばばば、逃げるしかない!」
京楽はキッチンにいった天使の浮竹の場所に避難しようとすると、入り口のドアをその大きな体でふさがれた。
『ふっふっふ、逃がさないぞ』
「僕ってピンチ!?」
『お前でとことん遊んでやる』
「いーやーーー助けて浮竹ええええ」
黒猫の京楽は、フェンリルの浮竹にごろごろ転がされて、狭い室内で追いかけっこをしあっていた。
いや、黒猫の京楽は本気で逃げているのだが、フェンリルの浮竹はそれを面白がって追っかけていた。
「夕飯、できたぞ。何してるんだ、2人とも」
天使の浮竹がやってくると、真っ白な毛皮のフェンリルの浮竹の下で、伸びている黒猫姿の京楽がいた。
「仲良いんだな」
『俺が倒した!俺の勝ちだ!』
「そうか。フェンリルの俺は強いな。今日は肉多めにしておいたからな」
『わふ!』
黒猫姿の京楽は、すねて人型に戻らなかった。
なので、浮竹の手料理を食べれる日は珍しいので、いつもなら喜んで食べるのに、キャットフードを食っていた。
「ふんだ。どうせ僕なんて、おもちゃだよ」
「京楽、ちゃんと相手してやってたんだな。偉いぞ」
天使の浮竹に抱き上げられて、黒猫姿で京楽はゴロゴロと喉を鳴らした。
「もっと褒めて、褒めて」
「今日は最高級の猫缶をあけてやろう」
「おおおお」
黒猫の姿でいる時も長かったので、京楽はキャットフードは大好きだった。
『おいしそう。俺もちょっとだけ、食ってもいいか?』
「いいぞ」
「ああ、僕の最高級クラスの猫缶が!」
『猫の食事ってけっこうおいしいんだな』
少しだけ最高級の猫缶を口にして、後は天使の浮竹が作った肉団子や唐揚げを食べていた。
「唐揚げ、京楽も食え」
「うん、食べる」
意地でも人型に戻らないつもりなのか、鶏肉の唐揚げを天使の浮竹の手から受け取って食べていた。
『いいなぁ。ヴァンパイアの京楽、明日には帰ってくるかな?』
人型になったフェンリルの浮竹は、天使の浮竹の顔を見た。
「ああ、明日には戻ってくる。1日だけだから、今日はゲストルームで寝てくれ」
『天使の浮竹と、一緒に寝る』
「そうそう、大人しく天使の浮竹と寝て・・・・って、なんですと!?天使の浮竹は僕のものだよ!」
『一人でお泊りは初めてだし、天使の俺と寝てみたい!』
「いいぞ」
「ちょっと、浮竹そんなあっさりと!」
「京楽なら、毎日のように一緒に寝ているだろう」
「それとこれとは話が違うよ!」
京楽が黒猫姿で、天使の浮竹の肩に乗った。
「この子は僕の!僕のだからあげない!」
『一日くらいいいだろう!』
「そうだ、一日くらいいいだろ、別に」
「ひどいいいいい。白猫と浮気してやるううう」
「浮気、猫の姿でもしたら、もう一生お前とは口を聞かないからな」
天使の浮竹は、鋭い眼差しで肩に乗った京楽を睨んだ。
「あばばばばばば」
京楽はぴょーんと地面に降り立って、走って行ってベッドの下にもぐって出てこなくなった。
「僕も一緒に寝る。ベッドの下でだけど」
「好きなようにしろ。フェンリルの俺、先に風呂に入ってこい。着替えは置いてあるから」
『ああ、先に使わせてもらう』
次の日の朝、ヴァンパイアの京楽がフェンリルの浮竹を迎えにくると、少しやってしまったという顔の浮竹がいた。
一方、堕天使の京楽は機嫌がどん底に悪く、天使の浮竹は微妙な顔をしていた。
『一体、どうしたのさ』
「フェンリルの浮竹が、僕をいじめるんだよ!」
『ただ、天使の俺を、寝ぼけて京楽と間違えて、抱き着いてキスしちゃただけじゃないか』
フェンリルの浮竹が言うには、そうらしい。
「もう最悪だよ!浮気だ、浮気!」
『違う、浮気じゃない!ただ間違えただけだ』
『浮竹、自分にキスしたようなものだし、寝ぼけてたんでしょ。浮気には入れないから、大丈夫』
「ヴァンパイアの俺、甘い!」
『そうは言っても、一緒に寝てたってことだよね?』
ヴァンパイアの京楽の言葉に、天使の浮竹が頷いた。
「一緒に寝たいと甘えられたんでな。まぁ、ただの事故だ」
『京楽、怒ってないよな?』
『うん、怒ってないよ。ただ、堕天使のボクにはちゃんと謝ろうね?』
『う・・・・・京楽がそういうなら。堕天使の大アホ、天使の俺にキスしてごめん』
「謝罪が謝罪になってないいいいいいい」
堕天使の京楽は、そう叫びながら、フェンリルの浮竹をヴァンパイアの自分ともども追い出して、自分の伴侶である浮竹に抱き着いた。
「どうした?」
「君は僕のものだよ。他の者が、触れるなんて嫌だ」
「まぁ、フェンリルの俺は悪気があったわけじゃないから。許してやれ」
「浮竹がそう言うなら、許すよ」
なんだかんだで、一日のお泊り会は、終わるのだった。
フェンリルの上位種である浮竹を、一日だけ預かってくれ。
依頼者、ヴァンパイアの京楽。
「キーーー!彼は何を考えているんだ!よりにもよって、フェンリルの浮竹なんて!」
『それはこっちの台詞だ!ワフ!』
堕天使の京楽が、依頼を受けた天使の浮竹をなじろうとして、フェンリルの姿になった浮竹にけつを噛まれた。
「いたたたた!」
『臭い!』
「失礼だね!人型の時は毎日お風呂入ってるよ!」
京楽は、天使の浮竹の背後に隠れた。
「まぁ、2人とも落ち着け。お互いが好きじゃないのは分かるが、今日はフェンリルの俺は、俺の家に泊まるんだから」
「納得いかない!あの洋館で、一人でいればいいでしょ!」
「それが不安だから、ヴァンパイアの京楽はわざわざ依頼という形で、俺たちに頼んできたんだろう?報酬も前払いで金貨50枚ももらってしまったから、今さら拒否することもできない。京楽、1日の辛抱だ。フェンリルの俺も、1日だけだ。いいな?」
『天使の俺がいうなら、我慢してやらんこともない』
「何その上から目線!」
『ふん。お前が作った飯を、我慢して食べてやろう』
「キーーー!君なんてドッグフードで十分だ!」
『俺は犬じゃない!フェンリルの上位種だ!』
わふわふと吠えるフェンリルの浮竹は、存在が進化して前のフェンリル種からさらに上位の個体神をも喰らう大狼となり、ヴァンパイアの京楽と同じ原初の王になっていた。
血族にされ、更に共に長き時を生きるようにされて、上位種に進化した。
フェンリルの狼の姿に戻ると、今までの大型犬の大きさではなく、座った状態で京楽や浮竹の背丈を優に追い越してしまう。
「今日は、夕飯は俺が作るから、京楽は黒猫姿で、フェンリルの浮竹と遊んでやれ」
「ええ、やだよ!」
「命令。聞かなかったら、禁欲1カ月」
「ひどいーーー」
堕天使の京楽は、黒い6枚の翼を出して、しくしくと泣きだした。
『俺が遊んでやろう。黒猫になれ。人型でいられるより、匂いがましだ』
「もう、どうなっても知らないからね!」
京楽はやけくそになって、黒猫姿になると、大きなフェンリルの狼姿の浮竹の足を引っかいた。
『痛い!』
「みたか、秘技猫爪とぎとぎ」
『お返しだ!』
フェンリル姿の浮竹に、京楽は黒猫の姿のままごろりと転がされた。
「ぎゃあああああ」
『あ、けっこう面白い。ごろごろしてやる』
「あばばばばば、逃げるしかない!」
京楽はキッチンにいった天使の浮竹の場所に避難しようとすると、入り口のドアをその大きな体でふさがれた。
『ふっふっふ、逃がさないぞ』
「僕ってピンチ!?」
『お前でとことん遊んでやる』
「いーやーーー助けて浮竹ええええ」
黒猫の京楽は、フェンリルの浮竹にごろごろ転がされて、狭い室内で追いかけっこをしあっていた。
いや、黒猫の京楽は本気で逃げているのだが、フェンリルの浮竹はそれを面白がって追っかけていた。
「夕飯、できたぞ。何してるんだ、2人とも」
天使の浮竹がやってくると、真っ白な毛皮のフェンリルの浮竹の下で、伸びている黒猫姿の京楽がいた。
「仲良いんだな」
『俺が倒した!俺の勝ちだ!』
「そうか。フェンリルの俺は強いな。今日は肉多めにしておいたからな」
『わふ!』
黒猫姿の京楽は、すねて人型に戻らなかった。
なので、浮竹の手料理を食べれる日は珍しいので、いつもなら喜んで食べるのに、キャットフードを食っていた。
「ふんだ。どうせ僕なんて、おもちゃだよ」
「京楽、ちゃんと相手してやってたんだな。偉いぞ」
天使の浮竹に抱き上げられて、黒猫姿で京楽はゴロゴロと喉を鳴らした。
「もっと褒めて、褒めて」
「今日は最高級の猫缶をあけてやろう」
「おおおお」
黒猫の姿でいる時も長かったので、京楽はキャットフードは大好きだった。
『おいしそう。俺もちょっとだけ、食ってもいいか?』
「いいぞ」
「ああ、僕の最高級クラスの猫缶が!」
『猫の食事ってけっこうおいしいんだな』
少しだけ最高級の猫缶を口にして、後は天使の浮竹が作った肉団子や唐揚げを食べていた。
「唐揚げ、京楽も食え」
「うん、食べる」
意地でも人型に戻らないつもりなのか、鶏肉の唐揚げを天使の浮竹の手から受け取って食べていた。
『いいなぁ。ヴァンパイアの京楽、明日には帰ってくるかな?』
人型になったフェンリルの浮竹は、天使の浮竹の顔を見た。
「ああ、明日には戻ってくる。1日だけだから、今日はゲストルームで寝てくれ」
『天使の浮竹と、一緒に寝る』
「そうそう、大人しく天使の浮竹と寝て・・・・って、なんですと!?天使の浮竹は僕のものだよ!」
『一人でお泊りは初めてだし、天使の俺と寝てみたい!』
「いいぞ」
「ちょっと、浮竹そんなあっさりと!」
「京楽なら、毎日のように一緒に寝ているだろう」
「それとこれとは話が違うよ!」
京楽が黒猫姿で、天使の浮竹の肩に乗った。
「この子は僕の!僕のだからあげない!」
『一日くらいいいだろう!』
「そうだ、一日くらいいいだろ、別に」
「ひどいいいいい。白猫と浮気してやるううう」
「浮気、猫の姿でもしたら、もう一生お前とは口を聞かないからな」
天使の浮竹は、鋭い眼差しで肩に乗った京楽を睨んだ。
「あばばばばばば」
京楽はぴょーんと地面に降り立って、走って行ってベッドの下にもぐって出てこなくなった。
「僕も一緒に寝る。ベッドの下でだけど」
「好きなようにしろ。フェンリルの俺、先に風呂に入ってこい。着替えは置いてあるから」
『ああ、先に使わせてもらう』
次の日の朝、ヴァンパイアの京楽がフェンリルの浮竹を迎えにくると、少しやってしまったという顔の浮竹がいた。
一方、堕天使の京楽は機嫌がどん底に悪く、天使の浮竹は微妙な顔をしていた。
『一体、どうしたのさ』
「フェンリルの浮竹が、僕をいじめるんだよ!」
『ただ、天使の俺を、寝ぼけて京楽と間違えて、抱き着いてキスしちゃただけじゃないか』
フェンリルの浮竹が言うには、そうらしい。
「もう最悪だよ!浮気だ、浮気!」
『違う、浮気じゃない!ただ間違えただけだ』
『浮竹、自分にキスしたようなものだし、寝ぼけてたんでしょ。浮気には入れないから、大丈夫』
「ヴァンパイアの俺、甘い!」
『そうは言っても、一緒に寝てたってことだよね?』
ヴァンパイアの京楽の言葉に、天使の浮竹が頷いた。
「一緒に寝たいと甘えられたんでな。まぁ、ただの事故だ」
『京楽、怒ってないよな?』
『うん、怒ってないよ。ただ、堕天使のボクにはちゃんと謝ろうね?』
『う・・・・・京楽がそういうなら。堕天使の大アホ、天使の俺にキスしてごめん』
「謝罪が謝罪になってないいいいいいい」
堕天使の京楽は、そう叫びながら、フェンリルの浮竹をヴァンパイアの自分ともども追い出して、自分の伴侶である浮竹に抱き着いた。
「どうした?」
「君は僕のものだよ。他の者が、触れるなんて嫌だ」
「まぁ、フェンリルの俺は悪気があったわけじゃないから。許してやれ」
「浮竹がそう言うなら、許すよ」
なんだかんだで、一日のお泊り会は、終わるのだった。
堕天使と天使外伝3
『お前、やっぱり臭いな』
「キーーー。黒猫の姿で風呂に入れてもらって、まだ1週間しか経ってないよ!」
フェンリルの浮竹は、ヴァンパイアの京楽の住む館で堕天使の京楽の黒猫姿の匂いをかいでいた。
『やっぱり臭い。しみついてるんじゃないか』
「ちょっとどう思う、ヴァンパイアの僕。僕って匂う?」
『いや・・・フローラルな花の香りがするけどね』
ヴァンパイアの京楽の言葉に、堕天使の京楽はそれみたことかと、フェンリルの浮竹を睨んだ。
天使の浮竹は、我感ぜずといった雰囲気で、ドーナツをかじりながらバナナ・オレを飲んでいた。
「このバナナ・オレうまいな。ドーナツもうまい」
『だろう!京楽が作ってくれたんだ!バナナ・オレは作るの俺も手伝った!』
「そうか。えらいな」
『えへへへ~~~』
フェンリルの浮竹は、天使の浮竹の頭を撫でられて、狼の耳をピコピコ動かして、尻尾をばっさばっさと振っていた。
喜んでいる証だった。
『臭い、近寄るな』
黒猫姿の京楽は、嫌がらせにフェンリルの浮竹の肩に飛び乗った。
『うわぁ、何をする!』
「ふふん、匂いをこすりつけてあげよう」
『やめろ、この変態!』
「まぁ、否定しない。京楽は黒猫からに人型に戻る時裸だからな」
天使の浮竹がそう言うと、フェンリルの浮竹は信じられないものを見るように、追い払った黒猫の京楽を見た。
『俺でも、フェンリル姿になって元に戻る時は服を着ているのに・・・・・・この変態!』
「いや、普通獣の姿になったら、裸でしょ」
『こっちくるな!ばっちいのがうつる!』
「ほお。そこまでいう。ばっちいの、うつしてやる。うれうれうれ」
『ぎゃあああああああああああ』
フェンリルの浮竹に、黒猫の京楽はすり寄って体を何度もこすりつけた。
『ちょっと、マーキングはやめてよ。浮竹はボクの血族なんだから。あげないよ』
「こんな性根のひん曲がった浮竹なんてやだ!僕には天使の浮竹がいるもんね!」
『誰の性根がひん曲がってるって?』
フェンリルの浮竹は、フェンリルの姿になり、うなり声をあげた。
『がるるるるる。お前なんて、噛んで・・・噛んだら、ばっちいのがうつるからだめか』
『浮竹、おいで。消毒してあげる』
ヴァンパイアの京楽に抱きしめられて、フェンリルの浮竹は嬉しそうにしていた。
仕方なく、天使の浮竹も黒猫の京楽を抱き上げた。
「僕、フローラルな香りだよね?臭くないよね?」
「フェンリルの俺は上位種だから、お前の精神に染みついている過去の情人とかの匂いが分かるんだろう」
「何それ。やばすぎ。臭いだろうなぁ・・・・何せ、5千人はこえてるからなぁ」
『うわ、そんなに関係をもっているのか。道理で臭いわけだ』
「あくまで、精神の匂いの話でしょ!まるで僕自身が臭いみたいに言わないでよ」
『お前の精神は、根強いラフレシアみたいな匂い。臭い』
「ラフレシア・・・・・・」
『もしくは、1カ月洗わずにはき続けたパンツの匂い』
フェンリルの浮竹の例えに、天使の浮竹が笑った。
「なんだ、その例えは。かいだこと、実際にあるのか?」
『ないけど、そんな匂いな気がする』
「精神にしみついた匂いばかりは、どうにもできないねぇ。浮竹を抱いてるから、それで匂いが変わっていくのを待つしかないね」
『わ!二人とも、やることやってるんだ!』
真っ赤になったフェンリルの浮竹に、釣られて天使の浮竹も赤くなって、どこからか取り出したハリセンで黒猫姿の京楽の頭をはたいた。
「痛い!動物虐待反対!」
「お前がデリカシーのないことを言うからだ!」
『天使の俺、この臭い堕天使の京楽の匂いが染みつかないようにしろよ』
「ああ、分かっている」
『さて、ボクは夕飯を作りにいくけど、君たちはどうする?』
ヴァンパイアの京楽の言葉に、黒猫の京楽がこう言う。
「どこかで人型に戻って服を着て、手伝うよ。これでも料理の腕には自信があるよ」
『知ってるよ。浮竹と天使の浮竹はどうするの?』
ヴァンパイアの京楽の言葉に、フェンリル姿の浮竹が人型に戻って、天使の浮竹の手をとった。
『薔薇園にいって、お土産の薔薇をとってくる!な、いいだろ、天使の俺。薔薇園に行こう』
「ああ、いいぞ」
『決まったね。夕飯ができる頃には、帰ってきなよ』
『分かってる!堕天使の京楽が一緒に作るとまずくなりそうだけど、我慢する!』
「失礼だね!僕は三ツ星レストランのシェフをしていたくらいに、腕は確かなんだよ!」
「フェンリルの俺、薔薇園に行こう。久しぶりにあの見事な薔薇を見たくなった」
『うん!行こう!』
2人の浮竹は、仲良さそうに手を握りあって、薔薇園に行ってしまった。
『ああは言ってるけど、キミのこと嫌いってわけじゃないからね、浮竹は』
「分かってる。でも、ケンカになるか漫才みたいなことになるんだよね」
『まぁ、おいしい夕飯を作って、見返してあげなよ』
「そうする」
その日の晩は、堕天使の京楽の作った豪華なメニューが並ぶのであった。
「キーーー。黒猫の姿で風呂に入れてもらって、まだ1週間しか経ってないよ!」
フェンリルの浮竹は、ヴァンパイアの京楽の住む館で堕天使の京楽の黒猫姿の匂いをかいでいた。
『やっぱり臭い。しみついてるんじゃないか』
「ちょっとどう思う、ヴァンパイアの僕。僕って匂う?」
『いや・・・フローラルな花の香りがするけどね』
ヴァンパイアの京楽の言葉に、堕天使の京楽はそれみたことかと、フェンリルの浮竹を睨んだ。
天使の浮竹は、我感ぜずといった雰囲気で、ドーナツをかじりながらバナナ・オレを飲んでいた。
「このバナナ・オレうまいな。ドーナツもうまい」
『だろう!京楽が作ってくれたんだ!バナナ・オレは作るの俺も手伝った!』
「そうか。えらいな」
『えへへへ~~~』
フェンリルの浮竹は、天使の浮竹の頭を撫でられて、狼の耳をピコピコ動かして、尻尾をばっさばっさと振っていた。
喜んでいる証だった。
『臭い、近寄るな』
黒猫姿の京楽は、嫌がらせにフェンリルの浮竹の肩に飛び乗った。
『うわぁ、何をする!』
「ふふん、匂いをこすりつけてあげよう」
『やめろ、この変態!』
「まぁ、否定しない。京楽は黒猫からに人型に戻る時裸だからな」
天使の浮竹がそう言うと、フェンリルの浮竹は信じられないものを見るように、追い払った黒猫の京楽を見た。
『俺でも、フェンリル姿になって元に戻る時は服を着ているのに・・・・・・この変態!』
「いや、普通獣の姿になったら、裸でしょ」
『こっちくるな!ばっちいのがうつる!』
「ほお。そこまでいう。ばっちいの、うつしてやる。うれうれうれ」
『ぎゃあああああああああああ』
フェンリルの浮竹に、黒猫の京楽はすり寄って体を何度もこすりつけた。
『ちょっと、マーキングはやめてよ。浮竹はボクの血族なんだから。あげないよ』
「こんな性根のひん曲がった浮竹なんてやだ!僕には天使の浮竹がいるもんね!」
『誰の性根がひん曲がってるって?』
フェンリルの浮竹は、フェンリルの姿になり、うなり声をあげた。
『がるるるるる。お前なんて、噛んで・・・噛んだら、ばっちいのがうつるからだめか』
『浮竹、おいで。消毒してあげる』
ヴァンパイアの京楽に抱きしめられて、フェンリルの浮竹は嬉しそうにしていた。
仕方なく、天使の浮竹も黒猫の京楽を抱き上げた。
「僕、フローラルな香りだよね?臭くないよね?」
「フェンリルの俺は上位種だから、お前の精神に染みついている過去の情人とかの匂いが分かるんだろう」
「何それ。やばすぎ。臭いだろうなぁ・・・・何せ、5千人はこえてるからなぁ」
『うわ、そんなに関係をもっているのか。道理で臭いわけだ』
「あくまで、精神の匂いの話でしょ!まるで僕自身が臭いみたいに言わないでよ」
『お前の精神は、根強いラフレシアみたいな匂い。臭い』
「ラフレシア・・・・・・」
『もしくは、1カ月洗わずにはき続けたパンツの匂い』
フェンリルの浮竹の例えに、天使の浮竹が笑った。
「なんだ、その例えは。かいだこと、実際にあるのか?」
『ないけど、そんな匂いな気がする』
「精神にしみついた匂いばかりは、どうにもできないねぇ。浮竹を抱いてるから、それで匂いが変わっていくのを待つしかないね」
『わ!二人とも、やることやってるんだ!』
真っ赤になったフェンリルの浮竹に、釣られて天使の浮竹も赤くなって、どこからか取り出したハリセンで黒猫姿の京楽の頭をはたいた。
「痛い!動物虐待反対!」
「お前がデリカシーのないことを言うからだ!」
『天使の俺、この臭い堕天使の京楽の匂いが染みつかないようにしろよ』
「ああ、分かっている」
『さて、ボクは夕飯を作りにいくけど、君たちはどうする?』
ヴァンパイアの京楽の言葉に、黒猫の京楽がこう言う。
「どこかで人型に戻って服を着て、手伝うよ。これでも料理の腕には自信があるよ」
『知ってるよ。浮竹と天使の浮竹はどうするの?』
ヴァンパイアの京楽の言葉に、フェンリル姿の浮竹が人型に戻って、天使の浮竹の手をとった。
『薔薇園にいって、お土産の薔薇をとってくる!な、いいだろ、天使の俺。薔薇園に行こう』
「ああ、いいぞ」
『決まったね。夕飯ができる頃には、帰ってきなよ』
『分かってる!堕天使の京楽が一緒に作るとまずくなりそうだけど、我慢する!』
「失礼だね!僕は三ツ星レストランのシェフをしていたくらいに、腕は確かなんだよ!」
「フェンリルの俺、薔薇園に行こう。久しぶりにあの見事な薔薇を見たくなった」
『うん!行こう!』
2人の浮竹は、仲良さそうに手を握りあって、薔薇園に行ってしまった。
『ああは言ってるけど、キミのこと嫌いってわけじゃないからね、浮竹は』
「分かってる。でも、ケンカになるか漫才みたいなことになるんだよね」
『まぁ、おいしい夕飯を作って、見返してあげなよ』
「そうする」
その日の晩は、堕天使の京楽の作った豪華なメニューが並ぶのであった。
天使と堕天使外伝2
「フェンリルの俺が言っていた。黒猫姿のお前は臭いって」
「ええ、それ、狼っていうか、犬の嗅覚での話じゃないの」
「実際、黒猫姿になったお前の匂いをかいでみた。少し臭かった」
「ガーン」
京楽は、黒猫姿になった。
「洗って」
「洗う。わしゃわしゃ洗うぞ。ちゃんと猫用シャンプーを使うし、ブラッシングもするから安心しろ。毛皮はドライヤーでかわかしてやる」
まだ、寒い時期なので、濡れたままの姿でいるのはきついだろうという、浮竹の判断だった。
黒猫姿になった京楽を抱き上げて、浮竹は衣服の袖をまくり、猫用シャンプーでわしゃわしゃと洗った。
3回洗った。
それからシャワーで泡を流して、ブラッシングもして、ドライヤーで乾かした。
ちょっとべたついていた毛皮が、ふわふわのもこもこになっていた。
「うん、フローラルないい匂いだ」
「そう?自分じゃわからないんだけど」
黒猫姿で、京楽はスンスンと自分の毛皮をかいでみる。
『遊びにきたぞー!』
ちょうど、フェンリルの浮竹とヴァンパイアの京楽が遊びにきた。
『あれ、お前黒猫姿なのにあんまり臭くない。どうしてだ?いい匂いがする』
「ふふん、浮竹に洗ってもらったからだよ。3回も洗ってくれた。愛だよ、愛」
『臭いから、3回洗われたんだろう?』
「ムキー、僕はもうそんなに臭くない!」
『彼、黒猫の姿のままだけどいいの?』
ヴァンパイアの京楽が天使の浮竹に話しかけると、天使の浮竹は堕天使の京楽の作ったマーブルクッキーを用意して、アッサムの紅茶を入れていた。
「今日はせっかくだから、1日あのままの姿でいるんだそうだ」
「そうだよ。僕はフローラルな黒猫。気高き黒猫」
『野良のアホ猫の間違いじゃないのか?』
フェンリルの浮竹は、天使の浮竹と同じ顔で堕天使の京楽をからかった。
『こらこら、浮竹。あんまり彼で遊ばないの』
『このマーブルクッキー美味しいな』
「僕が作ったんだよ」
自慢する堕天使の京楽に、フェンリルの浮竹は狼の耳をへなっと下げて、尻尾をたらした。
『まずい気がしてきた』
「キー!失礼な子だね!ちょっと、ヴァンパイアの僕、このフェンリルの浮竹のしつけ、なってないよ!」
『俺はペットじゃない!しつけなんてされてない!』
「京楽も、フェンリルの俺も、ほどほどにな」
『うん、ほどほどにね』
ヴァンパイアの京楽は、天使の浮竹とマーブルクッキーを食べて、アッサムの紅茶を飲んで、和んでいた。
『天使の俺の入れた紅茶はうまいな』
「何、その対応の違い!」
『近くに来るな。下品な匂いが移る!』
「フローラルな香りだよ!」
『お前の精神が臭い』
「精神が臭いって何それ!」
まるで漫才のようで、それを楽しそうにヴァンパイアの京楽と天使の浮竹が見守っていた。
「いいもんいいもん。僕は今日は猫缶の高級なの食べてやる」
『高級だと!お前にはメザシがお似合いだ!』
「何それ!どこの貧乏猫の話さ!」
『お前だ』
「僕はこれでも金はあるほうなんだからね!」
『嘘くさい』
「ムキーーー!!!」
フェンリルの浮竹は、大型犬くらいのフェンリルの姿になって、黒猫の京楽を追いかけだした。
「ここまでおいでー。ばーかばーか!」
『むう。高い狭いとこに昇るなんて、反則だぞ』
「あっかんべー」
『体当たりしてやる』
どしんとたんすが揺れて、黒猫の京楽がおっこちてきた。
「フェンリルの俺、家の中であんまり暴れないでくれ。一戸建てとはいえ、家が壊れる」
『むう、すまない』
「怒られてる。バーカバーカ」
『ばかはお前だ。バーカバーカ』
ヴァンパイアの京楽と、天使の浮竹は笑っていた。
「2人とも、ほどほどにな」
『うん、ほどほどにね』
『みろ、お前のせいで怒られた』
「僕だけのせいじゃないと思うんだけど!」
その日一日、京楽は黒猫姿のままで、フェンリルの浮竹もつられてかフェンリル姿のまま、黒猫の京楽を追いかけているのであった。
「ええ、それ、狼っていうか、犬の嗅覚での話じゃないの」
「実際、黒猫姿になったお前の匂いをかいでみた。少し臭かった」
「ガーン」
京楽は、黒猫姿になった。
「洗って」
「洗う。わしゃわしゃ洗うぞ。ちゃんと猫用シャンプーを使うし、ブラッシングもするから安心しろ。毛皮はドライヤーでかわかしてやる」
まだ、寒い時期なので、濡れたままの姿でいるのはきついだろうという、浮竹の判断だった。
黒猫姿になった京楽を抱き上げて、浮竹は衣服の袖をまくり、猫用シャンプーでわしゃわしゃと洗った。
3回洗った。
それからシャワーで泡を流して、ブラッシングもして、ドライヤーで乾かした。
ちょっとべたついていた毛皮が、ふわふわのもこもこになっていた。
「うん、フローラルないい匂いだ」
「そう?自分じゃわからないんだけど」
黒猫姿で、京楽はスンスンと自分の毛皮をかいでみる。
『遊びにきたぞー!』
ちょうど、フェンリルの浮竹とヴァンパイアの京楽が遊びにきた。
『あれ、お前黒猫姿なのにあんまり臭くない。どうしてだ?いい匂いがする』
「ふふん、浮竹に洗ってもらったからだよ。3回も洗ってくれた。愛だよ、愛」
『臭いから、3回洗われたんだろう?』
「ムキー、僕はもうそんなに臭くない!」
『彼、黒猫の姿のままだけどいいの?』
ヴァンパイアの京楽が天使の浮竹に話しかけると、天使の浮竹は堕天使の京楽の作ったマーブルクッキーを用意して、アッサムの紅茶を入れていた。
「今日はせっかくだから、1日あのままの姿でいるんだそうだ」
「そうだよ。僕はフローラルな黒猫。気高き黒猫」
『野良のアホ猫の間違いじゃないのか?』
フェンリルの浮竹は、天使の浮竹と同じ顔で堕天使の京楽をからかった。
『こらこら、浮竹。あんまり彼で遊ばないの』
『このマーブルクッキー美味しいな』
「僕が作ったんだよ」
自慢する堕天使の京楽に、フェンリルの浮竹は狼の耳をへなっと下げて、尻尾をたらした。
『まずい気がしてきた』
「キー!失礼な子だね!ちょっと、ヴァンパイアの僕、このフェンリルの浮竹のしつけ、なってないよ!」
『俺はペットじゃない!しつけなんてされてない!』
「京楽も、フェンリルの俺も、ほどほどにな」
『うん、ほどほどにね』
ヴァンパイアの京楽は、天使の浮竹とマーブルクッキーを食べて、アッサムの紅茶を飲んで、和んでいた。
『天使の俺の入れた紅茶はうまいな』
「何、その対応の違い!」
『近くに来るな。下品な匂いが移る!』
「フローラルな香りだよ!」
『お前の精神が臭い』
「精神が臭いって何それ!」
まるで漫才のようで、それを楽しそうにヴァンパイアの京楽と天使の浮竹が見守っていた。
「いいもんいいもん。僕は今日は猫缶の高級なの食べてやる」
『高級だと!お前にはメザシがお似合いだ!』
「何それ!どこの貧乏猫の話さ!」
『お前だ』
「僕はこれでも金はあるほうなんだからね!」
『嘘くさい』
「ムキーーー!!!」
フェンリルの浮竹は、大型犬くらいのフェンリルの姿になって、黒猫の京楽を追いかけだした。
「ここまでおいでー。ばーかばーか!」
『むう。高い狭いとこに昇るなんて、反則だぞ』
「あっかんべー」
『体当たりしてやる』
どしんとたんすが揺れて、黒猫の京楽がおっこちてきた。
「フェンリルの俺、家の中であんまり暴れないでくれ。一戸建てとはいえ、家が壊れる」
『むう、すまない』
「怒られてる。バーカバーカ」
『ばかはお前だ。バーカバーカ』
ヴァンパイアの京楽と、天使の浮竹は笑っていた。
「2人とも、ほどほどにな」
『うん、ほどほどにね』
『みろ、お前のせいで怒られた』
「僕だけのせいじゃないと思うんだけど!」
その日一日、京楽は黒猫姿のままで、フェンリルの浮竹もつられてかフェンリル姿のまま、黒猫の京楽を追いかけているのであった。
堕天使と天使16
「なんでも、その鏡は呪いの鏡といって、化け物が気に入った者を吸いこんで、化け物が吸い込んだ者の偽物をになるというの。偽物は、愛しい者を取り込んでしまうの。とても恐ろしいことなのよ。まぁ、おとぎ話だけれどね。愛しい者が偽物を見破って、鏡の中に入り込み、本物にキスをすれば呪いは解けるのよ」
子供の頃、天使の浮竹の4大天使であり、母親代わりであったガブリエルから聞いた、おとぎ話の鏡の話をふと思い出した。
「この鏡・・・・・・」
それは、古い古い骨董品で、とあるコレクターのいる場所まで古い鏡を運んでくれという依頼だった。
「まさか、呪いの鏡だったりして」
「はははは、そんなばかな」
「そうだな。呪いの鏡なんてあるわけがない」
京楽は、笑って骨董日の鏡を包んでいる布をとってみた。
浮竹は、その鏡に触れてみた。
すると、京楽には見えないようで、化け物が出てきて、浮竹の手を鏡の中から掴んできた。
「京楽!」
叫んでも、京楽には見えていないようだった。
「天使の魂・・・・ふふふ、すごいわ。セラフじゃないの。私はセラフになって、あなたの愛しい者と永遠に幸せになるのよ」
浮竹は、鏡の中に吸い込まれた。
化け物はかろうじで女の姿をしていたが、浮竹が吸い込まれると、浮竹の姿になって、京楽に笑顔を見せた。
「助けてくれ、京楽!」
ドンドンと、鏡を叩く。
鏡の中に吸い込まれた浮竹は、鏡の中から偽物の自分が、愛しい京楽に愛を囁くのを見ていた。
「どうしたの、浮竹。今日は積極的だね」
「俺はお前を愛している。お前も俺を愛している。そうだな?」
偽物は、そう言って京楽を誘惑した。
「京楽!そいつは偽物だ!」
「浮竹・・・・愛してるよ」
「京楽!サンダーボルト!」
鏡の中で、魔法を使ってみたが、ばちっと音がして弾かれた。
叩いても蹴っても魔法を使っても、鏡の外には出れなかった。
鏡の中で、浮竹はふと、鏡の奥に小さい頃の子供の自分がいるのに気づいた。
「どうして、泣いている?お前は誰だ?」
子供の浮竹は、泣きながら座っていた。
「俺はお前だ。お前が愛しい者を疑うから、哀しいんだ」
「俺は・・・・京楽を・・・疑って・・・・・」
「ほら、疑っている。いつか昔の恋人にとられるんじゃないかと、心の何処かで恐怖してる」
「うるさい!ファイアフェニックス!」
浮竹は炎の禁忌を放つが、子供の浮竹は平然としていた。
「その疑いが、鏡の悪魔を呼んだ。さぁ、ここで大人しく鏡の悪魔に愛しい者にとられるのを見ているのか?」
「京楽!それは俺じゃない!」
鏡の向こう側では、鏡の悪魔の浮竹が、京楽にキスをしていた。
「京楽!」
鏡の外で、京楽は顔を顰めた。
「君・・・本物の浮竹じゃないね」
「違う。俺が本物の浮竹だ」
「じゃあ、セラフの証である翼を出してみて」
「それは・・・・・」
「できないんでしょ。偽物は、偽物。本物は・・・鏡の中か。厄介だね。君を殺すと、鏡の中の浮竹は二度と戻ってこない」
「俺と幸せになろう。俺でもいいだろう?」
「無理だね。僕は本物の浮竹だけを今は愛している」
鏡の中で、浮竹は涙を零した。
「京楽、疑ってすまない。俺も、お前だけを愛している」
「そう。それでいいんだ。それでいい」
子供の姿の浮竹は、すーっと本物の浮竹の中に溶け込んでいった。
鏡の中の子供の浮竹は、本物の浮竹の負の感情が表に現れたものだった。
「京楽!」
浮竹が鏡の向こう側に手を伸ばすと、京楽はその手を掴んで、鏡の中に入ってきた。
「ばかな!鏡の中にはいれるというの!」
鏡の悪魔は元の姿に戻って、醜い女の姿で京楽を取り戻そうと、鏡の中に入り込む京楽を引っ張る。
「わ、浮竹、そっちからひっぱって。外にひきずりだされる!」
「京楽は、俺のものだ!」
聖なる力を京楽ごしに叩き込むと、鏡の悪魔は悲鳴をあげた。
「うぎゃあああ!!」
鏡の中に京楽が入ってくる。
「一緒に、外に出よう」
「外に出る方法は・・・・」
「知ってる。僕も、呪いの鏡の話聞いたことあるから」
京楽は、浮竹にキスをした。
「ん・・・・・・んう」
偽物とキスをしたことを帳消しにするような、深い口づけに、浮竹は震えた。
「さぁ、出よう。呪いは解けたはずだ」
「うん・・・・・・」
真っ赤になって、浮竹は京楽に手を引かれて鏡の外に出た。
鏡の外には、もう鏡の悪魔はいなかった。
「くちおしや。セラフの魂なんて貴重なのに」
鏡の中に戻った、鏡の悪魔を浮竹と京楽は封印を施して、二度と外に出られないようにした。
「こんな曰くつきの鏡欲しがるなんて・・・・コレクターの人、呪いの鏡って知ってのことだろうかなぁ」
「いや、ただの古い骨董品と思っているだろう。金持ちの老人が取引相手だ。それにしても、よくあれが偽物の俺だと分かったな」
「んー。キスの味が違うし、昨日僕が君の首筋につけたキスマークがなかった」
「なっ」
浮竹は真っ赤になった。
キスマークが見える位置にある状態で、仕事を引き受けて古い鏡を受け取っていた。
「京楽のバカ!」
「キスマークくらいいいじゃない」
「よくない!」
ぎゃあぎゃあ言い合う。
「僕は君だけを愛しているから。これは、本当だよ」
「ああ。俺もお前だけを愛している。少しでも、お前を疑って悪かった」
「やっぱり、少し疑ってたんだ?」
「仕方ないだろう。お前の過去が過去だ。過去の恋人がでてきて、そっちになびくかもしれないって、少し不安になってたのは本当だ」
「まぁ、僕の過去はどうしようもないけど、未来は変えていける。現在から未来を。君だけを愛すると誓うよ」
京楽は、どこからか緑色の石をはめこんだ指輪を、浮竹の右手の薬指にはめた。
「これは・・・・・」
「いつか渡そうと思っていたものだよ。僕の分もあるんだ」
「京楽・・・・」
浮竹は、自分から京楽に口づけた。
それから、浮竹が京楽の指に対になっている指輪をはめた。
何度かキスを交わして、鏡を慎重に箱にしまいこんで、依頼人のところに車で到着すると、金もちのおじいさんが対応した。
「ありがとうございます。この鏡、昔祖父が買ったもので、なんでも鏡の悪魔が宿ってるとかいってたんですが、大丈夫でしたか?ただの祖父の作り話だとは思うのですが」
「ああ、大丈夫だった」
依頼人に心配をかけまいと、浮竹は鏡の入った箱を老人に手渡した。
封印を施したので、もう無害なただの古い鏡だ。
「では、報酬の金貨30枚を」
「うん、ありがとね」
京楽は、報酬金を受け取ると、車に乗り込んで浮竹を乗せて、猛スピードで家に帰宅した。
「京楽?」
「君を抱きたい。むらむらしてた。抱いてもいい?」
「あ、ああ・・・・・・」
京楽に抱き上げられて、キングサイズのベッドに運ばれた。
衣服を脱がされて、愛撫されて、浮竹は啼いた。
「ああああ!!!」
京楽に一気に貫かれて、浮竹はその快楽に酔いしれる。
「十四郎、愛してるよ」
「ひあああ!」
京楽は、浮竹の最奥を抉ると、浮竹の中に子種を注ぎ込む。
「んあ・・・・・」
最奥を抉られる行為に、浮竹は涙をにじませた。
「気持ちいい?」
「ん・・気持ちいい・・・・」
京楽は、浮竹を突き上げた。
何度か突き上げると、浮竹はシーツに精液を放った。
「んあああ」
「もっと、僕を求めて?」
「あ、春水、春水、もっと・・・・・ああああ」
京楽は、求められるままに浮竹を貪った。
「あ、いっちゃう、やだああああ」
女のように、オーガズムでいくこを覚えた体は、京楽の行為に快感を感じていってしまっていた。
「やああ、あ、あ、やっ」
「愛してるよ、十四郎」
「あ、春水、春水」
深い口づけを交わし合う。
京楽は、浮竹を抱きしめた。
浮竹も、京楽を抱きしめた。
「愛してる、春水。あああ!」
「愛の証を注ぎ込んであげる」
最奥を抉られ、貫かれて、もう何度目になるかも分からない熱を注ぎ込まれる。
「あ・・・・」
じんわりと胎の奥に広がっていく熱を感じながら、浮竹は目を閉じた。
「一緒に、お風呂入ろ」
「ああ」
少しして、体力が戻ったところで二人で湯浴みをした。
風呂でも京楽が盛って、浮竹に蹴られたのは言うまでもない。
子供の頃、天使の浮竹の4大天使であり、母親代わりであったガブリエルから聞いた、おとぎ話の鏡の話をふと思い出した。
「この鏡・・・・・・」
それは、古い古い骨董品で、とあるコレクターのいる場所まで古い鏡を運んでくれという依頼だった。
「まさか、呪いの鏡だったりして」
「はははは、そんなばかな」
「そうだな。呪いの鏡なんてあるわけがない」
京楽は、笑って骨董日の鏡を包んでいる布をとってみた。
浮竹は、その鏡に触れてみた。
すると、京楽には見えないようで、化け物が出てきて、浮竹の手を鏡の中から掴んできた。
「京楽!」
叫んでも、京楽には見えていないようだった。
「天使の魂・・・・ふふふ、すごいわ。セラフじゃないの。私はセラフになって、あなたの愛しい者と永遠に幸せになるのよ」
浮竹は、鏡の中に吸い込まれた。
化け物はかろうじで女の姿をしていたが、浮竹が吸い込まれると、浮竹の姿になって、京楽に笑顔を見せた。
「助けてくれ、京楽!」
ドンドンと、鏡を叩く。
鏡の中に吸い込まれた浮竹は、鏡の中から偽物の自分が、愛しい京楽に愛を囁くのを見ていた。
「どうしたの、浮竹。今日は積極的だね」
「俺はお前を愛している。お前も俺を愛している。そうだな?」
偽物は、そう言って京楽を誘惑した。
「京楽!そいつは偽物だ!」
「浮竹・・・・愛してるよ」
「京楽!サンダーボルト!」
鏡の中で、魔法を使ってみたが、ばちっと音がして弾かれた。
叩いても蹴っても魔法を使っても、鏡の外には出れなかった。
鏡の中で、浮竹はふと、鏡の奥に小さい頃の子供の自分がいるのに気づいた。
「どうして、泣いている?お前は誰だ?」
子供の浮竹は、泣きながら座っていた。
「俺はお前だ。お前が愛しい者を疑うから、哀しいんだ」
「俺は・・・・京楽を・・・疑って・・・・・」
「ほら、疑っている。いつか昔の恋人にとられるんじゃないかと、心の何処かで恐怖してる」
「うるさい!ファイアフェニックス!」
浮竹は炎の禁忌を放つが、子供の浮竹は平然としていた。
「その疑いが、鏡の悪魔を呼んだ。さぁ、ここで大人しく鏡の悪魔に愛しい者にとられるのを見ているのか?」
「京楽!それは俺じゃない!」
鏡の向こう側では、鏡の悪魔の浮竹が、京楽にキスをしていた。
「京楽!」
鏡の外で、京楽は顔を顰めた。
「君・・・本物の浮竹じゃないね」
「違う。俺が本物の浮竹だ」
「じゃあ、セラフの証である翼を出してみて」
「それは・・・・・」
「できないんでしょ。偽物は、偽物。本物は・・・鏡の中か。厄介だね。君を殺すと、鏡の中の浮竹は二度と戻ってこない」
「俺と幸せになろう。俺でもいいだろう?」
「無理だね。僕は本物の浮竹だけを今は愛している」
鏡の中で、浮竹は涙を零した。
「京楽、疑ってすまない。俺も、お前だけを愛している」
「そう。それでいいんだ。それでいい」
子供の姿の浮竹は、すーっと本物の浮竹の中に溶け込んでいった。
鏡の中の子供の浮竹は、本物の浮竹の負の感情が表に現れたものだった。
「京楽!」
浮竹が鏡の向こう側に手を伸ばすと、京楽はその手を掴んで、鏡の中に入ってきた。
「ばかな!鏡の中にはいれるというの!」
鏡の悪魔は元の姿に戻って、醜い女の姿で京楽を取り戻そうと、鏡の中に入り込む京楽を引っ張る。
「わ、浮竹、そっちからひっぱって。外にひきずりだされる!」
「京楽は、俺のものだ!」
聖なる力を京楽ごしに叩き込むと、鏡の悪魔は悲鳴をあげた。
「うぎゃあああ!!」
鏡の中に京楽が入ってくる。
「一緒に、外に出よう」
「外に出る方法は・・・・」
「知ってる。僕も、呪いの鏡の話聞いたことあるから」
京楽は、浮竹にキスをした。
「ん・・・・・・んう」
偽物とキスをしたことを帳消しにするような、深い口づけに、浮竹は震えた。
「さぁ、出よう。呪いは解けたはずだ」
「うん・・・・・・」
真っ赤になって、浮竹は京楽に手を引かれて鏡の外に出た。
鏡の外には、もう鏡の悪魔はいなかった。
「くちおしや。セラフの魂なんて貴重なのに」
鏡の中に戻った、鏡の悪魔を浮竹と京楽は封印を施して、二度と外に出られないようにした。
「こんな曰くつきの鏡欲しがるなんて・・・・コレクターの人、呪いの鏡って知ってのことだろうかなぁ」
「いや、ただの古い骨董品と思っているだろう。金持ちの老人が取引相手だ。それにしても、よくあれが偽物の俺だと分かったな」
「んー。キスの味が違うし、昨日僕が君の首筋につけたキスマークがなかった」
「なっ」
浮竹は真っ赤になった。
キスマークが見える位置にある状態で、仕事を引き受けて古い鏡を受け取っていた。
「京楽のバカ!」
「キスマークくらいいいじゃない」
「よくない!」
ぎゃあぎゃあ言い合う。
「僕は君だけを愛しているから。これは、本当だよ」
「ああ。俺もお前だけを愛している。少しでも、お前を疑って悪かった」
「やっぱり、少し疑ってたんだ?」
「仕方ないだろう。お前の過去が過去だ。過去の恋人がでてきて、そっちになびくかもしれないって、少し不安になってたのは本当だ」
「まぁ、僕の過去はどうしようもないけど、未来は変えていける。現在から未来を。君だけを愛すると誓うよ」
京楽は、どこからか緑色の石をはめこんだ指輪を、浮竹の右手の薬指にはめた。
「これは・・・・・」
「いつか渡そうと思っていたものだよ。僕の分もあるんだ」
「京楽・・・・」
浮竹は、自分から京楽に口づけた。
それから、浮竹が京楽の指に対になっている指輪をはめた。
何度かキスを交わして、鏡を慎重に箱にしまいこんで、依頼人のところに車で到着すると、金もちのおじいさんが対応した。
「ありがとうございます。この鏡、昔祖父が買ったもので、なんでも鏡の悪魔が宿ってるとかいってたんですが、大丈夫でしたか?ただの祖父の作り話だとは思うのですが」
「ああ、大丈夫だった」
依頼人に心配をかけまいと、浮竹は鏡の入った箱を老人に手渡した。
封印を施したので、もう無害なただの古い鏡だ。
「では、報酬の金貨30枚を」
「うん、ありがとね」
京楽は、報酬金を受け取ると、車に乗り込んで浮竹を乗せて、猛スピードで家に帰宅した。
「京楽?」
「君を抱きたい。むらむらしてた。抱いてもいい?」
「あ、ああ・・・・・・」
京楽に抱き上げられて、キングサイズのベッドに運ばれた。
衣服を脱がされて、愛撫されて、浮竹は啼いた。
「ああああ!!!」
京楽に一気に貫かれて、浮竹はその快楽に酔いしれる。
「十四郎、愛してるよ」
「ひあああ!」
京楽は、浮竹の最奥を抉ると、浮竹の中に子種を注ぎ込む。
「んあ・・・・・」
最奥を抉られる行為に、浮竹は涙をにじませた。
「気持ちいい?」
「ん・・気持ちいい・・・・」
京楽は、浮竹を突き上げた。
何度か突き上げると、浮竹はシーツに精液を放った。
「んあああ」
「もっと、僕を求めて?」
「あ、春水、春水、もっと・・・・・ああああ」
京楽は、求められるままに浮竹を貪った。
「あ、いっちゃう、やだああああ」
女のように、オーガズムでいくこを覚えた体は、京楽の行為に快感を感じていってしまっていた。
「やああ、あ、あ、やっ」
「愛してるよ、十四郎」
「あ、春水、春水」
深い口づけを交わし合う。
京楽は、浮竹を抱きしめた。
浮竹も、京楽を抱きしめた。
「愛してる、春水。あああ!」
「愛の証を注ぎ込んであげる」
最奥を抉られ、貫かれて、もう何度目になるかも分からない熱を注ぎ込まれる。
「あ・・・・」
じんわりと胎の奥に広がっていく熱を感じながら、浮竹は目を閉じた。
「一緒に、お風呂入ろ」
「ああ」
少しして、体力が戻ったところで二人で湯浴みをした。
風呂でも京楽が盛って、浮竹に蹴られたのは言うまでもない。
堕天使と天使16
「ん・・・・・・・」
起きると、すっぱだかの京楽がいた。
京楽は、黒猫の姿になれる。
久しぶりに黒猫に変化していて、浮竹が猫好きということもあって構いまくっていたら、そのまま疲れて一緒のベッドで眠ってしまったのだ。
元から一緒のベッドで寝ているが、さすがにいつもは服を着ている。
「京楽、起きろ。それから服を着ろ」
「んーもうちょっと」
ごそごそと浮竹を探してくる手をつねってやると、痛みで京楽が目を開いた。
「ぐっどもーにんぐ。まいはにー」
「バカやってないで服着て朝食の準備しろ。コーヒーをいれてくる。黒猫ならかわいいのに、なぜ堕天使のなった京楽はかわいくないのか・・・・・・」
そんなことを呟きながら、浮竹はキッチンに移動した。
京楽も服を着て、キッチンに移動して、浮竹にいれてもらったコーヒーを飲んで、簡単だが朝食を作り始めた。
いい匂いがしてきて、浮竹はテレビをつけた。
「エキドナの異常繁殖が見られます。アナウンサーの佐藤さん、現場状況をどうぞ」
「はい、佐藤です。こちらは、冒険者ギルドの前にきています。ギルドマスターにお話しを伺いましたところ、エキドナ退治は毎日のように行っているそうですが、母体がいるのか完全に駆除できないようです。これがエキドナです」
TVの向こう側では、死んだエキドナの死体が映っていた。
「緊急依頼。エキドナの母体を退治せよ。金貨200枚」
浮竹が、魔法で依頼書を分別していると、緊急依頼でエキドナの母体を叩けというものがあった。
エキドナは美しい女性の上半身に蛇の下半身をもつ、ラミアに少し似ているが、ラミアより存在は上位で、ヒュドラやケルベロスの母と言われていた。
「冒険者ギルドだけでは対応できなくなったみたいだね。母体を叩けだなんて、無茶を言ってくれるね、新しいギルドマスターは」
ハイエルフのギルドマスターは2カ月ほど前に、ドラゴンマニアなので、ドラゴンを探す旅にでるとかいって、新しいギルドマスターがやってきた。
エルフだったが、少女のような美貌を持つ少年で、男の娘だった。
浮竹と京楽は、エキドナの母体の情報を得るために冒険者ギルドに来ていた。
「やあ、浮竹に京楽。今日はいい天気だね」
「ああ、そうだな。エキドナの件について聞きたい」
京楽は、ゴスロリファッションな男の娘のギルドマスターのスカートをめくった。
「何するんだい!」
「いやぁ、下着は男の子のものなんだと思って」
「浮気か!おいこら、冒険者ギルドのしかもギルドマスターに浮気か!」
京楽は、浮竹に首を締め上げられて、酸素不足で顔が蒼くになっていた。
「ほら、浮竹、そんなことしてると京楽が死んじゃうよ」
「こいつはいっぺん殺さないと、性根が腐ってる!」
「ギブギブ、浮竹、僕が悪かったから。ほんのでき心なんだよ。男の娘のギルドマスターの下着は女物か男物か気になっただけだから」
「だからってスカートをめくるな!立派な犯罪だぞ!」
「まぁ、僕は平気だけどね。それより、エキドナの母体は西のアルンデ地方の森にいると推測されている。アルンデまでは車で4時間ってとこかな。アルンデからエキドナが沸きだしてるから、アルンデ地方は冒険者以外は立ち入り禁止になっている。住民の避難は完了しているよ」
「そうか。さっそく向かうことにする」
「母体はきっと大きい。気を付けて」
「じゃあ、エキドナの母体の魔石を提出するのを待っていてくれな」
そう言って、浮竹と京楽は車でアルンデ地方に向かい、瘴気の濃い森の近くに車を停めると、清めの呪符を手に森の中に入っていった。
「瘴気が濃いな」
「エキドナだよ」
まだ生まれて幼体のエキドナが数体いた。
「ヘルフレイム!」
「アイスクラッシャー!」
「きゃああああ!!」
「ぎゃああああああ!!」
幼体だからと手加減していては、いずれ成長して人に害を成す。
幼体がいるということは、母体が近いことを意味していた。
清めの札をもっているが、瘴気が濃くて、浮竹は京楽の分まで体の周りに結界を張り、瘴気で体がおかしくなることを防いだ。
森の奥から声がした。
「誰。わらわのかわいい子供たちを殺した。わらわの子はやがて世界を満たす。わらわは絶対。わらわは君臨者」
「母体から声をかけてくれるなんて、居場所を教えてくれているようなものだね」
「気をつけろ。母体はでかいぞ」
森の奥の開けた場所に、普通のエキドナの10倍はあろうかという巨大なエキドナがいた。
母体であった。
卵がそこかしこにあった。
「グラビディ・ゼロ!」
京楽が、重力の魔法でまずは卵を破壊する。
これ以上エキドナの孵化を防ぐためだった。
「おのれ、人間め、わらわの子供たちを殺すのか!」
「正確には天使と堕天使なんだけどね。子供っていうか、母体である君に死んでもらう」
「わらわは世界の王になるのだ。たかが天使や堕天使ごときに・・・・・」
「アイスコキュートス」
「ぎゃあああああああ!!!」
下半身の蛇の部分を浮竹に凍らされて、エキドナの母体は暴れ狂った。
自分で自分が産んだ卵を破壊しながら、身をくねらせる。
「いたい、いたい、寒いのは嫌いだ、寒いのはいやだ」
「氷が弱点か。蛇のモンスターでもあるしな。京楽、いくぞ」
「うん」
「「アイシクルフィールド」」
氷の禁忌で、エキドナの母体は大きな氷の彫像になった。
「ダイヤモンドダスト!」
それを、さらに硬い氷で割っていく。
エキドナの母体は、死しても氷は溶けず、魔石は京楽がナイフで取り出した。
「依頼達成だな。これで、エキドナの異常繁殖は終わるだろう」
「そうだと、いいんだけどね」
「どうした、京楽?」
「町に溢れかえるほどのエキドナを、この母体だけが産んだとは思えないんだ」
事実、探してみると他に3体の母体を発見し、駆除した。
「京楽、お手柄だな」
「チューして、チュー」
「はいはい」
京楽の唇にキスをする。
吸い付いて離れない京楽を殴り倒して、浮竹は魔石を4つ手に、車に乗り込んで冒険者ギルドに帰還した。
「エキドナの母体を4体確認した。どれも駆除した。証拠の魔石だ」
「わお、大きな魔石だね。これは高値がつくよ」
エキドナの母体は、ハイクラスのエキドナであった。
エキドナの女王だ.。
「1個金貨300枚で引き取ることにするよ」
「報酬が金貨200枚で、魔石が金貨300枚×4の1200枚か。なかなかの収入だな、京楽・・・・・・・」
京楽は、ギルドマスターの男の娘のスカートをまためくっていた。
「あ、今日は女の子ものの下着はいてる・・・・・・」
「京楽~~~~~~~?」
にこにこした顔で、手をボキボキならしながら、浮竹はスマイルを浮かべて京楽の鳩尾に右ストレートを決めた。
「ごふっ」
「ボクはランゼ。あいにく、京楽みたいなもじゃもじゃのおっさんに興味はないから。恋愛対象はあくまで女の子。男の娘の恰好してるけどね」
「ランゼ。京楽がすまない。スカートめくりをやめさせるよう、徹底的に指導しておく」
「ほどほどにね。さっきから、京楽嬉しそうにしてるし」
罰が罰になっていない。
そんな京楽だった。
浮竹にどんな形であれ、構ってもらえてうれしいのだ。
「京楽!おいこら!」
「にゃあああん」
「わ、黒猫の姿とるなんてずるいぞ!怒れないじゃないか!」
「にゃああん。ごろごろ」
黒猫の京楽は、浮竹の肩に乗って、甘え出した。
「仕方ない。元に戻るときは、ちゃんと服を用意しておけよ」
「にゃあああん」
その後、黒猫の京楽は、猫缶詰を食べてカリカリを食べてチュールを食べて、ベッドの下にもぐって寝るのだった。
朝になり、ベッドの下から苦悶の声が出てくる。
「ベッドの下から出れないよ~~~~」
「自業自得だ、ばかが。また黒猫になればいいだけだろう」
「あ、そうだった」
黒猫になり、ベッドの下から出てきた京楽は、すぐに人型に戻った。
「朝っぱらから、なんちゅーもんを見せつけるんだ!」
浮竹は、まっぱの京楽に怒って、股間を蹴り上げた。
「ぬおおおおおおおおおお」
悶絶する京楽に、着替えの服を投げつけて、浮竹は朝食を作るためにキッチンに移動するのであった。
起きると、すっぱだかの京楽がいた。
京楽は、黒猫の姿になれる。
久しぶりに黒猫に変化していて、浮竹が猫好きということもあって構いまくっていたら、そのまま疲れて一緒のベッドで眠ってしまったのだ。
元から一緒のベッドで寝ているが、さすがにいつもは服を着ている。
「京楽、起きろ。それから服を着ろ」
「んーもうちょっと」
ごそごそと浮竹を探してくる手をつねってやると、痛みで京楽が目を開いた。
「ぐっどもーにんぐ。まいはにー」
「バカやってないで服着て朝食の準備しろ。コーヒーをいれてくる。黒猫ならかわいいのに、なぜ堕天使のなった京楽はかわいくないのか・・・・・・」
そんなことを呟きながら、浮竹はキッチンに移動した。
京楽も服を着て、キッチンに移動して、浮竹にいれてもらったコーヒーを飲んで、簡単だが朝食を作り始めた。
いい匂いがしてきて、浮竹はテレビをつけた。
「エキドナの異常繁殖が見られます。アナウンサーの佐藤さん、現場状況をどうぞ」
「はい、佐藤です。こちらは、冒険者ギルドの前にきています。ギルドマスターにお話しを伺いましたところ、エキドナ退治は毎日のように行っているそうですが、母体がいるのか完全に駆除できないようです。これがエキドナです」
TVの向こう側では、死んだエキドナの死体が映っていた。
「緊急依頼。エキドナの母体を退治せよ。金貨200枚」
浮竹が、魔法で依頼書を分別していると、緊急依頼でエキドナの母体を叩けというものがあった。
エキドナは美しい女性の上半身に蛇の下半身をもつ、ラミアに少し似ているが、ラミアより存在は上位で、ヒュドラやケルベロスの母と言われていた。
「冒険者ギルドだけでは対応できなくなったみたいだね。母体を叩けだなんて、無茶を言ってくれるね、新しいギルドマスターは」
ハイエルフのギルドマスターは2カ月ほど前に、ドラゴンマニアなので、ドラゴンを探す旅にでるとかいって、新しいギルドマスターがやってきた。
エルフだったが、少女のような美貌を持つ少年で、男の娘だった。
浮竹と京楽は、エキドナの母体の情報を得るために冒険者ギルドに来ていた。
「やあ、浮竹に京楽。今日はいい天気だね」
「ああ、そうだな。エキドナの件について聞きたい」
京楽は、ゴスロリファッションな男の娘のギルドマスターのスカートをめくった。
「何するんだい!」
「いやぁ、下着は男の子のものなんだと思って」
「浮気か!おいこら、冒険者ギルドのしかもギルドマスターに浮気か!」
京楽は、浮竹に首を締め上げられて、酸素不足で顔が蒼くになっていた。
「ほら、浮竹、そんなことしてると京楽が死んじゃうよ」
「こいつはいっぺん殺さないと、性根が腐ってる!」
「ギブギブ、浮竹、僕が悪かったから。ほんのでき心なんだよ。男の娘のギルドマスターの下着は女物か男物か気になっただけだから」
「だからってスカートをめくるな!立派な犯罪だぞ!」
「まぁ、僕は平気だけどね。それより、エキドナの母体は西のアルンデ地方の森にいると推測されている。アルンデまでは車で4時間ってとこかな。アルンデからエキドナが沸きだしてるから、アルンデ地方は冒険者以外は立ち入り禁止になっている。住民の避難は完了しているよ」
「そうか。さっそく向かうことにする」
「母体はきっと大きい。気を付けて」
「じゃあ、エキドナの母体の魔石を提出するのを待っていてくれな」
そう言って、浮竹と京楽は車でアルンデ地方に向かい、瘴気の濃い森の近くに車を停めると、清めの呪符を手に森の中に入っていった。
「瘴気が濃いな」
「エキドナだよ」
まだ生まれて幼体のエキドナが数体いた。
「ヘルフレイム!」
「アイスクラッシャー!」
「きゃああああ!!」
「ぎゃああああああ!!」
幼体だからと手加減していては、いずれ成長して人に害を成す。
幼体がいるということは、母体が近いことを意味していた。
清めの札をもっているが、瘴気が濃くて、浮竹は京楽の分まで体の周りに結界を張り、瘴気で体がおかしくなることを防いだ。
森の奥から声がした。
「誰。わらわのかわいい子供たちを殺した。わらわの子はやがて世界を満たす。わらわは絶対。わらわは君臨者」
「母体から声をかけてくれるなんて、居場所を教えてくれているようなものだね」
「気をつけろ。母体はでかいぞ」
森の奥の開けた場所に、普通のエキドナの10倍はあろうかという巨大なエキドナがいた。
母体であった。
卵がそこかしこにあった。
「グラビディ・ゼロ!」
京楽が、重力の魔法でまずは卵を破壊する。
これ以上エキドナの孵化を防ぐためだった。
「おのれ、人間め、わらわの子供たちを殺すのか!」
「正確には天使と堕天使なんだけどね。子供っていうか、母体である君に死んでもらう」
「わらわは世界の王になるのだ。たかが天使や堕天使ごときに・・・・・」
「アイスコキュートス」
「ぎゃあああああああ!!!」
下半身の蛇の部分を浮竹に凍らされて、エキドナの母体は暴れ狂った。
自分で自分が産んだ卵を破壊しながら、身をくねらせる。
「いたい、いたい、寒いのは嫌いだ、寒いのはいやだ」
「氷が弱点か。蛇のモンスターでもあるしな。京楽、いくぞ」
「うん」
「「アイシクルフィールド」」
氷の禁忌で、エキドナの母体は大きな氷の彫像になった。
「ダイヤモンドダスト!」
それを、さらに硬い氷で割っていく。
エキドナの母体は、死しても氷は溶けず、魔石は京楽がナイフで取り出した。
「依頼達成だな。これで、エキドナの異常繁殖は終わるだろう」
「そうだと、いいんだけどね」
「どうした、京楽?」
「町に溢れかえるほどのエキドナを、この母体だけが産んだとは思えないんだ」
事実、探してみると他に3体の母体を発見し、駆除した。
「京楽、お手柄だな」
「チューして、チュー」
「はいはい」
京楽の唇にキスをする。
吸い付いて離れない京楽を殴り倒して、浮竹は魔石を4つ手に、車に乗り込んで冒険者ギルドに帰還した。
「エキドナの母体を4体確認した。どれも駆除した。証拠の魔石だ」
「わお、大きな魔石だね。これは高値がつくよ」
エキドナの母体は、ハイクラスのエキドナであった。
エキドナの女王だ.。
「1個金貨300枚で引き取ることにするよ」
「報酬が金貨200枚で、魔石が金貨300枚×4の1200枚か。なかなかの収入だな、京楽・・・・・・・」
京楽は、ギルドマスターの男の娘のスカートをまためくっていた。
「あ、今日は女の子ものの下着はいてる・・・・・・」
「京楽~~~~~~~?」
にこにこした顔で、手をボキボキならしながら、浮竹はスマイルを浮かべて京楽の鳩尾に右ストレートを決めた。
「ごふっ」
「ボクはランゼ。あいにく、京楽みたいなもじゃもじゃのおっさんに興味はないから。恋愛対象はあくまで女の子。男の娘の恰好してるけどね」
「ランゼ。京楽がすまない。スカートめくりをやめさせるよう、徹底的に指導しておく」
「ほどほどにね。さっきから、京楽嬉しそうにしてるし」
罰が罰になっていない。
そんな京楽だった。
浮竹にどんな形であれ、構ってもらえてうれしいのだ。
「京楽!おいこら!」
「にゃあああん」
「わ、黒猫の姿とるなんてずるいぞ!怒れないじゃないか!」
「にゃああん。ごろごろ」
黒猫の京楽は、浮竹の肩に乗って、甘え出した。
「仕方ない。元に戻るときは、ちゃんと服を用意しておけよ」
「にゃあああん」
その後、黒猫の京楽は、猫缶詰を食べてカリカリを食べてチュールを食べて、ベッドの下にもぐって寝るのだった。
朝になり、ベッドの下から苦悶の声が出てくる。
「ベッドの下から出れないよ~~~~」
「自業自得だ、ばかが。また黒猫になればいいだけだろう」
「あ、そうだった」
黒猫になり、ベッドの下から出てきた京楽は、すぐに人型に戻った。
「朝っぱらから、なんちゅーもんを見せつけるんだ!」
浮竹は、まっぱの京楽に怒って、股間を蹴り上げた。
「ぬおおおおおおおおおお」
悶絶する京楽に、着替えの服を投げつけて、浮竹は朝食を作るためにキッチンに移動するのであった。
堕天使と天使13
今回の依頼者は、精霊サラマンダーであった。
暴走している炎の精霊イフリエルを鎮めることを希望していた。
提示された金額は白金貨500枚。
ただ、相手は精霊だけに冒険者ギルドでは手に負えなくて、浮竹と京楽のところに回ってきたパターンだった。
精霊使いや召喚士がその依頼に趣いたが、皆敗北して帰ってきて、提示金額が大きいけれど、それだけ危険度も高く、帰ってきた者たちは1年以上の療養生活を余儀なくされたという。
「炎の精霊イフリエルか。普通はイフリートなんだけどね。イフリエルは元々精霊使いの天使だった。それが精霊となり、炎の上位精霊に進化したんだよね」
「よく知ってるな。すごいじゃないか」
「だって、精霊になる前のイフリエルはかわいかったから、何度かちょっかいかけてたから」
「さっきの話は撤回しておこう」
褒めたところで、京楽は調子に乗ってすぐ昔のぼろを出す。
「とりあえず、イフリエルがいるという、炎の谷に向かおう」
精霊界に入る必要があった。
浮竹は天使なので、精霊と会話ができる。
最近仲良くなった水の精霊ウンディーネに頼んで、精霊界に入れてもらった。
天使の浮竹を入れるのは戸惑いはなかったが、堕天使の京楽も一緒だと知って、ウンディーネは自分が精霊界に入れたことを絶対にばらさないでくれと言って、京楽も入れてくれた。
精霊界は、天界と違ってまたファンタジー要素の溢れる不思議な世界だった。
最近の天界は人間界のようになってきている。
精霊界には機械はなく、完全に精霊の力で成り立っていた。
「よくきてくれた。炎の谷にイフリエルはいる。イフリートが何度か説得に向かったが、ボコボコにされて帰ってきたんだ」
人型をとっていた炎の精霊サラマンダーは、炎の谷に入るためのお札を渡してくれた。
その札がないと、高温で生き物が存在することができない。
前回と前々回にも、人間に冒険者たちにお札を渡して頼み込んだが、徒労に終わっている。
「元々が天使なら、なんとかなると思うんだ」
「天使ならば、解決してくれると信じている。そっちは堕天使のようだが、イフリエルと認識が昔あったんだろう?」
「何で分かるの」
「イフリエルが昔言っていたんだ。京楽という堕天使が関係を求めてきてしつこいと」
「京楽・・・・お前・・・・・」
「ちょっと、それは誇張すぎないかい!確かにイフリエルに少しはちょっかい出してたけど」
京楽は、首をぶんぶん横に振って、否定する。
京楽は昔のことは否定しないので、今回のことは誇張なのだろう。
「まぁ、昔のお前のことは俺がどうにかできることじゃないからな。とりあえず、イフリエルを鎮める方法を探そう」
「イフリエルは、召還者を求めている。鎮めるには、契約を交わすのが一番だろう。人間とは契約できなかった。だが、天使ならあるいは・・・」
サラマンダーは、浮竹を見て浮竹に望みを託した。
「これは、精霊香薬といって、精霊をおちつかせる薬だ。イフリエルに飲ませるといい。飲ませられるものなら」
なんだか、試練を受けている気分になってきた。
浮竹と京楽は、精霊香薬をとお札を手に、炎の谷を目指した。
徒歩で、3日かかる場所に炎の谷はあった。
徒歩の間は、精霊たちに食事を提供してもらい、宿も精霊に借りた。
「今のイフリエル、すごい怒ってるから、気をつけてね」
最後の宿を貸してくれた、土の精霊ノームに礼を言って、浮竹と京楽は炎の谷に入った。
「凄く暑いはずなのに、お札のお陰か暑さも熱さもかんじない」
「いた、イフリエルだ」
炎の中で、踊っている6枚の翼をもつ炎の精霊の娘がいた。
「イフリエル!」
「誰、私を呼ぶのは!私が精霊王の妻となるべきイフリエルと知ってのこと?」
「え、精霊王の妻になるのか?」
「いや、そんなこと何も聞いてないよ」
「炎の精霊王の妻になるために、修行していたのに、炎の精霊王はあろうことか風の精霊女王と結婚してしまった。許せるものか」
ごおおおと、浮竹と京楽を炎が襲う。
「あら、あなた天使なのね?私の心の痛さが分かるでしょう?」
「だからって、周囲に当たり散らすのはよくない。大人しく、元の精霊に戻って、現実を受け入れろ」
「やだ・・・あなた、京楽?千年前に天使だったあたしにまとわりついてたのに・・・あはは、そうなの。今は、この子があなたのいい人なのね」
「イフリエル!止めなさい!」
京楽の静止の台詞も聞かずに、イフリエルは6枚の翼で浮竹を包み込んだ。
「私のものになりなさい、ぼうや。いい夢を見させてあげる」
浮竹は、とっさに精霊香薬を口にすると、火傷をするのも構わずにイフリエルに口移しで飲ませた。
「浮竹!酷い火傷だ!」
「セイントヒール」
自分の火傷を治そうとするが、イフリエルから受けた火傷はなかなか治らなかった。
「私を・・・・火傷してまで、正気に戻そうと?」
「イフリエル、目を覚ましてくれ。暴走するのはやめてくれ」
「あたしのせいで、そんな火傷を負ったのに・・・・・あなたは、心が優しいのね。いいわ、決めた、あたし、あなたと契約するわ。そうすれば、その火傷も治るはず」
「え、ちょっと、だめだよ、浮竹には僕という存在が!」
「あら、京楽にはいい薬になるわね。どう、あたしと契約しない?精霊の力を手に入れられるわよ」
「契約しよう」
「そうこなくっちゃ。大丈夫、私生活を邪魔したりしないわ。いつもは精霊界にいるもの。呼ばれたら、出てくるだけよ」
イフリエルは、親指を噛みちぎって血を流した。
浮竹も親指を噛みちぎって血を流し、交じわせる。
「契約は完了よ。私はイフリエル。炎の上位精霊にして、イフリートの上をいく者」
「俺は浮竹十四郎。セラフの天使だ。イフリエル、お前を召還精霊にすると、今この瞬間に誓おう」
「京楽は、相変わらず浮気してばかりなのかしら?」
「こら、イフリエル!」
「ふふふ。いいじゃない、ちょっと過去をのぞいただけよ」
「イフリエル、正気に戻ったのなら、炎を収めてくれ」
「分かったわ」
炎の谷の炎は、イフリエルが出していたらしく、すぐに穏やかな気候に戻り、精霊の力のせいか、不毛だった大地に花が咲き乱れていく。
「私が行く道には花も灰となる。それでも、私と契約を続けてくれるのかしら」
「一度交わした契約だ。それに、サラマンダーも契約者をもつことを望んでいたしな」
「あら、サラマンダーの坊やには、苦労をかけたかしら。そういえば、何度か人間の冒険者パーティーが、力ずくで私と契約しようとしていたけど、こてんぱんにしてやったわね」
「それで、俺たちにお鉢が回ってきたんだ」
「あら、そうなの」
イフリエルは、精霊界にいる間、ずっと浮竹の隣にいた。
それが、京楽には面白くなくて、右側をイフリエルが、左側を京楽がそれぞれ浮竹の腕をとって歩いていた。
「君、離れてよ!」
「いやよ。あなたこと離れたらどうなの。どうせ、またかわいい精霊でも見つけて、つまい食いするんでしょ?」
「僕はね、今は浮竹一筋なの。だから、浮竹を独り占めしていいのは、僕だけなの」
「イフリエル、すまないが、少し離れてくれ」
「今回の召還者は天使・・・・しかも堕天使の印つき。面白いわね」
イフリエルは、妖艶に笑って、炎の塊となって精霊界を飛んでいった。
浮竹がイフリエルの炎で受けた火傷は、全てイフリエルと契約したことで治っていた。
「サラマンダー。無事、イフリエルの暴走をとめて、契約を交わした」
サラマンダーに事の顛末を話すと、白金貨500枚をもらった。
白金貨500枚は、正直報酬としては高すぎるのだが。
ドラゴン退治で大体白金貨3000枚を考えると、今回は実は命の危険もあったことを、後から感じれた。
「イフリエルは悪い子ではないのだ。仲良くしてやってくれ。きっと、人間界に召還されたら、もう暴走なんてしなくなる」
報酬を受け取り、人間界に戻ると、浮竹は京楽の静止の声も聞かずに、イフリエルを呼び出た。
「ああ、ここが人間界!すごい、すごいわ!」
イフリエルは人化して、浮竹と京楽と一緒に、服を買ったり、装飾品を買ったりした。
「ふふふ。あなたと契約してよかった。人間界で自由に動きまわれるなんて、夢のよう」
「その代わり、暴走はなしだぞ」
「勿論よ。呼ばれない限り、精霊界にいるから、安心して夜の営みをしなさい」
浮竹は顔を真っ赤にした。
「こら、イフリエル!」
「浮竹、京楽が嫌になったら言いなさい。私が京楽を怒ってあげるから」
「ああ、その時は頼む」
「ちょっと、僕のいないとこでそんな約束しないでよ!」
浮竹とイフリエルは笑った。イフリエルは、天使のセラフであった名残の6枚の翼を羽ばたかせて、精霊界に帰っていった。
「しばらく、夜は寝ないぞ」
「そんなぁ」
「イフリエルがのぞいていないか、確認ができたら、許可する」
「そんなぁ」
京楽の情けない声が、しばらくの間続くのであった。
暴走している炎の精霊イフリエルを鎮めることを希望していた。
提示された金額は白金貨500枚。
ただ、相手は精霊だけに冒険者ギルドでは手に負えなくて、浮竹と京楽のところに回ってきたパターンだった。
精霊使いや召喚士がその依頼に趣いたが、皆敗北して帰ってきて、提示金額が大きいけれど、それだけ危険度も高く、帰ってきた者たちは1年以上の療養生活を余儀なくされたという。
「炎の精霊イフリエルか。普通はイフリートなんだけどね。イフリエルは元々精霊使いの天使だった。それが精霊となり、炎の上位精霊に進化したんだよね」
「よく知ってるな。すごいじゃないか」
「だって、精霊になる前のイフリエルはかわいかったから、何度かちょっかいかけてたから」
「さっきの話は撤回しておこう」
褒めたところで、京楽は調子に乗ってすぐ昔のぼろを出す。
「とりあえず、イフリエルがいるという、炎の谷に向かおう」
精霊界に入る必要があった。
浮竹は天使なので、精霊と会話ができる。
最近仲良くなった水の精霊ウンディーネに頼んで、精霊界に入れてもらった。
天使の浮竹を入れるのは戸惑いはなかったが、堕天使の京楽も一緒だと知って、ウンディーネは自分が精霊界に入れたことを絶対にばらさないでくれと言って、京楽も入れてくれた。
精霊界は、天界と違ってまたファンタジー要素の溢れる不思議な世界だった。
最近の天界は人間界のようになってきている。
精霊界には機械はなく、完全に精霊の力で成り立っていた。
「よくきてくれた。炎の谷にイフリエルはいる。イフリートが何度か説得に向かったが、ボコボコにされて帰ってきたんだ」
人型をとっていた炎の精霊サラマンダーは、炎の谷に入るためのお札を渡してくれた。
その札がないと、高温で生き物が存在することができない。
前回と前々回にも、人間に冒険者たちにお札を渡して頼み込んだが、徒労に終わっている。
「元々が天使なら、なんとかなると思うんだ」
「天使ならば、解決してくれると信じている。そっちは堕天使のようだが、イフリエルと認識が昔あったんだろう?」
「何で分かるの」
「イフリエルが昔言っていたんだ。京楽という堕天使が関係を求めてきてしつこいと」
「京楽・・・・お前・・・・・」
「ちょっと、それは誇張すぎないかい!確かにイフリエルに少しはちょっかい出してたけど」
京楽は、首をぶんぶん横に振って、否定する。
京楽は昔のことは否定しないので、今回のことは誇張なのだろう。
「まぁ、昔のお前のことは俺がどうにかできることじゃないからな。とりあえず、イフリエルを鎮める方法を探そう」
「イフリエルは、召還者を求めている。鎮めるには、契約を交わすのが一番だろう。人間とは契約できなかった。だが、天使ならあるいは・・・」
サラマンダーは、浮竹を見て浮竹に望みを託した。
「これは、精霊香薬といって、精霊をおちつかせる薬だ。イフリエルに飲ませるといい。飲ませられるものなら」
なんだか、試練を受けている気分になってきた。
浮竹と京楽は、精霊香薬をとお札を手に、炎の谷を目指した。
徒歩で、3日かかる場所に炎の谷はあった。
徒歩の間は、精霊たちに食事を提供してもらい、宿も精霊に借りた。
「今のイフリエル、すごい怒ってるから、気をつけてね」
最後の宿を貸してくれた、土の精霊ノームに礼を言って、浮竹と京楽は炎の谷に入った。
「凄く暑いはずなのに、お札のお陰か暑さも熱さもかんじない」
「いた、イフリエルだ」
炎の中で、踊っている6枚の翼をもつ炎の精霊の娘がいた。
「イフリエル!」
「誰、私を呼ぶのは!私が精霊王の妻となるべきイフリエルと知ってのこと?」
「え、精霊王の妻になるのか?」
「いや、そんなこと何も聞いてないよ」
「炎の精霊王の妻になるために、修行していたのに、炎の精霊王はあろうことか風の精霊女王と結婚してしまった。許せるものか」
ごおおおと、浮竹と京楽を炎が襲う。
「あら、あなた天使なのね?私の心の痛さが分かるでしょう?」
「だからって、周囲に当たり散らすのはよくない。大人しく、元の精霊に戻って、現実を受け入れろ」
「やだ・・・あなた、京楽?千年前に天使だったあたしにまとわりついてたのに・・・あはは、そうなの。今は、この子があなたのいい人なのね」
「イフリエル!止めなさい!」
京楽の静止の台詞も聞かずに、イフリエルは6枚の翼で浮竹を包み込んだ。
「私のものになりなさい、ぼうや。いい夢を見させてあげる」
浮竹は、とっさに精霊香薬を口にすると、火傷をするのも構わずにイフリエルに口移しで飲ませた。
「浮竹!酷い火傷だ!」
「セイントヒール」
自分の火傷を治そうとするが、イフリエルから受けた火傷はなかなか治らなかった。
「私を・・・・火傷してまで、正気に戻そうと?」
「イフリエル、目を覚ましてくれ。暴走するのはやめてくれ」
「あたしのせいで、そんな火傷を負ったのに・・・・・あなたは、心が優しいのね。いいわ、決めた、あたし、あなたと契約するわ。そうすれば、その火傷も治るはず」
「え、ちょっと、だめだよ、浮竹には僕という存在が!」
「あら、京楽にはいい薬になるわね。どう、あたしと契約しない?精霊の力を手に入れられるわよ」
「契約しよう」
「そうこなくっちゃ。大丈夫、私生活を邪魔したりしないわ。いつもは精霊界にいるもの。呼ばれたら、出てくるだけよ」
イフリエルは、親指を噛みちぎって血を流した。
浮竹も親指を噛みちぎって血を流し、交じわせる。
「契約は完了よ。私はイフリエル。炎の上位精霊にして、イフリートの上をいく者」
「俺は浮竹十四郎。セラフの天使だ。イフリエル、お前を召還精霊にすると、今この瞬間に誓おう」
「京楽は、相変わらず浮気してばかりなのかしら?」
「こら、イフリエル!」
「ふふふ。いいじゃない、ちょっと過去をのぞいただけよ」
「イフリエル、正気に戻ったのなら、炎を収めてくれ」
「分かったわ」
炎の谷の炎は、イフリエルが出していたらしく、すぐに穏やかな気候に戻り、精霊の力のせいか、不毛だった大地に花が咲き乱れていく。
「私が行く道には花も灰となる。それでも、私と契約を続けてくれるのかしら」
「一度交わした契約だ。それに、サラマンダーも契約者をもつことを望んでいたしな」
「あら、サラマンダーの坊やには、苦労をかけたかしら。そういえば、何度か人間の冒険者パーティーが、力ずくで私と契約しようとしていたけど、こてんぱんにしてやったわね」
「それで、俺たちにお鉢が回ってきたんだ」
「あら、そうなの」
イフリエルは、精霊界にいる間、ずっと浮竹の隣にいた。
それが、京楽には面白くなくて、右側をイフリエルが、左側を京楽がそれぞれ浮竹の腕をとって歩いていた。
「君、離れてよ!」
「いやよ。あなたこと離れたらどうなの。どうせ、またかわいい精霊でも見つけて、つまい食いするんでしょ?」
「僕はね、今は浮竹一筋なの。だから、浮竹を独り占めしていいのは、僕だけなの」
「イフリエル、すまないが、少し離れてくれ」
「今回の召還者は天使・・・・しかも堕天使の印つき。面白いわね」
イフリエルは、妖艶に笑って、炎の塊となって精霊界を飛んでいった。
浮竹がイフリエルの炎で受けた火傷は、全てイフリエルと契約したことで治っていた。
「サラマンダー。無事、イフリエルの暴走をとめて、契約を交わした」
サラマンダーに事の顛末を話すと、白金貨500枚をもらった。
白金貨500枚は、正直報酬としては高すぎるのだが。
ドラゴン退治で大体白金貨3000枚を考えると、今回は実は命の危険もあったことを、後から感じれた。
「イフリエルは悪い子ではないのだ。仲良くしてやってくれ。きっと、人間界に召還されたら、もう暴走なんてしなくなる」
報酬を受け取り、人間界に戻ると、浮竹は京楽の静止の声も聞かずに、イフリエルを呼び出た。
「ああ、ここが人間界!すごい、すごいわ!」
イフリエルは人化して、浮竹と京楽と一緒に、服を買ったり、装飾品を買ったりした。
「ふふふ。あなたと契約してよかった。人間界で自由に動きまわれるなんて、夢のよう」
「その代わり、暴走はなしだぞ」
「勿論よ。呼ばれない限り、精霊界にいるから、安心して夜の営みをしなさい」
浮竹は顔を真っ赤にした。
「こら、イフリエル!」
「浮竹、京楽が嫌になったら言いなさい。私が京楽を怒ってあげるから」
「ああ、その時は頼む」
「ちょっと、僕のいないとこでそんな約束しないでよ!」
浮竹とイフリエルは笑った。イフリエルは、天使のセラフであった名残の6枚の翼を羽ばたかせて、精霊界に帰っていった。
「しばらく、夜は寝ないぞ」
「そんなぁ」
「イフリエルがのぞいていないか、確認ができたら、許可する」
「そんなぁ」
京楽の情けない声が、しばらくの間続くのであった。
堕天使と天使14
ヴァンパイアの京楽からもらった、小粒のルビーがついたネックレスは、ヴァンパイアの京楽の呪いの血がついており、そのお陰で悪魔や堕天使から魂を狙われないようにしてくれるという、優れものだった。
堕天使の京楽からつけてもらい、浮竹はそのネックレスがお気に入りだった。
「また、そのネックレスいじってるのかい」
「ヴァンパイアのお前が、俺の為に作ってくれたからな。何より、お前の手で渡されたことの意味が大きい。お前からもらったプレゼントのように思える」
「浮竹」
「ん?」
「僕は、君を裏切らないから。君の傍にずっといる。誓うよ」
「どうした、改まって」
浮竹は首を傾げた。
「君が不安になってるんじゃないかと思って」
「ああ・・・でも、大丈夫だ。お前は今俺の隣にいてくれている。俺は信じている」
浮竹は、京楽に抱きしめられていた。
「絶対に、君を一人にはしない」
「ああ、約束だ」
2人は、深い口づけを交わし合った。
「今日の依頼は・・・・悪魔王サタンの退治・・・却下だ。強すぎる」
「誰だろう、そんな依頼出したの」
「大悪魔アスタロトと書かれている」
「アスタロト・・・あの子、ここを便利屋か何かと勘違してるのかな」
「知り合いなのか」
大悪魔アスタロトは、悪魔王サタンの配下ではなく、敵対関係にあった。
「ちょっと昔ね。何度か会って会話をしたくらいだよ」
「お前のことだから、ちょっかいかけようとしたんじゃないのか」
「ぎくっ」
京楽との性的関係者に、悪魔もけっこういる。
大悪魔ヴェルゼブブのように。
「この依頼は・・・悪魔シェリネの討伐。ネクロマンサーを作り、死者を蘇らせて自分だけの王国を築こうとしている。決まりだな」
「悪魔シェリネ。聞いたことのない名前だね」
「ネクロマンサーは脅威的だ。すぐに向かうぞ」
浮竹と京楽は、魔界にやってきた。
シェリネの話を他の悪魔から聞きながら、居場所を突き止めた。
悪魔はただでは教えてくれないのだが、京楽の顔の広さのお陰で、大悪魔ヴェルゼブブのお気に入りだということで、話を聞けた。
魔界の隅に、その屋敷はあった。
すでにネクロマンサーはおり、死者の悪魔を蘇生させていた。
「セイントフェザースラッシュ」
聖なる羽の攻撃で、ネクロマンサーと召還された死者の悪魔が怯む。
そこに、京楽がもう一つの弱点である炎の禁忌を放つ。
「ゴッドインフェルノ!」
「ぎゃああああああ!!」
「うわあああああああ!!」
死者の悪魔たちは、腐った体をなくして魂となって転がった。
その魂を、浮竹が回収していく。そして、浄化させた。
「なんだお前たちは!私のネクロマンサーを退治するなんて、許さないわよ!」
「お前はネクロマンサーがどれだけ危険な存在か分かっているのか。その気になれば古の悪魔も復活させれる。もっとも、お前の手で作り出されたネクロマンサーは、そこいらの死者の悪魔を蘇らせるのに手いっぱいのようだが」
「私は、ネクロマンサーを作りまくって、死者の国を作るのよ!誰にも邪魔はさせない!」
「ホーリーノヴァ!」
「うぎゃあああ!」
浮竹の聖なる魔法で、ネクロマンサーが息絶えた。
「邪魔をしないで!あなた天使ね!その魂、喰らってくれる!」
悪魔シェリルは、浮竹の魂を食おうとした。
「ぎゃっ!」
小粒のルビーのネックレスが輝き、襲ってきたシェリルは体を半ば崩壊させかけていた。
「なんて力・・・・そのネックレス・・・原初の王の血の呪いか・・・・」
「僕の浮竹を食べようだなんて、不届き者だね。永遠に地獄を味わうといいよ。カースワールド」
京楽が、悪魔シェリルを呪いの世界に沈める。
「いやだ、死にたくない!」
「死なないよ。永遠に、苦しみ続けるだけさ」
「もっといやあああ」
「ホーリーノヴァ!」
浮竹は、いくら悪魔とはいえ永遠に苦しみ続けるのはかわいそうだと、とどめをシェリルにさした。
「どうして?浮竹、君を食べようとしたんだよ」
「だからって、死ぬこともできずに永遠に苦しむのはかわいそうだ」
「浮竹は、悪魔にも甘いね。悪魔は狡猾だから。気をつけてね」
「分かっている」
シェリルの討伐に成功して、魔石を入手する。
ちなみに、シェリル討伐の依頼者は大悪魔ヴェルゼブブであった。
ヴェルゼブブに浮竹を会せるわけにもいかず、浮竹を先に人間界に返して、京楽はヴェルゼブブの元に向かった。
「やあ、シェリルの討伐はすんだか」
「どうして、君が依頼なんて。自分で処分すれすむことでしょう?」
「悪魔の派閥争いで、無益に悪魔を殺すことは相手に敵対していると思われるからな。シェリルは悪魔王サタン様の敵対者だ」
「じゃあ、僕たちはサタンの敵対者を殺したってことになるの?」
「そうなるな。だが、天使と堕天使だ。シェリルは悪魔の中でも孤立していたから、まぁ問題はなかろう」
「今度からは、君の名の依頼は受けないからね」
京楽は、ヴェルゼブブを睨んだ。
「けちだな」
「けちでも、悪魔の争いに浮竹を巻き込みたくない」
「報酬の大金貨千枚だ」
「金には惜しまないんだね」
「金で済むことなら、苦労はしない」
ヴェルゼブブと京楽の関係はけっこう長かったために、ヴェルゼブブは京楽を利用することに疑問を感じない悪魔だった。
「悪魔になる気は、相変わらずないのか」
「ないね。浮竹がいる限り、悪魔にはならない」
「お前のことだ。天使の浮竹に手を出したら、たとえ大悪魔の私でも、噛みついてくるんだろうな」
「当たり前だよ!浮竹に手を出したら、躊躇なく殺すからね。僕は、神の元12使徒だ。悪魔を滅ぼす役目をしていた。どんな大悪魔だろうが、殺せる手段をもっている」
京楽の鳶色の瞳が、殺気を帯びる。
「その、殺せる手段が欲しいんだがな」
「君には利用されたくない。諦めるんだね」
「今回は、そうさせてもらおう」
「今回だけじゃなくて、今後もね」
「さぁ、それはどうだろうな」
ヴェルゼブブは、愉快そうに笑って、京楽を人間界に戻した。
「けっこう、長かったな。何をしていたんだ」
「ヴェルゼブブと、ちょっとね」
「浮気か!」
「うわぁ、違うって!!」
京楽がヴェルゼブブと関係をもっていたことを知っている浮竹は、本気ではないが、京楽の浮気を疑う。
「僕が愛しているのは、今は君だけだよ。ねぇ、信じて?」
抱きしめられて、キスをされて、浮竹は大人しくなった。
「分かった。信じる」
「ありがとう」
後に、冒険者ギルドに魔石を提出したら、悪魔の魔石と分かってギルドマスターに呼ばれるのであった。
堕天使の京楽からつけてもらい、浮竹はそのネックレスがお気に入りだった。
「また、そのネックレスいじってるのかい」
「ヴァンパイアのお前が、俺の為に作ってくれたからな。何より、お前の手で渡されたことの意味が大きい。お前からもらったプレゼントのように思える」
「浮竹」
「ん?」
「僕は、君を裏切らないから。君の傍にずっといる。誓うよ」
「どうした、改まって」
浮竹は首を傾げた。
「君が不安になってるんじゃないかと思って」
「ああ・・・でも、大丈夫だ。お前は今俺の隣にいてくれている。俺は信じている」
浮竹は、京楽に抱きしめられていた。
「絶対に、君を一人にはしない」
「ああ、約束だ」
2人は、深い口づけを交わし合った。
「今日の依頼は・・・・悪魔王サタンの退治・・・却下だ。強すぎる」
「誰だろう、そんな依頼出したの」
「大悪魔アスタロトと書かれている」
「アスタロト・・・あの子、ここを便利屋か何かと勘違してるのかな」
「知り合いなのか」
大悪魔アスタロトは、悪魔王サタンの配下ではなく、敵対関係にあった。
「ちょっと昔ね。何度か会って会話をしたくらいだよ」
「お前のことだから、ちょっかいかけようとしたんじゃないのか」
「ぎくっ」
京楽との性的関係者に、悪魔もけっこういる。
大悪魔ヴェルゼブブのように。
「この依頼は・・・悪魔シェリネの討伐。ネクロマンサーを作り、死者を蘇らせて自分だけの王国を築こうとしている。決まりだな」
「悪魔シェリネ。聞いたことのない名前だね」
「ネクロマンサーは脅威的だ。すぐに向かうぞ」
浮竹と京楽は、魔界にやってきた。
シェリネの話を他の悪魔から聞きながら、居場所を突き止めた。
悪魔はただでは教えてくれないのだが、京楽の顔の広さのお陰で、大悪魔ヴェルゼブブのお気に入りだということで、話を聞けた。
魔界の隅に、その屋敷はあった。
すでにネクロマンサーはおり、死者の悪魔を蘇生させていた。
「セイントフェザースラッシュ」
聖なる羽の攻撃で、ネクロマンサーと召還された死者の悪魔が怯む。
そこに、京楽がもう一つの弱点である炎の禁忌を放つ。
「ゴッドインフェルノ!」
「ぎゃああああああ!!」
「うわあああああああ!!」
死者の悪魔たちは、腐った体をなくして魂となって転がった。
その魂を、浮竹が回収していく。そして、浄化させた。
「なんだお前たちは!私のネクロマンサーを退治するなんて、許さないわよ!」
「お前はネクロマンサーがどれだけ危険な存在か分かっているのか。その気になれば古の悪魔も復活させれる。もっとも、お前の手で作り出されたネクロマンサーは、そこいらの死者の悪魔を蘇らせるのに手いっぱいのようだが」
「私は、ネクロマンサーを作りまくって、死者の国を作るのよ!誰にも邪魔はさせない!」
「ホーリーノヴァ!」
「うぎゃあああ!」
浮竹の聖なる魔法で、ネクロマンサーが息絶えた。
「邪魔をしないで!あなた天使ね!その魂、喰らってくれる!」
悪魔シェリルは、浮竹の魂を食おうとした。
「ぎゃっ!」
小粒のルビーのネックレスが輝き、襲ってきたシェリルは体を半ば崩壊させかけていた。
「なんて力・・・・そのネックレス・・・原初の王の血の呪いか・・・・」
「僕の浮竹を食べようだなんて、不届き者だね。永遠に地獄を味わうといいよ。カースワールド」
京楽が、悪魔シェリルを呪いの世界に沈める。
「いやだ、死にたくない!」
「死なないよ。永遠に、苦しみ続けるだけさ」
「もっといやあああ」
「ホーリーノヴァ!」
浮竹は、いくら悪魔とはいえ永遠に苦しみ続けるのはかわいそうだと、とどめをシェリルにさした。
「どうして?浮竹、君を食べようとしたんだよ」
「だからって、死ぬこともできずに永遠に苦しむのはかわいそうだ」
「浮竹は、悪魔にも甘いね。悪魔は狡猾だから。気をつけてね」
「分かっている」
シェリルの討伐に成功して、魔石を入手する。
ちなみに、シェリル討伐の依頼者は大悪魔ヴェルゼブブであった。
ヴェルゼブブに浮竹を会せるわけにもいかず、浮竹を先に人間界に返して、京楽はヴェルゼブブの元に向かった。
「やあ、シェリルの討伐はすんだか」
「どうして、君が依頼なんて。自分で処分すれすむことでしょう?」
「悪魔の派閥争いで、無益に悪魔を殺すことは相手に敵対していると思われるからな。シェリルは悪魔王サタン様の敵対者だ」
「じゃあ、僕たちはサタンの敵対者を殺したってことになるの?」
「そうなるな。だが、天使と堕天使だ。シェリルは悪魔の中でも孤立していたから、まぁ問題はなかろう」
「今度からは、君の名の依頼は受けないからね」
京楽は、ヴェルゼブブを睨んだ。
「けちだな」
「けちでも、悪魔の争いに浮竹を巻き込みたくない」
「報酬の大金貨千枚だ」
「金には惜しまないんだね」
「金で済むことなら、苦労はしない」
ヴェルゼブブと京楽の関係はけっこう長かったために、ヴェルゼブブは京楽を利用することに疑問を感じない悪魔だった。
「悪魔になる気は、相変わらずないのか」
「ないね。浮竹がいる限り、悪魔にはならない」
「お前のことだ。天使の浮竹に手を出したら、たとえ大悪魔の私でも、噛みついてくるんだろうな」
「当たり前だよ!浮竹に手を出したら、躊躇なく殺すからね。僕は、神の元12使徒だ。悪魔を滅ぼす役目をしていた。どんな大悪魔だろうが、殺せる手段をもっている」
京楽の鳶色の瞳が、殺気を帯びる。
「その、殺せる手段が欲しいんだがな」
「君には利用されたくない。諦めるんだね」
「今回は、そうさせてもらおう」
「今回だけじゃなくて、今後もね」
「さぁ、それはどうだろうな」
ヴェルゼブブは、愉快そうに笑って、京楽を人間界に戻した。
「けっこう、長かったな。何をしていたんだ」
「ヴェルゼブブと、ちょっとね」
「浮気か!」
「うわぁ、違うって!!」
京楽がヴェルゼブブと関係をもっていたことを知っている浮竹は、本気ではないが、京楽の浮気を疑う。
「僕が愛しているのは、今は君だけだよ。ねぇ、信じて?」
抱きしめられて、キスをされて、浮竹は大人しくなった。
「分かった。信じる」
「ありがとう」
後に、冒険者ギルドに魔石を提出したら、悪魔の魔石と分かってギルドマスターに呼ばれるのであった。
堕天使と天使13
京楽は、その日大悪魔ヴェルゼブブに、悪魔にならないかと誘惑された。
大悪魔ヴェルゼブブは若い美しい男性で、京楽と関係をもったことが何度かあった。
京楽が、長年堕天使をしているのに疑問を抱いていた。京楽ほどの堕天使ならば、更に堕ちて悪魔になれば、強力な悪魔が生まれるだろう。
きっと、色欲の大悪魔アスモデウスには及ばないが、そこそこの色欲の悪魔になりそうなかんじであった。
「僕は、今大好きな天使がいるからね。天使が悪魔と関係をもつのは御法度。まぁ、関係をよくもってた僕が言えたぎりじゃないけど」
「だから、悪魔にならないのか。今悪魔になれば、俺の加護がつくぞ」
「いらないよ、そんなの」
「昔は俺の眷属になりたがっていたくせに」
ヴェルゼブブは笑った。
この、憎んでも憎みきれない京楽のことが、一時期心から好きだった。
でも、京楽は本能のままにふらふらといろんな種族の男女を問わずに、関係をもつ。
それを憎むことはなく、悪魔も堕天使も、存在はほぼ変わらない。
ただ、悪魔は悪魔の派閥に左右されることが多く、ヴェルゼブブは悪魔王サタンの派閥に組していた。
悪魔王サタンも、ヴェルゼブブも、元を正せば天使で、堕天使となって悪魔になった。
今や、魔界を牛耳る存在となったサタンは、天使の時は1位の天使ルシフェルと名乗って、神に愛されていた。
それを裏切り、神を傷つけた罰だと堕天使に落とされて、悪魔となった。
神も、追放して堕天使となった者が悪魔王にまでなるとは、思っていなかっただろう。
「用事はそれだけ?じゃあ、僕は浮竹のところに帰るから」
「待て。これをもっていけ」
「何?」
「浮竹というその天使を堕天使にして、共に悪魔になればいい。そのための・・・」
「いらない」
京楽は、きっぱりと断った。
「だが、このまま天使に熱を入れていれば、その天使側が黙ってはおるまい?」
「いや、意外と大丈夫。浮気したら殺すとか言われてるけど、浮竹に一筋の間は周囲は何もしてこないよ」
ヴェルゼブブは、落胆する。
「そうか。もういけ。お前の顔はしばらく見たくない」
「じゃあ、また遊びにくるからねぇ」
「だから、しばらく見たくないと言っているだろうが!」
「あはははは、じゃあねぇ」
堕天使の京楽は、悪魔と堕天使がよく遊びにくる魔界の入り口にいた。
そこで、天使時代に悪魔とよく関係を持った。
サキュバスやインキュバスが大抵だったが、中には大悪魔ヴェルゼブブのような存在もいた。
寵愛されるを嫌い、束縛を嫌い、それが今では浮竹という、こともあろうか大天使長ミカエルと人間のハーフであるセラフに夢中なのだという。
自由気ままで羨ましいとさえ思った。
「京楽、何処に行っていたんだ」
「うん?ちょっと魔界の入り口まで」
「何をしにだ。浮気か?浮気なら、右ストレートでまずは・・・」
「ちょっと、なんでまず最初に浮気を疑うの」
「フェンリルの俺が、お前に気を付けろと言っていたからな」
「フェンリルの浮竹は僕のこと苦手だからね。真に受けないでよ」
「それもそうだな」
浮竹は、パソコンに向き直って、ドイツ語の翻訳を続け出した。
「今日は何を食べたい?」
「お前」
「そうそう、僕を・・・って、ええ!?」
京楽は真っ赤になった。
冗談のつもりで言ったので、そんな反応をされた浮竹はもっと真っ赤になった。
「つ、次の依頼のことを話し合おう」
「う、うんそうだね」
お互い、ぎくしゃくしながら、次は人を襲うハーピー退治に行くことになった。
車を運転して3時間の場所に、ハーピーは出没した。
巣を作っていて、ハーピーが群れていた。
通りすがりの人を襲い、怪我をさせたり子供が二人ほどハーピーに連れ去られて、食い殺されていた。
「一掃するしかないね」
「ああ。手加減は必要ないんだろう。ヘルインフェルノ!」
穏やかな午後に、ハーピーのつんざかんばかりの悲鳴があたりに響き渡った。
飛び立って逃げようとするハーピーに、フェザースラッシュで、京楽は堕天使の翼を広げて攻撃する。
今日のフェザースラッシュには猛毒を仕込んでいたために、攻撃を浴びたハーピーは泡をふいて息絶えていく。
「あそこが巣の中心だ。ゴッドインフェルノ!」
炎の禁忌をぶつけると、ハーピーは黒こげになってみんな死んでしまった。
「なんか、むしょうに焼き鳥が食べたくなってきた」
「食べる?ハーピー、食べれるらしいよ。人間の顔の下は」
「食べない。人間の顔をもっているんだ、亜人に近いかんじがしていやだ」
「卵は全部割れたね。ヒナも死んだようだし、戻ろうか」
「ああ」
依頼主のところにいき、金貨50枚をもらい、ハーピーから抜き取った魔石を冒険者ギルドで買いとってもらうと、数が多かったので金貨10枚になった。
まずまずの収入に、少し贅沢をしようということになり、ロブスターを中心とした魚介類のメニューに、年代もののワインを開けた。
「いやぁ、ヴェルゼブブが僕を誘惑してきてね。悪魔にならないかって」
「それでお前は、わざわざヴェルゼブブに会ってきたのか」
「中途半端な返事だとしつこいからね。嫌だと、はっきり言ってきたよ」
「ああ、そうだな」
浮竹は、酔っていた。
京楽にしなだれかかり、口にしたワインを口移しで飲ませた。
「浮竹?」
「俺を食べたいと言っていただろう。今なら、いいぞ」
ごくりと唾を飲みこんで、食事が終わった後に風呂に入り、浮竹をベッドに組み敷いた。
「いいんだね?」
「いちいち、聞くな」
浮竹は赤くなった顔を手で隠していた。
「あっ」
膝を膝で割られて、敏感な場所を撫でられて、浮竹が声を漏らす。
「ふふ、もうこんなになってる」
「ばかっ」
「十四郎、好きだよ」
「俺も好きだ、春水」
体を繋げ会う時だけ、お互い下の名前で呼び合う。
「ああっ」
衣服を脱がされ、胸の先端を甘噛みされる。
そのまま手でしごかれて、浮竹は京楽の手の中でいってしまった。
「ん・・・・・」
京楽のローションにまみれた指が入ってきて、浮竹はその異物感に目を閉じる。
「いれるよ?いいかい?」
「いちいち、聞くなと言っている・・・あああああ!!」
聞いておいて嫌だと言っても、きっとやめないだろう。
いっきに引き裂かれて、浮竹はその熱量に一瞬呼吸するのを忘れた。
「あ、あああ、あああ」
京楽に深い口づけをされて、息をする。
「んう」
「気持ちいい?」
ごりごりと奥を抉ってやると、浮竹はこくこくと頷いた。
「あ、もっとお前を感じたい」
「いっぱいあげるからね。君が僕で溺れるように」
何度も前立腺をすりあげながら、京楽は浮竹の感じる場所ばかりを攻め立てた。
「ああああ!!!」
浮竹は吐精していた。
それでも京楽の勢いは止まらずに、浮竹はいきっぱなしのままさらにドライのオーガズムでいかされる。
「ひああああ、やああ!!!」
「注いであげるから、しっかり受け止めてね?」
「あ、春水」
「ふふ、僕を欲しがる十四郎の顔、好きだよ」
「あああああ!!」
熱い熱を胎の奥で受け止めて、浮竹はまたいっていた。
「ほら、まだまだ僕は元気なんだから。満足するまで、付き合ってね?」
「この色欲魔人が・・・・・」
そう言いながらも、浮竹は京楽の背に手を回す。
情事が終わり、後始末をして眠っていると、京楽の元にヴェルゼブブがやってきた。
「ちょっと、なんで人間界に来てるの!」
「お前を悪魔にしにきた」
「なんで!」
「上からの命令だ。悪魔王サタンを凌駕しうる存在が発覚した。お前は狙われている。監視下に置くためにも、悪魔に・・・・・・」
「ならないよ。僕は、悪魔にはならない」
「そうだ。京楽は悪魔なんかにはさせない」
いつの間にか起きていた京楽が、ヴェルゼブブを威嚇した。
「お前が、セラフの浮竹か。なるほど、神好みの力をもっているな」
ヴェルブブは、浮竹に近づくと、いきなりキスをしてきた。
「んあ!?」
いきなりのことで、浮竹は目が点になっていた。
「美味い魂をしている。一度食べたいな」
「僕のものだから、だめ!」
浮竹を後ろに庇い、京楽はヴェルゼブブに炎の魔法を放った。
「今すぐ悪魔になれとは言わない。だが、近いうちにまたくる」
「もう来るな!」
「そうだ、来るな!」
浮竹は、相手がヴェルゼブブだとは知らなかったのだが、高位の悪魔であることは分かった。
「京楽、まさかあの悪魔と浮気を・・・・・」
「してない、してない。それに、あの子は僕を悪魔にしたいだけで、君の魂はうまそうだから、つまみ食いしたい感覚だよ、きっと。ねぇ、僕を信じて?」
「ああ・・・・信じる」
浮竹は、素直に頷いた。
「愛してるよ、浮竹」
たとえ、この身が悪魔になろうとも。
堕天使でなくなろうとも、愛している存在は変わらない。
京楽は、いつまで自分が堕天使でいられるのか、自分でも分からなかった。
大悪魔ヴェルゼブブは若い美しい男性で、京楽と関係をもったことが何度かあった。
京楽が、長年堕天使をしているのに疑問を抱いていた。京楽ほどの堕天使ならば、更に堕ちて悪魔になれば、強力な悪魔が生まれるだろう。
きっと、色欲の大悪魔アスモデウスには及ばないが、そこそこの色欲の悪魔になりそうなかんじであった。
「僕は、今大好きな天使がいるからね。天使が悪魔と関係をもつのは御法度。まぁ、関係をよくもってた僕が言えたぎりじゃないけど」
「だから、悪魔にならないのか。今悪魔になれば、俺の加護がつくぞ」
「いらないよ、そんなの」
「昔は俺の眷属になりたがっていたくせに」
ヴェルゼブブは笑った。
この、憎んでも憎みきれない京楽のことが、一時期心から好きだった。
でも、京楽は本能のままにふらふらといろんな種族の男女を問わずに、関係をもつ。
それを憎むことはなく、悪魔も堕天使も、存在はほぼ変わらない。
ただ、悪魔は悪魔の派閥に左右されることが多く、ヴェルゼブブは悪魔王サタンの派閥に組していた。
悪魔王サタンも、ヴェルゼブブも、元を正せば天使で、堕天使となって悪魔になった。
今や、魔界を牛耳る存在となったサタンは、天使の時は1位の天使ルシフェルと名乗って、神に愛されていた。
それを裏切り、神を傷つけた罰だと堕天使に落とされて、悪魔となった。
神も、追放して堕天使となった者が悪魔王にまでなるとは、思っていなかっただろう。
「用事はそれだけ?じゃあ、僕は浮竹のところに帰るから」
「待て。これをもっていけ」
「何?」
「浮竹というその天使を堕天使にして、共に悪魔になればいい。そのための・・・」
「いらない」
京楽は、きっぱりと断った。
「だが、このまま天使に熱を入れていれば、その天使側が黙ってはおるまい?」
「いや、意外と大丈夫。浮気したら殺すとか言われてるけど、浮竹に一筋の間は周囲は何もしてこないよ」
ヴェルゼブブは、落胆する。
「そうか。もういけ。お前の顔はしばらく見たくない」
「じゃあ、また遊びにくるからねぇ」
「だから、しばらく見たくないと言っているだろうが!」
「あはははは、じゃあねぇ」
堕天使の京楽は、悪魔と堕天使がよく遊びにくる魔界の入り口にいた。
そこで、天使時代に悪魔とよく関係を持った。
サキュバスやインキュバスが大抵だったが、中には大悪魔ヴェルゼブブのような存在もいた。
寵愛されるを嫌い、束縛を嫌い、それが今では浮竹という、こともあろうか大天使長ミカエルと人間のハーフであるセラフに夢中なのだという。
自由気ままで羨ましいとさえ思った。
「京楽、何処に行っていたんだ」
「うん?ちょっと魔界の入り口まで」
「何をしにだ。浮気か?浮気なら、右ストレートでまずは・・・」
「ちょっと、なんでまず最初に浮気を疑うの」
「フェンリルの俺が、お前に気を付けろと言っていたからな」
「フェンリルの浮竹は僕のこと苦手だからね。真に受けないでよ」
「それもそうだな」
浮竹は、パソコンに向き直って、ドイツ語の翻訳を続け出した。
「今日は何を食べたい?」
「お前」
「そうそう、僕を・・・って、ええ!?」
京楽は真っ赤になった。
冗談のつもりで言ったので、そんな反応をされた浮竹はもっと真っ赤になった。
「つ、次の依頼のことを話し合おう」
「う、うんそうだね」
お互い、ぎくしゃくしながら、次は人を襲うハーピー退治に行くことになった。
車を運転して3時間の場所に、ハーピーは出没した。
巣を作っていて、ハーピーが群れていた。
通りすがりの人を襲い、怪我をさせたり子供が二人ほどハーピーに連れ去られて、食い殺されていた。
「一掃するしかないね」
「ああ。手加減は必要ないんだろう。ヘルインフェルノ!」
穏やかな午後に、ハーピーのつんざかんばかりの悲鳴があたりに響き渡った。
飛び立って逃げようとするハーピーに、フェザースラッシュで、京楽は堕天使の翼を広げて攻撃する。
今日のフェザースラッシュには猛毒を仕込んでいたために、攻撃を浴びたハーピーは泡をふいて息絶えていく。
「あそこが巣の中心だ。ゴッドインフェルノ!」
炎の禁忌をぶつけると、ハーピーは黒こげになってみんな死んでしまった。
「なんか、むしょうに焼き鳥が食べたくなってきた」
「食べる?ハーピー、食べれるらしいよ。人間の顔の下は」
「食べない。人間の顔をもっているんだ、亜人に近いかんじがしていやだ」
「卵は全部割れたね。ヒナも死んだようだし、戻ろうか」
「ああ」
依頼主のところにいき、金貨50枚をもらい、ハーピーから抜き取った魔石を冒険者ギルドで買いとってもらうと、数が多かったので金貨10枚になった。
まずまずの収入に、少し贅沢をしようということになり、ロブスターを中心とした魚介類のメニューに、年代もののワインを開けた。
「いやぁ、ヴェルゼブブが僕を誘惑してきてね。悪魔にならないかって」
「それでお前は、わざわざヴェルゼブブに会ってきたのか」
「中途半端な返事だとしつこいからね。嫌だと、はっきり言ってきたよ」
「ああ、そうだな」
浮竹は、酔っていた。
京楽にしなだれかかり、口にしたワインを口移しで飲ませた。
「浮竹?」
「俺を食べたいと言っていただろう。今なら、いいぞ」
ごくりと唾を飲みこんで、食事が終わった後に風呂に入り、浮竹をベッドに組み敷いた。
「いいんだね?」
「いちいち、聞くな」
浮竹は赤くなった顔を手で隠していた。
「あっ」
膝を膝で割られて、敏感な場所を撫でられて、浮竹が声を漏らす。
「ふふ、もうこんなになってる」
「ばかっ」
「十四郎、好きだよ」
「俺も好きだ、春水」
体を繋げ会う時だけ、お互い下の名前で呼び合う。
「ああっ」
衣服を脱がされ、胸の先端を甘噛みされる。
そのまま手でしごかれて、浮竹は京楽の手の中でいってしまった。
「ん・・・・・」
京楽のローションにまみれた指が入ってきて、浮竹はその異物感に目を閉じる。
「いれるよ?いいかい?」
「いちいち、聞くなと言っている・・・あああああ!!」
聞いておいて嫌だと言っても、きっとやめないだろう。
いっきに引き裂かれて、浮竹はその熱量に一瞬呼吸するのを忘れた。
「あ、あああ、あああ」
京楽に深い口づけをされて、息をする。
「んう」
「気持ちいい?」
ごりごりと奥を抉ってやると、浮竹はこくこくと頷いた。
「あ、もっとお前を感じたい」
「いっぱいあげるからね。君が僕で溺れるように」
何度も前立腺をすりあげながら、京楽は浮竹の感じる場所ばかりを攻め立てた。
「ああああ!!!」
浮竹は吐精していた。
それでも京楽の勢いは止まらずに、浮竹はいきっぱなしのままさらにドライのオーガズムでいかされる。
「ひああああ、やああ!!!」
「注いであげるから、しっかり受け止めてね?」
「あ、春水」
「ふふ、僕を欲しがる十四郎の顔、好きだよ」
「あああああ!!」
熱い熱を胎の奥で受け止めて、浮竹はまたいっていた。
「ほら、まだまだ僕は元気なんだから。満足するまで、付き合ってね?」
「この色欲魔人が・・・・・」
そう言いながらも、浮竹は京楽の背に手を回す。
情事が終わり、後始末をして眠っていると、京楽の元にヴェルゼブブがやってきた。
「ちょっと、なんで人間界に来てるの!」
「お前を悪魔にしにきた」
「なんで!」
「上からの命令だ。悪魔王サタンを凌駕しうる存在が発覚した。お前は狙われている。監視下に置くためにも、悪魔に・・・・・・」
「ならないよ。僕は、悪魔にはならない」
「そうだ。京楽は悪魔なんかにはさせない」
いつの間にか起きていた京楽が、ヴェルゼブブを威嚇した。
「お前が、セラフの浮竹か。なるほど、神好みの力をもっているな」
ヴェルブブは、浮竹に近づくと、いきなりキスをしてきた。
「んあ!?」
いきなりのことで、浮竹は目が点になっていた。
「美味い魂をしている。一度食べたいな」
「僕のものだから、だめ!」
浮竹を後ろに庇い、京楽はヴェルゼブブに炎の魔法を放った。
「今すぐ悪魔になれとは言わない。だが、近いうちにまたくる」
「もう来るな!」
「そうだ、来るな!」
浮竹は、相手がヴェルゼブブだとは知らなかったのだが、高位の悪魔であることは分かった。
「京楽、まさかあの悪魔と浮気を・・・・・」
「してない、してない。それに、あの子は僕を悪魔にしたいだけで、君の魂はうまそうだから、つまみ食いしたい感覚だよ、きっと。ねぇ、僕を信じて?」
「ああ・・・・信じる」
浮竹は、素直に頷いた。
「愛してるよ、浮竹」
たとえ、この身が悪魔になろうとも。
堕天使でなくなろうとも、愛している存在は変わらない。
京楽は、いつまで自分が堕天使でいられるのか、自分でも分からなかった。
堕天使と天使外伝
フェンリルの浮竹とヴァンパイアの京楽のところに、天使の浮竹と堕天使の京楽が遊びにいった。
「ペット用の犬用のシャンプーを買ってきたんだ」
すでに、浮竹はうずうずしていた。
もっふもふなフェンリルの浮竹の毛皮は綺麗だが、長い間水でしか洗っていないので、少しだけごわごわしていた。
ちゃんと長毛用の犬用のブラシも買ってきた。
「フェンリルの俺!俺に洗われてくれ!」
いきなりの言葉に、フェンリルの浮竹が頭に?マークを浮かべた。
「フェンリルの姿になったとき、もっともっふもっふのいい匂いがするようになりたいと思わないか?」
『それは思う。でも、これ犬用シャンプーって書いてある。俺は犬じゃないぞ』
「細かいことは気にしない。京楽はその辺でありでも数えてろ。ヴァンパイアの京楽は手伝ってくれ」
『はいはい。まぁ、確かにフェンリル姿で水浴びをさせたことはあるけど、ちゃんとしたシャンプーなんてしたことないからね』
ヴァンパイアの京楽は、フェンリルの浮竹にフェンリルの姿になるように頼んだ。
ぼふんと音を立てて、小柄なフェンリルが姿を現す。
大型犬くらいの大きさだった。
「ありさんを数えて・・・1匹、2匹・・・・」
ありでも数えてろと言われた堕天使の京楽は、本当にありを数え出した。
広い浴場に湯をはり、その中にフェンリル姿の浮竹を入れる。
「ていっ」
犬用シャンプーを取り出して、フェンリルの浮竹に塗っていく。
そして、ブラシでわしゃわしゃと洗い出した。
毛皮が長いので、けっこうな重労働になるが、仕上がりが楽しみなので、ヴァンパイアの京楽もまた天使の浮竹を真似て、ブラシでわしゃわしゃと洗った。
「かゆいところはないか?」
『んー。おなかがかゆい。後右足』
「任せろ!」
ごしごしと洗ってやると、気持ちよさそうにフェンリルの浮竹は目がとろんとなった。
『眠くなってきた・・・・・』
「寝ててもいいぞ。洗っておくから。お湯をかけるときに起きてくれれば」
『じゃあ、ちょっとだけ寝る・・・・』
フェンリルの浮竹は、魔狼とされる巨大なフェンリルなのだが、幼い頃に成長が止まってしまい、大型犬か狼くらいしかの大きさしかなかった。
隅々までをシャンプーで洗うと、犬用のシャンプーは半分近くなくなっていた。
「フェンリルの俺、起きろ。流すぞ」
『んー。起きた』
しゃあああと、お湯のシャワーを浴びせる。
『ああ、気持ちいい』
全身の泡を洗い流されて、フェンリルの浮竹は水を含んだ毛皮を思わずぷるぷるして、天使の浮竹とヴァンパイアの京楽はずぶ濡れになった。
『あ、すまない!』
『いいんだ。これもまた、醍醐味の一つだ』
「なんの醍醐味だ?」
「ペットずっと飼いたかったんだよな。犬を」
『むう。俺は犬じゃない。フェンリルだ』
「分かっている。でも、今日は一日フェンリルの姿でいてくれないか。もふもふで癒されたい」
『堕天使の僕はどうするの?』
「適当に放置しとく。ありさんでも数え続けてるだろ」
フェンリルの浮竹はまたぶるぶると体をふるわせて、水分を吹き飛ばす。
「今、バスタオルで細かい水分もふいてやるからな」
『乾きにくい場所はドライヤーで乾かそう』
綺麗に水分をふきとると、真っ白でつやつやな毛皮になっていた。
金木犀の甘い香りがして、傍にいるだけで落ち着いた気分になれた。
「綺麗になったな」
『ありがとう、天使の俺。毛皮なんて水浴びするだけで、こうやって洗ってもらうのは初めてだ。まぁ、京楽が似たようなことをしたことはあるが、こちらの世界の石鹸は泡立ちが悪いからな』
「この犬用シャンプー追加で買ってまたもってくる。月に1回くらいは洗ってもらえ」
浮竹は、ヴァンパイアの京楽を見た。
『うん、そうする』
『仕方ないねぇ。愛しい浮竹のためだ。フェンリル姿の君の美しさを保つために、洗ってあげよう』
『ところで、堕天使のあいつは何をしているんだ?いないようだが』
「ああ、外でありを数えさせてる。そろそろ飽きて昼寝でもしてるんじゃないのか」
実際、ありを300匹まで数えたところで、飽きて中庭の日当たりのいい場所で、堕天使の京楽は寝ていた。
「おい、京楽、帰るぞ」
「ええ、もう!?僕、なんにもしてないんだけど。夕食も食べてない」
「家についたら、適当に作って食え。俺はヴァンパイアの京楽の出してくれた飯を食った。けっこう美味だったぞ」
「ずるいー」
「ずっと寝ているお前が悪い」
「しくしく・・・・ねぇ、浮竹、君、ちゃんと僕のこと愛してくれてる?」
その言葉に、天使の浮竹は顔を真っ赤にした。
「何を言い出す!」
「うん、その反応は僕を愛していてくれる証だね」
スパーン。
天使の浮竹にハリセンで頭をはたかれながらも、堕天使の京楽は嬉しそうにしていた。
「今度は、僕が君を洗ってあげる」
「卑猥な意味にしか聞き取れない」
「まぁ、内容はさておき、日も暮れるし帰ろうか」
「ああ」
その日の夜、浮竹は京楽に体を洗われたついでに、おいしくいただかれたそうな。
「ペット用の犬用のシャンプーを買ってきたんだ」
すでに、浮竹はうずうずしていた。
もっふもふなフェンリルの浮竹の毛皮は綺麗だが、長い間水でしか洗っていないので、少しだけごわごわしていた。
ちゃんと長毛用の犬用のブラシも買ってきた。
「フェンリルの俺!俺に洗われてくれ!」
いきなりの言葉に、フェンリルの浮竹が頭に?マークを浮かべた。
「フェンリルの姿になったとき、もっともっふもっふのいい匂いがするようになりたいと思わないか?」
『それは思う。でも、これ犬用シャンプーって書いてある。俺は犬じゃないぞ』
「細かいことは気にしない。京楽はその辺でありでも数えてろ。ヴァンパイアの京楽は手伝ってくれ」
『はいはい。まぁ、確かにフェンリル姿で水浴びをさせたことはあるけど、ちゃんとしたシャンプーなんてしたことないからね』
ヴァンパイアの京楽は、フェンリルの浮竹にフェンリルの姿になるように頼んだ。
ぼふんと音を立てて、小柄なフェンリルが姿を現す。
大型犬くらいの大きさだった。
「ありさんを数えて・・・1匹、2匹・・・・」
ありでも数えてろと言われた堕天使の京楽は、本当にありを数え出した。
広い浴場に湯をはり、その中にフェンリル姿の浮竹を入れる。
「ていっ」
犬用シャンプーを取り出して、フェンリルの浮竹に塗っていく。
そして、ブラシでわしゃわしゃと洗い出した。
毛皮が長いので、けっこうな重労働になるが、仕上がりが楽しみなので、ヴァンパイアの京楽もまた天使の浮竹を真似て、ブラシでわしゃわしゃと洗った。
「かゆいところはないか?」
『んー。おなかがかゆい。後右足』
「任せろ!」
ごしごしと洗ってやると、気持ちよさそうにフェンリルの浮竹は目がとろんとなった。
『眠くなってきた・・・・・』
「寝ててもいいぞ。洗っておくから。お湯をかけるときに起きてくれれば」
『じゃあ、ちょっとだけ寝る・・・・』
フェンリルの浮竹は、魔狼とされる巨大なフェンリルなのだが、幼い頃に成長が止まってしまい、大型犬か狼くらいしかの大きさしかなかった。
隅々までをシャンプーで洗うと、犬用のシャンプーは半分近くなくなっていた。
「フェンリルの俺、起きろ。流すぞ」
『んー。起きた』
しゃあああと、お湯のシャワーを浴びせる。
『ああ、気持ちいい』
全身の泡を洗い流されて、フェンリルの浮竹は水を含んだ毛皮を思わずぷるぷるして、天使の浮竹とヴァンパイアの京楽はずぶ濡れになった。
『あ、すまない!』
『いいんだ。これもまた、醍醐味の一つだ』
「なんの醍醐味だ?」
「ペットずっと飼いたかったんだよな。犬を」
『むう。俺は犬じゃない。フェンリルだ』
「分かっている。でも、今日は一日フェンリルの姿でいてくれないか。もふもふで癒されたい」
『堕天使の僕はどうするの?』
「適当に放置しとく。ありさんでも数え続けてるだろ」
フェンリルの浮竹はまたぶるぶると体をふるわせて、水分を吹き飛ばす。
「今、バスタオルで細かい水分もふいてやるからな」
『乾きにくい場所はドライヤーで乾かそう』
綺麗に水分をふきとると、真っ白でつやつやな毛皮になっていた。
金木犀の甘い香りがして、傍にいるだけで落ち着いた気分になれた。
「綺麗になったな」
『ありがとう、天使の俺。毛皮なんて水浴びするだけで、こうやって洗ってもらうのは初めてだ。まぁ、京楽が似たようなことをしたことはあるが、こちらの世界の石鹸は泡立ちが悪いからな』
「この犬用シャンプー追加で買ってまたもってくる。月に1回くらいは洗ってもらえ」
浮竹は、ヴァンパイアの京楽を見た。
『うん、そうする』
『仕方ないねぇ。愛しい浮竹のためだ。フェンリル姿の君の美しさを保つために、洗ってあげよう』
『ところで、堕天使のあいつは何をしているんだ?いないようだが』
「ああ、外でありを数えさせてる。そろそろ飽きて昼寝でもしてるんじゃないのか」
実際、ありを300匹まで数えたところで、飽きて中庭の日当たりのいい場所で、堕天使の京楽は寝ていた。
「おい、京楽、帰るぞ」
「ええ、もう!?僕、なんにもしてないんだけど。夕食も食べてない」
「家についたら、適当に作って食え。俺はヴァンパイアの京楽の出してくれた飯を食った。けっこう美味だったぞ」
「ずるいー」
「ずっと寝ているお前が悪い」
「しくしく・・・・ねぇ、浮竹、君、ちゃんと僕のこと愛してくれてる?」
その言葉に、天使の浮竹は顔を真っ赤にした。
「何を言い出す!」
「うん、その反応は僕を愛していてくれる証だね」
スパーン。
天使の浮竹にハリセンで頭をはたかれながらも、堕天使の京楽は嬉しそうにしていた。
「今度は、僕が君を洗ってあげる」
「卑猥な意味にしか聞き取れない」
「まぁ、内容はさておき、日も暮れるし帰ろうか」
「ああ」
その日の夜、浮竹は京楽に体を洗われたついでに、おいしくいただかれたそうな。
堕天使と天使12
浮竹と京楽は、天界を訪れていた。
浮竹はセラフであるので当たり前だが、堕天使である京楽が天界にきたのは、大天使長ミカエルの許しがあったからだった。
「ラファエルがな、お前たちに会いたいと言っていてな」
「ラファエルが?」
浮竹は首を傾げた。
ガブリエルは育ての親で、ミカエルは実の父親だ。
4大天使のうち、2人は知り合いということになる。それも、濃厚な。
「ラファエルか。どんな人物なんだろう」
「子供だよ。見た目はね。右目に眼帯をしている、綺麗な13歳くらいの子さ。一度誘惑したんだけど、拒否されたよ」
「京楽、お前は4大天使にまで手を出そうとしたのか」
「他にも、ガブリエルとウリエルも誘惑したよ。ミカエルも誘惑した」
浮竹は大きなため息をついた。
「4大天使みんな誘惑してるじゃないか!」
「だってかっこよかったりかわいかったりするんだもん」
「本当に、お前は変わっていないな。息子だけを愛すると誓ったのだ。他に手を出したら、私も容赦しないぞ」
ミカエルは、京楽の浮気を許さないようで、そもそも実の息子である浮竹だけを愛しているという言葉に、疑問を抱いていた。
「父さん、京楽はちゃんと俺だけを愛してくれてるから」
ミカエルの心を読んだように、浮竹はミカエルを安心させようとする。
「ラファエルは賢者の広間にいる。知識だけならどの天使も及ばないからな」
ミカエルに、賢者の広間のある建物にまで案内してもらった。
途中、今まで関係があった天使が京楽を見て、笑いかけてきたりしたが、浮竹も京楽も普通に自然に接した。
「ここがラファエルの館。通称賢者の館だ」
「大きいね」
「中には古今東西の書物がある。特に魔法関係が多い」
「魔法、教えてもらえないかな」
浮竹がややわくわくしながら、そんな声を出した。
「多分、教えてくれるはずだ。お前たちの魔力は類を見ないほどに高い。大天使長である私と同等かそれ以上か」
「父さん、買い被り過ぎだ」
「そうでもない。父の言葉を信用しなさい」
「はい」
ミカエルと別れて、賢者の館の大きな門の前に立つと、自動的に門と扉が開いた。
「入っておいでよ。ボクの久しぶりの客人だ・・・・京楽、お前を招いた覚えはないのだけど」
「いいじゃない。僕の一人や二人いても」
「お前のようなのが二人もいたら、天界は堕天使で溢れる」
扉の奥に入り、中を歩いていく。
まるで、図書館だった。
ほとんどが魔法に関するもので、古代魔法や禁忌の魔法書もあった。
図書館になっている一番奥で、13歳くらいの緋色の髪に瞳をもつ、美少女にしか見えないラファエルがいた。
「えっと、性別は女の子?」
確か、ラファエルは男で、4大天使にはガブリエルしか女性はいなかったはずなのだが、と思いながら聞いてみると、ラファエルは失礼な、という顔をした。
「どこを見ればボクが女に見える。立派な少年だろうが」
いや、美少女に見えるんですとは言えなくて、浮竹は困った顔をした。
「そこの色欲魔人の京楽の手に落ちたということは、そこそこ魔法の知識はあると思うが、まだまだ未熟だ。ボクが、禁忌や古代魔法について教えてあげよう」
「本当か!?」
浮竹は魔法が好きだった。
民間魔法なんかもけっこう覚えている。
「今日から1週間、浮竹、お前とそこの色欲魔人にも魔法を基礎から教えてやろう」
こうして、13歳の見た目のラファエルを師として、魔法を基礎から叩き込まれることになった。
3日経つ頃には、浮竹は詠唱破棄で聖以外の全属性の禁忌を発動できるようになっていた。
一方の京楽は、禁忌は教えられたが、ちんぷんかんぷんなようで、水の魔法の禁忌を発動させようとして雷の禁忌を発動していた。
「京楽、真面目にやれ。これは遊びではないのだぞ。最高神様が、お前たちの祓い屋としての腕を磨かせるためにわざわざ呼ばれたのだ」
「え、あの神様が僕まで呼んだの?」
「そうだ。あのお方は慈悲深い。お前のような歩く色欲魔でも、死なせてはかわいそうだと、魔法の手ほどきをしてやれと命令された」
ラファエルは納得がいかないようだったが、神の命令は絶対だ。
「京楽、お前は禁忌の魔法をできるだけ使うな。魔法構築がでたらめで、違う属性の禁忌が出ている」
「うーん、難しいなぁ」
「京楽、俺もいるんだ。無理に禁忌を覚える必要はないぞ」
「そうだな。京楽、お前は古代魔法が向いている」
2千年ほど前から生きているせいで、古代文明の魔法を元から覚えていたが、いろんな古代魔法を追加で覚えた。
「浮竹は、古代魔法が苦手のようだな」
「苦手というか、文字が読めない」
「勉学するしかないな。書庫を解禁しておいてやろう。ボクがいなくてても、人間社会からスマホを通じてアクセスできるようにしておこう」
「なんか意外とハイテク・・・・・・」
京楽の意見に、浮竹も頷いた。
「本当なら、1年ほどかけて学ばせるべきだが、時間がない。神は力を求められている。お前たちは、いずれ大きな敵と巡り会うだろう」
「何それ、予言?」
「そうだ。ラファエルであるボクの予言は当たると有名なんだぞ」
ラファエルは、えっへんといばった。
「本当ならもっと後で教えるべきだが、聖なる魔法の禁忌も教えておこう。堕天使である京楽には使えない魔法だ・・・・・」
ラファエルから、浮竹は聖なる魔法の禁忌を教え込まれた。
その威力の高さに驚く。他の属性の禁忌のように破壊するのではなく、無に返す魔法や闇属性の相手を即死させたりする魔法だった。
まだ、他の属性の禁忌のほうがかわいらしい。
無に返す魔法は、とにかく教えられたはいいが、極力使わないようにと念押しされた。
1週間が経った。
浮竹はみっちりと魔法を教え込まれて、魔法使いと言えるほどの腕になっていた。
京楽も教え込まれたが、使うこともほとんどないので、のらりくらりとしていた。
「ラファエル、ありがとう。お陰で魔法の腕が随分とあがった」
「感謝するなら、神に感謝しろ。あのお方の言いつけで、お前たちに魔法を教えたのだから」
「神は・・・その、うさんくさくてな」
天使と人間のハーフの子供を親元から取り上げて、ガブリエルに育てさせて、ある一定の年齢に達したら人間界に置き去りにする。
それは、神が決めたことだった。
ハーフの天使は魔力が高く、神に反旗を翻す可能性があるとかで、そうなったという。
「今のは、聞かなかったことにしておこう」
「ああ、すまない。京楽は?」
「古代の魔法書を読んでいるように見せかけて、居眠りしていたので図書館の掃除を命令しておいた。さぼったら、自動的に鞭が打たれる古代魔法をかけておいた」
クスリと、浮竹は笑った。
「そうして笑ってると、ミカエルに似ている。母親には似ていないな。アンヌは、元気だったか?」
「ああ、母さんは元気だ。この前、会いに行った」
「知っている。水晶玉で見た」
「ラファエルは、本当は何歳なんだ?」
「さぁ?創造神がこの世界をおつくりになって2千年。12使徒の天使が生まれた後に、ボクら四天王ともよばれる4大天使は生み出された。少なくとも、2千歳まではいっていないようだ。1800歳とくらいか?」
「ラファエル、掃除終わったよ。だからこの魔法といて。さっきからべしべし鞭うってくるんだよ。僕は、Sじゃないから鞭でぶたれても喜ばないよ!」
「あの広い図書館を、掃除し終えたというのか」
「うん。分身魔法で、10体の僕を作って魔力で動かした。やることはほとんど同じだったからできたことだけど」
「分身魔法・・・また変な魔法を覚えているな」
「これがあればね、10人の女の子と同時に・・びでぶ!」
最後まで言わせずに、浮竹が京楽の股間を蹴り上げた。
「お前も、どうしようもない相手と、恋をしているのだな」
ラファエルは、浮竹を憐みの瞳で見た。
「こんなでも、一応俺の恋人だからな」
「浮竹、マジ股間はやめてよ・・・・再起不能になる」
「いっそなるか?」
浮竹の笑顔が怖くて、京楽はそれ以上何も言えなかった。
そのまま、1週間が過ぎたが、急ぎの依頼もなかったので、賢者の館で更に1週間過ごした。
パソコンももってきていたので、ドイツ語の翻訳の仕事もできた。
天界にも機械はあり、電気や水道、ガスも通っていた。
今時、洗濯物を手で洗うような天使はいない。
衣類によっては手もみで洗う場合もあるが、ほとんどが洗濯機だ。冷蔵庫やらの必需品もあるし、テレビでは人間界の番組も見ることができる。
「なんか、地上の暮らしとあまり変化がないな」
「それだけ、天界も人間界に近づいたってことでしょ」
「モンスターが出ない。犯罪が起きない。違いはこれくらいか」
2週間が過ぎて、人間界に戻る日がきた。
「また、来るといい」
「またな」
ミカエルとラファエルに見送られて、浮竹と京楽は人間界に戻った。
浮竹も京楽も、いずれ出会う大な敵という言葉を、胸に刻んでいた。
浮竹はセラフであるので当たり前だが、堕天使である京楽が天界にきたのは、大天使長ミカエルの許しがあったからだった。
「ラファエルがな、お前たちに会いたいと言っていてな」
「ラファエルが?」
浮竹は首を傾げた。
ガブリエルは育ての親で、ミカエルは実の父親だ。
4大天使のうち、2人は知り合いということになる。それも、濃厚な。
「ラファエルか。どんな人物なんだろう」
「子供だよ。見た目はね。右目に眼帯をしている、綺麗な13歳くらいの子さ。一度誘惑したんだけど、拒否されたよ」
「京楽、お前は4大天使にまで手を出そうとしたのか」
「他にも、ガブリエルとウリエルも誘惑したよ。ミカエルも誘惑した」
浮竹は大きなため息をついた。
「4大天使みんな誘惑してるじゃないか!」
「だってかっこよかったりかわいかったりするんだもん」
「本当に、お前は変わっていないな。息子だけを愛すると誓ったのだ。他に手を出したら、私も容赦しないぞ」
ミカエルは、京楽の浮気を許さないようで、そもそも実の息子である浮竹だけを愛しているという言葉に、疑問を抱いていた。
「父さん、京楽はちゃんと俺だけを愛してくれてるから」
ミカエルの心を読んだように、浮竹はミカエルを安心させようとする。
「ラファエルは賢者の広間にいる。知識だけならどの天使も及ばないからな」
ミカエルに、賢者の広間のある建物にまで案内してもらった。
途中、今まで関係があった天使が京楽を見て、笑いかけてきたりしたが、浮竹も京楽も普通に自然に接した。
「ここがラファエルの館。通称賢者の館だ」
「大きいね」
「中には古今東西の書物がある。特に魔法関係が多い」
「魔法、教えてもらえないかな」
浮竹がややわくわくしながら、そんな声を出した。
「多分、教えてくれるはずだ。お前たちの魔力は類を見ないほどに高い。大天使長である私と同等かそれ以上か」
「父さん、買い被り過ぎだ」
「そうでもない。父の言葉を信用しなさい」
「はい」
ミカエルと別れて、賢者の館の大きな門の前に立つと、自動的に門と扉が開いた。
「入っておいでよ。ボクの久しぶりの客人だ・・・・京楽、お前を招いた覚えはないのだけど」
「いいじゃない。僕の一人や二人いても」
「お前のようなのが二人もいたら、天界は堕天使で溢れる」
扉の奥に入り、中を歩いていく。
まるで、図書館だった。
ほとんどが魔法に関するもので、古代魔法や禁忌の魔法書もあった。
図書館になっている一番奥で、13歳くらいの緋色の髪に瞳をもつ、美少女にしか見えないラファエルがいた。
「えっと、性別は女の子?」
確か、ラファエルは男で、4大天使にはガブリエルしか女性はいなかったはずなのだが、と思いながら聞いてみると、ラファエルは失礼な、という顔をした。
「どこを見ればボクが女に見える。立派な少年だろうが」
いや、美少女に見えるんですとは言えなくて、浮竹は困った顔をした。
「そこの色欲魔人の京楽の手に落ちたということは、そこそこ魔法の知識はあると思うが、まだまだ未熟だ。ボクが、禁忌や古代魔法について教えてあげよう」
「本当か!?」
浮竹は魔法が好きだった。
民間魔法なんかもけっこう覚えている。
「今日から1週間、浮竹、お前とそこの色欲魔人にも魔法を基礎から教えてやろう」
こうして、13歳の見た目のラファエルを師として、魔法を基礎から叩き込まれることになった。
3日経つ頃には、浮竹は詠唱破棄で聖以外の全属性の禁忌を発動できるようになっていた。
一方の京楽は、禁忌は教えられたが、ちんぷんかんぷんなようで、水の魔法の禁忌を発動させようとして雷の禁忌を発動していた。
「京楽、真面目にやれ。これは遊びではないのだぞ。最高神様が、お前たちの祓い屋としての腕を磨かせるためにわざわざ呼ばれたのだ」
「え、あの神様が僕まで呼んだの?」
「そうだ。あのお方は慈悲深い。お前のような歩く色欲魔でも、死なせてはかわいそうだと、魔法の手ほどきをしてやれと命令された」
ラファエルは納得がいかないようだったが、神の命令は絶対だ。
「京楽、お前は禁忌の魔法をできるだけ使うな。魔法構築がでたらめで、違う属性の禁忌が出ている」
「うーん、難しいなぁ」
「京楽、俺もいるんだ。無理に禁忌を覚える必要はないぞ」
「そうだな。京楽、お前は古代魔法が向いている」
2千年ほど前から生きているせいで、古代文明の魔法を元から覚えていたが、いろんな古代魔法を追加で覚えた。
「浮竹は、古代魔法が苦手のようだな」
「苦手というか、文字が読めない」
「勉学するしかないな。書庫を解禁しておいてやろう。ボクがいなくてても、人間社会からスマホを通じてアクセスできるようにしておこう」
「なんか意外とハイテク・・・・・・」
京楽の意見に、浮竹も頷いた。
「本当なら、1年ほどかけて学ばせるべきだが、時間がない。神は力を求められている。お前たちは、いずれ大きな敵と巡り会うだろう」
「何それ、予言?」
「そうだ。ラファエルであるボクの予言は当たると有名なんだぞ」
ラファエルは、えっへんといばった。
「本当ならもっと後で教えるべきだが、聖なる魔法の禁忌も教えておこう。堕天使である京楽には使えない魔法だ・・・・・」
ラファエルから、浮竹は聖なる魔法の禁忌を教え込まれた。
その威力の高さに驚く。他の属性の禁忌のように破壊するのではなく、無に返す魔法や闇属性の相手を即死させたりする魔法だった。
まだ、他の属性の禁忌のほうがかわいらしい。
無に返す魔法は、とにかく教えられたはいいが、極力使わないようにと念押しされた。
1週間が経った。
浮竹はみっちりと魔法を教え込まれて、魔法使いと言えるほどの腕になっていた。
京楽も教え込まれたが、使うこともほとんどないので、のらりくらりとしていた。
「ラファエル、ありがとう。お陰で魔法の腕が随分とあがった」
「感謝するなら、神に感謝しろ。あのお方の言いつけで、お前たちに魔法を教えたのだから」
「神は・・・その、うさんくさくてな」
天使と人間のハーフの子供を親元から取り上げて、ガブリエルに育てさせて、ある一定の年齢に達したら人間界に置き去りにする。
それは、神が決めたことだった。
ハーフの天使は魔力が高く、神に反旗を翻す可能性があるとかで、そうなったという。
「今のは、聞かなかったことにしておこう」
「ああ、すまない。京楽は?」
「古代の魔法書を読んでいるように見せかけて、居眠りしていたので図書館の掃除を命令しておいた。さぼったら、自動的に鞭が打たれる古代魔法をかけておいた」
クスリと、浮竹は笑った。
「そうして笑ってると、ミカエルに似ている。母親には似ていないな。アンヌは、元気だったか?」
「ああ、母さんは元気だ。この前、会いに行った」
「知っている。水晶玉で見た」
「ラファエルは、本当は何歳なんだ?」
「さぁ?創造神がこの世界をおつくりになって2千年。12使徒の天使が生まれた後に、ボクら四天王ともよばれる4大天使は生み出された。少なくとも、2千歳まではいっていないようだ。1800歳とくらいか?」
「ラファエル、掃除終わったよ。だからこの魔法といて。さっきからべしべし鞭うってくるんだよ。僕は、Sじゃないから鞭でぶたれても喜ばないよ!」
「あの広い図書館を、掃除し終えたというのか」
「うん。分身魔法で、10体の僕を作って魔力で動かした。やることはほとんど同じだったからできたことだけど」
「分身魔法・・・また変な魔法を覚えているな」
「これがあればね、10人の女の子と同時に・・びでぶ!」
最後まで言わせずに、浮竹が京楽の股間を蹴り上げた。
「お前も、どうしようもない相手と、恋をしているのだな」
ラファエルは、浮竹を憐みの瞳で見た。
「こんなでも、一応俺の恋人だからな」
「浮竹、マジ股間はやめてよ・・・・再起不能になる」
「いっそなるか?」
浮竹の笑顔が怖くて、京楽はそれ以上何も言えなかった。
そのまま、1週間が過ぎたが、急ぎの依頼もなかったので、賢者の館で更に1週間過ごした。
パソコンももってきていたので、ドイツ語の翻訳の仕事もできた。
天界にも機械はあり、電気や水道、ガスも通っていた。
今時、洗濯物を手で洗うような天使はいない。
衣類によっては手もみで洗う場合もあるが、ほとんどが洗濯機だ。冷蔵庫やらの必需品もあるし、テレビでは人間界の番組も見ることができる。
「なんか、地上の暮らしとあまり変化がないな」
「それだけ、天界も人間界に近づいたってことでしょ」
「モンスターが出ない。犯罪が起きない。違いはこれくらいか」
2週間が過ぎて、人間界に戻る日がきた。
「また、来るといい」
「またな」
ミカエルとラファエルに見送られて、浮竹と京楽は人間界に戻った。
浮竹も京楽も、いずれ出会う大な敵という言葉を、胸に刻んでいた。
堕天使と天使11
堕天使とは、元来、天使を誘惑して堕天させる存在だ。
けれど、京楽は神の元12使徒であった始まりの天使だったため、堕天使に落ちて天使を誘惑しても、堕天させることはなかった。
「浮竹、いい加減に起きないと」
「ん~。あと5時間寝る~」
「それじゃあ、夜の7時になっちゃうよ」
「昨日は翻訳の締め切りに追われて寝たのが朝の10時なんだ。もう少し、寝かせてくれ」
「もう、仕方ないねぇ」
京楽は、料理の他に家事もする。
元々は浮竹がやっていたのだが、浮竹の家に転がり込んできた形の京楽は、特に仕事ということもないので、暇なので家事をしていた。
「明日は卵の特売日だよ?一緒に行こうね」
「ああ・・・・・」
うつらうつらしていた浮竹は、適当に相槌を打って、そのまままた眠ってしまった。
翻訳家としての仕事はいつも締め切り前には終わらせているのだが、最近モンスターの退治が相次いでおり、なかなか仕事の時間がとれずに徹夜する羽目になった。
夜の7時になって、寝ぼけ眼で浮竹が起きてきた。
ぐ~。
日付が変わったあたりから何も食べていなかったので、浮竹はお腹がすいていて、腹が鳴ってしまい、顔を赤くする。
「今日はビーフシチューとカルボナーラだよ」
「うまそうだな」
浮竹は早速夕飯を口にした。
京楽の料理の腕はシェフ並みで、京楽の作る食事を浮竹はいつも心待ちにしていた。
「相変わらず、いい腕だな」
「いやぁ。まぁ、正直なところ三ツ星レストランで働いてたこともあったからね」
「さすがだな」
その日はシャワーを浴びて、浮竹は7時まで寝ていたためになかなか寝付けずに、結局深夜の1時頃になってようやく就寝できた。
次の日、急ぎの依頼がきていた。
森の守り手でもあるトレントが、人を攫って養分として取り込み、衰弱死させるというのだ。
金貨200枚の依頼だった。
トレント自体はそう強くないが、人の生気を喰らったモンスターは通常の数倍、力が増す。
トレントはCランクモンスターなので、Bランクあたりになっているだろう。
浮竹と京楽は、車での移動では限界があるので、あまり使わない空間転移の魔法で被害が出ている国にまでやってくると、早速聞き込みを開始した。
なんでも、少し町から離れたところにあるブナエの森という場所に、トレントがいて、薬草や花をつみにきた人々を攫い、養分として取り込むらしい。
早速、ブナエの森に出かける。
「静かだな」
「うん、そうだね。静かすぎる。動物の鳴き声や鳥のさえずりどころか、虫の音色さえ聞こえない」
さわさわと、揺れる緑の音だけがした。
「たす・・け・・・て・・・・・・」
森の奥のほうから、かすかな声が聞こえた。
その声を頼りに森を歩くと、トレントの群れと遭遇した。
捕らわれて養分を吸い取られているのは、若いエルフの少女だった。
「たすけて・・・・・・」
「エアリアルエッジ!」
「ファイアボール!」
浮竹がまず少女を戒めているトレントを風の精霊エアリアルに命じてカマイタチを出して、トレントをばらばらにする。
京楽が、ファイアボールでそのトレントを燃やし尽くした。
トレントは森を養分としており、再生能力がある。
「京楽、少女を頼む」
「あ、浮竹!」
浮竹は、自分を囮にトレントの群れに飛び込んだ。
「あーあ。トレントなむ」
京楽は、浮竹の心配ではなく、一方的に殺されるトレントの冥福を祈った。
「ボルケーノトライアングル、ヘルインフェルノ、エターナルフェニックス!!」
「ぎゃああああ!」
「うおおおおお!!」
干からびた人のなれの果てを抱いたトレントごと、3種類の魔法の業火でトレントを焼いていく。
干からびた人やまだ息のある人間には、炎の手は伸びなかった。
死んでしまっても、遺品があるかもしれないし、息のある者は救助して、適切な処置を施さないといけない。
「トレントだけでなく、ドライアドもか・・・・」
トレントの群れに交じって、ドライアドの姿もあったが、それも燃やし尽くした。
1匹のトレントを生き残らせて、どうして人を襲うのかと問いただした。
「それは、あのお方がおしゃったからだ。偉大なる賢者でもあられる、あの方が。堕天使だが、あのお方は天使だ。森の伐採で滅びゆく我らに救いの手を差し伸べてくれた・・・・」
それだけ言って、そのトレントは自害した。
「モンスターが自害?どういうことだ」
「いや、そのお方とやらの話を口にすると、最初から死ぬような呪いがかけられていたよ」
「ますますきな臭いな」
とりあえず、森のトレントは全部処理しようということになった。ドライアドも。
「そっちを頼む」
「じゃあ、君はあっちを」
森をしらみつぶしに歩いて、魔力探知でひっかかったトレントとドライアドは全部処分した。
助け出せた人間の数が4人。すでに事切れて干からびていた人間が5人。
一番古い死体は、骨になっており、密かに人を養分として昔から取り込んでいたらしい。
それが活発化して、今回の退治依頼となったのだ。
「4人、運べる?」
「そっちの死体も併せて、空間転移で町に運ぶ」
浮竹は、大規模な空間転移の魔法陣を描き、町に転移した。
始めは町の者も驚いていたが、生きていた行方不明者の顔見知りが近づき、本物だと確認すると、町をあげての騒ぎとなった。
死者となってしまった5人の身元も割れて、森のトレントどドライアドを全部処分したことを伝えると、町の住人たちは歓喜の声をあげた。
これで森に入って狩りができる。薬草やきのこ、木の実を収穫できると、喜んでいた。
町長から金貨200枚を報酬としてもらい、やや浮かれすぎな町の歓迎式に出てから、浮竹と京楽は自分たちの家に帰っていった。
トレントとドライアドの魔石は、今度換金することにした。
家に入ると、ヴァンパイアの京楽とフェンリルの浮竹がいた。
『やあ、勝手にあがらせてもらってるよ』
『お菓子を作ってたんだ。プリンアラモード』
「また、突然だな。しかもこったお菓子だな」
『うまくできたと思うんだ。食べてくれないか、天使の俺』
「うん、いただく」
「あの、俺の分は?」
すでに不法侵入は何度かあったので、目を瞑っておく。
『お前の分など、ない!』
「えええーー!酷くない!?」
『君はかつての行いが悪いから、反省しろって浮竹がね・・・・』
フェンリルの浮竹は、カップに水を入れて、砂糖をいれて堕天使の京楽に出した。
『これでも飲んでろ』
「これ、ただの砂糖水じゃないの」
『お前なんか、これで十分だ』
「ひどい。( ノД`)シクシク…」
堕天使の京楽は、ソファーで沈みこんだ。
『まぁ、別でクッキー焼いておいたから。それで我慢しなよ』
『京楽、こんな奴にクッキーをあげる必要はない』
『まぁまぁ。ほら、向こうの浮竹が哀しそうな顔をしているでしょ?』
『むーーー』
「あ、いや別にこれはそういうのじゃなくて!」
天使の浮竹は、いきなりのことで慌てふためいた。
『仕方ない。クッキーを食べてもいい。そのかわり、こっちの世界の俺を泣かせるなよ!そんなことしたら、骨にしてやる』
「いやあああ、食べる気満々だあああ」
『食べない。まずい、くさい、穢れてる』
「ひどいいいいいいいい」
そう言いつつ、フェンリルの浮竹に手を伸ばす堕天使の京楽に、フェンリルの浮竹は噛みついた。
「いたいいいいいいい」
『気安く俺に触ろうとするな!』
「京楽?浮気は・・・・・・」
「もぎゃあああああああああ!!!」
『南無阿弥陀仏』
そんな台詞をヴァンパイアの京楽は唱えて、堕天使の京楽の冥福を祈った。
死んでないけどね!
ちゃんと生きてるけどね!
天使の浮竹は、プリンアラモードを食べながら、向こう側の浮竹と京楽と楽しそうに話していた。
一方、堕天使の京楽は、その輪に入れてもらえずに、いじいじしていた。
「このクッキーぱさぱさ・・・・まだまだだねぇ」
『俺が作ったんだ。何か言ったか』
「いえ、なんでもないです」
フェンリルの浮竹は、ぱさぱさだというクッキーを堕天使の京楽の前から回収して、ドンと砂糖水をおいた。
『やっぱり、お前はこれで十分だ』
「ひどいいいい、浮竹、フェンリルの浮竹が僕をいじめる!」
「そうか、よかったな。もっといじめてもらえ」
「浮竹もひどい!化けて出てやるううううう」
京楽はキッチンにこもり、その日の夕食をやけになって作り始めるのだった。
無論、自分と浮竹の分だけだ。
ヴァンパイアの京楽とフェンリルの浮竹には、そうそうに帰ってもらうのだった。
けれど、京楽は神の元12使徒であった始まりの天使だったため、堕天使に落ちて天使を誘惑しても、堕天させることはなかった。
「浮竹、いい加減に起きないと」
「ん~。あと5時間寝る~」
「それじゃあ、夜の7時になっちゃうよ」
「昨日は翻訳の締め切りに追われて寝たのが朝の10時なんだ。もう少し、寝かせてくれ」
「もう、仕方ないねぇ」
京楽は、料理の他に家事もする。
元々は浮竹がやっていたのだが、浮竹の家に転がり込んできた形の京楽は、特に仕事ということもないので、暇なので家事をしていた。
「明日は卵の特売日だよ?一緒に行こうね」
「ああ・・・・・」
うつらうつらしていた浮竹は、適当に相槌を打って、そのまままた眠ってしまった。
翻訳家としての仕事はいつも締め切り前には終わらせているのだが、最近モンスターの退治が相次いでおり、なかなか仕事の時間がとれずに徹夜する羽目になった。
夜の7時になって、寝ぼけ眼で浮竹が起きてきた。
ぐ~。
日付が変わったあたりから何も食べていなかったので、浮竹はお腹がすいていて、腹が鳴ってしまい、顔を赤くする。
「今日はビーフシチューとカルボナーラだよ」
「うまそうだな」
浮竹は早速夕飯を口にした。
京楽の料理の腕はシェフ並みで、京楽の作る食事を浮竹はいつも心待ちにしていた。
「相変わらず、いい腕だな」
「いやぁ。まぁ、正直なところ三ツ星レストランで働いてたこともあったからね」
「さすがだな」
その日はシャワーを浴びて、浮竹は7時まで寝ていたためになかなか寝付けずに、結局深夜の1時頃になってようやく就寝できた。
次の日、急ぎの依頼がきていた。
森の守り手でもあるトレントが、人を攫って養分として取り込み、衰弱死させるというのだ。
金貨200枚の依頼だった。
トレント自体はそう強くないが、人の生気を喰らったモンスターは通常の数倍、力が増す。
トレントはCランクモンスターなので、Bランクあたりになっているだろう。
浮竹と京楽は、車での移動では限界があるので、あまり使わない空間転移の魔法で被害が出ている国にまでやってくると、早速聞き込みを開始した。
なんでも、少し町から離れたところにあるブナエの森という場所に、トレントがいて、薬草や花をつみにきた人々を攫い、養分として取り込むらしい。
早速、ブナエの森に出かける。
「静かだな」
「うん、そうだね。静かすぎる。動物の鳴き声や鳥のさえずりどころか、虫の音色さえ聞こえない」
さわさわと、揺れる緑の音だけがした。
「たす・・け・・・て・・・・・・」
森の奥のほうから、かすかな声が聞こえた。
その声を頼りに森を歩くと、トレントの群れと遭遇した。
捕らわれて養分を吸い取られているのは、若いエルフの少女だった。
「たすけて・・・・・・」
「エアリアルエッジ!」
「ファイアボール!」
浮竹がまず少女を戒めているトレントを風の精霊エアリアルに命じてカマイタチを出して、トレントをばらばらにする。
京楽が、ファイアボールでそのトレントを燃やし尽くした。
トレントは森を養分としており、再生能力がある。
「京楽、少女を頼む」
「あ、浮竹!」
浮竹は、自分を囮にトレントの群れに飛び込んだ。
「あーあ。トレントなむ」
京楽は、浮竹の心配ではなく、一方的に殺されるトレントの冥福を祈った。
「ボルケーノトライアングル、ヘルインフェルノ、エターナルフェニックス!!」
「ぎゃああああ!」
「うおおおおお!!」
干からびた人のなれの果てを抱いたトレントごと、3種類の魔法の業火でトレントを焼いていく。
干からびた人やまだ息のある人間には、炎の手は伸びなかった。
死んでしまっても、遺品があるかもしれないし、息のある者は救助して、適切な処置を施さないといけない。
「トレントだけでなく、ドライアドもか・・・・」
トレントの群れに交じって、ドライアドの姿もあったが、それも燃やし尽くした。
1匹のトレントを生き残らせて、どうして人を襲うのかと問いただした。
「それは、あのお方がおしゃったからだ。偉大なる賢者でもあられる、あの方が。堕天使だが、あのお方は天使だ。森の伐採で滅びゆく我らに救いの手を差し伸べてくれた・・・・」
それだけ言って、そのトレントは自害した。
「モンスターが自害?どういうことだ」
「いや、そのお方とやらの話を口にすると、最初から死ぬような呪いがかけられていたよ」
「ますますきな臭いな」
とりあえず、森のトレントは全部処理しようということになった。ドライアドも。
「そっちを頼む」
「じゃあ、君はあっちを」
森をしらみつぶしに歩いて、魔力探知でひっかかったトレントとドライアドは全部処分した。
助け出せた人間の数が4人。すでに事切れて干からびていた人間が5人。
一番古い死体は、骨になっており、密かに人を養分として昔から取り込んでいたらしい。
それが活発化して、今回の退治依頼となったのだ。
「4人、運べる?」
「そっちの死体も併せて、空間転移で町に運ぶ」
浮竹は、大規模な空間転移の魔法陣を描き、町に転移した。
始めは町の者も驚いていたが、生きていた行方不明者の顔見知りが近づき、本物だと確認すると、町をあげての騒ぎとなった。
死者となってしまった5人の身元も割れて、森のトレントどドライアドを全部処分したことを伝えると、町の住人たちは歓喜の声をあげた。
これで森に入って狩りができる。薬草やきのこ、木の実を収穫できると、喜んでいた。
町長から金貨200枚を報酬としてもらい、やや浮かれすぎな町の歓迎式に出てから、浮竹と京楽は自分たちの家に帰っていった。
トレントとドライアドの魔石は、今度換金することにした。
家に入ると、ヴァンパイアの京楽とフェンリルの浮竹がいた。
『やあ、勝手にあがらせてもらってるよ』
『お菓子を作ってたんだ。プリンアラモード』
「また、突然だな。しかもこったお菓子だな」
『うまくできたと思うんだ。食べてくれないか、天使の俺』
「うん、いただく」
「あの、俺の分は?」
すでに不法侵入は何度かあったので、目を瞑っておく。
『お前の分など、ない!』
「えええーー!酷くない!?」
『君はかつての行いが悪いから、反省しろって浮竹がね・・・・』
フェンリルの浮竹は、カップに水を入れて、砂糖をいれて堕天使の京楽に出した。
『これでも飲んでろ』
「これ、ただの砂糖水じゃないの」
『お前なんか、これで十分だ』
「ひどい。( ノД`)シクシク…」
堕天使の京楽は、ソファーで沈みこんだ。
『まぁ、別でクッキー焼いておいたから。それで我慢しなよ』
『京楽、こんな奴にクッキーをあげる必要はない』
『まぁまぁ。ほら、向こうの浮竹が哀しそうな顔をしているでしょ?』
『むーーー』
「あ、いや別にこれはそういうのじゃなくて!」
天使の浮竹は、いきなりのことで慌てふためいた。
『仕方ない。クッキーを食べてもいい。そのかわり、こっちの世界の俺を泣かせるなよ!そんなことしたら、骨にしてやる』
「いやあああ、食べる気満々だあああ」
『食べない。まずい、くさい、穢れてる』
「ひどいいいいいいいい」
そう言いつつ、フェンリルの浮竹に手を伸ばす堕天使の京楽に、フェンリルの浮竹は噛みついた。
「いたいいいいいいい」
『気安く俺に触ろうとするな!』
「京楽?浮気は・・・・・・」
「もぎゃあああああああああ!!!」
『南無阿弥陀仏』
そんな台詞をヴァンパイアの京楽は唱えて、堕天使の京楽の冥福を祈った。
死んでないけどね!
ちゃんと生きてるけどね!
天使の浮竹は、プリンアラモードを食べながら、向こう側の浮竹と京楽と楽しそうに話していた。
一方、堕天使の京楽は、その輪に入れてもらえずに、いじいじしていた。
「このクッキーぱさぱさ・・・・まだまだだねぇ」
『俺が作ったんだ。何か言ったか』
「いえ、なんでもないです」
フェンリルの浮竹は、ぱさぱさだというクッキーを堕天使の京楽の前から回収して、ドンと砂糖水をおいた。
『やっぱり、お前はこれで十分だ』
「ひどいいいい、浮竹、フェンリルの浮竹が僕をいじめる!」
「そうか、よかったな。もっといじめてもらえ」
「浮竹もひどい!化けて出てやるううううう」
京楽はキッチンにこもり、その日の夕食をやけになって作り始めるのだった。
無論、自分と浮竹の分だけだ。
ヴァンパイアの京楽とフェンリルの浮竹には、そうそうに帰ってもらうのだった。
堕天使と天使10
京楽にしつこくまとわりついてくる女がいた。
天使だった。20年ほど前に付き合っていた天使の女で、見た目はふわふわした髪の可愛い少女だったが、中身も幼く、京楽のことが好きだ好きだとうるさかった。
「悪いが諦めてくれ。京楽は俺のものだ」
「アンナ信じらんなーい。アンナのほうかかわいいのにー。春ちゃん、両刀なのは知ってたけど、好み変わった?前は、もっと女の子っぽい男の子のほうが好きだったじゃない」
「げふげふ。アンナ、僕たちはもう終わったんだ。君と復縁する気はないよ」
アンナは、ふてくされた。
「ひどーい。やっぱり、アンナの体だけが目的だったのね」
「いやいや。それよりも、片翼のもげた天使の話は本当かい?」
「うん。アンナ見たよ。片方の翼がもげた天使。なんか、堕天使になるとか言って、天界の外に飛び出していちゃった」
アンナの言葉に、ヴァンパイアの京楽の駆除を求めてきた、片翼の天使のことを思い出す。
「とどめ、さしておいておいたほうがいいのかな?」
「やめておけ。同族争いになる」
浮竹の言葉に、京楽も頷いた。
「アンナになびかない春ちゃんのバカ!この浮竹っていうのが悪いのね!アンナの春ちゃんたぶらかして!」
アンナは、鋭いナイフをもちだしてきて、あろうことか浮竹の胸を刺した。
「ぐ・・・」
「浮竹!」
「春ちゃんが悪いのよ!」
「ヘルインフェルノ」
「きゃあああああああ」
京楽は、躊躇もなくアンナに炎の上位魔法をぶつけた。
アンナは、灰となって消えていった。
「今、癒してあげるから。セイントヒール」
浮竹は傷は深かったが、すぐに回復魔法をかけたことで出血も大量でなくてすんで、浮竹はでも困った顔をしていた。
「天使を殺したんだぞ」
「別にいいよ。僕は堕天使だ。天使や人間や悪魔を殺そうと、何も言われない」
「元、神の12使徒だろう」
「僕らの父である神は、自分のことしか頭にないよ」
「確かに、神は何を考えているか分からない。ハーフの子供を親から引き離してガブリエルに育てさせるのも意味不明だ」
浮竹もまた、人間と天使のハーフで、幼い頃に両親から神に引き離されて、母親役であったセラフのガブリエルに育てられた。
そして、ガブリエルはある程度の年齢まで育てると、神の命令で人間界にハーフの子供を置き去りにした。
神が何を考えているかなぞ、大天使長ミカエルでさえも分からないだろう。
神に一番近い場所にいるミカエルの子である浮竹も、ハーフであるということから両親から引き離されて、ガブリエルに育ててもらい、そして人間界に置き去りにされた。
孤児院で育った浮竹は、バイトをしながら大学にも通い、出版会社に就職して、ドイツ語の翻訳家をしている。
今は、神の命令で祓い屋というか退治屋というか、冒険者ギルドからあぶれたモンスター駆除を行ったりしていた。
浮竹と京楽は、その日の討伐の対象を選ぶ。
なるべく人が困っている、死者が出るような依頼を重点に選ぶが、最近は少しモンスターの活発化がましになって、セイレーンの歌声が船人を惑わすから駆除してくれという依頼を引き受けた。
車で、4時間走った場所に、セイレーンは出た。
港町で、セイレーンの歌声が聞こえた。
「綺麗な声だ。惑わすというか、ただ歌っているようにしか聞こえないが」
「船乗りには、これが魅了の声に聞こえるんだ。セイレーンは人を惑わして魅惑するが、食うわけじゃないが、たまに溺死させることがあるから、駆除しよう」
浮竹と京楽は、船を借りてセイレーンのいる岩場に近づいた。
「ららら~~~~~~♪」
セイレーンは、6体ほどいた。
「悪いけど、退治させてもらうよ。サンダーボルテックス!」
「ぎゃあああああああ!!」
セイレーンたちは黒こげになった。
「ちょっとかわいそうなことしちゃったかな?」
「いや、セイレーンは船乗りを溺死させるから、駆除しておいたほうがいい」
浮竹は、他にセイレーンがいないかどうか船で港の近くを行ったり来たりした。
「他にセイレーンはいないようだ・・・・なんだ、歌声がする」
それは、セイレーンの歌声だった。
京楽も浮竹も魅了されて、その歌声をする方に向かう。
セイレーンでも、とびぬけた美人がいた。
「ああ、たまらないね、君」
京楽のその一言で、浮竹は我に戻った。
「この浮気者!」
「あべし!」
「セイレーンなんかと浮気するのか!」
「びでぶ!」
京楽の股間を思い切り蹴り上げると、京楽も正気に戻った。
「君・・・・僕たちを、食おうとしただろう?」
「なんのことかしら。分からないわ」
「その姿・・・・人を食ったのか」
「あら、悪い?人は魚を食べるじゃない。それみたいに、セイレーンは人間をたまに食べるだけよ」
「人に害を成せば人に駆除される。それくらい、分かっているだろう?」
浮竹が、進化したセイレーンを見た。
ハイ・セイレーンというところだろうか。
保有している魔力が高く、歌声でまたこちらを誘惑してきた。
「ららら~~~~~~~♪」
浮竹は耳を手でふさいだ。
京楽は、また魅了されてそのセイレーンを抱きしめていた。
「浮気は、許さないと、言っているだろう!エターナルフェニックス!」
セイレーンもろとも、京楽も一緒に焼いた。
「もぎゃあああああ」
その熱さに、我に返った京楽が魔法のバリアを自分にだけ作り、人を食ったセイレーンは丸焼き状態になって、灰となり魔石だけを残してこの世から消え去っていった。
「セイレーンになんて、鼻の下伸ばしやがって」
「違んだよ、誤解だよ。あれは歌声に魅了されただけで、別にセイレーンを好きなわけじゃないよ」
「過去にセイレーンと関係をもったことは?」
「う・・・・・4回、くらいかな」
正直にいう京楽に、浮竹はハリセンでその頭を叩いた。
「5回目になってたら、別れてたからな」
「はい、すみません。僕がもっと魅了に気を付ければ」
「とりあえず、報告に戻ろう。もうここいらのセイレーンは全部駆除し終えたようだ。さっきの親玉ってところで、もう増えたりもしないだろう」
町の町長から報酬の金貨10枚をもらい、王都に戻って冒険者ギルドに魔石を買い取ってもった。
金貨6枚になった。
「浮竹、まだ怒ってるの?」
「別に怒ってなんてない」
つーんとした態度をとり続ける浮竹を、京楽は抱きしめた。
「僕が愛しているのは、今は浮竹だけだよ」
「そうか。それなら、いい」
自分の家に戻ると、京楽は浮竹を求めてきた。
久しぶりだったので、浮竹にも欲はあるので、応じることにした。
「んあっ」
ディープキスを繰り返されて、舌が絡みあう。
口づけの合間に服を脱がされて、平らな胸を撫でられ、先端をつままれた。
「んっ」
そのまま、ズボンをぬがされて、ボクサーパンツの上から触られた。
「あっ」
すでに染みをつくっていたそこは、京楽に触られると硬く勃ちあがり、京楽がボクサーパンツの上から執拗に愛撫すると、白濁した液を出していた。
「ああああ!!」
「ふふ、かわいい」
「ばか、服が」
「洗濯すればいいだけだよ」
浮竹は、ついには全裸にされて、京楽も裸になった。
ローションを後ろに塗り込まれて、前立腺を指がかすめる。
「あああ!」
前立腺を刺激されて、また浮竹は精液を放っていた。
「いくの早くない?」
「うるさい」
「ごめんごめん」
京楽は、熱く滾ったものを浮竹の蕾に宛がい、一気に引き裂いた。
「ひああああああああ!!」
衝撃に、涙がこぼれる。
その涙を吸い取って、京楽はゆっくりと動き出した。
「んああああ!」
わざと前立腺をかすめて、奥を貫く。
奥をゴリゴリされると、浮竹の手が京楽の背中に回り、爪を立てる。
「やあああああ!!」
ぐりっと奥まで侵入してきた熱は、しめつけられて京楽は浮竹の胎の奥に子種をびゅるびゅると注ぎ込んでいた。
「やああ、いっちゃう!」
浮竹は、ドライのオーガズムでいっていた。
「もっといっていいよ?」
浮竹のものをしごぎあげると、浮竹は呆気なく白濁した液体を京楽の手の中に放っていた。
「あ、春水、もっとお前をくれ。お前の子種で、俺の胎を満たしてくれ」
ぱちゅんぱちゅんと音をたてて、京楽のものが出入りする。
浮竹は何度目かも分からない精液を吐き出して、それ以上もう出るものがなくなり、先走りの蜜だけをたらたらと零していた。
「あ、ああああ!」
ごりごりと、奥を抉られて、浮竹の視界が真っ白になる。
オーガズムでいくことを覚えた体は、貪欲に京楽を求めた。
「あ、いい、もっと、もっと」
「十四郎・・・・愛してるよ」
「俺も愛している、春水・・・あああああ、もっと奥まで!」
ぐりっと奥を抉られて、浮竹はまたいっていた。
「いやぁ!」
「最後の一滴まで、注いであげるからね?」
「あ、やああ、やあ、あああ」
浮竹は快感でぐずぐずに溶けていく。
京楽も、浮竹の中に全てを放って、満足した。
濡れたタオルをもってきて、体を清めて中に出したものをかき出すと、とろとろと白濁した京楽の液体が浮竹の太ももをつたってきた。
「たくさん出したな」
「うん。だって、十四郎が求めるんだもの」
浮竹は真っ赤になって、クッションを京楽に投げた。
「シーツを変えてくれ。もう、このまま一度寝る」
「うん。分かったよ」
夕飯まではまだ時間があったので、シーツを変えたベッドの上で、浮竹はすぐに眠りに落ちていった。
「ねぇ、十四郎。僕は、このまま君の傍にいてもいいのかな?」
京楽は堕天使だ。堕天使に愛された天使は、やがて堕天使へと落ちる。
「君が望むまで傍にいるけれど、もしも君が堕天しそうになったら・・・・」
京楽は言葉を区切って、夕飯を作りにキッチンに行くのだった。
―-----------------------------------------
「それで、堕天した君は私に何の用かな?」
「力をください!血を、ください!」
ヴァンパイアの京楽に片翼をもがれたその天使だった、堕天使は、男にとり入ろうとしていた。
「私には、関係のない話だ。君程度の雑魚に、期待もしていないし、血をあげるなんてまっぴらだからね」
男は、炎の魔法を放った。
片翼の堕天使は、灰となって世界から消えいった。
「どうして・・・・・」
「どうしてもこうしても、君など始めから必要なかったんだよ」
男は笑う。
「堕天使になるか・・・・・浮竹?大天使長ミカエルの子は、堕天しにくいがこのままいけば、あるいは・・・・・・」
男はワインを開けて、ワイングラスに注ぐと、一気にあおった。
「熟するのを待つのも、また一興」
男は、そう言って静かに笑うのだった。
天使だった。20年ほど前に付き合っていた天使の女で、見た目はふわふわした髪の可愛い少女だったが、中身も幼く、京楽のことが好きだ好きだとうるさかった。
「悪いが諦めてくれ。京楽は俺のものだ」
「アンナ信じらんなーい。アンナのほうかかわいいのにー。春ちゃん、両刀なのは知ってたけど、好み変わった?前は、もっと女の子っぽい男の子のほうが好きだったじゃない」
「げふげふ。アンナ、僕たちはもう終わったんだ。君と復縁する気はないよ」
アンナは、ふてくされた。
「ひどーい。やっぱり、アンナの体だけが目的だったのね」
「いやいや。それよりも、片翼のもげた天使の話は本当かい?」
「うん。アンナ見たよ。片方の翼がもげた天使。なんか、堕天使になるとか言って、天界の外に飛び出していちゃった」
アンナの言葉に、ヴァンパイアの京楽の駆除を求めてきた、片翼の天使のことを思い出す。
「とどめ、さしておいておいたほうがいいのかな?」
「やめておけ。同族争いになる」
浮竹の言葉に、京楽も頷いた。
「アンナになびかない春ちゃんのバカ!この浮竹っていうのが悪いのね!アンナの春ちゃんたぶらかして!」
アンナは、鋭いナイフをもちだしてきて、あろうことか浮竹の胸を刺した。
「ぐ・・・」
「浮竹!」
「春ちゃんが悪いのよ!」
「ヘルインフェルノ」
「きゃあああああああ」
京楽は、躊躇もなくアンナに炎の上位魔法をぶつけた。
アンナは、灰となって消えていった。
「今、癒してあげるから。セイントヒール」
浮竹は傷は深かったが、すぐに回復魔法をかけたことで出血も大量でなくてすんで、浮竹はでも困った顔をしていた。
「天使を殺したんだぞ」
「別にいいよ。僕は堕天使だ。天使や人間や悪魔を殺そうと、何も言われない」
「元、神の12使徒だろう」
「僕らの父である神は、自分のことしか頭にないよ」
「確かに、神は何を考えているか分からない。ハーフの子供を親から引き離してガブリエルに育てさせるのも意味不明だ」
浮竹もまた、人間と天使のハーフで、幼い頃に両親から神に引き離されて、母親役であったセラフのガブリエルに育てられた。
そして、ガブリエルはある程度の年齢まで育てると、神の命令で人間界にハーフの子供を置き去りにした。
神が何を考えているかなぞ、大天使長ミカエルでさえも分からないだろう。
神に一番近い場所にいるミカエルの子である浮竹も、ハーフであるということから両親から引き離されて、ガブリエルに育ててもらい、そして人間界に置き去りにされた。
孤児院で育った浮竹は、バイトをしながら大学にも通い、出版会社に就職して、ドイツ語の翻訳家をしている。
今は、神の命令で祓い屋というか退治屋というか、冒険者ギルドからあぶれたモンスター駆除を行ったりしていた。
浮竹と京楽は、その日の討伐の対象を選ぶ。
なるべく人が困っている、死者が出るような依頼を重点に選ぶが、最近は少しモンスターの活発化がましになって、セイレーンの歌声が船人を惑わすから駆除してくれという依頼を引き受けた。
車で、4時間走った場所に、セイレーンは出た。
港町で、セイレーンの歌声が聞こえた。
「綺麗な声だ。惑わすというか、ただ歌っているようにしか聞こえないが」
「船乗りには、これが魅了の声に聞こえるんだ。セイレーンは人を惑わして魅惑するが、食うわけじゃないが、たまに溺死させることがあるから、駆除しよう」
浮竹と京楽は、船を借りてセイレーンのいる岩場に近づいた。
「ららら~~~~~~♪」
セイレーンは、6体ほどいた。
「悪いけど、退治させてもらうよ。サンダーボルテックス!」
「ぎゃあああああああ!!」
セイレーンたちは黒こげになった。
「ちょっとかわいそうなことしちゃったかな?」
「いや、セイレーンは船乗りを溺死させるから、駆除しておいたほうがいい」
浮竹は、他にセイレーンがいないかどうか船で港の近くを行ったり来たりした。
「他にセイレーンはいないようだ・・・・なんだ、歌声がする」
それは、セイレーンの歌声だった。
京楽も浮竹も魅了されて、その歌声をする方に向かう。
セイレーンでも、とびぬけた美人がいた。
「ああ、たまらないね、君」
京楽のその一言で、浮竹は我に戻った。
「この浮気者!」
「あべし!」
「セイレーンなんかと浮気するのか!」
「びでぶ!」
京楽の股間を思い切り蹴り上げると、京楽も正気に戻った。
「君・・・・僕たちを、食おうとしただろう?」
「なんのことかしら。分からないわ」
「その姿・・・・人を食ったのか」
「あら、悪い?人は魚を食べるじゃない。それみたいに、セイレーンは人間をたまに食べるだけよ」
「人に害を成せば人に駆除される。それくらい、分かっているだろう?」
浮竹が、進化したセイレーンを見た。
ハイ・セイレーンというところだろうか。
保有している魔力が高く、歌声でまたこちらを誘惑してきた。
「ららら~~~~~~~♪」
浮竹は耳を手でふさいだ。
京楽は、また魅了されてそのセイレーンを抱きしめていた。
「浮気は、許さないと、言っているだろう!エターナルフェニックス!」
セイレーンもろとも、京楽も一緒に焼いた。
「もぎゃあああああ」
その熱さに、我に返った京楽が魔法のバリアを自分にだけ作り、人を食ったセイレーンは丸焼き状態になって、灰となり魔石だけを残してこの世から消え去っていった。
「セイレーンになんて、鼻の下伸ばしやがって」
「違んだよ、誤解だよ。あれは歌声に魅了されただけで、別にセイレーンを好きなわけじゃないよ」
「過去にセイレーンと関係をもったことは?」
「う・・・・・4回、くらいかな」
正直にいう京楽に、浮竹はハリセンでその頭を叩いた。
「5回目になってたら、別れてたからな」
「はい、すみません。僕がもっと魅了に気を付ければ」
「とりあえず、報告に戻ろう。もうここいらのセイレーンは全部駆除し終えたようだ。さっきの親玉ってところで、もう増えたりもしないだろう」
町の町長から報酬の金貨10枚をもらい、王都に戻って冒険者ギルドに魔石を買い取ってもった。
金貨6枚になった。
「浮竹、まだ怒ってるの?」
「別に怒ってなんてない」
つーんとした態度をとり続ける浮竹を、京楽は抱きしめた。
「僕が愛しているのは、今は浮竹だけだよ」
「そうか。それなら、いい」
自分の家に戻ると、京楽は浮竹を求めてきた。
久しぶりだったので、浮竹にも欲はあるので、応じることにした。
「んあっ」
ディープキスを繰り返されて、舌が絡みあう。
口づけの合間に服を脱がされて、平らな胸を撫でられ、先端をつままれた。
「んっ」
そのまま、ズボンをぬがされて、ボクサーパンツの上から触られた。
「あっ」
すでに染みをつくっていたそこは、京楽に触られると硬く勃ちあがり、京楽がボクサーパンツの上から執拗に愛撫すると、白濁した液を出していた。
「ああああ!!」
「ふふ、かわいい」
「ばか、服が」
「洗濯すればいいだけだよ」
浮竹は、ついには全裸にされて、京楽も裸になった。
ローションを後ろに塗り込まれて、前立腺を指がかすめる。
「あああ!」
前立腺を刺激されて、また浮竹は精液を放っていた。
「いくの早くない?」
「うるさい」
「ごめんごめん」
京楽は、熱く滾ったものを浮竹の蕾に宛がい、一気に引き裂いた。
「ひああああああああ!!」
衝撃に、涙がこぼれる。
その涙を吸い取って、京楽はゆっくりと動き出した。
「んああああ!」
わざと前立腺をかすめて、奥を貫く。
奥をゴリゴリされると、浮竹の手が京楽の背中に回り、爪を立てる。
「やあああああ!!」
ぐりっと奥まで侵入してきた熱は、しめつけられて京楽は浮竹の胎の奥に子種をびゅるびゅると注ぎ込んでいた。
「やああ、いっちゃう!」
浮竹は、ドライのオーガズムでいっていた。
「もっといっていいよ?」
浮竹のものをしごぎあげると、浮竹は呆気なく白濁した液体を京楽の手の中に放っていた。
「あ、春水、もっとお前をくれ。お前の子種で、俺の胎を満たしてくれ」
ぱちゅんぱちゅんと音をたてて、京楽のものが出入りする。
浮竹は何度目かも分からない精液を吐き出して、それ以上もう出るものがなくなり、先走りの蜜だけをたらたらと零していた。
「あ、ああああ!」
ごりごりと、奥を抉られて、浮竹の視界が真っ白になる。
オーガズムでいくことを覚えた体は、貪欲に京楽を求めた。
「あ、いい、もっと、もっと」
「十四郎・・・・愛してるよ」
「俺も愛している、春水・・・あああああ、もっと奥まで!」
ぐりっと奥を抉られて、浮竹はまたいっていた。
「いやぁ!」
「最後の一滴まで、注いであげるからね?」
「あ、やああ、やあ、あああ」
浮竹は快感でぐずぐずに溶けていく。
京楽も、浮竹の中に全てを放って、満足した。
濡れたタオルをもってきて、体を清めて中に出したものをかき出すと、とろとろと白濁した京楽の液体が浮竹の太ももをつたってきた。
「たくさん出したな」
「うん。だって、十四郎が求めるんだもの」
浮竹は真っ赤になって、クッションを京楽に投げた。
「シーツを変えてくれ。もう、このまま一度寝る」
「うん。分かったよ」
夕飯まではまだ時間があったので、シーツを変えたベッドの上で、浮竹はすぐに眠りに落ちていった。
「ねぇ、十四郎。僕は、このまま君の傍にいてもいいのかな?」
京楽は堕天使だ。堕天使に愛された天使は、やがて堕天使へと落ちる。
「君が望むまで傍にいるけれど、もしも君が堕天しそうになったら・・・・」
京楽は言葉を区切って、夕飯を作りにキッチンに行くのだった。
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「それで、堕天した君は私に何の用かな?」
「力をください!血を、ください!」
ヴァンパイアの京楽に片翼をもがれたその天使だった、堕天使は、男にとり入ろうとしていた。
「私には、関係のない話だ。君程度の雑魚に、期待もしていないし、血をあげるなんてまっぴらだからね」
男は、炎の魔法を放った。
片翼の堕天使は、灰となって世界から消えいった。
「どうして・・・・・」
「どうしてもこうしても、君など始めから必要なかったんだよ」
男は笑う。
「堕天使になるか・・・・・浮竹?大天使長ミカエルの子は、堕天しにくいがこのままいけば、あるいは・・・・・・」
男はワインを開けて、ワイングラスに注ぐと、一気にあおった。
「熟するのを待つのも、また一興」
男は、そう言って静かに笑うのだった。