忍者ブログ

プログ

小説掲載プログ
08 2025/09 1 2 11 12 17 18 19 2021 22 23 24 25 26 2728 29 30 10

好き2

一護がルキアと付き合いはじめて、1週間が経とうとしていた。

「次は‥‥動物園とかかなぁ。ルキアのやつ、こっちの世界の動物をもっと見てみたいとか言ってたし」

ルキアの彼氏となる一護は、次の日曜にルキアと動物園でデートの計画を練っていた。

1週間前の水族館でのデートは大成功で、ルキアは白いワンピースと麦わら帽子がよく似合っていた。

「ああ、そういや服があんまねぇとか言ってたな。ショッピングもありか」

一護は、最近はバイトをしていないが、うなぎ屋でバイトした金がそこそこあったが、大学を入ると同時に一人暮らしを計画しているので、あまり大金は使えない。

「そういや、ルキアの奴白哉からけっこう金もらってるので金の心配はないとか言ってたな。服はその金で買うか」

ルキアが美化委員で帰りが遅くなって、一護が先に帰っていた。

「ルキア、今からいいか?」

「なんだ?」

「ちょっとした軽いデートみたいなやつ。着る服、あんまないつってたろ。白哉からは現世の金をもたされてるんだろ?その金で、お前の服買いにこうぜ」

「兄様からは、1千万円を」

「はい、ストーーーップ」

「へ?」

「1千万かよ!百万かと思ってたけどさらに上いってやがった。桁が一つ多かった」

「1千万では、足りぬのか?」

「どんな服だよ。5万でいい。シマムラででも服買いに行こうぜ」

「う、うむ。ワンピースでよいか?」

「ああ、いいぜ。でも、白ばっかりじゃなくっていろんな柄の、デザインも違うやつとかも買おうぜ」

「うむ」

こうして、ルキアと一護はシマムラで、一護がルキアに似合いそうなワンピースを選んで、ルキアが試着して、ルキアがいいと思ったものを買った。

ワンピース以外にも、新しいパジャマと、今はまだ暑いがあと2,3か月もすればどんどん寒くなってくるので薄い上着も何着か買った。

安いとはいえ、大量に購入したので、お会計は3万をこえた。

一護が荷物をもつ。

「私ももとうか?」

「いいよ。これくらい、俺一人でももてる。腹減ってないか?」

「少し減った」

「じゃあ、マックでもいくか」

「うむ」

荷物をコインロッカーに預けて、二人はマクドナルドにやってくると、それぞれセットのメニューを選んで、あいている席に座って食べ始める。

「ねぇねぇ、あそこのオレンジ色の頭の男の子かっこいー。隣の子、彼女かな?」

そんな声が聞こえてきて、ルキアは顔を赤くする。

「ん、どうしたんだ?]

「なんでもない。貴様の顔がおもしろいと誰かが言ってたいただけだ」

「なんじゃそりゃ」

一護は、コーラを飲み干して、ポテトとバーガーだけでは足りなかったので、追加を頼みにルキアの元を離れる。

「ねぇねぇ、君一人?」

「え、あ」

「かわいいねぇ。何年生?あ、もしかして中学生?」

3人の男が、ルキアを取り囲む。

そこに、トレイにポテトのLをのせた一護が戻ってくる。

「そいつ、俺の彼女だから」

「ちぇっ、彼氏つきか。かわいいのに残念」

「ルキア、何もされてねーか?」

「うむ。あろうことに、あやつらこの私を中学生扱いしおった。許すまじ」

「まぁ、そんだけ背が低くて華奢じゃ、間違われても仕方ねぇ。最初、妹のワンピース着れたくらいだしな」

「う、うるさい」

一護は、ルキアの隣に座って、ポテトを食べ始める。

「ああ、夕飯いらねぇって連絡入れとかねーとな」

妹あてに、メールを送る。

「そのスプライト、もらっていいか?」

「へあ?」

一護は、ルキアのドリンクを飲み干してしまった。

これって関節キスとか思うけど、すでにファーストキスは、告白した日に一護から奪われているので、思っていたよりは恥ずかしくなかった。

「さて、帰るか」

「うむ」

コインンロッカーから荷物を取り出して、帰路につく。

「今度の日曜、動物園でデートしようぜ」

「動物園!」

ルキアは目を輝かせた。

「お、お弁当を作ってもっていってもいいか?」

「ルキア、料理けっこううまいもんな」

家庭科などで、ルキアが作ったものを食べたことがあるが、それなりにおいしかった。

4大貴族の朽木家の令嬢だから、料理なんてできないと思っていたのだが、そうでもなかった。

「楽しみだな、動物園」

「ああ。楽しみにしている。お弁当を、楽しみにしていてくれ」



やがて、日曜になって動物園に行く日がやってきた。

その日は、青空でよく晴れていた。

ルキアは、麦わら帽子に薄い紫色のワンピースを着て.肩には白いストールを巻いていた。

「なんか、すげー育ちのいいお嬢様みてぇ」

「ふふ、何を言っておるのだ。見惚れたか?」

「ああ」

ルキアは冗談で言ったつもりだったのだが、一護にそう褒められて、頬を赤くする。

「さぁ、中に入ろうぜ」

「う、うむ」

キリンを一護が指さすと。

「あれはシマウマだな?」

「違う。キリンだ」

「麒麟?」

「いや、違うから。見ての通り首の長い動物で、キリンっていうんだ」

「ほぅ」

「あっちにいる鼻の長いのはゾウ」

「獏ではないのか?」

「ちょっと見た目は似てるけど違う。それに、獏は妖怪じゃないけど他にいる」

ほうほう。

いろいろ案内していると、昼飯時になった。

「これ、私が早起きして作ったお弁当だ。その、唐揚げがすこし焦げてしまった」

「へぇ。見た目はちょっとぐちゃってしてるけど」

「う、うるさい。いやなら、食べずともよい」

「いやいや。ルキアが俺のために作ってくれたんだろう?」

「うむ」

「うん、けっこう美味いじゃねぇか」

「ほ、本当か?」

ぱぁぁぁぁと、ルキアの顔をが明るくなる。

ルキアは、自分の分も食べた。味見をしていなかったが、自分でもそこそこおいしいと思えるできだった。

青空だったが、いつの間にか太陽は鉛色の雲で覆われて、雨が降ってきた。

「雨だ。今日はもう帰るか」

「もっと、見て回る」

「そうか。じゃあ、売店で傘買うか」

傘を1つだけ買って、相合傘をして動物園を巡り終えて、ルキアはお土産コーナーでキリンのぬいぐるみを欲しがったので、一護が買ってやった。

「すまん。大切にする」

「帰るか」

「一護」

「ん?」

ルキアは、背伸びして、屈んできた一護の唇に唇を重ねる。

「かわいいやつ」

「う、うるさい!帰るぞ!バスがくる!」

雨が小降りになってきたので、ルキアはバス停まで走るのであった。

拍手[0回]

PR

好き。

「い、一護‥‥‥‥その、ス、ス、ス‥‥‥」

「は?」

「涼しいな!」

「いや、めっちゃ猛暑で暑くて死にそうなんだが」

夏休みもあけて、放課後にルキアに屋上まで呼び出されて、一護は暑いといいながらあくびをしていた。

「す、す、す‥‥‥‥」

「んあ?」

「スキヤキが食いたい季節だな!」

「こんなに暑いのにか?」

じわじわと、太陽は30度を余裕でこえる温度で大地を照りつける。

「す、す、す‥‥‥」

「んー?」

「酢は体にいいな!」

「お前、さっきからす、す、すと何言ってるんだ?もしかして、俺のこと好きなのか?」

ルキアの頭をぽんぽんと叩いて笑うと、ルキアは真っ赤になった。

「え、まじで?」

「貴様のことが好きだ、一護」

「ルキア。俺も好きだぜ」

ルキアは、ぼんっと音立てて動かなくなった。

そんなルキアに、一護は軽くキスをする。

「な!」

「俺たち、付き合う?」

「え、あ、うむ」

「尸魂界に戻るから、高校卒業したらお別れとかなしだぞ?」

今のルキアは、一護が総隊長である京楽に高校卒業まで現世で過ごさせてほしいという、我儘のお陰で現世にいれた。

本当なら、13番隊の副隊長として復興に力を入れなければいけないのであるが。

「高校卒後したら、みんなで卒業旅行に行くか。その後で、二人だけでも旅行にいこうぜ」

「貴様、進路はあの大学でいいのか?」

「ああ。俺の頭でもいけるし、やりたい翻訳家になるのにいい大学だ。ドイツ語が盛んで、俺はドイツ語の翻訳家になりたい」

「貴様の傍に、私はいていいのか?」

「当り前だろ。好きだぜ、ルキア」

「う、うむ」

風が強くふいた。

ふわりとルキアのスカートがめくれる。

「ふむ、水玉模様か」

「な、一護!」

ぽかぽか殴ってくるルキアの頭を撫でて、一護は笑う。

夏は、もう終わりになりそうだった。

気温はまだまだ残暑で暑いが。

「暑いだろ。帰ろうぜ。コンビニでアイスおごってやる」

「ガリガリ君のソーダ味がいい」

「へいへい」

二人は、付き合うことになった。

今までも距離は近かったが、その日を境にぐっと距離が縮まった。

二人で、手を繋いで帰った。

自宅に戻ると、ルキアはいつも通り一護の部屋でだらだらしていた。

「先、風呂入ってくるから」

「うむ」

一護が戻ってくると、やや緊張したルキアがいた。

「お前も風呂入ってこい」

「わ、分かった」

ルキアは風呂に入り、屋上で告白したことを思い出して真っ赤になった。

「ど、どんな顔をして一護と会えばいいのか分からぬ。て、適当でよいか」

ルキアは風呂からあがり、一護の部屋に戻った。

いつも、一護と一緒に眠っていた。押し入れの時が大かったが、たまに一緒のベッドで眠った。

「ルキア、寝るぞ」

「では、私は押し入れに‥‥‥」

「なんでだ?一緒に寝ようぜ」

ルキアは赤くなる。

「なんも変なことはしねーよ」

ルキアを背後から抱きしめて、クーラーを28度の弱に設定して明りを消す。

「おやすみ」

「お、おやすみ」

ルキアははじめ、一護の体温にドキドキして眠れなかったが、いつの間にか眠っていた。

ふと、深夜に目がさめた。

「暑い‥‥」

「あー。まだ夜も暑いからな。おまけにこんだけひっついてると余計に暑いか」

「貴様、起きていたのか?」

「ルキアがもぞってしたから起きちまった。クーラーの温度はそのままにして風を強にするか」

一護が、クーラーのリモコンを操作する。少しして、随分と涼しくなった。

「ほら、寝るぞ」

「う、うむ」

ルキアの華奢すぎる体を腕の中に閉じ込めて、一護はすぐに眠ってしまった。

ルキアも、眠気で寝てしまった。

「ち、遅刻だ!一護、起きよ!」

「んー?まだ9時じゃねぇか」

「遅刻であろう!」

「今日は土曜だぜ?」

「へあ?」

理解して、ルキアは真っ赤になって薄い毛布にくるまってベッドの上で丸くなる。

「まぁ起きるか。デートでもするか?」

「で、でぇと?す、する!」

「じゃあ、手近なところで水族館でも行くか」

「行く!」

ルキアは嬉し気に、起きる。

まずは着替えて、顔を洗って朝食をとり、歯を磨く。

「水族館なるものには行ったことがない。今からすごく楽しみだ」

「おう。一生の思い出になるようなデートにしようぜ」

ルキアが明るく笑う。

今まで、普通に見ていた少女めいた笑顔だったが、付き合うことになってすごくかわいく見えた。

ルキアは、白いワンピースに、麦わら帽子をかぶっていた。あと、白い日傘をもっていた。麦わら帽子のリボンも白だった。

風が強くふいて、ルキアのスカートがめくれる。

「今日は白か‥‥‥‥」

「貴様、何を見ておるのだ!」

ルキアが真っ赤になって、スカートをおさえる。

「最近の風はグッジョブだな」

「何を言っているのだ」

「いや、こっちの話」

一護は笑って、ルキアと手を繋いで歩き出すのだった。

拍手[0回]

ドラゴン族の子とミミック8

「ぎしぎし」

「ああ!幻のエンシェントミミック!」

Aランクの上位ダンジョンに挑んだ浮竹と京楽は、3日かけて45階層までもぐっていた。

さすがに上位ダンジョンなだけあって、雑魚モンスターにワイバーンが出てきたりした。フロアボスはブラックワイバーンの群れだったりした。

「ぎしぎし」

浮竹の目の前にいるミミックは、古代魔法文明時代に生まれたとされるまさに幻のミミック。

エンシェントミミックだった。

大きくて、人食いミミックより大きい。

「ああああ」

浮竹は目がハートになっていた。

「ちょっと、浮竹危ないよ!」

「エンシェントミミック‥‥‥(*´Д`)ハァハァ」

浮竹は危ない人になっていた。

「そうれ!」

浮竹は、アイテムポックスからブラックワイバーンのステーキを取り出して、エンシェントミミックの前でちらつかせる。

「ぎしぎし」

「ほら、やるから触らせてくれ。(*´Д`)ハァハァ」

「浮竹、大丈夫?」

「俺は今もううれつに感動している」

「あ、そう。怪我しないようにね?」

エンシェントミミックは、浮竹の手からブラックワイバーンのステーキをもらい、浮竹に懐いた。

「ああああ、このままお持ち帰りしたい」

「だめだよ、浮竹。この子はこのダンジョンだから生き残ってこれたんだ。LVもボクたちより高そうだし」

「ぎししししし」

「あああああ」

浮竹は、ひとしきりエンシェントミミックを撫でで、エンシェントミミックに頭を甘噛みされて、幸せそうだった。

「ぎしい」

「え、もうお別れ?」

「ぎし」

エンシェントミミックは、オリハルコンの剣をドロップして去っていった。

「オリハルコン‥‥ミスリルより貴重な神の金属」

「すごいね。やったじゃない」

「まだ使いこなせそうにないから、家に飾っておこう」

「そうだね。オリハルコンは使う者が弱いと本当の威力を発揮しないからね」

「ぎしぎし」

「ぬおおおお!?またエンシェントミミック!」

浮竹は、そのエンシェントミミックに嚙まれながらもふりまくっていると、甘噛みに変わった。

「ぎしぎし?」

「怖くないのかって?ミミックマスターの俺にはお前は太陽だ!」

浮竹は京楽の存在を忘れていた。京楽はぐすんと悲しそうな顔をする。

「どうせボクはミミックの次だよ」

「なぁ、京楽。このダンジョン、どこかで古代魔法文明の遺跡と繋がっているんじゃないか?そうじゃないと、エンシェントミミックがいる説明がつかない」

「そういえば、このダンジョン、31階層付近で大規模に崩れたらしいよ。その奥に、古代魔法文明の遺跡があったんじゃないかな」

「戻って、遺跡を探検してみよう」

「分かったよ。でも、そのエンシェントミミックは連れていかないからね?」

「ぶーぶー」

エンシェントミミックは、浮竹を甘噛みして、古代の魔法書をドロップして去っていった。

「禁忌だな、この魔法書」

「まだ、知られていない魔法だね。アルティメットノヴァ‥‥使うには、LVもっとあげないとね」

「とりあえず、遺跡があるだろう31階層に戻るぞ」

「うん」

31階層をくまなく調べると、崩れた部分があって、その奥に古代魔法文明の遺跡があった。

「これは‥‥‥すごいな」

荘厳。

遺跡は何千年と経っているだろうが、綺麗なままだった。

「ピピピピ、侵入者を発見。これより、駆除システムを導入します」

現れたのは、エンシェントドラゴンだった。

「ドラゴン!」

「あ、浮竹これじゃあ戦えないよ」

「話しかけてみよう」

浮竹は、古代語でエンシェントドラゴンに話しかける。

するとエンシェントドラゴンは人の姿をとった。

「竜人族の子か。同胞か。今回は、同胞ということで目をつぶろう。これ以上遺跡を荒らすようであれば、竜人族の子といえ、排除する」

「もう、戻ります」

浮竹が古代語でそう言って、京楽のほうを向く。

京楽はまだ古代語を完全にマスターしていない。

「このドラゴンは、どうやらこの遺跡の守護竜のようだ。俺たちがこれ以上ここにいると、荒らしたとみて排除するって。この件は冒険者ギルドに報告しよう。Aランクの俺たちでこれ以上この遺跡を探検するのは無理だ。Sランクじゃないと。それに俺たちではドラゴンを倒すには心構えがいる」

「そうだね。一度戻ろう」

遺跡の外に出ると、エンシェントミミックの赤ちゃんがいた。

「京楽‥‥」

「お持ち帰りはだめだよ」

「うう‥‥」

「とりあえず、45階層までもぐって、60階層のラスボスを倒して帰還しよう」

浮竹と京楽は、夜を52階層で明かして、60階層まで到着し、ラスボスと対峙する。

ラスボスは、炎の精霊王だった。

浮竹と京楽は、慎重に攻めて、炎の精霊王を氷の魔法で倒し、財宝の間が開く。

「ぎしぎしいいい」

そこにも、エンシェントミミックがいた。

財宝は、オリハルコンのインゴットや、魔法の武具と古代の魔法書の束、それに金銀財宝であった。

「ああ、このダンジョン俺気に入った。また明日ももぐろう」

「でも、ミミック牧場の子や家のミミックたちをあまり放置しすぎるのもどうかと思うよ?」

「う、それもそうだな。このダンジョンにもぐるのは、2日後にしよう」

「ほんと、浮竹はミミックが好きだねぇ」

エンシェントミミックに甘噛みされる浮竹を見ながら、京楽は笑うのであった。

「ああ、エンシェントミミック‥‥‥」

がじがじと甘噛みをこえて本気でかじられてちょっと血を出しているが、浮竹は痛みを感じないのか悦に浸っていた。

「浮竹、血が出てるよ」

「この子はサリーと名付けよう。サリー、血がでるくらいかんじゃいけないぞ。そんな風に噛んでいいのは京楽だけだ」

「なぜにボク!?」

「ぎいぎい」

サリーは、浮竹を解放して京楽に噛みついた。

「もぎゃああああああああああ」

ほぼ、半身がすっぽり入ってしまうエンシェントミミックに頭をかじられながら、京楽はとっておきのドラゴンステーキを取り出す。

「ずっと前にドラゴン化して暴れた時尻尾を切り落とされたんだよね。その時のボクの肉だよ。アイテムポケットに入れてる限り劣化しないからね。ステーキにして放置していたのがあってよかったよ」

向こうに投げると、サリーはぴゅーんと走ってドラゴンステーキをおいしそうに食べる。

「ぎいぎい」

「もっとくれだって」

「あいにく、それしかないんだよ」

「ぎいいい」

エンシェントミミックは残念そうな顔になる。

「サリー、お手」

「ぎい」

「お座り」

「ぎい」

京楽の言うことに、サリーは従う。

「これだけ聞き分けがいいとかわいいね。ボクを噛んじゃダメだよ。噛むのは浮竹だけにしてね」

「俺はいつでも齧られる準備ができているぞ!」

浮竹は目をハートマークにして、サリーがくるのを待っていた。

「ぎいぎいぎい」

サリーは、浮竹に噛みついた。

「ひゃっほうううう」

浮竹は喜んでいる。甘噛みなので、けがをすることはない。ちなみに最初に本気でかまれて血が出たところはヒールですでに治していた。

財宝や魔法の武具、古代の呪文書やオリハルコンのインゴットをアイテムポケットに入れて、一度アルカンシェルの王都まで戻ることにした。

「ああ、サリー、また一週間後くらいに。2日したらまたこのダンジョンに挑むから、最下層の60階層までたどり着くには4日くらいかかる。だから、大体一週間後に会おう」

「ぎいいいい」

サリーはぴょんぴょんはねて、浮竹と京楽との再会を誓った。


王都アルカンシェルの冒険者ギルドに、遺跡のことを報告すると、Sランク冒険者と学者が派遣されれることになった。

Sランクのパーティー2つが、国でも偉いさんの学者の護衛をしながら、遺跡を調べるらしい。

「いつか、あんな風に頼りにされるといいな」

「そうだね」

浮竹と京楽は家に帰り、ポチ、タマ、タロウ、ジロウ、8匹の子ミミックと食事をとり、浮竹派ミミック牧場にいって新鮮な水と餌を与えた。

「きしきし」

「ん?ポチ、俺から変わったミミックの匂いがするって?実はな、幻のエンシェントミミックと会ったんだ!」

「きしい!」

すごい!

ポチはそう言った。

ポチにエンシェントミミックのことを熱く語っていると、夕方になっていた。

「続きは家でな?」

「きしい」

「浮竹、夕ご飯食べるよね?」

「ああ」

「ステーキだよ」

「まさかドラゴンステーキとかいうんじゃないだろうな」

「まさか。ブラックワイバーンの肉のステーキだよ。あと、ミノタウロスの」

この世界では、モンスターの肉も普通に食用になる。

牛や豚、鶏や羊といった家畜もいるが、モンスターの肉の方が安く手に入れられたり、冒険者なら自分で狩った獲物を肉を素材として売らずに、自分たち用に残しておくこともある。

ブラックワイバーンもミノタウロスも、Aランクダンジョンで倒したモンスターの肉だった。

ミノタウロスは10階層のボスだった。

ダンジョンは、10階層ごとにフロアボスがいて、財宝の間がある。

ラスボスまでいくと、手強いが倒せばそれまでのフロアボスの財宝とは比較できない財宝が手に入った。

「サリー、元気にしてるかなぁ」

「元気にしてるでしょ。きっとSランクのパーティーに驚かれて、それから宝をドロップしているさ」

浮竹と京楽がダンジョンを踏破したことで、あのAランク上位ダンジョンは、ダンジョンマスターの手により、一度リセットされ、宝の配置、雑魚モンスターの配置、財宝の間の財宝、ボスなどを新しくされていることだろう。

「浮竹」

「ん?」

「抱きしめて寝ていい?」

「甘えんぼうだな。いいぞ」

「もしも手を出しちゃったら、ごめんね」


結局、浮竹は京楽に抱かれて、Sランク上位ダンジョンへの出発は1日のびるのであった。




拍手[0回]

ドラゴン族の子とミミック7

アンデットドラゴン討伐は、結局Sランクの浮竹と霊刀の精霊の京楽の手で片がついた。

浮竹と京楽にとって、いい経験になった。

浮竹は、Sランクの浮竹の強さに心酔してSランクの浮竹を「先生」と呼ぶようになっていた。

浮竹と京楽は、ヤトの町にきていた。

「先生、剣の稽古をつけてくれ」

『んー、まぁいいけど。でも、お前はどっちかっていうと魔法使いだろう?』

「魔法剣士だからな。魔法も剣も使うが、京楽のほうが剣の腕が高い。負けるわけにはいかない」

『切磋琢磨することはいいことだ』

「ボクには魔法の稽古をしてほしいな」

Sランクの浮竹に、京楽も教えをこおうとする。

『俺一人で二人を一度に相手しよう』

「さすが先生」

『じゃあいくぞ!”春霖”!』

Sランクの浮竹は、霊刀の京楽を抜いて、浮竹に切りかかり、同時に魔法を唱える。

「サンダーストライク!」

浮竹はなんとか剣を受け止めて、魔法を放たれた京楽はマジックシールドでSランクの浮竹の魔法を凌ぐと、同じ魔法を唱える。

「サンダーストライク!」

『ファイアボルト!』

「く、なんて熱量だい。初歩魔法で上位魔法並みの威力‥‥ファイアサークル!」

『甘い!』

Sランクの浮竹は、検圧の風だけで京楽のファイアサークルの火を消してしまう。

「もらった!」

浮竹が、背後からSランクの自分に切りかかる。

『甘い甘い。動きが単調すぎるぞ』

「くそ、完全にフリーだと思うのに読まれてた!」

それからは、浮竹とSランクの浮竹の一対一の戦いになる。あえて魔法は使わない。

時折京楽が魔法を放つが、Sランクの浮竹の剣の動きは鈍らない。

『動きにもっと大胆さをいれろ!引くな!一太刀で切る勢いでかかってこい』

「はい、先生!」

午前は、Sランクの浮竹と浮竹の剣の稽古で終わってしまった。

午後になり、浮竹と京楽は魔法を習うことにした。

『まずは、基礎の精神集中から』

「う、俺苦手なんだよな」

『そこ、しゃべらない』

「はい、先生」

たっぷりしごかれて、日が落ちる頃にはくたくたになっていた。

「ちょっとは強くなったかな?」

「浮竹、まだ1日だよ。まぁ、続けていけばSランクが近くなってくるだろうけど」

『飯でも食べていくか?』

『ちょっと、浮竹、ボクを忘れてない?』

桜色の刀身をした霊刀の精霊の京楽が、Sランクの浮竹に不満をもらす。ちなみに、精霊の姿で存在しないと、精霊の京楽の言葉は浮竹と京楽には聞こえない。

『すまん、俺の相棒が不満を言ってるんで、今日はこのへんで』

「はい、先生!」

「じゃあ、ボクらも帰ろうか。ミミック牧場の子たちに餌あげないと」

「ああ、そうだな」

浮竹と京楽は、王都アルカンシェルに戻ってしまった。

「きしきしきし」

帰宅すると、ポチが甘えてきた。

「ポチ、まずは牧場のみんなに餌と水をあげてくるからな。その後風呂に入って夕飯だ。今日はエビフライカレーだぞ」

「きしいいいい」

じゅるりと、ポチが涎を垂らす。

「ポチ、タマ、タロウ、ジロウに生まれた子ミミック8匹分だとけっこうな量になるね」

「京楽、夕飯作り任せていいか。俺は牧場に行ってくる」

「分かったよ」

浮竹は、ミミック牧場に向かう。

「あれ‥‥‥3匹、足りない?」

50匹はいるはずのミミックの数が47匹だった。

「おーい、88号、76号、92号」

探すと、ミミック牧場の納屋で、アルコールを摂取して酔ってぴよぴよになっているミミックたちを発見する。

「こら、隠れて酒を飲んでたのか!」

「きしきしいぃ」

「みゅんみゅん」

「がぁがぁ」

3匹は、怒る浮竹が怖くて震える。

「お前たちは3日間飯ぬきだ!」

そんなぁって顔をするミミックたち。

転がっている酒瓶は京楽のもので、どうやらポチが持ち込んだらしい。

「ポチ、お前も3日間飯ぬきだ」

「きしきしきし!」

酷い!

そう言うけど。浮竹は怒っていた。

「ミミックは酒に弱いんだぞ。もしものことがあったらどうする!」

酒に手を出して飲みすぎて死んでしまったミミックを知っているので、浮竹も厳しい。

京楽は、エビフライカレーをみんなの分を作ったのだが、あとで食べれなかったポチにこっそりあげた。


「浮竹、明日はどうする?」

「んー。また、デートでもするか」

「ミミック連れて?」

「いや、ミミック抜きで。映画でも見に行こう」

「やっほい!」

「きしきしきし」

ポチは満腹で笑っていた。

「京楽?ポチに飯与えたな?」

「ひいいばれてるうううう」

「ポチの罰にならないだろう!まぁ、仕方ない。でも、明日とあさっては飯やるなよ。ミミックは水だけでも数カ月は生きているんだから。飲まず食わずでも二月は生きれる」

ポチは、浮竹に甘えまくって、結局次の日は京楽とデートして帰ってきた後に、オムライスをもらった。

その次の日は、普通に餌をあげていた。

すうすうと眠るポチを見て、浮竹もため息をつく。

「はぁ。俺も甘いな」

「そこが、浮竹のいいところじゃない」

京楽からキスをされて抱き寄せられる。

京楽の背に手を回して、浮竹は目を閉じるのであった。



拍手[0回]

ドラゴン族の子とミミック6

AランクとSランクで受けれる依頼で、アンデットドラゴン討伐を受けることになった。

浮竹と京楽は、竜人族なのでドラゴンという言葉を聞いて顔をしかめたが、不死者となってしまったドラゴンを弔うためにも退治すべきだと、Sランクの浮竹から言われて、受けることにした。

今回は、SランクパーティーにAランクパーティーである浮竹と京楽も参加するので、事前準備うをすることを怠らない。

当日は、Sランクの浮竹と霊刀の精霊である京楽がサポートしてくれる。

満月の日、霊刀の精霊の京楽は人の姿になれる。

その日が、討伐の日と決められた。

「聖水はもちろんいるよな?」

「うん。アイテムポケットに入るだけもっていこう」

「あとは‥‥アンデットだから聖属性と火に弱いから、どっちがどっちを分担するか決めておこう」

「じゃあ、ボクが火属性の魔法を使うね?」

「じゃあ、俺は回復魔法をかけよう。アンデットだから、効くはずだ。多分、ターンアンデットの魔法と同じくらいダメージが入る。ターンアンデットとハイネスヒールの魔法を使うことにする」

準備は、ちゃくちゃくと進んでいた。

浮竹は、京楽と一緒にアンデットドラゴン退治の練習のために、アンデットがわくとあるAランクダンジョンの22階層を歩く。

「ぎああああああ」

グールやゾンビが襲ってくる。

「ターンアンデット!」

「ファイアサークル!」

「ぎいやあああああ」

アンデットたちは、浮竹の聖属性の魔法と京楽の炎の魔法で、綺麗に浄化されていく。

今回のアンデットドラゴン退治には、ミミックは連れていかない。

と思ったら、アイテムポケットにポチが入っていた。

「へくしゅ」

「ああ、中で聖水をかぶってしまったのか。一応、モンスターを退ける力があるからな」

「へくしゅん」

「まるで風邪ひいてるみたいだね?」

京楽が、ポチの頭を撫でると、ポチは鼻水を京楽にぶっかけた。

「待てやこらああああ」

「へくち」

くしゃみをしながら、ポチは逃げる。

それを、京楽が追いかける。

「あはははは、緊張が一気にどっかにいってしまったな。帰ったら、もう一度聖水の点検して、アンデットドラゴン退治に挑もう」

「うん」

「へくちっ」

ポチは、クリーンの魔法で鼻水を綺麗になくした京楽にまた鼻水をぶっかけた。

「わざとだね、ポチ?」

「きしししししし。へくちっ」

くしゃみをしながら、ポチは逃げる。京楽はひたすら追いかける。

「はぁ。大丈夫かな、ほんとに」

浮竹は、今から心配になってきた。

「ポチ、アンデットドラゴン討伐はSランク冒険者になるための大切なクエストだから、その時ばかりは連れて行けないからな?アイテムポケットに隠れていないか事前にチェックするからな?]

「きしきし?」

「ごめんな、ポチ」

「ポチ、よくも鼻水を‥‥」

「きしきし!」

ポチは、京楽の頭に噛みつく。

「京楽、緊張しっぱなしだったもんな。ポチが、気分を変えてくれたんだ。もう、緊張してないだろ?」

「へ?あ、そういえばそうだねって、いつまで噛みついているんだいポチ!!!」

「きしきしきしいいい」

京楽にぶん投げられて、ポチはミミックとは思えない柔軟な動きで地面でゆらゆらと体勢をとる。

「きしきしきし」

「ポチが、どっちが早く家まで帰れるか競争だって」

「くくくく。ボクには魔法がある。リターン‥‥‥って、ダンジョン内では使えないんだったあああああ」

「きしししし」

浮竹のアイテムポケットから勝手に帰還のスクロールをくわえて、ポチは先に家に帰ってしまった。

「ああ、帰還のスクロール高いのに!」

「まぁいいじゃないか。倒したアンデットたちの魔石を集めれば、帰還のスクロール3枚分くらいにはなる」

浮竹と京楽は、帰還のスクロールを使ってダンジョンから脱出すると、リターンの魔法で家まで戻ってきた。

家では、リターンのスクロールも使ったポチが先に待っていた。

「きしきし」

「俺の勝ちだ、ブラックワイバーンの肉よこせ、だってさ」

「ポチいいいいい」

「きししし」

アンデットドラゴン討伐を控えて、浮竹と京楽は休むことにした。



『さぁて、ボクの出番かな』

満月の夜がきた。

霊刀である京楽は姿に満月のせいで人の姿になり、自分の主であるSランクの浮竹と並ぶ。

『後輩の子たちの面倒を見ないとだな』

『全く、浮竹もおせっかいだね』

『いやじゃないくせに』

『まぁね。じゃあ、行くかい』

二人は、並んで歩き出す。一方の浮竹と京楽は。



「きしきしきし」

「だから、お留守番。今日だけは連れて行けないからな」

「きしい」

悲しがるポチを、浮竹が宥める。

「浮竹、時間だよ。行こう」

「ああ。京楽、行くか」


「きしきしいいいいい」

早く帰ってきてねと、ポチは涙を流しながら白いハンカチを口でふるのであった。







拍手[0回]

ドラゴン族の子とミミック5

浮竹と京楽は、Sランクの冒険者だというもう一人の浮竹と出会った。

ちょうどミミック牧場で仕事をしていたら、浮竹宛だという魔法書をもって、Sランクの浮竹が現れた。

京楽は、Sランクの浮竹に見惚れて、浮竹に思い切り足を踏んづけられていた。

浮竹自身も、自分を鏡で見ているようなものに近いが、かなり美人で、まさに麗人というかんじで自分とは雰囲気が全然違うくて、赤くなっていた。

『じゃあ、ヤトの町にいつでもおいで』

そう言って、去ってしまった浮竹と、刀であろう精霊の京楽の存在を感じながら、浮竹はてきぱき仕事を終えて、次の日には京楽と一緒にヤトの町にきていた。

「たのもうーーー」

「たのもーーーー」

浮竹と京楽は、町で聞き込みをして、ヤトの町のSランクの浮竹と刀の京楽のところまでやってきた。

『よくきたな。まぁ、立ち話はなんだからあがってくれ』

情事の後のなのか、やや潤んだ瞳に上気した頬のSランクの浮竹を見て、京楽は赤くなった。浮竹もつられて赤くなる。

「きしきし」

浮竹は、ポチを連れてきていた。

『かわいいな。触っても大丈夫か?』

「あ、ああ」

ポチは、Sランクの浮竹に頭を撫でられて、その手を甘噛みする。

『噛まれたのだが』

「甘噛みだ。懐いている証拠だ。痛くないだろう?」

『そうだな』

『ちょっと、ボクの浮竹に‥‥‥』

刀の姿のままの京楽が声を出すが、浮竹と京楽には聞こえない。ただ、桜色の刀身が震えているように見えた。

「その霊刀、京楽なんだな」

『ああ、その通りだ。気分屋でな。なかなか人の前では姿を現さない。おい、人型になれ京楽』

『言っとくけど、京楽はボクのものだからね』

人型になったとたん、Sランクの浮竹を抱きしめる刀の精霊の京楽を、Sランクの浮竹が殴る。

『殴ることないじゃない!』

『客人の前だ!』

「その‥‥‥Sランクになるには」

『努力かな』

「やっぱりか」

浮竹は、分かってはいたがSランクまで遠いなぁと京楽と共に思う。

『でも、力があればけっこうすぐになれる。お前たちを見る限り、力もあるようだし、普通の冒険者よりずっと早くSランクになれるんじゃないか』

『浮竹の言う通りだね。禁忌の魔法をぶっぱできるようになれば簡単だよ』

「禁忌の魔法は、覚えているが何度も使えるようなものじゃないのであまり使わない」

『ちなみに、冒険者になって何年目?』

刀の精霊の京楽が、Sランクの浮竹を抱きしめながら聞いてくる。

「3年目だが」

『Eランクから始めたの?』

「そうだよ」

Sランクの浮竹と、刀の精霊の京楽は顔を見合わせた。

かけだしのEランクから始めて、もうAランク。

記録としてはかなり早い。相当強い。

『心配しなくても、Sランクにはなれるだろう』

『そうだね』

「Sランクの俺に言われると、そんな気になってきた」

「そうだね。ボクら、何年もかかると思ってたけど、そんなにかからない気がしてきたよ」

Sランクの浮竹は頷いて、甘噛みしてくるポチを撫でる。

「きしきしきし」

『ほら、紅茶』

刀の精霊の京楽が、紅茶をいれてくれた。

京楽の分の紅茶を、ポチが飲んでしまった。

「あ、ポチ!」

「きしきしきし」

ざまーみろという顔をするミミックのポチに、京楽が怒る。ポチは、京楽の頭をかじった。

「暗いよー狭いよー息苦しいよー」

「何しているんだ、京楽!恥ずかしいからやめろ!」

浮竹が、ポチから京楽を引きはがす。

「ポチが!」

「はいはい。ポチ、こんな京楽なんてかじってばかりいるとアホがうつるから、ほどほどにな?」

「きしきし?」

浮竹は、飼っているミミックと意思疎通ができる。

「紅茶を気に入ったそうだ。もう一杯、ポチの分をもらえるか」

『いいけど。まぁ、ついでだからそっちのボクの分も出すよ』

二人?分の紅茶を入れて、刀の精霊の京楽がテーブルの上に紅茶を置くと、ポチが凄まじいスピードで自分の分を飲み、京楽の分まで飲んでしまった。

「ポチいいいいい」

「きしいいいいい」

ばちばちと、京楽とポチは目線で火花を散らす。

「はいはい、ポチ、そこまでだ」

「きししし」

京楽に大きくあっかんべーをして、ポチは大人しくなった。

「ぐぬぬぬ、ポチめ。明日の予定のハンバーグ、ポチだけ豆腐ハンバーグにしてやる」

『はははははは』

『くすっ』

楽しそうに、Sランクの浮竹と刀の精霊の京楽は、京楽とポチのやりとりを見て笑っていた。

「す、すまん。俺の家のポチが失礼した」

『なんでミミックなの?』

「え?」

『牧場まで経営してるんでしょ?なんでミミックなの?』

「かわいいから。このつぶらな瞳、大きな口、全然体温のない体、軽いしもの入れれるし、何より見た目よりも懐くし愛情表現もいろいろある。なんでミミックを選んだのかというと、その、はじめて魔法書をドロップしてくれたのはミミックだったから」

『あははははは』

『はははは』

Sランクの浮竹も、刀の精霊の京楽も笑っていた。

浮竹は真っ赤になる。

『いや、おもしろいから。いいな、そういうの』

「ペットが飼いたかったんだが、俺たちは冒険者だ。何日か留守になることがある。ミミックなら、数週間何も食べなくても飲まなくても生きていけるからな」

「ほんとは、犬か猫が飼いたかったんだよね、浮竹は」

「ああ。だから、名前もポチとかタマとか」

『でも、ミミックを好きになって牧場まで経営して‥‥‥変わってるけど、素敵な生き方だと俺は思うぞ?』

「そ、そうか?」

浮竹は赤くなりながら、紅茶を飲む。

京楽も飲もうとして、ポチに飲まれたことを思いだしてカップを元に戻す。

『俺たちでよければ、Sランクになることへの助言やサポートをしよう』

「助かる。じゃあ、今日はこのへんで」

「きしきしきし」

「ポチが、紅茶おいしかったごちそうさまって」

『ふふ。ありがとう』

「浮竹、ポチは今度から連れてこないでね!」

「いいじゃないか。今度は、タマを連れてこようかな」

そんな会話をしながら、浮竹と京楽はヤトの町を後にして、王都アルカンシェルに戻っていくのであった。


拍手[0回]

オメガバース恋白読み切り短編

その日、恋次はお忍びで城下にきていた。

恋次は、その国の第14代目の国王だった。政治は大臣に任せていて、恋次はお飾りの国王とばかにされるが、文武両道で、幼い頃から帝王学を学ばされており、自分で統治することもできたし、重要な場面ではちゃんと国王として責務を果たしていた。

ふと、目の前を奴隷商人が横切った。

「へぇ、奴隷商人か‥‥最近、後宮の寵姫にも飽きてきたしな。何か珍しい奴隷でもいないか見ていくか」

恋次は、奴隷市に顔を出した。

「さぁさぁ、今回の目玉はこの青年だぁ!見よ、この美貌!美しい歌声をしているし、何より純白を通りこした白銀の翼!絶滅しかかっている有翼族の中でも、こんな色の翼をもつ有翼人は他にいないよ!しかもオメガだ!子を産むよ!金貨千枚から!」

「金貨2000枚!」

「金貨5000枚!」

「金貨5500枚!」

「さぁさぁ、他にいないかね?」

恋次は、奴隷としてステージに立たせられた有翼人の青年に魅入っていた。

美しかった。今まで相手をしてきたどの寵姫よりも。

ふと、財布の中身を確かめる。

金貨では重いので、星金貨をもっていた。

星金貨1枚で、金貨100枚分に値する。

それを、300枚もっていた。

「星金貨200枚」

「おおーっと、ここで星金貨200枚が出た!金貨にすると2万枚だぁ!」

ざわっと、周囲が騒がしくなる。

「おっと、これは決まりか!」

目の前にいる有翼人の青年は、長い黒髪に黒い瞳、透き通るような白い肌に紅をさしたような唇をしていて、うすく化粧も施されていた。

着ている服も、よく似合っていた。

他の奴隷はボロの服のまま出されていたが、有翼人の青年は目玉商品なので少しでも高い値がつくように綺麗な身なりで出品されていた。

「決まりだ!星金貨200枚で赤い髪の青年が落札だぁ!」

奥で星金貨200枚を払い、恋次は有翼人の青年と出会い、手と首の鎖をもらった鍵で取り去って自由にさせた。

「私の名は、朽木白哉。有翼族の吟遊詩人だった。人に捕らえられ、奴隷に落ちたが、私は屈しない」

「あ‥‥‥」

「なんだ?」

「あんがすごい綺麗だから見惚れてた。白哉さんと呼んでいいっすか?」

「好きにするといい」

恋次は、白哉を連れて王宮に戻る。

「王族だったのか」

白哉が驚いていた。

「オメガってことなんで、歌姫として後宮に入れます。あんたは、今日から俺の、俺だけの寵姫だ」

「‥‥‥‥」

「あ、なんかほしいものありますか?」

「リュートを。弾いて歌いたい」

「分かりました。すぐ用意させます。とりあえず、湯あみして新しい服着てください。一緒に食事とりまよう」

白哉は、恋次の言われた通りにした。

中性的な衣服を着せられて現れた白哉は、やはり美しかった。

有翼族だが、翼は出し入れが可能だった。起きている時は出したままで、眠る時に消すらしい。

豪華な食事を与えれて、白哉は困った表情をしていた。

もっとひどい買い手に買われて、前の主人のように性的に暴行をくわえられると思っていたからだ。

「兄は‥‥私を、抱かぬのか?」

「ぶばっ」

飲みかけの紅茶を、白哉の顔に吹きかけた。

「す、すんません」

「兄はアルファなのであろう?私はオメガだ。前の主は、私をいつも犯していた」

「白哉さん。俺はそんな無理やりはしないっすから、安心してください」

「だが、寵姫にするということは、そういう気があるということであろう?」

「まぁ、そうなんすけど‥‥‥‥ぶっちゃけ、一目惚れっす。立場上、他の国の姫とかの寵姫も相手にしなきゃいけないんで、そのあたりは勘弁してください」

「国王だからな。仕方あるまい」

白哉は、恋次に呼ばれて寝る前にリュートを奏でて歌を歌った。

前の主が白哉を犯したというが、そんなことは微塵も感じさせない上品で気品のある立ち振るいと、歌声は素晴らしかった。

「もう遅いし、一緒に寝ましょう」

「するのか?」

「ただ、一緒に寝るだけです。何か欲しいものが他にあったら言ってくださいね?」

「分かった」

その日、白哉は久しぶりに深く眠れた。

次の日は慌ただしかった。

白哉が、秘所から血を大量に流したのだ。

「流産だそうです」

輸血と点滴を受けながら、憔悴した様子の白哉の頬を、恋次が撫でる。

「前の主は、避妊させてくれなかったから‥‥あの男との間にできた子であろう。流れてくれて、せいせいしている」

「じゃあ、なんでそんなに悲しそうな顔してるんすか」

「オメガに生まれたことのない兄にはわかるまい」

「そうっすけど‥‥‥‥俺は、子供がちゃんと生まれていても、俺の子として扱いましたよ?」

「戯言を‥‥‥眠いのだ。寝る。一人にしてくれ」

2週間ばかり安静にして、前の主に刻まれた番をとくために、大量の薬を投与されて、白哉は2週間ずっとベッドの上で眠っていた。

買った時から細かったが、さらに細くなってしまった腕を見て、恋次は心を痛めた。

「白哉さん‥‥‥目を、覚ましてください」

毎晩、恋次は白哉の部屋で眠った。白哉は体が弱いわけではないが、番を解消させる薬は副作用も大きいので、心配で心配で、恋次は食事をとるのも執務をするのも白哉の部屋でしていた。

「ん‥‥‥」

ゆっくりと、白哉は目を開けた。

飛び込んできたのは、看病し疲れて眠っている、この国の国王であるはずの恋次の姿だった。

「なぜ‥‥‥‥」

珍しいとはいえ、たかが一人の奴隷のために、国王である恋次がここまでしてくれるのか、理解できなかった。

「恋次‥‥‥」

眠っている恋次は、年より幼く見えて、燃え上がるような赤い髪はわりとさらさらしていた。

「白哉さん?」

「目を、覚ましたぞ」

「ああ、よかった。点滴ばっかりだったから、お腹すいてるでしょう。消化にいいもの、そうだな、スープかリゾットでも作ってきてもらいますね」

「兄は」

「ん?」

「兄は、私が珍しいから大事なのであろう?」

悲し気に目を伏せる白哉の手を引いて、恋次は白哉にキスをした。

「あんたが、好きです」

「私は、オメガだ。アルファである兄がそんな感情を抱くのは、私がオメガであるせいだ」

「そうだとしても、好きなんです。俺の番になってください」

「前の主に無理やり番にされて‥‥‥」

「今時、番は解消できるもんすよ。副作用が大きいから躊躇しましたけど、子が流れるのを見たら、もうあんたには誰も手を出してほしくないから、俺の番にするために番解消の薬を投与しました」

白哉が目を見開く。

「食事を毎日きちんととって、俺と一緒に軽く運動しましょう。少しでも元気になるために」

「運動とは、セックスか?」

「ち、違います!普通に走ったりです」

「有翼族は、翼があるせいであまり走らぬ。一人で走ってくれまいか」

「あああ、じゃあ、体操で!」

白哉は、恋次と一緒に体操したり散歩したりして、毎日きちんと3食食べていくうちに、元気になっていった。

白哉は、毎日恋次のためにリュートを奏でで歌を歌った。とても綺麗な声だった。

白哉が恋次に買われてから、1ヵ月が経とうとしていた。

恋次は、その間に後宮に囲っていた寵姫たちを故郷に戻した。

「なぜ、寵姫たちを故郷に戻す?子は、一人でも多いほうがいいのではないか?」

「あんたとの間にできた子を、男であれ女であれ、次の跡継ぎにします」

白哉は、赤くなる。

「わ、私と子など‥‥‥‥」

「今日、あんたを抱きます」

「私は‥‥その」

「俺はあんたがいい。白哉さん、あんたを愛してます。番になって、俺の子を産んでください」

白哉は、直球すぎる言葉にまた赤くなった。

「分かった」

白哉も覚悟を決める。買われた時から、前の時のように性奴隷にされると思っていたのだ。それが、他の男の手垢にまみれてしまっているというのに、恋次は番にして子が欲しいという。

子供が目的かとも思ったが、本当に白哉のことが大好きで愛してくれているんだと、接しているうちに分かった。

「では、今夜」

「ああ」

その日の夜になって、恋次は素面ではいられずに酒を少し飲んで、白哉にも飲ませた。

「んっ」

服の上から体全体を弄られて、白哉は甘い声を小さくあげる。

かりかりっと、服の上から胸の先端ばかりいじっていると、濡れた瞳で白哉が恋次を見上げる。

「‥‥‥もっと」

「はい」

衣服を脱がしていき、すでに勃っていた白哉のものを口に含んで優しく愛撫する。

男に抱かれ慣れてはいたが、こんなに優しくされたことはなくて、白哉は目を閉じた。

「ふあっ、んあ!」

精液を、恋次の口の中に吐き出してしまった。

「あ、ティシュを」

恋次は、かまわず飲み干した。

「あ‥‥‥」

「あんたの体液、なんでこんな甘いの?」

「それは、前の前の主がそうなるような薬を私に」

「そっか。つらいこと思い出させてしまってすんません」

「あ、恋次」

自分の声ではないような甘ったるい声で、白哉は恋次の名を呼ぶ。

恋次は、ゆっくりと潤滑油にまみれた指を白哉の蕾にいれる。

ゆっくり動かすと、いい場所に指があたって、白哉はビクンと反応した。

「うあっ」

「ここ、いい?」

「やあああ」

ごくりと、恋次が喉をならす。

「挿入れますよ?」

「んあっ」

熱で一気に引き裂くと、慣れているのか白哉は何も言わず、ただじっと耐えた。

「んっ‥‥‥大きい、やぁ」

「あんたの中すごい。なんて熱いんだ。溶けちまう」

「やああ」

ずっずっと音を立てて動かされる。

そのうち、ぐちゅぐちゅと濡れた音になってきた。

「ひあああああ!!!」

奥を抉られて、白哉は精液を出しながらオーガズムでもいっていた。

「奥に、出しますよ?俺の子、孕んでくださいね?」

「ああああ!」

どくんどくんと、大量の精液を注ぎこまれて、白哉は唇を舐めた。

艶めいた仕草に、恋次の熱がさらにこもる。

「あ、また大きく」

「今日は、寝かせませんからね?覚悟してください。まず、番にしますね?」

交わりながら、うなじを噛まれて、ぴりぴりと電撃が走ったような感覚を抱く。

「うあ」

「番に、なりましたね?あんたはもう、俺のもんだ」

「あっ」

「たっぷり、愛してあげますからね?」

白哉は、心を許した恋次に抱かれたことで初めてヒートを催した。

その次の日も、次の日も‥‥‥1週間くらい、抱かれて眠るを繰り返して、白哉ははじめてのヒートを無事過ごし終える。

恋次も白哉も若いので、ほぼ毎日のようにセックスをした。

「‥‥‥‥身籠った」

「マジっすか!」

医者に診せて、男児を懐妊しているいのが分かって、出産までの間、白哉を抱かなくなった恋次に、白哉は熱をもてあまし、恋次に交わるまでもしないが、ぬいてもらったり、ぬいたりしていた。

やがて臨月がきて、帝王切開で無事、王太子を産んだ。

生まれてきた子の背中には、小さいが翼があった。

白哉は有翼人だ。白哉の願いで、子の小さなあるだけの翼は切除された。

「私は、子に亜人の血を引いているからと差別を受けてほしくない」

「俺は反対だったんすけど、あんたにこれだけ懇願されるとなぁ」

白哉は、またヒートを起こしたが、それから2年ほどは避妊してないのに子はできなかった。

3年目に、今度は女児を懐妊し、無事生まれた。

「愛してます、白哉さん」

「んっ、恋次‥‥‥‥‥」

また懐妊して、口づけだけを交わしあう。

セックスは、子が流れる危険があるからとストップされていた。

「はぁ‥‥‥早く、兄に抱かれたい」

「俺も、白哉さんを抱きたい」

その日の夜は、子が胎にいるが、セックスしてしまった。

子が流れなかったので、たまに恋次は白哉を抱いた。

3人目の子を産んだ後は、避妊するようになった。

「白哉さん‥‥綺麗だ」

「あ、恋次」

求められて、白哉は自分から足を開く。

ヒート期間が終わると、白哉はすくすく育っていく恋次との間の子と恋次のために、リュートを奏でて美しい歌声を披露する。



「隣国から、王太子の婚約者として10歳の姫君の名があがってるんすけど」

「まだ王太子は5歳だぞ。早すぎる」

「そうなんすけどね。姫のほうも、もらいたいって国が多くて」

白哉と恋次は、子が亜人との間の子だからと忌み嫌われることを危惧していたが、有翼人はもう絶滅種に近く、優れた魔術を使えるというその血筋を欲した。

白哉は魔力は高かったが、魔術は使えなかった。

子供たちは、幼い頃から魔術が使える片鱗を見せていた。

この世界では、魔術を使える者は地位が高い場合が多く、珍しかった。

平民でも、魔術が使える子は名のある貴族の養子としてもらわれていく。

そんな子供たちに囲まれ、王国の正妃となった白哉は、恋次と長く長く幸せに生きていくのであった。





拍手[0回]

ドラゴン族の子とミミック4

冒険者ギルドに行くと、山じいに呼び出された。山じいは、ギルドマスターだ。

「お主たち、Sランクの春水と十四郎を知っておるか?」

「ああ。俺たちとそっくりなんだろう?」

浮竹が、少し興味をもったような顔をする。

「そうじゃ。名前もお主たちと同じじゃ。あまり冒険者として活躍はしておらんが、そのうち出会うこともあるじゃろう。春水のほうは刀の精霊なので、人の姿は滅多に取らぬ。まぁ、会うとしたら十四郎とかの」

「そうだな。Sランク冒険者になりたいから、一度会ってみたいな」

「そっちの浮竹も美人なんだろうねぇ」

京楽が、そんなことを言うものだから、浮竹は京楽の足を踏んづけた。

「あいたたた。ごめんってば」

「浮気者」

「美人だろうなって思っただけじゃない」

「ふん」

「ああ、ごめんってばぁ」

京楽は、浮竹の機嫌を取るのに必死になる。

「さて、お主たちを呼んだのはSランク冒険者のパーティーに交じって、Sランクダンジョンに挑んでほしいからじゃ」

「断る」

浮竹の言葉に、京楽が驚く。

「浮竹?」

「Aランクの俺たちが行くとただの足手まといにしかならない。Sランクダンジョンには、Sランクになってからチャレンジしたい。だから、断る」

「うーむそうか。Sランクダンジョンは確かにAランクはきついからのう。分かった、今回はなしということで通しておく」

「京楽のアホ」

「いきなりなんなの!?」

「こんな幸運、京楽の幸運で引き寄せたんだろう。今日はラッキーディだからな」

京楽はジョブに遊び人ももっていた。

今日はとてもついている日で、朝スロットマシーンで金貨300枚を稼いできたところだった。

「では、代わりに、同じAランクの黒崎一護と朽木ルキアという冒険者と一緒にAランクダンジョンに挑んではくれまいか?なりたてのAランクなのじゃ」

山じいの言葉に、浮竹はどうしようかと思ったが、京楽はラッキーディだし、まぁいいかとOKを出す。

「分かった。その子たちと一緒にAランクダンジョンに挑もう」

「そうかそうか。そう言うだろうと思ってすでに呼んでおいたのじゃ。こっちに来るのじゃ、黒崎一護、朽木ルキア」

「ああ」

「はい」

現れたのは、オレンジの髪の少年と、黒髪に珍しい紫色の瞳の少女だった。

「人間じゃないね。精霊族かい?」

京楽は、一目で一護とルキアの種族を言い当てた。精霊族はエルフやドワーフと同じ亜人種で、精霊と会話ができて魔法が得意だった。

「俺は黒崎一護。17歳です。よろしくお願いします」

「私は朽木ルキア。16歳です。よろしくお願いします」

「冒険者なのに上品だな。さすが精霊族」

浮竹をルキアはじっと見ていた。

「浮竹殿と京楽殿は、竜人族なんですよね?」

「ああ、そうだが」

「でも、たった3年でAランクになられたとか」

「ルキア、それ言ったら俺たちだって4年でAランクまでこれたじゃねーか」

一護の言葉に、ルキアが顔を赤くする。

一護が、ルキアを抱き寄せたからだ。

「ふむ。人生のパートナーでもあるのか」

「そ、そんなんじゃないっす!」

一護は顔を真っ赤にして、ルキアから離れる。

「若いっていいねぇ」

京楽は、おっさんくさくなっていた。

「じゃあ、ここから一番近いムムルのダンジョンに行こう。それでいいか、一護君、ルキアちゃん」

「あ、はい」

「はい」



こうして、4人でムムルのAランクダンジョンに挑むことになった。

「ミミックだあああああ」

「あの、京楽さん‥‥‥」

「京楽殿‥‥‥」

「ああ、浮竹は三ミック牧場を作ったり野良ミミックを拾って家で飼うような三ミックマニアだから気にしないで」

「でも、あれかじられてますよ」

「甘噛みだから」

確かに甘噛みで、浮竹は三ミックを撫でまくり、ミミックは宝物をドロップして去って行ってしまった。

「ああ、ミミックがあああ」

「浮竹、一護君とルキアちゃんの前だよ?」

「え、あ、いやぁ、ミミックは強敵だったなぁ」

取り繕ったとろこで後の祭りである。

「何ドロップしたんすか?」

「金塊だね」

「うわぁ、すげぇ。Bランクダンジョンとは大違いだ」

「あ、あっちにいるのもミミックだぁ」

「京楽さん、浮竹さんって‥‥‥」

「あはははは。まあ、ここまでの道のりで見てきたように、冒険者としての実力は本物だよ?」

浮竹は、この19階層にくるまでに魔法をぶっぱしたり剣で出てくるモンスターを京楽と一緒に倒してきた。

一護とルキアへの援護も忘れない。

「浮竹殿、ミミックの小さいがいます!」

「おおおお、自然下で生まれたミミックの子供か!」

浮竹は目を輝かせて、ルキアに噛みつこうとしていた小さなミミックに、クッキーを差し出す。

「ぴぃぴぃぴい」

子三ミックは、嬉しそうにクッキーを食べて、浮竹から風呂に入った後でも感じれる、三ミックのかすかな匂いに反応して、浮竹の頬をペロリと舐めて、ミスリルのインゴットを落として去っていった。

「ああ、このダンジョンはいいな。階層ごとに水がわき出していて、ミミックが食べれる緑もある。自然下で繁殖できるダンジョンはいいダンジョンだ」

「京楽、今日は一護君とルキアちゃんの援護できたのを忘れずにね」

「ああ、もちろんだ‥‥‥ああああ、ミミックが水飲んでるうううう」

ムムルのダンジョンは、ミミックが多かった。

「浮竹殿、こっちにも三ミックがいます!」

「ルキアちゃん、危ない!」

京楽が、その三ミックを見てルキアと突き飛ばすと、剣で噛みつかれるのを防いだ。

「ぎいいいい」

「京楽殿!?」

「京楽さん?」

「人食いミミックだよ!浮竹!」

「ああ!ファイアランス!」

浮竹がミミックなのに躊躇もなく殺したことで、ただの三ミックではないと分かって、一護とルキアは顔を蒼くした。

「人食いミミック‥‥‥‥はじめて会った」

「そうだね。人食いミミックはAランクダンジョン以降から出てくるから。宝物もドロップしないし、肉食で狂暴で強いから、出会ったらできる限り逃げるようにね?」

京楽の言葉に、一護とルキアが浮竹がショックを受けているんじゃないかと、浮竹のほうを見るが、浮竹はすでに違うミミックとじゃれあっていた。

「人食いミミックはかわいくない。それに比べて、普通のミミックはこんなにかわいい」

浮竹は、ミミックを頭の上にのせてバランスをとって遊んでいた。

「浮竹、今日はボクだけじゃないんだから‥‥‥‥」

「はっ!」

すでに、ミミックを見ると一護とルキアの存在を忘れてしまうので、言い訳をしようとするが、一護とルキアが生暖かい目で見つめてくるものだから、浮竹はもう存在を忘れてミミックとのスキンシップを優先する。

「はぁ‥‥ボクが今日ラッキーディだから、宝物をもったミミックがたくさんでてくるね」

「京楽殿は、遊び人のジョブももっているんですか?」

ルキアの問いに、京楽が答える。

「魔法使い、剣士、遊び人、僧侶、賢者のスキルをもっているよ?」

「すごい!」

「ちなみに、浮竹は魔法使い、剣士、僧侶、賢者、それに発動しないけどモンスターテイマーのジョブももっているから、そのせいで三ミックから好かれるんだろうね」

「へぇ」

一護が、納得したように頷く。

30階層まで降りてきて、ラスボスのフロアだった。

出てきたのは、ブラックワイバーン。

その肉がうまいので、肉が高級食材として重宝されるが、ラスボスだけあってそれなりに強いモンスターだった。

浮竹と京楽は、一護とルキアのサポートに回る。

「ウィンドカッター!」

ルキアが風の刃でブラックワイバーンの翼を切り裂く。

一護は、精霊族であるが剣を得意とするようで、大きな黒い大剣でブラックワイバーンに切りかかる。

「ファイアエンチャント!」

浮竹が、一護の大剣に炎をエンチャントする。

「ルキアちゃん、もう1回ウィンドカッターでブラックワイバーンの翼を!」

「はい、京楽殿!ウィンドカッター!!!」

翼を切り裂かれて、ブラックワイバーンが地面に落ちる。

その首を、炎の大剣で一護がはねた。

「やった、勝った!」

「浮竹殿、私と一護に、身体強化魔法をいくつも重ねがけしましたね?」

「ああ、まぁ最初のラスボスだからな。怪我もしてほしくなかったし」

「助かりました。礼をいいます、浮竹殿、それに京楽殿も」

「財宝の間が開くよ~~」

京楽が、ラッキーディなのできっとたくさんの財宝が出てくるものだと思っていた。

財宝の間にいたのは、ミミックだらけの集団だった。

「ミミック天国だああああ!!!」

すでに浮竹はねじが飛んでいた。

三ミックに甘噛みされ、ミミックをもふり、撫でまくった。

財宝の間のミミックたちは、毛皮が生えているハイミミックだった。

「きしきしきしいい」

不思議な笑い声をあげて、次々に宝物をドロップしていく。

その量、普通の財宝の間にあるような金銀財宝ではなく、魔力のこもった武具や貴重な魔法書、中でも神の秘薬と呼ばれるエリクサーもあった。

エリクサーはSランクダンジョンでしかドロップされないはずだった。

「こりゃあ、大量だねぇ。4人で分けても、星金貨何十枚にもなるねぇ。さすがボクのラッキーディ」

「ああ‥‥麗しいミミック。ハイミミックをもふれるなんて。俺、ここに住もうかな」

「はいはい、アホ言ってないで財宝をアイテムポケットに入れて撤収するよ」

「京楽、明日またこのダンジョンにこよう」

ハイミミックと戯れられたのが非常に気に入ったようだった。

「はいはい。分かったよ。とりあえず、今日は一護君とルキアちゃんがいるからね?一度、王都の冒険者ギルドに戻るよ?」

ダンジョンから出る魔法陣で外に出て、リターンの魔法で王都に戻る。

「ギルドマスター、ムムルのAランクダンジョンを踏破しました!」

「おお、そうかそうか。それにしても、1日で踏破してしまうとは」

「浮竹殿とミミックの仲がよかったです!」

「そ、そうか」

「なぁ、ギルドマスター、浮竹さんほんとに大丈夫か?ミミックになると目の色かえちまうが」

「まぁ、十四郎はミミックを構っていても、後ろから襲われても対処できるからの。Aランク冒険者としてそれなりにダンジョンを踏破しておるしな」

「いやぁ、早速奥の部屋で素材になるモンスター出すから解体よろしく。他の財宝も奥に一度出すから、売る売らないを区別して4等分しよう」

一護とルキアが顔を輝かせる。

かけだしのAランクだったが、はじめて挑んだAランクダンジョンを踏破できた上に、財宝が多かった。

結局、一人星金貨30枚になった。

金貨3千枚分だ。

「ブラックワイバーンの肉は、もらっていいか?牧場のミミックたちにも食べさせてやりたい」

「はい!浮竹殿と京楽殿のお陰でダンジョンクリアできましたので、どうぞ持って行ってください」

一護とルキアが食べる分だけ残して、残りの肉は浮竹が引き取った。

家に帰ると、浮竹はブラックワイバーンの肉をバーベキューで焼くことにした。

「きしきしいいい」

「きしいいい」

牧場に、ポチとタマとタロウとジロウ、それにこの前うまれた子ミミックも混ぜて、バーベキューでブラックワイバーンの肉を焼いて、牧場のミミックたちにも食べさせる。

「きしいい!!!」

おいしいおいしい。

ミミックたちは、まだ食べていないミミックは涎を垂らして、食べ終えたミミックはおかわりがほしいと浮竹に甘える。

京楽は、浮竹と一緒に肉を焼いてミミックにあげていく。いつもは噛みつかれるのが、今日はご褒美にあげているので京楽もミミックに甘噛みされて、ミミックがかわいく思えた。


ちなみに、ラッキーディの反動の日のアンラッキーディが1週間後にきて、京楽は股間を牧場のミミックにかじられて悶絶するのであった。




拍手[0回]

残り火

「んっ」

褥の上で、白哉が乱れる。

「隊長」

「んあああっ」

恋次に後ろから突き上げられて、白哉は少し長い黒髪を揺らす。

「あ、恋次、顔がみたい」

「隊長、好きです」

一度抜いて、正面から突き上げた。

「ふ、んんん」

舌が絡み合うキスを繰り返して、白哉がびくんと背をしならせる。

白哉は恋次の肩に噛みついた。

「隊長、すっげぇいい」

淫靡な白哉は美しく、白哉は恋次の背に手をまわしてその背中をひっかいた。

「ああああ」

白濁した液体を出しながら、恋次の精液を胎の奥で受け止める。

「んあああっ」

恋次のものはすぐにまた硬くなって、白哉を攻め立てる。

「んあっ、あ、あ」

恋次の体液を再度胎の奥に受け止めて、白哉は意識を失った。





「ん‥‥‥」

白哉が気づくと、後処理はちゃんとすませられていて、新しい着物を着ていた。

「恋次」

「はい、隊長」

隣でうとうと眠っていた恋次が、目を覚ます。

「足りないのだ」

「へ?」

「まだ、足りない。私をもう一度抱け」

「え、でも俺のほうがもう無理っす‥‥‥‥」

体を燻る残り火に、白哉は悩む。

「風呂に入ってくる」

「あ、俺も一緒に入ります」

結局、風呂場で恋次にぬいてもらった。

白哉の中にある残り火。

まだ、完全に消えない。どうすればこの火が消えるのか、白哉には分からない。

恋次の傍にいると、いつもいつの間にか残り火が灯る。

「恋次、愛している」

愛を囁けば、恋次は見えない犬の尻尾を振って白哉を抱きしめる。

恋次の匂いが好きだった。

恋次の鍛え上げられた体が好きだった。

恋次の入れられたタトゥーが好きだった。

「隊長、俺も愛しています」

「ふあっ」

何度も舌を絡み合わせて口づけをされると、白哉の中の残り火が大きくなる。

いつからだろうか。

こんな浅ましい欲を抱くようになったのは。

その夜はもう寝て、次の日執務室で恋次と会った。

「おはようございます隊長」

「おはよう」

白哉は、瞳を潤ませながら恋次を見た。

「残り火が」

「へ?」

「残り火が、兄といると灯るのだ。体の奥が疼き出す」

「隊長、誘ってるんすか?」

「そんなつもりはない。ただ、心の中にも体にも残り火が灯っていて苦しい」

「俺のことを、愛しているからですよ」

「そうなのか?」

恋次でもはっきりとは言えなかったが、肉欲をいつも抱くような白哉ではない。

欲がない時でも残り火があるというのは、そんな感情が白哉の中に灯っている証だろう。

「隊長は俺と違って欲をあんま出さないじゃないっすか。でも、残り火があるってことは俺のことを愛していて、欲がなくて俺の傍にいると残り火が消えないのは、そんな愛とかいう感情があるからじゃないっすか?」

「そうなのか。そう言われると、そんな気がしてきた」

「隊長、今も残り火は灯ってますか?」

「ずっと。兄がいない時は残り火はない」

「やっぱり、その残り火ってきっと愛なんすよ」

「そうか。そうなのか」

白哉の中で消えない残り火は、恋次がいる時だけ灯る。

「ならば、無理に消そうとしなくてもよいか」

「隊長、かわいいなぁ」

「恋次、苦しい」

大柄な体の恋次に強く抱きしめられて、白哉は呼吸をするのを忘れる。

「恋次」

「はい」

白哉は、ぎゅうぎゅうと抱きしてめてくる恋次に、深呼吸してから頭を拳で殴った。

「今は仕事中だ」

「あ、はい。すんません」

しゅんと項垂れる恋次は、まるで大きな犬だ。

白哉の中にある残り火が、少し大きくなる。

「ふ‥‥‥‥」

こんな感情を抱き続けるのもよいかもしれぬと、白哉は思うのだった。

残り火は、恋次がいる時だけ灯って、大きくなりすぎると欲となる。

それでもいいかと、思うのだった。


拍手[0回]

ブレスレット

9年前、恋次は白哉になけなしの金で買ったプラチナのブレスレットをあげた。

お揃いだった。

公式の場ではつけてくれないが、二人きりの時とかたまにつけてくれて、恋次はそれだけで嬉しかった。

白哉と恋仲になってもう10年にはなるだろうか。

尸魂界も、復興してから大分変わり、家電製品が当たり前にあるようになっていた。

一護はルキアと結婚して、死神となって朽木家に婿入りしていた。

ある日、白哉が悲しそうな顔で執務室にやってきた。

「どうしたんすか、隊長」

「なくしてしまったのだ。兄からもらったブレスレットを」

「え」

「大切なものだったのは分かっている。私の落ち度だ」

「いえいえ、また新しい同じもの贈るんで」

「あのブレスレットでなければ、意味がないのだ」

白哉は、顔色も悪い。ずっと探して、ろくに眠っていないのだろう。

「隊長」

「なんだ」

「俺は、別にブレスレットにこだわったりしません」

「だが、あれは兄からの初めてのプレゼントで‥‥‥‥大切に、していたのだ」

本当に大切にしてくれていたのだろう。

そうでなければ、贈ってから9年も経つのに身に着けてくれたりしない。

「俺も一緒に探しますから」

「本当か?怒ってはいまいか?」

恋次は苦笑する。

「俺は、いつでも隊長にメロメロなんすよ。贈り物をなくされたくらいで、怒ったりしません」

「だが‥‥‥」

「だから、一緒に探しましょう?それでも見つからなければ、同じもの2つ買うんで、また隊長がもらってください」

「分かった」

白哉と恋次は、朽木家を探してみたが、結局見つからなかった。

1週間ほど経ったある日、落とし物として届け出を出してみたのだが、偶然にも拾われて届けられていた。

「夜の散歩道の時に着けていたのだ。夜桜が綺麗なのでしばしの間、その下で桜を見ていた。その時、切れて落としてしまったのであろう」

川辺の桜の木の下で見つかったらしい。

「ああ、修理すぐに頼みますんで。俺の手から、再び受け取ってください」

「分かった」

3日ほどして、恋次は白哉を夜桜の下に呼び出した。

ブレスレットが見つかった場所だった。

「これ、隊長に再び贈ります。ずっと、俺と歩んでください」

「分かった」

白哉は直ったブレスレットを右手首にはめて、恋次を抱き寄せて、自分からキスをした。

「隊長‥‥‥」

「んっ」

深く口づけると、白哉は目を閉じる。

「んあっ」

何度も口づけしあっていると、白哉はやや甘い声をあげる。

「やっべ‥‥‥‥したくなってきた」

「宿を、とろう。近くに、宿がある」

白哉から望んでくることは稀で、恋次はその誘いに乗った。



「目覚めたか?」

「あ、はい。すんません、昨日俺ばっかりいってしまって‥‥‥」

「よい。私から誘ったのだ」

「隊長、ブレスレット、もうなくさないでくださいね」

「ああ」

白哉は柔らかく笑った。

白哉が恋次の前で素直に表情を出し始めたのは、付き合いはじめて3、4年経った頃だ。

今は、もう周囲に付き合っていることを知られても、動揺はしない。一応関係は隠していたが、よく恋次から白哉と同じ匂いがしたり、反対に白哉が恋次と同じ匂いをさせていたりで、隠しても無駄な場面が多かった。

「隊長、好きです」

「私もだ、恋次」

唇を重ねると、昨日のことを思い出して、乱れた白哉があまりにも淫靡で、恋次は赤くなる。

「どうしたのだ」

「いや、昨日の隊長エッチだったなぁと思って」

「く、くだらぬことを言うでない。昨日のことなど知らぬ」

白哉まで赤くなって、そっぽを向く。

「仕事しに行きましょうか。あ、朝食どっかで食っていきません?」

「まだ時間に余裕があるな。一度、朽木家に戻る。恋次の分まで朝食は用意させる」

「はい。じゃあ、隊長の家に向かいますか」

宿を出ると、まだ朝早いので誰も通っていなかった。

「あの、ちょっとだけ手を繋いでみていいっすか」

「仕方のない」

昔なら、決して許してくれなかっただろが、10年も恋仲でいると、甘えても叶えてもらえることができてくる。

白哉は右手で恋次の左手をとる。

「俺の手、ごつごつしてるっしょ。隊長は刀を握るのにすべすべだ」

「ふ‥‥‥‥」

桜が散っていく並木の下、二人並んで手を繋ぎながら歩く。

恋次が手に少しだけ力をこめると、白哉も手を握りなおしてくれた。

ああ、俺、幸せすぎる。

今、死んでもいいかも。

「何をにやにやしておるのだ」

「いえ、なんでもないっす」

「手を繋ぐのはここまでだ。屋敷が近くなってきた」

「はい」

恋次は、結局白哉の家で朝食を食べて、朝風呂をもらって白哉と一緒に執務室のある6番隊舎までいくのであった。



拍手[0回]

ドラゴン族の子とミミック3

クロイツェル王国の王都アルカンシェルで、浮竹と京楽は魔法大学のアカデミーで、モンスター生物学のミミックについてを教えることになってしまった。

給金がよかったので京楽が引き受けたのだが、ミミックの解剖も入っていて、浮竹は拒否した。

交渉の末、ミミックの解剖はなしになり、代わりにレッドスライムの解剖になった。

レッドスライムはいいのか、浮竹もそれならとOKした。

「であるからして、ミミックはモンスターだが植物なんだ。しかし、オスメスがいて、交尾後メスが体内で卵から孵化させて赤ちゃんミミックを産む」

浮竹は、大勢の前でてきぱきとミミックについて教えていく。

「ダンジョンという過酷な環境で、宝を守りながら生きていくのは難しく、平均寿命は5年と短い。そして、最近までミミックを殺してはいけないというルールがなかったため、冒険者はミミックを見ると宝目当てで乱獲するので、ダンジョン内におけるミミックの生息数は非常に少なくなり、今はミミックは見つけて宝をドロップさせてもいいが、殺してはいけないルールになっている。殺すと自動的にダンジョンマスターからギルド支部まで連絡が入るようになっていて、殺した冒険者は罰金を払わないといけない」

「へぇ~」

京楽は、浮竹の傍にいたけれど、ミミックを殺してはいけないことは知っていたが、殺した場合ダンジョンマスターから冒険者ギルドまで連絡がいくなど知らなかった。

「ミミックはLVが低いモンスターだが、個体差があり、Bランク以上のダンジョンのミミックはそれなりにLVが高い。中には人食いミミックという種類もあり、このミミックは非常に狂暴で肉食性で、火が弱点だが酸性の体液を持っているので、もしも遭遇しても逃げることをおすすする。人食いミミックは宝をドロップしない」

「へぇ~」

京楽も勉強になっていた。

「さて、ミミックについて質問のある方は?」

「はい」

一人の男子学生が、手を挙げる。

「では、そこの君」

「ミミック牧場で、生息数が増えているらしいんですけど、生息数がオーバーになっても殺してはいけないんでしょうか」

「ミミックの数が生息数オーバーになることはありえない。ミミックは自然下では繁殖力が弱く、そのせいでなかなか生息数が回復しない。ミミックは個体の上限数で子を生む数が減るモンスターなので、生息数がオーバーしそうになると子を生まない」

「そうなんですね」

学生は納得したようだった。

「他にミミックについて質問がある方はいないか?」

「先生」

「はい」

浮竹が女子学生に声をかけられて、そちらを向く。

「連絡先教えてください!美人でめっちゃタイプです!」

「あー、プライバシーに関係することはなしで。俺とどうしてもコンタクトがとりたい場合は、王都の冒険者ギルドに問い合わせてくれ」

「じゃあ、今からレッドスライムの解剖をするね~」

京楽の出番だった。

「スライム系は核を壊さないと死なない。毒はききにくく、倒すなら火属性の魔法がおすすめだよ。今から、レッドスライムの核を破壊するね?」

京楽は、短剣でレッドスライムの核を切り裂く。

「このように、死ぬとゲル状から液体になる。素材にはならないので、魔石だけ回収する。冒険者になりたての者はスライムなんてと思うが、核を正確に壊すのはけっこう難しいよ。スライムは大量にわくし、もしも口と鼻を塞がれたら窒息死してしまうから、たかがスライムとあなどるのは禁物だよ」

京楽は、レッドスライムの魔石をとって、液体状になったレッドスライムの死体を学生に見せる。

「先生たちは現役の冒険者なんですよね?Aランクの」

「それがどうしたんだ?」

浮竹が首を傾げる。

「ドラゴン倒したことありますか!」

その質問に、浮竹と京楽も顔をしかめるが、冷静を装う。

「ドラゴンはSランク以上の冒険者じゃないと倒せない。あと。普通のドラゴンと竜人族のドラゴンは違う。竜人族のドラゴンは人になれる。というか、人の姿をした者がドラゴン化するので、正確には純粋なドラゴンではない」

他にも質問をしていた者がいたが、浮竹と京楽はそのあたりで切り上げて、授業は終わりになった。

「竜人族のボクらにドラゴン倒したことあるかって言われてもね。ドラゴンは親戚みたいなもんだから、倒せないけどね」

「まぁ、人の言葉を理解できないドラゴンなら倒す可能性もあるがな。どのみち、Sランクになってからの話だ。俺たちはAランク。まだまだ先は長いな」

浮竹と京楽は給料を受け取って、帰宅した。



「んー、タマ、もうすぐ子が生まれそうだな」

「きしきしぃ」

「ポチとの子だろう?」

「きしきし」

「なんで分かるの、浮竹」

「え、だってポチとタマはいつも一緒にいるじゃないか」

「え。タマの横にいたの、タロウじゃないの?」

京楽は、未だに家で飼っている三ミックの見分けがつかない。

仕方ないので、浮竹はポチ、タマ、タロウ、ジロウにそれぞれ色のついたリボンを結んだ。

「ああ、これならわかりやすい」

タマはピンクのリボン、ポチは水色、タロウは青でジロウは紫だった。

それから一週間くらいが経過して、朝起きると三ミックの数が増えていた。

8匹も。

「え、タマだけじゃなくってジロウもメスだったって?それで一緒に妊娠していて一緒の時刻に産んだって?」

「きしきしきし」

「きしきしきしぃ」

赤ちゃんミミックが8匹、二人で暮らすには広い一軒家を飛び跳ね廻る。

「ピィピィ」

「はぁ‥‥‥‥やっと全部捕まえた」

「ピィピィ」

「はいはい。お腹減ってるんだね」

京楽は、暖炉の奥に隠れようとする赤ちゃんミミックを捕まえる。

「京楽、ホットミルクを8つのカップに入れてもってきてくれ」

「分かったよ」

赤ちゃんミミックたちは、それぞれのカップのホットミルクをおいしそうに飲む。

「ん-、やっぱ三ミックでも赤ちゃんはかわいいなぁ」

「そうだろう。それにしても、ジロウがメスだったなんて。口のとこピンクじゃなかったし、赤みががってなかった」

「ミミックにも個体差があるように、稀な子もいるんじゃないかな。タロウが、金蔵の武具を体内に入れれば新品同様にしてくれるように」

この前、浮竹が銀貨2枚で買った魔剣は、タロウのおかげで新品同然になり、浮竹の腰に帯剣させられていた。

「まだ赤ちゃんだから、まだいいが、大きくなったら流石に飼えないから牧場に移すか」

「そうだね」

といえあえず、浮竹と京楽は赤ちゃんミミックに囲まれてほっこりする。

「ピィピィ」

「かわいいなぁ」

「あんまりかわいがると、牧場に移せなくなるからほどほどにね」

京楽が、赤ちゃんミミックを溺愛する浮竹に注意を促す。

「う‥‥‥やっぱ、家で飼うのは4匹くらいが限界か」

「そうだよ。ミミックだけど、飼ってる子たちはボクらと同じような食事をとるんだよ?食費もかさむし」

「はぁ。もっと金持ちになりたい」

「じゃあ、早くSランク冒険者にならないとね」

「いっそ、血を流して宝石を作って売るか?」

「その方法はダメだよ!王都に着いた時、約束したじゃない。お互い、自分を傷つけて血の宝石で稼ぐのはなしにしようって」

「ああ‥‥…そうだったな」

浮竹の瞳が暗くなる。

里を追われる前、ドラゴン化できないので親に捨てられて、己を傷つけて宝石を作り出して、それを近くの村に売ってなんとか食いつないでいたのを思い出す。

京楽はダークドラゴンになれたが、狂暴で己をコントロールできなくて、浮竹よりも遅くだが、親に捨てられた。

二人は、里の中で二人きりで住んでいた。

邪魔者としてついに里を追い出されて、二人は冒険者として人の世界で生きていく道を選んだ。

三ミックと出会ったのは、Dランク冒険者になった、まだかけだし冒険者だった頃だ。

ポチと出会った。

Dランク冒険者の稼ぎなんてたかがしれていて、自分の食べる分を我慢してパンを分けてあげたことを思い出す。

「ポチとは、長い付き合いだよなぁ、そういえば」

浮竹は、お腹いっぱいになって眠ってしまった赤ちゃんミミックたちに囲まれながら、ポチを呼んでその頭を撫でた。

「きしきし」

ポチは、嬉しそうに浮竹に体をこすりつける。

「明日、またダンジョンに行こう。Sランク冒険者になって、もっと牧場を広げたい」

「そうだね。ボクたちの夢は、Sランク冒険者になって、名前を世界中に轟かせて、里のやつらを見返してやることだからね」

「ああ」

果てしない未来へと、夢を抱く。

消えてしまうような儚い夢ではなく、時間はかかるかもしれないが、人の10倍以上を生きる二人には、いつかきっとかなえられる夢であった。



拍手[0回]

ドラゴン族の子とミミック2

「みんなー、餌と新鮮な水だぞー」

浮竹は、ミミック牧場でミミックたちに餌をあげていた。

空気を凝縮したという緑の玉が、ミミックたちの餌だった。ミミックは、この世界では生きた植物の一種である。

金属でできている部分もあるが、木製の部分も多い。

「きしきしきし」

ミミックたちが、嬉しそうに餌を食べて新鮮な水を飲む。

「きしきしきし」

浮竹に甘噛みでかじりついて、ミミックたちも浮竹も幸せそうだった。

「はぁ‥‥今日も浮竹はミミックに夢中か」

京楽は、そんな浮竹の姿を見てミミックたちに嫉妬する。

「あ、京楽!見てくれ、新しいミミックが生まれたんだ!まだ子供だから小さくてかわいいだろう?」

近寄ってくる浮竹の腕の中には、ミミックの赤ちゃんの手のひらサイズのミミックが5匹いた。

「へぇ、かわいいね」

「ぴいぴいぴい」

京楽が触ろうとすると、赤ちゃんミミックはその指に遠慮なくかじりついた。

「あいたーーー!」

赤ちゃんミミックを投げ捨てて、京楽は指にケガがないかを確認する。

投げ捨てられた赤ちゃんミミックは、怒って京楽の頭にかじりついた。

「ぴい!」

「あいたたたたた、ちょっと、浮竹笑ってないでなんとかしてよ!」

「あはははは、京楽はミミックによく好かれてるなぁ」

「いや、どう見てもボクはかじられてるからね!?本気でかじられてるんだよ?君みたいに甘噛みじゃないんだよ?」

「あははははは」

浮竹は、いつまでも笑っていた。


家には、今4匹のミミックを飼っている。

そっちのミミックは躾がなっているので、京楽に本気で噛みついてくることはないし、甘えて甘噛みしてくるのでかわいい。

ただ、牧場のミミックたちは京楽を本気で噛んでくる。なので、牧場の経営の手伝いをする京楽とミミックは、あまり仲がよろしくない。

よくかじられた。

「今度、ダンジョンに放つミミックは10匹だったよね。こいつとかどうだい?」

京楽は、よく噛みついてくるミミック65号を捕まえて、噛みつかれながら浮竹に打診する。

「ああ、65号か。そろそろ成人の年だしな。よし、65号と70号と、あとは生まれてきた順に決めようか」

「ボクは、デートがしたいんだけどね」

「へぇ。ミミックとデートか。ロマンチックだな!」

「いや、君とだよ!」

「ミミックがいれば幸せじゃないか!」

「それは君だけだよ!」

京楽はがっくりと項垂れる。

「はぁ。恋人同士なのに、浮竹はいつもミミックのことばかり」

「聞こえてるぞ、京楽。俺はちゃんと、お前が」

京楽は、きらきらした目で浮竹を見る。

「俺はちゃんとお前が愛せるミミックも育てるからな!」

ずこーーー。

京楽はこけた。

お前が好きだと言われると思っていたのだ。

「いいよいいよ。どうせボクはミミックの次なんだから」

「あ、いや、ちゃんと京楽も大切だぞ?」

頬を赤くしながら、浮竹はつぶやく。

「浮竹、大好きだよ!」

ハグとキスをしていたら、牧場のミミックたちの嫉妬をかって、京楽はミミックにかじられる。

「きしきしきし」

「きいきいきい」

「ぎゃあああ、ミミックに殺されるううううう」

「大げさだなぁ、京楽。俺の牧場のミミックたちは全部人食いミミックじゃないぞ。人食いミミックは危険だから、俺もかじられないように気をつけてる。ああ、でもいつか人食いミミックも飼ってみたいなぁ」

「危険だからだめ!」

「ふふ、京楽心配してくれてありがとうな?」

「う、うん」

牧場の仕事を終えて、午後になって冒険者ギルドを訪れて、ミミックを放つというクエストを受けて、10匹の牧場のミミックを連れてB級ダンジョンにもぐった。

「きしきしきし」

「お前たち、もう俺と会えないかもしれないが、立派にやっていくんだぞ。独り立ちの時だ」

「きしきしきし~~~~」

泣き出すミミックたちを撫でて、浮竹も泣いてミミックたちをダンジョンに解き放つ。

ミミックたちは、階層をばらばらに散っていき、ミミックを放つことは無事成功した。

ミミックはまずいので、天敵はいない。

冒険者も、ミミックにかじられても殺してはいけない決まりになっているので、ミミックを殺さない。それでも、ミミックたちの寿命は短く、5年生きればいいほうだった。

ダンジョンという過酷な状況で、宝物を体内に隠してただじっとしているだけ。時折水を飲みに動くが、飲んだ後は元の場所に戻る。

ミミックの出現位置は、ダンジョンマスターに管理されていた。

1つのダンジョンにミミックは約30匹はいる。

一時はミミックが減りすぎたので、浮竹が牧場を営んで増やしているのであった。浮竹は牧場のミミックも家で飼ってるミミックも、同じくらい愛情を注いでいた。

家で飼っているミミックには名前はある。

ポチ、タマ、タロウ、ジロウだ。

うち、タマだけがメスだった。


この前攻略したAランクダンジョンの報酬がまだ残っているので、浮竹と京楽は低レベルの時のように毎日命をかけてダンジョンに挑まなくても生きていける。

だが、体をなまらせないように、放ったミミックの様子を見るためにも、Bランクの40階層あるダンジョンに挑んだ。

20Fのボスを倒すと、2匹のミミックが出てきた。

「きしきしきし」

「きぃぃ」

「お、元気でやってるか?」

「きしきし」

ミミックたちは嬉しそうに浮竹に近づいて、宝物をあげようとする。

「お、くれるのか?」

「きしきし」

「くれるならもらっていいんじゃない?20Fのボスを倒した報酬でしょ」

京楽の言葉に、浮竹は2匹のミミックを撫でて、金のインゴットとまだ覚えていない神聖魔法の魔法書をもらった。

「きしきしきし」

「きぃぃきい」

2匹のミミックは、役目が終わったとばかりにダンジョンマスターのところに新しい宝物をもらいに去ってしまった。

そのまま浮竹と京楽は放ったミミックをいろんな階層で見ながら、30Fまでたどり着く。

「前の住人のミミックたちとも共存しているようでよかったよ」

「そうだな。ミミックは仲間と仲間と認めた者には寛大だからな。敵とみなすと本気で噛みついてくる」

「それって、ボクは牧場のミミックたちから敵視されてるの?」

「いや、大丈夫だろう。敵視しているなら無視する」

京楽は、牧場のミミックからけっこう無視されていた。

「はぁ。まぁいいや。君とこうして一緒に冒険できるんだから」

京楽は、浮竹を抱き寄せる。

「あ、ミミック!先住ミミックだな」

京楽は、浮竹にスルーされて、やっぱりミミックは曲者だと思うのであった。

40階層までたどり着くと、ラスボスが出てきた。

黄色のワイバーンだった。

浮竹が魔法を詠唱する。

「エアジャベリン!」

京楽は、翼を剣で切り裂く。

浮竹の魔法がワイバーンの喉を貫き、ラスボスはあっけなく倒された。

魔石と素材になるであろうワイバーンの遺体ごとアイテムポケットにしまい込む。

「うん。ミミックたちもちゃんと仕事してるようだし、帰るか」

「そうだね。ねぇ、帰ったらデートしない?」

「しない。ミミックたちが待ってる」

がっくりと京楽は項垂れる。

冒険者として二人でいる時は、二人きりとはいえデートではない。

たまには、町でデートでもしたいと京楽は思った。

「ポチとタマを一緒に連れて行っていいなら、デートしてもいい」

「ほんと!?」

京楽は、ポチとタマにリードをつけて、浮竹と町の中をデートする。

「きしきしきし」

「ん、ポチ、あのクレープが食べたいのか?」

「きしきし」

浮竹は飼っているミミックと意思疎通ができる。

「仕方ないなぁ。買ってきてやる。京楽、ポチとタマを頼む」

浮竹はクレープの屋台で4人分買って、京楽、ポチ、タマ、それに自分用に買った。

ミミックは人のものを食うこともできた。

普段水と酸素で暮らしているが。

「今日はいい天気だな。タマ、元気なミミックたちを生むんだぞ」

「え、タマ妊娠してるの?」

「見れば分かるだろう」

「分かりません‥‥‥」

浮竹には前のタマとの違いが分かっているようであったが、京楽にはさっぱり分からなかった。

「ほら、タマはメスだから口の端が少しピンク色だろう?それが赤くなり気味だからそれが妊娠してる証だ」

「へぇ」

「宝を入れるスペースに子供を宿すから、見た目では色でしか判断できない。ちなみに卵じゃなくって赤ちゃんの状態で通常3~5匹産む」

「ふ~ん」

「きしきしきし」

京楽が浮竹のミミック講座を聞いている間に、タマは京楽がまだ食べ残していたクレープを食べてしまった。

「あ、やったな、タマ!こら!」

「母体だから、栄養価の高いものを食いたがるんだ。野生のミミックも、妊娠中のメスはけっこうなんでも食うぞ」

「え。じゃ、じゃあ人間も?」

「ああ、そうだだな。妊娠中のメスは人間も食う」

「ぎゃあああああああ。タマに食われるうううううう」

「躾してあるし、人と同じ食事を与えているから大丈夫だ。野良の妊娠中のミミックは人食いミミックと大差ないから注意が必要だが。ちなみに、牧場の妊娠したメスには主に果物と肉をあげている」

「ミミック博士だね、浮竹は」

「ミミックに詳しくないと、牧場で増やせたりできないからな。まだまだダンジョンのミミックは不足している。まだまだ増やすぞー」

京楽は愛しい目で浮竹を見ながら、ポチとタマのリードの先をもって歩き出す。

ミミック色だが、それなりに楽しく幸せな時間を過ごす。

「あ、あそこの鍛冶屋新しい剣が売ってる。今使ってる剣、刃こぼれしてるし使いにくいから、買い替えたかったんだよな。寄って行っていいか?」

「いいよ」

「ポチ、タマ、どっちがいいと思う?」

浮竹は、表面にミスリルを使っている片手剣と、表面にミスリル銀を使っている片手剣を手に取って比べていると、ポチもタマも、どちらでもなく銀貨2枚セールのだめな剣が入った樽の一本を器用に口でくわえて、浮竹にすすめた。

「お、こいつ魔剣か。かなりさびついてるが‥‥研げば、立派になりそうだな。店の親父、この剣を銀貨2枚でもらうがいいか?」

「いいぞ。そんなボロボロな魔剣、研ごうにもそんな職人はいないと思うがな」

「やった、いい買い物をした」

「浮竹、そんなにぼろいの、研いでも無駄だと思うけど」

「なぁに、タロウは特殊なミミックでな。金属の武具を新品同様にできる能力をもっているんだ。だから、タロウの体の中にこの魔剣を入れて、新品にしてもらう」

「た、タロウにそんな力が」

タロウは、浮竹と京楽の家で飼っているミミックの中の1匹だ。

「まさか銀貨2枚とは。新しかったら、白金貨20枚はするぞ」

「まさに掘り出しものだね」

「ポチとタマに感謝だな。今日はブラックワイバーンのステーキを食わせてやろう」

「きしきしきし」

「きしきしぃ」

ポチとタマは、嬉しそうに飛び跳ねた。

「帰ろうか」

「うん」

浮竹と京楽は、手を繋ぎ合う。ポチとタマのリードの先を浮竹が右手でもって、みんなで帰宅するのであった。

拍手[0回]

ドラゴン族の子とミミック

浮竹と京楽は、ドラゴン族、つまりは竜人族の子だった。

竜人族は、人の姿からドラゴンになれる。そんな一族だった。だが、浮竹は世界でも珍しいホーリードラゴン、聖属性のドラゴンになれるはずだったのだが、大人になってもドラゴン化できなかった。

結果、いらない存在としてドラゴン族の里を追われた。

京楽は、ダークドラゴン、闇属性のドラゴンになれたが、ドラゴン化すると理性を失い、味方まで巻き込んで暴れるので、浮竹と同じくいらない子として里を追われることとなった。

二人は、身を寄せ合って野宿して人里に向かった。

一番近い村に着いた時、竜人族の血からできる貴重な宝石を少しだけ自分を傷つけて作り出し、現金を得ると、冒険者として必要なものを買いそろえて、二人は王都を目指した。

王都アルカンシェルで、二人はEランクの冒険者から始めた。

「京楽、お前までつきあうことなかったのに」

「何言ってるの。里を追われたのは一緒でしょ。一緒に仲良くやっていこうよ」

浮竹と京楽は、親友以上だった。子供の頃からいつも一緒にいた。

「でも、人間の社会で冒険者としてやっていくのは辛いぞ?」

「なぁに、すぐにAランクの冒険者になれるさ」

浮竹と京楽は、400年以上生きていたが、竜人族の中ではまだまだ若い。

3年をかけてAランク冒険者までのし上がり、浮竹と京楽は人の社会で生きていけた。



「さぁて、今回のお宝は?」

Aランクのダンジョンにもぐった二人の前に、宝箱が現れた。

「浮竹、これミミックだよ」

「ミミック!」

浮竹は目を輝かせて、ミミックにわざとかじられた。

ミミックを牧場で大量に養殖して、浮竹はダンジョンに放つという謎のバイトをしている経験もあり、ミミックに好かれた。

「きしきしきし」

ミミックは不思議な笑い声をあげて、浮竹を甘噛みする。

「ああ、麗しいミミック。この噛み心地、色のつや‥‥‥俺の育てたミミックだな」

「きしきし」

ミミックは、宝物をドロップして去っていく。

「魔法書か。古代文字の‥‥‥ファイアランスの魔法。もう習得してるから、魔法ショップに売るか」

浮竹は、古代の魔法書をアイテムポケットに入れる。

「さて、30階層だよ。ラスボスかな」

出てきたのは、ヘルケルベロスだった。

普通のケルベロスよりも2倍は大きく、強いモンスターだった。

「ボクが先にいくよ!フリーズショット!」

「がるるるるるう」

「アイシクルエッジ」

浮竹と京楽は、魔法剣士だ。魔法も剣も使える。

ケルベロスの弱点である氷の魔法を使って、ヘルケルベロスにダメージを蓄積していく。

京楽は、もっていた片手剣に氷のエンチャトして、ヘルケルベロスの3つある頭のうちの1つを切り落とす。

「ぐるるるる!」

ヘルケルベロスは、地獄の業火を吐いた。

「マジックシールド!」

それを浮竹が魔法の盾を作って防ぐ。

「おしまいだよ!エターナルアイシルクワールド!」

「エターナルアイシクルワールド!」

二人同時に氷の上位魔法を使い、ヘルケルベロスを完全に凍り付かせると、氷像を叩き壊すと魔石だけが残された。

ラスボスを倒したことで、財宝の間が開く。

「宝箱だ!」

「浮竹、待って。罠があるかもしれない」

「いや、この色ツヤはミミックだ!」

「きしきしきし」

ほんとにミミックだった。

浮竹はかじられて幸せそうな顔をしている。

「はぁ。浮竹、君のミミック好きには呆れるよ」

「この子も、ミミック牧場で育てた子だ」

「きしきしきし」

ミミックは頷いて、宝物をドロップする。ミスリル製のシールドだった。

「ミスリル製だ。売ればそこそこになるな」

「こっち、金貨と宝石がけっこうあるよ」

「これだけあれば、当分は暮らせるな。それにしてもミミックはかわいいなぁ」

「きしきしきし」

ミミックは、変ななき声を出して、ペロリと浮竹のほっぺを舐める。

「未だに、ボクはミミック牧場を作り出して、ミミックに愛情を注げる君の感情が理解できないよ」

「おいおい、ミミックはこんなにかわいいんだぞ?」

「そう?」

「ほら、京楽も触ってみろ」

「ぺっ」

ミミックは、舌打ちして京楽の手を思い切り噛んだ。

「いたたたた!」

「こら、だめだぞ、あんな手をかんだら。歯が欠けたらどうするんだ」

「心配するのそっち!?」

京楽は、にっくきミミックを剣の鞘で殴った。

「浮竹、撤収するよ。財宝はアイテムポケットに入れたから」

「じゃあ、このミミックは回収して家まで‥‥‥」

「だーめ。すでに野良ミミックを3匹も保護して家で飼ってるじゃない。これ以上増やせないよ」

「うー、残念だ。じゃあ、またな、ミミック45号」

「きしきしきし」

ミミックは不思議な鳴き声をあげて、財宝の間に戻っていく。

ダンジョンが踏破されると、ダンジョンマスターが一度ダンジョン内をリセットして、ボスや宝箱、ざこモンスターの配置を変えたりする。

「さて、このミミルのダンジョンを踏破するのは二度目だね。この後どうする?」

「違うダンジョンにいって、かわいいミミックがいないか探す」

京楽はがっくりとなる。

一応、恋人同士なのだが、浮竹は京楽とミミックと言われるとミミックをとる。

「はいはい。じゃあ、いいミミック見つけに、違うダンジョンに行きますか」

「ああ。野良ミミックがいたら保護してあげないとな」

「ミミック牧場に入れるなら、反対はしないけど」

「さぁ、野良ミミックを探しにいくか」

すでに、冒険の趣旨が変わっていた。



浮竹と京楽は、自分たちが竜人族であるということを隠していない。

その貴重な宝石となる血を目当てにする人間に襲われることもあるが、いつも撃退してきた。

王都の住民やギルド内の人間とは、うまくいっていた。

もう、竜人族の里を追い出されて、悲しんでいた浮竹と京楽はいない。

今はただ、がむしゃらに前を向いて生きていた。

王都から少し離れた町で、ミミック牧場を作って、そこで浮竹と京楽は暮らしていた。ミミックのえさは空気を凝縮したよくわからん緑色の玉だった。

ミミックは植物の一種という説があり、空気の緑の玉と水で生きていた。

ダンジョン内では、空気と水だけて生きている。

「ああ、この子は家で飼おう」

「だめだよ!牧場にしなさい!」

「飼ってくれと瞳が訴えかけている!」

「きしきしきし」

ミミックは、いつも通り不思議な笑い声をあげて、浮竹をかじる。

いつも甘噛みで、噛んだ後宝をドロップする。

「あ、これはまだ覚えていない魔法の魔法書だ!やっぱり、この子家で飼おう」

「だから、だめだってば!牧場にもいっぱいミミックいるし、家にもミミック3匹いるでしょ?」

「もう1匹くらい増やしてもいいだろう?今夜、俺を好きにしていいから」

「う‥‥‥」

色仕掛けでこられて、京楽は長らく浮竹を抱いていないので、結局4匹目のミミックを飼うことを了承してしまった。

浮竹と京楽の冒険は、まだはじまったばかりであった。ミミック色だけど。



拍手[0回]

竜人族

浮竹と京楽は竜人族であった。

浮竹は白いドラゴンになれて、京楽は黒いドラゴンになれた。

人のいない森で、ひっそり二人きりで住んでいた。

元々人里に住んでいたのだが、ドラゴンになった姿を目撃されて、白いドラゴンは縁起がよいので剥製にすると人に襲われかけて、二人は逃げた。

住む場所を転々としているうちに、この森を住処とした。

「浮竹、早いね」

「京楽こそ、どうしたんだ、こんな朝早くに」

「干し肉が切れちゃってね。もうすぐ冬になるし、保存食もっと作っておこうと思って」

人の姿で食事をしていれば、食事の量も足りて森の資源を無駄に浪費することはなかった。

「そうか。昨日、鹿を沢辺でみたんだ。今日もいるだろう。ドラゴンになって、追い立てるから、京楽が人の姿で弓で仕留めてくれ」

「うん、分かったよ」

そんな予定をたてていたのだが、白いドラゴンになった姿を、たまたま森に入ってきた侵入者の人間に見られてしまった。

「白いドラゴンだ!吉兆だ!これは村の人に伝えなくては!」

「あ、待て!」

京楽が追いかけようとするが、男は帰還のスクロールを使って森から村に帰ってしまった。

「ねぇ、浮竹。この森ももう無理かもしれない」

「大丈夫だ。人がきても幼い頃とは違う。追い払おう」

「大丈夫?浮竹、人を傷つけれないでしょ」

「大丈夫だ。自分の身くらい自分で守れる」

それが、浮竹と京楽が会話した最後の日だった。


浮竹は、白いドラゴンになったまま人に捕らえられて、生きたまま連れていかれた。モンスターテイマーがいて、浮竹はテイムされて人のいいなりとなってしまった。

京楽が人の姿で助けにいこうとしたが、すでに浮竹の姿はなく、かといって自分もドラゴンの姿になると人に捕まる可能性があるので、京楽は浮竹を探しながらさ迷う。

白いドラゴンがいるという噂を聞いては出向いて、10年ほど経った頃、その白いドラゴンと京楽は出会った。

「浮竹‥‥‥」

「誰?」

浮竹は、京楽のことも自分のことも、全て忘れていた。

大きな檻にいれられた白いドラゴンは、確かに浮竹だった。

「ボクだよ!同じ竜人族の京楽!」

「俺はただのドラゴンだ。竜人族なんて幻の種族じゃない。人にはなれない」

「そこにいるのは誰だ!」

町の住人が、白いドラゴンの浮竹に話しかける京楽を見つけて、捕まえようとする。

「確か、お前には黒いドラゴンの連れがいるんだったな」

「やめてくれ。その子はただの人間だ!」

「浮竹!」

「逃げろ、人の子!」

結局、京楽は逃げ出した。

浮竹が自分のことを忘れていることにショックを受けて、浮竹のことを諦めてしまい、長い長い休眠をとることにした。

真っ白なドラゴンは、世界に一匹しかいない。

京楽が目覚めた時、眠ってから100年以上は経過していた。

「浮竹‥‥‥まだ、人に捕まっているのかな?今度こそ、助けにいこう。ボクのこと、忘れていてもいいから」

浮竹の白いドラゴンの噂は、すぐに聞けた。

ある王国で、守護竜として存在しているらしい。

もう、捕まっているわけではなかったが、京楽は浮竹を助け出すために黒いドラゴンになった。100年も眠っている間に体だけは大きくなっていて、巨大なドラゴンになれた。

浮竹のいる王国までいくと、黒いドラゴンが出たと、討伐隊が組まれた。

「浮竹‥‥‥‥助けにいくよ」

ドラゴン討伐隊をなんとか倒して、傷ついた体で浮竹の元に向かう。

「浮竹‥‥‥」

「京楽?」

「浮竹、記憶戻っていたの?」

真っ白な美しい青年がいた。

京楽も、人の姿になる。

「京楽‥‥‥俺を助けにきてくれたのか?」

「そうだよ。さぁ、帰ろう、ボクらの故郷に」

「俺は‥‥‥‥この国の王に汚された。お前とは一緒に行けない」

「浮竹」

「俺はもう清らかじゃない。毎晩客をとらされるんだ。もう、お前の知っている浮竹はいない」

「こんな国‥‥‥滅ぼしてやる」

「京楽?」

浮竹は、不思議そうな瞳で京楽を見ていた。

「こんな汚れた俺のために、怒ってくれるのか?」

「決めた。この国を亡ぼす。君を汚した王から殺してやる!」

京楽は、黒いドラゴンとなってその国を滅ぼした。

「京楽」

焼け野原となった大地に、浮竹だけが無傷でいた。

「帰ろう?」

「でも俺は」

京楽は、浮竹に魔法を使い、この王国にいた時の記憶を奪った。

「帰ろう、浮竹」

「ああ、帰ろう、京楽」

浮竹は、微笑みながら、血を吐いた。

「浮竹!?」

「俺はこの国の守護竜だから‥‥‥‥この国がなくなったら、生きていけないんだ」

「そんな、浮竹!」

「最後にお前と出会えてよかった‥‥」

「浮竹ぇぇぇぇ!」

浮竹は、大量の吐血を繰り返して、弱弱しい手で京楽の手を握り返す。

「また、生まれてくるから‥‥‥俺を、探して?」

「浮竹!」

浮竹は、京楽の腕の中でひっそりと息絶えた。

京楽は浮竹の亡骸を手に、住んでいた森に戻った。

浮竹の遺体を埋葬した数日あと、浮竹の墓に竜人賊の卵があった。

京楽はその卵を住処の巨大な洞窟に持って帰り、生まれるのを待った。

「ぴい?」

「おはよう。君の名前は、浮竹十四郎だよ」

真っ白なドラゴンの幼生体を見て、京楽は優しく微笑む。











「京楽、待って」

「浮竹、人里には近づいちゃだめだよ」

「分かってる。京楽、俺はお前だけがいてくれたらそれでいい」

真っ白なドラゴンになれる少年の竜人族と、巨大な黒いドラゴンになれる若い竜人族は、もうドラゴンの姿になることなく、人のこない深い森の中でひっそりと暮らすのであった。

拍手[0回]

オメガバース京浮読み切り短編13

浮竹は、奴隷の歌姫だった。

性別は中性であいまいであったが、オメガだったので少女として扱われた。

誰かに買われるよりも、奴隷のまま歌姫として活躍させたほうが金になるので、浮竹を買う買わないの話はなかった。

「カナリア。もっといい声で歌っておくれ?」

「はい‥‥‥」

浮竹は、籠の中のカナリア。

珍しい有翼族で、背中には金色の翼をもっていた。

浮竹は、浮竹十四郎という名があったが、カナリアと呼ばれていた。とても綺麗な声で歌うから。

今回は、王宮に招かれて、その国の王や王族たちの前で歌った。

カナリアと呼ばれて、浮竹はなんの感情も見せず、ただ綺麗すぎる声で歌った。

「カナリア。君が気に入った。ボクのものにする」

「王太子殿下、困ります!カナリアは我が楽団のもの。お金うんぬんの話では!」

「星金貨2万枚を出そう」

「な、国家予算!?」

「それに、新しい歌姫も手配しよう。それでも文句ある?」

「いえ‥‥‥‥カナリア、お別れだ。王太子に尽くすように」

王太子の名は京楽春水。

アルファで、浮竹はオメガであるが中性なので、ヒートなどは今のところなかった。

浮竹は、ただ主が変わっただけなので、何もかんじていなかった。

「なんと呼べば?」

「ボクは京楽春水。春水って呼んで?」

「春水。俺はカナリア」

「本名、別にあるんでしょう?」

「浮竹十四郎」

「そう。ボクはアルファだけど、君はオメガだよね。でも、ボクは純粋に君の歌声が気に入ったから君を買った。それに婚約者がいるし」

「ああ。俺はオメガだができそこないなんだ。フェロモンも出ないし、ヒートもない。子もきっと産めない」

「それで構わないよ。君の歌声が気に入ったんだから。まぁ、とっても綺麗な外見をしているけどね」

浮竹は、中性的な衣服を着させられて、その日から何故か王太子の後宮に住まうこととなった。有翼族であり、金色の翼をもつ浮竹は目立った。

「俺がなんで後宮に」

「いやね、王宮に泊まるようにするつもりだったんだけど、元奴隷でオメガってことだから後宮にいれろって父の王に言われてね」

浮竹の部屋を、夜に京楽が訪問してきた。

「春水。俺は、歌は歌うが体は売らない。それだけは理解してくれ」

「うん。君はオメガだけどフェロモンでないしね。アルファのボクでも安心して傍にいられる」

浮竹と京楽は、その日京楽が浮竹の部屋に泊まったということで、浮竹は歌姫の寵姫ということにされた。


「京楽様、何か欲しいものはございませんか?」

「ああ、十四郎の‥‥‥カナリアの歌声が聞きたい」

「はい。では命じてきますね」

「あ、一応ボクの寵姫でしょ?ボクが行くよ」

「しかし‥‥‥‥」

「ボクの我儘だよ。いいでしょ」

「仕方ありませんね」

その女官は、京楽と一度だけ肉体関係をもってしまい、京楽の周囲の世話を任されていた。

オメガの女官で、位は低いが貴族であった。

子を成せば、夫人になれるので、女官の父親は京楽が手を出してしまったことを喜んだ。

このままいけば、夫人になる可能性は高い。

後宮には、数人の寵姫がいて、婚約者は別にいた。

京楽の婚約者は隣国の姫君だった。

だが、王族は複数の妻をもてた。正妃が婚約者だとしても、10人くらいは夫人を作れる。

「十四郎、迎えにきたよ。ボクの部屋で歌って?」

「春水」

浮竹は、後宮という狭い空間の暮らしには、奴隷だったせいで慣れているので、金色の翼を羽ばたかせて、京楽の近くに舞い降りた。

「空、飛べるんだ」

「有翼族だからな。希少だから、奴隷狩りにあって、俺は奴隷におちた。でも、お前が買ってくれて奴隷から解放された。ありがとう、春水」

京楽は、浮竹の笑顔に心がぽかぽかする感情を抱いた。

「さぁ、王宮に行こう。ボクの傍で歌ってね?」

「ああ」

浮竹は、京楽の求められるままに綺麗な歌声で歌う。

そんな日々が数週間続いて、京楽は浮竹に骨抜きにされているという噂までたってしまった。

「後宮の暮らしには、慣れたかい?」

「それが‥‥ここ数日お前に求められていると、嫌がらせを受けている」

「何番目の寵姫か分かる?」

「3番目」

「あの子か。顔は綺麗だけど、嫉妬しやすいんだよね。分かったよ、後宮から追放する」

「え」

浮竹が、顔をあげる。

「追放は、やりすぎじゃないか」

「ボクの十四郎に嫌がらせするなら、追放しても当たり前でしょ」

「そ、そうか‥‥‥」

浮竹は、赤くなっていた。

京楽の優しさに触れて、歌い続けている間に、淡い恋心を抱いてしまっていた。

「お、俺は!」

「ん?」

「お前のことが、好きだ」

「ボクも君が好きだよ」

「多分、好きの意味がちが‥‥‥」

京楽に口づけられて、浮竹は京楽を突き飛ばしていた。

「あ、これは」

「ふふ、歌姫の寵姫。ボクの夫人になる気はある?」

「な、俺は女じゃないんだぞ!」

「でも、中性でオメガでしょ?夫人にはなれる」

「そ、それにお前には正妃となるべき女性が」

浮竹は、涙を滲ませながら、京楽に抱きしめられていた。

「婚約は破棄した」

「え」

「ボクは、君を正妃にしたい」

「お、おやすみ!」

浮竹は、逃げるように後宮の自分の部屋に戻った。


どくんどくんと、心臓が高鳴って、浮竹は豪華なベッドの上で枕を抱え込んでごろごろしていた。顔が真っ赤だった。

「明日から、どんな顔してあいつと会おう‥‥‥」

浮竹は、一人で歌を歌いながら、いつの間にか眠りについていた。



「十四郎、起きて?」

「んー、もう少し‥‥‥‥」

「十四郎?襲っちゃうよ?」

「へあ!?」

浮竹が起きると、王太子である京楽が浮竹を起こしにきていた。

「女官は!」

「君の寝顔を見たくて、ボクが起こしにきた」

「はう」

浮竹は赤くなる。

「朝食一緒にとろう?」

「あ、ああ‥‥‥」

浮竹と京楽は、一緒に王宮で朝食をとり、帝王学を学ぶ京楽の近くにいて、休憩時間に歌を歌って癒してあげた。

「十四郎の声はいつ聞いても綺麗だね。今日は一緒に寝よう」

「へあ!?」

「ふふ、何もしないよ?ただ、一緒に寝るだけ」

「う、うん‥‥‥‥‥」

その日、本当に浮竹は京楽と一緒のベッドで眠りについた。

何かされるかもと覚悟していた浮竹だったが、京楽が何もしてこないので安心して眠りについた。

「起きて、十四郎」

「ん‥‥‥春水?」

「君、オメガとして覚醒したみたいだ。フェロモンがすごい。抑制剤飲んで」

「え、あ、オメガとして覚醒!?なんで‥‥‥」

浮竹は、体が熱くなるのを感じていた。

「抑制剤と、念のために首輪つけるね?誰かに番にされると困るから」

「あ、ああ‥‥‥」

浮竹がオメガとして覚醒し、フェロモンを抑制剤でなんとかさせても、京楽は浮竹を手放さなかった。

京楽の傍で歌い続ける歌姫だった。

ある日、ヒートを起こした浮竹に、京楽は。

「一緒に寝よう?君を抱きたい」

「俺はオメガとして覚醒してしまった。ヒートもきてる」

「じゃあ、ボクが番にしていい?」

「俺でいいのか?」

「君をオメガとして覚醒させてしまったのは、多分アルファのボクが君の傍にずっといたからだ。君のこと、本気で好きだし大事にするから、ボクの番になって?」

「ああ」

浮竹は、京楽に全てを委ねた。


「怖い?」

「うん」

「なるべく優しくするからね?」

浮竹は中性だ。男でも女でもない。

そういう場所に使うべきではない、蕾だけがあった。

「ここ、使うよ?」

「んっ」

蕾を撫でられて、浮竹の体が強張る。

「濡れてるね」

「ひあ!」

指をいれられて、浮竹はいい場所をかすめられて、声をあげていた。

「後ろで感じられるんだね。じゃあ、問題ないかな」

「あ、俺は」

「ん?」

「その、誰かに抱かれたことないから」

「うん」

「その、変なになったらすまん」

「ふふ。乱れていいんだよ?ボクしか見てないから。番になろう」

「分かった‥‥‥」

蕾を丹念に解されて、浮竹は涙を快感で滲ませていた。

「十四郎、かわいい。いくよ?」

「ん‥‥‥‥‥ひああああ!」

大きなものに引き裂かれて、浮竹は背をしならせる。

男ではないので、射精できないが、女でもないのにオーガズムでいっていた。

「あう」

「ここ、いいの?この奥」

「あ、やっ」

「いいんだね?」

京楽は、浮竹の奥を抉るように突き上げて、揺さぶった。

「んああああ!」

「子種、いっぱいあげるね?子供ができたら、跡継ぎだ」

「ああああ!」

京楽は、浮竹の未熟な子宮に子種をたっぷり注ぎこんだ。

「ああ‥‥‥‥」

浮竹は、大きくオーガズムでいっていた。

「番にするね?噛むよ?」

「んあっ」

交わりながらうなじに噛みつかれて、浮竹は京楽と番になった。

「ん‥‥‥」

「もっと欲しい?」

「あ、もっと‥‥‥‥‥」

「十四郎は、本当にかわいいね」

「春水、好きだ」

「ボクも好きだよ。ボクだけの歌姫」

一夜を過ごしたが、浮竹はヒート期間がきているので、京楽は浮竹と一週間一緒に過ごした。

「もぉ、やぁ」

「まだ、ヒート期間でしょ?」

「やっ」

京楽は性欲がおおせいだ。

浮竹は、ヒート期間とはいえ元はストイックなので、乱れはするが羞恥心があった。

「ボクの子種、たっぷり受け取ってね」

「ひあああああ!」

一週間交わり、眠り、ヒート期間が過ぎる。


「むう」

「ごめん、機嫌直してよ」

「お前は、やりすぎだ」

「うん。反省してる」

「本当か?」

幸せそうな京楽を見て、浮竹もまぁいいかという気持ちになった。

ヒート期間、快楽の沼に沈んでいた。ヒート期間が過ぎてまともな思考ができるようになったら、交わりすぎだと思ったが、普通のオメガとアルファはそれ以上らしいと言われて、浮竹は納得してしまった。


「君を、正妃にする」

「え」

「ボクはもう決めたよ。父上から王位を来月受け継ぐ。その隣に並ぶ正妃は、十四郎、君だ」

「でも、俺は子が」

「子ができなければ、王族の中から養子をとる。だから、ボクと結婚してください」

プロポーズされて、浮竹は涙を流しながら、それを受け入れた。

「こんな俺で、よければ」



浮竹は、京楽との婚姻から半年後には妊娠し、10カ月後には帝王切開で姫をうんだ。

浮竹は、今でも歌姫として王宮から出てステージで歌ったりしている。

身辺警護は十分にしてあるので、浮竹が攫われるようなことはなかった。

浮竹は、オメガでも国母になれると、オメガの人たちの希望の星になっていた。

「カナリア、万歳!」

「カナリア!!!」

ステージで歌う時、浮竹はカナリアと名乗る。

浮竹がステージで歌うのを、一番いいVIPルームで京楽が聞くのが恒例となっていた。

「じゃあ、歌ってくる、春水」

「うん。新しい曲、楽しみにしているよ」

元奴隷のオメガの歌姫は、今は王妃でありながらアルファの王に歌姫を支えられながら、歌姫を続けるのであった。




拍手[0回]

<<< PREV     NEXT >>>
新着記事
(09/16)
(09/15)
(09/15)
(09/15)
(09/14)
"ココはカウンター設置場所"