奴隷竜とSランク冒険者14
白哉と恋次が、はじめてSランクダンジョンに挑むというので、念のために浮竹と京楽も同行することになった。
「Sランクダンジョンって広いっすね~」
「出てくるモンスターも、強いぞ」
浮竹は、さっそくでてたガーゴイルにアイシクルブレスを吐いた。
「散れ・・・・千本桜」
白哉は、魔剣千本桜をもっており、それは桜の花びらとなって数億の刃となって敵を切り裂く。
ガーゴイルの石の体を、白哉の千本桜の花の刃はすぱすぱと切っていく。
「こりゃあ、僕たちが同行する必要なかったかもねぇ」
「いや、兄らがいるから安心して戦える」
「サンダースピア!」
京楽は、浮竹の方に向かっていったガーゴイルに魔法を放ち、動きが止まった瞬間に魔剣のドラゴンスレイヤーで粉々にしてしまった。
「ドラゴンスレイヤーか。噂には聞いているが、私の千本桜並みに強いな」
「そりゃ、竜殺しの魔剣だからねぇ。白哉君の千本桜は刃を細かくできるけど、こっちはできないけど、代わりになんでも切れる。ミスリルのインゴットでも切れるよ」
「さすがに、私の千本桜ではミスリルまでは切れない」
「ほら、京楽も白哉も恋次君も、先を行くぞ」
先に進み始めた浮竹のあとを、皆追うのだった。
20階層まで下り、フロアボスを数体撃破して、20階層のボスが出てくる。
フィールドは海。
今にも沈みそうな船に乗り、フロア最大のボスである魔獣リヴァイアサンに挑む。
「ヘルボルテックスサンダー!」
「ライトニングボール!」
白哉と恋次が雷の魔法を放つ。
浮竹と京楽は、とりあえず手を出さないで見ていることにした。
「ジャッジメントサンダー!」
白哉が、雷の禁忌を放ち、それを千本桜にまとわせてリヴァイアサンの体を切り裂いていくと、リヴァイアサンは最後の咆哮をあげてどーんと海に倒れた。
「やった!俺と白哉さんだけでフロアボス倒せた!」
喜ぶ恋次の背後から、触手が伸びて恋次をからみとった。
「うわ、な、なんだ!?」
「フロアボスはもう1体いたのか!クラーケンだ!今助ける!」
浮竹は、クラーケンの本体めがけてアイシクルブレスを吐いた。
クラーケンは水属性だが、氷に強いというわけでなく、体の大半を凍らせていた。
「恋次!」
「大丈夫っす、白哉さん!ライトニングボール!」
恋次は蛇尾丸という伸縮自在の剣に雷をまとわせて、自分に巻き付いている触手を黒こげにして切り落とした。
「すまぬ、浮竹。援護、感謝する。いけ、千本桜!」
白哉は千本桜を数億の刃にして、そこに雷をまとわせて、クラーケンの凍った体をくだいていく。
「ありゃ、僕の出番はなしかな」
「ないほうがいい。Sランク冒険者としてソロで倒せるくらいでないと、ダンジョン踏破はできないからな」
「それもそうだね。それより、この船沈没しかけてるんだけど」
「もう長くはもたないな」
「浮竹、君は海全体を凍らせること、できる?」
「できるが、範囲が広すぎる。浅い氷しかできないぞ」
「だよねぇ。海岸まで、泳いでいくしかないのかな」
「俺がドラゴン化する。背に乗れ」
浮竹は、人化を解いて本来のムーンホワイトドラゴンの姿になると、京楽を背に乗せた。
それから恋次と白哉を拾い上げて、背中に乗せて空を飛行する。
「うわぁ、羽毛のドラゴン!すっげぇ!」
「ムーンホワイトドラゴンか・・・月竜と呼ばれるだけあって、美しいな」
恋次と白哉は、ふかふかの浮竹の羽毛を手で触っていた。
「いいクッションになりそう」
「ちょっと、恋次君、浮竹の羽でクッションとかそんな作ってみたいようなこと言わない!」
「作ってみたいのか、京楽」
「あ、いや、これは言葉のあやで」
「別にいいぞ。少し羽を抜くくらいでクッションはできるのだろう」
浮竹は、海岸の次の階段のある地点までくると、ドラゴンから人の姿に戻った。
「俺たちが同行するのはここまでだ。フロアボスを撃破できたし、お前たちなら無理をせず危険と判断したら帰還スクロールを使うだろうし」
「ありがとうございました、浮竹さん、京楽さん」
「何、後は二人でがんばってね」
「兄らには感謝の言葉しかでぬ」
白哉と恋次が階段のほうに歩き出したのを確認してから、京楽は浮竹を抱きしめた。
「な、なんだ」
「君の背に乗るのは久しぶりだなぁと思って。愛してるよ、浮竹」
「背に乗せるくらい、いつでもしてやるのに。俺も、愛してる」
二人きりになったものだと思って、キスをする。
「あ、京楽さん、浮竹さん、リヴァイアサン倒したのあんたらだから魔石を・・・・・・」
「・・・・・兄らは、もう少し人目を気にした方がいい」
戻ってきた恋次と白哉にキスシーンを見られて、浮竹は真っ赤になってハリセンを取り出す。
「このあほ!すかたん!ぼけ!万年発情期!」
ハリセンでスパンスパンと叩かれながら、それでも京楽はにまにましていた。
「見られても減るもんじゃなし」
「そういう問題じゃない!アイシクルブレス!」
「もぎゃああああ」
体を凍らされて、京楽は悲鳴をあげる。
「「お幸せに」」
「こ、これでも幸せそうに見える?」
「「見える」」
「あはははは、浮竹、ブレスは簡便。氷耐性あるっていっても、しもやけになっちゃう」
「しもやけになりまくれ!アイシクルブレス!」
「もぎゃあああああああ」
白哉と恋次は、悲鳴をあげる京楽を無視して、21階層に降りていくのだった。
浮竹は、二人がいなくなったことを完全に確認して、アイシクルブレスを止める。
「寒い、寒い!プチファイア!」
体を温める火の魔法を使う京楽。
その頭を、おまけとばかりに浮竹がはりせんをおみまいさせるのだった。
「Sランクダンジョンって広いっすね~」
「出てくるモンスターも、強いぞ」
浮竹は、さっそくでてたガーゴイルにアイシクルブレスを吐いた。
「散れ・・・・千本桜」
白哉は、魔剣千本桜をもっており、それは桜の花びらとなって数億の刃となって敵を切り裂く。
ガーゴイルの石の体を、白哉の千本桜の花の刃はすぱすぱと切っていく。
「こりゃあ、僕たちが同行する必要なかったかもねぇ」
「いや、兄らがいるから安心して戦える」
「サンダースピア!」
京楽は、浮竹の方に向かっていったガーゴイルに魔法を放ち、動きが止まった瞬間に魔剣のドラゴンスレイヤーで粉々にしてしまった。
「ドラゴンスレイヤーか。噂には聞いているが、私の千本桜並みに強いな」
「そりゃ、竜殺しの魔剣だからねぇ。白哉君の千本桜は刃を細かくできるけど、こっちはできないけど、代わりになんでも切れる。ミスリルのインゴットでも切れるよ」
「さすがに、私の千本桜ではミスリルまでは切れない」
「ほら、京楽も白哉も恋次君も、先を行くぞ」
先に進み始めた浮竹のあとを、皆追うのだった。
20階層まで下り、フロアボスを数体撃破して、20階層のボスが出てくる。
フィールドは海。
今にも沈みそうな船に乗り、フロア最大のボスである魔獣リヴァイアサンに挑む。
「ヘルボルテックスサンダー!」
「ライトニングボール!」
白哉と恋次が雷の魔法を放つ。
浮竹と京楽は、とりあえず手を出さないで見ていることにした。
「ジャッジメントサンダー!」
白哉が、雷の禁忌を放ち、それを千本桜にまとわせてリヴァイアサンの体を切り裂いていくと、リヴァイアサンは最後の咆哮をあげてどーんと海に倒れた。
「やった!俺と白哉さんだけでフロアボス倒せた!」
喜ぶ恋次の背後から、触手が伸びて恋次をからみとった。
「うわ、な、なんだ!?」
「フロアボスはもう1体いたのか!クラーケンだ!今助ける!」
浮竹は、クラーケンの本体めがけてアイシクルブレスを吐いた。
クラーケンは水属性だが、氷に強いというわけでなく、体の大半を凍らせていた。
「恋次!」
「大丈夫っす、白哉さん!ライトニングボール!」
恋次は蛇尾丸という伸縮自在の剣に雷をまとわせて、自分に巻き付いている触手を黒こげにして切り落とした。
「すまぬ、浮竹。援護、感謝する。いけ、千本桜!」
白哉は千本桜を数億の刃にして、そこに雷をまとわせて、クラーケンの凍った体をくだいていく。
「ありゃ、僕の出番はなしかな」
「ないほうがいい。Sランク冒険者としてソロで倒せるくらいでないと、ダンジョン踏破はできないからな」
「それもそうだね。それより、この船沈没しかけてるんだけど」
「もう長くはもたないな」
「浮竹、君は海全体を凍らせること、できる?」
「できるが、範囲が広すぎる。浅い氷しかできないぞ」
「だよねぇ。海岸まで、泳いでいくしかないのかな」
「俺がドラゴン化する。背に乗れ」
浮竹は、人化を解いて本来のムーンホワイトドラゴンの姿になると、京楽を背に乗せた。
それから恋次と白哉を拾い上げて、背中に乗せて空を飛行する。
「うわぁ、羽毛のドラゴン!すっげぇ!」
「ムーンホワイトドラゴンか・・・月竜と呼ばれるだけあって、美しいな」
恋次と白哉は、ふかふかの浮竹の羽毛を手で触っていた。
「いいクッションになりそう」
「ちょっと、恋次君、浮竹の羽でクッションとかそんな作ってみたいようなこと言わない!」
「作ってみたいのか、京楽」
「あ、いや、これは言葉のあやで」
「別にいいぞ。少し羽を抜くくらいでクッションはできるのだろう」
浮竹は、海岸の次の階段のある地点までくると、ドラゴンから人の姿に戻った。
「俺たちが同行するのはここまでだ。フロアボスを撃破できたし、お前たちなら無理をせず危険と判断したら帰還スクロールを使うだろうし」
「ありがとうございました、浮竹さん、京楽さん」
「何、後は二人でがんばってね」
「兄らには感謝の言葉しかでぬ」
白哉と恋次が階段のほうに歩き出したのを確認してから、京楽は浮竹を抱きしめた。
「な、なんだ」
「君の背に乗るのは久しぶりだなぁと思って。愛してるよ、浮竹」
「背に乗せるくらい、いつでもしてやるのに。俺も、愛してる」
二人きりになったものだと思って、キスをする。
「あ、京楽さん、浮竹さん、リヴァイアサン倒したのあんたらだから魔石を・・・・・・」
「・・・・・兄らは、もう少し人目を気にした方がいい」
戻ってきた恋次と白哉にキスシーンを見られて、浮竹は真っ赤になってハリセンを取り出す。
「このあほ!すかたん!ぼけ!万年発情期!」
ハリセンでスパンスパンと叩かれながら、それでも京楽はにまにましていた。
「見られても減るもんじゃなし」
「そういう問題じゃない!アイシクルブレス!」
「もぎゃああああ」
体を凍らされて、京楽は悲鳴をあげる。
「「お幸せに」」
「こ、これでも幸せそうに見える?」
「「見える」」
「あはははは、浮竹、ブレスは簡便。氷耐性あるっていっても、しもやけになっちゃう」
「しもやけになりまくれ!アイシクルブレス!」
「もぎゃあああああああ」
白哉と恋次は、悲鳴をあげる京楽を無視して、21階層に降りていくのだった。
浮竹は、二人がいなくなったことを完全に確認して、アイシクルブレスを止める。
「寒い、寒い!プチファイア!」
体を温める火の魔法を使う京楽。
その頭を、おまけとばかりに浮竹がはりせんをおみまいさせるのだった。
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新たなる霊王
俺は、死んだはずだった。
ミミハギ様を手放し、神掛を行った。
気づいた時には、集中治療室で目覚めた。
「よかった、浮竹、目覚めたんだね」
傍で、憔悴しきった様子の京楽が、ずっと浮竹の手を握っていた。
「ああ、もうこうして君に触れていれるのも終わりかな」
「俺は死んだんじゃなかったのか?」
「君は・・・霊王になったんだ。神掛が、君を霊王にした」
「俺が霊王に?」
信じられなくて、でも新しい零番隊が迎えにやってきた。
「新しい霊王様においては、ご機嫌麗しゅう。これより、世界を見守るために霊王宮にあがってもらいます。もう、尸魂界の、下界には戻ってこれません」
「え・・・・・・・」
つまりは、もう京楽と会えないということなのだろうか。
「それは困る。俺は、下界にいたい」
「だめです。霊王様なのですよ、あなたは!」
「じゃあ、許可を。京楽も、時折でいいから霊王宮に行ける許可を。それがないなら、俺は霊王にならない」
子供の我儘のように、浮竹は京楽の手を握って、霊王にならないと言い張った。
「霊王様が霊王宮にいらせられないのは問題だ。仕方ない、京楽春水、汝を特別に霊王様のおそばに時折居れるように、許可する」
「じゃあ、京楽・・・俺は、ちょっと霊王として霊王宮にあがるよ」
「浮竹!」
「別れじゃないから。また、会える」
零番隊に連れられて、浮竹は去ってしまった。
それから、どれくらい月日が流れただろうか。
半年は音信不通だった。
浮竹が生きているだけでいいと思っていたが、それでもやはり傍にいれないと寂しさが募る。
「浮竹・・・・今頃、何してるだろう」
ふと、地獄蝶がやってくる。
「霊王様がお呼びです。一番隊隊舎の裏にゲートを作るので、そこから霊王宮にあがりなさい」
京楽は、仕事を放りだしてゲートに入った。
「浮竹に会えるの・・・・?」
気づくと、そこは春の季節を保った霊王宮の入り口だった。
「お、京楽、久しぶり」
傍に侍女を従えて、霊王となった浮竹は美しい着物を着て、長い白髪を結い上げて花で飾り、まるで女性に見間違うような出で立ちをしていた。
「浮竹?」
「他の者は下がってくれ。京楽と二人きりになりたい」
「しかし霊王様!」
「この霊王の命令が聞けないのか?」
「申し訳ありません。退席いたします」
霊王となった浮竹に案内されて、霊王宮のいろんな場所を紹介された。
「ここが、俺の部屋だ」
広い部屋に、ぽつんと大きなベッドだけがある。
「霊王の君って、普段何をしているの?」
「下界を見てる。何かの命が生まれる時が、一番嬉しい。お前のことも、時折見ていた。総隊長として、立派にやっているんだな」
「浮竹!」
京楽は、浮竹に抱き着いた。
「どうしたんだ?」
「半年も、君に会えなかった。半年ぶりだよ。浮竹不足で死にそうだ」
「大袈裟だな」
「ねぇ、しばらくこの霊王宮に居てもいいのかな?」
「ああ。俺の我儘になるが、霊王を止めるって言いだせば、大抵のことは片がつく」
「浮竹、悪いいたずらっ子みたい」
「ふふ・・・・好きだぞ、京楽」
「僕も大好きだよ、浮竹」
霊王となった浮竹をベッドに押し倒して、体を重ねた。
半年ぶりなので、加減ができなくて浮竹は意識を飛ばしてしまった。
「ごめんね、浮竹。君が傍にいないと、僕はだめみたい」
浮竹の隣で、浮竹を抱きしめて眠った。
朝餉の時刻になり、浮竹も目を覚ます。
「京楽、たまってたな」
「ああ、うん。ごめん」
配膳係は、何も聞いていないように振舞う。
「ねぇ、肺の病は大丈夫なの?」
「ああ。霊王になったせいか、肺は健康そのものなんだ。体が弱いのは変わりないが。霊王宮の外までしか出れないが、外は春の季節が保たれていて、体にも心地よい」
「ごめん、昨日君にした行為は、君の体を蝕んでしまうかもしれない」
「いい。俺も、望んだことだ」
浮竹は、朝餉を食べ終えると、京楽を連れて霊王宮の外に出た。
「ここは、年中桜が咲いているんだ。この桜の大木が、俺のお気に入りだ」
「綺麗だね」
「そうだろう」
「うん。桜の花びら舞う下にいる君が、とても綺麗だ」
浮竹は、赤くなった。
「な、何を言っている」
「ふふふ。かわいいなぁ、浮竹は」
「からかうな。これでも、霊王なんだぞ」
「かわいい霊王様だね」
「むう」
浮竹は頬を膨らませる。
「僕は、いつまでここにいれるのかな?」
「1週間。その次は、また半年後だ」
「そう。じゃあ、明日ここで花見をしよう。酒を飲みかわそう」
浮竹と京楽は、離れていた時間を取り戻すように、お互い傍にいて寄り添い合った。
「じゃあ、また半年後に」
「京楽!」
「なんだい」
「これ、俺専用の伝令神機だ。話ならできるから」
「お、気が利くね。ありがたくもらって、活用させてもらうよ」
霊王となった浮竹は、暇をもてあましている。
霊王の存在は、世界が在るのを見届け、贄となって支えるもの。
「おはよう、浮竹」
「おはよう、京楽」
専用の伝令神機を利用して、毎日のように会話ができて、二人が離れている距離は、近いものになる。
「来月は、あれから半年が経つから会える。早く、お前に触れたい」
「僕もだよ。君を抱きたい」
「な、俺は、会いたいと・・・・・・」
「でも、抱かれたいでしょ?」
「知るか!」
浮竹は、伝令神機を畳にたたきつける。
「あははは。顔まで真っ赤な君が想像できる」
受話器ごしから聞こえてくる声に、真っ赤になりながら、浮竹は。
「俺も抱かれたい。早く、会いたい・・・・・・」
そう言って、伝令神機を切って、桜の大木があるところまでくると、下界を少し見た。
京楽の姿が見えた。
滞在は一週間になるので、ばりばり仕事をしているらしかった。
「ふふ・・・・・」
一生懸命な京楽を見ていると、こっちまで嬉しくなる。
「そんなに、俺に会いたいのか・・・・」
浮竹は、少し笑って、桜の大木の下で微睡みだす。
霊王は、ただ在ればいいだけなので、基本暇だ。
書物を読んだり、身の回りの世話をする者と囲碁や麻雀をしたり、花札とかトランプをしたり。
眠っている時間が、1日の3分の2を占めるようになっていた。
「京楽・・・早く、会いたい・・・・・」
眠りながら、京楽の夢を見る。
次に会えるまであと1カ月。
伝令神機で連絡を取り合ってるので、孤独ではないし、半年に一回ではあるが、実際に会える。
霊王となったことに、後悔はしていない。
一度死んだはずなのだ。
京楽と同じ時間を生きて、会えるなら、もうそれ以上の望みはないのだった。
ミミハギ様を手放し、神掛を行った。
気づいた時には、集中治療室で目覚めた。
「よかった、浮竹、目覚めたんだね」
傍で、憔悴しきった様子の京楽が、ずっと浮竹の手を握っていた。
「ああ、もうこうして君に触れていれるのも終わりかな」
「俺は死んだんじゃなかったのか?」
「君は・・・霊王になったんだ。神掛が、君を霊王にした」
「俺が霊王に?」
信じられなくて、でも新しい零番隊が迎えにやってきた。
「新しい霊王様においては、ご機嫌麗しゅう。これより、世界を見守るために霊王宮にあがってもらいます。もう、尸魂界の、下界には戻ってこれません」
「え・・・・・・・」
つまりは、もう京楽と会えないということなのだろうか。
「それは困る。俺は、下界にいたい」
「だめです。霊王様なのですよ、あなたは!」
「じゃあ、許可を。京楽も、時折でいいから霊王宮に行ける許可を。それがないなら、俺は霊王にならない」
子供の我儘のように、浮竹は京楽の手を握って、霊王にならないと言い張った。
「霊王様が霊王宮にいらせられないのは問題だ。仕方ない、京楽春水、汝を特別に霊王様のおそばに時折居れるように、許可する」
「じゃあ、京楽・・・俺は、ちょっと霊王として霊王宮にあがるよ」
「浮竹!」
「別れじゃないから。また、会える」
零番隊に連れられて、浮竹は去ってしまった。
それから、どれくらい月日が流れただろうか。
半年は音信不通だった。
浮竹が生きているだけでいいと思っていたが、それでもやはり傍にいれないと寂しさが募る。
「浮竹・・・・今頃、何してるだろう」
ふと、地獄蝶がやってくる。
「霊王様がお呼びです。一番隊隊舎の裏にゲートを作るので、そこから霊王宮にあがりなさい」
京楽は、仕事を放りだしてゲートに入った。
「浮竹に会えるの・・・・?」
気づくと、そこは春の季節を保った霊王宮の入り口だった。
「お、京楽、久しぶり」
傍に侍女を従えて、霊王となった浮竹は美しい着物を着て、長い白髪を結い上げて花で飾り、まるで女性に見間違うような出で立ちをしていた。
「浮竹?」
「他の者は下がってくれ。京楽と二人きりになりたい」
「しかし霊王様!」
「この霊王の命令が聞けないのか?」
「申し訳ありません。退席いたします」
霊王となった浮竹に案内されて、霊王宮のいろんな場所を紹介された。
「ここが、俺の部屋だ」
広い部屋に、ぽつんと大きなベッドだけがある。
「霊王の君って、普段何をしているの?」
「下界を見てる。何かの命が生まれる時が、一番嬉しい。お前のことも、時折見ていた。総隊長として、立派にやっているんだな」
「浮竹!」
京楽は、浮竹に抱き着いた。
「どうしたんだ?」
「半年も、君に会えなかった。半年ぶりだよ。浮竹不足で死にそうだ」
「大袈裟だな」
「ねぇ、しばらくこの霊王宮に居てもいいのかな?」
「ああ。俺の我儘になるが、霊王を止めるって言いだせば、大抵のことは片がつく」
「浮竹、悪いいたずらっ子みたい」
「ふふ・・・・好きだぞ、京楽」
「僕も大好きだよ、浮竹」
霊王となった浮竹をベッドに押し倒して、体を重ねた。
半年ぶりなので、加減ができなくて浮竹は意識を飛ばしてしまった。
「ごめんね、浮竹。君が傍にいないと、僕はだめみたい」
浮竹の隣で、浮竹を抱きしめて眠った。
朝餉の時刻になり、浮竹も目を覚ます。
「京楽、たまってたな」
「ああ、うん。ごめん」
配膳係は、何も聞いていないように振舞う。
「ねぇ、肺の病は大丈夫なの?」
「ああ。霊王になったせいか、肺は健康そのものなんだ。体が弱いのは変わりないが。霊王宮の外までしか出れないが、外は春の季節が保たれていて、体にも心地よい」
「ごめん、昨日君にした行為は、君の体を蝕んでしまうかもしれない」
「いい。俺も、望んだことだ」
浮竹は、朝餉を食べ終えると、京楽を連れて霊王宮の外に出た。
「ここは、年中桜が咲いているんだ。この桜の大木が、俺のお気に入りだ」
「綺麗だね」
「そうだろう」
「うん。桜の花びら舞う下にいる君が、とても綺麗だ」
浮竹は、赤くなった。
「な、何を言っている」
「ふふふ。かわいいなぁ、浮竹は」
「からかうな。これでも、霊王なんだぞ」
「かわいい霊王様だね」
「むう」
浮竹は頬を膨らませる。
「僕は、いつまでここにいれるのかな?」
「1週間。その次は、また半年後だ」
「そう。じゃあ、明日ここで花見をしよう。酒を飲みかわそう」
浮竹と京楽は、離れていた時間を取り戻すように、お互い傍にいて寄り添い合った。
「じゃあ、また半年後に」
「京楽!」
「なんだい」
「これ、俺専用の伝令神機だ。話ならできるから」
「お、気が利くね。ありがたくもらって、活用させてもらうよ」
霊王となった浮竹は、暇をもてあましている。
霊王の存在は、世界が在るのを見届け、贄となって支えるもの。
「おはよう、浮竹」
「おはよう、京楽」
専用の伝令神機を利用して、毎日のように会話ができて、二人が離れている距離は、近いものになる。
「来月は、あれから半年が経つから会える。早く、お前に触れたい」
「僕もだよ。君を抱きたい」
「な、俺は、会いたいと・・・・・・」
「でも、抱かれたいでしょ?」
「知るか!」
浮竹は、伝令神機を畳にたたきつける。
「あははは。顔まで真っ赤な君が想像できる」
受話器ごしから聞こえてくる声に、真っ赤になりながら、浮竹は。
「俺も抱かれたい。早く、会いたい・・・・・・」
そう言って、伝令神機を切って、桜の大木があるところまでくると、下界を少し見た。
京楽の姿が見えた。
滞在は一週間になるので、ばりばり仕事をしているらしかった。
「ふふ・・・・・」
一生懸命な京楽を見ていると、こっちまで嬉しくなる。
「そんなに、俺に会いたいのか・・・・」
浮竹は、少し笑って、桜の大木の下で微睡みだす。
霊王は、ただ在ればいいだけなので、基本暇だ。
書物を読んだり、身の回りの世話をする者と囲碁や麻雀をしたり、花札とかトランプをしたり。
眠っている時間が、1日の3分の2を占めるようになっていた。
「京楽・・・早く、会いたい・・・・・」
眠りながら、京楽の夢を見る。
次に会えるまであと1カ月。
伝令神機で連絡を取り合ってるので、孤独ではないし、半年に一回ではあるが、実際に会える。
霊王となったことに、後悔はしていない。
一度死んだはずなのだ。
京楽と同じ時間を生きて、会えるなら、もうそれ以上の望みはないのだった。
28話補完小説
「俺は・・・・あんたを止めるためにここにきたんだ。あんたを止めて、尸魂界も現世も虚圏を、全部守るために!」
「無駄だ。全部観えている」
「うおおおおおおおお!!月牙天衝!」
天鎖斬月を握り、月牙天衝を何度も放つが、ユーハバッハにはきかない。
「ああああああ!!!!」
修行でパワーアップしたはずの月牙天衝をはじかれて、弓で攻撃される。
それを斬月ではじいていくが、数が多く威力が高い。
「俺は、お前を倒して・・・・・・」
「全てを守るか。手遅れだ」
ユーハバッハは、霊王を見せた。
「霊王は死んだ。お前になす術は最早ない」
ユーハバッハの言葉通り、霊王を封じ込めた水晶には剣がささっていた。
「剣をぬいて霊王を救うか。抜くがいい。お前にならそれができよう。お前自身の手で尸魂界を滅ぼすがいい」
「なんだ・・・・・どうなっている!剣が・・・」
霊王を、真っ二つにしていた。
ざっと、自分のしでかしたことの大きさと絶望に、地面に膝をつける。
俺が。
俺の手が、霊王を殺した。
信じられなかった。
自分の中に流れる滅却師の血が、ざわめく。
ユーハバッハに操つられたような状態だったとはいえ、俺が霊王を殺し、世界を終わらせようとしている。
「さぁ、一護よ。共に観よう。尸魂界の終焉を」
「俺は・・・・俺は・・・」
「言ったはずだ。手遅れだと。ここに現れたお前自身の手で、霊王は止めをさされるのだから」
ユーハバッハの言葉が遠くにかんじる。
「どうしてだ・・・・どうして俺は斬った?どうしてこの剣は俺の手を離れねぇんだ?」
一護は、不敵な笑みを浮かべるユーハバッハに切りかかった。
「我が聖文字はA。全知全能。全ての未来を見通し、全ての力を奪い、与える。わが剣に宿る我が霊圧をお前に与えることもできる。その流れ込んだ私の力が、お前の血に呼びかけたのだ。
許せぬはずだ許せぬはずだ。お前に滅却師の血が流れるのならば、お前は霊王をきらなければならぬ!」
ユーハバッハは叫んだ。
人間であり、滅却師であり、フルブリンガーであり、死神であり、虚である。
その存在こそが、唯一霊王を死に至らしめるのだと。
俺は。
俺は、無力なのか。
俺の手で、世界を壊すというのか。
ああ。
どうか。
世界よ、壊れないでくれ。
「私は、私の手で新たな世界を創造する」
「無駄だ。全部観えている」
「うおおおおおおおお!!月牙天衝!」
天鎖斬月を握り、月牙天衝を何度も放つが、ユーハバッハにはきかない。
「ああああああ!!!!」
修行でパワーアップしたはずの月牙天衝をはじかれて、弓で攻撃される。
それを斬月ではじいていくが、数が多く威力が高い。
「俺は、お前を倒して・・・・・・」
「全てを守るか。手遅れだ」
ユーハバッハは、霊王を見せた。
「霊王は死んだ。お前になす術は最早ない」
ユーハバッハの言葉通り、霊王を封じ込めた水晶には剣がささっていた。
「剣をぬいて霊王を救うか。抜くがいい。お前にならそれができよう。お前自身の手で尸魂界を滅ぼすがいい」
「なんだ・・・・・どうなっている!剣が・・・」
霊王を、真っ二つにしていた。
ざっと、自分のしでかしたことの大きさと絶望に、地面に膝をつける。
俺が。
俺の手が、霊王を殺した。
信じられなかった。
自分の中に流れる滅却師の血が、ざわめく。
ユーハバッハに操つられたような状態だったとはいえ、俺が霊王を殺し、世界を終わらせようとしている。
「さぁ、一護よ。共に観よう。尸魂界の終焉を」
「俺は・・・・俺は・・・」
「言ったはずだ。手遅れだと。ここに現れたお前自身の手で、霊王は止めをさされるのだから」
ユーハバッハの言葉が遠くにかんじる。
「どうしてだ・・・・どうして俺は斬った?どうしてこの剣は俺の手を離れねぇんだ?」
一護は、不敵な笑みを浮かべるユーハバッハに切りかかった。
「我が聖文字はA。全知全能。全ての未来を見通し、全ての力を奪い、与える。わが剣に宿る我が霊圧をお前に与えることもできる。その流れ込んだ私の力が、お前の血に呼びかけたのだ。
許せぬはずだ許せぬはずだ。お前に滅却師の血が流れるのならば、お前は霊王をきらなければならぬ!」
ユーハバッハは叫んだ。
人間であり、滅却師であり、フルブリンガーであり、死神であり、虚である。
その存在こそが、唯一霊王を死に至らしめるのだと。
俺は。
俺は、無力なのか。
俺の手で、世界を壊すというのか。
ああ。
どうか。
世界よ、壊れないでくれ。
「私は、私の手で新たな世界を創造する」
奴隷竜とSランク冒険者13
「ふう、今回のダンジョン探索はマジックアイテムがたくさんでたね」
「ああ。金になるな」
「うん。いくらになるか楽しみだね」
京楽と浮竹は、Sランクダンジョンを踏破した帰り道に、冒険者ギルドに寄った。
マジックアイテムをたくさん買いとってもらい、白金貨13万枚を手にした。
「久しぶりに、外で食事しないか」
「いいね。高級レストランにでも行こうか」
街を歩いていると、浮竹と京楽そっくりの人物が、向こう側からやってくる。
「あ、お前、なんでこの世界に!夢の中じゃないのに!」
浮竹が、変身能力をもつ、夢の中で出会う浮竹に話しかける。
『あ、ドラゴンの俺!気づいたら、この世界にいたんだ!ここはすごいな!魔法とかあるんだな!それに、見たこともない種族がいっぱいだし、絵本の通りでびっくりだ!』
「びっくりしたのは俺のほうだ」
「僕がいる・・・・・・」
『ボクがいるね・・・・・』
京楽たちは、鏡を見るように不思議そうにしていた。
「京楽、こっちが夢によく出てくるもう一人の俺で、そっちは連れの京楽らしい」
『こっちの浮竹も、かわいいね。でも、ボクの浮竹が一番かわいいけどね』
「僕の浮竹が一番かわいいよ!」
不毛な言い争いをする京楽たちを放置して、浮竹たちは市場に行くことにした。
「待ってよ、浮竹!」
『浮竹、だめだよ一人で出歩いちゃ。世界が違うんだから』
「京楽たち、仲良くしろ」
『そうだぞ、京楽。俺たちみたいに、仲良くなれ』
道すがら、違う世界の浮竹と京楽は、こっちの世界でいわゆる異世界召還されたのだと知る。
術者はいなくて、気づいたらこっちの世界にいたそうだ。
「勇者が召還される以外にも、普通の人間が召還されることもあるし、普通にすぐに戻ることもある。多分、今回は後者だろう。こっちの世界にいられる時間は限られているだろうから、とりあえず買い物だ!」
浮竹は、もう一人の浮竹の手を引っ張って、洋服屋に入っていった。
「あ、これ似合いそうだな。でも、こっちの青も捨てがたい」
『服、買ってもらっていいのか、ドラゴンの俺。この店、凄く高そうなんだが』
「金なら腐るほどある。どうせなら、いい服を買ってやりたい」
『これ、絹じゃないか!高いだろう』
「金は腐るほどある」
「そっちの浮竹には、こういう服が似合うんじゃない?」
京楽がチョイスした服を、もう一人の浮竹は気に入ったようで、それに着替えた。
『どうだ、似合っているか?』
『「かわいい・・・・・」』
京楽たちは、はもっていた。
「うん、バッチリ似合っているぞ。そっちの京楽も、好きな服を選ぶといい。買ってやる」
『じゃあ、お言葉に甘えて・・・・』
異能力者の京楽は、もう一人の浮竹の服と対になるような服を買って、着ることにした。
ぐうううう。
もう一人の浮竹の腹が鳴って、もう一人の浮竹は顔を真っ赤にする。
「ちょうど、高級レストランに行こうかとさっきまで京楽と話していたところなんだ。おごってやるから、お前たちも来い」
『ドラゴンの浮竹におごられるのって、なんか不思議な感覚』
「浮竹も僕も、Sランク冒険者だからね。君たちよりは金持ちのはずだよ」
『ドラゴンの俺、凄いんだな』
「全部、京楽が俺を買ってくれたおかげだ」
高級レストランへいく道の途中で、浮竹は自分が元奴隷であり、京楽に買われて幸せになっていることを話した。
『つらかっただろう、ドラゴンの俺。でも今は、冒険者の京楽がいて、安心だな!』
「ああ。京楽がいてくれるから、俺は生きている。ほんとははく製にするとかという話も出ていたんだ」
『ドラゴンのはく製は迫力があるだろうが、ドラゴンの俺がはく製になるなんて嫌だ!』
もう一人の浮竹は、ぎゅっと浮竹に抱き着いた。
「着いたぞ。もう一人の俺、もう今の俺は大丈夫だから安心しろ。好きなコースを頼むといい」
文字が読めないので、浮竹と京楽に翻訳してもらって、異世界の浮竹と京楽は本日のおすすめコースを選んだ。
シャトーブリアンのステーキとか、トリュフたっぷりの海鮮パスタとか、おいしいが高そうなものばかりでてきた。
『うまいが、お金が気になる・・・・』
『ボクも手持ちはあるけど、こっちの世界とじゃあ通貨が違うものね』
財布を見る異能力者の京楽。
一方、浮竹はもう一人の浮竹を見た。
「パフェ食うか?」
『パフェ!?食べる!』
「こっちの世界にしかないフルーツを使っている。多分、そっちの世界では味わえない味だぞ」
『楽しみだ!』
『あ、ボクの分もお願い』
『京楽、パフェはうまいもんな!』
『うん、そうだね』
やってきたパフェは、紫色の甘い見たことのないフルーツをふんだんに使っていて、おいしいが元の世界では味わえない不思議な味がした。
「会計は僕がもつよ。浮竹に支払わせるわけにはいかないからね」
京楽が、全員分の会計を払う。
白金貨が数百枚飛んでいく。
『白金貨・・・・確か、通貨で一番高い・・・・はう』
その金額を考えて、もう一人の浮竹は軽い眩暈をおこした。
「気にするな、もう一人の俺。俺たちはSランク冒険者だ。白金貨なんて、月に数百万枚うまくいけば溜めれる」
『すごいな、ドラゴンの俺と冒険者の京楽は』
レストランを出て、浮竹たちが泊まっている高級宿にくる。
『また、高そうな宿だな・・・・・』
その時、ぱぁぁぁと異世界の浮竹と京楽の足元が輝いた。
その時、もう一人の浮竹は直観した。
『もう、元の世界に戻るようだ。また、夢の中でいいから会おう、ドラゴンの俺』
「これみやげにもっていけ!」
浮竹が、この世界にしかない果実を盛り合わせたフルーツバスケットを、もう一人の浮竹に渡す。
『何から何まで、ありがとうな!』
『浮竹が世話になったね。まぁボクも世話になったんだけど』
「そっちの浮竹を幸せにしなよ、異世界の僕!」
『当たり前だよ』
光はぱぁぁあと輝いて、異世界の浮竹と京楽はいなくなってしまった。
「不思議な体験だったな」
「うん。でも、君のいう夢の中の浮竹に出会えてよかったよ」
「さて、風呂にでも入るか」
「僕も一緒に入る」
「変なこと、するなよ?」
「ふふ、それはどうだろうねぇ・・・・・」
浮竹と京楽は、普通の日常に戻っていくのだった。
「ああ。金になるな」
「うん。いくらになるか楽しみだね」
京楽と浮竹は、Sランクダンジョンを踏破した帰り道に、冒険者ギルドに寄った。
マジックアイテムをたくさん買いとってもらい、白金貨13万枚を手にした。
「久しぶりに、外で食事しないか」
「いいね。高級レストランにでも行こうか」
街を歩いていると、浮竹と京楽そっくりの人物が、向こう側からやってくる。
「あ、お前、なんでこの世界に!夢の中じゃないのに!」
浮竹が、変身能力をもつ、夢の中で出会う浮竹に話しかける。
『あ、ドラゴンの俺!気づいたら、この世界にいたんだ!ここはすごいな!魔法とかあるんだな!それに、見たこともない種族がいっぱいだし、絵本の通りでびっくりだ!』
「びっくりしたのは俺のほうだ」
「僕がいる・・・・・・」
『ボクがいるね・・・・・』
京楽たちは、鏡を見るように不思議そうにしていた。
「京楽、こっちが夢によく出てくるもう一人の俺で、そっちは連れの京楽らしい」
『こっちの浮竹も、かわいいね。でも、ボクの浮竹が一番かわいいけどね』
「僕の浮竹が一番かわいいよ!」
不毛な言い争いをする京楽たちを放置して、浮竹たちは市場に行くことにした。
「待ってよ、浮竹!」
『浮竹、だめだよ一人で出歩いちゃ。世界が違うんだから』
「京楽たち、仲良くしろ」
『そうだぞ、京楽。俺たちみたいに、仲良くなれ』
道すがら、違う世界の浮竹と京楽は、こっちの世界でいわゆる異世界召還されたのだと知る。
術者はいなくて、気づいたらこっちの世界にいたそうだ。
「勇者が召還される以外にも、普通の人間が召還されることもあるし、普通にすぐに戻ることもある。多分、今回は後者だろう。こっちの世界にいられる時間は限られているだろうから、とりあえず買い物だ!」
浮竹は、もう一人の浮竹の手を引っ張って、洋服屋に入っていった。
「あ、これ似合いそうだな。でも、こっちの青も捨てがたい」
『服、買ってもらっていいのか、ドラゴンの俺。この店、凄く高そうなんだが』
「金なら腐るほどある。どうせなら、いい服を買ってやりたい」
『これ、絹じゃないか!高いだろう』
「金は腐るほどある」
「そっちの浮竹には、こういう服が似合うんじゃない?」
京楽がチョイスした服を、もう一人の浮竹は気に入ったようで、それに着替えた。
『どうだ、似合っているか?』
『「かわいい・・・・・」』
京楽たちは、はもっていた。
「うん、バッチリ似合っているぞ。そっちの京楽も、好きな服を選ぶといい。買ってやる」
『じゃあ、お言葉に甘えて・・・・』
異能力者の京楽は、もう一人の浮竹の服と対になるような服を買って、着ることにした。
ぐうううう。
もう一人の浮竹の腹が鳴って、もう一人の浮竹は顔を真っ赤にする。
「ちょうど、高級レストランに行こうかとさっきまで京楽と話していたところなんだ。おごってやるから、お前たちも来い」
『ドラゴンの浮竹におごられるのって、なんか不思議な感覚』
「浮竹も僕も、Sランク冒険者だからね。君たちよりは金持ちのはずだよ」
『ドラゴンの俺、凄いんだな』
「全部、京楽が俺を買ってくれたおかげだ」
高級レストランへいく道の途中で、浮竹は自分が元奴隷であり、京楽に買われて幸せになっていることを話した。
『つらかっただろう、ドラゴンの俺。でも今は、冒険者の京楽がいて、安心だな!』
「ああ。京楽がいてくれるから、俺は生きている。ほんとははく製にするとかという話も出ていたんだ」
『ドラゴンのはく製は迫力があるだろうが、ドラゴンの俺がはく製になるなんて嫌だ!』
もう一人の浮竹は、ぎゅっと浮竹に抱き着いた。
「着いたぞ。もう一人の俺、もう今の俺は大丈夫だから安心しろ。好きなコースを頼むといい」
文字が読めないので、浮竹と京楽に翻訳してもらって、異世界の浮竹と京楽は本日のおすすめコースを選んだ。
シャトーブリアンのステーキとか、トリュフたっぷりの海鮮パスタとか、おいしいが高そうなものばかりでてきた。
『うまいが、お金が気になる・・・・』
『ボクも手持ちはあるけど、こっちの世界とじゃあ通貨が違うものね』
財布を見る異能力者の京楽。
一方、浮竹はもう一人の浮竹を見た。
「パフェ食うか?」
『パフェ!?食べる!』
「こっちの世界にしかないフルーツを使っている。多分、そっちの世界では味わえない味だぞ」
『楽しみだ!』
『あ、ボクの分もお願い』
『京楽、パフェはうまいもんな!』
『うん、そうだね』
やってきたパフェは、紫色の甘い見たことのないフルーツをふんだんに使っていて、おいしいが元の世界では味わえない不思議な味がした。
「会計は僕がもつよ。浮竹に支払わせるわけにはいかないからね」
京楽が、全員分の会計を払う。
白金貨が数百枚飛んでいく。
『白金貨・・・・確か、通貨で一番高い・・・・はう』
その金額を考えて、もう一人の浮竹は軽い眩暈をおこした。
「気にするな、もう一人の俺。俺たちはSランク冒険者だ。白金貨なんて、月に数百万枚うまくいけば溜めれる」
『すごいな、ドラゴンの俺と冒険者の京楽は』
レストランを出て、浮竹たちが泊まっている高級宿にくる。
『また、高そうな宿だな・・・・・』
その時、ぱぁぁぁと異世界の浮竹と京楽の足元が輝いた。
その時、もう一人の浮竹は直観した。
『もう、元の世界に戻るようだ。また、夢の中でいいから会おう、ドラゴンの俺』
「これみやげにもっていけ!」
浮竹が、この世界にしかない果実を盛り合わせたフルーツバスケットを、もう一人の浮竹に渡す。
『何から何まで、ありがとうな!』
『浮竹が世話になったね。まぁボクも世話になったんだけど』
「そっちの浮竹を幸せにしなよ、異世界の僕!」
『当たり前だよ』
光はぱぁぁあと輝いて、異世界の浮竹と京楽はいなくなってしまった。
「不思議な体験だったな」
「うん。でも、君のいう夢の中の浮竹に出会えてよかったよ」
「さて、風呂にでも入るか」
「僕も一緒に入る」
「変なこと、するなよ?」
「ふふ、それはどうだろうねぇ・・・・・」
浮竹と京楽は、普通の日常に戻っていくのだった。
奴隷竜とSランク冒険者12
その日は新月だった。
浮竹は、京楽の寝ているベッドに忍び込み、ぺろりと唇を舐めた。
「ん・・・浮竹?どうしたの、こんな夜中に。一人じゃ眠れない?」
「したい」
「え?」
「したい。やらせろ」
「ええええええええ!?」
京楽は、訳が分からないまま浮竹の手で衣服を脱がされて、その気にさせられて浮竹を抱くのであった。
「ねぇ、昨日のこと覚えてる?」
「覚えてる。新月の日は、時折発情期になる」
「は、発情期・・・・・・・」
京楽は、肌も露わな浮竹に衣服を着せて、とりあえずお風呂に入った。
次に浮竹をお風呂に入れて、朝食の準備をする。
浮竹は何もなかったかのように、たんたんとしている。
京楽から誘って断られることも多いが、浮竹から襲ってくるのははじめてで、いまだに昨日の妖艶な浮竹が脳内にこびりついて、京楽は焼いたトーストにジャムでもバターでもなく、海苔をぬっていた。
「京楽、それ海苔だぞ」
「え、ああ、本当だ!あははは、やだなぁ、朝から僕ってば」
「なぁ、京楽。今日は休みにしないか?」
「どうして?」
「まだ足りない。したい」
浮竹からきっぱりと求めてくるのはとても珍しいので、京楽はその日のスケジュールを調整して休みにすることにした。
「ん・・・・・んあっ」
朝から、ベッドで乱れ合う。
「あ・・・・・・」
浮竹の甘い声を聞きながら、旺盛な性欲を持つ京楽は浮竹を求める。
昨日抱いたが、まだ抱けた。
「ん・・・・もっと」
「浮竹・・・そんなに絞めつけないで」
「や、もっと奥に出せ」
最奥を抉り、京楽は浮竹の胎の奥に精液を注ぎ込む。
「あ、京楽で満たされる・・・・赤ちゃん、卵、できちゃう」
「ドラゴンって、同性でも子供できるの?」
「希少種は可能だ。でも、俺は子供はいらない・・・・京楽をとられる」
浮竹は、抱かれた後はアフターピルを飲むようにしていた。
「浮竹との赤ちゃんかぁ。ちょっと欲しいかも」
「俺はいやだ。京楽をとりあげられる」
「まぁ、子育てしながら冒険者なんてできないからね。諦めるしかないね」
「京楽、もっと・・・・もっと、奥にいっぱい出して」
身をくねらせて、浮竹は京楽を求めた。
その日、京楽はもう出すものはがないほど浮竹を抱いた。
「んあっ」
「んっ・・・・・ごめん、これで最後。僕のほうがもたない」
「んんっ・・・・ああああ」
最奥に熱い飛沫が出されるのを確認して、浮竹は意識を失った。
「京楽、京楽?」
「ん、浮竹?」
「もう夜だぞ」
「ええっ!」
朝方に寝てしまったのは覚えているが、てっきり昼頃に起きるとばかり思っていたら、もう夕時もこして夜になっていた。
「腹が減った」
「ごめん、今から作るから!」
京楽は慌てて起き上がり、身支度を整えると、クリームシチューを作り、買い置きしていたパンを出した。あと、サラダを作った。
「ごめん、もう少し手のこんだもの作りたかったけど、これで簡便して」
「ん、十分にうまいし大丈夫だ」
「そう、よかった・・・・・・」
「俺は、うまかったか?」
「え、あ、うん。こっちの足腰が立たないじゃないかってくらい、いただきました」
「発情期はたまにくる。その時は、また頼む」
「う、うん。ねぇ、奴隷時代は発情期はあったの?」
「なかった。番に近いパートナーができると、発情期がくる」
浮竹は、クリームシチューのおかわりを食べながら、爆弾発言をしてくる。
「今後も、こういうことが起こるかもしれないんだね」
「俺なりに、発情期はコントロールしている。ダンジョン探索の時なんか、新月でもお前を求めなかっただろう」
「そういえばそうだね」
「今日は久しぶりに溜まっていたから、爆発した」
そういえば、最近浮竹がやり過ぎだと怒るので、セックスをする回数を減らしていたのだ。
それが原因なのかもしれない。浮竹は淡泊なようで、ドラゴンなので性欲は強かった。
「もう、クリームシチューない?」
すっかり食べ終わった浮竹に、京楽は苦笑して冷蔵庫から作りおきしておいたハムカツサンドを出す。
「ん、うまい」
「浮竹は、やっぱり色気より食い気かな」
「何かいったか?」
「ううん、なんでもない」
浮竹はお腹いっぱいになると、風呂に入って、歯を磨いて寝てしまった。
「う、眠れない・・・・・・・」
夜まで爆睡した京楽は、横になっても眠れなかった。
「ねぇ、浮竹、浮竹」
「んー、眠い。邪魔、するな」
しっしとあしらわれて、一人京楽は外に出て星を見ていた。
「あ、流れ星・・・・・」
浮竹とずっと一緒にいられますように。
そう願いをかけた。
浮竹は、深い睡眠の中だ。
京楽は、浮竹のベッドに忍び込んで、いつの間にか眠っていた。
「京楽?朝だぞ。なんで俺のベッドにいるんだ」
「え、ああ、昨日なかなな眠れなかたから、君が恋しくて一緒に寝ちゃった」
「恥ずかしいやつ」
浮竹は頬を赤くしていた。
大胆な浮竹を知ってしまったので、そんな仕草をかわいいなと思う。
「浮竹、かわいい」
「からかうな」
「いや、本当にかわいいなと思って」
浮竹は、顔を赤くしながら身支度を整える。
今日は、Sランクダンジョン探索に行く予定だった。
一週間ほどこもるので、その間えろいことはなしだ。
「大好きだよ、浮竹」
そう言って口づけると。
「俺も好きだ、京楽」
浮竹は、そう言い返して口づけし返してくるのであった。
浮竹は、京楽の寝ているベッドに忍び込み、ぺろりと唇を舐めた。
「ん・・・浮竹?どうしたの、こんな夜中に。一人じゃ眠れない?」
「したい」
「え?」
「したい。やらせろ」
「ええええええええ!?」
京楽は、訳が分からないまま浮竹の手で衣服を脱がされて、その気にさせられて浮竹を抱くのであった。
「ねぇ、昨日のこと覚えてる?」
「覚えてる。新月の日は、時折発情期になる」
「は、発情期・・・・・・・」
京楽は、肌も露わな浮竹に衣服を着せて、とりあえずお風呂に入った。
次に浮竹をお風呂に入れて、朝食の準備をする。
浮竹は何もなかったかのように、たんたんとしている。
京楽から誘って断られることも多いが、浮竹から襲ってくるのははじめてで、いまだに昨日の妖艶な浮竹が脳内にこびりついて、京楽は焼いたトーストにジャムでもバターでもなく、海苔をぬっていた。
「京楽、それ海苔だぞ」
「え、ああ、本当だ!あははは、やだなぁ、朝から僕ってば」
「なぁ、京楽。今日は休みにしないか?」
「どうして?」
「まだ足りない。したい」
浮竹からきっぱりと求めてくるのはとても珍しいので、京楽はその日のスケジュールを調整して休みにすることにした。
「ん・・・・・んあっ」
朝から、ベッドで乱れ合う。
「あ・・・・・・」
浮竹の甘い声を聞きながら、旺盛な性欲を持つ京楽は浮竹を求める。
昨日抱いたが、まだ抱けた。
「ん・・・・もっと」
「浮竹・・・そんなに絞めつけないで」
「や、もっと奥に出せ」
最奥を抉り、京楽は浮竹の胎の奥に精液を注ぎ込む。
「あ、京楽で満たされる・・・・赤ちゃん、卵、できちゃう」
「ドラゴンって、同性でも子供できるの?」
「希少種は可能だ。でも、俺は子供はいらない・・・・京楽をとられる」
浮竹は、抱かれた後はアフターピルを飲むようにしていた。
「浮竹との赤ちゃんかぁ。ちょっと欲しいかも」
「俺はいやだ。京楽をとりあげられる」
「まぁ、子育てしながら冒険者なんてできないからね。諦めるしかないね」
「京楽、もっと・・・・もっと、奥にいっぱい出して」
身をくねらせて、浮竹は京楽を求めた。
その日、京楽はもう出すものはがないほど浮竹を抱いた。
「んあっ」
「んっ・・・・・ごめん、これで最後。僕のほうがもたない」
「んんっ・・・・ああああ」
最奥に熱い飛沫が出されるのを確認して、浮竹は意識を失った。
「京楽、京楽?」
「ん、浮竹?」
「もう夜だぞ」
「ええっ!」
朝方に寝てしまったのは覚えているが、てっきり昼頃に起きるとばかり思っていたら、もう夕時もこして夜になっていた。
「腹が減った」
「ごめん、今から作るから!」
京楽は慌てて起き上がり、身支度を整えると、クリームシチューを作り、買い置きしていたパンを出した。あと、サラダを作った。
「ごめん、もう少し手のこんだもの作りたかったけど、これで簡便して」
「ん、十分にうまいし大丈夫だ」
「そう、よかった・・・・・・」
「俺は、うまかったか?」
「え、あ、うん。こっちの足腰が立たないじゃないかってくらい、いただきました」
「発情期はたまにくる。その時は、また頼む」
「う、うん。ねぇ、奴隷時代は発情期はあったの?」
「なかった。番に近いパートナーができると、発情期がくる」
浮竹は、クリームシチューのおかわりを食べながら、爆弾発言をしてくる。
「今後も、こういうことが起こるかもしれないんだね」
「俺なりに、発情期はコントロールしている。ダンジョン探索の時なんか、新月でもお前を求めなかっただろう」
「そういえばそうだね」
「今日は久しぶりに溜まっていたから、爆発した」
そういえば、最近浮竹がやり過ぎだと怒るので、セックスをする回数を減らしていたのだ。
それが原因なのかもしれない。浮竹は淡泊なようで、ドラゴンなので性欲は強かった。
「もう、クリームシチューない?」
すっかり食べ終わった浮竹に、京楽は苦笑して冷蔵庫から作りおきしておいたハムカツサンドを出す。
「ん、うまい」
「浮竹は、やっぱり色気より食い気かな」
「何かいったか?」
「ううん、なんでもない」
浮竹はお腹いっぱいになると、風呂に入って、歯を磨いて寝てしまった。
「う、眠れない・・・・・・・」
夜まで爆睡した京楽は、横になっても眠れなかった。
「ねぇ、浮竹、浮竹」
「んー、眠い。邪魔、するな」
しっしとあしらわれて、一人京楽は外に出て星を見ていた。
「あ、流れ星・・・・・」
浮竹とずっと一緒にいられますように。
そう願いをかけた。
浮竹は、深い睡眠の中だ。
京楽は、浮竹のベッドに忍び込んで、いつの間にか眠っていた。
「京楽?朝だぞ。なんで俺のベッドにいるんだ」
「え、ああ、昨日なかなな眠れなかたから、君が恋しくて一緒に寝ちゃった」
「恥ずかしいやつ」
浮竹は頬を赤くしていた。
大胆な浮竹を知ってしまったので、そんな仕草をかわいいなと思う。
「浮竹、かわいい」
「からかうな」
「いや、本当にかわいいなと思って」
浮竹は、顔を赤くしながら身支度を整える。
今日は、Sランクダンジョン探索に行く予定だった。
一週間ほどこもるので、その間えろいことはなしだ。
「大好きだよ、浮竹」
そう言って口づけると。
「俺も好きだ、京楽」
浮竹は、そう言い返して口づけし返してくるのであった。
奴隷竜とSランク冒険者11
「わわわわわ、私が一護と恋次と結婚!?」
勝手に進んでしまった結婚話をうけて、ルキアは卒倒した。
「俺がルキアの夫!?しかも恋次まで!?」
ついでに、一護も卒倒した。
「ふう。もっと落ち着いて」
京楽が、倒れた二人を椅子に座らせる。
「兄様の決めたことには、守ると決めているが、しかしいいのだろうか。夫を二人ももつだなんて」
「いいんじゃないの。逆ハーレムで」
「逆ハーレム!けしからん!」
ルキアは、そう言いながら真っ赤になっていた。
「まぁ、いいんじゃないのか。結婚式の日取りがもう決められているし、4大貴族朽木家らしく、かなり派手にするみたいだぞ」
浮竹の言葉に、その場に一応参加していた恋次もちらちらルキアを見ていた。
「なんだ、恋次。何か言いたいのか」
「いや、お前の夫になるんだ。その、仲良くしようぜ」
「元から幼馴染で仲はいいだろうが」
「それより、なんで一護までルキアの夫になるんだよ」
「知るか!兄様に聞け!それに、私は恋次を好いてはおるが、一護のことも好いておる」
「おい、一護」
恋次は、まだふわふわしている一護の頭をチョップで殴った。
「何すんだよ!」
「そ、その、これからルキアの夫同士になるんだ。よ、よろしくな」
「ああ、これはどうもご丁寧に・・・なんて言うわけねぇだろ!」
「なにぃ?」
「なんだよ!」
喧嘩を始める二人を、ルキアがなだめて、それでも収集がつかないので京楽が魔剣を抜く。
「ちょっと、痛い目見る?」
「すんません」
「すみません」
「まぁ、式はうまくいくでしょ。3人で、あとは仲良くできるようにしてね。これから一生3人で・・・・子供も生まれば、家族として暮らしていくんだから」
「こ、子供!」
ボンっと、ルキアは真っ赤になった。
「その、一護、恋次、ふがいない私だが、今後ともよろしく」
「あ、ああ。ルキア、好きだぜ」
「何を。俺のほうがルキアのことが好きだ」
一護の言葉に、恋次がかみつく。
ぎゃあぎゃあ言い合いをはじめるが、浮竹が軽くアイシクルブレスを吐くと、静かになった。
結局、ルキアと一護と恋次の結婚式は、一週間後に行われた。
純白のウェディングドレスを着たルキアは、美しかった。
「綺麗だね、ルキアちゃん」
「ああ。ルキアは美人だからな」
両脇を、白いスーツを着た恋次と一護が、ルキアと腕を組みながら歩いていく。
リーンゴーン。
鐘が鳴り響き、花びらが舞い落ちてきた。
「結婚か。なんだかいいな」
「僕たちも、式あげちゃう?」
「いや、いい。俺は京楽の傍にいられるなら、それでいい」
リーンゴーン。
ルキアは笑顔ふりまいて、一護も恋次も笑っていた。
どうなることかと少し心配していたのだが、どうやらうまくやっていけそうである。
「あ、浮竹さん!」
ルキアが、浮竹を呼び止める。
「どうした?」
「その、いろいろとありがとうござました。京楽さんも」
「いや、気にするな」
「そうだよ。気にしないいでいいよ」
ルキアは、持っていたブーケを浮竹に渡した。
「どうか、二人もお幸せに」
そう言って、恋次と一護の元に戻っていった。
結婚指輪をはめて、新郎の二人と口づけを交わす。
「病める時も、健やかなる時も、朽木ルキア、汝は・・・・・・・」
浮竹は、豪華なブーケを手に、ルキアに声をかける。
「幸せになれよ、ルキア!」
「はい!」
どこからか、音もなく白哉がやってくる。
「どうだ。兄らから見て、あの3人は仲良くやっていけると思うか」
「ああ、白哉。大丈夫だろう。お互い好きあってるし、一護君と恋次君も仲良くなったみたいだし、きっとうまくやっていける」
「最初に生まれた子が朽木家の時期当主となる」
「女の子でもか?」
「ああ、そうだ」
「気が早いよ、白哉君」
京楽が、苦笑する。
「あれの姉は、私の妻だった。体が弱く、子を産まないまま逝ってしまった。後妻をとれと一族の者がうるさいので、ルキアの子を時期当主にすると勝手にきめた。あれは、私を恨んでいるだろうか。結婚まで勝手に決めて」
浮竹は、白哉の頭を撫でた。
「大丈夫だ。まだ若いが、3人ももうすぐ立派な大人だ。分かってくれる」
「兄は、優しいのだな・・・・・・」
「浮竹は僕のものだよ」
「そういう意味ではない。兄は、少し浮竹を縛り過ぎではないのか」
「え、そうなの?」
聞いてくる京楽に、浮竹はもっていたブーケを京楽に押し付けた。
「大丈夫だ。俺は、お前のものだ。お前に縛られるのはむしろ歓迎だ」
「浮竹・・・・・・」
「京楽・・・・・」
「ごほん」
白哉の咳払いで、現実に戻る二人は、ルキアの結婚式を見届けた。結婚式は、明日も行われて、明日は祭りが開かれることになっていた。
「ああ、ルキアちゃん綺麗だったなぁ。最後には泣いちゃってた」
「幸福の涙だ。それより、知っているか。ムーンホワイトドラゴンが、満月の半竜人の日に流す涙は竜涙石と言って、貴重な宝石になるんだ」
「え、何それ。知らない」
「奴隷時代、満月になると涙を流すように強制された。嫌な思い出だが、もう半竜人の時に涙を流すことはないと思っている。持っている最後の竜涙石だ。お前にやる」
「え、いいの。貴重なものなんでしょ」
虹色に輝く、小粒の石を京楽は受け取る。
「1つ、白金貨5万枚」
けっこうな額に、京楽は浮竹が奴隷時代に涙を零すよう強制させられたことに心を痛ませた。
「奴隷時代のことは、もう忘れれた?」
「ああ。もう忘れた。今は隣にお前がいる。それだけで、俺は幸せだ」
浮竹は、京楽に寄り添って、そっと額にキスをする。
京楽も、浮竹の額にキスをした。
「いつも、お前がいろいろとくれるから、お返しになればと思って」
「そんなの、別にいいのに。でも、大切にするね」
京楽は、竜涙石をブレスレットに加工して、いつもはめることになる。
ルキアと一護と恋次の結婚式は、翌日も行われた。
京楽と浮竹も参加して、3人の新しい門出を祝うのであった。
勝手に進んでしまった結婚話をうけて、ルキアは卒倒した。
「俺がルキアの夫!?しかも恋次まで!?」
ついでに、一護も卒倒した。
「ふう。もっと落ち着いて」
京楽が、倒れた二人を椅子に座らせる。
「兄様の決めたことには、守ると決めているが、しかしいいのだろうか。夫を二人ももつだなんて」
「いいんじゃないの。逆ハーレムで」
「逆ハーレム!けしからん!」
ルキアは、そう言いながら真っ赤になっていた。
「まぁ、いいんじゃないのか。結婚式の日取りがもう決められているし、4大貴族朽木家らしく、かなり派手にするみたいだぞ」
浮竹の言葉に、その場に一応参加していた恋次もちらちらルキアを見ていた。
「なんだ、恋次。何か言いたいのか」
「いや、お前の夫になるんだ。その、仲良くしようぜ」
「元から幼馴染で仲はいいだろうが」
「それより、なんで一護までルキアの夫になるんだよ」
「知るか!兄様に聞け!それに、私は恋次を好いてはおるが、一護のことも好いておる」
「おい、一護」
恋次は、まだふわふわしている一護の頭をチョップで殴った。
「何すんだよ!」
「そ、その、これからルキアの夫同士になるんだ。よ、よろしくな」
「ああ、これはどうもご丁寧に・・・なんて言うわけねぇだろ!」
「なにぃ?」
「なんだよ!」
喧嘩を始める二人を、ルキアがなだめて、それでも収集がつかないので京楽が魔剣を抜く。
「ちょっと、痛い目見る?」
「すんません」
「すみません」
「まぁ、式はうまくいくでしょ。3人で、あとは仲良くできるようにしてね。これから一生3人で・・・・子供も生まれば、家族として暮らしていくんだから」
「こ、子供!」
ボンっと、ルキアは真っ赤になった。
「その、一護、恋次、ふがいない私だが、今後ともよろしく」
「あ、ああ。ルキア、好きだぜ」
「何を。俺のほうがルキアのことが好きだ」
一護の言葉に、恋次がかみつく。
ぎゃあぎゃあ言い合いをはじめるが、浮竹が軽くアイシクルブレスを吐くと、静かになった。
結局、ルキアと一護と恋次の結婚式は、一週間後に行われた。
純白のウェディングドレスを着たルキアは、美しかった。
「綺麗だね、ルキアちゃん」
「ああ。ルキアは美人だからな」
両脇を、白いスーツを着た恋次と一護が、ルキアと腕を組みながら歩いていく。
リーンゴーン。
鐘が鳴り響き、花びらが舞い落ちてきた。
「結婚か。なんだかいいな」
「僕たちも、式あげちゃう?」
「いや、いい。俺は京楽の傍にいられるなら、それでいい」
リーンゴーン。
ルキアは笑顔ふりまいて、一護も恋次も笑っていた。
どうなることかと少し心配していたのだが、どうやらうまくやっていけそうである。
「あ、浮竹さん!」
ルキアが、浮竹を呼び止める。
「どうした?」
「その、いろいろとありがとうござました。京楽さんも」
「いや、気にするな」
「そうだよ。気にしないいでいいよ」
ルキアは、持っていたブーケを浮竹に渡した。
「どうか、二人もお幸せに」
そう言って、恋次と一護の元に戻っていった。
結婚指輪をはめて、新郎の二人と口づけを交わす。
「病める時も、健やかなる時も、朽木ルキア、汝は・・・・・・・」
浮竹は、豪華なブーケを手に、ルキアに声をかける。
「幸せになれよ、ルキア!」
「はい!」
どこからか、音もなく白哉がやってくる。
「どうだ。兄らから見て、あの3人は仲良くやっていけると思うか」
「ああ、白哉。大丈夫だろう。お互い好きあってるし、一護君と恋次君も仲良くなったみたいだし、きっとうまくやっていける」
「最初に生まれた子が朽木家の時期当主となる」
「女の子でもか?」
「ああ、そうだ」
「気が早いよ、白哉君」
京楽が、苦笑する。
「あれの姉は、私の妻だった。体が弱く、子を産まないまま逝ってしまった。後妻をとれと一族の者がうるさいので、ルキアの子を時期当主にすると勝手にきめた。あれは、私を恨んでいるだろうか。結婚まで勝手に決めて」
浮竹は、白哉の頭を撫でた。
「大丈夫だ。まだ若いが、3人ももうすぐ立派な大人だ。分かってくれる」
「兄は、優しいのだな・・・・・・」
「浮竹は僕のものだよ」
「そういう意味ではない。兄は、少し浮竹を縛り過ぎではないのか」
「え、そうなの?」
聞いてくる京楽に、浮竹はもっていたブーケを京楽に押し付けた。
「大丈夫だ。俺は、お前のものだ。お前に縛られるのはむしろ歓迎だ」
「浮竹・・・・・・」
「京楽・・・・・」
「ごほん」
白哉の咳払いで、現実に戻る二人は、ルキアの結婚式を見届けた。結婚式は、明日も行われて、明日は祭りが開かれることになっていた。
「ああ、ルキアちゃん綺麗だったなぁ。最後には泣いちゃってた」
「幸福の涙だ。それより、知っているか。ムーンホワイトドラゴンが、満月の半竜人の日に流す涙は竜涙石と言って、貴重な宝石になるんだ」
「え、何それ。知らない」
「奴隷時代、満月になると涙を流すように強制された。嫌な思い出だが、もう半竜人の時に涙を流すことはないと思っている。持っている最後の竜涙石だ。お前にやる」
「え、いいの。貴重なものなんでしょ」
虹色に輝く、小粒の石を京楽は受け取る。
「1つ、白金貨5万枚」
けっこうな額に、京楽は浮竹が奴隷時代に涙を零すよう強制させられたことに心を痛ませた。
「奴隷時代のことは、もう忘れれた?」
「ああ。もう忘れた。今は隣にお前がいる。それだけで、俺は幸せだ」
浮竹は、京楽に寄り添って、そっと額にキスをする。
京楽も、浮竹の額にキスをした。
「いつも、お前がいろいろとくれるから、お返しになればと思って」
「そんなの、別にいいのに。でも、大切にするね」
京楽は、竜涙石をブレスレットに加工して、いつもはめることになる。
ルキアと一護と恋次の結婚式は、翌日も行われた。
京楽と浮竹も参加して、3人の新しい門出を祝うのであった。
奴隷竜とSランク冒険者10
「寒い・・・・・・・」
「どうしたの、浮竹」
「ふらふらする・・・・・」
浮竹は、Sランクダンジョン攻略の途中でそう言って、京楽にもたれかかってきた。
「こりゃ、風邪かなぁ。ダンジョン攻略は中止だね」
浮竹を背負って、京楽は帰還スクロールを使い、地上に戻るとそのまま高級宿に帰る。
「大丈夫?」
「あつい・・・・体が、あつい・・・・」
「あちゃー、熱あるね。今、薬屋にいって熱さましと風邪の薬買ってくるね」
部屋を去って行こうとする京楽の服の裾を、ぞっと掴む。
「一人は、嫌だ・・・・・・」
「大丈夫、すぐに戻ってくるから」
「やだ・・・一人は、や」
「仕方ないねぇ。スリープ」
眠りの呪文をかけて、浮竹を寝かせると、京楽は熱さましと風邪薬を買いに外に出ていくのだった。
まどろみの夢の中で、浮竹は夢渡りをしていた。
『どうしたんだ、ドラゴンの俺?』
「あ・・・・一人は、いや、だ・・・・」
『傍にあの京楽はいないのか?』
「薬を買いに行くって・・・・・」
『よしよし。俺がいるから、寂しくないぞ?』
青年は、浮竹の頭を優しく撫でる。
「あったかい・・・・・おちつく」
浮竹は、青年に抱きしめられて、すうすうと眠りについた。
『夢の中でも眠っちゃうのか。俺は傍にいるから、安心しておやすみ』
「ん・・・・・」
まどろみから目覚めると、京楽がいた。
「きょうら・・・・く?」
「ああ、目が覚めた?おかゆ、食べれそう?」
「食欲ない・・・・・・」
いつもならたくさん食べる浮竹だが、風邪の時ばかりは食欲はでないようであった。
「数口でもいいから食べて。薬効きやすくするために。はい、あーん」
「ん・・・・・」
優しい味のおかゆを、数口食べて、浮竹はギブアップした。
「もう、無理・・・・」
「うん、がんばったね。はい、これ熱さましと風薬」
「薬は苦いからいやだ」
「そんなこと言わないで飲んで。子供用の甘い薬にしておいたから」
京楽が、苦笑しながら浮竹に水の入ったコップを渡す。
浮竹は、しぶしぶ薬を飲んだ。
「甘い・・・・・・」
「ね?甘い薬にしてあげたから、ちゃんと1日3回のんでね?」
「うん・・・・・・」
熱を出した浮竹は素直で、京楽の手を握ってくる。
「傍に、いてくれ。お前がいないと、寂しい」
「いつもがこんなに素直なら、嬉しいんだけどねぇ」
京楽は、なかなか寝付けないでいる浮竹に、再びスリープの魔法をかけて寝かせると、傍で本を読みだした。
浮竹のおでこには、冷えピタシートをはっておいた。
「ん・・・」
数時間して、浮竹が目覚める。
「あ・・・・きょうらく、どこ?」
「僕はここにいるよ。ちゃんと君の傍にいるから」
「きょうらく・・・・・・好き」
「うん。僕も大好きだよ」
浮竹は、まどろみと覚醒を繰り返す。
丸1日がたち、少し熱が下がったので、お粥をまた食べさせた。
今度は完食した。
「うん、大分元気になってきたね。熱はまだあるみたいだけど」
「京楽、傍にいて」
「うん。寝汗かいて気持ち悪いでしょ?体、ふいてあげる」
浮竹は、パジャマを脱がされて京楽に体をふいてもらった。
「京楽、いつもより優しい」
「そりゃ、病人だしね、今の浮竹は。それより、ドラゴンでも風邪ひくって知って、ちょっとびっくりしてる」
「ドラゴンだって風邪をひく時はひく」
風邪薬を飲んで、横になる。
スリープの呪文をかけることもなく、浮竹は自然に薬の効果で眠ってしまった。
浮竹が風邪をひいて3日目。
風邪は見事に治り、今度は京楽が風邪をひいた。
「お粥作った」
「その黒転げがおかゆ・・・・ああああ」
「食え!」
「はひ」
「薬は、俺の残りの分でいいな?」
「うん。このおかゆ、苦くて辛くてしょっぱいよ」
「愛情の味だ。文句言わずに食え。食って薬飲まないと、治らないぞ」
「分かってるよ」
ちなみに、京楽は熱を出した上に腹痛もやってきた。浮竹のおかゆのせいであった。
「ねぇ、お粥に何いれたの」
「マンドレイク」
「それ、錬金術に使うやつ・・・・・おなかいたい・・・・・・」
「生まれるのか!?」
「そうそう・・・ってそんなわけないでしょ。ちょっとトイレ行ってくる」
「支えなくて平気か?」
「大丈夫、大分よくなったし、一人で歩けるよ」
京楽は、よろよろとよろけながらも歩く。
浮竹は、そんな京楽をお姫様抱っこした。
「ちょ、浮竹!?」
「俺だって力はあるぞ。トイレまで連れてく」
「うん、ありがと」
「何か変なものでも食ったのか?」
君のおかゆのせいとは言えなくて、京楽は曖昧に微笑む。
「薬の消費期限が、ちょっと古かったみたい」
トイレから出てくると、浮竹はまた京楽をお姫様抱っこした。
「それは大変だ。急いで、新しい薬を・・・・・って、俺一人じゃ外出しちゃいけないんだった」
「大丈夫、寝てれば直に治るから」
「そうか。子守唄をうたってやる」
ベッドに寝かしつけた京楽に、浮竹は優しい旋律の子守唄を歌い出した。
以外と綺麗な声で、京楽はその子守歌に耳を傾けながら、眠りに落ちていく。
「早く、よくなれよ」
京楽も、3日ほどで治り、念のためと京楽は浮竹と一緒に病院にいき、完治しているのを確かめてもらって、予備用に風薬を買った。
「ドラゴンでも風邪ひくと、辛いものだな」
「風邪ひくドラゴンってはじめて見た」
「俺は人型をとるからな。人の病もうつりやすい」
「とにかく、お互い治ってよかったね」
京楽の言葉に、浮竹は頷く。
「この前、放棄したダンジョン探索の続きをしよう」
「ああ、そんなに走り回っちゃだめだよ。一応病み上がりなんだから」
「平気だ。ドラゴンは病にかかっても、治りやすい」
「確かに、けっこう重症に見えた割には治るの早かったね」
「京楽も治るの早かった。なぜか腹痛も起こしてたけど」
「腹痛も風邪のせいだよ」
「そうか」
君のおかゆのせいとは言えなくて、京楽は冷や汗を垂らしながら、浮竹が台所に立つを禁じようと思うのだった。
「どうしたの、浮竹」
「ふらふらする・・・・・」
浮竹は、Sランクダンジョン攻略の途中でそう言って、京楽にもたれかかってきた。
「こりゃ、風邪かなぁ。ダンジョン攻略は中止だね」
浮竹を背負って、京楽は帰還スクロールを使い、地上に戻るとそのまま高級宿に帰る。
「大丈夫?」
「あつい・・・・体が、あつい・・・・」
「あちゃー、熱あるね。今、薬屋にいって熱さましと風邪の薬買ってくるね」
部屋を去って行こうとする京楽の服の裾を、ぞっと掴む。
「一人は、嫌だ・・・・・・」
「大丈夫、すぐに戻ってくるから」
「やだ・・・一人は、や」
「仕方ないねぇ。スリープ」
眠りの呪文をかけて、浮竹を寝かせると、京楽は熱さましと風邪薬を買いに外に出ていくのだった。
まどろみの夢の中で、浮竹は夢渡りをしていた。
『どうしたんだ、ドラゴンの俺?』
「あ・・・・一人は、いや、だ・・・・」
『傍にあの京楽はいないのか?』
「薬を買いに行くって・・・・・」
『よしよし。俺がいるから、寂しくないぞ?』
青年は、浮竹の頭を優しく撫でる。
「あったかい・・・・・おちつく」
浮竹は、青年に抱きしめられて、すうすうと眠りについた。
『夢の中でも眠っちゃうのか。俺は傍にいるから、安心しておやすみ』
「ん・・・・・」
まどろみから目覚めると、京楽がいた。
「きょうら・・・・く?」
「ああ、目が覚めた?おかゆ、食べれそう?」
「食欲ない・・・・・・」
いつもならたくさん食べる浮竹だが、風邪の時ばかりは食欲はでないようであった。
「数口でもいいから食べて。薬効きやすくするために。はい、あーん」
「ん・・・・・」
優しい味のおかゆを、数口食べて、浮竹はギブアップした。
「もう、無理・・・・」
「うん、がんばったね。はい、これ熱さましと風薬」
「薬は苦いからいやだ」
「そんなこと言わないで飲んで。子供用の甘い薬にしておいたから」
京楽が、苦笑しながら浮竹に水の入ったコップを渡す。
浮竹は、しぶしぶ薬を飲んだ。
「甘い・・・・・・」
「ね?甘い薬にしてあげたから、ちゃんと1日3回のんでね?」
「うん・・・・・・」
熱を出した浮竹は素直で、京楽の手を握ってくる。
「傍に、いてくれ。お前がいないと、寂しい」
「いつもがこんなに素直なら、嬉しいんだけどねぇ」
京楽は、なかなか寝付けないでいる浮竹に、再びスリープの魔法をかけて寝かせると、傍で本を読みだした。
浮竹のおでこには、冷えピタシートをはっておいた。
「ん・・・」
数時間して、浮竹が目覚める。
「あ・・・・きょうらく、どこ?」
「僕はここにいるよ。ちゃんと君の傍にいるから」
「きょうらく・・・・・・好き」
「うん。僕も大好きだよ」
浮竹は、まどろみと覚醒を繰り返す。
丸1日がたち、少し熱が下がったので、お粥をまた食べさせた。
今度は完食した。
「うん、大分元気になってきたね。熱はまだあるみたいだけど」
「京楽、傍にいて」
「うん。寝汗かいて気持ち悪いでしょ?体、ふいてあげる」
浮竹は、パジャマを脱がされて京楽に体をふいてもらった。
「京楽、いつもより優しい」
「そりゃ、病人だしね、今の浮竹は。それより、ドラゴンでも風邪ひくって知って、ちょっとびっくりしてる」
「ドラゴンだって風邪をひく時はひく」
風邪薬を飲んで、横になる。
スリープの呪文をかけることもなく、浮竹は自然に薬の効果で眠ってしまった。
浮竹が風邪をひいて3日目。
風邪は見事に治り、今度は京楽が風邪をひいた。
「お粥作った」
「その黒転げがおかゆ・・・・ああああ」
「食え!」
「はひ」
「薬は、俺の残りの分でいいな?」
「うん。このおかゆ、苦くて辛くてしょっぱいよ」
「愛情の味だ。文句言わずに食え。食って薬飲まないと、治らないぞ」
「分かってるよ」
ちなみに、京楽は熱を出した上に腹痛もやってきた。浮竹のおかゆのせいであった。
「ねぇ、お粥に何いれたの」
「マンドレイク」
「それ、錬金術に使うやつ・・・・・おなかいたい・・・・・・」
「生まれるのか!?」
「そうそう・・・ってそんなわけないでしょ。ちょっとトイレ行ってくる」
「支えなくて平気か?」
「大丈夫、大分よくなったし、一人で歩けるよ」
京楽は、よろよろとよろけながらも歩く。
浮竹は、そんな京楽をお姫様抱っこした。
「ちょ、浮竹!?」
「俺だって力はあるぞ。トイレまで連れてく」
「うん、ありがと」
「何か変なものでも食ったのか?」
君のおかゆのせいとは言えなくて、京楽は曖昧に微笑む。
「薬の消費期限が、ちょっと古かったみたい」
トイレから出てくると、浮竹はまた京楽をお姫様抱っこした。
「それは大変だ。急いで、新しい薬を・・・・・って、俺一人じゃ外出しちゃいけないんだった」
「大丈夫、寝てれば直に治るから」
「そうか。子守唄をうたってやる」
ベッドに寝かしつけた京楽に、浮竹は優しい旋律の子守唄を歌い出した。
以外と綺麗な声で、京楽はその子守歌に耳を傾けながら、眠りに落ちていく。
「早く、よくなれよ」
京楽も、3日ほどで治り、念のためと京楽は浮竹と一緒に病院にいき、完治しているのを確かめてもらって、予備用に風薬を買った。
「ドラゴンでも風邪ひくと、辛いものだな」
「風邪ひくドラゴンってはじめて見た」
「俺は人型をとるからな。人の病もうつりやすい」
「とにかく、お互い治ってよかったね」
京楽の言葉に、浮竹は頷く。
「この前、放棄したダンジョン探索の続きをしよう」
「ああ、そんなに走り回っちゃだめだよ。一応病み上がりなんだから」
「平気だ。ドラゴンは病にかかっても、治りやすい」
「確かに、けっこう重症に見えた割には治るの早かったね」
「京楽も治るの早かった。なぜか腹痛も起こしてたけど」
「腹痛も風邪のせいだよ」
「そうか」
君のおかゆのせいとは言えなくて、京楽は冷や汗を垂らしながら、浮竹が台所に立つを禁じようと思うのだった。
奴隷竜とSランク冒険者9
夢渡りは無事に終わり、夢の中で浮竹と京楽は違う世界の浮竹と出会って、会話をした。
違う世界の浮竹は、京楽を怖がっていたが。
京楽が二人も浮竹がいるとでれでれするものだから、浮竹は京楽の頭をハリセンでなぐった。
「幸せ~~」
それでも幸福そうな京楽は、ある意味本当に幸せなやつだ。
目覚めると、朝だった。
「ふー。不思議な夢だったねぇ」
「お前は、でれでれしすぎだ!」
「だって、浮竹が二人だよ!?天国じゃない」
「お前の天国になりたくない・・・・・・」
浮竹はベッドから起きると、顔を洗い、歯を磨きにいった。
京楽もその後から顔を洗い、歯を磨く。
「さて、今日のメニューはとんかつです」
「う・・・・朝から、また胃に重そうなものを」
「だって昨日のとんかつまだ残ってるんだもの。捨ててもいいけど、高級肉で作ってるから少しもったいなくてね」
ぶつぶつ文句を言いながらも、浮竹は朝食のとんかつを完食してしまった。
ちなみに京楽は残した。
「もったいない」
京楽の分まで、浮竹が食べる。
「君の胃って、どうなってるの?」
「普通だ」
「でもけっこう食べるよね」
「気のせいだ」
夕飯とか、結構軽く2人前くらい食べる。その後にデザートも食べる。
「まぁ、今更だから仕方ないことだしね。君の食欲の多さは元気の証だし」
「今日は冒険者ギルドに行くのか?」
「うん。ちょっと、同じSランク冒険者と話があってね」
京楽と浮竹は、冒険者ギルドにやってきた。
会う約束のSランク冒険者はもうきていた。
朽木白哉、阿散井恋次だった。
最近Sランクになったばかりで、同じSランク冒険者の保証人がいるのだ。
任務に失敗した時の罰則金を払えない時、保証人の冒険者が払うことになっていた。
「すまぬ。兄の手を煩わせるつりもではなかったのだが」
「白哉君も恋次君も、Sランクになって間もないからね。依頼は、くれぐれも身の丈に合ったものを選ぶんだよ」
「無論だ」
「絶対、京楽さんや浮竹さんをこえるSランク冒険者になってみせるっす」
赤い髪が印象的なのは阿散井恋次だと、京楽が浮竹に教える。
黒い髪の凛とした青年が、朽木白哉だと教えた。
「白哉君には義妹がいてね。Aランク冒険者なんだ。名前はルキアちゃんだっけ。元気にしてる?」
「ルキアは、黒崎一護という精霊族と石田雨竜というエルフ、井上織姫というのとパーティーを組んでいて、Aランクダンジョンに挑んでいる。先日会ったが、元気そうにしていた。仲間にも恵まれているようだし、ダンジョンでのたれ死ぬようなことはなかろう」
「だ、そうだよ」
「ルキアの奴、俺の誘いは断ったくせに、一護の誘いには乗るのかよ!」
恋次は、ぶつぶつ文句を言っていた。
「ルキアちゃんをめぐって、恋次君と一護君はライバルでね」
こそこそと、京楽が浮竹に耳打ちする。
「ふむ。一夫多妻があるのだろう、人間社会には。逆に一妻多夫があってもいいんじゃないか」
「一妻多夫・・・・考えたこともなかったよ」
京楽は、白哉に何事かこそこそ話こむ。
「分かった。兄の言う通り、ルキアは一護と恋次と結婚させよう」
「えええええええ」
いきなりのことに、恋次が悲鳴をあげる。
「ルキアと結婚できるのは嬉しいけど、一護も一緒だなんて」
「では、ルキアは一護だけと結婚させよう」
「いや、します!結婚します!!!」
こうして、本人のいない間にルキアの結婚は決まってしまうのであった。
「本人がいないのに、結婚というのは何かおかしい気がするんだが」
「ああ、でも朽木家は大貴族だからねぇ。政略結婚に使われる前に、好きな相手と結婚させておけば、一族から結婚のことで文句は言われるだろうけど、政略結婚とは無縁になるから」
「ふむ」
「まぁ、その代わり当主の白哉にしわ寄せがくるだろうけど、緋真ちゃんっていう妻がいたからね」
「白哉は結婚していたのか」
「うん。病弱ですでに亡くなっているけどね」
「跡継ぎは?」
「それが、生まれる前に他界してしまって・・・・何度も断っているみたいだけど、今だに縁談の話が白哉君には舞いこんでくるしね。まぁ、次の当主をルキアちゃんの子供にするって決めてるみたいだから、無理に嫁いでくる押しかけ女房みたいな存在は、今のところないけど」
京楽は、そう言えばと話題を切り替える。
「忘れてたけど、僕の実家もそれなりの大貴族なんだよねぇ。家督は兄に任せてあるし、後継ぎの子もいるから、次男の僕は冒険者として自由にやらせてもらってるけど」
「な、京楽は貴族だったのか。全然そうに見えない」
「まぁ、放任主義で育てられたせいで、子供の頃かダンジョンにもぐるような生活送ってたからね。将来は絶対にSランク冒険者になるって言いふらして、実際にSランク冒険者になったよ」
「夢を現実にしたんだな」
「うん」
「そうか。俺にも、夢があるんだ」
浮竹は、翠の瞳で京楽を見た。
「どんな夢?叶えられるなら、叶えてあげるよ」
「いつか、他のムーンホワイトドラゴンと会いたい」
「それは・・・・難しい夢だね」
「ああ」
ムーンホワイトドラゴンは、巷ではもう絶滅しているのではないかと言われているほどに希少種だ。
「いつか、母上や父上、兄弟たちと会ってみたい」
「うん、会えるといいね。世界を旅しながら、探してみるのもいいかもね」
「ただの俺の我儘だ。気にしないでくれ。俺は、京楽と一緒にSランク冒険者をしている今が、一番楽しいんだ」
「夢より、僕をとってくれるの?」
「当たり前だろう」
「ふふ、なんか照れるね」
抱きしめ合い、キスをする。
ちなみに、その場には白哉と恋次がまだいたのだった。
「・・・・・・」
「・・・・・・・」
無言で、二人を残して去っていくのに気づき、浮竹は京楽を蹴り転がす。
「ご、誤解だ!」
「「お幸せに」」
「京楽のあほおおお」
「ええええ、なんで僕のせいになるのおおおお」
京楽の悲鳴は、冒険者ギルドの1階にある酒場まで聞こえるのだった。
違う世界の浮竹は、京楽を怖がっていたが。
京楽が二人も浮竹がいるとでれでれするものだから、浮竹は京楽の頭をハリセンでなぐった。
「幸せ~~」
それでも幸福そうな京楽は、ある意味本当に幸せなやつだ。
目覚めると、朝だった。
「ふー。不思議な夢だったねぇ」
「お前は、でれでれしすぎだ!」
「だって、浮竹が二人だよ!?天国じゃない」
「お前の天国になりたくない・・・・・・」
浮竹はベッドから起きると、顔を洗い、歯を磨きにいった。
京楽もその後から顔を洗い、歯を磨く。
「さて、今日のメニューはとんかつです」
「う・・・・朝から、また胃に重そうなものを」
「だって昨日のとんかつまだ残ってるんだもの。捨ててもいいけど、高級肉で作ってるから少しもったいなくてね」
ぶつぶつ文句を言いながらも、浮竹は朝食のとんかつを完食してしまった。
ちなみに京楽は残した。
「もったいない」
京楽の分まで、浮竹が食べる。
「君の胃って、どうなってるの?」
「普通だ」
「でもけっこう食べるよね」
「気のせいだ」
夕飯とか、結構軽く2人前くらい食べる。その後にデザートも食べる。
「まぁ、今更だから仕方ないことだしね。君の食欲の多さは元気の証だし」
「今日は冒険者ギルドに行くのか?」
「うん。ちょっと、同じSランク冒険者と話があってね」
京楽と浮竹は、冒険者ギルドにやってきた。
会う約束のSランク冒険者はもうきていた。
朽木白哉、阿散井恋次だった。
最近Sランクになったばかりで、同じSランク冒険者の保証人がいるのだ。
任務に失敗した時の罰則金を払えない時、保証人の冒険者が払うことになっていた。
「すまぬ。兄の手を煩わせるつりもではなかったのだが」
「白哉君も恋次君も、Sランクになって間もないからね。依頼は、くれぐれも身の丈に合ったものを選ぶんだよ」
「無論だ」
「絶対、京楽さんや浮竹さんをこえるSランク冒険者になってみせるっす」
赤い髪が印象的なのは阿散井恋次だと、京楽が浮竹に教える。
黒い髪の凛とした青年が、朽木白哉だと教えた。
「白哉君には義妹がいてね。Aランク冒険者なんだ。名前はルキアちゃんだっけ。元気にしてる?」
「ルキアは、黒崎一護という精霊族と石田雨竜というエルフ、井上織姫というのとパーティーを組んでいて、Aランクダンジョンに挑んでいる。先日会ったが、元気そうにしていた。仲間にも恵まれているようだし、ダンジョンでのたれ死ぬようなことはなかろう」
「だ、そうだよ」
「ルキアの奴、俺の誘いは断ったくせに、一護の誘いには乗るのかよ!」
恋次は、ぶつぶつ文句を言っていた。
「ルキアちゃんをめぐって、恋次君と一護君はライバルでね」
こそこそと、京楽が浮竹に耳打ちする。
「ふむ。一夫多妻があるのだろう、人間社会には。逆に一妻多夫があってもいいんじゃないか」
「一妻多夫・・・・考えたこともなかったよ」
京楽は、白哉に何事かこそこそ話こむ。
「分かった。兄の言う通り、ルキアは一護と恋次と結婚させよう」
「えええええええ」
いきなりのことに、恋次が悲鳴をあげる。
「ルキアと結婚できるのは嬉しいけど、一護も一緒だなんて」
「では、ルキアは一護だけと結婚させよう」
「いや、します!結婚します!!!」
こうして、本人のいない間にルキアの結婚は決まってしまうのであった。
「本人がいないのに、結婚というのは何かおかしい気がするんだが」
「ああ、でも朽木家は大貴族だからねぇ。政略結婚に使われる前に、好きな相手と結婚させておけば、一族から結婚のことで文句は言われるだろうけど、政略結婚とは無縁になるから」
「ふむ」
「まぁ、その代わり当主の白哉にしわ寄せがくるだろうけど、緋真ちゃんっていう妻がいたからね」
「白哉は結婚していたのか」
「うん。病弱ですでに亡くなっているけどね」
「跡継ぎは?」
「それが、生まれる前に他界してしまって・・・・何度も断っているみたいだけど、今だに縁談の話が白哉君には舞いこんでくるしね。まぁ、次の当主をルキアちゃんの子供にするって決めてるみたいだから、無理に嫁いでくる押しかけ女房みたいな存在は、今のところないけど」
京楽は、そう言えばと話題を切り替える。
「忘れてたけど、僕の実家もそれなりの大貴族なんだよねぇ。家督は兄に任せてあるし、後継ぎの子もいるから、次男の僕は冒険者として自由にやらせてもらってるけど」
「な、京楽は貴族だったのか。全然そうに見えない」
「まぁ、放任主義で育てられたせいで、子供の頃かダンジョンにもぐるような生活送ってたからね。将来は絶対にSランク冒険者になるって言いふらして、実際にSランク冒険者になったよ」
「夢を現実にしたんだな」
「うん」
「そうか。俺にも、夢があるんだ」
浮竹は、翠の瞳で京楽を見た。
「どんな夢?叶えられるなら、叶えてあげるよ」
「いつか、他のムーンホワイトドラゴンと会いたい」
「それは・・・・難しい夢だね」
「ああ」
ムーンホワイトドラゴンは、巷ではもう絶滅しているのではないかと言われているほどに希少種だ。
「いつか、母上や父上、兄弟たちと会ってみたい」
「うん、会えるといいね。世界を旅しながら、探してみるのもいいかもね」
「ただの俺の我儘だ。気にしないでくれ。俺は、京楽と一緒にSランク冒険者をしている今が、一番楽しいんだ」
「夢より、僕をとってくれるの?」
「当たり前だろう」
「ふふ、なんか照れるね」
抱きしめ合い、キスをする。
ちなみに、その場には白哉と恋次がまだいたのだった。
「・・・・・・」
「・・・・・・・」
無言で、二人を残して去っていくのに気づき、浮竹は京楽を蹴り転がす。
「ご、誤解だ!」
「「お幸せに」」
「京楽のあほおおお」
「ええええ、なんで僕のせいになるのおおおお」
京楽の悲鳴は、冒険者ギルドの1階にある酒場まで聞こえるのだった。
奴隷竜とSランク冒険者8
今日は満月の日だ。
素直な尻尾の半竜人姿の浮竹を見たくて、京楽は日の出とともにスタンバイしていた。
「ん~。おはよう」
「おはよう」
「あ、今日は満月か。半竜人化して、外に出れないな」
ぺたんと尻尾を伏せる。
「室内デートしよ」
「室内デート?」
「そう。まぁ、ただいちゃいちゃするだけなんだけけど」
「お断りだ!」
そう言いながらも、浮竹の尻尾は嬉しそうにぶんぶん振られていた。
「え、だめぇ?」
「う・・・・だめじゃ、ない」
ぶんぶん。
勢いのいい尻尾は、京楽の足に当たった。
「ぬおおおおおお」
思わぬ激痛に、京楽は蹲る。
「京楽?し、尻尾があたったのか?」
「いや、なんのこれしき。愛の力の前では・・・・ヒーリング」
「愛の力の前とか言いながら、癒しの魔法使うな」
つーんと浮竹はすねた。
「今日は、ガトーショコラのケーキ作ってあげるから」
ぶんぶん。
嬉しそうに動く尻尾に苦笑しながら、京楽と浮竹は満月の日は室内で過ごすことに決めるのだった。
「ガトーショコラケーキ、まだか?」
「あと5分待って。上にチョコレート味の生クリーム乗せるから」
浮竹はチョコレートが大好きだ。
甘い物が好きなので、よく京楽が甘いお菓子を作ってくれた。
作れない忙しい時は、店で買って、冷蔵庫にストックしておく。
ダンジョンにもぐって、宿に帰れない日なんかは、アイテムポケットに入れたりしていた。
「ほら、お待ちどうさま。ガトーショコラケーキだよ」
「お、うまそうだな」
浮竹は、フォークを丁寧に使って、ガトーショコラケーキを食べる。
「ん・・・苦いが、上にのってるチョコ味の生クリームがあまくって、まっちする」
「ガトーショコラケーキは苦い味が売りだからね。もっと甘いケーキがよかった?」
「これはこれでいい。ほろ苦いけど美味しい」
浮竹は、椅子に座りながら尻尾をぶんぶん振っていた。
「京楽、お前は食べないのか?」
「ああ、君の分だけ作ったから」
「仕方ない。口をあけろ」
浮竹の言う通りに口をあけると、浮竹は自分の食べていたガトーショコラケーキを一口京楽の口に放り込んだ。
「こ、これが俗に言うあーん・・・・・」
「あーん?なんだ、それは」
「気にしないで」
京楽は、ほわほわしていた。
「桃の天然水だよ。ほのかに甘いよ。飲んでごらん」
「ん、確かに僅かに甘い」
桃の天然水をもらい、浮竹の尻尾はもうぶんぶんしっぱなしであった。
「おいしかったかい?」
「ふん、まぁまぁだな」
ツンデレな言い方とは裏腹に、尻尾は嬉しそうにぶんぶん振っている。
そんな浮竹の尻尾を、京楽は好きだった。
「ねぇ、僕のこと好き?」
「なんだ、突然」
「好き?嫌い?」
「普通・・・・・・」
ぶんぶんぶんぶん。
尻尾の振り方を見て、京楽は浮竹に口づけた。
「ん・・・・・・」
「ふふ、ほろ苦い。ガトーショコラの味がするね」
「この桃の天然水というの、おかわりはないのか」
「それ、今冬だから冷凍した桃から果汁をしぼって天然水と混ぜているからね。けっこう高いんだよ。あと2本しか、ストックがないよ」
「じゃあ、1本くれ」
「仕方ないねぇ」
京楽は、冷蔵庫をあけてよく冷えた桃の天然水を浮竹に渡した。
浮竹は、それを一口含んで、京楽にくちづけて、中身を流しこむ。
「んっ・・・・・」
京楽は、浮竹の舌をとらえてゆっくりと自分の舌で絡めとる。
「んあっ」
つっと、銀の糸をひいて舌が出ていく。
「その気になった?」
「ばか、こんな昼からそんな気になるか!」
尻尾はぶんぶん振っていないので、浮竹にその気がないと分かって、京楽は手を出すのは夜にしようと決める。
「時間はいっぱいあるしね。この前、君が気にしていた小説の最新作買っておいたよ」
「お、読みたい」
ぶんぶんと尻尾を振って、浮竹は京楽から小説の最新刊をもらって、読んでいく。
その間、暇なので京楽は少し手のこんだ夕飯を作り始めた。
「ふあ~、もう夕方か。腹減った」
「今日はいろいろ作ったよ。美味しく食べてね?その後、僕がおいしく浮竹を食べちゃうから」
「む、俺を抱く気か」
「だめ?」
「だめ・・・・・じゃ、ない」
尻尾はゆっくりと振っていた。
京楽の作った手の込んだ夕飯をゆっくり食べて、風呂に入り、髪をかわかしていると、京楽が浮竹の部屋に入ってきた。
片付いてはいるが、魔導書が床につまれていたりで、広い部屋は少し狭く感じた。
「おいで、浮竹」
「ん・・・・・・・」
京楽に抱き寄せられて、長い白髪がさらさらと零れる。
「大好きだよ、浮竹。ずっと、僕の傍にいてね」
「京楽・・・・・お前は、半竜人の俺を抱くが、この姿、不気味じゃないのか?」
「全然。すごく綺麗だよ。尻尾は素直だし」
「むう・・・・」
「ふふ、かわいい」
「あっ」
尻尾の先を握られて、思わず甘い声を出す。
「美味しく食べちゃっていい?」
「お前になら・・・いい」
浮竹は目を閉じる。
京楽が衣服を脱いで、覆いかぶさってくる。
「愛してる・・・・・・」
浮竹はそっと呟いて、目を開ける。
京楽の鳶色の瞳と視線が合った。
「ふふ、頬が赤いね。緊張してる?」
「そ、そんなことない。はじめてじゃないし・・・・それより、加減しろよ?お前に本気を出されて抱かれた次の日は、癒しの魔法がないと腰が痛い」
「分かってるよ。優しくするから・・・・・」
ちゅっと、額に口づけられて、浮竹も京楽の額に口づける。
夜はまだはじまったばかり。
奴隷竜であった浮竹と、Sランク冒険者の京楽の夜は、更けていくのだった。
素直な尻尾の半竜人姿の浮竹を見たくて、京楽は日の出とともにスタンバイしていた。
「ん~。おはよう」
「おはよう」
「あ、今日は満月か。半竜人化して、外に出れないな」
ぺたんと尻尾を伏せる。
「室内デートしよ」
「室内デート?」
「そう。まぁ、ただいちゃいちゃするだけなんだけけど」
「お断りだ!」
そう言いながらも、浮竹の尻尾は嬉しそうにぶんぶん振られていた。
「え、だめぇ?」
「う・・・・だめじゃ、ない」
ぶんぶん。
勢いのいい尻尾は、京楽の足に当たった。
「ぬおおおおおお」
思わぬ激痛に、京楽は蹲る。
「京楽?し、尻尾があたったのか?」
「いや、なんのこれしき。愛の力の前では・・・・ヒーリング」
「愛の力の前とか言いながら、癒しの魔法使うな」
つーんと浮竹はすねた。
「今日は、ガトーショコラのケーキ作ってあげるから」
ぶんぶん。
嬉しそうに動く尻尾に苦笑しながら、京楽と浮竹は満月の日は室内で過ごすことに決めるのだった。
「ガトーショコラケーキ、まだか?」
「あと5分待って。上にチョコレート味の生クリーム乗せるから」
浮竹はチョコレートが大好きだ。
甘い物が好きなので、よく京楽が甘いお菓子を作ってくれた。
作れない忙しい時は、店で買って、冷蔵庫にストックしておく。
ダンジョンにもぐって、宿に帰れない日なんかは、アイテムポケットに入れたりしていた。
「ほら、お待ちどうさま。ガトーショコラケーキだよ」
「お、うまそうだな」
浮竹は、フォークを丁寧に使って、ガトーショコラケーキを食べる。
「ん・・・苦いが、上にのってるチョコ味の生クリームがあまくって、まっちする」
「ガトーショコラケーキは苦い味が売りだからね。もっと甘いケーキがよかった?」
「これはこれでいい。ほろ苦いけど美味しい」
浮竹は、椅子に座りながら尻尾をぶんぶん振っていた。
「京楽、お前は食べないのか?」
「ああ、君の分だけ作ったから」
「仕方ない。口をあけろ」
浮竹の言う通りに口をあけると、浮竹は自分の食べていたガトーショコラケーキを一口京楽の口に放り込んだ。
「こ、これが俗に言うあーん・・・・・」
「あーん?なんだ、それは」
「気にしないで」
京楽は、ほわほわしていた。
「桃の天然水だよ。ほのかに甘いよ。飲んでごらん」
「ん、確かに僅かに甘い」
桃の天然水をもらい、浮竹の尻尾はもうぶんぶんしっぱなしであった。
「おいしかったかい?」
「ふん、まぁまぁだな」
ツンデレな言い方とは裏腹に、尻尾は嬉しそうにぶんぶん振っている。
そんな浮竹の尻尾を、京楽は好きだった。
「ねぇ、僕のこと好き?」
「なんだ、突然」
「好き?嫌い?」
「普通・・・・・・」
ぶんぶんぶんぶん。
尻尾の振り方を見て、京楽は浮竹に口づけた。
「ん・・・・・・」
「ふふ、ほろ苦い。ガトーショコラの味がするね」
「この桃の天然水というの、おかわりはないのか」
「それ、今冬だから冷凍した桃から果汁をしぼって天然水と混ぜているからね。けっこう高いんだよ。あと2本しか、ストックがないよ」
「じゃあ、1本くれ」
「仕方ないねぇ」
京楽は、冷蔵庫をあけてよく冷えた桃の天然水を浮竹に渡した。
浮竹は、それを一口含んで、京楽にくちづけて、中身を流しこむ。
「んっ・・・・・」
京楽は、浮竹の舌をとらえてゆっくりと自分の舌で絡めとる。
「んあっ」
つっと、銀の糸をひいて舌が出ていく。
「その気になった?」
「ばか、こんな昼からそんな気になるか!」
尻尾はぶんぶん振っていないので、浮竹にその気がないと分かって、京楽は手を出すのは夜にしようと決める。
「時間はいっぱいあるしね。この前、君が気にしていた小説の最新作買っておいたよ」
「お、読みたい」
ぶんぶんと尻尾を振って、浮竹は京楽から小説の最新刊をもらって、読んでいく。
その間、暇なので京楽は少し手のこんだ夕飯を作り始めた。
「ふあ~、もう夕方か。腹減った」
「今日はいろいろ作ったよ。美味しく食べてね?その後、僕がおいしく浮竹を食べちゃうから」
「む、俺を抱く気か」
「だめ?」
「だめ・・・・・じゃ、ない」
尻尾はゆっくりと振っていた。
京楽の作った手の込んだ夕飯をゆっくり食べて、風呂に入り、髪をかわかしていると、京楽が浮竹の部屋に入ってきた。
片付いてはいるが、魔導書が床につまれていたりで、広い部屋は少し狭く感じた。
「おいで、浮竹」
「ん・・・・・・・」
京楽に抱き寄せられて、長い白髪がさらさらと零れる。
「大好きだよ、浮竹。ずっと、僕の傍にいてね」
「京楽・・・・・お前は、半竜人の俺を抱くが、この姿、不気味じゃないのか?」
「全然。すごく綺麗だよ。尻尾は素直だし」
「むう・・・・」
「ふふ、かわいい」
「あっ」
尻尾の先を握られて、思わず甘い声を出す。
「美味しく食べちゃっていい?」
「お前になら・・・いい」
浮竹は目を閉じる。
京楽が衣服を脱いで、覆いかぶさってくる。
「愛してる・・・・・・」
浮竹はそっと呟いて、目を開ける。
京楽の鳶色の瞳と視線が合った。
「ふふ、頬が赤いね。緊張してる?」
「そ、そんなことない。はじめてじゃないし・・・・それより、加減しろよ?お前に本気を出されて抱かれた次の日は、癒しの魔法がないと腰が痛い」
「分かってるよ。優しくするから・・・・・」
ちゅっと、額に口づけられて、浮竹も京楽の額に口づける。
夜はまだはじまったばかり。
奴隷竜であった浮竹と、Sランク冒険者の京楽の夜は、更けていくのだった。
奴隷竜とSランク冒険者7
「師匠!」」
浮竹は、冒険者ギルドで年若い子供の真竜のドラゴンから、師匠と呼ばれてまとわりつかれていた。
他のSランク冒険者、通称「暁の星」のセレニティという女性魔法使いがテイムし、パートナーとしている子ドラゴンであった。
名前はカイル。
「俺は師匠じゃあない。弟子なんてもった覚えはない」
「でも、師匠は俺より年上で、俺よりすごくて強くて何より希少なムーンホワイトドラゴンだ!」
「だからって、弟子にはせんぞ」
「もうすでに弟子だもんね~」
けけけと明るく笑うカイルを、浮竹は冷たいそぶりを見せるが、本心では同じドラゴンが冒険者のパートナーをしているというのは、実は嬉しかった。
「こらカイル、浮竹は僕のものだよ。セレニティのところに戻りなさい」
「やーだよーもじゃひげ京楽!浮竹さんのパートナーだからって、同じドラゴン同士の絆は消せない」
京楽は軽く嫉妬していた。
「ちょっと、セレニティ笑ってないでなんとかしてよ!」
「ふふふ、他のドラゴンと交流を深めるのも、また一興。ムーンホワイトドラゴンをパートナーにもつSランク冒険者がいると噂には聞いていたが、本当だったのだね」
「嘘ついてなんになるのさ」
「ふふふ。さぁね?」
浮竹は浮竹で、京楽とセレニティの仲の良さに軽く嫉妬していた。
カイルはブラックドラゴンだ。数はまぁまぁおり、それほど珍しいドラゴンではないが、ドラゴンをパートナーにするSランク冒険者は、セレニティ、京楽、他にあと3人いた。
ムーンホワイトドラゴン並みに希少な、サンシャインレイドラゴンをパートナーに持つSランク冒険者もいる。ムーンホワイトドラゴンの対になるようなドラゴンで、太陽竜と呼ばれていた。
一方、浮竹は冒険者ギルドでは月竜と呼ばれていた。
「月竜かぁ。憧れるなぁ。俺も月竜か太陽竜がよかったなぁ。なんで、そこらへんにいるブラックドラゴンなんだろう」
「ドラゴンの種族は関係ない。いかに強くいれて、パートナーを大切にし、力になれるかだ」
「おおー、師匠かっこいい」
「だから、師匠じゃない」
「師匠、ほらチョコレートあげる」
「むう。もらう」
浮竹は甘いものが好きだ。
チョコレートは特に好きで、カイルはその情報を手に入れて、事前にチョコレートを用意していた。
「師匠、俺を弟子にする気になった?」
「うーむ」
チョコレートをちらつかされて、浮竹が悩む。
「おい、そこで迷うな、バカドラゴン」
背の低い、銀髪の少年が浮竹にかつを入れる。
日番谷冬獅郎。最年少の12歳のSランク冒険者で、氷輪丸という特別な魔剣をもち、自身を一部氷の竜化することができて、意思のない氷の竜を操ることができた。
氷の精霊、アイシクルという種族だった。
精霊族が冒険者をしているのは珍しくなく、普通にエルフやドワーフと交じって亜人として冒険者をしている精霊族は多い。
「バカドラゴンとはなんだ、シロちゃん」
「あだなで呼ぶな。日番谷と呼べ」
浮竹と、冬獅郎は何故か仲が良かった。
同じ氷を司る者同士であるせいか、冒険者ギルドで浮竹の最初の友人になったのが冬獅郎だ。
冬獅郎はパーティ―を組んでおり、雛森というAランクの少女と二人でパーティーを組んでいた。
「シロちゃん、喧嘩はよくないよ」
「うるさい、雛森!シロちゃんて呼ぶな!」
「シロちゃんにも雛森ちゃんにもチョコレートあげる」
カイルは、持っていたチョコレートを浮竹、冬獅郎、雛森に全てあげてしまった。
チョコレートはけっこうな高級菓子である。
それをほいほい渡すということは、セレニティとカイルのパーティーは金があるということだ。
まぁ、大抵のSランク冒険者は金持ちだ。
「他の冒険者さんたちの邪魔になるから、いくよ、シロちゃん」
「おい待て、まだ話の途中・・・・・・」
雛森に連れていかれて、冬獅郎は冒険者ギルドを去ってしまった。依頼を受けていたようで、任務につくのだろう。
「セレニティ」
「なんだ、京楽」
「あの子ドラゴン、どうしてまたパートナーに。君の実力なら、大人のドラゴンでもテイムできたでしょう」
「ふふ、私はあの子がよかったのだよ。天真爛漫で、我儘で、手のかかる子供みたいで、それが実にいい。ふふふふ・・・・・・」
「あ、そう」
すでに違う世界に入っているセレニティを放置して、京楽は浮竹の傍にいく。
「帰るよ、浮竹。今日はめぼしい依頼がないから、少しだけSランクダンジョンにもぐろう」
「ああ、分かった」
「ずるい!師匠だけ、Sランクダンジョンだなんて!セレニティと一緒でも、俺はSランクダンジョンに行ったこと、数えるほどしかないのに!」
「お前はまだ若い。未熟だ」
「うっ」
ぐさぐさっと言葉の矢がささり、カイルはよろけた。
「強くなりたいなら、まずはパートナーとの連携を精密にとれるようにしろ。あと、俺の弟子になりたいとか、他人を困らせるような我儘は控えること」
「うぐっ」
カイルは、セレニティに泣きついた。
「師匠がいじめるーーー」
「ふふふ、泣くな。男だろう?」
「うん・・・・・・」
涙をふいて、カイルは顔をあげる。
「今に見てろ!師匠をこえるドラゴンになってやるんだからな!」
「そうか。楽しみにしている」
浮竹は、カイルの頭をぐしゃぐしゃに撫でて、京楽と共に冒険者ギルドを後にした。
軽くSランクダンジョンにもぐり、フロアボスのケルベロスを倒して財宝を手に入れる。
「浮竹、弟子にしてあげたらよかったのに」
「弟子にしたら、俺たちの住む高級宿に入り浸るぞ。二人でいちゃいちゃなんて、できないぞ?」
「ああ、弟子はいらないね。永遠にいらない。セレニティに、弟子になるのは諦めろって言っとこ」
ころっと意見を変える京楽が面白くて、浮竹はクスクス笑う。
「どうしたの?」
「いや、京楽は俺を独り占めしたいだなぁと思って」
「そりゃそうだよ。君は僕のもので、僕のパートナーだ。いつでも、僕の隣にいてね?」
「ああ。そうだな」
ケルベロスから大きな魔石だけを回収して、財宝をアイテムポケットに入れていく。
「お、古い魔導書か・・・・古代文字だな。おまけに竜語でかかれてある」
浮竹は、生まれた時から古代文字や竜語が読めた。
それはドラゴンの血のなせる技である。
「なんてかいてあるの?」
「究極の破壊。複雑すぎて、俺でも、俺以外でも・・・・たとえ、全てのドラゴンの母、マザードラゴンにさえ、使えなさそうな魔法だ。でも、あると危険かもしれないから、焼いてしまおう」
「うーん、究極の破壊か。物騒だね」
「京楽、火の呪文を」
「うん、ファイア!」
ぱちぱちと音を立てて、古代の魔導書は灰になった。
「他の魔法書は普通のものだ。売ればそれなりの金になるだろう」
「うん、そろそろ夜になるし、撤収しようか」
「ああ」
「そういえば、明日満月だね」
「あ、そうだな」
「ふふ、素直な君の尻尾が早く見たいよ」
京楽は、浮竹を抱き寄せた。
「ばか、ここはダンジョンだぞ」
「モンスターは全部退治した。次のモンスターが生まれるまで、数時間はある」
「ここでしたら、禁欲1カ月だからな!」
「それは困る!宿に戻ろうか」
京楽は浮竹から離れた。浮竹の手を握って、歩きだす。
「ダンジョンの中だけだから、いいでしょ?普段は手をつないだりできないから」
「仕方ないな・・・・・・」
明日は満月。
また、自分の言葉とは裏腹に、尻尾が揺れるのだろうかと思って、浮竹は少し不思議な気持ちになるのだった。
浮竹は、冒険者ギルドで年若い子供の真竜のドラゴンから、師匠と呼ばれてまとわりつかれていた。
他のSランク冒険者、通称「暁の星」のセレニティという女性魔法使いがテイムし、パートナーとしている子ドラゴンであった。
名前はカイル。
「俺は師匠じゃあない。弟子なんてもった覚えはない」
「でも、師匠は俺より年上で、俺よりすごくて強くて何より希少なムーンホワイトドラゴンだ!」
「だからって、弟子にはせんぞ」
「もうすでに弟子だもんね~」
けけけと明るく笑うカイルを、浮竹は冷たいそぶりを見せるが、本心では同じドラゴンが冒険者のパートナーをしているというのは、実は嬉しかった。
「こらカイル、浮竹は僕のものだよ。セレニティのところに戻りなさい」
「やーだよーもじゃひげ京楽!浮竹さんのパートナーだからって、同じドラゴン同士の絆は消せない」
京楽は軽く嫉妬していた。
「ちょっと、セレニティ笑ってないでなんとかしてよ!」
「ふふふ、他のドラゴンと交流を深めるのも、また一興。ムーンホワイトドラゴンをパートナーにもつSランク冒険者がいると噂には聞いていたが、本当だったのだね」
「嘘ついてなんになるのさ」
「ふふふ。さぁね?」
浮竹は浮竹で、京楽とセレニティの仲の良さに軽く嫉妬していた。
カイルはブラックドラゴンだ。数はまぁまぁおり、それほど珍しいドラゴンではないが、ドラゴンをパートナーにするSランク冒険者は、セレニティ、京楽、他にあと3人いた。
ムーンホワイトドラゴン並みに希少な、サンシャインレイドラゴンをパートナーに持つSランク冒険者もいる。ムーンホワイトドラゴンの対になるようなドラゴンで、太陽竜と呼ばれていた。
一方、浮竹は冒険者ギルドでは月竜と呼ばれていた。
「月竜かぁ。憧れるなぁ。俺も月竜か太陽竜がよかったなぁ。なんで、そこらへんにいるブラックドラゴンなんだろう」
「ドラゴンの種族は関係ない。いかに強くいれて、パートナーを大切にし、力になれるかだ」
「おおー、師匠かっこいい」
「だから、師匠じゃない」
「師匠、ほらチョコレートあげる」
「むう。もらう」
浮竹は甘いものが好きだ。
チョコレートは特に好きで、カイルはその情報を手に入れて、事前にチョコレートを用意していた。
「師匠、俺を弟子にする気になった?」
「うーむ」
チョコレートをちらつかされて、浮竹が悩む。
「おい、そこで迷うな、バカドラゴン」
背の低い、銀髪の少年が浮竹にかつを入れる。
日番谷冬獅郎。最年少の12歳のSランク冒険者で、氷輪丸という特別な魔剣をもち、自身を一部氷の竜化することができて、意思のない氷の竜を操ることができた。
氷の精霊、アイシクルという種族だった。
精霊族が冒険者をしているのは珍しくなく、普通にエルフやドワーフと交じって亜人として冒険者をしている精霊族は多い。
「バカドラゴンとはなんだ、シロちゃん」
「あだなで呼ぶな。日番谷と呼べ」
浮竹と、冬獅郎は何故か仲が良かった。
同じ氷を司る者同士であるせいか、冒険者ギルドで浮竹の最初の友人になったのが冬獅郎だ。
冬獅郎はパーティ―を組んでおり、雛森というAランクの少女と二人でパーティーを組んでいた。
「シロちゃん、喧嘩はよくないよ」
「うるさい、雛森!シロちゃんて呼ぶな!」
「シロちゃんにも雛森ちゃんにもチョコレートあげる」
カイルは、持っていたチョコレートを浮竹、冬獅郎、雛森に全てあげてしまった。
チョコレートはけっこうな高級菓子である。
それをほいほい渡すということは、セレニティとカイルのパーティーは金があるということだ。
まぁ、大抵のSランク冒険者は金持ちだ。
「他の冒険者さんたちの邪魔になるから、いくよ、シロちゃん」
「おい待て、まだ話の途中・・・・・・」
雛森に連れていかれて、冬獅郎は冒険者ギルドを去ってしまった。依頼を受けていたようで、任務につくのだろう。
「セレニティ」
「なんだ、京楽」
「あの子ドラゴン、どうしてまたパートナーに。君の実力なら、大人のドラゴンでもテイムできたでしょう」
「ふふ、私はあの子がよかったのだよ。天真爛漫で、我儘で、手のかかる子供みたいで、それが実にいい。ふふふふ・・・・・・」
「あ、そう」
すでに違う世界に入っているセレニティを放置して、京楽は浮竹の傍にいく。
「帰るよ、浮竹。今日はめぼしい依頼がないから、少しだけSランクダンジョンにもぐろう」
「ああ、分かった」
「ずるい!師匠だけ、Sランクダンジョンだなんて!セレニティと一緒でも、俺はSランクダンジョンに行ったこと、数えるほどしかないのに!」
「お前はまだ若い。未熟だ」
「うっ」
ぐさぐさっと言葉の矢がささり、カイルはよろけた。
「強くなりたいなら、まずはパートナーとの連携を精密にとれるようにしろ。あと、俺の弟子になりたいとか、他人を困らせるような我儘は控えること」
「うぐっ」
カイルは、セレニティに泣きついた。
「師匠がいじめるーーー」
「ふふふ、泣くな。男だろう?」
「うん・・・・・・」
涙をふいて、カイルは顔をあげる。
「今に見てろ!師匠をこえるドラゴンになってやるんだからな!」
「そうか。楽しみにしている」
浮竹は、カイルの頭をぐしゃぐしゃに撫でて、京楽と共に冒険者ギルドを後にした。
軽くSランクダンジョンにもぐり、フロアボスのケルベロスを倒して財宝を手に入れる。
「浮竹、弟子にしてあげたらよかったのに」
「弟子にしたら、俺たちの住む高級宿に入り浸るぞ。二人でいちゃいちゃなんて、できないぞ?」
「ああ、弟子はいらないね。永遠にいらない。セレニティに、弟子になるのは諦めろって言っとこ」
ころっと意見を変える京楽が面白くて、浮竹はクスクス笑う。
「どうしたの?」
「いや、京楽は俺を独り占めしたいだなぁと思って」
「そりゃそうだよ。君は僕のもので、僕のパートナーだ。いつでも、僕の隣にいてね?」
「ああ。そうだな」
ケルベロスから大きな魔石だけを回収して、財宝をアイテムポケットに入れていく。
「お、古い魔導書か・・・・古代文字だな。おまけに竜語でかかれてある」
浮竹は、生まれた時から古代文字や竜語が読めた。
それはドラゴンの血のなせる技である。
「なんてかいてあるの?」
「究極の破壊。複雑すぎて、俺でも、俺以外でも・・・・たとえ、全てのドラゴンの母、マザードラゴンにさえ、使えなさそうな魔法だ。でも、あると危険かもしれないから、焼いてしまおう」
「うーん、究極の破壊か。物騒だね」
「京楽、火の呪文を」
「うん、ファイア!」
ぱちぱちと音を立てて、古代の魔導書は灰になった。
「他の魔法書は普通のものだ。売ればそれなりの金になるだろう」
「うん、そろそろ夜になるし、撤収しようか」
「ああ」
「そういえば、明日満月だね」
「あ、そうだな」
「ふふ、素直な君の尻尾が早く見たいよ」
京楽は、浮竹を抱き寄せた。
「ばか、ここはダンジョンだぞ」
「モンスターは全部退治した。次のモンスターが生まれるまで、数時間はある」
「ここでしたら、禁欲1カ月だからな!」
「それは困る!宿に戻ろうか」
京楽は浮竹から離れた。浮竹の手を握って、歩きだす。
「ダンジョンの中だけだから、いいでしょ?普段は手をつないだりできないから」
「仕方ないな・・・・・・」
明日は満月。
また、自分の言葉とは裏腹に、尻尾が揺れるのだろうかと思って、浮竹は少し不思議な気持ちになるのだった。
奴隷竜とSランク冒険者6
「パーティーを組む?」
「うん。今度のダンジョン遠征は冒険者ギルドの底上げを狙っていてね。Sランク冒険者は、みんなAランク冒険者のパーティーに入って、補佐するんだよ」
「俺は・・・・・京楽がパーティーを組むのなら、それがFランクでも構わない」
「浮竹、Fランクはなりたて冒険者だよ。まず大規模なダンジョン遠征には行けない」
京楽は苦笑して、浮竹の頭を撫でた。
「もっと撫でろ」
「はいはい」
よしよしと頭を撫で続けると、浮竹は満足したのか京楽から離れた。
「だから、僕のパートナーである君も、Aランクパーティーに混じることになる。いいね?」
「ああ、構わない。京楽がいくのなら、地獄にでも天国にでも、一緒に行く」
「大袈裟だねぇ」
浮竹は京楽からもらった翡翠のブレスレットをいじっていた。
「それ、お気に入りだね」
「京楽からもらったものだから」
浮竹の部屋には、京楽があげたがらくたのようなものまで大切に保管されている。
高級宿は、セキュリティに問題はないし、掃除や手入れを信用できる業者に任せられるので、浮竹と京楽はあえて居住をかまえず、高級宿に泊まり続けていた。
一泊大金貨50枚するのだが、白金貨を腐るほどもっている京楽には、困る金額ではない。
他の客は王侯貴族が多い。
マリーシュ姫のような輩がいないことが、安心できる材料でもあった。
貴族から直接依頼を受けることもある。
大抵が、他の貴族を殺せというものなので、受諾したことはない。
「さて、この住処とは1カ月おさらばだけど、持ち物はちゃんとアイテムポケットに入れたかい」
「衣服に調理道具、魔導書に安眠枕、目覚ましにパジャマ、ベッドに毛布」
アイテムポケットには何でも入ってしまうため、ベッドまで収納してしまっていた。
「ちょっと、ベッド収納してどうするの。遠征は明日からだよ」
「今日は、京楽のベッドで一緒に寝る」
「う・・・・理性もつかな、僕」
京楽と浮竹は、もう出会って半年以上になる。
男女と同じ交際をして、肉体関係があった。
「明日は遠征なんだろう?変なことはするなよ」
「もう、僕を試すような真似はよしてよ。でも、抱きしめてキスくらいならいいよね?」
「ん、許す」
京楽の長い黒髪をいじって、浮竹は京楽に口づけた。
「キスは、もうした。夜はいらない」
「はぁ・・・・君って淡泊に見えてけっこう性欲あるよね」
「う、うるさい!」
京楽に求められて、乱れる浮竹は妖艶で妖しかった。
「性欲があるのはお前だろう!1日に5回もするくせに!」
「う、ごめんなさい・・・・」
京楽も分かっているのだ。自分が性欲が強すぎることを。
花街に出入りしていた頃は、よく女にもてたが、回数が多いので息絶え絶えになる娼婦が多かった。
それを今は浮竹一人にぶつけているのだ。
多分、元がドラゴンでなければねをあげているだろう。
「風呂に入って飯も食ったし、今日は俺はもう寝るぞ」
「え、まだ夜の8時だよ」
「眠いんだ。京楽も寝ろ」
ぽんぽんとあいているベッドを叩いて、浮竹は添い寝を誘う。
「仕方ないなぁ。スリープの魔法かけて寝よう・・・・」
しっかりと浮竹を抱きしめて、京楽は自分にスリープの呪文をかけて、翌朝の7時まで寝た。
目覚ましをアイテムポケットに入れていたせいで、寝過ごした。
本当なら、6時半には起床しなきゃいけなかったのだ。
「ああ、朝食たべてる暇ないね。顔を洗ったら、冒険者ギルドに行こう」
「分かった・・・ふあああ~~~」
「11時間も寝たのに、まだ眠いの?」
「ドラゴンは、冬や寒い時期はよく冬眠に入る。今年は寒いから、眠い」
「ほら、この羽毛ジャケットきて。あったかくして。プチファイア!」
暖をとるための、体を暖かくする魔法を浮竹にかけてやると、浮竹は完全に眠気は冷めたようで、きびきびと動き出した。
冒険者ギルドに行くと、ギルドマスターの山じいに怒られた。
「30分の遅刻じゃ!団体行動をするときは、時間を厳守せよ!」
「はい、ごめんなさい」
「すまない」
京楽と浮竹は、ギルドマスターに怒られた。
「この4人が、お主ら担当のAランク冒険者じゃ」
「タフィーっていいます。弓使いです」
「俺はアルド。魔剣士だ」
「僕はジャスティン。魔法使いだ」
「あたしはサニア。神官よ」
一通り紹介を終えると、タフィーとサニアは浮竹の長い白髪を珍しげに見ていた。
「銀髪は見たことあるけど、ここまで見事な白髪は見たことないわ。染めてるの?」
「いいや、自前のものだが」
「やーんかわいくて綺麗。Sランクにいつかなれたら、いつか一緒に冒険してくれる?」
「京楽がいいと言うなら」
「京楽さん、浮竹さんといつかパーティー組ませてください!」
「はいはい。まずは、Sランク冒険者にならないとね。あと、浮竹は僕のものだから、僕がいないとパーティーには参加しないよ」
「「きゃあああああああ」」
二人の女性は、腐女子らしく、浮竹と京楽の関係にきゃあきゃあ言っていた。
「こら、タフィー、サニア。出発するぞ」
「はーい」
「あ、待ってー」
4人の冒険者のお守をしながら、Aランクのダンジョンを下っていく。
最下層に到達すると、真竜ではないが、ドラゴンがいた。
「ドラゴンだって!ここ、Aランクダンジョンだろう!」
魔剣士のアルドが、悲鳴に似た声をあげる。
「なんらかの手違いがあったようだね。ドラゴンはSランクダンジョンでしか出ない。最初は僕たちに任せて」
浮竹は、ドラゴンスイヤーを抜き放つと、見えないほどの速さで動き、ドラゴンの右足を切り飛ばしていた。
「ぎゃおおおおおおおおおお」
ドラゴンは、超速再生で足を癒す。
「浮竹、援護を頼むよ」
「任せろ。アイシクルブレス!」
「ぎぎゃああああああああ」
体を半分凍てつかせて、ドラゴンの動きが鈍る。
「ほら、君たちもみてないで攻撃を。ドラゴンと戦えることなんて滅多にないんだから!」
「い、いくぞ!」
「「「うん」」」
魔法や矢で攻撃をする。
タフィーという弓使いの腕はよく、ドラゴンの右目を射抜いた。
「ぐるるるるる!」
「ファイアブレスだ!下がれ!」
浮竹が、アイシクルブレスを放ち、相殺する。
戦うこと15分。
けが人を出すことも死者を出すこともなく、無事ドラゴンを倒した。
「ドラゴンの体は素材の塊だからね。僕たちはいらないから、君たちで分けなよ」
「え、いいんですか!白金貨になりますよ!」
「一度の依頼で白金貨2千枚くらいもらってるし、Sランクダンジョンに長くこもれば白金貨5千枚はいく」
「ひええええ」
「白金貨は見飽きた」
浮竹が、ドラゴンの素材などに興味なさそうにドラゴンの死体を見る。
「お前、なんでここにいたんだ?森に住んでいれば、退治されることもなかっただろうに」
真竜ではないとはいえ、同じドラゴン。
敵だったとはいえ、少し同情してしまう。
「浮竹、大丈夫?ドラゴン倒したこと、怒ってない?」
「大丈夫だ。それに2カ月前、Sランクダンジョンで邪竜を倒しただろう。あの邪竜は元々真竜だ。怒るなら、邪竜を倒した時にすでに怒ってる」
「そっか・・・・ドラゴンは素材になるから、弔えないけどいいよね?」
「ああ。素材として人の役にたてるのなら、そのほうがいい。ちなみに、生きてるドラゴンの血液はすごく高いんだぞ。俺は奴隷時代、よく血を抜かれていた」
「知ってる。賢者の石やエリクサーを作る材料になるからね」
「浮竹さん、京楽さん、ドラゴンの死体をアイテムポケットにいれました。解体は、冒険者ギルドに戻ってから、専門職の方にしてもらおうと思います」
「そうだね、そのほうがいいよ」
「まだ、30階層だ。このダンジョンは80階層まである。気を脱がずに進むぞ!」
浮竹が、先頭を歩き出す。
索敵をしながら、京楽もサーチの魔法で索敵をする。
「ドラゴンがいたせいか、この階層はもうモンスターはいないようだね。31階層に行こうか」
ぐ~~~~。
その時、タフィーがお腹を鳴らせた。
「あ、違うんです、誰もドラゴンのステーキ食べたいだなんて思ってません!」
「新鮮なドラゴンの肉は貴重だからね。休憩も兼ねて、ドラゴンステーキでも焼こうか」
京楽の言葉に、浮竹は少し引き気味になる。
「お、俺は食わんぞ。同族食いなんていやだ!」
「浮竹にはサンドイッチ用意してあるから」
「それなら、許す」
もしも満月で半竜人姿で尻尾があれば、ぶんぶんと振っていただろう。
パーティーはドラゴンステーキを食べて、そのおいしさにAランク冒険者たちは涙を流した。
何度か食べたことはあるので、京楽はまぁおいしいかなぁという感想。
浮竹は、サンドイッチを食べていた。
京楽が作ってくれたものだ。
「なんだ、こっちを見て。お前も食いたいのか?」
「ううん。ドラゴンステーキを僕たちが食べてるわりには平気そうだなぁと思って」
「この世界は弱肉強食だ。弱い者は強い者の糧になる。ドラゴンも例外じゃない」
「うん、そうだね。ちょっと早いけど、今日の冒険はここまでにしよう。テントを張って、寝る準備を。結界をはるので、見張りはいらないよ」
「ああ、俺たち京楽さんと浮竹さんと同じパーティーになれてよかった」
「ほんとだよね」
「ええ、そうね」
「ドラゴンステーキまでごちそうになったし、ドラゴンの素材までもらえるし。うはうはだわ~」
一向は、半月をかけて80階層まで踏破しきり、次のAランクダンジョンへと挑むのであった。
浮竹と京楽は、Aランクパーティーが成長していく様を見届け、1カ月のダンジョン遠征の、Sランク冒険者に課せられた任務を成功させるのであった。
「うん。今度のダンジョン遠征は冒険者ギルドの底上げを狙っていてね。Sランク冒険者は、みんなAランク冒険者のパーティーに入って、補佐するんだよ」
「俺は・・・・・京楽がパーティーを組むのなら、それがFランクでも構わない」
「浮竹、Fランクはなりたて冒険者だよ。まず大規模なダンジョン遠征には行けない」
京楽は苦笑して、浮竹の頭を撫でた。
「もっと撫でろ」
「はいはい」
よしよしと頭を撫で続けると、浮竹は満足したのか京楽から離れた。
「だから、僕のパートナーである君も、Aランクパーティーに混じることになる。いいね?」
「ああ、構わない。京楽がいくのなら、地獄にでも天国にでも、一緒に行く」
「大袈裟だねぇ」
浮竹は京楽からもらった翡翠のブレスレットをいじっていた。
「それ、お気に入りだね」
「京楽からもらったものだから」
浮竹の部屋には、京楽があげたがらくたのようなものまで大切に保管されている。
高級宿は、セキュリティに問題はないし、掃除や手入れを信用できる業者に任せられるので、浮竹と京楽はあえて居住をかまえず、高級宿に泊まり続けていた。
一泊大金貨50枚するのだが、白金貨を腐るほどもっている京楽には、困る金額ではない。
他の客は王侯貴族が多い。
マリーシュ姫のような輩がいないことが、安心できる材料でもあった。
貴族から直接依頼を受けることもある。
大抵が、他の貴族を殺せというものなので、受諾したことはない。
「さて、この住処とは1カ月おさらばだけど、持ち物はちゃんとアイテムポケットに入れたかい」
「衣服に調理道具、魔導書に安眠枕、目覚ましにパジャマ、ベッドに毛布」
アイテムポケットには何でも入ってしまうため、ベッドまで収納してしまっていた。
「ちょっと、ベッド収納してどうするの。遠征は明日からだよ」
「今日は、京楽のベッドで一緒に寝る」
「う・・・・理性もつかな、僕」
京楽と浮竹は、もう出会って半年以上になる。
男女と同じ交際をして、肉体関係があった。
「明日は遠征なんだろう?変なことはするなよ」
「もう、僕を試すような真似はよしてよ。でも、抱きしめてキスくらいならいいよね?」
「ん、許す」
京楽の長い黒髪をいじって、浮竹は京楽に口づけた。
「キスは、もうした。夜はいらない」
「はぁ・・・・君って淡泊に見えてけっこう性欲あるよね」
「う、うるさい!」
京楽に求められて、乱れる浮竹は妖艶で妖しかった。
「性欲があるのはお前だろう!1日に5回もするくせに!」
「う、ごめんなさい・・・・」
京楽も分かっているのだ。自分が性欲が強すぎることを。
花街に出入りしていた頃は、よく女にもてたが、回数が多いので息絶え絶えになる娼婦が多かった。
それを今は浮竹一人にぶつけているのだ。
多分、元がドラゴンでなければねをあげているだろう。
「風呂に入って飯も食ったし、今日は俺はもう寝るぞ」
「え、まだ夜の8時だよ」
「眠いんだ。京楽も寝ろ」
ぽんぽんとあいているベッドを叩いて、浮竹は添い寝を誘う。
「仕方ないなぁ。スリープの魔法かけて寝よう・・・・」
しっかりと浮竹を抱きしめて、京楽は自分にスリープの呪文をかけて、翌朝の7時まで寝た。
目覚ましをアイテムポケットに入れていたせいで、寝過ごした。
本当なら、6時半には起床しなきゃいけなかったのだ。
「ああ、朝食たべてる暇ないね。顔を洗ったら、冒険者ギルドに行こう」
「分かった・・・ふあああ~~~」
「11時間も寝たのに、まだ眠いの?」
「ドラゴンは、冬や寒い時期はよく冬眠に入る。今年は寒いから、眠い」
「ほら、この羽毛ジャケットきて。あったかくして。プチファイア!」
暖をとるための、体を暖かくする魔法を浮竹にかけてやると、浮竹は完全に眠気は冷めたようで、きびきびと動き出した。
冒険者ギルドに行くと、ギルドマスターの山じいに怒られた。
「30分の遅刻じゃ!団体行動をするときは、時間を厳守せよ!」
「はい、ごめんなさい」
「すまない」
京楽と浮竹は、ギルドマスターに怒られた。
「この4人が、お主ら担当のAランク冒険者じゃ」
「タフィーっていいます。弓使いです」
「俺はアルド。魔剣士だ」
「僕はジャスティン。魔法使いだ」
「あたしはサニア。神官よ」
一通り紹介を終えると、タフィーとサニアは浮竹の長い白髪を珍しげに見ていた。
「銀髪は見たことあるけど、ここまで見事な白髪は見たことないわ。染めてるの?」
「いいや、自前のものだが」
「やーんかわいくて綺麗。Sランクにいつかなれたら、いつか一緒に冒険してくれる?」
「京楽がいいと言うなら」
「京楽さん、浮竹さんといつかパーティー組ませてください!」
「はいはい。まずは、Sランク冒険者にならないとね。あと、浮竹は僕のものだから、僕がいないとパーティーには参加しないよ」
「「きゃあああああああ」」
二人の女性は、腐女子らしく、浮竹と京楽の関係にきゃあきゃあ言っていた。
「こら、タフィー、サニア。出発するぞ」
「はーい」
「あ、待ってー」
4人の冒険者のお守をしながら、Aランクのダンジョンを下っていく。
最下層に到達すると、真竜ではないが、ドラゴンがいた。
「ドラゴンだって!ここ、Aランクダンジョンだろう!」
魔剣士のアルドが、悲鳴に似た声をあげる。
「なんらかの手違いがあったようだね。ドラゴンはSランクダンジョンでしか出ない。最初は僕たちに任せて」
浮竹は、ドラゴンスイヤーを抜き放つと、見えないほどの速さで動き、ドラゴンの右足を切り飛ばしていた。
「ぎゃおおおおおおおおおお」
ドラゴンは、超速再生で足を癒す。
「浮竹、援護を頼むよ」
「任せろ。アイシクルブレス!」
「ぎぎゃああああああああ」
体を半分凍てつかせて、ドラゴンの動きが鈍る。
「ほら、君たちもみてないで攻撃を。ドラゴンと戦えることなんて滅多にないんだから!」
「い、いくぞ!」
「「「うん」」」
魔法や矢で攻撃をする。
タフィーという弓使いの腕はよく、ドラゴンの右目を射抜いた。
「ぐるるるるる!」
「ファイアブレスだ!下がれ!」
浮竹が、アイシクルブレスを放ち、相殺する。
戦うこと15分。
けが人を出すことも死者を出すこともなく、無事ドラゴンを倒した。
「ドラゴンの体は素材の塊だからね。僕たちはいらないから、君たちで分けなよ」
「え、いいんですか!白金貨になりますよ!」
「一度の依頼で白金貨2千枚くらいもらってるし、Sランクダンジョンに長くこもれば白金貨5千枚はいく」
「ひええええ」
「白金貨は見飽きた」
浮竹が、ドラゴンの素材などに興味なさそうにドラゴンの死体を見る。
「お前、なんでここにいたんだ?森に住んでいれば、退治されることもなかっただろうに」
真竜ではないとはいえ、同じドラゴン。
敵だったとはいえ、少し同情してしまう。
「浮竹、大丈夫?ドラゴン倒したこと、怒ってない?」
「大丈夫だ。それに2カ月前、Sランクダンジョンで邪竜を倒しただろう。あの邪竜は元々真竜だ。怒るなら、邪竜を倒した時にすでに怒ってる」
「そっか・・・・ドラゴンは素材になるから、弔えないけどいいよね?」
「ああ。素材として人の役にたてるのなら、そのほうがいい。ちなみに、生きてるドラゴンの血液はすごく高いんだぞ。俺は奴隷時代、よく血を抜かれていた」
「知ってる。賢者の石やエリクサーを作る材料になるからね」
「浮竹さん、京楽さん、ドラゴンの死体をアイテムポケットにいれました。解体は、冒険者ギルドに戻ってから、専門職の方にしてもらおうと思います」
「そうだね、そのほうがいいよ」
「まだ、30階層だ。このダンジョンは80階層まである。気を脱がずに進むぞ!」
浮竹が、先頭を歩き出す。
索敵をしながら、京楽もサーチの魔法で索敵をする。
「ドラゴンがいたせいか、この階層はもうモンスターはいないようだね。31階層に行こうか」
ぐ~~~~。
その時、タフィーがお腹を鳴らせた。
「あ、違うんです、誰もドラゴンのステーキ食べたいだなんて思ってません!」
「新鮮なドラゴンの肉は貴重だからね。休憩も兼ねて、ドラゴンステーキでも焼こうか」
京楽の言葉に、浮竹は少し引き気味になる。
「お、俺は食わんぞ。同族食いなんていやだ!」
「浮竹にはサンドイッチ用意してあるから」
「それなら、許す」
もしも満月で半竜人姿で尻尾があれば、ぶんぶんと振っていただろう。
パーティーはドラゴンステーキを食べて、そのおいしさにAランク冒険者たちは涙を流した。
何度か食べたことはあるので、京楽はまぁおいしいかなぁという感想。
浮竹は、サンドイッチを食べていた。
京楽が作ってくれたものだ。
「なんだ、こっちを見て。お前も食いたいのか?」
「ううん。ドラゴンステーキを僕たちが食べてるわりには平気そうだなぁと思って」
「この世界は弱肉強食だ。弱い者は強い者の糧になる。ドラゴンも例外じゃない」
「うん、そうだね。ちょっと早いけど、今日の冒険はここまでにしよう。テントを張って、寝る準備を。結界をはるので、見張りはいらないよ」
「ああ、俺たち京楽さんと浮竹さんと同じパーティーになれてよかった」
「ほんとだよね」
「ええ、そうね」
「ドラゴンステーキまでごちそうになったし、ドラゴンの素材までもらえるし。うはうはだわ~」
一向は、半月をかけて80階層まで踏破しきり、次のAランクダンジョンへと挑むのであった。
浮竹と京楽は、Aランクパーティーが成長していく様を見届け、1カ月のダンジョン遠征の、Sランク冒険者に課せられた任務を成功させるのであった。
奴隷竜とSランク冒険者5
「京楽、これはなんだ?」
「ん、シュークリームだよ。おいしいから食べてごらん」
京楽がお茶菓子にと作ったシュークリームを、浮竹は食べた。
「うまい!」
満月の日なので、浮竹は半竜人姿だった。
ゆらゆらと揺れる尻尾で、感情が分かる。
「べ、別にお前が作ったから各段にうまいというわけじゃないからな!」
ツンデレだが、尻尾をぶんぶん振っているので、言葉だけだと分かる。
あまりにも尻尾を振るものだから、椅子にぶつかって、椅子が破壊される。
「う、浮竹の尻尾って、破壊力あるんだね」
京楽は、浮竹の尻尾を触りたいと思っていたが、あんな力で薙ぎ払われた日には、肋骨を骨折しそうだ。
「ああ、俺はドラゴンだからな。尻尾で敵をうちのめすためにも、尻尾は力が強いんだ」
「そうなんだ。ちなみに、僕が君の尻尾さわっても、粉砕しない?」
「う、尻尾を触わるのか。尻尾は敏感だから、優しくしてくれ」
薙ぎ払われないと知って、京楽は浮竹の尻尾を撫でた。
「ひゃん!」
「浮竹?」
「な、なんでもない」
また触り、今度は先っぽをにぎにぎとしてみると、浮竹は顔を真っ赤にさせた。
「そ、そんな風に触っちゃだめだ。ドラゴン同士の求愛の時にしっぽをからめたり、にぎににしたりするんだ。京楽、お前は俺を嫁にしたいのか?」
真顔で聞かれて、京楽は微笑んだ。
「君をお嫁さんにもらえるなら、もらうよ」
「奴隷でドラゴンのオスの嫁なんて、いらないだろう」
「僕は大歓迎だけどね」
京楽は、半竜人姿の浮竹を抱きしめる。
翼は普通のドラゴンは被膜翼なのだが、ムーンホワイトドラゴンは天使のような羽をもつ。
「君の翼、その姿でも飛べるの?」
「ん、ああ。飛ぼうと思ったら飛べるぞ」
ふわりと、浮竹の体が浮く。
翼をはためかせると、数枚の羽毛と共に風が吹いてきた。
「あ、飛ばなくていいから!そのままどこかへ行ったりしちゃだめだよ」
「京楽と一緒じゃないと、外には出ない。俺は珍しいから、また前の愚かな姫のような輩にさらわれてしまうかもしれない」
自分の身くらい自分で守りたいが、手練れの者にかかると、前のようにスリープで眠らされて連れ去れれるかもしれない。
「今日はせっかくの休日だし、ゆっくりしよう」
「ああ」
京楽と浮竹は、ごろごろしていたら、いつの間にか眠ってしまっていた。
浮竹は夢を見ていた。
夢の中では、自分と同じ姿をした青年が、ムーンホワイトドラゴンの姿の浮竹をきらきらした瞳で見つめていた。
『何度見ても、綺麗でかっこいい』
「お前は?」
『俺は浮竹十四郎。異能力者の京楽の元にいる。異能力者の犯罪を取り締まっているんだ』
「イノウリョクシャ?」
浮竹にはちんぷんかんぷんで、説明してくる青年の言葉は頭に入ってこない。
「ああ、もう行かないと」
『また、夢でいいから会えるか?』
「さぁ、どうだろう。強く念じれば、会えるんじゃないか」
浮竹は、青年が見かけより幼いと分かり、優しく声をかけた。
「これをやる」
それは、浮竹の羽毛だった。
「魔力がこめられている。使えば、一度だけ身を守ってくれるだろう」
『そうなのか!いいのか、こんな価値のあるものをもらっても!」
「俺には京楽がいる」
『じゃあ、またなドラゴンの俺!』
手を振って、青年は姿を消してしまった。
「ん・・・・夢、か・・・・・・」
浮竹は、寝ぼけ眼で隣で寝ていたはずの京楽の姿を探す。
どうやら買い物に出かけてしまったようで、一人での外出を禁じられている浮竹は、あくびをしながらもう一度眠った。
「浮竹、浮竹、起きて。もう夕方だよ?」
「え、もうそんな時間なのか。昼寝しすぎた!」
「ふふ、何かいい夢でも見ていたの?顔がにまにましていたよ」
「べ、別にお前のことを夢に見ていたわけじゃないからな!」
そう言いながら、尻尾をぶんぶんと振る浮竹に、京楽はその頭を撫でた。
「ごめんね、一人での外出禁じて。でも、安全のためだから」
「いい。一人で留守番もできる」
「今日は君が寝ていたから連れ出さなかったけど、なるべく一緒に外に出るようにするよ」
「本当か?約束だぞ」
「うん、約束」
指切りをして、京楽が作ってくれたカルボナーラを食べる。
「うまい。おかわり!」
「あーあー、浮竹、口にべっとついてるよ?」
京楽はナプキンで浮竹の口をぬぐってやり、その頭を撫でる。
「京楽は、なんで俺の頭を良く撫でるんだ?」
「愛情のスキンシップだよ。それより、キスのほうがいい?」
聞かれて、浮竹は真っ赤になる。
「頭を撫でるでいい・・・・」
「ふふ、かわいいね」
「京楽のバカ」
カルボナーラのおかわりを食べつつ、浮竹はそっぽをむく。
「浮竹、大好きだよ」
耳元で囁かれて、京楽はカルボナーラを食べ終わると、京楽から距離をとる。
「俺も大好きだ、ばか!」
尻尾をぶんぶん振って、浮竹は先にお風呂に行ってしまった。
「ふふ、浮竹は本当にかわいいなぁ」
京楽は、浮竹のあとを追って一緒にお風呂に入るのであった。
「ん、シュークリームだよ。おいしいから食べてごらん」
京楽がお茶菓子にと作ったシュークリームを、浮竹は食べた。
「うまい!」
満月の日なので、浮竹は半竜人姿だった。
ゆらゆらと揺れる尻尾で、感情が分かる。
「べ、別にお前が作ったから各段にうまいというわけじゃないからな!」
ツンデレだが、尻尾をぶんぶん振っているので、言葉だけだと分かる。
あまりにも尻尾を振るものだから、椅子にぶつかって、椅子が破壊される。
「う、浮竹の尻尾って、破壊力あるんだね」
京楽は、浮竹の尻尾を触りたいと思っていたが、あんな力で薙ぎ払われた日には、肋骨を骨折しそうだ。
「ああ、俺はドラゴンだからな。尻尾で敵をうちのめすためにも、尻尾は力が強いんだ」
「そうなんだ。ちなみに、僕が君の尻尾さわっても、粉砕しない?」
「う、尻尾を触わるのか。尻尾は敏感だから、優しくしてくれ」
薙ぎ払われないと知って、京楽は浮竹の尻尾を撫でた。
「ひゃん!」
「浮竹?」
「な、なんでもない」
また触り、今度は先っぽをにぎにぎとしてみると、浮竹は顔を真っ赤にさせた。
「そ、そんな風に触っちゃだめだ。ドラゴン同士の求愛の時にしっぽをからめたり、にぎににしたりするんだ。京楽、お前は俺を嫁にしたいのか?」
真顔で聞かれて、京楽は微笑んだ。
「君をお嫁さんにもらえるなら、もらうよ」
「奴隷でドラゴンのオスの嫁なんて、いらないだろう」
「僕は大歓迎だけどね」
京楽は、半竜人姿の浮竹を抱きしめる。
翼は普通のドラゴンは被膜翼なのだが、ムーンホワイトドラゴンは天使のような羽をもつ。
「君の翼、その姿でも飛べるの?」
「ん、ああ。飛ぼうと思ったら飛べるぞ」
ふわりと、浮竹の体が浮く。
翼をはためかせると、数枚の羽毛と共に風が吹いてきた。
「あ、飛ばなくていいから!そのままどこかへ行ったりしちゃだめだよ」
「京楽と一緒じゃないと、外には出ない。俺は珍しいから、また前の愚かな姫のような輩にさらわれてしまうかもしれない」
自分の身くらい自分で守りたいが、手練れの者にかかると、前のようにスリープで眠らされて連れ去れれるかもしれない。
「今日はせっかくの休日だし、ゆっくりしよう」
「ああ」
京楽と浮竹は、ごろごろしていたら、いつの間にか眠ってしまっていた。
浮竹は夢を見ていた。
夢の中では、自分と同じ姿をした青年が、ムーンホワイトドラゴンの姿の浮竹をきらきらした瞳で見つめていた。
『何度見ても、綺麗でかっこいい』
「お前は?」
『俺は浮竹十四郎。異能力者の京楽の元にいる。異能力者の犯罪を取り締まっているんだ』
「イノウリョクシャ?」
浮竹にはちんぷんかんぷんで、説明してくる青年の言葉は頭に入ってこない。
「ああ、もう行かないと」
『また、夢でいいから会えるか?』
「さぁ、どうだろう。強く念じれば、会えるんじゃないか」
浮竹は、青年が見かけより幼いと分かり、優しく声をかけた。
「これをやる」
それは、浮竹の羽毛だった。
「魔力がこめられている。使えば、一度だけ身を守ってくれるだろう」
『そうなのか!いいのか、こんな価値のあるものをもらっても!」
「俺には京楽がいる」
『じゃあ、またなドラゴンの俺!』
手を振って、青年は姿を消してしまった。
「ん・・・・夢、か・・・・・・」
浮竹は、寝ぼけ眼で隣で寝ていたはずの京楽の姿を探す。
どうやら買い物に出かけてしまったようで、一人での外出を禁じられている浮竹は、あくびをしながらもう一度眠った。
「浮竹、浮竹、起きて。もう夕方だよ?」
「え、もうそんな時間なのか。昼寝しすぎた!」
「ふふ、何かいい夢でも見ていたの?顔がにまにましていたよ」
「べ、別にお前のことを夢に見ていたわけじゃないからな!」
そう言いながら、尻尾をぶんぶんと振る浮竹に、京楽はその頭を撫でた。
「ごめんね、一人での外出禁じて。でも、安全のためだから」
「いい。一人で留守番もできる」
「今日は君が寝ていたから連れ出さなかったけど、なるべく一緒に外に出るようにするよ」
「本当か?約束だぞ」
「うん、約束」
指切りをして、京楽が作ってくれたカルボナーラを食べる。
「うまい。おかわり!」
「あーあー、浮竹、口にべっとついてるよ?」
京楽はナプキンで浮竹の口をぬぐってやり、その頭を撫でる。
「京楽は、なんで俺の頭を良く撫でるんだ?」
「愛情のスキンシップだよ。それより、キスのほうがいい?」
聞かれて、浮竹は真っ赤になる。
「頭を撫でるでいい・・・・」
「ふふ、かわいいね」
「京楽のバカ」
カルボナーラのおかわりを食べつつ、浮竹はそっぽをむく。
「浮竹、大好きだよ」
耳元で囁かれて、京楽はカルボナーラを食べ終わると、京楽から距離をとる。
「俺も大好きだ、ばか!」
尻尾をぶんぶん振って、浮竹は先にお風呂に行ってしまった。
「ふふ、浮竹は本当にかわいいなぁ」
京楽は、浮竹のあとを追って一緒にお風呂に入るのであった。
奴隷竜とSランク冒険者4
浮竹が、京楽と過ごすようになって3カ月が経った。
京楽と浮竹の関係は良好で、お互い信頼しあい、背中を預けれる戦友でもあった。
誰かが漏らしたのか、浮竹がムーンホワイトドラゴンであるということが、冒険者ギルド内で囁かれるようになっていた。
浮竹もいつまでも騙せないと肯定し、京楽もまた浮竹の周囲に目を光らせつつ、外に出るときは必ず京楽と一緒に行動するようにさせていた。
そんな浮竹が、ある日攫われた。
冒険者ギルドを出たところで、京楽を短剣でさして、浮竹にスリープの魔法をかけて浮竹をさらっていった犯人は、完全にどこかの組織の者で、手練れで訓練されていた。
京楽は、短剣でさされた傷をまずは癒すと、犯人の魔力の名残を追跡していった。
辿り着いたのは、王国の王宮であった。
「くそ、またあの愚かな姫かい」
2カ月ほど前に、王国の姫君の護衛をしたことがあった。
その姫は、浮竹がムーンホワイトドラゴンであることを知って、自分のものにしたがっていた。
一度、王家の伝来の秘薬を使って自分のものにしようとしたが、京楽の怒りを買って、殺されかけたが、流石に王家の一員を殺すには問題が山積みなので、放置していたのだが。
姫の名は、マリーシュ・エル・メリアナ。
メリアナ王国の第2王女であった。
「マリーシュ様。お言いつけ通り、ムーンホワイトドラゴンを連れてきました」
「よくやったわね!報酬は弾むわ。あの京楽という冒険者は追ってこなかったのね?」
「はい。短剣で刺しました。今頃、ムーンホワイトドラゴンを奪われて、激怒しているでしょう。でも、プロの俺の手にかかれば、探知などできないはず」
大抵の人は知らない。
魔力には波長があり、個人個人で違うことを。
魔力探査できる者は数少ない。
一般人の、ほとんどない魔力を探知するなど、砂漠の砂から星の欠片を探すようなものだ。
しかし、京楽は魔法探知が得意だった。
「ん・・・・・」
「あら、目を覚ましたのね、浮竹」
「ここは!?京楽は!?」
「今日から、私があなたの主よ」
「嘘をつけ!俺を誘拐したんだな!」
「黙らせますか?」
マリーシュ姫に、闇ギルドの誘拐犯は、短剣で浮竹を脅そうとする。
「これをつけなさい」
「な・・・・・体が、勝手に動く・・・・・」
浮竹は、自分の手で奴隷の隷属の首輪を自分にはめていた。
「あはははは、これであなたは今日から私のものよ!姉君や兄君に自慢しにいきましょう」
「く、とれない・・・・・・」
隷属の首輪をつけさせられて、マリーシュ姫を殴ろうとして、電撃が体中をかけめぐる。
「ああああ!!」
「ふふ、反抗しようとすると、その隷属の首輪は電撃を流すわ。痛い思いをしたくなければ、大人しく私の言うことを聞くことね」
「いやだ!」
浮竹は、流れる電撃に顔を歪ませながら、マリーシュ姫から逃げようとする。
「あああ!!!」
身を引き裂くような電撃に、浮竹は床に倒れた。
「怪我をさせたくないのよ。大人しく言うことを聞いてちょうだい。ここは王宮。私の部屋。
あなたはマリーシュ姫である私のものになったのよ。王族が主だから、贅沢しほうだいよ」
「贅沢なんていらない。俺を解放しろ」
「いやよ。あなたは今日から私の奴隷で私のもの。私のものであるべきよ」
「俺は、京楽のものだ。京楽以外、いらない」
「私を認めなさい!」
マリーシュ姫は、頑な拒絶する浮竹にいらついて、マックスの電撃を浴びせた。
「うわああああ!!」
ぷすぷすと焦げた匂いがする。
浮竹は、身を焦がしながらも、マリーシュ姫を受け入れなかった。
「浮竹、助けにきたよ」
京楽が、冷酷な笑みを刻みながら、マリーシュ姫の部屋の窓ガラスと割って入ってきた。
「京楽!」
「だめよ、行ってはだめ!あなたは私のもの!」
「違う。俺は、京楽のものだ」
京楽は、焦げた姿の浮竹の体を受けとめる。
「大丈夫かい?」
「これくらいで、根を上げる俺じゃない」
「ハイ・ヒーリング」
ぱぁぁぁと光が満ちて、浮竹の傷が回復する。
京楽は、笑っていた。
「死ぬ覚悟は、できているだろうね?」
「何を言っているの。私はマリーシュ・エル・メリアナ。このメリアナ王国の第二王女よ!下賎な冒険者風情が!」
京楽は、風になっていた。
まず、浮竹を攫った実行犯であった闇の組織の人間の首をはねる。
「きゃあああああああ!!!」
迸る血に、マリーシュ姫が悲鳴をあげる。
そこで、はじめてこの冒険者は王族である自分を、本気で殺そうとしていることに気付いた。
でも、もう遅かった。
「返すから!ムーンホワイトドラゴンは返すから、だから」
「ねぇ、死んで?僕の浮竹を傷つけた。死をもって償いなよ」
京楽は、残酷に笑った。
ドラゴンスレイヤーの魔剣で、まずマリーシュ姫の右手を切り飛ばす。
「きゃあああああああああ!痛い、痛い!」
「浮竹も痛い思いをしたはずだよ」
「いやああああああ、助けてええええええ!!!」
なんとかドアから出ようとするマリーシュ姫の右足を切り飛ばす。
「京楽?」
「ん?もうすぐ終わるから、そこで待っててね」
「うん」
「じゃあね、マリーシュ姫とやら。永遠に、さようなら」
京楽は魔剣を煌めかせると、マリーシュ姫の首と胴を切り離した。
ころころと転がってきた、その頭部をぐしゃりと踏みつぶす。
「京楽、大丈夫なのか。仮にも王族だぞ」
「ん、大丈夫。犯人が分からないようにするから」
京楽は、マリーシュ姫の部屋に火を放った。マリーシュ姫の体は、ただの灰になっていく。
「浮竹、おいで」
「ん」
京楽は、浮竹に口づけながら、隷属の首輪を外した。
「ん・・・・・」
首輪が外れても、まだキスを続ける。
あたりは火の海に包まれていた。
「さぁ、帰ろうか」
「うん」
ドラゴン姿で出ていくとばれるので、窓から体を透明にする魔法をかけて、走って王宮を後にする。
「ありがとう、京楽。俺を助けにきてくれて」
「当たり前でしょ。君は僕のもので、僕のパートナーだ。僕から君を奪う存在は、たとえ神であっても許しはしない」
「大袈裟だな」
「ああ、無事で本当によかった。でも、あの姫の匂いが染みついているね。今着ている服は捨てて、お風呂に入ろう」
「今からか?」
「そう、今から」
浮竹と京楽は、一緒に湯浴みをした。
体からマリーシュ姫の香りがしないのを確認して、京楽は浮竹を抱きしめる。
「もう、攫われたりしちゃだめだよ」
「ああ、分かってる」
「これを君に」
京楽が出してきたのは、翡翠細工のブレスレットだった。
「君がどこにいるか、感知できる魔法がこめられてる。つけてくれる?」
「ああ、喜んで」
マリーシュ姫は、闇の組織に暗殺されたことになった。
そう根回ししたのは京楽だ。
愛する者のためなら、殺人もいとわない京楽を、浮竹は全てをひっくるめて受け入れる。
「愛してる」
「僕もだよ」
夜は更けていく。
浮竹と京楽は、同じベッドで眠りながら、二人でいられる幸せを享受するのだった。
京楽と浮竹の関係は良好で、お互い信頼しあい、背中を預けれる戦友でもあった。
誰かが漏らしたのか、浮竹がムーンホワイトドラゴンであるということが、冒険者ギルド内で囁かれるようになっていた。
浮竹もいつまでも騙せないと肯定し、京楽もまた浮竹の周囲に目を光らせつつ、外に出るときは必ず京楽と一緒に行動するようにさせていた。
そんな浮竹が、ある日攫われた。
冒険者ギルドを出たところで、京楽を短剣でさして、浮竹にスリープの魔法をかけて浮竹をさらっていった犯人は、完全にどこかの組織の者で、手練れで訓練されていた。
京楽は、短剣でさされた傷をまずは癒すと、犯人の魔力の名残を追跡していった。
辿り着いたのは、王国の王宮であった。
「くそ、またあの愚かな姫かい」
2カ月ほど前に、王国の姫君の護衛をしたことがあった。
その姫は、浮竹がムーンホワイトドラゴンであることを知って、自分のものにしたがっていた。
一度、王家の伝来の秘薬を使って自分のものにしようとしたが、京楽の怒りを買って、殺されかけたが、流石に王家の一員を殺すには問題が山積みなので、放置していたのだが。
姫の名は、マリーシュ・エル・メリアナ。
メリアナ王国の第2王女であった。
「マリーシュ様。お言いつけ通り、ムーンホワイトドラゴンを連れてきました」
「よくやったわね!報酬は弾むわ。あの京楽という冒険者は追ってこなかったのね?」
「はい。短剣で刺しました。今頃、ムーンホワイトドラゴンを奪われて、激怒しているでしょう。でも、プロの俺の手にかかれば、探知などできないはず」
大抵の人は知らない。
魔力には波長があり、個人個人で違うことを。
魔力探査できる者は数少ない。
一般人の、ほとんどない魔力を探知するなど、砂漠の砂から星の欠片を探すようなものだ。
しかし、京楽は魔法探知が得意だった。
「ん・・・・・」
「あら、目を覚ましたのね、浮竹」
「ここは!?京楽は!?」
「今日から、私があなたの主よ」
「嘘をつけ!俺を誘拐したんだな!」
「黙らせますか?」
マリーシュ姫に、闇ギルドの誘拐犯は、短剣で浮竹を脅そうとする。
「これをつけなさい」
「な・・・・・体が、勝手に動く・・・・・」
浮竹は、自分の手で奴隷の隷属の首輪を自分にはめていた。
「あはははは、これであなたは今日から私のものよ!姉君や兄君に自慢しにいきましょう」
「く、とれない・・・・・・」
隷属の首輪をつけさせられて、マリーシュ姫を殴ろうとして、電撃が体中をかけめぐる。
「ああああ!!」
「ふふ、反抗しようとすると、その隷属の首輪は電撃を流すわ。痛い思いをしたくなければ、大人しく私の言うことを聞くことね」
「いやだ!」
浮竹は、流れる電撃に顔を歪ませながら、マリーシュ姫から逃げようとする。
「あああ!!!」
身を引き裂くような電撃に、浮竹は床に倒れた。
「怪我をさせたくないのよ。大人しく言うことを聞いてちょうだい。ここは王宮。私の部屋。
あなたはマリーシュ姫である私のものになったのよ。王族が主だから、贅沢しほうだいよ」
「贅沢なんていらない。俺を解放しろ」
「いやよ。あなたは今日から私の奴隷で私のもの。私のものであるべきよ」
「俺は、京楽のものだ。京楽以外、いらない」
「私を認めなさい!」
マリーシュ姫は、頑な拒絶する浮竹にいらついて、マックスの電撃を浴びせた。
「うわああああ!!」
ぷすぷすと焦げた匂いがする。
浮竹は、身を焦がしながらも、マリーシュ姫を受け入れなかった。
「浮竹、助けにきたよ」
京楽が、冷酷な笑みを刻みながら、マリーシュ姫の部屋の窓ガラスと割って入ってきた。
「京楽!」
「だめよ、行ってはだめ!あなたは私のもの!」
「違う。俺は、京楽のものだ」
京楽は、焦げた姿の浮竹の体を受けとめる。
「大丈夫かい?」
「これくらいで、根を上げる俺じゃない」
「ハイ・ヒーリング」
ぱぁぁぁと光が満ちて、浮竹の傷が回復する。
京楽は、笑っていた。
「死ぬ覚悟は、できているだろうね?」
「何を言っているの。私はマリーシュ・エル・メリアナ。このメリアナ王国の第二王女よ!下賎な冒険者風情が!」
京楽は、風になっていた。
まず、浮竹を攫った実行犯であった闇の組織の人間の首をはねる。
「きゃあああああああ!!!」
迸る血に、マリーシュ姫が悲鳴をあげる。
そこで、はじめてこの冒険者は王族である自分を、本気で殺そうとしていることに気付いた。
でも、もう遅かった。
「返すから!ムーンホワイトドラゴンは返すから、だから」
「ねぇ、死んで?僕の浮竹を傷つけた。死をもって償いなよ」
京楽は、残酷に笑った。
ドラゴンスレイヤーの魔剣で、まずマリーシュ姫の右手を切り飛ばす。
「きゃあああああああああ!痛い、痛い!」
「浮竹も痛い思いをしたはずだよ」
「いやああああああ、助けてええええええ!!!」
なんとかドアから出ようとするマリーシュ姫の右足を切り飛ばす。
「京楽?」
「ん?もうすぐ終わるから、そこで待っててね」
「うん」
「じゃあね、マリーシュ姫とやら。永遠に、さようなら」
京楽は魔剣を煌めかせると、マリーシュ姫の首と胴を切り離した。
ころころと転がってきた、その頭部をぐしゃりと踏みつぶす。
「京楽、大丈夫なのか。仮にも王族だぞ」
「ん、大丈夫。犯人が分からないようにするから」
京楽は、マリーシュ姫の部屋に火を放った。マリーシュ姫の体は、ただの灰になっていく。
「浮竹、おいで」
「ん」
京楽は、浮竹に口づけながら、隷属の首輪を外した。
「ん・・・・・」
首輪が外れても、まだキスを続ける。
あたりは火の海に包まれていた。
「さぁ、帰ろうか」
「うん」
ドラゴン姿で出ていくとばれるので、窓から体を透明にする魔法をかけて、走って王宮を後にする。
「ありがとう、京楽。俺を助けにきてくれて」
「当たり前でしょ。君は僕のもので、僕のパートナーだ。僕から君を奪う存在は、たとえ神であっても許しはしない」
「大袈裟だな」
「ああ、無事で本当によかった。でも、あの姫の匂いが染みついているね。今着ている服は捨てて、お風呂に入ろう」
「今からか?」
「そう、今から」
浮竹と京楽は、一緒に湯浴みをした。
体からマリーシュ姫の香りがしないのを確認して、京楽は浮竹を抱きしめる。
「もう、攫われたりしちゃだめだよ」
「ああ、分かってる」
「これを君に」
京楽が出してきたのは、翡翠細工のブレスレットだった。
「君がどこにいるか、感知できる魔法がこめられてる。つけてくれる?」
「ああ、喜んで」
マリーシュ姫は、闇の組織に暗殺されたことになった。
そう根回ししたのは京楽だ。
愛する者のためなら、殺人もいとわない京楽を、浮竹は全てをひっくるめて受け入れる。
「愛してる」
「僕もだよ」
夜は更けていく。
浮竹と京楽は、同じベッドで眠りながら、二人でいられる幸せを享受するのだった。
奴隷竜とSランク冒険者3
京楽と一緒に生活しだすようになって、1カ月が過ぎていた。
Sランク冒険者として、難易度の高いダンジョンに挑んだり、高レベルのモンスター退治をしたりしていた。
ある日、舞いこんできたのは京楽が拠点としている王国の、姫君の護衛だった。
京楽は断ろうとしたのだが、ギルドマスターの山じいに言いくるめられて、結局受けることを承諾した。
「浮竹十四郎さんというのですね。素敵ですわ」
姫君は、護衛の乗った馬車の中で、京楽のいらついた視線も省みず、浮竹にちょっかいをかけてくる。
「ドラゴンなんて嘘のよう。でも、真竜であられるのですね。なんでも、ムーンホワイトドラゴンだとか」
山じいが、姫君に口を滑らしたのだ。
京楽のパートナーはムーンホワイトドラゴンの、真竜であると。
「ムーンホワイトドラゴンは羽毛に覆われているのでしょう?姿を拝見したいわ」
「む、今は姫君の護衛中だ。変身はできない」
「あら、残念ですわ。でも、城に戻った時には変身してくださいましね?」
姫君は、浮竹の手をとって、自分の頬に当てた。
「本当に綺麗。白くて、瞳は翡翠色。こんな殿方、たとえモンスターでもあったことありませんわ」
「ちょっとね、君、浮竹は僕のものだよ」
ついに耐えかねた京楽が、姫君と浮竹をべりっと引っぺがす。
「あら、あなたのような野蛮な冒険者なんて、お呼びでないですわ。私、決めましたの。この浮竹十四郎というムーンホワイトドラゴンを私のものにしますわ」
「何言ってるの!」
「元々、奴隷だったのでしょう?白金貨50万枚さしあげますから、売ってください」
「お金の問題じゃないよ!」
ガタン。
馬のいななきが聞こえ、先頭をいく馬車がグリフォンに襲撃されていた。
「グリフォンか。このあたりに巣はなかったはずだけど・・・・浮竹、出るよ!」
「きゃあ、怖い!どうか、浮竹さん、私の傍で私を守ってくださいまし」
「俺は、お前を依頼人としてしか見ていない。京楽、俺も出る」
馬車の扉をあけ放ち、飛び降りて数匹のグリフォンの群れに向かって、浮竹はアイシクルブレスを吐いた。
「ぎぎゃああああ」
もろに攻撃を受けた一匹が、体を半分氷にしながらこっちにつっこんでくる。
姫君の護衛が今回の任務なので、京楽はいけすかないとはいえ、姫を守るためにグリフォンを切り殺す。
「しゃああああ」
グリフォンの群れは、浮竹と京楽が強敵とうつり、一斉に攻撃してきた。
「ダークストーム!」
「エアバレット!」
京楽は闇の魔法を、浮竹は風の魔法でグリフォンを迎え撃つ。
翼をまずはやぶき、飛べなくなったところを京楽がドラゴンスレイヤーの魔剣でとどめをさしていく。
「きゃあああああ!!」
姫君の悲鳴が聞こえた。
なんと、愚かなことに馬車から降りていたのだ。
「危ない!」
生き残ったグリフォンに襲われそうになったところを、浮竹が庇う。
「ぐ・・・・・」
背中に鋭い爪の傷跡ができる。
「浮竹!」
「大丈夫だ、これくらい・・・・」
「きますわ!」
「まったく、とんだ姫君だな」
愚痴を呟きつつも、生き残ったグリフォンを切り殺して、京楽はまずは浮竹の背中の傷に、回復魔法をかけた。
「回復魔法なら、私にも使えるんですのよ。邪魔をしないでちょうだい。あなたは、負傷した兵たちを見なさい」
依頼者の命令は、王族なので絶対。
京楽は舌打ちをしながらも、浮竹を姫君に預けて、グリフォンに襲われて傷ついた兵士たちの傷を癒していった。
「終わったよ。浮竹、こっちにおいで」
「嫌だ。俺は、この姫君のものになる」
「浮竹?」
「姫君を愛している。京楽、パートナーも主従の契りも、なかったことにする」
うつろな瞳で、たんたんと告げる浮竹は、何かの魔法にかかっているらしかった。
「チャームか。めんどうだな」
京楽は、浮竹の腕にしがみついていた姫君を放りなげた。
「きゃあああああ!狼藉者!」
「僕の浮竹に何をしたの」
「ひっ」
今にも殺しそうな瞳で、姫君の首元にドラゴンスレイヤーの魔剣の切っ先を向ける。
「さぁ、白状してもらおうか」
「王家、伝来の秘薬を・・・・使いました」
「愚かな・・・・そんなに浮竹が欲しいのかい」
「欲しいわ!だってムーンホワイトドラゴンよ!私がもっていてこそ、意味があるというもの!」
「本気で言ってるの?」
京楽は、魔剣で姫君の足を切った。
「いやああああ、痛い!」
護衛の衛兵たちは、スリープの呪文で眠らせていた。
「君を殺して、王国からとんずらすることもできるんだよ。浮竹を元に戻して」
「ああああ・・・・・キスを。愛しい相手のキスなら、解けます・・・・」
「浮竹、おいで」
「嫌だ。俺は姫君のものだ。姫君を傷つけた京楽は許さない!」
殴りかかってくる体をやんわりと受け止めて、京楽は浮竹に深い口づけをした。
「京楽・・・・・俺は?」
「姫君の悪だくみで、ちょっとおかしくなっていたんだよ。もう解けたから、大丈夫」
「なんだか、姫君がすごく愛おしくなって・・・・そこから先にことは、覚えてない」
「護衛依頼は破棄する。衛兵たちはすぐに意識を取り戻すだろうから、後は城までモンスターもいそうにないし、帰ることだね」
「ひっ」
怒り、姫君を今まさに切り殺さんという眼差しの京楽の視線に、姫君は失禁していた。
「あああ、浮竹さん、あなた、こんな男のものでいいのですか!?」
「ああ。俺はかまわない。今で会ってきた人間の中で一番優しいし、一番強い。ドラゴンは強者に従う。だから、俺は京楽のものとして生きる」
「狂ってる・・・・・」
「そうかもな」
浮竹は白い羽毛が生えたドラゴンの姿になると、京楽を乗せて王都まで飛んでいく。
「よかったのか、京楽。姫君にあんな真似をして放置して」
「別にいいよ。王家伝来の秘薬を勝手に使ったんだ。怒られるだろうし、傷は一応癒しておいたし、残りの近衛兵だけで城まで戻れるでしょ」
「そうか・・・・・」
浮竹は、自分のために怒ってくれた京楽を嬉しく思いながら、京楽を乗せて王都まで戻った。
冒険者ギルドで、姫君の護衛の任務失を伝えると、山じいは卒倒した。
「山じい、ごめんねぇ。浮竹に手を出すものだから、ちょっと怒りが向いちゃった」
「ひ、姫君は無事なのかのお?」
「ああ、傷つけた足は治癒しておいた」
「怪我を負わせたのか。下手すると、王国反逆罪になるぞい」
「大丈夫。そんなことになったら、この王国捨てるし。Sランクの冒険者を欲しがるギルドなんて、外の国にいくつでもある」
「ふううううう」
山じいは、深いため息をついた。
結局、姫君の護衛の件で任務達成失敗になったのだが、あの姫君が浮竹に近づいてくることも、京楽をとがめることもなかったので、浮竹と京楽は任務失敗の罰則金を払って、まだSランクダンジョンにこもるのであった。
Sランク冒険者として、難易度の高いダンジョンに挑んだり、高レベルのモンスター退治をしたりしていた。
ある日、舞いこんできたのは京楽が拠点としている王国の、姫君の護衛だった。
京楽は断ろうとしたのだが、ギルドマスターの山じいに言いくるめられて、結局受けることを承諾した。
「浮竹十四郎さんというのですね。素敵ですわ」
姫君は、護衛の乗った馬車の中で、京楽のいらついた視線も省みず、浮竹にちょっかいをかけてくる。
「ドラゴンなんて嘘のよう。でも、真竜であられるのですね。なんでも、ムーンホワイトドラゴンだとか」
山じいが、姫君に口を滑らしたのだ。
京楽のパートナーはムーンホワイトドラゴンの、真竜であると。
「ムーンホワイトドラゴンは羽毛に覆われているのでしょう?姿を拝見したいわ」
「む、今は姫君の護衛中だ。変身はできない」
「あら、残念ですわ。でも、城に戻った時には変身してくださいましね?」
姫君は、浮竹の手をとって、自分の頬に当てた。
「本当に綺麗。白くて、瞳は翡翠色。こんな殿方、たとえモンスターでもあったことありませんわ」
「ちょっとね、君、浮竹は僕のものだよ」
ついに耐えかねた京楽が、姫君と浮竹をべりっと引っぺがす。
「あら、あなたのような野蛮な冒険者なんて、お呼びでないですわ。私、決めましたの。この浮竹十四郎というムーンホワイトドラゴンを私のものにしますわ」
「何言ってるの!」
「元々、奴隷だったのでしょう?白金貨50万枚さしあげますから、売ってください」
「お金の問題じゃないよ!」
ガタン。
馬のいななきが聞こえ、先頭をいく馬車がグリフォンに襲撃されていた。
「グリフォンか。このあたりに巣はなかったはずだけど・・・・浮竹、出るよ!」
「きゃあ、怖い!どうか、浮竹さん、私の傍で私を守ってくださいまし」
「俺は、お前を依頼人としてしか見ていない。京楽、俺も出る」
馬車の扉をあけ放ち、飛び降りて数匹のグリフォンの群れに向かって、浮竹はアイシクルブレスを吐いた。
「ぎぎゃああああ」
もろに攻撃を受けた一匹が、体を半分氷にしながらこっちにつっこんでくる。
姫君の護衛が今回の任務なので、京楽はいけすかないとはいえ、姫を守るためにグリフォンを切り殺す。
「しゃああああ」
グリフォンの群れは、浮竹と京楽が強敵とうつり、一斉に攻撃してきた。
「ダークストーム!」
「エアバレット!」
京楽は闇の魔法を、浮竹は風の魔法でグリフォンを迎え撃つ。
翼をまずはやぶき、飛べなくなったところを京楽がドラゴンスレイヤーの魔剣でとどめをさしていく。
「きゃあああああ!!」
姫君の悲鳴が聞こえた。
なんと、愚かなことに馬車から降りていたのだ。
「危ない!」
生き残ったグリフォンに襲われそうになったところを、浮竹が庇う。
「ぐ・・・・・」
背中に鋭い爪の傷跡ができる。
「浮竹!」
「大丈夫だ、これくらい・・・・」
「きますわ!」
「まったく、とんだ姫君だな」
愚痴を呟きつつも、生き残ったグリフォンを切り殺して、京楽はまずは浮竹の背中の傷に、回復魔法をかけた。
「回復魔法なら、私にも使えるんですのよ。邪魔をしないでちょうだい。あなたは、負傷した兵たちを見なさい」
依頼者の命令は、王族なので絶対。
京楽は舌打ちをしながらも、浮竹を姫君に預けて、グリフォンに襲われて傷ついた兵士たちの傷を癒していった。
「終わったよ。浮竹、こっちにおいで」
「嫌だ。俺は、この姫君のものになる」
「浮竹?」
「姫君を愛している。京楽、パートナーも主従の契りも、なかったことにする」
うつろな瞳で、たんたんと告げる浮竹は、何かの魔法にかかっているらしかった。
「チャームか。めんどうだな」
京楽は、浮竹の腕にしがみついていた姫君を放りなげた。
「きゃあああああ!狼藉者!」
「僕の浮竹に何をしたの」
「ひっ」
今にも殺しそうな瞳で、姫君の首元にドラゴンスレイヤーの魔剣の切っ先を向ける。
「さぁ、白状してもらおうか」
「王家、伝来の秘薬を・・・・使いました」
「愚かな・・・・そんなに浮竹が欲しいのかい」
「欲しいわ!だってムーンホワイトドラゴンよ!私がもっていてこそ、意味があるというもの!」
「本気で言ってるの?」
京楽は、魔剣で姫君の足を切った。
「いやああああ、痛い!」
護衛の衛兵たちは、スリープの呪文で眠らせていた。
「君を殺して、王国からとんずらすることもできるんだよ。浮竹を元に戻して」
「ああああ・・・・・キスを。愛しい相手のキスなら、解けます・・・・」
「浮竹、おいで」
「嫌だ。俺は姫君のものだ。姫君を傷つけた京楽は許さない!」
殴りかかってくる体をやんわりと受け止めて、京楽は浮竹に深い口づけをした。
「京楽・・・・・俺は?」
「姫君の悪だくみで、ちょっとおかしくなっていたんだよ。もう解けたから、大丈夫」
「なんだか、姫君がすごく愛おしくなって・・・・そこから先にことは、覚えてない」
「護衛依頼は破棄する。衛兵たちはすぐに意識を取り戻すだろうから、後は城までモンスターもいそうにないし、帰ることだね」
「ひっ」
怒り、姫君を今まさに切り殺さんという眼差しの京楽の視線に、姫君は失禁していた。
「あああ、浮竹さん、あなた、こんな男のものでいいのですか!?」
「ああ。俺はかまわない。今で会ってきた人間の中で一番優しいし、一番強い。ドラゴンは強者に従う。だから、俺は京楽のものとして生きる」
「狂ってる・・・・・」
「そうかもな」
浮竹は白い羽毛が生えたドラゴンの姿になると、京楽を乗せて王都まで飛んでいく。
「よかったのか、京楽。姫君にあんな真似をして放置して」
「別にいいよ。王家伝来の秘薬を勝手に使ったんだ。怒られるだろうし、傷は一応癒しておいたし、残りの近衛兵だけで城まで戻れるでしょ」
「そうか・・・・・」
浮竹は、自分のために怒ってくれた京楽を嬉しく思いながら、京楽を乗せて王都まで戻った。
冒険者ギルドで、姫君の護衛の任務失を伝えると、山じいは卒倒した。
「山じい、ごめんねぇ。浮竹に手を出すものだから、ちょっと怒りが向いちゃった」
「ひ、姫君は無事なのかのお?」
「ああ、傷つけた足は治癒しておいた」
「怪我を負わせたのか。下手すると、王国反逆罪になるぞい」
「大丈夫。そんなことになったら、この王国捨てるし。Sランクの冒険者を欲しがるギルドなんて、外の国にいくつでもある」
「ふううううう」
山じいは、深いため息をついた。
結局、姫君の護衛の件で任務達成失敗になったのだが、あの姫君が浮竹に近づいてくることも、京楽をとがめることもなかったので、浮竹と京楽は任務失敗の罰則金を払って、まだSランクダンジョンにこもるのであった。
奴隷竜とSランク冒険者2
「浮竹、そっちに行ったよ!」
「わかってる!アイシクルブレス!」
京楽はSランク冒険者だ。でも、戦闘が長引けば怪我もするし、Aランク以上推奨のダンジョンでは苦戦することもある。
昔はパーティーを組んでいたのだが、同じパーティーに所属していた女性と色恋沙汰になり、その女性は隠していたのだが、パーティーのリーダーと婚約していて、Sランクのパーティーを追放された過去をもつ。
何度かAランクの冒険者に交じって冒険をしていたが、戦力差がでかくて、ソロに移行することになって早3年。
今は、元奴隷の浮竹をパーティーに入れて、テイムしたドラゴン扱いだが、二人で冒険をしていた。
「京楽、こいつら氷に強い。俺は炎を出せないから、炎の魔法で焼き払ってくれ」
「はいよ!バーストロンド!」
「ぎゅいいいいいいい」
「ぎいいいいいい」
昆虫型の氷属性のモンスタ―たちは、断末魔の悲鳴をあげた。
今いる場所は、Sランクダンジョンの22階層。
草原地帯のダンジョンだった。
前の階層は森林地帯だった。
次の階層は、砂漠になる。
体力を温存するために、一度この22階層で食事と睡眠をとっておく必要があった。
「サンダーボルト!」
浮竹は、魔法も使う。
氷属性のムーンホワイトドラゴンなので、炎系の魔法は使えないが、他の氷、風、水、地、雷、闇、光の魔法は使えた。一番得意とするのは、氷の魔法だ。
アイシクルブレスという、人型でも氷のブレスを吐けた。
京楽と生活するようになって2週間が経っていた。
京楽の戦いのサポートをして、ダンジョンに挑み、モンスターを討伐して素材をアイテムポケットにしまいこみ、ボスを倒してお宝をゲットする。
そんな毎日が続いていた。
「お、お宝だ。何々・・・・氷属性の魔法の威力をあげるピアス。いいね。浮竹、つけてごらん」
「でも、こんなマジックアイテム、高いだろう」
「マジックアイテムなんて、高ランクダンジョンにはいっぱい出るから、気にしないでいいよ」
京楽は、浮竹にピアス穴をあけて、氷結のピアスというものをつけてしまった。
「う、耳が痛い」
「そりゃ、穴あけたからね」
「俺は別によかったのに」
「君の戦力がUPすると、僕も助かるからね」
「むう」
今日は、満月だ。
不満そうな顔と裏腹に、半竜人化した浮竹は尻尾がゆらゆら揺れていた。
本当は、嬉しいのだ。
それを感情に表せないでいるのだが、京楽は分かっているのかいないのか、とにかく浮竹を甘やかす。
22階層のモンスターを一掃して、セーブポイントでアイテムポケットから取り出したテントをはり、浮竹と京楽は少し早めの夕食をとって、寝ることにした。
「じゃあおやすみ、浮竹」
隣のテントに移動しようとする京楽の、服の裾を浮竹が掴む。
「ん?どうしたの」
「今日は、満月だ。一人は、嫌だ・・・・・・・」
満月の夜は、孤高なるドラゴンでも孤独に耐えかねて、人里に降りてきたりする。
「分かった分かった。一緒に寝よう?」
ゆらゆらと、浮竹の尻尾が揺れる。
「仕方ないから、一緒に寝てやる!」
「はいはい」
言葉とは裏腹に嬉し気に揺れるドラゴンの尻尾を見て、京楽はクスっと笑った。
「んー京楽、それはミノタウロスのシャトーブリアンのステーキ・・・独り占めは・・・」
「なんの夢を、見ているんだが」
むにゃむにゃという浮竹の頭を、京楽は愛し気に撫でる。
冒険者ギルドで浮竹を見せたが、ムーンホワイトドラゴンだという事実は、公表しないことにした。
希少すぎるのだ。
奴隷として、捕まって売られたら大変なので、ただのホワイトドラゴンということにした。
ホワイトドラゴンでも珍しい。
浮竹を買ったことを知ったギルドのギルドマスターは、京楽のパートナーとの位置にいることを許してくれて、テイムされたモンスター扱いではなく、一人の人のしての扱いをしてくれた。
それを他の冒険者にも強制したが、異議を申し立てる者はいなかった。
ドラゴンをテイムするテイマーがいないわけではないのだ。人型をとるモンスターの場合、基本モンスター扱いではなく、人扱いになる。
睡眠を十分にとって、23階層に挑む。
砂漠地帯は暑く、天にある太陽がじりじりと体力を奪っていく。
「アイシクルフラワー・・・・・」
暑さに耐えかねた浮竹が、クーラーのような魔法を使った。
「ああ、涼しい。生き返るよ」
「暑いのは、苦手だ」
陶器の器に氷をいれて、水を入れて溶かして飲んだ。
「水、普通は貴重だけど僕や君みたいに、水魔法を使える冒険者は特に水を所持する必要性がないからね」
「早く、砂漠地帯の23階層を抜けよう」
「そうだね」
途中で狂暴化したビッグサンドワームに襲われることはあったが、浮竹のアイシクルブレスで氷像と化してしまい、氷を解かされる前に京楽が粉々にした。
24階層。
ボスのフロアの、最終階層であった。
いたのは、闇属性のヒュドラ。
「ホワイトレイ!」
浮竹が光の魔法を放つと、ヒュドラの頭が一つもげた。
「浮竹、君って奴隷だったから戦闘経験はないっていってたけど、覚えてる魔法の数も多いし、何より強いね!」
「奴隷の頃、することがなかったので、魔法の本を読み漁っていた」
「いいことだね!」
「よくない!奴隷だったんだぞ!」
「うん、奴隷だったことはいいことじゃないけど、本を読んで知識をためこむことはいいことだよ。特にドラゴンはブレスの他に多数の魔法を操るから」
「俺もドラゴンだ!固有スキル、「凍れる者」をもっている。氷結系の魔法は、誰にも引けをとらない。アイシクルブレス!!!」
「ぎゅるるるるるる!!!」
闇のヒュドラは、ダークブレスを吐くが、それをアイシクルブレスが相殺する。
「こっちだよ、ヒュドラ。浮竹ばかり相手してないで、僕も相手してよ!」
京楽は、剣でヒュドラの8つあった首のうち、2つを斬り捨てた。
浮竹がすでに1つの頭を破壊しているので、残ってる頭は5つ。
それぞれ、違う魔法の詠唱に入る。
「合唱魔法か!完成する前に、叩くよ!」
「分かっている!アイシクルブレス!!!」
「ヘルインフェルノ!」
魔法で攻撃して、詠唱が止まったところを、京楽の剣が5つの首を切り落とし、ドラゴンの姿になった浮竹が、白い羽毛を血で汚しながらヒュドラの心臓部分に噛みついた。
「ぎゃるるるるーーーーーああああーーーーー」
断末魔の悲鳴をあげて、ヒュドラが倒れる。
浮竹は、人の姿に戻ると、べっとりとヒュドラの血にまみれていた。
「ああ、せっかくの美貌がだいなしだ。キュアクリーン」
京楽が、浄化の魔法で浮竹のヒュドラの血を落とす。
「どうした」
「ドラゴンの姿に戻る時は、事前に言ってね。危うく、剣で傷つけるところだった。この剣、魔剣でドラゴンスレイヤーの剣っていわれてて、ドラゴン系の血肉をすするのが大好きだから」
「う、俺を食うなよ!」
「大丈夫。ちゃんと持ち主の意思を反映してくれるから」
「クイタイ。レアなドラゴンの血肉、クイタイ」
「ちょ、しゃべった!」
「ああ、うん。意思があるからね。だめだぞ、ドラゴンスレイヤー。この子は僕のもの。僕のものに手を出したら、たとえ僕の愛用する魔剣とはいえ・・・・・」
ぞっとするほどに冷たい顔で、京楽は魔剣に囁やいた。
「ワカッタ。ワカッタからおろうとスルナ」
魔剣はカタカタと震えた。
Sランンクダンジョンを踏破して、戦利品をもって冒険者ギルドに戻った。
「おお、十四郎に春水、無事であったか」
ギルドマスター通称山じぃといって、引退した元Sランク冒険者で、ドラゴンスレイヤーの異名も持っていた。
「これ、今回の獲物。Sランクダンジョンを踏破したよ。ボスはヒュドラだった。魔石は大きいから、けっこう値段すると思うよ」
「ヒュドラ!それを二人だけで倒してしまうとはのう」
Sランクダンジョンで手に入れたマジックアイテムや金銀財宝をひきとってもらい、白金貨2千枚をもらった。
「白金貨が2千枚・・・・・」
ちなみに、浮竹の奴隷の頃の値段は白金貨20万枚だ。
「やっぱ冒険者稼業はもうかるね」
「そ、そうだな」
報酬金を手に、高級宿に戻ると、浮竹はそわそわしていた。
「どうしたの?」
「白金貨2千枚だぞ!とられたらどうする」
「僕が奪うバカはいないよ。そんなことしようとしたら、容赦なく殺すからね。過去にいたけど、殺したし」
「京楽・・・・」
「ん?」
「ダンジョン、それなりに楽しかった。また行こう」
浮竹は、京楽の頬にキスをして、ベッドにいくと布団にくるまってしまった。
「ふふ。君なりの精一杯の愛情表現ってところかな」
「う、うるさい」
布団をかぶってごぞごそしながら、浮竹は眠気が訪れるをゆっくりと待つのであった。
「わかってる!アイシクルブレス!」
京楽はSランク冒険者だ。でも、戦闘が長引けば怪我もするし、Aランク以上推奨のダンジョンでは苦戦することもある。
昔はパーティーを組んでいたのだが、同じパーティーに所属していた女性と色恋沙汰になり、その女性は隠していたのだが、パーティーのリーダーと婚約していて、Sランクのパーティーを追放された過去をもつ。
何度かAランクの冒険者に交じって冒険をしていたが、戦力差がでかくて、ソロに移行することになって早3年。
今は、元奴隷の浮竹をパーティーに入れて、テイムしたドラゴン扱いだが、二人で冒険をしていた。
「京楽、こいつら氷に強い。俺は炎を出せないから、炎の魔法で焼き払ってくれ」
「はいよ!バーストロンド!」
「ぎゅいいいいいいい」
「ぎいいいいいい」
昆虫型の氷属性のモンスタ―たちは、断末魔の悲鳴をあげた。
今いる場所は、Sランクダンジョンの22階層。
草原地帯のダンジョンだった。
前の階層は森林地帯だった。
次の階層は、砂漠になる。
体力を温存するために、一度この22階層で食事と睡眠をとっておく必要があった。
「サンダーボルト!」
浮竹は、魔法も使う。
氷属性のムーンホワイトドラゴンなので、炎系の魔法は使えないが、他の氷、風、水、地、雷、闇、光の魔法は使えた。一番得意とするのは、氷の魔法だ。
アイシクルブレスという、人型でも氷のブレスを吐けた。
京楽と生活するようになって2週間が経っていた。
京楽の戦いのサポートをして、ダンジョンに挑み、モンスターを討伐して素材をアイテムポケットにしまいこみ、ボスを倒してお宝をゲットする。
そんな毎日が続いていた。
「お、お宝だ。何々・・・・氷属性の魔法の威力をあげるピアス。いいね。浮竹、つけてごらん」
「でも、こんなマジックアイテム、高いだろう」
「マジックアイテムなんて、高ランクダンジョンにはいっぱい出るから、気にしないでいいよ」
京楽は、浮竹にピアス穴をあけて、氷結のピアスというものをつけてしまった。
「う、耳が痛い」
「そりゃ、穴あけたからね」
「俺は別によかったのに」
「君の戦力がUPすると、僕も助かるからね」
「むう」
今日は、満月だ。
不満そうな顔と裏腹に、半竜人化した浮竹は尻尾がゆらゆら揺れていた。
本当は、嬉しいのだ。
それを感情に表せないでいるのだが、京楽は分かっているのかいないのか、とにかく浮竹を甘やかす。
22階層のモンスターを一掃して、セーブポイントでアイテムポケットから取り出したテントをはり、浮竹と京楽は少し早めの夕食をとって、寝ることにした。
「じゃあおやすみ、浮竹」
隣のテントに移動しようとする京楽の、服の裾を浮竹が掴む。
「ん?どうしたの」
「今日は、満月だ。一人は、嫌だ・・・・・・・」
満月の夜は、孤高なるドラゴンでも孤独に耐えかねて、人里に降りてきたりする。
「分かった分かった。一緒に寝よう?」
ゆらゆらと、浮竹の尻尾が揺れる。
「仕方ないから、一緒に寝てやる!」
「はいはい」
言葉とは裏腹に嬉し気に揺れるドラゴンの尻尾を見て、京楽はクスっと笑った。
「んー京楽、それはミノタウロスのシャトーブリアンのステーキ・・・独り占めは・・・」
「なんの夢を、見ているんだが」
むにゃむにゃという浮竹の頭を、京楽は愛し気に撫でる。
冒険者ギルドで浮竹を見せたが、ムーンホワイトドラゴンだという事実は、公表しないことにした。
希少すぎるのだ。
奴隷として、捕まって売られたら大変なので、ただのホワイトドラゴンということにした。
ホワイトドラゴンでも珍しい。
浮竹を買ったことを知ったギルドのギルドマスターは、京楽のパートナーとの位置にいることを許してくれて、テイムされたモンスター扱いではなく、一人の人のしての扱いをしてくれた。
それを他の冒険者にも強制したが、異議を申し立てる者はいなかった。
ドラゴンをテイムするテイマーがいないわけではないのだ。人型をとるモンスターの場合、基本モンスター扱いではなく、人扱いになる。
睡眠を十分にとって、23階層に挑む。
砂漠地帯は暑く、天にある太陽がじりじりと体力を奪っていく。
「アイシクルフラワー・・・・・」
暑さに耐えかねた浮竹が、クーラーのような魔法を使った。
「ああ、涼しい。生き返るよ」
「暑いのは、苦手だ」
陶器の器に氷をいれて、水を入れて溶かして飲んだ。
「水、普通は貴重だけど僕や君みたいに、水魔法を使える冒険者は特に水を所持する必要性がないからね」
「早く、砂漠地帯の23階層を抜けよう」
「そうだね」
途中で狂暴化したビッグサンドワームに襲われることはあったが、浮竹のアイシクルブレスで氷像と化してしまい、氷を解かされる前に京楽が粉々にした。
24階層。
ボスのフロアの、最終階層であった。
いたのは、闇属性のヒュドラ。
「ホワイトレイ!」
浮竹が光の魔法を放つと、ヒュドラの頭が一つもげた。
「浮竹、君って奴隷だったから戦闘経験はないっていってたけど、覚えてる魔法の数も多いし、何より強いね!」
「奴隷の頃、することがなかったので、魔法の本を読み漁っていた」
「いいことだね!」
「よくない!奴隷だったんだぞ!」
「うん、奴隷だったことはいいことじゃないけど、本を読んで知識をためこむことはいいことだよ。特にドラゴンはブレスの他に多数の魔法を操るから」
「俺もドラゴンだ!固有スキル、「凍れる者」をもっている。氷結系の魔法は、誰にも引けをとらない。アイシクルブレス!!!」
「ぎゅるるるるるる!!!」
闇のヒュドラは、ダークブレスを吐くが、それをアイシクルブレスが相殺する。
「こっちだよ、ヒュドラ。浮竹ばかり相手してないで、僕も相手してよ!」
京楽は、剣でヒュドラの8つあった首のうち、2つを斬り捨てた。
浮竹がすでに1つの頭を破壊しているので、残ってる頭は5つ。
それぞれ、違う魔法の詠唱に入る。
「合唱魔法か!完成する前に、叩くよ!」
「分かっている!アイシクルブレス!!!」
「ヘルインフェルノ!」
魔法で攻撃して、詠唱が止まったところを、京楽の剣が5つの首を切り落とし、ドラゴンの姿になった浮竹が、白い羽毛を血で汚しながらヒュドラの心臓部分に噛みついた。
「ぎゃるるるるーーーーーああああーーーーー」
断末魔の悲鳴をあげて、ヒュドラが倒れる。
浮竹は、人の姿に戻ると、べっとりとヒュドラの血にまみれていた。
「ああ、せっかくの美貌がだいなしだ。キュアクリーン」
京楽が、浄化の魔法で浮竹のヒュドラの血を落とす。
「どうした」
「ドラゴンの姿に戻る時は、事前に言ってね。危うく、剣で傷つけるところだった。この剣、魔剣でドラゴンスレイヤーの剣っていわれてて、ドラゴン系の血肉をすするのが大好きだから」
「う、俺を食うなよ!」
「大丈夫。ちゃんと持ち主の意思を反映してくれるから」
「クイタイ。レアなドラゴンの血肉、クイタイ」
「ちょ、しゃべった!」
「ああ、うん。意思があるからね。だめだぞ、ドラゴンスレイヤー。この子は僕のもの。僕のものに手を出したら、たとえ僕の愛用する魔剣とはいえ・・・・・」
ぞっとするほどに冷たい顔で、京楽は魔剣に囁やいた。
「ワカッタ。ワカッタからおろうとスルナ」
魔剣はカタカタと震えた。
Sランンクダンジョンを踏破して、戦利品をもって冒険者ギルドに戻った。
「おお、十四郎に春水、無事であったか」
ギルドマスター通称山じぃといって、引退した元Sランク冒険者で、ドラゴンスレイヤーの異名も持っていた。
「これ、今回の獲物。Sランクダンジョンを踏破したよ。ボスはヒュドラだった。魔石は大きいから、けっこう値段すると思うよ」
「ヒュドラ!それを二人だけで倒してしまうとはのう」
Sランクダンジョンで手に入れたマジックアイテムや金銀財宝をひきとってもらい、白金貨2千枚をもらった。
「白金貨が2千枚・・・・・」
ちなみに、浮竹の奴隷の頃の値段は白金貨20万枚だ。
「やっぱ冒険者稼業はもうかるね」
「そ、そうだな」
報酬金を手に、高級宿に戻ると、浮竹はそわそわしていた。
「どうしたの?」
「白金貨2千枚だぞ!とられたらどうする」
「僕が奪うバカはいないよ。そんなことしようとしたら、容赦なく殺すからね。過去にいたけど、殺したし」
「京楽・・・・」
「ん?」
「ダンジョン、それなりに楽しかった。また行こう」
浮竹は、京楽の頬にキスをして、ベッドにいくと布団にくるまってしまった。
「ふふ。君なりの精一杯の愛情表現ってところかな」
「う、うるさい」
布団をかぶってごぞごそしながら、浮竹は眠気が訪れるをゆっくりと待つのであった。