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小説掲載プログ
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魔王と勇者 成人式

この世界での成人は、18歳である。

16歳である新勇者はまだ子供、ということになる。

「お菓子をくれなきゃ悪戯しちゃうぞーーー!がおーーーー!」

魔王城で、ハロウィンのコスチュームに身を包んで、浮竹に襲い掛かろうとしていた新勇者を、本物の勇者京楽が阻んだ。

「今何月だと思ってるんだい!ハロウィンなんてとっくの昔に過ぎたよ!」

「俺の故郷では、2月がハロウィンなんだ!」

「知ったことじゃないよ!」

「勇者京楽、お菓子をくれなきゃ悪戯しちゃうぞーー!がおーーーー!」

襲い掛かってきた新勇者の股間を、京楽は聖剣エクスカリバーでチーンと・・・・・。

「のああああああ!!!」

痛みのあまり、もだえている新勇者を窓の外に投げ捨てて、京楽は浮竹に赤くなりながら手をもじもじさせた。

「ねぇ、今日って・・・・・・」

「ああ、バレンタインだな」

「チョコレートは?」

「ここにあるぞ」

浮竹が、座っていたソファーの隣においてあった、でかい包みを取りだした。

30センチはあろうかという、板状のチョコレートだった。

「でかいね」

「それだけ、俺のお前への愛もでかいということだ」

「全部食べたら、絶対太りそう」

「ドラゴンでも倒して、運動すればいい」

「もっと違う運動がいいな」

「なっ」

そう切り返されるとは思っていなくて、浮竹が今度は赤くなった。

「んっ」

京楽が、浮竹の唇を奪う。

「だめだ、この話はR18ではないんだ!」

「いいじゃない、ちょっとくらい・・・・・」

「よくない!」

バキッ。

板チョコで、京楽の頭部を殴る浮竹。

「ああっ、チョコにひびがっ」

京楽が、ひびが入って2つに割れてしまったチョコレートを、かき抱いた。

「ハートマークのやつじゃなくてよかったな」

「うん、そうだね。浮竹のことだから、何するか分からないから今食べてしまおう」

ぱくぱく。

京楽は、バレンタインチョコをでかいのに食べきってしまった。

「げふ・・・・今日は、もう何も食べたくない」

「あれを食べきるか・・・ちょっと、感動した」

「浮竹の愛のこもったものだもの!」

「俺の愛のこもったチョコレートも食え!」

窓の外に放り投げたのに、復活してきた新勇者は、ハロウィンコスチュームのまま、小さなハートマークのちょこを浮竹と京楽に渡してきた。

浮竹と京楽は、一瞬逡巡したが、どうせ新勇者だしと、それを口にした。

「うっ」

「くっ」

「はははははははは!きいただろう、千年かけた呪いのチョコだ!毒は無効化するが、呪いはどうだ?」

京楽の頭に、きのこがはえた。

浮竹の頭には、うさぎ耳がはえた。

「え、あれ?呪われたマンドレイクが生えるはずなのに・・・あれ?」

マンドレイクは、引っこ抜くと悲鳴をあげて、それを聞いた者を死に至らしめる。

薬草などとしてよく取り扱われているが、採集の時は、まず息の根をナイフなどで止めてからひっこぬく。

「あれえええ!?」

にこにこ。

浮竹は、バニーヘアバンドをかぶったような状態で、新勇者の頭を撫でた。

摩擦で、ぼっと火が噴く。それくらい撫でた。

「お礼のいいこいいこ・・・・火が噴くバージョン」

「のぎゃああああああ!俺の大事なづらがあああ!」

銀色の縦巻きロールが腰まであるづらを、摩擦熱で浮竹は燃やしてしまった。

一方の京楽は、ピコピコ動く浮竹の兎耳にばかり目がいっていた。

かわいい。もふもふしたい。今すぐピーーーーーー。

18Rではないので、放送禁止用語は伏せられます。

脳内で、浮竹をピーしていた京楽の頭上のキノコが、にょきっと手足を出して、京楽から分離した。

「ああっ、それは幻の一目ぼれキノコ!」

ツルピカの新勇者は、予備にもっていた黒のアフロのかつらをかぶって、京楽から分離したキノコをじりじりと追い詰めた。

「魔力が極端に高い者に呪いを与えるとまれに生えてくるっていう伝説は、本当だったのか!これを女僧侶に食べさせてピーーーーーーー」

浮竹は、そのきのこを炎で焼いた。

「焼ききのこ・・・おいしそう・・じゅるっ」

新勇者は、幻の一目ぼれキノコを食べてしまった。

「京楽、赤い紐をひっぱってくれ」

「あ、うん」

がこん。

新勇者がいる場所の床に穴があいて、新勇者は落ちていく。

「ああああああ!ああああああ、なんてかわいいんだ、ロクサーヌ!君はロクサーヌだ!一目ぼれなんだ、結婚しよう」

「めええええええ」

暴れヤギにひっついて、求婚する新勇者は見ているだけでは愉快だった。

暴れヤギは暴れに暴れまくった。

それでも、新勇者は愛がどうだのこうだのとわめいていた。

「呪いは、無効化ではなく緩和だからなぁ。ステータス異常は・・・・おきてないな」

「新勇者、ほっといていいの?」

「ロクサーヌと結婚するんだろうさ」

浮竹は、耳が消えないのを気にしているようだった。

京楽は、浮竹の兎耳をさわってみた。もふもふだった。

「呪いは、数日効果が残る・・・・町の教会で、神父に呪いを解いてもらおう」

「そんなのだめだよ!せっかくかわいいんだから!ねぇこのまま僕とピーーーーー」

浮竹は、京楽に丸めこまれそうになっていた。

一方の、新勇者はというと、穴の開いた床で、暴れヤギのロクサーヌとピーーーしてしまっていた。

「あれ、俺は何を・・・何故、下半身が裸!?」

「めえええええええ」

暴れヤギは、雄だった。

でも、契ったことにかわりないので、新勇者を番として認めた。

「めええええええええ!!!」

「ぎゃああああああああ!!!」

ピーでピーでピーーーーーーー。

京楽は生えてきたのがきのこだったので、他に呪いの効果はなかったが、浮竹は数日兎耳のまま過ごすはめになるのであった。

数週間後、暴れヤギと新婚旅行に追い出された新勇者が、ロクサーヌとどうにかして離婚したいと訴えてくるのは、また別のお話。






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エリュシオンの歌声5-3

目覚めると、風呂の中だった。

「やっ」

京楽の指が、浮竹の体内から出したものをかき出していた時に意識が戻って、浮竹は赤くなって縮こまった。

「んやっ」

「そんなに、かわいい声ださないでくれる?また襲っちゃうよ」

「やあ。これ以上はだめだっ」

「うん。僕も、さすがにもう出すものないし。何せ5回はやっちゃったから」

「お前は、性欲が強すぎだ!」

「うん。でも、浮竹はそれをも受け入れてくれるでしょ?」

「んっ」

唇を塞がれた。

「んんっ・・・・」

舌が、浮竹の洗い終わった白い肌をはっていく。

「や・・・・」

「君が僕のものって証はすぐ消えちゃうからねぇ。ねぇ、噛みついてもいい?僕にも噛みついていいから」

「好きに、しろ・・・・・いたっ」

京楽は、浮竹のうなじに噛みついた。

やられっぱなしは嫌だとばかりに、浮竹は京楽の肩に噛みついた。

血が出るほど噛みついたわけではなかったが、お互い痛かった。

それさえ、心地よく感じるのだから、愛とは末恐ろしい。

「しばらくは、sexしないからな」

「そんなぁ」

「お前は、しつこいんだ!おまけに粘り強いし、一度抱かれる側の俺の立場になってみろ」

「じゃあ、君が僕を抱くかい?僕は君が相手なら、それでもいいよ」

「いや・・・・遠慮しとく」

もじゃもじゃの京楽の体に、自分が火を灯されることはあれど、どうこうしたいとは思わなかった。

ぱしゃんと、湯が音をたてる。

「んっ・・・・」

唇を重ね合わせる。

「はぁっ・・・・」

互いの唾液を飲みこんで、湯あたりしそうなので、京楽は浮竹を抱き上げて風呂からあがった。

とろんとした瞳の浮竹に服を着せていく。

「浮竹、おおい、浮竹」

「んー、なんだ」

「こんな場所で寝ないでよ。風邪引くよ」

「んー。眠い・・・・・・」

こっくりこっくりとくる浮竹に苦笑して、京楽はその軽い体を楽々抱き上げて、シーツをとりかえたベッドに横たえた。

「愛してるよ、十四郎」

すーすーと眠る浮竹の手にキスを落として、京楽は浮竹を抱き寄せながら自分も眠った。



「腰が痛い」

「ごめんてば」

浮竹は、自分の腰に治癒魔法をかけた。

こんなことに治癒魔法をかける羽目になるなど、最初の頃は思ってもみなかった。男女の交わりとは違い、同性同士だと、時に傷をつくる。

そんな時でも、治癒魔法が使えるので便利ではあるが、京楽の性欲の強さを刺激しているような気がして、なんともいえない気分になる。

乱暴にされても、浮竹はそれを受け入れる。

京楽も、乱暴といっても優しさはちゃんとあるので、加減はしてくれている。

乗り気でない時、犯されたりしない。

ちゃんと互いの同意を得て、ことに及ぶ。

京楽は優しい。

その優しさに包まれると、少しばかり激しい行為も、つい許してしまう。

「はぁ・・・・・俺、一応神子なんだよな?純潔失っても、神子のままってどうなんだろう」

女神アルテナが、時折二人の情事を見ていることを知らない浮竹と京楽は、今日も元気に一日の始まりを朝と共に祈る。



「こんな世界が・・・・ふふふ・・・・・」

女神アルテナが、腐女子と化していたのは、どうしようもないことだった。

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エリュシオンの歌声5-2

「ああ!」

蕾に入れられた指が、はじめは撫でるように動いていたが、だんだんと動きが激しくなってきて、前立腺をひっかいた。

「んっ」

ビクンと、浮竹の体がはねる。

「今、またいかせてあげる」

「あう」

前立腺ばかりをこりこりと刺激されて、浮竹のものは蜜を垂らしていた。

「先走りがこんなに出てるよ。エッチだね」

「お前、が、そうさせて・・・・・あああ!」

ぐちゃぐちゃと指で入口をかき回されて、浮竹は言葉を発することもできなくなっていた。

「挿れるよ」

「ひああああ!」

めりめりと、後ろを京楽の怒張したもので貫かれて、浮竹は白い髪を宙に舞わせた。

「ちょっと久しぶりだから、君の中、きついね」

「うあ・・・ああ」

ゆっくりと入口付近まで引き抜いて、ぱちゅんと音を立てて最奥まで突き上げた。

「あああ!」

前立腺をすりあげられて、浮竹は段々と思考が真っ白になっていく。

「ひあう!」

ぐちゅり。

結合部が音を立てる。

「あ、あ、あ、あ」

律動に合わせて、浮竹は啼いた。

「奥に出すよ・・・受け取ってね」

「あ・・・や、奥は、奥はだめえぇぇ」

ぱちゅん!

ごりごりっ。

音をたてて、京楽は浮竹の直腸を貫いて、結腸にまで侵入すると、そこで子種をぶちまけた。

「あ、あ、あ、だめぇっ」

京楽は、浮竹の花茎をぎゅっと握って、いかせないことにした。

「やぁ、いかせてっ。出させてぇ」

「かわいくお願いできたら、手を放してあげる」

ちゅっと、おでこにキスをする。

浮竹は、快感でとろけた翡翠の瞳に涙を溜めて、京楽に懇願した。

「あ、あ、あ。奥に・・・俺の奥に出して。京楽のザーメン、全部のませて。胎の奥で孕むくらいだしてっ」

「よくできました」

「あああああ!!!!」

浮竹の前が弾けるのと、京楽の雄が前立腺を突き上げるのが同時。

「あ、ああ、あ、いってるから、もういいから!」

「中からも外からもいけるでしょ?」

「やあっ」

前立腺をしつこくすりあげられて、浮竹は中でもいってしまっていた。

「はぁはぁ・・・・ああ、らめぇ、変になるっ」

ずるりと引き抜かれた京楽の雄は、まだ高ぶっていた。

「や・・・・」

ぐるりと体を反転させられて、背後から貫かれる。

「ひあ!」

ごちゅんと、結腸に入ってくる京楽の雄を、浮竹の内部はきゅうきゅうと締め付けた。

「ああ、きもちいいね。君ももっと、きもちよくなろうね」

ぱんぱんと、体がぶつかり合うほどに挿入を繰り返して、結合部は互いの体液で泡立っていた。

「あ、あ、あ、ひ・・・・・」

突き上げられるたびに、声が漏れた。

二人で住んでいる家なので、声がどこかに届いても問題はない。

「あ!」

ぐちゃりと、前立腺を犯されて、浮竹は背を弓なりに仰け反らせた。

「あああ、いっちゃう、いっちゃ・・・春水っ」

「僕はここにいるよ」

ごりっと音をたてて、体を動かして、浮竹の太ももを肩に担ぎあげると、そのまま入れられたものがごりごりと中を刺激して、浮竹はさらにいってしまった。

「あ、あ・・・・」

薄くなった精液を吐いた後、透明な液体がぷしゅっと流れ出た。

「やあ、おもらし、うあああ、やああ、見ないで」

「潮だね。大丈夫、気持ちよすぎて女の子みたいに潮をふいちゃっただけだから」

「あ、女の子?俺、孕んだ?」

「そうだね。孕んじゃったかもね!」

どちゅん。

最奥にねじ込んで、京楽は熱い熱を最後の一滴まで浮竹の中に注ぎ込んだ。

「あう・・・・あああう・・・・」

やりすぎたせいで、浮竹は意識も朦朧としていて、もはや言葉を紡ぐことができない。

「愛してるよ、十四郎」

「ああ・・・俺、も・・・・・」

かろうじでそう呟いて、浮竹の意識は落ちていった。



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エリュシオンの歌声5-1

滅んだカール公国の唯一生き残った機関である神殿は、エリュシオンの歌声を持つ者の資格である、白い翼を失った浮竹を、それでもなお欲しようとした。

魔法の癒しが絶大なのだ。

死者さえ、場合によっては生き返らせてしまうほどに。

けれど、ソウル帝国とカール公国は戦争をして、ソウル帝国の勝利で終わり、カール公国の神殿はソウル帝国の聖神殿と統合された。

それでも、世界は浮竹の歌声と魔法の才を欲した。

それを抑止したのは、浮竹の実の父親である現ソウル帝国の皇帝だった。

浮竹を自由に。

一時は、浮竹の首に懸賞金をかけていたが、ルキアにエリュシオンの歌声が宿ったことでそれを撤回した。

だが、ルキアは一時宿っただけで、またエリュシオンの歌声は浮竹の元に戻ってしまった。

でも、皇帝はもう浮竹を追わなかった。

愛した亡き皇后との間にできた、双子だった。

貴族や皇族に双子は禁忌。片方を殺さなければいけない。嘆き悲しんだ皇帝と皇后であったが、背にエリュシオンの歌声をもつ者の証である小さな白い翼を見つけて、喜びあった。

けれど、禁忌は禁忌。

浮竹を、皇后の姓である朽木でも、皇帝の姓でもない亡き祖先の姓である「浮竹」を与え、当時ですでに14人目の子であったから、十四郎と名付けた。

そして、隣国でもある小国のカール公国の神殿に預けた。

その神殿で、浮竹はほぼ幽閉されて育ち、毎日癒し手として、1日1回の奇跡を使っていた。

目も見えず、耳も聞こえず、歌を歌うしか口は許されず、歩くこともできない。神子はその能力が高ければ高いほど、反作用で肉体に欠損がでる。

浮竹は、まさに奇跡を起こすために生まれてきた神子であった。

エリュシオンの歌声があるせいで、神子としての能力は歴代でも類を見ないほどになり、浮竹は神殿の奥に幽閉された。

それを、はじめは殺すためにやってきた、風の魂の盗賊団の首領である京楽が、攫って行った。

あげくに、神子を汚した。

神子は汚されて、神の御業を失ったと、ソウル帝国の皇帝は触れ回った。

実際は、京楽に抱かれはしたが、魔法の才もエリュシオンの歌声も健在だった。


浮竹と京楽は、今はソウル帝国の反対側に位置する大陸、ガリア大陸のイリア王国を訪れていた。

国王の后が、重篤な病で、癒せる者に賞金を与えるというその賞金の額に、京楽が釣られてしまったせいでもあった。

「エリュシオンの扉は開かれる」

それは歌声。でも、呪文として形を成して、国王の后を癒した。

国王は目の色を変えて喜び、少しずつ生気を取り戻していく后のために、浮竹を王宮に滞在させた。無論、連れである京楽も一緒に。

病が重篤すぎて、一度では全快に至らなかったのだ。

何度か日をおいて、后に魔法をかける。后は点滴で生きていたが、果物なら喉が通るほどに回復した。

報酬金ももらい、イリア王国を出ようとした時、その癒しの腕に魅了された国王は、浮竹を奪おうとした。

京楽がそれを阻み、浮竹を連れ去って早馬で王宮を去ってしまった。

「ああ・・・なんということだ。あの奇跡の治癒の腕を活かさないなど・・・なんたることだ」

イリア王国の国王は、浮竹を見つけたら、保護するようにと国中に触れをだした。

そんな国にはいられないと、浮竹と京楽は、隣国サルアに移り、山深い里でひっそりと診療所を開いた。

重篤な場合以外、なるべく自然治癒を促す魔法に切り替えたが、それでも浮竹の治癒の腕は近隣でも有名になった。

「ここも、そろそろ無理かなぁ」

「ねぇ、やっぱ診療所なんて開かないほうがよかったんじゃない?」

「でも、苦しんでる人を放っておくわけにはいかない。このサルアは、イリア王国と何度か戦争していて、優秀な癒し手は王都にいるからな」

最後の客を魔法で癒して、その日の診察は終了となった。


「ねぇ・・・」

「んっ」

同じベッドで眠っていると、久方ぶりに、京楽が浮竹を欲した。

明日は診察が休みだ。

もう10日も浮竹にあまり触れていない。

我慢の限界がきて、京楽は浮竹を押し倒していた。

「あっ・・・・・」

すでに、声も耳も目も足も治った浮竹にとって、京楽と睦み合うのは一種の毒に近かった。

だるくなって疲れるのに、病みつきになる。

「んあっ」

背後から抱かれ、口の中に指をつっこまれた。

その指に舌を絡めると、京楽はくつくつと笑った。

「先生が、こんな淫乱だと知ったら、患者さんはどう思うだろうね」

「京楽が・・・・そうさせているんだろうがっ」

仕返しだと、京楽のほうを向いて、肩に噛みついてやった。

「いてて」

「ふん・・・・・あ、あ」

京楽の手が、慣れた手つきで浮竹の衣服を脱がしていく。

「ふあ・・・・・」

舌が絡みあう深い口づけを繰り返して、京楽は浮竹を全裸にしてしまった。

「やっ・・・見るな」

「どうして。もう何度も抱かれてるし、今更恥ずかしがる必要なんてないじゃない」

「それでも、恥ずかしいものは・・・・あうっ」

胸の先端をかじられて、体全体に雷の電撃が走ったような、ぴりっとした感覚を覚える。

すっかり性感帯にされた部分をいじられながら、京楽は浮竹の花茎に手を忍ばせた。

「あう!」

ぎゅっと、上から包み込むように握られた。

それから、全体をしごかれて鈴口に爪を立てられて、浮竹はあっけなく精を放ってしまった。

「ひあ!」

京楽は、潤滑油を手にとると、人肌で温めてから、浮竹の蕾に指を入れる。

「んう」

キスをされながら、指がくにくにと、蕾の周囲を刺激する。

「んっ・・・・」

つぷりと入ってきた指に、眉を顰めながら、浮竹はもうどうにでもなれと、全身の力を抜いた。

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エリュシオンの歌声4-2

浮竹がエリュシオンの歌声を失ったことで、ルキアにエリュシオンの歌声は宿った。

浮竹の故郷であるカール公国は、ソウル帝国の手で滅ぼされてしまったけれど。

皇帝は、浮竹の抹殺の命令を取り消した。

皇帝とて、浮竹の存在に全く愛おしさを感じなかったわけではなかったのだ。

だが、ルキアを愛するあまりに、浮竹を殺してでもルキアにエリュシオンの歌声を継承させてやりたかった。

皇帝は、エリュシオンの歌声を失い、ルキアと白哉と和解した浮竹を、どうこうしようとはもうしなかった。
浮竹は、残酷な父でも愛していたのだ。

エリュシオンの歌声を失った浮竹には、もう帰るべき場所などなかった。

ソウル帝国は生まれた国であるが、今更皇族として復帰しても皇位継承権争いに巻き込まれるだけだ。

女神アルテナは、浮竹と京楽を殺さなかった。

ただ、エリュシオンの地から追放しただけ。

二人は互いの無事を喜んで、聖神殿から二人だけで、京楽の愛馬に乗ってまた旅立った。

もう、皇帝の追っ手はこない。

皇帝は、罪を償うつもりで浮竹を皇子として向かえるために、聖騎士をよこしたが、浮竹はそれを蹴って京楽を選んだ。

だって、愛しているから。

「ららら~エリュシオンの地は神の歌声によって開かれる~。でも天使になんてなりたくない、だって人間だから~♪」

浮竹は、変わらず綺麗な声で歌う。

でも、もうその歌声にエリュシオンの歌声は宿っていない。

エリュシオンの歌声を失ったお陰で、体の欠陥は消えた。エリュシオンの歌声を持っているからこそ、神の子はその代償に目が見えなくなったり耳がきかなくなる。浮竹はその典型的な例だった。

「変わらず綺麗な声だな」

「お前のためだけに歌う唄だ」

そっと、後ろに跨る京楽の柔らかな黒いの髪を撫でて、浮竹はちゃんと見える瞳で蒼い空を見上げた。

「京楽は、盗賊をやめてしまったのだな」

「うん・・・・もうあじとには帰れないね」

盗賊の頭をやめてしまった京楽と、エリュシオンの歌声を失い、神子の資格を失った浮竹。

出会いは最悪だった。

京楽は浮竹を殺すために、神殿を訪れたのだ。生きたまま捕らえてもよかった。
でも浮竹の美しさと儚さに捕らえられたのは、京楽のほうだった。

「さて、これからどうするかなぁ」

黒い愛馬のクロウを走らせて、二人でクスクスと笑って、泉があることろまでくると、馬を休ませるために下りた。

「ほら」

「大丈夫、一人で降りれる」

「だめでしょ」

「わっ」

ずっと歩いたことのない浮竹の足は筋肉がついていないため、まだ歩くには十分ではない。
京楽に以前のように抱き上げられて、浮竹はその背中に手を回す。

浮竹にあった、白い翼はエリュシオンの地から去ると同時に溶けてきえてしまった。元からただの神子の象徴であり、飛べるわけでもなかったし、邪魔だったので逆にすっきりしていた。

「エリュシオンで・・・ずっと、君の声を聞いていたんだよ。ありがと。こんな僕を選んでくれて。君は天使になれたのに・・・女神にたてつくなんて、ほんと命知らずだなぁ」

「だって、俺は天使になんてなりたくなかった。愛する者を、京楽を生贄に捧げて天使になんてなれるものか。それに、天使なんてただ長い時を生きるだけで魅力なんてちっともないぞ。人間として、短いけれど精一杯生きるからこそ素晴らしいんだ」

京楽は、浮竹を包み込んで、優しくキスを落とす。

「これからどうしよう?一応、銀行に預けた2億環金貨があるけど・・・・」

「じゃあ、そのお金を少しだけおろして、旅にでよう。俺を、海の向こう側につれてってくれると以前いっていたな。お前はハープが弾けるとか。俺は歌を歌えるだろう?二人で一人の吟遊詩人として、世界をあてもなく旅するなんてどうだろう」

「お、いいね」

京楽は、浮竹を地面に下ろすと、そこらに咲いていた可憐な花を浮竹の髪に飾った。

浮竹は、長すぎた白い髪を切り、今は腰くらいの長さで切りそろえていた。

「隣の国にいこう。クロウ、馬も一緒に・・・隣の大陸から旅をしよう!」

「ああ!」

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「ほんとにこれで良かったのかよ、ルキア」

「ああ、いいのだ一護」

エリュシオンの歌声を宿らせたはずのルキア。でも、歌声は結局宿らなかった。

宿ったのは数日。

そう、エリュシオンの歌声は歌声を持っている者を殺さない限り、宿らないのだ。

でも、その歌声はエリュシオンの歌声そのもの。違いなど、同じエリュシオンの歌声をもつ白哉でも、判別がつかない。

「一護は、私の傍にいろ」

「わーってるよ」

ルキアの前に跪いて、その手に恭しくキスをする聖騎士の一護。

一人、白哉がそんな二人を見守っていた。

「エリュシオンにいけたというのに・・・・天使にならないとは。さすが、私の半身か」


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「らららら~~~エリュシオンへの扉は~~~・・・あれ?」

浮竹は、船の上で首を傾げた。

失ったはずの、エリュシオンの歌声が、戻ってきている。

あまりの美しい歌声に、船の乗客は拍手喝さいに涙まで流して、浮竹に続きの歌を歌ってくれるようにせがむ。

遠いエリュシオンの地で、天使に囲まれながら女神アルテナは船の上にいる浮竹と京楽を水鏡で見ていた。

「本当に・・・天使にならずに逃げだすとは。人間はかくも愚かで醜く、それでいて魂は気高く美しく儚い・・・・・・」

天使たちが、エリュシオンの地で笑いさざめいていた。

争いの一切ないエリュシオンの地は楽園.。

長い寿命を持つ天使と、女神アルテナが生きる世界。時折魂に神格を宿した人を招き入れ、天使にしたり、神子がよこした聖なる人間を天使にしたり・・・・。

とにかく、エリュシオンの住民は天使か神かのどちらかだけ。

人間のままエリュシオンの地を踏んだのは、浮竹と京楽くらいだ。

「人は人であるから幸せ・・・か。天使になりたくない。神は、人に天使になれるチャンスを与える。誰もが天使を選ぶ・・・でも、二人は違った」

エリュシオンの扉は、今でもソウル帝国の聖神殿の奥にある。

エリュシオンの歌声をもつ者だけが、扉をあけるとされている。
エリュシオンの歌声をもつ資格があるものが、愛しいものを生贄に捧げて扉を開き、天使となるためにエリュシオンを訪れる。

人は、愛する者を犠牲にしてまで神に近づこうとする。

でも、この世界の浮竹と京楽は違った。


風が緩やかに、ハープの音を運んでくる。

「続き、歌いなよ」

「京楽!」

綺麗なハープの音に重ねるように、浮竹は目を瞑って歌い出す。

そう、エリュシオンの歌声で。

でも、もう浮竹のエリュシオンの歌声は、エリュシオンの扉を開くことはない。

背中にあった白い翼は、消えてなくなってしまった。

エリュシオンの歌声はあれど、その資格がないのだ。

全て、京楽を蘇らせるために捨てたのだ。エリュシオンの歌声でさえ、一度は捨てた。

京楽のハープの調べと美しい浮竹の歌声の旋律。

それこそが、本当のエリュシオンの世界、楽園なのかもしれない。

二人の愛の絆が、本当のエリュシオンへの扉なのかもしれない。



海鳥が二人の頭上を羽ばたいていく。

もう、浮竹は籠の中のカナリアではない。自由をえた美しい声で歌う人間だ。

「ららら~~エリュシオンへの扉は開かれた、天使たちは集う、女神の涙を見るために~。ららら~エリュシオンの地は楽園、神の奇跡の大地~。エリュシオンへの扉は今日も開く~~~でもそこから恋人たちは逃げ出す~。手と手を握りあって~~~♪♪」

逃げ出した京楽と浮竹を映す水鏡を消して、女神アルテナは微笑んだ。

そう、人の愛とは無限なのだ。

船の上を、何羽もの海鳥が蒼い空を飛んで横切っていく。
浮竹の歌声と京楽のハープの音を聞いて、そして飛び立っていくのだ。

ふわふわふわ。
舞い降ちる羽毛は、消えた浮竹の翼に似ていた。




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エリュシオンの歌声4-1

女神アルテナ、女神ウシャス、創造神ルシエードと一緒につくったこの世界。

人間のために、選ばれた人間か神の子が、天使になれる世界を造った。それがこのエリュシオン。

楽園と人は呼ぶ。

騒ぎに遠くから、天使たちが集まってくる。

「アルテナ様、この人間たちは」

「いいのです。おいきなさい」

女神アルテナは、浮竹を天使にした。

でも、この浮竹という人間は天使になりたくないという。

そんな人間ははじめてだ。

今まで、このエリュシオンの扉をあけたり、生まれて魂に神格をもちこの地に誘われ、天使となった人間は全てこの女神アルテナに感謝をしていたのに。

敬われ尊ばれてこそが基本なのに、女神に歯向かうなんて。

「天使になんて・・・・誰が、なるものか」

ふわふわと、浮竹の背中の12枚の翼が溶けていく。
女神アルテナが与えた神の力を京楽に与える浮竹。

「ネイ・・・・これが、人の愛というものですか」

違う世界で生きるネイのことを思い出す。人間を作り出した我が妹。人に交じり、人として生きることを選んだ女神、創造神ネイ。

人として生き、そして死んで、また人として生まれ生き続けるネイ。

ネイは、人の愛は無限だと言っていた。女神アルテナには想像もできないもの。
それが人の愛。

「あなたは天使ではなくなりました。エリュシオンにいる資格はありません。消えなさい」

「殺すなら、一緒に殺せ。別れ別れになるのは嫌だ」

なんとか蘇生した京楽を腕の中に抱いて、きっ、と浮竹は女神アルテナを睨んだ。

人の愛は無限だよ。

同じ世界を創造した女神ウシャスの言葉を思い出す。
ウシャスは人が好きだった。アルテナは好きではない。
創造神ルシエードも人は好きではない。

「あなたには分からないんだ、女神アルテナ。人の愛は、神の力なんて必要としない。人は人のままでいいんだ。天使になんて人はなりたいと願わない。だって、人は人なのだから」

透明な、迷いのない翡翠の瞳。

こんな瞳をした神の子ははじめてみる。

そして、自分を否定した神の子も。

女神アルテナは、ざっと手を前に突き出した。

浮竹の生命力と魔力を与えられて生き返った京楽は、浮竹といくつか言葉を交わして、そして今エリュシオンの地にいるのだと分かって、浮竹を庇うように後ろに匿う。

「女神かい・・・・・悪いが、浮竹はやれないよ」

「女神アルテナ。俺は天使にはならない。京楽は生贄ではない。京楽を生贄にして天使になって、何が俺に残るという?愛した人を失って、幸せでいられるはずがないじゃないか。お前は間違っている」

「うるさい。人間が。消えろ」

女神アルテナは顔を歪めて、二人に魔法を放つ。

二人とも消してしまおうか。

でも、二人はお互いを抱きしめあって、とても幸せそうだった。

「消える時は一緒だぞ、京楽」

「うん。ちゃんと歩けるんだ。神の世界だと、目も見えるし耳も聞こえるんだね。歌声じゃなくても言葉を使ってるし」

優しく浮竹を包み込むネイと同じ色彩を持った京楽に、女神アルテナは白い光を向ける。

「消え・・・・ろ・・・・」

女神アルテナの放った魔法が、二人を包み込む。

それでも二人は幸せそうだった。

このエリュシオンにいるどの天使よりも。

ネイ。お前の言葉が分かる気がする。
ウシャス。お前の言葉が分かる気がする。

人間の愛は・・・・。
愛は、神など必要としないのだ。
そう、神の救いなど必要としていない。
それが、人間という存在。

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エリュシオンの歌声3-3

「ようこそエリュシオンの地へ」
扉が開き、浮竹と京楽は中に足を踏み入れるのではなく、吸い込まれていた。

「ここは・・・・」

浮竹は、自分の目が目えることに、そして自分の足で立っていることに、耳も聞こえることに驚き、そしてエリュシオンの歌声を出そうにももう出ないことに気づいて、愕然とした。

体の欠陥は、エリュシオンの歌声をもっている証に、神が奪っていったものだとされていた。

白哉も、同じように実は目が見えない。

魔法で全てを補っている。白哉の魔法は完璧すぎて、目が見えなくても、関係ないほどに補っている。
「ようこそエリュシオンの地へ」
再びそんな声がした。

眩しい世界。

始めて自分の目で見る世界は、真っ白に見えたが、光になれてくると空中庭園のように美しかった。

広い花畑が広がり、奥には森と神殿が見える。

何処か、浮竹が閉じ込められていた場所に似ている。

「あなたは・・・・・・」

美しく微笑む少女に、浮竹は心臓がどくんどくんと高鳴った。

伝承でしか伝えられないエリュシオンの地へ、踏み入ることができた。ここは楽園なのだ。
では、その場所にいる住人は、人ではないだろう。

「私は女神アルテナ」

「女神・・・・」

今でこそ神を信じなくなった浮竹でさえも、彼女が神であることは分かった。あまりに神々しい。

「ようこそ、エリュシオンの地へ。あなたは天使となり、この地に留まることができます。そのために、生贄を捧げたのでしょう?」
ポウっと、女神アルテナは美しすぎる顔のまま、顔色を変えることもなく手を動かすと、ふわりと動かない、意識を失った京楽の体が女神アルテナの前に浮いていた。

「京楽!!」

「忘れなさい、神の子よ。生贄を捧げて始めてエリュシオンへの扉は開く。愛する者を捧げること。それが扉を開く条件。この生贄にもう用はないでしょう?」

「京楽!京楽を返せ!彼は生贄なんかじゃない!そんな、そんなこと、愛する者を捧げるなんて俺は嫌だ!!」

女神アルテナにすがって、浮竹は翡翠の瞳からたくさんの涙をこぼして、はじめて見る京楽の姿を目に焼き付けた。

思っていたとおり、優しそうな青年だった。

「返せ!!」

エリュシオンの地で、浮竹の悲鳴だけが大きく響いた。
「おかしなことを言うのですね。あなたは天使になれるのですよ。人の性(さが)など忘れてしまうのが普通なのに」

浮竹の背中に、12枚の翼が生えていた。

「こんな翼いらない!いやだ、こんな翼なんているか!天使になんてなりたくない!京楽を返せ!」

浮竹は自分の翼で羽ばたき、女神アルテナの頭上にいた京楽の体を攫うと、地面に降り立った。
「京楽、京楽!!」

何度揺さぶっても、目を開けてくれない。

心臓に耳をあてると、鼓動はとまっているし、呼吸も止まっていた。

すでに、死後硬直がはじまっている。

浮竹は泣き叫んだ。

「京楽、俺を守ってくれるんじゃなかったのか!お前は生贄なんかじゃない!天使になんてなりたくない!エリュシオンの地にいたくなんてない!!!」
「ここは楽園、選ばれたのに、なぜそんな我侭を・・・・」

「うるさい!女神だろうがなんだろうが、俺は人間でありたいんだ!俺は、元の世界に戻る!天使になんて、なるものか!!」
浮竹は、全ての生命力と魔力を京楽に吹き込む。
その姿を見て、女神アルテナはため息をついた。

女神アルテナの妹である、ネイのいる世界からやってきたのに。あの世界を作ったネイに似た人間たち。

ネイは女神アルテナの妹にして、創造神。ネイは世界を築きあげて、自分によく似せた人間をつくった。ネイは世界の人間の中に溶け込み、その血族の人間は、エリュシオンへの扉を開くことができる。

「天使に、なりたくないというのね?浮竹十四郎。ネイの血族よ」

これでも、女神アルテナは楽園エリュシオンを創造した女神なのに。

その女神に歯向かうというのか。

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エリュシオンの歌声3-2

(これが海・・・・)

一面に広がる広大な海を、浮竹は見えない翡翠の瞳で見ていた。

魔法によって脳内におくられるイメージは、ただ遠くまで広がる青。波の打ち返すザァンザァンという音は、魔法で拾って直接脳内に送られる。

不自由な体に与えられた神の奇跡。

人々はそういう。でも違う。これは、自分の魔力によって、欠陥の体の部品を補っているのだ。

奇跡でもなんでもない。浮竹が、生きるために必死なって築きあげた自分だけの魔法なのだ。

神は、この世界にいないのだろうか。

(神様・・・・)

蒼い空を見上げて、浮竹は京楽に抱き上げられて、ずっと海を見ていた。

「そんなに海が気に入ったの?」

(ああ・・・潮の匂いは分かる。実感できる。海も、広いのが分かる。世界は、こんなにも広いんだな)

本でしか読んだことのない海。

目は見えないが、書物などは魔法で読み解くことができた。

「そうだよ。この海から船に乗ればいろんな大陸にいける」

(いろんな大陸にか)

「うん。騒ぎがおさまったら、連れてってあげるよ。海の向こう側に」

草原に放った京楽の愛馬である黒い馬は、草を食んでいる。

崖の上から見える海を、浮竹は京楽に抱き上げられてみていた。

(運命と・・・・戦おうと、思う。俺を・・・・ソウル帝国の聖神殿まで連れていってくれ。ルキアと白哉と会って・・・・そして、エリュシオンの歌声を、死とは別の形で譲ろうかと思っている)

「おいおい、帝国にいくなんて、死ににいくようなもんでしょ?それに、どうやって譲れるのさ」

ぎゅっと抱きしめられて、浮竹は京楽の首に手をまわして、その少し硬いウェーブのかかった黒髪を白い細い指で何度も梳いた。

(エリュシオンの歌声が・・・・歌声が、エリュシオンへの扉をあけることができれば。そうすれば、エリュシオンの歌声はもういらないんだ。エリュシオンへの扉は、ソウル帝国の聖神殿にある)

「伝説じゃないのかい。エリュシオンって」

(いや・・・・本当に、存在するんだ。エリュシオンは。神が、作ったとされる楽園・・・・・そこに続く扉がこの世界の、ソウル帝国の聖神殿の奥にあるんだ。ずっと封印されている。過去に何百人のエリュシオンの歌声をもつ者が歌声を響かせても、決して扉は開くことがなかった。でも、きっと、きっと。今の俺にならできる。なぜかそんな確信が湧き上がってくるんだ。きっと開くことができる。そうして、歌声をルキアに譲って・・・・父に許してもらいたい。生きることを。そして、ずっとずっと・・・・)

「どうしたの?」

目を伏せる浮竹。

「変だな。無理やり、連れ去られたのに。体まで奪われたのに。でも・・・・お前が、好きだ。俺を、守ってくれるとお前は言ってくれた。俺を、あの神殿からはじめて解放してくれたお前が、好きだ。可笑しいな。どうしてだろう・・・・お前が、愛しくてたまらない。俺は、ずっと、ずっとお前と一緒にいたい。京楽春水」

ぎゅっと強くしがみついてくる浮竹の長い白髪にキスを落として、京楽は黒い愛馬の名前を呼んだ。

「クロウ、おいで!」

ヒヒーンと高い嘶きを響かせて、黒馬はすぐ近くにやってくる。

その馬の上に、浮竹をまずまたがらせて、そして後ろから京楽が乗る。

しっかりと手綱を握って、黒馬を走らせる。

目指すは、ソウル帝国の聖神殿。

国境を何日もかけて抜けて、二人で長い旅をしていく。

野宿することもあった。

もうカール公国はすでに抜けており、ソウル帝国にはいって2週間は過ぎていた。

「首都が近いね・・・・・」

黒いマントを頭から浮竹に被らせて、京楽は旅を続けていた。

旅費は環金貨をもっている。2億環金貨なんて持ち歩けないので、持ち歩いているのは40枚ほどだが、それでも十分に旅費としては足りた。

浮竹の衣服を買ってやり、美しい外見が目立たないよう外套も買ってそれで包んでやった。

帝国の領土に入ってから、騎士の追っ手は全くこなくなり、旅は順調に進んでいた。

首都を抜けて、さらに進む。
神秘の森といわれる美しい森を抜けた奥に、聖神殿は存在した。

荘厳な建物に京楽は圧倒されたが、見張りの騎士もいないのを不審に思い、剣をしっかりと腰に携え、馬を木に縛り付けてその黒い鬣を撫でると、京楽は浮竹を抱き上げて、馬を降りる。

「なんだ・・・ばかみたいに静かだね」

聖神殿への扉は、内側から開いた。

「ルキア!?」

気配を感じ取って、浮竹が顔をあげると、ソウル帝国の神の巫女姫と名高いルキア姫がそこにいた。

「浮竹様・・・・良かった、無事だったのだな」

側には、ルキアだけの騎士、黒崎一護という少年が控えていた。

ルキアは涙を零して、京楽の腕の中にいる浮竹に近づいて、そっとその手をとった。

「父様が・・・カール公国を攻めると聞いて、まさかあなたの身にまで危険が及んでいるのではないかと」

(それは・・・・ルキア、俺は・・・・)

「いいのだ。何も心配しなくていいのだ。神託が下ったのだ。あなたが、エリュシオンの扉を開けるためにやってくると。神殿を守っていた父様の息がかかった騎士たちは首都に帰した。ここにいるのは、聖職者たちだけだ。あとは、聖騎士のみ。彼は黒崎一護。私の聖騎士だ」

ルキアに紹介され、まだ16、17歳ほどの少年は聖騎士の格好もしておらず、けれど持っている剣は確かに聖騎士のものだった。

「ルキアに危害を加えることは俺が許さねぇ」

「一護。大丈夫だから、控えていてくれ」

「分かった」

奥へ奥へと案内されると、白哉がいた。

「浮竹。兄は、男とかけおちしたと聞いたのは冗談だと思っていたのだが。本当に、そんなどこの馬の骨とも知れぬ男と、行動を共にして大丈夫なのか?」

(白哉)

今は国同士が敵対しているが、かつてはエリュシオンの歌声をもつという、神子、神の巫女としての交流があった。

「兄は・・・・どこかで、見たことあるような気が・・・・まぁいい」

白哉は、京楽に少しだけ興味をもったが、すぐになくなったようで、ルキアの傍にくる。

浮竹は、京楽の腕から降ろされて、車椅子に座らされた。

それを、警戒むきだしで京楽がおしていく。

ルキアと白哉、それに聖騎士の一護と共に聖神殿の奥へと通される。

本当に、他には誰もいないようだ。

他の聖職者は自室で待機しているのだという。

「扉・・・・エリュシオンへの、扉・・・・・」

大きな神話のリレーフが施された扉を見上げて、浮竹は背中の白い翼を広げて、車椅子から飛び立った。
浮竹は、言葉を発していた。歌声ではない、普通の言葉を。

「浮竹!?」

「この扉は、奇跡の力をもっている。浮竹の不自由な体も、エリュシオンの扉が近くにあればなくなるのだ」

ルキアの説明に、京楽が目を見開く。

浮竹は自分の足で立っていた。

浮竹は、扉にそっと手をかけると、目を瞑って、歌い出す。


エリュシオンへの扉は今開かれる
私は人を愛してしまったから
戒律を破りし天使は堕ちていく
神の楽園よ開け 私を自由にするために
神の楽園へと続くエリュシオン さぁ開いてくれ 私は自由
になりたい

白哉が、眉を顰めた。

「美しいが・・・なんて歌詞だ。でたらめな歌ではないか。即興のものを歌っても、エリュシオンの扉が開くはずもない」

白哉はばからしいと、双子の片割れを少しだけ憐れんだ瞳で見たあと、驚愕した。

今まで誰も開くことのできなかったエリュシオンの扉が、かすかに開いたのだ。

「そんなばかな!」

「もう少し・・・もう少し・・・・」

浮竹は歌い続ける。

エリュシオンへ誘いたまえ
神よ人々を導きたまえ
エリュシオンの歌声が楽園への扉をあける
エリュシオンの歌声だけが楽園へと導く

喉から溢れる歌声は透明すぎて、ルキアも白哉も一護も、そして京楽でさえも涙を流していた。

何故か、涙が溢れてくるのだ。

それが浮竹の感情にリンクしてしまったせいだとは、誰も気づかなかった。

そして、気づくと完全に扉は開いていた。



ようこそ、エリュシオンへ

そんな声が聞こえた気がした。

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エリュシオンの歌声3-1

ベッドで眠る浮竹の衣服を整えてやる。

そのまま、浮竹を抱いて同じベッドで京楽も眠った。

朝になって、外の騒がしさと、女将の悲鳴で京楽は目覚めた。

浮竹はまだ疲れて眠っている。

「きゃああああああ!!」

女将の激しい悲鳴に、京楽はベッドの横に置いていた剣に手を伸ばす。

外の廊下で、何人もの足音が聞こえた。きっと、追手だ。浮竹の首級を持ち帰らずに、盗賊団からいなくなったことを、ソウル帝国の皇帝が、京楽が浮竹を連れだして逃げたと判断したのだろう。

殺気を感じた。こういうことには敏感だ。

長年盗賊なんて伊達にはしてない。

「いるな・・・この部屋だろう。始末しろ」

「は・・・・」

バタンと扉が開かれる。

武装した騎士が何人も飛び込んでくるが、室内はもぬけの空だった。

京楽は浮竹を抱き上げて、荷物を背中に背負い、窓からひらりと飛び降りると、馬小屋にいき、吃驚して起きた浮竹を前に乗せて、馬を走らせる。

(京楽!?)

「やあ、大丈夫?昨日は無理させすぎてごめんね。ちょっとやりすぎた」

かぁぁぁと、浮竹の頬が紅くなる。

(そ、それは!)

「平気?」

(なんとか・・・・)

「追われてるみたいだよ。相手は帝国騎士かな」

(帝国・・・・ソウル帝国の皇帝が俺を殺そうとしているという噂は、本当だったんだな)

「君、怖くないの?」

(怖くなどない。だって、死ねばこの呪われた呪縛から解放される・・・)

「解放、なんてさせないよ!君を殺させたりしない。このまま僕と逃げよう!」

京楽は必死になって馬を走らせる。

追ってきた騎士たちと、馬上で剣を交わしあう。

「エリュシオンの扉よ開け!!」

それは歌声であった。

でも、それは呪文でもあった。

ざぁぁぁと、京楽と浮竹の乗った黒馬の後をついてきて、剣で切りかかってくるソウル帝国の騎士たちの馬の足を、地面から突然生えた蔦が絡めとり、馬は騎士たちを振り落とすと、嘶いてその場で静かになってしまう。

「くそ、何をしている!」

「しかし隊長、馬が!!」

隊長の騎士は、馬の足に絡み付いていた蔦を剣で切り裂いていく。

「神子の歌声は奇跡を呼ぶ・・・か。続け!」

全ての馬の蔦を切り裂いて、ソウル帝国の騎士たちは京楽と浮竹を追い始める。

その頃、大分先に進んだ浮竹と京楽は森の中に入り、馬を下りた。

(どうした?)

ひょいっと浮竹を抱き上げる京楽の顔を見る。

瞳はものを見ていないが、魔法で一応の視界は利く。

「いや・・・・宿の3Fから君を抱いて地面に降りたとき、ちょっと足首を・・・」

(見せてくれ)

「大丈夫だって。こういうことには慣れてるから・・・・」

浮竹は、歌を歌い出した。

「ららら~~エリュシオンは楽園、さぁ誘わん神の子らよ、奇跡をエリュシオンの歌声と共に~♪」

それは、癒しの歌であった。

歌声に含まれた奇跡の魔力で、あっという間にはれていた京楽の右足首の痛みはとれてしまった。

京楽は驚いて、浮竹を抱き上げるとくるくると回った。

(な、なんだ!?)

「すごいね君!ほんとに神子だ。奇跡だね」

子供のようにはしゃいで、京楽はぎゅっと浮竹を抱きしめた。

浮竹は、いつの間にか涙を零していた。

「泣かないで・・・・」

京楽が、その体を抱きしめる腕に力をこめる。

(でも・・・・俺は、もう神殿に帰れない。皇帝が俺を始末しようとしたということは・・・俺がこの世界に必要であることがなくなったことでもある。ソウル帝国の皇帝が、俺を神子として神殿に迎えてくれるようにしてくれた。ソウル帝国の皇帝は、俺の・・・・実父だ。ソウル聖神殿の朽木白哉とは双子だ)

京楽は驚いた。

同じ神の子である朽木白哉も、皇族の血を引いているということは知っていたが、まさか父が皇帝とは。

そういえば、よく考えてみれば神の巫女姫である朽木ルキアは第3皇女で、朽木白哉はその兄にあたる。

ソウル帝国の皇帝の名は朽木ではないので、母親が同じなのだと思っていた。

それでは、この浮竹は皇子・・・。ソウル帝国の正当なる皇族の、しかも皇位継承権をもつであろう直系になるのか。

(父は・・・・何度か、俺に会いにきてくれたが、それは皇帝としてだ。そして・・・・・ルキアを愛しすぎて・・・・ルキアにエリュシオンの歌声を譲れと言った。でも、俺にもそれはできなかった。一度宿ったエリュシオンの歌声は、資格を持っている者が他にいても、すでに宿ったものがもっている限り、消えることがない。そう、殺さない限り・・・・父は、ついに俺を本当に捨てたんだな。歌声をルキアに与えるために、殺すために・・・・お前を雇ったのだろう、京楽?)

「君、何処まで知ってるんだい?」

京楽は、ソウル帝国の皇帝から、ルキアにエリュシオンの歌声を与えるために、浮竹を殺せと命令されていたのだ。

カール公国が滅ぼされようと、神殿の者は普通生き残る。

戦争のどさくさに紛れて、エリュシオンの歌声をもつ浮竹を殺すつもりだったのだ。

(さぁ・・・何処までだろうな)

浮竹は
、空を見上げた。

また涙を零す。

「僕は、そのエリュシオンの歌声に囚われたただの盗賊さ」

(京楽?)

浮竹を抱き上げて、休ませていた馬にまたがらせる。

「いったでしょ、君を僕のものにするって。もう僕のものだ。誰にも、たとえソウル帝国の皇帝にも、殺させはしない。絶対に守るよ。守り抜く・・・」

(お前は・・・・愚かだ・・・・懸賞金をかけられたいのか?)

「すでに、騎士団が動いているんだし、もう遅いよ」

(俺を置いていけ)

「そんなこと、できるはずないでしょ」

馬上の上で京楽は浮竹に、ディープキスを繰り返すと、京楽は手綱をさばいて馬を走らせた。

向かう場所はどこだろうか。

遠い異国まで落ち延びようか。

二人は馬で森をかけぬけた。浮竹は、ずっと馬上の上でエリュシオンの歌声を響かせていた。

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エリュシオンの歌声2-2

「あっ」

浮かぶ体をベッドにおさえつけて、京楽は浮竹にキスをする。

舌と舌が絡みあう口づけをかわしながら
、京楽は浮竹を愛撫した。

「あ、あああ・・・・」

はじめて、浮竹の喉から、歌以外の声が漏れる。

(だめぇ、だめえええ!!)

浮竹は、下肢に京楽が手を伸ばすと、びくんと体をはねさせた。

(あ!)

浮竹の胸にキスして、浮竹をうつ伏せにした。

(そんな・・・ううん)

指が侵入してくる。

前立腺を刺激されて、浮竹は涙を零した。

蕾にいれていた指をひきぬいて、かわりに舌をはわせる。

ピチャピチャという水音が響いて、ピクンと大きく浮竹の体がはねた。

(あああ!!)

シーツの端をきつくかんで、見えない翡翠の瞳からいくつも涙をにじませて、浮竹は声もなくテレパシーで啼く。

「いい声。歌声もいいけど、その声もいい。もっと聞かせてよ」

(あ、あっ!!)

ビクンビクンと痙攣する浮竹の体を食らい尽くすように、舌で奥まで抉る。唾液の透明な線が、蕾から京楽の舌と続いていた。

ゆっくりと、二本の指を中に差し入れる。

(は・・・・ぁあ!)

ビクン!

また痙攣する浮竹の体。

「ここ、か」

(やあああああああぁぁぁ!!!)

何度もそこを指で中をかき回してやる。

(やあああ、かき回さないでえええ!!)

グチュグチュと、念のため買った潤滑油をまとった指が出入りする。

「濡れてきた・・・・」

(ううん、ううあ!)

三本に指を増やして、中をぐるりと抉ると、そのまま引き抜き、京楽浮竹の鎖骨にキスをする。

(あ、あ、あ)

トロトロに解された蕾から指がひきぬかれ、京楽は服を脱いだ。

(あ、やめ!あああああ!!!)

一気に引き裂かれて、浮竹はビクンと痙攣した。

「痛くないでしょ。トロトロに溶かしたんだから」

(あ、や、なんか変・・・・・)

「感じてる証拠だよ」

(こんなの間違ってる・・・神様が許してくれない)

「だから、この世界に神なんていないんだよ。いたら、今頃君を助けてるでしょ?」

(んあっ)

ぱちゅんぱちゅんと音をたてて、京楽のものが浮竹の蕾を突き上げる。前立腺をすりあげ、いい場所ばかり刺激していると、浮竹は泣きだした。

(あ、あ、あ・・・もうどうでもいい・・・・お前の子種をくれ)

「いい答えだね。たっぷり注いであげるよ」

ごりっと、直腸を貫いて、結腸にまで入ってきた京楽のものは、何度も最奥をついてから、濃すぎる精液を浮竹の胎の奥で出した。

クニクニと、胸の突起をいじる手が、浮竹をまた快感に渦に浸していく。

輪郭全体を愛撫されて、ピクンピクンと体がはねた。

「感度いいね」

(やんっ)

一度出しただけではものたりないので、処女であった浮竹を自分色に染め上げるように、京楽は浮竹を抱きしめて、キスを繰り返した。

「君を殺さないでよかった。好きだよ。多分、これは愛かな」

(多分なのか・・・俺の初めてを奪っておきながら)

「まだ続けるよ」

(やっ、もうやぁあ」

京楽は、浮竹を騎乗位にすると、ずぶずぶと浮竹は自分の体重で京楽のものを飲みこんでいった。

(あ、あ、あ)

いい場所をこすられて、自然と腰が揺れる。

「いい眺め」

(ばか・・・・)

京楽は浮竹を下から突き上げる。

その激しさに、長い長い浮竹の白髪が宙を舞った。

(や、なんかくる・・・・ああああ!!!)

内部でいきながら、浮竹は射精していた。

(あ、あ、あ、いってるから、いってるから動くなっ)

「僕も君の中でいきたいから無理だよ」

ごりっと、最奥を貫かれて、子種をどくどくと注がれた。

(キスして・・・・)

「いいよ」

浮竹の顎をとらえて、深いキスをする。舌と舌が絡み合う。

京楽は、蛍光ランプの光を少しだけ落とした。

「明るいのは嫌?」

(それは・・・・明るいか暗いか分からないので・・・・・んっ)

カリっと、胸の先端に京楽がかじりついた。もう片方は指で何度も弄っている。

「こうされるの嫌い?」

(そんなこと、されたことなんて・・・)

「それはないだろうね。何せ僕が、君の初めてだから。もう一回、抱いてもいいかい?」

(好きにしろ。もうどうでもいい)

クスリと小さく笑って、何度もちゅ、ちゅと全身にキスしていく。

額にキスしたあとは、首筋、鎖骨、胸元、胸、わき腹、どんどんと下に降りていく京楽の頭を浮竹は手で髪を弄んだ。

「いてて・・・・」

(純潔じゃなくなった・・・俺にはもう、神子でいる資格がない)

「そんなことないでしょ。エリュシオンの歌声をもつ証の白い翼が散っていない」

(俺はまだ、神子でいられるのだろうか」

浮竹は、エリュシオンの歌を歌い出した。

京楽に抱かれながら、歌った。

京楽は浮竹を正常位から犯して、また子種を最奥にたたきつけると、満足したのか浮竹を抱きしめた。

「お風呂に入ろ。僕が洗ってあげるから。中にだしたものかきださないと」

(あ・・・・溢れて・・・・)

浮竹の太ももを京楽の出したものが、伝い落ちていく。

「おっと、タオルタオル」

浮竹を抱きかかえて、京楽は宿の備えつけの大きめの風呂に入った。

「僕が君をを守るから。僕だけを信じて」

(都合のいいことを・・・俺を汚しておきながら)

「責任はとるってば」

(俺はこれからお前といるのか?)

「そうだよ。君と僕は、愛の逃避行をするんだ」

(俺は、お前を愛してなどいない)

「愛してないやつに股を開くの?」

(なっ)

浮竹は、顔を真っ赤にして手で顔を覆った。

(少しは、好きだ)

「少しなの?素直に愛してるっていってよ。愛もないセックスしたわけじゃないつもりなんだけど」

(ああもううるさい!黙ってろ!)

浮竹は風呂からあがると、京楽の手をかりながらベッドに移動して、衣服をきて長い髪の水分をなんとかとって、ベッドでふて寝を始めるのだった。



宿で数日休み、浮竹は京楽に抱かれていた。

(ああああ!!!)

指とは比べ物にならない硬く熱いものが、浮竹の蕾を貫いていた。

なんとか逃れようにも、頭の上で手を戒められていてどうにもならない。

(ううあ!!)

ズクリと、奥まで入り込んでくる熱い熱を無意識に締め付けて、浮竹はシーツに涙を零す。

クチュリ。

結合部から響く水音が信じられない。

(うう、ううん)

ガクガクと激しく揺さぶられる。

最初は体を労わるように優しく、次に壊れそうなくらいに激しく。

何度も奥まで貫かれ、そのたびに浮竹の長い白い髪がシーツを泳いでいく。

(ああ!!!)

うつぶせだった体を仰向けにされて、ズルリと中から京楽が出て行く感触に身震いした。

(あ・・・・)

京楽は、浮竹の手の戒めを解いてやった。

浮竹は、必死で京楽の首に手を回した。

こんな。
こんなことに、なるなんて。

「どうしてほしいの?いってごらんよ」

(そんな・・・むり・・・・あう!)

スプリと、熱でまた犯された。でも、またすぐに出て行く。

(あ・・・・)

ブルリと全身を震わせて、浮竹は涙を零す。その涙を京楽は吸い上げる。

(あ・・・・ぬか、ないで。抜かないでくれ・・・・)

「いい子だね」

(うあああ!!)

激しく突きいれられ、そのまま挿入を繰り返されて、何度も何度も揺さぶられる。

中で京楽がはじけたと分かった後も、まだ揺さぶられ続けて、浮竹は翡翠の瞳で京楽の瞳を見つめた。

実際には見えないけれど、第6感が発達しており、ぼんやりと瞳に影が映り込む。そして、魔法を通して京楽の言葉を脳にとりこむ。

キスを繰り返しながら、浮竹はガクガクと足を振るわせた。

(あ、だめぇ!!)

ビクン弓なりに背がのけぞり、今までよりも一番のオーガズムの波に襲われる。

すでにもう精液を出し尽くしており、内部だけの快楽でいってしまいそうになっていた。

長いオーガズムの波に、浮竹は涙を零した。

(あ、あ・・・・)

「いっちゃいなよ」

(どう、やって・・・・・)

「僕の名前を呼んでいればいい。自然と体がなれてくるよ。いけるようになる」

(あ、あ、春水、春水!ああああ!!)

足を肩に抱えられ、また奥に入って抉ってくる京楽の背中に爪をたてた。

まただ。

また、
大きな波に攫われるような感触。

(ああ、春水!!)

「十四郎・・・すごく・・・いいよ」

(うあーー!!)

ビクンビクンと震える全身。そのまま、浮竹は胎の奥に京楽の子種を注がれながら、ドライのオーガズムでいってしまった。

達するという行為に、慣れ始めていた。

ひくつく浮竹の内部から引き抜くと、浮竹はぐったりしていた。

「どうしたの?」

(お前の性欲が強すぎる・・・・初めてから間もないのに、激しすぎる)

「でも気持ちよかったでしょ?」


(それは・・・・・)

浮竹は赤くなって、プイと顔を背けた。

浮竹は、心のどこかで神に救いを求めていた。

神様はいないのだろうか。

この世界の何処にも。

神話はあるけれど、誰も神の姿など見た者はいないのだ。

 

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エリュシオンの歌声2-1

「名前は?」

(浮竹十四郎。そういうお前は?)

「京楽春水。盗賊団、風の魂のリーダーだよ」

(そうか。俺を殺してくれ)

「・・・・・・君に一目ぼれした」

(は?)

「天使だね。どう見ても天使」

(何を言っているんだ)

京楽は、浮竹を抱き上げた。

「軽いね」

(いや、重いだろう)

「軽いよ。鳥みたいだ。翼が生えてるから、天使かな」

(エリュシオンの歌声をもつ者は、皆白い翼をもつ)

「やっぱ君、天使だね」

浮竹の脳に響く声だけで、心が洗われていくような錯覚を覚える。

(神子や神の巫女は、エリュシオンの歌声をもつから白い翼があるんだ)

「君が気に入った。一目ぼれだ」

(何故だ?)

「見た目も可愛いし綺麗だけど、世界を知らない君がすごく愛しく感じる」

(俺は、お前に会ったばかりだぞ)

「うん。でも僕を好きになって。ねぇ、いいでしょ?」

(誰かを好きに・・・・なれるのか?)

「なれるよ。僕は君が好きだよ、十四郎」

(京楽・・・・)

「春水って呼んで」

(春水・・・なんだろう。胸のこの辺りがぽかぽかする)

浮竹は、ぎゅっと心臓のあたり服を手で握りしめた。




盗賊団の仲間には、首級をあげたので先にアジトに帰るように命令した。

誰もがそれに従った。

まさか、リーダーが神子に魅入られているなど、誰も信じないだろう。

京楽は強い男だ。魅了の呪文さえ通用しないほどに、精神も強い。どんな美女が相手でも、彼を篭絡することはできないだろう。


それが、目も耳も足も不自由な、同じ同性の神子に魅入ってしまうとは。

浮竹を抱き上げて、外に出ると、浮竹は空を見上げた。
見えない翡翠の瞳で、空と太陽を映しこむかのように。

(ああ・・・・空って本当に蒼いんだろうな・・・太陽の光は眩しいか?白にしか感じれない)

「ああ、太陽の光は眩しいよ。じかに見ることなんて、真昼だとできない」

(そうなのか?そういえば、朝、昼、夜があるのだな。あの空間には何もないから俺は始めて、外の昼を体験できた。嬉しい。もう、何もいらない。さぁ、俺を神の元へ・・・・)

そっと、手を胸の前で組み、祈る浮竹をを地面に下ろして、京楽は剣を振りかざした。

(さようなら、会えて嬉しかった、京楽)

ザシュ。

それは、浮竹を縛るようないくつもの衣を切り裂いていた。

(?)

「あー。なんてざまだろうね、この僕が・・・・」

京楽は、激しく浮竹を胸にかき抱いた。

(何を・・・・)

「僕のものになりなよ」

(お前の、ものに?でも俺には神が・・・・)

「そんなもの、忘れさせてあげる」

京楽は、用意していた馬に浮竹を乗せ、後ろから手綱をひいて馬を走らせ、兵士が配置されていない国境の森を抜けると、そのまま馬を走らせて隣国に入った。

「ららら~エリュシオンへの扉は今開く~神よ我に光あれ~」

馬の上で、浮竹はエリュシオンの歌声を放つ。

それは透明で、誰をも魅了する歌声だった。

町につくと、浮竹を下ろして宿をとった。

背中の白い翼は魔法で隠せるらしく、京楽の手に抱き上げられて、浮竹は宿の部屋の中に入ると、また首を傾げた。

(どうして・・・早く、殺してくれ。お前の役目は、俺を殺すことじゃないのか)

「あー。あーまぁ、そうだったんだけどね。なんだかねぇ。神の子、朽木白哉みたいなのをずっと想像してたんだよ。なのに・・・君はどうだい。目も見えない、耳も聞こえない、歌うことしか許されない、歩くこともできない。あげくに神殿の外に出たのも始めて。黄金なんて見た目はいいが、ベッドの柵に足枷で繋げられて・・・・まるで囚人みたいな扱いじゃない。幽閉でしょ、あれは」

(でも、皆はそうしないと俺が逃げ出すと・・・)

「無理でしょ。歩けない、おまけに背中の翼も空を飛べないのに、どうやって逃げ出すんだい」

ベッドにとさりとおろされて、浮竹は困ったように微笑んでから、ポロリと涙を零した。

(だって、だって、だって!神様が俺にはいるから!!)

「いないでしょ、神なんて。見えるのかい?君の側にいてくれるのかい?君をを守ってくれるのかい?」

(だって・・・・・エリュシオンの歌声が俺の全てだから・・・・)

「僕のものになりなよ。エリュシオンの歌なんて歌えなくなってもいい。僕が君を守る。僕のものになっちゃいなよ・・・」

窓からは、すっかり日も暮れて綺麗な星空が見えていた。

浮竹の唇を自分の唇で塞ぐと、抵抗はなかった。

(神様が・・・・)

「今は僕のことだけ考えてよ」

ぐいっと、また深く口付けた。

(あ・・・あああ)

歌うことしか許されない浮竹の喉から、言葉にならない声が漏れる。

(ダメ、俺は、男・・・・こんな見た目でも、男だから・・・・・)

浮竹は京楽の髪に手をいれる。

抵抗というより、身をゆだねているに近い。

(だめだ、だめ・・・・俺は)

「なんだい。死ぬ覚悟があるくらいなら、これくらいどうってことないでしょ?嫌なら抵抗しなよ」

(俺は・・・神子の男で・・・女ではない・・・・)

服を次々と脱がしていく、京楽の腕が止まる。

「別に、男同士でもこの世界じゃ珍しいことないじゃない。娼館に色子もたくさんいるし」

ふるふると、浮竹が首を振る。

平らな胸を撫でると、浮竹がかすかに震えた。

「こわい?」

(こわい)

自分のものにすると一度決めたら、なんでも自分のものにしてきた京楽だ。

「男相手でも僕は大丈夫。男娼買ったこともあるし、平気だよ、安心して」

平らな胸に口付けて、そのまま下の服も脱がしていく。

浮竹は京楽にしがみついて、息を殺していた。

(ああ、あ、あ)

舌が絡み合う口づけを交わしあう。

浮竹はこういうことは初めてのようで、軽いパニックになっていた。

(やっ)

「優しくするから」

(でも、こんなの神様が・・・・)

「神様なんていない。それがこの世界だ」

(ああ、あ)

途中で立ち寄った雑貨店で、潤滑油を買ってきていた。浮竹を自分のものにすると決めたので、少しでも負担減らすためだ。

(やあっ)

胸の先端をつまみ、衣服を全部脱がすと、同じ男のものとは思えない白い肌があった。

そこに、所有の証を刻んでいく。

(京楽・・・・・・!)

「春水だ。春水って呼んで。僕も十四郎って呼ぶから。君を一目みて好きになったんだ」

(そんなの、何かの間違いだ。こんな見た目だから・・・)

「君の中身も気に入ってるよ」

(しゅ、春水・・・)

「なぁに?」

(はじめてだから・・・優しく、してくれ)

「どうだろうね。僕は君が欲しくてうずうずしてる。好きだよ、十四郎」


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エリュシオンの歌声1-2


京楽は、剣を腰の鞘にしまうと、神殿の奥へ奥へと入っていく
一番奥に、閉ざされた大きな扉が見えた。

神話のレリーフが施された扉の鍵には魔法がかかっているようで、力でおしても、剣で傷つけようとしてもびくともしなかった。

「だから、鍵ね・・・・まるで、籠の中の小鳥じゃないの」

この中に、神子、浮竹十四郎はいる。
人々の前に姿を現すのは1ヶ月に一度の神祭の時だけ。あとは、いつもこの部屋の奥にいるのだという。

鍵を穴にいれる。
カチャリと音がなる。

京楽は、扉をあけて中に入って息をのんだ。
扉の奥には、きっと広い部屋が広がっているのだろうと思っていた。

確かに、広かった。広すぎる。

そこは、空中庭園だった。

さわさわと風に揺れる緑。小鳥たちの歌う声。花畑と草原。

中央には噴水があり、浮かぶ小さな岩からも水がたえず零れ落ちていく。

「なにこれ・・・・」

太陽が二つ、天空に浮かんでいた。

「夢でも見てるのかな僕は・・・・」

信じられない光景に、自分の頬をつねると、確かに痛みがした。

「らららら~~~」

綺麗な綺麗な、とても美しい歌声が京楽の耳を打った。

その歌声を聞いた瞬間、京楽は涙を流していた。

「なんなんだ・・・・」

エリュシオンの歌声。神の楽園へと導くという、神の歌声。
神に愛された寵児。

「ららら~~~」

さぁぁぁと、風が鳴る不思議な空中庭園の奥に、天蓋つきのベッドがあった。

歌声は、そこから聞こえてくる。

咲いている花を踏み潰して、近づいていく。

(誰だ?)

京楽は、何重もの深いヴェールに覆われたベッドの中に、動く人影をみて足を止めた。何より、頭の中に直接声が響いてきて、彼はびっくりした。
 
(神官長か?それともシスター長のメリア?それとも巫女の誰か?イリアか?昨日会いたいって聞いたから・・・・)

また、綺麗な歌声が聞こえてくる。

「ららら~~神よエリュシオンへの道を~♪」

声と、頭に直接響いてくる声は同じだった。

(今日の患者さん?)

「違う。僕は君を・・・・・・・・」

京楽は、逡巡気味に浮竹に剣を突き付けた。

(なんだ、これは?)

「剣だよ・・・見たことないの?」

(剣?見たことないな)

ふわりと微笑む姿は、とても美しかった。

神の寵児、神子。

本当に、その通りだ。

真っ白な足元まである長い髪をいくつにも束ね、たくさんの装身具を飾りあげてもなお色褪せない美貌。

女神だ。

そう、これはまるで女神。

いや、天使か。

浮竹の背にある大きな白い翼を見て、京楽は剣の切っ先を下げる。

「君、こんなところに一人で住んでるの?」

(そうだ。俺はここで暮らしている。それが神子の定め。外には月に一回しか出れない。ここは俺を閉じ
こめておく偽りの楽園)

「君・・・神殿の外にでたことは?」

(ない。神祭も神殿の中で行われる。神殿から、出たことはない。一度でいいから、本当の空と太陽を見てみたい

すっと、人工の空を見上げる浮竹は、哀しそうな顔をしていた。

とても綺麗なのに、なんて哀しそうなんだろうか。

「なんで、しゃべらないの?」

(禁じられているからだ。歌を歌う以外で、声を出してはいけないんだ)

「それで、テレパシーみたいに直接相手の頭に話しかけるのかい?」

(そうだ。奇跡の力と人は呼ぶ)

「奇跡ねぇ」

京楽は、これから殺す相手、浮竹と言葉を交わしてしまった。

その奇跡の歌声を聞いてしまった。

「なぁ、なんでその翡の目・・・さまよわせてるんだ?」

空を見ていたかと思うと、視線をさまよわせる浮竹に、京楽が首を傾げる。

(目が見えないから)

「はぁ?」

(この翡翠の瞳はものを見ない。魔法をとおして、第6感を通しておぼろけに色と形を教えてくれる。耳も聞こえない。言葉だけは・・・歌の形で、出すことを許されている。お前の声も、魔法で直接脳にとりこんでいる)

「そんなんで、本当に神子なのかi?」

(ああ・・・・あ、まってくれ)

離れていく京楽を追おうとして、浮竹はベッドから転がり落ちた。

「おいおい、何してるんだい。一応魔法で視界はなんとかなるんでしょ?」

浮竹は、静かに京楽の顔を見つめた。

(生まれつき、歩けない・・・・)

「ええっ・・・」

これのどこか、神の子だというのか。

エリュシオンの歌声だけをもつ、綺麗なだけの人形のような天使だ。

声を出すこともできず、目も見えず、耳も聞こえず、あげくに自分の足で歩くこともできないなんて。

どこが、神に愛された寵児だというのか。見た目だけではないか。

(翼も・・・・飛ぶことが、できない。この体は欠陥だらけだ。でも嬉しいな。俺を、連れ出すためにきてくれたのだろう?)

期待で頬を薔薇色に染める浮竹に、京楽の胸が締め付けられた。

「僕は、君を・・・・」

(ああ、殺しにきたんだろう?でも、殺す前に外に連れて行ってくれようと思っているんだろ?)

京楽は、言葉を失った。

「君、死ぬこと怖くないのかい?」

(怖くない。神の御許にいけるのだから。この呪縛から解放される。自分では死ねないんだ。早く外に連れて行って、そして殺してくれ。もう生きていたくない。カナリアのようにこの籠の中で囀ることしかできない俺は、もうこんな生活嫌なんだ)

京楽は、気づくと浮竹の桜色の唇を自分の唇で塞いでいた。

(ん・・・・・)

甘い味。

バサリと、浮竹の背中の翼が広がる。

浮竹の足首には、金色の足枷がしており、それはベッドの柵に繋がっていた。長い金色の鎖が見えた。

それを見た京楽は、剣を振りかざした。

この神子は、本当にここに閉じ込められているのだ。籠の中のカナリアだ。

パキン。

金属的な音をたてて、浮竹を縛っていた鎖がとれる。

(・・・・・・・・本当に、連れて行ってくれるのか?)

浮竹は、自分の鎖が断ち切られたことに、涙を流して京楽にしがみついた。

背の白い翼は小さくなって、折りたたまれている。

「連れて行ってあげるよ。外の世界に」
 

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エリュシオンの歌声1-1

エリュシオン。

神がつくりし、死後の英雄たちの魂が眠るという楽園。

そこにたどり着けることができれば、どんな望みでも叶うという。

エリュシオン。

人はそれを夢見て、エリュシオンの歌声をもつ神子や巫女を崇める。

エリュシオンの歌声だけが、人々をエリュシオンの地へと誘ってくれるという。それはただの伝承。でも、実際にこの世界にエリュシオンの歌声をもつ神子はいる。

小国カール公国が抱える、エリュシオンの歌声をもつ神子。

名は浮竹十四郎。

隣国の大国、ソウル帝国が抱えるエリュシオンの歌声をもつ巫女姫、皇族の血をひく第三皇女でもある朽木ルキア。
同じソウル帝国の神殿にいる神子、ルキアの兄である朽木白哉。

世界には、三人のエリュシオンの歌声をもつ神の子、神の巫女が存在する。

浮竹十四郎は生まれはソウル帝国で、本来ならソウル帝国の神子になるはずであった。

だが、事情がありソウル帝国から赤子のときに連れ出され、ソウル帝国の属国でもあるカール公国で育ち、カール公国の神殿の神子となった。

もともと、ソウル帝国の神殿にいる朽木白哉とは双子であった。朽木白哉は4大貴族出身で、皇族の流れも組んでいる。

皇族や上流階級の貴族にとって、双子は吉凶の証である。

本来ならどちらかを生まれた時に殺すのだが、エリュシオンの歌声を授かった証である小さな翼が浮竹にも白哉にも、両方にあったのだ。

だから、浮竹は朽木の姓を名乗らず浮竹という姓を与えられ、属国であるカール公国の神殿の神子となる運命を辿った。

ルキアは、エリュシオンの歌声をもっているはずなのに、その歌声はエリュシオンにまで届かない。

世界でただ二人、朽木白哉と浮竹十四郎だけが、エリュシオンに歌声が届いた。

この世界にエリュシオンまで歌声が到達する者は、古代から二人までと決められている。

ルキアは、背にエリュシオンの歌声をもつ証である白い翼を持ちながら、その歌声はエリュシオンに届かない。

ルキアの兄である白哉は、ルキアを溺愛していた。

巫女姫でありながら、なぜ愛する妹はエリュシオンの歌声まで到達できないのか。十分に美しい歌声をもっているではないか。日々募る焦燥。

ルキア姫は心広く、自分がエリュシオンの歌声に到達できないことなど、気にしなかった。

だが、帝国の神殿の神の巫女姫という地位も、このままでは追われてしまう。

エリュシオンの歌声に届かなければ、神の巫女姫ではなく、ただの巫女姫だ。

そんな時だった。


カール公国が、属国から解放運動を続け、ついには大国ソウル帝国を敵に回した。
戦争が勃発したのだ。

カール公国を根絶やしにせよ。

ソウル帝国の皇帝がとった判断は、とても厳しいものだった。他にもいくつもの属国があるので、反乱をおこした国を見せしめのようにする必要があった。反乱をおこせば、お前たちの国も滅びるのだと。

皇帝は、カール公国の反旗をよいことに、カール公国の神殿の巫女や神官たちの抹殺も兵士たちに命令した。だが、兵士たちは信心深く、神殿の巫女や神官を殺すことに躊躇いをみせ、命令にはとても従えないと皇帝に直訴した。

それはそうだろう。神殿の巫女や神官は、他者を癒す不思議な魔法を使う特別な存在だ。
聖職者は誰にとってもありがたい存在だ。それを殺せだなんて。

浮竹十四郎もまた、エリュシオンの歌声でいくつもの奇跡をおこしてきた神子。他の聖職者たち・・・巫女、神官、シスターと一緒になって、神殿を訪れる難病や怪我をした者をたくさん救ってきた。

同じように、ソウル帝国でもそれは行われているが、ソウル神殿は寄付した者を優先しており、だから寄付するお金をもたぬ者はカール公国の神殿へと流れる。

それもまた、皇帝にとっては気分のよいものではなかった。

かのエリュシオンの歌声をもつ、神子である浮竹十四郎を亡き者にせよ。

そうすれば、エリュシオンの歌声は、神の巫女姫である、愛しい自分の娘であるルキアに100%宿る。
世界には二人しかいないエリュシオンの歌声をもつ者。その資格である白い翼をもつ愛娘に、エリュシオンの歌声を宿らせてやるのだ。

それは、皇帝が秘密裏に下した命令であった。

抱えている騎士団などに命令しても、神子を殺すことなどできないだろう。

騎士団も兵士たちも皆、どれだけエリュシオンの歌声をもつ者の貴重さと尊さ、そしてその神聖さを知っているのだから。

ソウル神殿には、朽木白哉という、高潔で尊く見目麗しい神子がいる。

それを知っているソウル帝国の人間には、たとえ皇帝の命令であろうとも、神に愛された神子を殺すことなどできないだろう。

だから、皇帝は荒くれ者として有名な、世界中を荒らしまわっている盗賊団「風の魂」のリーダーを呼び出し、彼と彼が抱える盗賊に浮竹十四郎の抹殺を大金をはたいて依頼した。

浮竹十四郎は、神子ではあるが肺の病を抱えており、病弱で他者を自分の命が燃え尽きでも構わないという理念で癒しているような存在だった。

浮竹十四郎は、真っ白な長い髪に、翡翠の瞳をしていて、見目麗しく、双子である朽木白哉とは
全く似ていなかった。

二卵双生児であった。

そんな浮竹十四郎を抹殺せよと依頼を受けた、「風の魂」のリーダーは京楽春水といって、元上流貴族であったが、ふらふらと遊び歩いて親から勘当されて、流れ者になっていた。

「すごい金がまいこんできたよ。前金だけでも、20億環だよ。殺して首をもってくれば残りの20億環ももらえる。そうすれば、盗賊なんて稼業とはおさらばだ。一生全員贅沢して暮らせる。前科もみんな、金さえあれば裁判官を賄賂づけにして取り消せる。なんたって、僕らは盗みはするが殺しはやってきてないからね」

リーダーである京楽春水は大金を前に、盗賊団の仲間たちと高級娼婦のいる娼館を何日も借り切って、酒や女に溺れた。

盗賊団の数はリーダーを含めて20人。一人一億環の配分だ。殺して首を皇帝に届ければ、残りの20億環がもらえる。2億環もあれば、一生遊んで暮らせる。

何せ、払われるのは金貨だ。環金貨。

普通の紙幣の30倍ほどの価値はあるだろうか。

40億環金貨。
目も眩むほどの大金だ。
2億環金貨あれば、貴族の称号を買ってそのまま贅沢に暮らせるほどだ。

盗賊団、風の魂は、皆、残りの20億環金貨を貰うために、必ず浮竹十四郎を殺すことに乗り気だった。

そして、ソウル帝国を後にして、剣などを持って、カール公国神聖神殿へと乗り込んだのであった。

殺しはしない。
それが風の魂の盗賊団の基本であった。だが、今は殺しをしようとしている。

すでにカール公国とソウル帝国は戦争をしており、罪もない国民たちも戦火に巻き込まれている。

「盗賊団だー!」

「きゃあああ」

「うわあああ!!」

すでに、カール公国は周囲をソウル帝国の兵士に囲まれて、逃げ場はない。神殿の聖職者たちは、それでもまさか神殿まで汚すような真似はしないだろうと誰もが信じていた。

だが、現れたのは盗賊団。

騎士団や兵士たちではない。

盗賊団に襲われたことにしてしまえば、神殿も帝国の皇帝を責めることなどできない。暴力に慣れぬ聖職者たちは、神の名を呟いて逃げ惑うだけだ。

逃げ惑う神官やシスター、巫女をかたっぱしから捕まえて、手足を縛って教会の一つの部屋に集めた。

「ねぇ、神子はどこだい?」

探し回っても、神子はどの部屋にもいなかった。

京楽が剣の切っ先を神官長に向けると、彼はただ神の名を呟くばかりだった。

「きゃあああああ!!」

流石盗賊団とあって、行いは悪い。

早速集めた巫女やシスターを犯そうとしていく仲間に、京楽は何の表情も浮かべぬまま、もう一度神官長に剣を向けた。

「このままだと、巫女やシスターたちが全員目の前で犯されるよ?いいのかい?」

神官長は、ガクリとうなだれて、魔法を唱えた。

神殿の聖職者たちが使う魔法は癒しの魔法。人を傷つけるものはない。

ポウと、京楽の前に金色に光る鍵が現れた。

「この鍵で・・・・神殿の一番奥の扉を開けば、そこに神子いる。神子をどうするつもりだ!」

「殺すんだよ」

「な・・・・エリュシオンの歌声をもつ、奇跡の存在だぞ!神の子なんだぞ!それを殺すというのか」

「そうだよ。君ら全員殺せってほんとはいわれてるんだけど、まぁ殺しは趣味じゃないんだ。普通は女は犯してから奴隷として捕らえてうっぱらうんだけどね。まぁ、命があるだけめっけもんでしょ。今回は、大金もらって高級娼婦と何日もいい夜を過ごしてるからね。無傷を約束するよ。そのかわり、これが嘘だったら、女たちは全員犯して奴隷としてうっぱらうよ。いいね?」

ギラリと、銀色の光が京楽の目にも映っていた。

ぶるぶると震える女たちを盗賊団の仲間に命令して、一箇所に集めた。

飾っている宝石などは奪っていく。

「いいね。嘘だったら・・・・」

「嘘ではない。だが、会いにいくのはあなただけにしなさい。神子、浮竹十四郎様に会えるのは一日に一人だけ。その鍵をあける資格が、果たしてあなたにあるかどうか・・・」

「どういうこと?」

眉を顰める京楽に、仲間が耳打ちする。

「神子は会う者を選ぶんだそうだぜ」

「ふふ、力づくでも会ってみるさ」

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オメガバース京浮短編

京楽春水とは、半ば幼馴染であった。

山本総隊長のもとで、統学院に入るまで、浮竹はその身柄を両親から預けられていた。

体がとにかく弱い子で、霊圧は恐ろしいほどにあるのだが、薬代がかさんで借金を背負うはめになった浮竹の両親が、浮竹を捨てることなく暮らせていけるために、山本総隊長の元に預けたのだ。

山本総隊長は、浮竹にいろんなことを教えた。

病弱だが、これほど霊圧があり、ミミハギ様を宿しているお陰で死ぬことはないだろう浮竹の、遊び相手として京楽を招いた。

その日は、浮竹はいつも通り女の恰好をしていた。

浮竹の両親が、浮竹が女の恰好をすることで、命が助かるようにとの呪(まじな)いっであった。

「やぁ、君が浮竹十四郎?女の子なのに、十四郎って変な名前だね」

「俺は気に入っている」

京楽にとって、その女物の着物をきた、まだ13かいくばくかの少女は美しく見えた。

白い髪に翡翠の瞳をしていて、そしてかすかに香るフェロモンから、少女がオメガであると分かった。

「ねぇ。君さえよければ、将来僕の妻にならない?上流貴族だから薬代も心配ないし、大切にするよ」

「出会ったばかりで口説くのか。最低だな」

京楽と浮竹の出会いは、最悪なものだった。


けれど、日を重ねて遊んでいるうちに、お互い親友になっていた。

ある日、浮竹は自分が男であると打ち明けた。

その時の京楽のショックの受けようは、笑ってしまうほどだった。

でも、京楽は強かった。

「浮竹、君オメガでしょ。僕と将来結婚しよう。僕はアルファだ。一目ぼれなんだ。男とかそんなの関係なしに、純粋に君が好きなんだ」

もう女物の着物を着ることのなくなった浮竹にそう告白すると、浮竹は真っ赤になって顔を合わせてくれなかった。

16になっていた。

浮竹は、ヒートを起こした。

京楽は、当たり前のように浮竹を抱いた。

「傷物にしてくれた責任はとってくれるな」

「うん」

けれど、状況は最悪な展開になった。

浮竹がオメガであり、信じられぬような霊力をもっていると知って、京楽より上流貴族の若君が、妾として迎えたいと言い出したのだ。

4大貴族に近い大貴族で、浮竹に拒否権はなかった。

浮竹は、統学院に入る前に、上流階級の男の元へ、家族を殺すと脅されて、妾として嫁いで行ってしまった。


「浮竹・・・・・・・」

京楽は、激しいショックを受けた。

将来妻にすると決めた伴侶を奪われたのだ。

京楽は、金では解決できず、自分より上位の貴族である男には手を表立って出せないので、強硬手段にでた。

浮竹をさらったのだ。

浮竹は、首に番の証である噛み傷があった。

浮竹は病弱なのに、ヒート期間だろうとそうでないと関係なしに抱かれて、衰弱していた。

あんな男の元に二度と元に戻すものかと、浮竹を抱きかかえて、山本総隊長の庇護下に入った。

山本総隊長も、妾に浮竹がなることにしぶっていたが、上流貴族の重圧に、屈してしまったことを一生の恥と思っていた。

戻ってきた浮竹は、体中にキスマークをつけられて、ヒート期間でもないのに熱を出しても抱かれたりして、弱っていた。

まずは食事をさせて、体力をつけさせて少しずつ回復を待った。

歩きまわれる頃には、浮竹は助けてくれた京楽の後をいつも追うようになっていた。

「俺は・・・・あの男の番だ。お前と結ばれることはないが、傍にいさせてほしい」

上流階級の若君は、浮竹にとっくの昔に飽きて、もう手を出してこなかった。

「番をね、解消できる方法があるんだよ」

「まさか、殺すのか!いくら京楽でも、相手はさらに上流貴族の・・・・・」

「違うよ。違法だけど高値で番を解消できる薬が売ってあるんだ。それを買って、君を自由にする」

「京楽・・・・俺の番が、京楽ならいいのに」

「それ、本気で言ってる?」

京楽は、浮竹をのぞきこむように見つめた。

浮竹は赤くなりながら、そっと小声で呟く。

「3年も一緒にいたけど、京楽は俺がヒートで寝込んでいる時、抱いてくれた。抑制剤を一杯飲んでたお陰で、アルファである京楽を誘うような真似をしなかったつもりだが、・・ずっと、抱かれたいと思ってた。そして、お前は俺の願いを叶えてくれた」

「浮竹。番になろう」

「春水・・・・好きだ」

「僕も好きだよ、十四郎」


翌日には、裏マーケットで仕入れた、番を解消させる薬を京楽は手にいれてきた。

屋敷が一軒たつほどの値段のものだったが、京楽にとっては安い買い物だ。浮竹が自分のものになってくれるなら。

番になるためには、交じりあって首筋を噛まねばならない。

浮竹のヒートを、京楽は浮竹と何気ない平和な日々を過ごしながら待った。

「春水・・・・ヒートがきたんだ。助けてくれ。お前の番にしてくれ」

「十四郎、抱くよ」

「ああ、こい」

湯浴みをして用意を済ませ、浮竹と京楽はもつれあうように褥に倒れこんだ。

京楽の下で乱れていく浮竹は、妾にされた時の癖が残っていて、はじめて抱いた時よりとても大胆になっていて、嫉妬と悲しみと同時に愛しさを感じた。

「君は、もう僕だけのものだから」

唇を奪い、頬に口づけて、首筋、鎖骨とキスマークを残していく。

衣服を全部脱がされて、浮竹は顔を手で覆った。

「顔を見せて。我慢しないで」

「あっ」

胸の先端をかじられて、ピクリと浮竹が反応した。

妾にされていた間に、体は敏感になっていて、それが京楽には悲しく思えた。

でも、愛しい。

浮竹の花茎に手をかけてしごきあげると、ゆっくりと浮竹のもの勃ちあがった。

鈴口を指でこすりあげると、浮竹は背をしならせた。そして、ぜいぜいと辛そうな息を吐く。

「ああああ!」

「十四郎、どうしたの」

「あ・・・・妾にされていた間、いじられたことはないし、いかなかったから・・・・」

知らない男に抱かれていたはずなのに、浮竹は綺麗なままだった。

「うつぶせになって。潤滑油で後ろ解すから」

「あ、濡れてるから・・・・」

「だーめ。念のためだよ。君を傷つけたくない」

京楽は、浮竹をうつぶせにすると、濡れている蕾に潤滑油をつけた指を侵入させた。

「あ、あ、あ・・・・んんっ」

声を押し殺そうとする浮竹を、背後から抱きしめる。

「声、おさえないで。すごくいい。かわいいよ」

「ばか・・・・・」

トロトロになるまで解された蕾から指を引き抜いて、浮竹を仰向けにして、正常位から貫いた。

「あああ!」

「きっつ・・・・君、ほんとにあの男に抱かれてたの?」

「聞かないでくれ」

ポロリと、浮竹が涙を流す。

「こんな汚い俺ですまない」

「君は汚れてなんかないよ。綺麗なままだ」

「でも、俺は!」

「なかったことにはできないけど、過去は忘れることができる。君は、僕との未来だけを考えればいい」

「んあっ、あ、あ、あっ」

前立腺をこすりあげた。

浮竹の嬌声が、耳にここちよかった。

「統学院にあと1年もしないで入学するんだし、アフターピルは飲むでしょう?」

「ああ。あの貴族の男も、アフターピルを飲ませていた。妾だが子はいらんらしい」

「もう、あんな男のことなんて言わないで」

「あ!」

ごりっと奥を抉られて、びくんと浮竹の体が痙攣した。

「あ、あ、あ、や、いっちゃ、いっちゃう」

「僕も限界だ。一緒にいこうか」

京楽はラストスパートをかけて浮竹を貫き抉り、揺さぶった。

そして、京楽の雄が浮竹の子宮口にどくどくと子種を注ぎ込む。その時間は長かった。

浮竹を抱くまで、性処理をしていなかったので、子種はどろどろでたくさんでた。

「あ、もっと抱いてくれ」

「言われなくても。立てる?」

「なんとか・・・・・・」

「立って壁に手をついて」

「な、こんな体位で・・・」

「いいからいいから」

崩れおちそうな浮竹の体を抱えて、足を大きく開かせて挿入する。

「あ、んあ、ひっ」

じゅぷじゅぷと京楽のものが出入りする。

「あ、大きい・・・・・・・」

「この日がくるまで、君を抱けなかったし、自虐もしてなかったから、後2回くらいつきあってもらうよ」

「や、やぁ、壊れる」

「壊れる時は僕も一緒だよ」

犯されながら、首筋をかまれた。

びりっと電流が体中を走り、番になれたのだと、安堵する。

「春水・・・・愛してる」

「僕もだよ、十四郎」

ヒート期間であるために、思い切り交わった。

眠り、起きて食事をとって風呂に入り、また交じりあってと、1週間のヒート期間は終了した。



「統学院を卒業したら、一緒になろう」

「プロポーズか?」

「ほんとは、もっとロマンチックなところでしたかったけど、君が相手だとどうにもね」

「俺を何回も傷物にしたんだ。京楽には責任をとってもらう」

「喜んで、責任をとらせてもらいます」

くすりと、二人で笑いあった。

一度、上流貴族の妾にされた。相手はアルファで、浮竹がオメガであることだけを利用して、性欲処理をしていた。浮竹の体が弱いなんて、関係なかった。熱が出ても抱かれた。

京楽は、決してそんなことをしない。

浮竹の体調に気を配り、寒くなったらすぐ自分の着ている上着を着せてくれたりした。

「俺たち・・・・幸せに、なろうな」

「ああ、もちろんだよ」

浮竹を寝取って奪い返した京楽は、満足気だった。

これからの人生も、浮竹と歩んでいく。

どちからかが、いなくなるまで。

いつか、浮竹はミミハギ様を解放させるかもしれない。

けれど、愛し抜こう。

取り残されたとしても、愛し続けよう。

愛は、永遠だから。

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オメガバース京浮読み切り短編2

生まれつき、体が虚弱だった。

両親は精一杯金をかせでい、薬代にしてくれたが、借金を重ねてついにはどうすることもできなくなった。

泣く泣く、体の弱い浮竹は色子として、借金のかたに売られていった。

売られたのは7歳の時。

13で客をとるようになった。

ただ、体の弱い浮竹を何故、高い金を出して薬を飲ませで色子をさせているのかというと、浮竹がオメガだったからだ。

オメガの色子は貴重だ。

当時は妊娠せぬように、ヒート期間はまだきてなかったが、行為の後は念入りに手入れをしてアフターピルを飲まされた。

「自由になりたい・・・・・・」

17になった浮竹は、体の調子のいい時に客を取りながら、そう思うようになっていた。

15の時にはじめてヒートを迎えた。

番をつくることはしなかった。

首筋にかみつかれるのを防止するために、首を覆う首輪をつけさせられた。

オメガの色子が、番をもってしまったら、もう客はとれないから。

「はぁ・・・母上と父上と妹と弟たちは元気でやっているだろうか」

色子として浮竹が売られていった当時、弟と妹が一人ずついた。赤子だったり3歳だったり、幼すぎて、浮竹が色子として売られていった。

自分の身が不幸と思ったことはない。

色子として客はとらされるが、客はみんな優しい相手ばかりで、ヒートになった浮竹を抱くのと一緒に見舞いにきてくれたりした。

客はベータがほとんどだった。

たまにヒート期間中ではない時に、アルファに抱かれたことがある。

店の主人は、浮竹に番ができるのを嫌がって、ヒート期間中は仕事を休むかベータの相手をするようにと言われていた。

ヒート期間を一人で過ごすにはつらいが、フェロモンでつられたアルファのおもちゃになるよりはましだった。

「十四郎、次の客が決まった。なんと上流貴族の坊ちゃんだ。しぼれるだけしぼって、薬代を稼ぎなさい」

「はい」

浮竹の薬代は高い。色子として春を売るが、半額は薬代で消えてしまう。

そこから親への仕送りをしたりして、手元に残る金はわずかだ。

こんな状況では、年季があけるまで色子として働かねばならないだろう。

どうせ、25歳くらいで色子は終わる。

年季が明けるのもそのくらいだ。


貴族は今までにきたことはあったが、上流貴族はさすがにいなくて、念入りに体を洗って前準備をして、浮竹はその上流貴族とやらの客を待った。

「やぁ、はじめまして。浮竹十四郎くんでいいのかな?」

やってきた上流貴族は、名を京楽といい、浮竹と同じ17歳だった。

「初めて君を見かけて一目ぼれしてしまってね。こうやって、会いにきたんだ」

「酒は飲むか?それとも料理を?俺を抱くのは最後になるが」

「君、オメガなんでしょ。僕、アルファなんだ」

「アルファの客はなるべくとっていない。ヒート期間がきたら・・・・・・」

ズクリ。

熱に一気に体が支配される。

「な・・・・・・・」

「君、抑制剤飲んでないの!?すごいフェロモンの香り・・・・頭がどうにかなりそうだ」

京楽は、必死でヒート期間が訪れてしまったオメガの浮竹を、襲うまいと我慢していた。

「抑制剤・・・褥の傍にある。すまないが、持ってきてくれないだろうか。熱に体が支配されて身動きがとれそうにない」

浮竹は、熱に支配されるのにある程度慣れているので、ヒート期間を男なしか自虐なしでいられることはできなかったが、冷静な判断はまだ下せた。

「ほら、抑制剤と、水」

水の入ったコップと一緒に、抑制剤を飲んだ。

少し熱はおさまったが、ヒートで頭がぼんやりとする。アルファの京楽に抱かれたくて、仕方なかった。

「俺は・・・番になれないが、抱いてくれるか。ヒート期間は我慢がなかなかできない。いつもはベータに抱いてもらっているのだが、あいにく今は客がお前しかいない」

「いいのかい?といっても、君を抱くつもりで買ったんだから、まぁ仕方ないよね」

「色子は、もしかして初めてか?」

「どうしてそう思うの」

「白粉の匂いがする。女物の」

「ああ・・・風呂にはいったんだけど、その後遊女にからまれてね。抱いてくれとうるさかったけど、好みじゃなかったんで、金をもたせて去ったよ」

「お前の好みは、俺みたいな色子なのか?」

「言ったじゃない。一目ぼれって。でも、遊びじゃない。君を身請けしたい」

「はっ・・・・俺の身請け金はかなり高いぞ。やめておけ」

「上流貴族だから、金はいくらでも使えるよ」

しぼれるだけしぼって。

廓の主人言葉を思い出す。

「俺は、高いぞ」

「とにかく、君も苦しそうだし、僕も君の出すフェロモンでどうにかなりそうなので、抱くよ」

「ん・・・・・・」

触れるだけの口づけを受ける。

もっと京楽が欲しくなって、浮竹は自分から唇を開いた。

ぬるりとした舌が入ってくる。

ぞくぞくと、体がしびれる。

「キスだけで、ばてばてだね」

「ヒートなんだ・・・子種を俺の中に注げ」

浮竹は、自分から衣服をぬいで、京楽の服も脱がせた。

京楽の狂暴なまでにでかい一物を手でしごき、おずおずと舌でなめとった。

「ああ、いいね。そこ、一番かんじるよ」

色子として4年も働いてきたので、男の感じる部分は分かっていた。

「君を身請けしたら、結婚しよう」

「何をばかな・・・・・・こんな、いろんな男に抱かれて汚い俺を身請けするより、上流貴族の姫君でも娶ればいいんじゃないのか?」

「君がいいんだよ」

「わ!」

我慢できなくなった子種が、びゅるびゅると吐き出されて、浮竹の顔にかかった。

「ああ、ごめん!」

ティッシュで拭われて、不思議な気持ちになった。

ヒート期間以外で抱いてくるアルファは、意地が悪くてみんな浮竹を屈服して支配しようとする。

番にされそうになったことも、一度や二度ではないが、首輪をつけているので、なんとかなった。

「抱くよ、いいかい?」

「俺を買ったのはお前だ。好きなようにするといい」

「優しくするから・・・・痛かったら、言ってね」

「色子になって何度も抱かれた。大丈夫だ」

深い口づけを受けて、浮竹はヒートの熱が高まっていくのを感じていた。抑制剤など、アルファとのセックスではあまり意味がない。

「んっ」

薄い胸板を撫でられ、舌を這わされて、声がもれた。

首筋、鎖骨、胸と赤い花びらが散っていく。

「あっ」

胸の先端が硬くなった部分をかじられて、もう一方は指でつままれた。

4年も色子をしてきたので、完全に性感帯になっていた。

「あ、あ、あ、早く!」

「でも、一度出しておかないと辛いでしょ?」

「そんなこと、いいから!アルファにヒート期間に抱かれるのは初めてだが、我慢がきかない」

浮竹は、自分から足を開いて、京楽を誘った。

その淫靡な姿に、京楽がごくりと唾を飲みこむ。

京楽は、すでに濡れている蕾に舌を這わせた。

「やん!」

「しっかり、濡らして解しておかないとね」

「や、そんなことしなくても、俺はオメガだ。自然に濡れる」

「でも、君を少しでも傷つけたくないから」

舌が入ってきて、それから指を埋め込まれた。

全身の輪郭を愛撫して、口づけを何度も受けながら、指で解されていくのを他人事のように感じていた。熱に支配されて、意識が飛びそうになる。

「あ!」

前立腺をコリコリと刺激されて、浮竹は精を放っていた。

「きもちよかった?」

聞かれて、こくこくと頷いた。

「あ、くれ。お前の子種を・・・・・俺の胎の奥に」

「仕方ない子だねぇ」

京楽は、浮竹が今まで受け入れてきた男の中でも一番でかいやつを挿入されることに、少しの恐怖感を抱いた。

京楽にぎゅっと抱き着いた。

「かわいい、十四郎」

「あ・・・京楽」

「春水って呼んで」

「春水、早く来い」

「いくよ」

「あああああ!!!!!」

一気に貫かれて、濡れているとはいえ、少し痛みを感じた。

幸い、血は出なかった。

「しばらく、このままでいるね」

浮竹の中に自身を埋め込んで、その大きさに慣れるまで、京楽はじっとしていた。

「あ、あ、あ、動け。俺をめちゃくちゃにしてくれ」

オメガ故のあさましい欲望。

浮竹はそれが嫌いだった。けれど、求めずにはいられない。

「動くよ」

「ああ!」

ズッズッと、京楽のものが浮竹の中を拓いていく。

「んあ!」

ごりっと、前立腺を刺激されて、浮竹はびくりと体を跳ねさせた。

「君はここが気持ちいいんだね」

「やああああ、そこばっか攻めるな。いやだ、もっと奥にこい」

京楽は、浮竹の言葉通り最奥までずるりと侵入した。

「あ、ああ・・・・」

子宮口まで犯されて、浮竹は熱に狂った。それは京楽も同じことだった。

「一度出すよ」

「んっ・・・・」

最奥でどくどくと京楽の体液が弾けるのをかんじて、浮竹は涙を零した。

きもちいい。

頭が真っ白になる。

「僕、まだ満足してないからね。君もヒート期間中だし、1回じゃ足りないでしょ」

体位を変えて、背後から抱かれた。

「んあ、あ、あ、ひあああ」

獣同士が交わるように、交じりあった。

「あ、いってしまう。春水、春水!」

「僕もいくよ。一緒にいこう、十四郎」

浮竹の前立腺を抉りすりあげ、口づけをしてから、最奥に叩きこむ。

「んあっ」

「くっ・・・・・・」

ドクドクと、生暖かいものが、もう何度目になるか分からないが、弾けて、浮竹は意識を失った。

「十四郎?」

動かなくなった浮竹が、死んだのはないのかと焦って息を確かめるが、静かに眠っているだけだった。

「ごめんね、十四郎。手加減できなかった」

濡れたタオルで浮竹の全身を清め、できる範囲で中にだしたものをかき出した。

子宮の中にもたっぷり注いだので、このままでは浮竹は妊娠してしまうだろう。

薬箱を探し、アフターピルを見つけると、浮竹に口移しでのませた。


「君を身請けにきたよ」

ヒート期間の間中、京楽は浮竹を抱いた。

それから、ぱったりと京楽はこなくなった。

身請け話など、やはりただの冗談だったかと諦めていたが、大量の黄金や宝石をもってきた京楽に、浮竹は言葉を口にした。

「お前はばかか。こんな病人の色子をそんなに金を払って身請けするなど。

「バカでけっこう。君は僕のものだ。番になりたい」

「なっ」

浮竹は赤くなった。

首輪に手をやって、自分の首がかまれていなかったことを思い出す。

その気になれば、ヒート期間中に交わりながら首を噛めば、番になれたのだ。

京楽は、あくまで浮竹の感情を先に考える。

「本当に、俺でいいのか。俺は色子だ。オメガだからお前の子は産んでやれるが、女のような柔らかさもない」

「いや、君最高だったから。今まで抱いてきたどの遊女より、きもちよかった」

「ば、ばか!」

京楽は、店の主人に黄金や宝石の他に紙幣を払った。

主人はにこにこして。

「幸せになれよ、十四郎」

そう言って、廓の中に去っていった。

「お前は、俺を番にするのか?」

「そのつもりだよ」

「物好きなやつ」

「恋をしたのは初めてんなんだよ。君を一度抱くだけでおさまるかと思ったけど、無理だった」

「そりゃ、お前はアルファだからな」

「アルファもオメガも関係ない。君だから必要なんだ、十四郎」

「・・・・・恥ずかしいやつ」

浮竹を抱き上げて、京楽は馬車に乗り込むと、浮竹の荷物を2台目の馬車につみこんで、出発した。

「京楽十四郎。近いうちに、そう名乗るようになるから、慣れていてね」

「な、結婚するつもりか!俺と!」

「そうだよ。妾なんかにはしない。妻にする」

「もう、どうでも好きにしてくれ・・・・・・・」

浮竹は頭を抱え込みながら、それでも京楽のくれるぬくもりに感謝するのだった。


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