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エンシェントエルフとダークエルフ19

今回の依頼は、Aランクの依頼だった。

コカトリスが大量にわいて、村一つが石像になった。その村人の救出と、コカトリスの退治であった。

事前に、神殿で絶対に石化しないお守りを2つ買った。金貨40枚になったが、コカトリスの石化は強烈だ。経費に申請すれば、金は戻ってくるだろう。

さっそく石像にされた村にいくと、大量のコカトリスに囲まれた。

「KOKEEEEEEEE!」

コカトリスは、石化の視線を送った。

しかし、お守りの効果で何時まで経っても石化しない浮竹と京楽を見て、少し後退する。

「もう、遅いんだよねぇ!バーストロンド!」

「フレアサークル!」

爆炎と灼熱の範囲魔法を放つ。

村にいたコカトリスの3分の1が吹っ飛んで焼かれて死んでいった。

コカトリスたちは、逃げ出す。

村の外に出すわけにいかないので、京楽が網をかける魔法を唱える。

「スパイダーウェーブ!」

白い蜘蛛の糸のようなものでコカトリスは、コケーコケーと鶏の声で鳴きながら、慈悲をこうた。

そんなの関係なしに、浮竹はミスリルの剣で、京楽は魔法でコカトリスを葬っていく。

「はぁ、疲れた。もう、コカトリスはいないかな?」

「ああ、全部片づけたようだ。あっちに巣があったから、卵を全部破壊してきた」

京楽は、魔力回復のポーションを大量にもってきていた。

「くくるーーー」

ブルンにも回復魔法をかけてもらい、魔力を回復する。

これから、200人以上はいる村人の石化を解かなければいけないのだ。

「キュアストーン」

「ああ、コカトリスが!」

「キュアストーン」

「俺はどうなっていたんだ」

「キュアストーン」

「あはん、あなた・・・・あら?」

「キュアストーン」

「くけけけーーーあれ?」

「キュアストーン」

ひたすら、キュアストーンの魔法を使い続ける。状態異常回復の魔法はけっこう魔力を使うので、ブルンに常にヒールをかけてもらいながら、魔力回復ポーションを口にする。

村人200人全員の石化解除が終わった頃には、魔力回復ポーションでおなかはたぷたぷだし、精神的にも肉体的にも、疲れ果てていた。

「ほんとうに、村を救っていただき、ありがとうございます。これはほんのお礼のつもりです」

金貨の入った袋を受け取って、アイテムポケットにしまいこむ。

冒険者は、救った相手から金銭にからむものをもらうのは自由だった。

「それより、今晩は泊まっていいかな。魔力を使いすぎて、動くのもだるいんだよ」

「宿屋へ案内しますね」

宿屋のスィートルームに通されて、そのふかふかのベッドの上で京楽は横になるとすぐに眠り始めた。

夕飯まではまだ時間があるので、浮竹は村に異常がないかどうかの探索に出た。

村の少し遠くの森までいくと、コカトリスが出てきた。

巣があった。

「そうか、ここでコカトリスは増えたのか」

コカトリスたちは石化の視線を浮竹に送る。

一向に石化しない浮竹に、コカトリスたちは本能的に敵わないと分かって、逃げ出そうとするのを、炎の魔法でしとめていく。

「ファイアオブファイア!」

「くええええええ」

最後の一羽を葬り去って、巣の中にたヒナのコカトリスにとどめをさして、卵を破壊していった。

それから、森をぐるりと回ってみたが、ブラックベアと出会ったくらいで、異常はなかった。

「これでもう、コカトリスに石化されることはなくなったな」

村に戻ると、日も傾き、夕方になっていた。

「京楽、起きろ京楽。夕飯の時間だぞ」

「うーん。まだお腹がちゃぷちゃぷいってるから、少しだけ食べるよ」

「ああ、少しでも食っておいたほうが、体力の回復が早い」

ブルンに大分ヒールをかけてもらったので、魔力は半分ほどにまで回復していた。

恐るべきは、ブルンの魔力量だった。

ヒールといっても、ほぼ万能な神のヒールだ。それを何百回連発しても、魔力が尽きることなく永遠と魔法を使い続けられるのだ。

浮竹が推理するには、空気中のマナを吸っているのではないかということだった。

「ブルンもお疲れ。そとに町中のゴミを用意してもらったから、全部食べていいぞ」

「くくるーーー」

ブルンは喜んで、宿屋の裏に置かれたごみの山を全て消化してしまった。

「すいません、ゴミの処理までしてもらって」

「いや、この子はゴミが主食なんだ」

「変わった形をしていますが、色と特徴からブラックスライムですか?」

「ああ、そうだ。今はヒーリングスライムになっているが、元々はブラックスライムだ」

「そうですか・・・・・・」

宿屋の主人の目が、ぎらついた気がした。

「回復魔法も唱えられるんですよね。神クラスのヒールを」

「それはそうだが、けが人以外には滅多に使わないぞ。それと、灼熱のシャイターン一族の紋章が刻まれている。誘拐とかされたら、灼熱のシャイターンを敵に回すととってもらってかまわない」

宿屋の主人は、小さな声で舌打ちしていた。

シャイターンの紋章がなければ、攫って売り飛ばす算段でも考えていたのだろう。

ブルンは、売れば大金になる。

何せ神のヒールを無制限に使えるのだ。売れないほうがおかしい。おまけに食事はゴミでいいし。

その日は、宿屋のスイートルームに泊まって、朝早くに出発し、昼には冒険者ギルドに戻って、コカトリス65羽分の魔石を鑑定してもらい買取りをしてもらった。

村にいた50羽以外にも、森で倒した15羽分の魔石も含めれていた。

「こちら・・・金貨130枚になります」

報酬金は、金貨320枚。

まぁまぁの収入になった。

「あらん、うっきーちゃん春ちゃん、何を悩んでいるの?」

背後から尻を触られて、浮竹は蹴りを食らわせようとしたが、しっかりとガードされてしまった。

「このオカマギルドマスターが!」

「いやん、オカマじゃなくってオ・ト・メよ♡」

「おえー」

京楽が、気持ち悪そうにしていた。

「ひどい、春ちゃん!ベッドではあんなに優しくしてくれたじゃない!」

「誤解を招くような冗談はよしてくれないかな?焼くよ?」

「いやーん、こわーい」

キャサリンは、他のSランク冒険者のほうにちょっかいをかけにいった。

でも、尻はさわらない。

かわりに胸板を触っていた。

十分にセクハラの変態であったが、有能なので、セクハラだと訴えてもそれがどうしたと、上から言われるだけだった。

「浮竹、貯金も十分に貯まってきたし、別荘飼わない?」

「いいな。海辺の見える、そんなに遠くない場所にしよう」

二人は、不動産屋にいって、別荘の物件を見て回った。

「これなんてどう?ロスピア王国のアカシ海岸に近い別荘。剣士の僕の家から徒歩で1時間くらいの場所」

「お、いいな。師匠の家と近いのはいい」

「じゃあ、これに決めようか」

「ああ」

2階建ての洋館で、中古物件であったが、一度実物を見に行ってリフォーム済みだったので、すぐにでも暮らせそうだった。

さっそく家具を手配して、配置してもらった。

金貨2700枚が飛んでいったが、お気に入りの別荘になった。

剣士の京楽の家にいき、剣士の京楽と精霊の浮竹を誘い、海辺の別荘に案内した。

精霊の浮竹は、別荘の中で他に人がいないことを確認すると、人型をとった。

『いい別荘じゃないか。すごいな』

精霊の京楽は、目をキラキラさせていた。

「金貨2200枚の物件だったんだよ」

『へぇ、リフォーム済みにしては安いね。別荘まで買ちゃって、金持ちになったね』

「冒険者稼業でためた金だからな。白金貨は貯金したままだ」

『ぱーっと使っちゃえばいいのに』

「もったいなさすぎて、使えないよ」

Sランク冒険者なら、白金貨を報酬にもらうときはあるかもしれないが、Aランク冒険者ではまず白金貨を拝む機会がない。

かなり前、イアラ帝国の女帝卯ノ花の夫、更木の失った右腕をブルンで癒した時に白金貨をもたったのが最初だった。

次にはアークデーモンの討伐の時、魔王の四天王が一人、電撃のボルの妹ユンを救った時の謝礼だと、白金貨千枚をもらった。

あれには、二人はびびりまくった。

家に置いておくと危険な気がして、そのまま貯金した。

今現在、利子で少しずつ金額が増えていた。

「今日は海鮮バーベキューをしたいと思うんだ。バルコニーで焼くから、精霊の浮竹も人型のままで大丈夫だよ」

『海鮮バーベキューか。いいな。人がいると人型はとれんからな。バルコニーなら、人に見られることもないから、この姿でも大丈夫だろう』

「じゃあ、そうと決まれば市場で買い物をしてくるよ。はい、これ」

『え、なんだいこれは』

「買い物から戻ってくるまでしばらくかかるから、魚でも釣ってて」

自分の師匠を、顎で使うように、エルフの京楽は釣竿と餌を渡した。

『釣りか。いいな、俺もしてみたい』

「この時期は人がほとんどいないとはいえ、外で人型をとるのは危険だ。プルンとブルンの相手でもしてやってくれ」

こうして、エルフの浮竹と京楽は、海鮮バーベキューをするために、市場に行ってしまった。

『この僕に釣りをしろってさ』

『行って来たらどうだ?』

『じゃあ、妖刀になって。一緒に居たい』

『分かった』

精霊の浮竹は、妖刀に戻ると、京楽に連れられて海で釣りをはじめた。

これがまた、面白いようにかかった。

『お、今度はタイだ。縁起がいいね』

市場から帰ってきた浮竹と京楽は、剣士の京楽が釣りあげた獲物の数々を見て、口をあんぐりとあけたままだった。

『だてに、1500年も生きちゃいないよ』

エルフの浮竹と京楽の師匠である、剣士の京楽は、ヒウ帝国という、1500年前に滅びた帝国の生き残りであった。

女神のフレイアの子で、神人であり、不老不死であった。

どんな傷でも、たちどころに癒えてしまうのだという。

妖刀の浮竹のことも、少し知った。

いろんなことを、この前剣士の京楽、もとい師匠の家に行った時に、告白してもらったが、二人はそんなこと関係なく普通に接してくれた。

今もそうだ。

「テラスに行こう。おーい、バーベキューの用意するよー」

『ああ、分かった』

『ちょっと釣りすぎたかなぁ』

「バーベキューを焼くやつは借りものだ。師匠が釣った魚は俺が捌こう」

エルフの浮竹は、器用に魚を3枚卸にしていく。

それに塩をまぶして、串を通して火であぶり、4人は海鮮バーベキューを楽しんだ。

海老やホタテ、カニなんかも買ってあった。

カニは甲羅に切れ目をいれて、ある程度冷ましてから食べた。

『ふふ、こういうのもいいね』

『そうだな。家族が増えたみたいだ』

「師匠は、もう家族同然だ」

「まぁ、浮竹の言う通りだね」

剣士の京楽は、じんわりと胸が暖かくなっていくのであった。それは精霊の浮竹も同じだった。

「ププルウ!」

「くくるーー」

「ああ、お前たちにもごはんあげないとな」

プルンにはりんご10個を、ブルンはバーベキューで出たゴミを食べてもらった。

楽しい時間は、長くはなかったが、記憶の一ページになるくらいには続くのだった。



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エンシェントエルフとダークエルフ18

アリアラス=ヒウは、宗教組織を作った。

自分はヒウ帝国の皇族であり、神はヒウ帝国の第二皇子であるとした。ヒウ帝国の第二皇子の名は秘密だが、今も生きているという。実際は、名前は知らないのだが。

巨額の金が動き、その宗教組織は見る見るうちに信者を増やして、大きくなっていった。

裏では、人身売買や、人工生命体の誕生など、黒いことを行って金を稼いでいた。

信者なると、無条件で金貨10枚を与えられるので、宗教の興味のない若者なども宗教に入団した。

宗教組織の名は、神の王国であった。

緊急クエストが冒険者ギルドで持ち上がった。

宗教組織、神の王国の壊滅であった。

人身売買で得た金で、モンスターを作り出し、操ってもいたので、ロスピア王国の退治屋にも援助を要請した。

Cランク以上の冒険者で、一斉に宗教組織の裏の分まで摘発が始まった。

退治屋の剣士の京楽は、人工的に作り出されたモンスターたちを屠っていく。

『ここはボクに任せて、逃げようとしている組織の人間の捕縛を!』

今度は、剣士の京楽は冷静だったので、宗教団体の上の者たちや、人身売買に関わった者たちを殺すことはなかった。

冒険者たちに捕縛されていく宗教組織の上位の者や、人身売買に関わった者は、何かに呪われているかのように、突然苦しみだして、死んでいく。

「これも、秘密を守るためだよ。あーっはっはっは」

アリアラス=ヒウは、そう言い残して自害した。

結局、宗教組織の上にいた者たち、人身売買に携わった者たちは全て死んでしまい、普通の一般信徒が一時的に捕縛された。

こうして、神の王国は、大きな謎を残したまま壊滅した。

証拠書類などが残っていたので、犯した犯罪は明確にされた。

売られていった者たちを買っていった、貴族たちが逮捕された。大半が女性と子供で、性的な奴隷にされていた。

「ふう。とりあえず、捕縛した奴らは何かの呪いかで死んでしまって、TOPのアリアラス=ヒウも自害してしまった。今回の件は、犯人のいないまま、迷宮入りしそうだね。ヒウ帝国の第二皇子が生きているって件も、信用していいのか分からないね」

「そうだな」

売られていった女性や子供が次々と保護されていった。

中には、奴隷を買っていった者の中に、イアラ帝国の女帝の直臣もいて、イアラ帝国の内部でも、被害者がいるということで、国をあげての行方不明者の捜索がされた。

半月をかけて捜査が行われて、行方不明者は160人から15人まで減っていた。

奴隷として売られていった人間の数は約300人。そのうち助けられた数が260人。残りの40人は、殺害されたか、自害したかのどちからかだった。

行方不明の15人は、引き続き捜索が行われるが、半年を期限として、それ以上探しても見つからない場合は、哀しいが死亡したということにされた。

緊急クエストだったが、報酬はそこそこで、一人あたり金貨200枚が配られた。Cランク冒険者からの参加だったので、金貨200枚をもらったCランク冒険者たちは、喜んでいた。

Bランク冒険者も喜ぶ額であった。

ただ、Aランク、Sランクの冒険者には物足りなかったが、帝国側からの報酬金であるので、文句は言えなかった。

ランクに関係なく、今回の件で捜査をしてくれた者には金貨200枚を配るという約束だった。

冒険者ギルドのほうでも、一人あたり金貨50枚の報酬金が出ることになった。

ただ、参加した人数が多かったので、50枚が出せる額の精一杯であるらしかった。

浮竹のポケットの中に、「僕は冒険者じゃないからあげるよ」と、金貨50枚の入った袋が入っていた。

「師匠が、冒険者ギルドの者と間違われたんだな」


「うふん、うっきーちゃんも春ちゃんも、逮捕に尽力を尽くしてくれてありがとうね?♡」

通称青髭オカマ、自称キャシーのキャサリンギルドマスターは、くねくねしながら、浮竹と京楽の尻を揉んだ。

「セクハラだ!」

「そうだよ、セクハラだよ!」

「あらん、あたしがギルドマスターだから、ただの挨拶よん?」

「この青髭オカマが!」

「あらん、何か言った春ちゃん?」

京楽の首をしめあげながら、キャサリンはにこにこしていた。

「な、なんでもない、ギルドマスター!」

「やだ、キャシーって呼んで♡」

「今回は、後味が悪い事件だったね」

「ああ。真実を知る者はみんな死んでしまった」

「まぁ、そんな時もあるわ。今夜は、神の王国壊滅を祝して、酒場で飲み放題食い放題のパーティーがあるから、是非参加してね♡」

Fランクからの冒険者からも参加ができるらしく、酒場はその日、人が入りきらないほどに賑わった。

二人は、ある程度飲んで食べてから、S、A、Bランクのそれぞれの知り合いと会話をした。

皆、不完全燃焼であることが気に入らないようだった。

どのみち、生きていても処刑だったろうなので、処刑する手間が省けたとして考えることにした。

「じゃあ、僕たちは帰るね」

「くるるー」

ブルンは、生ごみをいっぱい食べて、お腹いっぱいであるらしかった。

「じゃあ、また明日」

浮竹も、知り合いたちに手を振って別れた。

マイホームにつくと、浮竹と京楽は手を握りあい、昔話をしだした。

「君が、僕に会いに来てくれたのが、全ての始まりだったね」

「ああ。ダークエルフが捕まったって、大騒ぎだったんだぞ」

当時を振り返る。

ダークエルフの子供が捕まった。すぐに牢屋に入れられて、幼い浮竹は、門番にスリープの魔法をかけて、ダークエルフの京楽と出会った。

「誰。誰か、そこにいるの?」

「君、ダークエルフなの?肌が白いよ」

「でも、ダークエルフなんだよ」

「ちょっと待ってて。お腹すいたでしょ?今、パンもってきてあげる」

浮竹は、自分の昼食用のパンとスープを、牢屋の中にいる浮竹に差し出した。

「ありがとう・・・。こんな暖かい食事をするのは久しぶりだよ。昨日まで、雑草を口にして飢えを凌いでいたからね」

「おかわりいるか?」

「欲しいけど・・・・これ、君の分の食事じゃないの?」

「俺は族長の次男だから。ある程度は融通が利くんだ」

「そう。じゃあ、おかわりほしいな」

「分かった」

浮竹は頷いて、自分の自宅の厨房からパンとスープを持ってくると、京楽の牢屋の中に入れた。

それから、浮竹は、見張りの目をかいくぐり、毎日のように京楽の元に通った。

やがて80年が経ち、12歳の見た目になった二人は、浮竹が抜け道を作ってくれた牢屋から抜け出して、冒険者登録をした。

エルフ種族は、80歳にならないと冒険者登録できないようになっていた。

度々牢獄を抜け出して、浮竹と京楽はFランク冒険者として、依頼をこなしていくが、あまり長く牢屋をあけていられないので、冒険者稼業は月に2回くらいだった。

もう、その頃には京楽は浮竹に惚れていた。浮竹も京楽を必要としていた。

120歳になり、成人した二人に待っていた運命は、京楽の処刑と、族長の長の補助をしろというがんじがらめの人生のレールだった。

二人は、手を取り合って逃げ出した。

逃げ出す直前、浮竹の父親であり、族長であったエルフから、ミスリルの剣をもらった。

餞別代りだった。

こうして、エルフの森を捨てた二人は、人間社会で暮らすようになった。

Cランク冒険者になっていたが、収入はそれほどなく、最初の頃は宿屋の厩(うまや)で、夜を過ごした。寝床は藁だった。寒かったが、文句は言っていられなかった。

やがてCランクも板につき、毎日金貨5枚程度を稼げるようになると、1日銀貨2枚の宿を利用するようになった。

宿はいろいろに荷物があったので、二部屋借りた。

浮竹と京楽は、そういう欲はあまりなかったが、Bランク昇格試験に受かった日、契りあった。

お互い、居なくてはいけない存在になっており、伴侶であった。

エルフでそういう関係に陥るのは珍しいことなので、それを知ったギルドマスターは、不幸になるかもしれないと、二人に諭したが、二人はいつも一緒だった。

今は180歳になるが、かれこれ150年は一緒にいた。

エルフの寿命は長い。

人生の5分の1を一緒に過ごしてきた。

もう、お互いに居なくてはいけない存在だった。

「懐かしいねぇ。君がパンとスープを差し出してきた姿が、今でも鮮明に蘇る」

「それなら、俺も覚えているぞ。薄汚れた格好で、暗い目をしていた。でもとても孤独な目をしていた。お腹がいっぱいになったら、少しは違う表情を浮かべるんじゃないかって、自分の分の昼食をあげたんだ」

「ああ、あの食事、やっぱり君の昼食だったの」

「おかわりは、屋敷の厨房から盗んだ」

二人して、クスクスと笑い合った。

もう、遠い日の記憶である。欲は薄いが、二人は時折契り合う。

それは子孫を残すためのものではなく、お互いの存在を確かめ合うためだった。

「今日はもう遅い。寝ようか」

「ああ、そうしよう」

すでに風呂には入った。

同じキングサイズのベッドに横になり、互いを抱きしめ合うよな恰好で眠りにつく。

ダークエルフに生まれてよかった-------------。

いつからか、京楽はそう思うようになっていた。未だに種族は偽っているが、浮竹と出会えたのは、京楽がダークエルフだったからだ。

いつか、皆にもダークエルフだと、告げれる日がくればいい。そう思いながら、眠りの底に引きずられていくのだった。




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エンシェントエルフとダークエルフ17

その依頼は、神隠しにあった子供たちの調査というものだった。

ハーメルンの笛吹と名乗る人物が通って行った後には、12歳以下の子供がいなくなるのだという。

進路からして、次に狙われるのはイアラ帝国の隣のアスピラ王国のロトスという村だった。

緊急クエストだったので、浮竹と京楽の他にも、Bランク6名、Aランク3名が、派遣された。

やがて、笛の音がしてきた。

ハーメルンの笛吹だった。

青年は、一見するとただの人間に見えた。

でも、エルフの浮竹と京楽には分かった。

「正体は、魔女だ!このまま、後をつけるぞ」

魔女を倒す適正はSランクだ。

Bランク冒険者は援軍を呼ぶために冒険者ギルドに戻ってもらい、Aランク冒険者3人と一緒に行動を開始した。

「さぁ、いい子だからこの洞窟の中にお入り」

そこは、暗くて深い洞窟だった。

気づかれないように、音を立てずに後をついていく。

洞窟の奥は牢になっており、これまで行方不明になっていた子供たちもみんな揃っていた。

「さて、次の町は・・・・・」

「そこまでだ!」

京楽がライトの光で洞窟を照らし、浮竹が剣でハーメルンの笛吹の喉もとに剣を突きつける。

「なんですか、あなたたちは!」

「それはこっちの台詞だ!」

「私はただ、迷子の子供たちを保護しただけで」

「正体はばればれなんだよ、この魔女が!」

Aランクの剣士の一人が、ハーメルンの笛吹に剣を向けるて切りかかると、浮竹の剣を振り払い、Aランクの剣士の剣を叩き折った。

「ふん、人間風情が。用があるのは、子供だけだ。他は、皆殺しにしてくれる」

「エアプレッシャー」

「ファイアランス!」

「てやあああ!!」

他の3人のAランク冒険者は攻撃をしかけるが、魔法を易々と弾いて、切りかかっていた剣士のサブの剣を身に受けるが、少し切られただけだった。

「エアプリズン」

魔女は、空気の檻を作り、そこから空気をぬいてAランク冒険者たちを酸欠にさせる。

「僕の存在を忘れないでほしいね!ウォータープリズン!」

「ちっ、エルフか!」

エルフは、人間の魔法よりも魔法に優れている。特にダークエルフの京楽は上級魔法を軽々と使いこなす。

「こっちもだぞ!」

浮竹が、正体を現した魔女の右足を剣で貫いた。

「ブルン、Aランク冒険者たちに回復魔法を!」

「くくるーー!!」

ブルンは白く光ると、酸欠で倒れていた3人のAランク冒険者にヒールの魔法を使った。

「ありがとうございます!」

「私たちも、まだまだ戦えるわ!」

「俺も魔法で援護します!」

「ええい、まとめて死ね!ゴッドエクスプロージョン!!!」

洞窟に穴があくほどの威力だった。

幸いにも、牢屋の中の子供たちには落石は起きなかったようで、無事だった。

浮竹と京楽は、マジックバリアを4重に起動させて、3人のAランク冒険者を守った。

「すみません」

「アイシクルランス」

「ウォータースラッシャー!」

浮竹と京楽も、魔法を唱える。

「エアリアルエッジ」

「フレイムランス!」

洞窟の中だったので、大規模な魔法は使えなかった。

魔女は最初はシールドを出して防いでいたが、4人も魔法を使える者がいて、次々に魔法を唱えるものだから、シールドをはるだけで精一杯で、浮竹がミスリルの剣をAランクの剣士に貸したことなど、知らなかた。

「もらった!」

剣士は、魔女の体を袈裟懸けに斬り裂いた。

「ぎゃあああああ!!!」

「サイレンス!」

魔法を唱えられないように、すかざす京楽が沈黙の魔法をかける。
「魔法が使えない!おのれえええ」
魔女は衣服をやぶいて、巨大な獣になった。
「全員、食ってやる!」

「フレアフィールド」

「あ、熱い!」

足を火傷した魔女であった獣は、見せかけだけで、ただの魔女に戻った。

「おのれええ。呪い殺してくれる・・・・ガハッ」

剣士からミスリルの剣を返してもらった浮竹が、魔女の心臓を貫いた。

「こんなところで、私が死ぬはずが・・・・」

心臓を貫いてもまだ生きていたので、浮竹は首を刎ねた。

魔女は、そのまま動かなくなり、魔石を残して灰となった。

Aランクの冒険者3人と、浮竹と京楽はハイタッチを交わした。

「子供たちを解放しよう」

「鍵がないようね」

「俺に任せてくれ」

浮竹は、アイテムポケットから針金を取り出して、カチャカチャと何度かいじって、鍵を開けた。

「うわああああん!!」

「わああああん!!」

子供たちは、洗脳が解けて泣きだした。

応援のSランク冒険者もかけつけてくれて、神隠しにあった子供は、一人残らず保護された。


「さて、今回の報酬金の話だが」

浮竹が、報酬金金貨300枚を手に、Aランク冒険者に金貨70枚ずつを3人に、残りの金貨90枚を、わざわざ援護として駆けつけてくれたSランク冒険者3人に、30枚ずつ分けた。

「これじゃあ、浮竹さんと京楽さんの取り分がないじゃないか」

「いや、とある筋からかなりの金をもらったことがあるので、今回は魔石の代金だけをいただくよ」

「俺達は大丈夫だから、遠慮しないでくれ」

「じゃあ・・・・」

Aランクもランクの冒険者たちも、ありがとうといって、金貨を振り分けた通りに受け取っていった。

「さて、魔女の魔石だけど。いくらになるかな?銀貨5枚だとかだと笑えるね」

受付嬢に魔石を鑑定してもらい、買取り金額をきくと、銀貨3枚と銅貨6枚だった。

「その、魔女の魔石は大変な粗悪品が多いものでして・・・すみません」

「よし、今日はこの銀貨3枚と銅貨6枚分の食事をレストランでとろう」

あまり高級なレストランには入れなかったので、ちょっと廃れたレストランで、ちょうど銀貨3枚と銅貨6枚になるように注文して、食べて飲んだ。

「たまには、質素なのもいいよね」

「そうだな。節約するのもいい」

白金貨千枚をまるまる貯金している。

生活にかかるお金は、休日に決めた土日以外の毎日で依頼を受けて、その分で賄っていた。

1日の依頼で金貨300枚がたまることがある。

少し贅沢をしているので、二人で月にかかるお金は金貨200枚だった。

銀貨3枚銅貨6枚なんて、駆け出しの冒険者をやっていた頃を思い出す。

「僕らも、立派になったものだよね。はじめはFランク冒険者だったのに」

「そうだな。時間はかかったが、今ではAランクだ」

そもそも、エルフは成人するのに100年くらいかかる。

12歳の容姿になるまで、80年かかった。

それまでは、冒険者登録はできずに、成人するまでの間に依頼をスローペースでこなしていき、今に至る。

成人した時にCランクの冒険者となり、エルフの森を飛び出した。

今や、マイホームをもち、豪邸を買えるようなお金持ちだ。

「貯金、楽しいよね」

「ああ、そうだな」

銀行に白金貨千枚はまるまる預けていた。

利子だけで、年間に白金貨50枚はいきそうだった。

「まぁ、これからも貯金していこう」

「そうだね。次は別荘でも買おうか」

「お、いいな。ただし、稼いだ金でだぞ」

「うん、当たり前だよ」

そうこう言ってるうちに、すぐに別荘がもてるようになるまで、金が貯まるのであった。


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エンシェントエルフとダークエルフ16

その組織は、1500年前の大昔に滅んだヒウ帝国の末裔と、科学者たちでできていた。

人間や亜人種が住む、ウッドガルド大陸の一番端にある、レイサ共和国に研究所はあった。

モンスターを捕まえて、人工的に手を加えたり、人工的にモンスターを生み出す研究所であった。

その研究所のことを知っているのはごく一部であったが、中にはおしゃべりな者もいて、研究所があることは、近くの農村では知られていた。

だが、自分たちに害になるわけでもないので、共和国の上の者に直訴する者はいなかった。

ヒウ帝国の末裔も、科学者たちも、自分たちが世界を革命へと導いていると信じていた。

組織の名は、ヒウの翼。

今はまだ影の存在で、培養されたモンスターが野に放たれることはあったが、それが冒険者ギルドの者に倒されて、魔石が鑑定されて、人の手で生み出されたモンスターであることがばれるなど、夢にも思わないのであった。

緊急収集には、浮竹と京楽も出た。

人がモンスターに手を加えたか、人工的に作り出した可能性が高いということで、その組織を見つけるためにも、討伐したモンスターの魔石は、必ず鑑定してもらうことになった。

各地で情報収集をしてると、レイサ共和国でモンスターを捕まえては培養している謎の組織があることが分かった。

ロスピア王国の退治屋に今回の研究所のことは任せられた。

「なんか、モンスターの培養とか、きな臭くなってきたね」

「そうだな」

「剣士の僕と精霊の浮竹の出番だね」

「師匠もいることだし、あの二人なら組織を壊滅に追い込んでくれるだろう」

浮竹と京楽は、施設の完全なる壊滅を祈るのだった。


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レイサ共和国の研究所では、京楽が狂ったように、すでに死体となった人間を何度も妖刀でさしていた。

まだ、研究員は生きている者もいた。

『あはは、はは』

剣士の京楽は、狂った笑い声をだしながら、逮捕するための研究員を斬ってしまった。

他のSランク冒険者たちのうちの一人が、殺戮をしていく剣士の京楽に向かって叫んだ。

「化け物!!」

すると、剣士の京楽は、狂ったように笑った。

『そうだとも、僕は「化け物」さ』

全てが終わった。

モンスターも人も、剣士の京楽一人で殺してしまった。

「師匠・・・・・」

エルフの浮竹が、剣士の京楽を心配して、青白い顔の京楽に声をかける。

「大丈夫か、師匠」

『大丈夫だよ・・・・・』

とてもそうは見えなくて、せめて返り血をどうにかしてやりたくて、魔力消費は多いが、身が綺麗になるリフレッシュの魔法を使って、返り血や人の脂などをとってあげた。

京楽と妖刀の浮竹を、エルフの浮竹と京楽はロスピア王国の家まで送り、一時的に冒険者ギルドに戻った。

「施設は当たりだったようだわ。ロスピア王国の退治屋に依頼したら、壊滅してくれわ。ただ、科学者の一人が研究資料をもって逃げたみたいで、みんな血眼になって探しているの。アリアラス=ヒウっていう名前の男よ」

「組織名はヒウの翼だったな。やはり、滅んだヒウ帝国と関係ある人物なのか?」

「そうよ。帝国の皇族の端にいた人物みたい。代々ヒウの名を継がせて、いつかヒウ帝国の復活のために組織を立ち上げたみたいね」

「厄介だな」

京楽の頭の上で、ブルンがぽよぽよとはねた。

「そうだね、心配だね。ロスピア王国のもう一人の僕の家に、もう一度向かってみようか」

ブルンがあの二人とプルンが心配だという言葉もあって、浮竹と京楽は、ロスピア王国に向かうことにした。

馬車に揺られること3時間。

ロスピア王国の端にある、魔物退治の専門の店に、剣士の京楽と精霊の浮竹はいた。

ただ、とても顔色が悪かった。

「大丈夫かい?」

エルフの京楽が、精霊の浮竹に話しかけると、青い顔をしていた。

『少し、気分が悪い』

「師匠、大丈夫か?」

『ああ、大丈夫だよ・・・・・』

「ププルー」

プルンが心配して、飛び跳ねていた。

「ブルン、一応ヒールを。精神的なものでも、少しは楽になると思う」

「くくるーー」

ブルンは、二人に回復魔法をかけた。

まだ顔色は悪かったが、少しだけましになった気がした。

「今日は、俺たちで飯を作ろう。師匠もそんな気分じゃないようだし」

「僕も手伝うよ」

エルフの二人は、簡単にエビピラフと中華スープを作った。

「ほら、食欲はないかもしれないが、少しは食べてくれ」

『うん・・・・・』

精霊の浮竹は、のろのろとスプーンを動かして、食べていく。

「ほら、師匠も」

『ボクはいらない』

「そんなこと言ってると、精霊の浮竹にキスしちゃうよ?」

エルフの京楽の言葉に、剣士の京楽はギロリと睨んできた。

『食べる。あと、そんなことしたら、消し炭だからね』

「おお、怖い怖い」

エルフの浮竹と京楽は、ご飯を食べてすぐに横になった二人に毛布をかけてやりながら、疑問を口にした。

「師匠は、何かを隠しているんだろうな」

「そうだね。でも、まだ教えてもらえる段階じゃないと思う」

「うん、俺もそう思う。いつか、師匠が自分から話してくれるのを待とう」

「プルルゥ」

「くくるーー」

プルンとブルンは、飼い主たちの心配や体調を少しは気にしているようだったが、久しぶりに会ったので、プルンがブルンを頭の上にのせて、そこら中をはねていた。

「プルン、ブルン、二人が寝ているから、静かにな?」

「ププル~~」

「くるる~」

二匹のスライムは、分かっているのか分かっていないのか、鳴き声のボリュームを落としながら、ぽよんぽよんと跳ねていた。

「プルンもブルンも、こっちへおいで」

「ププウ?」

「くくるー?」

エルフの浮竹と京楽は、修行中にも借りていた隣の空き家に入り、食事や風呂をすませると、置きっぱなしにされたったべッドで横になって眠った。

プルンにはリンゴ10個、ブルンには生ごみを大量に与えてやった。

プルンとブルンも、満足して寝てしまった。


『やぁ』

次の日、剣士の京楽の家にいくと、朝食の用意をしていた剣士の京楽と鉢合わせた。

「精霊の浮竹は?」

『まだ眠ってる。起こさないであげてね』

「ああ、分かった、師匠」

「昨日の塞ぎこみようが嘘のようだね」

『こっちにも、いろいろ事情があってね。まぁ、気持ちの区切りはついたよ』

「式から知らせがあって、逃げた研究員の一人は、結局見つからなかったそうだ」

『そうかい・・・・・』

剣士の京楽は、もう興味はないのだと、朝食にトーストを4枚焼いて、バターを塗っていく。

『朝ごはん、食べていくでしょ?』

「ああ、師匠気を遣わせてしまったか。ありがとう。ほら、京楽も礼を言え」

京楽はぶすっとなって、剣士の京楽に礼をを言った。

「ありがとう」

『プルンは?』

「ああ、昨日うるさいと眠れないだろうと思って、一夜だけ預かった。隣の家、使わせてもらったけど、平気だよね?」

『ああ、それは問題ない』

「プルン、ブルン、お互いに離れたくないって我儘をいってな。引きはがすのに時間がかかった・・・」

「ププルーーー!!」

剣士の京楽の足元で、プルンは跳ねた。

ブルンは、エルフの浮竹の頭の上で跳ねていた。

「くくるーー」

「また引き離してしまうが、また会えるから。なぁ、ブルン」

「くくるう」

「プルル」

またねぇ、お兄ちゃん。

またね、弟よ。

そう挨拶をしてから、朝食だけ食べて、エルフの二人はイアラ帝国に帰ってった。

ブルンがいなくなり、プルンは吸恋寂しそうにしていたが、りんごを10個食べてもいいと並べられて、食欲のことでブルンの存在を一時忘れてしまうのであった。


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「はぁはぁ。ここまで逃げてくれば、安全だろう」

アリアラス=ヒウは、研究資料と巨額の金をもっていた。

そして、こともあろうか、イアラ帝国で自分はヒウ帝国の皇族であり、神はヒウ帝国の第二皇子であるとして、宗教組織として発展していき、裏では人身売買や人工生命体の存在などに手を出すのだった。

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エンシェントエルフとダークエルフ15

今回の依頼は、サイクロプスの群れの退治だった。

サイクロプスとは、一つ目の巨人だった。

巨人は力が強いので、普通の剣士では倒しにくいが、弱点である目をつぶしてしまえば、戦えないこともない。

Bランクの依頼だった。

至急に、ということで、Aランクの依頼ではなかったが受けた。

出たのは、ミスリル鉱山の奥だった。

イアラ帝国の大切なミスリル鉱山で、イアラ帝国の財政を担う鉱山の一つだった。

なので、至急の依頼だった。

報酬金もBランクにしては高くて、好条件なので浮竹と京楽が受理した。

馬車ではなく、現地には空間転移の魔法陣で行き来できるようになっていた。

発掘したミスリルを、すぐにでも帝都のアスランで加工するためであった。

転移魔法陣に乗って、サイクロプスの群れが出るという鉱山に辿り着いた。

「くくるーー」

鉱山の入り口で、すでにサイクロプスが陣取っており、その一つ目にめがけてブルンが酸弾をかけた。

「ぐぎゃあああああああ!!」

「いきなりやるね、ブルン」

「くくるーー」

そうでしょ、そうでしょ、もっと褒めて。

そう言う小さなスライムの頭を撫でてやる。

ブルンは、京楽の頭の上に乗って、遅いかかってくるサイクロプスの一つ目だけを的確に狙って、酸弾を飛ばした。

「鉱山だから、大きな魔法は使えないね。浮竹、任せてもいいかい?」

「ああ、大丈夫だ。皮膚が少し硬いが、ミスリルの剣で切れないわけじゃない!」

浮竹が、目を失って暴れまくるサイクロプスの攻撃をかいくぐり、その首を刎ねていく。

気づけば、サイクロプスの死体だらけになっていた。

魔石をとりだして、体は素材になりそうにないので、京楽の火の魔法で灰になるまで焼いてもらった。

「緊急性を要する割には、簡単な依頼だったな」

「危ない!」

そこまで、浮竹がいた空間が棍棒が襲ってきた。

ギガントサイクロプスが出てきた。

「京楽、大丈夫か!?」

「あいたたた」

「くくる~~~」

ブルンは、すぐに京楽に回復魔法をかけた。

「ありがとう、ブルン。ギガントサイクロプスか・・・でかいね」

「GYUUUUUUU!」

「この坑道では、爆発の魔法は厳禁だな。火の魔法も高威力のものは厳禁だ。氷か水か、その他の属性の魔法で倒そう!」

浮竹は、ミスリルの剣に酸の魔法をエンチャントして、ギガントサイクロプスの右足に剣を突き立てた。

「GUUUUUUUUU!!!」

ギガントサイクロプスは、怪我をいとも簡単に再生してしまった。

「こいつ、再生能力が高いな」

「じゃあ、氷漬けにしちゃおう」

「ああ!」

「「エターナルアイシクルワールド!!」」

二人が一緒に唱えた氷の上級魔法で、ギガントサイクロプスは氷漬けになったが、なんと氷を割って生きて出てきた。

「凍結魔法が効かないのか?」

「いや、ダメージは受けてるみたいだよ」

体の節々に氷が残り、動きは鈍くなっていた。

浮竹は、酸が付与されているミスリルの剣で、まず特徴的な目をつぶした。

「GUAAAAAAAA!!」

雄叫びをあげるギガントサイクロプスの肩に乗って、その首に剣を通す。

「GIIYAAAA!!!」

硬い皮膚を酸で焼いていくが、首を刎ねることはできず、再生していくものだから、浮竹はまだ傷が塞がっていない場所から、体内に向かって魔法を唱えた。

「レッドクリムゾン!!!」

「GIYAAAAAAAA!!]

体の内側から焼かれて、さすがのギガントサイクロプスも倒れた。

まだ痙攣して息のあるギガントサイクロプスの生命力には、感嘆するものがあった。

「ウォーターボール」

倒れてもう手足を動かせず、虫の息なので、水の魔法で顔を包み込んで、水死させる京楽であった。

「ウォーターボールは、簡単だけど、溺死するまでに暴れまくるからね。動きが封じられている相手に効果が高いよ」

「窒息死が一番苦しいからなぁ。ウォーターボールの餌食になるモンスターにはお悔やみを申し上げたい」

そんな軽口をたたきながら、ギガントサイクロプスから魔石を回収する。

「これまた、巨大な魔石だな」

「そうだね。さすがは上位種族なだけあるよ」

「くくるーーーー」

鉱山の奥から、まだ小さいサイクロプスが数匹出てきた。

「幼体か・・・かわいそうだけど。ウォーターボール」

「ウォーターボール」

死体を運ぶ手間を省くために、ウォーターボールで窒息死させた後、灰になるまで焼いた。鉱山なので空気が薄いため、一酸化炭素中毒にならないために、ウィンドの基本の風魔法で、新鮮な空気を送ってもらった。

「とりあえず、鉱山を一通り回ってみよう。まだサイクロプスの生き残りがいるかもしれない」

広い鉱山なので、マップを頼りに二手に別れてしらみつぶしに探したが、もうサイクロプスはいないようだった。

ちなみに、ブルンは回復魔法が使えない浮竹のもしものために、浮竹についていってもらっていた。

ミスリル鉱山の一番深くに、サイクロプスの卵を発見して、浮竹は次々と壊していった。

鉱山の奥深くは、サイクロプスの巣と繋がっているようで、サイクロプスの巣を見て回ると、活動していたサイクロプスは倒したのが全部で、幼体もいないし、卵も他になかった。

「サイクロプスの巣と繋がっていた・・・・・一応、教えておく必要があるな」

「くくるーーー」

「え、お腹すいた?そこらへんのゴミを食べていいぞ」

「くくる」

サイクロプスの巣があった場所には、ごみがいっぱい散乱していた。

そのゴミを綺麗さっぱり食べて、ブルンは満足したようだった。

「くっくるー」

「そうか、満足か。じゃあ、帰ろうか」

「くくる!」

京楽と鉱山の入り口で合流して、空間転移の魔法陣で帰ってくると、ギルドマスターのキャサリン、通称キャシーの口づけが、頬に待っていた。

「「ぎゃあああああああああ」」

「うふん、いやん、二人ともそんなに喜んでくれなくてもいいのよ?」

「誰が喜ぶか!ウォーターボール」

京楽は水を出すと、アイテムポケットからタオルを出して水に浸すと、頬をごしごしぬぐった。その後は、浮竹の頬もぬぐってあげた。

「緊急クエストだから、報酬金は高いわよ~?Bランクだけど、報酬金は金貨500枚よ!」

すでに、アークデーモンの件で助けた魔王配下の四天王、電撃のボルの妹を救ったことで、ボルからと、白金貨千枚を渡されていた。

金銭感覚がおかしくなりそうで、金貨500枚と言われたら、昔は飛び跳ねて喜んだが、今はああ、ありがとうと受け取るだけだった。

「魔石の鑑定と買取りを頼むよ」

「この巨大な魔石は?」

「ああ、それはギガントサイクロプスのものだよ。上位種族だから、魔石も大きいんだろうね」

「この魔石には、人の魔力の反応があります。多分、人工的に作り出されたた個体かと」

「Aランク以上の冒険者を緊急収集してちょうだい!」

キャサリンは、真面目な顔でギルドマスターとして、動き出す。

人の手によって、モンスターが生み出された可能性がある。

それは、冒険者ギルドにとっても、世界にとっても、衝撃的な内容であった。








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黒魔法使いと白魔法使い4

14階層は、ゴーレムばかりでた。

ストーンゴーレム、アイアインゴーレム、ファイアゴーレム、アイスゴーレム、グリーンゴーレムだった。

ファイアゴーレムとアイスゴーレムは反対の属性の魔法で京楽が倒していった。

グリーンゴーレムに火の魔法で、ストーンゴーレムとアイアンゴーレムは火の魔法を付与せたパーティーリーダーの剣できっていったが、アイアンゴーレムは硬かった。

新しい剣を手に入れたので、付与しても錆びない酸を付与して、アイアンゴーレムに切りかかると、酸にふれたところがじゅわっとと溶けていき、心臓部分にあったコアを破壊すること倒していった。

盾使いは、ストーンゴーレムとアイアンゴーレムの攻撃を全部引き受けて、新米斧使いと獣人盗賊は、グリーンゴーレムを倒していった。

新米斧使いは、力が強いのでストーンゴーレムもアイアンゴーレムも斬り裂いてしまった。

魔石だけ取り出して、アイテムポケットにしまい込む。

15階層はブラックベアとブラックサーペントが出た。

ブラックベアもブラックサーペントも、肉が食えた。

ブラックベアは毛皮を、ブラックサーペントは皮が素材となった。浮竹と京楽とパーティーメンバーたちは次々に倒していく。毛皮と皮と肉を京楽のアイテムポケットに入れて、16階層、17階層と進んで、16階層で出会った強敵コカトリスの卵をゲットして、その体もアイテムポケとに入れていた。
17階層にはセーブゾーンがあって、そこで遅めの昼食をとることになった。

ブラックベアとブラックサーペントとコカトリスの肉を適当に斬り分けて、野菜やキノコを入れて鍋にした。

コカトリスの卵は、〆の雑炊につかった。

「ふう、うまかった」

「おいしかった」

「うんうん、作った僕もいうのもなんだけど、適当な肉を鍋にしたわりにはおいしかったね」

「コカトリスがボスでもいいくらいの強さだからな。石化を解く魔法を覚えているが、誰も石化しなくよかった」

浮竹は、鍋を食べ終えて、一安心といったところだった。

コカトリスと遭遇したとき、強い毒をもっている尾の蛇を、まずはリーダーの剣士に切り落としてもらった。それから、鶏の両目を石化するので浮竹がサンシャインの光の魔法で潰し、京楽がエクスプロージョンの魔法を放って、トドメをさした。

肉は食えるので、エクスプロージョンの魔法は頭部あたりにしてもらった。

コカトリスの肉と卵はまだ残っているので、次の18階層に進む。

それまで草原地帯であったが、がらりと外観がかわって、砂漠地帯になった。

サンドワームの群れが出てきた。

倒していくと、魔石の他に、京楽が食べるので体液を採取しろという。

みんな嫌そうな顔をしていた。

でも、京楽が食べれるということはおいしいのだろう。緑色のグロテスクな体液を集めて、大きめのガラスの瓶に入れた。

それをアイテムポケットに入れて、19階層に進む。

19階層も砂漠で、サンドコヨーテとサンドスコーピオンが出た。どちらも食用には値しないと思われたのだが、京楽が倒したサンドスコーピオンの尾を切り離した胴体をアイテムポケットにいれた。
それかから、サンドコヨーテは毛皮だけをアイテムポケットにいれる。

20階層はいよいよボスで、サイクロプスだった。

一つ目の巨人は、斬りかかってきたパーティーリーダーの剣を弾き飛ばした。

「くそ、めちゃ硬い」

「まずは目をつぶそう」

浮竹の言葉に、盾使いがヘイトを稼いで挑発のスキルを発動させて、攻撃のターゲットを引き受けた。

その間に、獣人盗賊が投げたボウガンの弓がサイクロプスの一つ目をつぶした。

「ぐあああああああ!!」

サイクロプスは手をぶんぶん振り回し、暴れまくる。

盾使いは一度下がり、新米斧使いがサイクロプスの右腕を切り飛ばした。

「よし、じゃあ倒しちゃいますか」

「そうだな」

京楽と浮竹は魔法を唱え出す。

京楽と浮竹はLVカンストの99で、倒してもこれ以上レベルが上がらない。なるべく仲間たちに戦闘をさせて、LVがあがりやすいようにして、自分たちにふりわけられるはずだった経験値は、自然と仲間たちに振り分けられた。

それでも、浮竹と京楽が倒しただけでは、LVだけあがって技術がついていかないので、よほど危険なボスとかモンスター以外は、他のパーティーメンバーにも攻撃してもらった。

攻撃すればする分、経験値がたまる。

「アイシクルスピア!」

「ホーリーランス!」

それぞれ氷と聖属性の槍で体を貫かれて、サイクロプスは倒れた。肉は人間に近い体をした亜人の一種に近いので、食べないことにした。

20階層を踏破して、財宝の間が開いた。

金貨300枚とミスリルのインゴットが10個あった。

全部、浮竹と京楽以外の4人で分ける予定だった。

とりあえず、京楽のアイテムポケットに入れた。

そのまま21階層、22階層と進んで、22階層で夜を過ごすことしにた。

草原のフィールドなので、敵が近づいてきても分かりやすいからだ。

21階層も砂漠で、アイアンスコーピオン、デッドスコーピオンなどがでた。

体が硬いうえに猛毒なので、京楽の氷の魔法で屠ってもらった。

22階層では、キラーラビットが出たが、弱かったのですぐに倒せた。みんな、この新ダンジョンにきてLVも上がり、強くなっていた。

キラーラビットを20匹くらい屠って、毛皮と肉に解体する。

毛皮は京楽がアイテムポケットにしまい込んだ。

まず、キラーラビットの肉を適当な大きさに斬り分けて、コカトリスの卵をとかしたものにつけて、サンドワームの体液につけた。

「うわ、サンドワームの体液つけるのかよ」

「ピリ辛くておいしいんだよ?」

サンドワームは、食べれないかもしれないと思いつつも、昔京楽は焼いたものを口にしたことがあった。肉は口にできたものではなかったが、体液はピリッと辛くておいしかった。

それを高熱の油であげていく。

キラーラビットのサンドワームフライの完成だった。

バジリスクの残りの肉も同じようにサンドワームのフライにした。

サンドスコーピオンは茹でて、塩をまぶして、切り身をいれて中身の身を食べることになった。

今回のメニューは、食べるのに少し勇気が必要だったけれど、京楽がまずいものを作るはずがないと、皆信用して口にした。

「あ、辛くておいしい」

「ほんとだ、辛さと肉のうまみがマッチしてる」

「もっと辛くしたかったら、熱を通しておいたサンドワームの体液があるから、それをつけて食べてね」

例えるなら、エビフライのタルタルソースのようなかんじだった。

「サンドスコーピオンの肉は、カニの味に近いな」

浮竹が、サンドスコーピオンの切れ目から真っ赤になった身を口にした。

「でしょ。ほんとはアイアインスコーピオンもデッドスコーピオンも食べたかったんだけど、硬くてナイフが通らないから、辛抱したよ。ミスリル製のナイフが欲しいなぁ。今度の冒険に出るときは、ミスリルのナイフを用意しよう」

今のナイフは、普通の鋼鉄製だった。

少し欠けていた。

予備のナイフは5本はあるので、この旅の間でナイフが使い物にならなくなるということは、ないだろう。

「今日はここで野営しよう」

浮竹と京楽がパーティーに入る条件として、金銭の分配はいらないが、魔物食を食べること、あとは深夜の警戒への不参加であった。

浮竹と京楽は見張りに参加せず、他のパーティーメンバーのリーダーの剣士、盾使い、獣人盗賊、新米斧使いの順に、見張りの当番をした。

朝起きると、もう京楽は起き出して、朝食の準備をしていた。

余ったキラーラビットの肉を串焼きにしていた。野菜なんかも串に通して、朝飯はキラーラビットの串焼きだった。

「辛い味付けが欲しい人は、サンドワームの体液をかけてね」

浮竹をはじめとして、みんなもうサンドワームの体液が不味いとは思っておらず、辛いソースのような感じで、串焼きにかけて食べていた。

「さて、3日目の夜が明けた。あと4日、できるところまで探検しよう!」

もうすぐ、未踏破の26階層が見えてくる。

そんな階層であった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター65

藍染は、我が子ミライの絶対者の証を得るために、ミライを吸収した。

「あなた、どうしてミライを!」

「私が完全なる神になるためだ」

藍染は邪神から滅神になっていた。浮竹と同じ絶対存在になり、神格のある神になっていた。

「さぁ、シロ、ハル共にいこう。始祖浮竹と神喰らいの魔神京楽を倒しに」

シロとハルはただ頷いた。

純粋に藍染に恐怖するのだった。


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古城では、浮竹と京楽がポチとタマとその子供たちと遊んでいた。

ジリリリリリ。ピリリリリ。

深刻な警報音がなり、浮竹と京楽はポチとタマとその子供たちを巣の部屋に戻して、強力な結界を張った。

「やあ、ご機嫌いかがかな」

「藍染!ついにお前からやってきたか!」

浮竹と京楽は威嚇した。

背後には、シロとハルもいた。

「私は浮竹、君と同じ絶対存在になり神になった。もう、誰にも私の邪魔はできない」

「ゴッドフェニックス、カイザーフェニックス、エターナルフェニックス・・・・トリプルファイアフェニックス!」

藍染は、炎の禁呪を受けてもびくともしなかった。

「「エターナルアイシクルフィールド」」

氷の禁呪を受けて、体を凍らせるも、すぐに溶かしてしまう。

「浮竹、ちょっとやばいよこいつ」

「分かってる。隙をみたら、藍染の魂を喰え!来たれ、炎、氷、雷の精霊王!」

浮竹は、自分が召還できる精霊王を3人呼び出した。

「あの藍染をなんとかしてほしい」

「わかった我が友」

「契約者の願いを聞き届けてやろう」

「俺の出番じゃーーー」

炎と氷と雷の精霊王は、それぞれの属性を纏わせて藍染を攻撃した。

さすがの藍染も、神の力をもつ精霊王たちの魔法は効いたようで、傷を負っていた。

けれど、不老不死の呪いがあるせいで、傷は回復していく。

「始祖だけに厄介だな。京楽、今だ、魂を」

京楽は、魔神の咢で藍染の魂を喰おうとした。

しかし、魂は体と一体化して、食えなかった。

「だめだよ、浮竹。こいつ、魂を肉体と一体化している」

「じゃあ、倒せる方法がないのか」

「エターナルフェニックス」

3人の精霊王を精霊界に追い返した藍染が、魔法を放ってきた。

シロとハルは、ただ離れた位置から、その戦闘を見ていた。

割って入ったところで邪魔者にしかならず、傍観者と化していた。

藍染の放った不死鳥は、浮竹と京楽に火傷を負わせた。

浮竹はすぐに再生するが、京楽は血の魔法を使って回復するので少し遅くて、浮竹が京楽の傷に自分の血を浴びせた。

「はははは!エターナルフェニックスでこの威力!絶対者となった私には、もう怖いものなどない!」

藍染は滅神になっているのは分かったが、ここまで力が強くなるとは思っていなかった。

「どうする、浮竹」

「こうなったら、俺が魂をかけて封印するしか・・・・」

「だめだよ!そんなこと、僕が許さない」

「でも、このまま藍染を放置しておくと・・・・・」


「邪神や滅神には、神の罰が与えられる」

ゆらりと空間をまたぎ、姿を現したのは、浮竹の父である創造神ルシエードだった。

「ルシエード!」

「息災が、我が息子よ」

「お前の神の愛の呪いのせいで不老不死だが、何とか元気にやってるよ」

「ならば、いい」

「なんだぁ?神か?今の私は最高神にも匹敵する!創造神如きに、どうこうできると・・・」

藍染の動きが止まった。

「グギギギ・・・何故だ、何故絶対存在である私が!」

「吸収して得た絶対存在など、はりぼても同然。創造神であり、最高神である私の前では、児戯にも等しい」

「創造神ルシエードおおお!!!」

藍染は、全ての魔力を炎の不死鳥に注ぎこんだ。

「ワールドフェニックス!!」

禁呪中の禁呪の炎の魔法がルシエードを取り囲む。

けれど、魔力は分解されて、ルシエードに吸収されていった。

「なんだと!」

「息子らよ。今だ」

「「ワールドフェニックス×5」」

二人は、藍染の見せたワールドフェニックスという魔法をすぐに習得し、5回重ねの魔法で立ち向かった。

「ぎゃああああああ!私の体があああ!!」

炎に包まれて、のたうち回る藍染であるが、炎は一向に消えようとしない。不老不死であるため、死ぬこともできないでいた。

「今から、汝を滅ぼす。邪神も滅神も、等しく神の裁きを受ける」

「いやだ、私は世界を手にするのだ!」

黒こげになりながら、藍染はシロとハルに命令を下す。

今この隙に京楽だけでも滅ぼせと。

シロとハルは、魔法をで京楽に攻撃すると、魔神の咢で魂を喰われてしまった。

「ぐぐ・・・何故だ。私は最高神の力を手に入れたはずだ!」

「たかが滅神になったところで、最高神の力を手に入れたと思っていたのか・・・・哀れだな、藍染」

「うるさい!たかがヴァンパイの始祖如き存在で!」

体を燃やしながら再生を繰り返す藍染に対して、ルシエードが手をかざした。

「滅びよ」

「ああああ、嘘だああああ!この、この私があああああああ!!」

長い断末魔を残して、藍染は滅ぼされた。藍染は灰になっていった。

「ルシエード、何故前からこうしなかった」

「邪神から滅神になったからだ。そうでもしないと、このアビスの世界に降臨できない」

「そうか・・・藍染は、滅びたんだな?」

「ああ。もう復活することは・・・とりあえず、千年の間はあるまいて」

「ルシエ―ド、あとどれくらいこのアビスに降臨できる?」

「あと1週間といったとこころだな」

「それだけあれば、十分だ」


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浮竹と京楽は、結婚式を挙げることを決めた。

父であるルシエードを招いて。

血の帝国からはブラッディ・ネイの他に寵姫3名。

白哉、恋次、ルキア、一護、冬獅郎、平子が参加した。

人間社会からは、ギルドマスターと猫の魔女乱菊が参加してくれた。

京楽は黒のスーツを、浮竹は白のスーツを着て、浮竹だけ白いヴェールを被り、ブーケを手にしていた。

「汝、京楽春水。病める時も健やかな時も、浮竹十四郎を伴侶として愛することを誓いますか?」

「はい、誓います」

「汝、浮竹十四郎。病める時も健やかな時も、浮竹十四郎を伴侶として愛することを誓いますか?」

「はい、誓います」

今はペアリングはネックレスにしていた。

大きなブルーダイヤの指輪をそれぞれはめ合って、キスをした。

みんなから、ヒューヒューともてはやされた。

「ルシエード。俺は、あなたが俺を捨てていったのだと恨んだ時期もあった。だが、あなたは俺を愛してくれていた。俺の伴侶の京楽だ。京楽を最後の血族にする」

「兄様は、名実共に京楽ものになってしまった。チェッ、面白くない」

「ブラッディ・ネイ・・・・・・」

浮竹が哀しそうな顔をするので、ブラッディ・ネイも態度を改める。

「兄様はボクの者でもあるけど・・・・・結婚、おめでとう」

「ありがとね」

「ふん、ひげもじゃに言ったんじゃないからね」

創造神ルシエードは式に参加した後、浮竹に祝福をかけた。

「汝の愛が永遠であるように」

「ありがとう、ルシエード」

浮竹は、ブーケを投げた。

それは猫の魔女乱菊の手に落ちて、乱菊は最近ギンという青年と付き合いだしたと告白した。

「おっと、次の結婚は乱菊か?」

浮竹がそう言うと、乱菊は顔を赤くして、浮竹の背中をばしばしと叩くのあった。


ルシエードは、この世界に在り続けれる最後の時まで、浮竹と同じ古城で過ごした。

「これは?」

「神でなくとも、神界に入ることのできる特殊な指輪だ。汝と、汝の伴侶の分を用意している。何かあれば、それで神界に入り、私のところにくるといい」

「例えば、クッキーを焼けたからもっていくとか、そんなのでもいいのか?」

「ああ、構わぬ」

「そっか・・・・・」

浮竹はその場で伸びをして、過去を振り返る。

藍染の駒のいろんな相手と戦った。

京楽はただのヴァンパイアロードであったが、魔神となり浮竹に並ぶほどの力を手に入れた。

もう藍染はいない。平和な時代の到来であった。

「では、明日の昼に私はこの世界を去る」

「うん、分かった」


次の日の昼になり、昼食を食べ終えたルシエ―ドは、浮竹に別れの言葉を投げた。

「次に会う時は、神界へおいで」

「義父さん」

「なんだ、魔神京楽」

「あなたの息子さんは、僕が責任を持って幸せにします」

「こら、京楽」

「いいじゃない。結婚式もあげたんだし」

「分かった。我が息子を頼む」

「はい!」


ゆらりと、ルシエードは姿を消して神界に戻っていった。

ちなみに、昼食は生きたマンドレイクをぶち込んだシチューであった。ルシエードは平気な顔をして、おかわりまでした。

マンドレイクは、創造神には効かないようだった。


-----------------------------------


「ああ!」

「初夜になるからね。たっぷりと可愛がってあげる」

「やああ、結婚してもう5日になるだろう!それを初夜だなんて!」

「だって、君のお父さんがいたんだよ?同じ古城にいるのに、こんな行為を実の息子に働いていましたとばれたら、何か罰を受けそうだよ」

「んあああ!!」

京楽に突き上げられて、浮竹は啼いた。

左手の薬指には、スタールビーの指輪をはめて、首からは結婚指輪を通したチェーンのネックレスをしていた。

「あ、あ!」

動かれるたびに、首からぶら下げた結婚指輪が光った。

「んあああ!」

「愛しているよ、十四郎。結婚もしたし、もう永遠に僕のものだ」

「あああ、春水、春水」

背中に手を回して、爪を立てた。

「お前も、俺のものだ・・・・ああ、もっとお前の子種をくれ」

すでに何度か胎の奥にだされていたが、物足りなくてもっととせがむ。

「君が満足するまで、出してあげる」

「ひああああ!」

奥をゴリゴリと削られて、浮竹はオーガズムでいっていた。

「あ、やあああ!!」

浮竹のものをしごきあげて、射精させる。

「んああああ!!」

同時に首に噛みついて吸血してやると、連続でいきまくって、浮竹は背を弓なりに反らせた。

「あああ、変になる!」

「大丈夫、僕がいるよ」

「あ、春水、愛してる」

「うん、知ってる」

前立腺をすりあげながら、入ってきたものを締め付ける。

「んっ、僕も出すよ」

「あ、あ、孕むくらい奥に出してくれ」

濃い精液を奥に流し込むと、浮竹はまたせがんだ。

「まだいけるだろう。もっともっと、お前をくれ」

「精強剤飲んで正解だったね。いいよ、君が満足して嫌がるまで出し続けてあげる」

「ひう!」

ごりっと奥を抉られて、浮竹はもう出すものがないのか、トロトロと先走りの蜜だけを出して、オーガズムでいっていた。

「ひあああ!

京楽は、それから3回ほど浮竹を犯して、中に精液を注ぎ込んで満足した。

「んあ・・・もう、いらない」

「うん。僕ももう出ないから」

浮竹の意識がまだはっきりしているので、シーツごと抱き抱えて、風呂に入って中に出したものをかき出した。

京楽は、自分でも恥ずかしくなるくらいの量を、浮竹の中に注ぎこんでいた。

「んあっ」

指でかきだされる行為にも、快感を覚える浮竹。

京楽はもう出すものがないで、元気であればこの場で浮竹を犯すところだが、我慢した。

お互いの体と髪を洗って、風呂からあがると水分をふきとり、髪を温風を出してかわかしてから、シーツそ変えたベッドで微睡むのだった。


藍染が滅んだことで、イデア王国で反乱がおこった。

それまで虐げられ、洗脳されていた民が正気に戻ったのだ。

女神オリガは捕まえられて、断頭台の露ととなった。

女神アルテナの肉便器は何をしても破壊できないので、地中深くに産められた。

真の意味で、平和の時代が訪れようとしているのであった。



                  fine











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エンシェントエルフとダークエルフ14

浮竹と京楽のブラックスライム(クラスはヒュージスライム)が、ヒーリングスライムになった話は、瞬く間に冒険者ギルド内で噂になった。

依然として、需要があるために、ブルンにはゴールデンポーションを作ってもらい、冒険者ギルドと市場には流していた。

ゴールデンポーションは高いが、効能がすごいので、高ランク冒険者の死亡率も急激に下がった。

今、世界中で活躍するSランク冒険者の数は122人。

この前のSランク昇格試験に、45人が合格して、世界に散っていった。

イアラ帝国では、7人のSランク冒険者がいた。

Sランク5人でできているパーティーと、Sランク二人、Aランク二人でできているパーティーだった。

浮竹も京楽もる強いので、よくパーティーに誘われて、一時的に仲間になることはあったが、そのままパーティーに残ってくれと言われても、残ることはなかった。

基本、浮竹と京楽はペアで、そこにヒーリングスライムのブルンがついてくる。

3人パーティーというほうが正しいだろうか。

ヒーリングスライムになってからも、ブルンは酸弾を飛ばせるので、攻撃力はあった。

ヒーリングスライムに魔法をかけてもらうと、欠損していた部位が復活する。

そう騒ぎになって、一度王宮まで行ったことがあった。イアラ帝国のTOPは、女帝の卯ノ花烈であった。

夫である更木剣八の失った右手を治してくれということで、浮竹と京楽はその言葉に従って、ブルンに癒しの魔法をかけさせた。

「まぁ、本当に右腕が」

「うお、まじで元に戻りやがった」

女帝卯ノ花も更木も喜んで、白金貨100枚をもらった。

白金貨は1枚で大金貨10万枚である。大金貨を1000万枚もらったことになる。

大金すぎて、頭がおかしくなりそうだった。

とりあえず貯金しておいた。

まとまった金が手に入ったからといって引退する気はなく、Sランク冒険者を目指し、




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エンシェントエルフとダークエルフ13

浮竹にとって師匠である、剣士の京楽の家の隣を借りて、ブルンとプルンは数日連続して一緒に過ごせて、とても幸せそうであった。

「くくるーーー」

「仕方ないだろう。今日でお別れだ。またすぐに会いにこれるから」

「くくー」

「プルルン?」

どうしてお兄ちゃんいなくなっちゃうの?

プルンには分からないことだらけだった。

エルフの浮竹と京楽は、けっこうが額を貯金しているが、仕事をしなければいけない。Sランクが世界で77人しかいない現在、Aランクが実質的な冒険者ギルドのTOPであった。

そんな二人がいつまでも仕事の依頼を受けないと、溜まっていく依頼もある。

人が受けたがらないような依頼まで受けるので、余計だった。

さて、イアラ帝国の帝都アスランに帰ってきた二人は、さっそく冒険者ギルドに出かけた。B~Sランクの依頼書がたくさん掲示されてあった。

「どれどれ・・・Sランクはエンシェントドラゴン退治、ファイアドラゴン退治、ブラックドラゴン退治・・・どれもこれもドラゴン退治ばかりじゃないか!僕たちが倒せるはずもない」

「普通にAランクの依頼を受けよう。これが一番古いな。サンドワーム退治・・・あああ」

サンドワームは、砂漠のミミズのモンスターだ。肉食で、地上にいるモンスターや人間を襲って地中に引き込み、食べてしまう。

見た目のグロテスクさと、全く素材にならないから人気がなく、何時まで経っても放置されている依頼であった。

「あらん、ちょっとだけお久しぶりね、あなたたち♡」

「キャサリンギルドマスター・・・・・」

「いやーん、キャサリンじゃなくって、キャシーって呼んでっていってるじゃない~」

ギルドマスターはオカマで、ふりふりのゴスロリの衣装をしていた。

クネクネしているので、いつもは視界に入っても、見ないふりをしているのだが、顔は顎が割れているし、ヒゲがこくて剃っても青いので、影で青髭オカマと呼ばれていた。

「サンドワームの仕事、引き受けてくれるのかしらん。誰も引き受けてくれないから、困っていたのよね♡」

「引き受けるから、顔を近づけさせないでくれないか」

「あらん、うっきーちゃん今日も男前♡」

言葉と一緒に軽く尻を触られて、浮竹はキャサリンの足を思いっきり踏んづけていた。

「いやん、乙女に乱暴はだ・め・よ♡」

「この依頼、行ってくるから馬車かりるよ。3日はかかるだろうから、金貨6枚置いていくね」

冒険者ギルドは馬車の貸し出しもしている。御者のいない馬車なら1日金貨2枚。御者がいると金貨3枚だ。

ちなみに馬を浮竹も京楽も操れるので、お互い睡眠をとって交代で馬車を走らせた。

馬がつぶれるといけないので、途中途中で休憩をとり、1日10時間ほど走ってもらった。

葦毛のよい馬で、よく訓練されていて人なつっこかった。

「くくるー」

ブルンが、馬のだしたあれを食べる。

街道でされたら、処分に困るので、正直助かった。

砂漠地方について、その熱さに服を薄くしようとして、浮竹に怒られた。

「暑くても、フードとマントをかぶっておけ。熱射病になるぞ。水分は十分にとれ」

ダークエルフはもともと密林に住んでいたので、砂漠の経験はほとんどなく、浮竹の指示に従った。

水分をいらないとかんじても飲むようにした。

水は魔法でいくらでも作り出せる。

「氷水を袋に詰めたものだ。これで熱い体を冷やしておけ。念のために、涼しい気温になれる魔法をかけておく」

涼しくなる魔法は民間魔法で、使える者は少なく、重宝された。

「あ、涼しい~。それにこの氷水の袋きもちいいよ」

「俺たちエンシェントエルフは、ダークエルフよりも気温の変化に敏感だからな。砂漠地帯に入る前に、涼しくなる魔法を使っていたが、お前にもかけてやればよかったな」

「ううん、僕はもともと密林に住んでいたから、暑さには強いよ。ただ、こんな乾燥した暑さの直射日光ははじめてだけど」

「砂漠は死の世界だ。気をつけろ」

「SHYASYASYA!」

馬車を砂漠の入り口付近において、サンドワームが出そうな砂場にきたのだが、早速反応があった。

「GYAOOOOOO!!」

涎を垂らした巨大な口をもつ、サンドワームが現れた。それも一遍に6匹も。

「エターナルアイシクルワールド!」

「ウォータープリズン!」

5匹を仕留めたが、1匹を仕留めそこねた。

「危ない、ブルン!」

「くくるーーー!!!!」

ブルンは、酸の液体を吐いて、サンドワームをあっけなく倒してしまった。

「ブルン・・・・お前、これ一応Aランクモンスターだぞ。よく倒せたな」

「くっくるーー!!」

ブルンの真っ黒な体が光り出した。

「なに、どうしたの?」

「多分、存在の進化だ。ブルンはブラックスライムだけど、種族は精密にはヒュージスライムになっている。元々会った時からヒュージスライムでLVも高かった。さっき、サンドワームを倒したことで、獲得経験値が一定数に満ちて、進化を始めたのだろう」

「なんのスライムになるんだろう」

「ヒュージスライムはビッグスライムの亜種だから、スライムロードかキングスライムか・・・・」

ブルンの光が終わった。

そこには、黒いが頭の上に薄い輪っかのあるスライムになっていた。

「ヒーリングスライムだ!このまま進化していけば、エンジェリングスライムになれるぞ!」

浮竹は興奮していた。

エンジェリングスライムは文献でしか見たことがない。

世界でも数例の目撃例がなくて、とても珍しいスライムだった。

レアメタルスライム並みに珍しい。

ブラックスライムの色を保ったまま、エンジェリングスライムに進化できるとしたら、相変わらずゴミは処理してくれるのだろう。

「くくるーーー」

ブルンは、暑さで奪われた体力を、ヒーリングで癒してくれた。

「ヒーリングスライムは、ヒーリングをするからな。京楽、お前の回復魔法より効くぞ」

「わー、僕の存在意義が1つ奪われた。まぁいいや。ブルン、君凄いね。ヒーリングスライムだなんて、冒険者ギルドに連れていっても大丈夫かな?」

「京楽のシャイターン一族の紋章が刻まれてある。盗まれても、自力で戻ってこれる知恵と手段はあるし、シャイターン一族の紋章があれば、売りものにはならないから、売られようとしても捨てられるだろう」

灼熱のシャイターン。魔王ヴェルの配下の四天王の一人であり、京楽の実の母親であった。

その一族のハヤブサの紋章を、テイムした時に刻んだのだ。

黒い体の一部に、うっすらとだが輝くハヤブサの紋章が光っていた。

「じゃあ、連れて行っても大丈夫か」

「誰でもかわまずヒーリングするから、ちゃんと癒す相手は味方とこっちが許した相手だけと覚えさせる必要があるな」

「くるるーー」

ブルンの知能は、15歳くらいになっていた。

任せろといっているらしかった。

体はヒュージスライムの頃より一回り小さくなって、両手ですくえるような重さだった。

「軽いから、持ち運びが楽になったね」

「くくるー」

どんどんけがしてくれ。癒すから。

「おいおい、そうほいほいと怪我をしていちゃ、Aランク冒険者なんてやっていけないよ」

「くくるーーー」

ヒーリングスライムになったブルンが、急いで馬車のあるほうへ向かっていった。

「どうしたの!」

「くくる!!!」

「馬が襲われてるって!」

「サンドワームの生き残りかい!」

その通り、サンドワームの生き残りが馬を襲って、今すぐにでも食べようとしている瞬間だった。

そのサンドワームの口の中に、酸の液体を注ぎ込むブルン。

「でかした!エアリアルエッジ!」

「GROROREORO!!」

サンドワームは酸で焼かれて、体を斬り裂かれて大地に横たわる。

まだかろうじで生きていた。

「馬は!?」

「だめだ、複雑骨折してる。これじゃとても、走れない」

「くくるーーーー」

ブルンは癒しの魔法を馬に使った。馬は何事もなかったかのように立ち上がり、蹄で地面を蹴って、元気さをアピールしていた。

「これ、ゴールデンポーション並みの効き目じゃない?」

「ヒールの範囲や加減の仕方も教えておかないとな」

さっきのヒールは範囲魔法だったのか、死にかけていたサンドワームが復活していた。

「アイシクルクラッシャー!」

「アイスチャクラム!」

氷の輪っかで体を斬り裂かれ、とどめに氷の巨大な塊が天から降ってくる。

「GYOAAAAAAAAAAA!!」

断末魔をあげて、最後のサンドワームは潰れて息絶えた。

「くくるーー」

「こら、ブルン。敵まで癒してどうするの」

「くくる?」

「いいか、ちゃんとヒールを使う相手とヒールの威力を選べ。できるだけ単体に魔法をかけること。敵には指示がないまでヒールは一切使わないこと。味方単体のヒールの魔法は最上級で構わない。癒してくれと頼んだ相手は、まずは中級の回復魔法を頼む」

「くくるーーーー!!」

わかったよと、ブルンはぽよんぽよんと飛び跳ねて、浮竹の頭の上に乗った。

「小さくなったなぁ。プルンにあった時、びっくりされるんじゃないのかい?」

「くくう?」

どうして?僕は僕だよ?」

「いや、君小さくなった上に頭に薄い輪っかもあって、前と見た目かなり違うから」

「くくーー」

「ブルンなら弟だから大丈夫?それもそうかもね」

ヒーリングスライムに進化したブルンを連れて、馬車に乗って冒険者ギルドに帰った。

サンドワームの魔石は、ブルンにとってもらった。なぞの液体にまみれたサンドワームに触りたくなかったからだ。

7個の魔石を提出すると、受付嬢は早速鑑定を行い、サンドワームの魔石であることが確認された。

今まで放置していただけあって、魔石の魔力濃度が高くて、魔石は7匹分で金貨50枚になった。

ただ、報酬金が金貨100枚と、Aランクの依頼では一番最低だった。

他に素材もなかったので、収入は金貨150枚。出費が金貨6枚なので、利益は金貨144枚だった。

Bランクの収入より少ない。

「サンドワーム退治はもうこりごりだ」

「あの気持ち悪い液体、触れたくないしね」

「いやん、二人ともお疲れさま♪」

キャサリンは、二人の尻を撫でた。

「セクハラするな、この青髭オカマ!」

「そうだよ、セクハラ反対!」

「酷い!ただの愛情表現なのに!あ~ら?この子、なんか変わったわね。一回り小さくなってるし、薄いけど輪っかもついてる・・・・このままいけば、エンジェリグスライムに・・・」

「わ~~!!いくぞ、京楽」

「待ってよ、浮竹」

ブルンを懐にしまいこんで、浮竹と京楽は、ギルドマスターのキャサリンの魔の手から、ブルンを守るべくマイホームに帰っていくのであった。


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エンシェントエルフとダークエルフ12

イアラ帝国の帝都アスランで、第15回テイムモンスターお披露目会があった。

冒険者ギルドに登録している者は参加必須で、使い魔もテイムモンスターにあたるらしい。

テイマーの職業についている者たちは、思い思いのままに、複数のテイムモンスターを連れていた。

京楽が参加することになり、京楽はげんなりしていた。

できればふけたいが、すでに参加提出書を出しているために、クロ、クロ吉、ブルンを連れてお披露目会にでた。

「おお、すごいぞあいつ、グリフォンつれてやがる」

「あっちはシルバーウルフだ」

「あっちが一番すげぇんじゃねえ?ベビードラゴン連れてるぜ。幼生体のまま過ごすけど、一応ドラゴンだぜ」

「おい、あいつ見ろよ。リスに黒猫にスライムだぜ。だっせえええ」

そう言われているが、京楽は堂々と歩き、その後ろをクロとクロ吉とブルンがついていく。

「では、自己紹介と特技をお願いします」

藁人形の的が用意された。

グリフォンは、空を飛んで的めがけて奇襲をかけた。

シルバーウルフは吠えて、的めがけて噛みつき、牙で攻撃した。

ベビードラゴンは炎のブレスを吐いた。

クロはマッピングと隠密を見せて、クロ吉は人間と意思疎通できると会話して、簡単な魔法を唱えて的にあてた。

ブルンは、会場に設置されてあったゴミ箱までいき、ゴミを全部消化して、その後にヒーリング草を大量に食べて、桶の中に回復のポーションを流していく。一応、的には酸弾を投げておいた。

「おい、この黄金色のポーションって」

「ああ、確か傷が全回復して、欠損してしまった四肢まで戻って、おまけに疲労がとれて、魔力も回復するという、あの伝説のポーションじゃねぇか!」

ざわざわと、周囲が騒がしくなった。

「あの、これって伝説とまで言われたゴールデンポーションですよね」

「うん、そうだけど」

京楽が困った顔でいうと、冒険者たちが騒ぎ出した。

「俺に売ってくれ!小瓶1個で金貨2枚でどうだ!」

「いや、俺にうってくれ!小瓶1つで大金貨1枚だす」

「僕にも売ってくれ」

「その桶にある分は好きにしてくれて構わないよ。でも、もしもブルンをポーションを作らせるために攫おうとしたら・・・・・」

「俺と京楽が許さない。Aランク冒険者だ。知り合いにはSランク冒険者もいるし、ギルドマスターのキャサリン・ヒィル・ロベン・アーチもこちら側についているからな」

浮竹は、不審な動きをしていたCランク冒険者を睨んだ。

ブルンを誘拐しようとしていたCランクの冒険者は、震えあがった。

Aランク冒険者だけでも厄介なのに、Sランク冒険者に知り合いがいて、ギルドマスターとも親しいという。あのオカマのギルドマスターは、キャサリン・ヒィル・ロベン・アーチとうフルネームで、オカマだが元Sランク冒険者のTOPと言われていた人材である。ちなみに、貴族出身であった。お金持ちのオカマのギルドマスターだった。

「今回のお披露目会の優勝者は、京楽選手です!」

「ええ、お披露会なのに優勝とかあるの!?」

「ふざけるな!どう見ても俺のグリフォンのほうが強いじゃねぇか!」

グリフォンをテイムしていたテイマーが苦情をいうと、いつもは冒険者ギルドの受付嬢をしている女性は、静かにこう言う。

「グリフォンは確かにテイムするには希少かもしれません。でも、それならあのブラックスライムのほうが余計に希少です。それにあなたのグリフォンはただ空を飛んで的を攻撃しただけです。
それにくわえて、京楽選手のクロは、自動でマッピングスキルをもって、隠密で先にいってくれるとても役に立つ使い魔です。クロ吉は魔法を唱えれるだけでなく、人語を理解する知恵をもっておます。
何よりブルンというブラックスライムは、希少性の他に酸弾を的に浴びせてドロドロにしました。地面まで溶けてました。
実際に戦闘になったら、よほど強いモンスターでもない限り、やられるでしょう。何より、効果の高いゴールデンポーションを生み出します。ヒーリング草を食べただけで、ゴールデンポーションを作れる存在など聞いたことがないです。高位の錬金術士にも作るのが難しいのに」

「ちっ、もういいよ。優勝は京楽でいい」

ベビードラゴンやグレイウルフ、その他のモンスターをテイムしていた今回参加していた30人ほどのテイマーも、優勝は京楽であると認めた。

「それより、ゴールデンポーションを予約していいか」

ゴールデンポーションの購入予約が殺到した。

そこらは、受付嬢が対応してくれた。

「くくるーーー」

「ブルン、大変だぞ。これから、定期的にゴールデンポーションを作ることになった」

「くくる」

「え、どうってことないって?それより腹減った?」

浮竹がそれを聞くと、京楽と顔を合わせて、会場の他のゴミをブルンに食べさせてやった。

「くっくるー」

「満足だって」

「じゃあ、帰ろうか」

「うん」

優勝賞品のお米券金貨5枚分を手に、マイホームに帰還した。

『やぁ、ダークエルフの魔法使いのボク』

「なんだ、来ていたのか。式でも飛ばしてくれればよかったのに」

『プルンが、どうしてもブルンと会いたいって聞かなくてな』

精霊の浮竹が、プルンを帰ってきたブルンと引き合わせた。

「プルルン!!」

「くるくるー」

お兄さん。弟よ!

そう会話をしながら、2匹はにゅっと手を出すと握手した。

それからけっこう広い部屋中をぽよんぽよんとはねて、追いかけっこをしだした。

『今度プルンかブルンがどっちかに会いたくなったら、そっちから来てね』

「ああ、分かった。どうせ隣国だ。馬車で数時間でつく距離だしな」

イアラ帝国のエルフの二人が住んでいる帝都アスランと、ロスピア王国で退治屋を営んでいる家とはそう遠くはなかった。

「お米券を金貨5枚分もらったんだ。二人じゃ食べきれないだろうから、3枚分もらってよ。そちのプルンは、お米も食べるでしょ?」

『分かった、もらっておく』

精霊の浮竹は、エルフの京楽から金貨3枚分のお米券をもらった。

「ププルーー」

「くるっくるー」

プルンとブルンは、りんごとゴミを与えられて、美味しそうに食べていく。

ゴミはどう見てもそこらへんの雑草とか枯葉を集めたもので、土がついていたがブルンは関係ないように食べていった。

部屋の掃除もブルンに任せてある。

いつも綺麗ピカピカだ。

『いいねぇ、そっちのブルンの特技。プルンの兄としてもらっていきたい気分だよ』

「いくら師匠の頼みでも、ブルンはやれんぞ」

『分かってるって。ただの冗談だよ』

「くくるーーー」

ブルンが、我がままをいいだした。

「ええ、泊まりにいきたい?」

『お、いいね。今夜はこっちに泊まるから、明日おいでよ』

「でも仕事はどうするの?」

『こっちは今のところ依頼はないから。緊急で依頼があった場合、出かけるけどね。留守番は任せれるでしょ?』

「仕方ない。今日は泊まってもらって、明日師匠の家にいこう」

「プルルン!」

「くくるー」

プルンとブルンは喜んだ。

ずっと一緒にいたいから。

でも、飼い主が互いに違うので、我がままを言わなきゃ会えない。

それがもどかしい。

特にプルンは幼いので、何故兄に会えないのか分かっていない。

兄のブルンは10歳程度の知能をもっているので、何故会えないかとかは全て知っていた。

「くくるー」

「え、プルンと一緒にソファーで寝る?もう好きにしてよ」

「プルルン」

「くくー」

プルンとブルンは、くっついて寝るのだった。

ブルンは白く、プルンはピンク色なって喜んでくっつきあって、しばらくおしくらまんじゅうのようなことをしていたが、疲れが出たのか寝てしまった。

大人たちはまだ寝ない。

夜の9時を過ぎた頃だった。

年代もののワインを取り出してきて、4人で飲んだ。

4人とも、しっかり貯金しているので、数日仕事を休んでも平気なので、その日は久しぶりに少しだけ夜更かしをした。

次の日に、少し遅くおきたのは仕方のないことだった。



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エンシェントエルフとダークエルフ11

今回は、隣国であるロスピア王国の冒険者ギルドにして、ダンジョン探索がメインになったギルドに、浮竹と京楽はきていた。

イアラ帝国の依頼で、ロスピラ王国にある、あるダンジョンのモンスターからとれる血液を、採取するという依頼だった。

ロスピア王国の冒険者ギルドに立ち寄ると、クエストは全部ダンジョン関係のものになっていた。

「あの、紹介状をもってきた」

ギルドの受付嬢は、奥に通るように案内してくれた。

「ほう、これまた浮竹と京楽によく似ておるのお」

「あの、それは剣士の京楽と妖刀の精霊の浮竹のことですか」

「そうじゃ。あやつらはこの冒険者ギルドには出禁になっておるからの。入ってくることはないが、外で何度も姿を見ておるよ」

今回は、クロとブラックスライムのブルンも連れてきていた。

「この依頼内容を達成したいんだ。冒険者の証と、ダンジョンに立ち入る許可が欲しい」

「よかろう。これが冒険者の証でこれが立ち入り許可証だ」

「ありがとうごいます」

京楽が丁寧な口調でそういうと、山じいと呼ばれるギルドマスターは。

「あやつに礼を言われてるようでこそばゆいわい」

と言って、二人を自由にした。

ちなみに、血液の採取相手はゴールデンバジリスク。

Bランクダンジョンの40階層にいるらしい。

さっそく、馬車でそのBランクダンジョンがある場所にくると、見回りをしていた兵士にダンジョンへの立ち入り許可証と冒険者の証を見せると、簡単に通してくれた。

入口で、剣士の京楽と精霊の浮竹の姿は人がいるため見えなかったが、妖刀がかたかたと剣士の京楽の手で震えていた。

『プルンがどうしても一緒行くといって聞かなくてね。一緒に連れて行ってやってくれないかい』

「わかった。一時的に預かる」

浮竹はプルンを受け取った。

プルンは、エルフの京楽の肩にいるブルンを見て、お兄ちゃんとポンポンはねた。

ブルンもまた、弟だとポンポンはねた。

剣士の京楽は、そんなプルンを少し困った顔で、エルフの浮竹に渡した。

剣士の京楽と精霊の浮竹はダンジョンに入れないので、外で待つことになった。

Bランクダンジョンでは、蛇を中心としたモンスターがよく出現した。

バジリスクも尾は蛇で、顔と体は鶏だ。睨まれると石化する可能性があるので、なるべく素早く息の根を止める戦法でいくことにした。

ブラックサーペント、巨大な黒蛇が30階層のボスだった。

Aランクダンジョンで見かけるモンスターで、その皮はよい鞄や革製品の材料として、肉は高級食材としてもてはやされているので、倒すと体ごとアイテムポケットに収納する。

30階層の財宝の間が開く。

金貨が200枚と、ミスリルのインゴットが5本ほどあった。

「今日は、ここで野営しよう」

「モンスターが出てこないから、財宝の間が一番安全だしね」

クロは、モンスターに見つからないように今までの道を、先にいって自動でマッピングしてくれて、プルンとブルンは、モンスターをみたらそれぞれ攻撃魔法と酸弾で倒していた。

浮竹と京楽も、主に火の魔法でモンスターを討伐していく。

蛇系が多いので、毒には注意した。

蛇が多いので、ドロップ品も蛇の皮だったりした。

アイテムポケットは、すでに100体近い蛇の皮でいっぱいだった。

まだまだ入るが、とりえず30階層に着た頃には日は沈んでいたので、財宝の間で寝ることとなった。

「ププルン」

「くくるーー」

プルンとブルンは、ぽんぽんはねながら、追いかけっこをしていた。

そこに黒リスのクロも混ざった。

「おーい、夕飯できたぞー」

「プルルン!」

「くくるーーーー」

夕食は、ポトフだった。

プルンの食事は林檎2つで、ブルンの食事は雑草の束だった。

「プルルン?」

それ、おいしいの?」

プルンが兄のブルンにきくと、ブルンはおいしいよと答える。

「くくるーーー」

「プルルン」

じゃあちょっとちょうだい。

「くるるー」

いいよ。

そうして、ブルンは雑草を少し食べてしまい、その苦さに緑色になって、顔もうげぇという顔になった。

「くるるー?」

無理しないでね。僕の食事は雑草とかゴミだから。

「プルルン」

無理言ってごめんね。雑草、もっとおいしければいいのに。

「くくるーー」

僕には十分おいしいよ。

そんな会話をするスライム2匹をほんわりと見ながら、浮竹と京楽も作っていれておいたポトフを食べていくのだった。

ちなみに、クロの餌はどんぐりだった。

-------------------------------------

「SYAAAAAAAA!!」

40階層のボスは、普通のバジリスク5体とゴールデンバジリスクだった。

「エアスラッシャー!」

まずは先手必勝とばかりに、バジリスク5体の尻尾の蛇を切り落とす。ゴールデンバジリスクの尻尾の蛇も切り落とした。

これで石化の心配はなくなった。

「サンダーボルテックス!」

バジリスクたちに雷の呪文を浴びせると、バジリスクたちは体を硬直させた。

そこを、ミスリルの剣で火を付与した浮竹が、鶏の頭をはねていく。

鶏の頭は、はねられて血を流してもしばらく生きていたが、直に死んでいった。

「残ったのはゴールデンバジリスクのみだね」

「そうだな。血をなるべく零さないよう、凍結の魔法をかけよう」

「分かったよ」

「「エターナルアイシクルワールド!!」」

二人で放った氷の上位魔法で、ゴールデンバジリスクは見事にかちこちに凍って、息の根を止めた。

「このままアイテムポケットに収納してしまおう」

「そうだね。これなら、解凍すれば血がいつでもとれる」

「お、巣があったぞ。ゴールデンバジリスクは金の卵を産むからな・・・どれどれ、お、2つも金の卵がある!」

中身は金ではないが、殻は金なので、お金になるので二人はアイテムポケットにゴールデンバジリスクの金の卵を放り込んだ。

「ププウ」

「どうした、腹がすいたのか?」

「ププー」

「ほら、りんごだよ。僕らも昼食にしよう。財宝の間にとりあえず行こう」

プルンは器用にりんごにかじりつきながら、ぽよんぽよんとはねた。

財宝の間には、金貨250枚と黄金の食器が置いてあった。

全部、アイテムポケットにしまいこむ。

「よし、昼ごはんにしよう」

「そういえば、剣士の京楽と精霊の浮竹は大丈夫かな?1日を丸々ダンジョンで過ごしてしまったけれど」

「大丈夫じゃないかい?兵士の詰所もあるだろうし、冒険者が寝泊まりする施設もある」

浮竹と京楽は、プルンを託されたので、きちんと面倒を見る必要があった。

プルンにもう一度りんごをあげた。

「プルー」

プルンは、嬉しそうにりんごを食べていく。

「卵も手に入ったし、簡単に卵スープにでもするか」

「バジリスクの卵って、黄身あるの?」

「あるぞ。新鮮だぞ」

浮竹は、黄金の卵の中身を割って、鍋にいれた。

その殻をブルンが食べたそうにしてるが、純金なのでとっておくことになった。

かわりに、39階層で生えていたヒーリング草をあげた。

「くくるーーー」

おいしい、おいしい。

「くくる」

回復液だしそう。

「うわああ、まて、ブルン、もったない、器!」

なんとか卵スープを入れる前の器に回復液を満たしてもらい、その薬をためしに一口飲むと、戦闘でいつの間に負っていた小さな傷が癒えた。

あと、疲労回復の効果もあった。

消費した魔力も少し戻った気がする。

「プルルウ」

お兄ちゃんすごい!

プルンは飛び跳ねて喜んだ。

「くるるー」

そんなに凄いかな?

ブルンは体の色を真っ白にして、ぽんぽんとはねた。

ダンジョンの転移魔法陣で、入り口に戻った。

「プルンを返すよ」

『ああ、うん。楽しかったか、プルン?』

「ププルー!!」

とっても楽しかったよ。お兄ちゃんとモンスターいっぱいやっつけた。

「くくるー」

弟よ、またね。

剣士の京楽は、人がいないので精霊の浮竹を連れて、プルンを肩に乗せて自分の家に帰っていった。


そんなこんなで、ゴールデンバジリスクの血液入手は、凍ったゴールデンバジリスクごと解体所に出されたので、受取人である錬金術士は顔色を真っ青にしていた。

「魔法の氷を溶くから、好きな場所に傷をつけて血を採取してくれ」

「わ、わかったわ」

「マジックキャンセル」

氷続けているゴールデンバジリスクの魔法を解くと、大量の水と死んだばかりの新鮮さを保ったゴールデンバジリスクの遺体があった。

錬金術士の女性は、えいやっと、鶏の首に傷をつけて、血を回収していく。

結局、大きな樽一個分の血がとれた。

「こんなに採取できるとは思っていなかったわ。今度の錬金術の会合の時に使う材料としているんだけど、こんなにあればみんなの分も補填できるわ。依頼の報酬金には上乗せをしておくわ」

「まいどおおきに」

何故か、勝手に現れたクロ吉が、そう言って、報酬金を受け取って、中身の金貨を数枚、口でくわえて消えてしまった。

「クロ吉、まらどっかの高級レストランの魚料理食べるつもりだな」

「まぁいいじゃない。報酬金は金貨300枚。おまけに、ダンジョンで得た金貨は600枚だし、ミスリルのインゴットや黄金の食器も手に入った。ダンジョン攻略って儲かるね」

「そうだな。また今度、暇な時にでもダンジョンにもぐるか」

「うん」

「それより、ダンジョンでとれたヒーリング草をブルンに食べさせよう。あの回復液のポーションは効果が凄いぞ。魔法で癒す余裕がない時に使おう」

ダンジョンでいっぱいとれたヒーリング草をブルンに食べさせて、ポーションを作ってもらい、それも樽1個分になった。

「量が多いから、少し市場に流してみるか」

「それがいいね」

市場に流したポーションは、値段もそう高くないからと売れた。一度使った客が、これはすごいと言い出して、バカ売れした。

自分たちが使う分を残して全部うると、金貨50枚分にはなった。

「これってさ。ブルンにヒーリング草を買ってきて与えて、ポーションにするだけで、余裕で暮らしていけるよね」

「そうだが、ブルンはあくまでスライムだ。過度な期待はしないほうがいい。それに、俺たちはSランク冒険者になるんだろう?」

「そうだね。がんばらなくっちゃね」

二人の旅は、まだまだ続くのであった。






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エンシェントエルフとダークエルフ10

森に放っていた、使い魔である黒リスのクロを呼ぶと、その背後からぽよんぽよんと黒いスライムがついてきていた。

「どうしたの、クロ」

「ちちっ」

「仲間になった?え、まじで。その子、貴重なブラックスライムでしょ」

ブラックスライムは、ごみを食べてくれるので、よく清掃の会社などで飼育されていた。

「野良のブラックスライムってこと?」

「ちちちっちー」

京楽は、クロの他にもこの前黒猫のクロ吉という猫を使い魔にした。

「ええ、仲間にしたから連れて帰る?大丈夫かなぁ」

クロは京楽の肩に乗り、反対側にブラックスライムが乗った。

「僕がテイムしたことになってるみたいだね。名前、考えてあげなくちゃね」

森からマイホームに帰宅すると、浮竹が黒猫に高級猫缶詰を与えていた。

「京楽、遅かったな。クロ吉がきてるぞ」

「遅かったやんけわれ。わいを使役するからには、高級猫缶詰とチュール用意しとけやわれ」

「まったく、クロ吉はグルメだねぇ」

いつもは気まぐれな野良ネコ人生を歩んでいるので、お腹がすきすぎた時に定期的に浮竹と京楽のマイホームに現れた。

黒猫であるが、ちゃんと人語を理解ししゃべれた。ちょっと態度はでかいが。

「ほれほれ、チュールをよこさんか」

「チチッ」

「うっせ。先輩だと?しるかわれ」

クロとクロ吉は、基本捕食者と天敵であるので、仲はあまりよろしくない。

クロ吉は数日前に使い魔、つまりは使役魔になった黒い猫だ。

クロは基本Bランク時代から使っている使い魔で、クロのほうが先輩で偉いのに、クロ吉はそれが気に入らなくて、いつも喧嘩腰だった。

「チチチ」

「なんや、やるんかわれ。食うぞこら」

「こら、クロもクロ吉も仲良くしなさい」

「チチ―」

「ふん」

「京楽、それよりその肩に乗っているのは、ブラックスライムのようだが、どうしたんだ?」

「いやねぇ、クロが連れてきたんだよ。珍しく野良のブラックスライムのようでね。僕がテイムしたってことになってるらしい」

「そうか。じゃあ、名前を考えてあげないとな?クロ助とかはどうだ?」

「どう思う、クロ助」

「ププル~~~」

そこに、剣士京楽のと精霊のところで飼われている、ビッグスライムのプルンが現れた。

「なんだ、プルン。今日もこの国にあの二人はきているのか?」

「ププルン!」

プルンは、ブラックスライム見て、嬉しそうにはねていた。

「え、兄ができた?こいつの、お前よりも年上なのか?」

「ププルー」

ブラックスライムは、京楽の肩からぽよんと音を立てて降りて、クロ吉が食べた猫缶詰の空き缶を食べてしまった。

「ププ!」

「凄いって言ってるな。あのな、ブラックスライムはゴミを食べてくれるんだ。人間の料理とかも食うけど、基本ゴミを食べる。野生では雑草なんかを食べてるな」

「ププルン」

プルンは、自分の好物の林檎をさしだした。

ブラックスライムは林檎よりも、奥にあった生ごみの入ったゴミ箱入り、ゴミをおいしそうに食べだした。

「ププ」

哀しくて青くなっているプルンを見て、浮竹はゴミを食べ終わたブラックススライムとプルンを引き合わせた。

「プルルン」

「くくるー」

ブラックスライムが初めて鳴いた。

ブラックスライムは基本鳴かないことで有名だった。

「すごいよこの子。鳴いたよ」

「くくるーくるくる」

もっとゴミ食べたい。

そういうブラックスライムに、プルンは食べた林檎の芯をあげると、ブラックスライムはそれを喜んで消化した。

「名前、はクロ助でいいのか?」

「ププルウン!」

「え、何、ブルンがいい?兄だからブルン?」

「プルンとブルンじゃ、ちょっとに過ぎていやしない?」

「まぁ、見た目は全然違うし、いいんじゃないか」

こうして、ブラックスライムの名前はブルンになり、プルンの兄的存在となった。

好物はゴミなので、ゴミをわざわざ捨てることがなくなり、かなり助かった。


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「今日はブルンとクロ吉を連れて、簡単な狩りをしよう。レベルアップさせるために」

森で、ブルンは雑草を食べながら、襲ってきたホワイトベアを、酸弾で倒してしまった。

「すごいな、酸を吐けるのか」

「くくるーーー」

クロ吉は、ホワイトラビットを爪と牙で仕留めてしまった。

「わいより強い魔物倒したってか?調子のんなやこら」

「くるくるー」

調子には乗っていないよ、僕はただホワイトベアを倒しただけだよ。

「それが調子に乗ってるいうねん!」

「ほらほら、クロ吉、いい子だから喧嘩しない。チュールあげるから」

「お、浮竹なかなか分かってるやんけ」

ちゅーるをおいしそうに食べながら、クロ吉は更なる獲物を求めて、森の中に入っていく。

この森は、そんなに強いモンスターはいないので、比較的安全で、よく初心者から抜け出したばかりの冒険者が依頼退治で受けるような場所だった。

「ホワイトバード×5、ホワイトスネイク、ホワイトラット×2。これでどうや」

「おお、クロ吉すごいな。LVも6つもあがってるじゃないか」

「くるるるーーー」

ブルンも、もう1匹ホワイトベアを退治した。

「お、ブルンもLVが2あがったな」

元からある程度LVが高かったので、クロ吉のようにLVが大きくあがることはなかった。

「よし、今日はお前たちの仕留めた魔物の肉で、鍋をしよう」

「浮竹、本気かい?ホワイトスネイクもホワイトラットも、食べれないことはないけど、別に食べなくてもいいんだよ」

「せっかくお前の使い魔がとってくれたんだ。ホワイトベアは毛皮も売れるから、あとはここで解体してしまおう」

浮竹と京楽は、器用にさばいて肉と皮をはがし、肉とホワイトベアの毛皮だけをアイテムポケットにいれた。

ホワイトバードの羽とか、ホワイトスネイクの皮、ホワイトラットの毛皮は素材にならないので捨てることにする。

それを、ブルンが消化してしまった。

「本当に便利だな、ブルンは」

「くくるー」

「ああ、クロ吉の食べたチュールに入れ物も食べてくれ」

「くくーー」

ブルンは、素直に食べてくれた。

今夜は、いろんなモンスターの肉を使った鍋料理であった。野菜やきのこの他に、魚介類も少しいれた。

クロは野菜を、クロ吉は魚介類を、ブルンは骨とか野菜の芯を食べていた。

「魔物肉を使った鍋だから、どうなることかと思ったけど、けっこうおいしいね」

「ホワイトベアの肉はわりと高価だからな。うまいって評判なんだ」

「そうなんだ。知らなかったよ」

「京楽は、飯を作る割には魔物の肉は使わないからな」

「食べれればいいけど、わざわざ魔物の肉を使う必要はにないでしょ?この世界にはちゃんと家畜もいて、その肉が食える」

「まぁそうなんだが・・・・・かけだしの冒険者だった頃は、よくこうやって魔物肉を焼いて食べたりしたな」

「ああ、懐かしいねぇ。もう何十年前のことだろ」

浮竹と京楽はエルフだ。人の10倍以上を生きる。

依頼を受ける回数も、駆け出しの頃は少なく、自由になってからやっと本当の冒険者になれたので、Cランクから本格的に冒険者を始めた。

今から5年前のことだ。

CランクからAランクにあがるには10年はかかると言われている。

それを半分の時間で成してしまったということは、冒険者としての適性があったのだろう。

幼い頃、戯れに森で遊び、モンスターを倒していたのだが、その経験が今を支えているのだ。

「ブルン、今度はプルンに会いにいこうか。お前のこと、兄だと慕っているようだし、ちょうど昨日引き受けたクエストの内容が、ロスピア王国のものなんだ」

「くくるーー」

ブルンは嬉しそうに浮竹の肩に乗った。

その時の色は真っ白で、ブラックスライムは喜ぶと正反対の色になると言われていたので、喜んでいることが分かった。

「兄弟か。なんかいいな」

「僕には兄弟姉妹はけっこういたらしいけど、捨てられたからね」

「俺は一人っ子だから。エルフ種族は普通一人しか産まない。おまけに婚姻もほとんど行われない。人口は減るばかりで、緩やかに絶滅に向かっている」

「人間種族が羨ましいね。性欲も旺盛なようだし」

「その言い方だと、ゴブリンのようだぞ」

クスリと浮竹は笑って、鍋の〆の雑炊を作った。

「くるるるーー」

「お、普通の雑炊も食べたいのか?」

「くるる」

「ほら、召し上がれ」

クロとクロ吉は、飯を食べるとさっさとそれぞれ森と町に帰ってしまった。

召還すれば、何処にいても何をしてても召還されるので、問題はなかったが。

「くるるーーー」

ブルンは、おかわりをした。

そして、器も食べてしまった。

「こらブルン、お皿は餌じゃないぞ”!」

「くるるーーー」

反省しているのか、黒と白の色になって明滅する。

それをちゃんと覚えたのか、今度からは皿は食べず、皿の汚れだけを食べてくれて、浄化もしてくれるので、皿洗いの必要もなくなるのであった。

ブラックスライムは、どんなゴミでも食べてくれるので、わりと高価なモンスターだ。ちゃんと飼われていると分かるように、契約の儀式をして、ブルンの体には灼熱のシャイターン一族がもつ、ハヤブサの紋章が刻まれるのであった。






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エンシェントエルフとダークエルフ9

魔王ヴェルの配下の四天王の一角である灼熱のシャイターンは唯一の女性で、見た目は20代前半だが、実年齢は600を上回っていた。

ダークエルフで、ダークエルフの寿命は千年程度だが、魔王ヴェルに忠誠を誓う形で千年以上を生きるだろう。

「最近、あたしの子供だっていうダークエルフが、Aランクの冒険者になったって聞いてね。ちょっと会いにいこうと思ってさ」

灼熱のシャイターンは、つい数週間前にSランクの冒険者5人に挑まれて、返り討ちにして殺した。

基本人間と魔族は中立であるが、やはり人間世界にとって魔王や魔族は忌み嫌う存在であり、灼熱のシャイターンもダークエルフのいわゆる魔族に分類される種族で、子を成したはいいが、なんと皮膚の色が白かったのだ。

子の名前は京楽春水。

人間たちの住むウッドガルド大陸のイアラ帝国で、Aランクの冒険者をしていた。

Sランクになりそうな上位ランキングに、産んで捨てた実の息子の名前があって驚いた。

影からの調査で、シャイターンが捨てた後、かわいそうだとダークエルフの住民に拾ってはもたっが、幼い頃にダークエルフたちが魔大陸に移住するついでに、また捨てられた。

今度京楽を拾ったのは、なんとエンシェントエルフの族長だった。

牢屋に幽閉されて生き延びたが、その牢屋には秘密の外に続く道があり、浮竹十四郎というエンシェントエルフの少年と巡り会い、互いに冒険者ギルドに登録して、その浮竹は京楽のパートなーだという。

ダークエルフが冒険者ギルドに登録など普通はできなくて、肌が白いのをいいことに、ウッドエルフと種族を偽っているらしかった。

「はん、あたしの血を引いているくせに、白い肌のできそこないのくせに、Aランク冒険者だって?しかもSランク冒険者になりそうな上位ランキングに入ってるのが余計に気に食わない。ちょっと身の程を弁えてもらうために、顔でもだそうかね」

灼熱のシャイターンは、その名の通り炎を操る。

「フレイムウィング!」

風の魔法とかけあわせた炎の翼を背中にはやせて、魔大陸から僅か2日でウッドアルド大陸のイアラ帝国にまできていた。

移動速度が半端ではなかった。

通常、ワイバーンにのっても半月近くかかる。

それほどに、魔大陸の魔都セズゴリスと距離が離れていた。

灼熱のシャイターンの名は、伊達ではなかった。

炎を纏いながら、町に飛び降りと、住民や冒険者たちは悲鳴をあげて逃げていく。

「魔族だああ!!ダークエルフが攻めてきたぞお!」

「ちっ、うっさいね。この見た目はあれか・・・」

シャイターンは、浅黒い肌の色を白く見せる魔法をかけた。

「あれ、ダークエルフはどこに行った?」

騒ぎを聞きつけてやってきたBランク以上の冒険者たちは、怯えているふりをしているシャイターンに騙されていた。

「あの、あのダークエルフなら、西のほうに向かいました!」

顔も声も変えて、人間に嘘の情報を流す。

「そうか、ありがとう!」

「西だ!西に魔族のダークエルフが現れたはずだ、迎え!」

「ふんっ、人間たちはいつも愚かだ」

シャイターンは、南に向かって歩きだした。

時刻は夕暮れ。

冒険に出ていても、そろそろ戻ってくる頃合いだろう。

浮竹と京楽のマイホームでは、浮竹と京楽が今日の依頼を終わらせて、夕食を一緒にとっていた。

「誰だい、そこにいるのは」

「ああ、おまえがあたしの息子か。まぁ、見てくれは悪くないが、やはり肌の色があれだな。産んだが、捨てて正解だった」

「まかさ、あなたは・・・・灼熱のシャイターン!?」

「そのまさかさ!」

シャイターンは変装の魔法を解いた。

真っ赤な髪に、浅黒い肌の20代前半のダークエルフだった。

ただ、伝わってくる魔力はSランク冒険者の比ではなく、京楽はまずは浮竹を庇った。

「あなたは、僕を捨てたはずだ。今更何をしにきた!」

「いやねぇ、SランクになりそうなAランク冒険者にお前の名前があって、身の程を弁えらせるつもりのできたのさ」

いつの間に移動したのか、京楽の首には短剣が突きつけられていた。

「この子かい。パートナーの浮竹十四郎というのは」

「浮竹、逃げて!」

浮竹は恐れることもなく、堂々としていた。

「京楽の母上とお見かけする。灼熱のシャイターンであるのは分かった。だが、今の京楽は俺のものでもある。まだまだSランク冒険者になるには力不足だし、Sランク冒険者になったとしても、魔王軍に手出しするつもりはない」

「はっ、言うねぇ。京楽、できそこないのお前には勿体ないパートナーだねぇ」

「京楽は出来損ないなんかじゃない。一度捨てた子だろ。魔大陸に帰れ」

「おお怖い怖い。いずれ、この子がダークエルフであることは、ばれるよ。それでも、一緒にいたいというんだね?」

「ああ。ダークエルフであるのがばれて冒険者ギルドを追われるようになったら、違う拠点を探す。どうしても見つからなければ、魔大陸で冒険者するかもな」

「ちょっと、浮竹、本気なの?」

「本気だが?魔大陸にも冒険者ギルドはあるだろう?」

「あはははは!大した大物だよ、気に入ったよ、お前。京楽がダークエルフだというのがばれて人間国家で冒険者稼業できなくなったら、魔大陸においで。あたしの名前で推薦してやるよ」

「じゃあ、今はまだこの国で京楽がダークエルフであるということは」

「ああ、秘密にしといてやるよ」

それだけ言い残すと、シャイターンは炎の翼を生やしてすぐに見えなくなってしまった・

「はあ。心臓が口から飛び出すくらいに緊張した」

「やっぱり、浮竹も無理してたの?」

「当たり前だろう。相手は魔王の四天王が一人、灼熱のシャイターンだぞ。そんなのが母親だなんて、お前の人生は苦労の連続だな」

「僕が、シャイターンの息子だからって、幻滅したりしないの」

「何を言っている。京楽は京楽だ。親なんて関係ない」

そう言い切られて、京楽は浮竹に抱き着いた。

「愛してるよ、浮竹」

「ああ、俺もお前を愛してる」

口づけを交わし合い、いつしか息が乱れるほどにお互いの唇を貪っていた。

「今日はもう、寝よう。灼熱のシャイターンが出たと、明日からきっと大忙しだ。まぁ、クエストに参加するだけで金がもらえるから、ラッキーだがな」

「そうだね。シャイターン・・・僕の母親は魔大陸に戻ったことだろし」

「それにしても、京楽がシャイターンの子か。シャイターンには確か、他にも数人子がいたはずだが。お前だけが捨てられたのか」

「うん。肌の色が白いからね。ダークエルフたちに育ててもらったけど、赤子~幼少期までで、後は君んとこのエンシェントエルフの村で、幽閉されて育った」

「よく百年もの間、そんな生活を我慢できたものだな」

「だって、君が頻繁に来てくれたし、牢屋から外にでる秘密の抜け道も教えてくれた。人間の年齢で12歳になって冒険者登録して、僕の人生は楽しいし嬉しいことの方が多いよ」

「明日からも大変だが、また頑張ろう。Sランク冒険者を目指すために」

「うん、そうだね」

しばらくの間、灼熱のシャイターン探しのクエストがあったが、一向に見つからないので、捜索は切り上げられて、参加者にはランクに応じた報酬金が出るのであった。



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エンシェントエルフとダークエルフ8

Aランク冒険者になって1カ月が経った。

10回以上は依頼を受けたが、依頼の失敗も3回くらいあり、まぁそれでも好スタートであった。

依頼退治がほとんどなので、罰金を受けるような依頼はあまり受けなかった。

護衛などの任務は達成失敗の場合、罰金が生じる。

その代わり、魔物や盗賊が現れなければ、ただ一緒に行動するだけでお金が入るので、護衛任務ばかりを引き受ける冒険者もいるくらいだ。

1日3度の食事が約束されて、困るのは夜の見張りがあるくらいだろうか。

今度の依頼は、魔獣、モンスターの討伐依頼であった。

ケルベロスとオルトロスのペアを退治してくれというものだった。

Cランクダンジョンに、ケルベロスとオルトロスが住み着き、それ以上奥に行けないのだという。

CランクダンジョンはD~Bランク冒険者が適正である。

Bランクでも倒せないということは、それなりの強敵であった。

Cランクダンジョンにつくと、35階層でケルベロスとオルトロスのペアが出てきた。

オルトロスは頭を2つもった狼の、ケルベロスは頭を3つもった狼のモンスターであった。

属性は火。弱点は氷と水。

浮竹も京楽も、水と氷の魔法を唱え出した。

「エターナルアイシクルワールド!」

「ウォータープリズン!!」

地面を凍結させてモンスターの足を京楽が凍らせる、浮竹が水の牢獄を作り出し、オルトロスとケルベロスを閉じ込める。

「GARURURURU!」

「GYAUUU!!」

オルトロスとケルベロスは、叫び声をあげながら炎のブレスを吐いた。

それは水の牢獄を蒸発させたが、凍らせられた足は溶けなかった。

浮竹が唱えた氷の魔法は上級魔法だ。

「エターナルフェンリル!」

「アイスエンチャント!」

氷の魔狼フェンリルを召還して、氷のブレスを吐いてもらい、オルトロスとケルベロスも炎のブレスで対抗するが、氷のブレスのほうが優位だった。

少しずつ炎のブレスが弱まっていく。

そこに、氷を付与したミスリルの剣で、浮竹がケルベロスの前足を、オルトロスの胴体を斬り裂いた。

「GYAUUUU!」

「GYANN!」

犬のような声を出して、オルトロスとケルベロスは、炎をブレスを足元にはいて地面の氷をなんとか溶かすと、京楽めがけて襲い掛かる。

それを、氷の魔狼フェンリルが行く手を阻んだ。

「うおおおおおおぉぉぉん!」

フェンリルが遠吠えをあげると、異界より眷属たちが召還されて、オルトロスとケルベロスは逃げ出そうとするが、大小様々なフェンリルに囲まれて、逃亡できなくなる。

「いけ、フェンリル!アイスアタック!」

体を凍結させたフェンリルたちが、オルトロスとケルベロスに体当たりを食らわせる。

弱ってきたオルトロスとケルベロスに向けて、浮竹が魔法を放つ。

「アイスクラッシャー!」

氷の巨大な塊ができて、それはぐしゃりとオルトロスとケルベロスの体を潰して、粉々になった。

「ああ、よかった。魔石は無事だな。さっきの衝撃で砕けていたらどうしようかと思ったんだ」

「魔石は禁呪でもない限り、砕けないよ」

「でも、禁呪を唱える奴を知っているからな」

剣士の京楽のことであった。

他にもSランクの冒険者の中には禁呪を唱える魔法使いたちもいる。

今この世界で存在が確認されているSランク冒険者の数は77人。

去年は82人だった。

5人パーティーのSランク冒険者が、魔族の魔王四天王が一人、灼熱のシャイターンに敗れて死んでいる。

魔王討伐に挑むSランク冒険者はいなかった。

皆、命は惜しい。

勇者でも誕生しない限り、魔王は倒されないだろう。

そもそも、魔王は存在しているが、全ての魔族を束ねてるというわけでもなく、明確な「悪」であるかあやふやな部分もある。

人間の国が戦争をしかけてきたら、その国は滅亡するが、反対に戦争をしかけなければなんの害もないのだ。

四天王も同じで、戦いを挑めば容赦なく倒されるが、戦いを挑まなければ何もしてこない。

死んだ5人のSランクのパーティーのリーダーは、自分が勇者であると明言していて、その証拠に灼熱のシャイターンに挑み、戦死した。

Sランク冒険者の間では、死んだその自称勇者を愚か者だという声が高かった。

「ねぇ、浮竹。もしも、魔王討伐に向けて国が動きだしたらどうするの?」

「そんなことは起きないと思うだろうが、マイホームを捨てることになるが、違う国の冒険者ギルドに登録しなおして、その国で活動する」

「やっぱり、そうだよね」

京楽は癒えなかった。

その灼熱のシャイターンはダークエルフで、実の母親であるなんて。

浮竹に打ち明けれないもどかしさをもちながら、それでも隠しておきたかった。

魔族ともいわれるダークエルフであるが、ただのダークエルフではなく、魔王の四天王の一人の息子などとは、とても言えなかった。

そもそも、母であるシャイターンは肌の色を見て、捨てることを決めた女性だ。

育てられた記憶もない。

ただ、シャイターンの息子ではあると、言い聞かされて幼い頃は育てられた。

そのダークエルフの村も、魔族と合流するということで、一族の汚点でもある京楽を捨てて、魔大陸に移住してしまった。

「どうした、京楽。顔色が悪いぞ?」

「ううん、なんでもないんだ」

自分だけ、秘密を抱えている罪悪感に時折苛まれる。

シャイターンにとっては、ただのゴミだろうが、こちら側からしたら、魔王の四天王の一人が親なのだという、リスクの高い位置にいるのだ。

「とりあえず、冒険者ギルドに報告に戻ろう」

「うん、そうだね」

オルトロスとケルベロスの死体は、ダンジョンが消化するだろう。

ダンジョンは生きている。

ダンジョンマスターをもち、大抵が古代のエルフか古代のドワーフであった。

ダンジョンで死んだモンスターや冒険者は、荷物以外は自然に溶けてダンジョンの苗床となり、ダンジョンは新しいモンスターや宝箱を生み出す。

それを管理するのがダンジョンマスターだ。

ダンジョンマスターが代わると、ダンジョンも大きく様変わりする。

まぁ、よほどのことがない限り、ダンジョンマスターが代わることはない。

「これで、Cランクのこのダンジョンも、最下層まで潜れるだろう」

「ねぇ、ちょっと最下層まで行ってみない?」

「いいが、俺たちにとっては雑魚だぞ」

「昔、Cランクだった頃、このダンジョンにも何度か潜って、結局踏破できずにいたじゃない」

「そういえば、そうだったな」

雑魚のスケルトンやスケルトンアーチャー、スケルトスンソルジャーなどの雑魚のモンスターを倒しながら、魔石だけ回収した。

大した金にはならないだろうが、昔はそれでも満足したものだ。

最下層は50階層だった。

ボス部屋を開くと、スケルトンキングがいた。

「フレイムボルト」

「セイントヒール!」

不死の属性には火と聖が効きやすい。

一部、剣士の京楽のような例外はあるが、大抵は火と回復魔法でダメージを受けた。

魔力がCランクの頃の数十倍にもなった今では、スケルトンキングも雑魚だ。

倒すと、財宝の間が開いた。

あったのは、金貨が50枚と銀製の武器くらいだった。

「昔は、これでも喜んでたんだよねぇ。始めてCランクのダンジョン踏破したこと、覚えてる?」

「覚えてる。グレイウルフベアがボスだった。苦戦して怪我をいっぱいして倒して、金貨45枚と、金の短剣を手に入れた」

「金の短剣は、窮地になるまで手元に置いていたよね」

「そうだな。俺が風邪を引いて、依頼を受けれなかった時期に、売り払ってしまったんだったな」

「とりあえず、地上に戻る転移魔法陣に乗ろう」

「ああ」

ダンジョンの入り口まで転移して、待っていた馬車に乗りこんだ。

馬車は冒険者ギルドで、1日金貨2枚でかりれた。

御者付きの場合は金貨3枚だ。

京楽が御者をしていた。

1日だけのレンタルなので、出費は金貨2枚と1日の食事の分の銀貨3枚くらいだろうか。

冒険者ギルドに戻り、馬車を返して、受付嬢に魔石を鑑定してもらい、報酬金金貨160枚を手に入れて、魔石の買取り額金貨20枚を手に入れた。

今日の稼ぎは、金貨180枚とダンジョンで手に入れた金貨50枚と、雑魚の魔石の買取り額の金貨3枚と、銀の武器だ。

Cランク以下の頃は、金貨を見るだけでも興奮したものだ。

今では、大金貨を見てもあまり何も感じない。

流石に白金貨を見るとびびるが。

今日の夕飯の買い物をせず、久しぶりに冒険者ギルドの酒場で食べて飲んだ。

「景気はどうだ、浮竹、京楽」

「ぼちぼちかな?」

「まぁまぁだな。12件依頼を受けて未達成が3件。Aランクになって、調子づいてSランクの依頼を受けたら、失敗続きだった。今はAランクかBランクの依頼を受けている」

「そうだね。Sランクの依頼は僕たちには早すぎたね」

京楽も浮竹も苦笑いした。

「あらぁ、うっきーちゃんに春ちゃんが、マイホームを持ったのに、ギルドの酒場で食べてるなんて珍しいわね。私も混ぜてぇ!」

「今日はこの辺りで帰る!」

「じゃあね、みんな」

「ああん、いけずう♡」

くねくねして迫ってきたオカマのギルドマスターを置いて、二人はマイホームに帰るのであった。




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エンシェントエルフとダークエルフ7

Aランクに昇格し、2週間ほどが過ぎた。

今回の依頼は、商人の旅の警護だった。

盗賊や魔獣がよく出没する森の街道を抜けるので、浮竹と京楽の他にも、Bランクの冒険者が4人護衛についていた。

野営の見張りは、基本6人で交代制で行われた。

「浮竹、先寝ていいよ。夜明けくらいに起こすから」

「すまん、先に眠る。じゃあ、夜明け前に起きる」

目覚まし時計を設置して、浮竹は先に眠りについた。

京楽は、火を絶やさないように牧を入れながら、周辺を見張る。

「GUGYAGYA!」

「敵襲だーーー!起きろおおおお!!」

京楽が声をあげた。

浮竹は起きてすぐに剣を抜く。

護衛するべき商人は、テントの中だ。

その周囲を、4人のBランク冒険者と守るように配置についた。

「敵はグリフォン!3匹いたが、巣があるのかもしれない。とにかく、最低二人はテントの周囲で守りに回ってほしい!」

京楽の適格な指示に、Bランク冒険者も従う。

「GYAGYAGYA!」

「GURURURU!」

「GUGYAGYA!」

グリフォンは普通昼に活動するのだが、夜なのに襲ってきた。

鷲の顔をしているため、夜目が効きにくいと思われがちだが、魔物なのでそうでもないようだった。

「グラビティ・ゼロ!」

京楽が飛び回るグリフォンに重力の魔法をかけて、押しつぶしにかかる。

グリフォンは地面に落ちた。

すぐに立ち上がり、羽ばたこうとするところで、浮竹が氷の魔法を使う。

「アイスフロア!」

地面と足が凍り付いて、グリフォンたちはBランク冒険者に威嚇しつつも、トドメをさされていった。

「わあああああ!」

「うおおおお!」

「更に敵襲!盗賊だ!数は20以上!」

Bランク冒険者の弓使いが、盗賊の剣でやられて大地に倒れる。

「テントを死守しろ!馬もだ!」

馬車と馬を守る配置について、襲い掛かってくる盗賊たちの首を、京楽は魔法で、浮竹は剣で刎ねていた。

他のBランク冒険者は対人経験がないのか、斬り捨てるだけで、トドメをさせないでいた。

「情などかけるな!」

浮竹が、片手を切られてもなお襲い掛かってくる盗賊の首を刎ねる。

「フレイムロンド!」

浮竹が放った魔法は、まだ動ける盗賊たちを火で包みこみ。盗賊たちは地面に転がって火を消そうともがきだした。

「ダイヤモンドダスト!!」

ある程度火傷した盗賊を助けるように、京楽が氷の魔法を使うが、あくまでも捕獲するためだった。

「グリフォンの奇襲の後にすぐに盗賊だなんて、普通ありえない。グリフォンを飼いならしていたな?」

浮竹が血にまみれたミスリルの剣で、盗賊の頭らしき人物の首に剣を突きつける。

「ひいい、命だけは、助けてくれ!そうだ、グリフォンを飼いならしてここら一帯を縄張りにしていた!」

京楽は、生き残った盗賊を集めると、自力で歩ける程度まで回復魔法をかけた。

しっかり手を縄でしばって、順番に並ぶように繋いだ。

「しっかりしろ!」

「うううう・・・・・・」

Bランクの最初にやられた弓手は、傷が浅いのに苦しんでいた。

「毒だな。どいてくれ」

浮竹は傷口を更に傷つけると、毒の入った血を吸い取り、ぺっと地面に吐いていく。

「京楽、後は任せれるか」

「うん。キュアポイズン。セイントヒール」

毒の血をある程度抜いたことで、毒消しの魔法はちゃんと効いて、癒しの魔法で傷口が塞がってく。

「ああ、大分楽になった。ありがとう、京楽さん」

「癒し手があるとやはり違うな。俺たちも、この護衛の任務が終わったら、聖職者か癒しの魔法を使える魔法使いを雇おう」

Bランクの冒険者は、うんうんと頷いた。

その日は結局、殺さなかった盗賊たちを縄に繋ぎ、他の盗賊の夜襲に備えていたので、護衛の商人を除いた冒険者たちはあまり眠れなかった。

朝になり、出立となった。

馬車の後ろに捕まえた盗賊たちの縄をつけて、強制的に歩かせる。

幸いにも町が見えてきたので、盗賊たちはその町で捕らえられた。

「死刑か、一番罪が軽くても奴隷落ちは確実だね」

「そうだな」

盗賊たちの末路を、浮竹も京楽もなんともいえない感情で見守った。

人を殺したのは始めてではない。

邪教徒たちの巣をたたき、その際に狂ったように遅いかかってくる邪教徒たちを皆殺しにしたことがあった。

人質の5人を無事解放したが、返り血に真っ赤になった二人は、人質に怯えられた。

「人殺し!!」

何度かそう叫ばれたが、人質たちも次第に精神状態が安定して、最後は謝ってきた。


「ねぇ、浮竹」

「うん?」

「僕が人殺しでも、君は僕を愛してくれるかい?」

「愚問だな。愛するに決まっている。それに京楽が人殺しなら、俺も人殺しだ。盗賊のうち5人は俺が殺した」

「僕も4人殺したよ。いい気分ではなかったけどね」

京楽の言葉に、浮竹は頷いて、1日だけ町に滞在が決まったので、公共浴場に入り、血と人の脂まみれになった髪と体を洗い、衣服を洗濯した。

洗濯は安くて銅貨1枚だったが、風呂のほうはマッサージなどもついていたので、銀貨2枚だった。せっかくなのでマッサージも受けて、血流がよくなったところでサウナにも入り、その後は水風呂に浸かった。

始めて使う公共浴場の男湯は、やはり浮竹は視線を集めてしまう。エルフというだけでも視線を集めるのに、姿形が可憐に整っているせいで、みんな一度は見てしまう。

それを警戒するように京楽が睨み返すと、視線を送っていた者たちはさっと視線を逸らす。

浮竹曰く、人を殺しそうな視線で見ている、だそうだった。

「ああ、さっぱりした。やっぱり一度風呂を知ってしまうと、石鹸やらシャンプーやらあるし、魔法でも汚れはとれなくもないが、風呂が一番だな」

京楽は、リフレッシュという、体を清潔に保てる魔法を使えた。

だが、消費魔力が多いので、普段冒険稼業をしている時は、1週間に2回くらいしか使わない。

帝都にマイホームもち住み始めて、その日帰りの時は毎日風呂に入ったが、長時間かかる依頼の時はたまにこうやって町に寄った時に公共浴場に入り、それが無理なら水浴びか、最低でも体をふいたりして清潔を保った。

他の冒険者も似たようなものだ。

長旅になるときは、最低でも体をふいて、時折水浴びをして清潔を保った。女性ならなおさら清潔に気を遣う。

浮竹と京楽も、女性なみに気を遣っていた。

依頼者と面会するとき、身なりが小汚い恰好では、いくらAランク冒険者といえども引かれてしまう。

今回の商人の護衛は、次の町までだった。

盗賊の討伐報酬金が出て、それはBランクの冒険者と均等に分けた。

「さぁ、次の町までだよ。がんばっていこう」

「そうだな。あと3日もあれば次の町につく」

こうして、二人は護衛任務を果たして、馬車で帰路についた。

商人の護衛中は、アイテムポケットから調理して作り置いておいた食事を食べたのだが、普通は干し肉に硬い黒パンなので、依頼主の商人に頼まれて、同じ食事をふるまった。

さすがに一緒にいたBランクの冒険者の分まではなかったが。

「さて、冒険者ギルドで報酬金を受け取って、風呂にでも入ろうよ」

「そうだな」

冒険には、時には盗賊や野盗、邪教徒などの人間を殺すこともある。

それを始めて経験したのは、Bランクになってからだった。

Bランクになり、初めて人を殺めた日は眠れなかったが、今では何の躊躇いもなく人を殺せる。

そういう職業についてしまったのだから、仕方ない。

「明日は休日にしよう。商人の護衛の依頼で、合計金貨70枚手に入ったし、少しくらい休憩してもいいだろう。ああ、魔法協会にも行って、ランクがあがったことを報告しなければな」

家に帰って風呂に二人で入っていると、スライムのプルンが訪ねてきて、同じ風呂に入ってきた。

「のぼせなないか?」

「プルルン!」

プルンは泡だらけになり、体を洗っていた。

浮竹と京楽が使っている石鹸は高価なもので、いい匂いがして泡立ちもよかった。

「プルルル!」

どぼんと湯船の中入ってきたプルンは、京楽と浮竹の肩に交互に乗ったりして、遊んでいた。

「クロ、相手をしてやれ」

「チチッ!」

風呂場に召還されたクロという黒リスの使い魔は、水分をとばして外にぽよんぽよんとはねていプルンの後を追って、走り出す。

「仲良くするんだぞーー!!」

「プル!」

「チチッチチ!」

二人が風呂からあがり、夕食を食べる頃には、プルンもクロも遊び疲れたのか、ソファーの上で寝ていた。

「プルンがいるということは、あの二人も近くにきているんじゃないか?」

実際、剣士の京楽と妖刀の精霊である浮竹は、魔法協会にきていた。浮竹と京楽も、明日にしようと思っていたが、魔法協会に赴いた。

『やあ、元気そうだね』

妖刀の精霊のほうは、人がいるために姿を現さないようだった。

「夕飯を食べるんだけど、良かったら一緒にどうだ?」

「うん、人数が多い方が楽しいしね」

「プルルン!」

『プルン、どこにいっていたのかと思ったら、エルフの僕と浮竹のところにいたのかい』

「ププ~」

魔法協会の会長はエマ・ベセラという。

少し腹黒い会長だった。

『用はすんだし、キミたちの家に行こうか』

こうやって、剣士の京楽とプルンと妖刀は、エルフの浮竹と京楽のマイホームにやってきた。

『ああ、やっと姿を現せれる』

ずっと人前では姿を現れなくて、妖刀のままだった精霊の浮竹が人型をとって、夕食が並んでいるテーブルをじーっと見ていた。

特に、デザートにと置かれてあった苺パフェに熱烈な視線を送っていた。

「まだ作れるから、夕飯の前に食べてもいいぞ?」

エルフの浮竹の許可をもらい、精霊の浮竹は苺パフェをおいしそうに食べていく。

『ごめんね、うちの浮竹が』

「いや、俺もスイーツは好きだし。意外なところで共通点があるな?」

「浮竹、僕らも食事にしよう」

こうして4人は夕食を食べて、その日は剣士の京楽と精霊の浮竹はゲストルームに泊まっていった。

朝になると、剣士の京楽と精霊の浮竹の姿はなく、プルンもいなかった。

置き手紙が残されていた。

「宿屋に泊まる手間が省けた・・・・って、白金貨?それも2枚も!?」

白金貨は1枚で大金貨10万枚になる。

つまりは、大金貨20万枚という大金を置いていったのだ。金貨いでうと200万枚だ。

「金もちすぎるのも、問題だね」

さすがに額が額なので、貯金という形にした。

「さて、今日は一日休みだ。浮竹といちゃいちゃしよっと」

その浮竹は、昼まで眠るのだった。




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